JP2014065259A - フィルム部材およびその製造方法 - Google Patents

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勝己 岡下
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Abstract

【課題】 酸素、水蒸気およびアウトガスに対するガスバリア層のバリア性が低下しにくく、表面の凹凸が小さいフィルム部材、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 フィルム部材1は、樹脂フィルムを有する基材10と、基材10の厚さ方向の少なくとも一方側に配置され無機化合物からなるガスバリア層12と、基材10とガスバリア層12との間に介装されるブロック層11と、を備える。ブロック層11は、基材10の表面に金属アルコキシドを含む溶液を塗布、乾燥して形成される塗膜に、マイクロ波プラズマを照射して形成される。
【選択図】 図5

Description

本発明は、樹脂フィルムを有する基材とガスバリア層とを備え、ガスバリア層のバリア性が低下しにくいフィルム部材、およびその製造方法に関する。
ユビキタス社会の到来に向け、スマートフォンなどの携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、タブレットPC(Personal Computer)、モバイルノートPCなどの携帯情報端末、小型ゲーム機器、電子ペーパーなどのモバイル機器が普及拡大している。これらのモバイル機器に対して、軽量化、薄型化、フレキシブル化、落下、衝撃などによる破損抑制のニーズが高まっている。このため、現在多用されているガラス製の表示部に代わり、樹脂フィルムからなる基材に機能性薄膜を積層した機能性樹脂フィルムを用いたタッチパネル、有機EL(Electro Luminescence)デバイスなどの需要が増加している。さらに、太陽電池市場においても、機能性樹脂フィルムを用いた、フレキシブルで軽量、薄型の薄膜太陽電池が脚光を浴びている。
特開2000−6301号公報 特開2005−335094号公報 特開2006−299145号公報 特開平7−126419号公報
機能性樹脂フィルムを用いた製品においては、従来のガラス基板品と比較して、寿命が短いという課題がある。この原因として、空気中の酸素や水蒸気が、基材を通して機能性薄膜へ進入したり、基材に含まれるガスや揮発性成分がアウトガスとして出てくることにより、機能性薄膜が劣化することが挙げられる。このため、基材と機能性薄膜との間に、酸化シリコンなどからなるガスバリア層を形成し、機能性薄膜への酸素、水蒸気、アウトガスなどの進入を抑制している(例えば、特許文献1、2参照)。
ガスバリア層や機能性薄膜は、スパッタやCVD(Chemical Vapor Deposition)により形成される。また、機能性樹脂フィルムの製造過程においては、様々な熱処理が行われる。本発明者が検討したところ、加熱することで基材から析出される成分により、基材表面に形成される層に割れが生じることがわかった。これにより、ガスバリア層のバリア性(酸素、水蒸気およびアウトガスの低透過性)が、低下してしまう。
また、基材の表面には、比較的大きな凹凸がある。したがって、その上にガスバリア層を形成すると、ガスバリア層の表面の凹凸も大きくなってしまう。この場合、凹部に酸素や水分が吸着したり、凸部に電解が集中して、発光不良やデバイスの破損を招くおそれがある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、酸素、水蒸気およびアウトガスに対するガスバリア層のバリア性が低下しにくく、表面の凹凸が小さいフィルム部材、およびその製造方法を提供することを課題とする。
(1)上記課題を解決するため、本発明のフィルム部材は、樹脂フィルムを有する基材と、該基材の厚さ方向の少なくとも一方側に配置され無機化合物からなるガスバリア層と、該基材と該ガスバリア層との間に介装されるブロック層と、を備え、該ブロック層は、該基材の表面に金属アルコキシドを含む溶液を塗布、乾燥して形成される塗膜に、マイクロ波プラズマを照射して形成されることを特徴とする。
本発明のフィルム部材は、基材とガスバリア層との間に、ブロック層を備える。ブロック層は、金属アルコキシドの加水分解反応および重縮合反応(ゾルゲル反応)により形成される、酸素−金属−酸素の結合を骨格とする緻密な金属酸化物膜である。このため、基材の樹脂フィルムから析出される成分の移動は、ブロック層により阻止される。よって、基材からの析出成分によるガスバリア層の割れの発生を、抑制することができる。したがって、本発明のフィルム部材においては、ガスバリア層のバリア性が低下しにくい。
また、ブロック層は、基材の表面に金属アルコキシドを含む溶液を塗布、乾燥して形成される。仮に基材の表面に凹凸があっても、溶液が凹凸を埋めるように塗布される。このため、基材の表面の凹凸が反映されることなく、表面が平滑な塗膜(ブロック層)を形成することができる。これにより、ブロック層に積層されるガスバリア層の表面の凹凸も、小さくなる。したがって、発光不良や、デバイスの破損が生じにくい。
ゾルゲル反応により形成される塗膜においては、−OR基(Rはアルキル基など)が残留したり、金属アルコキシドをキレート化した場合には、キレート剤(アセチルアセトンなど)が結合したまま残留しやすい。これらの炭素を含む成分は、時間の経過や、機能性樹脂フィルムの製造過程における熱処理により、ガスバリア層へ移動する。これにより、ガスバリア層に割れが生じ、バリア性が低下するおそれがある。また、炭素を含む成分が残留すると、酸素−金属−酸素の結合による網目構造が充分に形成されず、基材からの析出成分の移動を充分に阻止することができない。
