JP2014069336A - 水圧転写用フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】インクジェット工法により高精細印刷を可能にすると共に、転写物の品位を保ちつつ耐紫外線特性を向上させる水圧転写用フィルムを提供する。
【解決手段】水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム(1)と、この支持体フィルム(1)の片面にコートされるインク吸収層(20)とを備える。インク吸収層(20)は、インクジェットインクの溶媒を吸収するアクリル樹脂系のインク受容性樹脂(21)と、インク受容性樹脂(21)中に設けられる有機系の紫外線吸収剤(22)および酸化金属微粒子(23)とを有する。
【選択図】図1

Description

この発明は、例えば、凹凸のある立体面や曲面を有する成形品に絵柄層を転写させることで意匠を付与する水圧転写工法において使用される水圧転写用フィルムに関する。
水圧転写工法は、意匠性に富む絵柄層を凹凸のある立体面や曲面を有する成形品に付与させることができる技術として知られている(例えば、特許第2757346号公報(特許文献1))。
従来、水圧転写工法で用いられる水圧転写用フィルムの製造には、支持体であるポリビニルアルコールフィルムなどの水溶性または水膨潤性フィルムの上に、グラビア印刷等の印刷手段によって絵柄層を形成する方法が採用されていた。
しかし、近年の多品種小ロット生産の要求増加に伴い、インクジェット工法により絵柄層を形成する方法が注目を集めている(例えば、特許第3952748号公報(特許文献2))。
しかしながら、インクジェット工法で絵柄を印刷する場合、インクジェットインクは、粘度が2〜20cp程度に小さくする必要があり、さらに、インク溶媒に対して比重の大きい着色顔料を安定して分散した状態にするために、サブミクロンオーダーの小さい着色顔料をインク溶媒中に分散させている。そのために、従来のグラビア印刷の着色顔料に比べて、耐紫外線性が弱いという課題があった。また、インクジェットインクは固形分に対してインク溶媒成分が多いため、水溶性フィルムにそのままインクジェット印刷を行うことは困難であった。
これら課題の解決を図るために、特開2009−214420号公報(特許文献3)では、水圧転写シートの透明受像層に紫外線吸収剤等の添加剤を導入することが示されている。
また、特開2007−98608号公報(特許文献4)では、水圧転写シートの伸展による絵伸びを防止することを目的として、絵柄印刷層の下地層として、無機顔料を過半数含む伸展防止層を設ける構造が提案されている。
特許第2757346号公報 特許第3952748号公報 特開2009−214420号公報 特開2007−98608号公報
ところで、本願の発明者らは、インクジェット印刷に用いる水圧転写用フィルムの耐紫外線性を高める目的で検討を行った。この結果、水圧転写用フィルムの受像層中に紫外線吸収剤を添加することで、耐紫外線性を向上させることができるが、紫外線吸収剤の添加量や、インクジェット印刷工程及び水圧転写工程に適したものとしなければ、所望の絵柄転写物が得られないことが分かった。
すなわち、特許文献3において、水圧転写用フィルムの受像層に添加剤を入れることは示唆されているが、高品位の転写物が得られる水圧転写用フィルムについては示唆されていない。
そこで、この発明の課題は、インクジェット工法により高精細印刷を可能にすると共に、転写物の品位を保ちつつ耐紫外線特性を向上させる水圧転写用フィルムを提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の水圧転写用フィルムは、
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、
この支持体フィルムの片面にコートされるインク吸収層と
を備え、
上記インク吸収層は、
インクジェットインクの溶媒を吸収するアクリル樹脂系のインク受容性樹脂と、
上記インク受容性樹脂中に設けられる有機系の紫外線吸収剤と、
上記インク受容性樹脂中に設けられる酸化金属微粒子と
を有することを特徴としている。
この発明の水圧転写用フィルムによれば、上記インク吸収層は、インク受容性樹脂と、有機系の紫外線吸収剤と、酸化金属微粒子とを有する。これにより、インクジェットインクで描画された絵柄層を、紫外線吸収効果を有するインク吸収層で保護することが可能となり、耐紫外線性の高い転写物を得ることが可能となる。
また、一実施形態の水圧転写用フィルムでは、
上記インク受容性樹脂は、酢酸エチル溶媒からなるコート液を固化させてなるアクリル樹脂系イソシアネート架橋物であり、
上記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であり、
上記酸化金属微粒子は、酸化亜鉛微粒子であり、
上記紫外線吸収剤の上記インク受容性樹脂に対する固形重量比は、10%以下であり、
上記酸化金属微粒子の上記インク受容性樹脂に対する固形重量比は、8%以下である。
この実施形態の水圧転写用フィルムによれば、上記紫外線吸収剤の上記インク受容性樹脂に対する固形重量比は、10%以下であり、上記酸化金属微粒子の上記インク受容性樹脂に対する固形重量比は、8%以下である。これにより、インク吸収特性が良好で、水圧転写の転写性を維持しつつ、耐紫外線性を向上させた水圧転写用フィルムを得ることが可能となる。
また、一実施形態の水圧転写用フィルムでは、
上記インク吸収層上にインクジェットインクにより印刷される絵柄層を備え、
上記インク受容性樹脂は、密着剤により半溶解されて、被転写物の表面に定着可能であり、
上記紫外線吸収剤は、上記インクジェットインクの主溶媒、および、上記密着剤の主溶媒に可溶である。
この実施形態の水圧転写用フィルムによれば、上記インク受容性樹脂は、インクジェットインクにより膨潤し、密着剤により半溶解する状態となるが、上記紫外線吸収剤をインクジェットインクの主溶媒および密着剤の主溶媒に可溶な構成としておくことで、紫外線吸収剤の析出を防いで、高品位な転写物を得ることができる。
