JP2014073650A - 積層体 - Google Patents

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盛昭 新崎
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Abstract

【課題】無機蒸着易接着、酸素や水蒸気などのガスバリア性に優れたポリ乳酸を含む積層体を提供する。
【解決手段】 無機層(以下、A層という)、ポリ乳酸を主成分とし、非晶性の層(以下、B層という)、およびポリ乳酸を主成分とし、結晶性の層(以下、C層という)を有する積層体であって、
前記A層は、少なくとも一方の最外層であり、
前記A層と前記B層とは接しており、
前記A層の表面を、しきい値を1.00nmとして原子間力顕微鏡で測定した際に、グレインサイズが1nm以上、25nm以下であることを特徴とする、積層体。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機層が強固に接着することにより酸素や水蒸気などのガスバリア性に優れたポリ乳酸を含む積層体に関する。
二軸配向ポリプロピレンフィルム、二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムなど、従来の石油化学系ポリマーから作成された二軸配向フィルムが、包装、装飾およびラベルの用途に使用されており、また多くの場合には多機能用途に利用されている。たとえば、積層品に印刷適性、透明性・無光沢性の外観、スリップ性などを賦与したり、ガス・水蒸気バリア性を有する有機・無機塗料のコーティングに適した表面を与えたり、またバッグの成形用・封止用に適したヒートシール可能層や、塗装・積層による接着剤への被着性に適した層を形成することが可能である。
近年、「環境に優しい」包装材が注目されている。生物学的に誘導されたポリマーから製造された包装材が増加しているのは、再生可能な資源、原材料および温室効果ガスに対する懸念によるものである。生物学に基づくポリマーは、一旦その利用が本格的に拡大すれば、石油への依存を減少させ、また温室効果ガスの発生量を減少させるために役立つとともに、微生物分解性を有することが可能である。コーンスターチに由来し、したがって再生可能な資源に由来するものと考えられるポリ乳酸も、包装フィルム向けのより一般的な商業製品の一つである。
生物学に基づくポリマーフィルムをスナック食品など多数の包装用途に適したものとする場合、生物学に基づくポリマーフィルムは、たとえばヒートシール可能性、印刷適性、制御COF、金属化可能性、ガスバリア性などを持つことで知られる二軸配向ポリプロピレンフィルムや二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムに匹敵する物性を有することが望まれる。しかし、二軸配向ポリ乳酸フィルムは、現在使用されている主要な石油系包装フィルムと比較して、熱安定性が低く、水蒸気に対するガスバリア性や金属付着性に劣る場合がある。これら欠点の一部については、石油化学系あるいは非微生物分解系のベース成分を混合あるいは積層することにより、解消することが可能である。たとえば、ポリエチレン系あるいはポリプロピレン系の材料を、印刷可能な表面を有するがシール性やバリア性を持たない二軸配向ポリ乳酸フィルムからなるフィルムに積層することにより、ヒートシール性と良好なガスバリア性を与えることが可能である。
しかし、最近は、環境に優しい包装材への要求が高まり、100%の堆肥化可能性、生物分解性あるいは再生可能性を持つ設計の包装用フィルムが求められており、従来の石油化学系あるいは非微生物分解系の成分を用いることなく望ましい性能を賦与することが検討されている。すなわち、二軸配向ポリ乳酸フィルムには、商業的に売れる費用効果の高い包装製品を製造可能とするべく、ポリ乳酸単体でより高い機能性が要求されている。二軸配向ポリ乳酸フィルムは、単体フィルムとして、良好なガスバリア性やヒートシール性など多様な機能を有する必要がある。高バリア性包装材に使用する場合、二軸配向ポリ乳酸フィルムは水蒸気に対するガスバリア性が不良であるという問題がある。ポリ乳酸の有極性が、水蒸気バリア性の向上に対する障害になることが多いのである。理論的に証明されたものではないが、それ自体が極性を有している水分子は、非極性のポリマーフィルムよりも極性のポリマーフィルム内部において、より容易に移動できるのではないかと考えられる。このようなポリ乳酸フィルムのガスバリア性不良に対し、無機層を蒸着などの手段でポリ乳酸系フィルムの表面に形成し、ガスバリア性を付与する検討がなされている。しかし一般的に単純型結晶性二軸配向ポリ乳酸フィルムは無機層との接着性が悪く、フィルム表面に無機層を形成しても無機層の剥離が起こり十分なガスバリア性を得ることができないという問題があった。
上記の要求を解決するべく、種々の試みがなされてきた。たとえば、特許文献1では、表面処理によりポリ乳酸フィルム表面に窒素原子を有する官能基を導入した後、無機層を形成させることにより、無機層の接着力を向上させた二軸延伸フィルムが提案されている。また特許文献2ではポリグリセリンと乳酸の共重合体からなるアンカーコート剤をポリ乳酸フィルム表面に塗布することにより、金属蒸着層の接着力を向上させた二軸延伸フィルムが提案されている。
一方、ポリ乳酸二軸延伸フィルムの表面の結晶性を制御することによりポリ乳酸と無機の接着力を向上させる試みがなされている。例えば特許文献3では非晶性ポリ乳酸系樹脂と結晶性ポリ乳酸系樹脂の混合割合を調整することにより結晶性を制御した結晶性の層と非晶性の層とを積層した二軸延伸フィルムが提案されている。また特許文献4では、ポリ乳酸ベースポリマーからなるコア層とアモルファスのポリ乳酸ベースポリマーからなるスキン層とスキン層上にある金属層とからなる多層フィルムが提案されている。
