以下に添付図面を参照して、本発明に係る有価媒体処理装置について説明する。本実施形態では、本発明に係る有価媒体処理装置を含む貨幣処理システムを利用して、硬貨、紙幣、小切手等の有価証券を含む有価媒体の処理を行う場合を例に説明することとする。なお、本実施形態に係る有価媒体処理装置は、損傷や汚損の激しい有価媒体や紙幣の旧券等のバージョンが古い有価媒体等を処理対象とすることができるが、以下の具体的な処理例では損傷した紙幣である損券を処理対象として説明する。
(貨幣処理システム全体の概要)
まず、本実施形態に係る有価媒体処理装置を含む貨幣処理システムについて、図1及び図2を参照しながら説明する。図1に示すように、貨幣処理システム1は、有価媒体処理装置500の他に、バラ紙幣処理装置100、束紙幣処理装置200、バラ硬貨処理装置300、包装硬貨処理装置400、操作表示部600及びプリンタ700を含んで構成されている。図1に示すように、バラ紙幣処理装置100、束紙幣処理装置200、バラ硬貨処理装置300、包装硬貨処理装置400及び有価媒体処理装置500は並列に配置され一体的に設けられている。
ここで、バラ紙幣処理装置100及び束紙幣処理装置200は、これらの間で紙幣が行き来できるように互いに接続されている。また、バラ硬貨処理装置300及び包装硬貨処理装置400も、これらの間で硬貨が行き来できるように互いに接続されている。また、バラ硬貨処理装置300及び包装硬貨処理装置400の上面に、各種情報を入力するための入力装置でありかつ各種情報を表示画面に出力するための出力装置でもある操作表示部600と、プリンタ700とが設置されている。なお、図1では、1台の操作表示部600のみが設けられているが、例えば入出力内容に応じて使い分けられるように2台以上の操作表示部600を設ける構造であってもよい。
バラ紙幣処理装置100は、その内部に、バラ紙幣を金種別に収納できるようになっており、当該バラ紙幣処理装置100を利用してバラ紙幣の入金処理や出金処理を行うことができるようになっている。なお、バラ紙幣処理装置100の機体内には、図2に示すように、紙幣の識別を行う識別部102が設けられており、この識別部102によりバラ紙幣の金種、正損、真偽等の識別を行うようになっている。
バラ紙幣処理装置100では、識別部102による金種や正損等の識別結果に基づいて紙幣の処理が行われる。このため、バラ紙幣処理装置100に収納される損券は、識別部102による識別が可能な、すなわち機械受付可能な損券である。具体的には、識別部102によって、券種(金種及び新旧に関する種類が特定される区分け)等の識別はできたものの、損傷や汚れの程度から市場での流通には適さない損券がバラ紙幣処理装置100内に収納される。これに対して、損傷や汚れの程度が甚だしく識別部102によって券種等を識別できない損券、いわゆる機械受付不可能な損券は、バラ紙幣処理装置100から排出され、後述のごとく有価媒体処理装置500にて処理される。
束紙幣処理装置200の内部には束紙幣形成部(図示せず)が設けられており、バラ紙幣処理装置100から所定の枚数(例えば、100枚)のバラ紙幣が束紙幣処理装置200に送られると、当該束紙幣形成部により束紙しゅうのうすること幣が形成されるようになっている。束紙幣形成部により形成された束紙幣は束紙幣処理装置200から機体外に投出されるようになっている。
バラ硬貨処理装置300は、その内部に、バラ硬貨を金種別に収納できるようになっており、当該バラ硬貨処理装置300を利用してバラ硬貨の入金処理や出金処理を行うことができるようになっている。また、包装硬貨処理装置400の内部には包装硬貨形成部(図示せず)が設けられており、バラ硬貨処理装置300から所定の枚数(例えば、50枚)のバラ硬貨が包装硬貨処理装置400に送られると、当該包装硬貨形成部により包装硬貨が形成されるようになっている。包装硬貨形成部により形成された包装硬貨は包装硬貨処理装置400から機体外に投出されるようになっている。
また、バラ紙幣処理装置100において、損傷や汚れが甚だしい損券や、小切手等の紙幣以外の有価媒体については、バラ紙幣処理装置100の機体内に投入しても、このバラ紙幣処理装置100の内部に収納することができず、機体外に排出されてしまう。このような、バラ紙幣処理装置100で受け付けることができない有価媒体は有価媒体処理装置500に投入し、この有価媒体処理装置500の機体内に収納するようになっている。
図2は、図1に示す貨幣処理システム1の機能ブロック図である。図2に示すように、貨幣処理システム1は、図1に示すバラ紙幣処理装置100、束紙幣処理装置200、バラ硬貨処理装置300、包装硬貨処理装置400、有価媒体処理装置500、操作表示部600及びプリンタ700の他に、記憶装置であるROM(Read Only Memory)804、RAM(Random Access Memory)806及び記憶部808と、操作員のID情報の入力装置であるIDカードリーダ810と、完了指令受付手段820と、完了指令後の許可指令を受け付ける許可指令受付手段822と、通信部802と、以上の各構成部を制御する制御部800とを有している。
制御部800は、通信部802を介して、ホストコンピュータ等の外部装置との間で通信を行うことができる。また、ROM804、RAM806及び記憶部808には、貨幣処理システム1の設定情報や、貨幣処理システム1を構成する各装置における貨幣の処理状況や在高に関する情報等が記憶される。また、IDカードリーダ810では、操作員が所持するIDカードの読み取りを行う。制御部800は、IDカードリーダ810によって読み取られたIDカードのID情報に基づいて、操作員の権限等を確認する。操作表示部600は例えばタッチパネルからなり、操作員が貨幣処理システム1の各装置に対して様々な指令を与える入力装置として機能するとともに、貨幣処理システム1を構成する各装置における貨幣の処理状況や在高に関する情報等を表示する出力装置としても機能する。また、プリンタ700により、貨幣処理システム1を構成する各装置における貨幣の処理状況や在高に関する情報等が印字されるようになっている。また、取引の完了指令を受け付ける完了指令受付手段820と、この完了指令受付手段820による完了指令受付後に損券を投入可能とする許可指令を受け付ける許可指令受付手段822とは、バラ紙幣処理装置100から排出された損券を有価媒体処理装置500に投入するタイミングを指定するために利用される。
(有価媒体処理装置の構造)
次に、貨幣処理システム1を構成する有価媒体処理装置500について説明する。有価媒体処理装置500は、損傷度合いや汚損が激しく装置で受付不可能である紙幣(損券)、現在発行されている紙幣よりも発行された年代が古い紙幣(旧券)、小切手等の有価媒体を処理する装置であり、前述したように図1に示すバラ紙幣処理装置100に収納されることなく機体外に排出される損券や小切手等の有価媒体を処理するために利用される。
有価媒体処理装置500の構造について図3を用いて説明する。なお、図3では、図面左側の側面が有価媒体処理装置500の前面となっており、図面右側の側面が有価媒体処理装置500の背面となっている。
図3に示すように、有価媒体処理装置500には、有価媒体を機体内に投入するための投入部10、及び機体内に収納された新券等を機体外に投出するための投出部60が設けられている。ここで、「有価媒体」とは、損券や旧券等を含む紙幣と、紙幣以外の特定の有価証券とを含むものである。また、「特定の有価証券」とは、小切手や手形等の予め設定された種類の有価証券のことをいう。これらの投入部10や投出部60は、有価媒体処理装置500の機体前面(図3における左側の側面)に設けられている。また、投入部10には繰出機構12が設けられており、操作員によって投入部10に束状態で投入された有価媒体は、この繰出機構12により1枚ずつ機体内に繰り出されるようになっている。また、図3に示すように、有価媒体処理装置500の機体内には搬送部14が設けられており、投入部10から繰出機構12により1枚ずつ繰り出された有価媒体は、搬送部14により1枚ずつ搬送されるようになっている。
また、繰出機構12下流の搬送部14には撮像部16が設けられている。この撮像部16は、有価媒体処理装置500の機体内に投入された有価媒体を撮像して画像データを取得するようになっている。また、搬送部14には一時保留部20が設けられており、有価媒体処理装置500の機体内に投入された有価媒体は、一時保留部20に一時的に保留されるようになっている。一時保留部20は、有価媒体をテープに挟んで巻き取るテープ巻取方式のものである。より具体的には、一時保留部20は、正逆両方向に回転可能なドラム20aを有しており、このドラム20aによって一対のテープを巻き取ったり送り出したりすることができる。これにより、搬送部14から一時保留部20に送られた有価媒体は、この一対のテープの間に挟まれた状態で1枚ずつ順次ドラム20aにより巻き取られて収納されるようになっている。また、ドラム20aを逆転させると、巻き取られた有価媒体が1枚ずつ繰り出されて、搬送部14に送り出されるようになっている。
また、有価媒体処理装置500の機体内には、小切手や手形等の特定の有価証券を収納する特定有価証券収納部30と、損券や旧券を収納する損券収納部40、42とがそれぞれ設けられている。より具体的には、特定有価証券収納部30は、第1の収納部30a、第2の収納部30b及び第3の収納部30cの3つの収納部から構成されている。第1の収納部30aには、貨幣処理システム1が設置されている銀行と同じ銀行における他の支店で発行された小切手等が収納されるようになっている。また、第2の収納部30bや第3の収納部30cには、貨幣処理システム1が設置されている銀行とは異なる銀行で発行された小切手等が収納されるようになっている。例えば、第2の収納部30bには、貨幣処理システム1が設置されている場所から比較的近い場所で発行された小切手等が収納され、第3の収納部30cには、貨幣処理システム1が設置されている場所から比較的遠い場所で発行された小切手等が収納される。特定有価証券収納部30の各収納部30a、30b及び30cは集積方式の収納部であり、搬送部14からこれらの収納部30a、30b及び30cに送られた小切手等は、既に収納部30a、30b、30cに収納されている小切手等の上に積み重ねられるようにして収納される。
損券収納部40、42には、損券や旧券が収納される。ここで、損券収納部40は集積方式の収納部であり、搬送部14から損券収納部40に送られた損券や旧券は、既に損券収納部40に収納されている損券や旧券の上に積み重ねられるようにして収納される。一方、損券収納部42はテープ巻取方式の収納部である。より具体的には、損券収納部42は、一時保留部20と同様に、正逆両方向に回転可能なドラム42aを有している。そして、搬送部14から損券収納部42に送られた損券や旧券は、この一対のテープの間に挟まれた状態で1枚ずつ順次ドラム42aにより巻き取られて収納されるようになっている。また、ドラム42aを逆転させると、巻き取られた損券や旧券が1枚ずつ繰り出されて、搬送部14に送出されるようになっている。
なお、損券収納部40、42に収納される損券には、損傷の程度や修復の必要性について種々の状態の紙幣が含まれている。例えば、後に修復作業が必要となる損券は、集積方式の損券収納部40に収納される。ここで、修復の必要な損券とは、例えば、破れたものや一部が欠損したものであり、修復を行った上で中央の金融機関等に持ち込むものを言う。
有価媒体処理装置500では、図3に示すように、小切手等の特定の有価証券を収納する特定有価証券収納部30は、損券や旧券を収納する損券収納部40、42の上方に設けられ、また、一時保留部20は特定有価証券収納部30や損券収納部40、42の上方に設けられる構造となっている。
また、有価媒体処理装置500の機体内には、新券を収納する新券収納部50が設けられている。より具体的には、新券収納部50は、第1の収納部50a、第2の収納部50b、第3の収納部50c及び第4の収納部50dからなる4つの収納部から構成されている。第1の収納部50aには新券の1万円札が、第2の収納部50bには新券の千円札が、第3の収納部50cには新券の五千円札がそれぞれ収納されている。また、第4の収納部50dに収納される新券の金種については操作員が選択できるようになっている。これらの各収納部50a、50b、50c、50dにはそれぞれ繰出機構52a、52b、52c、52dが設けられており、収納部50a、50b、50c、50dに収納されている新券は、それぞれ繰出機構52a、52b、52c、52dにより搬送部14に1枚ずつ繰り出されるようになっている。なお、新券収納部50に収納される「新券」とは、中央銀行から銀行等の金融機関に配送され、未だ市場流通していない官封券のことをいう。この新券収納部50は、図3に示すように、特定有価証券収納部30や損券収納部40の機体前方(図3における左側)に設けられている。
投出部60は搬送部14に接続されており、搬送部14によって搬送された新券等の有価媒体は当該投出部60で積み重ねるようにして投出される。また、投出部60には羽根車62が設けられており、搬送部14から羽根車62に送られた新券等の有価媒体は、羽根車62を形成する一対の羽根の間に挟まれた状態で当該羽根車62が図3における反時計回りの方向に回転することにより投出部60に送られる。このような羽根車62が設けられていることにより、投出部60に集積される新券等の有価媒体を整列させることができる。また、投出部60にはシャッタ61aが設けられており、操作員は、このシャッタ61aが開放状態となったときに、投出部60に集積された新券等の有価媒体を取り出すことができる。また、投出部60には抜き取り検知部61bが設けられており、投出部60に集積された新券等の有価媒体が当該投出部60から抜き取られたことを検知できるようになっている。
図3に示すように、有価媒体処理装置500の機体内で有価媒体を搬送する搬送部14は、第1の搬送部14a及び第2の搬送部14bから構成されている。ここで、第1の搬送部14aは、投入部10から機体内に投入された有価媒体を、一時保留部20、特定有価証券収納部30、損券収納部40に搬送するようものである。一方、第2の搬送部14bは、新券収納部50に収納された新券を投出部60に搬送するものである。ここで、第1の搬送部14aにおける有価媒体の搬送路と、第2の搬送部14bにおける新券の搬送路とは、互いに独立して設けられている。すなわち、第1の搬送部14aは図3に示す仮想線Lの右側に設けられており、第2の搬送部14bは仮想線Lの左側に設けられている。第1の搬送部14a及び第2の搬送部14bは、接続箇所14pで接続されているが、それ以外の箇所では互いに独立したものとなっている。
また、搬送部14における第2の搬送部14bには簡易識別部64が設けられている。簡易識別部64は、新券収納部50から第2の搬送部14bに繰り出された新券の金種のみを識別するようになっている。また、有価媒体処理装置500の前面(図3における左側の側面)には扉18が設けられており、特定の権限を有する者が扉18を開けて有価媒体処理装置500の機体内部にアクセスできるようになっている。この扉18を開くことにより新券収納部50に新券を補充したり新券収納部50から新券を取り出したりすることができるようになっている。
有価媒体処理装置500の前面には複数の現外ボックス71〜74が設けられている。有価媒体処理装置500は、図1に示すバラ紙幣処理装置100に収納されることなく機体外に排出された損券を収納するものであるが、有価媒体処理装置500内にも収納できないほど損傷が激しい場合には、この損券は前面に設けられた現外ボックス71〜74に収納される。各現外ボックス71〜74には、センサ(図示省略)が設けられており、損券の出し入れを検出できるようになっている。これにより、後述する入金処理で損券を入金データとして登録した後、所定時間内にいずれかの現外ボックス71〜74へ損券が投入されたことを検出した場合に、データ登録された損券が現外ボックス71〜74へ投入されたものと認識して管理することができる。また、操作員が、入金データの登録時に、現外ボックスへ投入すべき損券であると判断して操作表示部600でこれを示す操作を行うと、制御部800によってこの損券を投入する現外ボックス71〜74が自動的に決定され、操作表示部600に表示されるようになっている。操作員が、損券を指定された現外ボックス71〜74へ投入すると、これがセンサによって検出され、有価媒体処理装置500では、入金データに登録された損券の収納先を現外ボックス71〜74として管理する。
(投入部の構造)
次に、有価媒体処理装置500における有価媒体の投入部10で、機体内部へ繰り出される有価媒体の位置を規制する媒体位置決め装置1000について説明する。図4は、媒体位置決め装置1000の外観を示す斜視図である。媒体位置決め装置1000では、ステージ1001上に、装置に投入される有価媒体が載置される。そして、このステージ1001の両側には、有価媒体のサイズに合わせて移動可能な規制ガイド1002及び1003が設けられており、この規制ガイド1002及び1003によってステージ上の有価媒体の位置決めを行うようになっている。規制ガイド1002及び1003は、機体内部へ繰り出される有価媒体を、繰り出し方向と垂直な方向から規制する。このとき、各規制ガイド1002及び1003に設けられたセンサ1006を利用して、有価媒体のサイズに合わせて各規制ガイド1002及び1003の位置を自動的に調整することもできるが、これについては後述する。
