JP2014037557A - アルミニウム−亜鉛系合金押出材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 成分組成が、Zn:7〜12質量%、Mg:1.0〜3.0質量%、Cu:0.5〜3.0質量%、Cr:0.03〜0.30質量%、Zr:0.05〜0.20質量%を含み、残部がAlおよび不可避不純物であり、水素ガスの含有量が0.2cc/100g以下、酸化皮膜である介在物数が破断面観察法における破断面において0.005個/mm2以下であることを特徴とするアルミニウム−亜鉛系合金の押出材。
【選択図】なし
Description
ただし、本発明にかかるアルミニウム−亜鉛系合金が熱処理型合金であることに鑑み、本発明において、押出材とは、押出加工後に溶体化のための熱処理および時効硬化のための熱処理を施したものをいうものとする。
しかしながら、合金元素にZnとともにMgおよびCuを添加することにより、一層の強度向上を図ることができること、およびZrを添加することにより靱性および耐応力腐食割れ性などを向上させることができることなどが多くの文献に開示されている。
そのため、腐食性の環境下で使用されるアルミニウム合金には、陽極酸化処理などの表面処理を施して使用することが望ましく、そのような表面処理を施すことによって、単に耐食性の向上が図れるのみならず、色調の整った美麗な表面を得ることも可能となる。
さらに、本発明者らによる、その押出材表面の顕微鏡拡大観察によれば、当該表面には数多くの直径10〜100μmのピット状の空隙が存在し、当該ピット状の空隙の存在が前述のような陽極酸化処理後の陽極酸化皮膜の不均一な斑模様および不十分な耐食性の原因となっていることを見出した。
そこで本発明者らは、その押出材の表面を研削することにより、前述のようなピット状の空隙の除去を試行したが、ピット状の空隙は、その深さが0.5〜100mmに及び、研削による除去は容易ではなく、陽極酸化処理などの表面処理後に十分な耐食性を有し、斑模様のない、均一な色調のアルミニウム−亜鉛系合金の押出材を得るには、ピット状の空隙のない鋳塊を予め得ておく必要があることに至った。
顕微鏡による拡大観察の結果によれば、その押出材の表面には、その縦断面を図3および図4に示すような数多くの直径10〜100μmのピット状の空隙が存在しており、さらなる調査の結果によれば、そのピット状の空隙の存在が前述のような陽極酸化処理後の陽極酸化皮膜の不均一な斑模様および不十分な耐食性の原因であることを確認した。
詳細には、ピット状の空隙は、アルミニウム−亜鉛系合金の鋳造時に、溶融アルミニウム−亜鉛合金中に溶解していた水素原子が、凝固したアルミニウム−亜鉛合金中では過飽和に含有された後、押出加工にともなう応力の負荷によって酸化皮膜である介在物との界面に剥離が発生、その後の溶体化のための熱処理において、その剥離の発生した酸化皮膜である介在物との界面に、過飽和に含有されていた水素原子が水素ガスとして析出、気泡を生成し、ピット状の空隙の形成に至るとともに時効硬化のための熱処理においても残留したものと推定された。
以下に本発明を詳細に説明する。
脱ガス処理方法として、塩素ガス処理法、不活性ガス処理法、フラックス処理法などの方法が公知であるが、本発明においては、これらの処理方法のいずれもが好適に利用可能である。
これら各脱ガス処理方法による脱ガスの効果は、ランズレー法、LECO法などの公知の水素定量方法により測定することができる。
介在物処理方法として、セラミックフォームフィルター、ポーラスチューブフィルターなどのフィルターによる濾過方法が公知であるが、本発明においては、これらのフィルターによる濾過方法が好適に利用可能である。
介在物除去処理方法による酸化皮膜である介在物除去の効果は、例えば破断面観察法などの方法により測定することができる。
なお、図5(a1)は試験片1の正面図、(a2)は平面図である。
そこで、1試料あたり5以上の箇所で前述のように破断させ、それらの破断面に出現した介在物数を計数し、その計数値を有効観察面積の総和で除し、破断面観察法における単位破断面面積当たりの介在物数として、酸化皮膜である介在物を定量する。
本発明では鋳造方法に制限はなく、汎用されている鋳造方法を利用できるが、DC鋳造法が押出加工用の鋳塊を鋳造する方法として好ましい。ここで、DC鋳造法とは内壁面を水冷した急冷鋳型内に樋で導いた溶湯を注ぎ、その溶湯を急冷鋳型の内壁面で冷却凝固させるとともに、凝固直後の鋳塊を下方または側方へ順次引き出し、さらに当該鋳塊に冷却水を噴射して急冷するという鋳造法で、アルミニウム合金の鋳造法としては生産性に優れたものとして公知のものである。
