JP2014055473A - 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法 - Google Patents

山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014055473A
JP2014055473A JP2012201767A JP2012201767A JP2014055473A JP 2014055473 A JP2014055473 A JP 2014055473A JP 2012201767 A JP2012201767 A JP 2012201767A JP 2012201767 A JP2012201767 A JP 2012201767A JP 2014055473 A JP2014055473 A JP 2014055473A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
basin
elevation
flow rate
area
data
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012201767A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5189704B1 (ja
Inventor
Yasuo Takashima
康夫 高島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP2012201767A priority Critical patent/JP5189704B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5189704B1 publication Critical patent/JP5189704B1/ja
Publication of JP2014055473A publication Critical patent/JP2014055473A/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Management, Administration, Business Operations System, And Electronic Commerce (AREA)

Abstract

【課題】従来手法である流域比による河川流量推定法を改め、流量測定が行われていない山地河川の流量を効率的に精度よく推定すること。
【解決手段】市販の地形図に基づき、検討河川流域(複数流域対象)の標高帯別標高と、標高帯別面積,これらを入力データとして流域地形を立体的に捉えた流域立体地形相関面積Aeqと流域立体地形相関標高Heqとを相互独立かつ一義的に算定し、かつ流域地形勾配Seqを算定し、少なくともこれらAeq、Heq、Seqとを変数中に含む河川流量の回帰関数を誘導する。この回帰関数を適用して流量測定が行われていない地点の推定流量を演算する。さらにこの回帰関数を適用して河川流量の推定を行うと共に、検証誤差率を算出して回帰関数の適否の評価を可能にする。
【選択図】図1

Description

本発明は、山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法に関する。
従来測水所が設置されていない山地河川の新規検討目標地点の流量を推定する方法としては、下流または近傍の既設測水所における流量観測値から流域面積比計算によって算定する流域比手法がとられてきた。ここに流域面積CAは流域の平面的特性のみを表す単一の指標である。この手法を適用する場合、流域比が0.5〜1.5の範囲内にある既設測水所を算定元測水所に選ぶことと定められている。(例えば、非特許文献1を参照。)
この流域比手法は検討目標地点の流域面積と流域比算定元測水所地点の流域面積の比、即ち流域比を比例乗数とし、算定元測水所地点における測定流量にこの流域比を乗じて目標地点の流量を推定する比例計算手法である。
このため流域比手法においては、算定元測水所が変ると目標地点の流量推定値も変ってくる。従って候補となる複数の算定元測水所のうち、どの測水所が最適測水所であるかを選ぶことが流域比手法のポイントとなる。
流域比手法の場合、目標地点流域と候補算定元測水所流域の地形、地質、気象、植生状況等を詳細調査して算定元測水所を特定しなければならないが、これには長年の経験と勘を要し、確立されたルールはない。従って流域比算定手法は目標地点の流量推定法としては算定元測水所の選定によって精度が大きく変るという問題を持つ不完全な手法である。
本発明者は、流量推定は流域の平面的な特性のみを表すCAの代わりに流域の立体性を採り入れた流域指標:流域立体地形相関面積Aeqと流域立体地形相関標高Heqとを導入することによって、山地河川の流量を効率的に精度良く推定する方法を提供した。特許文献1。
特許文献1の山地河川の流量推定方法は、コンピューターシステムを用いて山地河川の推定流量を演算する方法であって、標高帯別標高データと標高帯別面積データとを入力し、これらの入力データを用いて流域地形を立体的に捉えた、面積のみの指標である流域立体地形相関面積Aeqと、高さのみの指標である流域立体地形相関標高Heqとを、相互独立に、かつAeq, Heqのそれぞれを一義的に誘導し、少なくともこれらAeqとHeqを変数中に含む河川流量の回帰関数(たとえば年平均流量Qmeanの回帰関数)を算出し、算出された回帰関数を適用して流量測定が行われていない地点の推定流量を演算するものである。
特許第4528348号
新エネルギー財団水力本部:中小水力発電ガイドブック,新訂5版, p.54〜56,2002年2月
本発明者は特許文献1の山地河川の流量推定方法をさらに改良すべく、種々検討した結果、面積のみの指標である流域立体地形相関面積Aeqと、高さのみの指標である流域立体地形相関標高Heqに加えて、流域地形勾配(Seq)を加味することによってさらに優れた結果が得られることを把握して、本発明を完成した。
(1)すなわち、本発明は、コンピューターシステムを用いて、山地河川流域の年平均流量を推定するための回帰関数を演算する方法であって、該回帰関数を演算する方法は、
測水所流域の標高帯(j)ごとの山地の斜面面積である標高帯別面積データ(aj)と、標高帯(j)ごとの平均標高データである標高帯別標高データ(Hcj) 、下記式で計算される流域地形勾配(Seq)とを前記コンピューターシステムの記憶部に保存し、
前記記憶部に保存されている標高帯別面積データ(aj)と標高帯別標高データ(Hcj)とを標高帯(j)ごとに乗算し、この乗算した値を全標高帯(j=1〜n)について加算することによって流域特性値(CAP)を算出し、
一方、標高帯(j)の標高帯別面積データ(aj)を用いて、次の式により最低標高点から標高Hcj面までの実地表面面積(acj)を求め、
この実地表面面積(acj)と前記標高帯別標高データ(Hcj)とを掛け合わせてZcを算出し、
当該Zcが前記流域特性値(CAP)と略一致する点のac、Hcの値を求め、それぞれ流域立体地形相関面積(Aeq)、流域立体地形相関標高(Heq)とし、
各測水所流域における年平均流量の測定値Qmean、対応する測水所流域の前記流域立体地形相関面積(Aeq)、前記流域立体地形相関標高(Heq)、流域地形勾配(Seq)の各データ、および、技術計算ソフトウェアであるmathcad(登録商標)のregress関数を用いて、少なくとも流域立体地形相関面積(Aeq)と、流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)とを変数中に含む山地河川流域の年平均流量の回帰関数を算出することを特徴とする山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法に関する。
(2)さらに、本発明は、上記(1)の山地河川流域の年平均流量を推定するための回帰関数を演算する方法において、
測水所流域の標高帯(j)ごとの山地の斜面面積である標高帯別面積データ(aj)と、標高帯(j)ごとの平均標高データである標高帯別標高データ(Hcj) 、流域地形勾配(Seq)に加えて経度(Lon)と緯度(Lat)とを前記コンピューターシステムの記憶部に保存し、
次に、各測水所流域における年平均流量の測定値Qmean、対応する測水所流域の前記流域立体地形相関面積(Aeq)、前記流域立体地形相関標高(Heq)、流域地形勾配(Seq)、経度(Lon)と緯度(Lat)の各データ、および、技術計算ソフトウェアであるmathcad(登録商標)のregress関数を用いて、少なくとも流域立体地形相関面積(Aeq)と、流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)と、経度(Lon)と緯度(Lat)を変数中に含む山地河川流域の年平均流量の回帰関数を算出することを特徴とする山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法に関する。
(3)本発明は、さらに山地河川流域の流量推定用回帰関数の選定方法に関し、該選定方法は、
所定の地域内の測水所数mケ所より成る測水所群における年平均流量測定値をデータとして上記(1)または(2)に記載の方法により回帰関数を算出した後、
前記測水所群中の任意の一の測水所である測水所i0(i0=1,2,,,m)を検証地点として抽出する一方、当該算出した回帰関数を適用して前記測水所群の各測水所の年平均流量の推定値を演算し、
当該推定値とその測水所における年平均流量の測定値との間に生ずる推定誤差の推定誤差率をεinとおき、
つぎに前記mケ所より成る測水所群中より前記測水所i0を除去した残りm-1ケ所より成る測水所群を新たなデータ測水所群として、上記(1)または(2)に記載の方法により新たに回帰関数を算出し、
当該算出した回帰関数を適用して前記測水所i0の年平均流量の推定値と該測水所i0の年平均流量の測定値との推定誤差率εoutを算出し、
両推定誤差率εinとεoutとの差をΔεとして、前記測水所i0をi0=1,2,,,mについて順繰りに1測水所づつ検証地点として抽出することによって、全測水所群中の測水所数mだけ差Δεを算出し、
これらm個の差Δεの内、絶対値の最大値を与える検証地点の推定誤差率εoutを以て検証誤差率maxεoutと定め、
該検証誤差率maxεoutの値が許容基準を満たす回帰関数のみを合格関数として出力することを特徴とする山地河川流域の流量推定用回帰関数の選定方法に関する。
(4)さらに、本発明はコンピューターシステムを用いて山地河川流域の年平均流量の推定値を演算する方法であって、山地河川流域の年平均流量の推定値を演算する方法は、
流量測定が行われていない地点の流域の標高帯(j)ごとの山地の斜面面積である標高帯別面積データ(aj)と、標高帯(j)ごとの平均標高データである標高帯別標高データ(Hcj) と、下記式で計算される流域地形勾配(Seq)とを前記コンピューターシステムの記憶部に保存し、
ここに、h、wはそれぞれ各標高帯jの高さと巾を表わす。
前記記憶部に保存されている標高帯別面積データ(aj)と標高帯別標高データ(Hcj)とを標高帯(j)ごとに乗算し、この乗算した値を全標高帯(j=1〜n)について加算することによって流域特性値(CAP)を算出し、
一方、標高帯(j)の標高帯別面積データ(aj)を用いて、次の式により最低標高点から標高Hcj面までの実地表面面積(acj)を求め、
この実地表面面積(acj)と前記標高帯別標高データ(Hcj)とを掛け合わせてZcを算出し、
当該Zcが前記流域特性値(CAP)と略一致する点のac、Hcの値を求めて、それぞれ流域立体地形相関面積(Aeq)、流域立体地形相関標高(Heq)とし、
当該流域立体地形相関面積(Aeq)と、当該流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)との各データに、上記(1)または(2)に記載の方法により算出した回帰関数または上記(3)に記載の方法により出力した合格関数を適用して、流量測定が行われていない地点の流域の年平均流量の推定値を演算することを特徴とする山地河川流域の年平均流量推定方法に関する。
(5)さらに、本発明は、上記(4)の山地河川流域の年平均流量の推定値を演算する方法において、流域立体地形相関面積(Aeq)と、当該流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)に加えて経度(Lon)と緯度(Lat)とをコンピューターシステムの記憶部に保存して、
当該流域立体地形相関面積(Aeq)と、当該流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)と、経度(Lon)と緯度(Lat)の各データに、上記(1)または(2)に記載の方法により算出した回帰関数または上記(3)に記載の方法により出力した合格関数を適用して、流量測定が行われていない地点の流域の年平均流量の推定値を演算することを特徴とする山地河川流域の年平均流量推定方法に関する。
(1)本発明において、山地河川流域の年平均流量を推定するための回帰関数は流域立体地形相関面積Aeqと、流域立体地形相関標高Heqと、流域地形勾配Seqと、経度Lonと、緯度Latとの相互独立かつ一義的な組合せを含む流域諸指標の総合組合せを変数とすることにより、より客観的かつ精度の高い山地河川流量の推定が可能となる。
(2)また本発明に係わる山地河川流域の流量推定用回帰関数の選定方法によれば、検証誤差率を算出することによって、回帰関数の適否の評価を行うことができるので、より精度の高い推定値を採択することができる。
(3)本発明に係る山地河川流域の年平均流量の推定値を演算する方法によれば、より客観的かつ精度の高い山地河川流量の推定が可能となる。
(4) 一般に、山地高地帯を流下する河川の実流量は、従来慣用の流域比計算によって下流地点における流量測定値に基づいて算定される推定値より大である。従ってこれまで経済性無しとして放棄されてきた山地高地部河川の開発計画が、実際には経済性に富む地点であることが多いことがわかってきた。よって本発明は新たに山地高地部河川流量の高精度算定法を確定するものである。
(5)新算定法を適用することにより、従来見逃され、または放棄されてきた優良水資源開発地点の発見に役立つ。開発対象案件が水力発電の場合には、現今全世界共通の課題であるCO2削減計画の一部を担うことができる。
本実施の形態による山地河川の流量推定方法に用いられるシステム(流量演算支援システム)の機能ブロック図である。 集水流域の等高線が取り囲む流域面積(水平面積)と地表面面積との関係を示す図(図2(a)と、複数に分割された標高帯(j)ごとの平面面積と斜面面積との関係を表す図(図2(b)である。 標高帯への降水量を示す図である。 標高帯中心点の標高Hcに対する標高帯実面積aの変化を示す図である。
標高帯の平均標高 Hc に対する標高帯の地形ポテンシャル z の変化を示す図である。 標高帯の累計実面積acの標高帯中心点の標高Hcに対する変化を示す図である。 標高Hc平面のポテンシャルZcの標高帯の平均標高Hcに対する変化を示す図である。 流域立体地形相関面積Aeqのトライアル算定結果を示す図である。 流域立体地形相関標高Heqのトライアル算定結果を示す図である。
AeqとHeqの交点が流域の固有点であることを示すプロット図である。 中央山地測水所群の候補流域群(灰色部分)の配置を示す図である。 中央山地6B測水所群の候補流域群(灰色部分)の配置を示す図である。 中央山地6R測水所流域群の候補流域群(灰色部分)の配置を示す図である。 中央山地8D流域群の候補流域群(灰色部分)を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態による山地河川の流量推定方法に用いられるシステム(流量演算支援システム)の機能ブロック図である。ここで、流量演算支援システム1は、キーボードや外部記憶装置等のデータを入力するための入力部30、入力したデータや種々の演算のためのデータを記憶する記憶部20、入力したデータをもとに河川流量の演算処理を実行する演算処理部10、演算結果や後述するプロット図を出力するプリンタやディスプレイ等の出力部40から構成されている。流量演算支援システム1は、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータによって実現することができる。
流量演算支援システム1の演算処理部10には、入力部30および出力部40との間で入出力処理を実行する入出力処理手段11、回帰関数を求めるための地形緒元等の基礎データを入力して記憶部20の基礎データ保存領域21に格納する基礎データ入力手段12、入力した基礎データを用いて回帰関数の演算を支援する回帰関数演算支援手段13、演算対象地点の地形緒元データを入力して記憶部20の演算対象地点データ保存領域23に格納する対象データ入力手段14、入力した演算対象地点のデータと回帰関数とを用いて推定流量を算出する推定流量演算手段15、および、適用する回帰関数の検証誤差率を算出する検証誤差率演算手段16を有している。各手段11〜16はCPUの機能としてプログラムによって実現可能である。
<基礎データ入力処理>
以下に、上記の流量演算支援システム1を用いて、山地河川の流量を推定する方法について説明する。
まず、流量演算支援システム1の入力部30から山地流域の標高帯jごとの平均標高データHcjと標高帯別面積データajと、経度(Lon)と、緯度(Lat)を入力する。入力されたデータは、演算処理部10の入出力処理手段11によって入力処理され、基礎データ入力手段12を介して記憶部20の基礎データ保存領域21に保存される。
次に、この基礎データを用いて、回帰関数演算支援手段13によって流域立体地形特性値(CAP)と流域地形勾配(Seq)とを算出する。
以下、図面を参照しながらこの算出処理の手順について説明する。
<流域立体地形特性値(CAP)と流域地形勾配(Seq)の算出処理>
本発明においては、流域立体地形特性値(CAP)に加えて、流域地形勾配(Seq)が必須要素であることを発見して、本発明を完成した。後述する流域立体地形特性値(CAP)に先立って、流域地形勾配(Seq)について述べる。
(1.流域特性を表す指標とその算定)
(1.1 流域地形勾配(Seq)の算出処理)
流域地形勾配(Seq)は、下記式によって計算される。
ここに、h、wはそれぞれ各標高帯jの高さと巾を表わす。
流域地形勾配(Seq)は、山地河川流域の流量を推定するために今まで用いられてこなかった指標値であり、本発明者が始めて本発明において採用した指標値である。本発明者は、元来自然地形は3次元の形態をもつから立体地形指標は3個の基本指標の一義的組合せによって表現さるべきであるとの発想の下、本発明者は流域立体地形相関面積Aeqと流域立体地形相関標高Heqとの2指標に加えて種々の指標を検討した結果、流域地形勾配指標Seqを導入することに想致し、流域立体地形相関面積Aeq、流域立体地形相関標高Heq、流域地形勾配指標Seqを用いることによって、流量測定が行われていない地点の流域の山地河川の流量を効率的に精度良く推定できるようになることを見出した。
(1.2 流域立体地形特性値(CAP)の算出処理)
(1.2.1.流域立体地形特性値(CAP))
流域地形をAeqとHeqの2指標の積CAPによって表す。CAPの概要は以下の通りである。
河川の一定地点、例えば測水地点のもつ流域面積とはこの地点の河川水位を最低標高面とし、この地点から発し左右両岸に続く稜線を連ねて最高峰に到る連続した閉曲線によって囲まれた区域(流域)の水平面への鉛直投影面積として定義される。この流域内に発する河川流量は、特別の場合(断層破砕帯が流域境界を横断する場合等)を除き、他流域に流出することなく、すべて上記一定地点に流下する。
流域を区画する閉曲線は、立体的な空間曲線であり、この空間曲線が囲む立体曲面の表面積(以下実流域面積と呼ぶ)は、その水平面への投影面積(即ち流域面積)とは異なる。よって地形図上において測定された流域面積は立体斜面から成る実流域面積とは等しくない。
地形図において流域最低標高面から最高峰標高点までの間に数条の等高線をみることができる。相隣る2本の等高線によって囲まれる流域部分を2本の等高線の平均標高を持つ標高帯j, 2本の等高線間の実地表面面積(斜面面積)を標高帯jの標高帯面積ajと定める(図2参照)。標高帯jの実面積ajの合計をacとおくとacは実流域面積を表し、平面流域面積CAとは異なる値をもつ。
通常存在する流域形状は閉曲線によって取囲まれた、傾いて置かれたザル型の形状である。このような形状を持つ流域の標高帯別面積ajは、最低標高帯の等高線長は小のため(測水地点の最も近くを通る等高線長は短であるため)、その面積は小で、標高が上昇するにつれて標高帯の等高線長が長くなるため標高帯面積は漸次大きくなり、ある標高帯において面積は最大値に達し、さらにそれより標高が上昇すると逆に減少を始め最高標高点において0となる(図2参照)。よって標高帯別標高Hcjを横軸に、標高帯別面積ajを縦軸にとってプロットすればajの表す曲線は一つのピークを持つ山形の曲線、場合によっては最大のピークと共に複数のピークをもつ山形の曲線となる。これに対して当然ながら標高帯jの標高Hcjの値は標高の上昇につれて増加一方である。
ここでajとHcjの積をとり

