JP2014053221A - 誘導加熱調理器 - Google Patents

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Abstract

【課題】調理中の機体内温度が変化しても、安定して精度良く鍋温度を検出することを可能にし、安全性、使い勝手の向上した誘導加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱コイルの下に設けられ、被加熱物から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、赤外線検出手段の出力に基づいて被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、トッププレートに赤外線を投光する赤外線発光手段および赤外線発光手段が投光し被加熱物で反射した赤外線を受光する赤外線受光手段からなる反射センサと、を具備する誘導加熱調理器であって、反射センサは、周囲温度に応じて抵抗が変化する周囲温度検出手段の出力に基づいて、赤外線受光手段に印加する電圧を変化させる温度補償回路を備えており、温度検出手段は、赤外線検出手段の出力を反射センサの出力に基づいて補正して被加熱物の温度を検出するものとした。
【選択図】図12

Description

本発明は、鍋温度検出手段として赤外線センサを備えた誘導加熱調理器に関する。
誘導加熱調理器は、結晶化ガラス等で構成されるトッププレート下に同心円状の誘導加熱コイル(以下「加熱コイル」と略称)を設置し、これに高周波電流を流し、発生する磁界でトッププレート上に戴置された調理容器である鍋底にうず電流を誘起し、このジュール熱で調理容器である鍋を直接加熱するものである。
誘導加熱調理器の鍋温度検出手段として、鍋底から放射される赤外線をトッププレート越しに赤外線センサで観測し温度を検出するものが多く使われている。この赤外線センサは加熱コイル中心空隙付近の下に配置されて、鍋底から放射される赤外線をトッププレート越しに赤外線センサで検出し、その出力に応じて加熱コイルを駆動するインバータ回路出力を制御して調理温度を調整するものである。
赤外線センサで温度検出する場合の課題は、被測定物(調理鍋)の赤外線放射率の影響を受けることである。鍋底の赤外線放射率は、鍋底の材質、色、加工状態(鍋底の塗装や刻印、ヘアライン加工、リング加工、打ち込み加工、凹凸等)に大きく依存する。また、同じ鍋であっても鍋底に付着した調理油等の汚れによって赤外線放射率が異なってくる。すなわち、同じ温度、同じ材質の鍋底であっても、色、加工あるいは汚れ状態や凹凸が異なると放射する赤外線エネルギが異なるため赤外線センサで受光する赤外線エネルギも異なり、異なる温度が検出されることになる。このため、鍋底の相違により赤外線センサによる温度検出が異なるのを補正する手段が必要になる。
この課題を解決する手段として特許文献1、2、3、4に挙げるものがある。例えば、特許文献1の技術は、トッププレート上に置かれる被加熱物(鍋)に対して投光する光源と被加熱物からの反射光を受光する受光センサを備え、受光センサの出力から換算された被加熱物の放射率で赤外線センサの出力を補正して温度検出するものである。これにより被加熱物(鍋)の放射率に影響されない正確な鍋温度検出技術になっている。
また、特許文献2は、特許文献1に加え、相対する発光手段と受光手段を、鍋を載置するトッププレートと角度aを持たせて配置している。特許文献3は、前述に加え受光手段の周囲に配置した発光手段を複数備えたものである。複数の発光手段が順次発光する光線の鍋での反射光を、発光に同期して受光手段で受け、この出力で鍋底面の複数個所の反射率を得て放射率に換算するもので、この放射率で赤外線センサの出力を補正して温度検出手段が提示されている。また特許文献4は、トッププレートの端面から近赤外線を入射する発光手段と、前記発光手段と対面する端面に設けられ鍋の底面からの反射光の強度を検知する反射センサを備え、反射センサの出力から鍋底面の放射率を得て、この放射率で赤外線センサの出力を補正して温度検出する手段を提示している。
特開平11−225881号公報 特開2004−241220号公報 特開2006−221950号公報 特開2006−260940号公報
特許文献1では具体的な発光手段として単一の赤外線LEDまたはレーザなどの光源、受光手段として単一の赤外線フォトトランジスタ、そしてこれら手段の使用波長、光学的なバンドパスフィルタによる分光手段が提示されている。しかし、後述するように単一の赤外線LEDと単一の赤外線フォトトランジスタを使用する場合には鍋の反射率つまり放射率を正確に検出することは困難である。また、赤外線LEDあるいは赤外線フォトトランジスタの温度特性および反射率検出の温度特性についての言及はない。このため、周囲環境温度が変化したとき反射率検出値が変化し、赤外線センサの出力補正も変化する。このためこの反射率(放射率=1−反射率)で温度検出赤外線センサ出力を補正して鍋温度を検出しても正確なものとはならないと言う課題がある。
特許文献2〜4についても赤外線LEDあるいは赤外線フォトトランジスタの温度特性および反射率検出の温度特性についての言及はないため、周囲環境温度が変化したときの鍋温度の検出精度が低下すると言う課題がある。
本発明は赤外線センサとしてサーモパイルを用いた鍋温度検出手段において、トッププレート上に置かれる鍋底の状態つまり凹凸、反りや汚れ更に材質、色、加工状態に拘らず、また調理中の機体内温度が変化しても、安定して精度良く鍋温度を検出することを可能にし、安全性、使い勝手の向上した誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1の誘導加熱調理器は、被加熱物を載置するトッププレートと、該トッププレートの下に設けられ前記被加熱物を加熱する加熱コイルと、該加熱コイルへ高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、該高周波電力供給手段の出力電力を制御する電力制御手段と、前記加熱コイルの下に設けられ、前記被加熱物から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、該赤外線検出手段の出力に基づいて前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、前記トッププレートに赤外線を投光する赤外線発光手段および該赤外線発光手段が投光し前記被加熱物で反射した赤外線を受光する赤外線受光手段からなる反射センサと、を具備する誘導加熱調理器であって、前記反射センサは、周囲温度に応じて抵抗が変化する周囲温度検出手段の出力に基づいて、前記赤外線受光手段に印加する電圧を変化させる温度補償回路を備えており、前記温度検出手段は、前記赤外線検出手段の出力を前記反射センサの出力に基づいて補正して前記被加熱物の温度を検出するものとした。
