JP2014035901A - ゲル電解質および蓄電デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】ゲル電解質マトリックスと電解液との保液性が良好であり、蓄電デバイスの筐体から漏液し難く、しかも良好な充放電特性を示す蓄電デバイスが得られるゲル電解質を提供する。
【解決手段】本発明に係るゲル電解質は、重合体(A)と、電解液(B)と、を含有するゲル電解質であって、銅原子およびアルミニウム原子をさらに含有することを特徴とする。本発明に係るゲル電解質において、銅原子およびアルミニウム原子を合計した含有量が5〜100ppmであることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゲル電解質、および該ゲル電解質を備えた蓄電デバイスに関する。
近年、電子機器の駆動用電源として高電圧、高エネルギー密度を有する蓄電デバイスが要求されている。このような蓄電デバイスにおいて、電解質(イオン伝導体)はその性能を大きく左右する欠かせない要素となっている。一般的には、液体状態の物質が高いイオン伝導性を有する。そのため、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスにおいても、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を主成分とした溶媒にリチウム電解質塩を溶解させた液体状態の電解液が通常用いられている。
しかしながら、このような液体状態の電解液を使用した蓄電デバイスでは、電解液の漏洩の危険性に加えて、使用環境や誤使用・事故による温度上昇や内圧上昇、破裂、発火といった安全性の問題が指摘されている。この原因の一つとしては、電解質に液体を用いていることが挙げられる。そのため、安定性(不揮発性)、安全性(非爆発性)、作製の容易さ(薄膜加工等)の観点から、ゲル状の電解質(以下「ゲル電解質」ともいう。)の開発が検討されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
このようなゲル電解質を作製する技術としては、一般に物理ゲル電解質もしくは化学ゲル電解質が知られている。前者は水素結合やファンデルワールス力のような非共有結合性相互作用を用いる凝固体化技術であるのに対し、後者は高分子化合物の形成等を利用する化学反応によるゲル化方法である。
特開2001−176555号公報 特開2002−110245号公報 特開2009−70605号公報 特開2012−9441号公報
上述のような従来のゲル電解質は、従来の非水電解液型の蓄電デバイスの製造工程と同様に、電極やセパレータが配置された筐体内にゲル電解質形成剤と電解液を含有する溶液を注入し、その後ゲル化させることで筐体内にゲル電解質を配した蓄電デバイスを作製することができる。しかしながら、ゲル化させる際に電極や電解液を高温で加熱することにより電極の劣化が発生したり、またゲル化のための開始剤を添加する必要があるため充放電を阻害する成分を除去できないなど、作製される蓄電デバイスの充放電特性が劣化する問題があった。さらに、ゲル電解質には、蓄電デバイスの筐体内から漏液しないことやゲル電解質マトリックスと電解液との保液性が良好であることが、安定性(不揮発性)、安全性(非爆発性)、作製の容易さ(薄膜加工等)の観点から、基本的性能として要求されている。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、前記課題を解決することで、ゲル電解質マトリックスと電解液との保液性が良好であり、蓄電デバイスの筐体から漏液し難く、しかも良好な充放電特性を示す蓄電デバイスが得られるゲル電解質を提供するものである。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係るゲル電解質の一態様は、
重合体(A)と、電解液(B)と、を含有するゲル電解質であって、
銅原子およびアルミニウム原子をさらに含有することを特徴とする。
[適用例2]
適用例1のゲル電解質において、
銅原子およびアルミニウム原子を合計した含有量が5〜100ppmであることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2のゲル電解質において、
前記重合体(A)が、鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位(A1)を有することができる。
[適用例4]
適用例3のゲル電解質において、
前記鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートが下記一般式(1)で表される化合物であることができる。
Figure 2014035901
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは単結合または2価の有機基を表し、複数存在してもよいRはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を表し、Rは水素原子または1価の有機基を表す。xは1以上の整数である。)
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例のゲル電解質において、
前記重合体(A)が、環状エーテル構造の少なくとも一部が開環した構造を有する(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位(A2)をさらに有することができる。
[適用例6]
適用例5のゲル電解質において、
前記環状エーテル構造の少なくとも一部が開環した構造を有する(メタ)アクリレートにおいて、前記環状エーテル構造を開環させる前の構造が下記一般式(2)で表される構造であることができる。
Figure 2014035901
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは2価の連結基を表し、Rは水素原子または1価の有機基を表し、複数存在するRはそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。mおよびnは0以上の整数であり、m+n≧1である。)
[適用例7]
本発明に係る蓄電デバイスの一態様は、
適用例1ないし適用例6のいずれか一例のゲル電解質を備えることを特徴とする。
本発明に係るゲル電解質によれば、良好な保液性を有するため、ゲル電解質マトリックスと電解液との分離を抑制することができ、蓄電デバイスを構成する筐体からの漏液を防止できる。また、本発明に係るゲル電解質によれば、充放電特性の中でも、特にクーロン効率(充電容量に対する放電容量の割合)が良好となる蓄電デバイスが得られる。
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含むものとして理解されるべきである。なお、本明細書における「(メタ)アクリル〜」とは、「アクリル〜」および「メタクリル〜」の双方を包括する概念である。また、「〜(メタ)アクリレート」とは、「〜アクリレート」および「〜メタクリレート」の双方を包括する概念である。
1.ゲル電解質
本実施の形態に係るゲル電解質は、重合体(A)と、電解液(B)と、を含有し、さらに銅原子およびアルミニウム原子を含有する。本実施の形態に係るゲル電解質中に含まれる銅原子およびアルミニウム原子は、ゲル電解質マトリックスとなる重合体を擬似架橋するものと考えられる。その結果、ゲル電解質マトリックスの機械的強度を向上させて、加熱や過充電による蓄電デバイスの異常膨張を防止することができる。その結果、蓄電デバイスの筐体からの漏液を防止でき、充放電特性を向上させることもできる。また、薄膜加工等の作業性も良好となる。
本実施の形態に係るゲル電解質において、銅原子およびアルミニウム原子の合計の含有量は、5〜100ppmであることが好ましく、25〜90ppmであることがより好ましい。銅原子およびアルミニウム原子の合計の含有量が前記範囲内にあると、蓄電デバイスの活物質層の劣化を抑制する効果に優れ、蓄電デバイスのクーロン効率がより良好となる傾向がある。
なお、本発明において、ゲル電解質中の銅原子やアルミニウム原子の含有量は、充放電特性評価後の蓄電デバイスをドライルーム内で解体し、セル内部からゲル電解質をスパチュラで掻き取るなどして回収し、この回収したゲル電解質を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS、例えばアジレント・テクノロジー株式会社製、型式「Agilent
