JP2014049298A - リチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】十分な初期放電容量が得られる上、高温保存試験に耐え得るリチウムイオン二次電池用非水電解液を提供する。
【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池用非水電解液は、非水溶媒と電解質と、フルオロエチレンカーボネートを0.05〜4質量%と、3級炭素を含む鎖状エーテルを0.001〜1質量%と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池はニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池と比べ、軽量、高容量であるため、携帯電子機器用電源として広く応用されている。またハイブリッド自動車や、電気自動車用に搭載される電源として有力な候補ともなっている。しかしながら、近年の携帯電子機器の小型化、高機能化に伴い、これらの電源となるリチウムイオン二次電池への更なる高容量化が期待されている。
リチウムイオン二次電池は、主として、正極、負極、セパレータ、非水電解液から構成されており、一般に、正極にリチウム金属複合酸化物、負極にリチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材等を用い、非水電解液として常温で液体の有機溶媒にリチウム塩を溶解させた液状の電解質が用いられている。しかし、負極の炭素材の表面では、有機溶媒が関与する副反応が生じ、期待される放電容量が得られないなど特性に悪影響を及ぼしてしまう。このため、負極が有機溶媒と直接反応しないように、負極表面に被膜を形成するとともに、この被膜の状態や性質を制御することが重要な課題になっている。
この負極表面被膜を形成、制御するために、電解液中に特殊な添加剤を加えることが行われている。例えば、フルオロエチレンカーボネートを非水電解液に添加し、サイクル特性が向上することが知られている(特許文献1参照)。フルオロエチレンカーボネート添加により、負極の表面に被膜が形成されて、負極上での副反応が抑制されたことに起因すると考えられる。なお、以下では場合により、リチウムイオン二次電池用非水電解液を非水電解液と記す。
特開平7−240232号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載された従来のリチウムイオン二次電池においては、負極表面に被膜を形成することで電解液の不要な反応や分解を抑制し、室温及び0℃での低温サイクル特性の向上が確認されたが、十分な初期放電容量が得られず、60℃における保存試験においては、1ヶ月経過後の容量劣化が大きく、二次電池として必要な様々な諸特性を同時に満たすことはできなかった。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、十分な初期放電容量が得られる上、高温満充電保存試験に耐え得るリチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池を提供する。
本発明のリチウムイオン二次電池用非水電解液は、非水溶媒と、電解質と、フルオロエチレンカーボネートを0.05〜3質量%と、3級炭素を含むエーテルを0.001〜1質量%と、を含むことを特徴とする。
フルオロエチレンカーボネートと3級炭素を有する鎖状エーテルは、共にリチウムイオン二次電池の負極と非水電解液との界面において被膜の形成に寄与し、十分な初期放電容量を与える。そして、この被膜は、強い結合力を持つため、高温においても壊れにくくなる。また、正極と非水電解液との界面において、3級炭素を有する鎖状エーテルがフルオロエチレンカーボネートに先立って被膜形成し、正極とフルオロエチレンカーボネートによる副次的な反応を抑制することができる。その結果、高温保存時の容量低下を小さく抑えることが可能になると考えられる。
本発明のリチウムイオン二次電池用非水電解液中の3級炭素を含む鎖状エーテルとして、t−ブチルメチルエーテルであることが好ましい。これにより、室温において十分な初期放電容量を得られ、高温においても壊れにくい被膜を形成できることから、高温でのサイクル特性を良好にすることが可能となる。
本発明のリチウムイオン二次電池用非水電解液は、非水溶媒としてエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを含むことが好ましい。エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとは、初期放電容量と、高温保存特性を同時に良好とするのに好適な組み合わせである。
本発明のリチウムイオン二次電池用非水電解液は、電解質としてLiPFを含むことが好ましい。これにより、導電性が高く十分な放電容量を得ることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用非水電解液は、更に、下記式(1)で示すエチレングリコールサルフェート誘導体を4質量%以下含むことが好ましい。
Figure 2014049298

〔式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一種を表す。〕
