以下、本件開示の発信機、子局装置、親局装置、及び追跡システムの実施形態について詳しく説明する。
本実施形態で説明する追跡システムは、圃場(農園、果樹園など)で農作物が持ち去られた場合に、盗難経路を明確にすることができる。そして、これに基づいて、圃場の管理者は、適切な盗難防止対策を講じることができる。この背景として、近年、果樹園などで高価な果物が持ち去られる事件が多発していることがある。果物の盗難対策として、例えば、農場への侵入者を感知するための人感センサーやワイヤーセンサーなどで侵入者を検知した場合に警報機等を作動して威嚇する方法が考えられる。或いは、高感度のカラーカメラやWebカメラなどが侵入者の写真を撮影し、携帯電話システムを利用して監視装置に写真を送信する方法などが考えられる。
ところが、果樹園や農場などの圃場に人感センサーを取り付けて侵入者の有無を検知してカメラで撮影する方法は、広大で樹木などの死角が多い圃場の場合は難しく、盗難後の逃走経路の解明ができないという問題がある。また、物品や動植物に携帯電話などの無線機を搭載して追跡する方法は、サイズが大きくランニングコストも高いという問題がある。特に消費電力の大きい無線機を電池で駆動するので、動作時間が短いなどの問題も生じる。
そこで、本実施形態に係る発信機、子局装置、親局装置、及び追跡システム発信機は、小型で消費電力が少なく、安価なランニングコストで運用することができるようになっている。
[追跡システム100]
図1は、追跡システム100の一例を示す図である。本実施形態に係る追跡システム100は、子局装置101と、親局装置102と、発信機103とを有する。図1の例において、追跡システム100は、離れた場所に点在する複数の圃場(農園、果樹園など)に9台の子局装置101が配置されている。そして、子局装置101(1)から子局装置101(9)の各々は、少なくともいずれか一台の他の子局装置101と互いに通信可能な位置に設置されている。さらに、子局装置101(1)から子局装置101(9)のうち少なくとも1台は親局装置102と通信可能な位置に設置されている。そして、親局装置102との通信が直接できない子局装置101は、他の子局装置101が中継することにより、親局装置102と間接的に通信を行う。
例えば図1の場合は、子局装置101(9)が親局装置102と通信可能な位置に配置されている。そして、子局装置101(8)は、子局装置101(9)と直接通信できる位置に設置されており、子局装置101(9)を経由して親局装置102と通信する。さらに、子局装置101(9)と直接通信できない位置に設置され、子局装置101(8)と直接通信できる位置に設置されている子局装置101(4)、101(5)、101(6)、101(7)は、子局装置101(8)、101(9)を経由して親局装置102と通信する。同様に、子局装置101(1)、101(2)、101(3)は、子局装置101(7)と直接通信できる位置に設置されているので、子局装置101(7),101(8),子局装置101(9)を経由して親局装置102と通信する。
そして、例えば親局装置102は、管理用端末であるパーソナルコンピュータ(パソコンと称す)151に接続されている。親局装置102は、管理者が操作するパソコン151から発行されるコマンドを子局装置101に送信して、各子局装置101の設定や制御を行う。そして、親局装置102は、各子局装置101で取得された情報(センサ情報や追跡情報など)を集めてパソコン151に出力する。
ここで、以降の説明において、子局装置101(1)、子局装置101(2)、子局装置101(3)、子局装置101(4)、子局装置101(5)、子局装置101(6)、子局装置101(7)、子局装置101(8)、子局装置101(9)に共通の内容を説明する場合は、(番号)を省略して子局装置101と表記し、特定の子局装置101を指す場合は符号に(番号)を付加して、例えば子局装置101(3)のように表記する。
また、追跡システム100は、センシングモードと盗難追跡モードとの2つのモードを有する。センシングモードでは、各圃場に設置された子局装置101は、離れた場所に点在する複数の圃場(農園、果樹園など)の状態を取得し、取得した状態を親局装置102に送信する。盗難追跡モードでは、高価な果実などが盗まれた場合に、追跡システム100は、盗難経路の解析を行って盗難対策を図り、あるいは盗難物の追跡を行うことができる。そして、本実施形態に係る追跡システム100では、予め樹木に取り付けられた高価な果実に似せた発信機103が発信する無線信号を、子局装置101が受信して親局装置102に送信するようになっている。
ここで、センシングモードと盗難追跡モードは、以下のように切り替えられる。例えば、追跡システム100は、収穫期に盗難追跡モードに切り替えられ、収穫期の中でも盗難発生が多発する夜間には盗難追跡モードに切り替えられる。尚、子局装置101側の動作モードは、追跡システム100の管理者が手動でコマンドを発行して設定しもよいし、タイマーで自動的に設定してもよい。
また、親局装置102が各子局装置101から取得する情報は、センシングモードでは、例えば畑の土壌温度や雰囲気温度、湿度、或いはpH値や水分量、日照量などの計測データや、作物の生育状態や農地の状態をカメラで撮影した画像データなどである。親局装置102が各子局装置101から取得する情報は、盗難追跡モードでは、発信機103が送信する発信機識別情報(発信機識別ID(IDentification))や受信日時、受信レベル(RSSI(Received Signal Strength Indication))などである。尚、後で説明する送信元アドレスや子局識別IDを送信データに付加することによって、親局装置102は、どの子局装置101から送信された情報であるかを判別できる。
このように、本実施形態に係る追跡システム100では、子局装置101は、圃場の状態を把握するためのセンサーの計測データや画像データ、発信機103が送信する発信機識別IDなどの情報を取得して親局装置102に送信する。
ここで、本実施形態に係る追跡システム100では、子局装置101および親局装置102との間の通信は、例えば400MHz帯の特定小電力無線規格(ARIB(Association of Radio Industries and Businesses)) STD−T67規格)に基づいた無線を利用する。この規格では、ch7からch46までの39個のチャネル数があり、データを送信する場合にキャリアセンスしてチャネルが使用されていないことを送信側が確認する。そして、所定の送信時間内で自由にチャネルを使用することができるようになっている。また、発信機103は、例えば315MHz帯の特定小電力無線を用いる。尚、発信機103で400MHz帯の特定小電力無線を用いてもよいし、子局装置101で315MHz帯の特定小電力無線を用いてもよい。或いは、300MHz帯の微弱無線や他の周波数帯の無線を用いてもよい。
[データフォーマット]
次に、親局装置102と子局装置101との間で通信するデータフォーマット例を図2(a)に示す。尚、本実施形態では、追跡システム100は、データやコマンドをパケット261で送受信するが、専用のフォーマットを用いてデータやコマンドを送受信してもよい。
図2(a)において、パケット261はヘッダ262とペイロード263とを有する。そして、ヘッダ262は、送信先アドレス271と、送信元アドレス272と、中継ルートにある中継局アドレス273とを有する。また、ペイロード263には、子局装置101から親局装置102に送信される取得データや親局装置102から子局装置101に送信されるコマンドやデータなどが格納される。
図2(b)に示すように、親局装置102(アドレスを10とする)から子局装置101(1)にコマンドやデータを送信する場合のヘッダ262は、送信先アドレス271が(1)、送信元アドレス272が(10)、中継局アドレス273が(9)>(8)>(7)である。ここで、「(9)>(8)>(7)」の記号”>”は、子局装置101(9)、101(8)、101(7)の順に情報が転送されることを示している。また、ペイロード263には親局装置102から子局装置101(7)に送信されるコマンドやデータが格納される。尚、中継ルートについては、システム設計時に予め決められているものとし、親局装置102内部に各子局装置101に送信する場合の中継ルートが予め記憶されている。
親局装置102からパケット261を受信した子局装置101(9)は、ヘッダ262の中継局アドレス273を参照して、自装置のアドレスが記載されている場合は、パケット261から自装置のアドレスを削除する。そして、子局装置101(9)は、パケット261を子局装置101(8)に送信する。ここで、子局装置101(8)に送信されたパケット261のヘッダ262の中継局アドレス273は(8)>(7)となる。尚、自装置のアドレスを削除するのは、中継局間で送信が繰り返される無限ループに陥るのを防止するためである。従って、受信したパケット261のヘッダ262の中継局アドレス273に自装置のアドレスが無い場合、パケット261は送信されない。これにより、仮に親局装置102が送信したパケット261を子局装置101(6)が受信した場合、子局装置101(6)は、送信先アドレス271や中継局アドレス273に自局のアドレスが記載されていないので、パケット261を送信しない。また、仮に親局装置102が送信したパケット261が子局装置101(8)と子局装置101(9)とで受信された場合、子局装置101(8)は中継局アドレス273の自局アドレスより前に他局のアドレス(9)が記載されているので、再送信しない。中継局の子局装置101(7)についても同様に動作する。
