JP2014044162A - 放射線測定方法 - Google Patents

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祐彦 大日方
Kazufumi Nishida
和史 西田
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Abstract

【課題】厚さ測定の精度安定性を向上させる。
【解決手段】放射線源から放射され、試料を透過してくる放射線を放射線測定器により検出し、大気変動による検出感度の補償を行って坪量の測定を行う放射線測定方法において、前記大気変動による検出感度の補償を行うに際しては、大気変動に対して測定対象となる試料の補償感度比をシミュレーションによって求め、このシミュレーションによって求めた感度比を用いて大気変動に対して感度補正された坪量補正を行うことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、X線を代表とする線源を用いて試料の透過時の減衰を利用して厚さ(坪量)の測定を行なう際に大気の変動と試料坪量の変動感度を設定した補償を行なう事で測定精度の向上を図った放射線測定方法に関するものである。
放射線が物質層を通過すると,電離作用や励起作用等によって次第にエネルギーを失って減衰し,更にこの様な非弾性散乱を多数回受けて進行方向が変化する。従って試料の物理量(例えば坪量)が増すに伴い透過する放射線の数は減少する。この様な原理を応用し,シ―ト状の種々の試料の物理量を測定する装置が知られている。
放射線を用いた例えば坪量測定では、放射線源と検出器の間にシート状の試料を置き、その透過率から例えば放射線の強度を検出して信号分布を得るのが一般的である。このため、放射線源と検出器の間に存在する大気の変化は検出画像(検出精度)に直接影響する。即ち、気温や気圧が変化して密度変化が起きるとそれがそのまま測定誤差につながることになる。
放射線源を安定駆動するフィードバック制御や温度制御による放射線量のモニタが行われている。温度や気圧などの変動を監視して測定系にフィードバックし測定対象物を精度良く測定する先行技術として、特開平4−158209や特開2001−227918に開示されたものがある。
図6はX線、β線、γ線、赤外線などの放射線を用いた透過特性によりシート状の試料の坪量(厚さ)や塗工量測定を行うインライン測定器の一例を示す斜視図である。
シート状の試料1は右から左方向へ一定速度で流れており、この試料を略直行するように放射線源ヘッド(下側・・・以下線源という)2と電離箱等の検出器ヘッド(上側・・・以下検出器という)3が一対となって試料1を走査する形態で測定を行っている。
夫々のヘッドは門型と呼ばれるO型フレーム4に支持され、対向する上下ヘッドの位置関係を保持して上下夫々駆動される。夫々のヘッド2,3は、試料の端部付近で折り返しを繰り返してジグザグに測定を繰り返す。更に夫々のヘッドはO型フレーム4の右側に待避位置Aが設けられている。
これは、試料をセットする場合や放射線源ヘッド2や検出器ヘッド3のメンテナンス、校正などの際に試料の無い位置に移動する必要があるためである。厚さ測定においては、予め厚さ(坪量)と材質が既知の複数の標準サンプルを測定しておき、その坪量に対する透過特性として検量線を求めている。
その検量線と試料の透過出力値から逆引きして坪量(厚さ)を換算する。塗工量については図6に示す厚さ測定装置5を2本乃至3本生産ライン内に設置し、塗工工程前後にその透過特性を測定し、夫々の差分を求めることで塗工量を知ることが出来る。
図6に示すような方式では高速に流れる試料1に対してヘッド2、3が幅方向に走査するため、ジグザグのライン上を部分的にしか測定出来ない。このため近年では全面測定の要望もある。
図7は複数の検出素子(図示省略)が狭ピッチで列状に隙間無く並んだライン型検出器3aを設置し、所定の距離はなれた放射線源から放射状に放射線を出射させて全面を測定している状態を示す斜視図である。2aは放射線源、3aは放射線検出器(ラインカメラ)である。
ここで、図6に示す走査型測定器であっても、図7に示す全面測定型測定器であっても校正の際には試料1を一旦取り除いて行う。
即ち、経時変化による線源の劣化、検出器の感度変化、大気の温度・湿度変化(生産ライン内の空調が悪く季節的または朝晩などの周期的な変動)等に対して校正を行うもので、試料1が無い状態(=大気)を測定して校正を行う。
また、ある程度長期的には標準サンプルを測定して検量線を求め直すことも行われる。図6に示す走査形測定器では、従来リアルタイムにセンサヘッド間の温度を測定して大気温度の補償を行なうと共に、数十分乃至数時間単位程度の間隔で大気の測定を行ない、この値を用いて測定値の補償演算を行っている。
特開平4−158209 特開2001−227918
