JP2014074320A - 耐震補強パネル - Google Patents

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Abstract

【目的】製作、搬送及び組立を効率的に行いつつ、RC柱部材の膨らみを確実に拘束する。
【構成】本発明に係る耐震補強パネル1は、橋脚3に貫通配置されるPC鋼棒6と、該PC鋼棒が挿通された状態で橋脚3の側方に配置される荷重伝達部材7と、該荷重伝達部材の長手側縁部に連結される曲面板8とで構成してある。荷重伝達部材7のウェブ22には、PC鋼棒6が挿通される挿通孔21を形成してあるとともに、各フランジ23にはボルト孔24をそれぞれ形成してあり、該ボルト孔を用いて曲面板8をフランジ23にボルト接合できるように構成してある。2つのフランジ23,23は、それらの離間寸法が開口側に向けて増加するように構成してあるが、本実施形態では、曲面板8の側方縁部を当接させたとき、該フランジの先端縁部近傍で曲面板8が平坦になるように、ウェブ22に対する延設方向を定めてある。
【選択図】 図3

Description

本発明は、鋼板巻立てによって鉄筋コンクリート部材を耐震補強する耐震補強パネルに関する。
鉄筋コンクリート柱や鉄筋コンクリート橋脚(以下、RC柱部材)を耐震補強する補強方法として、RC柱部材の周囲に鋼板を巻き立てた上、該鋼板との隙間にモルタル等のグラウト材を充填する工法が知られており、かかる工法によれば、RC柱部材を鋼板で拘束することにより、曲げやせん断の耐力あるいは靭性を高めることが可能となる。
ここで、RC柱部材の水平断面が矩形状断面、特に長手方向が比較的長い壁状断面である場合には、長手側に配置された鋼板の面外方向への膨らみを抑えることが困難であるため、各長手側に配置された2枚の鋼板同士を、RC柱部材に挿通されたPC鋼棒などの引張材で相互連結する構成が採用されている。
さらに、かかる構成において引張材設置箇所から離間した位置での拘束作用の低下を補うべく、平板状の鋼板に代えて、部分円筒状に湾曲形成された曲面部を有する鋼板も採用されている(特許文献1,2)。
この構成によれば、引張材の設置箇所から離間した位置であっても、RC柱部材の膨らみを曲面部の面内引張力で支持させることができるため、壁状の矩形断面であってもRC柱部材の耐震性能を向上させることが可能となる。
特開平 9−209580号公報 特開平11−303415号公報
ここで、上述した従来の技術においては、RC柱部材を巻き立てるための鋼板として、連結用フランジが曲面部に一体に設けられてなる外殻鋼板や(特許文献1、要約書)、曲面部である3つの円弧状柱体aと2つのフランジ10bとが交互に配置されるようにそれらが一体に連結されてなる鋼製セグメント10(特許文献2、段落[0017])が用いられるところ、外殻鋼板の連結用フランジや鋼製セグメント10のフランジ10bといったいわば平板部は、部分円筒状の曲面部に生じる地震時の面内引張力を引張材に伝達する役目を担うものであるため、それらの剛性が低いと地震時に面外変形するとともに、それに伴って曲面部が前方にはらみ出し、その結果、RC柱部材の膨らみを十分に拘束することができない事態を招く。
そのため、外殻鋼板の連結用フランジや鋼製セグメント10のフランジ10bは、面外変形することなく、部分円筒状の曲面部に生じる面内引張力を引張材に伝達できるだけの断面厚でなければならないが、その結果として連結用フランジやフランジ10bと一体に構成されるべき部分円筒状の曲面部も断面厚が大きくなり、該曲面部では過大設計になる場合があるという問題を生じていた。
かかる問題は、座金を用いた補剛によってある程度解消することが可能であるが、連結用フランジやフランジ10bに局部座屈が生じるなどの不測の事態が懸念されるとともに、それを避けるために引張材の本数を増やすと、耐震補強コストの増大を招く。
