以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は本発明が適用される内視鏡システムの全体構成を示した外観図である。
同図に示す内視鏡システム1は、患者の体腔内を観察し、また、体腔内に所定の処置を施す際に使用されるシステムであり、施術者が把持して操作する内視鏡(電子内視鏡)10と、図示しないカート等の架台に各々載置される光源装置12、プロセッサ14、液晶モニタ等の表示装置16、及び、キーボードやマウス等の入力装置18と、を備えて構成されている。
内視鏡10は、患者の体腔内に口や鼻等から挿入可能な挿入部20を備えると共に、挿入部20の先端部30に、患部等の観察部位の被写体を結像して電気信号に変換する撮像部を備えている。これによって、体腔内に挿入部20を挿入して撮像部を体腔内に配置することができ、体腔内の被写体像を示す電気信号を取得することができるようになっている。
なお、撮像部によって動画像と静止画像のいずれでも取得することができるが、いずれの場合でも撮像部の光電変換により得られた被写体像の電気信号、又は、これに基づいて生成された被写体像の電気信号をビデオ信号というものとする。
また、内視鏡10は、所望の内視鏡用処置具を処置具導入口66から挿入して挿入部20の先端部30から導出するための処置具挿通チャンネルを備えており、処置具挿通チャンネルを通じて所望の内視鏡用処置具を患部近傍に配置し、処置具の種類に応じた処置を施すことができるようになっている。内視鏡10の構成については後述する。
光源装置12は、筐体80に設けられたコネクタ受け82に対して着脱可能な内視鏡10のライトガイドコネクタ(LGコネクタ)70が装着されることによって内視鏡10が光学的に接続されるようになっている。筐体80の内部には照明光を生成する光源を備えており、その光源により生成された照明光が光源装置12に光学的に接続された内視鏡10に供給されるようになっている。光源装置12から内視鏡10に供給された照明光は挿入部20の先端部30に配置された照明部から出射され、撮像部によって撮像される観察部位が照明光によって明るく照明されるようになっている。
プロセッサ14は、筐体84に設けられたコネクタ受け86に対して着脱可能な内視鏡10のプロセッサコネクタ74が装着されることによって内視鏡10が電気的(信号送受信可能)に接続されるようになっている。筐体84の内部にはプロセッサ14に接続された機器との間での各種信号の入出力や各種信号処理を行う処理部を備えており、その処理部によりプロセッサ14に接続された内視鏡10の撮像部の制御や撮像部により取得されたビデオ信号の取込みとビデオ信号に対する各種信号処理が行われるようになっている。
また、プロセッサ14の処理部では、表示装置16に表示させる画像の生成とその画像の表示装置16への出力制御が行われるようになっており、内視鏡10から取り込まれたビデオ信号に基づいて表示用のビデオ信号が生成されて表示装置16に出力され、表示装置16の画面に撮像部により撮像された被写体の画像(動画像又は静止画像)が表示されるようになっている。また、各種操作を案内する操作案内画像等のプログラム生成された画像のビデオ信号が表示装置16に出力されて表示装置16の画面に表示されるようになっている。
更に、プロセッサ14の処理部には、入力装置18に対して施術者等が行った操作に基づく操作信号が入力されるようになっており、その入力された操作信号に基づいて処理部での各種処理が実行されるようになっている。
表示装置16は、プロセッサ14から入力されたビデオ信号を画像として画面に表示する。表示装置16の画面には、例えば上述のように内視鏡10の撮像部により撮像された体腔内の被写体の画像が表示され、その表示によって施術者等が体腔内を観察することができるようになっている。表示装置16としては図1のような液晶モニタに限らず画像を画面表示することができる装置であればどのような形態のものであってもよい。
入力装置18は、施術者等の操作者によって行われた操作に対応した信号を操作信号としてプロセッサ14に与える。例えば、表示装置16の画面に表示される操作案内画像等を参照しながら操作者が所定の設定情報や指示情報を入力装置18によりプロセッサ14に入力することできるようになっている。入力装置18としては図1のようなキーボードやマウスに限らず、必要な情報を入力することができる装置であればどのような形態のものであってもよい。
次に内視鏡10の構成について説明すると、内視鏡10は、患者の口や鼻等から体腔内に挿入可能な細長の挿入部20と、挿入部20の基端側に連設された操作部22と、操作部22から延設されたユニバーサルケーブル24と、ユニバーサルケーブル24の端部に設けられたコネクタ部26とから構成されている。
挿入部20は、先端で管腔が閉塞された管状で細長の外壁部で全体が覆われており、先端側から基端側(手元側)に向かって順に先端部30、湾曲部32、及び、軟性部34により構成されている。
先端部30は、被写体を撮像する撮像部や被写体に照明光を出射する照明部等を搭載しており、図2に示すように先端部30の前面、即ち、挿入部20の先端面40には、図2に示すように観察窓42、照明窓44、46、送気・送水口48(送気・送水ノズル)、及び、処置具導出口50とが設けられている。
観察窓42は撮像部を構成する光学系の一部であり、観察窓42の基端側には、その光学系を構成する他の光学部品(レンズ等)と、CCD、CMOS(MOS型)等の固体撮像素子が配置されている。したがって、体腔内の患部等の被写体からの被写体光が観察窓42から入射して撮像部の光学系を通過する。そして、被写体光が光学系を通過することによって固体撮像素子の受光面に被写体像が結像され、その被写体像が固体撮像素子によりビデオ信号に変換されるようになっている。
照明窓44、46は、照明部の構成要素であり、照明窓44、46の基端側には、光源装置12からライトガイドにより導かれた照明光を出射する光出射部が配置されている。これによって、光出射部から出射された照明光が、照明窓44、46を介して観察部位の被写体に照射され、撮像部で撮像する被写体が明るく照明されるようになっている。
送気・送水口48は、内視鏡10の内部に挿通配置された送気・送水チャンネル(送気・送水チューブ)に接続されており、LGコネクタ70に接続される不図示の送気・送水装置から送気・送水チャンネルに供給された水(液体)や気体が送気・送水口48から観察窓等に向けて噴射され、観察窓42の洗浄等を行うことができるようになっている。操作部22には、送気・送水ボタン60が設けられており、その送気・送水ボタン60を操作することによって、送気・送水口48からの送気のオン/オフと送水のオン/オフを行うことができるようになっている。