また、請求項3の誘導加熱調理器は、被加熱物を載置するトッププレートと、該トッププレートの下に設けられ前記被加熱物を加熱する加熱コイルと、該加熱コイルへ高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、該高周波電力供給手段の出力電力を制御する電力制御手段と、前記加熱コイルの下に設けられ、前記被加熱物から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、該赤外線検出手段の出力に基づいて前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、前記トッププレートに赤外線を投光する赤外線発光手段および該赤外線発光手段が投光し前記被加熱物で反射した赤外線を受光する赤外線受光手段からなる反射センサと、を具備する誘導加熱調理器であって、前記反射センサは、周囲温度に応じて抵抗が変化する周囲温度検出手段の出力に基づいて、前記赤外線発光手段に印加する電圧を変化させる温度補償回路を備えており、
前記温度検出手段は、前記赤外線検出手段の出力を前記反射センサの出力に基づいて補正して前記被加熱物の温度を検出するものとした。
さらに、請求項5の誘導加熱調理器は、被加熱物を載置するトッププレートと、該トッププレートの下に設けられ前記被加熱物を加熱する加熱コイルと、該加熱コイルへ高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、該高周波電力供給手段の出力電力を制御する電力制御手段と、前記加熱コイルの下に設けられ、前記被加熱物から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、該赤外線検出手段の出力に基づいて前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、前記トッププレートに赤外線を投光する赤外線発光手段および該赤外線発光手段が投光し前記被加熱物で反射した赤外線を受光する赤外線受光手段からなる反射センサと、前記赤外線発光手段を駆動するトランジスタと、前記トランジスタを駆動するDutyを制御するDuty可変回路と、を具備する誘導加熱調理器であって、前記Duty可変回路は、周囲温度に応じて抵抗が変化する周囲温度検出手段の出力に基づいて、前記トランジスタに印加する電圧のDutyを変化させ、前記温度検出手段は、前記赤外線検出手段の出力を前記反射センサの出力に基づいて補正して前記被加熱物の温度を検出するものとした。
本発明によれば、赤外線投光手段で鍋底に赤外光を投光し、その反射光を赤外線反射受光手段で受光する反射センサで鍋底の反射率(=1−放射率)を検出できる。そして、この反射率は調理中に誘導加熱コイルあるいは高周波電力供給手段等で機体内の温度が変化しても、調理容器が変わらなければ、前記反射センサの出力が一定となるように温度補償手段で温度補償される。このため検出した反射率(=1−放射率)は機体内温度変化の影響を受けにくい。
また、反射センサと赤外線検出手段とは横に並べて配置されるため、鍋の放射する赤外線検出範囲(赤外線検出手段の視野)と反射センサで検出する鍋の反射率検出範囲(投光面と反射受光手段の視野)を重複することができる。結果、機体内温度変化の影響を受けず、ほぼ鍋底の同一面で、検出した反射率すなわち放射率に比例する赤外線検出出力を得る事ができ、反射率補正すれば正確な放射温度を検出できる。
この温度補償された反射率で赤外線検出手段の出力を補正することで、機体内の温度が変化しても、鍋底の材質、色、加工状態あるいは汚れの状態に拘らず正確に鍋底温度を検出することが可能になり、正確に検出した鍋底温度を用いて加熱の制御を行うことができるので、上手に調理をすることが可能となる。つまりどんな鍋でも機体内がどんな温度状態でも安定して加熱鍋底の温度を正確に検出する鍋温度検出手段を提供することができる。そして、正確に検出した鍋温度により適切に加熱コイルへの高周波電力を制御することで安全かつ最適な調理を可能にする誘導加熱調理器を提供できる。
実施例1の誘導加熱調理器の構成を示す斜視図 実施例1の誘導加熱調理器の構成を示す断面図 実施例1の加熱コイル周辺の詳細を示す断面図 実施例1の加熱コイルおよび鍋温度検出装置の配置を示す平面図 実施例1の加熱コイルの裏面を示す平面図 実施例1の鍋温度検出装置の平面および断面図 実施例1の反射型フォトインタラプタを示す図 実施例1の分光放射エネルギと光学フィルタの光学特性を示す図 実施例1のサーモパイルの詳細を示す平面および断面図 実施例1の誘導加熱調理器の制御ブロック図 実施例1の各種鍋の鍋底温度と鍋温度検出回路出力の関係を示す図 実施例1の反射率検出回路の詳細を示す図 実施例1の赤外線フォトトランジスタの周囲温度に対する相対出力を示す図 実施例1の反射率検出回路73の周囲温度変化に対する相対出力を示す図 実施例2の反射率検出回路の詳細を示す図 実施例3の反射率検出回路の詳細を示す図 実施例3の赤外線LEDの周囲温度変化に対する相対出力を示す図 実施例4の反射率検出回路の詳細を示す図
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
以下、実施例1について図1から図9に従って説明する。
図1は実施例1の誘導加熱調理器の本体1の斜視図であり、図2は図1中に一点鎖線A−A´で示される部分に調理鍋6を載せたときの概略縦断面図である。以下では、誘導加熱が可能な鍋置き場所が2口、ラジエントヒータやハロゲンヒータ等のヒーター(加熱源)の放射熱で加熱可能な鍋置き場所が1口ある3口の誘導加熱調理器を例に挙げ説明を行うが、本実施例の適用対象はこれに限られず、例えば、誘導加熱が可能な鍋置き場所を3口設けた誘導加熱調理器であっても良い。なお、調理鍋6は、誘導加熱に適した磁性体の鉄鍋であっても良いし、非磁性体のアルミ鍋、銅鍋であっても良い。
