JP2014051745A - プラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法 - Google Patents

プラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
従来技術はプラスチック容器外形と相似の形状をした空洞を有する円筒型外部電極の中に該容器を抱え込み、その容器の中にガス吹出し孔を有する棒状電極を挿入してプラズマを生成することから、その生成の際、該容器の形状、凹凸、誘電率等の影響を受ける。その結果、異常放電や異常発熱が発生し、形成される膜は斑点等ができて、不均一になる。
【解決手段】
円筒形状の接地電極の軸心に棒形状の非接地電極を配置した一対の電極をプラスチック容器に挿入し、該円筒形状の接地電極の一方の開口から該一対の電極間に原料ガスを噴出させ、他方の開口から排気するとともに、該一対の電極に電力を供給して該原料ガスをプラズマ化することを特徴とするプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラズマを利用してプラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜法に関する。特に、本発明は、プラスチック製のボトル及びカップ等の口部(開口)を有するプラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜法に関する。
従来、PET(ポリエチレンテレフタラート)やPP(ポリプロピレン)等の材料で製造されるプラスチック容器は、その製造において成形が容易で、低コスト化が可能であり、軽くて丈夫等という特長があり、飲料品、食料品、医薬品及び電子部品等の様々な分野で数多く利用されている。しかしながら、周知の通り、このプラスチック容器は、酸素や二酸化炭素等のガス及び水蒸気を透過させるという性質を有する。そのため、その利用において、例えば、ガラス瓶やアルミ缶等に比べて、その内容物の鮮度あるいは品質等の保持に劣る、という欠点がある。この欠点を解消するには、プラスチック容器のガスバリア性(酸素、二酸化炭素、水蒸気等のガス遮断性)の改善が必要である。
近年、その改善策を実現する方法の一つとして、ガスバリア性を有する薄膜、例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜、窒化シリコン(SiNx)膜、酸化シリコン(SiOx)膜及び炭化シリコン(SiCx)膜等の薄膜をプラスチック容器の内壁に形成する方法が注目されている。その薄膜を形成する代表的な方法として、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、あるいはプラズマ化学蒸着法、あるいはプラズマ支援化学蒸着(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法と呼ばれるプラズマを利用した成膜法がある。なお、ここでは、プラズマ成膜法と呼ぶ。
プラズマ成膜法では、例えば、非特許文献1及び2に記載されているように、接地電極と非接地電極から成る一対の電極の間に、成膜対象物を設置し、その周辺に原料ガスを導入して、そのガスを一対の電極間に供給した高周波電力でプラズマ化することにより成膜を行う。成膜速度は、例えば、非特許文献1及び2に記載されているように、原料ガスが無機化合物の場合でも、有機化合物の場合でも、供給される電力及び原料ガスの流量等に強く依存することが知られている。
また、プラズマ成膜法では、プラズマ中での気相反応及び対象物表面での表面反応等により膜が形成されるが、例えば、非特許文献1及び非特許文献2に記載されているように、原料ガスのプラズマ化、即ち、放電によって生じる電子及びイオンだけでなく、分子の解離及び励起等に伴って生成される電気的に中性の化学的活性種が重要な役割を有する、ということが知られている。
また、プラズマ成膜法を用いて薄膜を形成するに際し、例えば非特許文献1に記載されているように、主たる成膜条件として下記のパラメータがあるということが知られている。即ち、薄膜の形成に際し、(い)一対の電極の形状及び構造、(ろ)一対の電極の間隔、(は)ガス圧力、(に)一対の電極間に供給する電力(即ち、一対の電極間の電界)、(ほ)原料ガスの流量、(へ)原料ガスの濃度、(と)基板の温度等は、主要なパラメータである。
プラズマ成膜法による成膜における原料ガスとして、次の事が知られている。DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜の場合、例えば、メタンやエタンやプロパン等のアルカン類、あるいは、エチレンやプロピレンやブテン等のアルキン類、あるいは、ベンゼンやトルエンやナフタリン等の芳香族炭化水素が用いられる。この場合、水素(H2)を希釈ガスとして用いても良い。
窒化シリコン(SiNx)膜の場合、例えば、シラン(SiH4)と窒素(N2)とアンモニア(NH3)、あるいはジシラン(Si2H6)と窒素(N2)とアンモニア(NH3)が用いられる。なお、この場合、アルゴンやヘリウム等の希ガスを希釈ガスとして用いても良い。
酸化シリコン(SiOx)膜の場合、TEOS(テトラエトキシシラン)やHMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)等の有機珪素化合物と酸素(O2)の混合ガスが用いられる。なお、この場合、アルゴンやヘリウム等の希ガスを希釈ガスとして用いても良い。
上記プラズマ成膜法は、これまでLSI(大規模集積回路)、LCD(液晶デイスプレー)用TFT(薄膜トランジスタ)及び薄膜シリコン太陽電池等の様々な分野において、既に、実用化されていることは、周知の通りである。しかしながら、プラズマ成膜法のプラスチック容器への応用分野においては、依然として、問題が多く、齟齬をきたしている状況にある。
その問題とは、次に示す通りである。先ず、例えば、特許文献3〜7に記載されているように、外部電極の内側の形状とプラスチック容器の外部形状がほぼ相似形でない場合、あるいは、外部電極と内部電極の間に設置される誘電体製の外筒の厚みがプラスチック容器の形状にほぼ相似形でない場合、口部の内壁及び肩部の内壁での膜厚みは胴体部の内壁に形成される膜と異なり、不均一となる、という問題がある。
次に、例えば、特許文献4〜7に記載されているように、外部電極と容器の間に生じる隙間、あるいは、電極間の不均一な電界分布による影響で、プラスチック容器の胴体部及び底部の電界に比べ、口部及び肩部での電界の方が強くなり、その箇所に強いプラズマが集中して発生することがある。なお、外部電極と容器の間に隙間ができると、その隙間に放電が発生し易くなる。その結果、口部及び肩部の温度が上昇して、熱変形が発生する、という問題がある。また、外部電極とプラスチック容器が接触することにより、熱変形が発生するという問題もある。
また、従来技術では、プラスチック容器の形状や大きさを変えるたびに外部電極一式を交換しないといけない、という問題があるため、生産設備への応用において、装置操作上不便であるのみならず、装置の稼働率が低減して生産コストが増大する、という問題がある。
したがって、従来技術には、(1)外部電極の内側の形状がプラスチック容器の外部の形状と相似形にならない場合、その内壁に形成の膜の厚みが不均一になる、という問題、あるいは、外部電極と内部電極の間に設置される誘電体製の外筒の厚みがプラスチック容器の形状にほぼ相似形でない場合、口部の内壁及び肩部の内壁での膜厚みは胴体部の内壁に形成される膜と異なり、不均一となる、という問題、(2)外部電極と容器の間に生じる隙間、あるいは不均一な電界分布によりプラスチック容器の内外面の近傍に異常放電が生じる、という問題、(3)プラスチック容器と外部電極の間の隙間に生じる放電、あるいは外部電極に蓄積された熱によってプラスチック容器に熱変形が発生する、という問題、(4)プラスチック容器の形状や大きさを変えるたびに、その外部形状に相似の形状を有する外部電極一式を交換する必要があることから、生産設備としての応用において、装置操作上不便であるのみならず、稼働率が低減して生産コストが増大する、という問題がある。
従来技術には、代表的事例として、次の3つがある。第1の代表的事例(特許文献3〜5)では、内側がプラスチック容器の形状をした底の有る円筒状の非接地の外部電極の中にその容器を抱え込み、その容器の中にガス吹出し孔を有する接地された棒状電極を挿入する、という装置構成を有する。
第2の代表的事例(特許文献6)では、内側がプラスチック容器の形状をした円筒状の非接地の外部電極(底の無い円筒電極)の中にその容器を抱え込み、その容器の中にガス吹出し孔を有する接地された棒状電極を挿入する、という装置構成を有する。
第3の代表的事例(特許文献7)では、内側がプラスチック容器の形状をした底の有る円筒状の接地された外部電極の中にその容器を抱え込み、その容器の中にガス吹出し孔を有する非接地の棒状電極を挿入する、という装置構成を有する。
以下に、従来の、プラスチック容器内壁の薄膜形成に関するプラズマ成膜法及び装置について、代表的事例を列記する。
特許文献1には、薄いガス遮断性被膜を表面に形成したプラスチックス材を製造する方法が記載されている。課題として、従来試みられてきた代表的方法、即ち、プラスチックス材にSiOxやアルミニウム酸化物等の無機の薄膜を被覆する方法、ポリ塩化ビニリデン等のバリア性樹脂層を設けて積層体とする方法、及びアルミ箔等の金属フイルムを積層する方法は、いずれも一長一短があり充分満足できるものではなかった、ということが記載されている。
そして、その課題の解決のために、次の発明が記載されている。即ち、特許文献1に記載の発明は、低温プラズマ法により有機シリコン化合物モノマーをプラズマとなし、このプラズマでプラスチックス基体を処理して表面に有機シリコン化合物重合体の被膜を形成し、ついでこの基体の有機シリコン化合物重合体の被膜上にシリコン酸化物を被膜することを特徴とする。
また、有機シリコン化合物モノマーは、ビニルアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、フエニルトリアルコキシシラン、ポリメチルジシロキサン、ポリメチルシクロテトラシロキサンから選んだ1または2以上である、ことを特徴とする。
特許文献2には、課題として、内容物との直接接触及びレトルト処理等を行ってもガスバリア性が低下しない薄膜を有するプラスチック容器を提供する、ということが記載されている。
そして、その課題の解決のために、次の発明が記載されている。即ち、特許文献2に記載の発明は、プラスチック基材上に珪素化合物蒸着薄膜層が被覆され、該蒸着薄膜層の少なくとも最外面層が、炭化珪素もしくは窒化珪素を主成分とする珪素化合物蒸着薄膜層からなることを特徴とする。また、プラスチック基材上に酸化珪素を主成分とする珪素化合物蒸着薄膜層が被膜され、該蒸着薄膜層の少なくとも最外面層が、炭化珪素もしくは窒化珪素を主成分とする珪素化合物蒸着薄膜層からなることを特徴とする。
有機珪素化合物モノマーは、シラン、ジシラン、メチルシラン、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルジシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランである、ことを特徴とする。