この点、本発明のフィルム部材によると、形成された塗膜には、マイクロ波プラズマが照射される。マイクロ波プラズマの照射により、残留する−OR基は分解される。また、結合していたキレート剤も切断され、分解される。このようにして、塗膜に残留する炭素含有成分が、低減する。したがって、炭素含有成分の移動によるガスバリア層の割れの発生を、抑制することができる。また、基材からの析出成分の移動を阻止する効果も、高くなる。
また、マイクロ波プラズマの場合、比較的低電位で、密度の大きなプラズマが生成される。このため、マイクロ波プラズマを照射しても、塗膜の表面が粗くなったり、塗膜が変形するおそれは小さい。つまり、塗膜の表面を粗面化することなく、炭素含有成分の低減化を行うことができる。これに対して、例えば、高周波(RF)プラズマを照射すると、バイアス(印加電位)により加速されたプラズマ中の荷電粒子が、塗膜の表面に衝突するため、塗膜の表面が粗面化してしまう。よって、塗膜の平滑さを維持することはできない。また、プラズマ密度も小さいため、炭素含有成分の低減効果は小さい。
このように、本発明のフィルム部材によると、基材とガスバリア層との間にブロック層を介在させることにより、酸素、水蒸気およびアウトガスに対するバリア性が低下しにくい。したがって、本発明のフィルム部材を用いると、例えば有機ELデバイスにおいて、ホール輸送層や電子輸送性発光層への酸素、水蒸気およびアウトガスの進入を、抑制することができる。これにより、ホール輸送層や電子輸送性発光層の劣化を、抑制することができる。すなわち、製品寿命を延ばすことができる。
また、有機ELデバイスの製造過程においては、電極をパターニングする際のフォトレジストの現像時に、フィルム部材を、テトラメチルアンモニウムハイドレート(TMAH)を含む水溶液からなるアルカリ性レジスト現像液に浸漬する。例えば、マイクロ波プラズマを照射せずに形成されたブロック層(塗膜)は、アルカリ性レジスト現像液に溶解しやすい。このため、フィルム部材をアルカリ性レジスト現像液に浸漬すると、ガスバリア層が剥離してしまう。この点、本発明のフィルム部材によると、塗膜にマイクロ波プラズマを照射することにより、形成されたブロック層に耐現像液性を付与することができる。したがって、フィルム部材をアルカリ性レジスト現像液に浸漬しても、ガスバリア層が剥離するおそれは小さい。
(2)また、本発明のフィルム部材の製造方法は、樹脂フィルムを有する基材の厚さ方向の少なくとも一面に、金属アルコキシドを含む溶液を塗布、乾燥して塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜にマイクロ波プラズマを照射してブロック層となすマイクロ波プラズマ処理工程と、該ブロック層の表面に、スパッタ法により無機化合物からなるガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、を有することを特徴とする。
本発明のフィルム部材の製造方法は、塗膜形成工程と、マイクロ波プラズマ処理工程と、ガスバリア層形成工程と、を有する。本発明の製造方法によると、バリア性が低下しにくく、表面の凹凸が小さい本発明のフィルム部材を、比較的簡単に製造することができる。
第一実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置の左右方向断面図である。 同マイクロ波プラズマ処理装置におけるプラズマ生成部の斜視図である。 第二実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置の前後方向断面図である。 同マイクロ波プラズマ処理装置におけるプラズマ生成部の斜視図である。 実施例1のフィルム部材の断面図である。 実施例1のフィルム部材の表面のSEM写真である。 比較例1のフィルム部材の表面のSEM写真である。 実施例1の塗膜の表面のSPM写真である。 比較例1の塗膜の表面のSPM写真である。 比較例2の塗膜の表面のSPM写真である。 塗膜における原子の組成比率を示すグラフである。
以下、本発明のフィルム部材およびその製造方法の実施の形態について説明する。
<フィルム部材>
本発明のフィルム部材は、基材と、ガスバリア層と、ブロック層と、を備える。
[基材]
基材は、樹脂フィルムを有する。すなわち、基材は、樹脂フィルムそのものでもよく、樹脂フィルムと、一つ以上の他層と、が積層されていてもよい。樹脂フィルムは、用途に応じて、適宜選択すればよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリアミド(PA)6フィルム、PA11フィルム、PA12フィルム、PA46フィルム、ポリアミドMXD6フィルム、PA9Tフィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、フッ素樹脂フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマーなどのポリオレフィンフィルムなどが挙げられる。なかでも、耐吸湿性、無色透明性、耐熱性、経済性などの観点から、PETフィルム、PENフィルムが好適である。
樹脂フィルムの厚さは、特に限定されない。例えば、フィルム部材を有機ELデバイスに用いる場合には、樹脂フィルムの厚さを、5μm以上300μm以下程度にすることが望ましい。
樹脂フィルムに積層される他層としては、例えば、樹脂フィルムの表面の凹凸の影響を小さくするためのハードコート層が挙げられる。ハードコート層は、樹脂フィルムの表面にアクリル樹脂などをコーティングして形成される。ハードコート層が形成された樹脂フィルムとしては、「HC−PETフィルム」などが市販されている。また、他層は、樹脂フィルムとブロック層との密着性を向上させるための接着層でもよい。また、フィルム部材の平滑性、耐熱性、バリア性などを向上させるための種々の中間層でもよい。中間層は、例えば、アクリル樹脂、イソシアネートなどを樹脂フィルムに塗工して、形成することができる。また、シランカップリング剤、クロロシラン、シラザンなどを塗工あるいはCVDにより成膜して、形成することができる。また、アセチレン、メタン、トルエンなどの炭化水素を、CVDにより成膜して、形成することができる。