特開2010−248490号公報 特許4636748号公報 特開2005−53223号公報 WO2010/111501号パンフレット
しかしながら特許文献1や特許文献2の方法では、各処理を施すための工程の導入が必要になるため製造コストが上がってしまうという問題があった。
また特許文献3、4に記載のフィルムは、結晶性ポリ乳酸に非晶性ポリ乳酸を積層し、従来公知の延伸方式により二軸延伸フィルムとするものであるが、これらに記載されている積層二軸延伸フィルムは、非晶性ポリ乳酸樹脂の積層により無機層との接着性が向上しているものの、依然として実用化に耐えうる接着力に至っていないという問題があった。
本発明は、無機層が強固に接着することにより酸素や水蒸気などのガスバリア性に優れたポリ乳酸を含む積層体を提供することを目的とする。
本発明の積層フィルムは、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
(I)無機層(以下、A層という)、ポリ乳酸を主成分とし、非晶性の層(以下、B層という)、およびポリ乳酸を主成分とし、結晶性の層(以下、C層という)を有する積層体であって、
前記A層は、少なくとも一方の最外層であり、
前記A層と前記B層とは接しており、
前記A層の表面を、しきい値を1.00nmとして原子間力顕微鏡で測定した際に、グレインサイズが1nm以上、25nm以下であることを特徴とする、積層体。
(II) 前記A層、前記B層、前記C層、前記B層をこの順に有することを特徴とする、(I)に記載の積層体。
(III) B層とC層を有し、A層を有さないフィルムを積層フィルムとした時に、該積層フィルムの面配向係数が1.0×10−2〜2.5×10−2であることを特徴とする、(I)または(II)に記載の積層体。
(IV) 100℃で5分加熱した際の熱収縮率が、−1.0%〜1.0%であることを特徴とする、(I)〜(III)のいずれかに記載の積層体。
(V) (I)〜(IV)のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、
前記積層フィルムのB層表面に、真空度を0.1Pa〜1Paとして真空蒸着法によってA層を形成することを特徴とする、積層体の製造方法。
本発明の積層体は、無機層が強固に接着することにより酸素や水蒸気などのガスバリア性に優れる。
発明者らは、前記課題、つまり、酸素や水蒸気などのガスバリア性に優れるポリ乳酸を含む積層体について鋭意検討した結果、無機層(以下、A層という)、ポリ乳酸を主成分とし、非晶性の層(以下、B層という)、およびポリ乳酸を主成分とし、結晶性の層(以下、C層という)を有する積層体であって、前記A層は、少なくとも一方の最外層であり、
前記A層と前記B層とは接しており、前記A層の表面を、しきい値を1.00nmとして原子間力顕微鏡で測定した際に、グレインサイズが1nm以上25nm以下であることを特徴とする、積層体とすることにより、前記課題を解決することを究明したものである。以下に本発明の詳細を説明する。
本発明のA層は、無機層である。該A層を構成する無機層とは、ガスバリア性を付与することが可能な無機物からなる層をさす。ガスバリア性を示す無機物としては、透明性を必要としない用途においては、加工性及びガスバリア性の観点から、アルミニウムを含む材料が好適に用いられ、透明性が必要な用途においては、無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物の少なくともいずれかが好適に用いられる。
無機層を構成する無機物として、アルミニウムを含む材料を用いる場合、具体的にはアルミニウムを99.9mol%以上含有する純アルミニウムのほか、他の添加元素を含むアルミニウム合金が挙げられるが、膜強度の観点からはアルミニウム合金を使用することが好ましい。アルミニウム合金に含まれる添加元素としては、例えば、マグネシウム、シリコン、タンタル、チタン、硼素、カルシウム、バリウム、炭素、マンガン等があり、これらのうち1種を添加元素として含む合金でも、2種以上を含む合金であってもよい。アルミニウム合金100mol%中のアルミニウムの割合は、アルミニウムが90.0〜99.8mol%、他の元素の総量が0.2〜10.0mol%であることが好ましく、アルミニウムが92〜99.5mol%、他の元素の総量が0.5〜8mol%であることが特に好ましい。アルミニウム合金を使用することにより、純アルミに比較して、無機層の結晶が微細化されるため、透過ガスのパスが長くなること、無機層の強度が向上し、表面に凹凸を形成している添加粒子が脱落しにくくなるという効果が期待できる。また、金属光沢に優れる無機層が求められる用途においては、層の光沢度を向上させるために、他の元素の添加量の上限を10mol%以下とすることが好ましく、より好適には7mol%以下であり、4mol%以下にすることがとくに好ましい。
また、本発明の積層体を必要な用途に用いる場合、無機層に好適な無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物としては、具体的には酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化シリコン・アルミニウムの混合体、酸化亜鉛、酸化チタンなどが挙げられ、ガスバリア性、色調などの観点からは、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化シリコン・アルミニウムがより好ましく、更に好ましくは酸化シリコン、酸化アルミニウムが挙げられる。これらの酸化次数は使用する無機物の種類によって異なるが、例えば酸化シリコンで例示すると、SiOxにおいて、X=1.0〜1.9であることが好ましく、より好ましくは、X=1.3〜1.7である。X=1.0を下回ると、膜が着色し、透明性を損ねる場合がある。X=1.9を上回るとガスバリア性が不十分となる場合がある。

