JP2014046337A - 溶接ロボット制御装置及び溶接ロボットの制御方法 - Google Patents
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Abstract
溶接終了時にリトラクトを行うと、送給経路上の遊びがあることによる無駄時間と、溶接トーチからのワイヤ突き出し長が短くなるため、溶接ワイヤと母材が接触してアークが発生するまでに時間がかかる。
【解決手段】
リトラクト後に複数の教示ステップの配列順とは逆の順に各教示ステップについての溶接トーチ移動時間とインチング時間と比較する。溶接トーチ移動時間がインチング時間よりも大きい教示ステップを、溶接ワイヤ13のインチングを開始するインチング開始教示ステップとする。インチング開始教示ステップの開始タイミングからインチング開始教示ステップの溶接トーチ移動時間とインチング時間との差の時間が経過したタイミングをインチング開始タイミングとし、溶接終了点の位置からインチング開始タイミングの位置に移動した時にインチングを開始する。
【選択図】図2
Description
1つは、送給経路上の遊びがあることによって、溶接開始時に正送給(以下、インチングとも言う)を行っても、直ぐに溶接トーチ先端から溶接ワイヤが送給されないということである。通常、溶接開始時(すなわち、溶接開始初期)のワイヤ送給は、その後に行われる本送給速度に対して遅い速度(スローダウン)で送給されるため、正送給で前記遊びを送りきるための時間を要する。
制御システムは、溶接ロボットに設けられた溶接トーチによりワークに対して溶接を行うものであり、特にこの制御システムでは、溶接トーチが溶接終了点から、次の溶接区間の溶接開始点に到達するまでの間に溶接ワイヤを逆送給した後、正送給するものである。
図1に示すように、マニピュレータ10は、フロアに固定されるベース部材11と、それに複数の軸を介して連結された複数のアーム12と、各アーム12を駆動する駆動モータ16(図2参照)とによって構成されている。なお、図2で示す駆動モータ16は、代表的に1つの駆動モータのみが図示されている。前記駆動モータ16には、図示しないロータリエンコーダを備え、前記駆動モータ16の現在位置の検出が可能である。マニピュレータ10先端のアーム12に設けられた手首部の先端には、被溶接物であるワークWに対してアーク溶接を行う溶接トーチ14が取付けられている。マニピュレータ10は、制御ケーブルを介して溶接ロボット制御装置20に接続されている。
溶接ロボット制御装置20は、マニピュレータ10の動作を制御するためのものである。溶接ロボット制御装置20は、予め記憶されている作業プログラム及び図示しない前記ロータリエンコーダからの検出信号による座標情報等に基づいて、マニピュレータ10の各駆動モータ16を駆動制御して、溶接トーチ14を動作開始点からワークWの溶接点、その溶接点から他の溶接点、あるいは溶接点から退避位置に移動させる。
軌道スタック24は、いわゆる先入れ先出し(FIFO:first-in first-out)用のメモリからなり、軌道計画部23から送られた軌道命令を格納するものである。
現在位置監視部27は、駆動モータ16に設けられた図示しないロータリエンコーダからの検出信号により、溶接トーチ14の現在位置を監視するものである。
また、溶接制御部28は、現在位置監視部27からの溶接開始命令に基づいて溶接電源装置30によって溶接が行われるための制御信号を出力する。
ワイヤ送給装置40は、駆動ロール41と加圧ロール42を備え、加圧ロール42が図示しないバネにより駆動ロール41側へ常時付勢されて溶接ワイヤ13を両ロールに挟み込み、その摩擦力で溶接ワイヤ13をはさんで、図示しないワイヤリールから引っ張り出す正送給及び逆送給が可能にされている。駆動ロール41は駆動源としてのモータ43にて回転駆動される。
次に、本実施形態の作用について、図3及び図4に示すフローチャート並びに図5に示す教示ステップとインチング制御との時間的関係を示す図を参照して説明する。
まず、自動運転が開始されると、S10では作業プログラムインタプリター21は、メモリ部22に格納されている作業プログラムの教示ステップを1ステップ毎読み出して解析する。
S12では、作業プログラムインタプリター21は、読み出した教示ステップに溶接開始命令があるか否かを判定し、溶接開始命令がなければ、S14及びS16の処理を行い、S10に戻る。S12において、作業プログラムインタプリター21は、読み出した教示ステップに溶接開始命令がある場合には、S18に移行する。
S14では、作業プログラムインタプリター21は、教示ステップ中に含まれる軌道命令を軌道計画部23に通知する。この軌道命令には、溶接トーチ14の移動すべき座標情報や速度情報、動作命令等の情報が含まれている。