を定義すると、zjは標高帯jが持つ一種の地形指標を表す。上でみたようにあるj点においてピークをもつajと、増加一方のHcjの積zjはピークは異なるが、ajと同様、あるピークを持つ曲線となる。ここで標高帯の総数をnとおいて

とすればCAPは当該流域の特有値となる。以降流域の立体地形特性値としてCAPを採用する。なお、上式中のajとHcjは市販の2万5千分の1、5万分の1地形図等によって算定可能である。
さらに、実地表面Hcj面のポテンシャルZcを次式によって定義する。
(流域特性値CAPを採用する根拠)
水平面への投影面積Ajをもつ標高帯jへの全降水量Rjはこの水平面の単位面積当り降水量をrjとおけば

によって表される(図3)。多くの標高帯は水平面に対して傾斜している。
この傾斜角をθj実斜面面積をajとおくとajはAjより大で
となる(図3)。標高帯の実面積ajはその水平面積Ajより大なるにも拘らず、この面積ajへの全降水量は式(6)のままで変らない。何となれば降水量rjは単位面積当りの値として測定され、実面積ajを持つ標高帯の水平面積はAjであるからである(図3)。
降水量rjは標高Hjに応じて変化する。よってrjはHjのある関数である。よって今

とおけば式(6)は次式となる。ここにc0,c1は常数である。

よって降水量rj, Rjは地形特性値Hj, Ajの関数として表すことができる。
式(9)のAjに式(7)から得られるaj・cosθjを代入すれば

となる。さて地表面上の降水の比重は1であるからRjの質量をMjとおけば

となり、Mjなる質量は標高帯jにかかる荷重となる。しかるときは周知の公式によりMjは平均海水面に対して

なるポテンシャルエネルギーをもつ。
よって全標高帯j=1.2,,,nのもつポテンシャルエネルギーの合計値をCAPとおけば、CAPは式(11),式(6)を考慮して

となる。この式のrjに式(8)を代入すれば
この結果、降水量rj又はRjを含まない,流域の地形諸元Hj,Ajのみの関数としてCAPを表すことができる。これは平均海水面を基準面にしているからすべての流域に共通して適用可能な立体地形特性指標としてのCAPが確定する。
(1.2.2 CAP分解処理)
流域立体地形特性指標CAPは流域の平面面積CAに変るべき指標として、上記の処理手順によって求めた。しかしながら山地河川流域の地形の変化は多様であるため、例えば2つの流域のCAPの値は等しいにも拘らず、それぞれの流域流量は明らかに異なるという場合もあり得る。このような2流域を区別するためにはCAPを、さらに面積を表す単一指標と標高を表す単一指標の積に分解する必要がある。即ち、式(4)のCAPは標高帯面積ajと垂直方向高Hcjとの積の総和として定義されているので、流域のもつ水平方向特性と垂直方向特性を明確に区別した指標とはなっていない。よって以下の処理手順によってCAPを分解し、流域の平面的な特性のみを表す単一指標と,垂直方向特性のみを表す単一指標の積として表す。
CAPを分解する基本的な考え方は、CAPが、面積のみの関数と標高のみの関数の積に等しくなるような2関数を求めることにあるが、これら2関数の組合せはそれぞれが一義的に定まる指標の組合せでなければならない。いま、標高帯jの実表面面積aのj=1からjまでの累計値をacとおけばacは次式によって表すことができる。
このacjは最低標高点から標高Hcj面までの実地表面面積である(図2)。
つぎに標高Hcj面において式(4)は次式となる。

一方、標高帯jの平均標高Hcjと式(15)のacjに基づき、Hcとacの積をZcとして

を定める。ここにHc,acはそれぞれ別個に算定される値であるが、あるjの値のときにのみZcがCAPに一致する。この一致点のHc,acの値をそれぞれ独立のトライアル計算によって求め、それぞれHeq, Aeqとおけば

となりAeq,Heqが求まる。トライアルの具体的計算手法については後記するがその際,Aeq, Heqのそれぞれは各々別個の計算によって求められることを示す。 以上によりわかるとおり、Aeq, Heqの組合せは相互独立でかつ一義的に確定される値である。従ってAeqとHeqの組合せは対象流域の立体地形を一義的に表す基本指標の組合せとなる。この故に以降Aeqを流域立体地形相関面積、Heqを流域地形相関標高と呼ぶこととする。
(標高帯への降水量−図3)
具体的なaj Hcjの算定法は下記のとおりである。
標高帯 jの水平面積(鉛直投影面積)を AとおけばAはこの標高帯を挟む上下等高線HciとHci+1の流域面積AiとAi+1の差として算定できる(図2)。

標高帯jの中心線長ljは地形図において図上測定できる。よって標高帯jの平均水平巾wjは次式により算定できる。
標高帯jの高さhjは次式により算定できる。

よって標高帯jの平均傾斜角θjは次式により近似できる。

標高帯jの実表面面積ajは次式によって近似できる。


また、標高帯jの平均標高をHcjとおくとHcjは次式により算定される。

ここにHci+1とHciはHcjを挟む上下2本の等高線の高さである。
かくして算定されたajとHcjを式(3)に代入してzを,(4)に代入してCAPを求めることができる。
ajとHcjは地形図上における測定値に基づき算定される値であるから、与えられた対象流域については、これらaj とHcj に基づいて式(4)によって算定されるCAP値はそれぞれの流域の固有値となる。
以上により流域の立体地形特性を一義的に表したCAPの算定を終る。
(1.2.3 実例流域についてのCAP計算例)
以下、上記において誘導した諸式の具体的算定過程を札59奥美瑛測水所流域を例に採り示す。
算定対象流域:札59奥美瑛測水所流域 使用地形図: 1/50000 十勝岳、十勝川上流、旭岳、志比内
流域内最高点標高:2077m(十勝岳),最低点標高:605m(推定測水地点)
地形図上にて等高線別流域面積を測定した結果を次表に示す。等高線間隔は100mおきを基準とした。表中に使用した諸記号はそれぞれ次値を表す。
i:等高線カウンター, Hc:等高線標高(m), CA:各等高線の囲む流域面積(km2),
j:標高帯カウンター, Aj:標高帯の水平底面積(km2) Aj=CAi+1-CAi



