JP2014035472A - 画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】画像安定化制御を本来のタイミングで実行しつつ、画像形成動作の生産性の低下を防止することが可能な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】予定されているジョブ1〜5を実行したならば、ジョブ3の終了時に安定化制御の実行タイミングに至り、かつ、ジョブ5が、単位時間当たりの用紙の搬送枚数を減らすPPM制御の対象になると予測された場合には、ジョブ3のプロセス速度を基準速度Vsよりも速い第1速度Vaに変更して、ジョブ3の終了時に定着ローラー通紙部温度がPPM制御の開始条件である閾値Tzまで低下するようにする。これにより、安定化制御の実行中に定着ローラー通紙部温度が昇温し、ジョブ4の終了時にその温度が閾値Tzよりも高くなることにより、ジョブ5がPPM制御の対象から外れるようになる。
【選択図】図6

Description

本発明は、シート上の画像を定着部材により熱定着する画像形成装置に関する。
画像形成装置には、形成画像の画質を安定化するために、所定のタイミングになると、実行中の画像形成動作を一時中断して、感光体ドラムに対する帯電量や露光量などを調整する画像安定化制御を実行する機能を有するものが多い。
画像安定化制御には、例えば濃度補正があり、所定のトナーパターンを感光体ドラムに形成し、形成したトナーパターンの濃度を検出し、検出した濃度と目標濃度とのずれ量に基づいて、帯電量や露光量を調整することが行われる。画像安定化制御が終了すると、一時中断していた画像形成動作が再開される。
また、画像安定化制御とは別に、定着部を通過するシートの、単位時間当たりの通紙枚数を制御する枚数制御と呼ばれる機能を実行するものもある。
枚数制御とは、連続搬送される多数枚のシートに対する画像形成動作中に、例えばシート上の未定着画像を熱定着するための定着部材の温度が下がりすぎると、単位時間当たりのシート搬送枚数を減らす、具体的には画像形成動作を一時中断または搬送されるシート間隔を広げる動作などを行う制御である。
画像形成動作中に定着部材の温度が下がるのは、定着部材の熱が定着部材を通過する多数枚のシートに奪われていくことにより加熱が追い付かなくなることに起因する。
また、枚数制御は、定着部材の温度が上がりすぎたときに実行される場合もある。すなわち、シートのサイズが小サイズのために、定着部材のシート幅方向端部の、シートが通過しない非通紙領域の熱が、シートに奪われないことにより定着部材の温度が上がりすぎると、これを冷やすために単位時間当たりのシート搬送枚数を減らすものである。
枚数制御を実行することにより、定着部材の熱がシートに奪われる単位時間当たりの熱量が少なくなり、定着部材の加熱により定着部材の温度を上昇させることができる。なお、枚数制御は、単位時間当たりのプリント枚数(PPM:print per minute)を制限する、いわゆるPPM制御と同じ意味であるので、以下では、PPM制御という。
画像安定化制御とPPM制御は、いずれも画像形成動作を一時中断して実行する必要があり、これらの制御が実行されている間、画像形成を実行できなくなるので、それだけ画像形成動作の生産性が低下することになる。
そこで、特許文献1には、画像形成動作中に画像安定化制御の実行タイミングになったときに、定着部材の端部温度が目標温度よりも高く上限よりも低い範囲内に入っていれば、画像安定化制御を実行せずに画像形成動作を継続し、上限に達すると、定着部材の端部温度を下げるべく画像形成動作を一時中断して(PPM制御に相当)、画像安定化制御を実行する技術が開示されている。
PPM制御の開始に合わせて画像安定化制御の実行を遅らせることにより、これらを別々に実行するよりも、画像形成動作の中断時間を短くすることができ、その分、生産性の向上を図れる。
また、特許文献2には、後処理装置における針交換などにより画像形成を行えなくなるダウンタイムが生じた場合、その後に画像安定化制御が予定されていれば、その予定を繰り上げてダウンタイムの間に画像安定化制御を実行する技術が開示されている。
ダウンタイムをPPM制御に置き換えれば、PPM制御に合わせて画像安定化制御を同時に実行することができる。
特開2008−304781号公報 特開2011−242710号公報
しかしながら、特許文献1の構成をとると、画像安定化制御が本来のタイミングよりも遅れて実行されるので、本来のタイミングから実際に画像安定化制御が実行されたときまでの間に形成された画像の画質は、劣化したものになり易いという問題がある。
また、特許文献2の構成をとると、画像安定化制御が本来のタイミングよりも繰り上げられるので、形成画像の画質が劣化することはないが、繰り上げられる回数が多くなれば、単位期間当たりにおける画像安定化制御のトータルの実行回数が増えることに繋がる。
画像安定化制御の実行回数が増えると、トナーパターン形成のためのトナー消費量が増えたり、感光体ドラムを駆動させるための電力消費量が増えたりして望ましくない。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、画像安定化制御を本来のタイミングで実行しつつ、画像形成動作の生産性の低下を防止することが可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、搬送される複数枚のシートに画像を形成し、シートごとにその画像を、加熱された定着部材の熱により当該シートに定着させる画像形成動作を実行する画像形成装置であって、形成画像の画質を安定化するための所定の画像安定化制御を、画像形成動作を一時中断させて実行する安定化制御手段と、前記定着部材の温度を検出する検出手段と、前記定着部材の温度が画像形成動作に伴って変化して画像形成動作中に目標温度よりも低いまたは高い閾値に達すると、単位時間当たりのシート搬送枚数を減らす枚数制御を開始する枚数制御手段と、前記定着部材の温度が前記閾値に達すると、前記目標温度に戻るように前記定着部材への加熱量を制御する加熱制御手段と、N(複数)枚のシートに対して画像形成動作を連続して実行すれば、前記画像安定化制御と枚数制御とが時間的にずれて別々に実行されることを予測する予測手段と、前記予測が行われると、N枚のうち、前記画像安定化制御による一時中断までの間に実行される予定のP枚に含まれる1枚以上のシートに対する画像形成の画像形成速度を、基準速度から、前記予測された枚数制御の開始時期が前記予測された画像安定化制御の実行期間に入るようになる条件を満たす速度に変更する速度変更手段と、を備えることを特徴とする。
