JP2014067488A - 固体酸化物形燃料電池用アノード支持体、アノード支持型ハーフセル及びアノード支持型固体酸化物形燃料電池単セル並びにアノード支持型ハーフセルの製造方法 - Google Patents
固体酸化物形燃料電池用アノード支持体、アノード支持型ハーフセル及びアノード支持型固体酸化物形燃料電池単セル並びにアノード支持型ハーフセルの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】イオン伝導性酸化物繊維を不織布状に成形してなるペーパー状多孔質支持基体と、電極触媒粒子及びイオン伝導性酸化物粒子で構成されるアノード活性層とを有し、前記アノード活性層の少なくとも一部が、前記ペーパー状多孔質支持基体の内部に形成されてなる固体酸化物形燃料電池用アノード支持体。該アノード支持体を備えたアノード支持型固体酸化物形燃料電池単セルは、アノード支持体の細孔径、気孔率(空隙率)が非常に大きく、電極反応の起こる三相界面がイオン伝導性酸化物繊維がなすネットワーク上に三次元的に広がっているだけでなく、ネットワーク内に広がる三相界面厚さ(イオン伝導性酸化物表面からの厚さ)を薄く保つことができるため、優れた発電性能を示す。
【選択図】図2
Description
しかしながら、従来のアノード支持型単セルではNi粉末と安定化ジルコニア粉末を押し固め、焼結させることで成形したアノードが支持体となっており、該アノード支持体は、気孔率30%程度のリジッドな構造であり、十分に水素等の燃料ガスを透過・拡散させ得るような構造を有していなかった。また、直接内部改質を行う場合に、アノードの空間構造が炭化水素の改質反応場として適しておらず、改質反応(吸熱反応)に伴う熱応力の発生、および炭素析出に起因する劣化が生じやすい。例えば、一般的な40vol%Ni-60vol%YSZ(イットリア安定化ジルコニア)アノード支持体を有するSOFCを用いた場合、これらの問題が顕著に現れるため、商用化レベルの長時間耐久性は期待できなかった。
これに対し、特許文献2には、粗大な電融ジルコニア粉末の相互間に微細なジルコニア粉末が入った状態で相互に結合させられた造粒粉末を調製し、その造粒粉末を用いて成形および焼成処理を施す方法が開示されている。この方法によると、電融ジルコニア粉末の焼結が相互の接触部において促進され、多数の連通細孔を有する多孔質体が得られる。
また、特許文献3には、所定の粒径の原料粉末及びバインダーを含み、特定の条件で調整したスラリーを使用することにより、高い気孔率と機械的強度を有するアノード支持体用の多孔質支持基体を製造できることが開示されている。
<1> イオン伝導性酸化物繊維をペーパー状に成形してなるペーパー状多孔質支持基体と、電極触媒粒子及びイオン伝導性酸化物粒子で構成されるアノード活性層とを有し、
前記アノード活性層の少なくとも一部が、前記ペーパー状多孔質支持基体の内部に形成されてなる固体酸化物形燃料電池用アノード支持体。
<2> 前記ペーパー状多孔質支持基体の内部に形成されたアノード活性層の厚みが、前記ペーパー状多孔質支持基体全体厚みの50%以下である前記<1>に記載のアノード支持体。
<3> 前記ペーパー状多孔質支持基体を構成するイオン伝導性酸化物繊維の表面に、炭化水素に対する改質活性を有する金属触媒が分散担持された前記<1>または<2>に記載のアノード支持体。
<4> 前記イオン伝導性酸化物繊維が、安定化ジルコニア繊維である前記<1>から<3>のいずれかに記載のアノード支持体。
<5> 前記ペーパー状多孔質支持基体の空隙率が、75体積%以上95体積%以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載のアノード支持体。
<6> 前記アノード活性層が、電極触媒粒子とイオン伝導性酸化物粒子とを、体積比30:70〜50:50で含む前記<1>から<5>のいずれかに記載のアノード支持体。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載のアノード支持体上に電解質層を設けてなることを特徴とするアノード支持型ハーフセル。
<8> 前記電解質層の厚みが、5μm以上50μm以下の範囲内である前記<7>に記載のアノード支持型ハーフセル。
<9> 前記電解質層が、安定化ジルコニアからなる前記<7>または<8>に記載のアノード支持型ハーフセル。
<10> 前記<9>に記載のアノード支持型ハーフセルの電解質層上にカソード層を形成したことを特徴とするアノード支持型固体酸化物形燃料電池単セル。
<11> 下記工程を含む、イオン伝導性酸化物繊維をペーパー状に成形してなるペーパー状多孔質支持基体と、前記ペーパー状多孔質支持基体の内部にその少なくとも一部が形成されたアノード活性層と、前記アノード活性層上に形成された電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルの製造方法。
工程(1):電極触媒前駆体、イオン伝導性酸化物粒子及び溶媒を含むアノードペーストを、前記ペーパー状多孔質支持基体の片面に塗工し、塗工したアノードペーストの少なくとも一部を前記ペーパー状多孔質支持基体に染み込ませる工程
工程(2):前記塗工したアノードペーストが乾燥する前に緻密固体電解質フィルムを貼付けて仮固定する工程
工程(3):緻密固体電解質フィルムを仮固定したペーパー状多孔質支持基体を焼成する工程