地形図上にて各標高帯の中心線長を測定した結果を表2のlj に示す。表1及びljの測定値を前項の諸式に代入してw,tanθj a,Hcj および式(17)によりZcを算定すると表2となる。
この計算結果によるaとHcjのグラフ表示を図4(標高帯の平均標高 Hc に対する標高帯実面積aの変化)に、zjとHcjのグラフ表示を図5(標高帯の平均標高 Hc に対する標高帯の地形ポテンシャル z の変化)に示した。またacjとHcjのグラフ表示およびZcとHcjのグラフ表示を図6(標高帯の累計実面積acの標高帯中心点の標高Hcに対する変化)および図7(標高Hc平面のポテンシャルZcの標高帯の平均標高Hcに対する変化)に示す。
なお図4においては vs1=lspline(Hc,a)を
図5においては vs1=lspline(Hc,z)を
図6においては vs1=lspline(Hc,ac)を
図7においては vs1=lspline(Hc,Zc) を示す。
これらの図4、図5は前述した標高帯面積aと標高帯のポテンシャルzの標高Hcに対する曲線が複数のピークをもつ曲線であることを示している。図6は標高帯の累計実面積acの標高帯中心点の標高Hcに対する変化を示し、図6の○点は、後述の計算によるHeq=1468.6413m、Aeq=60.541m2の交点である。
(1.2.4 実例流域についてのAeq,Heq計算例)
以下、Aeq,Heqトライアル算定例を奥美瑛測水所流域を例に採り示す。Hc,a,ac,z,Zcの地形図に基づく算定値は表2に記載のとおりである。
この表にみるようにzの値はj=0からj=7までは増加し、それ以降j=14までの間は減少に転じている。一方、Zcはj=0から最終のj=14まで増加するのみである。よって増加一方のZcの途中のj=8,9の間にzの合計値CAPに等しいZc値があることがわかる。上記トライアルはこの一致点を求める計算である。Aeq,Heqのトライアル計算は市販のソフト mathcad(MathSoft Engineering & Education,Inc.:mathcad13,2005年9月.)
の組込み関数を適用して行う(プログラムの記載省略)。
(a) Aeqの算定
図8は流域立体地形相関面積Aeqのトライアル算定結果のプロット図である。この図においてZc=Hc・acのZcは横軸acに対する曲線として描かれている。この曲線上の点(○印)を左右に動かしてこの点の従距値がCAPに等しくなる点を見付け、この点の横距値をAeqとしたものである。このトライアルはacとZcとの関係のみに基づくAeq値の推定であり、Hcとは無関係にAeqが算定されている。
(b)Heqの算定
計算手法は変数の取り方が異なるだけで前項(a)と同じである。以下このプログラムの概要を示す。
図9は、流域立体地形相関標高Heqのトライアル算定結果を示す。この図においてZc=Hc・acのZcは横軸Hcに対する曲線として描かれている。トライアルは、この曲線上で○印点を左右に動かしてその縦軸値がCAPに等しくなる点の横軸値を見付けてHeq値としたものである。トライアルの結果、曲線上において縦軸値ZcがCAP=88565.608点の横軸値Hc即ちHeq値が1468.6413となることを示している。この算定はacとは無関係にHeqが算定されている。上記(a),(b)の計算においてみられるとおり、Aeq,Heqは各々別個のトライアルによって算定され相互独立な値である。但し両者の積はCAPに等しくなる。
(c)Aeq,Heqが流域の固有値であることの確認
上記において算定されたAeq,Heqがこの流域の固有値であることを確認するためつぎの検討を行う。
図8の縦軸と横軸を入替え、同様に図9の縦軸と横軸を入替え、両図を同一の横軸Zcを持つ図としてプロットすれば図10となる。図10は、 Aeq,Heqの交点が流域の固有点であることを示すプロット図である。ただしプロットに際し、Hc=1468.6413=Heqなる高さをもつ水平線と、ac=60.54165=Aeqなる高さをもつ水平線が同じ高さとなるようac軸の上限値を調整した。両曲線はZc値がCAP値に達するまでは略一致しているが、CAP点以降両曲線は分離し、相反する勾配形をもって変化している。最後の一致点は両曲線がZc=88565.60826=CAP垂直線上に達した点である。最後の一致点の縦距値はHc=1468.6413=Heq,
ac=60.54165=Aeqとなっている。よってAeqとHeqはZc値を共有する条件下におけるZcの最大値CAP垂直線上の唯一点によって表される固有点であることが確かめられた。前項(a),(b)の算定はこの固有点を見出すためのトライアルであるとみることができる。
以上総括して、AeqとHeqの組合せを変量とする流量回帰関数による流量算定手法は、検討対象流域群地域内の任意地点の流量を、従来採用されてきた流域比手法またはCAあるいはCAPを変数とする流量回帰手法に比して、より正確に推定する手法となる。
(1.3 流域地質指標)
(1.3.1 流域地質の火山岩類、非火山岩類等の構成率)
流域地質に関する既往の研究において、地頭薗隆、竹下敬司は、豊水渇水流量比は流域からの流出状況を表す指標値として用いられており、豊水渇水流量比が小さいほど流域からの流出は均等化しており、流域の水源涵養機能は高いと評価されるとしている。豊水渇水流量比の値は流域地質によって異なり、第四紀火山岩類の流域では特に小さく、ついで第三紀火山岩類、変成岩類の流域で小さく、中生層、古生層の流域で大きい傾向があると報告している。地頭薗隆・竹下敬司:山地河川の流況と流域の地形・地質との関係,日林九支研論,41,205〜206,1988参照.
志水俊夫は比較的広域の山地河川流域を対象に水源涵養機能に係わる指標の抽出と、それに関連すると考えられる流域の降水量、地質、傾斜、植生の因子に基づき、多変量の数量化1類の手法を用い、マクロ的分析をすることにより流域特性の各因子が水源涵養機能の指標に及ぼす影響度の大きさを検討している。志水俊夫:日本における山地河川の流出特性,世界水フオーラム フオローアップシンポジウム,水利科学,no.281,2005,p.6〜17参照.
その結果、渇水量や流況係数(渇水量と豊水量の比)の大小は流域の表層地質が大きく関連し、次に年降水量が関連していること、また流域の平均傾斜および植生は地質、降水量と比較して影響度合いは相対的に小さくなることを報告している。また表層地質の分類においては、第四紀火山岩類(Vq),第三紀火山岩類(Vt),花崗岩類((Gr),中生層(M),古生層(P),第三紀層(Tr)の6種類に区分して表層地質図より地質を判読し、流域内で同一の地質区分が8割以上占めるものをその流域の代表地質としている。なお各種の地質区分が錯綜した流域は解析対象流域から除外している。さらにデータ数の少ない第三紀層は除外し、結局地質は5区分としている。
虫明.高橋.安藤は太平洋側河川(北海道を除く)を対象とし、流域の約80%が同一の地質で構成されているものを選んで、その流域の地質としている。流域地質を第四紀火山岩類、第三紀火山岩類、花崗岩類、中生層、古生層の5区分とし、数量化理論I類に基づき、流量とこれら地質要因との相関を分析している。分析結果、第四紀火山岩流域で保水機能が最大であり、花崗岩流域の保水機能がついで大きく、第三紀火山岩流域がこれよりやや劣り、中、古生層の保水機能が最も小さいことを報告している。虫明功臣.高橋裕.安藤義久:日本の山地河川の流況に及ぼす流域の地質の効果,土木学会論文報告集,第309号,1981年5月参照参照。
数量化理論I類の手法は、分析対象―外的基準―が数量で与えられ、地質要因は分類で与えられている場合に適用できる手法である。この数量化は外的基準と、分類で与えられた要因の関係を分析するに際して、要因の1次の和をつくり、その和の形を通して、外的基準を最もよく表現するように各要因に数量を与える手法である。
(流域地質の火山岩類構成率κを変量に含む回帰関数)
本発明においては Aeq, Heq,Seq なる要因は分類ではなく算定値として数値で与えられる。よってこれら3要因に地質要因を追加するには地質要因も数値で与える必要がある。もし地質要因を分類で与えると地質要因については後節において論ずる検証誤差率が算定できないこととなり、最適回帰関数を求めることができなくなる。
本発明では流域内地質の定量的表現を行う。このような定量的表現が可能となれば、上記の多変量解析数量化1類の手法ではなく、多変量回帰関数の手法を適用することができる。これは前記虫明.高橋.安藤4)が採用した同一の地質区分が面積で8割以上占める地質をその流域の代表地質として採り上げて地質要因とし数量化1類の手法を適用する算定法に比して、より詳細に流域地質を表現し、回帰関数の回帰精度を高めることになる。算定手法については以下において述べる。
本発明においては表層地質の分類を次記の6区分等とする。
本検証においては、北海道内の山地群を中央山地群および中央日高、中央西方、中央日高西方、中央北方、千島オホーツク、全道等の複合測水所群に分け、各山地群について最適流量回帰関数を算定するが、これら山地群の中には上表の6区分の地質分類を必要としない山地群もある。そのような山地群については6区分の内から適宜選択した区分を採用する。
なお後節において述べるように回帰関数に採用可能な変量数は、回帰関数算定のために利用可能なデータ数(対象山地内にある測水所数)によって制限される。よって測水所数が少ない山地においては上記6地質区分のすべてを変量としてもつことができない。このような場合は6区分のうち最適と考えられる区分のみを用いる。各測水所流域のこれら地質の占める面積を地質図上において測定し、流域面積に対する各区分の構成率を算定する。
(1.3.2 実例流域についての地質区分別構成率の算定例)
κ1,,, κ6およびKv算定例を奥美瑛測水所流域について示せば次表となる。
この表は奥美瑛測水所流域内の火山岩類地質の占める比率がKv=0.698+0.195=0.893と大なることを示している。
(1.4 流域地理指標)
(1.4.1 流域重心点の経度、緯度)
前記各節において、対象流域の違いによる流量の違いを生ずる要因についての数量化を行ったが、なおこれ以外にこのような数量化を行うことができない要因が数多存在する(例えば寒冷地帯高地における越年雪量を含む降水量や蒸発散量、永久凍土パルサの存在による地下水流量変化の測定等で現時点における観測測定がなされていないことによる)。これらの未測定要因を概略的にカバーするために流域の位置を表す指標を導入することが考えられる。
流域の平面的重心位置は国土地理院発行の地勢図上において測定することができる。すなわち仮定した重心位置をとおる縦線(経度線)から東側部分の流域面積と西側部分の流域面積が等しく、同時にその仮定重心位置をとおる横線(緯度線)から北側部分の流域面積と南側部分の流域面積が等しくなる点をトライアルで求める。かくして求めた流域重心位置の経度をLon, 緯度をLatと定義する。
(1.4.2 流域重心点の経度、緯度の測定例)
以下本節においては例として札59奥美瑛測水所流域重心点の算定を行う。
使用地形図:1/20万、“旭川”
(a) 経度 Lonの算定
仮定した重心点を通る経度線142°42′より東側の流域面積の測定値
A=47.685km2
同上 西側の流域面積の測定値 B=23.312km2
A-B=24.373km2
要調整面積(仮定経度線の東側への移動により調整される面積): (A-B)/2=12.1865 km2、仮定経度線長(南北方向の長さ、図上測定値): La=8.911km、仮定経度線の東側への要移動距離:
△a=12.1865/8.9115=1.3675km
流域重心点は仮定経度線を△bだけ東側に移動した南北線上にある。
経度線間隔15′の距離(東西方向の長さ、図上測定値):D a15=20.2365km
重心点の経度:Lon=142°42′+15′×△a/Da15=142°42′+1.0136′=142°43.0136′=142.7169°
(b) 緯度 Latの算定
仮定した重心点を通る緯度線43°28′より東側の流域面積の測定値
C=50.144km2
南側の流域面積の測定値 D=20.535km2
C-D=29.609km2
要調整面積(仮定緯度線の北側への移動により調整される面積): (C-D)/2=14.8045km2
仮定緯度線長(東西方向の長さ、図上測定値): Lc=8.195km
仮定緯度線の北側への要移動距離:△c=14.8045/8.195=1.8065km
流域重心点は仮定緯度線を△cだけ北側に移動した東西線上にある。
緯度線間隔10′の距離(南北方向の長さ、図上測定値):Dc10=18.451km
重心点の緯度: Lat=43°28′+10′×△c/ Dc10=43°28′+0.9791′=43°28.9791′=43.4830°
(c)まとめ t59奥美瑛測水所流域重心点の経度Lon=142.7169°, 緯度Lat=43.4830°となる。
(1.5 中央山地測水所群流域指標算定結果の総括)
本節において対象とする中央山地候補流域群(灰色部分)の配置を図11に、これらの流域群について算定した流域形態指標等の総まとめを表5(表5-1と表5-2)に示す。
(2.年平均流量の算定)
本章においては前章で求めた流域諸指標の一部または全部を変量とする最適回帰関数の選定を目的とする。このための理論展開に先立って、比較のため先ず従来慣用されてきた流域比による流量推定法を想起しよう。
(2.1 従来手法による目標地点流量算定法)
流域比手法は検討目標地点の流域面積と流域比算定元測水所地点の流域面積との比、即ち流域比を比例常数とし、算定元測水所地点における測定流量にこの流域比を乗じて目標地点の流量を推定する比例計算手法である。
従って流域比法は3次元立体流域の指標を2次元水平投影面上の流域面積の比として捉えており自然流域の3次元性を表す指標ではない。
又、流域比手法においては、算定元測水所は1測水所に限定されるため、算定元測水所が変わると目標地点の流量推定値も変わってくる。従って候補となる複数の算定元測水所のうち、どの測水所が最適算定元測水所であるかを選ぶことが流域比手法のポイントとなる。
ガイドブックによれば目標地点の近傍にあって、かつ流域比が0.5〜1.5の範囲内にある既設測水所を算定元測水所に選ぶことと定めている(新エネルギー財団水力本部:中小水力発電ガイドブック,新訂5版,p.38,p.54〜56,p.67,p.147,2002年2月参照参照)が、実際問題としてこの規定が適用できて、山地上流域河川における小流域計画対象地点流量の算定元測水所を特定できる地点は少なく、特定できない計画地点が多い。このような地点については近傍に新たに測水所を新設し、数年間に亘る測水を開始することと定められている。このため必要となる費用と時間は大である。
逆に目標地点流域の隣接流域が複数流域存在し、その何れもが規定流域比の範囲内にある既設測水所をもつ例もある。しかしながらこれら複数の算定元測水所のそれぞれから流域比によって算定された目標地点の推定流量が大きく異なり、その何れをもって目標地点の算定元測水所とするか判断に苦しむ例もある。
従って流域比手法の場合、目標地点流域と候補算定元測水所流域の地形、地理、地質、気象、植生状況等を詳細調査して算定元測水所を特定しなければならないが、これには長年の経験と勘を要し、確定されたルールはない。従って流域比算定手法は目標地点の流量推定法として普遍的適用性を持たない不完全な手法である。この不完全性を解消するためには前章において新たに算定した流域諸指標を変量とする回帰関数の導入が必要である。
なお、流域比による流量推定手法は次のとおりである。
算定元測水所i(流域面積CAi)の流域面積に対する目標地点t(流域面積CAt)の流域面積の比、即ち流域比Caratioは

