ここで、建設工事による騒音を監視するには、騒音が建設工事の敷地内における発生音に起因するのか、それとも建設工事とは関係のない敷地外での発生音に起因するのかを区別する必要がある。
しかしながら、敷地外から到来する発生音と区別しながら、敷地内に点在しあるいは該敷地内を縦横に走行する多数の建設工事用機械のいずれが騒音源となっているのかを適切かつ迅速に特定可能な技術は未だ開発されていない。
また、騒音規制法に基づく騒音監視は、計量法で定められた法定計量器、すなわち検定に合格した騒音計を用いる必要があるため、指向性を有するマイクロホンを用いたc−c法では、騒音規制法に基づいた騒音監視が難しいという問題も生じていた。
一方、騒音計で計測された騒音値は、敷地内外におけるさまざまな発生音が反映されたものであるため、計測された騒音レベルが目標値を上回ったときにその原因が敷地内にあるのか敷地外にあるのかを区別することができず、結果として作業員による長時間の現場監視体制を余儀なくされるという問題も生じていた。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、建設現場の敷地内に点在しあるいは該敷地内を縦横に走行する多数の建設工事用機械の中からいずれが騒音源となっているのかを速やかに特定することが可能な騒音源探索システムを提供することを目的とする。
また、本発明は、小型化を可能にしつつ騒音規制法に基づいた騒音監視が可能でありかつ騒音レベルが目標値を上回ったときに騒音の原因が敷地内にあるのかどうかを適切に判断することが可能な騒音源探索システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る騒音源探索システムは請求項1に記載したように、騒音監視エリアである敷地の境界近傍に設定された計測地点で発生音の音圧を計測する音圧計測手段と、該音圧計測手段で計測された音圧値を用いて前記発生音の到来角度を算出する到来角度算出部と、該到来角度算出部から得られた到来角度を合成対象到来角度とし該合成対象到来角度に対応する方向表示画像を前記敷地内の音源配置状況が平面配置図として示された平面配置画像であって該平面配置画像上における前記計測地点の対応位置に重ね合わせて合成画像を作成する合成画像作成部と、該合成画像を表示する表示手段とを備えたものである。
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記計測地点を相異なる2つの計測地点として該2つの計測地点で発生音の音圧値がそれぞれ計測されるように前記音圧計測手段を構成するとともに、前記2つの計測地点で計測された音圧値から該2つの計測地点における到来角度が2つの合成対象到来角度としてそれぞれ算出されるように前記到来角度算出部を構成し、前記合成画像作成部を、前記2つの合成対象到来角度にそれぞれ対応する方向表示画像が前記平面配置画像であって該平面配置画像上における前記2つの計測地点の対応位置にそれぞれ重ね合わされるように構成したものである。
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記音圧計測手段を、指向性を有する2つのマイクロホンを最大感度方向が互いに逆方向を向くように配置してマイクロホン対とし該マイクロホン対を互いに平行でない複数の軸線に沿ってかつそれらの原点を挟むようにそれぞれ配置して構成したものである。
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記計測地点近傍に配置され発生音の音圧を騒音レベルとして計測する騒音計測手段を備えるとともに、該騒音レベルを前記表示手段に出力するように構成したものである。
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記計測地点近傍に配置され発生音の音圧を騒音レベルとして計測する騒音計測手段と、
該騒音計測手段に内蔵されている周波数重み特性と実質同一の周波数重み特性で前記各マイクロホンで計測された音圧値をフィルタリングする聴感補正回路が設けられその処理結果を前記到来角度算出部に出力するフィルタ部と、
前記到来角度算出部で得られた到来角度を用いて所定時間幅における前記発生音の到来数を到来角度ごとに計数する到来頻度計数部と、
該到来頻度計数部で得られた到来角度ごとの到来数を全方位の総和で除して到来角度ごとの影響率を算出するとともに、該影響率及び前記騒音レベルを用いて前記敷地が見渡される角度範囲内の発生音に起因する騒音指標を敷地内騒音レベルとして算出し、該敷地内騒音レベルを前記騒音レベルとともに前記表示手段に出力するように構成した騒音指標作成部とを備えたものである。
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記騒音レベル又はそれに加えて前記敷地内騒音レベルの時刻歴波形を作成するとともに該時刻歴波形を前記表示手段に出力する騒音波形処理部を備えたものである。
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記音圧計測手段で計測された音圧値又は該音圧値を用いて前記到来角度算出部で算出された到来角度をデータ保存する音圧関連データ蓄積手段と、再生時刻を指定する時刻指定手段とを備え、前記時刻指定手段を介して入力された指定時刻に一致する音圧計測時刻の音圧値を前記音圧関連データ蓄積手段から読み出し該音圧値を用いて前記到来角度算出部で算出された到来角度を前記合成対象到来角度とするか、又は前記指定時刻に一致する音圧計測時刻の到来角度を前記音圧関連データ蓄積手段から読み出してこれを前記合成対象到来角度とし、前記合成対象到来角度を前記合成画像作成部に出力するようになっているものである。
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記騒音レベル又はそれに加えて前記敷地内騒音レベルの時刻歴波形を作成するとともに前記時刻指定手段を介して入力された指定時刻に一致する該時刻歴波形上の位置に再生位置マーカーを画像表示して時刻歴波形画像とし該時刻歴波形画像を前記表示手段に出力する騒音波形処理部を備えたものである。
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記到来角度算出部を、前記発生音のエネルギーの大きさが該発生音ごとのエネルギー値として算出されるように構成するとともに、前記到来頻度計数部を、前記発生音の到来数が該発生音のエネルギー値で重み付けされるように構成したものである。
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記敷地内の建設工事用機械の種類に応じた周波数特性で前記各マイクロホンによる計測値をフィルタリングする重機選別回路を前記フィルタ部に設けるとともに、前記敷地内騒音レベルを重機別敷地内騒音レベルとしたものである。
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記敷地内騒音レベル又は前記重機別敷地内騒音レベルの大きさを予め定められた目標値と比較し該敷地内騒音レベル又は重機別敷地内騒音レベルが前記目標値を上回ったときに警報データを作成する警報作成部と、該警報作成部で作成された警報データを出力する警報出力部とを備えたものである。
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記警報出力部を前記敷地内で稼働する建設工事用機械に設けたものである。