また、従来の外殻鋼板や鋼製セグメント10は、平板部と曲面部とを一体に構成したものであるため、製作コストが本来的に割高になるほか、製作にあたっては引張材の挿通位置が予め決定される必要があり、施工方針の進捗に遅延が生じると、外殻鋼板や鋼製セグメント10の製作工程にも影響し、結果として製作効率が低下するという問題も生じていた。
さらに、鋼製セグメント10の場合、既存橋脚等の水平幅とほぼ同じになるように形成しなければならないため、耐震補強対象である既存橋脚が大きくなればなるほど、製作に手間がかかるとともに、搬送や組立も大がかりになるという問題も生じていた。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、RC柱部材の膨らみを十分に拘束できるとともに、効率的な製作が可能で搬送や組立も小規模で足りる耐震補強パネルを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る耐震補強パネルは請求項1に記載したように、既存のRC柱部材に貫通配置される引張材と、該引張材を挿通する挿通孔が形成され前記RC柱部材の側方にほぼ鉛直姿勢で配置される長尺状の荷重伝達部材と、部分円筒状に形成され側方縁部が前記荷重伝達部材の長手側縁部に連結自在となるように構成された曲面板とで構成したものである。
また、本発明に係る耐震補強パネルは、前記荷重伝達部材を、ウェブ及び該ウェブの各縁部からそれぞれ延設された2つのフランジで構成するとともに、該フランジに前記曲面板の側方縁部を当接させた状態で該曲面板を前記荷重伝達部材にボルト接合するように構成したものである。
また、本発明に係る耐震補強パネルは、前記2つのフランジをそれらの離間寸法が開口側に向けて増加するように構成したものである。
また、本発明に係る耐震補強パネルは、前記フランジに前記曲面板の側方縁部を当接させた状態において、該フランジの先端縁部近傍で前記曲面板が平坦になるように前記ウェブに対する前記フランジの延設方向を定めたものである。
また、本発明に係る耐震補強パネルは、前記荷重伝達部材の長手側縁部に前記曲面板を複数段連結できるように該曲面板及び該荷重伝達部材を構成したものである。
また、本発明に係る耐震補強パネルは、前記ウェブ及び前記2つのフランジのうち、少なくとも該2つのフランジの各内面に接合されてなる補剛板を前記荷重伝達部材に備えたものである。
本発明に係る耐震補強パネルにおいては、従来の鋼板巻立てと同様、曲げせん断の繰り返し載荷や過大な軸力の載荷によってRC柱部材が膨らもうとする際、該RC柱部材の周囲に巻き立てることによって、かかる膨らみを面内引張力(フープテンション)で拘束するが、従来のようにフランジが一体に構成された外殻鋼板や鋼製セグメントではなく、引張材を挿通するための挿通孔が形成された荷重伝達部材と該荷重伝達部材の長手側縁部に連結される曲面板とを別体で構成してあるので、荷重伝達部材及び曲面板のうちの一方が他方の断面設計を制約することがなくなり、曲面板は、RC柱部材の膨らみを拘束するための面内引張力を支持できるように構成し、荷重伝達部材は、自らの面外変形によって曲面板を前方にはらみ出させることなく、該曲面板に生じた面内引張力を引張材に伝達できるように構成すれば足りる。
また、本発明に係る耐震補強パネルにおいては、荷重伝達部材と曲面板とを別体で構成するものであるため、加工機械が小規模で足りるとともに、それぞれ個別に製作できることとも相俟って、製作コストの低減を図ることが可能となるほか、搬送や組立の際にも、より小型のトラックや重機で足りるため、施工コストの合理化も可能となる。