図5は、媒体位置決め装置1000の構造及び動作の概略を説明する模式図である。規制ガイド1002及び1003には、それぞれ、相互に相手側に向かって突き出るようにラック1004が設けられている。そして、この2つのラック1004と噛み合うように1つのピニオン1005が設けられている。このピニオン1005が回転することにより2つのラック1004が移動する。そして、規制ガイド1002及び1003を同量だけ接近又は離間するように移動させて、有価媒体のサイズに合わせた位置で停止する。
図5(A)は、規制ガイド1002及び1003のガイド間の距離が最も広い初期位置を示している。この初期位置から、図4に示すステージ1001上に載置された有価媒体のサイズに合わせて、規制ガイド1002及び1003を両側から同じ距離だけ移動させてガイド間の距離を狭める。これにより、有価媒体の位置を、図5(B)に示すように、ステージ1001の中央に位置決めする。なお、規制ガイド1002及び1003は、繰り出し時の有価媒体の位置決めを行うと共に、繰り出し方向と垂直な方向への有価媒体の動きを規制する機能を有している。このように、有価媒体の位置をステージ1001上の中央に位置決めできるので、繰出機構12による機体内部への有価媒体の繰り出しや、搬送部14による機体内での有価媒体の搬送を安定して行うことができる。
媒体位置決め装置1000は、各ガイドに設けた2つのラック1004に、1つのピニオン1005を噛み合わせて形成されているので、規制ガイド1002又は1003のいずれか一方を、手動で動かした場合でも、他方の規制ガイド1003又は1002を同量だけ移動させることができる。また、例えばモータ等の駆動装置(図示省略)を利用してピニオン1005を回転させれば、規制ガイド1002及び1003を、自動で移動させることもできる。このとき、エンコーダ等を利用してピニオン1005の回転数を検出すれば、規制ガイド1002及び1003の移動量を算出することができる。
有価媒体処理装置500では、例えば、規制ガイド1002及び1003を手動で移動させて、移動量からガイド間の距離を算出して、この距離が処理対象として指定された有価媒体のサイズと異なっている場合には、操作員にこれを報知して確認を促すことができるようになっている。また、規制ガイド1002及び1003が自動で移動する場合には、予め指定された有価媒体のサイズに合わせて規制ガイド1002及び1003が移動して停止する。例えば、処理対象と異なる有価媒体をステージ1001に載置しようとすると、ガイド間の距離と有価媒体のサイズが一致しないため、操作員は、処理対象紙幣の選択を誤ったことを認識することができる。
なお、有価媒体のサイズに合わせて、規制ガイド1002及び1003を移動させる方法は、各ガイドの移動量に基づいてガイド間の距離を調整する態様の他、規制ガイド1002及び1003に設けたセンサ1006を利用する態様であっても構わない。センサ1006によって、有価媒体の端部を検知して規制ガイド1002及び1003を停止させることにより、予め有価媒体の種類を指定しない場合でも、各有価媒体に合わせて規制ガイド1002及び1003の位置を調整することができる。
規制ガイド1002及び1003の位置を自動制御する場合に、初期位置から移動を開始して、ガイド間の距離が有価媒体のサイズに一致した時点で停止する態様の他、ガイド間の距離が有価媒体のサイズより所定値分だけ狭くなる位置まで移動させた後、ガイド間の距離が広がるように移動させて有価媒体のサイズに一致した時点で停止する態様であっても構わない。このように規制ガイド1002及び1003を、有価媒体のサイズより若干狭くなる位置まで一旦移動させることで、ガイドで規制された両端に対して中央部が膨らむように有価媒体が撓んで、規制ガイド1002及び1003で規制された両端部が揃うように有価媒体を整列させることができる。
また、規制ガイド1002及び1003を有価媒体のサイズより一旦狭めてから再度開く際には、有価媒体のサイズに合わせて停止させる態様の他、ガイド間の距離が一旦有価媒体のサイズより所定値分だけ広くなる位置まで開いてから再度閉じるように動作させて有価媒体のサイズに合わせて停止させる態様であってもよい。すなわち、規制ガイド1002及び1003の移動を、狭めて、拡げて、狭めるように制御して最終的に有価媒体のサイズに合わせて停止させてもよい。また、このように、ガイド間の距離を、有価媒体のサイズより一旦狭くしたり広くしたりする動作を1回だけ行う態様に限らず、所定回数繰り返す態様であっても構わない。
さらに、規制ガイド1002及び1003によって規制される有価媒体が載置されるステージ1001は、平坦な形状に限定されず、例えば、ガイド間の距離を狭めた際に、ステージ1001上に載置された複数の有価媒体の中央部が同じ方向に撓むようにステージ中央部が両端部より高くなるように形成されていてもよい。ステージ1001の形状を、有価媒体がステージ1001に密着した状態で既に若干撓んだ形状となるように形成することで、ガイド間の距離を狭めた際には、有価媒体は初期の撓みがさらに大きくなるように撓むので、全ての有価媒体を同じ方向に撓ませて、より確実に端部を揃えることができる。
その他、規制ガイド1002及び1003のガイド間の距離を狭める際には、有価媒体のサイズに合わせた位置で停止して、ここから一旦ガイド間の距離を広げてから、再度有価媒体のサイズに合わせる態様であってもよい。また、例えば、ある有価媒体ではガイド間の距離を有価媒体のサイズより一旦狭くする動作を行って、他の有価媒体ではガイド間の距離を有価媒体のサイズとしてそこから一旦広くする動作を行うというように、規制ガイド1002及び1003の動作を、有価媒体の種類に応じて設定する態様であっても構わない。
規制ガイド1002及び1003の移動については、両方のガイドを、同じ量だけ同時に移動させる態様に限定されるものではなく、片方ずつ移動させる態様であっても構わない。図6は、規制ガイド1002及び1003が、それぞれ独立して移動可能である場合の動作例を説明する図である。図6(A)に示す初期状態から、まず、同図上側に位置する一方の規制ガイド1002のみが矢印で示す方向へ移動して、有価媒体を下側に位置する他方の規制ガイド1003側へ移動させて当接させる。その後、規制ガイド1002は、初期位置に戻って、同図(B)の状態となる。なお、規制ガイド1002は、両方の規制ガイド1002及び1003のセンサ1006によって有価媒体が検出されたときに、ガイド間の幅が有価媒体のサイズに達したものと判定して停止し、初期位置に戻るようになっている。
続いて、図6(B)に矢印で示すように、両側から、規制ガイド1002及び1003を移動させることで、図6(C)に示すように、有価媒体をステージ1001の中央に位置決めする。この場合には、両方の規制ガイド1002及び1003のセンサ1006によって有価媒体を検出したときに両ガイドを停止してもよいし、規制ガイド1002によって有価媒体を規制ガイド1003に当接させた際のガイド間の距離から有価媒体のサイズが判明するので、このサイズに基づいて初期位置からの規制ガイド1002及び1003の移動量を算出して、この移動量だけ規制ガイド1002及び1003を移動させてもよい。
なお、規制ガイド1002及び1003に利用するセンサ1006としては、例えば、透過型のセンサを利用する。透過型のセンサを利用すれば、投光部と受光部の間で光を遮る有価媒体を検出することができる。
ただし、利用するセンサ1006の方式及び利用方法がこれに限定されるものではない。図7は、反射型センサ1006a及び透過型センサ1006bを、有価媒体の検出に利用する方法を説明する模式図である。図7(A)に示すように、透過型センサ1006bは、ステージ1001に有価媒体が無い場合及び光を透過する透明な媒体がある場合に投光部からの光を受けて受光部がON状態となり、不透明な媒体がある場合に投光部からの光が遮られてOFF状態となる。これに対して、反射型センサ1006aは、ステージ1001に不透明な有価媒体がある場合には投光部から照射されて有価媒体で反射された光を受けて受光部がON状態となり、有価媒体が無い場合にはOFF状態となる。また、反射型センサ1006aでは、ステージ1001に透明な媒体がある場合でも、この媒体が光を反射すればON状態となる。
有価媒体処理装置500で処理される紙幣や小切手等の有価媒体は不透明である。このため、図7(A)に示すように、反射型センサ1006a及び透過型センサ1006bでは、ステージ1001に有価媒体が無い状態と有価媒体が載置された状態との間でON、OFF状態が切り替わることで有価媒体を検出することができる。
有価媒体処理装置500では、有価媒体が搬送部14によって正常に搬送できないような損傷が激しい損券又は汚損の激しい損券である場合には、搬送補助シートが利用される。具体的には、2枚のシートで構成された搬送補助シートの間に損券を挟んだ状態で装置に投入する。これにより、損券の状態によらず搬送部14による搬送が可能となる。搬送補助シートの詳細については後述する。
搬送補助シートは、2枚のシート間に挟まれた損券の画像を撮像できるように透明又は半透明のシートで構成されているため、図7(A)に示すように、透過型センサ1006bではステージ1001に載置されたシート端部を検出できずにOFF状態となる。これに対して、搬送補助シートは光の一部を反射するので、反射型センサ1006aではON状態となる。これにより、反射型センサ1006aがOFF状態からON状態へ切り替わることからステージ1001に媒体が載置されたことを検出すると共に、このとき透過型センサ1006bがON状態のままであることから、検出された媒体が透明な搬送補助シートであると認識することができる。
すなわち、反射型センサ1006aのみを利用すると検出した媒体が不透明な有価媒体であるか透明な搬送補助シートであるかを正確に判定できず、透過型センサ1006bのみを利用すると媒体が存在しないのか透明な搬送補助シートが存在するのかを正確に判定できない。このため、媒体位置決め装置1000では、反射型センサ1006a及び透過型センサ1006bの両方を利用することにより、図7(A)に示すように、ステージ1001に媒体が無い状態、不透明な有価媒体が載置された状態、透明な搬送補助シートが載置された状態のそれぞれを認識できるようになっている。
具体的には、媒体位置決め装置1000では、規制ガイド1002及び1003のそれぞれが、反射型センサ1006a及び透過型のセンサ1006bの両方のセンサを備えている。このため、図7(B)に示すように、規制ガイド1002及び1003が初期位置にあって、各センサ1006a及び1006bが有価媒体又は搬送補助シートから離れている場合には、図7(A)の媒体が無い状態の検出結果が得られる。これに対して、図7(C)に示すように、規制ガイド1002及び1003が有価媒体を両側面から挟んだ状態では、図7(A)の有価媒体に対応する検出結果が得られる。また、図7(D)に示すように規制ガイド1002及び1003が搬送補助シートを両側面から挟んだ状態では、図7(A)の搬送補助シートに対応する検出結果が得られる。これにより、ステージ1001に有価媒体が載置された場合でも、搬送補助シートが載置された場合でも、これを正しく検出して、規制ガイド1002及び1003の位置を検出した媒体に合わせてセットすることができる。
なお、規制ガイド1002及び1003に対して、有価媒体や搬送補助シートが斜めに置かれている場合には、いずれか一方のガイドで、反射型センサ1006a又は透過型センサ1006bがこれを検出する場合がある。この場合でも、規制ガイド1002のセンサと、規制ガイド1003のセンサとの間で、検出結果を比較することにより、有価媒体又は搬送補助シートがステージ1001上に斜めに置かれていることを認識できるようになっている。
投入部10で、ステージ1001に載置され、規制ガイド1002及び1003でステージ1001の中央に位置を規制された有価媒体は、繰出機構12によって、1枚ずつ機体内へ繰り出される。図8は、繰出機構12の構造及び動作の概略を説明する図である。繰出機構12は、ステージ1001に載置された有価媒体を繰り出し方向(図面右側)へ移動させるためのピックローラ1010と、有価媒体を機体内へ送り出すためのフィードローラ1011と、フィードローラ1011の下側で複数ローラに巻回されたベルト1012と、有価媒体を下方から支持する支持部1013とを有している。図8(A)に示すように、一枚の有価媒体のみを繰り出す場合には、ピックローラ1010及びフィードローラ1011を図面上反時計方向に回転するように駆動すると共に、複数ローラに巻回されたベルト1012を時計方向に駆動する。これにより、一枚の有価媒体を機体内へ確実に送り出すことができる。また、複数枚の束状の有価媒体を繰り出す場合には、図8(B)に示すように、ピックローラ1010及びフィードローラ1011を図面上反時計方向に駆動すると共にベルト1012を反時計方向に駆動する。すなわち、ピックローラ1010及びフィードローラ1011が1枚目の有価媒体を機体内へ繰り出す一方で、ベルト1012は、2枚目以降の有価媒体が機体内へ繰り出されないようにステージ1001へ戻す逆転ベルトとして機能する。これにより、束状の有価媒体のうち最上の一枚のみを他の有価媒体から分離して機体内へ送り出すことができる。このように、繰出機構12では、ステージ1001へ載置された有価媒体が1枚であるか複数枚であるかによって、ベルト1012の回転方向を制御して、有価媒体を1枚ずつ確実に機体内へ繰り出すようになっている。なお、有価媒体が1枚であるか複数枚であるかは、指定された動作モードが、一枚取り込みモードであるか一括取り込みモードによって認識するが、動作モードの詳細については後述する。
(有価媒体処理装置の機能及び動作)
次に、処理対象である有価媒体が紙幣である場合を例に、有価媒体処理装置500の機能について説明する。図9は、図3に示す有価媒体処理装置500の機能ブロック図である。図9に示すように、有価媒体処理装置500には制御部80が設けられており、この制御部80により有価媒体処理装置500の各構成要素が制御されるようになっている。制御部80には、図3で示した撮像部16、搬送部14、特定有価証券収納部30、損券収納部40、42、新券収納部50、投入部10、投出部60、一時保留部20等が接続されている。前述したように、撮像部16が、有価媒体処理装置500の機体内に投入された有価媒体を撮像して画像データ(入金イメージ)を得て、撮像部16により得られた画像データが制御部80に送られて記憶部82に保存されるようになっている。また、制御部80は、搬送部14、特定有価証券収納部30、損券収納部40、42、新券収納部50、投入部10、投出部60、一時保留部20等の各構成要素に指令信号を送ることによりこれらの制御を行うようになっている。また、制御部80には記憶部82及び通信部84が接続されている。記憶部82は、有価媒体処理装置500に関する設定情報や、特定有価証券収納部30、損券収納部40、42、新券収納部50等に収納された有価媒体の在高等に関する情報を記憶するようになっている。また、制御部80は、通信部84を介して貨幣処理システム1の制御部800に対して信号の送受信を行うようになっている。これにより、有価媒体処理装置500で、バラ紙幣処理装置100で処理された紙幣や内部に収納されている紙幣の情報を取得して利用することができる。
また、制御部80には、損券の金種や発行時期を受け付ける券種受付手段85と、損券の価値を受け付ける価値受付手段86と、例えば後述する格子状ラインのごとき価値を決定する支援情報を出力する出力手段87と、正券に対する損券の有効あるいは失効割合を算出する算出手段88と、券種を判別する判別手段89と、操作表示部600に表示する情報を一取引全体とするか有価媒体一枚ずつとするかを選択する選択手段90と、修復が必要であるか否かを示す損券の状態に関する情報を受け付ける損券状態受付手段92と、特定権限を有する者を設定する設定手段93と、撮像部16による画像データから入金データを作成する入金データ作成部95と、紙幣情報を受け付ける紙幣情報受付手段96とが接続されている。各部の機能詳細に関してはそれぞれ後述する。
次に、図3及び図9に示した有価媒体処理装置500の動作について以下に説明する。なお、以下に示す各動作は、制御部80が有価媒体処理装置500の各構成要素を制御することにより行われる。