<12> 工程(1)において、アノードペーストを前記ペーパー状多孔質支持基体に塗工して乾燥させた後に、該乾燥したアノードペースト上に再度アノードペーストを塗工する前記<11>に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
<13> 前記ペーパー状多孔質支持基体の空隙率が、75体積%以上95体積%以下である前記<11>または<12>に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
<14> 前記緻密固体電解質フィルムが、前記ペーパー状多孔質支持基体を構成するイオン伝導性酸化物繊維と同種のイオン伝導性酸化物からなる前記<11>から<13>のいずれかに記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
<15> 前記緻密固体電解質フィルムの厚みが、5μm以上50μm以下の範囲内である前記<11>から<14>のいずれかに記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
<16> 前記アノードペーストにおける電極触媒前駆体が電極触媒酸化物粒子であって、該電極触媒酸化物粒子とイオン伝導性酸化物粒子との重量比が、46:54〜66:34である前記<11>から<15>のいずれかに記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
<17> さらに、前記ペーパー状多孔質支持基体に炭化水素に対する改質活性を有する金属触媒を分散担持する工程を含む前記<11>から<16>のいずれかに記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
まず、本発明は、イオン伝導性酸化物繊維をペーパー状に成形してなるペーパー状多孔質支持基体と、電極触媒粒子及びイオン伝導性酸化物粒子で構成されるアノード活性層とを有し、前記アノード活性層の少なくとも一部が、前記ペーパー状多孔質支持基体の内部に形成されてなる固体酸化物形燃料電池(SOFC)用アノード支持体(以下、「本発明のアノード支持体」と記載する。)に関する。
本発明のアノード支持体は、電解質層を設けてアノード支持型ハーフセル、さらに電解質層上にカソード層を設けて、アノード支持型固体酸化物形燃料電池単セル(以下、「アノード支持型SOFC単セル」と称す場合がある。)として使用される。
なお、本発明のアノード支持体には、燃料電池のアノードとしての役割と、アノード支持型SOFC単セルの全体を支持する支持基体としての機能がある。また、本発明のアノード支持体は、構成要素であるペーパー状多孔質支持基体に炭化水素改質触媒を担持することにより、炭化水素改質活性を有するアノード支持体として使用することもできる。
図1に示すように従来のアノード支持型SOFC単セルにおけるアノード支持体は、Ni等の電極触媒粒子とイオン伝導性酸化物粒子とが押し固められて焼結した構造であるため、気孔率約30%程度のリジッドな構造である。
水素等の燃料ガスは、気孔を拡散してアノード支持体の内部を移動し、酸素イオンはイオン伝導性酸化物粒子を介してアノード支持体内部を移動する。
このような構成を有する従来型のアノード支持体では、アノード材料が電解質層に対して垂直方向に広がり、アノード反応場として有効に働く三相界面厚さには限りがあるため、この厚さを越えた部分のアノード材料は、支持基体あるいは集電体としての役割しか果たさず、セルの製造コストが高くなる傾向にある。さらに、加湿燃料や高級炭化水素燃料供給時には、拡散が不十分となり濃度過電圧が大きくなる傾向にある。
また、炭化水素燃料を使用した場合にはアノードの空間構造が炭化水素の改質反応場として適しておらず、改質反応(吸熱反応)に伴う熱応力の発生、および炭素析出に起因する劣化が生じやすい。
また、アノード活性層は電極触媒粒子及びイオン伝導性酸化物粒子とからなるが、ペーパー状多孔質支持基体内部において、イオン伝導性酸化物繊維表面と接触するように構成される。そして、ペーパー状多孔質支持基体は、イオン伝導性酸化物繊維によって構成されており、ペーパー状多孔質支持基体自体として酸素イオン伝導性を有する。
そのため、電極触媒粒子とイオン伝導性酸化物粒子とが押し固められて焼結した構造である従来のアノード支持体と比較して、本発明のアノード支持体では、アノード活性層において、アノード材料がイオン伝導性酸化物繊維にコーティングされており、電極反応の起こる三相界面が、イオン伝導性酸化物繊維がなすネットワーク上に三次元的に広がっているだけでなく、ネットワーク内に広がる三相界面厚さ(イオン伝導性酸化物表面からの厚さ)を薄く保つことができるため、活性化過電圧および製造コストが低減する。
また、本発明のアノード支持体は、ペーパー状多孔質支持基体に起因する、大きな細孔径、気孔率を有するため、改質反応に伴う熱応力破壊に対する優れた耐性を有し、さらに、改質反応の副反応で炭素が析出しても、空隙が完全に閉塞することを回避できるという利点もある。
ペーパー状多孔質支持基体は、ミクロな空間制御が可能な抄紙技術により作製された、イオン伝導性酸化物繊維を骨格とする多孔質支持基体である。