ところで、短期−中期に掛けての測定精度に一番影響を与える大気層の変化に対しては、数時間おきに退避・校正動作を行う事で、測定値に大気変動に対する補償を行う。しかし、大気と試料とでX線を吸収するスペクトルが異なることにより大気層の坪量変動を坪量や試料種類の異なる被測定物に一様な補償値として与えると誤差を生む要因となる。
とりわけ、図7に示すような測定系では、被測定物の坪量に対する大気坪量の割合が大きく、大気変動による坪量変動を単純な係数で補償する方法では、測定値に与える誤差を大きくする。
また、図7に示すような全面測定型の装置で、大掛かりな退避動作を行ったとしても、この誤差は、変わらない。
比較的測定値に影響を与え易い温度変化を小さくするために測定経路の大気層に恒温化した計装用の空気を流す等の対策も考えられるが、空気消費が多いことや恒温化のためのヒータ電力が掛かるという問題があり、気圧変化からは免れられない等の問題がある。
従って本発明は、対象試料となる物質に固有なエネルギーごとの線源弱係数をシミュレーションにより大気との比として求め、これを用いて大気変動を由来として生じる測定信号の変動を被測定物の試料種類・坪量に応じて感度補正した上で補償する事により、厚さ測定の精度安定性を向上させることを目的とする。
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の放射線測定方法の発明は、
放射線源から放射され、試料を透過してくる放射線を放射線測定器により検出し、大気変動による検出感度の補償を行って坪量の測定を行う放射線測定方法において、前記大気変動による検出感度の補償を行うに際しては、測定対象となる試料の大気変動に対する補償感度比をシミュレーションによって求め、このシミュレーションによって求めた感度比を用いて大気変動に対して感度補正された坪量補正を行うことを特徴とする。
請求項2においては、請求項1に記載の放射線測定方法において、
前記感度比は大気と試料の線減弱係数スペクトル及び試料透過時のエネルギースペクトルから求めることを特徴とする。
請求項3においては、
請求項1に記載の放射線測定方法において、
前記放射線源は、X線であることを特徴とする。
本発明によれば以下のような効果がある。対象試料となる物質に固有なエネルギーごとの線源弱係数をシミュレーションにより大気との比として求め、これを用いて大気変動を由来として生じる測定信号の変動を被測定物の試料種類・坪量に応じて感度補正した上で補償するので、厚さ測定の精度安定性を向上させることができる。
本発明の実施形態の一例を示す信号処理の流れを示すフローチャートである。 大気とアルミにおけるX線エネルギーレベルと大気の質量減弱係数の関係を示す図である。 アルミ試料厚変更時のX線エネルギーとX線強度の関係を示す図である。 大気とアルミにおけるX線エネルギーレベルの質量減弱係数比の関係を示す図である。 アルミ試料の坪量違いによる空気層に対するX線強度相対値の変化を示す図である。 従来例を示す斜視図である。 他の従来例を示す斜視図である。
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。
なお、本発明の構成は従来例と同じなのでここでの説明は省略する。
図1(a〜c)は本発明の放射線測定方法の実施形態の一例を示す信号処理の流れを説明するフローチャートである。
図1(a)は通常の測定方法により坪量を測定した信号処理の流れ、図1(b)は坪量の大気変動による感度補正を行うための信号処理の流れ、図1(c)はシミュレーション部のフローを示している。
なお、図(a,b)は坪量測定を開始した時点で同時に進行し、図1(c)は測定に先立ってオフラインで作成しておけば利用し易い。
はじめにシミュレーション部に格納される各種データについて説明する。このシミュレーション部で得た「大気変動に対する試料の感度係数」は従来例で用いられる演算手段(図示省略)の中に含めておくと使い易い。
図2は図1(c)のstep1”で用いられるエネルギーレベルと大気の質量減弱係数の関係を示す図であり、試料(ここではアルミを例とする)となる測定対象の組成を調べるとともに大気の線源弱係数のスペクトルを作成する。このスペクトルは計算により求めたものである。
図2において、縦軸は質量減弱係数を示し、横軸はX線エネルギー(keV)を示している。図中aは大気、bはアルミの質量減弱係数である。
図2によれば、大気とアルミでは、質量減弱係数がX線のエネルギーレベルによって、異なる変化をすることが分かる。即ち、同じ大気とアルミを透過する場合であってもX線のエネルギーが異なれば、それぞれでのX線の吸収割合が変化することが読み取れる。
図3は図1(c)のstep2”で用いられるアルミ試料の厚さを変更したときのエネルギースペクトルを示すもので、縦軸にX線強度(相対値)、横軸にX線エネルギーを示す図である。
図2によれば、アルミ試料厚によって試料透過時のX線のエネルギースペクトルが変化することが分かる。
図2、図3を合わせて考えれば、「大気とアルミとでX線の吸収割合はX線のエネルギーによって異なる」事と「アルミの試料厚によってX線のエネルギースペクトルが変化する」事から、「試料厚が変化すれば、X線の透過エネルギースペクトルも変わり、その時の大気変動がアルミに与える感度の割合も変化する」事が理解できる。