本発明に係る騒音源探索システムにおいては、計測された発生音の音圧値を用いて到来角度算出部で発生音の到来角度を算出し、該到来角度算出部から得られた到来角度を合成対象到来角度とするとともに、該合成対象到来角度に対応する方向表示画像を、敷地内の音源配置状況が平面配置図として示された平面配置画像であって該平面配置画像上における計測地点の対応位置に重ね合わせて合成画像を作成し、これをモニター等の表示手段に表示する。
このようにすると、発生音がどこから到来しているのかを、敷地内の音源配置状況が示された平面配置図上で確認することが可能となり、かくして騒音源の位置を適切かつ迅速に特定することができる。
合成対象到来角度に対応する方向表示画像を平面配置画像に重ね合わせるには、到来角度の基準方位を平面配置図の基準方位に一致させる必要があるが、到来角度の基準方位は、音圧計測手段の設置方向あるいは設置姿勢から一意にかつ一定値として定めることができるので、例えば初期条件として適宜設定しておけばよい。平面配置図の基準方位についても図面作成時に定まるので同様に処理すればよい。
方向表示画像は、発生音が平面配置図あるいはそれを画像化した平面配置画像上でどの角度から到来しているのかを把握することができる限り、任意の図形で構成することが可能であって、例えば平面配置画像上における計測地点の対応位置を通るように該平面配置画像に重ね合わされたライン図形や、同じくその計測地点の対応位置が起点となるように平面配置画像に重ね合わされた矢印図形で構成することが可能であり、後者の場合、矢印の長さで発生音の音圧を表現することが可能である。また、方向表示画像を表示する際、任意のエフェクトをかけることが可能であり、後述するリアルタイムモードであれ再生モードであれ、例えばフェードアウトをかけるようにすれば、到来角度の時間変化を視覚的に捉えることが可能となる。
ブルドーザ、トラクターショベル、バックホウ、クレーン、ダンプトラックといった各種建設工事用機械は、それら自体の作動音あるいは運転音をはじめ、稼働に伴って生じる様々な作業音が周囲に伝播し騒音となり得るが、本発明の平面配置図は、それら発生音が生じる箇所、すなわち音源の位置や音源の範囲が示されたものであって、各種建設工事用機械の位置、形状、運転範囲、ブームの旋回範囲などが含まれる。
騒音源の探索は、方向表示画像に沿ったあるいはその延長上に存在する平面配置画像上の建設工事用機械を特定することで可能であるが、方向表示画像が一つだけの場合、該方向表示画像に沿ってあるいはその延長上に複数の建設工事用機械が存在するときの相互の識別は必ずしも容易ではない。
かかる場合において、前記計測地点を相異なる2つの計測地点として該2つの計測地点で発生音の音圧値がそれぞれ計測されるように前記音圧計測手段を構成するとともに、前記2つの計測地点で計測された音圧値から該2つの計測地点における到来角度が2つの合成対象到来角度としてそれぞれ算出されるように前記到来角度算出部を構成し、前記合成画像作成部を、前記2つの合成対象到来角度にそれぞれ対応する方向表示画像が前記平面配置画像であって該平面配置画像上における前記2つの計測地点の対応位置にそれぞれ重ね合わされるように構成したならば、騒音源となっている建設工事用機械を、2つの方向表示画像の交点、あるいはそれらの延長線の交点に存在する平面配置画像上の建設工事用機械として特定することができるので、騒音源をより確実に探索することが可能となる。
音圧計測手段及び到来角度算出部は、音圧値を計測可能でかつその音圧値を用いて発生音の到来角度を算出することができる限り、任意の構成とすることが可能であって、例えばp−p法であれば、2つの無指向性マイクロホンからなるマイクロホン対で到来角度を算出することができる(特許文献1〜3、非特許文献1)。
一方、c−c法であれば、指向性を有する2つのマイクロホンからなるマイクロホン対で計測された音圧の差分値を、記憶手段に予め格納された到来角度ごとのマイクロホン感度差に照合することで到来角度を推定したり(特許文献4,5、非特許文献2)、マイクロホン対でそれぞれ計測された音圧の加算値及び差分値を乗じるか又は二乗音圧の差分値を計算し、次いで音響インピーダンスρc(ρ;空気密度、c;音速)で除することにより、該マイクロホン対の配置軸線に沿った音響インテンシティ成分を算出するとともに、別のマイクロホン対を用いて異なる軸線方向に沿った音響インテンシティ成分を同様に算出し、これら音響インテンシティのベクトル成分から到来角度を推定したりすることが可能である(特許文献4,6、非特許文献3)。
これらc−c法によれば、対象周波数に関わらず、マイクロホンの離間寸法を一定に保つことができるため、p−p法よりも音圧計測手段の小型化が可能であり、建設現場への適用が容易となる。
c−c法に基づいて到来角度を算出する場合、音圧計測手段は、指向性を有する2つのマイクロホンを最大感度方向が互いに逆方向を向くように配置してマイクロホン対とし、該マイクロホン対を互いに直交する3つの軸線に沿ってそれぞれ配置する構成が主として想定されるが、2次元平面、例えば水平面で発生音の到来角度を近似的に把握すれば足りるのであれば、該水平面内で2方向に延びる2つの軸線に沿ってマイクロホン対をそれぞれ設置するようにしてもかまわない。一方、音響インテンシティのベクトル成分から到来角度を推定するにあたり、複数の軸線が必ずしも直交している必要はなく、例えば正四面体の中心から4つの頂点に向けてそれぞれ延びる4本の軸線に沿ってマイクロホン対をそれぞれ設置することで、三次元空間における到来角度の把握が可能である。
すなわち、c−c法に基づいて到来角度を算出する場合の音圧計測手段は、互いに平行でない複数の軸線に沿ってかつそれらの原点を挟むようにマイクロホン対をそれぞれ配置した構成とすれば足りる。
マイクロホンは、c−c法においては、カーディオイド、スーパーカーディオイド、ハイパーカーディオイドといった指向性を有するものとする。
騒音源の探索は、騒音レベルとは関係なく行うようにしてもかまわないが、前記計測地点近傍に配置され発生音の音圧を騒音レベルとして計測する騒音計測手段を備えるとともに、該騒音レベルを前記表示手段に出力するように構成したならば、騒音規制法などの騒音規制に関する法の定めにしたがって騒音レベルを監視しつつ、該騒音レベルが規制値あるいはそれに基づく目標値を上回った場合に、上述した騒音源の探索を行うことが可能となり、騒音源の探索をより効率的に行うことが可能となる。
本発明においては、敷地を見渡す角度範囲で音圧計測を行えば足り、該音圧計測を必ずしも全方位にわたって行う必要はないが、発生音の音圧を騒音レベルとして計測する騒音計測手段を別途備えた上、算出された到来角度を用いて所定時間幅における発生音の到来数を到来角度ごとに計数し、該到来角度ごとの到来数を全方位の総和で除して到来角度ごとの影響率を算出するとともに、該影響率及び騒音レベルを用いて敷地が見渡される角度範囲内の発生音に起因する騒音指標を敷地内騒音レベルとして算出し、これらを表示手段に出力するようにすれば、騒音規制に関する法に基づく騒音監視を行いつつ、騒音源を合理的に探索することが可能となる。
すなわち、かかる構成においては、各マイクロホンによる音圧計測とは別に、騒音計測手段で発生音の音圧を騒音レベルとして計測する。騒音計測手段は、検定を受けた騒音計で構成するものとする。
次に、各マイクロホンによる計測値を騒音計測手段に内蔵されている周波数重み特性と実質同一の周波数重み特性、例えば騒音計測手段に内蔵されている周波数重み特性がA特性であればA特性でフィルタリングした後、到来角度算出部に出力し、次いで、上述したc−c法の手順に従って発生音の到来角度を算出する。
なお、騒音レベルは、従来技術においては、周波数重み特性のうち、A特性でフィルタリングされた音圧レベルを意味するが、本発明では、A特性に限らず、聴感補正のための他の周波数重み特性も包摂されるとともに、敷地内騒音レベルも同様とする。