まず、有価媒体処理装置500に損券や旧券を入金する場合について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。バラ紙幣処理装置100の機体内に収納することができなかった損券や旧券を有価媒体処理装置500の機体内に投入する。すなわち、バラ紙幣処理装置100によって受け付けることができない損券や旧券が、有価媒体処理装置500によって処理される。
まず、操作員は、所有するIDカードを図2に示す貨幣処理システム1のIDカードリーダ810に読み取らせる(STEP101)。貨幣処理システム1の制御部800は、このIDカードリーダ810によって読み取られたIDカードのID情報に基づいて、操作員の権限等を確認する。次に、操作員は、貨幣処理システム1の操作表示部600を操作して入金モードを選択する(STEP102)。具体的には、操作表示部600には、入金モードとして「一枚取り込みモード(投入部10に一枚ずつ載置された有価媒体を取り込むモード)」、「一括取り込みモード(投入部10に載置された複数の有価媒体を一枚ずつ順次取り込むモード)」、「再取り込みモード(損券等を再び取り込むモード)」という3つのモードが表示され、操作員はこれらの3つのモードのうちから1つのモードを選択する。その後、操作員が有価媒体処理装置500の投入部10に損券や旧券を投入すると、繰出機構12により損券や旧券が有価媒体処理装置500の機体内に1枚ずつ取り込まれ(STEP103)、搬送部14の第1の搬送部14aにより搬送される。その後、この損券や旧券は撮像部16により撮像され、画像データ(入金イメージ)が取得される。そして、有価媒体処理装置500の制御部80は、機体内に投入された損券や旧券に異常がないかどうかを判別する(STEP104)。損券や旧券に異常(機体内に受け入れられない状態、例えば、斜行や二重送り等の搬送異常)がない場合には(STEP104の「YES」)、損券や旧券の画像データが制御部80において取得され、記憶部82等に記憶される(STEP107)。そして、異常が無いと判別された損券や旧券は一時保留部20に搬送され、この一時保留部20に一時的に保留される(STEP108)。一方、機体内に投入された損券や旧券に異常がある場合には(STEP104の「NO」)、この損券や旧券は搬送部14の第1の搬送部14aにより投出部60に搬送され、機体外に返却される(STEP105)。ここで、入金モードを選択する際に一枚取り込みモードが選択されていた場合には(STEP106の「YES」)、有価媒体処理装置500における入金動作が終了する。一方、入金モードを選択する際に一枚取り込みモードが選択されておらず、代わりに一括取り込みモードや再取り込みモードが選択されていた場合には(STEP106の「NO」)、投入部10に投入された損券や旧券が繰出機構12により有価媒体処理装置500の機体内に1枚ずつ取り込まれて、引き続き各処理が行われる。
損券や旧券が一時保留部20に保留されると(STEP108)、操作表示部600には、撮像部16により撮像された損券や旧券の画像データが表示される(STEP109)。そして、操作員は、操作表示部600に表示された損券や旧券の画像データに基づいて、操作表示部600により入金データを入力する(STEP110)。ここで、入金データとは、紙幣の券種や価値等のことをいう。紙幣の券種とは、紙幣の金種及び新旧に関する種類のことをいい、具体的には、図22に示すような、発行時期(A〜E)と、金種とを兼ね合わせたものをいう。図22に示すような様々な券種の紙幣において、D二千円券、E千円券、E五千円券、E一万円券以外の券種を「旧券」という。
また、紙幣の価値について具体的に説明すると、欠損のない正券の価値は、この紙幣の金種と等価となる。一方、その一部が破れて欠損している損券(長方形の紙幣の形が維持されていないとか穴が開いているような紙幣)については、欠損の程度により価値が金種と等価ではなくなるため、その価値に相当する正券の紙幣等に交換することが銀行等の金融機関で日常的に行われている。より詳細には、その一部が破れて欠損している紙幣の価値の判断基準は、例えば中央銀行(日本国の場合は日本銀行)によって規定されている。例えば、その一部が破れて欠損している紙幣について、紙幣の残存する面積の割合が2/3以上の場合は当該紙幣の金種の全額相当の価値があり、紙幣の残存する面積の割合が2/5以上でありかつ2/3未満の場合は当該紙幣の金種の半額相当の価値がある。一方、紙幣の残存する面積の割合が2/5未満の場合は、当該紙幣の価値は失効しており価値のないものとして扱われる。具体的には、例えばその一部が破れて欠けている一万円札について、当該一万円札の残存する面積の割合が2/3以上の場合は、銀行等において正券の一万円札と交換することが可能であり、一万円札の残存する面積の割合が2/5以上でありかつ2/3未満の場合は、銀行等において正券の五千円札と交換することが可能である。この場合、紙幣の価値はそれぞれ一万円、五千円となる。一方、一万円札の大部分が破れて欠けており、当該一万円札の残存する面積の割合が2/5未満の場合は、この一万円札の価値は0とみなされ、正券の紙幣と交換することはできない。
図10に戻り、操作員が操作表示部600により券種や価値等の入金データを入力すると(STEP110)、操作表示部600には、入金データと、損券や旧券の画像データとが並列に表示される(STEP111)。
操作表示部600には入金データの確定を求める旨の表示がなされ、表示された画像データ及び入金データを確認した操作員は、この入金データを確定する操作を行う(STEP112の「YES」)。入金データの確定作業は、操作表示部600に表示された画像データに、電子署名を付与することによって行われる。
ここで、電子署名について説明する。図24は、画像データに付与される電子署名の例を説明する図である。電子署名は、例えば、データの一部として、画像データに加えられる情報である。例えば、損券表面の画像データに電子署名が付与されると、この画像データは、操作表示部600等で図24(A)に示すように表示される。具体的には、入金データの確定操作がされた際に、入金処理を行った操作者のID、入金日時、取引番号、有価媒体処理装置500を識別可能な装置情報等を含む情報(図中(入金時)の情報)が、電子署名として画像データに付与される。これにより、画像データに含まれる電子署名を参照すれば、画像データで表された損券が、いつ誰によってどの装置を利用して入金されたものであるかを確認できるようになっている。
なお、図24は、電子署名として付与可能な情報の一例を示すものであって、どの段階でどのような情報を電子署名として付与するかは、設定によって選択できるようになっている。例えば、図24では、回収処理時には、回収承認に係る電子署名のみが付与される例を示しているが、回収処理を行う操作員の情報を独立した電子署名として付与するように設定することもできるし、この操作員に関する情報を回収承認時の電子署名に含めるように設定することもできる。電子署名は処理毎に順次付与されるもので、例えば、入金確定時には入金時の情報のみが付与された状態となる。その後、承認処理や回収処理等、電子署名付与の対象となる処理が行われる度に、画像データに新たな電子署名が付与される。
また、電子署名の付与対象については、図24(A)に示すように、表面の画像データのみに付与することもできるし、設定によって、同図(B)に示すように表面及び裏面の画像データの両方に電子署名を付与することもできる。また、電子署名は、例えば、画像データを独自のデータ形式として、ヘッダ部分に情報を埋め込むことによって付与される。画像データを表示する際に、データ形式が自動的に認識されて、画像とヘッダ部分から読み出された情報とが画面上に図24に示す様に表示される。ただし、電子署名の付与方法については、操作表示部600や上位者端末等で画像及び電子署名として付与された各情報を確認することができれば、その方法は特に限定されない。
入金データが確定されて電子署名付の画像データが作成された後(STEP112の「YES」)、入金処理を行った操作員の上位者によって、入金処理を承認する処理が行われる(STEP113)。上位者による承認処理についても、入金処理と同様に、電子署名を付与する形で行われる。具体的には、上位者による承認がなされると、図24に示すように、操作者(上位者)のID、承認日時、承認番号、承認に利用した端末を識別可能な装置情報等からなる情報(図中(入金承認時)の情報)が、電子署名として画像データに加えられる。この結果、入金時の情報及び承認時の情報が、電子署名として画像データに付与された状態となる。
図25は、有価媒体処理装置500の利用時に電子署名が付与されるタイミングを説明する模式図である。例えば、操作員が、損券を有価媒体処理装置500に投入して入金処理を行うと、入金された損券の画像データが取得され、この画像データに入金処理に関する情報が電子署名1100として付与される(X1)。電子署名1100が付与された画像データである損券イメージと入金データは、上位者の利用する端末へ送信される(Y1)。上位者が、受信した損券イメージ及び入金データを確認して入金を承認すると、この損券イメージには承認処理に関する情報が電子署名1101として付与される(Y2)。こうして、入金処理に係る電子署名1100に加えて、承認処理に係る電子署名1101が付与された損券イメージは、上位者端末から送信されて有価媒体処理装置500で受信される(Y3)。なお、上位者による承認処理は、入金された紙幣全てについて行われる態様であってもよいし、一部の紙幣についてのみ行われる態様であってもよい。一部の紙幣について承認処理を行う場合とは、具体的には、損券である紙幣の価値が所定金額より高額な場合や、損券の価値がこの損券の金種より低いとされた場合等である。
こうして、各処理段階で、関連する情報が順に電子署名の形で画像データに付与される。具体的には、有価媒体処理装置500への入金確定時、上位者による承認時に加えて、金融機関内で行われる有価媒体処理装置500からの回収処理時や、金融機関外部へ運び出される現送処理時等、有価媒体処理装置500に入金されてから金融機関外へ運び出されるまでの間、各処理に関連する情報が電子署名の形で順に付与されてゆく。
例えば、有価媒体処理装置500から損券を回収する場合には、回収対象として選択された損券の画像データが損券イメージとして上位者端末へ送信される(Y1)。上位者によって回収の承認がなされると、これを示す新たな電子署名1102が損券イメージに追加される(Y2)。そして、損券イメージが有価媒体処理装置500へ送信されて(Y3)、回収を承認された損券の回収処理が行われることになる(Z1)。図26に示すように各処理段階で電子署名が付与されると、回収承認がなされた段階では、操作員による入金確定時の電子署名1100と、上位者による入金承認時の電子署名1101と、上位者による回収承認時の電子署名1102との3つの電子署名が付与された状態となる。ただし、回収承認の電子署名1102は、回収対象として選択され上位者による承認がなされた画像データにのみ付与される。このように、各処理段階で電子署名を付与することにより、各処理がいつ誰によってどの装置を利用して行われたのかを確認することができるので、損券を厳正に管理することができる。
図10に戻り、上位者による入金データの承認が得られた場合には(STEP113の「YES])、一時保留部20に一時的に保留された損券や旧券は搬送部14の第1の搬送部14aにより1枚ずつ搬送され、損券収納部40、42に分類して収納される(STEP114)。その後、入力された入金データと電子署名を含む画像データは貨幣処理システム1の記憶部808や有価媒体処理装置500の記憶部82に記憶される(STEP115)。
一方、入金データが確定されなかった場合や(STEP112の「NO」)、入金データが確定されたものの上位者による承認が得られなかった場合には(STEP113の「NO」)、入金データの修正が必要であるか否かの確認が行われる(STEP116)。そして、入金データの修正が必要である場合には(STEP116の「YES」)、入金データの修正が行われる(STEP118)、再び、入金データを確定して(STEP112の「YES」)、上位者の承認を得る処理等が行われることになる(STEP113)。一方、入金データの修正が行われず、操作表示部600により損券や旧券の返却の指令が入力された場合には(STEP116の「NO」)、一時保留部20に一時的に保留された損券や旧券は搬送部14の第1の搬送部14aにより投出部60に搬送され、機体外に返却され(STEP117)、対応する所定の処理が行われる。このようにして、有価媒体処理装置500への損券や旧券の入金動作が完了する。
なお、貨幣処理システム1の記憶部808や有価媒体処理装置500の記憶部82に記憶される入金データには、画像データに係る紙幣がどの収納部の何番目に収納されているかを示す情報や、後述する搬送補助シートを利用して収納されたものであるか否かを示す情報も含まれている。図10では、損券が有価媒体処理装置500内に収納される場合の例を示したが、例えば装置内に収納できないような損券等は、画像データの取得及び入金データの入力を行った後、装置前面に設けられた現外ボックス71〜74へ収納される場合もある。このような場合でも、有価媒体処理装置500では、収納先を現外ボックス71〜74として管理できるようになっている。これにより、入金データ及び画像データを参照して回収対象の紙幣を指定すれば、対応する紙幣の収納部及び収納部内での収納位置を特定して収納部から回収できるようになっている。
(損券の回収処理)
有価媒体処理装置500では、新たに損券が入金された場合に、この損券が予め設定された回収条件を満たすか否かの判定が行われ、回収条件を満たして回収可能となった場合には、これが操作員に報知されるようになっている。この処理は、図10に示す有価媒体処理装置500への入金動作に続いて、貨幣処理システム1の制御部800又は有価媒体処理装置500の制御部80によって行われる処理である。以下では、この処理について説明する。
図23は、回収条件を満たすか否かを判定するための処理の概要を説明するフローチャートである。図10に示したように損券に関する入金データが確定して、貨幣処理システム1の記憶部808や有価媒体処理装置500の記憶部82に記憶されると、図23に示す処理が開始される。まず、有価媒体処理装置500への入金処理で確定された入金データから、新たに有価媒体処理装置500へ入金された損券の券種に関する情報が取得される(STEP120)。続いて、新たに入金された各券種の枚数データが取得される。具体的には、有価媒体処理装置500に新たに損券が入金される度に、累積加算して保存されている各券種の枚数データが、記憶部808や記憶部82から読み出される(STEP121)。これにより、有価媒体処理装置500への入金処理によって更新された各券種の枚数が判明する。なお、ここで取得される枚数データは、後述する修復不要状態の損券の枚数データである。すなわち、既に破れ等が修復された損券及び修復する必要のない損券の合計枚数が、回収可能な状態にある損券の最新情報として取得される。
続いて、有価媒体処理装置500で枚数情報が更新された各券種の損券について、バラ紙幣処理装置100に収納されている損券の枚数情報が取得される(STEP122)。そして、各券種について、有価媒体処理装置500から回収可能な損券枚数と、バラ紙幣処理装置100に収納されている損券枚数との合計枚数が算出される(STEP123)。すなわち、貨幣処理システム1を構成する各装置から回収可能な損券の合計枚数が券種別に算出される。
そして、回収可能な損券が存在するか否かが判定される(STEP124)。ここで、回収可能な損券が存在する場合とは、貨幣処理システム1全体で収納されている枚数の合計が予め回収条件として設定された所定枚数に達した券種の損券が存在する場合と、貨幣処理システム1に1枚目の損券が収納された時点を起点として収納期間が予め回収条件として設定された所定期間に達した券種の紙幣が存在する場合とを言う。
具体的には、例えば、一万千円札のE券の損券が100枚に達した際に回収するよう回収条件が設定されている場合には、有価媒体処理装置500に収納されている一万円札のE券の枚数と、バラ紙幣処理装置100に収納されている一万円札のE券の収納枚数との合計枚数が100枚に達した場合に、回収条件を満たし回収可能であると判定される。また、例えば、一万円札のC券の損券が50枚に達した場合に回収するように設定されているのに対して合計枚数が50枚に達していない場合でも、1枚目の一万円札C券の損券が収納されてからの期間が、予め回収条件として設定された1年間の期間を経過した場合には、回収条件を満たし回収可能であると判定される。なお、判定基準となる枚数や期間は、券種別に設定できるようになっている。このため、例えば、市場での流通枚数が少ない券種は基準となる枚数を他の券種より少なく設定したり、基準となる期間を他の券種より長く設定したりすることができる。