また、一実施形態の水圧転写用フィルムでは、
上記インクジェットインクの主溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、
上記密着剤の主溶媒は、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート又はエチレングリコールモノブチルエーテルである。
この実施形態の水圧転写用フィルムによれば、上記インクジェットインクの主溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、上記密着剤の主溶媒は、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート又はエチレングリコールモノブチルエーテルである。これにより、印刷品位と転写物の品位が向上するとともに、転写プロセスの安定化を図ることができる。
また、一実施形態の水圧転写用フィルムでは、上記インク吸収層の厚みは、2μmから7μmである。
この実施形態の水圧転写用フィルムによれば、上記インク吸収層の厚みは、2μmから7μmであるので、紫外線吸収効果と絵柄印刷・転写プロセスの安定性を兼ね備えたフィルムを得ることが可能となる。
この発明の水圧転写用フィルムによれば、上記インク吸収層は、インク受容性樹脂と、有機系の紫外線吸収剤と、酸化金属微粒子とを有するので、インク吸収性能、転写柔軟性及び転写物品位を満足させつつ、充分な耐紫外線性を得ることが可能となる。
本発明の一実施形態の水圧転写用フィルムを示す断面図である。 水圧転写用フィルムの転写工程を説明する説明図である。 水圧転写用フィルムを用いた転写品の断面図である。 アクリル樹脂に、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールを1〜15%の範囲で配合した際の諸特性を示す表である。 各種微粒子分散液を添加した際のアクリル樹脂分散液の1時間後及び24時間後の粘度増加率を示す表である。 アクリル樹脂に有機系紫外線吸収剤及び酸化亜鉛微粒子の両方を添加した際の諸特性を示す表である。
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
(水圧転写用フィルムの構成)
図1は、この発明の一実施形態の水圧転写用フィルムを示す簡略断面図である。図1に示すように、この水圧転写用フィルム1は、支持体フィルム10と、インク吸収層20と、絵柄層30とを備える。インク吸収層20は、支持体フィルム10の片面にコートされる。絵柄層30は、インク吸収層20に印刷される。
上記インク吸収層20は、アクリル樹脂系のインク受容性樹脂21と、このインク受容性樹脂21中に設けられる有機系の紫外線吸収剤22と、このインク受容性樹脂21中に設けられる酸化金属微粒子23とを有する。インク受容性樹脂21は、インクジェットインクの溶媒を吸収する。紫外線吸収剤22は、紫外線を吸収する。
上記支持体フィルム10は、水溶性または水膨潤性を有するシートであれば良く、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストリン、ゼラチン、にかわ、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルブチルセルロース等の樹脂をシート状に形成したものが用いられる。支持体フィルム10の厚さとしては、10〜100μmが好ましい。本実施の形態では、厚さ30μmのポリビニルアルコール樹脂からなるシートを使用している。
上記インク吸収層20は、アクリル樹脂を非水系溶媒に溶解した塗工液を支持体フィルム10上に塗工し、非水系溶媒を蒸発させることで、形成される。インク吸収層20のインク受容性樹脂21は、アクリル樹脂であり、このアクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体などの1種単独または2種以上の混合物が用いられる。本実施の形態では、アクリル酸ブチルと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体を用いている。
なお、アクリル樹脂溶解する非水系溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の1価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチレングリコール・モノ・メチルエーテル、エチレングリコール・モノ・エチルエーテル、エチレングリコール・モノ・ブチルエーテル、ジエチレングリコール・モノ・メチルエーテル、ジエチレングリコール・モノ・エチルエーテル、ジエチレングリコール・モノ・ブチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコール・モノ・エチルエーテル・アセテート、エチレングリコール・モノ・ブチルエーテル・アセテート、ジエチレングリコール・モノ・メチルエーテル・アセテート、ジエチレングリコール・モノ・エチルエーテル・アセテート、ジエチレングリコール・モノ・ブチルエーテル・アセテート等の酢酸エステル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類が単独あるいは混合溶剤として使用させる。本実施の形態では、非水系溶媒の主成分(主溶媒)として酢酸エチルを使用している。この他には、ガラス転移点を調整するため、後述するフタル酸ジオクチルを微量添加しているものもある。
上記紫外線吸収剤22は、インク吸収層20の形成に用いる塗工液中に予め溶解させておき、インク吸収層20の塗工液を塗工後に乾燥・固化させることで、インク吸収層20内に点在させる。