また、前記P枚のシートに対する画像形成動作は、1枚以上のシートに対する画像形成動作を1つの画像形成のジョブとしたときに、複数のジョブを連続実行する動作であり、前記速度変更手段は、前記画像安定化制御の方が枚数制御よりも早く実行されることが予測されると、前記条件を満たすように、前記予測された画像安定化制御が開始される直前のジョブの画像形成速度を基準速度よりも速い速度に変更するとしても良い。
ここで、前記速度変更手段は、前記速い速度が上限速度を超えている場合には、画像形成速度を高速に変更しようとする対象のジョブを、前記直前のジョブとこれよりも前の少なくとも1つのジョブとに拡大して、これらのジョブに対する画像形成速度を、前記条件を満たすように、基準速度よりも速い速度に変更するとしても良い。
また、前記P枚のシートに対する画像形成動作は、1枚以上のシートに対する画像形成動作を1つの画像形成のジョブとしたときに、複数のジョブを連続実行する動作であり、前記速度変更手段は、前記枚数制御の方が画像安定化制御よりも早く実行されることが予測されると、前記条件を満たすように、前記複数のジョブのうち、前記予測された安定化制御が開始される直前のジョブの画像形成速度を基準速度よりも速い速度に変更すると共に、当該直前のジョブよりも前の少なくとも1つのジョブの画像形成速度を基準速度よりも遅い速度に変更するとしても良い。
ここで、前記速度変更手段は、前記速い速度が上限速度を超えている場合には、画像形成速度を高速に変更しようとする対象のジョブを、前記直前のジョブとこれよりも前の少なくとも1つのジョブとに拡大して、これらのジョブに対する画像形成速度を基準速度よりも速い速度に変更し、かつ、当該変更されるジョブよりも前のジョブの画像形成速度を基準速度よりも遅い速度に変更するとしても良い。
ここで、前記速度変更手段は、前記画像安定化制御に要する時間をtsa、画像形成速度を増速する結果、減少する画像形成の実行時間をtΔ1、画像形成速度を減速する結果、増加する画像形成の実行時間をtΔ2としたとき、時間tsaに時間tΔ2を加算した時間が前記時間tΔ1に等しくなるように、前記速い速度と遅い速度を設定するとしても良い。
また、前記速度変更手段は、全てのジョブに対する画像形成速度を変更しても、前記条件を満たさないと判断すると、前記速度変更を禁止するとしても良い。
さらに、前記予測手段は、前記N枚のシートに対する画像形成を実行すればその間に前記画像安定化制御の所定の実行タイミングに至ることを判断する第1判断手段と、前記N枚のシートに対する画像形成を実行すればその間に前記定着部材の予測温度が前記閾値に達することを判断する第2判断手段と、を備え、前記第1判断手段と第2判断手段の両方による判断が行われると、前記予測を行うとしても良い。
ここで、前記予測手段は、前記N枚のシートに対する画像形成を実行すればその間に前記定着部材の予測温度が所定の許容温度以下になることを判断する第3判断手段を備え、前記許容温度は、前記N枚のシートのうち、第1の大きさのシートの幅方向長さをCD1、これの次に画像形成が予定されている第2の大きさのシートの幅方向長さを、前記CD1よりも幅広のCD2としたとき、(CD2−CD1)で表されるCD長の差分の大きさに応じて、当該差分による前記定着部材のシート幅方向における温度差の許容値として予め設定された、前記定着部材の、前記目標温度よりも所定値だけ低い温度であり、前記第3判断手段による判断が行われた場合には、前記第2判断手段による判断が行われてなくても、前記第1判断手段による判断が行われていれば、前記予測を行うとしても良い。
上記のように構成すれば、画像安定化制御とは別々に実行されることが予定されていた枚数制御があたかも画像安定化制御と同時並行されるようになるので、予定されているN枚のシートの画像形成動作を行う間に、画像安定化制御とは別に枚数制御を実行しなくてもよくなり、画像安定化制御の実行タイミングを本来のタイミングから変えることなく、画像安定化制御と枚数制御を別々に実行する構成に比べて、画像形成動作の生産性を向上することが可能になる。
プリンターの全体構成を示す概略図である。 制御部の構成を示すブロック図である。 管理情報の内容を示す図である。 電力制御情報の内容を示す図である。 複数のジョブの間に安定化制御とPPM制御とが時間的にずれて別々に実行されることが予測された場合の第1の例を示すタイミングチャートである。 図5に示す第1の例においてプロセス速度変更処理を実行する場合のタイミングチャートである。 PPM制御の方が安定化制御よりも早く実行されることが予測された場合の第2の例を示すタイミングチャートである。 図7に示す第2の例においてプロセス速度変更処理を実行する場合のタイミングチャートである。 PPM制御パラメータの内容例を示す図である。 制御部が実行するプロセス速度変更要否判断処理の内容を示すフローチャートである。 PPM制御要否予測処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。 CD長に基づくPPM制御要否判断のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。 安定化制御予定判断処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。 プロセス速度変更処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。 複数のジョブを実行する場合のトータルの予測実行時間の、プロセス速度変更処理の有無による違いを比較して示す図である。