グリコールサルフェート誘導体は、フルオロエチレンカーボネートや3級炭素を含む鎖状エーテルと共に、リチウムイオン二次電池の負極と非水電解液との界面において被膜形成に寄与する。リチウムイオン二次電池の内部インピーダンスを更に低下させることで、初期放電容量をより大きくすることができる。また、形成された被膜はより強固になることから、更に高温保存特性を向上させることが期待される。
前記式(1)で表されるエチレングリコールサルフェート誘導体は、R及びRが共に水素原子であるエチレングリコールサルフェートであることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、非水電解液とを備え、非水電解液は、非水溶媒と電解質と、フルオロエチレンカーボネートを0.05〜3質量%と、3級炭素を含む鎖状エーテルを0.001〜1質量%と、を含むことを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極は炭素材を主成分とすることが好ましい。
本発明によれば、十分な初期放電容量が得られる上、高温においても良好な保存特性を持つリチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
リチウムイオン二次電池の模式断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明にかかるリチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
(リチウムイオン二次電池)
続いて、本実施形態に係る電極、及びリチウムイオン二次電池について図1を参照して簡単に説明する。
リチウムイオン二次電池100は、主として、発電要素30、発電要素30を密閉した状態で収容するケース50、及び発電要素30に接続された一対のリード60,62を備えている。
発電要素30は、一対の電極10、20がセパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、正極集電体12上に正極活物質層14が設けられた物である。負極20は、負極集電体22上に負極活物質層24が設けられた物である。正極活物質層14及び負極活物質層24がセパレータ18の両側にそれぞれ接触している。正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に電解液が含有されている。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60,62が接続されており、リード60,62の端部はケース50の外部にまで延びている。
(負極)
負極20は、負極集電体22の両面に負極活物質層24を備えて構成されている。さらに、負極活物質層24は、負極活物質材料と、導電助剤と、結着剤とを含む塗料を負極集電体22に塗布することによって形成されている。
負極活物質材料は、天然黒鉛、人造黒鉛(難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等)、MCF(メソカーボンファイバ)等の炭素材から選ばれる少なくとも1種を含んでいる。中でも、良好な負極容量及びサイクル特性を示すことから人造黒鉛が好ましく、電極密度向上の観点から、人造黒鉛を天然黒鉛と混合して使用することが更に好ましい。その他、例えば、Al、Si、Sn等のリチウムと化合物を形成することのできる金属、SiO、SnO等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)など公知の負極活物質材料を炭素材と混合させて使用してもよい。
導電助剤は特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、カーボンブラックのような熱分解炭素、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成材料、炭素繊維、あるいは活性炭などの炭素材が挙げられる。また、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛などの負極活物質材料を、形状を変えて添加してもよい。
カーボンブラックとしては、特に、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が好ましく、ケッチェンブラックが特に好ましい。電子伝導性の多孔体を含有させることにより負極活物質材料の粒子と結着剤の界面に空孔を形成でき、その空孔により負極活物質層24への非水電解液の染み込みを容易にするので好ましい。
結着剤は、前記の負極活物質材料の粒子と導電助剤の粒子とを結着可能なものであれば特に限定されない。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。また、この結着剤は、前記の負極活物質材料の粒子と導電助剤の粒子との結着のみならず、負極集電体22への結着に対しても寄与している。
負極集電体22は、リチウムイオン二次電池用の集電体に使用されている各種公知の金属箔を用いることができる。具体的には、銅箔を用いることが好ましい。
(正極)
正極10は、正極集電体12の両面に正極活物質層14を備えて構成されている。さらに正極活物質層14は、正極活物質材料と、導電助剤と、結着剤とを含む塗料を正極集電体12に塗布することによって形成されている。