本発明のB層、C層中に含有されるポリ乳酸とは、L−乳酸単位、D−乳酸単位、又はDL−乳酸単位を主成分とする重合体のことであり、乳酸単位のみの重合体であっても、L−乳酸単位、D−乳酸単位、又はDL−乳酸単位に、例えばヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸(脂環族も含む。以下同じ)および/又は脂肪族ジオールなどの単位を共重合した共重合体であっても良い。
本発明でいうポリ乳酸とは、乳酸単位を主成分とする重合体である。そして乳酸単位を主成分とするとは、該重合体を構成する全単位数を100%とした時に、乳酸単位の数を50%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上100%以下含むものである。乳酸単位の数が50%未満では、弾性率が低く、包装材として加工する場合に取り扱い性が悪くなる場合があるほか、アンカー層との密着性や耐熱性が劣る場合がある。
上記ポリ乳酸の重合法としては、縮重合法、開環重合法等公知の方法を採用することができる。例えば、縮重合法では、D−乳酸及び/またはL−乳酸、あるいは、これらと上記ほかのモノマーの混合物を直接脱水縮合重合することにより、任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状2量体であるラクチド、あるいはラクチドと上記ほかのモノマーとの混合物を、必要に応じて重合調整剤などを用いながら、選ばれた触媒を使用して重合することにより、ポリ乳酸を得ることができる。
本発明に使用されるポリ乳酸の重量平均分子量の好ましい範囲としては、6万〜70万であり、より好ましくは、6万〜40万、とくに好ましくは10万〜30万である。重量平均分子量が6万より小さいと機械物性や耐熱性等の包装用途に求められる物性を満足することが出来ない場合があり、70万より大きいと溶融粘度が高すぎ成形加工性に劣る場合がある。
上記ポリ乳酸に共重合される他の単位、言い換えると、ポリ乳酸を製造する際に用いるモノマーとしては、ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、又は脂肪族ジオール等の他のモノマーを用いることができ、特に限定されないが、例えば次のものがあげられる。すなわち、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類、脂肪族ジカルボン酸として、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、又はこれらの無水物や誘導体、脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオール、又はこれらの誘導体があげられる。共重合単位としては、炭素数2〜10のアルキレン基又はシクロアルキレン基を持つ、2官能性化合物を主成分とするものが好ましく、2種類以上の共重合単位を用いても構わない。
さらに、本発明のポリ乳酸には、少量の共重合成分として、以下の(a)、(b)を含んでもよく、また少量の鎖延長剤残基を含んでもよい。
(a)3官能基以上のカルボン酸、アルコール又はヒドロキシカルボン酸単位
(b)非脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は非脂肪族ジオール単位
上記(a)の単位は、溶融粘度の向上のためポリマー中に分岐を設ける目的で用いられ、具体的には、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸あるいはペンタエリスリットやトリメチロールプロパン等の多官能性成分があげられる。これらの成分は多量に用いると、得られるポリマーが架橋構造を持ち、熱可塑性を喪失する場合があり、たとえ熱可塑性であっても部分的に高度に架橋構造を持ったミクロゲルが生じ、製膜性が悪化したり、フィルムにしたときフィッシュアイなどの欠点となる恐れがある。従って、これら多官能性成分が、ポリマー中に含まれる割合は、ポリマーの化学的性質、物理的性質を大きく左右しない程度の量に制限される。
また、上記(b)においては、非脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸等があげられ、また、非脂肪族ジオールとしては、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等があげられる。
B層は、上記ポリ乳酸を主成分として含有する。ここで、B層がポリ乳酸を主成分とするとは、B層中の全成分の合計100質量%において、ポリ乳酸を50質量%以上100質量%以下含有することを意味する。また、C層もポリ乳酸を主成分として含有する。主成分の意味は、B層と同様である。
また、B層、C層は、ポリ乳酸以外の樹脂(以下、「他樹脂」と称する。)を含んでもよい。他樹脂を含む場合、含有量は透明性の観点から、該他樹脂を含む層中の全成分の合計100質量%のうち30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。この他樹脂の例としては、特に限定されないが、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルが好適に用いられる。ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルとは、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸の重合体、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジオールからなるポリエステル等があげられる。ここで使用されるヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールは、それぞれ上記と同様のものを使用できる。
さらに、上記のポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルには、上記と同様の少量の共重合単位をさらに含んでもよく、また少量の鎖延長剤残基(例えば、乳酸残基または/及びイソシアネート残基)を含んでもよい。
上記の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールからなるポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルを製造するには、直接法、間接法等公知の方法を採用することができる。例えば、直接法は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、これらの成分中に含まれる、あるいは重合中に発生する水分を除去しながら、直接重合して高分子量物を得る方法である。間接法は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとをオリゴマー程度に重合した後、上記ポリ乳酸の場合と同様、少量の鎖延長剤(例えば、乳酸又は/及びイソシアネート)を使用して高分子量化する製造方法である。
上記の他樹脂の重量平均分子量は、3万〜25万が好ましく、5万〜15万がより好ましい。重量平均分子量が3万より小さい場合、耐熱性やポリ乳酸に添加した場合の親和性に劣り、AC剤との密着性の向上につながらないばかりか、経時的にフィルム表面にブリードするなどの不具合を生じさせる場合がある。また、25万より大きいと、溶融粘度が高く、ポリ乳酸と混合して溶融する際に粘度差よる混合性の低下や押出成形性の低下が起こる場合がある。
また、ポリ乳酸への耐衝撃性、耐寒性付与の点から、他樹脂は、ガラス転移点(Tg)が0℃以下であることが好ましく、−30℃以下であることがより好ましい。これらの点から、B層、C層に用いられる、特に好適な他樹脂成分は、例えばポリエチレンスベレート、ポリエチレンセバケート、ポリエチレンデカンジカルボキシレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリブチレンサクシネートアジペートやこれらの共重合体である。
本発明においては、上記他樹脂と共に、又は他樹脂に代えて、ポリ乳酸と他樹脂とのブロック共重合体を使用することもできる。ポリ乳酸と他樹脂とのブロック共重合体は、ポリ乳酸と他樹脂との一部エステル交換生成物や、鎖延長剤を用いて得られる鎖延長剤残基を含んだ生成物などを含む。
ポリ乳酸と他樹脂とのブロック共重合体は、任意の方法で調整することができる。例えば、ポリ乳酸又は他樹脂のいずれか一方を別途重合体として準備しておき、この重合体の存在下に他方の構成モノマーを重合させる方法、予め準備した他樹脂成分の存在下でラクチドの重合を行うことにより、ポリ乳酸と他樹脂のブロック共重合体を得る方法が挙げられるが、他樹脂の存在下でラクチドの重合を行う方法がより好ましい。この場合、他樹脂を共存させる点が相違するだけで、ラクチド法でポリ乳酸を調整する場合と同様に重合を行うことができるほか、ラクチドの重合が進行すると同時に、ポリ乳酸と他樹脂の間で適度なエステル交換反応が起こり、比較的ランダム性が高い共重合体が得られる。出発物質として、ウレタン結合を有する脂肪族ポリエステルウレタンを用いた場合には、エステル−アミド交換も生成する。