このようにして、親局装置102が送信するパケット261は、最終的な送信先である子局装置101(1)に送信される。
ここで、送信先の子局装置101(1)は、子局装置101(7)がパケット261を送信する前に子局装置101(8)が送信するパケット261を受信した場合、次のように動作する。子局装置101(1)は、子局装置101(8)から受信するパケット261の中継局アドレス273にアドレス(7)が残っているので、パケット261に記載されているコマンドの実行は行わないように動作する。これにより、追跡システム100は、同じコマンドを重複して実行することを防止できる。
子局装置101から親局装置102に取得データを送信する場合も上記の説明と同様に動作する。例えば、データ261のヘッダ262の送信先アドレス271は(10)、送信元アドレス272は(1)、中継局アドレス273は(7)>(8)>(9)となり、ペイロード263には子局装置101(1)の取得データが格納される。そして、中継局の子局装置101(7)、子局装置101(8)および子局装置101(9)の順番に中継局アドレス273に記載された自局のアドレスを削除しながら送信を繰り返して親局装置102でパケット261が受信される。
このようにして、各子局装置101と親局装置102との間で通信を行うことができる。例えば、本実施形態に係る追跡システム100では、子局装置101は発信機103の発信機識別IDを受信した場合に、発信機識別IDや受信日時などの追跡情報を子局装置101内部に蓄積する(ロギングと称する)。そして、親局装置102は子局装置101に保持されている発信機103の追跡情報を要求するコマンドを発行して、各子局装置101に保持されている追跡情報を収集する。或いは、中継局となる子局装置101を常に通信可能な状態(ウェイクアップ状態と称する)にしておくことにより、発信機識別IDを受信した子局装置101からリアルタイムで親局装置102に発信機識別IDを送信して盗難の発生を通知することができる。
[盗難追跡モード]
次に、盗難追跡モードについて説明する。盗難追跡モードでは、高価な果実(さくらんぼなど)に似せた発信機103を予め樹木に取り付けておき、子局装置101は、発信機103が発信する無線信号を受信し、受信した無線信号を親局装置102に送信する。例えば図3は、図1で説明した9台の子局装置101を用いて、さくらんぼの果樹園を監視する追跡システム100のイメージを示した図である。ここで、図1と同符号のものは同一または同様の要素を示す。
図3の例では、監視圃場A、監視圃場Bおよび監視圃場Cの3ヶ所に点在するさくらんぼ果樹園を監視する。監視圃場Aの近辺には子局装置101(2)と子局装置101(3)とが配置され、監視圃場Bの近辺には子局装置101(4)と子局装置101(5)とが配置されている。同様に、監視圃場Cの近辺には子局装置101(7)と子局装置101(1)とが配置されている。そして、図1で説明したように、子局装置101(8)および子局装置101(9)を中継して、子局装置101(7)と親局装置102との間で通信することができる。
図3において、監視圃場Aには、さくらんぼに似せた発信機103(1)と発信機103(2)とが本物の果実が成っているように樹木に取り付けられている。同様に、監視圃場Bには発信機103(3)と発信機103(4)とが樹木に取り付けられ、監視圃場Cには発信機103(5)と発信機103(6)とが樹木に取り付けられている。尚、図3の例では、発信機103は各圃場に2個しか取り付けられていないが、実際にはもっと多くの発信機103が取り付けられてもよい。
そして、果実泥棒がさくらんぼを収穫して車などで持ち去ろうとした場合、収穫されたさくらんぼの中にさくらんぼを模倣した発信機103が紛れ込むことになる。図3の例では、泥棒の車の荷台に発信機103(7)、泥棒の籠の中には発信機103(8)がそれぞれ紛れ込んでいる。そして、持ち去ろうとする果実に紛れ込んでいる発信機103が子局装置101の受信可能範囲内を通った場合、当該子局装置101は発信機103が送信する発信機識別IDを受信して、受信した発信機識別IDを親局装置102に通知する。尚、発信機103は、通常、振動を検出する機能を動作させて子局装置101への送信機能を停止させた状態(スリープ状態と称する)にあり、盗難時の振動を検知してウェイクアップし、発信機識別IDを子局装置101に送信する。
このようにして、高価な果実などが盗まれた場合に、盗難物の運び出し経路の解析や盗難物の追跡を行うことができる。
ここで、発信機103および子局装置101の通信範囲について、図4を用いて説明する。図4は、図3で説明した子局装置101(1)、101(6)、101(7)、101(8)、101(9)の5つの子局装置101を抜き出した図である。図4の例では、発信機103が送信する信号を受信可能な範囲(ロギング範囲)161と、子局装置101間で互いに通信可能な範囲(中継範囲)162との一例を示した図である。図4において、子局装置101の中継範囲162は、少なくともいずれか一台の子局装置101を含むように設置されている。例えば子局装置101(1)の中継範囲162(1)と子局装置101(7)の中継範囲162(7)は互いの子局装置101が含まれる位置に配置されているので、互いに通信することができる。他の子局装置101についても同様である。
また、発信機103が送信する信号を受信可能なロギング範囲161は、中継範囲162よりも小さいが、子局装置101が点在して配置されているので、いずれかの子局装置101で発信機103の信号をモニタできる確率は高い。
また、図3において、高速道路のゲートなど主要な場所に発信機103が送信する信号を受信可能な受信機152を配置しておいてもよい。この場合、受信機152と親局装置102との間で通信を行うことができないので、電話回線や携帯電話などの通信インフラを利用して、送信するようにしてもよい。或いは、盗難ルートの解析を行う場合、受信機152は、発信機103から受信した信号の履歴を記憶するメモリなどを含んでいればよい。
このようにして、本実施形態に係る追跡システム100は、高価な果実などが盗まれた場合に、盗難経路の解析を行うことができる。これにより、盗難経路に警告板や監視カメラを設置して盗難対策を図ることができ、盗難時に盗難物と犯人の追跡を行うことができる。
[追跡システム100]
次に、追跡システム100の概要について図5を用いて説明する。図5は、発信機103、子局装置101、親局装置102の基本的な関係を示す図である。
図5において、発信機103は、振動センサー201と、メモリ202と、送信制御部203とを有する。
振動センサー201は、例えば加速度センサーなどの振動を検出できるデバイスを用いる。そして、振動センサー201は、予め設定された閾値以上の振動を検知した場合、検出信号を送信制御部203に出力する。
メモリ202は、例えば不揮発性メモリなどの記憶媒体を含み、発信機103固有の情報(発信機識別ID)を予め記憶している。ここで、発信機103を特定するための固有の情報として、例えば発信機103のシリアル番号や製造番号などを使用してもよい。
送信制御部203は、CPUなどを含み、予めCPUの内部に記憶されたプログラムによって発信機103の動作を制御する。そして、送信制御部203は、振動センサー201が予め設定された閾値以上の振動を検出したことを示す検出信号を出力した場合に、メモリ202に記憶されている発信機識別IDをアンテナANTから送信する。尚、送信制御部203は、振動センサー201が振動を検出した場合にスリープ状態にある発信機103を起動する。尚、発信機103がスリープ状態にある時、振動センサー201と送信制御部203の割り込み検出回路が動作状態にあり、その他の回路(送信制御部203の送信回路など)を適宜オフにして無駄な電力の消費を抑える。そして、振動センサー201から検出信号が出力されると、送信制御部203に割り込みが掛かり、オフにしていた回路をオンにして発信機103のその他の回路を起動する。発信機103が起動されてウェイクアップ状態になった後、送信制御部203は、メモリ202に記憶されている発信機識別IDを子局装置101に送信する。本実施形態に係る追跡システム100では、発信機103は例えば315MHz帯の無線信号で発信機識別IDを子局装置101に送信する。
一方、子局装置101は、受信部204と、子局本体205とを有する。
受信部204は、発信機103から送信される315MHz帯の無線信号を、アンテナANTを介して受信する。そして、受信信号に含まれる発信機識別IDを子局本体205に出力する。この時、受信信号の信号レベル(RSSI)も子局本体205に出力する。そして、子局本体205は、発信機識別IDとRSSIと受信部204が発信機識別IDを受信した日時情報とをメモリ206に記憶する。尚、メモリ206は、例えば、電源供給がされなくても記憶内容が保持される不揮発性のメモリである。また、日時情報は、受信部204に日時をカウントするRTC(Real Time Clock)を搭載して子局本体205に受信日時を出力するようにしてもよいし、子局本体205にRTCを搭載して受信日時を取得するようにしてもよい。尚、子局本体205をスリープ状態にして運用する場合は、受信部204からの割り込み信号で子局本体205をウェイクアップする。
