JP2014065039A - 製鋼用レードルの予熱方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】レードルを断熱カバーで密閉して内部に抵抗発熱体を設け、容量に対応した大出力で耐火物を放射加熱する。出力に対応した発熱体表面積を設定し、発熱体を1600℃以上とし、耐火物表面を1250℃以上に予熱する。熱排ガスなしと断熱性と大出力とにより熱損比率が小さくなり高加熱効率が得られる。高速加熱によりアーク溶解炉サイクルと同時間内で予熱されるので安価な夜間電力のみで運転可能となる。
【選択図】 図1
Description
1)バーナーは大量の熱排ガスを発生するので本来加熱効率が低い。
2)耐火物は伝熱性が低く鋼材のように急速に昇温せず長時間を要し排熱が増加する。
3)被加熱物の構造に問題がある。加熱炉のように効率を考慮した構造ではなく単純なバケツ状であるから火炎が効果的に流れず多くが瞬時に吹き出る。
4)同様に被加熱物の大きな熱容量に対して相応のバーナー出力(kcal/h)が必要だが、燃焼空間容積が相対的に大きくないので火炎の吹き出しが多くなる。
5)底面の昇温が遅れ無駄が増加する。
6)耐火物表面が1200℃を越えて上昇してくると火炎との温度差が小さくなり伝熱性が低下して無駄が増加する。
アーク加熱にしろ抵抗加熱にしろ熱排ガスの無い電気加熱が予熱に全く使用されていない理由を検討すると、
1)電気加熱炉の加熱効率は必ずしも良くないことが経験的に知られていること、
2)電気料金が燃料と比較して割高であること、夜間電力を使用しようとしても夜間操業前に予熱が必要で上手く行かないこと、
3)高温予熱に適切な設備が開発されていないこと等が挙げられる。
予熱において省エネルギーを図るには上記3点の問題を解決しなければならない。
この事実から炉体の加熱効率(レードルの予熱の効率に相当)を向上させるには、加熱能力(kW)を思い切って『大出力』とし、短時間で昇温すれば良いというヒントが得られる。熱精算から加熱効率80%は不可能ではなさそうである。
第1案として既述のアーク加熱方式では、充分な出力と熱源の高温化に関しては合格であるが、アークの点火と制御、昇降機構、気密性、ホットスポットの分散、電極棒からの放熱、ガスの噴出等設備・作業上の問題が大きく且つ多い。実施されない理由が解る。
第2案として抵抗加熱方式では、参考事例として超高温ヒーター(Mo化合物を使用した発熱体で通称カンタルヒーター)が有力である。耐用上限は1700℃、炉内温度1600℃以下、単位出力は最大20kWが市販されている。 必要本数・必要設置スペース・ヒーター単価及び耐久性・耐破損性等を考慮すると実用は設備費用上及び消耗費上とても困難と判明した。同様にSiCを発熱体とした場合、炉の使用上限温度は1100℃で同様に本目的には不十分である。当着想を実現するには高温且つ高出力熱源を具備するコンパクトで耐久性があり、消耗が少ない低廉な設備の開発が不可欠となる。
他方設備・作業面として、1200℃を越える高温予熱に有利で且つ耐久性のある高温熱源として抵抗発熱体の材質と構造及び使用環境に工夫を加える。
P≧170×W2/3 −−−−−(1)
A≧P/(1.7T−2400) −−−−−(2)
1) 耐火断熱性カバーとは、発熱体の発熱部や耐火物から外部への断熱だけではなく発熱体基部から漏出する熱に対しても断熱機能を持つ図1中の5の保温箱を含む。
2) 加熱装置の出力Pとは、電源から発熱体に導入される電力である。
3) レードル容量Wとは、収容量の設計値である。
4) 発熱体の表面積とは、発熱部の表面積であり発熱体の基部(断面積が発熱部の数倍で発熱しない)のそれを除く。
5) 密閉状とは、対流で内外に空気が循環しない程度であり、雰囲気が維持される程度とする。
6) 耐火物表面温度とは壁面及び底面を対象とし、表面から内部に向かって直線的温度勾配を持つ状態での温度とする。加熱中は表皮の昇温が先行していて直線的でない。加熱を停止すると数分で勾配が直線的になる。測定方法としては通電停止1分後の値とする。
a: 電気抵抗加熱を採用するので熱排ガスが無く入熱の大部分が耐火物へ移行する。
b: 耐火断熱性の密閉状カバーにより漏出熱は主に耐火物通過分となり低減される。
c: 加熱の実効出力が従来の数倍に強化され短時間で処理されるので漏出熱比率が低 下する。
2) 高温予熱が下記理由により可能になって一層の省エネルギーが得られる。
a: 発熱体は大きな実効出力を持つこと、該出力が効果的に耐火物へ移行するよう発熱体は充分な表面積を持つこと、耐火物表面温度が1200℃を越えても伝熱性を保持する1600℃以上の高温発熱体を持つことから1300℃以上望ましくは溶鋼温度約1600℃まで予熱可能となる。