図1および図2に示すように、本体1の上面には、結晶化ガラス等の非磁性体によって形成されたトッププレート2が装着されている。また、トッププレート2の手前には、各口の加熱開始あるいは加熱コースを指示するスイッチ、各口の加熱状態(温度等)を表示する表示器が配置される操作表示部3が装着されている。
トッププレート2の上面には、その下に配置される加熱コイル7(7L、7R)あるいはラジエントヒータの最外半径におよそ一致する半径の円4(4L、4R)が加熱可能な鍋置き場所を示すために印刷されている。また、トッププレート2は普通可視光に対して透明であるため、上面にはフリットガラスに耐熱塗料を混入した耐熱耐久性の衣装印刷、下面には耐熱面塗装を施し、機器内部が見えないようにしてある。誘導加熱が可能な鍋置き場所2口の円4の内部には鍋温度検出のために前記印刷、塗装を行っていない赤外線透過窓5(5L、5R)が設けられている。この赤外線透過窓5は赤外光を透過させるためであり、この部分だけ赤外光に対しては透明な可視光カット部材(耐熱フィルムまたはガラス)を下面に装着しても良い。
トッププレート2の上面の各口(円4)に、調理鍋6を置き加熱調理を行う。図2に示すように、加熱コイル7にインバータ回路8(8L、8R)からの高周波電流を供給すると、外周側コイル7aと内周側コイル7bにコイル間隙7cを挟んで分割された加熱コイル7が高周波磁界9(図中破線で示す)を発生し、この高周波磁界9が鍋6と鎖交して、渦電流を発生し、そのジュール熱により調理鍋6自身が誘導加熱され発熱する。従って、調理鍋6内の調理物は、調理鍋6自身の発熱によって加熱調理される。このとき、調理鍋6の下にあるトッププレート2も、発熱した調理鍋6からの伝熱あるいは放射熱により高温になる。
図3に加熱コイル7周辺の断面を詳しく示す。図3に示すようにトッププレート2下面には外周側コイル7aと内周側コイル7bの間にコイル間隙7cを備えて分割された加熱コイル7が耐熱プラスチックで構成されるコイルベース10内に同心円状(渦巻き状)に巻かれて配置される。加熱コイル7の下側にはコイルベース部材内部にコ字状のフェライト11が両端の凸部を上にして放射状に配置されている。このフェライト11は加熱コイル7が発生する磁束をトッププレート2上の調理容器である調理鍋6に効率良く導くために配置される。また、磁束がコイルベース10下部に漏洩するのを防止する。フェライト11は透磁率が高く磁束はほとんどフェライト11内を通過するからである。
コイルベース10の下には加熱コイル7を冷却するためのコイル冷却風路15が設置される。コイル冷却風路15は二つに分けられ、一つ目は外周側コイル7aの内周側に接続され、内周側コイル7bおよび外周側コイル7a上面を冷却するコイル上面冷却風路15a、二つ目は外周側コイル7aの下面を冷却するコイル下面冷却風路15bである。コイルベース10の中心部分下に位置するコイル上面冷却風路15aの上面には円形上のコイル上面冷却風送出孔15cが開口している。
コイルベース10の中心部は円筒状の内空洞14aになっており、外周側コイル7aの内周側にはフェライト11を内蔵する放射上梁に繋がる円筒状の外空洞壁14bになっている。この外空洞壁14bの下部に、コイル上面冷却風路15aのコイル上面冷却風送出孔15cが接続される。コイル上面冷却風送出孔15cの周囲にはグラスウール等のシール材16が設けられ先の外空洞壁14bに接続されている。
冷却風路15の下にはインバータ回路8等の回路基板を内蔵する回路冷却風路17a、17bが2段重ねて設けられ、夫々には左右の加熱コイル7L、7Rのインバータ回路8L、8R等が内蔵されている。これらの冷却風路は本体1に固定される。
コイルベース10はコイル下面冷却風路15bまたは回路冷却風路17aに固定される3個のコイルベース受け12からバネ13で押され、トッププレート2の下面に押し付けられる。
コイル冷却風送出孔15c下のコイル上面冷却風路15a中には鍋温度検出装置18が配置される。鍋温度検出装置18は誘導加熱された調理鍋6の底面温度をトッププレート2の赤外線透過窓5を透過する赤外線から検出する。また、後述する反射センサ(赤外線投光手段および赤外線反射受光手段)も内蔵され、調理鍋6底面の反射率を検出する。また、鍋温度検出装置18の上方には後述するセンサ視野筒19が設けられており、トッププレート2の下面には後述するサーミスタ20が設けられている。
加熱調理中にはコイル上面冷却風路15a、コイル下面冷却風路15b、回路冷却風路17a、17bには本体1に内蔵されるファン(図示せず)から外気が導入される。コイル上面冷却風路15a内を流れる冷却風は鍋温度検出装置18を冷却しながらコイル上面冷却風送出孔15cから円筒状の外空洞壁14b内のコイル間隙7cおよび内空洞14aを上昇し、コイル間隙7cおよび内空洞14a上部から、トッププレート2に遮られトッププレート2と加熱コイル7の間をコイル径方向外側に流れ、加熱コイル7の上面およびトッププレート2下面を冷却する。コイル下面冷却風路15bの外周側コイル7aの下面にあたる部分には小さな孔が複数開けられ、コイル下面冷却風路15b内を流れる冷却風は、ここから外周側コイル7a下面に向かって噴流してこれを冷却する。
図4にトッププレート2を除いた図3の上面図の詳細を示す。加熱コイル7、コイルベース10、コイル上面冷却風路15aの詳細構成図である。加熱コイル7および内空洞14aと鍋温度検出装置18の水平面での位置関係を示す。
加熱コイル7は、テフロン(登録商標)等で絶縁被膜されるリッツ線で同心円状に同一方向に巻回され、外周側コイル7aと内周側コイル7bに分割される。その間隙7cは幅およそ15mmの同心帯状をなし、外周側コイル7aの巻き終わりは間隙7cを架橋し内周側コイル7bの巻き始めとなり、外周側コイル7aと架橋線7dと内周側コイル7bで加熱コイル7を構成する。コイルベース10には外周側コイル7aの内周側に円筒状の外空洞壁14bが設けられ、その内側がコイル間隙部7cとなっている。また、内周側コイル7bの内周側に内空洞14aが設けられる。さらに、コイル間隙部7cの一部、放射状に配置される二つのフェライト11間に筒状のセンサ視野筒19が設けられ、このセンサ視野筒19の下に鍋温度検出装置18が設置される。また、センサ視野筒19の上部横にはトッププレート2の赤外線透過窓5の横下面に接触するようにサーミスタ20が設置される。