到来角度算出部で発生音の到来角度を算出するにあたっては、例えば0.1秒を時間幅Δtとし、該各時間幅Δtにおいて発生音を0.001秒間隔でサンプリングして、それぞれの到来角度を上述した推定方法で算出するようにすればよい。
次に、時間幅Δtにおける発生音の到来数を、到来角度算出部で得られた到来角度データを用いて到来角度ごとに到来頻度計数部で計数する。
到来角度ごとに計数を行うにあたっては、2次元平面であれば、全周360゜を例えば0゜〜10゜、10゜〜20゜・・・というように10゜ずつに分割し、それらの角度幅ごとに発生音の到来数を計数し、3次元空間で把握するのであれば、例えば上述の2次元平面に直交する別の2次元平面について同様に発生音の到来数を計数すればよい。
次に、到来頻度計数部で得られた到来角度θごとの到来数をN(θ)、それらのθに関する総和、すなわち全方位の総和をΣN(θ)としたとき、次式、
C(θ)=N(θ)/ΣN(θ) (2)
により、C(θ)を騒音指標作成部で算出する。ここで、C(θ)は、
0≦C(θ)≦1
である。
C(θ)は、到来角度θごとの発生音の到来数N(θ)をそれらの総和ΣN(θ)で除したものであって、全方位からの発生音の到来頻度に対する到来角度θごとの到来頻度の比率であり、以下、C(θ)を影響率と呼ぶ。なお、θは、演算処理の便宜上、上述したように、0゜〜10゜、10゜〜20゜・・・というように一定幅を持つ値として取り扱うことが想定されるが、騒音源の位置が変化せず到来角度が一定であるような場合においては、実質的に幅を持たない値として取り扱われることも考えられる。
影響率C(θ)は、上述したように全方位からの発生音の到来頻度に対する到来角度θごとの到来頻度の比率として定義されたものであるので、C(θ)を用いて騒音レベルを割り振ることにより、所定角度範囲からの発生音に起因する騒音指標を評価することができる。
例えば、角度範囲θ1〜θ2におけるC(θ)の総和ΣC(θ)(θ=θ1〜θ2)をCTとすると、全方位から到来する発生音のエネルギーを便宜的にEと定めてこれにCTを乗じた場合、その乗算結果は、所定角度範囲θ1〜θ2から到来した発生音のエネルギーETと考えることができる。すなわち、
ET=E・CT (3)
ここで、発生音のエネルギーの基準値をE0とした場合、
ET/E0=E/E0・CT
となるので、両辺の常用対数をとって10を乗じると、
10・log(ET/E0)=10・log(E/E0)+10・logCT (4)
となる。
一方、騒音レベルは、音圧の二乗、あるいは音のエネルギーをデシベル表示したものであって、(4)式の右辺第1項はこの騒音レベルに相当するため、これを騒音レベルL、左辺をLTとおけば、
LT=L+10・logCT (1)
となる。
ここで、(1)式の右辺第2項がゼロ又は負の値をとることから、LTは、騒音レベルLよりも小さな値であって、所定の角度範囲からの発生音に起因する騒音指標であると考えることができる。
従来技術における騒音レベルは、無指向性のマイクロホンを用いて発生音を全方位で計測することを前提とした騒音指標であって、到来角度の違いに応じて騒音を把握できるものではない。それに対し、上述の構成においては、全方位からの発生音の到来頻度に対する到来角度θごとの到来頻度の比率を算出し、これを影響率C(θ)と定義した上、該影響率又は所定の角度範囲θ1〜θ2におけるC(θ)の総和CTを用いて例えば(1)式の演算を行うことにより、全方位である騒音レベルLを角度範囲ごとの騒音指標LTに割り振ることができる。
なお、所定の角度範囲からの発生音に起因する騒音指標は従来技術には存在しないため、以下、所定の角度範囲が、敷地を見渡すことができる角度範囲である場合の騒音指標LTを敷地内騒音レベルと呼び、全方位である騒音レベルLとは区別することにする。
敷地が見渡される角度範囲は、敷地が長方形であってその隅部近傍を計測地点とするのであれば90゜、同じく長手側又は短手側縁部近傍を計測地点とするのであれば180゜とそれぞれ設定することができる。
敷地内騒音レベルLTは例えば、騒音監視エリアである敷地が計測地点から見て0゜〜90゜の角度範囲で見渡される場合において、全周360゜を0゜〜90゜とそれ以外の角度範囲に分割し、0゜〜90゜の角度範囲においてΔtの間に到来する発生音の到来数を50、それ以外の角度範囲における到来数を50とした場合、到来角度ごとの到来数の総和、すなわち全方位からの到来数は100となるので、0゜〜90゜の角度範囲における敷地内騒音レベルLTは、
LT=L+10・log(50/100)≒L−3
となり、敷地内騒音レベルLTは、騒音レベルLよりも約3dBだけ小さくなる。すなわち、上記の例であれば、騒音レベルLを用いて騒音監視を行うのではなく、該騒音レベルよりも3dB低い敷地内騒音レベルLTを用いて騒音監視を行えばよいことがわかる。
このように、影響率及び騒音レベルを用いて騒音指標作成部で敷地内騒音レベルを算出するとともにこれらの数値を表示手段に出力するようにすれば、騒音計で計測された騒音レベルが、到来角度ごとの影響率に応じて所定角度範囲ごとに角度別騒音レベルとして割り振られるため、騒音監視エリアに応じた角度範囲を適宜設定することにより、その角度範囲に対応する角度別騒音レベル、すなわち敷地内騒音レベルが目標値を上回ったときだけ、騒音源の探索を行えば足りることとなり、騒音監視エリア以外からの発生音、例えば周辺道路を走行する自動車からの発生音によって騒音レベルが目標値を上回るような、本来的に騒音源の探索が不要な場合にまで騒音源の探索を行う必要がなくなる。
また、騒音源の探索が必要な場合においても、上述したように発生音がどこから到来しているのかを平面配置画像上で即座に確認することができるので、騒音源の位置を適切かつ迅速に特定することが可能となる。
なお、影響率及び騒音レベルを用いて騒音指標作成部で敷地内騒音レベルを算出する上記構成は、監視対象となる発生音が監視対象外の発生音と合成された状態で騒音レベルとして計測されるがゆえに監視対象について適切な騒音対策を講じることができないすべての状況に適用することが可能であり、例えば騒音規制法が規制の対象としている金属加工機械、圧縮機、織機、印刷機といった製造機械が設置された生産施設や、さまざまな建設工事現場に適用することができる。
音圧計測手段で計測された音圧値あるいは該音圧値から算出された到来角度は、データ保存せずともリアルタイムな騒音監視を行うことは可能であるが、音圧計測手段で計測された音圧値又は該音圧値から算出された到来角度を音圧関連データ蓄積手段にデータ保存しておき、音圧計測中又は音圧計測後、指定された所望の再生開始時刻に一致する音圧計測時刻の音圧値を音圧関連データ蓄積手段から読み出し、該音圧値から到来角度算出部で到来角度を算出してこれを合成対象到来角度とし、該合成対象到来角度を合成画像作成部に出力するようにすれば、リアルタイムな騒音監視を行いながら、あるいはそれとは別の機会に、過去の合成画像を用いた騒音対策の確認や検討を行うことが可能となり、例えば終日にわたってデータ保存された合成画像を見ながら、前日における発生音の状況を把握したり、騒音対策の効果確認あるいはあらたな対策の検討を行ったりすることができる。
時刻指定手段は、再生時刻を数値で直接入力する構成でもかまわないが、再生位置を示すボタンをポインティングデバイスでスライド操作することで再生時刻を任意に変更あるいは指定するグラフィックインターフェースが知られており、これを表示手段に表示させるように構成することが可能である。
なお、音圧関連データ蓄積手段に蓄積すべきデータは、上述の音圧値に代えて、音圧値から到来角度算出部で算出された到来角度とすることも可能であり、その場合においては、音圧関連データ蓄積手段から到来角度を読み出し、これをそのまま合成対象到来角度とすればよい。