よって算定元測水所iの流量測定値をQiとおけば目標地点tの流量Qは次式により算定される。
(2.2 多変量回帰関数による年平均流量の算定)
(2.2.1 多変量回帰関数の算定)
本発明において採用する流量回帰関数の算定手法は下記のとおりである。下記各式は表現の簡素化のためHeq,Aeq,Seqの1次式3変量A1による回帰関数を示すが、変量数が3個以外の場合、また次数が2次以上の場合についても下記各式の変量項を適宜修正して適用することができる。
変量の次数をn=1次、目的変数を年平均流量Qmeanとした場合の3変量回帰関数の算定アルゴリズムは市販のソフトmathcad9)により下記諸式により与えられる。ここにQmeanはデータ地点である各測水所における年平均流量の観測値である。流域諸元値の行列をMとおく。

ここに

つぎに


とおく。ここにregressはmathcadの組込み関数で回帰関数を意味する。この式は基礎データである流域諸元行列M以外の流量変数Qおよびその次数nを含んでいる。従ってQ,nが変わると基礎データMは一定でも、Rの値は変化する。
つぎにこの関数Rを適用して基礎データ地点の流量回帰値または基礎データ地点以外の計画地点の流量を推定するための内挿関数interpおよび回帰値Qestiは次式で与えられる。
年平均流量Qmeanの回帰関数は上記式(29),(30)のQをQmeanに置換えることにより求められる。
次節に中央山地6B測水所群におけるこれら3変量A1回帰関数の適用例を示す。
(2.2.2 等価多項式)
上記アルゴリズムに含まれる組込み関数augment,regress,interpは一般的ではないのでQestを通常の多項式p(x,y,z)として表せば次式となる(MathSoftEngineering&
Education,Inc.:mathcad11ユーザーズガイド,2003年4月,p.310.)。いまの場合、変数の数nvars=3,変数の次数deg=1であるから多項式p(x,y,z)の項数Ntermsは次式:
によって4項となる。多項式pは次式によって与えられる。

この式中のx,y,zは前式(30)のx,y,zおよび(31)のHeq,Aeq,Seqと同じ基礎データで与値であり、c,c,c,cの値のみが目的変数に応じて変化する。式(31)による回帰値と多項式(33)による計算値が一致することは多くの実例地点について確認済である。ただし変数の次数が大きい場合は係数cの有効桁数を12以上にとる必要がある。
(2.2.3 回帰関数算定に必要なデータ数と変量の数および次数の関係)
回帰関数であるregress関数の場合、入力データ値の数mは
を満たさなければならない(新エネルギー財団水力本部:中小水力発電ガイドブック、新訂5版、p.54〜56、p.67、p.147、2002年2月参照)。ここにkは独立変数の数、nは変数の次数、mはデータ数である。この式のk,nはそれぞれ式(32)のnvar,degに、右辺の値は式(32)のNtermsに相当する。よって式(34)の右辺の値をm′とおけばm′はk元n次連立方程式の解を求めるのに必要なデータ数を示す。 従って回帰関数式の場合必要なデータ数mはこの連立方程式を解くために必要なデータ数より大でなければならないから次式となる。
さらに後節2.2.6において論ずる検証誤差率を適用する場合の必要データ数Nterms2は次式となる。
検証回帰を含むk元n次回帰関数を解くために必要なデータ数Nterms2の算定値を次表に示す。
一般に、変数の数が一定の場合、回帰関数自体の回帰精度は変数の次数が大なるほど高くなるが、反面回帰関数算定に用いた流域諸元とは異なる値を流域諸元としてもつ任意計画地点の流量推定に高次変数による回帰関数を適用すると(たとえその任意地点の諸元値が回帰関数算定の為のデータとして用いられた諸元の変化範囲内にある場合でも)異常な推定値が現れることがある。一方有意味、有効な変数の数の増加も回帰精度の向上に効果がある。例えば次表から変数の数が2の場合、2元3次連立回帰関数を解くのに必要な最小データ数は12であり,これに対して変数の数が3の場合、3元2次連立回帰関数を解くのに必要な最小データ数も同じく12である。よって2元3次関数と3元2次関数の何れを採用すべきかを検討する必要がある。さらに変量数が増えて9元となっても9元1次連立回帰関数の場合の必要最小データ数は12のままで変らない。よって最適回帰関数の選定においては、対象とする山地測水所群内において利用可能な測水データ数に基づき、採用変量とその組合せおよび変量の次数について充分な検討が必要である。後節の検証誤差率の導入及び実例測水所群についての算定においてさらに詳細検討する。
(2.2.4 回帰誤差率の算定)
統計学では全測定値の平均値に対する個別測定値の差に着目することも多いが、これは全測定値の真値が不明の場合に用いられる算定法であって、平均値と真値とは異なる。測定値と平均値の差は偏差と呼ばれる(矢野健太郎編;数学小辞典 共立出版株式会社 偏差 deviation 1985年 p.536.)。
本発明における検討対象は、各測水所における測定流量と、この測定流量に対する回帰流量であるから、差は各測水所の回帰流量と測定流量の差となる。この差を誤差と呼ぶ(矢野健太郎編;数学小辞典 共立出版株式会社 誤差 error 1985年 p.175.)。全測水所の回帰流量の平均値と各測水所の流量回帰値の差を誤差とするのではない。
以下本発明において使用する誤差に関する諸元の定義式を示す。
式(31)の回帰値Qestiの測定値Qiに対する誤差, 誤差率、平均誤差率、最大誤差率、分散,標準誤差率の算出式:
誤差

誤差率:

平均誤差率:

最大誤差率:

分散:
ここにNdataはデータとした測水所地点数、分散var(ε)は誤差率εiの平均値εmeanに対する差を対象としている。

標準誤差率:

によって表される。
標準誤差率sterr(ε)は各データ点の測定値に対する回帰誤差のバラツキの平均値であるから、仮定された回帰関数の適否をみるための基本指標である。さらに最大誤差率maxεは仮定された測水所群に、この測水所群に含めるのは適当ではない測水所があるか否かを判断する指標となる。
(2.2.5 誤差率許容基準の設定と第1次選定回帰関数)
検討対象として選定した山地測水所群内の河川流量の回帰関数を選定する場合、候補とした回帰関数の当、不当を判定するための目安として前節において定義した標準誤差率、最大誤差率の制限範囲を下記のように定める。
1級標準誤差率:sterr<2.5% 最大誤差率:maxε<5% (48)
2級標準誤差率: sterr<5% 最大誤差率:maxε<10% (49)
3級標準誤差率:sterr<10% 最大誤差率: maxε<20% (50)
各級とも標準誤差率の基準値と最大誤差率の基準値の同時成立を条件とする。
これらの許容限度を超える誤差をもつ回帰関数を採用することはできない。許容限度を超える誤差をもつ回帰関数の場合は、当初仮定したデータ数(測水所数)と変数の数(変量数)の何れか、または双方を変更して回帰関数を算定し直す必要がある。ここにデータ数の変更と変量数の変更は相互に関連している。一般に回帰関数の適用可能範囲はできるだけ広い方が望ましいから、データ数を増加すればそれに伴って変量数の増加が可能となり、この結果回帰誤差率を低下することができる。但しデータ数を増加しても変量数の増加が期待できない場合は、データ数の増加は逆に回帰誤差率の増加を招くことも起り得る。
逆にデータ数を減らすことにより対処する場合は、除外すべき測水所は当初流域群中、除外流域を除いた流域群から孤立した流域、または最も端部に位置する流域とする。この結果残された流域群は新規計画地点流域を含み、当初流域群よりさらに集合密度の高い連接集合流域群(地形、地理、地質、気象状況が略一様と見做し得る連接集合流域群)となり、回帰誤差率を低下することができる。但しデータ数の減少に伴い採用可能変量数が減少し回帰誤差率の増加を招くことも起り得る。
上記変量数の増加が期待できるデータ数の増加による場合と、データ数の減少にも拘らず変量数が減少しないデータ数の減少による場合の何れを採用すべきかは、対象とする山地測水所群のそれぞれについての検討事項となる。
かくして縮小または拡大された流域群についての回帰関数を算定し、回帰誤差が許容限度以下となったときの回帰関数を以って第1次選定回帰関数とする。この第1次選定回帰関数を求める回帰を基礎回帰と呼ぶ。
(2.2.6 検証誤差率)
回帰関数は与えられたデータ点を最も良く近似する回帰曲面を与える。しかしながら回帰関数は与えられたデータ点群が分布する領域内に存在するデータ点以外の点とは如何なる関係も持ってはいない(データ点以外の点の流量とは無関係である)。よって上記算定において求めた回帰関数を与えられたデータ点以外の点の流量推定に適用したときその点の誤差がどうなるか検討する必要がある。
たとえば後節において算定例とする回帰関数中には誤差率の許容基準を満たす例がある。この誤差率は回帰関数算定のデータとして用いられた測水所流量に対する回帰流量の誤差率である。しかしながらこの回帰関数が、そのデータ地点群の分布領域内にはあるが、データ地点群を構成する測水所ではない任意地点の流量推定に適用された場合、その地点の流量推定値が、その地点の真の流量をどれだけ正確に推定しているかの判断資料は提供しない。よって第1次選定回帰関数をこのような任意地点の流量推定に適用したとき、その推定誤差がどのようになるかを検討する必要がある。
この検討のためには、データ地点群分布領域内に、データ地点群を構成する測水所ではないが、流量測定が行われている地点が必要であるが、それはない(もしそのような地点があれば、その地点は回帰関数誘導のデータ地点として組み込まれている筈であるから)。よって完全ではないが(ただしデータ地点数が多いほど完全に近づく)、実行可能な検討法として、データ地点群(原地点群と呼ぶ)から順繰りに1地点を検証地点として除外し、残りの地点群(縮小地点群と呼ぶ)についての回帰関数を求め、求められた回帰関数を除外された検証地点の流量推定に適用して、その誤差率を検討する手法が浮ぶ。この場合原地点群の地点数をNdataとすれば、原地点群から順繰りに1地点ずつ除外して検討するから、必要となる全検討数はNdata以下となる。上記で以下なる字句を付加した理由は、検証地点の変数値が、縮小地点群について算定された回帰関数の適用可能な変数値の変化範囲外となる検証地点も起り得て、このような地点は検証できないからである(∵回帰関数interpは外挿に適しない)。よって検証地点の総数はNtest以下、算定される各誤差率の総数もNtest以下となる。
検証地点として除外される前に原測水所群の1地点であったときの当該地点の回帰誤差率εinと、除外されて検証地点となったときの当該地点の推定誤差率εoutとの差△εを算定する。算定された全△εのうちの絶対値が最大値を与える検証地点のεoutをmaxεoutとする。このmaxεoutは第1次選定回帰関数の、原地点群分布領域内の任意地点に対する回帰関数適用の可否を判断する指標となる。以降maxεoutを検証誤差率と呼ぶ。すなわち検証誤差率は検証地点(除外地点)に対する縮小地点群回帰関数適用誤差率であり、次式によって定義される。