S16では、軌道計画部23は、作業プログラムインタプリター21から軌道命令が送られると、その軌道命令を教示ステップごとに軌道スタック24に格納する。そして、軌道計画部23は、先入れ先出し方式でこの軌道命令に基づいて軌道計画を立案する。
S18では、作業プログラムインタプリター21は、溶接開始命令を読み出すと、溶接制御部28に溶接開始命令を通知するとともに、軌道計画部23にはインチング開始トリガ算出要求及び溶接開始トリガ要求を通知する。
S20では、軌道計画部23は、前記インチング開始トリガ算出要求を受け取ると、インチング開始トリガ算出処理を開始する。すなわち、軌道計画部23は、インチングを開始する教示ステップの算出処理、及びそのインチングを開始する時間(タイミング)の算出処理をそれぞれ開始する。
M≒(M0−R)+I
M0:リトラクトする前の溶接ワイヤ13の突き出し長
R :リトラクト量
I :インチング量(=インチング時間T×インチング速度V)
なお、上記式が概ね成り立つとは、インチング開始から定速のインチング速度Vに達するまでの加速期間と、前記インチング速度Vからインチング終了する迄の減速期間があるが、これらの期間はインチング時間に比して無視できるほど短いためである。
S22では、軌道計画部23は、前記インデックスが指し示す教示ステップの軌道時間(移動時間)を算出する。この軌道時間(移動時間)は、教示ステップを開始するタイミングから終了するタイミングまでに要するステップ移動時間に相当する。
S24では、軌道計画部23は、S22で算出した現教示ステップでの軌道時間(移動時間)が、予め設定しておいた前記インチング時間T以下か否かを判定する。
軌道計画部23は、S22で算出した軌道時間(移動時間)が、予め設定しておいた前記インチング時間T以下の場合には、「YES」と判定してS26に移行する。また、軌道計画部23は、S22で算出した軌道時間(移動時間)が、予め設定しておいた前記インチング時間Tより大きい場合には、「NO」と判定してS28に移行する。
S26では、軌道計画部23は、テンポラリエリア23aのインチング時間Tから現教示ステップの軌道時間を減じた値を、新たなインチング時間として更新処理するとともに、インデックスを1減じて、S22に戻る。この場合、S22の処理後、S24では、軌道計画部23は、この更新したインチング時間と、インデックスで新たに指定された、教示ステップでの軌道時間との比較処理を行う。更新後のインチング時間は、前記インデックスで新たに指定された教示ステップでの軌道時間との大小関係の比較を行うためのものである。ここで、更新後のインチング時間は、次の教示ステップに対するインチング開始判別時間に相当する。
S28では、軌道計画部23は、S24で「NO」と判定したときのインデックスが指す軌道スタック24の教示ステップに付されたステップ番号と、テンポラリエリア23aに格納されているインチング時間T(すなわち、インチングを開始する時間(タイミング):以下、インチング開始時間という)を、インチング開始トリガ要求として現在位置監視部27に通知し、インチング開始トリガ算出処理を終了する。
(具体例)
前記S20〜S28の具体例を、図5を参照して説明する。
S28では、軌道計画部23は、移動時間T2を算出した第2教示ステップA2のステップ番号と、テンポラリエリア23aに格納されているインチング時間(T−T3)とをインチング開始トリガ要求として、現在位置監視部27に通知する。このことは、インチング制御を開始する教示ステップが第2教示ステップA2であるとともに、インチング開始時間が、T−T3であることを示している。なお、図5中、T1は、第1教示ステップA1における移動時間である。K1は第1教示ステップA1における開始タイミングである。ここで、次の溶接開始点におけるタイミングをK4とする。
(S30)
S30では、軌道計画部23は、S18で溶接開始トリガ要求を受け取っているため、溶接開始を行う教示ステップとしてスタック最上段の教示ステップのステップ番号とともに、溶接開始トリガ要求を現在位置監視部27に通知する。先の例では、軌道計画部23は、溶接開始を行う教示ステップとしてスタック最上段の教示ステップ(第3教示ステップA3)のステップ番号を、現在位置監視部27に通知することになる。
現在位置監視部27は、各駆動モータ16に設けられている図示しないロータリエンコーダの検出信号による座標情報に基づいて溶接トーチ14の現在位置がどの教示ステップにおける位置にあるかの監視を行う。すなわち、現在位置監視部27は溶接トーチ14の各教示ステップへの到達監視を行う。