騒音レベルや敷地内騒音レベルは、数値として表示手段に表示された場合であっても、上述したように合理的な騒音監視を行うことが可能であるが、騒音レベル又はそれに加えて敷地内騒音レベルの時刻歴波形を作成するとともに該時刻歴波形を表示手段に出力する騒音波形処理部を備えたならば、騒音レベルや敷地内騒音レベルを過去の値と比較しながら現時点の値を確認することができるため、より適切な騒音監視が可能となる。
ここで、音圧値又は該音圧値から算出された到来角度を音圧関連データ蓄積手段にデータ保存する場合においては、時刻指定手段を介して入力された指定時刻に一致する該時刻歴波形上の位置に再生位置マーカーを画像表示して時刻歴波形画像とし、該時刻歴波形画像が表示手段に出力されるように騒音波形処理部を構成する。
このようにすれば、合成画像と同じ時刻における騒音レベルや敷地内騒音レベルの大きさが、それらの時刻歴波形の位置として再生位置マーカーで示されるため、過去の合成画像を用いた騒音対策の検討をより綿密に行うことが可能となる。
到来頻度計数部は、発生音の到来数が到来角度ごとに計数される限り、その構成は任意であって、例えば発生音が到来するたびに単純にその回数をカウントするようにしてもかまわないが、前記到来角度算出部を、前記発生音のエネルギーの大きさが該発生音ごとのエネルギー値として算出されるように構成するとともに、前記到来頻度計数部を、前記発生音の到来数が該発生音のエネルギー値で重み付けされるように構成したならば、影響率や敷地内騒音レベルについても発生音のエネルギー値で重み付けされた形で算出されるため、騒音への影響がより支配的な発生音を主体として騒音監視を行うことが可能となる。
ここで、前記敷地内の建設工事用機械の種類に応じた周波数特性で前記各マイクロホンによる計測値をフィルタリングする重機選別回路を前記フィルタ部に設けるようにしたならば、算出された敷地内騒音レベルがどの建設工事用機械に起因するのかを容易に特定することが可能となる。以下、特定の建設工事用機械に対応した敷地内騒音レベルを、特に重機別敷地内騒音レベルと呼ぶ。
なお、重機別敷地内騒音レベルは、聴感補正のための周波数重み特性に加え、重機を選別するための周波数重み特性でフィルタリングされた新規な騒音指標であって、A特性で聴感補正された従来の騒音レベルとは異なるものである。
重機選別回路は、複数の建設工事用機械に対応するように構成するとともに、どの建設工事用機械に対応したフィルタリングを行うのかを切換自在に構成しておき、さらには建設工事用機械に対応した周波数フィルタリングを行うかどうかについても切換自在に構成しておくのが望ましい。
上述した手順で算出された敷地内騒音レベル又は重機別敷地内騒音レベルをどのように騒音監視で用いるのかは任意であり、例えば終日にわたって算出された敷地内騒音レベル又は重機別敷地内騒音レベルに基づいて適切な騒音対策を検討した後、該騒音対策を翌日の施工作業に反映させるようにしてもかまわないが、前記敷地内騒音レベル又は前記重機別敷地内騒音レベルの大きさを予め定められた目標値と比較し該敷地内騒音レベル又は重機別敷地内騒音レベルが前記目標値を上回ったときに警報データを作成する警報作成部と、該警報作成部で作成された警報データを出力する警報出力部とを備えるようにしたならば、騒音対策をリアルタイムに講じることが可能となる。
ここで、警報出力部をどのような構成でどこに設置するかは任意であって、例えば工事事務所に設置したコンピュータに画面表示させるようにしておき、警報が出力されたときに工事事務所から建設工事用機械のオペレータに連絡を入れる方法も採用可能であるが、警報出力部を敷地内で稼働する建設工事用機械に設けるようにしたならば、騒音対策の即時性をさらに高めることが可能となる。この場合、警報出力部は、例えば運転席に設置された携帯情報端末を用いて構成することができる。
以下、本発明に係る騒音源探索システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る騒音源探索システムを示した全体ブロック図及び敷地配置図である。同図でわかるように、本実施形態に係る騒音源探索システム1は、騒音監視エリアである敷地2内で稼働する建設工事用機械3の騒音監視に適用されるものであり、敷地2の境界近傍であって該敷地と一般道路4との間を計測地点とし、該計測地点に配置される子機11に設けられた音圧計測手段としてのc−cマイク12及び騒音計測手段としての騒音計13と、敷地2内に立設された工事事務所6に配置される親機21に設けられた演算処理部22とを備える。
c−cマイク12は図2に示すように、指向性を有する6つのマイクロホン12a〜12fで構成してあるとともに、それらのうち、マイクロホン12a,12b、マイクロホン12c,12d及びマイクロホン12e,12fをそれぞれ最大感度方向が互いに逆方向を向くように、すなわち0゜と180゜を向くように配置して3組のマイクロホン対とし、該各マイクロホン対を互いに直交する3つの軸線、すなわちx,y,z軸に沿ってかつそれらの原点を挟むようにそれぞれ配置してあり、子機11に伝播してきた発生音の音圧を各マイクロホン12a〜12fで計測するようになっている。マイクロホン12a〜12fは、それぞれカーディオイド指向特性を持つマイクロホンで構成することができる。
騒音計13は、発生音の音圧を騒音レベルとして計測するものであり、検定に合格済の市販騒音計から適宜選択すればよい。なお、騒音計13には、環境騒音の測定で広く採用されているA特性を周波数重み特性としたフィルタ回路が内蔵されているものとする。
c−cマイク12には、計測された音圧値を増幅するアンプ14とそれをデジタルデータに変換するA/Dコンバータ15が、騒音計13には、計測された騒音レベルをデジタルデータに変換するA/Dコンバータ16がそれぞれ接続してあるとともに、それらの出力側には送信部17が接続してあり、c−cマイク12及び騒音計13とともに筐体(図示せず)の内部に設置してある。かかる筐体は、可搬性を有しかつ耐候性に配慮された構成とするのが望ましい。
一方、親機21は、子機11の送信部17から無線送信されてきた送信データを受信する受信部23とパソコン24とで構成してあり、上述の演算処理部22は、パソコン24のマザーボード、CPU、メモリー、内蔵ハードディスクといったハードウェアと該ハードウェア上で動作するソフトウェアとで構成してある。
パソコン24には、演算処理部22に必要なデータを読み出し、あるいは演算処理された結果を記憶するための外付けのハードディスク27,29と、演算処理結果を表示するための表示手段としてのモニター26と、ポインティングデバイスであるマウス28とを設けてある。
演算処理部22は図3に示すように、受信部23を介して受信されたc−cマイク12による音圧の計測値を騒音計13に内蔵された周波数重み特性と同じA特性でフィルタリングする聴感補正回路が設けられたフィルタ部41と、該フィルタ部からの出力データを用いて発生音の到来角度を算出する到来角度算出部44とを備えており、ハードディスク27は、到来角度算出部44で算出された到来角度をデータ保存する音圧関連データ蓄積手段として機能する。
演算処理部22はさらに、時刻指定手段としての時刻指定部52を介して入力された指定時刻に一致する音圧計測時刻の到来角度を合成対象到来角度としてハードディスク27から読み出し、該合成対象到来角度を用いて合成画像を作成する合成画像作成部54を備える。
合成画像作成部54は、合成対象到来角度に対応する方向表示画像を平面配置画像に重ね合わせることで合成画像を作成しこれをモニター26に出力するようになっている。
平面配置画像は、敷地2内の音源配置状況を示す平面配置図を画像化したものであって、ブルドーザ、トラクターショベル、バックホウ、クレーン、ダンプトラックといった各種建設工事用機械の位置、形状及び運転範囲並びにブームの旋回範囲が示されたものである。かかる平面配置画像は、別途作成した上、図示しないハードディスクにデータ保存し、合成画像作成部54から随時読み出せるようにしておく。
