従来、継手ピッチ19が一定寸法以上異なる鋼矢板15を圧入・引抜する場合には、継手ピッチ19の寸法に応じたそれぞれ専用の鋼矢板圧入引抜機を使用することが基本となっている。即ち、一定寸法範囲を超えた多様な継手ピッチの鋼矢板15、特には継手ピッチ19が400mmと600mmのように200mm程度以上の寸法差を有する鋼矢板15の双方を施工可能な鋼矢板圧入引抜機は提供されていない。
その理由の第1は、作業する鋼矢板15をチャックして圧入するためのチャック装置を、最大寸法の継手ピッチ19を有する鋼矢板15をチャックして旋回できるように構成する必要があるため、一定寸法範囲を超えた最小寸法の継手ピッチを有する鋼矢板15を同一のチャック装置を使用してチャックすると、具体的には図11に示す鋼矢板15において、継手ピッチ19が600mmの鋼矢板15をチャック可能なチャック装置で、継手ピッチ19が400mmの鋼矢板15をチャックして圧入・引抜作業を行おうとすると、チャック装置が鋼矢板圧入引抜機の他の部材と干渉して、既設の鋼矢板の内、クランプ装置でクランプした先頭の鋼矢板の開放された継手に噛合させる位置に設置することができないためである。
その理由の第2は、鋼矢板圧入引抜機を既設の鋼矢板に自立させるとともに、既設の鋼矢板から反力を得るために既設の鋼矢板をクランプするクランプ装置が一定寸法範囲を超えた継手ピッチの寸法差を有する鋼矢板に対応してクランプできないためである。
そこで、先ず、これらの理由の第1及び第2の詳細を明らかとする。図19は継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを圧入している従来の鋼矢板圧入引抜機の側面図である。図において、40は従来の鋼矢板圧入引抜機であって、下方にクランプ装置3を配設して、継手ピッチ19aが600mmの既設の鋼矢板20a上に定置される台座2と、該台座2上にスライド自在に配備されたスライドベース4の上方にあって縦軸を中心として回動自在に立設されたガイドフレーム7と、該ガイドフレーム7に昇降自在に装着されて鋼矢板圧入引抜シリンダ9が取り付けられた昇降体41と、昇降体41の下方に形成されたチャックフレーム42と、チャックフレーム42内に旋回自在に装備されるとともに鋼矢板15aを挿通してチャック可能なチャック装置43とを具備してなる。
図19において、クランプ装置3は3本のクランプ部材3a,3b,3cを進行方向Fに対して順に配置しており、相互に継手を噛合させて圧入された既設の鋼矢板20aの上端部に跨ってクランプするとともに、先頭のクランプ部材3aが先頭の鋼矢板20a1をクランプしている。これにより鋼矢板圧入引抜機40を既設の鋼矢板20a上に定置するとともに圧入時の反力を既設の鋼矢板20aから得るようにしている。クランプ部材3a,3b,3cはそれぞれ形状及びオフセット量を異にする公知の構成である。そして、圧入する鋼矢板15aをチャック装置43に挿通してチャックするとともに、既設の先頭の鋼矢板20a1の開放された継手に、圧入する鋼矢板15aの継手を噛合させた状態で、鋼矢板圧入引抜シリンダ9を作動させて圧入作業を行う。
チャック装置43は600mmの継手ピッチ19aの鋼矢板15aを挿通してチャックするとともに、図12に示す中立軸L2に対して左右交互に圧入するため、圧入作業の進行方向Fに対して、鋼矢板15aを1枚圧入する毎に左右交互に向きを変えて次の鋼矢板15aをチャックできるように、チャックフレーム42内において旋回する必要がある。そのため、肉厚部分を含めると外形部分の最大寸法48は直径900mm程度となる。また、チャック装置43のチャックフレーム42内に位置する部分には、旋回のためのチャックリングギア44が装備されており、昇降体41に装備されたチャック旋回モータ45の駆動軸に連結したピニオンギア46が、このチャックリングギア44と噛合することによってチャック装置43を旋回させるようにしている。そのため、チャックリングギア44を装備するチャックフレーム42の外形から、ピニオンギア46及びピニオンギア46を収納したピニオンギアボックス47が突出することとなり、この突出部分を合わせたチャックフレーム42と同一平面における外形部分の最大寸法49は直径1080mm程度となる。
図19に示すように、600mmの継手ピッチ19aの鋼矢板15aを圧入する場合は、継手ピッチ19aに余裕があるため、チャックフレーム42やチャック装置43が鋼矢板圧入引抜機40の他の部材に干渉することがなく、クランプ装置3で既設の鋼矢板20aをクランプし、かつ、先頭のクランプ部材3aが既設の先頭の鋼矢板20a1をクランプしている状態で、作業する鋼矢板15aの継手18を既設の先頭の鋼矢板20a1の開放された継手18に噛合させて圧入・引抜作業することができる。
次に、同一の鋼矢板圧入引抜機40を使用して継手ピッチ19bが500mmの鋼矢板15bを圧入する作業を説明する。図20は継手ピッチ19bが500mmの鋼矢板15bを圧入している従来の鋼矢板圧入引抜機40の側面図である。図において、図19と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
チャック装置43は継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを挿通してチャックできる構成であり、継手ピッチ19bの寸法が500mmと鋼矢板15aより小さい鋼矢板15bを挿通してチャックすることもできる。また、クランプ装置3もクランプ部材3a,3c,3dを設置順序を調節することによって、継手ピッチ19bが500mmの既設の鋼矢板20bを掴んで鋼矢板圧入引抜機40を定置するとともに圧入時の反力を既設の鋼矢板20bから得ることができる。