簡単に説明すると、所定量のイオン伝導性酸化物繊維、バインダー成分、及び必要に応じて他の成分(気孔量調製剤、分散剤等)を所定量の溶媒にいれて、均一になるまで分散させたスラリーを作製した後、スラリーに所定の凝集剤を順次添加してフロックを生成し、そのフロックに水力学的せん断力を加えて崩壊させると同時に200メッシュの抄き網を用いて脱水・抄造し、均質なシート状の複合体を得る。得られたシート状複合体を乾燥し、所定の熱処理及び加圧処理を行うことにより、均一な厚さの不織布状(ペーパー状)の多孔質支持基体を得る。具体的な方法は実施例にて後述する。
安定化ジルコニアとしては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、カルシア安定化ジルコニア(CaSZ)などが挙げられる。 これらの中でも、コスト、安定性の点でイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が好ましく使用される。また、よりイオン伝導性の高いスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)も好適である。
ここで、「同種のイオン伝導性酸化物」は、ベースとなるイオン伝導性酸化物が同一であることを意味し、ドーパントの種類やドープ量は問わない。例えば、安定化ジルコニアである場合には、ジルコニア(ZrO2)がベースとなるイオン伝導性酸化物であり、ドーパントがイットリア(Y2O3)やスカンジア(Sc2O3)である。
従って、固体電解質がYSZやScSZ等の安定化ジルコニア系である場合には、イオン伝導性酸化物繊維としてYSZやScSZを使用することが好ましい。
バインダー成分としては、SOFCの使用条件及びアノード支持体の製造工程及び後述するアノード支持型ハーフセル及び単セルの製造工程においてにおいて、十分な化学的安定性を有し、且つ、イオン伝導性酸化物繊維を十分な機械的強度に結着できるものであれば、従来公知の無機バインダーを使用できる。
ここで、無機バインダーとイオン伝導性酸化物繊維との間で、異種元素の相互拡散を回避できる点で、前記無機バインダーが、前記ペーパー状多孔質支持基体を構成するイオン伝導性酸化物繊維と同種のイオン伝導性酸化物であることが好ましい。このように無機バインダーを、ペーパー状多孔質支持基体を構成するイオン伝導性酸化物繊維と同種のイオン伝導性酸化物とすることで、化学的・機械的マッチングが高められ、劣化を抑制することができる。
ここで、「同種のイオン伝導性酸化物」は上記と同義である。イオン伝導性酸化物繊維とバインダーの好適な具体例を挙げると、イオン伝導性酸化物繊維がYSZ、無機バインダーがYSZやScSZの場合である。
CeO2はバインダーとして、イオン伝導性酸化物繊維を十分な機械的強度に結着できる。さらには、炭化水素改質触媒の助触媒として作用を有すため、本発明のアノード支持体の炭化水素改質活性を向上させ、さらには析出炭素の発生を抑制することができる可能性がある。
ペーパー状多孔質支持基体の空隙率は、好適には75体積%以上95体積%以下である。なお、ペーパー状多孔質支持基体の空隙率は、水銀圧入法で測定することができる。
例えば、よりイオン伝導性酸化物繊維同士の接合性を高め、ペーパー状多孔質支持基体全体としての機械的強度、イオン伝導性を高めることができる点で、イオン伝導性酸化物繊維の表面はラフネスが小さい方が好ましい。
一方で、ペーパー状多孔質支持基体にアノード活性層を形成するに際し、アノード活性層との接触面積を大きくできる点でイオン伝導性酸化物繊維の表面はラフネスが大きい方が好ましい。また、後述するようにイオン導電性酸化物繊維の表面に炭化水素改質触媒を担持する場合においてもイオン伝導性酸化物繊維の表面はラフネスが大きい方が有利である。
また、表面形状の異なる2種以上のイオン伝導性酸化物繊維を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
アノード活性層の構成する電極触媒金属は、炭化水素に対する改質活性も併せ持つことが多いが、該電極触媒金属のみでは、アノード支持体全体として炭化水素に対する改質活性が不十分な場合がある。そこで、ペーパー状多孔質支持基体の表面に、炭化水素に対する改質活性を有する金属触媒を分散担持することで、アノード支持体として改質活性が向上し、炭化水素燃料を用いたSOFCに好適に使用できる。
以下、上記炭化水素に対する改質活性を有する金属触媒について詳細に説明する。
ここで、Ni及びMgを含む金属触媒は、改質触媒性と炭素析出の抑制に優れ、かつ、貴金属に比べて低コストであるため、炭素析出が起こりやすい、BDF等の高級炭化水素を含む原料ガスの改質に好適である。
Ni及びMgを含む金属触媒におけるNiとMgの比率(Ni/Mg)は、通常、0.25〜4(原子比)であり、好ましくは、0.67〜1.5(原子比)である。この比率は、EDXを用いて測定することができる。
Ni及びMgを含む金属触媒は、例えば、それぞれの前駆体(硝酸塩等)を含む水溶液を乾燥、熱処理して作製することができる。
一方で、SOFC作動条件においては、50nm以下であると凝集しやすいため、触媒活性とのバランスから100nm〜1μmであることが好ましい。
なお、金属触媒の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)にて、100個ずつ粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、100個の粒径の平均値として算出した値である。また、金属触媒の形状が、球形以外の場合は、顕微鏡像における粒子の周囲長を解析ソフトで測定し、該周囲長を円周としたときの直径を粒径とする。