正極活物質材料は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、ClO )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質材料を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、一般式:LiNiCoMn(x+y+z=1)やLiNiCoAl1−x−y(0.98<a<1.2、0<x,y<1)で表される複合金属酸化物、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、FeまたはVを示す)、リチウムバナジウム化合物(LiVOPO)等の複合金属酸化物が挙げられる。
更に、正極活物質材料以外の各構成要素(導電助剤、結着剤)は、負極20で使用されるものと同様の物質を使用することができる。したがって、正極10に含まれる結着剤も、前記の正極活物質材料の粒子と導電助剤の粒子との結着のみならず、正極集電体12への結着に対しても寄与している。
正極集電体12は、リチウムイオン二次電池用の集電体に使用されている各種公知の金属箔を用いることができる。具体的には、アルミニウム箔を用いることが好ましい。
(セパレータ)
セパレータ18は絶縁性の多孔体から形成されていれば、材料、製法等は特に限定されず、リチウムイオン二次電池100に用いられている公知のセパレータを使用することができる。例えば、絶縁性の多孔体としては、公知のポリオレフィン樹脂、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどを重合した結晶性の単独重合体または共重合体が挙げられる。これらの単独重合体または共重合体は、1種を単独で使用することができるが、2種以上のものを混合して用いてもよい。また、単層であっても複層であってもよい。
(非水電解液)
非水電解液は、非水溶媒と電解質と、フルオロエチレンカーボネートを0.05〜3質量%と、3級炭素を含む鎖状エーテルを0.001〜1質量%と、を含む。
フルオロエチレンカーボネートと、3級炭素を有する鎖状エーテルとを同時に添加することによる効果発現のメカニズムははっきりとしないが、本発明者らは以下のように考えている。
フルオロエチレンカーボネートは負極活物質層24の表面に被膜を形成し、その皮膜はサイクル特性などに対して有効に働く。しかしながら、これらの被膜は高温にした際には壊れやすく、特に高温での保存試験の際は、非水電解液が正極または負極と反応・分解してガス発生し、それに伴い放電容量も低下してしまう。
そこで、フルオロエチレンカーボネートに加えて3級炭素を有する鎖状エーテルを添加すると、負極活物質層24の表面では3級炭素を有する鎖状エーテルが所謂結着剤のような働きをし、フルオロエチレンカーボネートによる被膜の隙間を埋め、被膜同士の結合力を強めることができる。また、正極活物質層14の表面では耐酸化性のある3級炭素を有する鎖状エーテルがフルオロエチレンカーボネートに先立って被膜形成し、正極とフルオロエチレンカーボネートによる副次的な反応を抑制することができる。その結果、高温保存時の容量低下を小さく抑えることが可能になる。
フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.05質量%以上であれば、リチウムイオン二次電池の負極活物質層24と非水電解液との界面、あるいは正極活物質層14と非水電解液との界面において被膜が形成され、所期放電容量を大きくすることができる。また、フルオロエチレンカーボネートの含有量が3質量%以内にすることでリチウムイオン二次電池の内部インピーダンスの増大を抑え、十分な初期放電容量を得ることができる。
フルオロエチレンカーボネートの含有量は0.1〜2質量%が好ましく、0.5〜1質量%であることが更に好ましい。
3級炭素を有する鎖状エーテルの含有量が0.001質量%あれば、フルオロエチレンカーボネートによる被膜形成が強固なものとなり、結果として高温保存時の容量劣化を抑えることができる。また、3級炭素を有する鎖状エーテルの含有量が1質量%以内であれば、フルオロエチレンカーボネートの被膜形成を促進し、初期放電容量を良好にするなどの効果を発揮させることができる。
3級炭素を有する鎖状エーテルの含有量は0.01〜0.2質量%が好ましく、0.01〜0.1質量%であることが更に好ましい。
更には、フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1〜2質量%、かつ、3級炭素を有する鎖状エーテルの含有量が0.01〜0.2質量%であることが好しく、フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.5〜1質量%、かつ、3級炭素を有する鎖状エーテルの含有量が0.01〜0.1質量%であることが特に好ましい。
3級炭素を含む鎖状エーテルとしては、t−ブチルメチルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、などが挙げられ、高温保存特性をより向上させるt−ブチルメチルエーテルであることが好ましい。
その他、硫黄含有化合物を更に加えることで、低温での放電容量や高温サイクル特性がなお一層改善される。硫黄含有化合物として、スルホラン、エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、エチレングリコールサルフェート、プロパン−1,3−サイクリックサルフェート、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジビニルスルホン及びそれらの誘導体が挙げられる。