方向表示画像は、子機11の設置箇所、すなわち計測地点に対応する平面配置画像上の位置が起点となるように平面配置画像に重ね合わされる矢印図形で構成する。
時刻指定部52は、モニター26上に表示されるグラフィックインターフェースと、該グラフィックインターフェースで表示された再生位置を示すボタンをスライド操作するポインティングデバイスであるマウス28とで構成してあり、再生時刻を任意に変更あるいは指定することができるようになっている。
一方、演算処理部22は、到来角度算出部44で得られた到来角度データを用いて時間幅Δtにおける発生音の到来数を到来角度ごとに計数する到来頻度計数部45と、該到来頻度計数部で得られた到来角度ごとの到来数N(θ)と受信部23を介して送信されてきた騒音計13による騒音レベルLとを用いて騒音指標を作成する騒音指標作成部46とを備える。
ここで、騒音指標作成部46は、到来角度ごとの到来数N(θ)を全方位にわたる総和で除して到来角度ごとの影響率C(θ)を算出するとともに、該到来角度ごとの影響率C(θ)を用いて騒音レベルLを角度別騒音レベルに割り振るようになっており、図1(b)において右方向を0゜、反時計廻りを正方向とした座標系であれば、0゜〜180゜と180゜〜360゜をそれぞれ角度範囲として角度別騒音レベルがそれぞれ算出されるように構成してある。ここで、0゜〜180゜を角度範囲とした角度別騒音レベルは、敷地2を見渡す角度範囲に対応したものであって、特に敷地内騒音レベルLTとなる。
演算処理部22はさらに、騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTの時刻歴波形を作成するとともに、時刻指定部52を介して入力された指定時刻に一致する該時刻歴波形上の位置に再生位置マーカーを画像表示して時刻歴波形画像とし、該時刻歴波形画像をモニター26に出力する騒音波形処理部55を備える。
本実施形態に係る騒音源探索システム1を用いて敷地2内で稼働する建設工事用機械3に起因する騒音を監視するには、騒音計13で発生音の音圧を騒音レベルとして計測しつつ、c−cマイク12で発生音の音圧を計測し、これを親機21にデータ転送する。なお、子機11は図4(a)に示すように、c−cマイク12のx軸が同図右方向を向くように設置してあるものとする。
発生音は図4(a)に示すように、敷地2内の建設工事用機械3に起因するものと一般道路4を走行する車両5に起因するものに大別されるが、騒音計13では、それらが合成された状態で全方位である騒音レベルとして計測される。
次に、各マイクロホン12a〜12fで計測された音圧値をFFT(図示せず)で周波数領域に変換してからフィルタ部41の聴感補正回路でフィルタリングし、逆FFT(図示せず)で時間領域に戻した後、発生音の到来角度を到来角度算出部44で算出する。
到来角度算出部44においては図4(b)に示すように、マイクロホン12a,12bからなるマイクロホン対で計測された音圧p1,p2からそれらの加算値と差分値とを算出し、次式、
(p1+p2)・(p1−p2) (3)
のようにそれらを乗じるか、又は、二乗音圧の差分値、
(p1 2−p2 2) (4)
をとり、次いで、次式、
(p1+p2)・(p1−p2)/ρc (5)
又は、
(p1 2−p2 2)/ρc (6)
で示すように、音響インピーダンスρc(ρ;空気密度、c;音速)で除することにより、該マイクロホン対の配置軸線、すなわちx軸に沿った音響インテンシティ成分Ixを算出する。
同様に、マイクロホン12c,12dからなるマイクロホン対で計測された音圧を用いてy軸に沿った音響インテンシティ成分Iyを算出するとともに、マイクロホン12e,12fからなるマイクロホン対で計測された音圧を用いてz軸に沿った音響インテンシティ成分Izを算出する。
次いで、音響インテンシティの各成分Ix,Iy,Izを用いて、到来角度θを同図(c)及び(d)に示すようにx−y平面での角度成分θxy及びx−z平面での角度成分θxzとして算出する。なお、y−z平面での角度成分θyzを用いてもかまわない。
発生音の到来角度θを算出するにあたっては、例えば0.1秒を時間幅Δtとし、該各時間幅Δtにおいて発生音を0.001秒間隔でサンプリングして、それぞれの到来角度θを上述した手順で算出する。
このようにして到来角度算出部44で算出された到来角度は、その算出基礎となった音圧値の音圧計測時刻とともに、音圧関連データ蓄積手段であるハードディスク27にデータ保存する。
次に、上述した時間幅Δtにおける発生音の到来数を、到来角度算出部44で得られた到来角度データを用いて到来角度ごとに到来頻度計数部45で計数する。
到来角度ごとに計数を行うにあたっては、図5に示したように、全周360゜(同図では便宜上、左側の角度範囲を−180゜〜0゜とした)を例えば0゜〜10゜、10゜〜20゜・・・というように10゜ずつに分割し(横軸)、それらの角度範囲ごとに発生音の到来数N(θ)を計数する(縦軸)。
なお、到来角度ごとの計数は、説明の便宜上、2次元平面で音場が把握されるものとして説明するが、3次元空間で到来角度ごとの計数を行う場合は、到来角度を立体角と考えて同様に処理すればよい。
次に、到来頻度計数部45で得られた到来角度ごとの到来数を全方位の総和で除して到来角度ごとの影響率を騒音指標作成部46で算出する。すなわち、到来角度ごとの到来数をN(θ)とすると、到来角度ごとの影響率C(θ)は、
C(θ)=N(θ)/ΣN(θ) (2)
ΣN(θ);到来角度θに関するN(θ)の総和
と表すことができる。
次に、算出された影響率C(θ)を0゜〜180゜の角度範囲で総和してCIとする。ここで、CIは、図5においては、全体の面積に対する右側の面積の割合に相当する。
次に、CIを次式、
LT=L+10・logCT (1)
のCTに代入し、0゜〜180゜を角度範囲とした角度別騒音レベル、すなわち敷地内騒音レベルLTを算出する。
具体例として、CIが0.7であったとすると、敷地内騒音レベルLTは(1)式から、
LT=L+10・log(0.7)
=L−1.6
となり、騒音レベルLよりも1.6dB低くなる。
なお、必要であれば、180゜〜360゜の角度範囲で影響率C(θ)を総和してCOとし、上述したと同様の手順でCOを(1)式のCTに代入し、180゜〜360゜を角度範囲とした角度別騒音レベル、すなわち敷地外騒音レベルLOを算出することができる。
次に、騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTの時刻歴波形を騒音波形処理部55で作成し、これをハードディスク29にデータ保存する。
上述したc−cマイク12による音圧計測及び騒音計13による騒音計測を適宜行った後、時刻指定部52を介して再生を開始したい所望の時刻を指定時刻として入力し、次いで、合成画像作成部54において、入力された指定時刻に一致する音圧計測時刻の到来角度を合成対象到来角度としてハードディスク27から読み出す。
次に、合成画像作成部54において、合成対象到来角度に対応する方向表示画像を平面配置画像に重ね合わせることで合成画像を作成し、これをモニター26に出力する。
一方、騒音波形処理部55において、騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTの時刻歴波形をハードディスク29から読み出し、上述の指定時刻に一致する該時刻歴波形上の位置に再生位置マーカーを画像表示して時刻歴波形画像とし、該時刻歴波形画像をモニター26に出力する。