上述の湿式抄紙法によるペーパー状多孔質支持基体の製造方法において、イオン伝導性酸化物繊維、バインダー成分と共に、金属触媒の前駆体を添加したスラリーを使用して、ペーパー状多孔質支持基体の抄造と、金属触媒の担持とを同時に行ってもよい。この方法では、より簡便に分散性を高め、均一に分散した金属触媒が分散担持されたペーパー状多孔質支持基体を得ることができる。
なお、金属触媒の前駆体は、熱処理や還元処理等の方法により、粒子状の金属触媒に転化するものであればよく、それぞれの金属種の硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ハロゲン化物、アンモニウム塩、シュウ酸塩等を適宜選択して使用すればよい。
アノード活性層は、アノード支持型SOFC(単セル)の燃料極(アノード)として機能する。
ここで、SOFC単セルを形成した際にイオン伝導の抵抗を低減させるために、図3及び図4のようにアノード活性層が電解質層と直接的に接していることが好ましい。図5の形態でもペーパー状多孔質支持基体を構成するイオン伝導性酸化物繊維によって酸素イオンをアノード活性層に供給できるが、イオン伝導の抵抗が大きくなる。
なお、アノード活性層は、2層以上から構成されてもよく、それぞれの組成が異なっていてもよい。
アノード活性層が厚すぎると、ペーパー状多孔質支持基体内のガスの流通・拡散が抑制され、ペーパー状多孔質支持基体由来のガス移動拡散性が低下する傾向にある。また、アノード活性層の厚みが厚くなると、ペーパー状多孔質支持基体におけるアノード活性層を有さない部分の厚みが相対的に小さくなる。後述するようにペーパー状多孔質支持基体を構成するイオン伝導性繊維に炭化水素改質触媒を担持する場合には、アノード活性層を有さない部分に担持された炭化水素改質触媒が実質的に触媒反応に寄与するため、アノード活性層の厚みが厚すぎると、改質触媒反応性が不十分になる場合がある。
そのため、ペーパー状多孔質支持基体の内部に形成されたアノード活性層の厚みが、ペーパー状多孔質支持基体全体の50%以下であることが好ましく、より好適には20%以下である。
電極触媒金属としては、SOFCの作動温度(600℃〜1000℃程度)での耐熱性と、アノードとしての電気化学的活性を有するものであれば特に限定されないが、Ni、Cu、Fe、Co、Ag、Pt、Pd、W及びMo等の金属の粒子、あるいはこれらの合金が挙げられる。この中でも、電極触媒活性の高い、Niが好適である。
なお、本発明のアノード支持体において、通常、これらの電極触媒金属粒子は、前駆体の酸化物粒子として存在し、SOFC運転条件で使用する際に金属に還元されて用いられる。
イオン伝導性酸化物粒子として具体的には、ジルコニア(ZrO2)系酸化物、セリア(CeO2)系酸化物、などが挙げられ、通常、SOFC単セルとしたときの固体電解質と同種のイオン伝導性酸化物が用いられる。なお、「同種のイオン伝導性酸化物」は、上記と同義である。
アノード活性層における電極触媒粒子とイオン伝導性酸化物粒子との割合は、体積比30:70〜50:50が好ましく、より好ましくは、体積比35:65〜45:55である。
焼成温度は、電極触媒前駆体、イオン伝導性酸化物粒子の種類を考慮して適宜決定される。例えば、電極触媒前駆体が酸化ニッケル(NiO)、イオン伝導性酸化物粒子が安定化ジルコニアの場合には、1100〜1500℃、好ましくは1150〜1350℃である。
本発明のアノード支持型ハーフセルは、上述の本発明のアノード支持体に電解質層を設けたものである。
電解質層を構成するイオン伝導性酸化物として具体的には、ジルコニア(ZrO2)系酸化物、セリア(CeO2)系酸化物などが挙げられる。
特にアノード支持体におけるイオン伝導性繊維やアノード活性層におけるイオン伝導性酸化物粒子に安定化ジルコニア系を用いる場合には、電解質層におけるイオン伝導性酸化物として、よりイオン伝導率の高いスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)が好ましく用いられる。ScSZは、ドーパントとしてSc2O3以外のドーパンント(例えば、CeO2)を含んでいてもよい。
電解質層の厚みは、電解質の種類にもよるが、通常、5〜300μm、好ましくは5〜50μm、より好ましくは5〜30μmである。
アノード活性層にも含まれるイオン伝導性酸化物も同様に焼結し、緻密化してしまうため、焼成温度は、電解質材料の焼結開始温度近傍で決定され、電解質材料が安定化ジルコニア系の場合は、1300〜1400℃である。
本発明のハーフセルの製造方法は、イオン伝導性酸化物繊維をペーパー状に成形してなるペーパー状多孔質支持基体と、前記ペーパー状多孔質支持基体の内部にその少なくとも一部が形成されたアノード活性層と、前記アノード活性層上に形成された電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルを製造する方法であって、下記工程を含むことを特徴とする。
工程(1):電極触媒前駆体、イオン伝導性酸化物粒子及び溶媒を含むアノードペーストを、前記ペーパー状多孔質支持基体の片面に塗工し、塗工したアノードペーストの少なくとも一部を前記ペーパー状多孔質支持基体に染み込ませる工程
工程(2):前記塗工したアノードペーストが乾燥する前に緻密固体電解質フィルムを貼付けて仮固定する工程