そして、現在位置監視部27は、現在進行中の教示ステップにインチング開始トリガ要求が含まれており、現在進行中の教示ステップにおいて、当該教示ステップの残時間がインチング時間より小さいか否かを判定する。
先の例では、現在位置監視部27は、現在進行中の教示ステップが、例えば、第1教示ステップA1の場合は、S34の判定を「NO」とする。そして、現在進行中の教示ステップが第2教示ステップT2の場合は、第2教示ステップT2にはインチング開始トリガ要求が含まれるため、現在位置監視部27は、図5に示すように、現在点aにおける溶接トーチ14において次の第3教示ステップA3に到達するまでの到達時間Ta(残時間)が新たに置換されたインチング時間(T−T3)より小さいか否かを判別し、到達時間Ta(残時間)が小さくない場合には、S34の判定を「NO」とする。
S36では、現在位置監視部27は、溶接制御部28に設定されたインチング速度でのインチング開始を指令する。これにより、溶接制御部28では、溶接電源装置30を介してワイヤ送給装置40のモータ43を駆動制御し、溶接ワイヤ13のインチング制御が開始される。このインチング制御は、予め設定されたインチング時間行われる。すなわち、次の溶接区間の溶接開始点に溶接トーチ14が到達するまで行われる。
S38では、現在位置監視部27は、現在進行中の教示ステップに溶接開始トリガ要求が含まれ、かつ溶接トーチ14が次の溶接区間の溶接開始点に到達したか否かを判別する。
(S40)
S40では、現在位置監視部27は、溶接の開始を溶接制御部28に通知する。これにより、溶接制御部28は、溶接電源装置30にその旨を通知する。
また、S42では、溶接電源装置30は、ワイヤ送給装置15にワイヤ17を当初では、スローダウンで送り出す旨の指示を出力し、これにより、ワイヤ送給装置15から溶接ワイヤ13がインチング速度よりも遅いスローダウンで正送給される。また、溶接電源装置30によって溶接トーチ14とワークWとの間に所定の電圧が印加されることにより、アークが発生し、溶接が開始される。さらに溶接電源装置30は、スローダウン制御を所定時間行った後は、スローダウンよりも送給速度が速い通常送給制御で、ワイヤ送給装置40を制御して溶接ワイヤ13を送給する。
前記実施形態は、下記の特徴がある。
・ 前記実施形態では、溶接終了時に、溶接トーチ14をリトラクト(逆送給した後、インターバルをおいて、次の溶接区間の溶接開始点から遡って、インチング時間を使用して、インチングを開始するタイミングを算出するようにした。この方法に代えて、溶接ロボット制御装置20は、溶接終了時に、溶接トーチ14をリトラクト(逆送給)し、この直後に続けてインチングを開始するようにしてもよい。この場合、インチング時間は溶接終了点毎に設定されるようにしておくとよい。すなわち、本実施形態では、溶接ロボット制御装置20は、インチング開始制御部として、溶接終了毎に溶接ワイヤ13をリトラクトした後、次の溶接区間の溶接開始位置に溶接トーチが至る前に、予め設定されたインチング時間Tで溶接ワイヤ13の送給経路の遊びを解消するインチングを行う。
14…溶接トーチ、20…溶接ロボット制御装置。
Claims (5)
- 複数の教示ステップを順番に実行して溶接トーチを溶接終了位置から次の溶接区間の溶接開始位置に移動制御するとともに、溶接終了毎に溶接ワイヤをリトラクトする溶接ロボット制御装置において、
前記複数の教示ステップの配列順とは逆の順に、各教示ステップについて前記溶接トーチが各教示ステップの開始タイミングから前記溶接開始位置に移動するのに要する溶接トーチ移動時間を、予め設定されるとともに溶接ワイヤの送給経路の遊びを解消するインチング時間と比較し、前記溶接トーチ移動時間が前記インチング時間よりも大きい教示ステップを、前記溶接ワイヤのインチングを開始するインチング開始教示ステップとして抽出する教示ステップ抽出部と、
前記教示ステップ抽出部で抽出された前記インチング開始教示ステップの開始タイミングから、当該インチング開始教示ステップの前記溶接トーチ移動時間と前記インチング時間との差の時間が経過したタイミングを前記溶接ワイヤのインチング開始タイミングとして設定するインチング開始タイミング設定部と、
前記溶接トーチが前記溶接終了位置から前記インチング開始タイミング設定部で設定されたタイミングの位置に移動した時に前記溶接ワイヤのインチングを開始させるインチング開始制御部を備えることを特徴とする溶接ロボット制御装置。 - 前記教示ステップ抽出部は、
前記複数の教示ステップの配列順とは逆の順に各教示ステップについて、前記溶接トーチが各教示ステップを開始するタイミングから終了するタイミングまでに要するステップ移動時間を算出するステップ移動時間算出部と、