他方、アルミニウム−亜鉛系合金溶湯内の水素ガスの含有量が0.2cc/100g以下の場合でも、その凝固速度が300mm/minを超過する部分があると、その凝固速度で鋳造された鋳塊部分では、溶融金属表面からの水素ガスの放出が妨げられて水素原子の過飽和度が過大となり、また酸化皮膜である介在物の鋳塊への巻込が増加することにより、ピット状の空隙を形成されることがある。
本発明では鋳造後の鋳塊の押出加工方法に制限はなく、汎用されている押出方法が利用できる。押出加工方法には直接押出法および間接押出法があるが、そのいずれの方法も利用可能である。押出比、押出温度、押出速度等の押出加工条件にも制限はないが、押出比は5.0〜200、押出温度は300〜500℃が好適である。
例えば、溶体化のための熱処理として、420℃〜500℃の温度で、1時間〜25時間の加熱後に急冷する熱処理条件を採用することができる。急冷は、水焼入れなどの公知の方法を採用することができる。
時効硬化のための熱処理として、90℃〜180℃で、1時間〜50時間の条件を採用することができるほか、時効硬化のための熱処理の途中において、前記温度範囲内において温度を変化させる、いわゆる2段階時効熱処理を採用してもよい。
脱ガス処理及び介在物処理を施したアルミニウム−亜鉛系合金溶湯の一部を採取して、脱ガス処理および介在物処理の効果を、それぞれLECO法および破断面観察法により測定した。
なお、水素ガスの含有量が0.2cc/100gを超える比較例は、脱ガス処理を実施しない、または実施時間を短縮することにより作製した。
また、介在物数が0.005個/mm2を超える比較例は、介在物処理を実施しない、または実施時間を短縮することにより作製した。
鋳造条件を表3に、押出条件を表4に示す。
それから、溶体化のための熱処理および時効硬化のための熱処理を施して、供試材を作製し、ピット上の空隙個数、及び介在物数を測定した。
溶体化のための熱処理の条件および時効硬化のための熱処理の条件を表5に示す。
表6によれば、表2において、水素ガスの含有量が0.2cc/100g以下で、かつ介在物数が0.005個/mm2以下であった、本発明例1から本発明例5までより作製した供試材には、ピット状の空隙は認められないのに対し、水素ガスの含有量、または介在物数が前記の各値を超過する比較例1から比較例4までより作製した供試材には、ピット状の空隙が存在することがわかる。
Claims (3)
- 成分組成が、Zn:7〜12質量%、Mg:1.0〜3.0質量%、Cu:0.5〜3.0質量%、Cr:0.03〜0.30質量%、Zr:0.05〜0.20質量%を含み、残部がAlおよび不可避不純物であり、水素ガスの含有量が0.2cc/100g以下、酸化皮膜である介在物数が破断面観察法における破断面において0.005個/mm2以下であることを特徴とするアルミニウム−亜鉛系合金の押出材。
- 成分組成が、Zn:7〜12質量%、Mg:1.0〜3.0質量%、Cu:0.5〜3.0質量%、Cr:0.03〜0.30質量%、Zr:0.05〜0.20質量%を含み、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム−亜鉛系合金溶湯から前記成分組成の鋳塊を鋳造する際に、以下の第1から第3の条件を満たして鋳塊を鋳造し、前記作製した鋳塊を押出加工することにより製造されることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム−亜鉛系合金の押出材。
(記)
第1に、前記溶湯に対して脱ガス処理を施して、作製する鋳塊中の水素ガス含有量を、0.2cc/100g以下とすること。
第2に、前記溶湯に対して介在物除去処理を施して、作製する鋳塊中の酸化皮膜である介在物の含有量を、破断面観察法の破断面における介在物数において0.005個/mm2以下とすること。
第3に、鋳塊を作製する際の凝固速度が、鋳造全体にわたって、20〜300mm/minとなるように鋳造すること。 - 成分組成が、Zn:7〜12質量%、Mg:1.0〜3.0質量%、Cu:0.5〜3.0質量%、Cr:0.03〜0.30質量%、Zr:0.05〜0.20質量%を含み、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム−亜鉛系合金溶湯から前記成分組成の鋳塊を鋳造する際に、
前記溶湯に対して脱ガス処理を施して、前記鋳塊に含まれる水素ガス含有量を0.2cc/100g以下とし、
前記溶湯に対して介在物除去処理を施して、前記鋳塊に含まれる酸化皮膜である介在物含有量を、破断面観察法の破断面における介在物数において0.005個/mm2以下とし、
さらに鋳塊を鋳造する際の凝固速度が、鋳造全体にわたって、20〜300mm/minとなるように鋳造を行い、
得られた鋳塊を押出加工することを特徴とするアルミニウム−亜鉛系合金の押出材の製造方法。
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