このようにして、子局装置101は、発信機識別IDと受信日時とを互いに関連付けてメモリ206に記憶する。尚、子局装置101は、メモリ206にRSSIを記憶するようにしてもよい。そして、メモリ206に記憶された情報は、例えば420MHz帯の特定小電力無線により、適宜、親局装置102に送信される。尚、メモリ206に記憶された情報は、新たに情報が発信機103から取得される毎に、逐次、親局装置102に送信するようにしてもよい。あるいは、メモリ206に記憶された情報は、メモリ206に蓄積しておいて、親局装置102からの送信要求コマンドに応答して親局装置102に送信するようにしてもよい。前者の場合は、盗難中の発信機103の移動経路をリアルタイムでモニタする場合に適しているが、中継を行う子局装置101をスリープ状態にせずに常時起動状態にしておくことが好ましい。後者の場合は、犯人の逃走経路を後で解析する場合に適しており、各子局装置101は予め設定されたタイムスケジュールに従って、スリープ状態とウェイクアップ状態とを定期的に繰り返すことができ、子局装置101を電池で動作させる場合に有効である。尚、子局装置101をいずれのモードで動作させるかの情報は、予め親局装置102から各子局装置101に設定して置く。
ここで、例えば、子局装置101は、圃場の状態を把握するためのセンサー207およびカメラ208を有している。そして、子局本体205は、センシングモードにおいて、センサー207からの計測データやカメラ208が撮影した画像データを入力できるようになっている。また、受信部204と、センサー207と、カメラ208との全てのデータを同時に子局本体205で取得できるように3つのインターフェース回路を子局本体205に設けてもよい。或いは、受信部204、センサー207およびカメラ208の切り替えは、子局本体205と接続するケーブルの切り替えにより行ってもよい。また、子局本体205のプログラムが、受信部204と、センサー207と、カメラ208とを切り替えるようにしてもよい。この場合、親局装置102から子局装置101にコマンドを発行して、センシングモードから盗難追跡モード、或いは盗難追跡モードからセンシングモードに切り替えることができる。或いは、子局装置101のRTCによって特定時間(夜間など)だけ、盗難追跡モードにするようにしてもよい。
そして、親局装置102は、例えば420MHz帯の特定小電力無線により、発信機識別IDと受信日時とを少なくとも含む追跡情報を子局装置101から受信する。尚、子局装置101が親局装置102と直接通信できない場合、追跡情報は、他の子局装置101で中継されて親局装置102に送信される。また、親局装置102による発信機識別IDを受信した子局装置101の特定は、図2で説明したように、ヘッダ261の送信元アドレス272により判別できる。例えば送信元アドレス272が(1)の場合は、子局装置101(1)が発信機103の発信機識別IDを受信した子局装置101であることがわかる。一方、親局装置102は、追跡システム100の設計情報から子局装置101が配置されている位置がわかる。これにより、親局装置102は、ペイロード263に含まれる発信機識別IDおよび日時情報からどの発信機103がいつどこの子局装置101の近くを通過したかを分析することができる。尚、発信機103毎に唯一の発信機識別IDが付与されているので、複数の発信機103が複数の経路で運び出されている場合でも、それぞれの発信機103の経路を特定することができる。例えば図3の場合、発信機103(7)と発信機103(8)とが異なる方向に運び出されている。このような場合でも、発信機103(7)と発信機103(8)の発信機識別IDが異なるので、親局装置102は、発信機103(7)と発信機103(8)の経路をそれぞれ追跡することができる。
そして、親局装置102は、子局装置101からリアルタイムで受信する追跡情報や定期的に収集する追跡情報を、図3に示したパソコン151に出力し、パソコン151のモニタに表示する。ここで、パソコン151は、追跡システム100を監視制御するためのアプリケーションプログラムがインストールされて起動されている。
このようにして、本実施形態に係る追跡システム100は、高価な果実などが盗まれた場合に、発信機103から送信される発信機識別IDを子局装置101で受信し、発信機識別IDとその受信日時などの追跡情報を収集することができる。例えば、発信機103は、振動センサー201が予め設定された閾値以上の振動を検知した場合だけ起動されるので、無駄な電力を消費せず、乾電池だけで長期間の運用が可能になる。
また、子局装置101についても、受信部204から子局本体205に割り込み信号を出力するようにして、割り込み信号を受けるまで子局本体205をスリープ状態にしてもよい。この場合、受信部204が発信機103から送信される315MHz帯の信号をモニタして、子局本体205をスリープ状態にするので、無駄な電力を消費せず、乾電池だけで長期間の運用が可能になる。但し、この場合、中継用の子局装置101もスリープ状態になるので盗難発生時に発信機103から受信した発信機識別IDをリアルタイムで親局装置102に通知することは困難である。そして、受信した発信機識別IDや受信日時などの追跡情報は、子局装置101内部にロギングされ、親局装置102から定期的にロギングされた追跡情報を収集して、盗難経路を解析する。
[発信機103]
次に、発信機103の詳細例について、図6を用いて説明する。
図6において、発信機103は、振動センサー201と、メモリ202と、CPU251と、送信回路252と、アンテナ253と、乾電池254と、電源回路255と、インターフェース(I/F)256とを有する。尚、図6において、振動センサー201とメモリ202は、図5と同一または同様であるので重複する説明は省略する。また、図6のCPU251、送信回路252は、図5の送信制御部203に対応する。
CPU251は、内部に予め記憶されたプログラムに従って動作し、発信機103の各部の制御を行う。例えば、CPU251は電源回路255を制御して乾電池254から発信機103内部に供給する電源をオンまたはオフする。ここで、CPU251は、振動センサー201が予め設定された閾値以上の振動を検出しない場合は、電源回路255から発信機103内部に供給される非主要部の電源をオフしてスリープ状態にする。尚、非主要部の電源とは、例えば送信回路252などに供給する電源である。
送信回路252は、例えば315MHz帯のクロックを発振する水晶振動子や発信機識別IDのデータで変調するための変調回路などを有する。そして、発信機識別IDのデータで変調された315MHz帯の電波がANT253から空中に放射される。
ANT253は、発信機103を搭載する果実や物品の形状に応じてモノポール型やダイポール型或いはパッチアンテナなど様々なアンテナを用いることができる。本実施形態に係る追跡システム100では、果実としてさくらんぼを想定しているので、さくらんぼの軸にアンテナ線を内蔵可能なモノポール型のアンテナ(ホイップアンテナなど)が使用される。
乾電池254は、例えばボタン型のリチウム電池が用いられる。
電源回路255は、乾電池254から供給される電源を必要な電圧に変換して各回路にそれぞれ供給する。この時、電源を供給する回路の一部にFET(Field Effect Transistor)などによるスイッチ回路を設け、例えば電源回路255から送信回路252に電源を供給する回路のFETをCPU251によりオンまたはオフする。
I/F256は、メンテナンス用のパソコン151aを発信機103に接続するためのインターフェースである。保守者は、発信機103を果樹園の樹木に取り付ける前に、パソコン151aをI/F256に接続して、メモリ202に発信機識別IDを書き込み、振動センサー201の振動検出感度を設定する。
このように、発信機103は、振動センサー201が予め設定した閾値以上の振動を検出しない場合はスリープ状態に維持され、予め設定した閾値以上の振動を検出した場合に発信機識別IDを送信する動作を開始する。これにより、発信機103の消費電力を抑えて、追跡システム100の長期間の運用が可能となる。また、盗難時の発信機103の振動により、発信機103から子局装置101に発信機識別IDの送信を開始するので、逃走時の位置をリアルタイムで追跡し、あるいはロギングしたデータを収集して盗難経路の解析を行うことができる。
ここで、発信機103の処理の流れについて図7のフローチャートを用いて説明する。尚、図7の処理は、図6で説明した発信機103のCPU251に予め記憶されたプログラムに従って実行される。
(ステップS101)CPU251は、スリープ状態にあって振動センサー201から割り込み信号が出力されるのを待っている。
(ステップS102)CPU251は、振動センサー201が振動を検知したか否かを判別する。そして、振動を検知していない場合、処理はステップS101に戻ってスリープ状態を維持し、振動を検知した場合、処理はステップS103に進む。
(ステップS103)CPU251は、ウェイクアップ処理を行い、発信機103のスリープ状態にある回路を起動する。