特許文献3には、炭素膜コーテイングプラスチック容器の製造装置及び製造方法が記載されている。課題として、従来のDLC膜の形成装置は、反応室の容積が成膜対象物の大きさに比べて非常に大きいので、真空操作にかかる時間とエネルギーの無駄が多く、成膜速度が10〜1000Å/分と遅いので、安価に連続生産することが困難、ということが記載されている。また、ビールやオレンジジュース等の飲料用プラスチック容器への成膜では、プラスチック容器の外面にDLC膜が成膜されると、製造工程あるいは販売ルートにおいて、容器が互いにぶつかりあったり、擦れあったりすることにより、その硬いDLC膜が損傷してその商品価値を損なうことになるので、容器の外面の内壁面にのみDLC膜を形成することが要求されるが、従来のDLC膜の形成装置では原料ガスが電極(陰極)と成膜対象物の間の隙間にも回り込むので、容器の内壁面にのみ限定して成膜することできない、ということが記載されている。
そして、その課題の解決のために、次の発明が記載されている。即ち、特許文献3に記載の発明は、容器を収納する空所を有しこの空所が真空室を形成するとともに空所の内壁部が収容される容器の外形とほぼ相似形に形成された中空状の外部電極と、この外部電極の空所内に容器が収納された際にこの容器の口部が当接されるとともに外部電極を絶縁する絶縁部材と、接地され外部電極の空所内に収容された容器の内側に容器の口部から挿入される内部電極と、外部電極の空所内に連通されて空所内の排気を行う排気手段と、外部電極の空所内に収容された容器の内側に原料ガスを供給する供給手段と、外部電極に接続された高周波電源と、を備えていることを特徴とする。前記内部電極に原料ガスの吹出し孔が形成され、前記供給手段から供給される原料ガスが、内部電極の吹出し孔から外部電極の空所内に収容された容器内に吹き出されることを特徴とする。
また、容器を収容し収容される容器の外形とほぼ相似形の空所を外部電極に形成し、この空所内に収容される容器の口部が当接される絶縁部材により外部電極を絶縁し、空所内に収容された容器の内側に容器の口部から内部電極を挿入するとともにこの内部電極を接地し、外部電極の空所内を排気してこの空所内を真空にし、該部電極の空所内に収容された容器の内側に原料ガスを供給した後、外部電極に高周波を印加することを特徴とする。
特許文献4には、上記特許文献3に記載の炭素膜コーテイングプラスチック容器の製造装置及び製造方法が有する技術的問題を改善するために創出された発明が記載されている。技術的課題として、DLC膜を形成する際に、プラスチック容器口部のサポートリング及びネジ部は凹凸状のため外部電極の内壁面と容器外部面の間に隙間があり、その隙間の影響により、形成される膜に斑が生じる、また、プラスチック容器の肩部及び口部における外部電極内面と内部電極外面の間隔は、その胴体部でのその間隔に比べて狭いので、強いプラズマが発生し、形成されたDLC膜に斑が生じる、という問題が記載されている。また、プラズマがプラスチック容器の肩部及び口部の周辺に集中することで発生する熱により、口部が変形するという、問題が記載されている。
そして、その技術的課題の解決のために、次の発明が記載されている。即ち、特許文献4に記載の発明は、外部電極内に形成された容器の外形とほぼ相似形の真空室に容器を収容し、この外部電極の真空室に収容された容器内に内部電極を挿入し、真空室を真空にするとともに容器内に炭素源の原料ガスを供給した後、外部電極と内部電極間にプラズマを発生させることによって容器の内壁面に硬質炭素膜を形成する炭素膜コーテイングプラスチック容器の製造装置において、前記外部電極の真空室の内壁面が外周面から外方に突出する突出部を有している容器を収容する形状に形成され、前記突出部を有する容器の外形とほぼ同一形状に形成された内壁面を有し容器に装着されることによりこの容器の少なくとも突出部が形成されている部分を被覆するとともに容器に装着されたまま前記外部電極の真空室内に収容される導電性を有する介装部材を備え、突出部を有する容器が収容されることによって前記外部電極の真空室の内壁面とこの真空室内に収容される容器の外周面との間に形成される空所内に、容器に装着される前記介装部材が介装される、ことを特徴とする。
また、外部電極内に形成された容器の外形とほぼ相似形の真空室に容器を収容し、この外部電極の真空室に収容された容器内に内部電極を挿入し、真空室を真空にするとともに容器内に炭素源の原料ガスを供給した後、外部電極と内部電極間にプラズマを発生させることによって容器の内壁面に硬質炭素膜を形成する炭素膜コーテイングプラスチック容器の製造方法において、外周面から外方に突出する突出部を有する容器の外形とほぼ同一形状に形成された内壁面を有する導電性の介装部材を容器の外面に装着してこの容器の少なくとも突出部が形成されている部分を被覆し、突出部を有する容器を収容する形状に形成されている外部電極の真空室に介装部材が装着された容器を介装部材とともに収容して、突出部を有する容器が収容されることによって外部電極の真空室の内壁面とこの真空室に収容される容器の外周面との間に形成される空所内に介装部材を介装することを特徴とする。
特許文献5には、課題として、次の5つの問題が記載されている。即ち、上記特許文献5に記載の装置においては、プラスチック容器の形状や大きさを変えるたびに外部電極一式を交換しないといけないという問題、PETボトルなどのプラスチック容器は外形寸法にバラツキが大きいことや、成膜時の熱で多少変形することから容器が外部電極に触れてしまった場合、外部電極の熱で容器に大きなダメージを与えてしまうという問題、上記熱のダメージ問題を防ぐため隙間を大きくした場合、排気する時間が長くなってしまうという問題、容器外面と外部電極の隙間にプラズマが発生した時、電極表面がスパッタされ容器へ不純物が成膜されてしまう可能性が非常に高いという問題、連続で成膜した場合、外部電極が熱を蓄積し徐々に高温となってしまい安定した成膜を行えないという問題がある、ということが記載されている。
そして、その課題の解決のために、次の発明が記載されている。即ち、特許文献5に記載の発明は、プラスチック容器の内面及び外面に薄膜を形成する真空成膜装置において、電極と成膜対象の間にプラスチック製で電極に電気的に接触しかつ成膜対象から一定の間隔を設けるよう製作された外筒を設けたことを特徴とする。また、上記プラスチック製外筒として、容器外形とほぼ相似形の隙間を有する内面を持ったことを特徴とする。
特許文献6には、課題として、次の問題が記載されている。即ち、従来技術では、外部電極の形状が底を有する円筒型電極であり、側面のみならず、底面も外部電極となっているため、容器表面に成膜された膜の厚みは容器底部が厚くなってしまうという問題があった。また、電極を容器の形状に合わせて作らなければならず、あらゆる形状の容器に対応できるものでなかった、という問題がある。
そして、その課題の解決のために、次の発明が記載されている。即ち、特許文献6に記載の発明は、中空の容器の表面にCVD法により薄膜を形成させる成膜装置において、成膜チャンバーが、内部に容器が収納可能な筒状のスペースを持つ導電性材料よりなる筒状の外部電極と、その外部電極の片方の端に設置され、少なくとも中央部が絶縁材料よりなる天蓋、あるいは中央部に開口を有する天蓋であって少なくとも当該開口周辺部が絶縁性材料よりなる天蓋と、もう一方の端に設置され排気口を持つ底蓋よりなり、内部電極が底蓋を通して成膜チャンバー内部に挿入されていることを特徴とする。
また、中空の容器の表面にCVD法により薄膜を形成させる成膜方法であって、前記容器が収納可能な筒状のスペースを持つ導電性材料よりなる筒状の外部電極と、その外部電極の片方の端に設置され、少なくとも中央部が絶縁材料よりなる天蓋、あるいは中央部に開口を有する天蓋であって少なくとも当該開口周辺部が絶縁性材料よりなる天蓋と、もう一方の端に設置され排気口を持つ底蓋よりなる成膜チャンバー内に前記容器を挿入し、底蓋に設置された排気口より前記容器内部を含むチャンバー内を真空にし、底蓋を通して前記容器内部に挿入されている内部電極の先端よりプロセスガスを前記容器内に導入し、外部電極と内部電極間に高周波またはマイクロ波電力をかけ、プロセスガスをプラズマ化することにより前記容器内表面に薄膜を成膜することを特徴とする。
特許文献7には、問題として、次の事項が記載されている。即ち、従来技術には次の問題がある。外部電極の内形状がプラスチック容器外形状に則していないと均一コーテイングが難しい。内部電極も有る程度プラスチック容器外形状に則していないと均一コーテイングが難しい。内部電極から媒質ガスを供給するが、その周辺にもプラズマが生成されるので、ガス供給孔にもコーテイングされ、経時的に孔が塞がる可能性がある。真空境界を兼ねる外部電極に高周波電圧を印加するので、これに対する電気的絶縁対策が必要である。プラズマ生成に真空条件を必要としているので、コーテイング作業毎に、ボトルの真空排気、ガス充填工程が必要となり、プラスチック製造工程全体のスループットを低下させる。周波数13.56MHzで生成するプラズマの電子密度は比較的低いので、媒質ガスを解離する数が少なくなるため、コーテイング速度が遅いし、高品質コーテイングも容易でない。
マイクロ波プラズマを利用する場合、高周波プラズマに比べて装置構成が大きくなるので、比較的広い設置スペースが必要であること、プラスチック容器の形状やガス条件等が変わる毎にマイクロ波共振器の調整が必要で、運用上手間がかかること、マイクロ波プラズマは高周波プラズマに比べて、電子温度が数倍も高いので、媒質ガスの分子構造を必要以上に分解してしまい、成膜に必要な成膜種の数を減らしてしまうこと、という問題がある。
課題としては、上記問題を有する従来技術の実情に鑑み、装置の簡略化、操作方法の簡略化、作業時間の短縮、より均一な炭素膜の形成などが可能な、マイクロ波プラズマを利用してプラスチック容器の内面に炭素被膜を形成するプラズマ処理装置、及び内面に炭素被膜を形成したプラスチック容器の製造方法を提供する、ということが記載されている。
そして、その課題の解決のために、次の発明が記載されている。即ち、特許文献7に記載の発明は、炭素被膜を形成するプラスチック容器の外径より大きい内径を有し、その内側に前記プラスチック容器を設置可能な大きさの円筒状電極と、前記プラスチック容器の内部に該プラスチック容器の長手方向のほぼ全長に亘って挿入可能な大きさの棒状電極と、ガス供給手段と排気手段を備えた前記円筒状電極を収納する真空容器と、前記棒状電極が高圧側、前記円筒状電極が接地側となるように棒状電極と円筒状電極に接続した整合器及び高周波電源とを構成要素として含むことを特徴とする。
また、炭素被膜を形成するプラスチック容器の内部に該プラスチック容器の長手方向のほぼ全長に亘って挿入可能な大きさの内部コイル状電極と、ガス供給手段と排気手段を備えた前記プラスチック容器を収納する真空容器と、前記内部コイル状電極に接続した整合器及び高周波電源とを構成要素として含むことを特徴とする。
また、炭素被膜を形成するプラスチック容器の外形とほぼ相似形でその内側に前記プラスチック容器を設置可能な大きさの外部コイル状電極と、該外部コイル状電極内に前記プラスチック容器を設置した際に該容器の口金部に相当する位置に開口し容器内に媒質ガスを供給する媒質ガス供給口と、ガス供給手段と排気手段を備えた前記外部コイル状電極を収納する真空容器と、前記外部コイル状電極に接続した整合器及び高周波電源とを構成要素として含むことを特徴とする。
特開平5−345831 特開2003−104352 特許第2788412号 特許第3072269号 特許第4089066号 特許第3925025号 特開2001−310960
T.Tanaka and A.Matsuda:Glow−Discharge Amorphous Silicon:Growth Process and Structure,MATERIALS SCIENCE REPORTS(North−Holland−Amsterdam),Vol.2,No.2(1987),139−184. 長田義仁(編著者)、プラズマ重合、東京化学同人(1986年9月10日発行)、27−107.