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラープリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例にして説明する。
<プリンターの全体構成>
図1は、本実施の形態に係るプリンター1の全体構成を示す概略図である。
同図に示すようにプリンター1は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、画像プロセス部10と、中間転写部20と、給送部30と、定着部40と、制御部50と、IH電源部60を備え、ネットワーク(例えばLAN)を介して外部の端末装置(不図示)からのジョブの実行要求に基づき、カラーの画像形成(プリント)を実行する。
画像プロセス部10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の現像色に対応した作像部10Y、10M、10C、10Kを有する。作像部10Yは、感光体ドラム11Yと、その周囲に配された帯電部12Y、露光部13Y、現像部14Y、クリーナ15Yなどを備えている。
帯電部12Yは、矢印Aで示す方向に回転する感光体ドラム11Yの周面を帯電させる。露光部13は、帯電された感光体ドラム11Yをレーザー光により露光走査して、感光体ドラム11Y上に静電潜像を形成する。
現像部14Yは、感光体ドラム11Y上の静電潜像をY色のトナーで現像する。これにより感光体ドラム11Y上にY色のトナー像が作像され、作像されたY色トナー像は、中間転写部20の中間転写ベルト21上に一次転写される。クリーナ15Yは、感光体ドラム11Y上の残留トナーを清掃する。他の作像部10M〜10Kについても作像部10Yと同様の構成であり、同図では感光体ドラム以外の部材について符号が省略されている。
中間転写部20は、駆動ローラー24と従動ローラー25に張架されて矢印方向に循環走行される中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21を挟んで、感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kと対向配置される一次転写ローラー22Y、22M、22C、22Kと、駆動ローラー24と対向配置される二次転写ローラー23を備える。
給送部30は、シートの一例としての用紙Sを収容する2つのカセット31a、31bと、カセット31a、31bから用紙Sを1枚ずつ搬送路39に繰り出す繰り出しローラー32a、32bと、繰り出された用紙Sを搬送する搬送ローラー33、34を備える。
カセット31a、31bには、相互に異なるサイズ、例えばカセット31aにA4サイズの用紙Sを、カセット31bにB5サイズの用紙Sを収容可能に構成されている。ここで、用紙Sは、縦姿勢と横姿勢のいずれかの搬送姿勢にセットされる。縦姿勢とは、用紙Sの短辺と長辺のうち、長辺が用紙搬送方向に沿った姿勢で用紙Sが搬送される場合の搬送姿勢をいい、横姿勢とは、短辺が用紙搬送方向に沿った姿勢で搬送される場合の搬送姿勢をいう。
定着部40は、電磁誘導加熱方式の定着装置であり、電磁誘導発熱層を有する定着ローラー41と、定着ローラー41を押圧して定着ローラー41との間にニップを確保する加圧ローラー42と、定着ローラー41の電磁誘導発熱層を発熱させるための磁束を発生させる励磁コイル43と、定着温度センサー44を備える。
励磁コイル43は、IH電源部60からの供給電力により磁束を発生させ、IH電源部60は、制御部50から指示された大きさの電力を励磁コイル43に供給する。定着温度センサー44は、定着ローラー41の、軸方向略中央における表面部分の温度を検出し、その検出結果を制御部50に送る。定着ローラー41の軸方向略中央の位置は、用紙Sが通過する通紙領域に含まれるので、以下、定着ローラー通紙部温度を検出するという。
このような構成において、ジョブを実行する場合には、感光体ドラム11Y〜11K上に対応する色のトナー像が作像され、作像されたトナー像それぞれが一次転写ローラー22Y〜22Kの静電作用により中間転写ベルト21上に一次転写される。このY〜Kの各色の作像動作は、各色のトナー像が、走行する中間転写ベルト21の同じ位置に重ね合わせて転写されるように上流側から下流側に向けてタイミングをずらして実行される。
この作像タイミングに合わせて、給送部30からは、給紙カセットから用紙Sが二次転写ローラー23に向けて搬送されて来ており、二次転写ローラー23と中間転写ベルト21の間を用紙Sが通過する際に、中間転写ベルト21上に一次転写された各色トナー像が2次転写ローラー23の静電作用により用紙Sに一括して二次転写される。
各色トナー像が二次転写された後の用紙Sは、定着部40まで搬送され、定着部40の定着ローラー41と加圧ローラー42間のニップを通過する際に加熱、加圧されることにより、その表面のトナーが用紙Sの表面に融着して定着される。定着部40を通過した用紙Sは、排紙ローラー35によって排紙トレイ36上に排出(出力)される。以下、用紙Sに画像を形成して用紙Sを出力することを、プリントという。
感光体ドラム11Y〜11K、中間転写ベルト21、定着ローラー41などの各回転部材は、プロセスモーター18を駆動源にその動力より回転駆動される。プロセスモーター18の回転速度は、後述のプロセス速度変更処理において、基準(システム)速度と、基準速度よりも速い高速と、遅い低速のいずれかに切り替えられるようになっている。
プロセスモーター18の回転速度が変わると、画像形成時の感光体ドラム11Y〜11Kと中間転写ベルト21などの周速や用紙Sの搬送速度が変わる。
感光体ドラム11Y〜11Kの周速、中間転写ベルト21の周速、用紙Sの搬送速度は、同速の関係にあるので、これをプロセス速度(画像形成速度)とすると、プロセスモーター18の回転速度を変えることにより、プロセス速度が変わって、単位時間当たりにプリント可能な用紙枚数も変わることになる。