本発明の積層体は、無機層(A層)、ポリ乳酸を主成分とし、非晶性の層(B層)、及びポリ乳酸を主成分とし、結晶性の層(C層)とを少なくとも有する。そして積層構成について、A層が少なくとも一方の最外層であることが重要である。また、A層とB層とは接していることが重要である。ここでA層とB層とが接しているとは、A層とB層との間に他の層が介すことなく、A層とB層とが直接積層されていることを意味する。
そして、より好ましくは、A層、B層、C層、B層をこの順に有する積層体である。B層は非晶性の層であるため、優れたヒートシール性を有することから、A層、B層、C層、B層をこの順に有する積層体とすることで、積層体にヒートシール性を付与することができる。なお、A層、B層、C層、B層をこの順に有する積層フィルムにおいては、B層とC層との間に接着層など他の層を介しても構わないが、他の層を介すことなく、A層、B層、C層、B層をこの順に直接積層した積層体であることが好ましい。

A層は、A層表面を、しきい値を1.00nmとして原子間力顕微鏡で測定した際に、グレインサイズが1nm以上、25nm以下であることが重要である。グレインサイズを1nm以上、25nm以下とすることにより、A層を構成する無機物のグレインとB層の間で十分な接着力を発現するだけの接点を形成することが可能となり、A層を積層体上に強固に接着させることができる。A層を構成する無機物のグレインサイズが25nmより大きいと、A層とB層の間の接点の数が少なくなるため、A層が剥離しやすくなり十分なガスバリア性を発現できない。グレインサイズが1nmより小さい場合、A層中におけるグレインの結晶成長が不十分であることを意味しており、十分なガスバリア性が得られない。

B層は、非晶性の層であることが重要である。B層を介することなく結晶性のC層上に直接A層を形成させることも可能であるが、B層が非晶性であることにより、該B層と接したA層を積層体上に強固に接着させることが出来る。
C層は、結晶性の層であることが重要である。C層が結晶性の層であることにより、包装材料として使用する際に必要な弾性率などのフィルムの機械特性や耐熱性を有する積層体とすることが出来る。
ここで、層が結晶性であるとは、特定の層について示差走査熱量計によって昇温した時に、吸熱ピーク(融点(Tm))が観察されることを意味する。また、層が非晶性であるとは、同様の方法によって測定した際に、結晶性に該当しない場合を意味する。詳細な測定条件は後述する。
B層は、結晶性の制御の観点、つまりB層を非晶性の層とする観点から、B層中のポリ乳酸は非晶性ポリ乳酸であることが好ましいが、B層中のポリ乳酸は非晶性ポリ乳酸と結晶性ポリ乳酸を併用してもよい。B層中のポリ乳酸は、非晶性ポリ乳酸の質量%:結晶性ポリ乳酸の質量%=60:40〜100:0であることがより好ましく、90:10〜100:0が特に好ましい。B層中の結晶性ポリ乳酸の含有割合がこの範囲を超えてしまうと、A層とB層の接着性が低下してしまい、十分なガスバリア性を維持できなくなる。
ここで非晶性ポリ乳酸とは、ポリ乳酸の原料ペレットに120℃4時間の熱処理を施した後、示差走査熱量計によって昇温した時に、吸熱ピーク(融点(Tm))が観察されないものを指す。また、結晶性ポリ乳酸とは、同様の方法によって測定した際に、吸熱ピークが観察されるものを指す。詳細な測定条件は後述する。

さらに、非晶性ポリ乳酸中のD−乳酸単位とL−乳酸単位の割合は、D−乳酸単位とL−乳酸単位のモル比が10:90〜90:10が好ましい。
ポリ乳酸は、D−乳酸単位とL−乳酸単位の比率によって結晶性が変わり、一般に、D−乳酸単位またはL−乳酸単位中にL−乳酸単位またはD−乳酸単位がランダムに含まれている場合には、その割合によって非晶性または半結晶性となり、D−乳酸単位またはL−乳酸単位のモル比が高くなるほど、非晶性から半結晶性、結晶性となる。そのため、非晶性ポリ乳酸中のD−乳酸単位またはL−乳酸単位の割合がモル比で10未満の場合(つまり、L−乳酸単位またはD−乳酸単位の割合がモル比で90を超える場合)、ポリ乳酸が半結晶性または結晶性となる場合があり、B層に使用する場合にA層との十分な接着性が得られない恐れがある。
また、結晶性ポリ乳酸中のD−乳酸単位またはL−乳酸単位の割合がモル比で6を超える場合(つまり、L−乳酸単位またはD−乳酸単位の割合がモル比で94未満の場合)、十分な結晶性が得られずB層に使用する場合に、結晶性ポリ乳酸の含有によるフィルム同士のブロッキング抑制の効果を十分に発現しない場合がある。また、ポリ乳酸中のD−乳酸単位またはL−乳酸単位の割合がモル比で0.5未満の場合(つまり、L−乳酸単位またはD−乳酸単位の割合がモル比で99.5を超える場合)、物性においては問題ないものの、樹脂の製造において工業的に高コストとなることがある。

C層は、結晶性の層であることが重要であり、非晶性ポリ乳酸及び結晶性ポリ乳酸を含有する層であることが好ましい。C層を結晶性の層とするためには、C層中の非晶性ポリ乳酸及び結晶性ポリ乳酸の含有割合は、非晶性ポリ乳酸の質量%:結晶性ポリ乳酸の質量%=30:70〜0:100が好ましく、15:85〜0:100がより好ましい。このような含有割合とすることにより、包装材料として使用する際に必要な弾性率などのフィルムの機械特性や耐熱性を有する積層体とすることが出来る。
さらに、結晶性ポリ乳酸におけるD−乳酸単位とL−乳酸単位の割合は、D−乳酸単位とL−乳酸単位のモル比が0.5:99.5〜6:94、又は、99.5:0.5〜94:6が好ましい。結晶性ポリ乳酸中のD−乳酸単位またはL−乳酸単位の割合がモル比で6を超える場合(つまり、L−乳酸単位またはD−乳酸単位の割合がモル比で94未満の場合)、十分な結晶性が得られず積層体の力学物性が劣る場合がある。