上記紫外線吸収剤22は、アクリル樹脂分散溶液の主溶媒に対して溶解性が高いものが望ましい。例えば、酢酸エチルを主溶媒とした場合、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(100gの酢酸エチル中に20g程溶解する)、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(同じく15g程溶解)、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(同じく5g程溶解)が適し、溶解度が高いほうが望ましい。
上記酸化金属微粒子23は、インク吸収層20の形成に用いる塗工液中に予め溶解させておき、インク吸収層20の塗工液を塗工後に乾燥・固化させることで、インク吸収層20内に点在させる。
上記酸化金属微粒子23としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、アルミナ等がある。可視光の光透過性を保持したまま紫外線光を遮断させるものとしては、レイリー散乱則に即して、インク吸収層20の物質と屈折率が近く粒子径が小さいほど良好となり、100nm以下の平均粒子径の酸化亜鉛微粒子が最も好適である。酸化亜鉛は、酸化物半導体的特性を有し、そのバンドキャップは、3.2eVの直接遷移型であるため、380nmより小さい波長の高エネルギー光を吸収することが可能となる。
我々の検討の結果では、水圧転写用フィルム1の支持体フィルム10としては、転写の安定性の面で、水溶性ポリビニルアルコールが良い。そして、樹脂成分としては、アクリル酸ブチルと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体を用い酢酸エチルを溶媒とした塗工液を用いることで、水溶性ポリビニルアルコール表面に対し、2〜7μm厚の薄層コートであっても安定したコートが可能となり好適であった。
更に、樹脂成分として前述のアクリル樹脂を用い酢酸エチルを溶媒とした塗工液に対して、酢酸エチル溶媒で希釈したイソシアネート溶液を少量(〜1%)添加したのち、水溶性ポリビニルアルコール表面に塗工し乾燥させることで、印刷性と転写工程での柔軟性を更に兼ね備えた水圧転写用フィルム1を得ることが可能となる。イソシアネート溶液の添加により、インク吸収層20は、イソシアネート基により部分的に三次元網目構造を形成することができる。このイソシアネート溶液の最適添加量は、アクリル樹脂成分及び後述する活性剤成分により異なるが、印刷性と転写性を更に高めるためには、実験により導出された量のイソシアネート溶液を添加することが望ましい。
2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール又は2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤22が10%以下の配合では、イソシアネート反応を阻害することなく、インク吸収層20として良好な特性を維持できることが明らかとなった。
また、上記酸化金属微粒子23としての酸化亜鉛微粒子は、添加量を増やしても、インク受容性樹脂21の特性を悪化させることはない。しかし、酸化亜鉛微粒子のインク受容性樹脂21に対する固形重量比として、10%以上添加すると、添加直後から微粒子の分散が不安定となり、塗工液の経時粘度増加が大きくなってしまい、コート処理を行うことは不適となった。
また、上記インク受容性樹脂21として、アクリル樹脂を用いた場合、アクリル樹脂が活性剤などの非水系溶剤に対して膨潤、再溶解しやすく、膨潤、再溶解している状態では、軟化しているため、変形が容易となる。さらに、溶剤成分が乾燥すると、そのままの形状を保持しようとする性質があり、軟化前の形状に戻ろうとする力が働かない。このため、水圧転写工程時に、水圧転写用フィルム1にシワが入り、意匠が損なわれることを防止することができる。また、アクリル樹脂は、非水系溶剤に対して溶解可能であり、インク受容性樹脂21としての性能を持たせるために、高分子化した場合における粘度上昇も小さく、取り扱いも容易である。このため、水溶性、水膨潤性シートにも容易にコートすることができる。
なお、比較実験として、インク吸収層20の材料として、一般的に良く用いられているポリウレタン樹脂を用いて、酢酸エチル溶媒からなる塗工液を試作し検討を行ったが、ゴムのような弾性があり、成形品をフィルムに押し当てた際に伸びようとするものの、その弾性力により元の形に戻ろうとするため、結果的にフィルムにシワが入ったまま転写されてしまい不適であった。
また、アクリル樹脂を非水系溶媒に溶解した塗工液を支持体フィルム10上に塗工させる方法としては、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート等のコーティング手段を用いることができるが、支持体フィルム10は、一般的にロール形状で梱包されており、ロール・ツー・ロールと呼ばれる処理方法が好ましく、グラビアコート、ロールコート、ダイコート等のコーティング手段が好ましい。
また、他用途に用いられるインク吸収層20は、一般的に10〜30μmの厚みがあるが、水圧転写用フィルム1においては、印刷性と転写性を両立させるためには、インク吸収層20の厚みが2〜7μmであることが望ましい。2μm以下では、インク量が多いとインク吸収層20に層厚み全域に亘るひび割れが発生してしまい転写品質が悪化する一方、7μm以上では、転写時にシワが発生する可能性が高くなる。なお、転写時のシワの発生を更に低減するには、インク吸収層20の厚みは、2〜5μmの範囲であることが望ましい。
また、塗工液を支持体フィルム10上に塗工した後、オーブン等の乾燥手段により加熱乾燥されることでインク吸収層20が形成されるが、加熱乾燥することにより支持体フィルム10が水圧転写工程において、着水後の軟化、溶解、膨潤する時間に変化が起きないよう、加熱する温度は40〜80℃、加熱時間は1分〜10分であることが好ましい。本実施の形態では、80℃のオーブンにより1分加熱乾燥している。
(水圧転写用フィルムの製造方法)
第一の製造方法例としては、酢酸エチル溶媒からなる固形分20重量%のアクリル樹脂分散液を準備して、その分散液に予め秤量した2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールを攪拌しながら投入していく。