7500cs」など)を用いて測定することにより算出することができる。
本実施の形態に係るゲル電解質に含まれる銅原子やアルミニウム原子は、ゲル電解質中に粒子状で存在していてもよく、ゲル電解質中にイオンとして存在していてもよいが、イオンとして存在していることが好ましい。ゲル電解質中に含まれる銅原子やアルミニウム原子をそれぞれ銅イオンやアルミニウムイオンとして存在させる場合には、後述する電解液(B)にあらかじめ銅イオンやアルミニウムイオンを含有する塩および/または錯体を添加してもよい。また、電極およびセパレータを備えた筐体内にゲル電解質形成用組成物を注入し、さらにそれを加熱してゲル化させる際の加熱温度および加熱時間を制御することで、電極の集電体金属から銅イオンやアルミニウムイオンを溶出させてゲル電解質に含ませるようにしてもよい。かかる方法によれば、ゲル化させる際に加熱するだけで、ゲル電解質中に銅イオンやアルミニウムイオンを含ませることができ、また加熱温度や加熱時間を適宜調整することで、銅イオンやアルミニウムイオンの溶出量を調整することもできる。
ゲル電解質形成用組成物が注入された筐体を加熱する際の温度は、70〜100℃であることが好ましく、75〜95℃であることがより好ましく、80〜90℃であることが特に好ましい。また、前記温度での加熱時間は、10分〜5時間、好ましくは30分〜4時間、より好ましくは1時間〜2時間である。
以下、本実施の形態に係るゲル電解質に含まれる、重合体(A)、電解液(B)の順に説明する。
1.1.重合体(A)
本実施の形態に係るゲル電解質に含まれる重合体(A)は、電解液(B)を保持することができ、かつゲル電解質の機械的強度を向上させるマトリックスとして機能する材料であれば特に制限されない。このような重合体(A)としては、例えば、化学ゲル電解質のマトリックスポリマーとして機能できるアクリル系重合体や、物理ゲル電解質のマトリックスポリマーとして機能できるフッ化ビニリデン系重合体などが挙げられる。
1.1.1.アクリル系重合体
アクリル系重合体としては、電解液(B)を保持することができ、かつゲル電解質の機械的強度を向上させるマトリックスとして機能する材料であれば特に制限されないが、鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位(A1)を有することが好ましい。上記繰り返し単位(A1)は、(ポリ)エーテル型の鎖状エーテル構造部位を有するため、蓄電デバイスに用いられる電解液(B)との親和性を向上させることができる。これにより、重合体(A)に保液性を付与することができる。
上記鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2014035901
上記式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、収率よく重合体を合成する観点から水素原子であることが好ましい。式(1)中、Rは単結合または2価の有機基を表し、2価の有機基としては炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。
上記式(1)中、複数存在してもよいRはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を表し、2価の炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、電解液(B)との親和性が高くなることから、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましい。
上記式(1)中、Rは水素原子または1価の有機基を表し、1価の有機基としては炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。電解液(B)との親和性が高くなることから、Rは炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。また、式(1)中、xは1以上の整数であり、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることが特に好ましい。
上記鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートは、下記一般式(1−1)で表される化合物であることがより好ましい。下記一般式(1−1)で表される化合物に由来する繰り返し単位は、一般的に非水電解液に使用されているカーボネート系溶媒やラクトン系溶媒との親和性が高く、架橋して重合体が強固なネットワークを形成した場合でも非水電解液を吸収して十分に膨潤することができ、非水電解液と活物質の間のリチウムイオンの移動を妨げない。その結果、良好なイオン伝導性を発現するゲル電解質を作製することができる。
Figure 2014035901
(式(1−1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R10は単結合または2価の有機基を表し、複数存在するR11はそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表し、Rは水素原子または1価の有機基を表す。)
上記式(1−1)中、Rは上記一般式(1)中のRと同義である。Rは、上記一般式(1)中のRと同義である。R10は単結合または2価の有機基を表し、2価の有機基としては炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、R10は単結合であることが好ましい。
複数存在するR11はそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表し、1価の有機基としては炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、上記Rの説明で例示列挙したものを挙げることができる。これらの中でも電解液(B)との親和性が高くなることから、R11はそれぞれ水素原子であることが好ましい。また、式(1−1)中、xは1以上の整数であり、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることが特に好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルオキシジエチレングリコール(メタ)ア
クリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体(A)は、鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートの単独重合体であってもよいし、鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートとその他の単量体との共重合体であってもよい。重合体(A)が共重合体である場合には、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体のいずれの構造であってもよい。
重合体(A)が共重合体である場合、重合体(A)中における繰り返し単位(A1)の含有割合は、繰り返し単位(A1)およびその他の繰り返し単位の合計量を100mol%としたときに繰り返し単位(A1)が、60mol%以上であることが好ましく、60〜90mol%であることがより好ましく、65〜85mol%であることが特に好ましい。重合体(A)中における繰り返し単位(A1)の含有割合が前記範囲にあると、蓄電デバイスに用いられる電解液(B)との親和性がとりわけ良好となる。
その他の繰り返し単位としては、環状エーテル構造の少なくとも一部が開環した構造を有する(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位(A2)が好ましい。環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位は、加熱処理などによって該環状エーテル構造を開環させて架橋構造を構築することで、重合体(A)にゲル化特性を付与することできる。