B層とC層の積層比は、B層合計厚み:C層厚みの比率が1:3〜1:1と設定することが好ましく、1:3〜4:6とすることがより好ましい。B層の厚みは0.5μm〜3.0μmとすることが好ましく、0.5μm〜2.0μmとすることがより好ましい。A層と接しているB層の厚みが0.5μm未満であると、ガスバリア層であるA層とB層の接着性が劣るため好ましくなく、3.0μmを超えるとB層上にA層を設けるための蒸着等の熱が加わる過程でA層が熱変形しガスバリア性が劣ることがある。

B層及びC層は、フィルム加工時の滑り性や、蒸着加工時のロール走行性の付与の観点から、粒子状滑剤を含有することが好ましい。粒子状滑剤としては特に制限されないが、例えば、シリカ等の二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、アルミナ等があげられ、包装用途として食品包装に使用する場合の安全性、コストの観点から、シリカ等の二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、二酸化チタン、カオリンが好ましく、シリカ等の二酸化ケイ素であることが特に好ましい。更に、連鎖状の二酸化ケイ素粒子を用いると、フィルム製造時や、アンカーコート、薄膜形成工程時の粒子の脱落も少なく好ましい。上記粒子系滑剤は上記のうち1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
上記の粒子状滑剤の含有量は、粒子状滑剤を含有する層の全成分100質量部に対し、0.01〜6質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましく、0.01〜1質量部が更に好ましい。0.01質量部より少ないと十分な滑り性を発現できない場合があり、6質量部より多いと、製造時や加工工程において粒子の脱落が起こる恐れがあるほか、透明性が低下する場合がある。

次に、本発明の積層体の好ましい製造法について説明する。
本発明の積層体の製造法としては、予めB層とC層とを有し、A層を有さないフィルム(以下、B層とC層とを有し、A層を有さないフィルムを、単に積層フィルムという)を製造した後、真空蒸着等により、B層上にA層を形成することが好ましい。B層とC層よりなる積層フィルムの製造方法としては、各層の樹脂を共押出により一体化して積層する方法、各層をそれぞれ製膜した後に直接または接着層を介してラミネートする方法、単膜のキャストシートまたはその延伸フィルムに他の層を溶融押出積層する方法など、一般の積層フィルムの製造方法を採用することができるが、製造工程の簡易性から、共押出法が特に好ましい。以下、この共押出法による積層化の例について説明する。
まず、B層、C層を形成する原料として、ポリ乳酸や粒子状滑剤等を、それぞれ共押出積層用押出装置に供給する。無機系粒子等を添加する場合、押出装置に供給する際に樹脂と粒子状滑剤等の添加剤を添加する方法、予め樹脂と粒子状滑剤等の添加剤を別の押出機でストランド形状に押し出してマスターペレットを作製し、マスターペレット単独でまたはマスターペレットと添加剤を含まない樹脂を混合して押出装置に供給する方法のいずれの方法を採用してもよいが、樹脂と添加剤を均一に混合させる点からは、マスターペレットを予め作製することが好ましい。また、各原料は、押出機投入前に充分に乾燥したものを押出装置で溶融するか、押出装置投入後にベント等の方法により水分を除去しながら溶融する。溶融温度は、ポリ乳酸が、D−乳酸構造とL−乳酸構造の組成比によって融点が変化することや、ポリ乳酸に混合する脂肪族ポリエステルの融点を考慮して適宜選択することができるが、通常は、150〜250℃の温度範囲で溶融すればよい。
次に、積層する層の数に合わせて、2又は3台以上のマルチマニホールド又はフィードブロックを用いて積層化し、スリット状のダイから2層以上の溶融シートとして押し出す。その際、それぞれの層の厚みは押出機の吐出量調節により設定することができる。
次いで、このダイから押し出された溶融シートを、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下に急冷固化し、実質的に非晶質の未配向シートを得る。この際、シートの平滑性や厚さ班を向上させる目的で、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高める事が好ましく、本発明においては、静電印加密着法及び/又はエアーによる密着法が好ましく用いられる。
このようにして得られた未延伸のシートは、縦延伸工程、横延伸工程、熱処理工程を施すことによって、二軸延伸した積層フィルムを得ることができる。
逐次二軸延伸延伸の場合は、上記延伸工程を、縦延伸、横延伸、熱処理の順で行えばよく、同時二軸延伸の場合は、縦横同時二軸延伸工程、熱処理工程の順で行うことにより、二軸延伸した積層フィルムを得ることができる。
縦延伸工程の延伸温度は、特に限定されないが、続いて行われる横延伸工程における横延伸性から、「B層を構成する樹脂のTg+5℃」以上、「C層を構成する樹脂のTg+40℃」以下が好ましく、「C層を構成する樹脂のTg+10」℃以上、「C層を構成する樹脂のTg+30℃」以下であることがより好ましい。
ここでB層を構成する樹脂のTgとは、前記積層フィルムのB層を削りとり、その5mgをセイコー電子(株)製示差走査熱量計RDC220型を用いて、240℃まで昇温し、240℃で5分間保持した後、液体窒素で急冷し、再度室温より昇温速度20℃/分で昇温してTgを測定した。なお、上記測定によりTgが複数観測された場合は、最も高温のTgを「B層を構成する樹脂のTg」とした。また、C層を構成する樹脂のTgとは、本発明の積層体中のB層をトルエンにより除去した後、同様に示差走査熱量計を用いて測定した。
また、縦延伸工程の延伸倍率は、特に限定されないが、続いて行われる横延伸工程における横延伸性及びフィルムの強度向上の点から、1.5倍〜5.0倍であることが好ましく、2.0倍〜4.5倍であることがより好ましい。
なお縦延伸工程では、延伸は一段階で行っても良いが二段階以上の多段階で行っても良い。多段階で延伸を行う場合、各延伸工程における倍率は適宜選択すればよく、全縦延伸工程での総延伸倍率を1.5〜5.0倍、より好ましくは2.0〜4.5倍とすることが好ましい。
横延伸工程の温度は、特に限定されないが、フィルムの強度向上、寸法安定性、平面性の点から、「C層を構成する樹脂のTg+10℃」以上、「C層を構成する樹脂のTg+60℃」以下が好ましく、更に好ましくは「C層を構成する樹脂のTg+10℃」以上、「C層を構成する樹脂のTg+50℃」以下である。
また、横延伸工程の横延伸倍率は、特に限定されないが、2.0倍〜6.0倍がフィルムの強度向上、寸法安定性、平面性の点から好ましく、製膜安定性の観点から、更に好ましくは、2.0倍〜5.0倍である。
縦横同時二軸延伸工程の場合は、上記縦延伸工程と同様の温度範囲が採用でき、延伸倍率は、上記縦延伸及び横延伸の倍率範囲が採用できる。
本発明において、熱処理工程は、2つ以上の熱処理ゾーンで行うことが好ましく、熱処理工程内の隣り合う2つのゾーンにおける熱処理温度の関係について、横延伸装置出口側のゾーンの温度が、「横延伸工程側のゾーンの温度+5℃」以上、「横延伸工程側のゾーンの温度+70℃」以下であることが好ましい。より好ましくは、隣り合う2つのゾーンにおいて、横延伸装置出口側のゾーンの温度が、「横延伸工程側のゾーンの温度+10℃」以上、「横延伸工程側のゾーンの温度+50℃」以下である。
最も横延伸装置出口側に近いゾーンの熱処理温度は、「C層を構成する樹脂のTg+50℃」以上、「C層を構成する樹脂のTm+20℃」以下であることが、B層の表面平均粗さを0.05〜1.0nmに制御する観点から好ましい。より好ましくは、「C層を構成する樹脂のTg+60℃」以上、「C層を構成する樹脂のTm+10℃」以下である。
また、本発明において横延伸工程と熱処理工程の間に冷却工程を有することが好ましい。冷却工程を設ける場合、冷却温度は、雰囲気温度として「C層を構成する樹脂のTg」以下であることが好ましく、温度の下限は冷却工程の効果の点からは制限されないが、製造設備の簡易性の観点から、25℃程度と考えられる。
また横延伸工程と熱処理工程の間に冷却工程を設ける場合には、該冷却工程における冷却時間は、1〜30秒であると横延伸工程及び熱処理工程で発生するフィルム横方向の収縮が抑制され、ボーイング量の抑制、フィルム横方向の特性の均一化の効果を発現できることから好ましく、更に好ましくは1〜10秒である。

