JP2014051709A - 熱延銅板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】純度が99.99重量%以上である純銅からなり、平均結晶粒径が40μm以下であり、EBSD法にて測定した全結晶粒界長さLに対する全特殊粒界長さLσの比率である特殊粒界長さ比率(Lσ/L)が40%以上とされていることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
このような銅板は、フライスやドリル等の切削加工、曲げ等の塑性加工等を施すことにより、所望の形状の製品に加工されることになる。ここで、上述の銅板においては、加工時のムシレ、変形を抑制するために、結晶粒径を微細化すること、及び、残留歪みを少なくすることが要求されている。
上述のスパッタリング用ターゲット等に用いられる銅板を得るために、従来は、例えば特許文献1−3に開示された方法が提案されている。
さらに、上述の銅板においては、結晶粒を微細化させているが、放熱基板のように冷熱サイクルによって繰り返し応力が負荷された際の疲労特性が不十分であった。また、上述の銅板をスパッタリング用ターゲットとして使用した場合には、高出力のスパッタでの異常放電を十分に抑制することはできなかった。
また、スパッタリング用ターゲットにおいては、結晶方位によってスパッタ効率が異なることから、スパッタが進行するにしたがい結晶粒ごとに凹凸が発生し、異常放電の原因となる。ここで、本発明の熱延銅板においては、平均結晶粒径が40μm以下とされているので、スパッタ時の凹凸が微細となり、異常放電の発生を抑制することができる。
結晶粒界は、二次元断面観察の結果、隣り合う2つの結晶間の配向方位差が15°以上となっている場合の当該結晶間の境界として定義される。
また、特殊粒界とは、結晶学的にCSL理論(Kronberg et al:Trans.Met.Soc.AIME,185,501(1949))に基づき定義されるΣ値で3≦Σ≦29に属する対応粒界であって、かつ、当該対応粒界における固有対応部位格子方位欠陥Dqが、Dq≦15°/Σ1/2(D.G.Brandon:Acta.Metallurgica.Vol.14,p.1479,(1966))を満たす結晶粒界であるとして定義される。
純銅中の不純物は、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)を低下させる作用を有する。また純銅中の不純物が多いと導電率は低下する。このため純度を上述のように規定することにより、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)を確実に40%以上とすることが可能になる。
これら前記純銅としては、C10100、米国規格ASTM F68のClass1などが挙げられる。
前述の純銅の不純物のうちFe,O,S,Pといった元素は、特に特殊粒界長さ比率(Lσ/L)を低下させる作用を有するため、これらの元素の含有量を上述のように規定することにより、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)を確実に40%以上とすることが可能となる。
ビッカース硬度が80以下と低い場合には、熱延銅板における歪み量が低減されていることになる。ここで、歪み量が低減された熱延銅板をスパッタリング用ターゲットとして使用した場合には、スパッタ時の歪みの解放による粗大なクラスタの発生及びこれに起因する凹凸の発生を抑えることができ、異常放電の発生を抑制することができる。
逆極点図の強度は、全ての結晶方位が同じ確率で出現する状態(完全なランダム配向の組織)に対して何倍の頻度でその面方向が測定面内に出現しているのかを表すものであり、最大値が大きいほど特定の結晶方向に偏っていることを示している。すなわち、EBSD法で測定した逆極点図の各面方位の強度の最大値が5を下回るということは、結晶方位がランダムになっていることを示している。このように、結晶方位がランダムになっていることから、スパッタ効率が均一となり、異常放電を抑制できる。
この場合、圧下率10%以下の冷間圧延加工やレベラーでの形状修正を実施した場合には、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)が低下することを抑制でき、かつ、圧延の優先方位が発達することを抑制できる。
また、熱間圧延によって、上述のように平均結晶粒径が40μm以下、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)が40%以上とされているので、冷間圧延工程及び熱処理工程を省略することができる。よって、スパッタリング用ターゲット等の銅加工品の製造コストを大幅に削減することができる。
本実施形態である熱延銅板は、純度が99.99重量%以上である純銅からなり、より具体的には、Feが0.0003重量%以下、Oが0.0002重量%以下、Sが0.0005重量%以下、Pが0.0001重量%以下の範囲で含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされている。