なお、一般的には、(ポリ)エーテル型の鎖状エーテル構造部位が存在すると、蓄電デバイスの充放電に伴う酸化還元電位の変化により分解するなどして劣化するため、良好な蓄電デバイス特性を発現させることが困難である。しかしながら、繰り返し単位(A1)および繰り返し単位(A2)を有する重合体(A)によれば、蓄電デバイスの充放電に伴う酸化還元電位の変化による劣化を抑制することができ、しかもゲル電解質の保液性の劣化をも抑制することができる。
上記環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートとしては、環状エーテル構造が開環して架橋することができるものであれば特に限定されないが、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2014035901
上記式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表すが、重合体(A)の耐酸化性の観点からメチル基であることが好ましい。
上記式(2)中、Rは2価の連結基を表し、例えば単結合、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の2価の環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基、又はこれらとエーテル基、エステル基若しくはカルボニル基とを組み合わせた2価の基を挙げることができ、このような2価の連結基は置換基を有していてもよいが、好ましくは単結合または炭素数1〜4のアルキレン基である。
上記式(2)中、Rは水素原子または1価の有機基を表し、1価の有機基としては炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。これらの中でも、容易に架橋することができるように、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。
上記式(2)中、複数存在するRはそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表し、1価の有機基としては炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、上記Rの説明で例示列挙したものを挙げることができる。これらの中でも、容易に架橋することができるように、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。また、mおよびnは0以上の整数であり、m+n≧1であるが、容易に反応でき、しかも重合体の安定性が良好となるため、上記式(2)中、m+nは2以上であることが好ましく、m+nは2であることがより好ましい。
上記環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートは、下記一般式(2−1)で表される化合物であることがより好ましい。下記一般式(2−1)で表される化合物に由来する繰り返し単位は、非水溶媒中でリチウムイオンにより容易に開環架橋することができる。このため、たとえば後述するゲル電解質形成用組成物を用いてゲル電解質を作製する場合、電解質としてリチウムイオンを含有する電解液(B)を用いることにより、ゲル電解質形成用組成物を容易に架橋させ、イオン伝導性に優れたゲル電解質を作製することができる。この場合、ゲル電解質を作製するにあたりゲル電解質形成用組成物の加熱処理は必須ではないが、ゲル強度の良好なゲル電解質を作製する観点から、活物質を劣化させない低温での加熱処理を行うことが好ましい。
Figure 2014035901
(式(2−1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは単結合または2価の有機基を表し、Rは水素原子または1価の有機基を表し、複数存在するRはそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。)
上記式(2−1)中、R、R及びRについては、上記式(2)と同義である。上記式(2−1)中、Rは単結合または2価の有機基を表し、2価の有機基としては炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、Rはメチレン基であることが好ましい。
重合体(A)が、環状エーテル構造の少なくとも一部が開環した構造を有する(メタ)
アクリレートに由来する繰り返し単位(A2)を有する場合には、強固な重合体ネットワーク構造が構築されているため、ゲル強度に優れたゲル電解質となる。
環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−ブチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−ヘキシル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−オキセタン−3−イロキシ)エチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−オキセタン−3−イロキシ)ブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、(3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート及び(3−アルキル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体(A)中における繰り返し単位(A2)の含有割合は、繰り返し単位(A1)および繰り返し単位(A2)の合計量を100mol%としたときに繰り返し単位(A2)が、10〜40mol%であることが好ましく、15〜35mol%であることがより好ましい。重合体(A)中における繰り返し単位(A2)の含有割合が前記範囲にあると、十分に架橋させることができるので、ゲル電解質の機械的強度を確保できる。
なお、一般的には、ゲル電解質を作製する際にゲル化を促進させるための熱酸発生剤や光酸発生剤等の添加剤を添加する必要がある。この添加剤がゲル電解質中に残存してしまうと、蓄電デバイスにおいて充放電特性の経時的劣化を招くことがある。しかしながら、本実施の形態に係るゲル電解質は、このような添加剤を必須とせず、加熱処理のみでゲル化させることができるため、充放電特性の経時的劣化を抑制できる点でも優れている。
本実施の形態に係るゲル電解質に含まれる重合体(A)は、繰り返し単位(A1)および繰り返し単位(A2)の合計量を100mol%としたときに、前記繰り返し単位(A2)の量(M2[mol%])に対する前記繰り返し単位(A1)の量(M1[mol%])の比率(M1/M2)が1〜10の範囲内にあり、1.5〜8の範囲内であることが好ましく、2〜6の範囲内であることがより好ましい。M1/M2の値が前記範囲にあると、良好な保液性と十分なゲル化特性とを両立させることができる。
本実施の形態に係るゲル電解質に含まれる重合体(A)は、上記鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートと、必要に応じて上記環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートと、をラジカル重合開始剤および任意的に分子量調節剤の存在下、反応溶媒中でラジカル(共)重合させることにより得られた重合体(以下、この重合体を「前駆体ポリマー」という。)を開環架橋させることで容易に作製することができる。前駆体ポリマーが共重合体である場合には、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体のいずれの構造であってもよい。
上記反応溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水、アルコール、エステル、カーボネート、ケトン、ラクトン、エーテル、スルホキシド、アミドなどを挙げることができる。
上記アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどを;
上記エステルとしては、例えば酢酸エチル、プロピオン酸メチル、酢酸ブチルなどを;
上記カーボネートとしては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカー
ボネートなどを;