図5は図4を裏から見た図を示す。コイルベース10には2個のコイル端子21a、21bが設けられ、低電圧端子21aには外周側コイル7aの巻き始めが接続され、高電圧端子21bには第2のコイルの巻き終わりが接続される。この端子にはインバータ回路8の出力線22a、22bがねじで固定される。銅やアルミニウム等の非磁性体の鍋では4〜5kVの高電圧が出力される高電圧出力線22bは高電圧端子21bに接続される。
図4、図5で説明したように鍋温度検出装置18は、架橋線7dの近傍をさけ、かつ高電圧出力線22bが接続される高電圧端子21bから離れた位置にあるコイル間隙部7cに設けられたセンサ視野筒19の下にそのケース窓30が位置するように設置される。
加熱コイル7を二つの部分に分割し、その間隙7cにセンサ視野筒19を設け、その下に鍋温度検出装置18を設ける理由は、加熱コイル7の径方向幅中間部の磁束が一番強く、この上の鍋底が一番高温に加熱され、その部分の温度を正確に検出するのが異常過熱の防止に役立つためである。
図6に鍋温度検出装置18の詳細を示す。誘導加熱された鍋底面からの赤外線はトッププレート2の赤外線透過窓5を透過し、センサ視野筒19から鍋温度検出装置18に内蔵されるサーモパイル25に入射する。また、反射型フォトインタラプタ27に内蔵される赤外線LED35が投光する赤外線は、視野筒19、赤外線透過窓5を通過して鍋6の底で反射され、赤外線フォトトランジスタ36で受光される。
図6(a)は、鍋温度検出装置18の平面図を示す。鍋温度検出装置18は、ヒートシンク26を被せた赤外線検出センサ(サーモパイル25)、赤外線投光手段の赤外線LED35、と赤外線反射受光手段の赤外線フォトトランジスタ36を組合せた反射型フォトインタラプタ27を中心に構成される。
サーモパイル25と反射型フォトインタラプタ27はサーモパイル25の出力信号を増幅するサーモパイル温度検出回路72と反射率検出回路73(後で詳細を説明する)が実装される電子回路基板28に配置され、このサーモパイル25と反射型フォトインタラプタ27および電子回路基板28は、全体をプラスチック部材の赤外線センサケース29(一点鎖線で示す)内に密封される。この赤外線センサケース29には赤外線を透過させるためにケース窓30が開けられ、このケース窓30にはトッププレート2を構成する結晶化ガラスとほぼ同じ光学特性を持つ結晶化ガラスを薄く正方形に切り出したものを結晶化ガラス光学フィルタ31として嵌め込んである。
そして、結晶化ガラス光学フィルタ31の下にヒートシンク26を被せたサーモパイル25と反射型フォトインタラプタ27が電子回路基板28上に実装されている。この赤外線センサケース29は、周りをアルミニウム等の透磁率がほぼ1の金属ケース32(2点鎖線で示す)で覆っている。当然、先のケース窓30の所は開口されている。そして、更にアルミニウム金属ケース32は、周りをプラスチック部材の外側赤外線センサケース33で覆っている。当然先のケース窓30の所は開口されている。つまり、サーモパイル25は3重のケースで覆われた形になっている。
そして、鍋温度検出装置18はそのケース窓30がコイルベース10のセンサ視野筒19内を望むようにコイル上面冷却風路15a内に設置される。
図6(a)中のA−A´線に沿った断面図を図6(b)に示す。これは、赤外線センサケース29内に設置される電子回路基板28に装着されるサーモパイル25および反射型フォトインタラプタ27と赤外線センサケース29のケース窓30、結晶化ガラス光学フィルタ31との位置関係を示す断面図である。
図7に反射型フォトインタラプタ27の詳細を示す。反射型フォトインタラプタ27は赤外線発光素子としての赤外線LED35と赤外線受光素子としての赤外線フォトトランジスタ36を同一プラスチック部材に並べてモールドしたものである。赤外線LED35の発光面上にはプラスチックでレンズが構成され赤外光を上方に照射する。赤外線フォトトランジスタ36の受光面上には可視光阻止のプラスチックでレンズが構成され、先の照射赤外光の物体(鍋底面)での反射赤外光を受光し、その受光量に比例した電流を出力する。この反射型フォトインタラプタ27は赤外線発光素子と受光素子の対で構成されるものでトッププレート2上に置かれた調理鍋6底面の反射率を計測するものである。
反射フォトインタラプタ27前面の発光、受光部を結晶化ガラス光学フィルタ31の下面直下に配置している。これは赤外線発光が直上の結晶化ガラス光学フィルタ31で反射され、受光されるのを防止するためである。
図8にトッププレート2および結晶化ガラス光学フィルタ31の光学特性(各波長での透過率)を示す。図中は赤外線波長と赤外線透過率、赤外線波長と黒体温度の放射エネルギの関係を示す。黒体温度の分光放射エネルギは、プランクの分布則から算出される。
波長が約0.6〜2.6μmの帯域で透過率80%を超えると共に約2.7〜4μmで透過率30%以上であり、他の波長域では透過率30%に満たない。100℃の黒体の熱放射エネルギは、約2μmで最小値、約7μmで最大値を取り、300℃の黒体の熱放射エネルギは、約1.2μmで最小値、約5μmで最大値を取り、100〜300℃の黒体が放射する赤外線は、結晶化ガラスの透過率80%を超える帯域に収まるもので、100〜300℃の鍋が放射する波長の赤外線を結晶化ガラス製のトッププレート2や結晶化ガラス光学フィルタ31を透過し、サーモパイル25で受光する。一方で、鍋が放射する赤外線のうち昇温効果の高い4μm以上の波長の大部分をカットされるので、本体1内部が昇温効果の高い赤外線により温められるのを防止できる。
図9にサーモパイル25の詳細を示す。図9(a)はヒートシンク26とサーモパイル25の斜視図を示す。図9(b)はヒートシンク26を除いた図9(a)中B−B´で示す線でのサーモパイル25の断面図であり、図9(c)は図9(b)中C−C´で示す線での断面の平面図である。なお、熱電対が見えるように、赤外線吸収膜25−9を省略して示してある。
サーモパイル25は熱電対(サーモカップル)を多数縦列接続した(パイリング)したもので、ニッケルめっき鋼板等の金属キャン25−1と金属ステム25−2からなる金属ケース内にこれが内蔵されている。およそ300μm厚のシリコン基材25−4表面に電気的および熱的に絶縁するためシリコン酸化膜25−5を形成し、この上にポリシリコン、アルミを順次パターン蒸着しポリシリコン蒸着膜25−6、アルミ蒸着膜25−7で熱電対を多数作成し、これを縦列接続する。ポリシリコン、アルミ接合点(測温接点)のあるシリコン基材25−4中央部には、黒体に近い酸化ルビジウム膜等の赤外線吸収膜25−9を形成する。ポリシリコンおよびアルミ蒸着膜の一端は冷接点25−10であり、これはシリコン基材25−4周囲のシリコン酸化膜25−5上に配置する。シリコン基材25−4の裏面(冷接点部)を残して290μmまでエッチングし、測温接点部分のあるシリコン基材の厚みを10μmに形成する。これは熱電導の良好なシリコンを薄くすることで、測温接点部25−8と冷接点部25−10の熱伝導を少なくし測温接点部と冷接点部を熱的に絶縁するためである。