従来技術には、次に示す5つの問題がある。即ち、(1)外部電極の内側の形状がプラスチック容器の外部の形状と相似形にならない場合、その内壁に形成の膜の厚みが不均一になる、という問題、あるいは、外部電極と内部電極の間に設置される誘電体製の外筒の厚みがプラスチック容器の形状にほぼ相似形でない場合、口部の内壁及び肩部の内壁での膜厚みは胴体部の内壁に形成される膜と異なり、不均一となる、という問題、(2)外部電極と容器の間に生じる隙間、あるいは不均一な電界分布によりプラスチック容器の内外面の近傍に異常放電が生じる、という問題、(3)プラスチック容器と外部電極の間の隙間に生じる放電、あるいは外部電極に蓄積された熱によってプラスチック容器に熱変形が発生する、という問題、(4)プラスチック容器の形状や大きさを変えるたびに、その外部形状に相似の形状を有する外部電極一式に交換する必要があることから、生産設備としての応用において、装置操作上不便であるのみならず、稼働率が低下して生産コストが増大する、という問題がある。
更に、(5)高周波電力を一対の電極に供給する際に発生する電力損失の問題、即ち、空洞の形を有する接地電極あるいは非接地電極に整合器に接続された同軸ケーブルの中心導体、あるいは外部導体を接合して電磁波のエネルギーを供給するので、該同軸ケーブルと一対の電極の間の導体線あるいは金属の壁で構成される送電路で電磁放射が発生し、多大の電力損失が発生する、という問題がある。このことは、成膜対象のプラスチック容器の内部に発生するプラズマに生成に有効に消費される電力の割合が悪いということ、を意味する。なお、同軸ケーブルを2本の導線に接続して高周波電力を送電する場合、2本の導線で構成される送電路では漏洩電力が大きくなる、ということは一般に知られている。
本発明者は、従来技術の問題の原因に関し、鋭意検討をしてきた。その結果、次の事項に問題の根源があることを見出した。
即ち、上記(1)〜(5)の問題は、被処理容器のプラスチック容器の材料が誘電体であり、かつ、立体的形状を有することに加えて、一対の電極間の電界分布の一様化が困難であることに起因している、と考えられる。
(A)一対の電極の間に誘電体を挿入し、その電極間に電圧を印加する場合、誘電体の分極に関する現象により、その誘電体で電圧降下が発生する。誘電体の厚みが厚くなれば厚くなるほど、電圧降下は大きくなる。その結果、一対の電極間の誘電体を除いた空間での電界は弱くなる。したがって、一対の電極の間に挿入される誘電体の形状が立体的で、しかもその厚みが非一様であれば、一対の電極間の空間の電界分布を一様に制御することは極めて困難である。電界分布が非一様であれば、原料ガスの流れが一様であっても、得られる膜は非一様となる。このことは、一対の電極間に、誘電体であり、かつ、形状が立体的でその厚みが非一様であるプラスチック容器を挿入して、一様な膜を形成することは極めて困難、ということを意味する。
(B)一対の電極間に誘電体を挿入して、その電極間に高い電圧を印加する場合、誘電体の表面に誘電体特有の沿面放電が発生することが有り、それを防止することは極めて困難であると、考えられる。同様な現象として、プラスチック容器の外部形状と外部電極の間に隙間が有る場合には、誘電体特有の沿面放電が発生することがあり、それを防止することは極めて困難である、と考えられる。なお、沿面放電が発生すれば、その発生箇所の近傍では発熱し、かつ、正常な膜の形成は困難である。
(C)上記(1)、(2)、(3)の問題は、上記(A)に関連する問題であると考えられる。
(D)上記(2)、(3)の問題は、上記(B)に関連する問題であると考えられる。
(E)上記(4)の問題は、上記(A)、(B)に関連する問題であると考えられる。
(F)上記(1)〜(4)の問題を解消するには、従来技術で用いられる一対の電極の構造あるいは配置を改善する必要がある。
(G)上記(5)の問題は、電気回路の基本特性が互いに異なる同軸ケーブルと一対の電極の接続に係る問題であると考えられる。この問題の影響を抑制するには、同軸ケーブルの出力端子と一対の電極の入力端子の距離を最小化することが必要であると考えられる。
以上説明したように、従来のプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜法では、成膜対象のプラスチック容器が誘電体で、且つ、立体的形状を有することに加えて、該プラスチック容器と一対の電極の位置関係を含む装置構成に起因する問題を抱えている。即ち、従来技術では、プラスチック容器の内壁に薄膜を形成するという応用分野において、高均一性の膜を形成し、装置操作性及び装置稼働率が良好で、且つ、生産性向上に貢献することは困難である、という課題がある。
そこで、本発明は、上記課題を解決することを目的とする。即ち、従来のプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜法が有する上記の問題を解消することが可能なプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、
排気系を備えた真空容器本体と、
被処理容器のプラスチック容器を収納する空所を備えた容器収納器と、
該プラスチック容器を支持する容器支持板と、
プラズマ生成の電界を発生する接地電極と非接地電極から成る一対の電極と、
原料ガス源に連通した原料ガス導入管で搬送される原料ガスを該一対の電極間に供給する原料ガス吹出し孔と、
該一対の電極に同軸ケーブル及び整合器を介して電力を供給する高周波電源と、
該一対の電極間でプラズマ化されたガスをその外部へ排出するガス排出孔と、
を具備し、
生成したプラズマを利用して口部を有するプラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜装置であって、
該一対の電は、円筒形状の接地電極とその軸心に配置された棒形状の非接地電極から成り、且つ、該一対の電は、該プラスチック容器の内部に挿入されるという構成を有することを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、
前記円筒形状の接地電極は前記プラスチック容器の口部の内径より小さい外径を有し、
前記原料ガス導入管は該プラスチック容器の口部の内径より小さい外径を有し、
前記同軸ケーブルは該原料ガス導入管の内径より小さい外径を有するとともに、該原料ガス導入管の内部を貫いて配置され、
該同軸ケーブルの入力端は該高周波電源に整合器を介して接続され、該同軸ケーブルの出力端の中心導体及び外部導体はそれぞれ非接地電極及び接地電極に接続されることを特徴とする。
第3の発明は、第1あるいは第2の発明において、
前記原料ガス導入管は、導体の部材で形成され、電気的に接地されるとともに、前記同軸ケーブルの出力端の外部導体と導体で接続されることを特徴とする。
第4の発明は、第1ないし第3のいずれか一つの発明において、前記非接地電極は誘電体で被覆されることを特徴とする。
第5の発明は、第1ないし第4のいずれか一つの発明において、
前記容器支持板は、該プラスチック容器を支持する貫通孔あるいは開口を備えたことを特徴とする。
第6の発明は、口部を有するプラスチック容器を被処理容器とし、原料ガスをプラズマ化することにより該プラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜方法であって、
円筒形状の接地電極の軸心に棒形状の非接地電極を配置した一対の電極を該プラスチック容器に挿入し、該円筒形状の接地電極の一方の開口から原料ガスを該一対の電極間に噴出させ、他方の開口から排出するとともに、該一対の電極に電力を供給して該原料ガスをプラズマ化することを特徴とする。
第7の発明は、口部を有するプラスチック容器を被処理容器とし、原料ガスをプラズマ化することにより該プラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜方法であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマ成膜装置を用いて、窒化シリコン(SiNx)膜、酸化シリコン(SiOx)膜及び炭化シリコン(SiCx)膜等のシリコン系薄膜を形成することを特徴とする。
第8の発明は、口部を有するプラスチック容器を被処理容器とし、原料ガスをプラズマ化することにより該プラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜方法であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマ成膜装置を用いて、水素化アモルファスカーボン膜及びダイアモンドライクカーボン(DLC)膜等のカーボン系薄膜を形成することを特徴とする。
本発明によれば、一対の電極を構成する非接地電極と接地電極をプラスチック容器の内部に収納し、供給された原料ガスをプラズマ化し、被処理容器の内部に薄膜を形成することが可能である。即ち、円筒形状の接地電極の軸心に棒形状の非接地電極を配置した一対の電極を該プラスチック容器に挿入し、該円筒形状の接地電極の一方の開口から原料ガスを噴出させ、該一対の電極に電力を供給して該原料ガスをプラズマ化し、そのプラズマ化したガスを該接地電極の他方の開口から該プラスチック容器内部に排出することにより、被処理容器の内部に薄膜を形成することができる。また、本発明によれば、高周波電源に整合器を介して接続されている同軸ケーブルの出力端と一対の電極を直接、接続できるので、該同軸ケーブルの出力端と該一対の電極の給電点の間の距離を最小化することが可能である。
その結果、プラスチック容器の形状及び物性に影響を受けることなく、原料ガスのプラズマ化が可能であり、その内壁に薄膜を形成できる。即ち、被処理容器の厚み、凹凸及び誘電率等に影響を受けないで、原料ガスをプラズマ化し、その内壁に薄膜を形成できる。
これにより、従来技術が抱えるプラスチック容器の形状及び物性に起因する次の問題を解決可能である。即ち、(1)外部電極の内側の形状がプラスチック容器の外部の形状と相似形にならない場合、その内壁に形成の膜の厚みが不均一になる、という問題、あるいは、外部電極と内部電極の間に設置される誘電体製の外筒の厚みがプラスチック容器の形状にほぼ相似形でない場合、口部の内壁及び肩部の内壁での膜厚みは胴体部の内壁に形成される膜と異なり、不均一となる、という問題、(2)外部電極と容器の間に生じる隙間、あるいは不均一な電界分布によりプラスチック容器の面の近傍に異常放電が生じる、という問題、(3)プラスチック容器と外部電極の間の隙間に生じる放電、あるいは外部電極に蓄積された熱によってプラスチック容器に熱変形が発生する、という問題、(4)プラスチック容器の形状や大きさを変えるたびに、その外部形状に相似の形状を有する外部電極一式に交換する必要があることから、生産設備としての応用において、装置操作上不便であるのみならず、稼働率が低下して生産コストが増大する、という問題、及び(5)高周波電力を一対の電極に供給する際に発生する電力損失の問題を解消可能である。
また、これにより、プラスチック容器の内壁へのプラズマによる薄膜形成応用分野において、装置操作性及び装置稼働率が良好で、且つ、生産性向上に貢献可能なプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜法を提供することが可能である。
特に、飲料用プラスチック容器を対象にしたプラズマによる薄膜形成への応用において、装置操作の簡便性及び良好な装置稼働率の確保、生産性向上及び生産コストの低減に寄与できる効果は、著しく大きい。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置を示す模式的構成図である。 図2は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる同軸ケーブルと原料ガス導入管の位置関係を示す説明図である。 図3は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる棒形状の非接地電極を示す模式的説明図である。 図4は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられるガス排出孔を有する円筒形状の接地電極を示す模式的説明図である。 図5は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる棒形状の非接地電極と排出孔を有する円筒形状の接地電極からなる一対の電極を示す模式的構成図である。 図6は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる原料ガス供給装置を示す説明図である。 図7は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置を示す模式的構成図である。 図8は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる棒形状の非接地電極と円筒形状の接地電極からなる一対の電極を示す模式的構成図である。 図9は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる容器支持板を示す模式的構成図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
なお、以下に示す実施例において、プラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜装置を用いたプラズマ成膜方法の一例として、飲料用プラスチック容器の内壁に酸化シリコン膜を形成する装置及び方法が記載されているが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。