上記ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトンなどを;
上記ラクトンとしては、例えばγ−ブチルラクトンなどを;
上記エーテルとしては、例えばトリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどを;
上記スルホキシドとしては、例えばジメチルスルホキシドなどを;
上記アミドとしては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
上記反応溶媒としては、後に例示する電解液(B)に含まれ得る溶媒の少なくとも1種であることが好ましく、実際に電解液(B)で使用する溶媒と同種の溶媒であることがより好ましい。電解液(B)に含まれ得る溶媒の少なくとも1種を使用することで、重合後の前駆体ポリマーの溶液をそのままゲル電解質形成用組成物の調製に供することができ、プロセスを簡略化することができる。この場合、電解液(B)に含まれ得る溶媒を反応溶媒としてラジカル重合させることにより、電解液(B)の保液性により優れたゲル電解質を作製することが可能となる。なお、実際に電解液(B)で使用する溶媒と同種の溶媒を反応溶媒として用いると、得られる重合体(A)と電解液(B)との親和性が非常に良好となるので、ゲル電解質形成用組成物の調製が容易になると共に、得られるゲル電解質の保液性が非常に良好となる。
反応溶媒としては、カーボネート、ラクトン、エーテルおよびスルホキシドから選択される1種以上を使用することが好ましく、これらのうち実際に使用する溶媒またはその混合物を使用することが最も好ましい。驚くべきことに、反応溶媒中で重合を行った後に溶媒置換を行っても、保液性向上の効果は維持されることが明らかとなっている。
前駆体ポリマーを製造する際の溶媒の使用割合は、単量体の合計100質量部に対して、100〜1,000質量部とすることが好ましく、200〜500質量部とすることがより好ましい。
上記ラジカル(共)重合では、通常、ラジカル重合開始剤が用いられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、N,N’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルN,N’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の有機過酸化物系開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、全単量体100質量部に対して、0.1〜5質量部添加するとよい。
上記分子量調節剤としては、例えばクロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドテジルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン化合物;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマーなどのその他の分子量調節剤を挙げることができる。分子量調節剤の使用割合は、単量体の合計100質量部に対して、5質量部以下とすることが好ましい。
なお、前駆体ポリマーは、鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートおよび環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートの他、これら以外の単量体(以下、「その他の単量体」ともいう)を用いてラジカル(共)重合させることもできるが、全単量体100mol%中のその他の単量体の含有割合が10mol%未満であることが好ましく、0
mol%であることがより好ましい。
以上のようにして得られる前駆体ポリマーの数平均分子量(Mn)は、1000〜100万であることが好ましく、1000〜10万であることがより好ましく、1万〜10万であることが特に好ましい。前駆体ポリマーの数平均分子量(Mn)が10万以下であると、極板への含浸性が向上するため、得られる蓄電デバイスの充放電特性がより良好となる傾向がある。さらに、前駆体ポリマーの数平均分子量(Mn)が5000以上10万以下であると、得られる蓄電デバイスのサイクル特性がとりわけ良好となる傾向がある。なお、前駆体ポリマーの数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定された標準ポリスチレンの溶出時間と分子量との関係から換算することにより求めることができる。
1.1.2.フッ化ビニリデン系重合体
フッ化ビニリデン系重合体としては、フッ化ビニリデンの単独重合体に加えて、フッ化ビニリデン80質量%以上と、フッ化ビニリデンと共重合可能な一種または複数種の単量体20質量%以下(好ましくは0.3質量%以上)と、の共重合体を包含するものである。このような共重合体を使用することで、得られるゲル電解質のゲル強度を向上させることができる。
フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン等の炭化水素系単量体;フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フルオロアルキルビニルエーテル等の含フッ素単量体;またはアリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエステル、等のエポキシ基含有ビニル単量体を挙げることができる。また、ゲル電解質と電極との接着性をより向上させるために、不飽和二塩基酸のモノエステル、ビニレンカーボネート等を共重合させて、カルボニル基、カルボキシル基等の極性基を導入した共重合体も好ましく用いられる。更には、フッ化ビニリデン系重合体を溶解または膨潤する溶媒中で、アミノ基またはメルカプト基等のフッ化ビニリデン系重合体と反応性基と加水分解性基を併有するシラン系カップリング剤あるいはチタネート系カップリング剤中で処理してなる変性フッ化ビニリデン系重合体も用いられる。
フッ化ビニリデン系重合体は、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算重量平均分子量)が25万以上であることが好ましい。重量平均分子量が前記範囲であると、ゲル電解質を形成した際にゲル強度をより向上させることができる。
ゲル電解質形成用組成物を蓄電デバイスの筐体などへ注入する際に泡かみなどなく安定して注入するためには、ゲル電解質形成用組成物の粘度は、50mPa・s以下が好ましい。したがって、ゲル電解質形成用組成物の粘度が50mPa・s以下となるように、重量平均分子量とゲル電解質形成用組成物中のフッ化ビニリデン系重合体の濃度及び重量平均分子量を適宜調整することが好ましい。
1.2.電解液(B)
本実施の形態に係るゲル電解質に含まれる電解液(B)は、電解質と、該電解質を溶解させるための溶媒、必要に応じてさらに添加剤を含有する。
1.2.1.電解質
上記電解質としては、従来から公知のリチウム塩のいずれをも使用することができ、その具体例としては、例えばLiClO、LiBF、LiPF、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiB
r、LiB(C、LiCFSO、LiCHSO、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等を例示することができる。これら電解質は、1種単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
電解液のイオン伝導性を高める観点から、Li以外の電解質を用いることが可能である。このような電解質としては、例えば、(FSO、BF 、PF 、SbF 、NO 、CFSO 、(CFSO、(CSO、(CFSO、CFCO 、CCO 、CHCO 、(CN)等のアニオンとカチオンとの組合せからなる塩が挙げられる。
前記カチオンとしては、N、P、S、O、C、Siのいずれかもしくは2種類以上の元素を構造中に含み、鎖状または5員環、6員環等の環状構造を骨格に有する化合物が挙げられる。鎖状構造を骨格に有する化合物の例としては、アルキルアンモニウム等が挙げられる。環状構造を骨格に有する化合物の例としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピリジン、オキサゾ−ル、イソオキサゾ−ル、チアゾ−ル、イソチアゾ−ル、フラザン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロリジン、ピペリジン等の複素単環化合物;ベンゾフラン、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、イソドリジン、カルバゾール等の縮合複素環化合物が挙げられる。