b: 高温予熱により溶鋼の冷却が小さくなり、それに起因して出鋼温度が下げられて省エネルギー、又は低温出鋼再加熱方式では再加熱量の低減により省エネルギーが可能となる。これは加熱効率が溶解炉では約60%、レードル再加熱では約40%、本発明の方法では約80%であることから帰結される。
4) コスト面では、実効加熱出力が大幅増強され予熱時間は溶解炉と同期させることができるので夜間電力が使用でき、電力単価が約半減する。黒鉛発熱体の酸化消耗は雰囲気制御により0.01kg/kWh以下に削減されコスト負担は大きくない。
5) 設備は数千kWの電源と発熱体1式と断熱カバーと昇降機構から成り、比較的簡素で高価ではなく、採算上の問題は容易に解決される。
6)夜間電力は主に原子力発電から供給されるのでCO2 削減に寄与する。
加熱装置5は、レードルの上方開口部を密閉する耐火断熱性のカバー6と、該カバー6を貫通してレードル内部空間に配置される抵抗発熱体7と、該発熱体7に通電する単相電源8と、通電を制御する制御器(図示せず)と、該カバー6の昇降手段(図示せず)と、発熱体7の基部9からの漏熱を防止する断熱箱10から成る。発熱体7は偶数の黒鉛棒で構成され、その下端では黒鉛、上端では導体でそれぞれが単相直列結線になるよう接続される。
急速予熱するため加熱装置の出力P(kW)は必要充分な大きさにしなければならない。
出力P(=電圧×電流、kW)はレードル容量W(t)に関係した(1)式に基づいて決定される。
P≧170×W2/3 −−−−−(1)
上記の式の下限の出力であれば、例えば30トンのレードルの場合、出力1700kWで、加熱効率80%で、耐火物を平均200℃から表面約1000℃(平均約800℃)に1時間で昇温することができ作業上支障のない従来の水準に達する。
A≧P/(1.7T−2400) −−−−−(2)
上記の式の下限の表面積であれば、例えば30トンのレードルの場合、出力1700kW、発熱体の設定温度1700℃(又は2000℃)に対して必要表面積Aは3.4m2(又は1.7m2 )となる。
本発明では黒鉛と特定する。他の理由として低単価であること、強度、衝撃、熱応力に優れることである。発熱体の材質を黒鉛とする場合の問題は、500℃以上で使用すると酸化消耗することである。従って雰囲気を非酸化性又は還元性にする必要があり、当然本発明に組み込まれる。当業者には特に困難ではない。
耐用上限とし2300℃の事例があるが本目的に対する問題は明確ではない。
I=√(P/R) −−−−−(3)
E=I×R −−−−−(4)
R=μ×n×L/S −−−−−(5)
S=π/4×d2 −−−−−(6)
A=n×π×d×L −−−−−(7)
ここでI:電流(A)、P:出力(kW)、R:抵抗(Ω)、E:電圧(V)、μ:黒鉛抵抗率(Ωm)、n:発熱体本数、L:発熱部長さ(m)、S:発熱体断面積(m2)、d:発熱体直径(m)、A:発熱体表面積(m2)
本発明の加熱装置は夜間操業開始時に溶解炉と同時に稼働させる。通電に先立ち造滓材の石灰の一部と炭材をレードル底部に装入する。通電により発熱体が急速に昇温する。2000℃に維持するよう電圧を制御する。炭材が燃焼して雰囲気は非酸化性に移行する。レードル耐火物は前日操業の残熱約200℃から加熱され同時に石灰も加熱される。石灰からCO2ガスが発生し、炭材と反応してCOガスに改質され、還元性雰囲気が形成され黒鉛の酸化消耗が抑制される。
当該予熱時間において従来以上に予熱を強化すると受鋼後の溶鋼の冷却が減少する。その結果出鋼温度を下げる、又は受鋼後の再加熱量を少なくすることが可能になる。
必要出力Pを算出する(1)式の根拠に対して:
耐火物厚さは容量に関わらずほぼ一定であるから予熱すべき耐火物量はレードル内面積に比例、即ち容量の2/3乗に比例、従って必要出力は(1)式の構造になる。次ぎに比例係数は容量30トンのレードルにおいて作業上支障のない水準の実績値を基に熱精算を加えて決定した。
発熱体の出力Pは放射伝熱量P’(kcal/h )と均衡し、下記ステファン・ボルツマン式に依存する。
P’=4.9εA(θh4−θw4)×10-8
ε:放射率、A:表面積(m2)、θh:発熱体温度(K)、θw:壁面温度(K)
ここでθwを1200℃とし、
θhが1700℃の場合は、P(kW)≒ 500×A
θhが2000℃の場合は、P(kW)≒1000×A となる。
この間はほぼ直線に近似することができるので発熱体温度Tと出力と表面積の関係を(2)式で近似させた。