この場合においても、図20に示すように、継手ピッチ19bが500mmの鋼矢板15bを圧入する場合は、継手ピッチ19bにまだ余裕があるため、チャックフレーム42やチャック装置43が鋼矢板圧入引抜機40の他の部材に干渉することがなく、クランプ装置3で既設の鋼矢板20bをクランプし、かつ、先頭のクランプ部材3aが既設の先頭の鋼矢板20b1をクランプしている状態で、作業する鋼矢板15bの継手18を既設の先頭の鋼矢板20b1の開放された継手18に噛合させて圧入・引抜作業することができる。
次に、同一の鋼矢板圧入引抜機40を使用して継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを圧入する作業を説明する。図21は継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを圧入している従来の鋼矢板圧入引抜機40の側面図である。図において、図19と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
クランプ装置3は、4本のクランプ部材3a,3e,3a,3cを使用して、その設置順序を調節することによって、継手ピッチ19cが400mmの既設の鋼矢板20cをクランプして鋼矢板圧入引抜機40を定置するとともに圧入時の反力を既設の鋼矢板20cから得ることは可能である。また、チャック装置43も継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを挿通してチャックできる構成であり、継手ピッチ19cの寸法が400mmと鋼矢板15aより小さい鋼矢板15cを挿通してチャックすることは可能である。
しかしながら、図21に示すように、継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを圧入する場合は、継手ピッチ19cの寸法が、鋼矢板15aの600mmよりも200mmも小さいため、継手ピッチ19cに余裕がない。そのため、クランプ装置3で既設の鋼矢板20cをクランプし、かつ、先頭のクランプ部材3aが既設の先頭の鋼矢板20c1をクランプしている状態で、作業する鋼矢板15cの継手18を既設の先頭の鋼矢板20c1の開放された継手18に噛合させて圧入・引抜作業することができない。即ち、前記した状態を実現しようとすると、図21において干渉部分Kとして示すようにチャック装置43が台座2や先頭のクランプ部材3aに干渉し、又干渉部分Sとして示すようにチャックフレーム42のピニオンギア46及びピニオンギアボックス47の位置する突出部が台座2に干渉することとなる。そのため、継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを圧入するための鋼矢板圧入引抜機40を使用して継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを圧入・引抜することはできない。
継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板を圧入するためには400mm用に外形寸法を小さくした専用のチャック装置及び該チャック装置を装備するチャックフレームを有する専用の鋼矢板圧入引抜機を使用する必要がある。即ち、継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを挿通してチャックするチャック装置及び該チャック装置を旋回可能に装備するチャックフレームの外形寸法を小さくしないと、図21に干渉部分Kや干渉部分Sとして示すようなチャック装置43及びチャックフレーム42とクランプ装置3や台座2との干渉を生じるためである。一方、継手ピッチ19cが400mm用のチャック装置には継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを挿通することが物理的に不可能であってチャックすることができない。そのため、継手ピッチ19cが400mm用の鋼矢板圧入引抜機を使用して継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを圧入することもできない。
よって、一定寸法範囲を超えた多様な継手ピッチの鋼矢板15、特には継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aと、継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cのように200mm程度以上の寸法差を有する鋼矢板15a,15cの双方を、クランプ装置3で既設の先頭の鋼矢板20a,20cをクランプし、かつ、先頭のクランプ部材3aが既設の先頭の鋼矢板20a1,20c1をクランプしている状態で、作業する鋼矢板15a,15cの継手18を既設の先頭の鋼矢板20a1,20c1の開放された継手18に噛合させて圧入作業する鋼矢板圧入引抜機は提供されていない。そのため従来は、それぞれ継手ピッチ19の寸法に応じた専用の鋼矢板圧入引抜機を準備する必要があり、汎用性に欠け、作業性が悪いばかりでなく、各現場に応じた迅速な対応・作業ができず経済性にも欠けていた。