上記例示した電解質の中でも、LiPFまたはLiBFを用いた場合には、リチウムイオンがカチオン重合開始剤として作用するため、他のカチオン重合開始剤を用いなくても上述の前駆体ポリマーを(開環)架橋させることができる。
1.2.2.溶媒
上記電解質を溶解させるための溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(PMC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類;スルホラン等を使用することができる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、エチレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンが好ましく、エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとを混合した溶媒が特に好ましい。
本実施の形態に係るゲル電解質に含まれる電解液(B)は、通常、電解質濃度として0.1〜5mol/L、特に有利に0.5〜2mol/Lとすることが好ましい。
1.2.3.添加剤
上記添加剤としては、従来から電解液に使用されてきた添加剤が挙げられ、具体的にはイオン伝導度を向上させたり、電極表面に保護膜を形成させたりするための成分を使用することができる。たとえば、アザインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾジチオール、ベンゾフラン、ベンゾチアゾール、1−ベンゾチオフェン、1H−ベンゾトリアゾール、ベンジルカプトン、1−ブロモ−3−フルオロベンゼン等の含窒素・含硫黄系化合物;ビニレンカーボネート、ビニルアクリレート、ビニルブチレート等のビニル系化合物;ショ糖脂肪酸エステル類が挙げられ、その添加量は10質量%以下、好ましくは3質量%以下である。また、これらの添加剤は、1種単独で用いてもよく2種類以上組み合わせて用い
てもよい。
また、上述の前駆体ポリマーを使用する場合には、得られるゲル電解質の保液性を向上させ、また架橋密度を上げて機械的強度を向上させる観点から、電解液(B)に環状エーテル化合物をさらに添加することができる。このような環状エーテル化合物としては、炭素数6〜28のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数6〜28のアルキル基を有するアルキルグリシジルエーテル、炭素数6〜28のアルキル基を有する脂肪酸グリシジルエーテル、炭素数6〜28のアルキル基を有するアルキルフェノールグリシジルエーテル等がより好ましい。これらの中でも、炭素数6〜28のアルキル基を有するアルキルグリシジルエーテルが特に好ましい。なお、これらの環状エーテル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、上記環状エーテル化合物は、分子中に2個以上の環状エーテル基を有することも好ましい。分子中に2個以上の環状エーテル基を有する環状エーテル化合物を添加することにより、架橋密度をさらに高めることができるため、ゲル電解質の機械的強度をより向上できる。このような環状エーテル化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイド、1,6−ビス(2、3−エポキシプロポキシ)ナフタレン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、1,2:8,9−ジエポキシリモネン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等が挙げられる。
電解液(B)に環状エーテル化合物を添加する場合、該環状エーテル化合物は、前駆体ポリマー中の環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートに含まれる環状エーテル基とは異なる員数の環状エーテル基を有することが好ましい。たとえば、環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートに含まれる環状エーテル基がオキシラニル基である場合、添加する環状エーテル化合物はオキセタニル基を有することが好ましい。一方、環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートに含まれる環状エーテル基がオキセタニル基である場合、添加する環状エーテル化合物はオキシラニル基を有することが好ましい。このように添加する環状エーテル化合物が環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートに含まれる環状エーテル基とは異なる員数の環状エーテル基を有することにより、より効果的に架橋させることができ、ゲル電解質を作製する際の加熱温度をより低下させることができる。これにより、加熱に伴う電極や電解液(B)の劣化を抑制できる。また、架橋密度を向上させることができるので、機械的強度に優れたゲル電解質を作製することができる。
電解液(B)に環状エーテル化合物を添加する場合、環状エーテル化合物の含有割合は、前駆体ポリマー100質量部に対して、0〜50質量部の範囲で含有されることが好ましい。
2.ゲル電解質形成用組成物
本実施の形態に係るゲル電解質を作製するためのゲル電解質形成用組成物は、上述のような重合体(A)と電解液(B)とを含有する。ただし、本実施の形態に係るゲル電解質に含まれる重合体(A)が上記の繰り返し単位(A2)を有するアクリル系重合体である場合には、ゲル電解質形成用組成物は、重合体(A)に代えてまたは重合体(A)と共に上述の前駆体ポリマーを含有する。
ゲル電解質形成用組成物は、重合体(A)および/または前駆体ポリマーと、電解液(B)と、を混合することにより作製することができる。このようにして得られたゲル電解
質形成用組成物を温和な条件で加熱することにより、ゲル電解質を作製することができる。なお、本明細書において「温和な条件で加熱する」とは、電極やゲル電解質が劣化しない70〜100℃程度の温度で加熱することをいう。また、このゲル電解質は、柔軟性に富むゲルであり、しかも熱可逆性がない。そのため、加熱や過充電による電池の異常膨張を防止することができ、薄膜加工等の作業性が良好となる。
特に、ゲル電解質形成用組成物が上述した環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位を有する前駆体ポリマーを含有する場合、ゲル電解質形成用組成物を温和な条件で加熱して架橋(カチオン重合)させることにより、保液性に優れた良好なゲル電解質を作製することができる。
なお、ゲル電解質形成用組成物を作製する際には、電解液(B)中に上述の重合体(A)および/または前駆体ポリマーを添加して、40〜60℃程度に加熱しながら十分に攪拌すればよい。これにより、重合体(A)および/または前駆体ポリマーを電解液(B)中に完全に溶解させることができる。なお、前駆体ポリマーを使用している場合には、加熱温度を70〜100℃まで上げてしまうと、ゲル電解質が形成されてしまう場合があるため注意を要する。
なお、ゲル電解質形成用組成物は室温付近ではゲル化しないことが好ましい。このような組成物を使用することにより、蓄電デバイスの筐体に液体状の組成物を注入し、その後加熱することでゲル電解質とすることができるため、保存安定性や蓄電デバイス作製工程の自由度を向上させることができる。
3.蓄電デバイス
本実施の形態に係る蓄電デバイスは、上述のゲル電解質を備える他、公知の構成、材料を使用することができる。
電極材料としては、リチウムイオンの挿入、脱離が可能であるものであれば特に制限されるものではない。電極としては、例えば集電体の表面に正極/負極活物質層が形成されたものを使用することができる。