(ステップS104)CPU251は、メモリ202に記憶されている発信機識別IDを読み出して送信回路252から送信する。そして、処理は再びステップS101に戻ってスリープ状態に移行する。
このように、発信機103は、振動センサー201が予め設定した閾値以上の振動を検出するまではスリープ状態にあり、予め設定した閾値以上の振動を検出した場合に発信機識別IDを送信する動作を行う。そして、発信機識別IDを送信後、発信機103は、再びスリープ状態に移行する。これにより、消費電力を抑えて長期間の運用が可能になる。
尚、発信機103は、振動センサー201が閾値以上の振動を検出し続けている場合、発信機識別IDの送信を所定間隔で繰り返すようにしてもよい。或いは、送信のための消費電力を抑えるために、発信機103は、予め設定された所定時間または所定回数だけ発信機識別IDを送信するようにしてもよい。いずれの場合でも、発信機103は、振動が閾値以下になるとスリープ状態になる。尚、送信パターンの例については後で詳しく説明する。また、振動センサー201が予め設定した閾値以上の振動を検出し続けている間、振動センサー201が繰り返し割り込み信号を出力するようにしてもよいし、振動が閾値未満から閾値以上に変化した時だけ割り込み信号を出力するようにしてもよい。
[子局装置101]
次に、子局装置101の詳細例について、図8を用いて説明する。
図8において、子局装置101は、CPU301と、無線モジュール302と、センサー207と、カメラ208と、RTC303と、メモリ206と、乾電池304と、フォトモスリレー305と、I/F306とを有している。尚、各ブロックはバス307を介して相互に接続されている。また、図5と同符号の受信部204、子局本体205、メモリ206、センサー207およびカメラ208は、同一または同様の要素なので重複する説明は省略する。
CPU301は、内部に予め記憶されたプログラムに従って動作する中央演算処理部で、子局装置101全体の動作を制御する。
無線モジュール302は、他の子局装置101や親局装置102との間で図2に示したパケット261を送受信するための回路を有している。尚、本実施形態の追跡システム100は、先に説明したように、特定小電力無線規格に従った無線通信方法でパケット261を送受信し、CPU301から指令される通信チャネルを用いている。例えば、特定小電力無線規格のch7を用いて通信するようCPU301から指令された場合、無線モジュール302は、通信周波数帯域をch7に設定する。
RTC303は、時計機能と予め設定された時間を計測するタイマー機能の少なくとも1つを有する。そして、予め設定された日時になった場合、或いは予め設定された時間が経過した場合に、CPU301に割り込み信号を出力し、スリープ状態にあるCPU301を起動することができる。日時設定やタイマー設定は親局装置102からの日時設定コマンドなどにより設定される。さらに、本実施形態に係る追跡システム100は、RTC303の時計機能により、発信機103から送信される信号の受信日時を取得し、発信機識別IDと共にメモリ206に記憶する。尚、RTCは、発信機103から送信される信号を受信する受信部204に搭載されてもよく、この場合、受信部204が受信日時を取得する。ここで、本実施形態では、RTCが時計とタイマーの2つの機能を有するものとするが、別々に2つのRTCを設けてもよい。
乾電池304は、子局装置101に動作電源を供給する。例えば、子局装置101の主要部には乾電池304から直接電源が供給され、非主要部にはフォトモスリレー305を介して電源が供給される。ここで、主要部は、子局装置101をスリープ状態からウェイクアップ状態にするために必要な回路ブロックで、少なくともRTC303と、RTC303が出力する割り込み信号を検出してCPU301を起動するためのCPU301の一部の回路を含む。また、非主要部は、例えばメモリ206、センサー207、カメラ208、無線モジュール302などの回路である。尚、CPU301内部の回路でスリープ状態からウェイクアップ状態にする回路は常に動作している。
フォトモスリレー305は、CPU301からの指令に応じて乾電池304から供給される電源のオンオフを切り替えるためのスイッチである。フォトモスリレー305を経由して非主要部に電源が供給される。
I/F306は、先に説明したように、受信部204と、センサー207と、カメラ208との全てのデータを同時に子局本体205で取得できるように、受信部204と、センサー207と、カメラ208とからの出力を並列に入力してもよい。I/F306は、いずれか1つを保守者が接続するようにしてもよい。或いは、I/F306で受信部204、センサー207およびカメラ208のいずれかをCPU301で選択できるようにしてもよい。例えばCPU301により、盗難が発生し易い夜間だけセンサー207やカメラ208から受信部204に切り替えておいたり、センサー207やカメラ208からデータを取得する時以外は受信部204に切り替えておいてもよい。いずれの場合にも、受信部204、センサー207およびカメラ208の少なくとも1つがI/F306に接続される。
バス307は、各ブロック間でデータやコマンド或いは制御信号などを入出力するための共通バスである。
[CPU301の処理]
次に、子局装置101のCPU301の処理について詳しく説明する。CPU301は、図8に示したように、データ取得処理部351と、通信処理部352と、ウェイクアップ処理部353と、スリープ処理部354と、時刻設定処理部355とを有する。
データ取得処理部351は、受信部204が発信機103から受信する発信機識別IDやセンサー207から取得するデータ、或いはカメラ208で撮影した画像データをメモリ206に一時的に記憶する処理を行う。尚、データ取得処理部351は、RTC303の時計機能を利用して、受信部204が発信機103から発信機識別IDを受信した日時を取得し、発信機識別IDに関連付けてメモリ206に記憶する。或いは、受信部204にRTCを搭載する場合、データ取得処理部351は、受信部204で発信機識別IDを受信した日時を取得して、CPU301に発信機識別IDと日時情報を出力する。例えば、発信機識別IDが”ABC”で、受信日時が2012年5月5日であった場合、データ取得処理部351は、「発信機識別ID:ABC、受信日時:2012年5月5日23:15:30」のようなデータをメモリ206に記憶する。
通信処理部352は、無線モジュール302で他の子局装置101または親局装置102との間で通信を行うための処理を行う。例えば、特定小電力無線規格のch7を用いて通信する場合、通信処理部352は、無線モジュール302にch7を設定する。そして、メモリ206に一時的に記憶されているデータを送信し、親局装置102や他の子局装置101からデータやコマンドを受信する。尚、データやコマンドは、図2で説明したようなデータフォーマットのパケット261として送受信される。
また、通信処理部352は、受信したパケット261のヘッダ情報をチェックして、自装置宛ではない場合および中継局として記載されていない場合は無視する。そして、通信処理部352は、パケット261が自装置宛の場合に、パケット内容に応じた処理を行う。通信処理部352は、パケット261に中継局として自機が記載されている場合は無線モジュール302から受信したパケット261を他の子局装置101に送信する。
ウェイクアップ処理部353は、子局装置101をスリープ状態からウェイクアップして起動する処理を行う。スリープ状態からウェイクアップする条件は、RTC303によるタイマー割り込みを行う場合と、受信部204が発信機103から送信される315MHz帯の信号を検出した場合とである。そして、ウェイクアップ処理部353は、いずれかの条件を満足したときに、CPU301に割り込み信号を出力する。CPU301は、RTC303または受信部204による割り込み信号を検出した場合に、フォトモスリレー305をオンして非主要部への電源供給を開始し、CPU301を通常の動作状態に起動する処理を行う。
スリープ処理部354は、無線モジュール302を介して親局装置102からスリープコマンドを受信した場合に、フォトモスリレー305をオフして非主要部への電源供給を停止し、CPU301をスリープ状態にする処理を行う。或いは、スリープ処理部354は、受信部204から出力される発信機識別IDと日時情報とをメモリ206に記憶する処理を終了後、受信部204が315MHz帯の発信機103からの信号を検出できなくなった場合に、CPU301をスリープ状態にする処理を行う。尚、盗難追跡モードにおいてリアルタイムで発信機103の監視および追跡を行う場合は、中継局となる子局装置101は常時ウェイクアップさせておくことが好ましい。或いは、子局装置101において、400MHz帯の電波の受信回路だけを動作させてその他の回路をスリープ状態にしておき、近隣の子局装置101が400MHz帯の電波を送信したときにウェイクアップして中継を行うようにしてもよい。または、親局装置102からデータ要求コマンドを子局装置101に送信して、子局装置101にロギングされている追跡情報を収集したい場合は、タイマー割り込みを利用してもよい。例えばタイマー割り込みによって、親局装置102は、データ収集を行いたい子局装置101との間にある中継局の子局装置101をタイマー割り込みにより、同時刻にウェイクアップするように予めスケジューリングしておく。この時、親局装置102は、親局装置102に近い中継用の子局装置101からデータ収集を行いたい子局装置101までの中継ルートにある子局装置101を順番にウェイクアップして行く。そして、親局装置102は、データ収集が完了した遠くの子局装置101から順番にスリープ状態に移行させる。これにより、子局装置101は、稼働時間が少なくなり、省電力化が可能になる。