判定の結果、回収条件を満たして回収可能な損券が存在する場合には(STEP124の「YES」)、操作表示部600へ情報を表示したり所定の音を鳴らしたりすることによって、操作員に報知される(STEP125)。一方、回収可能な損券が存在しない場合には(STEP124の「NO」)、処理を終了する。収納枚数に関しては、損券回収後に装置内に残っている枚数に基づいて、記憶部808及び記憶部82に保存された収納枚数が更新される。また、損券が回収されなかった場合には、記憶済みの枚数情報が維持される。回収期間算出の起点に関しては、所定期間が経過したことを確認しながら回収しない場合もあり得るため、損券が回収された場合には回収日を起点とするように更新され、損券が回収されなかった場合には、所定時間後又は所定操作によって報知を解除した上で報知日を起点とするように更新される。
なお、ここでは有価媒体処理装置500に損券が入金されて損券の収納枚数が更新された場合を例に説明を行ったが、本実施形態がこれに限定されるものではなく、バラ紙幣処理装置100に収納された損券の収納枚数が更新された場合にも同様の処理が行われる。また、修復が不要であるか又は修復が必要であったが既に修復がなされて回収可能な状態にある修復不要状態の損券のみを対象に枚数を判定する場合を例に説明を行ったが、本実施形態がこれに限定されるものではない。例えば、修復が必要な状態にある修復必要状態の損券の枚数を含めて所定枚数に達したか否かを判定して、修復必要状態にある損券の枚数と、この損券の修復作業を行えば回収可能になることを報知する態様であってもよい。
また、損券の回収に関する情報の報知方法についても、上記説明に限定されるものではない。例えば、操作表示部600の表示画面に現在の損券の合計枚数を常時表示して、合計枚数に達した時点で、回収可能な損券があることや回収の対象となる損券の収納場所等を示す情報を表示してもよいし、他の処理を行っている間は報知すべき情報があることのみを画面上の隅に表示して、これを確認した操作員が所定操作を行った場合に、回収可能な損券に関する情報を表示してもよい。また、表示は、回収可能となった券種の情報のみを表示する態様であってもよいし、各券種の枚数情報を表示する態様であっても構わない。さらに、操作表示部600へ表示して報知する態様の他、上位者等のコンピュータ端末や携帯端末へ情報を送信して報知する態様であっても構わない。
また、損券回収時に、回収対象とする装置の優先順位を設定することもできる。例えば、有価媒体処理装置500からの回収を優先して、有価媒体処理装置500に収納された回収可能な損券枚数が回収条件として予め設定された所定枚数に満たない場合にのみ、バラ紙幣処理装置100から不足分の損券を回収する態様であってもよい。この場合には、図23に示すバラ紙幣処理装置100に関する処理(STEP122及び123)を、バラ紙幣処理装置100から損券を回収する場合にのみ実行すればよい。すなわち、優先される有価媒体処理装置500から所定枚数の損券を回収できる場合には、バラ紙幣処理装置100に関する処理を省略して処理を高速に行うことができる。また、優先順位は任意に設定することができるので、例えば、有価媒体処理装置500よりもバラ紙幣処理装置100からの損券回収を優先する設定とすることもできる。具体的には、バラ紙幣処理装置100内に収納された回収可能な損券の枚数を先に確認して、この損券枚数が回収条件として設定された所定枚数に足りない場合にのみ、有価媒体処理装置500に収納された回収可能な損券枚数を確認して、合計枚数が回収条件を満たした場合にこれらの損券を回収する。このように設定すれば、例えば、バラ紙幣処理装置100内になるべく損券を残したくない場合に、バラ紙幣処理装置100内に収納された損券を優先的に回収することができる。
また、有価媒体処理装置500内とバラ紙幣処理装置100内の双方の損券枚数を加算して合計枚数に基づいて判定することとしたが、例えば有価媒体処理装置500のみ又はバラ紙幣処理装置100のみ等、各装置内に収納された損券枚数によって判定を行うことも可能である。これらの各設定事項は、自由に設定できるようになっている。
このように、損券の回収については、所定枚数に達したか又は所定期間が経過したかのいずれかの回収条件を満たす場合に回収可能と判定される。また、判定基準となる枚数や期間を券種別に設定することができる。これにより、市場での流通量や貨幣処理システム1を利用する銀行等の運用に応じて、損券回収のタイミングを柔軟に設定することができる。また、回収可能な損券がある場合には、これが自動的に判定されて報知されるので、回収可能な損券があるか否かを確認する作業を行う必要がない。また、市場での流通量が少ない券種については、所定枚数に達しない場合でも、所定期間が経過した時点で報知がなされるので、これを回収するか否かを検討することができる。このとき、回収しないと決定された場合でも、報知日を起点として再び所定期間が経過すれば報知がなされるので、装置内に収納されていることを忘れて、損券が装置内に放置されるといった事態を回避することができる。
次に、有価媒体処理装置500から損券や旧券を回収する回収処理の流れについて、図20に示すフローチャートを用いて説明する。有価媒体処理装置500からの損券や旧券の回収処理では、二つの損券収納部40、42のうちテープ巻取方式の損券収納部42に収納されている損券や旧券が回収されることとなるが、これについての詳細は後述する。
まず、操作員は、所有するIDカードをIDカードリーダ810により読み取らせる(STEP201)。制御部800は、IDカードリーダ810によって読み取られたIDカードのID情報に基づいて、操作員の権限等を確認する。次に、操作員は、操作表示部600により回収データを入力する(STEP202)。ここで、回収データとは、テープ巻取方式の損券収納部42に収納されている損券や旧券の画像データであってもよいし、あるいは、回収すべき紙幣の券種毎の枚数や金種毎の枚数に係る情報(例えば、D券の千円札30枚を回収するという情報)であってもよい。なお、回収データに関する画像データ取得や価値入力に関する詳細については後述する。
回収データの入力時には、回収方法を指定できるようになっている。例えば、損券収納部42に収納された全ての紙幣を回収する全回収、指定した券種の全ての紙幣を回収する券種指定回収、指定した券種の一部(指定枚数分)のみを回収する券種指定一部回収、入金イメージを閲覧して回収する券種を指定して回収するイメージ指定回収等の中から回収方法を指定する。
ここで、イメージ指定回収の方法について説明する。イメージ指定回収は、操作員が、有価媒体処理装置500に収納された紙幣の画像データを確認しながら、回収する紙幣を指定して回収する方法である。イメージ指定回収では、例えば、図27に示すような画面が表示される。図27(A)に示すように、画面上には、入金時に取得された画像データ(入金イメージ)が順次表示されるので、操作員は、画像データを確認して回収するか否かを判断して、対応するボタンを押下することにより回収対象となる紙幣を選択していく。「回収する」又は「回収しない」のいずれかのボタンを操作すると、自動的に、次の画像データが表示される。画面上には、既に上位者による入金承認等がなされ、回収可能な状態にある紙幣の画像データのみが表示される。また、画面上部には、回収可能な紙幣の合計枚数と、現在表示されている紙幣が何番目の紙幣であるかを示す番号(No.)とが表示される。この番号横の矢印のボタンを操作することにより、表示する画像データを変更できるようになっている。また、画像データの右側には、既に操作員によって選択された紙幣の券種及び合計枚数が表示され、あと何枚の紙幣を選択すべきであるかを認識できるようになっている。また、画像データの右側には、この画像データに付与された電子署名に含まれる入金情報が表示され、入金時の情報を確認できるようになっている。さらに、1枚目の紙幣を選択した段階で選択された券種が回収対象であると認識されて、次に表示される画像データからは、選択済みの紙幣と同じ券種であるか否かが自動的に判定される。そして、表示される画像データが選択済みの紙幣と同じ券種である場合には、回収候補であることを示す情報が左下に表示され、操作員による選択操作を補助するようになっている。
また、このように画像データを1枚ずつ表示して回収対象を選択する1枚選択モードの他、複数枚の画像データを表示して回収対象を選択する複数選択モードによる選択を行うこともできる。画面上のボタンを操作して複数選択モードに切り換えると、図27(B)に示すように、画面上に複数の画像データが表示される。この画面上でも、既に選択された紙幣と同じ券種の紙幣は、太い枠によって縁取られ回収対象の候補であることが認識できるように表示される。また、画面上で、回収対象となる画像データに触れると、これが選択されて、選択済みであることが分かるように表示が変化する(図中網掛け部分)。こうして、1枚選択モード又は複数選択モードで選択された紙幣が回収データとして入力されることになる。
図20に戻って、回収データが入力されると、回収対象紙幣に入金承認に係る電子署名が付与されているか否かが判定される(STEP203)。イメージ指定回収の場合には、既に入金承認時の電子署名が付与されて回収可能な紙幣のみが選択された状態となるが、例えば、券種指定回収等の他の回収方法を指定した場合には、指定された紙幣についての入金承認が未だなされておらず回収できない可能性がある。このため、回収可能であることを確認するために電子署名に関する判定が行われる。具体的には、回収データで指定された紙幣の画像データを参照して、この画像データに電子署名が付与されていることが確認される。そして、入金承認に係る電子署名が付与されている場合には(STEP203の「YES」)、回収処理が開始される。一方、上位者による承認がなされておらず、電子署名が付与されていない場合には(STEP203の「NO」)、回収対象とすることができないため、操作員にこれが報知され、操作員は回収データを変更することになる(STEP202)。
回収処理が開始されると、まず、損券収納部42から損券や旧券が1枚ずつ搬送部14の第1の搬送部14aに繰り出される(STEP204)。ここで、損券収納部42から操り出された損券や旧券が、回収対象のものである場合には(STEP205の「YES」)、回収対象の損券や旧券の画像データ(処理対象イメージ。以下「回収イメージ」と記載する)を撮像部16にて取得する(STEP206)。そして、図10に示す入金処理の際の画像データ(入金イメージ)とこの回収対象の画像データとを表示して比較する(STEP207)。これらの画像は、図28に示すように、操作表示部600に表示される。
続いて、比較の結果に異常がないか否かが判定される(STEP208)。そして、異常があれば(STEP208の「NO」)、エラーとして報知される(STEP209)。一方、異常がなければ(STEP208の「YES」)、回収すべき損券や旧券が一時保留部20に保留される(STEP210)。
回収対象となる損券の回収イメージの取得から、入金時の入金イメージと比較して異常の有無を判定するまでの処理(STEP206〜STEP209)は、回収対象の損券や旧券が実際に回収すべきものであることを確認するためのものである。テープ巻取方式の損券収納部42に収納されている紙幣は、収納された順序に基づいて管理されている。このため、仮にジャムなどが生じて、損券収納部42から繰り出される実際の紙幣と、管理されているデータとの整合性が取れなくなると、回収対象となる紙幣を正確に出金できなくなる。このような事態を避けるため、損券収納部42から繰り出されるべき紙幣の画像である入金イメージと、実際に繰り出された紙幣の画像である回収イメージとを比較して一致することを確認するようになっている。なお、これらの判定は、画像マッチング技術を利用して自動的に行われるが、操作員の目視確認によって行うことも可能となっている。また、画像が一致せず、エラーであると判定されて、これが報知された場合には(STEP209)、別途、入金イメージと損券収納部42に収納された紙幣とを確認して、両者の整合性を取るための処理が行われる。
損券収納部42から操り出された損券や旧券が回収対象でない場合には(STEP205の「NO」)、この紙幣は一時保留部20に収納される(STEP211)。そして、回収対象となる紙幣を全て回収したか否かの判定が行われる(STEP212)。ここで、未だ回収対象分の紙幣を得られていない場合には(STEP212の「NO」)、STEP204に戻り、次の損券や旧券の繰り出しが行われる。一方、回収対象分の紙幣が得られた場合には(STEP212の「YES」)、紙幣回収について、上位者の承認を得るため、回収データが上位者のコンピュータ端末や携帯端末に送信される(STEP213)。そして、上位者による承認結果が得られたか否かの判定がなされ(STEP214)、承認結果が得られるまでの間、処理が中断される(STEP214の「NO」)。この上位者による承認は、図24〜26に示したように、画像データに、承認処理に係る電子署名を付与することによって行われる。このとき付与される電子署名には、操作者(上位者)のID、承認日時、承認番号、承認処理に利用した端末の識別情報等が含まれる。なお、上位者による承認時には、上位者が、全ての回収紙幣の画像データを確認することもできるし、一部の回収紙幣についてのみ画像データを確認することもできる。一部のみを確認する場合とは、例えば、操作員が上位者による再確認を必要と判断した損券である場合、操作員の判断によらず損傷度合いが甚だしい損券である場合、操作員によって判断された価値が大きな損券である場合等である。
上位者による承認結果が得られると(STEP214の「YES」)、一時保留部20に収納されている紙幣を繰り出して移動する処理が開始される(STEP215)。ここで、一時保留部20に収納された紙幣のうち、上位者により回収処理が承認された回収処理対象紙幣は承認済媒体とされ、回収処理の対象外であった紙幣や回収処理対象とされたが上位者による承認が得られなかった紙幣は非承認媒体とされる。例えば、上位者により、回収処理自体が承認されなかった場合には、一時保留部20に収納されている全ての紙幣が非承認媒体とされる。
一時保留部20から紙幣が繰り出されると、この紙幣が承認済媒体であるか非承認媒体であるかの判定が行われる(STEP216)。そして、承認済媒体である場合には(STEP216の「YES」)、この紙幣は投出部60に搬送されて集積される(STEP217)。一方、承認済媒体ではなく非承認媒体である場合には(STEP216の「NO」)、この紙幣は損券収納部42に搬送されて収納される(STEP218)。このとき、記憶部808や記憶部82では、損券収納部42に収納された損券や旧券についてのデータが更新される(STEP219)。こうして、一時保留部20に収納されている紙幣全てを繰り出すまで、承認済媒体を投出部60へ搬送して集積し、非承認媒体を損券収納部42へ戻して収納する処理が繰り返される(STEP220の「NO」)。
一時保留部20から全ての紙幣が繰り出されると(STEP220の「YES」)、投出部60に回収対象の媒体があるか否かが判定される(STEP221)。このとき、先に、上位者が回収処理を承認していれば、投出部60には回収対象となる紙幣が集積された状態となり、回収処理が承認されていなければ、投出部60には回収対象となる紙幣は存在しない状態となる。投出部60に媒体が存在しない場合には(STEP221の「NO」)、一時保留部20の紙幣が損券収納部42に戻された状態で処理が終了し、損券の回収はなされないことになる。
一方、投出部60に回収対象となる紙幣が存在する場合には(STEP221の「YES」)、投出部60に設けられたシャッタ61aが開放され(STEP222)、投出部60から回収紙幣を取り出すことが可能な状態となる。そして、操作員が、投出部60から損券を回収して、これが投出部60に設けられた抜き取り検知部61bにより検知されると(STEP223の「YES」)、シャッタ61aが閉鎖される(STEP224)。
図30は、損券回収時の有価媒体処理装置500内部での損券の動きを示す模式図である。図30(A)に実線矢印で示すように、回収対象として指定された損券は、回収イメージを取得するために(STEP206)、損券収納部42から繰り出されて撮像部16に向けて搬送される。そして、撮像部16によって回収イメージが取得された後、この損券は、図30(B)に示すように、一時保留部20に収納される(STEP210)。一方、回収対象ではない損券は、図30(A)に破線矢印で示すように、撮像部16へは搬送されず、直接一時保留部20へ搬送されて収納される(STEP211)。そして、最終的に、一時保留部20に収納された損券のうち回収対象の損券は、図30(C)に実線矢印で示すように、投出部60に投出され(STEP217)、回収対象外の損券は、同図破線矢印で示す様に、再び一時保留部20に戻される(STEP218)。