maxεout=全△εのうちの絶対値が最大値を与える検証地点のεout (51)
なお付言すれば、検証誤差率の導入は次の考え方に基づいている。
検証地点として除外される前の検証地点は、原測水所群の流量回帰関数(原回帰関数)形成の1地点であった。この地点を除外したことにより、原回帰関数は変化した。この変化の大きさ△εは独立地点として解放された検証地点の原回帰関数への影響の大きさを示している。△εが大なるほど検証地点が原回帰関数に与えた影響が大であったことになる。
逆に原回帰関数の側からみれば任意地点となった検証地点による回帰関数変化の大きさ、すなわち新たに生じた任意計画地点に対する原回帰関数の変化の大きさを表している。この変化の最大値(△εのうちの絶対値の最大値)を与える検証地点の誤差率maxεoutを検証誤差率としたものである。
よって検証誤差率は求められた原回帰関数の適用性を証するための指標値として用いることができる。これは従来の回帰関数算定法に欠けていた算定回帰関数適用可能性の検討法である。
(2.2.7 検証誤差率の許容基準)
第1次選定回帰関数の内、最小の検証誤差率を与える回帰関数をもって最適回帰関数とする。ここで検証誤差率の許容基準を選ぶとすれば、第1次回帰関数の最大誤差率maxεの許容基準と等しくなる(何となれば第1次回帰関数においてその回帰誤差の許容最大値はmaxεであったから、検証地点の誤差率はmaxε以下であれば充分であるからである)。よって検証誤差率の許容基準は最大誤差率の許容基準と一致する次式とする。
検証誤差率maxεoutの許容基準=1級<5% 2級<10% 3級<20% (52)
なお、標準偏差および最大誤差率は許容基準を満たす第1次選定回帰関数であっても、その検証誤差率はmaxεの許容基準を満たすことができない場合もある。このような場合には原測水所群の構成測水所数を増減することにより変量数を増減するか、又は変数の次数を変更して検証誤差率の低下をはかる必要がある。しかして現地既設測水所の立地状況等により、与えられた原測水所群の測水所数を増減(とくに増加)することができない場合は第1次選定回帰関数のうち、最小の検証誤差率を与える回帰関数をもってこの測水所群の回帰関数とする。この結果第1次選定回帰関数のうち最終的には不合格となる回帰関数もあり得る。
結論として最終的に選定される回帰関数は最大誤差率、標準偏差、検証誤差率のすべてが許容基準を満たす関数でなければならない。
(2.2.8 検証誤差率の算定順序)
さらに下記理由により検証誤差率は基礎回帰の対象となった全変量組合せについて行う必要はない。基本的に最終的に確定される変量組合せは、標準誤差率、最大誤差率及び検証誤差率のすべてが許容基準を満たしている合格候補変量組合せのうち、標準誤差率が最小値なる変量組合せでなければならないとするのが妥当である。
従って検証誤差率の算定は、基礎回帰における合格候補変量組合せのうち、標準誤差率が最小なる変量組合せから開始すればよい。何となれば、この順序に従って算定をしてゆけば、合格基準を満たす検証誤差率が現われたら、その時点で検証誤差率の算定を終了すればよいことになるからである。
従って検証誤差率は一部の変量組合せについてのみ実施すればよいケースも起り得る。これは実際問題としてかなりの手間がかかる検証誤差率の面倒な計算を簡易化する効果が大である。
(3 流量回帰算定例群その1 中央山地6測水所群−6B測水所群、6R測水所群等を総括して6測水所群とする)
1.2.2においては流域立体地形を表す指標としてAeqとHeqの組合せを検討し、節1.1においてはこれらAeqとHeqに追加すべき流域地形勾配指標Seqについて検討した。その結果として、これら指標又は組合せの何れが山地河川流量の推定において最も優れているかを識別する必要が生じた。しかしてこの検討には、これら算定された指標値を用いた年平均流量の回帰算定方法の確立が必要である。以下その検討を行う。
(3.1 算定例1- 中央山地6B測水所群の場合)
中央山地6B測水所群の候補流域群(灰色部分)の配置図を図12に示す。本測水所群を選定した第1の理由はそれが北海道中央山地の中枢に位置し、中央山地の代表的測水所群と考えられるからである。第2の理由は測水所群を構成する測水所数を6とすることにより前節1.2.2のAeq,Heqの組合せからなる流域立体地形特性値による流量回帰誤差率とこれらに節1.1 において導入した流域地形勾配を加えたAeq,Heq,Seqの組合せからなる流域立体特性値による流量回帰誤差率の純粋比較(地理変量、地質変量等を含まない地形変量のみの変量組合せ)が可能となり、さらに1変量CAPの次数を1次から3次に上げることの効果と、2変量Aeq,HeqにSeqを追加して3変量する効果の比較ができるからである。算定プログラムのprint out を以下に示す。
注):上表中、×印は除外地点(即ち検証地点)を示す。
*は参考のため、検証不可地点を、
**はΔε=|εout-εin|の値のうち検証可なる縮小地
点群のΔεの最大値を、***は検証可なる縮小5地点

群の回帰関数を適用して算定されたεoutの最大値

maxεout即ち検証誤差率を示す。
縮小測水所群の算定プログラム;
サブファイル:/水力/流量回帰論/中央山地/6流域群/6B流域群/
多変量回帰/検証回帰/
“CAPの3次式回帰検証中央山地6B群5b測水所改.xmcd”
“CAPの3次式回帰検証中央山地6B群5f測水所改.xmcd”
また、εinの値はプログラム/水力/流量回帰論/中央山地/6流域群/
/6B流域群/多変量回帰/基礎回帰/
“中央山地6B流域群流量回帰基準誤差率改.xmcd”より引用。
(考察)
上記算定結果,原6B測水所群の標準偏差stdev=2.9%および最大誤差率max|ε|=5.4%の組合せは基準2級を満たし、検証誤差率9.0% も基準2級を満たしている。よって中央山地6B測水所群流量回帰関数としてCAPの3次式を1変量Bとする回帰関数は2級合格である。
6B測水所群の検証結果総括表8の算定内訳を以下に示す。
(3.2 算定例2- 中央山地6R測水所群の場合)
中央山地6R測水所流域群の候補流域群(灰色部分)の配置図を図13に示す。図12で6B群の最南に位置する札61A落合測水所を外し、代わりに最北部の位置に札57安足間を加えたものである。この配置を選定した理由は同じ中央山地の中にあっても最北部に位置する流域と最南部に位置する流域とを入れ換えることにより流量回帰にどのような変化が生じるかをみるためである。算定プログラムのprint out を以下の頁に示す。但し、ページ数節約のため全プログラムのprint outは省略し、5変量Y回帰による8D測水所群の算定プログラムのみを以降に示す。
注): 上表中、×印は除外地点(即ち検証地点)を示す。
*は参考のため、検証不可地点を、**はΔε=|εout-
εin|の値のうち検証可なる縮小地点群のΔεの最大値
を、***は検証可なる縮小5地点群の回
帰関数を適用して算定された
εoutの最大値maxεout即ち検証誤差率を示す。
縮小測水所群の算定プログラム;
サブファイル:/水力/流量回帰論/中央山地/6流域群/6R流域群/
多変量回帰/検証回帰/
“ CAPの3次式回帰検証中央山地5b測水所改.xmcd”
“ CAPの3次式回帰検証中央山地5f測水所改.xmcd”
また、εinの値はプログラム /水力/流量回帰論/中央山地/6流域群/6R流域群/多変量回帰/基礎回帰/
“中央山地6R流域群流量回帰基準誤差率改.xmcd”より引用。
(考察)
上記算定結果,原6R測水所群の標準偏差stdev=2.3%および最大誤差率max|ε|=4.1%の組合せは基準1級を満たしているが、検証誤差率22.2% は基準3級を満たしていない。よって中央山地6R測水所群流量回帰関数としてCAPの3次式を1変量Bとする回帰関数は不合格である。
注): 上表中、×印は除外地点(即ち検証地点)を示す。
*は参考のため、検証不可地点を、**はΔε=|εout-
εin|の値のうち検証可なる縮小地点群のΔεの最大値
を、***は検証可なる縮小5地点群の回帰関数を適用
して算定されたεoutの最大値maxεout即ち検証誤差率
を示す。
縮小測水所群の算定プログラム;
サブファイル:/水力/流量回帰論/中央山地/6流域群/6R流域群/多変量回帰/検証回帰/
“ 3変量A1回帰検証精中央山地5d測水所改.xmcd”
“ 3変量A1回帰検証精中央山地5f測水所改.xmcd”
また、εinの値はプログラム /水力/流量回帰論/中央山地/6流域群/6R流域群/多変量回帰/基礎回帰/
“中央山地6R流域群流量回帰基準誤差率改.xmcd”より引用。
(考察)
上記算定結果,原6R測水所群の標準偏差stdev=6.5%および最大誤差率max|ε|=11.2%の組合せは基準3級を満たしているが、検証誤差率20.5% は基準3級を満たしていない。よって中央山地6R測水所群流量回帰関数としてAeq,Heq,Seqを3変量A1とする回帰関数は不合格である。
(3.3 中央山地6測水所群流量回帰の総括と考察)
前節の算定結果を纏めて次表に示す。この表において、6B群,6R群に共通して見られる現象として
(1) 回帰誤差はCAの1次、3次関数による場合よりCAPの1次,3次関数による場合の方が小である。
(2) 変量がCA,CAPの何れの場合でも、その次数が上昇すると回帰誤差率は小となる。
(3) 3変量Aeq,Heq,Seqの1次式組合せ関数はCAP単独関数より回帰誤差率は大である。
最適結果はCAPの3次式を回帰変量とする6B流域群の流量回帰で、その標準誤差率2.9%,最大誤差率5.4%,検証誤差率9.0%の2級合格関数である。この最適関数は同じ6B群の3変量Aの1次関数による回帰結果(3級)より上位にある。
以上の結果は流量回帰関数の選定においては、算定対象流域群規模の許す限り、構成変量数の増加と回帰変量の次数の上昇の双方について検討すべきことを示している。
上記算定は流域群の規模は6群に限定した場合の結果で最適回帰関数の合格級は2級に留まっている。1級合格関数を得るためには6群以上の構成流域群についての検討が必要である。この場合においては回帰関数を構成する変量数の増加と、変量次数の上昇の何れを優先すべきか、或いは両者を併用すべきかについてさらに検討する必要があると考える。次節以降の検討においてこれを行う。

(4 流量回帰算定例群その2 中央山地8測水所群)
前節3において中央山地6測水所群について検討し、最適関数として6B群の2級合格関数を得た。しかしてこれよりさらに上級の合格関数を得るには組合せ変量数の増加及び又は,変量次数の上昇の必要があることをみた。よって以下本節においては選択流域群の範囲を広げ、8流域群について検討する。
中央山地候補流域群は前出の図11に示したとおりである。同図において灰色に網掛けした10流域群の中から最適の8流域群を算定するのが本節の目的である。
この10流域群から表16にみるとおり8A,8B,8C,8D,8E,8F,8H,8I,8Jの9候補群を選定した。その内の代表例として8D群のそれを図13に示す。
回帰関数は回帰目標値である流量測定値が各8個に限られるため、回帰関数を構成する変量数は検証誤差率の算定可能条件を含めると、変量の次数が1次の場合は5変量組合せ迄、2次の場合は2変量組合せ迄、3次以上の場合(5次迄可能)は1変量のみとなる(節2.2.3参照)。
よって本8測水所群における流量回帰関数は表16にみるように42ケース(表10の第1横ブロック〜第42横ブロック参照)の変量種別の組合せについて回帰誤差率の算定を行うこととなる。
算定結果は表16及び後出の表12にみるように、中央山地8測水所群の最適回帰関数は8D群における5変量Yの1次式関数として確定する。その標準誤差率0.9%,最大誤差率2.0%,検証誤差率2.8%の1級合格関数である。算定過程を通じて得られた諸考察事項は下表に続いて記載されている。
(4.1 算定例- 中央山地8A〜8J群の場合)
全算定プログラムのprint
out は省略し、8D測水所群における変量CAの1次式,5次式及び5変量Yの1次式フ゜ロク゛ラムのprint outのみを次表16に続けて示す。図14は、中央山地8D流域群の候補流域群(灰色部分) (縮尺1/20万)を示す。