時刻設定処理部355は、無線モジュール302を介して親局装置102から日時設定コマンドを受信した場合に、日時設定コマンドに記載されている日時にRTC303を設定する。尚、RTC303に設定する情報は、タイマー機能で定期的にウェイクアップして親局装置102からのコマンドを待ち受けるための時間間隔(例えば1時間など)や、現在の日時情報(例えば2012年5月1日12時0分0秒など)である。
このように、子局装置101は、CPU301のプログラムに従って動作し、センサー207の取得データやカメラ208の画像データ、或いは受信部204が発信機103から受信した発信機識別IDや受信日時などの情報をメモリ206に取り込む(ロギング)。そして、子局装置101は、ロギングした情報(計測データ、画像データ、発信機識別IDなどの追跡情報)をリアルタイムまたは定期的に親局装置102に送信する。また子局装置101は、親局装置102から送られてくるコマンドに応じてメモリ206にロギングされた情報を無線モジュール302から親局装置102に向けて送信する。
ここで、子局装置101の処理の流れについて図9のフローチャートを用いて説明する。尚、図9の処理は、図8で説明した子局装置101のCPU301に予め記憶されたプログラムに従って実行される。
(ステップS201)CPU301は、スリープ状態にあって割り込み信号が入力されるのを待っている。尚、スリープ状態にあっても受信部204およびRTC303は動作している。
(ステップS202)CPU301は、RTC303によるタイマー割り込みの有無を判別する。そして、タイマー割り込みが無い場合、処理はステップS203に進み、タイマー割り込みが有った場合、処理はステップS208に進む。
(ステップS203)CPU301は、受信部204による315MHz帯の受信割り込みの有無を判別する。例えば、受信部204が315MHz帯の発信機103が送信する信号を受信した場合に受信割り込みが発生する。そして、CPU301は、受信割り込みが無い場合、処理はステップS201に戻って割り込み信号が入力されるのを待ち、受信割り込みが有った場合、処理はステップS204に進む。
(ステップS204)CPU301は、ウェイクアップ処理を行い、子局装置101全体を起動する。
(ステップS205)CPU301は、受信部204が受信した発信機103の発信機識別IDを読み出す。
(ステップS206)CPU301は、受信部204から読み出した発信機識別IDと、受信日時とをメモリ206に記憶する。尚、CPU301は、受信部204が発信機識別IDを受信した時のRSSIの値もメモリ206に記憶するようにしてもよい。RSSIの利用例については応用例として後で説明する。
ここで、CPU301は、受信日時を、受信部204から発信機識別IDを読み出すときにRTC303から取得する。或いは、受信部204にRTCを搭載している場合、CPU301は、受信部204から発信機識別IDと、受信日時の情報とを読み出す。この場合、CPU301は、受信部204が発信機識別IDを受信した時の日時を受信日時としてCPU301がウェイクアップするまで受信部204内で一時的に保持するようにしてもよい。あるいは、CPU301がウェイクアップ後に受信部204のRTCから日時を取得してもよい。尚、発信機識別IDの受信時に受信部204のRTCで受信日時を取得した場合と、CPU301がウェイクアップ後にRTC303や受信部204のRTCから受信日時を取得した場合とで若干の時間差は生じる。しかし、CPU301のウェイクアップに掛かる時間は、追跡に必要な時間精度に比べて短いので、ウェイクアップ後に取得した日時を発信機識別IDの受信日時としても問題はない。
(ステップS207)CPU301は、発信機103から発信機識別IDを受信したことを通知するACK信号を作成して、無線モジュール302から親局装置102に送信する。CPU301は、ACK信号の送信後、処理はステップS201に戻ってスリープ状態に移行する。ここで、中継用の子局装置101がスリープ状態にある場合、ACK信号は親局装置102には届かないので、ステップS206でメモリ206にロギングしておく。但し、中継用の子局装置101が400MHz帯の電波でウェイクアップできるように設定されている場合や常時起動されている場合は、子局装置101から送信されたACK信号が親局装置102で受信される。これにより、親局装置102はリアルタイムで盗難物の追跡を行うことができる。
尚、ACK信号は、例えば図2で説明したパケット261のデータフォーマットで作成され、ペイロード263に発信機識別IDおよび受信日時が少なくとも格納される。ここで、親局装置102は、送信元アドレス272により子局装置101を特定できる。尚、子局装置101は、アドレスとは異なる子局識別IDをペイロード263に格納してもよい。また、子局装置101は、RSSIの値をペイロード263に格納して親局装置102に送信してもよい。また、RSSIが複数の子局装置101で同時刻帯(数秒程度のずれがあってもよい)に受信されている場合、親局装置102は、RSSIの大きさから複数の子局装置101間にあると思われる発信機103の位置をより正確に推定することができる。
(ステップS208)ステップS202でタイマー割り込みを検出した場合、CPU301は、ステップS204と同様にウェイクアップ処理を行い、子局装置101全体を起動する。尚、子局装置101は、親局装置102から予め設定された時間間隔毎にウェイクアップするようにRTC303のタイマーが設定されている。
(ステップS209)CPU301は、タイマー割り込みによってウェイクアップしたことを通知するACK信号を作成して、作成したACK信号を無線モジュール302から親局装置102に送信する。尚、ACK信号は、例えば図2で説明したパケット261のデータフォーマットで作成され、ペイロード263にウェイクアップ通知を示す情報が格納される。ウェイクアップ通知を示す情報は、単なるウェイクアップ通知メッセージだけでもよいし、RTC303の日時情報を含めてもよい。これにより、親局装置102は、子局装置101のRTC303の日時のズレを調整することができる。また、子局装置101は、ウェイクアップ通知を示す情報に子局識別IDを含めてもよい。
(ステップS210)CPU301は、無線モジュール302により親局装置102からコマンドを受信したか否かを判別する。そして、CPU301は、コマンドを受信するまで待機し、コマンドを受信した場合はステップS211に進む。尚、無限ループに陥って電力を消費するのを回避するために、予め設定した一定期間にコマンドの受信が無い場合、CPU301は、処理をステップS201に戻し、スリープ状態になるようにしてもよい。
(ステップS211)CPU301は、親局装置102からスリープコマンドを受信した場合は、処理はステップS201に戻ってスリープ状態に移行し、スリープコマンドではない場合、処理はステップS212に進む。
(ステップS212)CPU301は、親局装置102から受信したコマンドに従った処理を行う。例えばCPU301は、メモリ206に記憶されている情報を要求するコマンドを受信した場合は、当該情報をペイロード263に格納したACK信号を親局装置102に返信する。センシングモードの場合には、CPU301は、メモリ206に記憶されている圃場の状態を把握するためのセンサーの計測データや画像データなどを親局装置102に送信する。また、盗難追跡モードの場合には、CPU301は、メモリ206に記憶されている発信機識別ID、受信日時などの情報を親局装置102に送信する。
このように、子局装置101は、RTC303によるタイマー割り込みまたは受信部204による315MHz帯の受信割り込みを検出するまではスリープ状態にあり、いずれかの割り込み信号を検出した時に動作を開始する。そして、発信機識別IDや受信日時などの追跡情報を送信後、或いはコマンド処理を行ってスリープコマンドの受信後に、子局装置101は、再びスリープ状態に移行する。これにより、消費電力を抑えて長期間の運用が可能になる。
尚、図9において、子局装置101をスリープ状態にしない場合は、ステップS201、ステップS202、ステップS204、ステップS208、ステップS209、ステップS211の各処理は行われない。そして、CPU301は、ステップS210とステップS212のコマンド待ち処理と、ステップ203の315MHzの受信待ちの処理とを常に行う。そして、親局装置102からコマンドを受信した場合はコマンド処理を実行し、315MHzの信号を受信した場合はロギングを行う。