前記ステップ移動時間算出部で算出された前記ステップ移動時間が各教示ステップに設定されるインチング開始判別時間よりも小さいか否かを判別する判別部と、
前記判別部で判別を行う最初の教示ステップに対する前記インチング開始判別時間として前記インチング時間を設定し、前記判別部で前記ステップ移動時間が前記インチング開始判別時間よりも小さいと判別されると、当該インチング開始判別時間と当該ステップ移動時間との差分を次の教示ステップに対するインチング開始判別時間に設定するインチング開始判別時間設定部と、
前記判別部により前記ステップ移動時間が前記インチング開始判別時間設定部で設定された前記インチング開始判別時間よりも大きいと判別されると、当該ステップ移動時間を有する教示ステップを前記インチング開始教示ステップとして抽出するステップ抽出部と、を含み、
前記インチング開始タイミング設定部は、前記ステップ抽出部で抽出された前記インチング開始教示ステップの開始タイミングから、当該インチング開始教示ステップの前記ステップ移動時間と前記インチング開始判別時間との差の時間が経過したタイミングを前記インチング開始タイミングとして設定することを特徴とする請求項1に記載の溶接ロボット制御装置。 - 複数の教示ステップを順番に実行して溶接トーチを溶接終了位置から次の溶接区間の溶接開始位置に移動制御するとともに、溶接終了毎に溶接ワイヤをリトラクトする溶接ロボット制御装置において、
前記溶接終了毎に前記溶接ワイヤをリトラクトした後、次の溶接区間の溶接開始位置に溶接トーチが至る前に、予め設定されたインチング時間で前記溶接ワイヤの送給経路の遊びを解消するインチングを行うインチング開始制御部を備えることを特徴とする溶接ロボット制御装置。 - 複数の教示ステップを順番に実行して溶接トーチを溶接終了位置から次の溶接区間の溶接開始位置に移動制御するとともに、溶接終了毎に溶接ワイヤをリトラクトする溶接ロボットの制御方法において、
前記複数の教示ステップの配列順とは逆の順に、各教示ステップについて前記溶接トーチが各教示ステップの開始タイミングから前記溶接開始位置に移動するのに要する溶接トーチ移動時間を、予め設定されるとともに溶接ワイヤの送給経路の遊びを解消するインチング時間と比較し、前記溶接トーチ移動時間が前記インチング時間よりも大きい教示ステップを、前記溶接ワイヤのインチングを開始するインチング開始教示ステップとして抽出する教示ステップ抽出工程と、
前記教示ステップ抽出工程で抽出された前記インチング開始教示ステップの開始タイミングから、当該インチング開始教示ステップの前記溶接トーチ移動時間と前記インチング時間との差の時間が経過したタイミングを前記溶接ワイヤのインチング開始タイミングとして設定するインチング開始タイミング設定工程と、
前記溶接トーチが前記溶接終了位置から前記インチング開始タイミング設定工程で設定されたタイミングの位置に移動した時に前記溶接ワイヤのインチングを開始させるインチング開始制御工程を含むことを特徴とする溶接ロボットの制御方法。 - 前記教示ステップ抽出工程は、
前記複数の教示ステップの配列順とは逆の順に各教示ステップについて、前記溶接トーチが各教示ステップを開始するタイミングから終了するタイミングまでに要するステップ移動時間を算出するとともに、前記インチング開始教示ステップを抽出するためのインチング開始判別時間を設定し、算出した前記ステップ移動時間を前記インチング開始判別時間と比較する処理を、前記ステップ移動時間が前記インチング開始判別時間よりも大きくなるまで繰り返し、前記ステップ移動時間が前記インチング開始判別時間よりも大きくなった場合にそのステップ移動時間を有する教示ステップを前記インチング開始教示ステップとして抽出するものであり、
前記比較する処理においては、最初の教示ステップに対する前記インチング開始判別時間に前記インチング時間が設定され、2番目以降の教示ステップに対する前記インチング開始判別時間に各教示ステップの前の教示ステップに対して設定された前記インチング開始判別時間と当該前の教示ステップに対して算出された前記ステップ移動時間の差の時間が設定されるものであり、
前記インチング開始タイミング設定工程は、前記教示ステップ抽出工程で抽出された前記インチング開始教示ステップの開始タイミングから、当該インチング開始教示ステップの前記ステップ移動時間と前記インチング開始判別時間との差の時間が経過したタイミングを前記インチング開始タイミングとして設定するものであることを特徴とする請求項4に記載の溶接ロボットの制御方法。
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