そこで従来、最大寸法の継手ピッチ19を有する鋼矢板15をチャック可能なチャック装置43を使用して、一定寸法範囲を超えた最小寸法の継手ピッチ19を有する鋼矢板15をチャックして圧入するための便宜的手段として、例えば、図19に示す継手ピッチ19aが600mm用の鋼矢板圧入引抜機40を使用して、図21に示す継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを圧入するための便法が行われている。これは、図22に示すように、スライドベース4を進行方向Fに向けて伸長させることにより、既設の鋼矢板20cの内、先頭の鋼矢板20c1を鋼矢板圧入引抜機40のクランプ装置3でクランプすることなく、2番目以降の鋼矢板20c2以降をクランプした状態で(即ち、既設の先頭の鋼矢板20c1が無負荷の状態で)、鋼矢板圧入引抜機40を既設の鋼矢板20cに定置し、チャック装置43でチャックした作業する鋼矢板15cの継手18を既設の先頭の鋼矢板20c1の開放された継手18に噛合させて圧入・引抜作業を行うものである。かかる施工方法によれば、チャック装置43やチャックフレーム42が台座2やクランプ装置3と干渉することなく、1台の鋼矢板圧入引抜機40を使用して、継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aと、継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを施工することが可能とはなる。
しかしながら、かかる既設の鋼矢板20cの先頭の鋼矢板20c1をクランプすることなく圧入作業を行う便法は、以下に説明する大きな問題点を有しており、その解決が望まれている。図23は前記した便法による作業状態を示す側面説明図である。図に示すように、先頭の鋼矢板20c1の開放された継手18に噛合させて、圧入作業する鋼矢板15cを圧入力Pで圧入施工すると噛合させた継手18部分に継手抵抗Rが働く。継手抵抗Rは鋼矢板20c1と鋼矢板15cの継手18に砂噛み等の欠陥がある場合や、既設の鋼矢板20cのねじれやゆがみ等によっても発生する。このとき、先頭の鋼矢板20c1をクランプ部材により固定できていないため、その上端が下がる場合がある。この現象を共下がりという。また、引抜作業をするときは圧入時と反対の方向の継手抵抗が発生するため、先頭の鋼矢板20c1の上端が上がる場合がある。この現象を共上がりという。即ち、既設の先頭の鋼矢板20c1をクランプすることができないため、該先頭の鋼矢板20c1の開放された継手18に作業する鋼矢板15cの継手18を噛合させて圧入・引抜を行うと、作業する鋼矢板15cと先頭の鋼矢板20c1の継手抵抗により、先頭の鋼矢板20c1が共下がり又は共上がりを起こすことがある。
上記構成の鋼矢板圧入引抜機40を使用して鋼矢板15a,15b,15cの圧入・引抜作業を行う場合は、既設の鋼矢板20a,20b,20cの内、先頭の鋼矢板20a1,20b1,20c1をクランプ装置3でクランプした状態で、作業する鋼矢板15a,15b,15cの継手18を先頭の鋼矢板20a1,20b1,20c1の開放された継手18に噛合させた状態(以下、この状態を正規状態という)で作業することが重要である。
この正規状態の作業姿勢であると、鋼矢板圧入引抜機40で圧入力として定格荷重をかけたときに、反力と圧入位置の距離が近いため、発生するモーメントが小さく、鋼矢板圧入引抜機40にかかる応力が小さくなる。従って、よりコンパクトな機械で圧入可能となる。また、何より先頭の鋼矢板20a1,20b1,20c1をクランプ装置3でクランプしているため、先頭の鋼矢板20a1,20b1,20c1の継手と噛合して作業する鋼矢板15a,15b,15cとの間で継手抵抗が発生して、この継手抵抗によって先頭の鋼矢板20a1,20b1,20c1が上下に動かされることはなく、共下がり又は共上がりすることがない。よって、施工基準に従って鋼矢板15の上端部を揃えて圧入した既設の鋼矢板の施工精度を保つことができる。
これに対して、図22,図23に示すような正規状態ではない作業姿勢であると、正規状態の作業姿勢に比して、作業する鋼矢板15a,15b,15cを掴むチャック装置43の位置と、既設の鋼矢板20a,20b,20cをクランプするクランプ装置3の反力位置の距離が先頭の鋼矢板20a1,20b1,20c1の継手ピッチ19a,19b,19c分だけ遠く離れるため、同一の圧入力・引抜力をかけたときに反力側に発生するモーメントが大きいので機械にかかる応力が大きくなる。従って、正規状態での作業と同じ圧入力・引抜力をかけて施工することができないため、定格荷重が小さくなる。
また、何より、既設の先頭の鋼矢板20a1,20b1,20c1をクランプ装置3でクランプしていないため、前記した継手抵抗によって先頭の鋼矢板20a1,20b1,20c1が共下がりや共上がりを起こして、先頭の鋼矢板20a1,20b1,20c1が上下に動かされ施工精度の低下や打ち直し等の手間が生じる。即ち、施工基準に従って上端部を規定高さに揃えて圧入した既設の鋼矢板20a1,20b1,20c1が、共下がりや共上がりによって上下方向に位置が変化すると、再度規定寸法に打設し直す必要がある。共下がりや共上がりの防止策として圧入後の鋼矢板20a,20b,20cと先頭の鋼矢板20a1,20b1,20c1とを溶接して固定する必要があり、余分な手間や材料費が発生することとなる。また、仮設の場合は引抜作業時に溶接部をガスで切断する手間がかかるとともに鋼矢板の損傷により損料も発生する。更に、共上がりした鋼矢板が鋼矢板圧入引抜機40の下面に当たり、機械を損傷させる不具合が発生することもある。
そこで本発明はこのような従来の鋼矢板圧入引抜機が有している課題を解決し、多様な継手ピッチの鋼矢板に対応可能な汎用性を有する鋼矢板圧入引抜機及び鋼矢板圧入引抜工法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、下方にクランプ装置を配設した台座と、台座上にスライド自在に配備されたスライドベースの上方にあって縦軸を中心として回動自在に立設されたガイドフレームと、該ガイドフレームに昇降自在に装着されて鋼矢板圧入引抜シリンダが取り付けられた昇降体と、昇降体の下方に形成されたチャックフレームと、チャックフレーム内に旋回自在に装備されるとともにU型の鋼矢板を挿通してチャック可能なチャック装置とを具備してなる鋼矢板圧入引抜機において、クランプ装置は、それぞれ形状及びオフセット量を異にして既設のU型の鋼矢板の上端部に跨ってクランプする複数のクランプ部材と、それぞれピッチを異にして台座の下面に形成され、クランプ部材を装備する複数のクランプガイドとからなり、複数のクランプガイドに対する複数のクランプ部材の装備箇所を組み替えることによってクランプピッチを変更可能とした鋼矢板圧入引抜機を基本として提供する。