それらの中でも、特に、高温保存特性が良好となることから、式(1)で表されるエチレングリコールサルフェート誘導体を4質量%以下含むことが好ましい。
Figure 2014049298

〔式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一種を表す。〕
エチレングリコールサルフェート誘導体も不飽和結合を有する環状炭酸エステルと同様、負極活物質層24の表面に被膜を形成し、その被膜も充放電サイクル高温保存時の容量低下を抑制する効果を持つ。フルオロエチレンカーボネートと3級炭素を有する鎖状エーテルに、エチレングリコールサルフェート誘導体を加えると、更に充放電サイクル高温保存時の容量低下を抑制するだけでなく、リチウムイオン二次電池の内部インピーダンスを低下させ、初期放電容量も大きくすることができる。
エチレングリコールサルフェート誘導体としては、R及びRが水素原子であるエチレングリコールサルフェート、R及びRの一方が水素原子で他方がメチル基であるプロパン−1,2−サイクリックサルフェート、R及びRの一方が水素原子で他方がエチル基であるブタン−1,2−サイクリックサルフェートなどが挙げられるが、高温保存特性向上の観点から、エチレングリコールサルフェートであることが好ましい。
また、ジアリルカーボネート、または、2,5−ジオキサヘキサン二酸ジアルキルが含有されていると、初期放電容量が大きくなる傾向がある。
非水溶媒は、環状カーボネートと、低粘度溶媒と、を含有していることが好ましい。環状カーボネートは電解質であるリチウム塩の解離を促す様、誘電率が20以上であることを特徴とする。低粘度溶媒はリチウムイオンの移動度を改善する様、粘度が1.0cP以下である有機溶媒のことを指す。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートなどを用いることができ、中でもエチレンカーボネートを含むことが好ましい。エチレンカーボネートをプロピレンカーボネートやブチレンカーボネートと混合して使用してもよい。
また、低粘度溶媒として、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどを用いることができ、十分な初期放電容量と高温保存特性の両立の点から、エチルメチルカーボネートを含むことが好ましい。エチルメチルカーボネートを他の低粘度溶媒と混合して使用してもよい。
非水溶媒中の環状カーボネートと低粘度溶媒の割合は体積にして1:9〜1:1にすることが好ましい。
電解質としては、LiClO、LiBF、LiPF、LiPOF、LiAsF、LiCFSO、LiCFCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFCFCO)等が挙げられ、2種以上を混合して用いてもよい。特に、導電性性が高くなることから、LiPFを含むことが好ましい。
LiPFを非水溶媒に溶解する際は、非水電解液中の電解質の濃度を、0.5〜2.0mol/Lに調整することが好ましい。電解質の濃度が0.5mol/L以上であると、非水電解液の導電性を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすい。また、電解質の濃度が2.0mol/L以内に抑えることで、非水電解液の粘度上昇を抑え、リチウムイオンの移動度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすくなる。
LiPFをその他の電解質と混合する場合にも、非水電解液中のリチウムイオン濃度が0.5〜2.0mol/Lに調整することが好ましく、LiPFからのリチウムイオン濃度がその50mol%以上含まれることがさらに好ましい。
LiPFが水分と反応して生成する、またはフルオロエチレンカーボネートと水分と反応して生成するフッ化水素またはフッ素イオンは、非水電解液中に50ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがさらに好ましい。そのためにも、非水電解液中の水分は50ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがさらに好ましい。
ケース50は、その内部に発電要素30及び電解液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましい。
リード60,62は、アルミ、ニッケル等の導電材料から形成されている。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
以下に示す手順により実施例1〜55、比較例1〜9のリチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例1)
先ず、負極を作製した。負極の作製においては、負極活物質材料として人造黒鉛(90質量%)、導電助剤としてカーボンブラック(2質量%)、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(以下、「PVDF」という。)(8質量%)を混合し、溶剤のN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」という。)中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーをドクターブレード法により集電体である電解銅箔に塗布し、110℃で乾燥させた。乾燥後に圧延を行い、負極を得た。