また、以下に示す実施例において、成膜対象のプラスチック容器として、容量500ccのPETボトルを用いて説明するが、本発明はこの記載に限定して解釈されない。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜装置を用いたプラズマ成膜法を、図1ないし図6を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置を示す模式的構成図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる同軸ケーブルと原料ガス導入管の位置関係を示す説明図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる棒形状の非接地電極を示す模式的説明図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる排出孔を有する円筒形状の接地電極を示す模式的説明図である。図5は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる棒形状の非接地電極と拡散孔を有する円筒形状の接地電極からなる一対の電極を示す模式的構成図である。図6は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる原料ガス供給装置を示す説明図である。
先ず、装置の構成について、図1ないし図6を参照して説明する。
図1〜図5において、符号1は第1の真空容器本体である。この第1の真空容器本体1の断面形状は任意の形状でよいが、ここでは、例えば円形とする。該第1の真空容器本体1には、後述の第1の容器支持板2、第1の容器収納器3、3a、3b、第1の原料ガス導入管12、第1の原料ガス導入管本体15、第2の原料ガス導入管16、第3の同軸ケーブル25及び排気管孔17等が配置される。
なお、第1の真空容器本体1には、第1の容器支持板2、第2の原料ガス導入管16、第3の同軸ケーブル25を設置する際、その組み立て作業が容易にできるように、フランジ1aが付属されている。
符号2は第1の容器支持板で、被処理容器のプラスチック容器10を収納する際、後述の第1の容器収納器3と組み合わせて用いられる。第1の容器支持板2の中央部に貫通孔2bが穿設され、その近傍に通気孔2cが穿設される。なお、第1の容器支持板2は、図1図示のように、第1の真空容器本体1に付属のフランジ1aに、図示しないOリング及び後述の第1のスペーサ8を介してボルト2aで取り付けられる。
該貫通孔2bは、プラスチック容器10の口部10cの外径より大きく、かつ、プラスチック容器10のサポートリング10eの外径より小さい内径となるように形成される。該貫通孔2bは、図1図示のように、後述の第1の容器収納器3と組み合わせて用いられることにより、プラスチック容器10を支持する。該通気孔2cは、第1の容器収納器3の空所の排気に用いられる。
符号3は第1の容器収納器である。第1の容器収納器3は、第1の容器支持板2と組み合わせて用いられることにより、成膜対象のプラスチック容器10を収納する。ここでは、透明材料で作製された第1の容器収納器3aと、金属材で作製された第1の容器収納器3bを用意する。
なお、透明材料で作製された第1の容器収納器3aは、予備試験的に、プラスチック容器10内部のプラズマ発光の状況を観察する場合に用いられる。金属で作製された第1の容器収納器3bは薄膜を形成する際に用いられる。
符号3aは透明材料で作製された第1の容器収納器である。該第1の容器収納器3aは、第1の容器支持板2と組み合わせて用いられることにより、成膜対象のプラスチック容器10を収納する。該第1の容器収納器3aに該プラスチック容器10を収納する際、該第1の容器収納器3aに付属のフランジ3c及びボルト3dを用いて、図示しないOリングを介して、真空漏れが無いように取り付けられる。該第1の容器収納器3aの形状は底付きの円筒状であり、その内径は該プラスチック容器の外径より約0.3〜0.5mm程度大きい。また、該第1の容器収納器3aの深さは、該プラスチック容器10の高さとほぼ同じ、あるいは、その高さより短くする。
符号3bは金属で作製された第1の容器収納器である。該第1の容器収納器3bは、容器支持板2と組み合わせて用いることにより、成膜対象のプラスチック容器10を収納する。該第1の容器収納器3bに該プラスチック容器10を収納する際、該第1の容器収納器3bに付属のフランジ3c及びボルト3dを用いて、図示しないOリングを介して、真空漏れが無いように取り付ける。該第1の容器収納器3bの形状は底付きの円筒状であり、その内径は該プラスチック容器の外径より約0.3〜0.5mm程度大きい。また、該第1の容器収納器3bの深さは、該プラスチック容器10の高さとほぼ同じ、あるいは、その高さより短くする。
符号8は第1のスペーサである。第1のスペーサ8は、第1の容器支持板2と第1の真空容器本体1の間に設置され、後述の一対の電極26、27に付属の誘電体キャップ32と成膜対象のプラスチック容器10の底10dとの間の距離を調整する。ここでは、厚みの異なる3個の第1のスペーサ8を用意する。
なお、その厚みは、誘電体キャップ32と該プラスチック容器10の底10dとの間の距離が該容器の直径の1/1、直径の1/2、及び直径の1/4となるように、予め、設定される。
符号10、10a、10b、10c、10d及び10eは、それぞれ、プラスチック容器、胴体部、肩部、口部、底部及びサポートリングである。なお、サポートリング10eは、例えば、プラスチック容器に飲料水を充填する場合や、プラスチック容器を搬送する場合に、そのハンドリング設備に配備されているスライドレールと組み合わせて用いられるもので、強度的に強く作られている。
図1及び図2において、符号12は第1の原料ガス導入管である。第1のガス導入管12は、その上流側に設置された原料ガス供給管14及び真空用ガス管継ぎ手13を介して原料ガス供給装置57から供給された原料ガスを、後述の原料ガス導入管本体15に供給する。
符号13は、真空用ガス管継ぎ手である。真空用ガス管継ぎ手13は、後述の原料ガス供給管14と第1の原料ガス導入管12を真空漏れが無く、かつ、ガス漏れが無いように接続する。
符番14は原料ガス供給管である。原料ガス供給管14は、後述の原料ガス供給装置57及び酸素ガス供給装置58から原料ガスの供給をうけて、下流側の第1の原料ガス導入管12に真空用ガス管継ぎ手13を介して供給する。なお、原料ガスに有機化合物を用いる場合、図示しないヒータを取り付け、該原料ガス供給管の内部を流れるキャリアガスとガス化した有機化合物の混合ガスが凝縮しないように、60〜90℃、例えば、例えば70℃に保持することができる。
符号15は第1の原料ガス導入管本体である。第1の原料ガス導入管本体15は、第1の原料ガス導入管12から供給された原料ガス及び酸素ガスを後述の第2の原料ガス導入管16に供給する。該第1の原料ガス導入管本体15には、それに付属のフランジ15aと第2の原料ガス導入管16のフランジ16aの接続組み立て作業の便利性を考慮して、図示しない作業用扉が設けられる。なお、第2の原料ガス導入管16を第1の原料ガス導入管本体15から分離しておくと、後述の第3の同軸ケーブル25を敷設する際に、組み立て作業が容易にできる。
符号16は第2の原料ガス導入管である。第2の原料ガス導入管16は、第1の原料ガス導入管本体15から供給された原料ガスを成膜対象のプラスチック容器の内部に供給する。また、第2の原料ガス導入管16の内部には、後述の第3の同軸ケーブル25が敷設される。第2の原料ガス導入管16の外径は、成膜対象のプラスチック容器の口部10cの内径より小さい。ここでは、成膜対象を500ccPETボトルとしているので、そのサイズを考慮して、14mm程度〜17mm程度、例えば17mmとする。また、第2の原料ガス導入管16の内径は、第3の同軸ケーブル25の外径より大きい。ここでは、10mm程度〜15mm程度、例えば15mmとする。
なお、本実施形態では、成膜対象のプラスチック容器10を垂直方向に、即ち、図1図示のように、その口部10cを下側にその底10dを上側に設置することを想定しているので、第2の原料ガス導入管16は第1の原料ガス導入管本体15の上に鉛直方向に設置される。
また、第2の原料ガス導入管16は、第1の原料ガス導入管本体15を介して、電気的に真空容器本体1と電気的に接続され、接地される。
符号17は真空容器の排気孔である。該排気孔17は図示しない真空ポンプと後述の排気管18と組み合わせて用いられ、第1の真空容器本体1の内部及びプラスチック容器10の内部のガスを排気する。
符号18は排気管である。排気管18は図示しない真空ポンプと排気孔17と組み合わせて用いられ、第1の真空容器本体1の内部及びプラスチック容器10の内部のガスを排気する。
符号19は排気用の隙間で、第1の容器収納器3の内部の排気に用いられる。即ち、隙間19は、成膜対象のプラスチック容器10が第1の容器支持板2に設置され、容器収納器3が取り付けられた後の真空引きにおいて、プラスチック容器10及び原料ガス導入管本体15の内部のガスを、排気孔17、排気管18及びと図示しない真空ポンプとを用いて排気する際、排気通路として用いられる。
また、隙間19は該プラスチック容器10の内壁に薄膜を形成する際、一対の電極26、27間に供給される原料ガスを排気するための排気通路として用いられる。
真空容器本体1内の圧力は、図示しない圧力計によりモニターされ、図示しない圧力調整弁により自動的に所定の値に調整、設定される。
ここでは、原料ガス、即ち、後述のガス化された有機珪素化合物とキャリアガスの混合ガスが流量5sccm〜500sccmの範囲で、酸素ガスが10sccm〜1000sccmの範囲の場合、圧力1.33Pa(0.01Torr)〜266Pa(2Torr)程度に調整できる。
第1の真空容器本体1の真空到達圧力は2.66〜3.99E−5Pa(2〜3E−7Torr)程度である。なお、成膜するに際し、成膜対象のプラスチック容器10を第1の容器収納器3に設置した後に行う第1の真空容器本体1の内部の排気は、膜質に及ぼす大気ガスの影響がほとんど無い場合、該真空到達圧力まで圧力を下げる必要なく、10−2Torr(1.33Pa)程度でも良い。
図1〜図5において、符号20は高周波電源である。高周波電源20は、周波数10〜100MHzの範囲で、任意の周波数の正弦波を発生し、それを増幅し、高周波電力として外部回路に供給する。ここでは、周波数を13.56MHzとする。その出力は、例えば、2W〜500Wの範囲で、任意に設定できる。
高周波電源20には、図示しない進行波モニター(出力である進行波のモニター)と反射波モニター(下流側から戻ってくる反射波のモニター)が付属している。また、反射波から本電源回路を防護するためのアイソレータが付属している。なお、該電源20の出力を後述の一対の電極に供給する際は、後述の整合器と組み合わせてインピーダンスの調整を行う。
符号21は、第1の同軸ケーブルである。第1の同軸ケーブル21は高周波電源20の出力を後述の整合器22に送電する。
符号22は整合器である。整合器22は、後述の第2の同軸ケーブル23、同軸用電流導入端子24、第3の同軸ケーブル25を介して、高周波電源20の出力を後述の非接地電極26及び接地電極27に供給する際に、その一対の電極26、27間のインピーダンスと高周波電源20の出力インピーダンスの整合を取るものである。
なお、インピーダンスの調整は次のように行う。即ち、高周波電源20に付属した進行波モニター及び反射波モニターの値を見ながら、整合器22の出力側のリアクタンス(LとC)を調整する。そのリアクタンス(LとC)を調整しながら、反射波が最小となる条件を選定する。この整合器22の調整は、プラズマ生成の条件を大幅に代えない限り、大幅な変化はないので、特に多くの時間を必要としない。また、成膜条件を一旦設定し、その条件でインピーダンスの調整を行えば、その条件を変更しない限り、その後は高周波電源の出力を調整するだけで良い。
符号23は、第2の同軸ケーブルである。第2の同軸ケーブル23は整合器22の出力を同軸用電流導入端子24を介して、第3の同軸ケーブル25に送電する。
符号24は同軸用電流導入端子である。同軸用電流導入端子24は真空容器の気密を保持し、第2の同軸ケーブルと後述の第3の同軸ケーブル25を接続する。
符号25は、第3の同軸ケーブルである。第3の同軸ケーブル25は、第2の原料ガス導入管16の内部に敷設され、同軸用電流導入端子24を介して送電された高周波電源20の電力を後述の一対の電極に送電する。
第3の同軸ケーブル25の外径は、第2の原料ガス導入管16の内径より小さく、5mm程度〜10mm程度、ここでは、例えば、6.35mmとする。第3の同軸ケーブル25の長さは任意である。なお、本実施例では、成膜対象のプラスチック容器を鉛直に設置することを想定しているので、該第3の同軸ケーブル25は、真空容器1の底面の上に鉛直方向に設置される。その長さは、成膜対象のプラスチック容器の長さと上述の第1のスペーサ8の厚みを考慮して設定される。
図1〜図5において、符号25a、25b及び25cは、それぞれ、第3の同軸ケーブル25の外部導体、誘電体及び内部導体である。なお、一般的に、同軸ケーブルは、外部導体、誘電体及び内部導体で構成され、送電損失が少なく、効率よく高周波電力を送電することが出来る。
同軸ケーブルの特性インピーダンスZは概略、次の式で計算されることが知られている。この計算式を参考に、外部導体、誘電体及び内部導体のサイズ、及び誘電体の誘電率を適宜、選ぶことにより、所要の特性インピーダンスをもつ同軸ケーブルを得ることが出来る。
(Ω)=138xlog(D/d)x(ε)−1/2
ただし、D:外部導体の内径、d=内部導体の外径、ε:比誘電率。
なお、誘電体がアルミナの場合、ε=8.5、D/d=3.5として、25.7Ωで、誘電体がポリエチレンの場合、ε=2.3、D/d=3.5として、49.5Ωである。
例えば、外部導体の外径=6.35mm、誘電体(フッ化樹脂)の外径=5.31mm及び内部導体の外径=1.63mmで、特性インピーダンス50Ωという仕様のセミリジッドの同軸ケーブルが市販されている。
ここでは、第3の同軸ケーブル25として、外部導体の外径=6.35mm、誘電体(フッ化樹脂)の外径=5.31mm及び内部導体の外径=1.63mmで、特性インピーダンス50Ωという仕様の市販品(セミリジッドの同軸ケーブル)を用いる。
図1〜図5において、符号26は棒形状の非接地電極である。棒形状の非接地電極26は、第2の原料ガス導入管16の内径より小さい外径を有し、その外径は概略1mm程度ないし第2の原料ガス導入管の内径以下である。ここでは、その外径を、第3の同軸ケーブルの外径6.35mmとほぼ等しく、例えば6mmとする。棒状の非接地電極26の長さは、成膜対象のプラスチック容器及び原料ガスの特性に対応して任意に選べる。ここでは、4cm程度〜15cm程度、例えば5cmとする。