図6は、時刻指定部52を構成するモニター26上のグラフィックインターフェース(図示せず)をマウス28でスライド操作することで、再生時刻を時刻t1に指定したときのモニター26の表示状況を示したものであって、該モニターには、敷地2内で2台のクローラークレーン65a,65b及びタワークレーン66が稼働している様子やタワークレーン66のブーム旋回範囲が示された平面配置画像に方向表示画像としての矢印図形63が計測地点を起点として重ね合わされてなる合成画像61と、騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTの各時刻歴波形に再生位置マーカー64が重ねられてなる時刻歴波形画像62とが映し出されており、再生位置マーカー64は、合成画像61の再生タイミングにおいて、敷地内騒音レベルLTが目標値を上回っていることを示している。
ここで、矢印図形63の延長上には、クローラークレーン65aが存在するため、時刻t1で敷地内騒音レベルLTが目標値を上回った原因となる騒音源は、クローラークレーン65aであるとの推定が可能であり、この時点でクローラークレーン65aを停止する騒音対策が講じられるべきと判断できる。
一方、図7は、再生時刻を時刻t2に指定したときのモニター26の表示状況を同様に示したものであって、同図において、矢印図形63は、敷地2の外側を向いており、再生位置マーカー64は、合成画像61の再生タイミングにおいて、騒音レベルLは目標値を上回っているが、敷地内騒音レベルLTは目標値を下回っていることを示している。
したがって、時刻t2で騒音レベルLが目標値を上回ったのは、敷地外の音源、例えば自動車が騒音源となったことが大きな原因であって、敷地内騒音レベルLTは目標値未満であるため、敷地2内では特段の騒音対策をとる必要がないと判断できる。
以上説明したように、本実施形態に係る騒音源探索システム1によれば、発生音の音圧をc−cマイク12で計測するとともに、計測された音圧値を用いて到来角度算出部44で発生音の到来角度を算出し、該到来角度を合成対象到来角度とした上、該合成対象到来角度に対応する平面配置画像上の方向に向けられた矢印図形63を、計測地点を起点として平面配置画像に重ね合わせて合成画像61を作成し、これをモニター26に表示するようにしたので、発生音がどこから到来しているのかを平面配置図上で確認することが可能となり、かくして騒音源の位置を適切かつ迅速に特定することができる。
また、本実施形態に係る騒音源探索システム1によれば、発生音の音圧を騒音レベルとして計測する騒音計13を別途備えた上、影響率C(θ)及び騒音レベルLを用いて該騒音レベルを敷地内騒音レベルLTに割り振り、これらを時刻歴波形としてモニター26に出力するようにしたので、騒音監視の対象は、すべての発生音が反映された騒音レベルLではなく、敷地2が見渡される角度範囲からの発生音だけが反映された角度別騒音レベルとなる。
したがって、敷地内騒音レベルTが目標値を上回ったときだけ、騒音源の探索を行えば足りることとなり、敷地2以外からの発生音、例えば周辺道路を走行する自動車からの発生音によって騒音レベルが目標値を上回るような、本来的に騒音源の探索が不要な場合にまで騒音源の探索を行う必要がなくなる。
また、騒音源の探索が必要な場合においても、上述したように発生音がどこから到来しているのかを平面配置図上で即座に確認することができるので、騒音源の位置を適切かつ迅速に特定することが可能となる。
また、本実施形態に係る騒音源探索システム1によれば、再生を開始したい時刻を時刻指定部52を介して指定し、その指定時刻に音圧計測時刻が一致する合成対象到来角度をハードディスク27から読み出した上、合成画像作成部54で平面配置画像に重ね合わせるようにしたので、過去の合成画像を用いた騒音対策の確認や検討を行うことが可能となり、例えば終日にわたってデータ保存された合成画像を見ながら、前日における発生音の状況を把握したり、騒音対策の効果確認あるいはあらたな対策の検討を行ったりすることができる。
また、本実施形態に係る騒音源探索システム1によれば、騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTの時刻歴波形を騒音波形処理部55で作成するとともに、該時刻歴波形上の位置に再生位置マーカー64を画像表示して時刻歴波形画像とし、該時刻歴波形画像をモニター26に出力するようにしたので、合成画像と同じ時刻における騒音レベルや敷地内騒音レベルの大きさが、それらの時刻歴波形の位置として再生位置マーカー64で示されるため、過去の合成画像を用いた騒音対策の検討をより綿密に行うことが可能となる。
本実施形態では、計測音圧値から算出された到来角度データをハードディスク27に保存しておき、これらのうち、音圧計測時刻が指定時刻に一致するものを読み出すようにしたが、このようないわば録画再生モードに代えて、タイムシフト再生(追っかけ再生)で処理することはもちろん可能であるし、図8に示すように、ハードディスク27及び時刻指定部52を省略し、リアルタイムモードで処理することも可能である。
この場合においては、到来角度算出部44で算出された到来角度が合成対象到来角度となり、該合成対象到来角度に対応する方向を向けられた矢印図形63を合成画像作成部54で平面配置画像に重ね合わせることになるが、現時点での状況が合成画像としてモニター26に映し出されることになるため、図6のような場合においては、クローラークレーン65aを速やかに停止することができるとともに、図7のような場合には、現状を維持しつつ、引き続き騒音監視を継続するといった対応が可能となる。
ここで、本変形例の場合、騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTを、図6,7と同様に現時点までの時刻歴波形として、あるいは現時点での値としてモニター26に画像表示することが可能であるが、再生位置マーカー64は省略される。
また、本実施形態では、騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTといった騒音指標を時刻歴波形として作成しその上に再生位置マーカー64が重ねられてなる時刻歴波形画像62をモニター26に表示するようにしたが、各時刻歴波形に代えて、再生時点での各騒音指標の数値を表示するとともに、再生位置マーカー64に代えて再生時刻を表示するようにしてもかまわない。
かかる構成においては、一定時間内における発生音の変動状況の把握は困難となるが、騒音指標と合成画像とを関連付けた騒音監視は上述した実施形態と同様に可能である。
また、本実施形態及び上述の変形例においては、騒音計13を備えるようにしたが、場合によっては、騒音計13及びその計測結果を用いた処理を行う騒音波形処理部55を省略してもかまわない。
図9(a)は、かかる変形例をリアルタイムモードに適用したものである。同図に示す構成においては、従来の騒音規制を踏まえた騒音監視を行うことはできなくなるが、到来角度を矢印図形として平面配置図に重ね合わせることで合成画像を作成し、これをモニター26に表示することにより、発生音の音源を平面配置図上で確認し、それによって騒音源の探索を効率よく行うことができるという点については、上述の実施形態と何ら変わりはない。なお、同図に係る変形例では、騒音計13を省略したことで聴感補正に関する整合をとる必要がなくなるため、フィルタ部41も不要となる。
また、図9(b)に示すように、音圧計測手段をc−cマイク12に代えて、例えばp−p法に従った構成のマイクロホン91を用いることも可能である。
一方、図9(c)に示すように、図9(b)の構成に騒音計13を加えるとともに該騒音計で計測された騒音レベルをモニター26に表示するようにしてもよい。かかる構成では、角度別騒音レベル、特に敷地内騒音レベルは算出されず、騒音レベルのみが表示されるため、計測された騒音レベルに対し、敷地2内で稼働する建設工事用機械が騒音レベルにどの程度影響を及ぼしているのかを把握することはできないが、図6や図7と同様、発生音の到来角度が矢印図形63として平面配置画像に重ね合わせて表示されることに違いはなく、どの建設工事用機械が騒音源になっている可能性があるかを概ね判断することは可能である。