RC柱部材は、耐震補強の対象となるものであって、道路橋や鉄道橋の橋脚が主として該当するが、これらの部材に限定されるものではなく、通常時に上載荷重を軸力で支持し地震時に水平荷重を曲げせん断で支持する全てのRC部材が包摂される。
また、RC柱部材は、矩形断面であってその長手方向長さが短手方向長さよりも十分に大きい、いわば壁状のRC柱部材が主たる対象となるが、矩形断面の縦横比が小さい部材、すなわち正方形断面あるいはそれに近い矩形断面はもちろん、非矩形断面であっても、本発明の適用が除外されるものではない。
引張材は、RC柱部材を主としてその断面短手方向と平行に貫通配置されるものであって、PC鋼棒がその代表となるが、曲面板に生じた面内引張力を支持できるだけの引張強度を有するロッド材であれば、いかなるものでもかまわない。
曲面板は、例えば鋼材やFRPで構成することができる。また、曲面板は、部分円筒状に形成される限り、その断面形状は任意であって、真円の一部である円弧のように曲率が周方向に一律である必要はなく、相異なる複数の曲率を組み合わせたものでもよいが、いずれにしろRC柱部材の膨らみを面内引張力で支持できるように構成する。
荷重伝達部材は、引張材を挿通する挿通孔が形成されるとともに、RC柱部材の側方にほぼ鉛直姿勢で配置可能であり、かつ長手側縁部に曲面板が連結可能である限り、その構成は任意であり、例えばウェブ及び該ウェブの各縁部からそれぞれ延設された2つのフランジで構成するとともに、該フランジに曲面板の側方縁部を当接させた状態で該曲面板を荷重伝達部材にボルト、リベット、溶接等の接合形態で接合するように構成することができる。曲面板は、荷重伝達部材に引張力を作用させる関係上、フランジの内面に当接させた方が強度的に有利であるが、フランジの外面に当接させるようにしてもかまわない。
ウェブ及び2枚のフランジは、ウェブに直交するようにその各縁部からフランジをそれぞれ延設する構成として例えば溝形鋼を採用することができるが、これに代えて、2つのフランジをそれらの離間寸法が開口側に向けて増加するように構成する、換言すれば先端が開くようにハの字状に構成したならば、曲面板を荷重伝達部材にボルト接合する際、曲面板に大きな折曲げ箇所を設ける必要がなくなり、曲面板に大きな面外曲げ応力が発生したり、曲面板の折曲げ箇所で大きな局部応力が発生したりといった事態を回避することができるため、曲面板に生じる面内引張力をより確実に引張材に伝達させることが可能となる。
特に、フランジに曲面板の側方縁部を当接させた状態において、該フランジの先端縁部近傍で曲面板が平坦になるよう、ウェブに対するフランジの延設方向を定めたならば、曲面板に折曲げ箇所が形成されなくなるため、上述した面外曲げ応力や局部応力の発生懸念がなくなり、曲面板を概ね面内引張力だけで断面設計することができるとともに、荷重伝達部材を介した曲面板と引張材との荷重伝達がいっそう確実となる。
曲面板及び荷重伝達部材は、曲面板の側方縁部における長さ、すなわち曲面板の高さを荷重伝達部材の長さに一致させることで、1つの荷重伝達部材の片側に1枚の曲面板を配置し、あるいは1つの荷重伝達部材の両側にそれぞれ1枚の曲面板、計2枚の曲面板を配置するようにしてもかまわないが、荷重伝達部材の長さを曲面板の高さの複数倍に寸法決めすることで、荷重伝達部材の長手側縁部に曲面板を複数段連結できるように該曲面板及び該荷重伝達部材を構成したならば、曲面板1枚あたりの大きさや重量がさらに小さくなるため、搬送や組立がいっそう容易になる。
なお、曲面板に生じる面内引張力は、引張材の材軸に沿った分力と該分力に直交する方向に沿った分力とからなるため、荷重伝達部材の片側にのみ曲面板を配置する場合には、引張材の材軸直交方向に沿った分力が相殺されなくなるので、かかる場合には、例えば従来の巻立て鋼板から反力をとる形でその分力を支持させるようにすればよい。