符号26aは棒形状の非接地電極の給電点である。棒形状の非接地電極の給電点26aは、第3の同軸ケーブル25の内部導体25cと棒形状の非接地電極26の接続点であり、その点を介して電力が供給される。なお、ここでは、給電点26aを非接地電極の給電点と呼ぶ。
符号27は円筒形状の接地電極である。この接地電極27は棒形状の非接地電極26と組み合わせて用いられる。接地電極27はプラズマ化された原料ガスを外部へ流す、あるいは拡散させる貫通孔28(ここでは第2の拡散孔と呼ぶ)を有する。この接地電極27の外径は、プラスチック容器10の口部10cの内径より小さく、かつ、その内径は棒形状の非接地電極26の外径より大きい。円筒形状の接地電極27の長さは、成膜対象のプラスチック容器及び原料ガスの特性に対応して任意に選べる。ここでは、接地電極27の外径及び内径を、例えば、それぞれ、20mm及び18mmとする。その長さを、4cm程度〜15cm程度、例えば8cmとする。
なお、接地電極と非接地電極の長さに違いがあるのは、後述の接続導体29を設置する際に必要な空所を作るためである。
符号27aは円筒形状の接地電極27の補助管である。補助管27aは円筒形状の接地電極27及び第2の原料ガス導入管16を接続する。なお、補助管27aと第2の原料ガス導入管16との接続は、第2の原料ガス導入管16から一対の電極間に供給される原料ガスが漏れないようになされる。
符号27bは円筒形状の接地電極27の第1の開口である。該第1の開口27bは、後述の原料ガス吹出し孔31aから供給される原料ガスを一対の電極26、27間に導入する。
符号27cは円筒形状の接地電極27の第2の開口である。該第2の開口27cは、後述のプラズマ化された原料ガスを後述の第1のガス排出孔32aへ搬送する。
符号28は第2のガス排出孔である。第2のガス排出孔28は、円筒形状の接地電極27に設けられた貫通孔で、プラズマ化されたガスを一対の電極26、27間の外側へ流す、あるいは拡散させる。このプラズマ化されたガスには、電子やイオンのみならず、薄膜の形成に重要な役割を有する電気的に中性の種々のラジカルが含まれている。ここでは、第2のガス排出孔28の直径を、1mm程度〜5mm程度、例えば、2mmとする。
なお、第2のガス排出孔28の直径が1mm程度より小さい場合、膜付着により短時間で該ガス排出孔28が塞がれ、3mm程度より大きい場合、一対の電極26、27間から流出するガス量が大きくなり、プラズマ生成が不安定になる。
また、第2のガス排出孔28は、開口率40%程度〜60%程度、例えば、開口率50%で設けられる。開口率40%程度以下では第2のガス排出孔を通過するプラズマ化されたガスの流れが少なくなり、開口率60%程度以上になる場合、プラズマ化されたガスの流れが過大になるとともに、一対の電極26、27間でのプラズマ生成が不安定になる。
図4及び図5において、符号29は板バネ状の接続導体である。板バネ状の接続導体29は、第3の同軸ケーブル25の外部導体25aと円筒状の接地電極27を接続する。板バネ状の接続導体29と第3の同軸ケーブル25は接続点30aで、板バネ状の接続導体29と円筒状の接地電極27は接続点30bで接続される。なお、ここでは、接続点30bを接地電極の給電点と呼ぶ。
符号31は整流板である。整流板31は絶縁物で製作され、後述の原料ガス吹出し孔31a有し、第2の原料ガス導入管16から供給された原料ガスの流れをほぼ均一にして、その原料ガスを一対の電極26、27間に供給する。整流板31は取り付ける位置は、接地電極27と第2の原料ガス導入管16の接続部、あるいは接地電極27の開口の近傍とする。
符号31aは原料ガス吹出し孔である。原料ガス吹出し孔31aは直径0.1mm〜2mm程度の孔で、整流板31に多数、穿設される。ここでは、原料ガス吹出し孔31aの直径を、例えば0.5mmとする。なお、原料ガス吹出し孔31aの直径が小さい場合、膜が付着して閉塞するし、大き過ぎるとガス流れの整流効果が弱くなることは、一般に知られる。
符号32は誘電体キャップである。誘電体キャップ32は絶縁物で製作され、棒形状の非接地電極26を固定する。また、後述の第1の排出孔32aを有する。
符号32aは第1のガス排出孔である。第1のガス排出孔32aは、複数個形成され、一対の電極26、27間で生成されたプラズマ化されたガスを、一対の電極26、27間から外側へ排出し、拡散させる。このプラズマ化されたガスには、電子やイオンのみならず、薄膜の形成に重要な役割を有する電気的に中性の種々のラジカルが含まれている。
該ガス排出孔32aは、直径1mm程度〜5mm程度の貫通孔で、例えば3mmとする。なお、直径1mm程度より小さい場合、膜付着により短時間でガス排出孔32aが塞がれ、直径5mm程度より大きい場合、一対の電極26、27間から外側へ流出するガス流れの方向性を制御することが困難になる。
第1のガス排出孔32aの孔の方向は、鉛直方向と鉛直方向から20度〜60度の方向、例えば45度の方向の2つの方向を持たせる。
第1のガス排出孔32aは、開口率40%程度〜80%程度、例えば、開口率50%で設けられる。開口率40%程度以下では第1の拡散孔を通過するプラズマ化されたガスの流れが少なくなり、開口率80%程度以上になる場合、プラズマ化されたガスの流れが過大になり、第2のガス排出孔28からのガス排出の量が少なくなる。
なお、図1〜図5を用いて説明したプラズマ成膜装置の特徴は、次の通りである。
即ち、排気系を備えた真空容器本体1と、被処理容器のプラスチック容器10を収納する空所を備えた容器収納器3と、該プラスチック容器を支持する容器支持板2と、プラズマ生成の電界を発生する接地電極27と非接地電極26から成る一対の電極と、原料ガス源に連通した原料ガス導入管16で搬送される原料ガスを該一対の電極26、27間に供給する原料ガス吹出し孔31aと、該一対の電極26、27に同軸ケーブル25及び整合器22を介して電力を供給する高周波電源20と、該一対の電極間でプラズマ化されたガスをその外部へ排出するガス排出孔32aと、を具備し、
生成したプラズマを利用して口部を有するプラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜装置であって、
該一対の電は、円筒形状の接地電極27とその軸心に配置された棒形状の非接地電極26から成り、且つ、該一対の電は、該プラスチック容器10の内部に挿入されるという構成を有することを特徴とする。
また、図1〜図5に図示のプラズマ成膜装置において、円筒形状の接地電極27は、プラスチック容器の口部10cの内径より小さい外径を有することを特徴とする。
また、円筒形状の接地電極27は、プラスチック容器10の口部10cの内径より小さい外径を有することを特徴とする。
また、第2の原料ガス導入管16は、前記プラスチック容器の口部10cの内径より小さい外径を有し、第3の同軸ケーブル25は該原料ガス導入管の内径より小さい外径を有することを特徴とする。
また、第2の原料ガス導入管16は、第1の容器支持板2に設けられた貫通孔2bを貫いて第1の容器収納器3の空所に配置されることを特徴とする。
また、第3の同軸ケーブル25は第2の原料ガス導入管16の内部を貫いて配置されるとともに、第3の同軸ケーブル25の入力端は該高周波電源20に整合器24を介して接続され、第3の同軸ケーブル25の出力端の中心導体及び外部導体はそれぞれ非接地電極26及び接地電極27に接続されることを特徴とする。
また、第2の原料ガス導入管16は、導体の部材で形成され、電気的に接地されるとともに、第3の同軸ケーブル25の出力端の外部導体と導体で接続されることを特徴とする。
図1及び図6において、符号40は有機化合物供給源である。有機化合物供給源40は、有機化合物を貯蔵するであり、その容器にテトラエトキシシラン(TEOS)、ジエチルジメチルシラン(DEDMS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、あるいはヘキサメチルトリシロキサン(HMTSO)等の液状の有機珪素化合物が貯蔵される。
ここでは、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を貯蔵する。なお、容器40には図示しない圧力計と圧力制御のリーク弁が付属されており、容器40の気相部分の圧力が、例えば1気圧以上になると、自動的に図示しない排気ラインに排出される。
符号41は第1の有機化合物搬送管である。第1の有機化合物搬送管41は、有機化合物を有機化合物供給源40から後述の液体流量計42へ搬送する。
符号42は液体流量計である。液体流量計42は予め設定された有機化合物の流量値を制御し、その量を下流側へ送出する。なお、液体流量計42には、一般に市販されている装置が使える。制御できる範囲は、一般に任意の数値が選べる。ここでは、1sccm〜50sccmの範囲で、例えば、10sccmとする。
符号43は第2の有機化合物搬送管である。第2の有機化合物輸送管43は、有機化合物を液体流量計42から後述の気化器44へ搬送する。
符号44は気化器である。気化器44は、該気化器44に流入した有機化合物を気化する。なお、気化器44には、一般に市販されている装置が使える。気化した有機化合物のガスは、後述のキャリアガスと一緒に、第3の有機化合物輸送管45を介して、第1の流路開閉弁46に送出される。なお、気化器44にはキャリアガスが後述のキャリアガス流量計49から第2のキャリアガス管50を介して流入する。
符号45は第3の有機化合物搬送管である。第3の有機化合物搬送管45は、キャリアガスとガス化した有機珪素化合物の混合ガスを気化器44から後述の流路開閉弁46へ搬送する。なお、第3の有機化合物搬送管45には、図示しないヒータを取り付け、該管45の内部を流れるキャリアガスとガス化した有機珪素化合物の混合ガスが凝縮しないように、有機化合物供給源40の有機化合物の物性値を考慮して、例えば70℃に保持することができる。
符号46は第1の流路開閉弁である。第1の流路開閉弁46は、開の場合は、キャリアガスとガス化した有機珪素化合物の混合ガスを第3の有機化合物搬送管45から原料ガス供給管14へ搬送する。閉の場合は、図示しない排気ラインへ排出する。なお、第1の流路開閉弁46には、図示しないヒータを取り付け、該第開閉弁46の内部を流れるキャリアガスとガス化した有機珪素化合物の混合ガスが凝縮しないように、有機化合物供給源40の有機化合物の物性値を考慮して、例えば70℃に保持することができる。
符号47はキャリアガス供給源で、例えば、アルゴンガス、ヘリウム、あるいは水素ガス等のボンベが用いられる。ここでは、アルゴンガスが充填されたボンベを用いる。
符号48は第1のキャリアガス管で、キャリアガスをその供給源47から後述のキャリアガスの流量計49へ搬送する。
符号49はキャリアガスの流量計で、キャリアガスの流量を5sccm〜500sccmの範囲の任意の値に、例えば、50sccmに制御することができる。
符号50は第2のキャリアガス管で、キャリアガスをキャリアガスの流量計49から気化器44へ搬送する。
図1及び図6において、符号51は酸素ガスの供給源である。ここでは、酸素ガスが充填されたボンベを用いる。
符号52は第1の酸素ガス管で、酸素ガスをその供給源51から後述の酸素ガスの流量計53へ搬送する。
符号53は酸素ガスの流量計で、酸素ガスの流量を5sccm〜500sccmの範囲の任意の値に、例えば、100sccmに制御することができる。
符号54は第2の酸素ガス管で、酸素ガスを酸素ガスの流量計53から後述の第2の流路開閉弁55へ搬送する。
符号55は第2の流路開閉弁である。第2の流路開閉弁55は、開の場合、酸素ガスを第2の酸素ガス管から原料ガス供給管14へ搬送する。閉の場合は、酸素ガスを図示しない排気ラインへ排出する。
なお、前述の原料ガス供給管14には、図示しないヒータを取り付け、該原料管の内部を流れるキャリアガスとガス化した有機化合物の混合ガスが凝縮しないように、有機化合物供給源40の有機化合物の物性値を考慮して、例えば70℃に保持することができる。
ここで、有機化合物供給源40、第1の有機化合物輸送管41、液体流量計42、第2の有機化合物輸送管43、キャリアガス供給源47、第1のキャリアガス管48、キャリアガスの流量計49、第2のキャリアガス管50、気化器44、第3の有機化合物輸送管45、第1の流路開閉弁46及び原料ガス供給管14から成る、キャリアガスと気化した有機化合物の混合ガスの供給設備を、原料ガス供給装置57と呼ぶ。
そして、酸素ガスの供給源51、第1の酸素ガス管52、酸素ガスの流量計53、第2の酸素ガス管54及び第2の流路開閉弁55からなる酸素ガス供給設備を、酸素ガス供給装置58と呼ぶ。
次に、上述のプラズマ成膜装置、即ち、図1〜図6に図示したプラズマ成膜装置を用いて、プラスチック容器の内壁に酸化シリコン膜を形成する方法を説明する。
酸化シリコン膜の形成に際し、原料ガス、キャリアガス、圧力及び投入すべき電力等については、公知の製膜条件を参考に行う。
(プラズマ生成状況の観察)
図1〜図6において、被処理容器のプラスチック容器10として、例えば、容量500ccのPETボトルを用意する。
次に、一対の電極26、27の内部、あるいは周辺に異常放電等の不適合の現象が発生していないことを確認し、プラスチック容器10と一対の電極26、27の位置関係を調整するために、プラズマ生成状況の観察を行う。
ここでは、以下に説明するように、その観察で得られる情報及び成膜データを基にプラスチック容器の底10dと一対の電極26、27に付属の誘電体キャップ32の間の距離を設定する。
図1〜図5に図示のプラズマ成膜装置において、一対の電極26、27に付属の誘電体キャップ32とプラスチック容器10の底10dとの間の距離が、成膜対象のプラスチック容器10の胴体部直径10aの1/1、該直径の1/2、及び該直径の1/4になるように調整する手段を、予め用意する。
ここでは、その手段として、第1の真空容器本体1と第1の容器支持板2の間に設置する厚みの異なる3枚の第1のスペーサ8を用意する。なお、該誘電体キャップ32と該プラスチック容器10の底10dとの間の距離が該容器10の胴体部直径の1/1に成るように用意された第1のスペーサ8を第1のスペーサ8aと呼ぶ。同様に、該距離が該胴体部直径の1/2に成るように用意された第1のスペーサ8を第1のスペーサ8bと呼ぶ。同様に、該距離が該胴体部直径の1/4に成るように用意された第1のスペーサ8を第1のスペーサ8cと呼ぶ。