なお、図20では、テープ巻取方式の損券収納部42から投出部60に回収する場合を示したが、損券の回収は集積方式の損券収納部40を対象として手作業により行われる場合もある。図31は、この手回収による紙幣の動きを説明する模式図である。手回収は、操作員により、有価媒体処理装置500の背面から、回収対象となる損券を取り出すことによって行われる。通常、集積方式の損券収納部40には、修復しなければテープ巻取方式の損券収納部42に収納できないような損傷度合いの大きい損券が、搬送補助シートを利用して装置に投入されて収納されている。また、このような損券については、修復を行った後に回収することになっている。このため、手回収により損券収納部40から回収された損券については修復処理がなされて、その後に、回収イメージを取得するために投入部10に再投入される。再投入されて撮像部16によって回収イメージが取得された修復済みの損券は、投出部60に投出される。回収イメージが取得されると、回収イメージと一致する入金イメージの選択が行われるが、この選択は、手動で行うこともできるし、イメージマッチング技術によって行うこともできる。こうして回収イメージが取得され、この回収イメージに対応する入金イメージが選択されると、入金データの電子署名を確認する処理と回収処理に関する上位者承認を得る処理とが行われて、その後に投出部60から投出された損券が回収されることになる。
こうして、回収処理が完了すると、貨幣処理システム1の記憶部808や有価媒体処理装置500の記憶部82には、図29に示す様に、入金時に取得された後、各処理段階で電子署名1100〜1102が付与された入金イメージと、回収処理時に取得された回収イメージとが関連付けて保存される。例えば、一部が欠損したような損券では、入金イメージでは一部が欠損した画像となり、回収イメージでは欠損部が修復された画像となる。このように、入金時の画像データと回収時の画像データを保存すると共に、各処理時の情報を電子署名の形で保存することにより、画像データで示される紙幣について行われた各処理内容を確認できるようになっている。
なお、中央銀行への損券の送付は、所定枚数で行うよう決められているので、金融機関内でも、これに基づいて所定枚数に達した損券が回収処理の対象として設定される。例えば、ある券種の損券が100枚に達した場合に回収するよう設定されている場合には、100枚に達した段階で回収処理が開始される。ところが、図20に示したように、100枚の損券を回収データとして指定して回収処理を開始した場合でも、例えば上位者による承認を得られなかった損券があると、回収枚数が100枚に満たない状態となる可能性がある。このような場合には、不足分を回収データとして指定して、再度テープ巻取方式の損券収納部42から回収する処理を行ったり、不足分を集積方式の損券収納部40や現外ボックス71〜74から取り出して手回収する処理を行ったりすることによって補充する。これにより、不足分を容易に補充して合計枚数を100枚とすることができる。
また、入金イメージを利用して対象を選択する処理は、回収処理を行う場合に限定されるものではない。例えば、出金処理時にも同様の操作により処理対象を選択することができる。具体的には、出金処理を行う際に、図27を参照しながら説明したのと同様に、画面上に表示された入金イメージを利用して出金対象を選択する。そして、図30を参照しながら説明したのと同様に、収納部から繰り出した有価媒体の回収イメージを取得した後、取得した回収イメージと出金対象として選択された入金イメージとを比較しながら、確実に処理対象として選択された有価媒体だけを出金する。すなわち、上述した説明において、回収処理対象とする損券を出金処理対象とする損券と読み替えることで、出金処理時に、上述した操作及び処理を実現して、同様の効果を得ることができる。なお、入金イメージから出金処理対象を選択する場合の媒体例として損券を例に説明したが、これに限定されるものではなく、新券収納部50に収納されている新券のイメージを選択し、選択された新券のみを出金するようにしてもよい。この場合、新券収納部50に新券を補充する際に補充する新券のイメージを入金イメージとして記憶部82および808に記憶することになる。
(入金データに係る処理)
図10に戻り、有価媒体処理装置500に損券を入金する入金処理を行う際には、損券の画像データの取得及び表示の処理と、画像データに基づく入金データの入力処理(STEP110)とを正確に行うことが重要である。入金データを含む入力データは画像データと関連付けて処理されて記憶部82及び808に記憶される。この入金データの入力処理の具体的な態様について、図9及び図11乃至図15を用いてここに説明する。
有価媒体処理装置500では、図9に示すように、券種受付手段85、価値受付手段86、出力手段87及び算出手段88がそれぞれ設けられている。これらの券種受付手段85、価値受付手段86、出力手段87及び算出手段88はそれぞれ有価媒体処理装置500の制御部80に接続されており、券種受付手段85、価値受付手段86により受け付けられた様々な情報は制御部80に送られるようになっている。また、制御部80が出力手段87に指令を与えることにより、出力手段87は、後述するように、操作員が損券の価値を決定する処理を支援するための支援情報(言い換えると、操作員にとって有益な参考情報)を出力するようになっている。以下、券種受付手段85、価値受付手段86、出力手段87及び算出手段88の各々について説明する。
有価媒体処理装置500において投入部10に損券が投入されると、この損券は繰出機構12により機体内に繰り出され、搬送部14により搬送される。そして、機体内に繰り出された損券は撮像部16により撮像され、撮像された損券の画像データが取得される。なお、本実施形態では、撮像部16により紙幣の表面及び裏面の両方を撮像して、表面及び裏面のそれぞれの画像データを取得するようになっている。その後、撮像部16により撮像された損券は一時保留部20に搬送され、この一時保留部20でー時的に保留される。損券が一時保留部20に保留されると、操作表示部600には損券の画像データが表示される。操作員は、操作表示部600に表示された損券の画像データに基づいて、操作表示部600により入金データを入力する。具体的には、入金データとして、紙幣(損券)の券種や価値等を入力する。
操作員が、操作表示部600による入金データの入力を行う際には、タッチパネルからなる操作表示部600には、撮像部16により撮像された損券の画像データが表示されるとともに、図11に示すような操作画面が表示される。この操作画面には、金種、その発行時期、損券の価値、修復の要否、鑑定の要否を選択するための情報が表示される。そして、操作員は、まず、投入部10に投入した損券の金種(図11において「金額」と表示)を入力する。具体的には、操作表示部600に表示されている各金種(金額)に操作員の指が触れることにより、損券の金額が選択される。なお、この際に、撮像部16により撮像された損券の画像データに基づいて、制御部80によるOCR等の処理が行われて損券の金種が判別されている場合には、操作表示部600に表示されている各金種(金額)の表示のうち、判別結果に合致する金種(金額)が色表示にて強調され、他の金種と区別可能に表示される。
次に、操作員は、投入部10に投入した損券の発行時期を選択する。具体的には、操作表示部600に表示されている「A券」〜「E券」のうちいずれかに操作員の指が触れることにより、損券の発行時期が選択される。図11の操作表示部600に表示されているA券〜E券については、図22における損券の発行日に対応している。すなわち、操作員が金額において「一万円札」を選択し、発行時期について「E券」を選択した場合には、券種がE一万円券(発行日は2004年11月1日)であるという情報が入力されるようになる。こうして、操作表示部600により入力された損券の券種については、券種受付手段85に受け付けられるようになる。
次に、操作員は、操作表示部600により、投入部10に投入した損券の価値を選択する。具体的には、操作表示部600に表示されている「全額」、「半額」、「失効」のうちいずれかに操作員の指が触れることにより、損券の価値を選択する。操作表示部600により入力された損券の価値については、価値受付手段86に受け付けられる。また、操作員は、操作表示部600により、投入部10に投入した損券の修復を行うか否かについての情報を入力する。具体的には、操作表示部600に表示されている「修復:要」又は「修復:否」のうちいずれかに操作員の指が触れることにより、損券の修復を行うか否かについての選択が行われる。また、操作員は、操作表示部600により、投入部10に投入した損券の鑑定を行うか否かについての情報を入力する。具体的には、操作表示部600に表示されている「鑑定:要」又は「鑑定:否」のうちいずれかに操作員の指が触れることにより、損券の鑑定を行うか否かについての選択が行われる。
なお、操作画面内の項目の選択については、券種受付手段85により紙幣の券種が受け付けられる際に、紙幣の金種に係る情報が受け付けられると、紙幣の新旧に係る複数の候補のうち当該金種に対応するものだけが操作表示部600に表示されるようになっている。具体的には、図11に示す操作画面において、例えば金種(金額)として二千円札を選択すると、発行時期としては、A券〜E券のうちD券のみが表示され、他のA券、B券、C券及びE券は選択できないようになる。なぜならば、図22に示すように、二千円札の券種としては、D二千円券しか存在しないからである。同様に、図11に示す操作画面において、例えば金種(金額)として一万円札を選択すると、発行時期としては、A券〜E券のうちC券、D券及びE券のみが表示され、他のA券及びB券は選択できないようになる。なぜならば、図22に示すように、一万円札の券種としては、C一万円券、D一万円券及びE一万円券しか存在しないからである。このように、図11に示すような操作表示部600の表示画面において、紙幣の金種に係る情報が受け付けられると、紙幣の新旧に係る複数の候補のうち当該金種に対応するものだけが操作表示部600に表示されるようになっている。このため、操作員は券種の選択を迅速かつ確実に行うことができるようになる。
また、本実施形態では、出力手段87により、撮像部16にて得られた損券の画像データと、操作員が損券の価値を決定する処理を支援するための支援情報とが出力され、出力された情報が操作表示部600に表示されるようになっている。ここで、操作員が損券の価値を決定する処理を支援するための支援情報とは、例えば図12に示すような所定間隔の縦横の格子状ラインである。操作員は、このような格子状ラインを参照して、損傷していない紙幣の全体面積に対する、撮像部16によって得られた損券の画像データにおける紙幣の有効面積又は失効面積の割合を決定する。そして、損券の有効面積の割合が全体面積の2/3以上の場合は、損券はその金種の全額相当の価値があるとして、操作員は価値の入力を行う際に「全額」を選択する。また、同様に、有効面積の割合が2/5以上でありかつ2/3未満の場合は、損券はその金種の半額相当の価値があるとして、操作員は価値の入力を行う際に「半額」を選択する。一方、紙幣の残存する面積の割合が2/5未満の場合は、当該紙幣の価値は失効しており価値のないものと判断して、操作員は価値の入力を行う際に「失効」を選択する。このように、図12に示す格子状ラインからなる支援情報は、操作員が操作表示部600により紙幣の価値を入力する際の手助けとなる。なお、図12に示すような格子状ラインは、紙幣の券種毎に複数のものが用意されており、券種受付手段85に損券の券種が受け付けられたときに、この券種に対応する格子状ラインが操作表示部600に表示されるようになっている。
図13は、約半分が破れて欠損した損券の画像データが操作表示部600に表示されたときの表示内容を示している。図13に示すように、損券の約半分が破れて欠損している場合でも、格子状ラインからなる支援情報は、当該損券の券種に対応する正券の全面積に対応するよう操作表示部600に表示される。操作員は、損券を覆うように描かれた格子状ラインよって、損券がどの程度欠けているかを迅速かつ確実に判断することができる。
有価媒体処理装置500に投入される損券は表裏の向きや天地の方向がバラバラな状態にある。このため、装置内に繰り出されて撮像部16によって撮像される画像データについても、表裏や天地がバラバラな状態となる。しかし、表面及び裏面の画像データは別々に取得されるので、損券の方向によらず、表面又は裏面の画像を選択して利用することができる。また、画像データの天地がバラバラであっても、画像データを回転させることにより容易に天地の方向を揃えることができる。このため、図13に示すように操作表示部600に表示する画像データは、撮像部16によって撮像された損券の向きや方向によらず、見る人にとって見やすいように表裏や天地を選択して表示することができる。
有価媒体処理装置500では、損券収納部40、42に収納する損券現物の表裏の向きや天地の方向を、画像データと一致させることができる。例えば、損券の表面の画像データを天方向が上方向となるようにして利用する場合には、装置に設けられた表裏及び天地を揃えるための反転機構を利用して、損券を表面の状態で、天地の方向を揃えて損券収納部40、42に収納する。このため、損券収納部40又は42から損券を取り出して操作表示部600に表示された画像データと比較する際に、従来のように画面に表示される画像データに合わせて損券現物を裏返したり天地方向を変えるように持ちかえたりする必要がなく、比較作業を容易に行うことができる。なお、損券を反転させる処理は専用の反転機構を利用して行う態様に限らず、例えば、搬送路の3方向分岐を利用したスイッチバック搬送を行うことによって行ってもよい。
また、図9に示すように制御部80に接続された算出手段88では、損傷していない紙幣の全体面積に対して、撮像部16によって得られた損券の画像データにおける損券の有効面積又は失効面積の割合を算出するようになっている。より詳細には、算出手段88は、例えば、撮像部16により得られた損券の画像データのピクセル数と、当該損券の券種に対する正券(損傷していない紙幣)を撮像部16により撮像したときの画像データのピクセル数とを比較することにより、損券の有効面積又は失効面積の割合を算出するようになっている。そして、出力手段87は、格子状ラインからなる支援情報に加えて、算出手段88により算出された割合も出力するようになっている。より具体的に説明すると、例えば図13に示すような約半分が破れて欠損している損券が撮像部16により撮像されて一時保留部20に保留されると、操作表示部600には損券の画像データと格子状ラインからなる支援情報とが表示されるとともに、算出手段88により算出された損券の有効面積の割合が表示される。例えば「有効面積の割合が58%である」という情報が操作表示部600に表示される。このような、算出手段88により算出された損券の有効面積又は失効面積の割合に係る情報は、操作員が操作表示部600により紙幣の価値を入力する際に参考にすることができる。なお、操作表示部600には、面積割合に加えて、この面積に対応する損券の価値を表示することもできる。具体的には、例えば「有効面積割合58%」との表示に加えて、「半額相当」との情報を表示する。なお、画面表示の詳細については後述する。
そして、操作員が操作表示部600によって入金データを入力すると、図14に示すように、撮像部16により得られた損券の画像データ及び券種受付手段85に受け付けられた損券の券種が出力手段87により出力され、出力された情報が操作表示部600に表示される。具体的には、操作員が操作表示部600により入金データを入力すると、操作表示部600には、入金データ(イメージ伝票)と、損券の画像データとが並列に表示されるようになる。ここで、入金データには、券種受付手段85に受け付けられた損券の券種や、価値受付手段86に受け付けられた損券の価値が含まれる。また、撮像部16により紙幣の表面及び裏面の両面を撮像している場合には、操作表示部600には損券の表面及び裏面の画像データがそれぞれ表示されるようになっている。これにより、操作員は入金データを入力した後に、操作表示部600を目視確認することにより入力ミスを発見しやすくなり、損券の券種や価値が誤って入力されてしまうことを防止することができる。
図14に示すように、入金データには、処理日、処理時間、操作員ID(IDカードリーダ810により読み取られた、操作員が所有するID力一ドの読み取り情報)、損券の券種及び価値等の情報が含まれている。すなわち、図14に示す入金データにおける損券の券種は、操作員が図11に示す操作表示部600の表示画面で損券の金種や発行時期を入力することにより券種受付手段85に受け付けられた損券の券種であり、図14に示す入金データにおける損券の価値は、操作員が図11に示す操作表示部600により損券の価値を入力することにより価値受付手段86に受け付けられた損券の価値である。このように、操作表示部600に表示される入金データには、券種受付手段85に受け付けられた損券の券種及び価値が含まれる。