ここまでは、積層フィルム(B層とC層を有し、A層を有さないフィルム)が2軸延伸フィルムの場合の製造方法を述べてきたが、本発明の効果は、積層フィルムが無延伸フィルムや1軸延伸フィルムといった2軸延伸フィルム以外の場合においても十分に得られる。つまり、積層フィルムの延伸の有無や有りの場合にその方法については、特に制限されない。しかしながら本発明において、積層フィルムを2軸延伸フィルムとすることで、本発明の目的とする無機層が強固に接着しガスバリア性に優れるとともに、延伸による分子鎖の2軸配向により弾性率や破断強度などの機械物性に優れた積層体を得ることができる。このような意味から、積層フィルムは、2軸延伸フィルムであることが好ましい。なお延伸による配向の度合いは面配向係数fnから見積もることができる。
つまり本発明の積層体においては、該積層体を構成する積層フィルムの面配向係数fnは、1.0×10−2以上2.5×10−2以下であることが好ましい。積層フィルムの面配向係数が1.0×10−2未満であると、弾性率や破断強度などの機械強度に劣るため、蒸着加工時などにフィルムが破断して加工が困難となる場合がある。また、面配向係数の上限については、特に限定されるものではないが、フィルムが限界破断する寸前の面配向係数が2.5×10−2であることから、これが上限と考えられる。
積層フィルムの面配向係数を1.0×10−2以上2.5×10−2以下にするには、縦延伸方向及び横延伸方向の延伸倍率を1.5倍以上にすることで達成できる。

本発明の積層体を100℃で5分加熱した際の熱収縮率は、−1.0%〜1.0%であることが好ましい。該熱収縮率は、より好ましくは0%〜1.0%である。熱収縮率が−1.0%〜1.0%の範囲外であると、積層体に2次加工を施す際の熱履歴により伸縮が起こり、A層が剥離してしまいガスバリア性が低下する場合がある。熱収縮率を制御する方法としては、原料の結晶性を調整する方法、延伸倍率を低倍率とする方法、延伸後の熱処理温度を調整する方法、フィルム製造時の熱処理時にフィルムに弛緩処理を施す方法があるが、制御が容易であること及び面内におけるフィルム物性の斑が少ないことから、熱処理温度の調整によることが好ましい。

次に、上記製造方法により得られた積層フィルムに対してA層を作成し、本発明の積層体を製造する方法について述べる。
B層とC層よりなる積層フィルムのB層表面に無機層(A層)を形成する方法としては、蒸着法が好ましく、蒸着法としては特に限定されないが、EB蒸着、誘導加熱蒸着、マグネトロンスパッタ法、CVD法等公知の方法があげられる。蒸着によって形成されるA層の厚みは、水蒸気に対するガスバリア性の向上の観点から、下限は20nmである。また、厚みの上限については特に限定されないが、ガスバリア性の向上のために必要な量を超えた厚みにする必要性は乏しく、経済的な厚みの上限は100nmである。ガスバリア性の向上と製造コストとの両立の観点から、A層の厚みは30〜70nmであることがより好ましい。
本発明において、B層とC層よりなる積層フィルムのB層表面に、真空蒸着法によりA層を形成する際には、真空蒸着装置内の真空度を0.1Pa〜1Paにすることが好ましい。圧力が0.1Paより低い場合、装置内の不純物の除去が徹底されるためB層上での無機物からなるグレインの成長が阻害されず、A層の表面のグレインサイズが25nmよりも大きくなってしまうことがある。圧力が1Paを越える場合、グレインサイズは小さくなるが不純物によりB層とA層の接着が阻害されてしまい、B層上にA層を形成できなくなることがある。