処置具導出口50は、挿入部20の内部(管腔)に挿通配置された処置具チャンネル(処置具挿通チューブ)の一方の端部に接続されており、処置具チャンネルの他方の端部が接続された処置具導入口66に連通されている。したがって、処置具導入口66から所望の処置具を挿入することによって、処置具チャンネルを介して挿入部20の先端面40の処置具導出口50からその処置具を導出させ、体腔内の患部等に処置具の種類に応じた処置を施すことができるようになっている。なお、処置具導出口50は、吸引口としても兼用されており、不図示の吸引装置を操作部22に接続し、操作部22の吸引ボタン62を操作することによって、処置具導出口50からの吸引のオン/オフを切替えることができるようになっている。
以上の先端部30の基端側に設けられる湾曲部32は、その外壁部が、例えば、直列に連設された複数の環状の湾曲駒(節輪)とその外周を被覆する可撓性を有する網状管(金属細線を編組して形成された網状管)と更にその外周を被覆する外皮(合成樹脂等材等から形成されるチューブ等)により構成されている。最も先端の湾曲駒には操作ワイヤの先端が固設され、挿入部20の内部に挿通配置されたその操作ワイヤを操作部22のアングルノブ64の操作によって押し引きすることで、湾曲部32を能動的に所定の方向に湾曲させることができるようになっている。これによって、先端部30の先端面40の向きを変えて撮像部による観察方向を操作することができるようになっている。
湾曲部32の基端側に設けられる軟性部34は、その外壁部が、例えば、可撓性を有する金属製の螺旋管とその外周を被覆する可撓性を有する網状管(金属細線を編組して形成された網状管)と更にその外周を被覆する可撓性を有する外皮により構成され、湾曲部32から連続して管状に形成されると共に可撓性を有している。これによって、軟性部34の内部には、先端部30の撮像部に接続される信号ケーブルや、上記のライトガイド、送気・送水チューブ、及び処置具挿通チューブなどが先端部30及び湾曲部32の内部から連通して挿通配備されると共に、体腔内への挿入経路の湾曲形状に応じて湾曲部32が受動的に湾曲するようになっている。
操作部22は、施術者が体腔外で各種操作を行う操作部材(後述)を備えており、上述したように挿入部20の先端面40における送気・送水口48からの送気のオン/オフと送水のオン/オフを行う送気・送水ボタン60、先端面40における処置具導出口50からの吸引のオン/オフを行う吸引ボタン、湾曲部32の湾曲操作を行うアングルノブ64等を備えている。なお、先端部30の撮像部による静止画の取り込みを指示する撮影ボタン等も設けられている。
ユニバーサルケーブル24は、管状で細長の可撓性を有する外壁部で覆われており、その外壁部の内側の管腔には、挿入部20の内部及び操作部22の内部の空洞部に挿通配置された上記の信号ケーブル、ライトガイド、送気・送水チューブ等が挿通配置されている。
コネクタ部26は、ユニバーサルケーブル24の端部に連結されたLGコネクタ70と、LGコネクタ70から延設されたプロセッサケーブル72と、そのプロセッサケーブル72の端部に設けられたプロセッサコネクタ74とを備え、LGコネクタ70が光源装置12のコネクタ受け82に着脱可能に装着され、プロセッサコネクタ74がプロセッサ14のコネクタ受け86に着脱可能に装着されるようになっている。
後述のようにLGコネクタ70の枠体内部には、スコープ回路を実装したスコープ基板が搭載されており、挿入部20の先端部30における撮像部に接続された信号ケーブルはそのスコープ基板に接続され、そのスコープ基板にプロセッサケーブル72が接続されるようになっている。これによって、撮像部は、LGコネクタ70内のスコープ基板を介してプロセッサ14に接続されるようになっている。なお、プロセッサケーブル72はLGコネクタ70に対して着脱可能にコネクタで接続されるものとすることができるが、本実施の形態ではLGコネクタ70に取り付けられているものとする。
また、内視鏡10の内部に挿通配置されたライトガイドは、LGコネクタ70により光源装置12に光学的に接続され、光源装置12により生成された照明光がライトガイドに供給されるようになっている。これによって、光源装置12により生成された照明光がライトガイドにより挿入部20の先端部30の照明部に伝送され、照明部からその照明光が出射されるようになっている。
さらに、内視鏡10の内部に挿通配置された送気・送水チャンネル(送気・送水チューブ)は、LGコネクタ70により不図示の送気・送水装置に接続され、送気・送水装置により供給された水(液体)や気体が送気・送水チャンネルに供給されるようになっている。これによって、送気・送水装置により供給された水や気体が送気・送水チャンネルを通じて挿入部20の先端部30の送気・送水口48に送られ、送気・送水口48から水や気体が噴射されるようになっている。
次に、上記内視鏡システム1の電気的構成について図3を用いて説明する。
同図には、図1と同様に内視鏡10のLGコネクタ70が光源装置12のコネクタ受け82に装着され、内視鏡10のプロセッサコネクタ74がプロセッサ14のコネクタ受け86に装着されている状態が示されている。また、LGコネクタ70からユニバーサルケーブル24、操作部22、及び、挿入部20の内部を順に挿通して配置され、光源装置12の光源83により生成された照明光を挿入部20の先端部30の照明部58まで伝送して照明部58から出射するライトガイド56も示されている。
この図に示すように上記内視鏡システム1は、内視鏡10の挿入部20の先端部30に搭載されたセンサ回路54と、内視鏡のLGコネクタ70に搭載されたスコープ回路76と、プロセッサ14に搭載された患者回路90及び2次回路92を備えている。センサ回路54とスコープ回路76とは、内視鏡10内に挿通配置された信号ケーブル108を介して接続され、スコープ回路76と患者回路90とは、LGコネクタ70から延設されたプロセッサケーブル72を介して接続され、患者回路90と2次回路92とは、アイソレーションデバイス94(フォトカプラ、パルストランス等)を介して絶縁された状態で信号伝送及び電力伝送可能に接続されている。
センサ回路54は、撮像部を構成する固体撮像素子52やその周辺回路を実装しており、固体撮像素子52によって体腔内の被写体を撮像して得られたビデオ信号が信号ケーブル108に内包される伝送線109に送出されるようになっている。なお、伝送線109は後述のグランド線を含む複数本の伝送線を1本で示したものである。
スコープ回路76は、信号ケーブル108の伝送線109により伝送されたビデオ信号を取得して、内視鏡10の種類によって異なるセンサ回路54からのビデオ信号をプロセッサ14で取得可能な共通形式のビデオ信号に変換する処理や、ビデオ信号に対して基本的な信号処理を施す前処理回路を有している。前処理回路で行う信号処理として、例えば、相関二重サンプリング処理、自動ゲイン処理、A/D変換処理などがある。この前処理回路によって信号処理が施されたビデオ信号は、患者回路90との間を接続するプロセッサケーブル72の伝送線73に送出される。なお、伝送線73は後述のグランド線を含む複数本の伝送線を1本で示したものである。
また、スコープ回路76は、センサ回路54の固体撮像素子52を駆動する駆動信号(クロック信号等)や電力を信号ケーブル108の伝送線109を介してセンサ回路54に与える駆動回路なども有している。