次に、上記3枚の第1のスペーサ8a、8b、8cの中から第1のスペーサ8b(誘電体キャップ32とプラスチック容器10の底10dとの間の距離が該容器10の胴体部直径の1/2)を選び、第1の真空容器本体1と第1の容器支持板2の間に設置する。
次に、容量500ccのPETボトルを、第1の容器支持板2に設けられた貫通孔2bの縁に該PETボトルのサポートリング10dが接するように設置する。そして、透明材料で作製された第1の容器収納器3aを、フランジ3c及びボルト3dを用いて、第1の容器支持板2に真空漏れが無いように取り付ける。
次に、第1の流路開閉弁46及び第2の流路開閉弁55が閉であることを確認し、図示しない真空ポンプを作動させる。これにより、PETボトル10、第1の容器収納器3a、第1の原料ガス導入管本体15及び第1の真空容器本体1の内部のガスが排気される。第1の真空容器本体1の内部の真空到達圧力は2.66〜3.99E−5Pa(2〜3E−7Torr)程度である。なお、成膜するに際し、成膜対象のプラスチック容器を第1の容器収納器3に収納した後に行う第1の真空容器本体1及び第1の容器収納器3の内部の排気は、膜質に及ぼす大気ガスの影響がほとんど無い場合、該真空到達圧力まで圧力を下げる必要なく、10−2Torr(1.33Pa)程度でも良い。
次に、排気を継続しながら、原料ガス供給装置57及び酸素ガス供給装置58から供給される原料ガスの流量を調整し、第1の流路開閉弁46及び第2の流路開閉弁55を開にし、原料ガスを第1の原料ガス導入管12、原料ガス導入管本体15および第2の原料ガス導入管16を介して整流板31に設けられた原料ガス吹出し孔31aから、一対の電極26、27に搬送する。該原料ガスは、原料ガス吹出し孔31aから接地電極27の開口27bを通り、一対の電極26、27間に導入される。該一対の電極26、27間に導入された原料ガスは接地電極27の開口27cを経て誘電体キャップ32に設けられた第1のガス排出孔32aから一対の電極26、27間の外へ排出されるとともに、接地電極27に設けられた貫通孔である第2のガス排出孔28からも排出される。第1のガス排出孔32aと第2のガス排出孔28から排出された原料ガスの流れは、模式的には、図1に点線の矢印で示した流れ33のようになる。
なお、ここでは、原料ガスとして、ガス化された有機珪素化合物とキャリアガスの混合ガス及び酸素ガスを用いる。有機珪素化合物としてはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を、キャリアガスとしてアルゴンガスを用いる。原料ガスの流量は、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)の液体流量:10sccm、アルゴンガスの流量:50sccm、酸素ガスの流量:100sccmとする。
第1の真空容器本体1内の圧力は、図示しない圧力計によりモニターされ、図示しない圧力調整弁により自動的に所定の値に調整、設定される。ここでは、0.5Torr(66.65Pa)に設定する。
次に、高周波電源20と整合器22と第1の同軸ケーブル21と第2の同軸ケーブル23と第3の同軸ケーブル25から成る電力供給装置を用い、非接地電極26と接地電極27から成る一対の電極に高周波電力を供給する。この高周波電力を一対の電極26、27に供給するに際、高周波電源20に付属した進行波モニター及び反射波モニターの値を見ながら、整合器22の出力側のリアクタンス(LとC)を調整する。そのリアクタンス(LとC)を調整しながら、反射波が最小となる条件を選定する。高周波電源20の出力は、例えば、20W〜300W程度の範囲、ここでは100Wとする。そして、一定出力に保持し、例えば30秒間供給する。
該高周波電源20の出力は、図3及び図5に図示の非接地電極の給電点26a及び接地電極の給電点30bを介して、一対の電極26、27に供給される。一対の電極26、27に電力が供給されると、原料ガスとして供給されているガス化された有機珪素化合物とキャリアガスと酸素ガスの混合ガスがプラズマ化される。
このプラズマの発光状況は、PETボトル10と第1の容器収納器3aが透明材料であり、円筒形状の接地電極には直径2mmの第2のガス排出孔(貫通孔)28が開口率50%で形成されているので、外部から観察できる。この観察により、一対の電極26、27間のプラズマ発光の善し悪しが評価される。即ち、設定された圧力条件に不適合なことが有る場合は、一対の電極26、27間のプラズマ発光が非一様になる。また、供給電力の値に不適合なことが有る場合は、一対の電極26、27の内外に異常放電が発生する。その結果、その不適合なことが容易に、発見される。一対の電極26、27間のプラズマ生成に不適合なことが無い場合は、そのプラズマ発光は一様になる。
ここでは、図1図示の構成を有するプラズマ成膜装置を用いたPETボトル内壁への薄膜形成でのプラズマ生成に関し、例えば、一対の電極26、27間のプラズマ発光が一様であり、その内部及びその周辺に異常放電がないことが確認される。
なお、製膜速度の増大化には、一般に、原料ガスの流量を増大する、あるいは高周波電力の出力を増大する、あるいは周波数として13.56MHzに代えてVHF帯域(30MHz〜300MHz)の超高周波数を採用することが有効である、ということが知られている。
原料ガスがプラズマ化されると、放電によって生じる電子及びイオンだけでなく、分子の解離及び励起等に伴って生成される電気的に中性の種々のラジカル(化学的活性種)が発生する。そのラジカルは第1及び第2のガス排出32a、28を介して、拡散現象及びガスの流れにより、一対の電極の外側へ移動する。
一対の電極の外側に移動したラジカルは、拡散現象及びガスの流れによって、上流から下流へ拡散する。図1図示の配置では、成膜に寄与するラジカルはプラスチック容器10の底10d近傍及び胴体部10a周辺から、肩部10b、口部10cへと移動する。その結果、プラスチック容器10の内壁に一様な薄膜が形成される。
次に、上述の高周波電源20から一対の電極2627への電力供給が30秒間経過したら、その電源出力をゼロに落とし、第1の流路開閉弁46及び第2の流路開閉弁55を閉とする。
そして、第1の真空容器本体1の内部圧力が、10−2Torr(1.33Pa)程度に到達したら、真空ポンプを一旦、停止させる。その後、第1の真空容器本体1内部の圧力が大気圧になるまで、図示しない大気開放弁を開にする。第1の真空容器本体1内部の圧力が大気圧に戻ったことを確認し、第1の容器収納器3aを開放し、取り外す。なお、次段階の作業の便宜のため、図示しない大気開放弁を閉に戻す。その後、成膜が終了したPETボトル10を取り出す。
成膜が終了したPETボトル10の内壁に形成された薄膜、即ち、底部10d、胴体部10a、肩部10b、口部10cの薄膜を、例えば、分光エリプソメトリで測定し、評価する。
次に、第1のスペーサ8bに代えて、第1のスペーサ8a((誘電体キャップ32とプラスチック容器10の底10dとの間の距離が該容器10の胴体部直径の1/1)を、第1の真空容器本体1と第1の容器支持板2の間に取り付ける。
そして、新たに用意されたPETボトルを用いて、上述の第1のスペーサ8bを備えたプラズマ成膜装置の場合と同じ手順で、プラズマ生成状況を観察するとともに、PETボトル10の内壁へ薄膜を形成する。そして、成膜が終了したPETボトル10の内壁に形成された薄膜、即ち、底部10d、胴体部10a、肩部10b、口部10cの薄膜を、例えば、分光エリプソメトリで測定し、評価する。
次に、第1のスペーサ8aに代えて、第1のスペーサ8c(該誘電体キャップ32と該プラスチック容器10の底10dとの間の距離が該容器10の胴体部直径の1/4)を、第1の真空容器本体1と第1の容器支持板2の間に取り付ける。
そして、新たに用意されたPETボトルを用いて、上述の第1のスペーサ8bを備えたプラズマ成膜装置の場合と同じ手順で、プラズマ生成状況を観察するとともに、PETボトル10の内壁へ薄膜を形成する。そして、成膜が終了したPETボトル10の内壁に形成された薄膜、即ち、底部10d、胴体部10a、肩部10b、口部10cの薄膜を、例えば、分光エリプソメトリで測定し、評価する。
上述の第1のスペーサ8a、8b及び8cを備えたプラズマ成膜装置を用いて、それぞれに行うプラズマ生成状況の観察の結果と、成膜が終了したPETボトル10の内壁に形成された薄膜の膜厚の測定及びその評価の結果を基に、第1のペーサ8a、8b及び8cの中から、最もよいものを選定する。
ここでは、例えば、第1のスペーサ8b(該誘電体キャップ32と該プラスチック容器10の底10dとの間の距離が該容器10の胴体部直径の1/2)を用いるのが良いと判断する。
(酸化シリコン膜の形成)
上述のプラズマ生成状況の観察において、一対の電極26、27の内部、あるいは周辺に異常放電等の不適合の現象が発生していないことが確認され、プラスチック容器10と一対の電極26、27の位置関係を調整する第1のスペーサ8の選定ができたので、次段階の工程に移る。なお、ここでは、第1のスペーサ8bを用いる。また、第1の容器収納器3として、金属で作製された第1の容器収納器3bを用いる。
図1〜図5に図示のプラズマ成膜装置において、被処理容器のプラスチック容器10として、例えば、容量500ccのPETボトルを第1の容器支持板2の貫通孔2bの縁に該PETボトルのサポートリング10dが接するように設置する。
そして、金属で作製された第1の容器収納器3bを、フランジ3c及びボルト3dを用いて、第1の容器支持板2に真空漏れが無いように取り付ける。
次に、第1の流路開閉弁46及び第2の流路開閉弁55が閉であることを確認し、図示しない真空ポンプを作動させる。これにより、PETボトル10、第1の容器収納器3b、第1の原料ガス導入管本体15及び第1の真空容器本体1の内部のガスが排気される。第1の真空容器本体1の内部の真空到達圧力は2.66〜3.99E−5Pa(2〜3E−7Torr)程度である。なお、成膜するに際し、成膜対象のプラスチック容器を真空容器10に設置した後に行う真空引きは、膜質に及ぼす大気ガスの影響がほとんど無い場合、該真空到達圧力まで圧力を下げる必要なく、10−2Torr(1.33Pa)程度でも良い。
次に、排気を継続しながら、原料ガス供給装置57及び酸素ガス供給装置58から供給される原料ガスの流量を調整し、第1の流路開閉弁46及び第2の流路開閉弁55を開にし、原料ガスを第1の原料ガス導入管12、原料ガス導入管本体15および第2の原料ガス導入管16を介して整流板31に設けられた原料ガス吹出し孔31aから、一対の電極26、27に搬送する。該原料ガスは、原料ガス吹出し孔31aから接地電極27の開口27bを通り、一対の電極26、27間に導入される。該一対の電極26、27間に導入された原料ガスは、接地電極27の開口27cを経て誘電体キャップ32に設けられた第1のガス排出孔32aから一対の電極26、27間の外へ排出されるとともに、接地電極27に設けられた貫通孔である第2のガス排出孔28からも排出される。第1のガス排出孔32aと第2のガス排出孔28から排出された原料ガスの流れは、模式的には、図1に点線の矢印で示した流れ33のようになる。
なお、ここでは、原料ガスとして、ガス化された有機珪素化合物とキャリアガスの混合ガス及び酸素ガスを用いる。有機珪素化合物としてはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を、キャリアガスとしてアルゴンガスを用いる。原料ガスの流量は、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)の液体流量:10sccm、アルゴンガスの流量:50sccm、酸素ガスの流量:100sccmとする。
次に、第1の真空容器本体1内の圧力は、図示しない圧力計によりモニターされ、図示しない圧力調整弁により自動的に所定の値に調整、設定される。ここでは、0.5Torr(66.65Pa)に設定する。
次に、高周波電源20と整合器22と第1の同軸ケーブル21と第2の同軸ケーブル23と第3の同軸ケーブル25から成る電力供給装置を用い、非接地電極26と接地電極27から成る一対の電極に高周波電力を供給する。この高周波電力を一対の電極26、27に供給するに際、高周波電源20に付属した進行波モニター及び反射波モニターの値を見ながら、整合器22の出力側のリアクタンス(LとC)を調整する。そのリアクタンス(LとC)を調整しながら、反射波が最小となる条件を選定する。高周波電源20の出力は、例えば、20W〜300W程度の範囲、ここでは100Wとする。そして、一定出力に保持し、例えば1秒〜30秒間、ここでは15秒間供給する。
該高周波電源20の出力は、図3及び図5に図示の非接地電極の給電点26a及び接地電極の給電点30bから、一対の電極に供給される。一対の電極26、27に電力が供給されると、原料ガスとして供給されているガス化された有機珪素化合物とキャリアガスと酸素ガスの混合ガスがプラズマ化される。
なお、製膜速度の増大化には、一般に、原料ガスの流量を増大する、あるいは高周波電力の出力を増大する、あるいは周波数として13.56MHzに代えてVHF帯域(30MHz〜300MHz)の超高周波数を採用することが有効である、ということが知られている。
原料ガスがプラズマ化されると、放電によって生じる電子及びイオンだけでなく、分子の解離及び励起等に伴って生成される電気的に中性の種々のラジカル(化学的活性種)が発生する。そのラジカルは第1及び第2のガス排出孔32a、28を介して拡散現象及びガスの流れにより、一対の電極の外側へ移動する。
一対の電極の外側に移動したラジカルは、拡散現象及びガスの流れにより、上流から下流へ拡散する。図1図示の配置では、成膜に寄与するラジカルはプラスチック容器10の底10d近傍及び胴体部10a周辺から、肩部10b、口部10cへと移動する。その結果、プラスチック容器10の内壁に一様な薄膜が形成される。
次に、上述の高周波電源20から一対の電極26、27への電力供給が15秒間経過した時点で、その電源の出力をゼロに落とし、第1の流路開閉弁46及び第2の流路開閉弁55を閉とする。そして、真空容器本体1の内部圧力が、10−2Torr(1.33Pa)程度に到達したら、真空ポンプを一旦、停止させる。その後、第1の真空容器本体1内部の圧力が大気圧になるまで、図示しない大気開放弁を開にする。第1の真空容器本体1内部の圧力が大気圧に戻ったことを確認し、第1の容器収納器3bを開放し、取り外す。なお、次段階の作業の便宜のため、図示しない大気開放弁を閉に戻す。