工程(3):緻密固体電解質フィルムを仮固定したペーパー状多孔質支持基体を焼成する工程
本工程は、電極触媒前駆体、イオン伝導性酸化物粒子及び溶媒を含むアノードペーストを、前記ペーパー状多孔質支持基体の片面に塗工し、塗工したアノードペーストの少なくとも一部を前記ペーパー状多孔質支持基体に染み込ませる工程である。
また、本発明の製造方法によれば、空隙率が75体積%以上95体積%以下のペーパー状多孔質支持基体に対しても、容易にアノード活性層を形成することができる。
電極触媒金属としては、SOFCの作動温度(600℃〜1000℃程度)での耐熱性と、アノードとしての電気化学的活性を有するものであれば特に限定されないが、Ni、Cu、Fe、Co、Ag、Pt、Pd、W及びMo等の金属の粒子、あるいはこれらの合金が挙げられる。この中でも、電極触媒活性の高い、Niが好適である。
特に電極触媒前駆体が、電極触媒酸化物粒子である場合には、電極触媒酸化物粒子とイオン伝導性酸化物粒子との重量比が、46:54〜66:34であることが好ましく、より好ましくは52:48〜62:38である。
粘度調製は、使用するバインダーや溶媒(分散媒)の種類や量、アノードペーストにおける固形分濃度を調節することによって行われる。好適な具体例としては、電極触媒前駆体が前駆体粒子を使用する場合には、テルピネオールやテレピン油などの溶媒(分散媒)及びバインダーとしてのエチルセルロースを原料粉末と混合することによって粘度調製をする方法があげられる。
なお、アノードペーストをペーパー状多孔質支持基体に染み込ませずにハーフセルを製造すると、アノード活性層とペーパー状多孔質支持基体との接合性が不十分となり、両者の界面でアノード活性層が剥がれおちやすくなる。
特にアノード活性層のペーパー状多孔質支持基体での厚みを制限したい場合には、アノードペーストをペーパー状多孔質支持基体に塗工して適当な方法で乾燥させた後に、該乾燥したアノードペースト上に再度アノードペーストを塗工する方法が好ましい。
この方法によるとアノード活性層の厚みを制御できるだけでなく、塗工して乾燥させたアノードペーストが、ペーパー状多孔質支持基体の表面の凹凸を埋めて平坦とし、次工程の緻密固体電解質フィルムを貼付が容易になる。
なお、アノードペーストの乾燥方法は特に制限はなく、通常、100℃程度に加熱することで溶媒を除去することできる。なお、乾燥方法は、送風乾燥、減圧乾燥でもよい。
本工程は、前記塗工したアノードペーストが乾燥する前に緻密固体電解質フィルムを貼付けて仮固定する工程である。
ここで、塗工されたアノードペーストは、ペーパー状多孔質支持基体の内部のみならず、一部が表面に存在し、緻密固体電解質フィルムを貼付けて、仮固定できる程度に溶媒(分散媒)が残存し適度な粘度を有していればよい。そのため、予め適した粘度になるように原料粉末、バインダー及び溶媒の割合を調製したアノードペーストを用いてもよいし、塗工性を高めるために固形分濃度を低くしたアノードペーストを塗工し、完全に乾燥しない程度まで乾燥させたのちに緻密固体電解質フィルムを貼付けてもよい。
上述のように電解質ペーストをアノード活性層上に塗工して、焼結させて電解質層を形成する方法では、電解質が厚くなりすぎたり、また、十分に焼結することができずに、電解質層のガスリークが発生するおそれがあるが、本発明のハーフセルの製造方法では、緻密なフィルム状の電解質を、アノード活性層の上に直接貼り付けて電解質層とするため、電解質層のガスリークが発生することを回避できる。
本工程は、緻密固体電解質フィルムを仮固定したペーパー状多孔質支持基体を焼成する工程である。
本工程において、アノード活性層の焼成により、工程(2)においてペーパー状多孔質支持基体に仮固定された緻密固体電解質フィルムとアノード支持体とが強固に接合する。
本発明のハーフセルの製造方法では、予め高温(1400〜1600℃程度)で焼成された緻密固体電解質フィルムを用いているため、上記温度範囲での焼成でも電解質層は形態の変化はなく緻密であり、ガスリークは起こらない。そのため、上述のように電解質層の厚みを、5μm以上30μm以下(より好ましくは、5μm以上15μm以下)とすることができる。
本発明のアノード支持型ハーフセルの製造方法において、ペーパー状多孔質支持基体に炭化水素に対する改質活性を有する金属触媒(炭化水素改質触媒)を分散担持する工程を含んでいてもよい。
なお、工程(3)の後に形成したハーフセルに対して、含浸により炭化水素改質触媒を担持させる場合には短絡を防ぐため、電解質層に付着した余分な金属触媒の前駆体を含む溶液を除去することが好ましい。
本発明のアノード支持型SOFC単セルは、上記本発明のアノード支持型ハーフセル電解質層にカソード層を有するものである。すなわち、カソード層は、電解質層を介してアノード支持体と反対側に形成される。
1.イオン伝導性酸化物繊維
・YSZ繊維(a):ジルカー社製(品番:ZYBF−2)、繊維径:3〜6μm
・YSZ繊維(b): 7mol% Y2O3 - 93mol% ZrO2 繊維径:10μm
2.バインダー
・ZrO2ゾル(日産化学工業製、品番:ナノユースZR-30BS、pH9.8)
3.イオン性ポリマー
・PDADMAC(polydiallyldimethylammonium chloride, Aldrich, Ltd.)
カチオン性
分子量::約3×105
電荷密度:5.5 meq/g
・A−PAM(anionic polyacrylamide, Kurita, Ltd.)