[ガスバリア層]
ガスバリア層は、基材の厚さ方向の両側のうち、片側だけに配置されてもよく、両側に配置されてもよい。ガスバリア層を、基材の両側に配置すると、酸素および水蒸気のバリア性が、より向上する。ガスバリア層は、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)などを含む酸化物、窒化物、酸窒化物などの無機化合物からなる。具体的には、酸化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(AlO)、窒化シリコン(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸窒化アルミニウム(AlON)や、これらの複合物などが挙げられる。ガスバリア層は、これら無機化合物からからなる一層でもよく、異なる組成の二層以上が積層されていてもよい。ガスバリア層は、スパッタあるいはCVDなどにより形成すればよい。
ガスバリア層の厚さは、特に限定されない。例えば、フィルム部材を有機ELデバイスに用いる場合には、ガスバリア層の厚さを、10nm以上1μm以下にすることが望ましい。ガスバリア層の厚さが10nm未満の場合には、所望のバリア性を得ることが難しくなる。一方、1μmを超えると、ガスバリア層が割れやすくなり、経済性にも劣る。ガスバリア層を、基材の両側に配置する場合、一方と他方とにおいてガスバリア層の厚さを変えてもよい。
[ブロック層]
ブロック層は、基材とガスバリア層との間に介装される。上述したように、基材は、樹脂フィルムのみ、あるいは樹脂フィルムと他層とから構成される。よって、ブロック層は、基材の表面、すなわち樹脂フィルムあるいは他層の表面に、形成される。また、ガスバリア層は、ブロック層の表面に、形成される。
ブロック層は、金属アルコキシドを含む溶液を塗布、乾燥して形成される塗膜に、マイクロ波プラズマを照射して形成される。ブロック層の形成方法は、後述する本発明のフィルム部材の製造方法において、詳しく説明する。例えば、チタンおよびジルコニウムの少なくとも一方を含む金属アルコキシドを用いると、反応性が良好であるという利点がある。また、溶液において、金属アルコキシドはキレート化されていることが望ましい。金属アルコキシドは、水と反応して加水分解すると共に重縮合する(ゾルゲル反応)。金属アルコキシドのゾルゲル反応の反応速度は、非常に大きい。よって、金属アルコキシドをキレート化しておくことにより、水との急激な反応を抑制し、塗布中の固形化や塗布装置への固形成分の付着を、抑制することができる。また、反応速度を緩やかにすることにより、ブロック層における割れなどの欠陥を、低減することができる。
金属アルコキシドをキレート化する場合、金属アルコキシドに結合したキレート剤が、塗膜に残留しやすい。しかし、塗膜にマイクロ波プラズマを照射することにより、キレート剤は切断され、分解される。また、残留する−OR基も分解される。したがって、ブロック層においては、炭素を含む成分が少ない。炭素含有成分によるガスバリア層の割れの発生を抑制して、バリア性を維持するという観点から、例えば、ブロック層における炭素の含有割合は、ブロック層を構成する原子全体を100%とした場合の5%以下であることが望ましい。1%以下であると、より好適である。炭素の含有割合は、例えば、ブロック層をX線光電子分光法(XPS)により分析し、得られたスペクトルから求めることができる。
塗膜にはマイクロ波プラズマが照射されるため、塗膜の表面が荒れるおそれは小さい。例えば、ブロック層の表面(ガスバリア層側の表面)の算術平均粗さ(Ra)は、1.2nm以下であることが望ましい。Raが1.0nm以下であると、より好適である。また、ブロック層の表面の最大高さ(Rmax)は、10nm以下であることが望ましい。Rmaxが8nm以下であると、より好適である。ブロック層の表面粗さは、JIS B0601:2001に準じて測定すればよい。
上述したように、本発明のフィルム部材におけるブロック層は、耐現像液性に優れる。したがって、ブロック層においては、テトラメチルアンモニウムハイドレートを含む水溶液からなるアルカリ性レジスト現像液に浸漬した後の表面の算術平均粗さ(Ra1)と、該アルカリ性レジスト現像液に浸漬する前の表面の算術平均粗さ(Ra0)との差(Ra0−Ra1)が、±0.3nm以下であることが望ましい。また、アルカリ性レジスト現像液に浸漬した後の表面の算術平均粗さ(Ra1)は、1.2nm以下であるとよい。
ブロック層の厚さは、樹脂フィルムから析出される成分の移動を阻止できれば、特に限定されない。但し、ブロック層の厚さが大きすぎると、フィルム部材を湾曲、または伸縮させた場合に亀裂が生じてしまう。これにより、ガスバリア性などの所望の効果を得られなくなる。したがって、ブロック層の厚さは、0.005μm以上0.3μm以下であるとよい。
<フィルム部材の製造方法>
本発明のフィルム部材の製造方法は、塗膜形成工程と、マイクロ波プラズマ処理工程と、ガスバリア層形成工程と、を有する。以下、各工程について説明する。
[塗膜形成工程]
本工程は、樹脂フィルムを有する基材の厚さ方向の少なくとも一面に、金属アルコキシドを含む溶液を塗布、乾燥して塗膜を形成する工程である。基材については上述した通りである。よって、ここでは説明を割愛する。本工程においては、まず、所定の溶剤中に、金属アルコキシドを混合した溶液を調製する。金属アルコキシドは、例えば、次の一般式(a)で表される。
M(OR) ・・・(a)
[式(a)中、Mは金属原子である。Rは炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルケニル基のいずれか一種以上であり、同一であっても、異なっていてもよい。mは金属原子Mの価数である。]また、一分子中に、二つ以上の繰り返し単位[(MO);nは2以上の整数]を有する多量体でもよい。