次に、正極を作製した。正極の作製においても、正極活物質材料としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3(90質量%)、導電助剤としてカーボンブラック(6質量%)、結着剤としてPVDF(4質量%)を混合し、NMP中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを集電体であるアルミニウム箔に塗布して乾燥させ、圧延を行い、正極を得た。
次に、非水電解液を調製した。エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートを体積比3:7で混合した溶液中に、LiPFを1.0mol/Lの割合で添加し作製した。更に、非水電解液の全体にフルオロエチレンカーボネートを0.05質量%、t−ブチルメチルエーテルを0.01質量%となるように添加して非水電解液を得た。
得られた負極及び正極の間にポリエチレンからなるセパレータを挟んで積層し積層体(素体)を得た。得られた積層体をアルミラミネートパックに入れ、このアルミラミネートパックに非水電解液を注入した後に真空シールし、リチウムイオン二次電池(縦:60mm、横:85mm、厚さ:3mm)を作製した。
(実施例2〜55及び比較例1〜9)
非水溶媒の組み合わせとLiPF濃度、非水電解液に添加するフルオロエチレンカーボネートの含有量と3級炭素を有する鎖状エーテルの種類と含有量、エチレングリコールサルフェート誘導体の種類と含有量を表1〜3に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜55及び比較例1〜9のリチウムイオン二次電池を作製した。なお、表1〜3中、非水溶媒の「EC」はエチレンカーボネートを、「EMC」はエチルメチルカーボネートを、「PC」はプロピレンカーボネートを、「DEC」はジエチルカーボネートを表す。フルオロエチレンカーボネートの含有量は「FEC含有量」とし、3級炭素を有する鎖状エーテルの「tBME」はt−ブチルメチルエーテルを、「EtBE」はエチル−t−ブチルエーテルを、「DtBE」はジ−t−ブチルエーテルを表す。エチレングリコールサルフェート誘導体は「EGS誘導体」とし、「EGS」はエチレングリコールサルフェート、「PCS」はプロパン−1,2−サイクリックサルフェート、「BCS」はブタン−1,2−サイクリックサルフェートを表す。
(放電容量評価試験)
リチウムイオン二次電池作製後、恒温槽にて25℃に設定された環境下で初回の充電を行い、その直後に初回放電を行った。なお、充電は30mAで4.2Vまで定電流定電圧充電を行い、放電は30mAで2.5Vまで定電流放電を行った。
(60℃高温保存試験)
電池作製後、該電池を4.2Vまで定電流定電圧充電を行い、満充電状態にした。そして、該電池のリード部を絶縁テープで覆い、60℃に設定した恒温槽へ投入した。その状態で放置し、1ヵ月後恒温槽から取り出し、容量測定を行った。その容量を初期放電容量で除して100倍にした値を表1〜3中、「60℃保存後容量」として示す。
(実施例1〜6及び比較例1,2)
まず、フルオロエチレンカーボネートの含有量のみ変えた場合の評価結果を表1に示す。なお、3級炭素を有する鎖状エーテルはt−ブチルメチルエーテルとし、フルオロエチレンカーボネートの含有量以外は、表1に示すような構成で固定し、比較した。
初期放電容量においては、実施例のリチウムイオン二次電池がいずれも十分な放電容量を持つことが確認できた。
60℃保存後容量においては、比較例はいずれも80%未満であるのに対し、フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.05〜3質量%である実施例はいずれも80%以上となった。特に、フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.1〜2質量%である場合は60℃保存後容量が85%を超え、更に、0.5〜1質量%である場合は60℃保存後容量が90%を超え、優れた高温保存特性を示した。
Figure 2014049298
(実施例4,7〜11及び比較例3,4)
次に、3級炭素を有する鎖状エーテルをt−ブチルメチルエーテルとし、その含有量を変えた場合の評価結果を表2に示す。なお、t−ブチルメチルエーテルの含有量以外は、表2に示すような構成で固定し、比較した。
初期放電容量においては、実施例のリチウムイオン二次電池はいずれも十分な放電容量であることが確認できた。
60℃保存後容量においては、比較例はいずれも80%未満であるのに対し、t−ブチルメチルエーテルの含有量が0.001〜1質量%である実施例はいずれも80%以上となった。特に、t−ブチルメチルエーテルの含有量が0.01〜0.2質量%である場合は60℃保存後容量が85%を超え、更に、0.01〜0.1質量%である場合は60℃保存後容量が90%を超え、優れた高温保存特性を示した。
Figure 2014049298
(実施例12〜55及び比較例5〜9)