正極活物質としては、例えば、CuO、CuO、MnO、V、CrO、MoO、Fe、Ni、CuO等の金属酸化物、LiCO、LiNiO、LiMn、LiFePO等のリチウムと遷移金属との複合酸化物や、TiS、MoS、NbSe等の金属カルコゲン化物、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性化合物等が挙げられる。特に本発明では、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄等の遷移金属から選ばれる1種類以上とリチウムとの複合酸化物が好ましく、その具体例としては、LiCoO、LiMnO、LiMn、LiNiCo(1−x)、LiMnNiCo(a+b+c=1)、LiFePO等が挙げられる。また、これらのリチウム複合酸化物に、少量のフッ素、ホウ素、アルミニウム、クロム、ジルコニウム、モリブデン、鉄などの元素をドープしたものでもよい。
負極活物質としては、例えば、金属リチウム、Al、Mg、Pt、Sn、Si,Zn、Bi等のリチウム吸蔵金属;Al−Ni、Al−Ag、Al−Mn等のAl系リチウム合金;SbSn、InSb、CoSb、MiMnSb等のアンチモン系リチウム合金;SnM(M=Fe、Co、Mn、V、Ti)、SnCu、Sn、Sn12Ag13、SnSb0.4等のSn系リチウム合金;SnO、Sn、SNPBO、SnPOCl等のSn酸化物;Si−C複合系、Si−Ti複合系、Si−M薄膜等のSi系リチウム合金;Sn、Si等のナノ複合材料;Sn、Co、炭素等のアモル
ファス合金材料;Sn−Ag、Sn−Cu等のSn系メッキ合金;Si系アモルファス薄膜等が挙げられ、炭素材料としてはアモルファスカーボン、メソカーボンマイクロビーズ、グラファイト、天然黒鉛、難黒鉛化性炭素等があり、これらの炭素材料の表面修飾物等が好適材料として挙げられる。
上記電極材料には、さらに導電剤を用いてもよい。導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導材料であれば使用することができる。通常、アセチレンブラックやケッチンブラック等のカーボンブラックが使用されるが、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンウイスカー、気相成長炭素等の炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、導電性セラミック材料等を使用してもよく、これらは2種類以上の混合物として含ませることができる。
集電体としては、構成された蓄電デバイスにおいて悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば特に制限されない。例えば、正極集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス銅、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性硝子等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理したものを用いることができる。負極集電体としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性硝子、Al−Cd合金等の他に接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理したものを用いることができる。なお、ゲル電解質形成用組成物を蓄電デバイスの筐体内に注入して加熱することにより、ゲル電解質中に銅原子やアルミニウム原子を含ませる場合には、正極集電体としてアルミニウム、負極集電体として銅を用いることで、ゲル電解質中に銅イオンやアルミニウムイオンが溶出するため好ましい。これらの集電体材料は表面を酸化処理することも可能である。これらの形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチまたはエキスパンドされた物、硝子体、多孔質体、発砲体等の成型体も用いられる。
上記正極/負極活物質を集電体に結着させるバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレン(HFP)やパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMV)及び、テトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体などのポリフッ化ビニリデン共重合体樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴムなどのフッ素系樹脂やスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのポリマーが挙げられ、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の多糖類、ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂などを併用することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは2種類以上を混合して用いてもよい。その添加量としては、活物質量に対して0.2〜30%が好ましく、更に0.5〜10%がより好ましい。なお、LiFePOのように表面を炭素被覆した正極活物質については、カルボン酸変性したポリフッ化ビニリデンまたはSBRの水系バインダーも好ましい材料として挙げることができる。
セパレータとしては、多孔性の膜が使用され、通常多孔性ポリマーフィルムや不織布が好適に使用される。本発明においては特に、非導電性多孔質材料と電気絶縁性の粒子からなるものが好適である。非導電性多孔質材料は、ポリアクリロニトリル、ポリエステル(PET)、ポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ガラス、セラミック等から選択される。特に、平面状の柔軟な基材に、電気絶縁性の無機皮膜を有する不織布が好適であり、ポリエステル(PET)、ポリアミドが特に好ましい。
セパレータに使用される絶縁性の粒子としては、無機材料としては少なくとも一種類のアルミナ、チタニア、珪素及び/又はジルコニアなどの無機酸化物、有機物材料としてはフッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂などのポリマー粒子などが用いられる。
上記セパレータは、さらにセパレータ又はセパレータ中に、所望の遮断温度で溶融する極めて薄いワックス粒子層、又はポリマー粒子層の遮断粒子が存在することでシャットダウンメカニズムを有することができる。この遮断粒子を形成するのに有利な材料としては、天然または人工のワックス、ポリオレフィンなどの低融点ポリマーがあり、この粒子が所望の遮断温度で溶融し、かつセパレータの細孔を閉鎖することで、電池の異常作動時の更なる電流を抑制することができる。
本実施の形態に係る蓄電デバイスは、円筒形、コイン型、角型、ラミネート型、その他任意の形状に形成することができ、蓄電デバイスの基本構成は形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更し実施することができる。
本実施の形態に係る蓄電デバイスの具体的な製造方法としては、例えば、負極集電体に負極活物質を塗布してなる負極と、正極集電体に正極活物質を塗布してなる正極とを、セパレータを介して捲回した捲回体を筐体に収納し、前述のゲル電解質形成用組成物を注入し上下に絶縁板を載置した状態で密封し、加熱処理することにより得られる。
なお、本実施の形態に係る蓄電デバイスを作製する場合、選択した電極活物質により初回の充電時に多量のガスが発生し、セル性能に影響があるような場合には、前述のゲル電解質形成用組成物をプレ電池に注入後、前処理として充電または充放電の処理を行った後、加熱処理を行ってもよい。
4.実施例
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
4.1.実施例1
4.1.1.ゲル電解質形成用組成物の作製