患者回路90は、プロセッサケーブル72の伝送線73により伝送されたビデオ信号を取得して、そのビデオ信号に対して画質補正ための信号処理を行う後処理回路を有している。後処理回路で行う信号処理として例えば、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、ゲイン補正などがある。この後処理回路によって信号処理が施されたビデオ信号は、アイソレーションデバイス94を介して2次回路92に伝送される。
また、患者回路90は、センサ回路54やスコープ回路76を駆動するための電力やそれらの回路動作を制御するための制御信号をプロセッサケーブル72の伝送線73を介してスコープ回路76に与える駆動回路なども有している。
2次回路92は、アイソレーションデバイス94を介して患者回路90から伝送されたビデオ信号を取得して、そのビデオ信号の映像を2次回路92に接続された表示装置16の画面に表示させるためのビデオ信号の生成や出力を行う表示制御回路を有している。これによって、撮像部によって撮像された体腔内の被写体の画像が表示装置16の画面に表示されるようになっている。
また、2次回路92は、表示装置16に表示する操作案内画像等の生成や、2次回路92に接続された入力装置18からの操作信号等に基いて患者回路90に対して各種指示を行う制御信号をアイソレーションデバイス94を介して患者回路90に与える処理回路なども有している。
なお、センサ回路54、スコープ回路、患者回路90、及び、2次回路92において行われる処理内容についての上記説明は一例であって、本発明は、各回路における処理内容がどのようなものであっても適用できる。
次に、上記内視鏡システム1の電磁両立性(EMC: Electromagnetic Compatibility)を向上を図るための構成について説明する。
まず、図3において、センサ回路54とスコープ回路76とを接続する信号ケーブル108には、複数の伝送線(各伝送線は導体(芯線)を絶縁体で被覆したもの)を束ねてその周りをシールド線により被覆した多芯ケーブルが使用されており、各伝送線の一方の端部がセンサ回路54を実装した回路基板(後述のセンサ基板100)の対応する接続端子に接続され、各伝送線の他方の端部がスコープ回路76を実装した回路基板(後述のスコープ基板102)の対応する接続端子に接続されている。
このような信号ケーブル108として、シールド線が一重のもの(一重シールドの信号ケーブル)と、内側のシールド線とその外周側のシールド線とでシールド線が二重となっているもの(二重シールドの信号ケーブル)とが使用される場合がある。二重シールドの信号ケーブルを使用した場合には一重シールドの信号ケーブルを使用した場合よりもノイズの混入を少なくすることができる一方で、信号ケーブルの外径が太くなる。そのため、挿入部20の太さ等に応じて一重シールドの信号ケーブルと二重シールドの信号ケーブルとが使い分けられている。
まず、信号ケーブル108として一重シールドのものが使用されている内視鏡10を用いた内視鏡システム1の第1の実施の形態について説明する。
図4は、第1の実施の形態の内視鏡システム1の回路グランド(シグナルグランド)と回路以外の金属部材のアースへの接続構成を示した構成図である。
同図において、挿入部20の先端部30に配置されたセンサ基板100、LGコネクタ70に配置されたスコープ基板102、プロセッサ14に配置された患者基板104及び2次基板106は各々、図3におけるセンサ回路54、スコープ回路76、患者回路90、2次回路92を実装した回路基板を示している。
同図に示すように、各々の回路基板上に実装した回路の基準電位となる回路グランドに関して、センサ基板100の回路グランドは、信号ケーブル108の1つの伝送線であるグランド線110によりスコープ基板102の回路グランドに接続されている。これによって、センサ基板100の回路グランドとスコープ基板102の回路グランドとが電気的(直流的及び交流的)に接続(短絡)されている。
また、信号ケーブル108の一重のシールド線112も信号ケーブル108の両端部においてグランド線110に接続されており、センサ基板100及びスコープ基板102の回路クランドに電気的に接続(短絡)されている。
スコープ基板102の回路グランドは、プロセッサケーブル72の1つの伝送線であるグランド線130により患者基板104の回路グランドに接続されている。これによって、スコープ基板102の回路グランドと患者基板104の回路グランドとが電気的に接続(短絡)されている。なお、プロセッサケーブル72も信号ケーブル108と同様に複数の伝送線を内包する多芯ケーブルの構成となっている。
患者基板104の回路グランドは、2次基板106の回路グランドに対して導体で接続されずに絶縁(非短絡)されているが、コンデンサC3(第3のコンデンサ)を介して接続されている。これによって、患者基板104の回路グランドと2次基板106の回路グランドとが交流的にのみ接続されている。
2次基板106の回路グランドは、フレームグランドとなるプロセッサ14の金属(導体)の筐体84に電気的に接続(短絡)され、その筐体84(フレームグランド)はアース(大地)に電気的に接続(短絡)されている。
したがって、内視鏡10全体とプロセッサ14の患者基板104とからなる内視鏡装着部に配置された回路の回路グランド及び信号ケーブル108のシールド線112は、2次基板106の回路グランド、プロセッサ14のフレームグランド(筐体84)、及び、アースに対して、直流的に絶縁されているが、コンデンサC3を介して交流的に接続されている。
なお、筐体84全体が金属部材で構成されてフレームグランドとなる場合に限らず、筐体84が部分的に金属部材で構成され、その金属部材をフレームグランドとする場合や、筐体84とは別に内蔵した金属部材をフレームグランドとする場合であってもよく、その場合には、それらのフレームグランドとなる金属部材に2次基板106の回路グランドが接続(短絡)されるものとする。
内視鏡10の挿入部20の外壁部に配置される金属体(金属部材)114は、図1に示した先端部30、湾曲部32、軟性部34の各々の外壁部に含まれる網状管、湾曲駒、螺旋管等の金属部材を含む。それらの挿入部20の外壁部に配置される金属部材は電気的に接続(短絡)されており、図4では一体の金属体114として示されている。なお、回路(回路を構成する金属部材)以外の金属部材であって、外壁部に配置されていない金属部材も金属体114に接続(短絡)されていてもよい。
その金属体114は、操作部22の外壁部に配置される金属体(枠体等の金属部材)116に電気的に接続(短絡)されている。操作部22の金属体116は、ユニバーサルケーブル24の外壁部に配置される金属体(金属部材)118の基端部に電気的に接続(短絡)されている。なお、操作部22の外壁部に配置されていない回路以外の金属部材も金属体116に接続(短絡)されていてもよい。
ユニバーサルケーブル24の金属体118は、LGコネクタ70の外壁部を構成する枠体121の金属の基端部124に電気的に接続(短絡)されている。