本実施例で用いたアクリル樹脂は、イソシアネート硬化型アクリル樹脂であり、イソシアネート架橋剤の添加量を調整することでインク吸収性能と転写時の柔軟性を調整することができる。アクリル樹脂分散液に所定のイソシアネート架橋剤を添加して十分撹拌する。
そして、例えば10%の固形分20重量%のアクリル樹脂分散液が100gの場合、その固形分20gに対して20×0.10=2gとなり、アクリル樹脂分散液が100gに2gの2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールを投入していく。そして、60分間、スターラーで攪拌する。
次に、一次平均粒子径が20nmの酸化亜鉛微粒子を、ポリエステル系分散剤を用いて、酢酸エチル溶媒中に分散させた酸化亜鉛含有量20重量%の酸化亜鉛分散液を、準備する。なお、分散剤は、別途3%配合されることから、固形分としては厳密には23重量%となる。2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが添加されたアクリル樹脂分散液の固形分量(紫外線吸収剤の分を除く)に対し、酸化亜鉛量を8%追加するように、酸化亜鉛分散液を撹拌しながら添加していく。例えば、固形分20重量%のアクリル樹脂分散液100gでは、アクリル樹脂固形分量は20gとなり、20×0.08=1.6gの酸化亜鉛微粒子が含まれるよう、1.6÷0.2=8gの酸化亜鉛分散液を、アクリル樹脂分散液に導入する。
このようにして調合されたアクリル樹脂分散液は、固形分濃度が15%となるように更に酢酸エチルにより希釈される。
次に、A3サイズにカットした支持体フィルムの上に、アクリル樹脂分散液をワイヤーバー(No14)を用いてコートし、70℃のオーブンで5分乾燥させることで、厚み4μmの水圧転写用フィルムを得た。この製造方法は、主に各種調合量のテスト評価、及び少量生産時に用いた。
第二の製造方法としては、第一の製造方法と同じくアクリル樹脂分散液と酸化亜鉛分散液を混合したのち、幅50cmのロール状に巻かれている支持体フィルムにグラビアコーターで均一にコートしたのちインラインで乾燥炉に導入し、乾燥させることで厚み4μmのインク吸収層を形成し、ロール状に巻き取った。
(水圧転写用フィルムより製造した絵柄転写品)
図2は、本発明の水圧転写用フィルム1を用いて転写を行う説明図である。水圧転写用フィルム1は、支持体フィルム10に予め紫外線吸収剤22及び酸化金属微粒子23を導入したインク吸収層20を形成しておき、必要に応じて後述するインクジェット印刷によりインク吸収層20の上に絵柄層30を形成する。絵柄層30が形成された水圧転写用フィルム1は、支持体フィルム10側を水面11に浮かべる。所定時間が経過したのち、絵柄層30側に、キシレン、酢酸ブチル、エチルベンゼン、メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピレート等からなる有機溶剤をスプレーガン工法により塗布し、ABS樹脂40を絵柄層30側から押し当てることで、絵柄層30及びインク吸収層20はABS樹脂40と密着する。その後、水面から取り出したABS樹脂40には、絵柄層30、インク吸収層20及び半溶解した支持体フィルム10が残る。
次に、支持体フィルム10は温水により洗い流され、絵柄層30及びインク吸収層20が付いたABS樹脂40はオーブンにて水分除去の乾燥が行われる。
図3は、絵柄転写品の模式断面図である。インク吸収層20の側からウレタンクリア50の塗装を行う。このようにして得られた絵柄転写品は、ウレタンクリア50側から絵柄が視認され、絵柄転写品の退色の原因となる紫外光も入ることになるが、本発明の構成ではインク吸収層20内に紫外線を遮断する効果を有する紫外線吸収剤22が導入されているため、インクジェットインクにより着色された絵柄層30に紫外線が照射されにくくなる。
図4は、本実施例のアクリル樹脂中に、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールを1〜15%の範囲で配合した際の諸特性を表している。
コート後の1ヶ月後の表面観察評価では、アクリル樹脂(インク受容性樹脂)に対して固形重量比12%添加しても、コートしたのち1ヶ月経過しても、析出等が発生せず、良好な特性を保っていた。一方で、固形重量比15%では、フィルム表面に経時クラック若しくはブリードアウトが発生し、不適であった。
続いて、インクジェット印刷により印刷した結果、12%のサンプルにおいて、印刷前には見られなかったブリードアウトが発生し、不適となった。
続いて、転写工程では、10%以下の条件全てにおいて問題はなかった。
以上の結果から、インクジェットインクを吸収するアクリル樹脂を有する水圧転写用フィルムにおいて、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールは、10%以下の配合が適することがわかる。
また、印刷性と転写性の両立の点で、インク吸収層の厚みは2〜7μmの範囲にあることが望ましい。
また、本実施例で用いる紫外線吸収剤は、受容性樹脂分散液の主溶媒、インクジェットインクの主溶媒、密着剤の主溶媒の全てに対して、溶媒重量比で5%以上の可溶性をもつものを選択する。これにより、印刷後及び転写後において品位の良い転写物を得ることができる。
なお、密着剤の主溶媒を、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート又はエチレングリコールモノブチルエーテルとし、インクジェットインクの主溶媒を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとした場合、紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールが好適である。