金属原子Mとしては、例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウムなどが挙げられる。なかでも反応性が良好であるという理由から、チタンおよびジルコニウムの少なくとも一方を含むものが望ましい。具体的には、テトラn−ブトキシチタン、テトラn−ブトキシジルコニウム、テトラi−プロポキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、オクトキシジルコニウム、トリデコキシジルコニウムなどが好適である。
溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘプタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルなどの有機酸エステル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのシクロエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの酸アミド類、ヘキサンなどの炭化水素類、トルエンなどの芳香族類などを用いればよい。これらの一種を単独で、または二種以上を混合して用いることができる。
金属アルコキシドをキレート化する場合には、キレート剤を溶剤として用いることができる。この場合、溶剤は、すべてがキレート剤であっても、キレート剤とそれ以外の溶剤との混合物であってもよい。キレート剤としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトン、アセト酢酸エチル、ベンゾイル酢酸エチルなどのβ−ケト酸エステル、トリエタノールアミン、乳酸、2-エチルヘキサンー1,3ジオール、1,3へキサンジオールなどが挙げられる。
金属アルコキシドを含む溶液を、基材の表面に塗布し、所定の条件で乾燥させると、溶剤(キレート剤)が除去される。これにより、金属アルコキシドの加水分解反応が進行する。溶液の塗布方法は、特に限定されない。例えば、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法などが挙げられる。また、乾燥は、樹脂フィルムが変形しない温度範囲で、加熱すればよい。乾燥後、さらに紫外線などを照射してもよい。
[マイクロ波プラズマ処理工程]
本工程は、形成された塗膜にマイクロ波プラズマを照射してブロック層となす工程である。以下に、マイクロ波プラズマ処理の実施の形態を説明する。
(1)第一実施形態
まず、本実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置の構成を説明する。図1に、マイクロ波プラズマ処理装置の左右方向断面図を示す。図2に、同マイクロ波プラズマ処理装置におけるプラズマ生成部の斜視図を示す。図2においては、チャンバーを省略して示す。図1に示すように、マイクロ波プラズマ処理装置2は、チャンバー8と、試料保持板21と、マイクロ波伝送部50と、プラズマ生成部30と、を備えている。
チャンバー8は、アルミニウム製であって、直方体箱状を呈している。チャンバー8は、第一ガス供給孔80と、第二ガス供給孔81と、排気孔82と、導波孔83と、段差部84と、を備えている。第一ガス供給孔80、第二ガス供給孔81は、チャンバー8の右壁、左壁に、各々一つずつ穿設されている。第一ガス供給孔80には、第一ガス供給管(図略)の下流端が接続されている。第二ガス供給孔81には、第二ガス供給管(図略)の下流端が接続されている。排気孔82は、チャンバー8の下壁に穿設されている。排気孔82には、チャンバー8の内部のガスを排出するための真空排気装置(図略)が接続されている。導波孔83は、チャンバー8の右壁に穿設されている。導波孔83には、後述する管体部51の下流端が挿通されている。段差部84は、導波孔83と第一ガス供給孔80との間に形成されている。段差部84は、チャンバー8の側壁の内面を一周している。段差部84は、上方から下方に向かって内側に張り出す、段差状を呈している。
試料保持板21は、ステンレス鋼製であって、長方形板状を呈している。試料保持板21の下面には、左右方向に一対の脚部210が配置されている。一対の脚部210は、各々、ステンレス鋼製であって、円柱状を呈している。一対の脚部210の外周面は、絶縁層で被覆されている。試料保持板21は、一対の脚部210を介して、チャンバー8の下壁に取り付けられている。
試料保持板21の上面には、試料20が配置されている。試料20は、長方形のシート状を呈している。試料20は、PENフィルム(基材)200と塗膜201とからなる。塗膜201は、PENフィルム200の上面に形成されている。
マイクロ波伝送部50は、管体部51と、マイクロ波電源52と、マイクロ波発振器53と、アイソレータ54と、パワーモニタ55と、EH整合器56と、を有している。マイクロ波発振器53、アイソレータ54、パワーモニタ55、およびEH整合器56は、管体部51により連結されている。管体部51は、導波孔83を通って、プラズマ生成部30の導波管31右端に接続されている。
図1および図2に示すように、プラズマ生成部30は、導波管31と、スロットアンテナ32と、誘電体部33と、を有している。導波管31は、左右方向に延在している。導波管31は、チャンバー8と、スロットアンテナ32と、により形成されている。
スロットアンテナ32は、アルミニウム製であって、長方形板状を呈している。スロットアンテナ32は、導波管31の下方開口部を塞ぐように配置されている。すなわち、スロットアンテナ32は、導波管31の下壁を形成している。スロットアンテナ32には、六つの長孔状のスロット320が形成されている。スロット320は、左右方向に伸びる長孔状を呈している。スロット320は、電界が強い位置に配置されている。