装置本体の正面側かつ上側であり、ユーザーの操作し易い位置には、操作部70が配されている。操作部70は、カセット31a、31bに収容される用紙Sのサイズ(A4やB5など)、種類(普通紙、薄紙など)、搬送姿勢(縦と横)の設定入力をユーザーから受け付けるタッチパネル式の液晶表示部などを備えており、受け付けたサイズなどの情報を制御部50に送る。
また、装置本体の内部であり、定着部40の周辺には、本体内部の温度を検出する機内温度センサー71と、本体内部の湿度を検出する機内湿度センサー72が配されている。これらのセンサーの温度、湿度の検出結果は、制御部50に送られる。
<制御部の構成>
図2は、制御部50の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、制御部50は、I/F部101と、全体制御部102と、ジョブ管理テーブル103と、安定化制御部104と、安定化実行予測部105と、定着温調制御部106と、電力制御情報テーブル107と、PPM制御部108と、PPM実行予測部109と、PPM制御テーブル110と、プロセス速度変更部111と、記憶部112などを備える。
I/F(インターフェース)部101は、ネットワークを介して外部の端末装置からジョブのデータを受け付けて、そのデータを記憶部112に格納させる。ジョブのデータには、画像形成に供されるプリントデータの他、プリントすべき用紙の枚数やサイズ、用紙種類などジョブを要求したユーザーにより指定されたジョブ情報が含まれる。用紙種類には、普通紙、薄紙、厚紙などが含まれる。
全体制御部102は、記憶部112に格納されているジョブのデータに基づき、作像部10や中間転写部20などの各部を制御して円滑な画像形成動作を実行させる。また、ジョブが受け付けられるごとに、そのジョブを管理するための管理情報1031をジョブ管理テーブル103に書き込む。
<管理情報>
図3は、管理情報1031の内容を示す図である。
同図に示すように管理情報1031は、ジョブごとに、ジョブ番号(No)、ジョブ名、プリント枚数、用紙サイズ、用紙種類、搬送姿勢の各情報が対応付けられてなる。
ジョブ番号(No)は、ジョブの受付順を示し、番号が大きくなるに連れて、受付時刻が遅いジョブを示しており、受付順が早いものから順に各ジョブが実行される。1つのジョブが新たに受け付けられると、最も受付順が遅いジョブの次の番号が採番されて、そのジョブの管理情報が追加され、1つのジョブが終了すると、終了した旨を示す終了情報(不図示)が書き込まれることにより、管理情報が更新される。終了情報の有無を参照することにより、どのジョブが未実行であり、終了済であるか、また終了済のジョブの内、直前に実行されたジョブがどのようなジョブ(プリント枚数や用紙サイズなど)であったかを知ることができるようになっている。
ジョブ名は、ジョブを識別するための任意の情報であり、プリント枚数、用紙サイズ、用紙種類は、受け付けたジョブのデータに含まれるジョブ情報で示される用紙の枚数とサイズ、用紙種類である。
搬送姿勢は、用紙サイズ欄に示されている用紙が搬送される場合に、縦と横のいずれの搬送姿勢になるかを示している。用紙サイズ欄に示されている用紙Sが縦姿勢と横姿勢のいずれの搬送姿勢でカセットにセットされているかを、ユーザーによる操作部70の設定から取得して、その取得した情報が搬送姿勢欄に書き込まれるようになっている。
ジョブ管理テーブル103を参照すれば、その参照時点以降に実行が予定されているジョブがどれだけ存在しており、ジョブごとにプリント枚数などを知ることができる。
ジョブ実行の際には、ジョブごとに、ジョブ管理テーブル103に書き込まれている用紙サイズ、用紙種類、搬送姿勢が参照され、カセット31a、31bのうち、参照された用紙サイズ、用紙種類、搬送姿勢に対応する用紙Sが収容されているカセットから用紙Sが給送される。
<安定化制御>
図2に戻って、安定化制御部104は、所定の実行タイミングになると、形成画像の画質を安定化、具体的には一定レベル以上に維持するための画像安定化制御(以下、「安定化制御」と略す。)を実行する。安定化制御には、いわゆるレジスト補正やγ補正などがある。例えば、レジスト補正は、次のようにして実行される。
すなわち、(a)感光体ドラム11Y〜11K上に所定形状の各色のトナーパターンを形成し、形成された各色のトナーパターンを中間転写ベルト21に一次転写して、中間転写ベルト21上の各色のトナーパターンを光学センサー(不図示)で検出する。
(b)光学センサーによる検出結果から、特定の色、例えばK色のトナーパターンに対する他の色、例えばY色のトナーパターンの副走査方向の間隔を求め、求めた間隔の、基準値とのずれ量を求める。このずれ量がK色に対するY色の、感光体ドラム11Yへの画像書き込みタイミングのずれ量になる。
(c)基準値とのずれ量がなくなるように、画像形成条件、ここではK色に対するY色の画像書き込み(露光開始)タイミングを補正する。他のM、C色についても同様の方法で画像書き込みタイミングが補正される。
γ補正は、入力画像の階調値(256階調など)と実際の出力画像の階調値との相対関係を調整するものであり、次のようにして実行される。
すなわち、(a)作像部10Y〜10Kごとに、感光体ドラム上に複数の異なる階調のトナーパターンを形成し、形成されたトナーパターンそれぞれの濃度を光学センサー(不図示)により検出する。
(b)検出されたトナーパターンのそれぞれについて、目標濃度とのずれ量を求める。
(c)階調値ごとに、目標値とのずれ量がなくなるように、画像形成条件、ここでは露光量を補正する。
安定化制御は、累積プリント枚数Psが所定枚数Pc(例えば、1000枚など)の倍数に達するごとに、実行中のジョブを一時中断して実行される。累積プリント枚数Psは、制御部50により管理されている。