図3には放射伝熱量に及ぼす発熱体温度と壁面温度の影響を示す。
熱損は、密閉状であるからカバーを含め耐火断熱壁を貫通する熱流束Q’と、密閉とは言え避けられない通気分Q"と、発熱体昇温分Qhと、カバー蓄熱分Qcから成る。Qh,Qcはほぼ定数であるがQ’、Q”は予熱時間に比例して増加する。従って定性的には出力が小さく予熱時間が長くなるほど加熱効率が低下することが解る。
定量化へ向けて試算する。貫通熱流束Q’は鉄皮温度の実測から算出される。30トンのレードルでは、Q’は約80Mcal/h以下、Q”はその数分の1、発熱体分Qhは約60Mcal,カバー蓄熱分Qcは約70Mcalで、1時間で処理する場合、出力1700kWに対して約270kW、約16%が無駄となっている。なお石灰昇温分はいずれ投入しなければならない有効熱である。加熱効率80%は充分可能であることが解る。
図3はレードルの予熱温度を種々変えた場合の受鋼後の溶鋼の冷却挙動を示す。比較例として従来の約1000℃加熱に対して本発明の1250℃加熱により、造滓材をレードルに投入する場合(本発明3)、投入しない場合(本発明2)、でもその後の溶鋼の冷却に有利であることが解る。本発明1の1550℃に予熱できれば計算上溶鋼の冷却は無視できる程度となる。
予熱強化により出鋼温度を下げ、精錬温度を下げることは、レードル精練の主目的である脱酸に対しても有利である。なぜなら脱酸温度が低いほど平衡酸素量が低下し、脱酸が進行し易くなるからである。他に耐火物耐久にも有利である。
電流値が10万アンペア程度になると導体断面積が過大になってアーク溶解炉と同様の構造になり設備費用上無理となる。
他方発熱体断面積を小さくする方法は既述の必要表面積に反するだけでなく、強度・耐久性や消耗による交換頻度からも好ましくない。解決案として発熱体を薄板状にする等は耐久面から不適切である。
発明者は実用に耐えるよう発熱体を太径棒状に構成し、発熱体断面積Sと必要表面積Aが整合する条件を種々試算した結果、発熱体を図1に示す構造にすることによって解決した。即ち発熱体7を偶数本懸垂させて必要表面積を確保し、それぞれを単相直列結線にすることにより回路抵抗を増加させ、電流値を許容範囲に抑制することができた。
P≧170×W2/3 −−−−−(1)
A≧P/(1.7T−2400) −−−−−(2)
I=√(P/R) −−−−−(3)
E=I×R −−−−−(4)
R=μ×n×L/S −−−−−(5)
S=π/4×d2 −−−−−(6)
A=n×π×d×L −−−−−(7)
ここで記号の意味とその単位は以下である。I:電流(A)、P:出力(kW)、R:抵抗(Ω)、E:電圧(V)、μ:黒鉛抵抗率(Ωm)、n:発熱体本数、L:発熱部長さ(m)、S:発熱体断面積(m2)、d:発熱体直径(m)、A:発熱体表面積(m 2 )
図4はレードルの予熱温度を種々変えた場合の受鋼後の溶鋼の冷却挙動を示す。比較例として従来の約1000℃加熱に対して本発明の1250℃加熱により、造滓材をレードルに投入する場合(本発明3)、投入しない場合(本発明2)、でもその後の溶鋼の冷却に有利であることが解る。本発明1の1550℃に予熱できれば計算上溶鋼の冷却は無視できる程度となる。
Claims (4)
- 直立する有底円筒状の製鋼用レードルを受鋼前に上方開口部を耐火断熱性のカバーで覆って予熱する方法において、該カバーを貫通して抵抗発熱体を内部空間に配置してレードル耐火物表面を放射加熱するに当たり、該加熱装置の出力P(kW)を該レードルの容量W(t)に対して下記(1)式に基づいて設定し、該発熱体の表面積を該発熱体の温度T(℃)に対して下記(2)式に基づいて設定することを特徴とする製鋼用レードルの予熱方法。
P≧170×W2/3 −−−−−(1)
A≧P/(1.7T−2400) −−−−−(2) - 抵抗発熱体の材質を黒鉛とし、該抵抗発熱体の温度を1600℃以上とし、カバーによる覆いを密閉状とし、内部を非酸化性又は還元性雰囲気とすることを特徴とする請求項1に記載した製鋼用レードルの予熱方法。
- レードル耐火物表面温度を溶鋼温度以下で且つ溶鋼温度下方300℃以内に加熱することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した製鋼用レードルの予熱方法。
- 加熱時間を溶解炉の1サイクルの時間内に制限することを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載した製鋼用レードルの予熱方法。
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