また、本実施形態では、到来角度算出部44で得られた到来角度データを用いて発生音の到来数を到来角度ごとに到来頻度計数部45で計数する際、発生音が到来するたびに単純にその回数をカウントするようにしたが、これに代えて、発生音のエネルギーの大きさが該発生音のエネルギー値として算出されるように到来角度算出部を構成するとともに、発生音の到来数が該発生音のエネルギー値で重み付けされるように到来頻度計数部を構成してもよい。
すなわち、到来角度算出部においては、マイクロホン12a,12bからなるマイクロホン対で計測された音圧p1,p2から次式、
EP=(p1+p2)2
を演算することにより、発生音のエネルギーEPを算出する。
到来角度算出部で算出されたエネルギーEPは、必要に応じてハードディスクなどの記憶装置に適宜記憶させておけばよい。なお、マイクロホン12a,12bからなるマイクロホン対に代えて、マイクロホン12c,12dからなるマイクロホン対、あるいはマイクロホン12e,12fからなるマイクロホン対で計測された音圧を用いて発生音のエネルギーEPを算出するようにしてもかまわない。
次に、上述した実施形態と同様、到来角度算出部で得られた到来角度データを用いて発生音の到来数を到来角度ごとに到来頻度計数部で計数するが、単に「1」を累加していくのではなく、エネルギー値で重み付けされた回数を累加する。
すなわち、到来角度θに到来する発生音のうち、k番目(1≦k≦M)に到来する発生音のエネルギー値をEP(k)とすると、該到来角度における発生音の到来数N´(θ)を、次式、
N´(θ)=Σ(1・EP(k))(k=1,2,・・・M)
で算出する。
かかる変形例によれば、発生音の到来数を計数する際に該発生音のエネルギーの大きさで到来数が重み付けされるため、影響率や敷地内騒音レベルも発生音のエネルギーの大きさで重み付けされる、すなわち騒音への影響がより支配的となる発生音を用いて、影響率や敷地内騒音レベルが算出されることとなり、かくして合理的な騒音監視が可能となる。
また、上述した重み付けにより、発生音がさまざまな角度から到来する場合であっても、各発生音の到来角度を適切に把握ことが可能となる。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、図10に示すように、演算処理部22に代えて、該演算処理部に敷地内騒音レベルLTの大きさを予め定められた目標値と比較して該敷地内騒音レベルが目標値を上回ったときに警報データを作成する警報作成部47を設けた構成とするとともに、敷地2内で稼働する建設工事用機械3に孫機31を設置して該孫機に警報出力部32を設け、該警報出力部を警報作成部47で作成された警報データが出力されるように構成してもよい。
警報出力部32は、建設工事用機械3の運転席に取り付けられた携帯情報端末を用いて構成することが可能であり、かかる場合、該携帯情報端末の画面に警報ボタンが点滅表示されるように若しくは警報色で表示されるように構成し、又は該携帯情報端末のスピーカーから警報アラームが鳴るように構成することが可能であり、警報作成部47で作成されるべき警報データは、これら警報出力部32の構成に応じて適宜作成すればよい。
かかる変形例によれば、敷地内騒音レベルLTが目標値を上回った場合に警報作成部47で警報データを作成するとともに、該警報データを、親機21に設けられた送信部及び孫機31に設けられた受信部(いずれも図示せず)を介して受信し、これを警報出力部32に出力するため、敷地2内の建設工事用機械3に対する騒音対策をリアルタイムに講じることが可能となる。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、聴感補正回路に加えて、建設工事用機械3の種類に応じた発生音の周波数特性でフィルタリングを行う重機選別回路をフィルタ部41に設けるようにしてもよい。
重機選別回路は、ブルドーザ、トラクターショベル、バックホウといったさまざまな建設工事用機械の稼働による発生音を種類ごとに周波数分析して各重機に固有の発生音の周波数特性を調査した上、各重機からの発生音を選択的に通すことができるようにかつ互いに切換自在となるように構成する。各重機に固有の周波数特性は、一般乗用車や列車における走行音の周波数特性とも区別されているのが望ましい。
かかる構成によれば、c−cマイク12で得られた計測値から特定の建設工事用機械に起因する計測値だけを取り出すことが可能となり、特定の建設工事用機械を対象とした騒音監視が可能となる。
なお、建設工事用機械3に孫機31を設置して該孫機に警報出力部32を設ける上記変形例においては、特定の建設工事用機械を対象としたフィルタリングを行っている間に重機別敷地内騒音レベルが目標値を超えたとき、該建設工事用機械に設置された孫機31で警報データが受信されるように構成しておくのが望ましい。
具体的構成としては例えば、フィルタリングの対象となる重機情報をフィルタリングの切換動作と連動させる形で騒音指標作成部46に記憶しておき、重機別敷地内騒音レベルが目標値を超えたと騒音指標作成部46で判定されたとき、記憶された重機情報を読み出して該重機情報を警報データに含めるように警報作成部47を構成するとともに、該警報データが、対象となる建設工事用機械の携帯情報端末に出力されるように警報出力部32を構成しておくことが考えられる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、実質同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図11は、第2実施形態に係る騒音源探索システムを示した全体ブロック図及び敷地配置図である。同図でわかるように、本実施形態に係る騒音源探索システム1´は、第1実施形態と同様、騒音監視エリアである敷地2内で稼働する建設工事用機械3の騒音監視に適用されるものであり、敷地2の境界近傍のうち、一般道路4の側と該一般道路4に直交する左側とをそれぞれ計測地点とし、該2つの計測地点に配置される子機11A,11Bに設けられた音圧計測手段としてのc−cマイク12A,12B及び騒音計測手段としての騒音計13A,13Bと、敷地2内に立設された工事事務所6に配置される親機21´に設けられた演算処理部22´とを備える。
ここで、c−cマイク12A,12Bはそれぞれc−cマイク12と同一の構成であり、騒音計13A,13Bはそれぞれ騒音計13と同一の構成であるので、ここではその説明を省略する。
一方、親機21´は、子機11A,11Bの送信部17A,17Bから無線送信されてきた送信データを受信する受信部23とパソコン24とで構成してあり、上述の演算処理部22´は、パソコン24のマザーボード、CPU、メモリー、内蔵ハードディスクといったハードウェアと該ハードウェア上で動作するソフトウェアとで構成してある。
演算処理部22´は図12に示すように、受信部23を介して受信されたc−cマイク12A,12Bによる音圧の計測値を騒音計13A,13Bに内蔵された周波数重み特性と同じA特性でフィルタリングする聴感補正回路が設けられたフィルタ部41´と、該フィルタ部からの出力データを用いて2つの計測地点における発生音の到来角度をそれぞれ算出する到来角度算出部44´と、時刻指定部52を介して入力された指定時刻に一致する音圧計測時刻の2つの計測地点における到来角度を合成対象到来角度としてそれぞれハードディスク27から読み出し、該各合成対象到来角度に対応する方向表示画像を平面配置画像にそれぞれ重ね合わせることで合成画像を作成しこれをモニター26に出力するようになっている合成画像作成部54´とを備え、方向表示画像は、子機11A,11Bの設置箇所、すなわち2つの計測地点に対応する平面配置画像上の位置が起点となるように平面配置画像にそれぞれ重ね合わされる矢印図形で構成してある。