その後、成膜が終了したPETボトル10を取り出す。そして、次に成膜するPETボトル10を第1の収納容器3bの内部に収納する。
交換されたプラスチック容器10の成膜については、上記手順を繰り返し行う。
上述の本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜装置を用いたプラズマ成膜法の特徴を纏めると、次の通りである。
従来の技術では、プラスチック容器の外側に配置される外部電極と該容器の内部に配置される内部電極でプラスチック容器を挟んでプラズマを生成するという装置構成、即ち、非接地電極と接地電極の間に誘電体材料であるプラスチック容器が設置されるという装置構成をとるが、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜方法では、一対の電極がプラスチック容器の中に挿入されるという装置構成、即ち、非接地電極と接地電極の間にプラスチック容器は設置されないという装置構成を有する。
従来の技術では、一対の電極による原料ガスのプラズマ化の際にプラスチック容器の誘電率、形状、凹凸及び厚み等の影響を受けるが、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜方法では、その影響を受けない。
また、従来の技術では、一対の電極と高周波電源に接続された同軸ケーブルの出力端との接続点である給電点がプラスチック容器を収納する容器収納器の外面に位置するので、供給された電力がプラスチック容器内部でのプラズマ生成に有効に消費される割合が低く、供給電力のプラズマ生成への消費効率が悪い。
これに対して、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜方法では、該給電点がプラスチック容器内部に位置するので、プラズマ生成に有効に消費される割合が高い。
上記相違点により、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜方法では、従来の技術が有する次の問題が解消される。即ち、従来技術には、
(1)外部電極の内側の形状がプラスチック容器の外部の形状と相似形にならない場合、その内壁に形成の膜の厚みが不均一になる、という問題、あるいは、外部電極と内部電極の間に設置される誘電体製の外筒の厚みがプラスチック容器の形状にほぼ相似形でない場合、口部の内壁及び肩部の内壁での膜厚みは胴体部の内壁に形成される膜と異なり、不均一となる、という問題、
(2)外部電極と容器の間に生じる隙間、あるいは不均一な電界分布によりプラスチック容器の内外面の近傍に異常放電が生じる、という問題、
(3)プラスチック容器と外部電極の間の隙間に生じる放電、あるいは外部電極に蓄積された熱によってプラスチック容器に熱変形が発生する、という問題、
(4)プラスチック容器の形状や大きさを変えるたびに、その外部形状に相似の形状を有する外部電極一式に交換する必要があることから、生産設備としての応用において、装置操作上不便であるのみならず、稼働率が低減して生産コストが増大する、という問題、
(5)空洞の形を有する接地電極あるいは非接地電極に整合器に接続された同軸ケーブルの中央導体、あるいは外部導体を接合して電磁波のエネルギーを供給するので、該同軸ケーブルと一対の電極の間の導体線あるいは金属の壁で構成される送電路で電磁放射が発生し、多大の電力損失が発生するという問題があるが、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜方法によれば、それらは解消される。
以上の説明において、プラズマ成膜装置での被処理容器の本数を1個としたが、複数のプラスチック容器の内壁に薄膜を同時に形成する場合においても、同様の配置で行えるので、その説明を省略する。即ち、複数の貫通孔を有する第1の容器支持手段2を真空容器本体1に設置し、複数の被処理容器に対して、それぞれに同軸ケーブル25に接続された一対の電極26、27と、ガス導入管16と、第1の容器収納器3を並列に設置するという装置構成を用いることで、容易に適用可能である。
また、以上の説明において、プラズマ成膜装置で取り扱う薄膜を、一例として、酸化シリコン膜(SiOx)としたが、本発明は酸化シリコン膜(SiOx)以外の薄膜の形成に適用可能である。
例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を形成する場合、メタンやエタンやプロパン等のアルカン類、あるいは、エチレンやプロピレンやブテン等のアルキン類、あるいは、ベンゼンやトルエンやナフタリン等の芳香族炭化水素が用いることにより、容易に適用可能である。この場合、水素(H2)を希釈ガスとして用いられる。
例えば、窒化シリコン(SiNx)膜を形成する場合、シラン(SiH4)と窒素(N2)とアンモニア(NH3)、あるいはジシラン(Si2H6)と窒素(N2)とアンモニア(NH3)が用いることにより、容易に適用可能である。なお、この場合、アルゴンやヘリウム等の希ガスを希釈ガスとして用いられる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜装置を用いたプラズマ成膜法を、図7〜図9を参照して説明する。なお、図1〜図6も参照する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置を示す模式的構成図である。図8は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる棒形状の非接地電極と円筒形状の接地電極からなる一対の電極を示す模式的構成図である。図9は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置に用いられる容器支持板の模式的断面図である。
先ず、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置の構成について、図7〜図9を参照して説明する。
図7〜図9において、符号61は第2の真空容器本体である。この第2の真空容器本体61の断面形状は任意の形状でよい。ここでは、例えば円形とする。第2の真空容器本体61には、後述の第2の容器支持板62、第2の原料ガス導入管16、第3の同軸ケーブル25及び排気孔17等が配置される。なお、第2の真空容器本体61には、フランジ61a及びフランジ61bが設けられる。
符号62は第2の容器支持板である。第2の容器支持板62は被処理容器のプラスチック容器10を収納する際、後述の第2の容器収納器63と組み合わせて用いられる。第2の容器支持板62の中央部に貫通孔62bが穿設され、その近傍に通気孔62cが穿設される。また、第2の容器支持板62にはプラスチック容器10の口部10cに接する開口62aが設けられる。この開口62aは貫通孔62bの上部分の内径を拡幅したもので、互いに連通している。そして、第2の容器支持板62は、図7に示すように、貫通孔62bを介し、後述のスペーサ68とフランジ16aを用いて第2の原料ガス導入管16に固定される。
なお、開口62aの内径はプラスチック容器の口部10cの外径より大きく、サポートリング10eの外径より小さくなるように形成される。また、通気孔62cは主として、プラスチック容器10内部の排気、プラスチック容器10内部のプラズマ化された原料ガスの排気及び第2の原料ガス管本体の内部の排気に用いられる。
また、第2の容器支持板62は、図9に示される構造に限定されず、取り付け作業を容易とするために、図9図示の第2の容器支持板62を半割にしたような様態をもつ構造でも良い。
符号63は第2の容器収納器である。第2の容器収納器63は、第2の容器支持板62と組み合わせて用いられることにより、被処理容器のプラスチック容器10を収納する。第2の容器収納器63の形状は底付きの円筒状であり、その内径はプラスチック容器の外径より約0.3〜0.5mm程度大きい。また、該第2の容器収納器63の深さは、プラスチック容器10の高さとほぼ同じ、あるいは、その高さより短くする。その材料は任意であり、ここでは、プラスチックあるいは金属が用いられる。
なお、プラスチック容器10を収納するに際し、例えば、Oリング70を用いて、第2の容器収納器63と第2の真空容器本体61のフランジ61aの間の真空漏れを防ぐ。
符号65は第2の原料ガス導入管本体である。第2の原料ガス導入管本体65は、第1の原料ガス導入管12から供給された原料ガスを第2の原料ガス導入管16に供給する。第2の原料ガス導入管本体65と第2の真空容器本体61との接続は、フランジ65a、フランジ61b及び図示しないOリングが用いられ、真空漏れが無いようになされる。
符号68は第2のスペーサである。第2のスペーサ68は、第2の容器支持板62と第2の原料ガス導入管16のフランジ16aの間に設置され、一対の電極26、71に付属の誘電体キャップ32と被処理容器のプラスチック容器10の底10dとの間の距離を調整する。ここでは、その距離がプラスチック容器10の直径の1/2に略等しくなるように、第2のスペーサ68の長さを、予め、選定し、用意する。
図8において、符号71は円筒形状の接地電極である。この接地電極71には、2つの開口71b、71c以外に貫通孔は設けられていない。なお、符号71bは円筒形状の接地電極71の第1の開口である。該第1の開口71bは、原料ガス吹出し孔31aから供給される原料ガスを一対の電極26、71間に導入する。また、 符号71cは円筒形状の接地電極71の第2の開口である。該第2の開口71cは、一対の電極26、71間のプラズマ化された原料ガスを第1のガス排出孔32aへ搬送する。
符号71aは円筒形状の接地電極71の補助管である。補助管71aは円筒形状の接地電極71及び第2の原料ガス導入管16を接続する。なお、補助管71aと第2の原料ガス導入管16との接続は、第2の原料ガス導入管16から一対の電極間に供給される原料ガスが漏れないように設置される。
符号72は環状の誘電体である。環状の誘電体72は、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)及び炭化珪素(Si3N4)等の誘電体材料を用いて製作される。なお、一般に、一対の電極間に誘電体を設置する場合、それが設置されない場合に比べ、電極間の電界が弱まり、異常放電あるいは強烈なプラズマの生成が抑制される、ということが知られている。したがって、この環状の誘電体72は、棒形状の非接地電極26の近傍での異常放電を抑制する効果を有する、と考えられる。
また、誘電体72は、棒形状の非接地電極26の表面に直接、誘電体膜を付着しても良い。環状の誘電体72の厚みは0.01mm〜2mm程度である。ここでは0.5mmとする。なお、一般に、一対の電極間に誘電体を設置する場合、それが設置されない場合に比べ、電極間の電界が弱まり、異常放電あるいは強烈なプラズマの生成が抑制される、ということが知られている。
なお、図7〜図9を用いて説明した構成を有するプラズマ成膜装置の特徴は、次の通りである。
即ち、排気系を備えた真空容器本体61と、被処理容器のプラスチック容器10を収納する空所を備えた容器収納器63と、該プラスチック容器を支持する容器支持板62と、プラズマ生成の電界を発生する接地電極71と非接地電極26から成る一対の電極と、原料ガス源に連通した原料ガス導入管16で搬送される原料ガスを該一対の電極26、71間に供給する原料ガス吹出し孔31aと、該一対の電極26、71に同軸ケーブル25及び整合器22を介して電力を供給する高周波電源20と、該一対の電極間でプラズマ化されたガスをその外部へ排出するガス排出孔32aと、を具備し、
生成したプラズマを利用して口部を有するプラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜装置であって、
該一対の電は、円筒形状の接地電極71とその軸心に配置された棒形状の非接地電極26から成り、且つ、該一対の電は、該プラスチック容器10の内部に挿入されるという構成を有することを特徴とする。
また、図7〜図9に図示のプラズマ成膜装置において、円筒形状の接地電極71は、プラスチック容器の口部10cの内径より小さい外径を有することを特徴とする。
また、第2の原料ガス導入管16は、前記プラスチック容器の口部10cの内径より小さい外径を有し、第3の同軸ケーブル25は該原料ガス導入管16の内径より小さい外径を有することを特徴とする。
また、第2の原料ガス導入管16は、第2の容器支持板62に設けられた貫通孔62bを貫いて第2の容器収納器63の空所に配置されることを特徴とする。
また、第3の同軸ケーブル25は第2の原料ガス導入管16の内部を貫いて配置されるとともに、第3の同軸ケーブル25の入力端は該高周波電源20に整合器24を介して接続され、第3の同軸ケーブル25の出力端の中心導体25c及び外部導体25aはそれぞれ非接地電極26及び接地電極71に接続されることを特徴とする。
また、第2の原料ガス導入管16は、導体の部材で形成され、電気的に接地されるとともに、第3の同軸ケーブル25の出力端の外部導体25aと導体29で接続されることを特徴とする。
また、一対の電極間に環状の誘電体72を有することを特徴とする。そして、非接地電極26の表面は誘電体72で被覆されることを特徴とする。
また、容器支持板62は、該容器支持板62に隣接する真空容器本体61及び容器収納器63から切り離され、原料ガス導入管16に固定されることを特徴とする。
次に、上述のプラズマ成膜装置、即ち、図7〜図9に図示したプラズマ成膜装置を用いて、プラスチック容器の内壁に酸化シリコン膜を形成する方法を説明する。図1〜図6も参照する。
酸化シリコン膜の形成に際し、原料ガス、キャリアガス、圧力及び投入すべき電力等については、公知の製膜条件を参考に行う。
図7において、被処理容器のプラスチック容器10として、例えば、容量500ccのPETボトルを用意する。
先ず、容量500ccのPETボトルを、第2の容器支持板62に設けられた開口62aの縁に該PETボトルのサポートリング10eが接するように設置する。そして、第2の容器収納器63を真空容器本体61に取り付け、該容器を収納する。この際、第2の真空容器本体61に付属のフランジ61aとOリング70により、真空漏れが無いようにする。