そして、クランプピッチを変更することによって、既設のU型の鋼矢板の継手ピッチが400mm,500mm,600mmのいずれであっても継手を噛合させた既設のU型の鋼矢板の先頭からクランプ可能とした構成、及びクランプピッチを428mm〜772mm,412mm〜588mm,300mm〜500mmのいずれかの範囲に変更可能とした構成を提供する。
また、チャック装置としてU型の鋼矢板の継手ピッチに対応した複数のチャック装置を装備するとともに、複数のチャック装置をチャックフレームに、それぞれ着脱自在に装着可能とした構成、クランプ装置で先頭の鋼矢板を含む既設のU型の鋼矢板をクランプすることにより台座を既設のU型の鋼矢板上に定置させて、チャック装置に作業するU型の鋼矢板を挿通してチャックするとともに、先頭のU型の鋼矢板の開放された継手に、作業するU型の鋼矢板の継手を噛合させた状態において、チャックフレームに装着された前記複数のチャック装置は、いずれも鋼矢板圧入引抜機の他の部材と干渉することがない構成を提供する。
更に、クランプ装置で先頭の鋼矢板を含む既設のU型の鋼矢板をクランプすることにより台座を既設のU型の鋼矢板上に定置させて、チャック装置に作業するU型の鋼矢板を挿通してチャックするとともに、先頭のU型の鋼矢板の開放された継手に、作業するU型の鋼矢板の継手を噛合させた状態において、鋼矢板圧入引抜機の他の部材と干渉することがないようにチャックフレームを配置した構成、複数のチャック装置が、U型の鋼矢板の継手ピッチが600mm用のチャック装置とU型の鋼矢板の継手ピッチが400mm用のチャック装置からなる構成を提供する。
また、複数のチャック装置はそれぞれ、U型の鋼矢板の挿通孔と、挿通孔に挿通されたU型の鋼矢板をチャックするチャック部と、チャック装置を旋回させるために挿通孔の外周に配備されたチャックリングギアを有し、チャックリングギアとして同一形状のものを採用するとともに、U型の鋼矢板の継手ピッチに対応したチャック部を採用した構成、
チャック装置を旋回させるために、チャックフレームにチャック旋回モータと該チャック旋回モータの駆動軸に連結したピニオンギアを装備し、ピニオンギアをチャックリングギアに噛合させるとともに、チャック旋回モータとピニオンギア及びピニオンギアを収納したピニオンギアボックスを台座の上端面の位置する水平線より上方に配置した構成を提供する。
そして、上記したいずれかの鋼矢板圧入引抜機を使用して、それぞれ相互に継手を噛合させて圧入した複数の既設のU型の鋼矢板の内、先頭の鋼矢板を含む既設のU型の鋼矢板をクランプ装置で掴んで台座を既設のU型の鋼矢板上に定置した状態において、先頭のU型の鋼矢板の開放された継手に、作業するU型の鋼矢板の継手を噛合させた状態で、継手ピッチが異なるU型の鋼矢板を圧入・引抜可能とした鋼矢板圧入引抜工法、継手ピッチが異なるU型の鋼矢板として、継手ピッチが400mm,500mm,600mmのいずれであっても圧入・引抜可能とした鋼矢板圧入引抜工法を提供する。
本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機及び鋼矢板圧入引抜工法によれば、チャックフレームに鋼矢板の継手ピッチに対応した複数のチャック装置を着脱自在に装着可能としているため、1台の鋼矢板圧入引抜機においてチャック装置を交換して使用することにより、多様な継手ピッチを有する鋼矢板をチャックできる。また、そのチャック時において、既設の先頭の鋼矢板をクランプ装置でクランプした状態で、作業する鋼矢板を既設の先頭の鋼矢板に噛合させた正規状態において、チャック装置とクランプ装置が干渉することがない。更に、チャック装置をチャックフレーム内で旋回させるためのチャック旋回モータとピニオンギアを台座の上端面の位置する水平線より上方に配置したため、多様な継手ピッチの鋼矢板を正規状態でチャックした場合において、継手ピッチに関わりなく、チャックフレームを構成するチャック旋回モータやピニオンギアが鋼矢板圧入引抜機の他の部材と干渉することがない。
また、クランプ装置を構成する複数のクランプ部材の台座への配設箇所を組み替えて、クランプピッチを変更可能としたことによって、クランプする既設の鋼矢板が多様な継手ピッチを有していたとしても、既設の先頭の鋼矢板をクランプ装置でクランプした状態で鋼矢板圧入引抜機を既設の鋼矢板上に定置することができる。よって、多様な継手ピッチの鋼矢板、特には継手ピッチ400mm,500mm,600mmの鋼矢板に対応可能な汎用性を有し、従来の鋼矢板圧入引抜機では対応不可であった継手ピッチが600mmと400mmの継手ピッチにおいて200mm程度以上の寸法差を有する多様な鋼矢板を、それぞれ専用の鋼矢板圧入引抜機を使用することなく、汎用性を有する1台の鋼矢板圧入引抜機で圧入・引抜することができる。また、継手ピッチ400mm,500mm,600mmの鋼矢板に限ることなく、継手ピッチにおいて200mm程度以上の寸法差を有する鋼矢板にも適用することが可能である。