十分に乾燥した容器に、メトキシエチルアクリレートを52g(モノマー含有比率;74質量%、80mol%に相当)、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートを18g(モノマー含有比率;26質量%、20mol%に相当)、反応溶媒としてエチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=3:7(体積比)を211g、N,N’−アゾビスイソブチロニトリルを0.71g(モノマー総質量100質量部に対して1質量部)を加え、乾燥窒素雰囲気にて60℃に加熱し、6時間反応させ、その後室温まで冷却した。冷却した溶液をヘキサンに投入し、得られた沈殿物をろ別により回収した。回収した沈殿物を60℃で12時間減圧乾燥することにより数平均分子量20万の前駆体ポリマーP1を作製した。このようにして得られた前駆体ポリマーP1を2.9g秤り取り、LiPFを1mol/L含有するEC:DEC=3:7(体積比)の電解液47.1gに溶解させて、前駆体ポリマーP1を5.8質量%含有するゲル電解質形成用組成物を調製した。
4.1.2.蓄電デバイスの作製
<正極の製造>
二軸型プラネタリーミキサー(プライミクス株式会社製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)に電気化学デバイス電極用バインダー(株式会社クレハ製、商品名「KFポリマー#1120」)4.0質量部(固形分換算)、導電助剤(電気化学工業株式会社製、商品名「デンカブラック50%プレス品」)3.0質量部、正極活物質として粒径5μmのLiCoO(ハヤシ化成株式会社製)100質量部(固形分換算)、N−メチルピロリドン(NMP)36質量部を投入し、60rpmで2時間攪拌を行った。得ら
れたペーストにNMPを投入し、固形分を65%に調製した後、攪拌脱泡機(株式会社シンキー製、商品名「泡とり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間、1800rpmで5分間、さらに真空下において1800rpmで1.5分間攪拌混合することにより、電極用スラリーを調製した。厚み30μmのアルミニウム箔よりなる集電体の表面に、調製した電極用スラリーを、乾燥後の膜厚が80μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、120℃で20分間乾燥処理した。その後、電極層の密度が3.0g/cmとなるようにロールプレス機によりプレス加工することにより、正極を得た。
<負極の製造>
二軸型プラネタリーミキサー(プライミクス株式会社製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)中に増粘剤(商品名「CMC2200」、ダイセル化学工業株式会社製)1質量部(固形分換算)、負極活物質としてグラファイト(日立化成工業株式会社製、製品名「SMG−HE1」)100質量部および水68質量部を投入し、60rpmで1時間攪拌を行った。その後ここに、SBRバインダー組成物(JSR株式会社製、商品名「TRD2001」)を、重合体に換算して2質量部加え、60rpmでさらに1時間攪拌してペーストを得た。得られたペーストに水を追加投入し、固形分を50質量%に調整した後、攪拌脱泡機(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間および1,800rpmで5分間、さらに絶対圧25kPaの減圧下において1,800rpmで1.5分間攪拌、順次に混合することにより、負極用スラリーを調製した。厚み20μmの銅箔からなる集電体の表面に、上記で調製した負極用スラリーを、乾燥後の膜厚が150μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、120℃で20分間乾燥した。その後、膜の密度が1.5g/cmとなるようにロールプレス機を使用してプレス加工することにより、負極を得た。
<ゲル電解質を備えるリチウムイオン二次電池セルの組み立て>
グローブボックス内でアルミニウムからなるフィルム状の外装アルミシール上に、50mm×25mmに切り出した前記負極に負極端子を取り付けて載置した。次いで、この負極上に、54mm×27mmに切り出したポリプロピレン製の多孔膜からなるセパレータ(セルガード社製、商品名「セルガード#2400」、厚み25μm)を載置し、その後、48mm×23mmに切り出した前記正極に正極端子を取り付けて、前記セパレータ上に載置した。そして、この正極上に、上記外装アルミシールと同様の外装アルミシールを載置した。このようにして、外装アルミシール、負極、セパレータ、正極、及び外装アルミシールからなる積層体を得た。その後、この積層体の3辺の外装アルミシールを加温シーリング装置で2つの外装アルミシールの外周縁部を互いに接合させ封止した。そして、各層の間に空気が入らないようにゲル電解質形成用組成物をさらに注入して、さらに減圧脱気した後、減圧下で、負極端子と正極端子が外装アルミシールの外部に露出するようにして4辺目を封止して密閉した。このようにして得られた封止後のラミネートセルを80℃で30分の条件にてオーブンで加熱することによりゲル電解質形成用組成物をゲル化させた。このような条件で加熱処理すると、正極集電体からアルミニウム原子が、負極集電体から銅原子が溶出し、銅原子を30ppm、アルミニウム原子を30ppm含有するゲル電解質が得られた。このようにして、銅原子を30ppm、アルミニウム原子を30ppm含有するゲル電解質を備えた2極式単層ラミネートセルからなるリチウムイオン二次電池(蓄電デバイス)を作製した。
上記のリチウム二次電池を2個作製し、一つはクーロン効率評価用に、もう一つをゲル電解質評価用に使用した。
4.1.3.ゲル電解質の評価
<セル漏液性の評価>
上記で作製した蓄電デバイスのアルミラミネート一辺をドライルーム内で切除し、切除
辺を下方向に向け1分間保持し、漏液の有無を評価した。表2に評価結果を示した。なお、表2〜表3において、1分間でセル内部の電解液が流動して漏れ出さない場合を「A」と表記し、漏液しないため良好と判断した。また、1分間でセル内部の電解液が垂れ出した場合を「B」と表記し、容易に漏洩するため不良と判断した。
<保液性の評価>
上記で作製した蓄電デバイスをドライルーム内で分解し、電池内部からゲル電解質をセラミック製スパチュラで掻き取った。回収したゲル電解質10gを50mLのバイアル管へ充填し、25℃で1日放置し、ゲル電解質の外観を目視で観察した。表2に評価結果を示した。なお、表2〜表3において、ゲル電解質マトリックスと電解液とが分離していなければ保液性が良好なゲル電解質と判断して「A」、電解液がわずかに分離していれば保液性が低いゲル電解質と判断して「B」、ゲル電解質が作製できず電解質が流動する場合は不良と判断して「C」と示した。
なお、評価結果が「A」の場合、電解質の漏洩を大幅に低減することができる。このため、非常に良好なゲル電解質と判断できる。また、評価結果が「B」の場合、評価結果「A」と比べて蓄電デバイスの密閉性を十分に考慮する必要がありゲル電解質特性として劣る。しかしながら、蓄電デバイスの密閉性などを厳密にすることで電解液漏れを抑制できるため、使用可能なゲル電解質であると判断できる。一方、評価結果が「C」である場合、ゲル電解質として使用することが不能であると判断できる。
4.1.4.ゲル電解質中の金属含有量の確認
上記「4.1.3.ゲル電解質の評価」で解体した蓄電デバイスの内部からゲル電解質をセラミック製スパチュラで掻き取って回収した。回収したゲル電解質についてアジレント・テクノロジー株式会社製の誘導結合プラズマ質量分析装置ICP‐MS(装置名称「Agilent 7500cs」)を用い、ゲル電解質に含まれるアルミニウム金属と銅金属の濃度を測定したところ、ゲル電解質中に銅原子が30ppm、アルミニウム原子が30ppm含有されていることが確認できた。
4.1.5.蓄電デバイス特性の評価
上記で製造した蓄電デバイスを25℃の恒温槽に入れ、定電流(0.1C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになるまで充電して充電容量を測定した。次いで、定電流(0.1C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、0.1Cでの放電容量を測定した。測定した充電容量と放電容量からクーロン効率を下記式(3)から算出した。このときの充電容量、放電容量、およびクーロン効率の結果を表2に示した。
クーロン効率(%)=放電容量(mAh/g)/充電容量(mAh/g)・・・(3)
なお、クーロン効率が90%以上であると非常に良好であると判断でき、80%以上であると良好であると判断でき、80%未満であると不良であると判断できる。