誘電体部33は、石英製であって、直方体状を呈している。誘電体部33は、スロットアンテナ32の下面に配置されている。誘電体部33は、スロット320を下方から覆っている。誘電体部33は、チャンバー8の段差部84に配置されている。誘電体部33は、非磁性であり、チャンバー8内を真空に保つ役割を果たす。
次に、マイクロ波プラズマ処理方法について説明する。本実施形態の処理方法は、まず、真空排気装置(図略)を作動させて、チャンバー8の内部のガスを排出し、チャンバー8の内部を減圧状態にする。次に、第一ガス供給管から、第一ガスのアルゴンをチャンバー8内へ供給する。この際、チャンバー8内の圧力が、約1〜100Paの範囲で所望の圧力になるように、アルゴンガスの流量を調整する。続いて、マイクロ波電源52をオンにする。マイクロ波電源52をオンにすると、マイクロ波発振器53がマイクロ波を発生する。発生したマイクロ波は、管体部51内を伝播する。ここで、アイソレータ54は、プラズマ生成部40から反射されたマイクロ波が、マイクロ波発振器53に戻るのを抑制する。パワーモニタ55は、発生したマイクロ波の出力と、反射したマイクロ波の出力と、をモニタリングする。EH整合器56は、マイクロ波の反射量を調整する。
管体部51内を通過したマイクロ波は、導波管31の内部を伝播する。導波管31の内部を伝播するマイクロ波は、スロットアンテナ32のスロット320に進入する。そして、図1中白抜き矢印Y1で示すように、スロット320を通過して、誘電体部33に入射する。誘電体部33に入射したマイクロ波は、同図中白抜き矢印Y2で示すように、誘電体部33の下面330に沿って伝播する。この際、スロット320から誘電体部33へ入射するマイクロ波の入射方向(矢印Y1)と、誘電体部33の下面330と、は直交する。このため、誘電体部33に入射したマイクロ波は、進行方向を90°変えて、誘電体部33の下面330を伝播する(矢印Y2)。伝播するマイクロ波の強電界により、チャンバー8内のアルゴンガスが電離して、誘電体部33の下方にマイクロ波プラズマP1が生成される。このようにして、試料20の塗膜201の表面に、マイクロ波プラズマP1を照射する。
(2)第二実施形態
本実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置と、第一実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置と、の相違点は、プラズマ生成部の構成である。したがって、ここでは相違点を中心に説明する。
まず、本実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置の構成について説明する。図3に、本実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置の前後方向断面図を示す。図4に、同マイクロ波プラズマ処理装置におけるプラズマ生成部の斜視図を示す。図3中、図1と対応する部位については、同じ符合で示す。図3に示すように、マイクロ波プラズマ処理装置2は、チャンバー8と、試料保持板21と、マイクロ波プラズマ照射手段4と、を備えている。
試料保持板21は、ステンレス鋼製であって、長方形板状を呈している。試料保持板21の前面には、左右方向に一対の脚部210が配置されている。一対の脚部210は、各々、ステンレス鋼製であって、円柱状を呈している。一対の脚部210の外周面は、絶縁層で被覆されている。試料保持板21は、一対の脚部210を介して、チャンバー8の前壁に取り付けられている。
試料保持板21の後面には、試料20が配置されている。試料20は、長方形のシート状を呈している。試料20は、PENフィルム(基材)200と塗膜201とからなる。塗膜201は、PENフィルム200の後面に形成されている。
マイクロ波プラズマ照射手段4は、プラズマ生成部40と、マイクロ波伝送部50と、を備えている。マイクロ波伝送部50は、管体部51と、マイクロ波電源52と、マイクロ波発振器53と、アイソレータ54と、パワーモニタ55と、EH整合器56と、を有している。マイクロ波発振器53、アイソレータ54、パワーモニタ55、およびEH整合器56は、管体部51により連結されている。管体部51は、チャンバー8の後壁に穿設された導波孔を通って、プラズマ生成部40の導波管41の後側に接続されている。
図3および図4に示すように、プラズマ生成部40は、導波管41と、スロットアンテナ42と、誘電体部43と、誘電体部固定板44と、を有している。導波管41は、アルミニウム製であって、上方に開口する直方体箱状を呈している。導波管41は、左右方向に延在している。スロットアンテナ42は、アルミニウム製であって、長方形板状を呈している。スロットアンテナ42は、導波管41の開口部を上方から塞いでいる。すなわち、スロットアンテナ42は、導波管41の上壁を形成している。スロットアンテナ42には、スロット420が四つ形成されている。スロット420は、左右方向に伸びる長孔状を呈している。スロット420は、電界が強い位置に配置されている。
誘電体部43は、石英製であって、直方体状を呈している。誘電体部43は、スロットアンテナ42の上面前側に配置されている。誘電体部43は、スロット420を上方から覆っている。
誘電体部固定板44は、ステンレス鋼製であって、平板状を呈している。誘電体部固定板44は、スロットアンテナ42の上面後側に配置されている。誘電体部固定板44は、誘電体部43を後方から支持している。
次に、マイクロ波プラズマ処理方法について説明する。本実施形態の処理方法は、第一実施形態と同様に、まず、チャンバー8の内部を減圧状態にした後、第一ガス供給管から、第一ガスのアルゴンをチャンバー8内へ供給する。続いて、マイクロ波電源52をオンにして、マイクロ波発振器53からマイクロ波を発生させる。発生したマイクロ波は、管体部51内を伝播する。管体部51内を通過したマイクロ波は、導波管41の内部を伝播する。導波管41の内部を伝播するマイクロ波は、スロットアンテナ42のスロット420に進入する。そして、図4中白抜き矢印Y1で示すように、スロット420を通過して、誘電体部43に入射する。誘電体部43に入射したマイクロ波は、同図中白抜き矢印Y2で示すように、主に誘電体部43の前面430に沿って伝播する。このマイクロ波の強電界により、チャンバー8内のアルゴンガスが電離して、誘電体部43の前方にマイクロ波プラズマP2が生成される。このようにして、試料20の塗膜201の表面に、マイクロ波プラズマP2を照射する。