また、本実施形態である熱延銅板は、平均結晶粒径が40μm以下であり、ビッカース硬度が80以下とされている。
また、本実施形態である熱延銅板は、EBSD法で測定した逆極点図の各面方位の強度の最大値が5を下回っている。
また、特殊粒界とは、結晶学的にCSL理論(Kronberg et al:Trans.Met.Soc.AIME,185,501(1949))に基づき定義されるΣ値で3≦Σ≦29に属する対応粒界であって、かつ、当該対応粒界における固有対応部位格子方位欠陥Dqが、Dq≦15°/Σ1/2(D.G.Brandon:Acta.Metallurgica.Vol.14,p.1479,(1966))を満たす結晶粒界であるとして定義される。
さらに、結晶粒径が粗大な場合には、曲げ加工等の塑性加工を施した場合に、加工割れが発生するおそれがある。
以上のことから、本実施形態である熱延銅板は、平均結晶粒径を40μm以下に規定している。
以上のことから、本実施形態である熱延銅板は、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)を40%以上に規定している。
すなわち、冷間圧延及び熱処理工程を行うことなく、熱間圧延工程のみによって、平均結晶粒径を40μm以下、特殊粒界長さLσの比率である特殊粒界長さ比率(Lσ/L)を40%以上となるように、結晶組織を制御したものである。
また、スパッタリング用ターゲットとして使用した場合には、スパッタが進行するにしたがい結晶粒ごとに凹凸が発生するが、平均結晶粒径が40μm以下とされているので、スパッタ時の凹凸が微細となり、異常放電の発生を抑制することができる。
なお、熱延銅板の形状を調整するために、圧下率10%以下の冷間圧延加工やレベラーでの形状修正を実施してもよい。この場合には、圧延率が低いことから、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)が低下することがなく、圧延の優先方位が発達することを抑制できる。
このように結晶方位がランダムとなっていることから、熱延銅板の結晶組織が均一化することになり、スパッタリング用ターゲットとして使用した場合には、スパッタ時の異常放電を抑制できる。
まず、99.99mass%以上の純度を有する銅を、例えば、加熱炉によって溶融し、連続鋳造機を用いて純銅のインゴットを製出する。このとき、純銅インゴットの不純物として、Feが0.0003重量%以下、Oが0.0002重量%以下、Sが0.0005重量%以下、Pが0.0001重量%以下となるように管理することが望ましい。これらの不純物は、主に原料素材に含まれる不純物を調整することによって管理することができる。
例えば、本実施形態では、熱延銅板をスパッタリング用ターゲットや放熱基板として使用するものとして説明したが、バッキングプレート、スティーブモールド、加速器用電子管、マグネトロン、超電導安定化材、真空部材、熱交換機の管板、バスバー、電極材、めっき用アノード等の他の銅加工品として用いても良い。
圧延素材として、電子管用無酸素銅(99.99重量%以上)の鋳造インゴットを用いた。圧延前の素材寸法は、幅620mm×長さ900mm×厚さ250mmとし、熱間圧延を行って表1記載の熱延銅板を作製した。熱間圧延工程の総圧延率は92%とした。また前述の熱間圧延工程の最終段階の圧延である仕上げ圧延では、仕上げ圧延の開始温度と終了温度は表1に示した。温度測定は放射温度計を用い、圧延板の表面温度を測定することにより行った。そして、このような熱間圧延終了後に、200℃以下の温度になるまで、200℃/min以上の冷却速度で水冷によって冷却した。なお、本発明例6では、形状修正のための冷間圧延を表1の条件で行った。
比較例1,2,4では、圧延素材として、電子管用無酸素銅(99.99重量%以上)の鋳造インゴットを用いた。比較例3では圧延素材として、リン脱酸銅(99.95重量%以上)の鋳造インゴットを用いた。圧延前の素材寸法は、幅620mm×長さ900mm×厚さ250mmとし、熱間圧延を行って表1記載の熱延銅板を作製した。また仕上げ圧延の開始温度及び終了温度の温度測定は放射温度計を用い、圧延板の表面温度を測定することにより行った。そして、熱間圧延終了後に、200℃以下の温度になるまで、200℃/min以上の冷却速度で水冷によって冷却した。なお、比較例4では、冷間圧延を表1の条件で行った。
平均結晶粒径の測定は、熱延銅板の圧延面(ND面)にて、光学顕微鏡を使用してミクロ組織観察を行い、JIS H 0501:1986(切断法)に基づき測定した。
得られた熱延銅板について、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)を算出した。各試料について、圧延方向(RD方向)に沿う縦断面(TD方向に見た面)を耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。