なお、操作表示部600には、1枚の損券の画像データ及びこの損券の入金データが表示されるようになっていてもよく、あるいは、一の取引において撮像部16により得られた全ての損券の画像データ、及び損券の各画像データに対応する各々の入金データ(イメージ伝票)を一覧表示するようになっていてもよい。また、他の例としては、撮像部16により得られた損券の画像データを1枚ずつ表示するか、又は一の取引における全ての損券の画像データを一覧表示するかを選択する選択手段90(図9参照)が設けられており、操作表示部600には、選択手段90により選択された方法により、損券の画像データ及びこの画像データに対応する入金データが表示されるようになっていてもよい。なお、一覧表示する場合に、画面上に同時に表示される損券の表示枚数は、選択手段90を操作して指定できるようになっている。
また、操作表示部600では、入金データ(券種受付手段85に受け付けられた損券の券種を含む)と損券の画像データの両方が一画面上に並べて表示される代わりに、入金データ及び損券の画像データのいずれか一方のみが画面上に表示されて、入金データ及び画像データを切り換えながら表示するようになっていてもよい。
また、本実施形態の有価媒体処理装置500においては、図9に示すように、撮像部16により得られた損券の画像データに基づいて損券の券種(金種や発行時期)を判別する判別手段89が設けられている。そして、操作表示部600では、判別手段89により判別された損券の券種と、操作員が入力して券種受付手段85に受け付けられた損券の券種とが異なる場合には、これを認識できるように、損券の入金データが表示される。例えば、判別手段89によって判別された券種と操作員から受け付けた券種とが異なる損券の入金データは、これらが一致する損券の入金データと異なる色で表示される。具体的には、判別手段89により判別された損券の券種と、券種受付手段85に受け付けられた損券の券種とが一致する場合には、入金データの背景が例えば白色で表示される。これに対して、判別手段89により判別された損券の券種と、操作員から券種受付手段85に受け付けられた損券の券種とが異なる場合には、操作員に警告を発するため、入金データの背景が例えば赤色で表示される。また、判別手段89による判別結果と操作員による入力結果とが異なる場合には、入金データの表示方法を変更することに加えて、操作員に確認を促すメッセージが操作表示部600に表示される。
また、制御部80において、判別手段89により判別された損券の券種、及び算出手段88により算出された損券の有効面積又は失効面領の割合に係る情報に基づいて、損券の価値が自動的に算出されるようになっていてもよい。そして、操作員が図11に示す操作表示部600の操作画面で損券の価値を入力することにより価値受付手段86に受け付けられた損券の価値と、制御部80において自動的に算出された損券の価値とが異なる場合には、操作員に警告を発するため、操作表示部600に表示するこの入金データの背景を、両者の価値が同一である場合の入金データの背景とは異なる色で表示する。また、これに加えて、操作員に確認を促すメッセージが操作表示部600に表示される。
上述したように、操作員が入金データの入力を完了した後、この入金データに誤りがある可能性がある場合には、操作員に確認を促すメッセージを操作表示部600に表示することにより、「損券の券種や価値の選択時」及び「入力完了時」の2度のタイミングで、操作員は入金データのチェックを行うことができる。このため、入金デ−タの入力ミスをより確実に防止することができるようになる。
以上のように、本実施形態では、機体内に損券を投入するための投入部10と、この投入部10により機体内に投入された揖券を撮像して画像データを取得する撮像部16と、損券の券種を受け付ける券種受付手段85と、損券の価値を受け付ける価値受付手段86と、撮像部16により得られた損券の画像データ、及び券種受付手段85により受け付けられた券種に対応して、損券の価値を決定する処理を支援するための支援情報を出力する出力手段87とを有する有価媒体処理装置500が提供される。このように、損券の価値を操作員が決定する処理を支援するための支援情報が出力されることにより、出力した支援情報を画像データとともに例えば操作表示部600に表示することができるので、紙幣の価値判断を行う専門の操作員でなくても、その一部が破れて欠損している損券について、出力された支援情報を参照してその価値判断を正確に行うことができる。
ここで、出力手段87により出力される支援情報は、券種受付手段85により受け付けられた券種の紙幣の全体面積に対する、撮像部16により得られた画像データにおける損券の有効面積又は失効面精の割合を操作員が決定する処理を支援するための情報となっている。より具体的には、支援情報は、図12等に示すような所定の間隔の縦横の格子状ラインとなっている。なお、支援情報として、損券の有効面積又は失効面積の割合を操作員が決定するのを支援することができるものであれば、図12等に示すような格子状ライン以外の面積比を割り出せるものを用いてもよい。
また、前述したように、券種受付手段85により受け付けられた券種の紙幣の全体面積に対する、撮像部16により得られた損券の画像データにおける損券の有効面積又は失効面積の割合は、算出手段88により自動的に算出されるようになっており、出力手段87は、算出手段88により算出された割合も出力するようになっている。これにより、操作員は、支援情報に加えて、算出手段88により算出された割合を参照して損券の価値を判断することができるようになる。
また、本実施形態では、機体内に損券を投入するための投入部10と、投入部10により機体内に投入された損券を撮像して画像データを取得する撮像部16と、損券の券種を受け付ける券種受付手段85と、撮像部16により得られた損券の画像データ及び操作員により入力された入金データ(具体的には、券種受付手段85に受け付けられた損券の券種)を出力する出力手段87とを有する有価媒体処理装置500が提供される。このように、損券の画像データ及び券種受付手段85に受け付けられた損券の券種が出力されることにより、出力情報を例えば操作表示部600に表示させることができるので、操作員は、入力した入金データの内容を損券の画像データと照らし合わせて視覚的に入力ミスを発見することが容易となり、損券の券種について入力ミスを防止することができるようになる。
なお、本実施形態では、有価媒体処理装置500の出力手段87により出力された情報は操作表示部600に表示されるようになっているが、このような態様に限定されることはない。例えば、有価媒体処理装置500自体(具体的には、有価媒体処理装置500の筐体の前面又は上面)に表示部が設けられており、この表示部に、出力手段87により出力された情報が表示されるようになっていてもよい。また、外部の端末やプリンタ700に出力するようにしてもよい。
また、本実施形態の有価媒体処理装置500では、券種受付手段85により損券の券種が受け付けられるとともに価値受付手段86により損券の価値が受け付けられると、受け付けられた損券の券種及び価値に対応する金額の新券が新券収納部50から投出部60に搬送され、この投出部60から機体外に投出されるようになっていてもよい。このような場合には、損券が有価媒体処理装置500の投入部10に投入されたときに、有価媒体処理装置500の機体内に取り込まれた損券の価値に対応する新券を有価媒体処理装置500から出金することができるようになる。
また、本実施形態の有価媒体処理装置500では、価値受付手段86により受け付けられた損券の価値が0であった場合に、この損券を損券収納部40、42に収納するのではなく、価値が0であると判断された損券は一時保留部20から投出部60に搬送され、この投出部60から機体外に投出されるようになっていてもよい。
また、本実施形態の有価媒体処理装置500では、操作員が入金データを操作表示部600により入力した後、図15に示すように、券種受付手段85により受け付けられた券種に対応する紙幣のサンプル画像(具体的には、図15における下段の正券の千円札)が、撮像部16により得られた損券の画像データと並列に操作表示部600に表示されるようになっていてもよい。これにより、撮像部16により得られた損券の画像データと紙幣のサンプル画像とを見比べることによって、操作員が操作表示部600により入力した紙幣の券種が正しいか否かを判断することができる。すなわち、操作員が操作表示部600により入力した紙幣の券種が誤っている場合には、撮像部16により得られた損券の画像データと紙幣のサンプル画像とが互いに異なるものとなるので、操作員は紙幣の券種の入力ミスに気付くことができる。
また、撮像部16により紙幣の表面及び裏面の両方を撮像しており、操作表示部600に損券の表面及び裏面の画像データがそれぞれ表示されるようになっている場合には、紙幣のサンプル画像について、紙幣の表面及び裏面の両方のサンプル画像が操作表示部600にそれぞれ表示されるようになっていてもよい。D一万円券やE一万円券のような、紙幣の表面だけでは券種(具体的には、発行時期)の判別が困難な紙幣についても、裏面のサンプル画像を表示させることにより、券種について操作員の入力ミスをより確実に防止することができる。なお、画面表示の詳細については後述する。
また、券種受付手段85に受け付けられた券種に対応する紙幣のサンプル画像が操作表示部600に表示されるようになっている場合、紙幣のサンプル画像のうち特定部分が他の部分とは異なる態様で表示されるようになっていてもよい。また、撮像部16により得られた損券の画像データについても、この特定部分が他の部分と異なる態様で表示されるようになっていてもよい。具体的には、図15に示すように、撮像部16により得られた損券の画像データや紙幣のサンプル画像のうち、特定部分が二重丸で囲まれた状態で操作表示部600に表示されるようになっていてもよい。ここで、撮像部16により得られた損券の画像データや紙幣のサンプル画像において二重丸で囲まれた特定部分は、その紙幣の券種を判断するのに際だった特徴を有する箇所である。すなわち、撮像部16により得られた損券の画像データと紙幣のサンプル画像とを見比べる際に、操作員は、撮像部16により得られた損券の画像データ及びサンプル画像で、二重丸で囲まれた特定部分を重点的にチェックすることにより、操作表示部600により入力した紙幣の券種が正しいか否かの判断を短時間で行うことができる。
なお、上記の説明では、有価媒体処理装置500の機体内に損券が投入された場合について説明したが、本実施形態がこれに限定されるものではない。例えば、有価媒体処理装置500に損券以外の有価媒体(具体的には、例えば損券以外の紙幣や小切手、手形等)が投入された場合でも、上述した処理と同様の処理を行えるようになっている。すなわち、有価媒体の種類によらず、撮像部16により得られた画像データと、券種受付手段85により受け付けられた券種に対応する有価媒体の価値を操作員が決定する処理を支援するための支援情報とが出力手段87により出力される。また、本発実施形態では、撮像部16により得られた画像データと、券種受付手段85により受け付けられた券種とが出力手段87により出力されるようになっていてもよい。
(搬送補助シート)
本実施形態では、バラ紙幣処理装置100から排出された損券のうち、損傷の度合いが大きい損券は、有価媒体処理装置500の機体内に投入する前に、図16等に示す搬送補助シート900(キヤリアシート)に収容される。そして、損券は、この搬送補助シート900に収容された状態で有価媒体処理装置500の機体内に投入され、搬送補助シート900に収容されたままの状態で損券収納部40、42内に収納されるようになっている。このような態様の詳細について、図9及び図16及び図17を用いて以下に説明する。
搬送補助シート900について図16及び図17を用いて詳細を説明する。図16は、搬送補助シート900の正面図であり、図17は、図16に示す搬送補助シート900を側方から見た図である。なお、図16等では、搬送補助シート900に収容された損券を参照符号Pで示している。搬送補助シート900は、損券を挟んで収容する一対のシート902、904から構成されており、これらの一対のシート902、904は貼付エリア906(図16において斜線表示)において互いに貼り付けられている。また、これらの一対のシート902、904のうち少なくとも一面が透明又は半透明となっている。具体的には、一対のシート902、904として、可視光を透過するIR(赤外線)カットフィルムが用いられる。これにより、搬送補助シート900に収容された損券が有価媒体処理装置500の機体内で搬送部14により搬送されて撮像部16により撮像されたときに、搬送補助シート900に収容されたままで損券の可視光イメージを取得することができる。なお、一対のシート902、904のそれぞれが透明又は半透明となっている場合には、搬送補助シート900に収容された損券の両面の可視光イメージを取得できるようになる。また、搬送部14には、有価媒体を検出して当該有価媒体の搬送を制御するための搬送制御センサが設けられているが、このような搬送制御センサがIRカットフィルムを検出することにより、搬送部14における損券の搬送において分岐ミスやジャム等のトラプルの発生を防止することができるようになっている。
なお、本実施形態では、搬送部14に設けられた搬送制御センサにより検出される部分として、一対のシート902、904の少なくとも一部の領域又は全面にIRカットフィルムのような特定の波長の光を遮断する被検出部分が設けられているが、このような例に限定されることはない。他の態様としては、一対のシート902、904の少なくとも一部の領域又は全面に、特定の波長の光を反射させる被検出部分が設けられていてもよい。
また、搬送補助シート900における一対のシート902、904は、必ずしも透明又は半透明のものでなくともよい。一対のシート902、904として、それぞれ光を透過させないような材料のものを用いてもよい。この場合には、搬送補助シート900に収容された損券について、機体内で撮像部16により画像データを取得することはできないが、有価媒体処理装置500の機体内に投入する前にシート902、904に、搬送補助シート900に収容された損券に関する情報(券種や価値)を直接書き込んでおくことにより、有価媒体処理装置500の機体内から損券が回収される際にこの損券の情報をすぐに確認することができるようになる。
また、本実施形態では、一枚取込モードを選択し、搬送補助シート900に収容された損券を1枚ずつ有価媒体処理装置500の機体内に投入して損券収納部40、42に収納する場合には、有価媒体処理装置500の機体内に投入された損券を搬送部14の搬送路上でー時的に保留し、操作表示部600により操作員が確認の指令を与えると、搬送部14の搬送路上でー時的に保留されていた損券が損券収納部40、42に収納されるようになっている。一方、一括取込モードを選択し、搬送補助シート900に収容された損券をまとめて有価媒体処理装置500の機体内に投入して損券収納部40、42に収納する場合には、有価媒体処理装置500の機体内に投入された損券を一時保留部20に搬送してこの一時保留部20でー時的に保留し、操作表示部600により操作員が確認の指令を与えると、一時保留部20でー時的に保留された損券が損券収納部40、42に収納されるようになっている。
また、本実施形態では、搬送補助シート900に収容された損券が有価媒体処理装置500の機体内で搬送部14により搬送される際に、撮像部16によってこの損券を撮像した画像データが取得されるようになっている。撮像部16によって撮像された画像データは、搬送補助シート900に収容された損券の識別処理にも利用される。
以上のように、本実施形態では、損券を搬送補助シート900に収容する工程と、搬送補助シート900に収容された損券を有価媒体処理装置500の機体内に投入する工程と、有価媒体処理装置500の機体内に投入されて搬送補助シート900に収容された損券を機体内で搬送して当該機体内に収納する工程と、を備えた損券の処理方法が提供される。このような損券の処理方法によれば、その一部が破れて欠損している損券について有価媒体処理装置500の機体内に収納して管理することができる。また、本実施形態では、このような損券の処理方法で用いられる搬送補助シート900が提供される。
また、本実施形態では、有価媒体処理装置500の機体内に投入された、搬送補助シート900に収容された損券を撮像部16により撮像することによって損券の識別を行うようになっている。
また、本実施形態では、搬送補助シート900は、損券を挟んで収容する一対のシート902、904からなる。なお、本実施形態の搬送補助シートは、損券を収容する態様のものに限定されることはない。他の例として、損券に搬送補助シートを付着きせ、搬送補助シートが付着した損券を有価媒体処理装置500の機体内に投入し、搬送補助シートが付着した損券を有価媒体処理装置500の機体内で搬送して当該機体内に収納するようになっていてもよい。この場合でも、その一部が破れて欠損している損券を有価媒体処理装置500の機体内に収納して管理することができる。