以下図面に基づいて本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機及び鋼矢板圧入引抜工法の実施形態を説明する。図1(A),図2(A)は本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機1の側面図、図1(B),図2(B)は同平面図である。前記した従来の鋼矢板圧入引抜機40と同一の構成については同一の符号を付して説明する。図において、1は鋼矢板圧入引抜機であって、2は台座、3は台座2の下部に配設されて、既設の鋼矢板をクランプして鋼矢板圧入引抜機1を定置するとともに、既設の鋼矢板から反力を得るためのクランプ装置である。このクランプ装置3は、台座2の下面に形成されたクランプガイド13に幅方向に摺動自在に装備される。図1の図示例では、3本のクランプ部材(3a,3b,3c)を、図2の図示例では4本のクランプ部材(3a,3e,3a,3c)をそれぞれ図に示す順に装備している。
本発明において、鋼矢板圧入引抜機1を使用して圧入・引抜する鋼矢板は、現在わが国で最も普及しているU型であり、中でも継手ピッチ19が400mm,500mm,600mmの鋼矢板15を対象とする。また、継手ピッチ19の寸法が上記数値以外であってもU形であって継手ピッチ19が200mm程度以上の寸法差を有する鋼矢板15であれば対象とすることができる。その構成は図11,図12に示す通り、鋼矢板15は、ほぼU形の断面形状を有しており、ウエブ16の両端に所定の配置角度θを有するフランジ17が連接されており、フランジ17の開放端部に継手18が形成されている。
Fは鋼矢板圧入引抜機1の直進方向を示す。台座2には鋼矢板圧入引抜機1の直進方向Fに沿ってスライドベース4が、圧入する鋼矢板15の継手ピッチ19以上の距離を摺動自在に配備されている。このスライドベース4上には支持アーム5が縦軸を中心として回動自在に軸支され、この支持アーム5の前部に設けた軸受部6を中心として回動可能なガイドフレーム7が立設されている。このガイドフレーム7は、一端が支持アーム5に軸支された傾動シリンダ(図示略)の伸縮によって軸受部6を中心として傾動可能となっている。
ガイドフレーム7には昇降体8が昇降自在に装着されている。該昇降体8の両側には左右一対の鋼矢板圧入引抜シリンダ9が取り付けられていて、この鋼矢板圧入引抜シリンダ9の一端が前記軸受部6に軸支されており、昇降体8を上下駆動するように構成されている。昇降体8の下方にはチャックフレーム10が形成されており、このチャックフレーム10内に、図1に示す鋼矢板圧入引抜機1においては、継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aをチャックすることができる第1チャック装置11が、又図2に示す鋼矢板圧入引抜機1においては、継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cをチャックすることができる第2チャック装置12がそれぞれ旋回自在に装備されている。
本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機1は、鋼矢板15の継手ピッチ19に対応した複数のチャック装置を装備するものである。これらの複数のチャック装置として、継手ピッチ19aが600mm用の第1チャック装置11と、継手ピッチ19cが400mm用の第2チャック装置12を、チャックフレーム10に着脱自在に装着可能とし、圧入・引抜を行う鋼矢板15の継手ピッチ19の寸法に応じて交換使用することに特徴を有する。なお、第1チャック装置11は、1台で継手ピッチ19bが500mm用の鋼矢板15bにも対応可能である。また、第1チャック装置11及び第2チャック装置12に加えて、継手ピッチ19が他のサイズとなる3つ以上のチャック装置を装備するようにしてもよい。
図3は継手ピッチ19aが600mm用の第1チャック装置11の斜視図、図5は第1チャック装置11のチャックフレーム10への装着状態を示す側面図、図7,図8はその組付状態を示す斜視図であり、図9,図10は組付後の斜視図である。第1チャック装置11は、継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを挿通可能な挿通孔21と、挿通孔21に挿通された鋼矢板15aのウエブ16をチャックして固定するチャック部22と、挿通孔21の外周部を囲繞するように第1チャック装置11の上端部に設置されたチャックリングギア23と、チャックリングギア23の下部に設置されたリング状のフランジ24を有している。なお、チャック部22は固定チャック爪と可動チャック爪及び可動チャック爪を動作させるシリンダ装置からなる公知の構成である。このチャック部22は継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを挿通してチャックするとともに、図12に示す中立軸L2に対して左右交互に圧入するため、圧入作業の進行方向Fに対して、鋼矢板15aを1枚圧入する毎に左右交互に向きを変えて鋼矢板15aをチャックできるように、チャックフレーム10内において旋回する必要がある。よって、肉厚部分を含めると外形部分の直径寸法D1は900mm程度となる。
この第1チャック装置11をチャックフレーム10内に旋回自在に装備する。チャックフレーム10は内周面に溝部29が穿設されるとともに、半円状のフロントカバー10aが脱着可能である。図5に示すようにフロントカバー10aを取り外した状態で第1チャック装置11のフランジ24をチャックフレーム10の溝部29に嵌合させ、その後同様にしてフロントカバー10aの溝部29にフランジ24を嵌合させてからボルト等の締結具を使用して、フロントカバー10aをチャックフレーム10に固着する。これにより、チャックリングギア23を含んだ第1チャック装置11の上部をチャックフレーム10に嵌合する。昇降体8にはチャック旋回モータ25が装備され、その駆動軸に連結されたピニオンギア26がチャックフレーム10に装備された第1チャック装置11のチャックリングギア23と噛合するように配置されており、第1チャック装置11をチャックフレーム10内で旋回させることができる。