荷重伝達部材をウェブ及び該ウェブの各縁部からそれぞれ延設された2つのフランジで構成する場合には、曲面板に生じる面内引張力のうち、引張材の材軸直交方向に沿った分力によって2つのフランジの先端縁部が互いに離間するように変形しようとするが、ウェブ及び2つのフランジのうち、少なくとも該2つのフランジの各内面に接合されてなる補剛板を荷重伝達部材に備えたならば、上述の開き変形を防止することができる。
なお、荷重伝達部材の長手側縁部に曲面板を複数段連結できるように該曲面板及び該荷重伝達部材を構成した場合であって、曲面板の側方縁部をフランジの内面に当接させてボルト接合する場合には、補剛板の設置ピッチを曲面板の高さに合わせる、補剛板が差し込まれる切込みを曲面板に形成するなどして、曲面板と補剛板との干渉を適宜防止すればよい。
本実施形態に係る耐震補強パネル1の配置図であり、(a)は高架橋上部工2を支持する橋脚3に配置された様子を示した平面配置図、(b)はA−A線方向から見た矢視図。 荷重伝達部材7の図であり、(a)はB−B線方向から見た矢視図、(b)は詳細断面図。 耐震補強パネル1の組立斜視図。 橋脚3の短手側における耐震補強パネル1の組立状況を示した図であり、(a)は平面図、(b)は詳細断面図。 荷重伝達部材7bの図であり、(a)は平面図、(b)は詳細断面図。 荷重伝達部材7cの詳細断面図。
以下、本発明に係る耐震補強パネルの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る耐震補強パネルを示した図である。同図でわかるように、本実施形態に係る耐震補強パネル1は、高架橋上部工2を支持するRC柱部材としての橋脚3を耐震補強対象としたものであり、該橋脚のうち、地盤4に埋設されたフーチング5からの立ち上がり箇所近傍であって側方の断面各長手側にそれぞれ配置してある。
耐震補強パネル1は、橋脚3に貫通配置される引張材としてのPC鋼棒6と、該PC鋼棒が挿通された状態で橋脚3の側方にほぼ鉛直姿勢で配置される長尺状の荷重伝達部材7と、該荷重伝達部材の長手側縁部に連結される曲面板8とで構成してある。
荷重伝達部材7は、橋脚3の水平幅に沿った三等分点となる2つの位置に2段ずつ、計4本を該橋脚の断面各長手側においてそれぞれ鉛直姿勢で配置してあるとともに、曲面板8は、鉛直方向に6段、水平方向に3列となるように計18枚を橋脚3の断面各長手側に配列してあり、曲面板8のうち、水平方向に隣り合う曲面板8,8は、荷重伝達部材7を介して相互に連結してある。
ここで、荷重伝達部材7は、その長さが曲面板8の高さの3倍となるように構成してあり、一本あたり、その各長手側縁部に3枚の曲面板8をそれぞれ連結できるようになっている。
荷重伝達部材7は図2でよくわかるように、ウェブ22と該ウェブの各縁部からそれぞれ延設された2つのフランジ23,23とで構成してあり、ウェブ22には、PC鋼棒6が挿通される挿通孔21を形成してあるとともに、各フランジ23にはボルト孔24をそれぞれ形成してあり、曲面板8をその側方縁部で該フランジの内面に当接した上、曲面板8に形成されたボルト孔25にボルト26を挿通するとともに該ボルトをフランジ23のボルト孔24に挿通して該ボルトの先端にナット27を螺合することにより、曲面板8をフランジ23にボルト接合できるように構成してある。
ここで、2つのフランジ23,23は、それらの離間寸法が開口側に向けて増加するように構成してあるが、本実施形態では図2(b)に示す通り、曲面板8の側方縁部を当接させたとき、該フランジの先端縁部近傍で曲面板8が平坦になるように、ウェブ22に対する延設方向θを定めてある。
一方、曲面板8は、鋼板を部分円筒状に湾曲加工して形成してある。