また、受信部204を子局装置101から独立した装置として使用する場合、受信部204は、受信部204の内部にRTCと、ロギング用の不揮発性メモリとを有する。そして、受信部204は、子局装置101とは無関係に発信機103から送信される発信機識別IDを受信してロギングすることができる。この場合、子局装置101はタイマー割り込みにより定期的にウェイクアップする。そして、親局装置102は、子局装置101がウェイクアップするスケジューリングを管理する。親局装置102は、このスケジューリングに合わせて、受信部204のロギング情報の取得コマンドを子局装置101に送信する。これにより、子局装置101は受信部204内のメモリにロギングされた追跡情報を、一旦、子局装置101のメモリ206に読み出す。さらに、親局装置102は、データ要求コマンドを発行し、子局装置101のメモリ206に読み出された追跡情報を親局装置102に送信させる。
[RSSIの利用例]
次に、発信機103から送信される発信機識別IDを子局装置101の受信部204で受信した時の受信レベル(RSSI)を、子局装置101が取得する場合の一例について説明する。発信機103は樹木に取り付けられているので、風や野鳥などの影響によって振動センサー201が振動を検知することがある。そこで、風など他の影響で振動センサー201が振動を検知した場合と盗まれた場合とを区別することが好ましい。
図10は、子局装置101の受信部204が発信機識別IDを受信した時のRSSIを利用して風などによる振動検出の誤動作を防止する場合の処理例を示すフローチャートである。尚、基本的には先に説明した図9のフローチャートと同じであるが、図10では、ステップS204とステップS205との間にRSSI判別を行うステップS251の処理が挿入されている。
(ステップS251)CPU301は、受信部204から発信機識別IDを受信した時のRSSIを取得する。尚、先に説明したように、発信機103は、閾値以上の振動を検出している期間、或いは振動を検出する毎に予め設定された所定時間または所定回数だけ発信機識別IDの送信を繰り返す。そして、発信機103は、RSSIを複数回受信する時のRSSIの時間的な変動が予め設定された閾値以上であるか否かを判別する。RSSIの変動が閾値以上の場合、処理はステップS205に進み、閾値未満の場合、処理はステップS201に戻る。このように、RSSIの時間的な変動を確認することにより、風などの影響によるものか、果実を模した発信機103が盗まれて運ばれている時の振動によるものかを判別することができる。例えば発信機103が樹木に取り付けられたままである場合は、発信機103と子局装置101との通信距離は殆ど変化しないので、RSSIの変動は小さい。これに対して、盗まれたさくらんぼに紛れた発信機103が運び出されている場合は、発信機103の位置が移動しているので、発信機103と子局装置101との通信距離が遠くなったり近くなったりするので、受信部204のRSSIの値が時間的に大きく変動する。
そこで、CPU301は、RSSIの時間的な変動が予め設定された閾値以上である場合に、ステップS205以降の処理を行う。そして、CPU301は、閾値未満の場合、処理をステップS201に戻して再びスリープ状態にする。これにより、CPU301は、風などの影響による振動検出の誤動作を防止する。
[親局装置102]
次に、親局装置102の一例について図11を用いて説明する。図11において、親局装置102は、CPU401と、無線モジュール402と、RTC403と、メモリ404とを有している。尚、各ブロックはバス405を介して相互に接続されている。
CPU401は、内部に予め記憶されたプログラムに従って動作する中央演算処理部で、親局装置102全体の動作を制御する。
無線モジュール402は、子局装置101との間で通信するための無線機である。尚、本実施形態では、先に説明したように、特定小電力無線規格に従った通信方法でコマンドやデータを送受信する。
RTC403は、現在の日時情報(例えば2012年5月1日12時0分0秒など)を出力する。尚、日時はパソコン151から適宜、設定される。或いは、親局装置102にRTC403が搭載されない場合、親局装置102はパソコン151のRTCを利用してもよい。
メモリ404は、不揮発性のメモリやハードディスクなどの記憶媒体が用いられる。そして、メモリ404は、子局装置101から送られてくるデータ(計測データ、画像データ、発信機識別IDなどの追跡情報)を記憶する。
尚、親局装置102は、AC100Vの商用電源に接続され、AC/DC変換を行う電源アダプター161から電源が供給される。
ここで、親局装置102のCPU401には、管理者が操作するための入出力端末としてパソコン(PC)151が接続されている。そして、管理者は、パソコン151で各子局装置101の設定や動作をチェックすることができ、また受信されたデータを確認することができる。
[CPU401の処理]
次に、CPU401の処理について詳しく説明する。CPU401は、図11に示したように、入出力端末IF部451と、時刻設定処理部452と、データ管理処理部453と、コマンド発行処理部454と、通信処理部455とを有する。
入出力端末IF部451は、例えばUSB規格やRS232C規格などのシリアルインターフェースで接続された入出力端末(パソコン151など)との間でコマンドやデータなどを入出力する処理を行う。尚、本実施形態では、入出力端末をパソコン151としたが、コマンドを入力するキーボードや、データや画像を表示するモニタなどを有する専用端末であっても構わない。
時刻設定処理部452は、パソコン151から入力される日時情報(例えば2012年5月1日12時0分0秒など)をRTC403に設定する。
データ管理処理部453は、子局装置101から送られてくるデータ(センサーデータや画像データ、或いは発信機103の発信機識別IDや受信日時など)をメモリ404に記憶して管理する。この時、親局装置102は、子局装置101からデータを受信した日時をRTC403から入力して、受信したデータに付加してメモリ404に記憶するようにしてもよい。
そして、パソコン151はCPU401を介してメモリ404に記憶されているデータを読み出し、読み出したデータをパソコン151のモニタに出力し、あるいは専用のアプリケーションソフトウェアで、読み出したデータの解析や管理などを行う。例えば本実施形態に係る追跡システム100は、メモリ404に蓄積されている発信機識別IDと受信日時と発信機103から受信した子局装置101の子局識別IDにより、発信機103がいつどの子局装置101の近辺を通過したかを判別する。そして、パソコン151は、発信機識別ID毎に受信日時と子局識別IDを分類して、同一の発信機識別IDの移動経路を分析する。例えばパソコン151のモニタに表示される地図上において、子局装置101の配置は予め決められている。このため、パソコン151は、子局識別IDにより特定した子局装置101が発信機103から発信機識別IDを受信した日時順に地図上の子局装置101の位置を追うことにより、逃走経路を知ることができる。そして、逃走経路をパソコン151のモニタ上の地図に表示する。ここで、子局識別IDは、図2の送信元アドレス272など子局装置101を特定できる情報を用いてもよいし、ペイロード263に子局装置101のシリアル番号などを書き込んでもよい。この場合、ペイロード263には、例えば「発信機識別ID、受信日時、子局識別ID」が書き込まれる。
コマンド発行処理部454は、パソコン151から手動で入力されるコマンドやCPU401がRTC403の日時に応じて自動的に発行するコマンドなどを無線モジュール402から子局装置101に送信する。
通信処理部455は、無線モジュール402を介して子局装置101との間で通信を行うための処理を行う。例えば、通信処理部455は、子局装置101に送信するコマンドを図2で説明したデータフォーマットのペイロード263に格納し、送信先アドレス271や送信元アドレス272および中継ルート273などを設定してパケット261を作成する。或いは、通信処理部455は、子局装置101から受信するパケット261のペイロード263に格納されている計測データや画像データ、発信機識別IDや受信日時などの追跡情報を取り出してデータ管理処理部453に出力する。
このように、親局装置102は、CPU401の内部に予め記憶されたプログラムに従って動作し、各種のコマンドを子局装置101に送信し、また子局装置101からデータを受信してメモリ404に記憶することができる。
ここで、親局装置102の処理の流れについて図12のフローチャートを用いて説明する。尚、図12の処理は、図11で説明した親局装置102のCPU401に予め記憶されたプログラムに従って実行される。
(ステップS301)CPU401は、パソコン151から子局装置101に対するコマンドが入力されたか否かを判別する。コマンドが入力された場合、処理はステップS305に進み、コマンドが入力されていない場合、処理はステップS302に進む。
(ステップS302)CPU401は、子局装置101からACK信号を受信したか否かを判別する。ACK信号を受信した場合、処理はステップS303に進み、ACK信号を受信していない場合、処理はステップS301に戻る。