また、本実施形態では、搬送補助シート900の一対のシート902、904のうち少なくとも一面が透明又は半透明となっていてもよい。これにより、搬送補助シート900に収容された損券を撮像部16により撮像することができるようになる。また、一対のシート902、904の両面が透明又は半透明となっており、一対のシート902、904のうち少なくとも一方のシートにおける少なくとも一部の領域に、特定の波長の光を遮断又は反射させる被検出部分(具体的には、例えばIRカットフィルム)が設けられていてもよい。この場合には、搬送部14に設けられた搬送制御センサが搬送補助シート900の被検出部分を検出することにより、搬送補助シート900に収容された損券について、搬送部14により搬送される際に分岐ミスやジャム等のトラブルが発生することを防止することができるようになる。
なお、上記の説明では、搬送補助シート900に収容される有価媒体として損券を例に挙げて説明したが、このような例に限定されることはない。搬送補助シート900に収容される紙葉類として、損券以外の紙幣、小切手、手形等を用いてもよい。また、本実施形態では、有価媒体処理装置500の機体内に投入されるべき有価媒体の種類(紙幣、小切手、手形等)によって、異なるタイプ、具体的には異なるサイズの搬送補助シート900に紙葉類を収容するようになっていてもよい。
(損券修復作業)
バラ紙幣処理装置100の内部に収納することができず当該バラ紙幣処理装置100の機体外に排出される損券の状態は、損傷の度合いが大きくセロハンテープ等による修復が必要な修復必要状態と、それほど損領しておらず修復を行う必要のない修復不要状態とに分けられる。これらの態様の詳細について、図9を用いて以下に説明する。
本実施形態の有価媒体処理装置500では、図9に示すように、損券状態受付手段92及び設定手段93がそれぞれ備えられている。損券状態受付手段92及び設定手段93はそれぞれ有価媒体処理装置500の制御部80に接続されており、損券状態受付手段92により受け付けられた情報や設定手段93により設定された情報は、制御部80に送られるようになっている。以下、損券状態受付手段92及び設定手段93の各々について詳細に説明する。
損券状態受付手段92は、損券の状態に関する情報を受け付けるようになっている。ここで、損券状態受付手段92に受け付けられる損券の状態は、損券の修復が必要な修復必要状態、及び損券の修復が不要な修復不要状態である。損券の状態を損券状態受付手段92に受け付けさせる方法としては、手操作による方法及び自動的に受け付け処理を行う方法がある。
損券の状態を手操作で損券状態受付手段92に受け付けさせる方法としては、損券が有価媒体処理装置500の機体内に投入されて撮像部16により撮像された後、操作員が図11に示すような操作表示部600の操作画面を用いて入金データを入力する際に、操作表示部600に表示される「修復:要」又は「修復:否」のいずれかに触れることにより、損券の状態を入力することができる。すなわち、図11に示す操作表示部600において「修復:要」に触れたときには、損券の状態が修復必要状態であるという情報が損券状態受付手段92に受け付けられる。一方、「修復:否」に触れたときには、損券の状態が修復不要状想であるという情報が損券状態受付手段92に受け付けられる。
また、損券の状態を自動的に損券状態受付手段92に受け付けさせる方法について以下に説明する。例えば、投入部10により機体内に投入された損券が搬送補助シート900に収容されていることが、媒体位置決め装置のセンサ1006、搬送部14に設けられた搬送制御センサ、撮像部16等により検出されると、損券の状態が修復必要状態であるという情報が損券状態受付手段92に受け付けられる。一方、損券が搬送補助シート900に収容されていないことが検出されると、損券の状態が修復不要状態であるという情報が損券状態受付手段92に受け付けられる。
また、例えば、撮像部16により撮像された損券の画像データに基づいて、有価媒体処理装置500の機体内に投入された損券が修復必要状態か又は修復不要状態かを、制御部80が自動的に判断するようにしてもよい。
本実施形態の有価媒体処理装置500では、損券状態受付手段92に受け付けられた損券の状態に関する情報に基づいて、投入部10により機体内に投入された各損券が、各損券収納部40、42に振り分けて収納されるようになっている。より具体的には、損券状態受付手段92に受け付けられた損券の状態が修復必要状態であるときには、この損券は集積方式の損券収納部40に収納され、損券状態受付手段92に受け付けられた損券の状態が修復不要状態であるときには、この損券はテ一ブ巻取方式の損券収納部42に収納される。このようにして、投入部10により機体内に投入された損券について、修復必要状態の損券及び修復不要状態の損券を、別々の損券収納部40、42に振り分けて収納することができるようになる。なお、修復必要状態の損券が集積方式の損券収納部40に収納される理由としては、もし仮に修復必要状態の損券がテープ巻取方式の損券収納部42に収納される場合には、このような損券が一対のテープに挟まれてドラム42aにより巻き取られる際に、損券が更に損傷してしまったりジャムが発生してしまったりするというトラブルが発生するおそれがあるからである。このため、損傷の度合いが大きい修復必要状態の損券は、集積方式の損券収納部40へ返送して、この損券収納部40で単に積み重ねるようにして収納する。また、修復必要状態の損券については、後に修復作業を行う必要があるので、修復作業開始時に、全ての修復必要状態の損券を収納部から容易に取り出せるように、集積方式の損券収納部40に収納するようになっている。
修復必要状態の損券が集積方式の損券収納部40に収納された後、操作員はこの損券収納部40に収納された損券を機体内から取り出して、セロハンテ一プ等により修復する修復作業を行う。なお、集積方式の損券収納部40に収納された修復必要状態の損券を機体内から取り出すことができるのは、特定の権限を有する操作員のみとなっている。より詳細には、操作員が自己が所持するIDカードをIDカードリーダ810により読み取らせ、このIDカードリーダ810によって読み取られたIDカードのID情報に基づいて操作員の権限が確認されることにより、特定の権限を有する操作員のみが、有価媒体処理装置500の機体内から損券収納部40に収納された損券を取り出せるようになる。なお、特定の権限を有する操作員に関する情報は、設定手段93により設定することができる。より詳細には、有価媒体処理装置500の機体内から損券を取り出すことができる操作員のID情報や権限に関する情報を、操作表示部600により入力することによって、設定手段93において特定の権限を有する操作員に関する情報が設定される。
前述したように、集積方式の損券収納部40に収納された修復必要状態の損券は、有価媒体処理装置500の機体内から取り出されて、操作員によって修復が行われた後に、修復不要状態の損券として投入部10から機体内に再投入される。そして、修復不要状態となった損券は、テープ巻取方式の損券収納部42に収納されることになる。ここで、1回目に有価媒体処理装置500の機体内に投入された損券と、修復を行った後に再び有価媒体処理装置500の機体内に投入された損券とを、それぞれ撮像部16により撮像することによって、修復前の損券の画像データ及び修復後の損券の画像データの両方を得られるようになっている。そして、貨幣処理システム1の記憶部808や有価媒体処理装置500の記憶部82には、修復前の損券の画像データと、修復後の損券の画像データとが関連付けて記億されるようになっている。このように、修復前後の損券の画像データを関連付けて記憶部808や記憶部82に記憶させることができるため、損券の修復時に何らかの不正等が発したときには、これを追跡することが容易になる。修復前後の画像データが、同じ損券のものであることを確認するために、損券の記番号等の情報を利用する。
なお、画像データについては、修復後の損券が有価媒体処理装置500に再投入されて当該損券の画像データが得られた場合に、修復前後の両方の画像データを残す態様に限らず、修復後の画像データのみを記憶部808や記憶部82に保存する態様であってもよい。この場合には、集積方式の損券収納部40に収納された修復必要状態の損券が有価媒体処理装置500の機体内から取り出されるときに、記憶部808や記憶部82に記憶された修復前の損券の画像データが自動的に消去されるようになっていてもよい。
以上のように、本実施形態では、機体内に損券を投入するための投入部10と、損券を収納する複数の損券収納部40、42と、損券の状態に関する情報を受け付ける損券状態受付手段92とを備え、損券状態受付手段92に受け付けられた損券の状態に関する情報に基づいて、投入部10により機体内に投入された損券が各損券収納部40、42に振り分けて収納される有価媒体処理装置500が提供される。このような有価媒体処理装置500によれば、受け付けられた損券の状態に関する情報に基づいて、機体内に投入された損券を各損券収納部40、42に振り分けて収納するようになっている。機体内に投入された損券の状態に応じて収納先を変えることができるので、様々な状態の損券が同じ収納部に混在することを防止することが可能となり、操作員は効率よく後処理を行うことができる。
次に、損券の修復前後に損券に関する入金データを入力する際に、操作表示部600に表示される画面表示の例について説明する。図18は、一万円札の損券が投入された場合の画面表示の例を示す図である。図11〜図15を参照しながら上述したように、画面上には、入金データとして入力する必要がある金額(金種)、券種、価値及び修復の必要性を示すボタン等が表示される。画面上では、選択可能なボタンと、選択不可能なボタンとが区別可能に表示される。このため、操作員は、画面上左側から順に、選択可能なボタンのみを確認しながら選択してゆくことで、全ての入金データを入力できるようになっている。
具体的には、画面下側に、入金データの入力対象となる損券の画像データが表示されるので、操作員は、この損券の画像データを目視確認する。そして、この損券が一万円札であることを認識すると、画面左側の金額で一万円に対応するボタンを選択する。このとき、判別手段89によって、この損券が一万円札である可能性が高いと判別されている場合には、一万円札に対応するボタンを、他金種に対応するボタンと区別可能に強調して表示したり、画面右側に一万円札のサンプル画像を参考画像として表示したりすることで、操作員の判断を補助するようになっている。また、判別手段89によって金種を判別できない場合には、画面右側に、各金種の画像を表示して、操作員の判断を補助するようになっている。
こうして、金額が選択されると、次に券種の選択を補助するため、画面右側には、選択された金額に対応する各券種のサンプル画像が表示される。具体的には、図18に示すように、一万円札であるとの選択がなされると、一万円札に対応する券種として選択可能なC券〜E券のボタンが他より強調して表示されると共に、画面右側には参考画像として、各券種に対応するサンプル画像が表示される。このとき、D券とE券のように、表面画像だけでは券種の判断が困難であるが裏面画像により判断が容易となる券種については、表面及び裏面の両面のサンプル画像が表示される。画面下部には、損券の表面及び裏面の両面の画像が表示されているので、操作員は、これらを比較することにより、損券の券種を容易に判断ですることができる。また、このとき、例えば一万円札のD券とE券のように、裏面で透かし部分の左側又は右側の画像を比較することにより券種を容易に区別できる場合には、この部分が特徴部分として二重丸等で囲んで表示される。
続いて、図18に示す画面上で券種を選択すると、損券の価値を選択する画面となる。画面上では、損券画像の上部に、自動的に算出された残存面積の割合と、この割合に対応する価値が表示されるので、操作員は、この情報に基づいて価値を選択することができる。また、損券画像上には、価値判断を補助するための格子状のラインが表示される。各格子は、格子内全体に紙幣が残存する格子と、格子内に紙幣が全く含まれない欠損部分の格子と、格子内の一部に紙幣が含まれる格子とが区別して表示されるようになっている。これにより、操作員は、各格子の数から残存面積を算出して、自動的に算出された残存面積の割合を検証できるようになっている。
こうして券種を選択すると、続いて、修復要否に関する情報や鑑定要否に関する情報の選択が行われる。この場合も、画面上には、修復や鑑定が必要となる条件に関する情報が画面上に表示されたり、修復や鑑定が必要となる紙幣のサンプル画像を画面上に表示したりすることで、操作員による判断を補助するようになっている。
このように、画面上に、操作員による判断を補助するための情報が表示されるので、操作員は、容易かつ確実に損券に関する入金データを入力することができる。なお、金額、券種及び価値に関する入力操作は、画面上で金額や券種のボタンに触れて選択する態様に限らず、画面上に表示されるサンプル画像に触れて選択する態様であっても構わない。具体的には、画面右側に表示されたサンプル画像の中から、画面下部に表示された損券と同じであると判断した画像を選択して触れることで、金種や券種が選択される態様であっても構わない。
次に、損券を受け付けてから修復するまでの工程概要について説明する。図19は、損券に係る処理の工程概要を示す模式図である。まず、有価媒体処理装置500に損券が投入されると、投入された損券が撮像部16によって撮像されて画像データが取得される(A1)。次に、図18で説明したように、操作表示部600により、入金データとして、損券の価値や修復の要否に係る情報が入力される(A2)。そして、損券が修復不要である場合には、テープ巻取方式の損券収納部42に収納され、損券が修復要である場合には修復作業時に容易に取り出せるように集積方式の損券収納部40に収納される(A3)。このとき、修復が必要な損券に関するデータには、修復要とされた損券のデータであることを示す修復対象フラグが付され、他のデータと区別可能に保存される。
続いて、所定タイミングで、修復要の損券が収納された損券収納部40から、修復作業の対象となる損券が取り出されて、修復作業が行われる(A4)。修復作業を終えた損券は、再度、有価媒体処理装置500に投入されて、撮像部16によって修復後の損券の画像データが取得される(A5)。修復後の損券の画像データが取得されると、図19に示すように、修復前の画像データ及び修復後の画像データの両方が、操作表示部600の画面上に表示される。このとき、修復後のデータに対応する修復前のデータは、金種及び記番号等のデータを元に、先に修復対象フラグが付されたデータのみを対象として検索されるので、短時間で対応するデータを取得することができる。
操作員によって修復前後のデータが一致することが確認された後、修復前のデータ及び修復後のデータが関連付けて記憶部82に保存され、修復後の損券は修復不要の損券が収納される損券収納部42に収納される(A6)。以上の工程により、修復前の画像データ及び修復後の画像データと、入金データとを関連付けて保存することができる。なお、修復前のデータを残すか否か、修復後の損券をどのように取り扱うかについては操作員によって決定される。例えば、修復前のデータを破棄することもできるし、修復後の損券の収納先として損券収納部40、42以外の収納部を指定することもできる。
なお、本実施形態では、損券状態受付手段92に受け付けられる損券の状態は、損券の修復が必要な修復必要状態と、損券の修復が不要な修復不要状態とに分けられているが、本実施形態がこれに限定されるものではない。例えば、損券における他の種類の状態に関する情報が損券状態受付手段92に受け付けられ、この受け付けられた損券の状態に関する情報に基づいて、機体内に投入された損券を各損券収納部40、42に振り分けて収納するようにしてもよい。
また、上述の説明では、有価媒体処理装置500の機体内に損券が投入された場合について説明しているが、このような例に限定されることはない。例えば、有価媒体処理装置500に損券以外の有価媒体(具体的には、例えば損券以外の紙幣や小切手、手形等)が投入された場合でも、上述した処理と同様の処理が行われるようになっている。すなわち、複数の収納部を有する紙葉類処理装置において、紙葉類の状態に関する情報が受け付けられるようになっており、受け付けられた紙葉類の状態に関する情報に基づいて、機体内に投入された紙葉類を各収納部に振り分けて収納するようになっていてもよい。
なお、このようにして処理された修復不要状態の損券枚数や修復必要状態の損券枚数に基づいて、図23を参照しながら説明したように、損券の回収タイミングが判定される。そして、図20を参照しながら説明したように回収された損券は、最終的には、中央銀行(日本国の場合は日本銀行)に送られることになる。
(装置による入金データ作成)