このシリコン基材25−4を金属ステム25−2にボンド等の接着材で固定する。同時に金属ステム25−2にはセラミック上に膜形成したNTCサーミスタ25−11を同様に配置する。これは金属ケース32にある熱電対の雰囲気温度を検出し、熱電対の熱起電力を補正するためである。詳細は後述する。金属ステム25−2には絶縁シールされた4本の金属ピン25−12が貫通配置されており、この金属ピンに先の熱電対の出力とNTCサーミスタ25−11がワイヤ接続される。金属ステム25−2には、筒状の金属キャン25−1が窒素等の不活性ガス中で被せられ溶着される。この金属キャン25−1の上面には小穴の窓25−13が開けられ、ここに内側からガラス凸レンズ25−14が装着されている。この小穴の垂直下に先の測温接点部25−8(赤外線吸収膜25−9の下にある)が位置するようにシリコン基材25−4が固定される。このガラス凸レンズ25−14は赤外線透過窓5の視野範囲が赤外線吸収膜25−9に結像するように設計される。
サーモパイル25内の熱電対測温接点部25−8(赤外線吸収膜25−9の下にある)にはこの小穴の窓25−13を通過しガラス凸レンズ25−14で集光された赤外線で加熱され、この加熱温度上昇は通過した赤外線エネルギに比例し、熱電対の冷接点部25−10と測温接点部25−8の温度差に比例した電圧が熱電対出力の金属ピン25−12に出力される。前述したようにサーモパイル25は金属ケース25−3が熱的には熱電対の冷接点と同じであり、この温度変動がそのままサーモパイル25の出力変動となってしまう。そのため、ヒートシンク26を熱バッファ(熱容量を大きくする)として装着して周囲温度変化に対する出力変動を減少させる。
図10に本実施例の誘導加熱調理器の制御ブロック図を示す。マイクロコンピュータ60が誘導加熱調理器の動作を制御する。以下記号Rは図1の手前右にあるに誘導加熱口に関するブロックを表し、記号Lは図1の手前左にある誘導加熱口に関するブロックを表し、記号Rは図1の手前右にある誘導加熱口に関するブロックを表す。2つのインバータ回路8R、8Lは加熱コイル7R及び7Lに高周波電流を供給する。このインバータ回路8R、8Lの動作周波数及びコイルへの供給電力を調整するのが周波数制御回路61R、61L及び電力制御回路62R、62Lである。動作周波数を変化させるのは、鍋の金属種類によって高周波電流の周波数で誘導加熱効率が変化するためである。一般に鉄では20kHz、これより抵抗率の低い銅、アルミでは70kHz以上の周波数が用いられる。この周波数切り替えは図示しない鍋種類判別手段の判断に基づいてマイクロコンピュータ60が周波数制御回路61を制御して行う。
各インバータ回路8R、8Lには整流回路63から直流電圧が供給される。この整流回路63には電源スイッチ64を介して3端子200Vの商用電源65が接続されている。商用電源65の接地端子は本体1の金属部に接地線で接続される。ラジエントヒータ66にはラジエントヒータ回路67を介して商用電源65が接続され、ラジエントヒータ回路67がラジエントヒータ66に供給する電力を制御する。
マイクロコンピュータ60には、表示操作部の操作スイッチ68、表示回路69が接続され使用者の操作指示を受け付け、機器の動作状態表示を行う。また、ブザー70が接続され使用者の操作ボタン押しあるいはエラー等の警告などを報知する。マイクロコンピュータ60は使用者の指示に従い、周波数制御回路61R、61Lと電力制御回路62R、62L及びラジエントヒータ回路67を制御して、トッププレート2上の調理鍋6を加熱する。
サーモパイル25はサーモパイル温度検出回路72に接続され出力が増幅され、マイクロコンピュータ60のAD端子に入力される。赤外線LED35および赤外線フォトトランジスタ36は反射率検出回路73に接続され、マイクロコンピュータ60のポート出力で赤外線LED35の発光を制御され、調理鍋6で反射された赤外光は赤外線フォトトランジスタ36で受光され、その出力信号は増幅されマイクロコンピュータ60のAD端子に入力される。また、サーミスタ20はサーミスタ温度検出回路75に接続され出力が増幅され、マイクロコンピュータ60のAD端子に入力される。
反射率補正はマイクロコンピュータ60のソフトウエアで行われる。マイクロコンピュータ60は反射率検出回路73の出力から調理鍋の赤外線反射率を知り、反射率で補正して調理鍋の温度を検出する。この処理もマイクロコンピュータ60のソフトウエアで行われる。そして、電力制御回路62を介して、調理鍋6の加熱を制御する。
ここで、サーモパイル温度検出回路72、反射率検出回路73からの出力から鍋温度の換算方法を説明する。
サーモパイル25は受光した赤外線のエネルギに比例して電圧を出力するものである。このため、鍋の温度が上昇すると鍋底からの赤外線放射強度も強くなり、サーモパイルが受光する赤外線エネルギ量が増え、サーモパイルの出力信号電圧が高くなる。一般に、物体の放射する赤外線エネルギはその物体の絶対温度の4乗に比例するというステファン・ボルツマンの法則(式1)があり、温度が高くなればなるほど加速度的に大きな赤外線エネルギを放射する。すなわち、サーモパイル25を用いて単位面積当たりの放射量Eを知ることができれば、式1に基づいて放射物体の絶対温度を算出できる。
E=(2π5κ4/15c23)×T4=σT4 (式1)
E:単位面積当たりの放射量(W/cm2・μm)
κ:ボルツマン定数=1.3807×10-23(W・s/K)
c:光速度=2.9979×1010(cm/s)
h:プランク定数=6.6261×10-34(W・s2
σ:ステファン・ボルツマン定数=5.6706×10-12(W/cm2・K4
T:放射物体の絶対温度(K)