一方、演算処理部22´は、到来角度算出部44´で得られた2つの計測地点における到来角度データを用いて時間幅Δtにおける発生音の到来数を到来角度ごとにそれぞれ計数する到来頻度計数部45´と、該到来頻度計数部で得られた到来角度ごとの到来数N(θ)と受信部23を介して送信されてきた騒音計13A,13Bによる騒音レベルLとを用いて2つの計測地点における騒音指標を騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTとしてそれぞれ作成する騒音指標作成部46´と、騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTの時刻歴波形を作成するとともに時刻指定部52を介して入力された指定時刻に一致する該時刻歴波形上の位置に再生位置マーカーを画像表示して時刻歴波形画像とし該時刻歴波形画像をモニター26に出力する騒音波形処理部55´を備える。
ここで、フィルタ部41´、到来角度算出部44´、合成画像作成部54´、到来頻度計数部45´、騒音指標作成部46´及び騒音波形処理部55´は、2つの計測地点に対応した構成である点で、第1実施形態で説明したフィルタ部41、到来角度算出部44、合成画像作成部54、到来頻度計数部45、騒音指標作成部46及び騒音波形処理部55とはそれぞれ異なるものの、それらを例えば並列に設けることで構成することができるため、ここではそれらの説明を省略する。
本実施形態に係る騒音源探索システム1´を用いて敷地2内で稼働する建設工事用機械3に起因する騒音を監視するには、2つの計測地点における発生音の音圧を騒音レベルとして騒音計13A,13Bで計測しつつ、同じく2つの計測地点における発生音の音圧をc−cマイク12A,12Bで計測し、これらを親機21´にデータ転送する。なお、子機11A,11Bは図4(a)と同様、c−cマイク12A,12Bのx軸が同図右方向を向くように設置してあるものとする。
発生音は図4(a)で説明したと同様、一般道路4側の計測地点では、敷地2内の建設工事用機械3に起因するものと一般道路4を走行する車両5に起因するものに大別されるが、騒音計13Aでは、それらが合成された状態で全方位である騒音レベルとして計測されるとともに、一般道路4と直交する側の計測地点では、敷地2内の建設工事用機械3に起因するものと敷地2外の一般的な発生音とに大別されるが、騒音計13Bでは、それらが合成された状態で全方位である騒音レベルとして計測される。
次に、第1実施形態と同様の手順に従い、各マイクロホン12a〜12fで計測された音圧値を用いて発生音の到来角度を到来角度算出部44´で算出し、その算出基礎となった音圧値の音圧計測時刻とともにハードディスク27にデータ保存する一方、到来角度データを用いて到来角度ごとの発生音の到来数を到来頻度計数部45´で計数し、その到来角度ごとの到来数を全方位の総和で除して到来角度ごとの影響率を騒音指標作成部46´で算出するとともに、引き続き該騒音指標作成部で敷地内騒音レベルLTを算出し、騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTの時刻歴波形を騒音波形処理部55´で作成してこれをハードディスク29にデータ保存する。
これらの手順は、2つの計測地点ごとに行う。
次に、合成画像作成部54´において、合成対象到来角度に対応する方向表示画像を2つの計測地点ごとに平面配置画像に重ね合わせることで合成画像を作成し、これをモニター26に出力する。
一方、騒音波形処理部55´において、2つの計測地点における騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTの時刻歴波形をハードディスク29から読み出し、上述の指定時刻に一致する該時刻歴波形上の位置に再生位置マーカーを画像表示して時刻歴波形画像とし、該時刻歴波形画像をモニター26に出力する。
図13は、時刻指定部52を構成するモニター26上のグラフィックインターフェース(図示せず)をマウス28でスライド操作することで、再生時刻を時刻t1に指定したときのモニター26の表示状況を示したものであって、該モニターには、敷地2内で2台のクローラークレーン65a,65b及びタワークレーン66が稼働している様子やタワークレーン66のブーム旋回範囲が示された平面配置画像に方向表示画像としての矢印図形63A,63Bが2つの計測地点A,Bを起点としてそれぞれ重ね合わされてなる合成画像61´と、2つの計測地点A,Bごとの騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTの各時刻歴波形に再生位置マーカー64が重ねられてなる時刻歴波形画像62´とが映し出されており、再生位置マーカー64は、合成画像61´の再生タイミングにおいて、いずれの計測地点A,Bでも敷地内騒音レベルLTが目標値を上回っていることを示している。
ここで、矢印図形63Bの延長上には、クローラークレーン65a,65bが存在するが、矢印図形63Aの延長上には、クローラークレーン65bしか存在しないため、時刻t1で敷地内騒音レベルLTが目標値を上回った原因となる騒音源は、クローラークレーン65bであるとの推定が可能であり、この時点でクローラークレーン65bを停止する騒音対策が講じられるべきと判断できる。
一方、図14は、再生時刻を時刻t2に指定したときのモニター26の表示状況を同様に示したものであって、同図において、矢印図形63Bは敷地2の内側を向いているが、矢印図形63Aは敷地2の外側を向いており、再生位置マーカー64は、合成画像61´の再生タイミングにおいて、計測地点Aでは、騒音レベルLが目標値を上回っているが、敷地内騒音レベルLTは目標値を下回っており、計測地点Bでは、騒音レベルL及び敷地内騒音レベルLTのいずれも目標値を下回っていることを示している。
これらのことから、時刻t2において騒音レベルLが計測地点Aで目標値を上回ったのは、敷地外の音源、例えば自動車が騒音源となったことが大きな原因であって、敷地内騒音レベルLTはいずれも目標値未満であるため、敷地2内では特段の騒音対策をとる必要がないと判断できる。
以上説明したように、本実施形態に係る騒音源探索システム1´によれば、2つの計測地点における発生音の音圧をc−cマイク12A,12Bでそれぞれ計測するとともに、計測された音圧値を用いて発生音の到来角度を到来角度算出部44´で算出し、該到来角度を合成対象到来角度とした上、該合成対象到来角度に対応する平面配置画像上の方向に向けられた矢印図形63A,63Bを、計測地点A,Bを起点として平面配置画像に重ね合わせて合成画像61´を作成し、これをモニター26に表示するようにしたので、第1実施形態と同様、発生音がどこから到来しているのかを平面配置図上で確認することが可能となり、かくして騒音源の位置を適切かつ迅速に特定することができる。
特に、本実施形態に係る騒音源探索システム1´によれば、2つの計測地点A,Bで発生音の音圧を計測することで該計測地点における発生音の到来角度をそれぞれ算出し、その結果を2つの矢印図形63A,63Bとして平面配置画像に重ね合わせるようにしたので、騒音源の探査をより確実に行うことが可能となる。
なお、第1実施形態で述べた他の作用効果と同様の作用効果が本実施形態でも発揮されるが、ここではその説明を省略する。また、第1実施形態で述べた各変形例を本実施形態にも適用することができるが、その説明についてもここでは省略する。