この表の全算定量は膨大であるの紙数の増加を避けるためその内の最適ケースである5変量Yによる8D群算定ブロック(上表中の網掛けブロック)算定過程のプログラムを代表例として以下に示す。
(4.2 流量回帰結果の考察と結論)
表16から次記の諸考察事項が浮ぶ。
考察-1 CAの1次式,5次式をそれぞれ1変量Aとする回帰誤差率(表の(1)行,(2)行)とCAPの1次式,5次式をそれぞれ1変量Bとする回帰誤差率(表の(3)行,(4)行)を比較すると、8E群,8F群以外のすべての測水所群において後者は前者に勝っている。
考察-2 CA,Seqの1次式,2次式をそれぞれ2変量Oとする回帰誤差率(表の(5)行,(6)行)とCAP,Seqの1次式,2次式をそれぞれ2変量Pとする回帰誤差率(表の(7)行,(8)行)を比較すると、1次式変量の場合は考察1と同じ傾向が認められるが、2次式変量の場合はこの傾向は薄れている。
考察-3 CA,Kvの1次式,2次式をそれぞれ2変量Bとする回帰誤差率(表の(9)行,(10)行)とCAP,Kvの1次式,2次式をそれぞれ2変量Cとする回帰誤差率(表の(11)行,(12)行)を比較すると、1次式変量の場合は考察1,考察2と同じ傾向が認められ、2次式変量の場合も、考察1,考察2と同様に優劣の度合いは薄れてきている。
但しここで、8J群におけるCA,Kvの2次式を2変量Bとする回帰結果、標準誤差率が1.21%の1級合格関数が生じていることに注目したい(灰色網掛け区画)。これは従来慣用されてきた流域面積CAと地質変量Kvの2次式組合せが場合によっては有力な変量組合せになることを示すものである。
考察-4 Aeq,Heqの2次式を2変量Aとする回帰誤差率(表の(16)行)の内、8J群の標準誤差率は0.676%と全トライアルケ−ス(42行×9列+10=388ケース)中で最小値を示しているが、その検証誤差率は8.0%となり、他の数個のトライアルの検証誤差率より劣っている。この原因は変量の次数を2次としたこところにある。これは標準誤差率を下げることを狙って変量の次数を上げると、検証誤差率は大となる危険があることを示している。
考察-5 CA,Lon,Latの1次式を3変量Wとする回帰誤差率(表の(17)行)と、CAP,Lon,Latの1次式を3変量Nとする回帰誤差率(表の(18)行)を比較すると、すべての8測水所群候補において後者の回帰精度が前者のそれより優れている。これは地形変量としてCAよりCAPの方が優れていることを示すものである。
考察-6 CA,Kv,Kwの1次式を3変量Yとする回帰誤差率(表の(22)行)と、CAP,Kv,Kwの1次式を3変量Gとする回帰誤差率(表の(23)行)を比較すると、8E,8F群を除くすべての候補群において後者の回帰精度が前者のそれより、はるかに優れている。これも前項と同様、地形変量としてCAに対するCAPの有用性を示すものである。
なお、上記諸考察を勘案すると向後CAの採用は不必要と考えられる。
考察-7 CAPの1次式を1変量Bとする回帰誤差率(表の(3)行)と、Aeq,Heqの1次式を2変量Aとする回帰誤差率(表の(15)行)を比較すると、8H,8J群以外のすべての群で2変量Aの回帰精度が1変量Bのそれより優れている。これは地形変量数増加の可能性がある場合には1変量CAPより2変量Aeq,Heqの組合せを採用する方がよいことを示している。
考察-8 Aeq,Heq,Seqの1次式を3変量A1とする回帰誤差率(表の(24)行)と、Aeq,Heq,Kvの1次式を3変量Aとする回帰誤差率(表の(25)行)を比較すると、8E群,8I群以外のすべての群で3変量Aの回帰精度は3変量A1のそれより優れている。これは、3変量A1はAeq,Heq,Seqのすべてが地形変量であるのに対し、3変量AのAeq,Heq,Kvは地形変量Aeq,Heqと地質変量Kvの組合せからなる違いによるものと考えられる。
このことは、変量組合せは地形変量のみの組合せによるよりも地形変量と地質変量の組合せにする方がよい結果を得ることを示している。
考察-9 Aeq,Seq,Kv,Kwの1次式を4変量F2とする回帰誤差率(表の(37)行)の内で、8E群の標準誤差率2.106%のみが、他の8群の標準誤差率に比べて極めて小である。これは8E群の構成は札60北美瑛測水所流域を含み、札22Aパンケニコロ川流域を含まないところにある(表10の1頁部分を参照)と考えられる。
即ち北美瑛測水所流域の流域面積CA=411.0平方kmで、中央山地17測水所群中最大であるのに対し、パンケニコロ川測水所の流域面積は69.5平方kmで、同じ17測水所群中で最小である。よって両極端のCA値を持つ測水所を交換したことにより当該交換測水所の回帰誤差率が極端に変化した為と考えられる。これは8測水所群を拡張して9測水所群,10測水所,,,を検討するに際し、導入すべき測水所の選定にさいして参考となる考察である。
考察-10 Aeq,Heq,Lon,Lat,Kvの1次式を5変量Aとする回帰誤差率(表の(38)行)とAeq,Heq,Lon,Lat,Kwの1次式を5変量A1とする回帰誤差率(表の(39)行)を比較すると、8B群の5変量A1による標準誤差率1.571%が全群の両変量組合せ中最小値となっている。これは中央山地全8測水所群中では地質変量Kv,Kwの内、Kwが最適の選択であることを示している。
考察-11 Aeq,Heq,Seq,Lon,Latの1次式を5変量Yとする回帰誤差率(表の(40)行)とAeq,Heq,Seq,Kv,Kwの1次式を5変量E1とする回帰誤差率(表の(41)行)を比較すると、8E群,8F群,8J群以外のすべての群で5変量Yの回帰精度は5変量E1のそれより優れ、特に8D群における5変量Yの標準誤差率0.9%は全測水所群の全変量組合せ中の1級合格関数中で最小値であり、全8測水所群中の最適回帰関数(灰色網掛け区画)となっている。
これは誤差率(表の(40)行)と、8E群の標準誤差率の最小値2.106%のみが、8H群を除く他の8群の標準誤差率に比べて極めて小である。即ち変量組合せの選択において地形変量Aeq,Heq,Seqの組合せが与えられた場合、補完変量としてはLon,Latからなる地理変量がKv,Kwの組合せからなる地質変量に勝ることを示すものである。
しかして5変量Y(Aeq,Heq,Seq,Lon,Lat)と5変量E1(Aeq,Heq,Seq,Kv,Kw)は共に全測水所群を通じて標準誤差率が小さく、他の変量組合せを引離している。
これらは何れも構成変量数は5個であるから必要な対象測水所群は8測水所群で済むが 両者を総合した7変量Q(Aeq,Heq,Seq,Lon,Lat,Kv,Kw)を考えると10測水所が必要となる。これは10測水所群の流量選定のヒントとなる。
中央山地8測水所群流量回帰の結論
前掲の表16は全算定結果を網羅した表のため複雑で見辛いので、これを簡約した表を次の表17に示す。なお最適測水所群:8D群の構成流域一覧図は既出の図13参照のこと。
註)候補測水所群8Dの区画は最適測水所群の諸元、諸値を示す。