以下、この発明について実施例を用いてより詳細に説明するが、これらによりこの発明は何ら制限を受けるものではない。なお、実施例及び比較例における物性値等は、下記の方法によって測定、評価した。また、使用するポリ乳酸は、下記の方法で製造した。
(1)A層の表面のグレインサイズ(nm)
積層体の最外層のA層について、原子間力顕微鏡を用いて、場所を変えた10視野について測定を行った。
サンプルは、カンチレバーの走査方向に対して垂直方向(Y軸方向)がサンプルの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをピエゾにセットして測定する。得られた画像について、平均粒子径をOff−Line機能Particle Analysisにてしきい値(Threshold height)を1.0nmとして算出し、この値をグレインサイズとした。測定は、任意の10画像について行い、平均値をそのサンプルのグレインサイズとした。測定条件は下記のとおりである。
測定装置 :NanoScope III AFM
(Digital Instruments社製)
カンチレバー:シリコン単結晶
走査モード :タッピングモード
走査範囲 :5μm□
走査速度 :0.798Hz
(2)面配向係数fn
A層を形成する前のB層、C層よりなる積層フィルムについて、アッベ屈折計によってフィルム長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(それぞれNx、Ny、Nz)を測定し、次式で算出した。
fn=(Nx+Ny)/2−Nz
(3)熱収縮率(%)
積層体を長手方向、長手方向に対して90°の方向それぞれについて、10mm幅、250mm長に調整し、200mm長さの標線を記したサンプルに3gの加重を取り付けて熱風循環式オーブンで100℃にて5分間熱処理し、積層体の収縮率を下記式にて算出した。結果は、長手方向、長手方向に対して90°の方向の値の平均値とした。
熱収縮率(%)={1−(熱処理後の標線長さ)/(熱処理前の標線長さ)}×100
(4)B層及びC層の吸熱ピークTm(℃)、Tg(℃)
B層及びC層を測定する場合は、A層を形成する前のB層及びC層よりなる積層フィルムの段階で、それぞれの層の表面5mgを削り取り、それぞれの層の測定サンプルとした。ここで、内層に存在するC層は、積層フィルムのB層をトルエンにより除去した後に、C層を削り取り測定サンプルとした。
測定は、セイコー電子(株)製示差走査熱量計RDC220型を用いて、室温より昇温速度5℃/分で昇温した時の吸熱ピーク(Tm)を確認した。なお前述の通り、吸熱ピーク(Tm)が観察された場合を結晶性の層と判断し、それ以外の場合を非晶性の層と判断した。表においては、吸熱ピークが観察された場合を「○」、吸熱ピークが観察されなかった場合を「×」と記した。
また、ガラス転移温度(Tg)は、セイコー電子(株)製示差走査熱量計RDC220型を用いて、240℃まで昇温し、240℃で5分間保持した後、液体窒素で急冷し、再度室温より昇温速度20℃/分で昇温して測定した。
(5)水蒸気透過度(g/m/day)
積層体を温度38℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の水蒸気透過率測定装置(機種名、“パ−マトラン”(登録商標)W3/31)を使用してJIS K7129(2008)に記載のB法(赤外センサー法)に基づいて測定した。また、測定は積層体に水蒸気流を当て、反対側で検出する測定方式で、4回測定を行い、その平均値を当該積層体の水蒸気透過率とした。
(6)酸素透過度(cc/m/day/atm)
積層体を温度23℃、湿度0%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の酸素透過率測定装置(機種名、“オキシトラン”(登録商標)(“OXTRAN ”2/20))を使用して、JIS K7126−2(2006)に記載の電解センサ法に基づいて測定した。また、測定は積層体に水蒸気流を当て、反対側で検出する測定方式で、4回測定を行い、その平均値を当該積層体の酸素透過度とした。
(7)A層B層間の接着強度測定(g/15mm)
積層体のA層表面にポリウレタン系接着剤を用いて無延伸プロピレンフィルム(CPP)(東レ合成フィルム(株)製T3931、60μm)を貼り合わせ、40℃で48時間エージングした。得られたサンプルから幅15mmの試験片を取り出し、下記条件で剥離試験を行った。剥離力曲線において、剥離開始後の上限値と下限値を読み取り、積層体のA層B層間の接着強度とした。
・剥離試験機: TENSILON(ORIENTEC社製 UCT−100)
・剥離角度: 180°
・剥離速度: 200mm/分
・チャート速度:20mm/分
・剥離方向: MD方向
・サンプル幅: 15mm
同じサンプルについて3本の試験片を採取し、同様の測定を3回行った。得られた値の平均値を接着強度とした。
本発明の製造例、実施例、比較例で用いた原料は下記の通りである。なお、製造例、実施例、比較例では下記の略称で表記することがある。
PLA−A
回転式真空乾燥機にて50℃で8時間乾燥した非晶性ポリL−乳酸(Nature Works製“Ingeo” 4060D;D体量=12mol%、Tg=58℃)。
PLA−B
回転式真空乾燥機にて120℃で4時間乾燥した結晶性ポリL−乳酸(Nature Works製“Ingeo”4032D;D体量=1.4mol%、融点=168℃、Tg=58℃)。
実施例1
B層を形成するための樹脂組成物としてPLA−Aを用い、220℃に加熱したφ90mmの押出機に、C層を形成するための樹脂組成物としてPLA−B99質量部に水澤科学社製アルミナシリケート粒子(シルトンJC20(平均粒径2μm))を1質量部添加した原料を用い、220℃に加熱したφ40mmの押出機に、それぞれ投入し、各押出機で可塑化した後、フィードブロックで1:8:1の積層比でB/C/B積層させ、400mmの口金よりフィルム状に押出し、25℃に設定した直径が600mmの回転しているキャストドラム上で静電印加キャスト法により冷却硬化させて実質的に非晶質な未延伸フィルムを得た。