本実施形態に係る耐震補強パネル1を製作するにあたっては、従来のようなフランジが一体に構成された外殻鋼板や鋼製セグメントとは異なり、荷重伝達部材7と曲面板8とが別体であるため、一方が他方の断面設計に拘束されることはなく、荷重伝達部材7は、自らの面外変形によって曲面板8を前方にはらみ出させることなく、該曲面板に生じた面内引張力をPC鋼棒6に伝達できるように断面を決定し、曲面板8については、橋脚3の膨らみを拘束するための面内引張力を支持できるように板厚を設定すれば足りる。
本実施形態に係る耐震補強パネル1を用いて橋脚3を耐震補強するには、まず、橋脚3のコンクリート面を必要に応じて粗面処理した後、図3に示すように、荷重伝達部材7を橋脚3の長手側側面に立設するとともに、該荷重伝達部材のウェブ22に形成された挿通孔21に橋脚3の断面短手方向と平行に該橋脚に予め貫通配置されたPC鋼棒6を挿通し、該PC鋼棒の先端に座金31を通した上、ナット32を取り付けて螺合することにより、荷重伝達部材7を橋脚3の側面に固定する。
なお、荷重伝達部材7を図示しないスペーサーを介して橋脚3に取り付けることにより、該橋脚の側面から荷重伝達部材7を離間配置し、橋脚3の側面と荷重伝達部材7の背面との間に後述するコンクリートが充填されるようにしてもよい。
次に、曲面板8を、側方からあてがうようにして、あるいは最下段から順次落とし込むようにして橋脚3の側方に建て込み、次いで、曲面板8に形成されたボルト孔25に挿通されたボルト26を荷重伝達部材7のボルト孔24に挿通し、該ボルトの先端にナット27を螺合することにより、曲面板8を荷重伝達部材7のフランジ23にボルト接合する。
なお、曲面板8のうち、最外位置の曲面板8であって、隣り合う曲面板8が存在しない側については、図4に示すように、荷重伝達部材7のフランジ23,23のうち、一方のフランジ23に代えて、背面側に直角に折り曲げてなるフランジ41とした荷重伝達部材7aを橋脚3の隅部に取り付けた上、最外位置の曲面板8に形成されたボルト孔25に挿通されたボルト26を荷重伝達部材7aのフランジ23に形成されたボルト孔24に挿通し、該ボルトの先端にナット27を螺合することにより、最外位置の曲面板8を荷重伝達部材7aのフランジ23にボルト接合するとともに、平板状の鋼板43を橋脚3の短手側側面に配置して該鋼板に形成されたボルト孔45に荷重伝達部材7aのフランジ41から突設されたスタッドボルト42を挿通し、その先端にナット44を螺合することにより、鋼板43を荷重伝達部材7aのフランジ41にボルト接合する。
このようにして耐震補強パネル1を橋脚3に建て込んだならば、曲面板8及び場合によっては荷重伝達部材7を型枠材とし、それらの背面と橋脚3の側面との間にコンクリートを打設し、橋脚3の既存コンクリートと一体化させる。なお、曲面板8と橋脚3との間には、コンクリート打設前に必要に応じて適宜配筋を施しておく。
本実施形態に係る耐震補強パネル1においては、従来の鋼板巻立てと同様、曲げせん断の繰り返し載荷や過大な軸力の載荷によって橋脚3が膨らもうとする際、該橋脚の周囲に巻き立てることによって、かかる膨らみを曲面板8の面内引張力(フープテンション)で拘束するが、該曲面板が連結される荷重伝達部材7のフランジ23は図2(b)で説明したように、その内面に曲面板8の側方縁部を当接させたとき、該フランジの先端縁部近傍で曲面板8が平坦になるように、ウェブ22に対する延設方向θを定めてあるので、該曲面板に生じた面内引張力は、曲面板8の側方縁部に面外曲げ応力を発生させたり、曲面板8の折曲げ箇所で大きな局部応力を発生させたりすることなく、荷重伝達部材7へと伝達するとともに、それらのうち、PC鋼棒6の材軸に沿った分力についてはPC鋼棒6の引張力で支持され、該材軸に直交する分力については隣り合う曲面板8からの面内引張力で支持される。