図11にトッププレート2に置かれた数種の鍋について、鍋温度検出装置18の出力(サーモパイル温度検出回路72の出力V)からオフセット電圧Voを引いた値Vt(鍋温度検出電圧)と鍋底面温度Tとの関係の一例を示す。図中に各鍋底面の放射率も示す。図11に示すように放射率によって鍋温度検出装置18の出力と鍋底温度の関係が異なることがわかる。図11の(a)で示す鍋は放射率が0.9と黒体に近い。(b)は放射率が0.57、(c)は0.43、(d)は0.24である。(b)、(c)、(d)の電圧値を放射率で除算すると、図中に破線でしめすものとなり、ほぼ1本の曲線に集約することができることが分かる。各出力Vtは各鍋の全放射エネルギ(E´=εσT4)に比例し、これを放射率で除算するのは、前述したように黒体の全放射エネルギ(E=σT4)に換算することを意味する。そして、各鍋の放射率が分かれば、各鍋の鍋温度を黒体の放射温度に還元できることを意味している。
各鍋の放射率は反射率検出回路73から得られた計測データを基に導いている。前述したよに赤外線LED35が発光した赤外線は、センサ視野筒19を通り鍋底面で反射して赤外線フォトトランジスタ36に戻る。赤外線受光素子は赤外線量に比例して電圧が発生し、電圧値から赤外線量を知ることができる。つまり、反射率検出回路73は赤外線発光量と赤外線受光量の比から鍋の反射率ρを検出することができる。ここで、反射率検出回路73が求めた反射率に基づいて放射率を算出する方法を説明する。温度Tの金属物質の表面から放射される赤外線エネルギ(E=εσT4)の放射率εと表面の反射率ρの間にはキルヒホフの法則による(式2)が成立する。(但し、透過率α=0とする)すなわち、鍋の反射率を知ることができれば、(式2)を変形した(式3)に基づいて、鍋の放射率εを算出できることが分かる。
ε+ρ=1 (式2)
ε=1−ρ (式3)
放射率εが異なる場合、同じ温度であっても、図11のように放射する赤外線エネルギが異なるので、サーモパイル温度検出回路72で得られたた赤外線エネルギに対して、反射率検出回路73の出力結果からマイクロコンピュータ60が算出した放射率εを用いて補正することで、反射率ρが異なる鍋を用いた時であっても鍋底温度を検出できる。
続いて、図12〜14を使用して本実施例の詳細を説明する。
図12は反射率検出回路73の詳細を示す。反射型フォトインタラプタ27の発光素子である赤外線LED35はトランジスタ73−1で駆動される。この駆動はマイクロコンピュータ60の出力ポートから駆動信号端子73−2に入力される信号で制御される。デューティ50%の矩形波信号を駆動信号端子73−2に入力すると、赤外線LED35は信号が5Vのとき発光し、0Vのときは消灯する。この発光強度は赤外線LED35に流す電流に比例し、この電流は抵抗R11の値で決められる。本実施例では抵抗値を固定して発光強度は一定である。この赤外光がトッププレート2及び調理鍋6の底面で反射され、受光素子である赤外線フォトトランジスタ36で受光されると光電流により抵抗R12に電圧が発生する。抵抗R12に並列してサーミスタ37と抵抗R13の組合せで構成した反射温度補償回路73−3を設け、反射率検出回路73の周囲温度変化に応じてサーミスタ37の抵抗値を可変させる。これにより、赤外線フォトトランジスタ36が受光し受光電圧が発生すると、並列関係にある抵抗R12と反射温度補償回路73−3には周囲温度に応じた電圧が発生する。
本実施例の反射率検出回路73では、反射大きく(受光量が多く)なれば電圧は比例して大きくなる。また、周囲温度が上昇した場合、サーミスタ37の抵抗値が下がり、電圧を降下する効果を得る。この信号電圧はコンデンサC1で直流分がカットされ、交流信号としてOPアンプ73−4で構成される正転直流増幅器に入力される。OPアンプ73−4では交流信号のプラス側成分のみ増幅される。この増幅されたデューティ50%の信号は、抵抗R14とコンデンサC2で構成される充放電回路73−5で直流の平均値電圧に変換され、出力端子73−6から出力される。この出力はマイクロコンピュータ60のAD端子に入力される。
赤外発光をキャリア変調し、受光経路を直流成分でカットしているのは、自然光あるいは白熱電灯、蛍光灯などの照明機器に含まれる一定の赤外光が鍋の反射率検出に影響するのを防止するためである。(可視光は受光素子の光学フィルタでカットされる)また、赤外線フォトトランジスタ36の暗電流の影響も防止している。
このように反射検出回路73は発光強度が一定のキャリア変調された赤外光を鍋底面に放射し、鍋で反射される赤外光を受光してその平均値電圧を反射電圧として得ることで反射率に相当する値を検出する。反射検出回路73の反射出力は(式4)に基づいて算出される。
Vout ∝ 発光光量×受光光量×R12 (式4)
Vout:出力端子73−6から出力される電圧
発光光量:赤外線LED35の発光電圧
受光光量:赤外線フォトトランジスタ36の受光電圧
R12:赤外線フォトトランジスタ36で生じた受光電圧
調理鍋6が置かれていない場合はトッププレート2のみでの反射でありこれは一定の値を示す。これからの増加分が鍋からの反射分であり、この量が鍋の反射率に相当するものである。
図13に赤外線フォトトランジスタ36の周囲温度に対する相対出力の温度特性を示す。周囲温度が上昇すると相対出力も増加する特性を有している。これは、周囲温度が上昇すると赤外線フォトトランジススタ36の受光電圧は上昇することを示す。
ここで、周囲温度上昇時の反射率検出回路73の出力電圧について説明する。調理鍋6を誘導加熱した場合、加熱コイル7やインバータ回路8などの発熱により、鍋温度検出装置18も冷却風温度の上昇や伝熱などに温められ、反射率検出回路73の温度も上昇する。調理条件により温度上昇値は異なるが、鍋温度検出装置18の周囲温度は10〜20℃程度上昇する。これにより、調理鍋6の反射率を測定中の赤外線フォトトランジスタ36の受光電圧は、周囲温度上昇前よりも上昇する。一方、周囲温度が上昇すると反射温度補償回路73−3のサーミスタ37の抵抗値が下がりR12の受光電圧は、受光光量の上昇分に相当する電圧を降下させる作用を得る。
この作用が得られる理由を詳細に説明する。赤外線フォトトタンジスタ36が反射光を受光し受光電圧が発生すると、並列関係にある抵抗R12と反射温度補償回路73−3には同じ電圧が印加され、各々の抵抗に応じた電流が流れる。周囲温度が上昇するとサーミスタ37の抵抗値は降下するため、反射温度補償回路73−3側に流れる電流が増加し、抵抗R12に流れる電流が減少する。この結果、周囲温度が上昇すると、抵抗R12側では、抵抗Rが一定であり電流Iが減少するため、E=IRの式から明らかなように、電圧Eが低下する。従って、本実施例では、赤外線フォトトランジスタ36の受光光量の電圧の上昇分を、R12の電圧降下分で相殺することで、出力端子73−6の出力Voutに対する周囲温度の影響を軽減することができる。すなわち、本実施例では、温度上昇前後で、反射率検出回路73の出力Voutの変動を非常に小さくすることができる。