この未延伸フィルムをロール式縦延伸機に導き、予熱温度70℃、延伸温度75℃で3.0倍縦延伸した後、テンター式延伸機に送り込み、予熱温度70℃、延伸温度75℃で3.0倍横延伸した後、テンターに近い側の熱処理ゾーンの温度を100℃、続く熱処理ゾーンの温度を160℃として熱処理をおこなった。
かくして得られた積層フィルムは、フィルム幅が800mmであった。
この積層フィルムを、フィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にセットして無機層(A層)を積層した。A層の積層は、真空蒸着装置内を0.13Paの減圧状態にした後に、フィルムを0℃の冷却金属ドラム上に走行させることにより行い、蒸着後に48時間のエージング処理を施すことにより、A層を有する積層体とした。蒸着はアルミニウム金属の加熱蒸発により行い、蒸着層形成面は積層フィルムの一方のB層表面とした。
かくして得られた積層体のA層表面のグレインサイズを測定したところ、表1に示すようにその値は25nm以下となっており、この積層体の水蒸気透過度、酸素透過度は、表1に示すように小さく、A層B層間の接着強度も良好であった。また熱収縮率も小さい値であった。
実施例2
フィードブロックでの積層比を1:9の積層比でPLA−AよりなるB層とPLA−BよりなるC層を積層させたほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
かくして得られた積層フィルムは、フィルム幅が800mmであった。
得られた積層フィルムを、真空蒸着装置内を0.99Paの減圧状態にして蒸着面をB層とした以外は実施例1と同様の方法で蒸着処理を行い、A層を有する積層体とした。この積層体のA層表面のグレインサイズ、水蒸気透過度、酸素透過度は、表1に示すように小さく、A層B層間の接着強度も良好であった。また熱収縮率も小さい値であった。
比較例1
実施例1において、真空蒸着装置内を0.08Paとした以外は同原料、同条件で製造した。かくして得られた積層体のA層表面のグレインサイズは表1に示すように25nmより大きく、A層B層間の接着強度も低いものであり、また水蒸気透過度、酸素透過度は実施例1と比較して劣るものであった。
比較例2
実施例1においてB層の原料をPLA−Bとしたほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。続いてこの積層フィルムに実施例1と同様の方法でA層を形成し、積層体を得た。かくして得られた積層体のグレインサイズは表1に示すように25nmより小さかったが、A層B層間の接着強度は低く、水蒸気透過度、酸素透過度も実施例1と比較して劣るものであった。
比較例3
実施例2において、真空蒸着装置内を0.03Paとした以外は同原料、同条件で製造した。かくして得られた積層体のA層表面のグレインサイズは表2に示すように25nmより大きく、A層B層間の接着強度も低いものであり、また水蒸気透過度、酸素透過度は実施例2と比較して劣るものであった。
実施例3
実施例1において、熱処理条件をテンターに近い側の熱処理ゾーンと続く熱処理ゾーンの温度ともに140℃として熱処理をおこなった以外は同原料、同条件で製造したが、B層/C層/B層からなる積層フィルムを作成する際に、横延伸後の熱処理温度を急激に上げるとボーイングと呼ばれるフィルム横方向で物性が弓状になる現象が顕著に現れ、部分的に平面性が悪化したため、熱処理温度を高温にすることができなかった。そのため、実施例1と同様の方法で得たA層を有する積層体のA層表面のグレインサイズ、水蒸気透過度、酸素透過度は、表1に示すように小さく、A層B層間の接着強度も良好であったが、熱収縮率は表1に示すように大きいものであった。
ここでボーイング現象とは、テンター内においてフィルムの両側端は把持手段により把持されているので、横延伸に伴う縦方向の収縮応力は把持手段によって拘束されている。これに対し、フィルム中央部分は把持手段による拘束力が比較的弱いので、上記収縮応力によって中央部分が移動する傾向がある。この傾向は、ただ単に常温状態のフィルムをテンター式熱処理装置で熱固定をする場合でも常温状態から熱固定する温度の温度差でも起こる。
実施例4
実施例1において、縦延伸後のフィルムをテンター式延伸機に送る前に回収し、実施例1と同様の方法でA層を有する積層体を製造した。かくして得られた積層体のA層表面のグレインサイズ、水蒸気透過度、酸素透過度は、表1に示すように小さく、A層B層間の接着強度も良好であったが、熱処理を行っていないため熱収縮率は表1に示すように大きいものであった。
Figure 2014073650

Claims (5)

  1. 無機層(以下、A層という)、ポリ乳酸を主成分とし、非晶性の層(以下、B層という)、およびポリ乳酸を主成分とし、結晶性の層(以下、C層という)を有する積層体であって、
    前記A層は、少なくとも一方の最外層であり、
    前記A層と前記B層とは接しており、
    前記A層の表面を、しきい値を1.00nmとして原子間力顕微鏡で測定した際に、グレインサイズが1nm以上、25nm以下であることを特徴とする、積層体。
  2. 前記A層、前記B層、前記C層、前記B層をこの順に有することを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
  3. B層とC層を有し、A層を有さないフィルムを積層フィルムとした時に、該積層フィルムの面配向係数が1.0×10−2〜2.5×10−2であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層体。
  4. 100℃で5分加熱した際の熱収縮率が、−1.0%〜1.0%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、
    前記積層フィルムのB層表面に、真空度を0.1Pa〜1Paとして真空蒸着法によってA層を形成することを特徴とする、積層体の製造方法。
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