図4は継手ピッチ19cが400mm用の第2チャック装置12の斜視図、図6はチャックフレーム10への装着状態を示す側面図である。第2チャック装置12は、継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを挿通可能な挿通孔31と、挿通孔31に挿通された鋼矢板15cのウエブ16をチャックして固定するチャック部32と、挿通孔31の外周部を囲繞するように第2チャック装置12の上端部に設置されたチャックリングギア33と、チャックリングギア33の下部に設置されたリング状のフランジ34を有している。なお、チャック部32は固定チャック爪と可動チャック爪及び可動チャック爪を動作させるシリンダ装置からなる公知の構成である。このチャック部32は継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを挿通してチャックするとともに、図12に示す中立軸L2に対して左右交互に圧入するため、圧入作業の進行方向Fに対して、鋼矢板15cを1枚圧入する毎に左右交互に向きを変えて鋼矢板15cをチャックできるように、チャックフレーム10内において旋回する必要がある。よって、肉厚部分を含めると外形部分の直径寸法D2は700mm程度となる。
この第2チャック装置12をチャックフレーム10内に旋回自在に装備する。チャックフレーム10は内周面に溝部29が穿設されるとともに、半円状のフロントカバー10aが脱着可能である。図6に示すようにフロントカバー10aを取り外した状態で第2チャック装置12のフランジ34をチャックフレーム10の溝部29に嵌合させ、その後同様にしてフロントカバー10aの溝部29にフランジ34を嵌合させてからボルト等の締結具を使用して、フロントカバー10aをチャックフレーム10に固着する。これにより、チャックリングギア33を含んだ第2チャック装置12の上部をチャックフレーム10に嵌合する。昇降体8にはチャック旋回モータ25が装備され、その駆動軸に連結されたピニオンギア26がチャックフレーム10に装備された第2チャック装置12のチャックリングギア33と噛合するように配置されており、第2チャック装置12をチャックフレーム10内で旋回させることができる。
第1チャック装置11と第2チャック装置12において、チャックリングギア23,33及びフランジ24,34は、同一の形状・同一寸法であって、それぞれチャックフレーム10に脱着自在に交換して装着可能であり、かつ、チャック旋回モータ25によってチャックリングギア23,33に噛合したピニオンギア26を介して旋回可能である。よって、第1チャック装置11と第2チャック装置12を鋼矢板15の継手ピッチ19の寸法に応じて選択し、交換使用することによって、第1チャック装置11,第2チャック装置12,チャックフレーム10が既設の鋼矢板20や鋼矢板圧入引抜機1の他の部材に干渉することがない。
従来、チャック装置におけるチャックリングギアはチャックする鋼矢板15の継手ピッチ19の寸法に応じて直径サイズを異にし、例えば継手ピッチ19aが600mm用のチャックリングギアの直径寸法は825mm程度、継手ピッチ19cが400mm用のチャックリングギアの直径寸法は625mm程度であって、これらの直径寸法の異なるチャックリングギアを交換して、同一のチャックフレームに装着することはできなかった。これに対して、本発明では、上記した通り、チャックリングギア23,33及びフランジ24,34の直径寸法を共通としているため、同一のチャックフレーム10に脱着自在に交換して装着可能である。そのため、同一の鋼矢板圧入引抜機1を使用して継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aと、継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cという継手ピッチ19が200mm程度以上異なる鋼矢板15をチャックするとともに、鋼矢板15cをチャックする第2チャック装置12のチャック装置の外形部分の直径寸法D2が700mm程度と、第1チャック装置11の外形部分の直径寸法D1の900mm程度から縮小しているため、第2チャック装置12のチャック部32が、既設の鋼矢板20の先頭の鋼矢板20c1を掴んでいるクランプ部材3aと干渉することがなく、図21に示す従来の鋼矢板圧入引抜機40における干渉部分Kを解消することができる。
更に、チャックリングギア23,33を駆動するためのチャック旋回モータ25とピニオンギア26を収納したピニオンギアボックス27を台座2の上端面2a(図1,図2参照)の位置する水平線より上方に配置してあるため、チャックフレーム10を構成するとともにチャックフレーム10からの突出部分であるピニオンギアボックス27に収納されたピニオンギア26が鋼矢板圧入引抜機1の他の部材に干渉することなく、図21に示す従来の鋼矢板圧入引抜機40における干渉部分Sを解消することができる。
よって、本発明によれば、継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aと、継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを同一の鋼矢板圧入引抜機を使用して、即ち、継手ピッチ19において200mm程度以上の寸法差を有する鋼矢板15を正規状態(既述の通り、既設の先頭の鋼矢板をクランプ装置でクランプした状態で、作業する鋼矢板を先頭の鋼矢板の開放された継手に噛合させた状態)で圧入・引抜作業を行うことができる。