安定化制御に要する時間は、予め決まっており、例えばレジスト補正であれば、時間Tr1、γ補正であれば、時間Tr2などになっている。安定化制御が終了すると、ジョブの一時中断が解除されて、中断されていたジョブが再開される。
安定化実行予測部105は、予定されている全てのジョブを実行したとするならば、そのジョブ実行中に安定化制御の実行タイミングに至ることにより安定化制御が実行されることになるか否かを予測する。この予測は、次の方法で実行される。
すなわち、所定枚数Pcの倍数のうち、累積プリント枚数Psよりも大きく、最もPsに近い値を安定化予定枚数Pb(例えば、2000枚)とする。
そして、実行順序の早いジョブから順にJ1、J2、J3・・として、J1のプリント枚数(例えば、30枚)を、現在の累積プリント枚数Ps(例えば、1950枚)に加算した値を枚数P(例えば、1980枚)とする。
P≧Pbであれば、J1の実行中に安定化制御の実行タイミングに至るが、P<Pbであれば、至らないと判断する。上記例では、P=1980枚、Pb=2000枚なので、至らないことになる。
次に、J2のプリント枚数(例えば、50枚)を、現在の枚数P(上記の例では1980枚)に加算した値を、新たな枚数P(例えば、2030枚)として、再度、P≧Pbであるか否かを判断する。上記例では、P=2030枚、Pb=2000枚なので、P≧Pbの条件を満たし、J2の実行途中に安定化制御の実行タイミングに至ると予測される。
仮に、P≧Pbの条件を満たさなければ、次のJ3について、J2と同様の方法で枚数Pを求めて、P≧Pbの条件を満たすか否かを判断する。P≧Pbの条件を満たすまで、予定されている残りの全てのジョブについて同様の判断を行う。
全てのジョブについて同様の判断を繰り返しても、P≧Pbの条件が満たされなければ、予定されている全てのジョブを順次実行してもその途中で安定化制御が実行されることはないと予測される。
なお、安定化制御の実行タイミングは、累積プリント枚数に限られない。
例えば、周辺環境、具体的には装置内または装置周辺の温度または湿度の過去の推移を検出しておき、予定されているジョブを実行するとしたならば、その過去の推移に基づきそのジョブの実行途中や終了時または開始時に、その温度又は湿度が上限または下限に達すると予測される場合に、安定化制御の実行タイミングに至ると予測する構成をとることもできる。周辺環境の変化に応じて安定化制御を実行する構成に適用することができる。
<定着温調制御>
定着温調制御部106は、定着ローラー通紙部温度が目標温度(定着に最適な温度)Tmで安定するように、IH電源部60に対して励磁コイル43への供給電力を指示する定着温調制御を実行する。
具体的には、(a)定着温度センサー44により検出される定着ローラー通紙部温度Tが目標温度Tmよりも低ければ、励磁コイル43への電力供給をIH電源部60に指示する。このときの供給電力値は、電力制御情報テーブル107が参照されることにより決められる。これにより、IH電源部60から励磁コイル43に電力が供給されて(オン)、定着ローラー通紙部温度が昇温する。
(b)定着ローラー通紙部温度Tが目標温度Tm以上であれば、IH電源部60に電力供給の中止を指示する。これにより、IH電源部60から励磁コイル43への電力供給が遮断(オフ)されて、定着ローラー通紙部温度の昇温が停止し、やがて下降に転じる。
励磁コイル43への電力供給と遮断を繰り返すことにより、定着ローラー通紙部温度を目標温度Tmの近辺で安定させることができる。なお、定着温調制御の方法は、上記のオン、オフに限られない。定着ローラー通紙部温度が目標温度Tmを中心にこれよりも高い上限と低い下限との間の範囲内に入るようになれば、他の方法を用いるとしても良い。
電力制御情報テーブル107は、励磁コイル43への供給電力の大きさを示す電力制御情報が書き込まれているテーブルである。
<電力制御情報>
図4は、電力制御情報1071の内容を示す図である。
同図に示すように電力制御情報1071は、電力供給時期と供給電力とが対応付けされた情報である。
電力供給時期は、励磁コイル43に電力供給を行う時期を示しており、通常と安定化制御とが含まれている。通常時とは、ジョブ、PPM制御(後述)などの実行時であり、安定化制御時は、上記の安定化制御の実行時である。
通常時の励磁コイル43への供給電力は、Waになっている。電力値Waは、電源からの供給電力のうち、励磁コイル43に供給可能な最大値またはこれに近い電力値である。
一方、安定制御時の供給電力は、安定化制御時の開始時において定着ローラー通紙部温度Tが、目標温度Tmよりも所定値だけ低い温度として予め決められた閾値Tzよりも高い場合には、Wb(<Wa)であり、定着ローラー通紙部温度Tが閾値Tz以下の場合には、Waになっている。
ここで、閾値Tzは、これ以下に定着ローラー通紙部温度が落ち込むと、定着性に支障が生じるおそれのある温度であり、PPM制御の開始条件とされる温度値である。
電力値Wbは、Waよりも大幅に小さく、安定化制御の実行中に定着ローラー通紙部温度が低下することのないように、少しの温度上昇率で上昇する程度の電力値である。目標温度Tm、閾値Tz、電力値Wa、Wbは、予め実験などにより決められている。
安定化制御の開始時に定着ローラー通紙部温度Tが閾値Tz以下であるか否かにより、励磁コイル43への供給電力をWaと、これよりも大幅に小さいWbのいずれかに切り替えるのは、次の理由による。
すなわち、安定化制御は、ジョブが中断されているので、用紙Sに画像を熱定着する必要がなく、電力値Waのような大きさの電力を供給する必要がない。
一方で、励磁コイル43への供給電力を遮断してしまうと、安定化制御の次に予定されているジョブの開始時までに安定化制御の実行中に定着ローラー通紙部温度が低温まで下がってしまい、ジョブ中断が解除されてから目標温度Tmまで復帰するのに時間がかかり、ジョブの再開が遅れて生産性が低下することになりかねない。このことは、定着ローラー通紙部温度が閾値Tz以下まで低下している場合には、特に顕著になる。