次に、上述した入金データ作成に係る各処理について詳細を説明する。本実施形態における貨幣処理システム1では、図2に示すように、完了指令受付手段820及び許可指令受付手段822がそれぞれ備えられている。また、本実施形態における有価媒体処理装置500では、図9に示すように、入金データ作成部95及び紙幣情報受付手段96がそれぞれ備えられている。そして、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣が有価媒体処理装置500の機体内に投入されると、この紙幣は撮像部16により撮像され、当該紙幣の画像データが得られるようになっている。ここで、撮像部16は、有価媒体処理装置500の機体内に投入された紙幣のデータを読み取る読取部としても機能するようになる。また、本実施形態の有価媒体処理装置500では、入金データ作成部95により、撮像部16である読取部により読み取られた紙幣のデータに基づいて入金データを作成するようになっている。詳細には、本実施形態の有価媒体処理装置500では、投入部10により機体内に投入される紙幣に関する情報、具体的には紙幣の券種や価値を受け付ける紙幣情報受付手段96が備えられており、入金データ作成部95は、読取部により読み取られた紙幣のデータ(具体的には、撮像部16により撮像された紙幣の画像データ)と、紙幣情報受付手段96に受け付けられた情報とを含むような入金データを作成するようになっている。
具体的には、有価媒体処理装置500の機体内に取り込まれた紙幣が撮像部16により撮像されて一時保留部20に送られると、前述したように、操作表示部600には撮像部16により撮像された紙幣の画像データが表示されるとともに、図11又は図18に示すような操作画面が表示される。そして、操作表示部600に表示された画像データを見ながら、操作員が、操作表示部600により紙幣の券種(金種や発行時期)及び価値を入力すると、入力された紙幣の券種や価値に関する情報が紙幣情報受付手段96に受け付けられる。そして、図14に示すような、紙幣の画像データ及びイメージ伝票を含むような入金データが入金データ作成部95により作成される。ここで、イメージ伝票には、処理日や処理時間、操作員ID、券種、価値等の情報が含まれるが、これらのデータの少なくとも一部又は全部が入金データとして入金データ作成部95により作成される。
そして、本実施形態の貨幣処理システム1では、バラ紙幣処理装置100による紙幣の処理結果と、有価媒体処理装置500により得られる入金データとが関連付けられて記憶部808に記憶されるようになっている。なお、記憶部808の代わりに、有価媒体処理装置500の記憶部82に、バラ紙幣処理装置100による紙幣の処理結果と、有価媒体処理装置500により得られる入金データとが関連付けられて記憶されるようになっていてもよい。ここで、バラ紙幣処理装置100による紙幣の処理結果は、バラ紙幣処理装置100の識別部102による紙幣の識別結果に基づいて得られるようになっている。
また、操作表示部600には、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣の排出原因が表示されるようになっている。ここで、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣の排出原因としては、偽券、損券、旧券、搬送異常等が挙げられる。すなわち、バラ紙幣処理装置100において、識別部102により偽券や損傷や汚れが甚だしい損券、旧券であると識別された紙幣や、搬送異常であると識別部102により識別された紙幣は、バラ紙幣処理装置100の機体内に収納されることはなく、バラ紙幣処理装置100の機体外に排出されるが、このような、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣の排出原因が操作表示部600に表示されるようになる。
また、本実施形態の貨幣処理システム1では、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣を、有価媒体処理装置500の機体内にすぐに投入するか、後ほど投入するかを選択することができるようになっている。より詳細に説明すると、本実施形態の貨幣処理システム1では完了指令受付手段820及び許可指令受付手段822が設けられており、完了指令受付手段820は、一の取引の完了指令を受け付けるようになっている。より具体的には、操作員が操作表示部600により一の取引の完了指令を入力すると、完了指令受付手段820に完了指令が受け付けられる。また、許可指令受付手段822は、完了指令受付手段820に完了指令が受け付けられた後に、バラ紙幣処理装置100から排出きれた紙幣を有価媒体処理装置500に投入することを許可するか否かの指令受け付けるようになっている。より具体的には、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣を一の取引の完了後に有価媒体処理装置500に投入することを許可するか否かについて、操作表示部600により入力できるようになっており、操作員が、許可するという指令を入力すると、これが許可指令受付手段822に受け付けられる。こうして、許可指令受付手段822によって許可指令が受け付けられると、完了指令受付手段820に完了指令が受け付けられた後であっても、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣を有価媒体処理装置500に投入することが可能となる。このような完了指令受付手段820及び許可指令受付手段822が設けられていることにより、貨幣処理システム1が設けられた銀行等の運用状況や業務の混み具合によって、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣を、有価媒体処理装置500の機体内に即時投入するかあるいは後ほど投入するかを選択することができる。
以上のように、本実施形態では、バラ紙幣処理装置100と、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣が投入される有価媒体処理装置500とを備えた貨幣処理システム1であって、有価媒体処理装置500が、機体内に紙幣を投入するための投入部10と、投入部10により機体内に投入された紙幣のデータを読み取る読取部(具体的には、紙幣を撮像して紙幣の画像データを取得する撮像部16)と、読取部により読み取られた紙幣のデータに基づいて入金データを作成する入金データ作成部95とを有しており、記憶部808や記憶部82に、バラ紙幣処理装置100による紙幣の処理結果と、有価媒体処理装置500により得られる入金データとが関連付けられて記憶されるようになっている貨幣処理システム1が提供されるようになっている。また、本実施形態によれば、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣が投入される有価媒体処理装置500であって、記憶部82に、バラ紙幣処理装置100による紙幣の処理結果と、入金データ作成部95により得られる入金データとが関連付けられて記憶されるようになっている有価媒体処理装置500が提供されるようになっている。このように、バラ紙幣処理装置100による紙幣の処理結果と、有価媒体処理装置500により得られる入金データとが関連付けられて記憶部808や記憶部82に記憶されるので、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣の厳正な管理を行うごとができるとともに、有価媒体処理装置500に投入された紙幣が、バラ紙幣処理装置100におけるどの取引のものであるかを明確にすることができる。
また、本実施形態では、バラ紙幣処理装置100には、紙幣の識別を行う識別部102が設けられており、バラ紙幣処理装置100による紙幣の処理結果は、識別部102による紙幣の職別結果に基づいて得られるようになっている。また、有価媒体処理装置500には、投入部10により機体内に投入される紙幣に関する情報(具体的には、紙幣の券種や価値)を受け付ける紙幣情報受付手段96が設けられており、有価媒体処理装置500により得られる入金データは、読取部により得られる紙幣のデータ(具体的には、撮像部16により得られる紙幣の画像データ)と、紙幣情報受付手段96に受け付けられた情報とを含むようになっている。
また、本実施形態では、前述したように、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣の排出原因が操作表示部600に表示されるようになっている。これにより、操作表示部600に表示される、紙幣の排出原因から、この紙幣が有価媒体処理装置500で入金処理することができる紙幣か否かを判断することができるため、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣の中から、有価媒体処理装置500に投入するべき紙幣を選別することができるようになる。
また、本実施形態では、許可指令受付手段822により、完了指令受付手段820に取引完了指令が受け付けられた後に、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣を有価媒体処理装置500に投入することを許可するか否かの指令が受け付けられるようになっている。このため、貨幣処理システム1が設けられた銀行等の運用状況や業務の混み具合によって、バラ紙幣処理装置100から排出された紙幣を有価媒体処理装置500の機体内に即時に投入するかあるいは後ほど投入するかを選択することができる。
なお、上記の説明では、バラ紙幣の処理を行うバラ紙幣処理装置100及びバラ紙幣処理装置100から排出された紙幣が投入される有価媒体処理装置500を例に挙げて説明しているが、本発明による紙葉類処理装置で処理されるべき有価媒体が紙幣に限定されるものではない。例えば、有価媒体として、紙幣以外の小切手や手形等が処理される態様であってもよい。この場合でも、第1の紙葉類処理装置と、第1の紙葉類処理装置から排出された紙葉類が投入される第2の紙葉類処理装置という二つの紙葉類処理装置が用いられ、本発明による紙葉類処理装置に設けられた記憶部には、第1の紙葉類処理装置による紙葉類の処理結果と、第2の紙葉類処理装置により得られる入金データとが関連付けられて記憶されるようになる。
(他処理に係るフローチャート)
次に、有価媒体処理装置500から新券を出金する処理について図21に示すフローチャートを用いて説明する。有価媒体処理装置500からの新券の出金処理では、新券収納部50の各収納部50a、50b、50c、50dに収納された新券の1万円札、5千円札、千円札等が出金されることとなる。
まず、操作員は、所有するID力一ドをIDカードリーダ810により読み取らせる(STEP301)。制御部800は、IDカードリーダ810によって読み取られたIDカードのID情報に基づいて、操作員の権限等を確認する。次に、操作員は、操作表示部600により出金データを入力する(STEP302)。ここで、出金データとは、出金すべき紙幣の合計金額や金種毎の枚数に係る情報のことをいう。出金データが入力されると、新券収納部50の各収納部50a、50b、50c、50dから、新券が1枚ずつ搬送部14の第2の搬送部14bに操り出される(STEP303)。そして、操り出された新券の金種が簡易識別部64によって識別される。ここで、簡易識別部64による新券の識別結果に異常がない場合には(STEP304の「YES」)、この新券は搬送部14の第2の搬送部14bにより投出部60に搬送され、この投出部60に集積される(STEP305)。一方、簡易識別部64による新券の識別結果に異常があった場合には(STEP304の「NO」)、この新券は搬送部14により一時保留部20に搬送され、この一時保留部20に収納される(STEP306)。このような動作は、投出部60に集積された新券の枚数が、入力された出金データに基づく出金枚数に達するまで行われる(STEP307の「NO」)。そして、投出部60に集積きれた新券が出金枚数に達すると(STEP307の「YES」)、投出部60に設けられたシャッタ61aが開放され、操作員が投出部60から出金紙幣を取出可能となる(STEP308)。そして、投出部60に設けられた抜き取り検知部61bにより、投出部60から出金紙幣が抜き取られたことが検知されると(STEP309の「YES」)、シャッタ61aが閉鎖される(STEP310)。
その後、一時保留部20に収納された新券が搬送部14に繰り出され(STEP311)、操り出された新券は新券収納部50の各収納部50a、50b、50c、50dに収納される(STEP312)。その後、記憶部808や記憶部82において、新券収納部50の各収納部50a、50b、50c、50dに収納されている新券の在高が更新されるとともに、出金データが記憶部808や記憶部82に記憶される(STEP313)。
以上のように、本実施形態では、機体内に有価媒体を投入するための投入部10と、損券及び旧券を収納する損券収納部40、42と、投入部10により機体内に投入された有価媒体のうち損券及び旧券を損券収納部40、42に搬送する第1の搬送部14aと、新券を収納する新券収納部50と、新券を機体外に投出するための投出部60と、新券収納部50に収納された新券を投出部60に搬送する第2の搬送部14bとを有するような有価媒体処理装置500が提供されるようになっている。このような有価媒体処理装置500によれば、機体内に投入された損券や旧券を損券収納部40に収納するとともに、新券収納部50に収納された新券を機体外に投出することができるため、新券を出金するための新券出金機を、損券や旧券を収納するための貨幣処理装置とは別に設けた場合と比較して、有価媒体処理装置500がコンパクトな構成となり省スペ一ス化を図ることができる。
なお、本実施形態の有価媒体処理装置500において、損券収納部40、42は、損券及び旧券の両方を収納するものに限定されるものではない。損券収納部40、42がそれぞれ損券又は旧券のうちいずれか一方の紙幣を収納するようになっていてもよい。また、更に、集積方式の損券収納部40が旧券を収納して、テ一プ巻取方式の損券収納部42が損券を収納するようになっていてもよいし、これとは逆に、集積方式の損券収納部40が損券を収納して、テープ巻取方式の損券収納部42が旧券を収納するようになっていてもよい。
また、本実施形態では、有価媒体処理装置500の機体内において新券収納部50は損券収納部40、42よりも機体前方(図3における左側)に配置されている。これにより、出金用の新券を有価媒体処理装置500の機体内に補充したいときに、新券収納部50が機体内の奥方に設けられている場合と比較して、機体前面の扉18を開くだけで迅速かつ容易に新券収納部50に新券を収納することができるようになる。
また、本実施形態では、有価媒体処理装置500の機体内において、投入部10により機体内に投入された有価媒体は、損券収納部40、42の上方に設けられた一時保留部20に一時的に保留されるようになっている。このため、操作員は、有価媒体を一時保留部20に一時的に保留した状態で、損券収納部40、42に収納させるかあるいは機体外に返却するかを選択することができる。
また、本実施形態では、特定の有価証券を収納する特定有価証券収納部30が設けられており、投入部10により機体内に投入された有価媒体のうち特定の有価証券(例えば小切手や手形等)が第1の搬送部14aにより特定有価証券収納部30に搬送されるようになっている。
この際に、有価媒体処理装置500の機体内において、特定有価証券収納部30は損券収納部40、42よりも上方に配置されており、新券収納部50は損券収納部40、42及び特定有価証券収納部30よりも機体前方に配置されている。また、有価媒体処理装置500の機体内において、投入部10により機体内に投入された有価媒体を一時的に保留する一時保留部20は、特定有価証券収納部30の上方に配置されている。
また、本実施形態の有価媒体処理装置500では、集積方式の特定有価証券収納部30や損券収納部40を、テープ巻取方式の損券収納部42よりも上方に配置したことにより、集積方式の特定有価証券収納部30や損券収納部40からの特定の有価証券や損券等の手回収を容易にしている。
また、本実施形態では、第1の搬送部14aにおける有価媒体の搬送路、及び第2の搬送部14bにおける新券の搬送路は互いに独立して設けられている。これにより、新券の搬送路が、損券や旧券、小切手といった有価媒体の搬送路とは別のものとなるため、新券の搬送路が損券等の有価媒体により汚されることを防止することができ、きれいな状態で新券を投出部60から投出することができるようになる。
また、本実施形態では、損券収納部は、損券及び/又は旧券が積層状態で集積されるような集積方式の損券収納部40と、損券及び/又は旧券が一対のテープに挟まれながらドラム42aに巻き取られるようなテープ巻取方式の損券収納部42とを含んでいる。なお、本実施形態では、このような例に限定されることはなく、有価媒体処理装置500において、テープ巻取方式の損券収納部42が設けられておらず、損券及び/又は旧券が積層状態で集積されるような集積方式の損券収納部40のみが設けられるようになっていてもよい。また、更に他の構成の有価媒体処理装置500では、損券及び/又は旧券が積層状態で集積されるような集積方式の損券収納部40が設けられておらず、テ一プ巻取方式の損券収納部42のみが設けられるようになっていてもよい。
また、本実施形態では、紙幣を例に説明を行ったが、処理対象がこれに限定されるものではなく、記念硬貨、旧硬貨等を対象として、損傷度合いの激しい硬貨や汚損の激しい硬貨を処理することも可能である。