図5は、酢酸エチル溶媒からなるアクリル樹脂分散液中に、各種微粒子分散液を添加した際のアクリル樹脂分散液の1時間後及び24時間後の粘度増加率を示している。添加量は、固化したアクリル樹脂重量に対して添加した微粒子自体の重量%を現しており、アクリル樹脂分散液が支持体フィルム上にコートされ固化した場合に、吸収層重量に対して無機酸化物微粒子がどれだけ含まれるかを示す値である(例えば、5g/m2でインク吸収層がコートされたとすると添加量6%条件では0.3g/m2の無機酸化物微粒子が含まれることとなる)。
粘度変化率は、微粒子分散液を添加して攪拌した直後のアクリル樹脂分散液の粘度を1とした場合に、1時間後及び24時間後の粘度増加比率を示している。例えば、A2条件では添加後初期粘度50.1cp、1時間後52.7cp、24時間後93.6cpとなり、比率では1.1及び1.8としている。
このように、アクリル樹脂分散液中に微粒子分散液を導入するとアクリル樹脂及び微粒子の分散状態が変わり、程度に差はあるが経時的に徐々に二次凝集していくことが明らかとなった。
二次凝集が進みすぎると、粒子径が小さいことによる透明性が損なわれ、更に、ダイコート、グラビアコート等の量産コートにおける作業リードタイム内の塗液の粘度変化の許容の点から、1時間後に1.3以下、24時間後に3以下であることが望ましい。
また、酸化亜鉛は直接遷移型バンドキャップの酸化半導体に対して、酸化チタンは間接遷移型であるため、可視光領域の光吸収を起こしやすく、同量の添加であっても白みがかってしまい、吸収層厚み2μm〜7μmの範囲では、酸化チタン添加量として6%程度が限界となる。一方、酸化亜鉛は10%配合しても、透明性が得られていた。図5からも、酢酸エチル溶媒のアクリル樹脂分散液に対しては、同種の酢酸エチル溶媒を主成分とする酸化亜鉛粒子分散液が適しており、酸化亜鉛粒子分散液の分散液としては、ポリエステル系のものを用いることが更に望ましい。
図6は、アクリル樹脂中に、有機系紫外線吸収剤及び酸化亜鉛微粒子の両方を添加した際の諸特性を示している。図4と図5の結果を踏まえて、有機系紫外線吸収剤として、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールを5〜12%の範囲で配合する。そして、無機金属微粒子として、酢酸エチル溶媒にポリエステル分散剤を用いて均一分散させた酸化亜鉛微粒子を、アクリル樹脂に対する固形重量比(固形分比)8%とした。
サンプルG1〜G3は、有機系紫外線吸収剤のみを添加したものであり、サンプルH1〜H3は、有機系紫外線吸収剤に加えて酸化亜鉛微粒子を添加したものである。
有機系紫外線吸収剤のみを添加したものでは、配合率12%において、印刷後に有機系紫外線吸収剤がブリードアウトして、表面に不均一なムラを生じさせた。サンプルG1〜G3では、サンプルH1〜H3の条件に酸化亜鉛微粒子を固形分比8%添加したものであるが、有機系紫外線吸収剤を12%入れた場合には、印刷後にブリードアウトを起こし、10%入れた場合は起こらない。これは、サンプルH2〜H3と同様な結果となった。一方、紫外線吸収率は、酸化亜鉛微粒子を導入したサンプルG1、G2において向上した。
発明者らは、インク吸収層に耐紫外線性を持たせるにあたり、有機系紫外線吸収剤を過剰に添加すると、印刷後にブリードアウトを生じさせてしまい、一方で、酸化金属系微粒子を過剰に配合すると、インク吸収層の塗工液の粘度安定性が悪化して、量産に適したコート処理が行えないことがわかった。
そして、水圧転写の転写安定性の点から見ると、インク吸収層の厚みは、2μm〜7μm程度と薄いことが望ましい。しかし、インク吸収層の厚みが薄いために、十分な耐紫外線吸収性を得るには、有機系紫外線吸収剤及び酸化金属系微粒子を過剰に近いレベルで添加する必要があること明らかとなった。そして、有機系紫外線吸収剤及び酸化金属系微粒子の配合限界の原因は異なることから、両者を併用することで、生産安定性を維持しつつ紫外線吸収率を向上させることができることを見出した。
また、本発明の水圧転写用フィルムを用いて転写被写体を作成することで、耐紫外線性を得ながら、次のような利点が得られる。
薄い絵柄部分では、絵柄層30のバインダー樹脂量が少ないためにそのままでは被転写面との密着性が良くないが、本発明では、絵柄層30を覆うように透明のインク吸収層20が形成されるため、密着性及び耐久性が向上する。
インクジェット工法により絵柄描画できるバインダー樹脂は、耐溶剤性に制約があるため、転写後のトップコート(透明の保護層形成)に用いる溶剤が限定されるが、より耐溶剤性のあるインク吸収層20があることで、トップコートの制約がない。
(水圧転写用フィルムの吸収スペクトル)
紫外線吸収剤をインク受容性樹脂に配合した水圧転写用フィルムの分光スペクトルは、分光光度計(日立製U−3900)を用いて、支持体フィルムに吸収層が付いた状態で200〜800nmの波長範囲で計測し、380nm以下の紫外光領域の遮光特性を確認した。なお、厚み4μmのインク吸収層において、紫外線波長領域の紫外線吸収率は、図4〜図6に示している。
(インクジェットインク)
本発明による非水系インクジェットインクの組成物は、顔料と、顔料を分散させる分散剤と、樹脂と、溶媒の成分が少なくとも含まれている。以下、各成分について説明する。
<顔料>
非水系インクジェットインクの組成物に使用される顔料は、特に限定されるものではなく、無機顔料でも有機顔料でも適宜選択できる。
無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、カオリナイト、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、べんがら、クロムバーミリオン、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、コバルトグリーン、コバルトブルー、群青、紺青などが挙げられる。