step3”では図2で作成した測定対象となる試料と大気の線源弱係数スペクトルを得て、図3に示すような坪量が変化したときのX線強度分布との積からX線強度スペクトルの比をシミュレーションにより求める。
図4はエネルギーレベルと(Al/Air)の質量減弱係数比であり、縦軸は質量減弱係数比、横軸はX線エネルギー(keV)を示している。
図によれば質量減弱係数比は、X線のエネルギーにより数KeVから30KeVの範囲で3.5〜6ほどに変化していることが分かる(図1(c)「大気と試料の線減弱係数比」に対応)。
図5は対象試料の物質に合わせて、質量減弱係数もしくは線減弱係数のリストを作成し、大気層の坪量と対象試料の厚さを変化させた時の感度係数を求めたもので、アルミ試料の坪量違いによる対大気層のX線強度相対値の変化(傾きを正規化したもの)である(但し、ここでは、空気の重さを960g/m2として試算している)。
図5において、縦軸は大気変動に対するX線強度感度係数(相対値)を示し、横軸は試料の坪量(g/m2)変化を示している。◆印のプロットはシミュレート,実線はなめらかに◆をつないだものである。例えば、アルミ200g/m2程度の試料では大気変動に対するX線強度の感度係数は0.65程度であるのに対し、アルミ800g/m2では同0.2程度に感度が低下する事が分かる。
次に図1(a〜c)の信号処理のフローチャートについて説明する。
はじめに図1(c)におけるフローについて説明する、
Step1”:大気の線源弱係数スペクトルを作成する。
Step2”:試料の線源弱係数スペクトルを作成する。
Step3”:Step1”とStep2”を積算して大気と試料の線源弱係数比を演算する。
Step4”:図3に示す坪量別試料透過時のX線強度スペクトルとStep3”で演算した大気と試料の線源弱係数比を基に、
Step5”:大気変動に対する試料の感度係数を演算し、記憶部に格納しておく。
図1(a)に戻り、
Step1:試料を透過した放射線の信号を測定する。
Step2:検量線を用い、
Step3:厚さ(坪量)を求める。(この「坪量計算」で求めた値とstep2’で求めた「大気変動坪量化」の値を用いてstep3’「対象試料の変動量演算」を導く。)
図1(b)において、
Step1’:大気変動信号測定を行う。
Step2’:大気変動の坪量化を行う。
Step3’:Step2’で坪量化した大気変動とstep3で得た坪量計算の値に合わせてStep5”で演算した大気変動に対する試料の感度係数を基に対象試料の変動量を演算する。
図1(a)に戻り、
Step4:Step3で求めた坪量と図1(b)のStep3’で求めた対象試料の変動量演算結果を基に大気坪量感度減算を行う。
Step5:補正後の坪量を求め、
Step6:補正された坪量を測定値として出力する。
以上のステップにより試料の坪量と感度に応じた厚さ測定の補償を行なうことができる。
本発明によれば、サンプルテストやラボテストを行わなくとも、シミュレーションによって、大気の坪量変化による感度補正を適切に行うことができる。例えばフィルム工場の試料は、その多くがポリオレフィン系樹脂、アルミ箔等、分かり易い組成であり、こうした材料について、その度にサンプルテストやラボテストを行う必要がない。
その結果坪量測定値の測定精度を向上させることができる。
また、測定対象となる試料の坪量が変化した場合にも感度補正を行うことで適切な補正値を与えることができる。その結果坪量測定値の測定精度を向上させることができる。
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。実施例では測定対象としてアルミ材を用いたが樹脂などの厚さ測定にも適用可能である。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
1 試料
2、2a 放射線源
3 検出器ヘッド(電離箱)
3a 放射線検出器(ラインカメラ)
4 O型フレーム
5 厚さ(坪量)測定装置

Claims (3)

  1. 放射線源から放射され、試料を透過してくる放射線を放射線測定器により検出し、大気変動による検出感度の補償を行って坪量の測定を行う放射線測定方法において、前記大気変動による検出感度の補償を行うに際しては、大気変動に対して測定対象となる試料の補償感度比をシミュレーションによって求め、このシミュレーションによって求めた感度比を用いて大気変動に対して感度補正された坪量補正を行うことを特徴とする放射線測定方法。
  2. 前記感度比は大気と試料の線減弱係数スペクトル及び試料透過時のエネルギースペクトルから求めることを特徴とする請求項1に記載の放射線測定方法。
  3. 前記放射線源は、X線であることを特徴とする請求項1に記載の放射線測定方法。
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