そこで、定着ローラー通紙部温度T>閾値Tzの場合、最低限必要になると想定される電力Wbを励磁コイル43に供給すれば、消費電力を抑制しつつ、安定化制御の実行中に定着ローラー通紙部温度を低下させないようにしてジョブの生産性の低下を防止することができるようになる。
一方、定着ローラー通紙温度T≦閾値Tzの場合、電力値がWb程度の小さなままであれば、定着ローラー通紙部温度の昇温に時間を要するので、消費電力よりもジョブの生産性の方を優先して、励磁コイル43への供給電力をWaにすることにより、定着ローラー通紙部温度をできるだけ早く昇温させることができるからである。
<PPM制御>
図2に戻って、PPM制御部108は、ジョブ実行中に、定着ローラー通紙部温度が閾値Tzまで低下すると、PPM制御、すなわち単位時間当たりのプリント枚数(シート枚数)を減少させる枚数制御(通紙間隔制御)を開始する。
ここでは、一時的にジョブを中断し、その中断の間に定着ローラー通紙部温度が上昇すると、中断を解除して、ジョブを再開させる。
ジョブ実行中に定着ローラー通紙部温度が閾値Tzまで低下するのは、定着ローラー41の熱が、連続搬送される多数枚の用紙Sに奪われることにより、励磁コイル43による定着ローラー41の加熱が追い付かなくなったことによる。
ジョブの一時中断により、定着ローラー41の熱が、搬送される用紙Sに奪われることがなくなり、かつ、定着温調制御により、ジョブが一時中断されても励磁コイル43に電力Waが供給され続けるので、定着ローラー41の加熱により定着ローラー温度を昇温させることができる。
PPM制御が開始されると、一定時間の中断、ジョブの実行、一定時間の中断、次のジョブの実行というように、ジョブとジョブの間に中断時間を介在させて定着ローラー通紙部温度を上昇に転じさせ、ジョブ実行と中断とを繰り返している間に所定の温度、例えば目標温度Tmまで昇温すると、PPM制御が解除されるようになっている。
PPM制御が開始されると、ジョブの一時中断が介在するようになるので、ジョブの生産性が低下することになる。なお、PPM制御の方法は、これに限られない。
例えば、ジョブを中断せずに、搬送する複数枚の用紙Sにおけるn枚目と(n+1)枚目の給送間隔(通紙間隔)をPPM制御開始前よりも広げる制御を行うとしても良い。
また、一時中断を、一定時間ではなく、定着ローラー通紙部温度が所定温度、例えば目標温度Tmに達するまでの間に亘って継続し、所定温度まで昇温すると、一時中断を解除して(PPM制御の解除に相当)、中断していたジョブを再開する方法をとることもできる。この場合、1回の中断時間が、上記の一定時間よりも長くなることが想定されるが、中断回数を1回に限ることができる。
PPM実行予測部109は、予定されているジョブを実行したとするならば、そのジョブ実行中に、PPM制御の開始タイミングに至るか否か、すなわち定着ローラー通紙部温度が閾値Tzまで低下することになるか否かを予測する。この予測は、プリント枚数、用紙サイズ、用紙種類などに基づき、定着ローラー通紙部温度がジョブ終了後に何度まで低下しているかを計算することにより行われるが、具体的な方法については、後述する。
<安定化制御とPPM制御のタイミングチャート(第1の例)>
図5は、予定されている複数のジョブの間に安定化制御とPPM制御とが時間的にずれて別々に実行されることが予測された場合の第1の例を示すタイミングチャートであり、(a)は、実行予定のジョブ名(ジョブ1〜5)を示し、(b)は、定着ローラー通紙部温度の推移予測を示し、(c)は、プロセス速度を示している。
図5(a)から判るように、第1の例は、ジョブ1〜5がこの順に実行される予定の場合に、ジョブ3の終了時に安定化制御の実行タイミングに至ることから、ジョブを一時中断してジョブ3と4の間に安定化制御が割り込み、ジョブ4の終わりに定着ローラー通紙部温度が閾値Tzまで低下することから、次のジョブ5がPPM制御の対象になり、ジョブを一時中断した後、ジョブ5が開始される例を示している。
なお、図5(c)に示すようにプロセス速度は、基準速度Vsで一定になっており、プロセス速度が変更されない場合の例を示している。
この第1の例では、定着ローラー通紙部温度の推移予測は、次のようになる。
すなわち、図5(b)に示すように定着ローラー通紙部温度は、ジョブ1からジョブ3にかけて低下していくが、ジョブ3の終了時(時点ta)では、PPM制御の開始条件である閾値Tzには至っておらず、ジョブ3の終了を契機に安定化制御が開始される。
安定化制御の実行中には、ジョブが一時中断され、かつ、上記の定着温調制御により、定着ローラー通紙部温度T>Tzの場合、励磁コイル43にWb(図4)の電力が供給されるので、定着ローラー通紙部温度は、低下から上昇に転じる。なお、電力値Wbは、通常時のWaよりも小さいので、図5(b)の時点ta〜tb間に示すように温度上昇率(勾配)は、極めて小さくなる。
安定化制御が終了すると(時点tb)、ジョブの一時中断が解除され、ジョブ4が開始される。定着ローラー通紙部温度は、安定化制御の間に上昇したが、ジョブ4が開始されると、再度、低下に転じ、ジョブ4の終了時(時点tc)で閾値Tzに達する。
これにより時点tcでPPM制御が開始される。PPM制御の実行中には、ジョブが一時中断しつつ、定着温調制御により励磁コイル43にWaの電力が供給されるので、用紙Sに熱が奪われない分、ジョブ実行中よりも定着ローラー41に供給される単位時間当たりの熱量が多くなって、定着ローラー通紙部温度が上昇に転じる。
PPM制御によるジョブ中断が終了すると(時点td)、ジョブ5が開始される。定着ローラー通紙部温度は、ジョブ5が開始されると、再度、低下に転じ、徐々に低下する。
なお、図5(b)において、定着ローラー通紙部温度の推移を、安定化制御の実行中とPPM制御の実行中を比較すると、PPM制御の実行中の方が安定化制御の実行中よりも単位時間当たりに上昇する温度の大きさ(温度上昇率)が大きい。
これは、定着温調制御において、PPM制御時を含む通常時には、励磁コイル43への供給電力がWaであるのに対して、時点taでは、定着ローラー通紙部温度T>Tzのために、励磁コイル43への供給電力がWaよりも小さいWbに落とされるからである。