有機顔料としては、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、ジアゾ縮合顔料、アゾメチン顔料などのアゾ顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、イミダゾロン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、オキサジン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料などの多環式顔料などが挙げられる。
具体的には、例えば、ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、34、35、37、42、53、65、74、81、83、93、94、95、110、111、128、129、138、150、151、153、154、155、157、175、180、ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、17:1、27、29、60、ピグメントグリーン7、36、ピグメントレッド5、17、22、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、53:1、57:1、101、112、122、146、177、178、179、185、202、254,255、ピグメントバイオレット、19、23、50、ピグメントオレンジ13、16、ピグメントブラック7、ピグメントホワイト6、18、21などが挙げられる。これらの顔料は1種もしくは2種以上を混合して用いることができる。
分散処理後の顔料の平均一次粒子径は、分散性と吐出性を考慮すると50〜200nmであることが好ましく、さらには60〜150nmであることがより好ましい。顔料の平均一次粒子径が上記範囲より小さい場合、凝集性が高まったり、発色性が悪くなったりする。また、逆に上記範囲より大きい場合、ノズルの目詰まりが起こりやすくなり、吐出性が不安定化する。
インク組成物に占める配合量として、好ましくは1〜15重量%であり、より好ましくは、2〜10重量%である。顔料の配合量が上記範囲より少ない場合、発色性が悪くなり、淡い色目しか表現できず、逆に上記範囲より多い場合、インク組成物自体の粘度安定性が悪くなり、インク品質が十分に保てなくなる。
これらの顔料を顔料分散剤にて効果的に有機溶剤中に安定に分散させるためには、顔料の表面に反応性の官能基(ヒドロキシル基、カルボキシ基、スルホン酸基等)を備えているほうが、顔料分散剤との相互作用が高まり好適である。反応性の官能基がない場合でも、酸素プラズマ処理、UV照射処理などの表面処理を行えば、反応性の官能基を導入できる。
<顔料分散剤>
非水系インクジェットインクの組成物に使用される顔料分散剤としては、イオン性の界面活性剤や、アニオン性、もしくはカチオン性の高分子化合物等が使用できる。特に、塩基性官能基が分子鎖中に含まれる高分子化合物が、有機溶媒中での顔料表面に吸着性がよく、安定した分散効果が得られるので好ましい。
具体的には、市販の商品として、BYKChemie社製Disperbyk−161、162、163、166、182、183、184、185、2000、2050、2150、味の素ファインテクノ株式会社製アジスパーPB−821、822、881、楠本化成株式会社製ディスパロンDA−703−50などが挙げられる。
顔料分散剤は、顔料の種類、使用する有機溶剤の種類に応じて適宜選択する必要がある。顔料分散剤のインク組成物に占める配合量として、有機顔料に対しては好ましくは10〜100重量%、より好ましくは15〜80重量%で、無機顔料に対しては、好ましくは0.5〜8重量%、より好ましくは1〜5重量%で添加される。上記範囲より小さい場合、目的の分散性能が発揮されず凝集性が高くなり、逆に上記範囲より大きい場合、粘度が高くなるために吐出性が不安定化もしくはノズル目詰まりを引き起こす。
<バインダー樹脂>
本発明に用いる非水系インクジェットインクの組成物に含まれる樹脂としては、インクジェット吐出性の観点から求められる制約条件と水圧転写用フィルム1上への描画性の観点から求められる制約条件とを両立させることが不可欠である。
吐出性について、まずインクジェット装置に見合った吐出するのにふさわしい粘度範囲で、なおかつ、吐出状態のばらつきが少なく、経時安定性も高くなくてはならない。そのためには、分子量が高過ぎず、なおかつ、分子構造や重合度のばらつきが少ない樹脂であることが望ましい。
描画性について、柔軟なインク吸収層20の伸展挙動に対して着弾形状も追従性を高めるためには、分子量が高過ぎず、なおかつ、分子設計の自由度が高い樹脂であることが重要である。
柔軟なインク吸収層20として、構造設計性に優れるアクリル樹脂を対象とする場合、インク組成物の分子設計の必要性を考慮した上で、本発明に用いる樹脂としてはアクリル樹脂がもっとも好適である。
アクリル樹脂としては、単体のモノマーもしくは複数のモノマーを公知のラジカル重合によって共重合させることで得られる。モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリ
ル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。他には、官能基を持つモノマーも用いることができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマー、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有アクリル酸エステル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、フマル酸アミド等のアミド基含有モノマー、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等の3級アミノ基含有モノマーなどが挙げられる。これらのモノマーは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせても使用できる。