LGコネクタ70の枠体121は、スコープ基板102等の内蔵物を収容しており、その枠体121は、ユニバーサルケーブル24に連設された金属の基端部124と、ユニバーサルケーブル24に対して基端部124よりも遠方となる先端側に配置される金属の先端部122と、先端部122と基端部124との間に配置される第1サージアブソーバ126と構成されている。
第1サージアブソーバ126は先端部122と基端部124との電圧差(電位差)が所定の閾値以下の状態では電気を導通しない非通電状態となり、先端部122と基端部124とを絶縁した状態に保つ。一方、先端部122と基端部124との電圧差(電位差)が上記閾値よりも大きい状態になると、電気を導通する通電状態に切り替わり、先端部122と基端部124とを電気的に接続(短絡)した状態に切り替える。たとえば、その閾値として1kVのものが使用される。
また、LGコネクタ70の基端部124には、LGコネクタ70の基端部124から延設されるプロセッサケーブル72の外壁部に配置されている金属体132(シールド線等の金属部材)との間となる位置に第1サージアブソーバ126と同様の第2サージアブソーバ128が介在されており、LGコネクタ70の基端部124とプロセッサケーブル72の金属体132との電圧差(電位差)に応じてそれらを絶縁した状態と電気的に接続(短絡)した状態に切り替えるようになっている。
LGコネクタ70の先端部122は、光源装置12のコネクタ受け82に装着されることによってコネクタ受け82(金属の枠体)に電気的に接続される。コネクタ受け82は、フレームグランドとなる光源装置12の金属の筐体80に対して絶縁(非短絡)されているが、コンデンサC1(第1のコンデンサ)を介して交流的に接続されている。筐体80(フレームグランド)はアース(大地)に電気的に接続(短絡)されている。
これによって、LGコネクタ70の先端部122と光源装置12のフレームグランド(筐体80)及びアースとが、コンデンサC1を介して交流的にのみ接続されている。
なお、LGコネクタ70の先端部122、基端部124、コネクタ受け82は、それら全体が金属部材で構成されている場合に限らず、部分的に金属部材で構成されている場合であってもよく、両方の場合を考慮すると、ユニバーサルケーブル24の金属体118に基端部124の金属部材が電気的に接続(短絡)され、基端部124の金属部材に第1サージアブソーバ126を介して先端部122の金属部材が接続されると共に第2サージアブソーバ128を介してプロセッサケーブル72の金属体132が接続された構成ということができる。また、先端部122の金属部材にコネクタ受け82の金属部材が電気的に接続(短絡)され、コネクタ受け82の金属部材がコンデンサC1を介して光源装置12のフレームグランドに接続された構成ということができる。
また、プロセッサ14と同様に光源装置12の筐体80全体が金属部材で構成されてフレームグランドとなる場合に限らず、筐体80が部分的に金属部材で構成され、その金属部材をフレームグランドとする場合や、筐体80とは別に内蔵した金属部材をフレームグランドとする場合であってもよく、その場合には、それらのフレームグランドとなる金属部材にコネクタ受け82の金属部材がコンデンサC1を介して接続(短絡)されるものとする。
プロセッサケーブル72の金属体132は、プロセッサコネクタ74の外壁部を構成する金属の枠体134に電気的に接続(短絡)され、そのプロセッサコネクタ74の枠体134は、プロセッサ14のコネクタ受け86に装着されることによってコネクタ受け86(金属の枠体)に電気的に接続(短絡)される。
コネクタ受け86は、フレームグランドとなるプロセッサ14の金属の筐体84(フレームグランド)に対して絶縁(非短絡)されているが、コンデンサC2(第2のコンデンサ)を介して交流的に接続されている。プロセッサ14の筐体84(フレームグランド)は上述のようにアース(大地)に電気的に接続(短絡)されている。
これによって、プロセッサケーブル72の金属体132、プロセッサコネクタ74の枠体134、及び、プロセッサ14のコネクタ受け86と、プロセッサ14のフレームグランド(筐体84)及びアースとが、コンデンサC2を介して交流的にのみ接続されている。
なお、プロセッサコネクタ74の枠体134、コネクタ受け86は、それら全体が金属部材で構成されている場合に限らず、部分的に金属部材で構成されている場合であってもよく、両方の場合を考慮すると、プロセッサケーブル72の金属体132に枠体134の金属部分が電気的に接続(短絡)され、枠体134の金属部材にコネクタ受け86の金属部材が接続され、コネクタ受け86の金属部材にコンデンサC2を介してプロセッサ14のフレームグランドが接続された構成ということができる。
以上のことから、内視鏡10全体及び患者基板104とからなる内視鏡装着部に配置された回路以外の金属部材(主として内視鏡10の外壁部に配置された金属部材)は、光源装置12のフレームグランド(筐体80)、プロセッサ14のフレームグランド(筐体84)、及び、アースとは、直流的に絶縁されているが、コンデンサC1又はC2を介して交流的に接続されている。また、LGコネクタ70の枠体121の基端部124は、第1サージアブソーバ126及び第2サージアブソーバ128が通電状態となるような電圧が印加されない限りは、光源装置12のフレームグランド(筐体80)、プロセッサ14のフレームグランド(筐体84)、及び、アースとは交流的にも絶縁されている。
以上の第1の実施の形態の構成によれば、内視鏡10全体及び患者基板104とからなる内視鏡装着部の回路及び回路以外の金属部材(主として内視鏡10の外壁部に配置された金属部材)はいずれもフレームグランド、アース、及び、2次基板106とは直流的に絶縁されている。
したがって、光源装置12、プロセッサ14、表示装置16等の周辺機器、処置具チャンネルを挿通させた処置具において回路部品の故障等によって漏れ電流が生じた場合であっても、内視鏡装着部の回路グランドや金属部材に直流の漏れ電流が流れることがない。
また、第1サージアブソーバ126及び第2サージアブソーバ128は、漏れ電流の電圧に対しては非導通状態を維持するため、内視鏡装着部の金属部材に交流の漏れ電流が流れることもない。これにより、患者の安全が確保されている。特に、処置具チャンネルにAPC(Argon-Plasma Coaglation:アルゴンプラズマコアギュレーション)のような高周波処置具を挿入して使用している際に、高周波処置具から挿入部20の金属部材に直流及び交流の漏れ電流が流れるという事態が確実に防止されるようになっている。
一方、処置具チャンネルにAPCのような高周波処置具を挿通させて使用する場合に交流のノイズが信号ケーブル108等からビデオ信号に混入し、撮像部によって撮像した映像の画質の劣化等を招くおそれがある。