アニオン性
分子量::約4×106
電荷密度:0.64 meq/g
4.電極触媒(前駆体):
・NiO粉末:(> 99.9%、平均粒径:0.5μm、関東化学製)
5.イオン伝導性酸化物粒子:
・ScSZ(10 mol% Sc2O3-1 mol% CeO2-ZrO2、平均粒径:0.55μm、第一希元素化学工業製、品番:10Sc1CeZ)
(1−1)ペーパー状多孔質支持基体Aの作製
イオン伝導性酸化物繊維として、YSZ繊維(a)5gを、適量の蒸留水に投入し、ミキサーで約3分混合した。次いで、固形分濃度が0.15wt/vol%になるように蒸留水を添加し、スターラーで攪拌しながら、カチオン性ポリマーであるPDADMACを、固形分全量に対して、2wt%となるように加え、分散しているイオン伝導性酸化物繊維表面を正に帯電させた。
次いで、焼成後に無機バインダーとして機能するZrO2ゾルを、固形分重量で2g加えた後、アニオン性ポリマーであるA−PAMを対固形分0.5wt%となるように加えた。なお、この際、元々の懸濁物質が正に帯電しているため、アニオン性ポリマーを投入した瞬間に、イオン伝導性酸化物繊維等が凝集して玉状になる。そのため、後工程である紙抄き時(ろ過時)のろ水効率および歩留まり率が向上する。
次に、パルプ(2g)を解繊してスラリーに加え、3分攪拌した。なお、パルプは、紙抄き後の湿潤状態の強度を確保し、ろ過用メッシュからの焼成前のペーパー状多孔質支持基体の採取を容易にする。また、パルプはペーパー状多孔質支持基体の焼成中に焼失し、空隙(拡散パス)を生成する。
得られたスラリーを市販の抄紙装置(熊谷理機工業株式会社製)に注ぎ込み、ろ過用金属網(200メッシュ)に懸濁混合物を脱水により堆積させた。形成された堆積物をメッシュから剥がし取り、350kPaで3分プレスし、105℃で乾燥させることで、ペーパー状多孔質支持基体A(焼成前)を得た。
ペーパー状多孔質支持基体Aの物性を評価するために、ペーパー状多孔質支持基体(焼成前)を大気雰囲気下、1300℃、10時間焼成することにより、ペーパー状多孔質支持基体A(焼成後)を作製した。
測定条件:圧力範囲:0.5〜5000psia(3.45KPa〜34.5MPa)
測定気孔直径の範囲:約300μm〜37nm
NiO粉末を、ScSZ粉末と56:44の重量比(還元後:体積比40:60相当)でエタノール中に分散させ、24時間のボールミリング後、乾燥させてアノードの原料粉末とした。この粉末を、6wt%のエチルセルロース(キシダ化学製)を溶解したα-テルピネオール(> 95%、関東化学製)と6:4の重量比で混合し、三本ロールミル(ドイツ、EXAKT社製)を用いてアノードペースト(粘度調整前)を作製した。
次いで、アノードペースト(粘度調整前)を100mLディスポカップに取り、アノードペーストとテレピン油の重量比が75:25になるようにテレピン油を加えて粘度を調整したアノードペーストAを作製した。
(1−1)で作製したペーパー状多孔質支持基体A(焼成前)を30mm×30mmに切断し、上記アノードペーストAの中に完全に浸漬させた。ペーパー状多孔質支持基体内にアノードペーストが十分に染み込んだ後に、ペーパー状多孔質支持基体を取り出し、減圧下で10分間保持した後に、大気雰囲気下、100℃で2時間乾燥した。乾燥後のサンプルを1300℃で1時間焼成し、ペーパー状多孔質支持基体の内部全体にアノード活性層が形成されたアノード支持体Aを得た。
アノード支持体Aの表面上に、ScSZ粉末を含む電解質スラリーを適量塗工した。その後、1300℃で1時間焼成し、アノード支持体Aの片面に固体電解質層を有するアノード支持型ハーフセルAを得た。なお、アノード支持型支持型ハーフセルAにおけるアノード支持体(ペーパー状多孔質支持体)部分の厚みは525μmであった。
上記ハーフセルAにおける固体電解質層を設けた面の反対の面に、アノード集電体ペースト(NiO:ScSZ=80:20)を塗工して1200℃で3時間焼成後、固体電解質層の上にカソードペースト(LSM:ScSZ=1:1)及びカソード集電体ペースト(LSM)をスクリーン印刷し、1200℃で5時間焼成して、カソード層を形成し、アノード支持型単セルAを得た。
アノード支持型単セルAの両電極上に、電気化学測定ができるように白金線をスポット溶接した白金メッシュを取り付けた。アノードおよびカソードの集電面積は8mm×8mmであった。
(2−1)ペーパー状多孔質支持基体Bの作製
YSZ繊維(a)5gに代えて、YSZ繊維(b)5gを使用し、パルプ量を0.5g、PDADMACを固形分全量に対して、1wt%にした以外は、ペーパー状多孔質支持基体Aと同様の方法で、ペーパー状多孔質支持基体B(焼成前)を得た。次いで、ペーパー状多孔質支持基体B(焼成前)を1300℃で5時間焼成することにより、ペーパー状多孔質支持基体Bを得た。
測定条件:圧力範囲:0.5〜5000psia(3.45KPa〜34.5MPa)
測定気孔直径の範囲:約300μm〜37nm
NiO粉末を、ScSZ粉末と56:44の重量比(還元後:体積比40:60相当)でエタノール中に分散させ、24時間のボールミリング後、乾燥させてアノードの原料粉末とした。この粉末を、6wt%のエチルセルロース(キシダ化学製)を溶解したα-テルピネオール(>95%、関東化学製)と6:4の重量比で混合し、三本ロールミル(ドイツ、EXAKT社製)を用いてアノードペーストBを作製した。
ペーパー状多孔質支持基体Bを21〜22mm角に切断し、20mm角の印刷パターンを用いてアノードペーストBをスクリーン印刷し、すぐに100℃で10分乾燥させた。
次いで、アノードペーストBを印刷した面に再度スクリーン印刷し、アノードペーストBが乾燥する前に固体電解質フィルム(焼成済ScSZフィルム(厚み:23μm)、21〜22mm角)を貼り付け、100℃で10分乾燥させた。