多様な継手ピッチ19を有する鋼矢板15に対応する汎用性を鋼矢板圧入引抜機1に付与するためには、上記した通り、第1チャック装置11,第2チャック装置12やチャックフレーム10が鋼矢板圧入引抜機1の他の部材に干渉しないとともに、鋼矢板圧入引抜機1がそれぞれの継手ピッチ19を有する既設の鋼矢板20をクランプ装置3で掴んで定置して反力を得る必要がある。そこで、600mmの継手ピッチ19a,500mmの継手ピッチ19b,400mmの継手ピッチ19cの既設の鋼矢板20a,20b,20cをクランプ装置3を使用してクランプするための条件について検討する。
図13は継手18を相互に噛合して隣接する継手ピッチ19aが600mmの既設の鋼矢板20aのウエブ16をクランプ装置3でクランプする場合を示しており、図13(A)は基準となるウエブ16の中心をクランプした場合を、図13(B)はウエブ16の反対方向の両端部をクランプした場合を、図13(C)はウエブ16の隣接する両端部をクランプした場合を示しており、それぞれクランプピッチ35aが600mm,クランプピッチ35bが772mm,クランプピッチ35cが428mmとなっている。よって、クランプ装置3のクランプピッチが428mm〜772mmの範囲であれば、継手ピッチ19aが600mmの既設の鋼矢板20aをクランプして鋼矢板圧入引抜機1を定置することが可能である。
そこで、図14に示すように、クランプガイド13a,13b,13dを使用して、クランプ部材3a,3b,3cを順に組付けたところ、クランプ部材3aと3bのクランプピッチ35dが590mm、クランプ部材3bと3cのクランプピッチ35eが570mmとなり、いずれも前記した428mm〜772mmの範囲に収まった。なお、図14に示すようにクランプ部材3aは右側に、クランプ部材3bは左側にオフセットした形状であり、又クランプ部材3cは直線状の形状である。即ち、クランプ部材3a,3b,3cはそれぞれ形状及びオフセット量を異にしている。更に、クランプガイド13a,13b,13c,13dはそれぞれのピッチを異にして配置されており、クランプガイド13aと13bのピッチ38aが350mm,クランプガイド13bと13cのピッチ38bが400mm,クランプガイド13cと13dのピッチ38cが290mmに設置されている。よって、これらの各クランプガイド13a,13b,13c,13dと各クランプ部材3a,3b,3cを組み合わせることによって、多様なクランプピッチを実現することができる。
また、図14に示す第1チャック装置11のチャック部22は正規状態におけるチャックの位置を示すものであるが、図示のように台座2や先頭のクランプ部材3aと干渉することはない。よって、継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを第1チャック装置11を使用して正規状態で圧入・引抜作業をすることができる。
図15は継手18を相互に噛合して隣接する継手ピッチ19bが500mmの既設の鋼矢板20bのウエブ16をクランプ装置3でクランプする場合を示しており、図15(A)は基準となるウエブ16の中心をクランプした場合を、図15(B)はウエブ16の反対方向の両端部をクランプした場合を、図15(C)はウエブ16の隣接する両端部をクランプした場合を示しており、それぞれクランプピッチ36aが500mm,クランプピッチ36bが588mm,クランプピッチ36cが412mmとなっている。よって、クランプ装置3のクランプピッチが412mm〜588mmの範囲であれば、継手ピッチ19bが500mmの既設の鋼矢板20bをクランプして鋼矢板圧入引抜機1を定置することが可能である。
そこで、図16に示すように、クランプガイド13a,13b,13cを使用して、クランプ部材3a,3c,3dを順に組付けたところ、クランプ部材3aと3cのクランプピッチ36dが470mm、クランプ部材3cと3dのクランプピッチ36eが520mmとなり、いずれも前記した412mm〜588mmの範囲に収まった。図16に示すようにクランプ部材3aは右側に、クランプ部材3dは左側にオフセットした形状であり、又クランプ部材3cは直線状の形状である。即ち、クランプ部材3a,3d,3cはそれぞれ形状及びオフセット量を異にしている。また、図16に示す第1チャック装置11のチャック部22は正規状態の位置を示すものであるが、図示のように台座2や先頭のクランプ部材3aと干渉することはない。よって、継手ピッチ19bが500mmの鋼矢板15bを第1チャック装置11を使用して正規状態で圧入・引抜作業をすることができる。
図17は継手18を相互に噛合して隣接する継手ピッチ19cが400mmの既設の鋼矢板20cのウエブ16をクランプ装置3でクランプする場合を示しており、図17(A)は基準となるウエブ16の中心をクランプした場合を、図17(B)はウエブ16の反対方向の両端部をクランプした場合を、図17(C)はウエブ16の隣接する両端部をクランプした場合を示しており、それぞれクランプピッチ37aが400mm,クランプピッチ37bが500mm,クランプピッチ37cが300mmとなっている。よって、クランプ装置3のクランプピッチが300mm〜500mmの範囲であれば、継手ピッチ19cが400mmの既設の鋼矢板20cをクランプして鋼矢板圧入引抜機1を定置することが可能である。
そこで、図18に示すように、クランプガイド13a,13b,13c,13dを使用して、クランプ部材3a,3e,3a,3cを順に組付けたところ、クランプ部材3aと3eのピッチ37dが350mm、クランプ部材3eと3aのピッチ37eが400mm、クランプ部材3aと3cのピッチ37fが410mmとなり、いずれも前記した300mm〜500mmの範囲に収まった。なお、図18においてクランプガイド13cに組付けたクランプ部材3aは、図14に示すクランプ部材3bを反転させて装備したものであり、クランプ部材3eは図16に示すクランプ部材3dを反転させて装備したものである。従って図18に示すクランプ部材4本を使用して図14、及び図16のクランプの構成が可能であり、経済的に優れている。また、図18に示す第2チャック装置12のチャック部32は正規状態の位置を示すものであるが、図示のように台座2や先頭のクランプ部材3aと干渉することはない。よって、継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを第2チャック装置12を使用して正規状態で圧入・引抜作業をすることができる。