以上説明したように、本実施形態に係る耐震補強パネル1によれば、地震時における橋脚3の膨らみを曲面板8の面内引張力で拘束するが、従来とは異なり、PC鋼棒6を挿通するための挿通孔21が形成された荷重伝達部材7と該荷重伝達部材の長手側縁部に連結される曲面板8とを別体で構成してあるので、荷重伝達部材7及び曲面板8のうちの一方が他方の断面設計を制約することがなくなる。
そのため、荷重伝達部材7の面外剛性を高めた結果、曲面板8の板厚が過大になるといった事態が生じるおそれがなくなり、荷重伝達部材7及び曲面板8をそれぞれ最適に設計製作することが可能となる。
また、荷重伝達部材7と曲面板8とを別体で構成することにより、加工機械が小規模で足りるとともに、それぞれ個別に製作できることとも相俟って、製作コストの低減を図ることが可能となるほか、搬送や組立の際にも、より小型のトラックや重機で足りるため、施工コストの合理化も可能となる。
また、本実施形態に係る耐震補強パネル1によれば、2つのフランジ23,23をそれらの離間寸法が開口側に向けて増加するように構成するとともに、特に、フランジ23の内面に曲面板8の側方縁部を当接させた状態において、該フランジの先端縁部近傍で曲面板8が平坦になるよう、ウェブ22に対するフランジ23の延設方向θを定めたので、曲面板8を概ね面内引張力だけで断面設計することができるとともに、荷重伝達部材7を介した曲面板8とPC鋼棒6との荷重伝達を確実ならしめることができる。
また、本実施形態に係る耐震補強パネル1によれば、荷重伝達部材7の長さを曲面板8の高さの複数倍に寸法決めすることで、荷重伝達部材7の長手側縁部に曲面板8を複数段連結できるように該曲面板及び該荷重伝達部材を構成したので、曲面板8の1枚あたりの大きさや重量が小さくなり、搬送や組立がいっそう容易になる。
本実施形態では、橋脚3のうち、地盤4に埋設されたフーチング5からの立ち上がり箇所近傍だけに耐震補強パネル1を配置するようにしたが、これは説明の便宜であって、耐震補強パネル1を橋脚3のどこに配置するかは任意であり、例えば橋脚3の全高にわたって配置する構成が可能である。
また、本実施形態では、荷重伝達部材7を、橋脚3の水平幅に沿った三等分点となる2つの位置に2段ずつ、計4本を該橋脚の断面各長手側においてそれぞれ鉛直姿勢で配置するようにしたが、これは説明の便宜であって、荷重伝達部材7をどのように配置するかは任意であり、例えば橋脚3の水平幅に沿った三等分点に配置する必要はない。
また、本実施形態では、橋脚3の短手側に平板状の鋼板43を建て込んだ上、該鋼板の側方縁部を荷重伝達部材7aを介して最外位置の曲面板8に連結するようにしたが、最外位置の曲面板8であって、隣り合う曲面板8が存在しない側をどのように処理するかは任意であり、例えば上述の実施形態の構成に代えて、鋼板43を省略するとともに、フランジ41を省略した荷重伝達部材を用いることも可能である。
同構成においては、曲面板8に生じた面内引張力は、PC鋼棒6の材軸直交方向に沿った分力についても、該PC鋼棒で支持されることとなる。
これとは逆に、曲面板8に生じた面内引張力を鋼板43だけで支持できるのであれば、PC鋼棒6を省略してもかまわない。
また、本実施形態では、荷重伝達部材7のフランジ23を、その内面に曲面板8の側方縁部が当接されたときに該フランジの先端縁部近傍で曲面板8が平坦になるように、ウェブ22に対する延設方向θを定めるようにしたが、2つのフランジの離間寸法が開口側に向けて増加するようにさえ構成しておけば、曲面板に折曲げ箇所が生じたとしても、その程度が抑制されるため、曲げ応力や局部応力の発生を最小限にとどめることができる。
また、本実施形態では特に述べなかったが、荷重伝達部材7に代えて、図5に示す荷重伝達部材7bを採用することが可能である。