このようなノイズに対しては、コンデンサC3をそのノイズの周波数で低インピーダンスとなるような特性のコンデンサとすることによって、挿入部20の信号ケーブル108のシールド線112等から内視鏡装着部の回路グランド及びコンデンサC3を通じて2次基板106に接続されたアースに流すことができるため、ビデオ信号へのノイズの混入を防止することができ、回路の誤動作や画質の劣化を防止することができる。
特に、このような高周波処置具のノイズは、LGコネクタ70の第1サージアブソーバ126及び第2サージアブソーバ128を通電状態にする程には電圧が高くないため、内視鏡装着部の金属部材を通じてはアースに流れず、その分、高周波処置具と信号ケーブル108のシールド線112とのノイズ結合が大きくなる。これに対して、シールド線112に混入するノイズは、上記のようにコンデンサC3を介して大地に流すことができるため、ビデオ信号へのノイズの混入を防止することができ、回路の誤動作や画質の劣化を好適に低減することができる。
また、内視鏡システム1の電磁両立性(EMC)に関する検査では、静電気放電に関するイミュニティ試験が行われる。その試験で行われるように、主に内視鏡10と他の物体との間で静電気放電が生じた場合、それによる電流は内視鏡10の外壁部の金属部材に流れる。一般に静電気放電により生じる電圧は高いため、LGコネクタ70の第1サージアブソーバ126及び第2サージアブソーバ128が通電状態となる。
したがって、コンデンサC1及びコンデンサC2を、静電気放電によって生じる電流の周波数で低インピーダンスとなるような特性のコンデンサとすることによって、静電気放電により生じた電流をコンデンサC1及びC2を通じてアースに流すことができるため、患者の安全を確保することができ、かつ、ビデオ信号等へのノイズの混入を防止して、回路の誤動作や画質の劣化を防止することができる。
また、内視鏡システム1のEMCに関する検査では、放射電磁界に関するイミュニティ試験が行われる。その試験で行われるように、内視鏡10に外部から電磁波が照射された場合、コンデンサC3をその電磁波の周波数で低インピーダンスとなるような特性のコンデンサとすることによって、内視鏡10の挿入部20に照射された電磁波によって生じる電流を、信号ケーブル108のシールド線112から回路グランド及びコンデンサC3を介してアースに流してエネルギーを消失させることができる。また、コンデンサC2を電磁波の周波数で低インピーダンスとなるような特性のコンデンサとしておくことによって、内視鏡10のプロセッサケーブル72に照射された電磁波によって生じる電流を、プロセッサケーブル72の金属体132(シールド線)からコンデンサC2を介してアースに流してエネルギーを消失させることができる。したがって、放射電磁界による回路の誤動作やビデオ信号へのノイズの混入を防止することができる。
また、内視鏡システム1のEMCに関する検査では、雑音電界強度に関するエミッション試験が行われる。その試験によって測定されるように内視鏡10から放射される電磁波は、主として内視鏡10内の回路で使用されるクロック信号(ビデオ信号に含まれる水平同期信号などのクロック信号等)に起因し、そのクロック信号の周波数(クロック周波数)の逓倍となる周波数の電磁波が信号ケーブル108やスコープ基板102から放射され易い。
これに対して、内視鏡装着部の回路グランドをコンデンサC3を介してプロセッサ14のフレームグランド(アース)に接続しているため、コンデンサC3を、そのクロック周波数の逓倍となる周波数に対して低インピーダンスとなるような特性のコンデンサとしておくことによって、クロック周波数の逓倍となる周波数に対して回路グランドをアースに接地した状態とすることができ、信号ケーブル108やスコープ基板102等からの電磁波の放射を低減することができる。
また、プロセッサケーブル72の金属体132及びプロセッサコネクタ74の枠体134をコンデンサC2を介してアースに接地しているため、コンデンサC2もクロック周波数の逓倍となる周波数に対して低インピーダンスとなるような特性のコンデンサとしておくことによって、それらの金属体132、枠体134がアンテナとなって電磁波を放射することを低減することができる。
続いて、各コンデンサC1〜C3の特性について説明する。
コンデンサC1〜C3は、内視鏡装着部を直流的にアース(フレームグランド)から絶縁し、一定の耐電圧を保つようにする必要があるため、高耐圧のコンデンサであることが望ましい。具体的には、少なくとも4kVの耐圧を有することが望まれる。
一方、コンデンサC1〜C3は、上述の説明から以下の(a)〜(d)のうちのいずれか1又は複数の作用を有するコンデンサとすることが可能である。
(a)APC等の高周波処置具からのノイズの周波数に対して内視鏡装着部の回路グランドを低インピーダンスでアースに接続する作用
(b)静電気放電による電流の周波数に対して内視鏡装着部の金属部材を低インピーダンスでアースに接続する作用
(c)外部から照射された電磁波の周波数に対して内視鏡装着部の回路グランドと、プロセッサケーブル72及びプロセッサコネクタ74の金属部材を低インピーダンスでアースに接続する作用
(d)内視鏡装着部の回路で使用されるクロック信号により放射される電磁波の周波数に対して内視鏡装着部の回路グランドと、プロセッサケーブル72及びプロセッサコネクタ74の金属部材を低インピーダンスでアースに接続する作用
ここで、各作用(a)〜(d)において対象とする周波数を対象周波数と称し、各々、fa(角周波数ωa=2π・fa)、fb(角周波数ωa=2π・fb)、fc(角周波数ωc=2π・fc)、fd(角周波数ωd=2π・fd)で表すものとすると、
作用(a)の対象周波数faは、高周波処置具としてビデオ信号にノイズが混入しやすいAPCを使用している際の25MHz前後の周波数とすることが望ましい。
作用(b)の対象周波数fbは、300MHz(又はその近傍の周波数)とすることが望ましい。
作用(c)の対象周波数fcは、内視鏡10に外部から照射する電磁波の周波数を変えて実測したビデオ信号にノイズが乗りやすい周波数(1又は複数の異なる周波数)とすることが望ましい。
作用(d)の対象周波数fdは、一例として100〜230MHz(100MHz以上、かつ、230MHz以下)の周波数とすることが望ましい。内視鏡装着部における画像処理回路の動作周波数を例えば100MHz、全体を制御するCPUを例えば133MHzとすると、これらの周波数や逓倍となる周波数の電磁波が放射されやすい。このような状況において、特に100〜230MHzの周波数では雑音電界強度が許容範囲外となりやすいため、対象周波数fdを100〜230MHzとすることが望ましい。
各コンデンサC1、C2、C3のインピーダンスは、それらに与えられる交流(交流電圧又は交流電流)の周波数f(角周波数ω:ω=2πf)によって変化し、各々、Z1、Z2、Z3で表すものとし、それらの大きさ(絶対値)を、|Z1|、|Z2|、|Z3|で表すものとする。そして、各作用(a)〜(d)において、それらが低インピーダンス(回路グランドや金属部材をアースに短絡している)とみなせるのは、それらのインピーダンスの大きさ|Z1|、|Z2|、|Z3|が所定の閾値Z0以下の値を示すときであるものとする。閾値Z0として例えば10Ωとすることが望ましいが、かならずしもこれに限らない。