前記算定結果の考察および上表を総合すると、中央山地8測水所群流域流量の最適回帰関数は8D測水所群のAeq,Heq,Seq,Lon,Latの1次式組合せを変量とする5変量Y回帰関数となる。その回帰精度は標準誤差率0.9%,最大誤差率2.0%,検証誤差率2.8%の1級合格関数である。
この回帰精度は前節における中央山地6測水所群における最適回帰関数(2級合格)より優れている。
上記考察事項の多くは測水所群規模を9群以上に拡張する場合の有力な参考となる。
なお、北海道中央山地における流域最高点の標高は2290.6m(旭岳),流域重心点の緯度は北緯43.62°であるから、上記算定結果は最高点標高が2290m以下、重心点緯度が43.62°以南である流域については越年積雪や、永久凍土パルサ等による地表面及び地層内水分の凍結による河川流量の減少を考慮することなく、上記で得られた流量回帰関数手法を適用できることを示している。これは中央山地西方の日本海側に流域を持つ西方山地及び南方の太平洋側に流域をもつ日高山地については中央山地と同様の方法を適用して回帰関数を適用できることを示すものである。
即ちこれは虫明.高橋.安藤(資料4参照)が除外した北海道における河川流量回帰の大部分を復活させるものである。
上記最適結果は8流域群対象の5変量Y関数適用の場合である。基本的に、得られる回帰関数の適用可能範囲は、(回帰精度を落すことなく)出来る限り広いことが望ましい。しかして上記検討で得られた8流域群を拡大するためには、8流域群を含む中央山地以外の、西方山地、日高山地等の周辺山地に属する流域群を併せ検討する必要がある。しかしながら、この場合においても得られる回帰精度は上記8測水所群における回帰精度と同程度の精度を保つ必要がある。この検討は今後引続き実施予定とし、本発明範囲には含めないこととした。理由は、その算定量が膨大なものになるであろうこと、上記で得られた1級合格関数によって所期の目的は一応達成されていることにある。
以上の結果は本発明による多変量流量回帰関数適用の有用性を示すものであり、従来上流域の流況がよいことを見逃し(何となれば従来山地上流地点に測水所は殆ど設置されてない)、経済性なしとして放置されてきた山地河川における開発計画を促進する効果がある。
これは山地河川における水力開発にも繋がりCO2の発生が皆無なクリーンエネルギー創出の推進にも寄与するものである。
提唱回帰関数の普遍性
本発明において提唱する流量回帰関数算定には基礎データとして流域の地理、地形、地質諸元および既設測水所の流量測定資料が必要となる。
この内、流域の地理的位置、地形諸元は、国土地理院発行の1/20万分、1/5万分、1/2万5千分等の地形図により、また地質諸元は工業技術院地質調査所発行の1/20万分、1/5万分地質図において読取ることができる。これらの地形図、地質図は一般に購入可能である。
流量資料は、通商産業省、資源エネルギー庁編の流量要覧に記載されている(流量要覧(北海道通商産業局管内)通商産業省エネルギー庁編;平成8年度版および指定番号札59石狩川水系 美瑛川、奥美瑛測水所、昭36.1〜44.)。この流量要覧は電気事業法第101条に基く通商産業省直轄測水所と、同法第102条に基く指定測水所について、その調査記録を収録したものである。流量要覧(北海道通商産業局管内)通商産業省エネルギー庁編;平成8年度版および指定番号札59石狩川水系 美瑛川、奥美瑛測水所、昭36.1〜44参照。
流量覧は一般販売はされていないが、公表されており、国会図書館等において自由に閲覧可能である(国会図書館の分類番号517.3Tu7835等)。さらに本発明において多用したパソコンソフトmathcadは広く欧米諸国において活用され、日本においても一般に購入可能な市販ソフトである。よって流量回帰関数の算定は、特定のデータまたはソフト所有者に限られることなく、一般に実行可能である。
従って本発明において提唱する多変量回帰関数による山地河川流量算定は普遍性、一般性を持つものである。
(5.むすび)
山地河川小流域地点の流量推定法として、下流または近傍河川の既設測水所における測定流量から流域面積比(流域比と略称される)計算によって推定する従来手法に替えて、流域地形を立体的に捉えた流域立体地形相関面積Aeq,流域立体地形相関標高Heq、流域立体地形斜面勾配Seq,および流域の地理的位置を表す流域重心点の経度Lon、緯度Latさらに流域地質に占める火山岩類等の構成率Kv,Kw等を定義し、これらを新変量とする年平均流量の回帰関数を適用する手法を新たに導入した。
流域の規模を表す指標として従来用いられている流域面積CAは対象流域境界線が取囲む領域の平面面積として地形図上において測定される指標である。従って流域比は流域の平面的特性のみに基いて算定される単一の指標であるのに対し、上記新変量の組合せは流域地形は本来3次元立体地形であることから3個の基本地形変量の組合せを含むより広範囲の見地から流域実態を捉えている。よってこの新変量回帰関数による回帰流量は流域比による推定流量に比し、より真値に近い流量推定を可能にする。
通常回帰関数は与えられたデータ点への回帰誤差が最小となるよう算定されるが、算定された回帰関数を適用して推定されるデータ点以外の任意点の推定誤差は直接算定対象とはしない。しかして本発明の目的とする回帰関数は、与えられたデータ点への回帰誤差が最小である回帰関数であることは勿論であるが、同時に与えられたデータ点群の分布領域内において計画される任意地点の流量をも最小の誤差で推定し得る回帰関数でなければならないことを目標としている。このため必要な回帰誤差率は慣用の最大誤差率および標準偏差だけでは十分ではなく、これらに加えて新たに検証誤差率の導入が必要であることを論じその算定式を誘導した。
適用例として北海道山地を数分割した測水所群について上記発明に基く回帰関数を算定した結果、測水所群の規模に応じた変量の最適組合せ及び次数を決定することが可能であり、標準誤差率、最大誤差率とも実用上許容し得る誤差率以下で、かつ検証誤差率が最低の値を持つ最適回帰関数を得ることができた。
この手法を適用すれば、近傍河川に測水所がない数ある河川のうち、開発有望順位の高い河川および新規計画地点を見出すことが可能である。
とくに福島原子力発電所の事故以後、我が国全般の原子力発電所存続の可否が論議される現在、原子力発電に換わるべき無公害発電所の投入検討は緊急の問題となっている。
しかしながら原子力に換わる能力をもつ火力発電は、CO2の大量発生により、その容量拡大に限度があるため、充分な代替能力をもつとは云えない。さらに風力、太陽熱、地熱等の電力資源はその能力及び安定性に限りがあるため、充分な原子力代替能力を持ってはいない。
これらの問題に対して従来検討対象として採り上げられなかった山地上流域の小水力資源は、上記風力、太陽熱、地熱発電等と協力することによりその解決に貢献できる。さらに、本発明において提案する回帰関数による流量推定手法は一般性をもつ手法であり、上記適用例の計画流域に限らず、一般の河川流域における水力、上工水、農業用水等の水資源開発計画策定のための流量推定に対しても適用可能である。
新組合せ指標を用いることにより、従来の流域比手法の場合、適用可能な近傍測水所をもたない新規計画地点流量把握のため必要であった相当数の測水所新設の費用と測水期間が不必要となるのみならず、従来採用されてきた流域比手法では見落されてきた山地上流域の有望水資源地点発掘が促進される効果は大である。これは山地上流域における新しい水資源の存在発見を意味する。
(1)すなわち、本発明は、コンピューターシステムを用いて、山地河川流域の年平均流量を推定するための回帰関数を演算する方法であって、該回帰関数を演算する方法は、
測水所流域の標高帯(j)ごとの山地の斜面面積である標高帯別面積データ(aj)と、標高帯(j)ごとの平均標高データである標高帯別標高データ(Hcj)
、下記式で計算される流域地形勾配(Seq)とを前記コンピューターシステムの記憶部に保存し、
(ここに、h 、w はそれぞれ各標高帯jの高さと巾であり、w はw =A j /l (A j は標高帯jを挟む上下等高線Hc i とHc i+1 の流域面積A i とA i+1 の差であり、l は標高帯jの中心線長l j であり、Hc j とHc j+1 の平均高Hc j の等高線長)である。)
前記記憶部に保存されている標高帯別面積データ(aj)と標高帯別標高データ(Hcj)とを標高帯(j)ごとに乗算し、この乗算した値を全標高帯(j=1〜n)について加算することによって流域特性値(CAP)を算出し、
一方、標高帯(j)の標高帯別面積データ(aj)を用いて、次の式により最低標高点から標高Hcj面までの実地表面面積(acj)を求め、
この実地表面面積(acj)と前記標高帯別標高データ(Hcj)とを掛け合わせてZcを算出し、
当該Zcが前記流域特性値(CAP)と略一致する点のac、Hcの値を求め、それぞれ流域立体地形相関面積(Aeq)、流域立体地形相関標高(Heq)とし、
各測水所流域における年平均流量の測定値Qmean、対応する測水所流域の前記流域立体地形相関面積(Aeq)、前記流域立体地形相関標高(Heq)、流域地形勾配(Seq)の各データ、および、技術計算ソフトウェアであるmathcad(登録商標)のregress関数を用いて、少なくとも流域立体地形相関面積(Aeq)と、流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)とを変数中に含む山地河川流域の年平均流量の回帰関数を算出することを特徴とする山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法に関する。
(4)さらに、本発明はコンピューターシステムを用いて山地河川流域の年平均流量の推定値を演算する方法であって、山地河川流域の年平均流量の推定値を演算する方法は、
流量測定が行われていない地点の流域の標高帯(j)ごとの山地の斜面面積である標高帯別面積データ(aj)と、標高帯(j)ごとの平均標高データである標高帯別標高データ(Hcj)
と、下記式で計算される流域地形勾配(Seq)とを前記コンピューターシステムの記憶部に保存し、
(ここに、h 、w はそれぞれ各標高帯jの高さと巾であり、w はw =A j /l (A j は標高帯jを挟む上下等高線Hc i とHc i+1 の流域面積A i とA i+1 の差であり、l は標高帯jの中心線長l j であり、Hc j とHc j+1 の平均高Hc j の等高線長)である。)
前記記憶部に保存されている標高帯別面積データ(aj)と標高帯別標高データ(Hcj)とを標高帯(j)ごとに乗算し、この乗算した値を全標高帯(j=1〜n)について加算することによって流域特性値(CAP)を算出し、
一方、標高帯(j)の標高帯別面積データ(aj)を用いて、次の式により最低標高点から標高Hcj面までの実地表面面積(acj)を求め、
この実地表面面積(acj)と前記標高帯別標高データ(Hcj)とを掛け合わせてZcを算出し、
当該Zcが前記流域特性値(CAP)と略一致する点のac、Hcの値を求めて、それぞれ流域立体地形相関面積(Aeq)、流域立体地形相関標高(Heq)とし、
当該流域立体地形相関面積(Aeq)と、当該流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)との各データに、上記(1)または(2)に記載の方法により算出した回帰関数または上記(3)に記載の方法により出力した合格関数を適用して、流量測定が行われていない地点の流域の年平均流量の推定値を演算することを特徴とする山地河川流域の年平均流量推定方法に関する。
(削除)
<流域立体地形特性値(CAP)と流域地形勾配(Seq)の算出処理>
本発明においては、流域立体地形特性値(CAP)に加えて、流域地形勾配(Seq)が必須要素であることを発見して、本発明を完成した。後述する流域立体地形特性値(CAP)に先立って、流域地形勾配(Seq)について述べる。
(1.流域特性を表す指標とその算定)
(1.1 流域地形勾配(Seq)の算出処理)
流域地形勾配(Seq)は、下記式によって計算される。
(ここに、h 、w はそれぞれ各標高帯jの高さと巾であり、w はw =A j /l (A j は標高帯jを挟む上下等高線Hc i とHc i+1 の流域面積A i とA i+1 の差であり、l は標高帯jの中心線長l j であり、Hc j とHc j+1 の平均高Hc j の等高線長)である。)
流域地形勾配(Seq)は、山地河川流域の流量を推定するために今まで用いられてこなかった指標値であり、本発明者が始めて本発明において採用した指標値である。本発明者は、元来自然地形は3次元の形態をもつから立体地形指標は3個の基本指標の一義的組合せによって表現さるべきであるとの発想の下、本発明者は流域立体地形相関面積Aeqと流域立体地形相関標高Heqとの2指標に加えて種々の指標を検討した結果、流域地形勾配指標Seqを導入することに想致し、流域立体地形相関面積Aeq、流域立体地形相関標高Heq、流域地形勾配指標Seqを用いることによって、流量測定が行われていない地点の流域の山地河川の流量を効率的に精度良く推定できるようになることを見出した。
(標高帯への降水量−図3)
具体的なaj Hcjの算定法は下記のとおりである。
標高帯 jの水平面積(鉛直投影面積)を AとおけばAはこの標高帯を挟む上下等高線HciとHci+1の流域面積AiとAi+1の差として算定できる(図2)。

標高帯jの中心線長ljHc j とHc j+1 の平均高Hc j の等高線長であって、地形図において図上測定できる。よって標高帯jの平均水平巾wjは次式により算定できる。
標高帯jの高さhjは次式により算定できる。

よって標高帯jの平均傾斜角θjは次式により近似できる。

標高帯jの実表面面積ajは次式によって近似できる。


また、標高帯jの平均標高をHcjとおくとHcjは次式により算定される。

ここにHci+1とHciはHcjを挟む上下2本の等高線の高さである。
かくして算定されたajとHcjを式(3)に代入してzを,(4)に代入してCAPを求めることができる。
ajとHcjは地形図上における測定値に基づき算定される値であるから、与えられた対象流域については、これらaj とHcj に基づいて式(4)によって算定されるCAP値はそれぞれの流域の固有値となる。
以上により流域の立体地形特性を一義的に表したCAPの算定を終る。
(1.2.3 実例流域についてのCAP計算例)
以下、上記において誘導した諸式の具体的算定過程を札59奥美瑛測水所流域を例に採り示す。
算定対象流域:札59奥美瑛測水所流域 使用地形図: 1/50000 十勝岳、十勝川上流、旭岳、志比内
流域内最高点標高:2077m(十勝岳),最低点標高:605m(推定測水地点)
地形図上にて等高線別流域面積を測定した結果を次表に示す。等高線間隔は100mおきを基準とした。表中に使用した諸記号はそれぞれ次値を表す。
i:等高線カウンター, Hc:等高線標高(m), CA:各等高線の囲む流域面積(km2),
j:標高帯カウンター, Aj:標高帯の水平底面積(km2)
Aj=CAi+1−CAi
式(2)のw 及びその算定例として札59奥美瑛測水所について言及する。
例として、Hcq=1450mの標高帯の水平幅w の算定過程を示す。
は、標高1400mと1500m等高線間の流域実斜面の表面面積を、同一水平面上に投影した帯状面積A j =6.53km (表2のj8行参照)を標高1450mの等高線長l =27.4km(Ajと同じj8行参照)によって除した下記式によって与えられる。即ち、w は帯状区間の一つの平均幅を表す値である。
=6.53/27.4=0.238321km=238.321m
地形図上にて各標高帯の中心線長を測定した結果を表2のlj に示す。表1及びljの測定値を前項の諸式に代入してw,tanθj a,Hcj および式(17)によりZcを算定すると表2となる。
さらに、表2のh 列の合計値はΣh =1472m、w 列の合計値はΣw =4787.53855mであるから、これらを式(1)に代入してSeqを求める。これが後述の表5の奥美瑛測水所のSeq値の算出根拠である。
Seq=Σh /Σw =0.30746
本検証においては、北海道内の山地群の内、中央山地群について最適流量回帰関数を算定する。
なお後節において述べるように回帰関数に採用可能な変量数は、回帰関数算定のために利用可能なデータ数(対象山地内にある測水所数)によって制限される。よって測水所数が少ない山地においては上記6地質区分のすべてを変量としてもつことができない。このような場合は6区分のうち最適と考えられる区分のみを用いる。各測水所流域のこれら地質の占める面積を地質図上において測定し、流域面積に対する各区分の構成率を算定する。
従って流域比手法の場合、目標地点流域と候補算定元測水所流域の地形、地理、地質、気象、植生状況等を詳細調査して算定元測水所を特定しなければならないが、これには長年の経験と勘を要し、確定されたルールはない。従って流域比算定手法は目標地点の流量推定法として普遍的適用性を持たない不完全な手法である。この不完全性を解消するためには前章において新たに算定した流域諸指標を変量とする回帰関数の導入が必要である。
なお、流域比による流量推定手法は次のとおりである。
算定元測水所i(流域面積CAi)の流域面積に対する目標地点t(流域面積CAt)の流域面積の比、即ち流域比CAratio

よって算定元測水所iの流量測定値をQiとおけば目標地点tの流量Qは次式により算定される。
(3.2 算定例2- 中央山地6R測水所群の場合)
中央山地6R測水所流域群の候補流域群(灰色部分)の配置図を図13に示す。図12で6B群の最南に位置する札61A落合測水所を外し、代わりに最北部の位置に札57安足間を加えたものである。この配置を選定した理由は同じ中央山地の中にあっても最北部に位置する流域と最南部に位置する流域とを入れ換えることにより流量回帰にどのような変化が生じるかをみるためである。算定プログラムのprint out を以下の頁に示す。但し、ページ数節約のため全プログラムのprint outは省略し、5変量Y回帰による6R測水所群の算定プログラムのみを以降に示す。
(4 流量回帰算定例群その2
中央山地8測水所群)
前節3において中央山地6測水所群について検討し、最適関数として6B群の2級合格関数を得た。しかしてこれよりさらに上級の合格関数を得るには組合せ変量数の増加及び又は,変量次数の上昇の必要があることをみた。よって以下本節においては選択流域群の範囲を広げ、8流域群について検討する。
中央山地候補流域群は前出の図11に示したとおりである。同図において灰色に網掛けした10流域群の中から最適の8流域群を算定するのが本節の目的である。
この10流域群から表16にみるとおり8A,8B,8C,8D,8E,8F,8H,8I,8Jの9候補群を選定した。その内の代表例として8D群のそれを図13に示す。
回帰関数は回帰目標値である流量測定値が各8個に限られるため、回帰関数を構成する変量数は検証誤差率の算定可能条件を含めると、変量の次数が1次の場合は5変量組合せ迄、2次の場合は2変量組合せ迄、3次以上の場合(5次迄可能)は1変量のみとなる(節2.2.3参照)。
よって本8測水所群における流量回帰関数は表16にみるように42ケース(表16の第1横ブロック〜第42横ブロック参照)の変量種別の組合せについて回帰誤差率の算定を行うこととなる。
算定結果は表17及び後出の表12にみるように、中央山地8測水所群の最適回帰関数は8D群における5変量Yの1次式関数として確定する。その標準誤差率0.9%,最大誤差率2.0%,検証誤差率2.8%の1級合格関数である。算定過程を通じて得られた諸考察事項は下表に続いて記載されている。
考察-9 Aeq,Seq,Kv,Kwの1次式を4変量F2とする回帰誤差率(表の(37)行)の内で、8E群の標準誤差率2.106%のみが、他の8群の標準誤差率に比べて極めて小である。これは8E群の構成は札60北美瑛測水所流域を含み、札22Aパンケニコロ川流域を含まないところにある(表10の1頁部分を参照)と考えられる。
即ち北美瑛測水所流域の流域面積CA=411.0平方kmで、中央山地測水所群中最大であるのに対し、パンケニコロ川測水所の流域面積は69.5平方kmで、同じ測水所群中で最小である。よって両極端のCA値を持つ測水所を交換したことにより当該交換測水所の回帰誤差率が極端に変化した為と考えられる。これは8測水所群を拡張して9測水所群,10測水所,を検討するに際し、導入すべき測水所の選定にさいして参考となる考察である。
中央山地8測水所群流量回帰の結論
前掲の表16は全算定結果を網羅した表のため複雑で見辛いので、これを簡約した表を次の表17に示す。なお最適測水所群:8D群の構成流域一覧図は図14参照のこと。
流量覧は一般販売はされていないが、公表されており、国会図書館等において自由に閲覧可能である(国会図書館の分類番号517.3Tu7835等)。さらに本発明において多用したパソコンソフトmathcadは広く欧米諸国において活用され、日本においても一般に購入可能な市販ソフトである。よって流量回帰関数の算定は、特定のデータまたはソフト所有者に限られることなく、一般に実行可能である。
従って本発明において提唱する多変量回帰関数による山地河川流量算定は普遍性、一般性を持つものである。