乾燥後、ScSZフィルムが下になるようにしてアルミナセッターで挟み込み、荷重をかけた状態で1200℃で3時間焼成し、平滑なアノード支持型ハーフセルBを得た。なお、アノード支持型ハーフセルBにおけるアノード支持体(ペーパー状多孔質支持基体)部分の厚みは625μmであった。また、ハーフセルBのペーパー状多孔質支持基体B内のアノード活性層は、ペーパー状多孔質支持基体Bに対する重量比で30%程度であり、ペーパー状多孔質支持基体Bの16%未満の厚みであった。
次いで、アノード支持型ハーフセルBを、それぞれ1mol/LのNi硝酸塩とMg硝酸塩とを含む溶液に浸漬し、1時間後取り出し、固体電解質フィルム側をふき取ったのちに、105℃で3時間乾燥することにより、ペーパー状多孔質支持基体にNiMgO前駆体微粒子が分散担持されたアノード支持型ハーフセルBを得た。なお、発電試験後にアノード支持体部分をSEM/EDXで評価したところ、イオン伝導性酸化物繊維の表面にNiOとMgOの固溶体が形成されていることが確認された。
上記ハーフセルBにおける固体電解質層を設けた面の反対の面に、アノード集電体ペースト(NiO:ScSZ=80:20)を塗工して1200℃で5時間焼成後、固体電解質層の上にカソードペースト(LSM:ScSZ=1:1)及びカソード集電体ペースト(LSM)をスクリーン印刷し、1200℃で3時間焼成してカソード層を形成し、アノード支持型単セルBを得た。アノード支持型単セルBの両電極上に、電気化学測定ができるように白金線をスポット溶接した白金メッシュを取り付けた。アノードおよびカソードの集電面積は8mm×8mmであった。
(3−1)アノード支持型単セルCの製造(比較例)
市販のアノード支持型ハーフセル(日本ファインセラミックス製、アノード支持体(NiO:ScSZ=56:44)厚さ:0.8mm、直径:20mm、ScSZ電解質厚さ:30μm)のアノード支持体上にアノード集電体ペースト(NiO:ScSZ=80:20)を塗工して1200℃で3時間焼成後、電解質側にカソードペースト(LSM:ScSZ=1:1)及びカソード集電体ペースト(LSM)をスクリーン印刷し、1200℃で5時間焼成してアノード支持型単セルCを作製した。電極面積は8mm×8mmとした。この単セルの両電極上に、電気化学測定ができるように白金線をスポット溶接した白金メッシュを取り付けた。
NiO粉末(>99.9%、関東化学製)を、ScSZ粉末(10 mol% Sc2O3-1 mol% CeO2-ZrO2)(第一希元素化学工業製)と56:44あるいは80:20の重量比でエタノール中に分散させ、24時間のボールミリング後、乾燥させてサーメットアノードの原料粉末とした。これらの粉末を6wt%のエチルセルロース(キシダ化学製)を溶解したα-テルピネオール(>95%、関東化学製)と混合し、三本ロールミル(ドイツ、EXAKT社製)を用いてアノードペーストを作製した。NiO:ScSZ比56:44で調製したペーストを厚さが200μmのScSZ板(第一希元素化学工業製)上に塗工し、さらにその上にNiO:ScSZ比80:20で調製したペーストを塗工し1200℃で3時間焼成後、反対側にカソードペースト((La0.8Sr0.2)0.98MnO3 (LSM、>99.9 % Praxair, USA):ScSZ=1:1)及びLSMを1400℃で5時間焼成してペースト状にしたカソード集電体ペーストを印刷し、1200℃で5時間焼成して電解質支持型単セルDを作製した。電極面積は8mm×8mmとした。この単セルの両電極上に、電気化学測定ができるように白金線をスポット溶接した白金メッシュを取り付けた。
(4−1)微細構造
図6及び図7にアノード支持型ハーフセルA及びBのSEM像を示す。また、比較のため、図8に従来のアノード支持型単セルCのSEM像を示す。
これに対し、図6(a)及び(b)並びに図7(a)及び(b)に示すようにアノード支持型ハーフセルA及びBにおけるアノード支持体は、ペーパー状多孔質支持基体を構成するYSZ繊維がネットワークを形成しており、細孔径が大きく、かつ、細孔が連結していることがわかる。
アノード支持型ハーフセルAの固体電解質層の表面及び断面のSEM像をそれぞれ図9(a)及び(b)に示す。固体電解質層の表面に多数のピンホールが見られ、断面像から細孔が連結している部分もあることが分かる。
一方、アノード支持型ハーフセルBの固体電解質層では、図10(a)に示すように表面には若干のピンホールが確認されたが、図10(b)に示すように電解質層内部に連結した細孔を有していないことが分かる。
一方、アノード支持型単セルBは、緻密な電解質フィルムをペーパー状多孔質支持基体表面に貼り付けているため、緻密な電解質フィルムのアノード支持体表面への形成を可能にしている。
アノード支持型単セルA〜C及び電解質支持型セルDを用いて発電試験を行った。図11にSOFC単セル評価装置の模式図を示す。
測定対象となる単セルを単セル評価装置にセットし、温度を4.5時間で900℃まで上げ、900℃に達したのち、カソード側に乾燥空気(150mL/分)を、アノード側に3%加湿水素(H2流量: 150mL/分)を供給し、開回路電圧(Open Circuit Voltage,OCV)をモニタリングしながら1時間アノードの還元処理を行った。その後、800℃まで降温させOCVが安定したのを確認して、890CL電子負荷器(米国、スクリブナー社製)を搭載した燃料電池評価装置(東陽テクニカ製)を用いて負荷電流を256mA(400mA・cm-2)まで印加し、加湿水素供給時のセル電圧の測定を行った(IV測定)。IV測定の際に、カレントインターラプト法により、各電流値における電極過電圧およびIR損の測定を行った。
水素供給時の発電試験後、開回路状態で燃料を空気添加模擬バイオガス(CH4/CO2=1.5、Air/Biogas=1.0)に切り替え、水素供給時と同様にIV測定を行った。表1に、試験に使用した燃料の組成をまとめて示す。
図12に加湿水素供給時の800℃における各セルの発電特性を示す。図12(a)は電流-電圧曲線(IV曲線)、図12(b)は電流-電力曲線(IP曲線)である。