(3)その他
例えば、上記実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置において、チャンバーや試料保持板の材質や形状については、特に限定されない。スロットアンテナの材質、スロットの数、形状、配置なども、特に限定されない。例えば、スロットは、一列、二列の他、三列以上に配置されていてもよい。スロットの数は、奇数個でも偶数個でもよい。また、スロットの配置角度を変えて、ジグザグ状に配置してもよい。誘電体部の材質、形状についても、特に限定されない。誘電体部の材質としては、誘電率が低く、マイクロ波を吸収しにくい材料が望ましい。例えば、石英の他、酸化アルミニウム(アルミナ)などが好適である。マイクロ波の周波数も特に限定されない。8.35GHz、1.98GHz、915MHzなどであってもよい。
上記実施形態においては、マイクロ波プラズマ処理を、一種類のガス雰囲気にて行った。しかし、マイクロ波プラズマ処理には、二種類以上のガスを用いてもよい。例えば、二種類のガスを用いる場合には、第一ガスに加えて、第二ガスを第二ガス供給孔から供給すればよい。使用するガス種としては、アルゴン(Ar)の他、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの希ガス、窒素(N)、酸素(O)、水素(H)などが挙げられる。
安定したプラズマを維持しやすいという理由から、マイクロ波プラズマ処理は、100Pa以下の圧力下で行うことが望ましい。また、容易にプラズマを生成できるという理由から、0.01Pa以上の圧力下で行うことが望ましい。なお、第二実施形態のプラズマ生成部のように、生成したマイクロ波プラズマに沿うようにマイクロ波を入射させると、マイクロ波がマイクロ波プラズマに伝播しやすくなる。このため、生成されるマイクロ波プラズマのエネルギーが、大きくなる。したがって、1Pa以下の低圧下であっても、安定したプラズマを生成することができる。
生成するマイクロ波プラズマの密度や、マイクロ波プラズマの照射時間により、炭素含有成分の低減効果は変化する。例えば、マイクロ波プラズマの照射時間が長いほど、より多くの炭素含有成分を除去することができる。例えば、マイクロ波プラズマの照射前後における、炭素の含有割合の低減率は、30%以上であることが望ましい。この場合、マイクロ波プラズマの照射時間は、1〜5分程度でよい。
[ガスバリア層形成工程]
本工程は、形成されたブロック層の表面に、スパッタ法により無機化合物からなるガスバリア層を形成する工程である。ガスバリア層については上述した通りである。よって、ここでは説明を割愛する。ガスバリア層をスパッタ法により形成するには、公知の二極スパッタ成膜装置、マグネトロンスパッタ成膜装置などを用いればよい。まず、スパッタ成膜装置のチャンバー内に、ブロック層が形成された基材を、ブロック層とターゲットとが対向するように配置する。次に、チャンバー内のガスを排気して、所定の真空度に保持した後、チャンバー内に、原料ガスやキャリアガスを導入する。そして、キャリアガスの電離により生成したプラズマでターゲットをスパッタして、ブロック層の表面にガスバリア層を形成する。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
<析出物の比較>
[実施例1]
まず、以下のようにして、PENフィルムにブロック層を形成した。PENフィルムとしては、帝人デュポンフィルム(株)製「テイジン(登録商標)テオネックス(登録商標)フィルムQ65FA(厚さ200μm)」を用いた。テトラn−ブトキシチタンを、アセチルアセトン、ブタノール、およびイソプロピルアルコールからなる混合溶剤に溶解した金属アルコキシド溶液を、PENフィルムの表面にスピンコータにて塗布した。アセチルアセトンは、溶剤であると共に、テトラn−ブトキシチタンのキレート剤でもある。塗布後のPENフィルムをオーブンに入れ、110℃で2分間乾燥した。その後、塗膜に紫外線を15秒間照射した。次に、上記第一実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置を使用して、塗膜にマイクロ波プラズマを照射した。以下のマイクロ波プラズマ処理における部材の符号は、前出図1に対応している。まず、塗膜201が形成されたPENフィルム200を、塗膜201を上にして、試料保持板21の上面に載置した。それから、チャンバー8の内部のガスを排気孔82から排出し、チャンバー8の内部圧力を1×10−2Paとした。次に、アルゴンガスを150sccmの流量で、チャンバー8内へ供給し、チャンバー8の内部圧力を25Paとした。続いて、マイクロ波電源52をオンにして、発振された出力1.0kWのマイクロ波により、マイクロ波プラズマP1を生成した。この状態で1分間、塗膜201の表面にマイクロ波プラズマP1を照射した。形成されたブロック層の厚さは、0.05μmである。
次に、以下のようにして、ブロック層の表面に、AlONからなるガスバリア層を形成した。まず、スパッタ成膜装置のチャンバー内に、ブロック層がターゲットと対向するように、PENフィルムを配置した。ターゲットは、アルミニウム製であり、長方形薄板状を呈している。次に、チャンバー内のガスを排気して、内部圧力を1×10−2Paとした。続いて、チャンバー内にアルゴンガスを供給し、内部圧力を0.5Paとした後、窒素ガスおよび酸素ガスを流量調整しながら供給した。そして、アルゴンガスの電離により生成したプラズマでターゲットをスパッタして、ブロック層の表面に、厚さ60nmのAlON膜を形成した。この後、得られたフィルム部材を、140℃で1時間、さらに160℃で1時間、加熱処理した。このようにして製造されたフィルム部材を、実施例1のフィルム部材とした。実施例1のフィルム部材は、本発明のフィルム部材に含まれる。