(ステップS303)CPU401は、子局装置101から受信したACK信号の内容をパソコン151のモニタに表示する。例えばCPU401は、センシングモードにおいて、子局装置101から計測データや画像データを受信した場合は、計測値や画像をパソコン151のモニタに表示する。また、CPU401は、盗難追跡モードにおいて、子局装置101から発信機識別IDや受信日時などの追跡情報を受信した場合は、発信機識別IDと受信日時を送信元の子局識別IDと共にパソコン151のモニタに表示する。この時、CPU401は、圃場周辺の地図と、子局識別IDに対応する子局装置101の設置位置を対応させた子局位置テーブルを予めメモリ404に記憶しておき、パソコン151のモニタに地図と子局装置101の位置を表示するようにしてもよい。そして、CPU401は、発信機識別IDを受信した子局装置101の位置を点滅させるようにしてもよく、受信日時をオーバーレイ表示するようにしてもよい。
(ステップS304)CPU401は、子局装置101から受信したACK信号の内容を親局装置102のメモリ404やパソコン151のハードディスクにログとして保存する。
(ステップS305)CPU401は、パソコン151から入力されたコマンドを子局装置101に送信する。尚、CPU401は、送信するコマンドを、図2で説明したデータフォーマットのペイロード263に格納し、送信先アドレス271や送信元アドレス272および中継ルート273などを設定してパケット261を作成する。そして、コマンドの送信後、処理はステップS301に戻り、CPU401は、新たなコマンド入力待ちと、子局装置101からのACK信号の受信待ちの状態になる。
このように、親局装置102は、CPU401の内部に予め記憶されたプログラムに従って動作し、各種のコマンドを子局装置101に送信する。そして、親局装置102は、子局装置101からコマンドに対する応答やデータをACK信号として受信し、パソコン151のモニタに表示し、メモリ404にログとして記憶する。
尚、様々な解析を行うアプリケーションソフトウェアは、パソコン151のハードディスクや親局装置102のメモリ404に記憶されているログを読み出して、様々な解析を行うことができる。例えばセンシングモードにおいては、圃場毎に取得した計測データの解析を行って、土壌の温度変化のグラフをモニタに表示することができ、農作物の成長を画像で確認することができる。盗難追跡モードにおいては、パソコン151のアプリケーションソフトウェアは、発信機識別ID毎に各子局装置101の受信日時を整理して、盗難が発生した日の逃走経路を解析することができる。或いは、子局装置101からリアルタイムで発信機103から受信する発信機識別IDなどの追跡情報が送られてくる場合、親局装置102は、パソコン151により「盗難発生!!」などの警告画面や警報音を発生して、管理者に通知することができる。尚、追跡システム100では、追跡情報を子局装置101から親局装置102にリアルタイムで送信するために、親局装置102は、中継を行う子局装置101をスリープ状態にせずに、常時、可動状態にしておくことが好ましい。或いは、親局装置102は、420MHzの信号を受信した時に割り込み信号をCPU301に出力してウェイクアップ状態になるように子局装置101を設定しておくことが好ましい。
次に、追跡システム100全体の動作の流れについて、図13を用いて説明する。図13は、センシングモードにおけるシーケンスの一例を示した図である。ここで、子局装置101は、タイマー割り込みによって、ウェイクアップ状態になっているものとする。或いは、子局装置101は、常時、ウェイクアップ状態にあるものとする。
先ず、第一の処理として、パソコン151は、センサー207やカメラ208から計測データや画像データを子局装置101のメモリ206に取り込むためのデータ取得コマンド(Getdata)を受け付ける。そして、第二の処理として、パソコン151は、データの取得が完了した子局装置101のメモリ206に取り込まれた計測データや画像データを親局装置102に送信させるデータ要求コマンド(Rqstdataコマンド)を子局装置101に送信する。
第一の処理は、図13において、ステップS401からステップS407に対応する。
(ステップS401)パソコン151は、センサー207やカメラ208から計測データや画像データを子局装置101のメモリ206に取り込むためのデータ取得コマンド(Getdata)を受け付ける。
(ステップS402)親局装置102は、Getdataコマンドをパケット261に格納して送信先の子局装置101に送信する。尚、他の子局装置101を中継する場合は、中継ルート273を設定する。
(ステップS403)送信先の子局装置101は、親局装置102(または中継局の子局装置101)からGetdataコマンドを受信して、センサー207やカメラ208など(ロガー)にデータ取得コマンドを出力する。
(ステップS404)ロガーは、データ取得コマンドを入力して対応するデータを出力する。例えば温度データや画像データなどが出力される。
(ステップS405)子局装置101は、ロガーから入力したデータをロギングデータとしてメモリ206に記憶する。そして、子局装置101は、データ取得が完了したことを示す取得ACKを親局装置102に送信する。尚、他の子局装置101を中継する場合、子局装置101は、中継ルート273を設定して送信する。ここで、親局装置102に送信する時の中継ルートは、予め子局装置101のメモリ206などに記憶されている。
(ステップS406)親局装置102は、子局装置101から取得ACKを受信し、パソコン151に出力する。
(ステップS407)パソコン151は、親局装置102から出力される取得ACKにより、データ取得完了を画面に表示する。
このようにして、子局装置101は、センシングモード時に子局装置101に接続されているセンサー207やカメラ208の計測データや画像データをメモリ206に取り込むことができる。
次に、子局装置101のメモリ206に取り込まれた計測データや画像データを要求する第二の処理について説明する。尚、中継用を含めて通信経路にある子局装置101はウェイクアップ状態にあるものとする。
第二の処理は、図13において、ステップS408からステップS412に対応する。
(ステップS408)パソコン151は、子局装置101のメモリ206に取り込まれた計測データや画像データを要求するデータ要求コマンド(Rqstdataコマンド)を受け付ける。
(ステップS409)親局装置102は、Rqstdataコマンドをパケット261に格納して送信先の子局装置101に送信する。尚、他の子局装置101を中継する場合、親局装置102は、中継ルート273を設定する。
(ステップS410)送信先の子局装置101は、親局装置102(または中継局の子局装置101)からRqstdataコマンドを受信する。そして、送信先の子局装置101は、メモリ206にロギングされた計測データや画像データのうち、Rqstdataコマンドで指定されたデータをパケット261に格納して親局装置102に送信する。尚、ステップS405と同様に、他の子局装置101を中継する場合、子局装置101は、中継ルート273を設定して送信する。
(ステップS411)親局装置102は、子局装置101から受信したパケット261に格納されている計測データや画像データをパソコン151に出力する。
(ステップS412)パソコン151は、親局装置102から出力される計測データや画像データをモニタに表示する。そして、パソコン151は、必要に応じて計測データや画像データをパソコン151のハードディスクに保存し、データの解析を行う。
このようにして、追跡システム100は、センシングモード時に子局装置101がメモリ206にロギングした計測データや画像データを親局装置102に送信する。これにより、追跡システム100は、パソコン151のモニタに計測データや画像データを表示することができ、解析を行うことができる。
次に、盗難追跡モードにおけるシーケンスの一例について図14を用いて説明する。ここで、子局装置101は、発信機103が送信する発信機識別IDの受信回路以外はスリープ状態にある。また、子局本体205は、受信部204が発信機識別IDを受信した時の割り込み信号によってウェイクアップするようにしてもよいし、リアルタイムで発信機103の位置を追跡するために子局本体205を常時ウェイクアップ状態にしておいてもよい。
先ず、第一の処理として、子局装置101は、発信機103が振動を検知した時に送信する発信機識別IDを子局装置101の受信部204で受信し、子局本体205から親局装置102およびパソコン151に発信機識別IDを取得したことを通知する。そして、第二の処理として、親局装置102は、発信機識別IDの取得が完了した子局装置101のメモリ206に取り込まれた発信機識別IDや受信日時などの追跡情報を親局装置102に送信させる。例えば、親局装置102は、データ要求コマンド(Rqstidコマンド)を子局装置101に送信する。
第一の処理は、図14のステップS501からステップS505に対応する。
(ステップS501)発信機103は、スリープ状態において振動センサー201が閾値以上の振動を検出してウェイクアップする。そして、発信機103は、発信機識別IDを送信後、再びスリープ状態になる。
(ステップS502)子局装置101の受信部204は、発信機103から送信される発信機識別IDを受信する。この時、受信部204は、RSSIも取得する。また、受信部204にRTCを搭載する場合は、受信日時も取得する。そして、受信部204は、子局本体205に割り込み信号を出力する。
ここで、受信部204は、315MHzの受信回路以外の子局本体205とのインターフェース回路などをスリープ状態にしておいて、発信機識別IDを受信後にスリープ状態にしておいた回路をウェイクアップしてもよい。この場合、受信部204は、発信機識別ID、RSSI、RTCを有する場合は受信日時、などの情報を子局本体205に出力する。