加湿水素供給時の400mA・cm-2における単セルA、B、C及びDの出力密度は、それぞれ、0.269Wcm-2、0.360Wcm-2、0.363Wcm-2、0.352Wcm-2であった。
アノード支持型単セルBの出力密度は、従来のアノード支持型単セルCに匹敵し、電解質支持型単セルD以上の値を示した。
一方、アノード支持型単セルBは、高温焼成済のScSZ電解質フィルムを貼り付けて作製しているために電解質層がより緻密であり(図10(b)参照)、アノード支持型単セルAで顕著であった電解質におけるガスリークが抑えられ、理論起電力に等しい開回路電圧が得られたため高出力を示している。
アノード支持型単セルA及びBについて、水素供給時の発電試験後、開回路状態で燃料を空気添加模擬バイオガスに切り替え、水素供給時と同様にIV測定を行った結果を図14(a)に、IV測定後、200mA・cm-2において定電流試験を行った結果を図14(b)に示す。ガス組成は、表1の通りである。なお、本実験において、バイオガスに空気を添加したのは、燃料組成を熱力学的に炭素析出領域外にするためである。
図14(a)に示されるように、水素以外の炭化水素燃料を直接供給しても、開発したアノード支持型SOFC単セルA,Bは良好な発電特性を示した。また、図14(b)のように、電圧安定性にも優れていることが確認された。
Claims (17)
- イオン伝導性酸化物繊維を不織布状に成形してなるペーパー状多孔質支持基体と、電極触媒粒子及びイオン伝導性酸化物粒子で構成されるアノード活性層とを有し、
前記アノード活性層の少なくとも一部が、前記ペーパー状多孔質支持基体の内部に形成されてなることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用アノード支持体。 - 前記ペーパー状多孔質支持基体の内部に形成されたアノード活性層の厚みが、前記ペーパー状多孔質支持基体全体厚みの50%以下である請求項1に記載のアノード支持体。
- 前記ペーパー状多孔質支持基体を構成するイオン伝導性酸化物繊維の表面に、炭化水素に対する改質活性を有する金属触媒が分散担持された請求項1または2に記載のアノード支持体。
- 前記イオン伝導性酸化物繊維が、安定化ジルコニア繊維である請求項1から3のいずれかに記載のアノード支持体。
- 前記ペーパー状多孔質支持基体の空隙率が、75体積%以上95体積%以下である請求項1から4のいずれかに記載のアノード支持体。
- 前記アノード活性層が、電極触媒粒子とイオン伝導性酸化物粒子とを、体積比30:70〜50:50で含む請求項1から5のいずれかに記載のアノード支持体。
- 請求項1から6のいずれかに記載のアノード支持体上に電解質層を設けてなることを特徴とするアノード支持型ハーフセル。
- 前記電解質層の厚みが、5μm以上50μm以下の範囲内である請求項7に記載のアノード支持型ハーフセル。
- 前記電解質層が、安定化ジルコニアからなる請求項7または8に記載のアノード支持型ハーフセル。
- 請求項9に記載のアノード支持型ハーフセルの電解質層上にカソード層を形成したことを特徴とするアノード支持型固体酸化物形燃料電池単セル。
- 下記工程を含むことを特徴とする、イオン伝導性酸化物繊維をペーパー状に成形してなるペーパー状多孔質支持基体と、前記ペーパー状多孔質支持基体の内部にその少なくとも一部が形成されたアノード活性層と、前記アノード活性層上に形成された電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルの製造方法。
工程(1):電極触媒前駆体、イオン伝導性酸化物粒子及び溶媒を含むアノードペーストを、前記ペーパー状多孔質支持基体の片面に塗工し、塗工したアノードペーストの少なくとも一部を前記ペーパー状多孔質支持基体に染み込ませる工程
工程(2):前記塗工したアノードペーストが乾燥する前に緻密固体電解質フィルムを貼付けて仮固定する工程
工程(3):緻密固体電解質フィルムを仮固定したペーパー状多孔質支持基体を焼成する工程 - 工程(1)において、アノードペーストを前記ペーパー状多孔質支持基体に塗工して乾燥させた後に、該乾燥したアノードペースト上に再度アノードペーストを塗工する請求項11に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
- 前記ペーパー状多孔質支持基体の空隙率が、75体積%以上95体積%以下である請求項11または12に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
- 前記緻密固体電解質フィルムが、前記ペーパー状多孔質支持基体を構成するイオン伝導性酸化物繊維と同種のイオン伝導性酸化物からなる請求項11から13のいずれかに記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
- 前記緻密固体電解質フィルムの厚みが、5μm以上50μm以下の範囲内である請求項11から14のいずれかに記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
- 前記アノードペーストにおける電極触媒前駆体が電極触媒酸化物粒子であって、該電極触媒酸化物粒子とイオン伝導性酸化物粒子との重量比が、46:54〜66:34である請求項11から15のいずれかに記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
- さらに、前記ペーパー状多孔質支持基体に炭化水素に対する改質活性を有する金属触媒を分散担持する工程を含む請求項11から16のいずれかに記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
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