非水溶媒の組み合わせとLiPF濃度、非水電解液に含有するフルオロエチレンカーボネートと3級炭素を有する鎖状エーテル、エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量を表3のように変え、各測定を行った。
60℃保存後容量においては、比較例はいずれも80%未満であるのに対し、フルオロエチレンカーボネートの含有量が0.05〜3質量%、かつ、3級炭素を有する鎖状エーテルの含有量が0.001〜1質量%である実施例はいずれも80%以上となった。フルオロエチレンカーボネートが0.1〜2質量%、かつ、3級炭素を有する鎖状エーテルが0.01〜0.2質量%の場合、には、60℃保存後容量が85%を超え、特に、フルオロエチレンカーボネートが0.5〜1質量%、かつ、3級炭素を有する鎖状エーテルが0.01〜0.1質量%の場合、には、60℃保存後容量が90%を超え、優れた値を示した。
また、3級炭素を有する鎖状エーテルは、t−ブチルメチルエーテルである場合に最も大きな60℃保存後容量を示した。更に、エチレングリコールサルフェート誘導体を4質量%以下含有させた場合、60℃保存後容量が増加した。特に、式(1)で示されるエチレングリコールサルフェート誘導体が、RとRがともに水素原子であるエチレングリコールサルフェートである場合に最も高温保存特性が良好となった。
Figure 2014049298

〔式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一種を表す。〕
Figure 2014049298
10・・・正極、20・・・負極、12・・・正極集電体、14・・・正極活物質層、18・・・セパレータ、22・・・負極集電体、24・・・負極活物質層、30・・・発電要素、50・・・ケース、52・・・金属箔、54・・・高分子膜、60,62・・・リード、100・・・リチウムイオン二次電池

Claims (13)

  1. 非水溶媒と、電解質と、
    フルオロエチレンカーボネートを0.05〜3質量%と、
    3級炭素を含む鎖状エーテルを0.001〜1質量%と、
    を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用非水電解液。
  2. 前記3級炭素を含む鎖状エーテルは、t−ブチルメチルエーテルであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用非水電解液。
  3. 前記非水溶媒は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用非水電解液。
  4. 前記電解質は、LiPFを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用非水電解液。
  5. 下記式(1)で示すエチレングリコールサルフェート誘導体を4質量%以下含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用非水電解液。
    Figure 2014049298

    〔式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一種を表す。〕
  6. 前記エチレングリコールサルフェート誘導体は、R及びRが共に水素原子であることを特徴とする請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用非水電解液。
  7. 正極と、負極と、セパレータと、非水電解液とを備え、
    前記非水電解液は、フルオロエチレンカーボネートを0.05〜3質量%と、
    3級炭素を含む鎖状エーテルを0.001〜1質量%と、
    を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  8. 前記3級炭素を含む鎖状エーテルは、t−ブチルメチルエーテルであることを特徴とする請求項7に記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 前記非水溶媒は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを含むことを特徴とする請求項7または8に記載のリチウムイオン二次電池。
  10. 前記電解質は、LiPFを含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  11. 前記負極は、炭素材から成ることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  12. 下記式(1)で示すエチレングリコールサルフェート誘導体を4質量%以下含むことを特徴とする請求項7〜11に記載のリチウムイオン二次電池。
    Figure 2014049298

    〔式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも一種を表す。〕
  13. 前記エチレングリコールサルフェート誘導体は、R及びRが共に水素原子であることを特徴とする請求項7〜12のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。

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