インクバインダーのアクリル樹脂の重量平均分子量は、5000〜20000の範囲が好ましく、さらには7000〜15000であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲より小さい場合、樹脂添加により機能を付与したかった造膜性、色の定着性、光沢性が得られない。また、逆に上記範囲より大きい場合、ノズルの目詰まりが起こりやすくなり、吐出性が不安定になる。
また、インクのバインダー樹脂は、インク吸収層20の重量平均分子量に比べ低いことが望ましい。絵柄層30及びインク吸収層20は、転写工程において有機溶剤からなる活性剤をコートすることで軟化される、この有機溶剤は、水圧転写用フィルム1の特性により適宜選択することが可能である。
しかし、絵柄層30のバインダー樹脂の重量平均分子量の方が高いと、絵柄層30の部分が活性剤で軟化されにくくなるとともに、絵柄層30の下に位置するインク吸収層20に活性剤が均一に浸透するのを阻害し、絵柄濃度の違いで場所毎に柔軟性(転写時の付き回り)の差が大きくなってしまうためである。
インク組成物に占めるアクリル樹脂の配合量として、好ましくは、2〜8重量%である。樹脂の配合量が上記範囲より少ない場合、着弾後の形状保持力が弱くなったり、顔料の定着性が悪くなったりという問題が生じ、逆に上記範囲より多い場合、インク組成物の粘度が高くなり、インクジェットの吐出安定性が悪くなる。
また、吐出性能や描画性能が低下しない範囲で、上記樹脂以外にも、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ロジン系樹脂、アルキッド系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、セルロース系樹脂などを少量添加することで、着弾形状や発色性などの特性を補完することも可能である。
<溶剤>
本発明の非水系インクジェットインクの組成物に含まれる主溶媒は、上記の顔料、顔料を分散させる分散剤、アクリル樹脂を溶解することができ、かつ、インクジェット吐出に適した溶液特性を与え得る、グリコールエステル系及びグリコールエーテル系溶媒が好適である。
グリコールエステル系溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
グリコールエステルの溶剤は樹脂溶解性が良いため、分子量が高いアクリル樹脂であっても均一に溶解分散させやすく、樹脂の適用範囲が広がる。
更に、グリコールエステル溶媒は、前述のインク吸収層20に単に吸収されるだけでなく、その表層の一部を溶解させることで、インク中のバインダー樹脂とインク吸収層20の密着性を高める効果も有するため、溶剤中にグリコールエステル溶媒が含まれていることは好適である。中でも、バインダー樹脂を安定的に分散させるとともに、インク吸収層20との密着性の効果が高いものとして、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
グリコールエーテル系溶媒は、インクジェットインクの溶媒として良く用いられている。これは、乾燥によるインクジェットノズルの詰まり等の不具合に関連する沸点、及びインクジェットヘッドから安定的に微小液滴を吐出させるための指標となる粘度、が異なる複数の溶媒があり、その混合性が良いため、複数のグリコールエーテル溶媒を混ぜ合わせ、インクジェットヘッドの特性、使用環境に沿った形にブレンドすることが多い。
低沸点の溶媒は高沸点に比べて粘度が低い。インク組成物全体の粘度低下に寄与することができる低沸点のグリコールエーテル系溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(135℃)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(144℃)、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル(152℃)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(171℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(121℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(133℃)、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル(150℃)、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(170℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(171℃)などが挙げられる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルが好ましい。
沸点が高くノズル詰まりの原因となる乾燥性を遅くできるグリコールエーテル系溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(189℃)、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(230℃)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(212℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(256℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(249℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(216℃)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(256℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(189℃)、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル(212℃)、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル(229℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(242℃)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(215℃)などが挙げられる(溶剤名の後の括弧の数値は沸点を示す)。