コンデンサC1は、上述したように上記作用(a)〜(d)のうちの作用(b)を有するコンデンサとすることができる。その場合に、コンデンサC1として、対象周波数fbに対して低インピーダンスとなるように、そのインピーダンスZ1の大きさ|Z1|が、対象周波数fbの周波数に対して|Z1|≦Z0となる特性のコンデンサを選定すればよい。
コンデンサC2は、上記作用(a)〜(d)のうちの作用(b)、(c)、(d)を有するコンデンサとすることができる。その場合に、コンデンサC2として、対象周波数fb、fc、及び、fdの全てに対して低インピーダンスとなるように、そのインピーダンスZ2の大きさ|Z2|が、対象周波数fb、fc、及び、fdの全てに対して|Z2|≦Z0となる特性のコンデンサを選定すればよい。ただし、コンデンサC2によって作用(b)、(c)、(d)の全ての作用が得られるようにするように必要はなく、それらのうちのいずれか1又は複数の作用が得られるようにしてもよい。例えば、作用(b)は、コンデンサC1によっても得ることができるため、コンデンサC2は、作用(c)、(d)のみを有するものとし、コンデンサC2として、インピーダンスZ2の大きさ|Z2|が、対象周波数fc、及び、fdに対して|Z2|≦Z0となる特性のコンデンサを選定してもよい。
コンデンサC3は、上記作用(a)〜(d)のうちの作用(a)、(c)、(d)を有するコンデンサとすることができる。その場合に、コンデンサC3として、対象周波数fa、fc、及び、fdの全てに対して低インピーダンスとなるように、そのインピーダンスZ3の大きさ|Z3|が、対象周波数fa、fc、及び、fdの全てに対して|Z3|≦Z0となる特性のコンデンサを選定すればよい。なお、コンデンサC2と同様にコンデンサC3によって作用(a)、(c)、(d)の全ての作用が得られるようにする必要はなく、それらのうちのいずれか1又は複数の作用が得られるようにしてもよい。
ここで、一般にコンデンサのインピーダンスZは、静電容量成分(キャパシタンス成分)だけでなく、インダクタンス成分と抵抗成分を含んでおり、キャパシタンスをC(単位:F(ファラッド))、インダクタンスをL(単位:H(ヘンリー))、抵抗をR(単位:Ω(オーム))とし、交流の角周波数(2πf:fは周波数)をω、虚数単位をjとすると、コンデンサのインピーダンスZは、次式(1)で表される。
Z=R+jωL+1/(jωC) ・・・(1)
そして、インピーダンスZの大きさ|Z|は、次式(2)で表される。
|Z|=[R2+{ωL−1/(ωC)}2](1/2) ・・・(2)
このインピーダンスZの大きさ|Z|を縦軸、角周波数ω(周波数f)を横軸として周波数特性曲線の概略をグラフで表すと、図5のようになる。このグラフに示すように、角周波数ωが、次式(2)の角周波数ω0(周波数f0)、
ω=ω0=2π・f0=1/(LC)(1/2) ・・・(2)
となるときにインピーダンスZの大きさ|Z|が最小値Rとなり、角周波数ωがその角周波数ω0(周波数f0:ω0=2π・f0)よりも大きくなるほど、また、小さくなるほど、|Z|が増大する傾向を示す。
所定の対象周波数fs(角周波数ωs:ωs=2π・fs)において低インピーダンスとなるような特性のコンデンサを使用する場合、その選定条件としては、その対象周波数fsにおいて、インピーダンスZの大きさ|Z|が閾値Z0以下になること、すなわち、次式(3)、
|Z|≦Z0 ・・・(3)
を満たすことが選定条件となる。この選定条件を満たす特性のコンデンサであれば、対象周波数fsにおいて低インピーダンスとなる特性のコンデンサとして使用することができる。一方、このような選定条件を満たす特性のコンデンサのうち、特に、対象周波数fs(角周波数ωs)が上式(2)の周波数f0(角周波数ω0)と一致し、対象周波数fsにおいてインピーダンスZの大きさ|Z|が最小値Rとなるような特性のコンデンサを選定して使用すると、対象周波数fsに対するコンデンサのインピーダンスを他の周波数よりも小さくすることができるため、望まない周波数に対してもコンデンサを低インピーダンスにしてしまうことがないため好適である。
また、対象周波数fsは、特定値の周波数だけでなく、その周辺の周波数も含む帯域幅を有する周波数、例えば、作用(d)のように最小周波数fs1(Hz)〜最大周波数fs2(Hz)の周波数帯域内の全ての周波数とする場合が考えられる。その場合には、対象周波数fsとする周波数帯域内の全て周波数に対して低インピーダンスとなる特性のコンデンサを選定する。
即ち、対象周波数fsとする周波数帯域内の全ての周波数に対して、上記条件式(3)を満たす特性のコンデンサを選定すればよい。より具体的には、対象周波数fsとする周波数帯域内の周波数のうち、最小周波数fs1と最大周波数fs2の両方に対して、上記条件式(3)を満たす特性のコンデンサを選定すればよい。特に、このような選定条件を満たすコンデンサのうち、対象周波数fsとする周波数帯域内の全ての周波数のうち、いずれかの周波数が上式(2)の周波数f0(角周波数ω0)と一致するような特性のコンデンサ、別言すると、上式(2)の周波数f0が対象周波数fsとする周波数帯域内に含まれる特性のコンデンサを選定して使用すると好適である。
なお、対象周波数fsとして周波数帯域の範囲を明確にする値がなく、特定値の周波数とその周辺の周波数帯域の周波数を対象周波数fsとするような場合であっても、その特定値の周波数に対して上記条件式(3)を満たす特性のコンデンサを選定すれば、その周辺の周波数に対してもインピーダンスZの大きさ|Z|が閾値Z0以下の値又は閾値Z0付近の値となるため、必然的にその周辺の周波数に対しても低インピーダンスとなる特性のコンデンサを選定したものとすることができる。
また、対象周波数fsは、1つの特定値の周波数、又は、1つの連続する周波数からなる周波数帯域の周波数とするだけでなく、上記作用(a)〜(d)のうちの複数の作用を有するコンデンサを選定する場合のように(複数の作用を有するコンデンサC2、C3として適切なコンデンサを選定する場合に相当)、離散的な複数の異なる特定値の周波数、複数の異なる周波数帯域内の周波数、又は、それらの組み合わせとする場合が考えられる。即ち、対象周波数fsが複数の異なる対象周波数fs1、fs2、・・・を含む場合が考えられる。その場合には、対象周波数fsとした周波数のうちの任意(全て)の周波数に対して(全ての対象周波数fs1、fs2、・・・に対して)低インピーダンスとなる特性のコンデンサを選定すればよい。
即ち、対象周波数fsに含まれる周波数のうちの任意(全て)の周波数に対して、上記条件式(3)を満たす特性のコンデンサを選定すればよい。より具体的には、対象周波数fsとする周波数のうち、最小の周波数と最大の周波数の両方に対して、上記条件式(3)を満たす特性のコンデンサを選定すればよい。特に、このような選定条件を満たすコンデンサのうち、対象周波数fsとする周波数のうちの最小の周波数から最大の周波数までの連続する周波数の範囲のいずれかの周波数が上式(2)の周波数f0(角周波数ω0)と一致するような特性のコンデンサ、別言すると、上式(2)の周波数f0が対象周波数fsとする周波数のうちの最小の周波数から最大の周波数までの範囲内に含まれる特性のコンデンサを選定して使用すると好適である。
また、このように対象周波数fsが複数の異なる対象周波数fs1、fs2、・・・を含む場合に、それらの全ての対象周波数fs1、fs2、・・・に対して低インピーダンスとなる特性のコンデンサとして、1つの素子のコンデンサではなく、複数素子のコンデンサを並列に接続したものとすることもできる。この場合、各対象周波数fs1、fs2、・・・に対して低インピーダンスとなる特性のコンデンサを選定し、それらのコンデンサを並列に接続した構成とすればよい。更に、このように複数素子のコンデンサを並列に接続してコンデンサC2やコンデンサC3を構成するものとし、それらの複数素子のコンデンサを回路基板に実装する際には、各コンデンサと回路基板上のパターンとの接触部分が多面であるため、コンデンサを均等に接続することで、アースへの結合を良くして効果を向上させることができる。なお、コンデンサC1のように対象周波数fsが1つの場合であっても、例えばインピーダンスの異なる複数素子のコンデンサを並列に接続したものとしてもよい。
以上のようにして、各作用(a)〜(d)の対象周波数fa〜fdのうちのいずれか1つ又は複数の対象周波数に対して低インピーダンスとなる特性のコンデンサC1〜C3を選定することができる。なお、コンデンサの容量を大きくすると、漏れ電流が多くなる。漏れ電流に関する検査においては直流からカットオフ周波数1kHzまでの範囲で実施されるため、漏れ電流が大きくなった、その周波数の範囲でインピーダンスが高くなるようなコンデンサを選定すると好適である。
次に、図3の信号ケーブル108として一重シールドのものが使用されている内視鏡10を用いた内視鏡システム1の第2の実施の形態について説明する。
図6は、第2の実施の形態の内視鏡システム1の回路グランド(シグナルグランド)と回路以外の金属部材のアースへの接続構成を示した構成図である。なお、図4に示した第1の実施の形態と同一又は類似の構成要素には図4と同一符号を付して説明を省略し、主として第1の実施の形態との相異点について説明する。
図6の第2の実施の形態では、図4の第1の実施の形態において光源装置12の筐体80内に配置されたコンデンサC1と、プロセッサ14の筐体84の内部に配置されたコンデンサC2とが、それぞれLGコネクタ70の枠体121の内部と、プロセッサコネクタ74の枠体134の内部に設けられている点で図4の第1の実施の形態と相違している。これによれば、コンデンサC1、C2として内視鏡10の種類ごとに又は個体ごとに対策したい周波数に応じた特性のコンデンサを選出することができる。これらのコンデンサC1とコンデンサC2の作用、及び、コンデンサC3の作用については、第1の実施の形態と同じである。
図6に示すように、LGコネクタ122の枠体121は、第1の実施の形態と同様に先端部122と基端部124とがサージアブソーバ126を介して連結されて構成され、本実施の形態では、更に先端部122が基端側の第1先端部122Aと、第1先端部122Aよりも先端側に配置される第2先端部122Bとから構成されている。
第1先端部122Aの金属部材(以下、単に第1先端部122という)と第2先端部122Bの金属部材(以下、単に第2先端部122Bという)とは絶縁体を介して電気的に絶縁された状態で連結されており、それらの内部において第1先端部122Aと第2先端部122Bとの間がコンデンサC1を介して交流的に接続されている。
第2先端部122Bは、光源装置12のコネクタ受け82の金属部材(以下、単にコネクタ受け82という)に電気的に接続(短絡)され、コネクタ受け82は、第1の実施の形態とは異なり、光源装置12の筐体80(フレームグランド)に電気的に接続(短絡)されて筐体80を介してアースに電気的に接続(短絡)されている。
これによって、LGコネクタ70の第1先端部122Aと、光源装置12のフレームグランド(筐体80)及びアースとが、コンデンサC1を介して交流的にのみ接続されている。
プロセッサコネクタ74の枠体134は、第1の実施の形態と異なり、プロセッサケーブル72に連設された基端部134Aと、プロセッサケーブル72に対して基端部134Aよりも遠方となる先端側に配置され先端部134Bとから構成されている。
基端部134Aの金属部材(以下、単に基端部134Aという)と先端部134Bの金属部材(以下、単に先端部134Bという)とは絶縁体を介して電気的に絶縁された状態で連結されており、それらの内部において基端部134Aと先端部134Bとの間がコンデンサC2を介して交流的に接続されている。
先端部134Bは、プロセッサ14のコネクタ受け86の金属部材(以下、単にコネクタ受け86という)に電気的に接続(短絡)され、コネクタ受け86は、第1の実施の形態とは異なり、プロセッサ14の筐体84(フレームグランド)に電気的に接続(短絡)されて筐体84を介してアースに電気的に接続(短絡)されている。
これによって、プロセッサケーブル72の金属体132及びプロセッサコネクタ74の枠体134の基端部134Aと、プロセッサ14のフレームグランド(筐体84)及びアースとが、コンデンサC2を介して交流的にのみ接続されている。
したがって、内視鏡10全体及び患者基板104とからなる内視鏡装着部に配置された回路以外の金属部材は、LGコネクタ70の枠体121の第2先端部122Bと、プロセッサコネクタ74の枠体134の先端部134Bを除いては、第1の実施の形態と同様に光源装置12のフレームグランド(筐体80)、プロセッサ14のフレームグランド(筐体84)、及び、アースとは、直流的に絶縁されているが、コンデンサC1又はC2を介して交流的に接続されている。これによって、第1の実施の形態と同様のコンデンサC1、C2の作用によって第1の実施の形態と同様にEMCの向上が図られている。
なお、第1の実施の形態のようにコンデンサC1を配置した構成と第2の実施の形態のようにコンデンサC2を配置した構成とを組み合わせた形態、または、第1の実施の形態のようにコンデンサC2を配置した構成と第2の実施の形態のようにコンデンサC1を配置した構成とを組み合わせ形態を採用することもできる。
次に、図3の信号ケーブル108として二重シールドのものが使用されている内視鏡10を用いた内視鏡システム1の第3の実施の形態について説明する。
図7は、第3の実施の形態の内視鏡システム1の回路グランド(シグナルグランド)と回路以外の金属部材のアースへの接続構成を示した構成図である。なお、図4に示した第1の実施の形態と同一又は類似の構成要素には図4と同一符号を付して説明を省略し、主として第1の実施の形態との相異点についてのみ説明する。
図7に示すように、第3の実施の形態では、内視鏡10の挿入部20、操作部22、及びユニバーサルケーブル24の内部に挿通配置された信号ケーブル108が、内側の第1シールド線112Aと外側の第2シールド線112Bとを有している。