なお、継手ピッチ19cが400mmの既設の鋼矢板20cをクランプする場合は、4本のクランプ部材3a,3e,3a,3cを使用している。これは鋼矢板20cの継手ピッチ19cが400mmと狭いために、クランプする4本の既設の鋼矢板20cの幅方向の長さの合計を1600mm(400mm×4)として、硬質地盤においても十分な反力を得るためである。
次に上記した構成の鋼矢板圧入引抜機1を使用して多様な継手ピッチ19を有する鋼矢板15の圧入・引抜工法を説明する。図1(A)は継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを圧入・引抜している状態を示しており、継手ピッチ19aが600mmの既設の鋼矢板20aにクランプ部材3a,3b,3cを使用してクランプピッチを調節した上で鋼矢板圧入引抜機1の台座2を定置している。そして、チャックフレーム10には、継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを挿通してチャックすることが可能な第1チャック装置11を装備している。そして、圧入・引抜する鋼矢板15aを第1チャック装置11の挿通孔21に挿通し、チャック部22でチャックし、既設の先頭の鋼矢板20a1を先頭のクランプ部材3aでクランプした状態において、該先頭の鋼矢板20a1の開放された継手18に作業する鋼矢板15aの継手18を噛合させた状態で昇降体8を上下動させて、鋼矢板15aを圧入・引抜する。
このとき、継手ピッチ19aは600mmと余裕があるため、直径900mm程度のチャック部22がクランプ部材3aに干渉することがなく、又チャックフレーム10内で第1チャック装置11を旋回させるためのピニオンギア26やピニオンギアボックス27が台座2等の鋼矢板圧入引抜機1の他の部材に干渉することがなく、正規状態において作業をすることができる。また、同様に第1チャック装置11を使用して継手ピッチ19bが500mmの鋼矢板15bも圧入・引抜することができる。
従来の継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを圧入・引抜する専用の鋼矢板圧入引抜機40を使用して、対象とする継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aとともに、継手ピッチ19bが500mmの鋼矢板15bを圧入・引抜することは可能であった。しかしながら、従来は、継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aを圧入・引抜する鋼矢板圧入引抜機40を使用して、継手ピッチ19において200mm程度以上の差異を有する継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを、既設の先頭の鋼矢板20c1をクランプ装置3でクランプした状態において、該先頭の鋼矢板20c1の開放された継手18に作業する鋼矢板15cの継手18を噛合させた状態で、圧入・引抜することはできなかった。
これに対して、本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機1を使用すれば、継手ピッチ19において200mm程度以上の差異を有する継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを圧入・引抜することが可能である。図2(A)は継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを圧入・引抜している状態を示しており、継手ピッチ19cが400mmの既設の鋼矢板20cにクランプ部材3a,3e,3a,3cを使用してクランプピッチを調節した上で鋼矢板圧入引抜機1の台座2を定置している。そして、チャックフレーム10には、継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを挿通してチャックすることが可能な第2チャック装置12を装備している。よって、圧入・引抜する鋼矢板15cを第2チャック装置12の挿通孔31に挿通し、チャック部32でチャックし、既設の先頭の鋼矢板20c1をクランプ装置3でクランプした状態において、該先頭の鋼矢板20c1の開放された継手18に作業する鋼矢板15cの継手18を噛合させた状態で昇降体8を上下動させて、鋼矢板15cを圧入・引抜することができる。
このとき、継手ピッチ19cは400mmと寸法が小さいが、そのチャック部32の直径も700mmと、第1チャック装置11のチャック部22の直径900mmに比して小さくなっているため、このチャック部32がクランプ部材3aに干渉することがなく、又チャックフレーム10内で第2チャック装置12を旋回させるためのピニオンギア26やピニオンギアボックス27が台座2等の鋼矢板圧入引抜機1のその他の部材に干渉することがなく、正規状態において作業をすることができる。よって、本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機1によれば、第1チャック装置11と第2チャック装置12を交換使用することによって、継手ピッチ19aが600mmの鋼矢板15aと、継手ピッチ19cが400mmの鋼矢板15cを正規状態において圧入・引抜することが可能である。