この中でも、インク吸収層20がアクリル樹脂の場合、インク吸収層20への浸透性の点で、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルが好ましい。
本発明では、このような溶媒を単独でまたは複数を組み合わせて用いることで、インク吸収層20を有する水圧転写用フィルム1に対して、印刷性及びその後工程となる転写性に適したインクを調合することが可能となる。
(インクジェットインクの製造方法)
本発明の非水系インクジェットインクの組成物は、上記した材料成分を、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機を用いて撹拌・分散し、粘度を3〜10mPa・sとなるように調整することで得ることができる。撹拌・分散されたインク組成物はメンブレンフィルター、カートリッジフィルター等のフィルターで濾過し、大きな粒子を除去することで、目的の非水系インクジェットインクの組成物が得られる。
(水圧転写用フィルム上へのインクジェット印刷)
本発明による非水系インクジェットインクの組成物を用いての水圧転写用フィルム1上へのインクジェット印刷は、インクジェット装置によりインク組成物の微小液滴を吐出し、インク吸収層20上に着弾させることで形成される。インクジェット装置としては、静電吸引型、圧電方式、バブルジェット方式等、種々のインクジェット駆動方式を採用することができる。
つまり、絵柄層30は、インクジェット装置から吐出されたインク組成物がインク吸収層20に着弾後、インク組成物の溶媒成分がインク吸収層20に吸収され固形分がインク吸収層20上に残ることで形成される。
(インクジェットインクの調合例)
顔料としてピグメントブルー15:4を10重量%、顔料分散剤としてBYKChemie社製Disperbyk−2001を8重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート82重量%の割合でビーズミルに仕込んで10時間分散を行い、顔料分散品を得た。
次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの溶媒でアクリル酸ブチルとメタクリル酸ジエチルアミノエチルのモノマーを用いてラジカル重合により、アクリル共重合体の樹脂液を作成した。
この顔料分散品を40重量%、樹脂液を10重量%、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルを20重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを10重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを10重量%の比率で混合しインクを得た。
なお、この発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
1 水圧転写用フィルム
10 支持体フィルム
20 インク吸収層
21 インク受容性樹脂
22 紫外線吸収剤
23 酸化金属微粒子
30 絵柄層

Claims (5)

  1. 水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、
    この支持体フィルムの片面にコートされるインク吸収層と
    を備え、
    上記インク吸収層は、
    インクジェットインクの溶媒を吸収するアクリル樹脂系のインク受容性樹脂と、
    上記インク受容性樹脂中に設けられる有機系の紫外線吸収剤と、
    上記インク受容性樹脂中に設けられる酸化金属微粒子と
    を有することを特徴とする水圧転写用フィルム。
  2. 請求項1に記載の水圧転写用フィルムにおいて、
    上記インク受容性樹脂は、酢酸エチル溶媒からなるコート液を固化させてなるアクリル樹脂系イソシアネート架橋物であり、
    上記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であり、
    上記酸化金属微粒子は、酸化亜鉛微粒子であり、
    上記紫外線吸収剤の上記インク受容性樹脂に対する固形重量比は、10%以下であり、
    上記酸化金属微粒子の上記インク受容性樹脂に対する固形重量比は、8%以下であることを特徴とする水圧転写用フィルム。
  3. 請求項1または2に記載の水圧転写用フィルムにおいて、
    上記インク吸収層上にインクジェットインクにより印刷される絵柄層を備え、
    上記インク受容性樹脂は、密着剤により半溶解されて、被転写物の表面に定着可能であり、
    上記紫外線吸収剤は、上記インクジェットインクの主溶媒、および、上記密着剤の主溶媒に可溶であることを特徴とする水圧転写用フィルム。
  4. 請求項3に記載の水圧転写用フィルムにおいて、
    上記インクジェットインクの主溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、
    上記密着剤の主溶媒は、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート又はエチレングリコールモノブチルエーテルであることを特徴とする水圧転写用フィルム。
  5. 請求項1から4の何れか一つに記載の水圧転写用フィルムにおいて、
    上記インク吸収層の厚みは、2μmから7μmであることを特徴とする水圧転写用フィルム。
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