同構成においては、荷重伝達部材7bは、ウェブ22と該ウェブの各縁部からそれぞれ直交方向に延設された2つのフランジ23b,23bとからなる溝形鋼で構成され、各フランジ23bにはボルト孔24bをそれぞれ形成してあるとともに、曲面板8に代えて、その側方縁部を折曲げ形成してなる曲面板8bを用いるものであり、曲面板8bの側方縁部をフランジ23bの内面に当接した上、曲面板8bの側方縁部に形成されたボルト孔25bにボルト26を挿通するとともに該ボルトを引き続きフランジ23bのボルト孔24bに挿通した上、その先端にナット27を螺合することにより、曲面板8bをフランジ23bにボルト接合できるように構成してある。
同構成によれば、曲面板8bに折曲げ箇所が形成されるため、曲面板8bに生じた面内引張力が荷重伝達部材7bに伝達される際、該曲面板の折曲げ箇所で局部応力が生じる懸念があるが、荷重伝達部材と曲面板とを別体とすることの作用効果は、上述した実施形態と何ら変わりはない。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、曲面板8に生じる面内引張力のうち、PC鋼棒6の材軸直交方向に沿った分力によって2つのフランジ23,23の先端縁部が互いに離間する場合には、図6に示すように、ウェブ22及び2つのフランジ23,23の各内面に周縁が接合されてなる補剛板61を備えた荷重伝達部材7cを採用することで、上述の開き変形を防止することができる。
ここで、上記構成においては、曲面板8と補剛板61とが互いに干渉しないように、例えば補剛板61の設置ピッチを曲面板8の高さに合わせる、換言すれば曲面板8の上縁と下縁の各高さ位置が補剛板61の設置高さ位置となるように製作し、組立の際には、補剛板61を挟み込みながら曲面板8を建て込むとともに、上下に隣り合う曲面板8,8の間に形成される補剛板61の厚み相当寸法の隙間をコンクリート打設に備えて適宜塞ぐなどの対策を講じる。
なお、フランジ23,23の開き変形が防止できるのであれば、補剛板61をウェブ22及び2つのフランジ23,23に接合する必要はなく、2つのフランジ23,23の各内面に接合すれば足りる。
1 耐震補強パネル
3 橋脚(RC柱部材)
6 PC鋼棒(引張材)
7,7b,7c 荷重伝達部材
8,8b 曲面板
21 挿通孔
22 ウェブ
23,23b フランジ
61 補剛板

Claims (6)

  1. 既存のRC柱部材に貫通配置される引張材と、該引張材を挿通する挿通孔が形成され前記RC柱部材の側方にほぼ鉛直姿勢で配置される長尺状の荷重伝達部材と、部分円筒状に形成され側方縁部が前記荷重伝達部材の長手側縁部に連結自在となるように構成された曲面板とで構成したことを特徴とする耐震補強パネル。
  2. 前記荷重伝達部材を、ウェブ及び該ウェブの各縁部からそれぞれ延設された2つのフランジで構成するとともに、該フランジに前記曲面板の側方縁部を当接させた状態で該曲面板を前記荷重伝達部材にボルト接合するように構成した請求項1記載の耐震補強パネル。
  3. 前記2つのフランジをそれらの離間寸法が開口側に向けて増加するように構成した請求項2記載の耐震補強パネル。
  4. 前記フランジに前記曲面板の側方縁部を当接させた状態において、該フランジの先端縁部近傍で前記曲面板が平坦になるように前記ウェブに対する前記フランジの延設方向を定めた請求項3記載の耐震補強パネル。
  5. 前記荷重伝達部材の長手側縁部に前記曲面板を複数段連結できるように該曲面板及び該荷重伝達部材を構成した請求項1乃至請求項4のいずれか一記載の耐震補強パネル。
  6. 前記ウェブ及び前記2つのフランジのうち、少なくとも該2つのフランジの各内面に接合されてなる補剛板を前記荷重伝達部材に備えた請求項2乃至請求項5のいずれか一記載の耐震補強パネル。
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