図5に、実施例1のフィルム部材の断面図を示す。図5に示すように、フィルム部材1は、PENフィルム10と、ブロック層11と、ガスバリア層12と、からなる。ブロック層11は、PENフィルム10の上面に配置されている。ガスバリア層12は、AlONからなり、ブロック層11の上面に配置されている。
[比較例1]
塗膜にマイクロ波プラズマを照射しない点以外は、実施例1と同様にして、フィルム部材を製造した。製造されたフィルム部材を、比較例1のフィルム部材とした。
[表面観察]
実施例1および比較例1のフィルム部材の表面(AlON膜の表面)を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。図6に、実施例1のフィルム部材の表面のSEM写真を示す。図7に、比較例1のフィルム部材の表面のSEM写真を示す。図6に示すように、マイクロ波プラズマを照射した実施例1のフィルム部材においては、粒状の塊はほとんど見られなかった。実施例1のフィルム部材においては、1視野(100μm)当たりの粒状の塊の数は、1個以下であった。これに対して、マイクロ波プラズマを照射しなかった比較例1のフィルム部材においては、図7中、丸印で囲って示すように、粒状の塊が多数確認された。粒状の塊は、PENフィルムから析出した低オリゴマー成分や、ブロック層に残留する炭素を含む成分だと推定される。
<表面粗さの比較>
実施例1および比較例1のフィルム部材を製造する過程において、ガスバリア層(AlON膜)を形成する前の、塗膜の表面粗さを測定した。実施例1の塗膜(ブロック層)には、マイクロ波プラズマが照射されており、比較例1の塗膜には、マイクロ波プラズマが照射されていない。実施例1、比較例1の各々の塗膜の表面を、走査型プローブ顕微鏡(SPM)で観察した。図8に、実施例1の塗膜の表面のSPM写真を示す。図9に、比較例1の塗膜の表面のSPM写真を示す。
図8、図9を比較すると、実施例1の塗膜は、マイクロ波プラズマが照射されているにも関わらず、表面が平滑であることがわかる。表面粗さを測定したところ、実施例1の塗膜においては、Ra=0.6nm、Rmax=5.4nmであった。比較例1の塗膜においては、Ra=0.6nm、Rmax=4.3nmであった。両者の表面粗さに、大きな差は無い。このように、マイクロ波プラズマを照射しても、塗膜の平滑さを維持できることが確認できた。
一方、実施例1と同様に、PENフィルムの表面に金属アルコキシド溶液を塗布、乾燥し、紫外線を照射して形成した塗膜に、RFプラズマを1分間照射した。そして、RFプラズマ照射後の塗膜(以下、「比較例2の塗膜」と称す)の表面を、SPMで観察した。図10に、比較例2の塗膜の表面のSPM写真を示す。図10に示すように、比較例2の塗膜の表面には、大きな凹凸が観察された。比較例2の塗膜の表面粗さを測定したところ、Ra=1.3nm、Rmax=17.6nmであった。これにより、RFプラズマを照射すると、塗膜の表面が荒れ、凹凸が大きくなることがわかる。
<炭素含有成分の比較>
PENフィルムに代えてガラス基板を用いた以外は、実施例1と同様に、金属アルコキシド溶液を塗布、乾燥し、紫外線を照射して塗膜を形成し、塗膜に残留する炭素含有成分が、マイクロ波プラズマの照射によりどの程度低減するのかを調べた。マイクロ波プラズマの照射方法は、実施例1と同じである。マイクロ波プラズマを1分間照射した塗膜を実施例1−1の塗膜、5分間照射した塗膜を実施例1−2の塗膜とした。また、マイクロ波プラズマを照射しなかった塗膜を、比較例1−1の塗膜とした。各々の塗膜を、X線光電子分光分析装置(XPS分析装置)により分析し、塗膜中の原子の組成比率を求めた。図11に、各塗膜における原子の組成比率を示す。
図11に示すように、比較例1−1の塗膜、すなわちマイクロ波プラズマを照射しない場合は7%であった炭素の含有割合は、マイクロ波プラズマを1分間照射すると4%に、マイクロ波プラズマを5分間照射すると1%にまで低減した。以上より、マイクロ波プラズマを1〜5分程度照射するだけで、塗膜の炭素含有成分を低減できることが確認された。
<アルカリ性レジスト現像液耐性の比較>
アルカリ性レジスト現像液に対するブロック層の耐性を評価するため、マイクロ波プラズマの照射の有無が異なる二種類のサンプルを製造した。
[実施例2]
ブロック層の表面にガスバリア層を形成しない点以外は、実施例1と同様にして、フィルム部材を製造した。すなわち、アルカリ性レジスト現像液耐性評価用のサンプルとして製造されたフィルム部材は、PENフィルム10と、ブロック層11と、からなる(符合は、前出図5参照)。製造されたフィルム部材を、実施例2のフィルム部材とした。
[比較例3]
塗膜にマイクロ波プラズマを照射しない点以外は、実施例2と同様にして、フィルム部材を製造した。製造されたフィルム部材は、PENフィルムと、その表面に形成された塗膜と、からなる。製造されたフィルム部材を、比較例2のフィルム部材とした。
[表面粗さの比較]
実施例2および比較例3のフィルム部材を、テトラメチルアンモニウムハイドレートを含む水溶液からなるアルカリ性レジスト現像液(東京応化工業(株)製「NMD−W」)に3分間浸漬して、実施例2のフィルム部材についてはブロック層の表面粗さを、比較例3のフィルム部材については塗膜の表面粗さを、測定した。表面粗さの測定には、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を使用した。
その結果、実施例2のフィルム部材におけるブロック層の表面粗さは、Ra=0.6nm、Rmax=5.7nmであった。ちなみに、アルカリ性レジスト現像液に浸漬する前の、同ブロック層の表面粗さは、Ra=0.6nm、Rmax=5.4nmである。これにより、マイクロ波プラズマが照射されたブロック層は、アルカリ性レジスト現像液に浸漬しても、表面の平滑さを維持できており、アルカリ性レジスト現像液に対する耐性が高いことが確認できた。