このように第1の例ではジョブ1〜5までの間に、ジョブの中断が2回発生することが予測されたことになり、このままジョブ1〜5を実行すれば、その予測通り、2回のジョブ中断により、単位時間当たりに実行できるプリント枚数(プリントの生産性)が低下することになる。
PPM制御は、ジョブ実行中に定着ローラー通紙部温度が閾値Tzまで低下することを開始条件としているので、この開始条件が満たされないようにすれば、ジョブ4と5の間にPPM制御が入ることを防止できることになる。
つまり、ジョブ4と5の実行中に定着ローラー通紙部温度が閾値Tzまで低下しなければ良いことになるが、定着ローラー通紙部温度は、ジョブ実行中に低下し続ける状態になっている。このことからすれば、ジョブ4の開始時、すなわち安定化制御の終了時である時点tbでの定着ローラー通紙部温度が、図5に示す温度よりも高くなっていれば、ジョブ4と5の実行中に定着ローラー通紙部温度が低下し続けても、閾値Tzまで低下することを防ぐことができるはずである。
時点tbでの定着ローラー通紙部温度をより高い温度にするには、安定化制御の実行中に定着ローラー通紙部温度をできるだけ上昇させておけば良く、定着ローラー通紙部温度をできるだけ上昇させるには、励磁コイル43への供給電力が、消費電力を抑制するための電力値Wbから、これよりも大きい電力値Waに切り替えられるようにすれば良い。
安定化制御時に、励磁コイル43への供給電力がWaに切り替えられるようにするには、図4から、安定化制御開始時に、定着ローラー通紙部温度≦閾値Tzの条件が満たされる、すなわちPPM制御の開始条件が満たされるようになれば良い。
安定化制御開始時にPPM制御の開始条件が満たされるようにするには、安定化制御よりも前に予定されているジョブ、図5の例ではジョブ3などの実行中に、定着ローラー通紙部温度の低下率(勾配)がより大きくなることにより、安定化制御の開始時(時点ta)に、定着ローラー通紙部温度が丁度、閾値Tzに達するようになれば良い。
定着ローラー通紙部温度の低下率をより大きくするには、定着ローラー41から単位時間当たりに用紙Sに奪われる熱量がより多くなれば良く、その単位時間当たりの熱量をより多くするには、単位時間当たりに定着ローラー41を通過する用紙Sの枚数をより多くすれば良い。
単位時間当たりに定着ローラー41を通過する用紙Sの枚数をより多くするには、プロセス速度を通常の基準よりも高速にすれば良い。
そこで、本実施の形態では、安定化制御の実行タイミング(ジョブ3と4の間)を本来のタイミングから変えずに、安定化制御の開始時(時点ta)に定着ローラー通紙部温度が閾値Tzまで低下する、すなわちPPM制御の開始条件が満たされることにより、安定化制御の実行中に励磁コイル43に電力Waが供給されるように、安定化制御の前に予定されているジョブ1〜3に対するプロセス速度を可変制御するようにしている。このプロセス速度を可変制御することをプロセス速度変更処理という。
図6は、図5に示す第1の例においてプロセス速度変更処理を実行する場合のタイミングチャートであり、(a)は、実行予定のジョブ名を示し、(b)は、定着ローラー通紙部温度の推移予測を示し、(c)は、プロセス速度を示している。
図6(a)に示すように、プロセス速度変更処理を実行するとした場合、これを実行しない図5に示すスケジュールに対して、ジョブ3と4の間に安定化制御が割り込まれていることは変わらないが、ジョブ4と5の間にPPM制御が実行されないスケジュールに変わっていることが判る。
定着ローラー通紙部温度の推移予測を見ると、図6(b)に示すようにジョブ1〜3の実行中に低下しているが、温度低下率(温度勾配)は、ジョブ1と2よりもジョブ3の方が大きくなっている。これは、次の理由による。
すなわち、図6(c)に示すようにジョブ3の実行中に限り、プロセス速度が基準速度Vsよりも速い第1速度Vaに上げる制御が実行される。ジョブ実行中のプロセス速度が高速になるほど、単位時間当たりの用紙Sの搬送枚数が増えて、定着ローラー41を用紙Sが通過する際に、定着ローラー41の熱の、用紙Sに奪われる単位時間当たりの量も増えるので、ジョブ1と2よりもプロセス速度の速いジョブ3の方が、定着ローラー通紙部温度の低下率が大きくなるからである。
なお、プロセス速度が基準速度Vsから変更されるということは、その速度変更の大きさに応じて、感光体ドラム11Y〜11Kへの露光による画像書き込みタイミングなどが基準速度Vsの場合に対して変更されることになる。
プロセス速度の高速化により、図6(b)に示すように、ジョブ3の終了時である時点tfに定着ローラー通紙部温度が閾値Tzに至っている。
時点tfは、ジョブ3の終了時であるが安定化制御の開始タイミングでもあり、同時にPPM制御の開始条件を満たす時点にも相当する。
時点tfで安定化制御が開始されることによりジョブ実行が一時中断されるが、安定化制御の実行中に、同時並行して定着ローラー通紙部温度が昇温される。この昇温時の温度上昇率(温度勾配)は、図5のPPM制御時の上昇率に等しい。
なぜなら、昇温開始時における定着ローラー通紙部温度が、図5のPPM制御の場合も、図6の安定化制御の場合も同じ閾値Tzであり、ジョブの一時中断により用紙Sが定着ローラー41を通過していない状態も同じであり、かつ励磁コイル43への供給電力も同じWaとされるからである。
安定化制御の実行中に定着ローラー通紙部温度が昇温し、安定化制御が終了すると(時点tg)、ジョブ実行の一時中断が解除されて、ジョブ4が開始される。ジョブ4の実行中に定着ローラー通紙部温度が低下に転じるが、ジョブ4の終了時である時点thでは、閾値Tzに至らず、PPM制御の開始条件が満たされない。従って、ジョブ4と5の間にPPM制御が入ることが生ぜず、ジョブ4と5が連続実行されることになる。
図6に示すスケジュールでジョブ1〜5と安定化制御を実行するには、ジョブ3の終了時である時点tfにPPM制御の開始条件を満たす、すなわち定着ローラー通紙部温度が閾値Tzまで低下する時期をジョブ3の終了時に同期させることが条件になる。