次に、図14を用いて、反射温度補償回路73−3の効果を説明する。図14において、実線は反射温度補償回路73−3を有する本実施例の反射率検出回路73のデータであり、破線は反射温度補償回路73−3を有さない反射率検出回路のデータである。なお、図14の縦軸である相対出力は、周囲温度25℃の出力電圧に対する周囲温度変化時の出力電圧の比を示すものであり、相対出力が1に近いほど温度変化の影響が小さいことを示す。
反射温度補償回路73−3を持たない反射率検出回路の場合、上述の温度補償の作用を得ることができないため、周囲温度が上昇すると赤外線フォトトランジスタ36の受光電圧が上昇し、出力Voutも上昇してしまう。従って、破線に示すように、電子回路基板温度が上昇するほど相対出力が大きくなり、反射率の検出精度が悪化する。例えば、温度が50℃のときの相対出力は約1.15となるため、この出力に基づいて反射率を求めると大きな誤差が生じてしまう。
一方、反射温度補償回路73−3を有する本実施例の反射率検出回路73の場合、反射温度補償回路73−3の作用によって、25℃から50℃の何れの温度においても、相対出力を1±0.02の範囲に維持することができる。従って、本実施例の反射率検出回路73を用いることで、25℃から50℃の何れの温度においても、適切な反射率を観測することができる。
このように、本実施例の反射率検出回路73を用いれば、本体1の内部の温度変化の影響を受けずに調理鍋の反射率は一定値で検出できることから、本体1の調理状態、環境温度変化に関わらずに、調理鍋6の底面温度を鍋温度検出回路18で正しく測定することができる。
実施例2について、図15を使用して説明する。なお、実施例1と共通する点は説明を省略することとする。
図15は実施例2の反射率検出回路73の詳細を示す。実施例1と異なる点は、実施例1の反射温度補償回路73−3を省略した点と、赤外線フォトトランジスタ36と信号電圧Vccの間に抵抗R15を設けた点と、抵抗R15と並列に抵抗R16とサーミスタ38の直列回路を設け、これらを反射温度補正回路73−7とした点である。本実施例の場合にも、周囲温度の変動に応じて、赤外線フォトトランジスタ36受光電圧が変動するが、信号電圧5Vを反射温度補正回路73−7で降圧させることで赤外線フォトトランジスタ36の受光電圧が周囲温度で変化した分をキャンセルさせることができる。
赤外線フォトトランジスタ36が受光すると光電流により抵抗R12に電圧が発生する。この信号電圧はコンデンサC1で直流分がカットされ、交流信号としてOPアンプ73−4で構成される正転直流増幅器に入力される。OPアンプ73−4では交流信号のプラス側成分のみ増幅される。この増幅されたデューティ50%の信号は、抵抗R14とコンデンサC2で構成される充放電回路73−5で直流の平均値電圧に変換され、出力端子73−6から出力される。この出力はマイクロコンピュータ60のAD端子に入力される。
このように、本実施例の反射率検出回路73を用いれば、本体1の内部の温度変化の影響を受けずに調理鍋の反射率は一定値で検出できることから、本体1の調理状態、環境温度変化に関わらずに、調理鍋6の底面温度を鍋温度検出回路18で正しく測定することができる。
実施例3について、図16、図17を使用して説明する。なお、実施例1と共通する点は説明を省略することとする。
図16は実施例3の反射率検出回路73の詳細を示す。実施例1と異なる点は、抵抗R11と赤外線LED35の間にサーミスタ39を設け、抵抗R11とサーミスタ39を発光光量温度補償回路73−8とし、周囲温度によらず赤外線LEDの発光量を略一定に保つことができるようにした点である。
本実施例でも赤外線LED35はトランジスタ73−1で駆動される。この駆動はマイクロコンピュータ60の出力ポートから駆動信号端子73−2に入力される信号で制御される。デューティ50%の矩形波信号を駆動信号端子73−2に入力すると、赤外線LED35は信号が5Vのとき発光し、0Vのときは消灯する。この発光強度は赤外線LED35に流す電流に比例し、この電流は抵抗R11とサーミスタ39を組合せた発光光量温度補償回路73−8の値で決められる。サーミスタ39を配置したことにより周囲温度が上昇すると赤外線LED35の発光電圧が上昇して発光光量が増加する。
図17は赤外線LED35の周囲温度に対する相対出力の温度特性を示す。周囲温度が上昇すると相対出力は低下する特性を有している。これは、周囲温度が上昇すると赤外線LED35の発光光量が低下することを示す。
周囲温度が上昇した場合、赤外線LED35の出力は低下するが、発光光量温度補償回路により温度上昇分の電圧低下をキャンセルできる。従って、本実施例の反射率検出回路73によれば周囲温度変化の影響を受けずに、赤外線LED35の発光光量を安定して出力できる。
また、この赤外光がトッププレート2及び調理鍋6の底面で反射され、受光素子である赤外線フォトトランジスタ36で受光され、出力端子73−6から出力される受光素子側の回路を実施例1の回路を例に示しているが、受光素子側の回路は実施例2を用いても良い。このように、本実施例の反射率検出回路73を用いれば、本体1の内部の温度変化の影響を受けずに調理鍋6の反射率は一定値で検出できることから、本体1の調理状態、環境温度変化に関わらずに、調理鍋6の底面温度を鍋温度検出回路18で正しく測定することができる。
実施例4について、図18を使用して説明する。なお、実施例1と共通する点は説明を省略することとする。
図18は実施例4を採用した反射率検出回路73の詳細を示す。実施例1と異なる点は、駆動信号端子73−2とトランジスタ73−1のベースとの間にDuty可変回路40を設けた点である。
本実施例では、赤外線LED35はDuty可変回路40を介して制御されるトランジスタ73−1で駆動される。Duty可変回路40を用いてLEDパルス駆動を変えることで、赤外LED35の発光光量を可変させることができる。
実施例3でも説明したように、赤外線LED35は図17に示す温度特性を有するため、周囲温度が上昇したときに、Dutyが一定であれば赤外線LED35の発光量は低下してしまう。そこで、本実施例のDuty可変回路40は、赤外線LED35の発光量を略一定に維持できるようにDutyを上昇させ、温度上昇分の電圧変動をキャンセルさせる。従って、本実施例の反射率検出回路73によれば周囲温度変化の影響を受けずに、赤外線LED35の発光光量を安定して出力できる。
図18では、受光素子である赤外線フォトトランジスタ36で受光され、出力端子73−6から出力される受光素子側の回路に実施例1の回路を例に示しているが、受光素子側の回路は実施例2を用いても良い。このように、本実施例の反射率検出回路73を用いれば、本体1の内部の温度変化の影響を受けずに調理鍋6の反射率は一定値で検出できることから、本体1の調理状態、環境温度変化に関わらずに、調理鍋6の底面温度を鍋温度検出回路18で正しく測定することができる。
1…本体
2…トッププレート
5…赤外線透過窓
6…調理鍋
7、7L、7R…加熱コイル
8、8L、8R…インバータ回路
10…コイルベース
15…コイル冷却風路
18…鍋温度検出装置
19…センサ視野筒
20、37、38、39…サーミスタ
25…サーモパイル
26…ヒートシンク
27…反射型フォトインタラプタ
28…電子回路基板
29…赤外線センサケース
30…ケース窓
31…結晶化ガラス光学フィルタ
32…金属ケース
33…外側赤外線センサケース
35…赤外線LED
36…赤外線フォトトランジスタ
40…Duty可変回路
60…マイクロコンピュータ
61、61L、61R…周波数制御回路
62、62L、62R…電力制御回路
70…ブザー
72…サーモパイル温度検出回路
73…反射率検出回路
75…サーミスタ温度検出回路

Claims (6)

  1. 被加熱物を載置するトッププレートと、
    該トッププレートの下に設けられ前記被加熱物を加熱する加熱コイルと、
    該加熱コイルへ高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、
    該高周波電力供給手段の出力電力を制御する電力制御手段と、
    前記加熱コイルの下に設けられ、前記被加熱物から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、
    該赤外線検出手段の出力に基づいて前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、
    前記トッププレートに赤外線を投光する赤外線発光手段および該赤外線発光手段が投光し前記被加熱物で反射した赤外線を受光する赤外線受光手段からなる反射センサと、
    を具備する誘導加熱調理器であって、
    前記反射センサは、周囲温度に応じて抵抗が変化する周囲温度検出手段の出力に基づいて、前記赤外線受光手段に印加する電圧を変化させる温度補償回路を備えており、
    前記温度検出手段は、前記赤外線検出手段の出力を前記反射センサの出力に基づいて補正して前記被加熱物の温度を検出することを特徴とする誘導加熱調理器。
  2. 請求項1に記載の誘導加熱調理器において、
    前記周囲温度が上昇したときに、前記周囲温度検出手段の抵抗は上昇するとともに、前記赤外線受光手段に印加される電圧が低下することを特徴とする誘導加熱調理器。
  3. 被加熱物を載置するトッププレートと、
    該トッププレートの下に設けられ前記被加熱物を加熱する加熱コイルと、
    該加熱コイルへ高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、
    該高周波電力供給手段の出力電力を制御する電力制御手段と、
    前記加熱コイルの下に設けられ、前記被加熱物から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、
    該赤外線検出手段の出力に基づいて前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、
    前記トッププレートに赤外線を投光する赤外線発光手段および該赤外線発光手段が投光し前記被加熱物で反射した赤外線を受光する赤外線受光手段からなる反射センサと、
    を具備する誘導加熱調理器であって、
    前記反射センサは、周囲温度に応じて抵抗が変化する周囲温度検出手段の出力に基づいて、前記赤外線発光手段に印加する電圧を変化させる温度補償回路を備えており、
    前記温度検出手段は、前記赤外線検出手段の出力を前記反射センサの出力に基づいて補正して前記被加熱物の温度を検出することを特徴とする誘導加熱調理器。
  4. 請求項3に記載の誘導加熱調理器において、
    前記周囲温度が上昇したときに、前記周囲温度検出手段の抵抗は上昇するとともに、前記赤外線発光手段に印加される電圧が上昇することを特徴とする誘導加熱調理器。
  5. 被加熱物を載置するトッププレートと、
    該トッププレートの下に設けられ前記被加熱物を加熱する加熱コイルと、
    該加熱コイルへ高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、
    該高周波電力供給手段の出力電力を制御する電力制御手段と、
    前記加熱コイルの下に設けられ、前記被加熱物から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、
    該赤外線検出手段の出力に基づいて前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、
    前記トッププレートに赤外線を投光する赤外線発光手段および該赤外線発光手段が投光し前記被加熱物で反射した赤外線を受光する赤外線受光手段からなる反射センサと、
    前記赤外線発光手段を駆動するトランジスタと、
    前記トランジスタを駆動するDutyを制御するDuty可変回路と、
    を具備する誘導加熱調理器であって、
    前記Duty可変回路は、周囲温度に応じて抵抗が変化する周囲温度検出手段の出力に基づいて、前記トランジスタに印加する電圧のDutyを変化させ、
    前記温度検出手段は、前記赤外線検出手段の出力を前記反射センサの出力に基づいて補正して前記被加熱物の温度を検出することを特徴とする誘導加熱調理器。
  6. 請求項5に記載の誘導加熱調理器において、
    前記周囲温度が上昇したときに、前記周囲温度検出手段の抵抗は上昇するとともに、前記赤外線受光手段に印加される電圧のDutyが上昇することを特徴とする誘導加熱調理器。
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