これに対して、比較例3のフィルム部材における塗膜の表面粗さは、Ra=1.3nm、Rmax=12.4nmであった。また、アルカリ性レジスト現像液に浸漬する前の、同塗膜の表面粗さは、Ra=0.6nm、Rmax=4.3nmである。この結果について調査したところ、比較例3のフィルム部材における塗膜は、アルカリ性レジスト現像液に溶解し、浸漬後には、PENフィルム上に残留していないことが判明した。すなわち、アルカリ性レジスト現像液への浸漬後に、比較例3のフィルム部材において測定された表面粗さは、PENフィルムの表面粗さであった。なお、比較例3のフィルム部材において測定された表面粗さ(PENフィルムの表面粗さ)は、別途、成膜および熱処理などを行っていないPENフィルムの表面粗さと同等であった。
以上より、マイクロ波プラズマを照射することによりアルカリ性レジスト現像液への耐性が向上し、塗膜がアルカリ性レジスト現像液に溶解することなく、表面の平滑さを維持できることが確認された。
本発明のフィルム部材は、例えば、タッチパネル、ディスプレイ、LED(発光ダイオード)照明、太陽電池、電子ペーパーなどに用いられる機能性樹脂フィルムとして有用である。
1:フィルム部材、10:PENフィルム(基材)、11:ブロック層、12:ガスバリア層。
2:マイクロ波プラズマ処理装置、20:試料、21:試料保持板、200:PENフィルム(基材)、201:塗膜、210:脚部、30:プラズマ生成部、31:導波管、32:スロットアンテナ、33:誘電体部、320:スロット、330:下面、4:マイクロ波プラズマ照射手段、40:プラズマ生成部、41:導波管、42:スロットアンテナ、43:誘電体部、44:誘電体部固定板、420:スロット、430:前面、50:マイクロ波伝送部、51:管体部、52:マイクロ波電源、53:マイクロ波発振器、54:アイソレータ、55:パワーモニタ、56:整合器、8:チャンバー、80:第一ガス供給孔、81:第二ガス供給孔、82:排気孔、83:導波孔、84:段差部、P1、P2:マイクロ波プラズマ。

Claims (13)

  1. 樹脂フィルムを有する基材と、該基材の厚さ方向の少なくとも一方側に配置され無機化合物からなるガスバリア層と、該基材と該ガスバリア層との間に介装されるブロック層と、を備え、
    該ブロック層は、該基材の表面に金属アルコキシドを含む溶液を塗布、乾燥して形成される塗膜に、マイクロ波プラズマを照射して形成されることを特徴とするフィルム部材。
  2. 前記ブロック層の表面の算術平均粗さ(Ra)は、1.2nm以下である請求項1に記載のフィルム部材。
  3. テトラメチルアンモニウムハイドレートを含む水溶液からなるアルカリ性レジスト現像液に浸漬した後の前記ブロック層の表面の算術平均粗さ(Ra1)と、該アルカリ性レジスト現像液に浸漬する前の該ブロック層の表面の算術平均粗さ(Ra0)との差(Ra0−Ra1)は、±0.3nm以下である請求項1または請求項2に記載のフィルム部材。
  4. 前記アルカリ性レジスト現像液に浸漬した後の前記ブロック層の表面の算術平均粗さ(Ra1)は、1.2nm以下である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のフィルム部材。
  5. 前記ブロック層における炭素の含有割合は、該ブロック層を構成する原子全体を100%とした場合の5%以下である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のフィルム部材。
  6. 前記溶液において、前記金属アルコキシドはキレート化されている請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のフィルム部材。
  7. 前記金属アルコキシドは、チタンおよびジルコニウムの少なくとも一方を含む請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のフィルム部材。
  8. 前記基材は、前記樹脂フィルムのみからなり、
    前記ブロック層は、該樹脂フィルムの表面に形成される請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のフィルム部材。
  9. 前記樹脂フィルムは、ポリエチレンナフタレートフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のフィルム部材。
  10. 前記ガスバリア層は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸窒化シリコン、酸窒化アルミニウムのうちのいずれか、またはこれらの複合物からなる請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のフィルム部材。
  11. 樹脂フィルムを有する基材の厚さ方向の少なくとも一面に、金属アルコキシドを含む溶液を塗布、乾燥して塗膜を形成する塗膜形成工程と、
    該塗膜にマイクロ波プラズマを照射してブロック層となすマイクロ波プラズマ処理工程と、
    該ブロック層の表面に、スパッタ法により無機化合物からなるガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、
    を有することを特徴とするフィルム部材の製造方法。
  12. 前記溶液は、前記金属アルコキシドをキレート化するキレート剤を含む請求項11に記載のフィルム部材の製造方法。
  13. 前記マイクロ波プラズマの照射は、0.01Pa以上100Pa以下の圧力下で行われる請求項11または請求項12に記載のフィルム部材の製造方法。
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