(ステップS503)子局本体205のCPU301は、受信部204から出力される発信機識別IDと、RSSIと、受信日時とをメモリ206に記憶する(ロギング)。尚、子局本体205は、受信日時を、受信部204にRTCが搭載されている場合は受信部204から取得し、搭載されていない場合は子局本体205のRTC303から取得する。
ここで、子局装置101は、子局本体205をスリープ状態にしておく。そして、子局装置101は、受信部204の受信割込み信号によってスリープ状態にしておいて回路をウェイクアップさせ、発信機識別ID、RSSIおよび受信日時などの追跡情報をメモリ206にロギングするようにしてもよい。
そして、子局本体205は、リアルタイムで盗難の発生を親局装置102に通報する場合、発信機識別IDなどのロギングが完了したことを示す取得ACKを親局装置102に送信する。尚、子局本体205をスリープ状態で運用する場合は、取得ACKを送信せずにロギング後、再びスリープ状態にしてもよい。この場合は、リアルタイムでの通報を行わずに、メモリ206にロギング情報が蓄積されていく。
ここで、子局本体205と、受信部204とを別筐体の独立した無線装置にして、シリアルケーブルなどで接続するようにしてもよい。この場合は、受信部204にもCPUやRTCが搭載される。また、子局本体205の無線モジュール302のみをウェイクアップ状態にしておいて、420MHz帯の信号を受信したときにスリープ状態にあるCPU301に割込み信号を出力して、起動するようにしてもよい。
(ステップS504)親局装置102は、子局装置101から取得ACKを受信し、パソコン151に出力する。尚、中継用の子局装置101はウェイクアップ状態にあるものとする。
(ステップS505)パソコン151は、親局装置102から出力される取得ACKにより、子局装置101が発信機識別IDを受信したことをモニタに表示する。この時、パソコン151は、「盗難発生!!」のようなメッセージをモニタに表示してもよい。
このようにして、盗難追跡モード時に子局装置101に接続されている受信部204は、発信機103が送信する発信機識別IDを受信して子局装置101のメモリ206に取り込むことができる。
次に、子局装置101のメモリ206に取り込まれた発信機識別IDなどの追跡情報を要求する第二の処理について説明する。この処理は、第一の処理を受けて、子局装置101から追跡情報を収集するためにスケジューラによって定期的(1時間毎など)に追跡情報を収集してもよい。尚、追跡情報がロギングされていない子局装置101の場合は、子局装置101は、データなしの応答を親局装置102に返信する。
第二の処理は、図14のステップS506からステップS510に対応する。これはセンシングモードで説明した図13のステップS408からステップS412にそれぞれ対応し、ステップS506のコマンド名(Rqstid)が異なることを除きステップS408からステップS412と同様なので、重複する詳細な説明は省略する。尚、中継用を含めて通信経路にある子局装置101はウェイクアップ状態にあるものとする。
先ず、パソコン151は、子局装置101のメモリ206に取り込まれた発信機識別IDなどの追跡情報を要求するID要求コマンド(Rqstidコマンド)を受け付ける(ステップS506)。そして、Rqstdataコマンドは、親局装置102から送信先の子局装置101に送信される(ステップS507)。Rqstdataコマンドを受信した子局装置101は、メモリ206にロギングされた発信機識別ID、受信日時などの追跡情報を親局装置102に送信する(ステップS508)。そして、親局装置102は、子局装置101から追跡情報を受信してパソコン151に出力する(ステップS509)。パソコン151は、親局装置102から出力される追跡情報をモニタに表示する。そして、パソコン151は、必要に応じてパソコン151のハードディスクに追跡情報を保存し、データの解析を行う。
このようにして、盗難追跡モード時に子局装置101は、メモリ206にロギングした追跡情報を親局装置102に送信する。そして、親局装置102は、パソコン151のモニタにロギングした追跡情報を表示することができ、あるいはロギングした追跡情報の解析を行うことができる。
[発信機103の発信機識別IDの送出タイミング]
次に、発信機103の発信機識別IDの送出タイミングについて説明する。複数の発信機103が同じ樹木に設置されている場合、複数の発信機103の振動センサー201が同時に振動を検出する可能性がある。この場合、複数の発信機103が送信する発信機識別IDの電波が干渉して、子局装置101の受信部204は発信機識別IDを正常に受信できなくなってしまうおそれがある。
そこで、本実施形態に係る追跡システム100では、発信機103のCPU251は、振動センサー201が閾値以上の振動を検出したタイミングから発信機識別IDを送信するタイミングまでの期間(トリガの感度)を乱数等によりランダムに可変する制御を行う。
図15は、発信機103(1)、発信機103(2)および発信機103(3)の3つの発信機103がタイミングT1で同時に閾値以上の振動を検出したときの発信機識別IDの送信タイミングを示した図である。
図15(a)の例では、各発信機103のCPU251は、乱数を発生して、振動を検出してから最初に発信機識別IDを送信するまでの遅延時間を可変し、その後は固定の時間間隔で発信機識別IDを予め設定された回数だけ送信する。例えば発信機103(1)は、遅延時間が0であり、振動を検出したタイミングT1で発信機識別IDの送信を開始し、以降、固定間隔Tsa毎に発信機識別IDをn回だけ送信する。尚、点線で示したように、発信機103(1)は、固定間隔Tsaの送信タイミング毎に更に複数回の発信機識別IDの送信を繰り返すようにしてもよい。図15の例では、発信機103(1)は、n回の送信タイミング毎にm回の発信機識別IDの送信を行う。
次の発信機103(2)は、振動を検出したタイミングT1から期間Tdbだけ遅延させてから発信機識別IDの送信を開始し、以降、固定間隔Tsb毎に発信機識別IDをn回だけ送信する。
次の発信機103(3)は、振動を検出したタイミングT1から期間Tdcだけ遅延させてから発信機識別IDの送信を開始し、以降、固定間隔Tsc毎に発信機識別IDをn回だけ送信する。
このようにして、複数の発信機103から発信機識別IDを送信するタイミングをランダムに遅延させることによって、送信タイミングが重なることを防止できる。
尚、各CPU251は、発信機103(1)の固定間隔Tsaと発信機103(2)の固定間隔Tsbと発信機103(3)の固定間隔Tscとを同じ時間に設定してもよいし、異なる時間に設定してもよい。図15(a)では同じ時間間隔の例を描いてあるが、異なる時間に設定することで偶然に送信タイミングが一致した場合でもどこかのタイミングで重複を避けることができる。
図15(b)の例では、各発信機103のCPU251は、図15(a)と同様に乱数等を発生して、振動を検出してから最初に発信機識別IDを送信するまでの時間を可変する。更に、各発信機103のCPU251はその後の送信時間間隔も乱数等によりランダムに可変して、発信機識別IDを予め設定された回数だけ送信する。例えば発信機103(1)は、振動を検出したタイミングT1で発信機識別IDの送信を開始し、2回目の送信タイミングまでの間隔を間隔Tsa1とする。そして、発信機103(1)は、3回目の送信タイミングまでを間隔Tsa2とし、4回目の送信タイミングまでを間隔Tsa3とする。発信機103(2)についても同様に、振動を検出したタイミングT1から間隔Tdbだけ遅らせて発信機識別IDの送信を開始し、2回目の送信タイミングまでの間隔を間隔Tsb1とする。そして、発信機103(2)は、3回目の送信タイミングまでを間隔Tsb2とし、4回目の送信タイミングまでを間隔Tsb3とする。発信機103(2)についても同様に、振動を検出したタイミングT1から間隔Tdcだけ遅らせて発信機識別IDの送信を開始し、2回目の送信タイミングまでの間隔を間隔Tsc1とする。そして、発信機103(3)は、3回目の送信タイミングまでを間隔Tsc2とし、4回目の送信タイミングまでを間隔Tsc3とする。
このようにして、複数の発信機103が、発信機識別IDの送信を開始するタイミングをランダムに遅延させ、更に複数回の送信間隔もランダムに可変することによって、送信タイミングが重なることを防止できる。
尚、本実施形態では、点在する圃場に複数の子局装置101を設置して、圃場の果実などに似せた発信機103を樹木に取り付けて、果実が盗まれた場合の犯人の逃走経路の解析や逃走位置をモニタして管理する追跡システム100について説明した。しかし、圃場に限らず、例えば徘徊者の監視や追跡、動的対象物(家畜等)を監視するシステム、などへの適用が可能である。
このように、本件開示の発信機、子局装置および親局装置、並びに追跡システムは、携帯電話などの高価な通信インフラを利用する必要がなく、且つ、大掛かりな電源設備が不要で、電池だけで長期間に亘って安定したシステム運用を行うことができる。
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。