Claims (5)

  1. コンピューターシステムを用いて、山地河川流域の年平均流量を推定するための回帰関数を演算する方法であって、該回帰関数を演算する方法は、
    測水所流域の標高帯(j)ごとの山地の斜面面積である標高帯別面積データ(aj)と、標高帯(j)ごとの平均標高データである標高帯別標高データ(Hcj) 、下記式で計算される流域地形勾配(Seq)とを前記コンピューターシステムの記憶部に保存し、
    前記記憶部に保存されている標高帯別面積データ(aj)と標高帯別標高データ(Hcj)とを標高帯(j)ごとに乗算し、この乗算した値を全標高帯(j=1〜n)について加算することによって流域特性値(CAP)を算出し、
    一方、標高帯(j)の標高帯別面積データ(aj)を用いて、次の式により最低標高点から標高Hcj面までの実地表面面積(acj)を求め、
    この実地表面面積(acj)と前記標高帯別標高データ(Hcj)とを掛け合わせてZcを算出し、
    当該Zcが前記流域特性値(CAP)と略一致する点のac、Hcの値を求め、それぞれ流域立体地形相関面積(Aeq)、流域立体地形相関標高(Heq)とし、
    各測水所流域における年平均流量の測定値Qmean、対応する測水所流域の前記流域立体地形相関面積(Aeq)、前記流域立体地形相関標高(Heq)、流域地形勾配(Seq)の各データ、および、技術計算ソフトウェアであるmathcad(登録商標)のregress関数を用いて、少なくとも流域立体地形相関面積(Aeq)と、流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)とを変数中に含む山地河川流域の年平均流量の回帰関数を算出することを特徴とする山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法。
  2. 請求項1に記載の山地河川流域の年平均流量を推定するための回帰関数を演算する方法において、
    測水所流域の標高帯(j)ごとの山地の斜面面積である標高帯別面積データ(aj)と、標高帯(j)ごとの平均標高データである標高帯別標高データ(Hcj) 、流域地形勾配(Seq)に加えて経度(Lon)と緯度(Lat)とを前記コンピューターシステムの記憶部に保存し、
    次に、各測水所流域における年平均流量の測定値Qmean、対応する測水所流域の前記流域立体地形相関面積(Aeq)、前記流域立体地形相関標高(Heq)、流域地形勾配(Seq)、経度(Lon)と緯度(Lat)の各データ、および、技術計算ソフトウェアであるmathcad(登録商標)のregress関数を用いて、少なくとも流域立体地形相関面積(Aeq)と、流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)と、経度(Lon)と緯度(Lat)を変数中に含む山地河川流域の年平均流量の回帰関数を算出することを特徴とする山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法。
  3. 山地河川流域の流量推定用回帰関数の選定方法であって、該選定方法は、
    所定の地域内の測水所数mケ所より成る測水所群における年平均流量測定値をデータとして請求項1または請求項2に記載の方法により回帰関数を算出した後、
    前記測水所群中の任意の一の測水所である測水所i0(i0=1,2,,,m)を検証地点として抽出する一方、当該算出した回帰関数を適用して前記測水所群の各測水所の年平均流量の推定値を演算し、
    当該推定値とその測水所における年平均流量の測定値との間に生ずる推定誤差の推定誤差率をεinとおき、
    つぎに前記mケ所より成る測水所群中より前記測水所i0を除去した残りm-1ケ所より成る測水所群を新たなデータ測水所群として、請求項1または請求項2に記載の方法により新たに回帰関数を算出し、
    当該算出した回帰関数を適用して前記測水所i0の年平均流量の推定値と該測水所i0の年平均流量の測定値との推定誤差率εoutを算出し、
    両推定誤差率εinとεoutとの差をΔεとして、前記測水所i0をi0=1,2,,,mについて順繰りに1測水所ずつ検証地点として抽出することによって、全測水所群中の測水所数mだけ差Δεを算出し、
    これらm個の差Δεの内、絶対値の最大値を与える検証地点の推定誤差率εoutを以て検証誤差率maxεoutと定め、
    該検証誤差率maxεoutの値が許容基準を満たす回帰関数のみを合格関数として出力することを特徴とする山地河川流域の流量推定用回帰関数の選定方法。
  4. コンピューターシステムを用いて山地河川流域の年平均流量の推定値を演算する方法であって、山地河川流域の年平均流量の推定値を演算する方法は、
    流量測定が行われていない地点の流域の標高帯(j)ごとの山地の斜面面積である標高帯別面積データ(aj)と、標高帯(j)ごとの平均標高データである標高帯別標高データ(Hcj) と、下記式で計算される流域地形勾配(Seq)とを前記コンピューターシステムの記憶部に保存し、
    前記記憶部に保存されている標高帯別面積データ(aj)と標高帯別標高データ(Hcj)とを標高帯(j)ごとに乗算し、この乗算した値を全標高帯(j=1〜n)について加算することによって流域特性値(CAP)を算出し、
    一方、標高帯(j)の標高帯別面積データ(aj)を用いて、次の式により最低標高点から標高Hcj面までの実地表面面積(acj)を求め、
    この実地表面面積(acj)と前記標高帯別標高データ(Hcj)とを掛け合わせてZcを算出し、
    当該Zcが前記流域特性値(CAP)と略一致する点のac、Hcの値を求めて、それぞれ流域立体地形相関面積(Aeq)、流域立体地形相関標高(Heq)とし、
    当該流域立体地形相関面積(Aeq)と、当該流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)との各データに、請求項1または請求項2に記載の方法により算出した回帰関数または請求項3に記載の方法により出力した合格関数を適用して、流量測定が行われていない地点の流域の年平均流量の推定値を演算することを特徴とする山地河川流域の年平均流量推定方法に関する。
  5. 請求項4の山地河川流域の年平均流量の推定値を演算する方法において、流域立体地形相関面積(Aeq)と、当該流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)に加えて経度(Lon)と緯度(Lat)とをコンピューターシステムの記憶部に保存して、
    当該流域立体地形相関面積(Aeq)と、当該流域立体地形相関標高(Heq)と、流域地形勾配(Seq)と、経度(Lon)と緯度(Lat)の各データに、上記請求項1または請求項2に記載の方法により算出した回帰関数または請求項3に記載の方法により出力した合格関数を適用して、流量測定が行われていない地点の流域の年平均流量の推定値を演算することを特徴とする山地河川流域の年平均流量推定方法に関する。
JP2012201767A 2012-09-13 2012-09-13 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法 Expired - Fee Related JP5189704B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012201767A JP5189704B1 (ja) 2012-09-13 2012-09-13 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012201767A JP5189704B1 (ja) 2012-09-13 2012-09-13 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP5189704B1 JP5189704B1 (ja) 2013-04-24
JP2014055473A true JP2014055473A (ja) 2014-03-27

Family

ID=48481476

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012201767A Expired - Fee Related JP5189704B1 (ja) 2012-09-13 2012-09-13 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5189704B1 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015129397A (ja) * 2014-01-07 2015-07-16 康夫 高島 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法
JP5899598B1 (ja) * 2015-09-26 2016-04-06 康夫 高島 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法および山地河川流域の年平均流量推定方法

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115859854B (zh) * 2022-11-30 2023-08-15 四川大学 一种多年冻土区缺资料流域地下水径流评价方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001167078A (ja) * 1999-12-13 2001-06-22 Fuji Electric Co Ltd ダムまたは河川における流量予測方法
JP2007205001A (ja) * 2006-02-01 2007-08-16 Fuji Electric Systems Co Ltd 流量予測装置
JP2007226450A (ja) * 2006-02-22 2007-09-06 Fuji Electric Systems Co Ltd 流量予測装置、流量予測方法および流量予測プログラム
JP2009123026A (ja) * 2007-11-15 2009-06-04 Yasuhiko Tsutsumi 流量変動予測プログラム
JP4528348B1 (ja) * 2009-06-06 2010-08-18 康夫 高島 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001167078A (ja) * 1999-12-13 2001-06-22 Fuji Electric Co Ltd ダムまたは河川における流量予測方法
JP2007205001A (ja) * 2006-02-01 2007-08-16 Fuji Electric Systems Co Ltd 流量予測装置
JP2007226450A (ja) * 2006-02-22 2007-09-06 Fuji Electric Systems Co Ltd 流量予測装置、流量予測方法および流量予測プログラム
JP2009123026A (ja) * 2007-11-15 2009-06-04 Yasuhiko Tsutsumi 流量変動予測プログラム
JP4528348B1 (ja) * 2009-06-06 2010-08-18 康夫 高島 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015129397A (ja) * 2014-01-07 2015-07-16 康夫 高島 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法
JP5899598B1 (ja) * 2015-09-26 2016-04-06 康夫 高島 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法および山地河川流域の年平均流量推定方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5189704B1 (ja) 2013-04-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Gül et al. A combined hydrologic and hydraulic modeling approach for testing efficiency of structural flood control measures
JP5593459B1 (ja) 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法
Duriyapong et al. Coastal vulnerability assessment: a case study of Samut Sakhon coastal zone.
Castellarin et al. Review of applied statistical methods for flood frequency analysis in Europe: WG2 of COST action ES0901
JP5815120B2 (ja) 生物多様性評価指標計算装置、方法、及びプログラム
CN111898315A (zh) 基于分形—机器学习混合模型的滑坡易发性评估方法
JP5189704B1 (ja) 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法
JP4528348B1 (ja) 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法、および山地河川流域の年平均流量推定方法
Rana et al. Estimation of flood influencing characteristics of watershed and their impact on flooding in data-scarce region
Singh et al. Assessing streamflow modeling using single and multi-site calibration approach on Bharathpuzha catchment, India: a case study
Ai-di et al. A sampled method of classification of susceptibility evaluation unit for geological hazards based on GIS
Samani et al. Optimizing groundwater level monitoring networks with hydrogeological complexity and grid-based mapping methods
JP5899598B1 (ja) 山地河川流域の流量推定用回帰関数の演算方法、同関数の選定方法および山地河川流域の年平均流量推定方法
Sveinbjornsson Analysis of WAsP (Wind Atlas Analysis and Application Program) in complex topographical conditions using measured production from a large scale wind farm.
Pokharel et al. Assessment of hydropower potential using SWAT modeling and spatial technology in the Seti Gandaki River, Kaski, Nepal
Karipoğlu et al. A GIS-based FAHP and FEDAS analysis framework for suitable site selection of a hybrid offshore wind and solar power plant
Dražić et al. Evaluation of Morphometric Terrain Parameters and Their Influence on Determining Optimal Density of Primary Forest Road Network
Copeland et al. Current data assimilation modelling for oil spill contingency planning
Khalili Vavdareh et al. Investigating Anzali Wetland Sediment Estimation Using the MPSIAC Model
Kong et al. Variables and a Validation Data Analysis to Improve the Prehistoric Cultivated Land Predictive Precision of Yulin, Northern Shaanxi, China
Roy A study on fluvial flood hazard and risk assessment of Arial Khan River floodplain under future climate change scenarios
Abd-el-Kader et al. Designating Appropriate Areas for Determining Potential Rainwater Harvesting in Arid Region Using a GIS-based Multi-criteria Decision Analysis‏
Wu et al. Application of an improved clustering approach on GPS height time series at CMONOC stations in Southwestern China
Anjusha Flood Inundation Modelling Using Arc GIS and HEC-RAS of Godavari Reach, Nanded District
Bohorquez P et al. Analysis of Potable Water Supply Scenarios Using WEAP Software and Applied to the Cities of Moquegua and Ilo

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130124

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160201

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5189704

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees