本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(電動パワーステアリング装置)
図1は、本実施形態に係る電動機を備える電動パワーステアリング装置の構成図である。本実施形態の電動機はブラシレスモータ10であって、まず、図1を用いて、ブラシレスモータ10を備える電動パワーステアリング装置80の概要を説明する。
電動パワーステアリング装置80は、操舵者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、ピニオンシャフト87と、ステアリングギヤ88と、タイロッド89とを備える。また、電動パワーステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ91aと、車速センサ91bとを備える。
ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを含む。入力軸82aは、一方の端部がステアリングホイール81に連結され、他方の端部がトルクセンサ91aを介して操舵力アシスト機構83に連結される。出力軸82bは、一方の端部が操舵力アシスト機構83に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント84に連結される。本実施形態では、入力軸82a及び出力軸82bは、鉄等の磁性材料から形成される。
ロアシャフト85は、一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87は、一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。
ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを含む。ピニオン88aは、ピニオンシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ラックアンドピニオン形式として構成される。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。タイロッド89は、ラック88bに連結される。
操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、ブラシレスモータ10とを含む。減速装置92は、出力軸82bに連結される。ブラシレスモータ10は、減速装置92に連結され、かつ、補助操舵トルクを発生させる電動機である。なお、電動パワーステアリング装置80は、ステアリングシャフト82と、トルクセンサ91aと、減速装置92とによりステアリングコラムが構成されている。ブラシレスモータ10は、ステアリングコラムの出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、本実施形態の電動パワーステアリング装置80は、コラムアシスト方式である。
コラムアシスト方式の電動パワーステアリング装置80は、操作者とブラシレスモータ10との距離が比較的近く、ブラシレスモータ10のトルク変化又は摩擦力が操舵者に影響を与えるおそれがある。このため、電動パワーステアリング装置80では、ブラシレスモータ10の摩擦力の低減が求められる。
図2は、本実施形態の電動パワーステアリング装置が備える減速装置の一例を説明する正面図である。図2は、一部を断面として示してある。減速装置92はウォーム減速装置である。減速装置92は、減速装置ハウジング93と、ウォーム94と、玉軸受95aと、玉軸受95bと、ウォームホイール96と、ホルダ97とを備える。
ウォーム94は、ブラシレスモータ10のシャフト21にスプライン、または弾性カップリングで結合する。ウォーム94は、玉軸受95aと、ホルダ97に保持された玉軸受95bとで回転自在に減速装置ハウジング93に保持されている。ウォームホイール96は、減速装置ハウジング93に回転自在に保持される。ウォーム94の一部に形成されたウォーム歯94aは、ウォームホイール96に形成されているウォームホイール歯96aに噛み合う。
ブラシレスモータ10の回転力は、ウォーム94を介してウォームホイール96に伝達されて、ウォームホイール96を回転させる。減速装置92は、ウォーム94及びウォームホイール96によって、ブラシレスモータ10のトルクを増加する。そして、減速装置92は、図1に示すステアリングコラムの出力軸82bに補助操舵トルクを与える。
図1に示すトルクセンサ91aは、ステアリングホイール81を介して入力軸82aに伝達された運転者の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ91bは、電動パワーステアリング装置80が搭載される車両の走行速度を検出する。ECU90は、ブラシレスモータ10と、トルクセンサ91aと、車速センサ91bとが電気的に接続される。
ECU90は、ブラシレスモータ10の動作を制御する。また、ECU90は、トルクセンサ91a及び車速センサ91bのそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU90は、トルクセンサ91aから操舵トルクTを取得し、かつ、車速センサ91bから車両の走行速度Vを取得する。ECU90は、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置(例えば車載のバッテリ)99から電力が供給される。ECU90は、操舵トルクTと走行速度Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU90は、その算出された補助操舵指令値に基づいてブラシレスモータ10へ供給する電力値Xを調節する。ECU90は、ブラシレスモータ10から誘起電圧の情報又は後述するレゾルバからロータの回転の情報を動作情報Yとして取得する。
ステアリングホイール81に入力された操舵者(運転者)の操舵力は、入力軸82aを介して操舵力アシスト機構83の減速装置92に伝わる。この時に、ECU90は、入力軸82aに入力された操舵トルクTをトルクセンサ91aから取得し、かつ、走行速度Vを車速センサ91bから取得する。そして、ECU90は、ブラシレスモータ10の動作を制御する。ブラシレスモータ10が作り出した補助操舵トルクは、減速装置92に伝えられる。
出力軸82bを介して出力された操舵トルクT(補助操舵トルクを含む)は、ユニバーサルジョイント84を介してロアシャフト85に伝達され、さらにユニバーサルジョイント86を介してピニオンシャフト87に伝達される。ピニオンシャフト87に伝達された操舵力は、ステアリングギヤ88を介してタイロッド89に伝達され、操舵輪を転舵させる。次に、ブラシレスモータ10について説明する。
(電動機)
図3は、中心軸を含む仮想平面で本実施形態の電動機の構成を切って模式的に示す断面図である。図4は、本実施形態の電動機の構成を中心軸に直交する仮想平面で切って模式的に示す断面図である。図3に示すように、ブラシレスモータ10は、ハウジング11と、軸受12と、軸受13と、レゾルバ14と、モータロータ20と、ブラシレスモータ用ステータとしてのモータステータ30とを備える。
ハウジング11は、筒状ハウジング11aと、フロントブラケット11bとを含む。フロントブラケット11bは、略円板状に形成されて筒状ハウジング11aの一方の開口端部を閉塞するように筒状ハウジング11aに取り付けられる。筒状ハウジング11aは、フロントブラケット11bとは反対側の端部に、この端部を閉塞するように底部11cが形成される。底部11cは、例えば、筒状ハウジング11aと一体に形成される。筒状ハウジング11aを形成する磁性材料としては、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材や、電磁軟鉄等が適用できる。また、フロントブラケット11bは、ブラシレスモータ10を所望の機器に取り付ける際のフランジの役割を果たしている。
軸受12は、筒状ハウジング11aの内側であって、フロントブラケット11bの略中央部分に設けられる。軸受13は、筒状ハウジング11aの内側であって、底部11cの略中央部分に設けられる。軸受12は、筒状ハウジング11aの内側に配置されたモータロータ20の一部であるシャフト21の一端を回転可能に支持する。軸受13は、シャフト21の他端を回転可能に支持する。これにより、シャフト21は、回転中心Zrの軸を中心に回転する。
レゾルバ14は、シャフト21のフロントブラケット11b側に設けられる端子台15によって支持される。レゾルバ14は、モータロータ20(シャフト21)の回転位置を検出する。レゾルバ14は、レゾルバロータ14aと、レゾルバステータ14bとを備える。レゾルバロータ14aは、シャフト21の円周面に圧入等で取り付けられる。レゾルバステータ14bは、レゾルバロータ14aに所定間隔の空隙を介して対向して配置される。
モータステータ30は、筒状ハウジング11aの内部にモータロータ20を包囲するように筒状に設けられる。モータステータ30は、筒状ハウジング11aの内周面11dに例えば嵌合されて取り付けられる。モータステータ30の中心軸は、モータロータ20の回転中心Zrと一致する。モータステータ30は、筒状のステータコア31と、励磁コイル37とを含む。モータステータ30は、ステータコア31に励磁コイル37が巻きつけられる。
図4に示すように、ステータコア31は、複数のティース34を含む。本実施形態のティース34は、周方向に9ある。ステータコア31は、略同形状に形成された複数のコア片が回転中心Zrの軸と平行な方向に積層されて束ねられることで形成される。ティース34の内周側には、ティース先端32が周方向に突出しており、ティース34の内周表面32Fがロータヨーク22の外周とギャップGの間隔を介して対向する。ステータコア31は、電磁鋼板などの磁性材料で形成される。ステータコア31は、バックヨーク33と、ティース34とを有する。バックヨーク33は、円弧状の部分を含む。バックヨーク33は、環状形状である。ティース34は、バックヨーク33の内周面からモータロータ20に向かって延びる部分である。
複数のティース34は、回転中心Zrを中心とした周方向(図3に示す筒状ハウジング11aの内周面11dに沿う方向)に等間隔で並んで配置される。以下、回転中心Zrを中心とした周方向を単に周方向という。そして、ステータコア31が筒状ハウジング11a内に圧入されることで、モータステータ30は、環状の状態で筒状ハウジング11aの内部に設けられる。なお、ステータコア31と筒状ハウジング11aとは、圧入の他に接着、焼き嵌め又は溶接等によって固定されてもよい。
図4に示す励磁コイル37は、線状の電線である。励磁コイル37は、ティース34の外周にインシュレータ37a(図3参照)を介して集中巻きされる。この構成により、磁極数を低減でき、かつ分布巻きに比較してコイルエンドが短くなることからコイル量を低減できる。その結果、コストを低減でき、ブラシレスモータ10をコンパクトとすることができる。
励磁コイル37は、ティース34の複数の外周に分布巻きされていてもよい。この構成により、磁極数が増え、磁束の分布が安定することからトルクリップルを抑制することができる。
励磁コイル37は、バックヨーク33の外周にトロイダル巻きされていてもよい。この構成により、分布巻きと同等の磁束分布を発生すると共に、分布巻きに比較してコイルエンドが短くなることからコイル量を低減できる。その結果、トルクリップルを抑制すると共に、ブラシレスモータ10をコンパクトとすることができる。
インシュレータ37aは、励磁コイル37とステータコア31とを絶縁するための部材であり、耐熱部材で形成される。また、モータステータ30は、モータロータ20を包囲できる形状となる。つまり、ステータコア31は、後述するロータヨーク22の径方向外側に所定の間隔(ギャップ)Gを有して環状に配置される。
モータロータ20は、筒状ハウジング11aに対して回転中心Zrを中心に回転できるように、筒状ハウジング11aの内部に設けられる。モータロータ20は、シャフト21と、ロータヨーク22と、マグネット23とを含む。シャフト21は、筒状に形成される。ロータヨーク22は、筒状に形成される。なお、ロータヨーク22は、外周が円弧状である。この構成により、ロータヨーク22は、外周が複雑形状である場合に比較して、打ち抜き加工の加工工数を低減できる。
ロータヨーク22は、電磁鋼板、冷間圧延鋼板などの薄板が、接着、ボス、カシメなどの手段により積層されて製造される。ロータヨーク22は、順次金型の型内で積層され、金型から排出される。ロータヨーク22は、例えばその中空部分にシャフト21が圧入されてシャフト21に固定される。なお、シャフト21とロータヨーク22とは、一体で成型されてもよい。
マグネット23は、ロータヨーク22の外周方向に沿って埋め込まれ、複数設けられている。マグネット23は、永久磁石であり、S極及びN極がロータヨーク22の周方向に交互に等間隔で配置される。これにより、図4に示すモータロータ20の極数は、ロータヨーク22の外周側にN極と、S極とがロータヨーク22の周方向に交互に配置された6極である。
図5は、本実施形態のモータロータの構成を模式的に示す説明図である。図5に示すように、マグネット収容孔24は、ロータヨーク22に空けられた貫通孔である。マグネット収容孔24は、モータロータ20の外周に複数設けられて等間隔に配置されている。マグネット23は、ロータヨーク22のマグネット収容孔24に収容され、例えば、磁力により取り付けられる。本実施形態では、マグネット23は、ロータヨーク22の外周方向に沿って埋め込まれ、複数設けられている分割形状(セグメント構造)のセグメント磁石である。
図5に示すように、ロータヨーク22の外周側にN極が着磁されているマグネット23と、ロータヨーク22の外周側にS極が着磁されているマグネット23とは、ロータヨーク22の周方向に交互に等間隔で配置される。
フラックスバリア25は、マグネット23の周方向両側に設けられて、マグネット23のS極とN極との磁束短絡を防止するために、ロータヨーク22に設けられた貫通孔である。フラックスバリア25は、磁束の通過を抑制又は遮断できるものであればよく、空隙又は非磁性材料の絶縁材であればよい。
ロータヨーク22にフラックスバリア25を備えることで、ロータヨーク22の外周に磁気抵抗の差が生じる。例えば、モータロータ20は、マグネット23の長辺に接するロータヨーク22の外周寄り部分には、マグネット23の径方向外側に突出する凸極部27を備えている。そして、モータロータ20は、凸極部27の周方向両側を支持する支持部28と、フラックスバリア25の径方向外側で隣り合う凸極部27間を連結するブリッジ部26とを備えている。凸極部27の径方向の厚みは、支持部28の径方向の厚みよりも大きい。ブリッジ部26は、支持部28の端部28c間を接続する。ブリッジ部26の径方向の厚みは、支持部28の径方向の厚みと同じである。ブリッジ部26は、凸極部27間で、モータロータ20の内径側に接続部29で接続される。
このため、ロータヨーク22の外周には、凸極部27とブリッジ部26とが交互に配置されている。凸極部27は、形状としてロータヨーク22の径方向外側に突出する凸部であり、磁気抵抗が大きくインダクタンスが小さい磁気的凸部である。ブリッジ部26は、形状として凸極部の27よりもロータヨーク22の径方向に凹む凹部である。磁気的凸部である凸極部27がd軸と呼ばれ、これと磁気的に電気角で90°位相が異なる位置をq軸と呼び、凸極部の磁石より外周側の磁路形成により、磁気抵抗が小さくインダクタンスが大きい磁気的凹部である。また、マグネット23は、磁気的凹部であるブリッジ部26を備えるように、ロータヨーク22に埋め込まれ閉磁路を構成する。ステータコア31と、ロータヨーク22との所定の間隔であるギャップGは、ロータヨーク22の回転に伴い、ギャップG1と、ギャップG2とが交互に入れ替わり変化する。
マグネット23がロータヨーク22に埋め込まれ閉磁路を構成することにより、下記式(4)に示すように、モータロータ20の平均トルクTtは、マグネット23のマグネットトルクTmに加え、ロータヨーク22の外周に生じる磁気的凹凸によるリラクタンストルクTrが生じる。その結果、ロータヨーク22からステータコア31へ鎖交する磁束が低減してもモータロータ20に生じる平均トルクTtは向上する。
上述したように、モータロータ20の平均トルクTtは、マグネット23のマグネットトルクTmに加え、ロータヨーク22の外周に生じる磁気的凹凸によるリラクタンストルクTrが生じる。マグネットトルクTmと、リラクタンストルクTrとは、発生する位相が異なる。凸極部27が径方向外側に突出し始める突出基部27cと回転中心Zrとを結ぶ線分が、マグネット23を通過しない場合、ギャップGにおける磁束密度分布に影響を与え、トルクリップルを増大させてしまう。このため、本実施形態のブラシレスモータ10は、図5に示すように、凸極部27が径方向外側に突出し始める突出基部27cと回転中心Zrとを結ぶ線分が、マグネット23を通過するようにしている。この構造により、リップルの平均トルクに対する割合である、リップル率を効率よく低減することができる。
図6は、本実施形態のモータロータに埋め込む磁石の変形例を模式的に示す説明図である。マグネット23の周方向の端部が、製法上の歩留まり改善等のために、僅かにつけられた面取り等を除き、図6に示すように、凸極部27が径方向外側に突出し始める突出基部27cと回転中心Zrとを結ぶ線分が、マグネット23を通過していればよい。この構造により、リップルの平均トルクに対する割合である、リップル率を効率よく低減することができる。
図7及び図8は、本実施形態のモータロータの構成を模式的に示す説明図である。例えば、上述した特許文献1のように、回転中心と直交する平面において、回転中心からの距離が最大値となる最外径基準位置における凸極部の外周表面の曲率を、最外径基準位置が回転中心を中心として回転して描く円弧の曲率と同程度とした場合、トルクリップルを低減する可能性がある。しかしながら、特許文献1の技術では、本実施形態のブラシレスモータ10のように、凸極部27が径方向外側に突出し始める突出基部27cと回転中心Zrとを結ぶ線分が、マグネット23を通過する場合、回転中心Zrと直交する平面において、マグネット23は周方向の長さが大きくなり、磁石量の低減をすることができない。これに対し、図7に示すように、本実施形態のモータロータ20は、ロータヨーク22は、回転中心Zrと直交する平面において、回転中心Zrからの距離が最大値となる最外径基準位置27Tにおける凸極部27の外周表面27EFの曲率は、最外径基準位置27Tが回転中心Zrを中心として回転して描く円弧Arcの曲率よりも大きい。このため、凸極部27が径方向外側に突出し始める突出基部27cと回転中心Zrとを結ぶ線分が、マグネット23を通過する場合、本実施形態のモータロータ20は、マグネット23の磁石量の低減をすることができ、かつギャップGにおける磁束密度分布をコントロールし、トルクリップルを低減することができる。
回転中心Zrから最外径基準位置27Tまでの距離をR1、マグネット23のマグネット外周側表面27IFから最外径基準位置27Tまでの距離をT1としたとき、T1とR1との関係は、下記式(1)を満たす。(T1/R1)が下記式(1)を満たさない場合、リラクタンストルクTrとマグネットトルクTmとのバランスが崩れ、リップルが増加する可能性がある。そこで、下記式(1)を満たすブラシレスモータ10は、リラクタンストルクTrを発生させつつ、リラクタンストルクTrとマグネットトルクTmとのバランスを維持させ、リップルの平均トルクに対する割合である、リップル率を効率よく低減することができる。
0.09≦(T1/R1)≦0.18 ・・・(1)
図8に示すように、1つの凸極部27において、2箇所の突出基部27cと回転中心Zrとを結ぶ線同士のなす角をQ1とし、凸極部27に接するマグネット23のマグネット外周側表面27IFの周方向の端部23Ecと回転中心Zrとを結ぶ線同士のなす角をQ2としたとき、Q1とQ2との関係は、下記式(2)を満たす。(Q1/Q2)が下記式(2)を満たさない場合、リラクタンストルクTrとマグネットトルクTmとのバランスが崩れ、リップルが増加する可能性がある。そこで、下記式(2)を満たすブラシレスモータ10は、リラクタンストルクTrを発生させつつ、リラクタンストルクTrとマグネットトルクTmとのバランスを維持することから、リップルの平均トルクに対する割合である、リップル率を効率よく低減することができる。
0.76≦(Q1/Q2)≦1.28 ・・・(2)
図9は、本実施形態の凸極部の外周表面を模式的に示す説明図である。図9に示すように、本実施形態の凸極部27の外周表面27EFの曲率は、突出基部27c間で同じ曲率を有している円弧状である。この構造により、リップルの平均トルクに対する割合である、リップル率を効率よく低減することができる。図10は、本実施形態の凸極部の外周表面の変形例を模式的に示す説明図である。図10に示すように、本実施形態の凸極部27の外周表面27EFは、突出基部27c間で異なる複数の曲率を有する曲線が組み合わされるまたはサイクロイド曲線などの任意の曲線であってよい。そして、図9及び図10に示すように、本実施形態の凸極部27の外周表面27EFは、最外径基準位置27Tにおける凸極部27の外周表面27EFの曲率が、上述した円弧Arcの曲率よりも大きい。この構造により、凸極部27に生じるリラクタンストルクTrが大きくなる。
図11は、本実施形態のブリッジ部の変形例を模式的に示す説明図である。図11に示すように、ブリッジ部26は、接続部29を介して支持部28間を直線的に連結してもよい。
図12は、本実施形態のティースの変形例を模式的に示す説明図である。図12に示すように、ロータヨーク22の外周と対向するステータコア31のティース34の内周表面32Fには、ステータコア31の厚み方向、つまりモータロータ20の回転中心Zrの軸と平行な方向に延在する溝32FSを備えている。この構造により、リップルの平均トルクに対する割合である、リップル率を効率よく低減することができる。溝32FSは、ティース34の内周表面32Fに周方向に複数(本実施形態では2つ)設けられることで、溝32FSが1つの場合に比較してリップル率を効率よく低減することができる。
図13は、円筒形状のロータヨークの外周面に磁石を貼り付けた比較例のブラシレスモータのパーミアンス直線を説明する説明図である。図13には、マグネットのB−H減磁曲線が示されており、Qc1がB−H減磁曲線の屈曲点である。電動パワーステアリング装置80において、電動機であるブラシレスモータ10は、励磁コイル37に通電されず、モータロータ20が空回り状態の場合と、励磁コイル37に通電され、モータロータ20が励磁により回転する場合とがある。
また、ブラシレスモータ10は、ECU90のアシスト指令がない場合、電力が供給されていない状態となり、アシスト指令の待機状態となる。そして、ステアリングホイール81が直進状態に戻る方向の力(セルフアライニングトルク)が出力軸82bから操舵力アシスト機構83へ作用する。この作用により、ブラシレスモータ10は、モータロータ20が空回りとなり、励磁コイル37が通電しない状態でモータロータ20が回転する。
図13に示すように、パーミアンス直線PCs0は、励磁コイル37に通電されず、モータロータ20が空回り状態の動作点を示す。また、パーミアンス直線PCslは、励磁コイル37に通電され、モータロータ20が励磁により回転する場合を示す。なお、パーミアンス係数は、パーミアンス直線PCs0及びパーミアンス直線PCslの傾きで求めることができる。
比較例のブラシレスモータのパーミアンス直線は、磁石がロータの表面に貼り付けられているため、モータロータ20の回転により、パーミアンス直線PCs0が振れ角rsθで変化し、また、パーミアンス直線PCslが振れ角rslで変化してしまうおそれがあった。このため、比較例のブラシレスモータは、パーミアンス直線PCslが振れ角rslで変化した場合にB−H減磁曲線の屈曲点Qc1に対してマージンを持たせるために、マグネット自体の保磁力Hc1の値を大きくした磁石にする必要がある。
例えば、マグネットをNd−Fe−B系磁石で構成する場合、Ndを20質量%より大きくし、添加するDy又はTbの少なくとも1つ以上を2質量%よりも大きく添加して、飽和磁束密度及び保磁力を高める必要がある。特に、保磁力を高める添加希土類元素、例えばDy又はTbは価格が高いことが多く、比較例のブラシレスモータは、製造コストが増加してしまうおそれがある。
図14は、本実施形態のブラシレスモータのパーミアンス直線を説明する説明図である。図14には、本実施形態のマグネット23のB−H減磁曲線が示されており、Qc2がB−H減磁曲線の屈曲点である。図14に示すように、パーミアンス直線PCi0は、励磁コイル37に通電されず、モータロータ20が空回り状態の動作点を示している。また、パーミアンス直線PCilは、励磁コイル37に通電され、モータロータ20が励磁により回転する場合を示している。
本実施形態のブラシレスモータ10は、ロータヨーク22にマグネット23を埋め込み、ギャップGを小さくすることができる。このため、パーミアンス直線PCilのパーミアンス係数は、図13に示すパーミアンス直線PCslのパーミアンス係数よりも大きくなる。例えば、図14に示すパーミアンス直線PCilは、B−H減磁曲線の屈曲点Qc2に対してマージンを持たせるために必要なマグネット自体の保磁力Hc2の値が上述した保磁力Hc1よりも小さくすることができる。
また、ロータヨーク22にマグネット23を埋め込み、ロータヨーク22内に閉磁路ができているので、ロータヨークの閉磁路で磁束がループする。これにより、マグネット23が埋め込まれたロータヨーク22からステータコア31へ鎖交する磁束量が小さくなる。その結果、図13に示すモータロータ20の回転により、パーミアンス直線PCslが振れ角rslで変化してしまうおそれを抑制することができる。
例えば、マグネット23は、Nd−Fe−B系磁石で構成する場合、マグネット23は、Ndも20質量%以下とすることができる。または、マグネット23は、Nd−Fe−B系磁石を磁石全体の質量に対してNdを20質量%以下とし、Nd−Fe−B系磁石にNdよりも安価な希土類元素、例えばPr等を添加することで磁束密度を確保することができる。
マグネット23をNd−Fe−B系磁石で構成する場合、マグネット23は、添加するDy又はTbの少なくとも1つ以上を2質量%以下とすることができる。保磁力を高める添加希土類元素の使用を低減できるため、本実施形態のブラシレスモータ10は、製造コストの増加を抑制することができる。
図3に示すように、励磁コイル37は、1コイル当たりの巻数をN、相電流の最大電流をI(A)、並列回路数をnとし、マグネット23の残留磁束密度をBr(T)、着磁面積S(mm2)としたときに、下記式(3)を満たす。この構造により、マグネット23の使用量を低減しても、トルク不足になる可能性を抑制することができる。
1.8≦((N×I×n)/(Br×S)) ・・・(3)
(マグネットの製造方法)
図15は、本実施形態のマグネットの製造方法を説明するフローチャートである。まず、製造装置は、原料を溶解する(ステップS1)。原料は、例えば、Fe、B、Ndを含む希土類元素を所定の割合で含む。保磁力を増加させるために、原料は、Dy又はTbの1種以上の希土類元素を含めてもよい。
次に、製造装置は、ステップS1において溶解した原料を単ロール法、ガスアトマイズ法等の超急冷法により急冷する(ステップS2)。
次に、製造装置は、ステップS2において得られた原料を所定の金型に充填し、室温程度の温度雰囲気で加圧成形した冷間成形を行う(ステップS3)。
次に、製造装置は、ステップS3において得られた成形体を加熱しかつ加圧するホットプレスにより、熱間成形を行う(ステップS4)。熱間成形により、高密度成形体が得られる。
次に、製造装置は、ステップS4において得られた成形体を加熱、かつ機械的圧力により磁性材料の粒子を一方向に配向することで、異方性をつける熱間押出を行う(ステップS5)。熱間押出は、例えば、熱間圧延、熱間スタンプ加工を含む。
次に、製造装置は、ステップS5において機械的圧力により異方性のついた異方性成形体を平板状のセグメント磁石に切断し、形状加工する(ステップS6)。そして、ブラシレスモータ10の製造工程において、マグネット23は着磁される。以上説明したように、熱間押出成形は、機械的圧力により磁性材料の粒子を一方向に配向することで、異方性をつけている。このため、マグネット23は、微細な結晶粒を有し反磁界を抑制する。そして、マグネット23をNd−Fe−B系磁石で構成する場合、添加するDy又はTbの少なくとも1つ以上を2質量%以下としても保磁力を保持することができる。
上述したように本実施形態のブラシレスモータ10は、ロータヨーク22及びロータヨーク22の外周に、ロータヨーク22内で閉磁路ができるように埋め込まれ、かつ熱間押出成形により形成された複数の平板状のマグネット23を含むモータロータ20と、ロータヨーク22の径方向外側に所定の間隔を有して環状に配置されるステータコア31及びステータコア31を励磁し、モータロータ20にリラクタンストルクTr及びマグネットトルクTmを生じさせる励磁コイル37を含むモータステータ30と、を含む。
上記構成により、ロータヨーク22内の閉磁路により、マグネット23のパーミアンス係数が向上し、減磁耐力が向上する。このため、熱間押出成形により形成されたマグネット23をNd−Fe−B系磁石で構成する場合には、磁石全体の質量に対してNdを20質量%以下としても、磁束密度を確保することができる。または、熱間押出成形により形成されたマグネット23は、Nd−Fe−B系磁石を磁石全体の質量に対してNdを20質量%以下とし、Nd−Fe−B系磁石にNdよりも安価な希土類元素、例えばPr等を添加することで磁束密度を確保することができる。
また、マグネット23の保磁力を小さくしても、減磁するおそれを低減できることから、マグネット23は、マグネット23の保磁力を向上させる希土類を低減できる。例えば、熱間押出成形により形成されたマグネット23をNd−Fe−B系磁石で構成する場合、マグネット23は、添加するDy又はTbの少なくとも1つ以上を2質量%以下とすることができる。その結果、マグネット23は、保磁力が1400kA/m以下かつ飽和磁束密度1.2T以上の磁石を使用することができる。
電動パワーステアリング装置80は、上述したブラシレスモータ10により補助操舵トルクを得る。電動パワーステアリング装置80は、ブラシレスモータ10がロストルクを抑制しているので、操舵者が違和感を抑制した状態で、動作することができる。このため、電動パワーステアリング装置80は、コラムアシスト方式であっても、低振動とすることができる。なお、本実施形態の電動パワーステアリング装置80は、コラムアシスト方式を例にして説明しているが、ピニオンアシスト方式及びラックアシスト方式についても適用することができる。
(ダイレクトドライブモータ)
本実施形態の電動機は、モータロータ20と、モータロータ20が回転させる負荷体とを直結しているダイレクトドライブモータとしても使用できる。図16は、本実施形態に係る電動機をダイレクトドライブモータとして適用した場合の構成図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図16に示すように、電動機10Aは、ギヤ、ベルトまたはローラ等の伝達機構を介在させることなく負荷体52に回転力をダイレクトに伝達し、負荷体52を回転させることができる。電動機10Aは、いわゆるモータ回転軸60と負荷体52とをボルトなどの固定部材67で直結したダイレクトドライブモータである。
電動機10Aは、静止状態に維持されるモータステータ30と、モータステータ30に対して回転可能に配置されたモータロータ20と、モータステータ30を固定して支持部材51に取り付けられるベース部材70と、モータロータ20に固定されてモータロータ20とともに回転可能なモータ回転軸60と、ベース部材70とモータ回転軸60との間に介在されてモータ回転軸60をベース部材70に対して回転可能に支持する軸受64と、を含む。
ベース部材70、モータ回転軸60、モータロータ20及びモータステータ30はいずれも環状の構造体である。モータ回転軸60、モータロータ20及びモータステータ30は、回転中心Zrを中心に同心状に配置されている。また、電動機10Aは、回転中心Zrから外側へモータロータ20、モータステータ30の順に配置されている。このような電動機10Aは、インナーロータ型と呼ばれ、モータロータ20がモータステータ30よりも回転中心Zr寄りとなる。また、電動機10Aは、モータ回転軸60、モータロータ20及びモータステータ30がベース部材70の上に配置されている。
ベース部材70は、略円板状のハウジングベース71と、中空部61が貫通し、中空部61を囲むようにハウジングベース71から凸状に突出した軸心となるハウジングインナ72を備えている。ハウジングインナ72は、ハウジングベース71にボルト等の固定部材77を介して締結され固定されている。また、ベース部材70は、ボルト等の固定部材76を介してハウジングベース71に軸受64の内輪を固定するハウジングフランジ73とを含む。
ハウジングベース71の外周縁には、モータステータ30がボルト等の固定部材78によって締結されている。これにより、モータステータ30はハウジングベース71に対して位置決め固定されている。モータステータ30の中心軸は、モータロータ20の回転中心Zrと一致する。
モータステータ30は、筒状のステータコア31と、励磁コイル37とを含む。モータステータ30は、ステータコア31に励磁コイル37が巻きつけられる。モータステータ30には、電源からの電力を供給するための配線(図示しない)が接続されており、この配線を通じて励磁コイル37に対して電力が供給されるようになっている。
モータロータ20は、モータロータ20の外径がモータステータ30の内径寸法よりも小さな円筒状である。モータロータ20は、ロータヨーク22及びロータヨーク22の外周に貼り付けられたマグネット23を含む。
モータ回転軸60は、円環状の回転軸62と、ボルト等の固定部材66を介して回転軸62に軸受64の外輪を固定するロータフランジ63とを含む。モータロータ20は、円筒状のモータ回転軸60の回転軸62に一体的に固定されている。モータロータ20は、円筒状のモータ回転軸60の回転軸62に固定部材により固定されてもよい。回転軸62は、円環の中心軸が電動機10Aの回転中心Zrと同軸に形成されている。
また、軸受64は、外輪がロータフランジ63に固定され、内輪がハウジングフランジ73に固定されている。これにより、軸受64は、ハウジングベース71に対して、回転軸62及びモータロータ20を回転自在に支持することができる。このため、電動機10Aは、回転軸62及びモータロータ20をハウジングベース71及びモータステータ30に対して回転させることができる。
なお、軸受64は、転動体をクロスローラとしたクロスローラ軸受としてもよい。なお、軸受64は、クロスローラ軸受に限定されず、例えば転動体を玉やころ(円筒ころ、円錐ころ、球面ころなど)とした玉軸受やころ軸受としてもよい。これらの転動体は、環状を成す保持器のポケットに1つずつ所定間隔、例えば等間隔で配列し、このポケット内で回転自在に保持された状態で軌道面間に組み込んでもよい。これにより、各転動体は所定間隔を保った状態で、その転動面が相互に接触することなく、上記軌道面間を転動することができる。また、各転動体は、相互に接触して摩擦が生じることによる回転抵抗の増大や、焼付きなどを防止することができる。
また、電動機10Aは、回転検出器を備える。回転検出器は、例えばレゾルバであって、モータロータ20及びモータ回転軸60の回転位置を高精度に検出することができる。回転検出器は、静止状態に維持されるレゾルバステータ14bと、レゾルバステータ14bと所定のギャップを隔てて対向配置され、レゾルバステータ14bに対して回転可能なレゾルバロータ14aを備えており、軸受64の上方に配設されている。
レゾルバステータ14bは、複数のステータ磁極が円周方向に等間隔に形成された環状の積層鉄心を有し、各ステータ磁極にレゾルバコイルが巻回されている。本実施形態の電動機10Aでは、レゾルバステータ14bは、ハウジングインナ72に固定されている。
レゾルバロータ14aは、中空環状の積層鉄心により構成されており、モータ回転軸60の内側に固定されている。回転検出器の配設位置は、モータロータ20(モータ回転軸60)の回転を検出することが可能であれば特に限定されず、モータ回転軸60及びベース部材70の形状に応じて任意の位置へ配設することができる。
モータロータ20が回転すると、モータロータ20とともにモータ回転軸60が回転し、連動してレゾルバロータ14aも回転する。これにより、レゾルバロータ14aと、レゾルバステータ14bとの間のリラクタンスが連続的に変化する。レゾルバステータ14bは、リラクタンスの変化を検出し、レゾルバ制御回路によって電気信号(デジタル信号)に変換する。電動機10Aを制御する制御装置は、レゾルバ制御回路の電気信号に基づいて、単位時間当たりのレゾルバロータ14aと連動するモータ回転軸60及びモータロータ20の位置や回転角度を演算処理することができる。その結果、電動機10Aを制御する制御装置は、モータ回転軸60の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を計測することが可能となる。
このように、電動機10Aは、モータロータ20の1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分の周期が異なる複数の回転検出器を備えることにより、モータ回転軸60の絶対位置を把握することができ、また、モータ回転軸60の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を計測する精度を高めることができる。
電動機10Aは、ハウジングベース71が支持部材51に取り付けられることで、支持部材51に対して位置決め固定される。ハウジングベース71は、支持部材51に取り付けられた状態において、支持部材51の取付面と接する一連の連続面を少なくとも1つ有している。この連続面は、電動機10Aの自重や回転時の振動などを支持部材51に分散して作用させることができる。このため、ハウジングベース71に歪み(撓み)が生ずるおそれを防止することができる。
以上説明したように、電動機10Aは、伝達機構を介在させることなく負荷体52に回転力をダイレクトに伝達できる。このため、負荷体52を回転させる場合、電動機10Aは、モータトルクを高めるとともに、トルクリップルを低減することができる。
(評価例)
上述した本実施形態の電動機であるブラシレスモータ10を製造した。ブラシレスモータ10は、ステータコアのティースの数が9であり、マグネットの周方向の数が6である。図7に示すように、回転中心Zrから最外径基準位置27Tまでの距離をR1、マグネット23のマグネット外周側表面27IFから最外径基準位置27Tまでの距離をT1としたとき、パラメータAを下記式(5)と定義した。
R1を固定し、T1の値を変更することで、パラメータAを0.086以上0.31以下の間へ変化させて、パラメータAが平均トルク(Nm)及びトルクリップル(Nm)に与える影響を調査した。図17は、マグネットの外周側表面から最外径基準位置までの距離がリップル率に及ぼす影響を説明する説明図である。図17には、パラメータAに応じた平均トルク(Nm)及びトルクリップル(Nm)を示し、かつリップル率(%)を示した。リップル率(%)は、(トルクリップル(Nm)/平均トルク(Nm))×100を演算して図17にプロットした。
図17に示すように、パラメータAが0.09以上になると、パラメータAが増加するにつれて、平均トルクgatが低減する。またパラメータAが0.09以上になると、パラメータAが増加するにつれて、トルクリップルgriが平均トルクgatの低減割合よりも大きく抑制される。また、パラメータAが0.13以上になると、パラメータAが増加するにつれて、トルクリップルgriが増加する。このため、パラメータAが0.18を超えると、パラメータAが増加するにつれて、パラメータAが0.09の場合に比較して、リップル率grtが増加してしまう。以上より、本実施形態の電動機は、0.09≦A≦0.18を満たす場合、リップル率を効率よく低減することができる。
図8に示すように、1つの凸極部27において、突出基部27cと回転中心Zrとを結ぶ線同士のなす角をQ1とし、凸極部27に接するマグネット23のマグネット外周側表面27IFの周方向の端部23Ecと回転中心Zrとを結ぶ線同士のなす角をQ2としたとき、パラメータBを下記式(6)と定義した。
Q2を固定し、Q1の値を変更することで、パラメータBを0.73以上1.28以下の間へ変化させて、パラメータBが平均トルク(Nm)及びトルクリップル(Nm)に与える影響を調査した。図18は、突出基部と回転中心とを結ぶ線同士のなす角がリップル率に及ぼす影響を説明する説明図である。図18には、パラメータBに応じた平均トルク(Nm)及びトルクリップル(Nm)を示し、かつリップル率(%)を示した。リップル率(%)は、(トルクリップル(Nm)/平均トルク(Nm))×100を演算して図18にプロットした。
図18に示すように、パラメータBが0.76以上になると、パラメータBが増加するにつれて、平均トルクgatが増加する。パラメータBが1.07以上になると、パラメータBが増加するにつれて、平均トルクgatが減少に転ずる。このため、0.76≦B≦1.28を満たす場合、平均トルクのピーク値が現れ、所望の平均トルク(例えば3Nm)が得られる。
図19は、ティースの内周表面の溝がリップル率に及ぼす影響を説明する説明図である。図12に示す溝32FSを備えている電動機の場合、図19に示すように、トルク(Nm)の機械角が1周期の変動曲線をTSLとする。図12に示す溝32FSを備えていない電動機の場合、図19に示すように、トルク(Nm)の機械角が1周期の変動曲線をTSNとする。図19に示すように、変動曲線TSLは、変動曲線TSNよりもトルクの変動、つまりトルクリップルが小さい。
図20は、Dyの含有量が2質量%以下であるマグネットの磁気特性を説明する説明図である。マグネットをNd−Fe−B系磁石で構成する場合、比較例Mg1は、常温(20℃)の焼結磁石であって、Dyの含有量が4質量%含む。例えば、比較例Mg1の組成は、Nd−Dy−Fe−Bである。評価例Mg2は、上述した図15に示すマグネットの製造方法で製造した、常温(20℃)のNd−Fe−B系磁石である。評価例Mg2は、熱間押出成形により形成され、Dyの含有量が0質量%である。例えば、評価例Mg2の組成は、Nd−Pr−Fe−Bである。比較例Mg1hは、比較例Mg1の120℃の磁気特性を示している。また、評価例Mg2hは、評価例Mg2の120℃の磁気特性を示している。
図20に示すように、評価例Mg2は、比較例Mg1よりも磁束密度がほぼ同等であり、B−H特性も同等である。また、評価例Mg2hは、比較例Mg1hと比較して、温度が120℃まで上昇しても減磁が同程度であることがわかる。
また、本実施形態の電動機は、ロータヨーク22内の閉磁路により、マグネットのパーミアンス係数が向上し、かつ安定するため減磁耐力が向上する。このため、結晶粒を微細化した磁紛を用いて熱間押出成形により形成されたマグネットをNd−Fe−B系磁石で構成する場合には、磁石全体の質量に対してNdを20質量%以下としても、磁束密度1.2T以上を確保することができる。また、マグネットの保磁力を小さくしても、減磁するおそれを低減できることから、マグネットの保磁力を向上させる希土類を低減できる。例えば、結晶粒を微細化した磁紛を用いて熱間押出成形により形成されたマグネットをNd−Fe−B系磁石で構成する場合、添加するDy又はTbの少なくとも1つ以上を2質量%以下とすることができる。その結果、保磁力が1400kA/m以下かつ飽和磁束密度1.2T以上の磁石を使用することができる。
マグネット23は、熱間押出成形により形成された、平板状のセグメント磁石であることが好ましい。熱間押出成形により形成され、結晶粒を微細化した磁紛を用いることで、マグネット23を平板状のセグメント磁石としても、マグネット23の保磁力を高めることができる。また、上述したように、マグネット23は、ロータヨーク22内で閉磁路ができるように埋め込まれることにより、マグネットトルクTmの減少分を、リラクタンストルクTrで補いモータロータ20に生じる平均トルクTtを維持することができる。
マグネット23をNd−Fe−B系磁石で構成する場合には、磁石全体の質量に対してNdを20質量%以下としても、モータロータ20の閉磁路で必要な磁束密度を確保することができる。また、マグネット23の保磁力を小さくしても、減磁するおそれを低減できることから、マグネット23の保磁力を向上させる希土類を低減できる。例えば、マグネット23をNd−Fe−B系磁石で構成する場合、添加するDy又はTbの少なくとも1つ以上を2質量%以下とすることができる。その結果、マグネット23には、保磁力が1400kA/m以下かつ飽和磁束密度1.2T以上の磁石を使用することができる。
次に、図3に示すように、励磁コイル37は、1コイル当たりの巻数をN、相電流の最大電流をI(A)、並列回路数をnとし、マグネット23の残留磁束密度をBr(T)、着磁面積S(mm2)としたときに、パラメータDを下記式(7)で定義した。
ここで、要素ATは、励磁コイル37が生じさせる磁界の強さを示す要素であり、要素WBは、マグネット23が生じさせる磁界の強さを示す要素である。要素ATと、要素WBとの比であるパラメータDを1.8以上3.1以下の間で変化させて、平均トルク(Nm)に与える影響を調査した。パラメータDを1.8以上とすれば、モータヨーク22の幾何寸法の制約を受けない。またパラメータDを3.1以下とすれば、マグネット23の減磁限界以下とすることができる。この結果、マグネット23の使用量を低減しても、Dが1.8以上の場合にはトルク不足になる可能性を抑制することができることが分かった。