そして、EBSD測定装置(HITACHI社製 S4300−SEM、EDAX/TSL社製 OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製 OIM Data Analysis ver.5.2)によって、結晶粒界、特殊粒界を特定し、その長さを算出することにより、特殊粒界長さ比率の解析を行った。
また、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを測定し、隣接する結晶粒の界面が特殊粒界を構成する結晶粒界の位置を決定するとともに、特殊粒界の全特殊粒界長さLσと、上記測定した結晶粒界の全粒界長さLとの粒界長さ比率Lσ/Lを求め、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)とした。
EBSD測定装置(HITACHI社製 S4300−SEM,EDAX/TSL社製 OIM Data Collection)を用いて、熱延銅板の圧延方向(RD方向)に沿う縦断面(TD方向に見た面)において、圧延方向に2mm、圧延面方向(ND方向)に4mmとなり、かつ短辺が圧延面と重なる8mm2の長方形の領域をステップサイズ2μmで測定した。測定面積は、統計的にXRDと同等の信頼性が得られるといわれる測定結晶粒数が5000個を超えるに十分な面積としている。また、ステップサイズは妥当な時間でEBSDの走査を完了するように試料の粒径に基づいて決定している。測定データを解析ソフト(EDAX/TSL社製 OIM Data Analysis ver.5.2)によって解析し、圧延面方向(ND)の逆極点図の強度の最大値を算出した。算出には球面調和関数法で行い、展開次数を16、半値幅を5°とした。
圧延方向(RD)に沿う縦断面(TD方向に見た面)に対して、JIS Z 2244に規定される方法により測定した。
各試料を100×2000mmの平板とし、その表面をフライス盤で超硬刃先のバイトを用いて切り込み深さ0.1mm、切削速度5000m/分で切削加工し、その切削表面の500μm四方の視野において、長さ100μm以上のムシレ疵が何個存在したかを評価した。
各試料からターゲット部分が直径152mm、厚さ6mmとなるようにバッキングプレート部分を含めた一体型のターゲットを作製し、そのターゲットをスパッタ装置に取り付け、チャンバー内の到達真空圧力を、1×10−5Pa以下、スパッタガスとしてArを用い、スパッタガス圧を0.3Paとし、直流(DC)電源にてスパッタ出力2kWを条件でスパッタリングテストを実施した。スパッタは2時間連続させた。その間に、電源に付属するアークカウンターを用いて、スパッタ異常により生じた異常放電の回数をカウントした。
比較例2,3においては、平均結晶粒径は32μm,31μmであったが、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)が33%、23%と低かった。このため、ムシレは少なかったが、異常放電回数が多くなった。
比較例4においては、熱間圧延後に圧延率25%で冷間圧延しており、平均結晶粒径は37μmであったが、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)が29%と低かった。また、ビッカース硬度が97と高く、残留歪みが大きいことが確認される。さらに、逆極点図の面方位強度の最大値が8.4となっており、圧延率25%の冷間圧延によって結晶方位が一定の方向に偏っていることが確認される。この比較例4においては、ムシレは少なかったが、異常放電回数が27回と多かった。
なお、本発明例6では、熱間圧延後に、圧下率5%で冷間圧延を実施しているが、特殊粒界長さ比率(Lσ/L)は52%であり、逆極点図の面方位強度の最大値も4.2であった。
Claims (5)
- 純度が99.99重量%以上である純銅からなり、平均結晶粒径が40μm以下であり、EBSD法にて測定した全結晶粒界長さLに対する全特殊粒界長さLσの比率である特殊粒界長さ比率(Lσ/L)が40%以上とされていることを特徴とする熱延銅板。
- 前記純銅の、導電率が101%IACS以上であることを特徴する請求項1に記載の熱延銅板。
- 前記純銅は、Feが0.0003重量%以下、Oが0.0002重量%以下、Sが0.0005重量%以下、Pが0.0001重量%以下の範囲で含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱延銅板。
- ビッカース硬度が80以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱延銅板。
- 圧下率10%以下の冷間圧延加工、あるいは、レベラ−での形状修正を施したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱延銅板。
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