次に、第1の流路開閉弁46及び第2の流路開閉弁55が閉であることを確認し、図示しない真空ポンプを作動させる。これにより、PETボトル10、第2の容器収納器63、第2の原料ガス供給管本体65及び第2の真空容器本体61の内部のガスが排気される。第2の真空容器本体61の内部の真空到達圧力は2.66〜3.99E−5Pa(2〜3E−7Torr)程度である。なお、成膜するに際し、成膜対象のプラスチック容器を真空容器10に設置した後に行う第2の真空容器本体61の内部の排気は、膜質に及ぼす大気ガスの影響がほとんど無い場合、該真空到達圧力まで圧力を下げる必要なく、10−2Torr(1.33Pa)程度でも良い。
次に、排気を継続しながら、原料ガス供給装置57及び酸素ガス供給装置58から供給される原料ガスの流量を調整し、第1の流路開閉弁46及び第2の流路開閉弁55を開にし、原料ガスを第1の原料ガス導入管12、第2の原料ガス導入管本体65および第2の原料ガス導入管16を介して整流板31に設置の原料ガス吹出し孔31aから、一対の電極26、71間に供給する。
なお、ここでは、原料ガスとして、ガス化された有機珪素化合物とキャリアガスの混合ガス及び酸素ガスを用いる。有機珪素化合物としてはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を、キャリアガスとしてアルゴンガスを用いる。原料ガスの流量は、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)の液体流量:10sccm、アルゴンガスの流量:50sccm、酸素ガスの流量:100sccmとする。
真空容器本体1内の圧力は、図示しない圧力計によりモニターされ、図示しない圧力調整弁により自動的に所定の値に調整、設定される。ここでは、0.5Torr(66.65Pa)に設定する。
次に、高周波電源20と整合器22と第1の同軸ケーブル21と第2の同軸ケーブル23と第3の同軸ケーブル25から成る電力供給装置を用い、非接地電極26と接地電極71から成る一対の電極に高周波電力を供給する。この高周波電力を一対の電極26、71に供給するに際、高周波電源20に付属した進行波モニター及び反射波モニターの値を見ながら、整合器22の出力側のリアクタンス(LとC)を調整する。そのリアクタンス(LとC)を調整しながら、反射波が最小となる条件を選定する。高周波電源20の出力は、例えば、20W〜300W程度の範囲、ここでは120Wとする。そして、一定出力に保持し、例えば5秒間供給する。
該高周波電源20の出力は、非接地電極の給電点26a及び接地電極の給電点30bから、それぞれ、非接地電極26及び接地電極27に供給される。一対の電極26、71に電力が供給されると、原料ガスとして供給されているガス化された有機珪素化合物とキャリアガスと酸素ガスの混合ガスがプラズマ化される。
原料ガスがプラズマ化されると、放電によって生じる電子及びイオンだけでなく、分子の解離及び励起等に伴って生成される電気的に中性の種々のラジカル(化学的活性種)が発生する。そのラジカルは第1及び第2のガス排出孔32aを介して拡散現象及びガスの流れにより、一対の電極の外側へ移動する。
一対の電極の外側に移動したラジカルは、拡散現象及びガスの流れにより、上流から下流へ拡散する。そのガスの流れを模式的に示すと、図7に点線で示すような流れ73となる。図7図示の配置では、成膜に寄与するラジカルはプラスチック容器10の底10d近傍及び胴体部10a周辺から、肩部10b、口部10cへと移動する。その結果、プラスチック容器10の内壁に一様な薄膜が形成される。
なお、一対の電極26、71が被処理容器10の内部に挿入されるので、上記原料ガスのプラズマ化に際し、プラスチック容器の形状及び物性に影響を受けることなく、原料ガスのプラズマ化が可能であり、その内壁に薄膜を形成できる。即ち、被処理容器の厚み、凹凸及び誘電率等に影響を受けることなく、原料ガスをプラズマ化し、その内壁に薄膜を形成することが可能である。
次に、上述の高周波電源20から一対の電極2627への電力供給が5秒間経過した時点で、その電源出力をゼロに落とし、第1の流路開閉弁46及び第2の流路開閉弁55を閉とする。そして、真空容器本体1の内部圧力が、10−2Torr(1.33Pa)程度に到達したら、真空ポンプを一旦、停止させる。その後、第2の真空容器本体61内部の圧力が大気圧になるまで、図示しない大気開放弁を開にする。第2の真空容器本体61の内部の圧力が大気圧に戻ったことを確認し、第2の容器収納器63を開放し、取り外す。なお、次段階の作業の便宜のため、図示しない大気開放弁を閉に戻す。
その後、成膜が終了したプラスチック容器10を取り出す。そして、次に成膜するプラスチック容器10を第2の収納容器63の内部に収納する。
交換されたプラスチック容器10の成膜については、上記手順を繰り返し行う。
上述の本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜装置を用いたプラズマ成膜法の特徴を纏めると、次の通りである。
従来の技術では、プラスチック容器の外側に配置される外部電極と該容器の内部に配置される内部電極でプラスチック容器を挟んでプラズマを生成するという装置構成、即ち、非接地電極と接地電極の間に誘電体材料であるプラスチック容器が設置されるという装置構成をとるが、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜方法では、一対の電極がプラスチック容器の中に挿入されるという装置構成、即ち、非接地電極と接地電極の間にプラスチック容器は設置されないという装置構成を有する。
従来の技術では、一対の電極による原料ガスのプラズマ化の際にプラスチック容器の物性及び立体的形状の影響を受けるが、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜方法では、その影響を受けない。
また、従来の技術では、一対の電極と高周波電源に接続された同軸ケーブルの出力端との接続点である給電点がプラスチック容器を収納する容器収納器の外面に位置するので、供給された電力がプラスチック容器内部でのプラズマ生成に有効に消費される割合が低い。
これに対して、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜方法では、該給電点がプラスチック容器内部に位置するので、プラズマ生成に有効に消費される割合が高い。
上記相違点により、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜方法では、従来の技術が有する次の問題が解消される。即ち、従来技術には、
(1)外部電極の内側の形状がプラスチック容器の外部の形状と相似形にならない場合、その内壁に形成の膜の厚みが不均一になる、という問題、あるいは、外部電極と内部電極の間に設置される誘電体製の外筒の厚みがプラスチック容器の形状にほぼ相似形でない場合、口部の内壁及び肩部の内壁での膜厚みは胴体部の内壁に形成される膜と異なり、不均一となる、という問題、
(2)外部電極と容器の間に生じる隙間、あるいは不均一な電界分布によりプラスチック容器の内外面の近傍に異常放電が生じる、という問題、
(3)プラスチック容器と外部電極の間の隙間に生じる放電、あるいは外部電極に蓄積された熱によってプラスチック容器に熱変形が発生する、という問題、
(4)プラスチック容器の形状や大きさを変えるたびに、その外部形状に相似の形状を有する外部電極一式に交換する必要があることから、生産設備としての応用において、装置操作上不便であるのみならず、稼働率が低減して生産コストが増大する、という問題、
(5)空洞の形を有する接地電極あるいは非接地電極に整合器に接続された同軸ケーブルの中央導体、あるいは外部導体を接合して電磁波のエネルギーを供給するので、該同軸ケーブルと一対の電極の間の導体線あるいは金属の壁で構成される送電路で電磁放射が発生し、多大の電力損失が発生するという問題があるが、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ成膜装置及びそのプラズマ成膜方法によれば、それらは解消される。
以上の説明において、プラズマ成膜装置で取り扱う成膜対象のプラスチック容器の本数を1個としたが、複数のプラスチック容器の内壁に薄膜を同時に形成する場合においても、同様の配置で行えるので、その説明を省略する。
即ち、複数の第2の真空容器本体61、第2の容器収納器63、第2の原料ガス供給本体65、第2の原料ガス導入管16及び第2の容器支持板62を並列に設置し、それぞれに同軸ケーブル25に接続された一対の電極26、71を設置するという、装置構成を用いることで容易に適用可能である。
また、以上の説明において、プラズマ成膜装置で取り扱う薄膜を酸化シリコン膜(SiOx)としたが、本発明は酸化シリコン膜(SiOx)以外の薄膜の形成に適用可能である。
例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を形成する場合、メタンやエタンやプロパン等のアルカン類、あるいは、エチレンやプロピレンやブテン等のアルキン類、あるいは、ベンゼンやトルエンやナフタリン等の芳香族炭化水素が用いることにより、容易に適用可能である。この場合、水素(H2)を希釈ガスとして用いられる。
例えば、窒化シリコン(SiNx)膜を形成する場合、シラン(SiH4)と窒素(N2)とアンモニア(NH3)、あるいはジシラン(Si2H6)と窒素(N2)とアンモニア(NH3)が用いることにより、容易に適用可能である。なお、この場合、アルゴンやヘリウム等の希ガスを希釈ガスとして用いられる。
1・・・第1の真空容器本体、
61・・・第2の真空容器本体、
2・・・第1の容器支持板、
62・・・第2の容器支持板、
3・・・第1の容器収納器、
63・・・第2の容器収納器、
8・・・第1のスペーサ、
68・・・第2のスペーサ、
10・・・プラスチック容器、
16・・・第2の原料ガス導入管、
20・・・高周波電源、
22・・・・整合器、
25・・・第3の同軸ケーブル、
26・・・棒形状の非接地電極、
27、71・・・円筒形状の接地電極、
27b、71b・・・接地電極の第1の開口、
27c、71c・・・接地電極の第2の開口、
32a・・・第1のガス排出孔、
28・・・第2のガス排出孔、
29・・・接続導体、
31・・・整流板、
31a・・・原料ガス吹出し孔、
32・・・誘電体キャップ、
72・・・環状の誘電体。

Claims (8)

  1. 排気系を備えた真空容器本体と、被処理容器のプラスチック容器を収納する空所を備えた容器収納器と、該プラスチック容器を支持する容器支持板と、プラズマ生成の電界を発生する接地電極と非接地電極から成る一対の電極と、原料ガス源に連通した原料ガス導入管で搬送される原料ガスを該一対の電極間に供給する原料ガス吹出し孔と、該一対の電極に同軸ケーブル及び整合器を介して電力を供給する高周波電源と、該一対の電極間でプラズマ化されたガスをその外部へ排出するガス排出孔と、を具備し、
    生成したプラズマを利用して口部を有するプラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜装置であって、
    該一対の電は、円筒形状の接地電極とその軸心に配置された棒形状の非接地電極から成り、且つ、該一対の電は、該プラスチック容器の内部に挿入されるという構成を有することを特徴とするプラズマ成膜装置。
  2. 請求項1に記載のプラズマ成膜装置において、前記円筒形状の接地電極は前記プラスチック容器の口部の内径より小さい外径を有し、前記原料ガス導入管は該プラスチック容器の口部の内径より小さい外径を有し、前記同軸ケーブルは該原料ガス導入管の内径より小さい外径を有するとともに、該原料ガス導入管の内部を貫いて配置され、該同軸ケーブルの入力端は該高周波電源に整合器を介して接続され、該同軸ケーブルの出力端の中心導体及び外部導体はそれぞれ非接地電極及び接地電極に接続されることを特徴とするプラズマ成膜装置。
  3. 請求項1あるいは2のいずれか1項に記載のプラズマ成膜装置において、前記原料ガス導入管は、導体の部材で形成され、電気的に接地されるとともに、前記同軸ケーブルの出力端の外部導体と導体で接続されることを特徴とするプラズマ成膜装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ成膜装置において、前記非接地電極は誘電体で被覆されることを特徴とするプラズマ成膜装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマ成膜装置において、前記容器支持板は、該プラスチック容器を支持する貫通孔あるいは開口を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置。
  6. 口部を有するプラスチック容器を被処理容器とし、原料ガスをプラズマ化することにより該プラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜方法であって、
    円筒形状の接地電極の軸心に棒形状の非接地電極を配置した一対の電極を該プラスチック容器に挿入し、該円筒形状の接地電極の一方の開口から原料ガスを該一対の電極間に噴出させ、他方の開口から排出するとともに、該一対の電極に電力を供給して該原料ガスをプラズマ化することを特徴とするプラズマ成膜方法。
  7. 口部を有するプラスチック容器を被処理容器とし、原料ガスをプラズマ化することにより該プラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜方法であって、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマ成膜装置を用いて、窒化シリコン(SiNx)膜、酸化シリコン(SiOx)膜及び炭化シリコン(SiCx)膜等のシリコン系薄膜を形成することを特徴とするプラズマ成膜方法。
  8. 口部を有するプラスチック容器を被処理容器とし、原料ガスをプラズマ化することにより該プラスチック容器の内壁に薄膜を形成するプラズマ成膜方法であって、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマ成膜装置を用いて、水素化アモルファスカーボン膜及びダイアモンドライクカーボン(DLC)膜等のカーボン系薄膜を形成することを特徴とするプラズマ成膜方法。
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