なお、測定条件において「1C」とは、ある一定の電気容量を有するセルを定電流放電して1時間で放電終了となる電流値のことを示す。例えば「0.1C」とは、10時間かけて放電終了となる電流値のことであり、10Cとは0.1時間かけて放電完了となる電流値のことをいう。
4.2.実施例2〜22、比較例1〜4
モノマー組成、配合量および反応溶媒を表1に記載のものに変更した以外は、上記実施例1と同様にして重合体P2〜P7を作製した。また、使用したゲル電解質形成用組成物を表2〜表3に記載のものに変更し、リチウムイオン二次電池を組み立てる際の加熱温度
および加熱時間を適宜変更した以外は上記実施例1と同様にして、実施例2〜22および比較例1〜4のゲル電解質の評価ならびに蓄電デバイス特性の評価を行った。前駆体ポリマーP1〜P7のモノマー組成、配合量および反応溶媒を表1に示し、実施例および比較例で使用したゲル電解質形成用組成物ならびに評価結果を表2〜表3に示した。
なお、実施例1〜22および比較例1〜4では、リチウムイオン二次電池を組み立てる際の加熱温度および加熱時間の変化による、集電体からの銅原子およびアルミニウム原子の溶出の度合いの相関関係を示す検量線をあらかじめ作製しておき、この検量線に基づいて加熱条件を適宜変更することにより、表2〜表3に示す銅原子およびアルミニウム原子を含有するゲル電解質を得た。
4.3.実施例23
実施例18において、リチウムイオン二次電池を組み立てる際の加熱処理に代えて、LiPFを1mol/L含有するEC:DEC=3:7(体積比)の電解液にゲル電解質中の銅原子濃度が150ppmとなるように銅イオンのエチレンジアミン錯体を添加したこと以外は、実施例18と同様にしてゲル電解質の評価および蓄電デバイス特性の評価を行った。実施例23で使用したゲル電解質形成用組成物ならびに評価結果を表3に示した。
Figure 2014035901
Figure 2014035901
Figure 2014035901
表1〜表3中の略称は、それぞれ以下の化合物または製品名を表す。
<鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレート>
・MEA:メトキシエチルアクリレート
・DEGMA:メトキシジエチレングリコ−ルメタクリレート
・TEGA:エトキシトリエチレングリコールアクリレート
・MTEGA:メトキシテトラエチレングリコールアクリレート
<環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレート>
・OXMA:(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート
・OXEA:(3−エチル−オキセタン−3−イロキシ)エチルアクリレート
・OXBA:(3−エチル−オキセタン−3−イロキシ)ブチルアクリレート
・GMA:グリシジルメタクリレート
・THFMA:テトラヒドロフルフリルメタクリレート
・OXA:(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート
なお、OXEAは“Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, 2003, 41, 469−475. ”に記載の方法で合成し、OXBAについても同様の方法で合成した。
<重合開始剤(熱ラジカル発生剤)>
・AIBN:N,N’−アゾビスイソブチロニトリル
<(重合)溶媒>
・EC/DEC:エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの体積比3:7の混合溶媒
・EC/EMC/DMC:エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの体積比1:1:1の混合溶媒
・DG:ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)
・DEC:ジエチルカーボネート
・MEK:メチルエチルケトン
<添加剤(環状エーテル化合物)>
・CEL:3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業株式会社製、製品名「セロキサイド2021P」)
・EGDG:エチレングリコールジグリシジルエーテル
<その他>
・KF:ポリフッ化ビニリデン樹脂(アルケマ社製、製品名「カイナーフレックス2081」)
・UA:ポリアルキレンオキシドジアクリレート(新中村化学株式会社製、製品名「NKオリゴ UA‐8651」)
なお、表中「ND」と記載されているのは、銅原子とアルミニウム原子の含有量を測定したが、検出されなかったことを示す。
4.4.評価結果
実施例1〜23で作製されたゲル電解質によれば、いずれもセル漏洩性と保液性に優れていることが判った。さらに、これらのゲル電解質を用いたリチウムイオン二次電池はいずれもクーロン効率が良好であることが判った。
一方、比較例1では、重合体(A)を含有しないため、保液性およびセル漏液性が不良となった。
比較例2では、前駆体ポリマーP1を含有するゲル電解質形成用組成物を用いているが、加熱処理していないため、保液性およびセル漏液性が不良となった。
比較例3および比較例4では、銅原子やアルミニウム原子を含有しないため、クーロン効率が上記実施例と比較して有意に低下することが判った。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を包含する。また本発明は、上記の実施形態で説明した構成の本質的でない部分を他の構成に置き換えた構成を包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成をも包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成をも包含する。

Claims (7)

  1. 重合体(A)と、電解液(B)と、を含有するゲル電解質であって、
    銅原子およびアルミニウム原子をさらに含有する、ゲル電解質。
  2. 銅原子およびアルミニウム原子を合計した含有量が5〜100ppmである、請求項1に記載のゲル電解質。
  3. 前記重合体(A)が、鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位(A1)を有する、請求項1または請求項2に記載のゲル電解質。
  4. 前記鎖状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートが下記一般式(1)で表される化合物である、請求項3に記載のゲル電解質。
    Figure 2014035901
    (式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは単結合または2価の有機基を表し、複数存在してもよいRはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を表し、Rは水素原子または1価の有機基を表す。xは1以上の整数である。)
  5. 前記重合体(A)が、環状エーテル構造の少なくとも一部が開環した構造を有する(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位(A2)をさらに有する、請求項1ないし請求項4に記載のゲル電解質。
  6. 前記環状エーテル構造の少なくとも一部が開環した構造を有する(メタ)アクリレートにおいて、
    前記環状エーテル構造を開環させる前の構造が下記一般式(2)で表される構造である、請求項5に記載のゲル電解質。
    Figure 2014035901
    (式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは2価の連結基を表し、Rは水素原子または1価の有機基を表し、複数存在するRはそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。mおよびnは0以上の整数であり、m+n≧1である。)
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のゲル電解質を備える蓄電デバイス。
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