内側の第1シールド線112Aは、図4の第1の実施の形態のシールド線112と同様に両端部でグランド線110に接続され、回路グランドに電気的に接続(短絡)されている。
一方、外側の第2シールド線112Bは、グランド線110(回路グランド)とは電気的に絶縁されており、その基端側の端部から延設された導線140によって、LGコネクタ70及びプロセッサケーブル72の内部を挿通してプロセッサコネクタ74の枠体134の金属部分(以下、単に枠体134という)に電気的に接続(短絡)されている。
これによって、第2シールド線112Bと、プロセッサ14のフレームグランド(筐体84)及びアースとが、コンデンサC2を介して交流的に接続されている。
これによれば、コンデンサC2は、第1の実施の形態と同様に、上記作用(b)、(c)、(d)を有するコンデンサとする他に、作用(a)を有するコンデンサとすることができる。即ち、処置具チャンネルに挿通したAPC等の高周波処置具からのノイズは、信号ケーブル108の外側の第2シールド線112Bとのノイズ結合が大きくなる。これに対して、コンデンサC2をそのノイズの周波数に対して低インピーダンスとなるような特性のコンデンサとすることで、シールド線112Bに混入するノイズをコンデンサC2を介して大地に流すことができる。したがって、ビデオ信号等へのノイズの混入を防止することができ、回路の誤動作や画質の劣化を好適に低減することができる。
これ以外のコンデンサC3〜C2による作用及びそれによるEMCに関しては第1の実施の形態と同様である。
次に、図3の信号ケーブル108として二重シールドのものが使用されている内視鏡10を用いた内視鏡システム1の第4の実施の形態について説明する。
図8は、第4の実施の形態の内視鏡システム1の回路グランド(シグナルグランド)と回路以外の金属部材のアースへの接続構成を示した構成図である。なお、図6に示した第2の実施の形態及び図7に示した第3の実施の形態と同一又は類似の構成要素には図6及び図7と同一符号を付して説明を省略し、第3の実施の形態と相違する点について説明する。
図8の第4の実施の形態では、図7の第3の実施の形態において光源装置12の筐体80内に配置されたコンデンサC1と、プロセッサ14の筐体84の内部に配置されたコンデンサC2とが、それぞれLGコネクタ70の枠体121の内部と、プロセッサコネクタ74の枠体134の内部に設けられている点で図7の第3の実施の形態と相違している。これによれば、コンデンサC1、C2として内視鏡10の種類ごとに又は個体ごとに対策したい周波数に応じた特性のコンデンサを選出することができる。これらのコンデンサC1とコンデンサC2の作用、及び、コンデンサC3の作用については、第3の実施の形態と同じである。なお、この相違点は第1の実施の形態に対する第2の実施の形態の相違点と一致している。
図8に示すように、LGコネクタ70の枠体121は、第3の実施の形態と同様に先端部122と基端部124とがサージアブソーバ126を介して連結されて構成され、本実施の形態では、更に先端部122が基端側の第1先端部122Aと、第1先端部122Aよりも先端側に配置される第2先端部122Bとから構成されている。
第1先端部122Aと第2先端部122Bとは絶縁体を介して電気的に絶縁された状態で連結されており、それらの内部において第1先端部122Aと第2先端部122Bとの間がコンデンサC1を介して交流的に接続されている。
第2先端部122Bは、光源装置12のコネクタ受け82に電気的に接続(短絡)され、コネクタ受け82は、第3の実施の形態とは異なり、光源装置12の筐体80(フレームグランド)に電気的に接続(短絡)されて筐体80を介してアースに電気的に接続(短絡)されている。
これによって、LGコネクタ70の第1先端部122Aと、光源装置12のフレームグランド(筐体80)及びアースとが、コンデンサC1を介して交流的にのみ接続されている。
プロセッサコネクタ74の枠体134は、第3の実施の異なり、プロセッサケーブル72に連設された基端部134Aと、プロセッサケーブル72に対して基端部134Aよりも遠方となる先端側に配置され先端部134Bとから構成されている。
基端部134Aと先端部134Bとは絶縁体を介して電気的に絶縁された状態で連結されており、それらの内部において基端部134Aと先端部134Bとの間がコンデンサC2を介して交流的に接続されている。
先端部134Bは、プロセッサ14のコネクタ受け86に電気的に接続(短絡)され、コネクタ受け86は、第3の実施の形態とは異なり、プロセッサ14の筐体84(フレームグランド)に電気的に接続(短絡)されて筐体84を介してアースに電気的に接続(短絡)されている。
これによって、プロセッサケーブル72の金属体132及びプロセッサコネクタ74の枠体134の基端部134Aと、プロセッサ14のフレームグランド(筐体84)及びアースとが、コンデンサC2を介して交流的にのみ接続されている。
したがって、内視鏡10全体及び患者基板104とからなる内視鏡装着部に配置された回路以外の金属部材は、LGコネクタ70の枠体121の第2先端部122Bと、プロセッサコネクタ74の枠体134の先端部134Bを除いては、第3の実施の形態と同様に光源装置12のフレームグランド(筐体80)、プロセッサ14のフレームグランド(筐体84)、及び、アースとは、直流的に絶縁されているが、コンデンサC1又はC2を介して交流的に接続されている。これによって、第3の実施の形態と同様のコンデンサC1、C2の作用によって第3の実施の形態と同様にEMCの向上が図られている。
また、信号ケーブル108の外側の第2シールド線112Bは、その基端側の端部から延設された導線140によって、LGコネクタ70及びプロセッサケーブル72の内部を挿通してプロセッサコネクタ74の枠体134の基端部134Aに電気的に接続(短絡)されている。
これによって、第3の実施の形態と同様に第2シールド線112Bと、プロセッサ14のフレームグランド(筐体84)及びアースとが、コンデンサC2を介して交流的に接続されている。
したがって、コンデンサC2は、第3の実施の形態と同様に、上記作用(b)、(c)、(d)を有するコンデンサとする他に、作用(a)を有するコンデンサとすることができる。即ち、コンデンサC2を、処置具チャンネルに挿通したAPC等の高周波処置具からのノイズに対して低インピーダンスとなるような特性のコンデンサとすることで、第2シールド線112Bに混入するノイズをコンデンサC2を介して大地に流すことができる。これによって、ビデオ信号へのノイズの混入を防止することができ、回路の誤動作や画質の劣化を好適に低減することができる。
以上、上記第2の実施の形態、及び、第4の実施の形態では、コンデンサC1とコンデンサC2のいずれもLGコネクタ70とプロセッサコネクタ74の内部に配置した構成としたが、コンデンサC1とコンデンサC2のいずれか一方は、第1の実施の形態や第3の実施の形態と同様に光源装置12やプロセッサ14の内部に配置した構成としてもよい。