この条件を満たすために、安定化制御よりも前に実行が予定されているジョブ、ここではジョブ3のプロセス速度を第1速度Vaに変更するが、ジョブ3の終了時に定着ローラー通紙部温度が閾値Tzまで低下することになるように、ジョブ3の開始前に第1速度Vaの大きさを決定しておく必要が生じる。
この第1速度Vaの決定は、プロセス速度変更処理において、プリント枚数、用紙サイズ、用紙種類などに基づき、プロセス速度をどの値にすれば、定着ローラー通紙部温度が閾値Tzまで低下する時期とジョブ3の終了時とが同期するようになるかを計算することにより行われる。
図6(b)に示すようにジョブ3のプロセス速度を高速化することによりジョブ3の実行に要する時間が短縮されるので、その短縮の分、安定化制御の開始タイミングtfが、図5に示す時点taよりも早くなる。図6(b)に示す時点tfとtaの差分αが、この短縮される時間に相当する。これにより、ジョブ1〜5を実行する場合のトータルの時間は、プロセス速度変更処理を実行すれば、その時間αだけ短縮される。
すなわち、PPM制御の開始タイミングがあたかも安定化制御まで繰り上がったようになることで、安定化制御の後に予定されているジョブ4と5の間に、元々予測されていたPPM制御が実行されなくなるようにすることができ、ジョブの中断を1回に減らしつつ、上記時間αの短縮により、プリントの生産性を向上することができる。
上記の第1の例では、安定化制御の方がPPM制御よりも早く実行されることが予測された場合であったが、この順が逆になる第2の例の場合を図7と図8を用いて説明する。
<安定化制御とPPM制御のタイミングチャート(第2の例)>
図7は、PPM制御の方が安定化制御よりも早く実行されることが予測された場合の第2の例を示すタイミングチャートであり、(a)は、実行予定のジョブ名(ジョブ1〜6)を示し、(b)は、定着ローラー通紙部温度の推移予測を示し、(c)は、プロセス速度を示している。
図7(a)に示すようにジョブ4と5がPPM制御の対象になり、ジョブ5と6との間に安定化制御が割り込むスケジュールになっている。
図7(b)に示すように、定着ローラー通紙部温度の推移予測は、次のようになる。
すなわち、定着ローラー通紙部温度は、ジョブ3の実行中(時点ta〜tb間)に低下し、ジョブ3の終了時(時点tb)に閾値Tzに至り、PPM制御の開始によりジョブが一時中断されると上昇に転じ、一時中断が終了すると(時点tc)、中断の解除により開始されるジョブ4の実行に伴って低下していく。
そして、定着ローラー通紙部温度は、ジョブ4の終了時(時点td)にまだ目標温度Tmに達していないことから、PPM制御の継続によりジョブの一時中断が入ると、その間(時点td〜te間)に上昇に転じ、目標温度Tmに達することにより一時中断が終了すると(時点te)、中断の解除により開始されるジョブ5の実行に伴って低下していく。
ジョブ5の終了により(時点tf)、安定化制御のためにジョブが一時中断されると、定着ローラー通紙部温度は、上昇に転じる。ここでは、安定化制御の実行中に定着ローラー通紙部温度が目標温度Tmまで昇温することによりPPM制御が解除される例になっている。安定化制御が終了すると(時点tg)、中断の解除によりジョブ6が開始され、定着ローラー通紙部温度は、ジョブ6の実行に伴って低下していく。なお、プロセス速度は、図7(c)に示すように基準速度Vsで一定になっている。
この第2の例でも、図5に示す第1の例と同様に、PPM制御と安定化制御とが別々に時間的にずれて実行されるので、それだけプリントの生産性が低下することになる。
第2の例のようにPPM制御と安定化制御がこの順で実行される場合でも、第1の例と同様に、安定化制御の開始時(時点tf)に、定着ローラー通紙部温度が閾値Tzに達する、すなわちPPM制御の開始条件を満たすように、安定化制御の前に実行予定のジョブ(ここでは、ジョブ3〜5など)に対するプロセス速度を可変制御すれば、予測されたPPM制御が実行されなくなり、プリントの生産性の低下を防止できるはずである。
図8は、図7に示す第2の例においてプロセス速度変更制御を実行する場合のタイミングチャートであり、(a)は、実行予定のジョブ名を示し、(b)は、定着ローラー通紙部温度の推移予測を示し、(c)は、プロセス速度を示している。
図8(a)に示すようにプロセス速度変更制御を実行するとした場合、これを実行しない例である図7(a)に示すスケジュールに対して、ジョブ5と6の間に安定化制御が割り込まれていることは変わらないが、ジョブ3と4、ジョブ4と5の間にPPM制御による中断が行われないスケジュールに変わっていることが判る。
定着ローラー通紙部温度の推移予測を見ると、図8(b)に示すようにジョブ3〜4の実行中に低下しているが、その温度低下率は、ジョブ1と2に比べると、かなり緩やかになっている。これは、図8(c)に示すようにジョブ3と4の実行中には、プロセス速度が基準速度Vsよりも遅い第2速度Vbに下げる制御が実行されることによる。
ジョブ実行中のプロセス速度が低速になるほど、単位時間当たりの用紙Sの搬送枚数が減って、用紙Sが定着ローラー41を通過する際に、定着ローラー41の熱の、その用紙Sに奪われる単位時間当たりの量が減るので、ジョブ1と2よりもプロセス速度の遅いジョブ3と4の方が、定着ローラー通紙部温度の低下率が小さくなったものである。
ジョブ5については、定着ローラー通紙部温度の低下率が、ジョブ1と2に比べると大幅に大きくなっている。これは、図8(c)に示すようにジョブ5の実行中には、プロセス速度が基準速度Vsよりも速い第1速度Vaに上げる制御が実行されることによる。
このようにジョブ単位でプロセス速度を基準速度Vsよりも速い第1速度Vaと遅い第2速度Vbのいずれかに変更しているのは、ジョブ5の終了時(時点tk)と、定着ローラー通紙部温度が閾値Tzに達するタイミングを同期させるためである。
第2の例では、PPM制御の方が安定化制御よりも先の実行が予測されており、先のPPM制御を不実施にするには、PPM制御の開始条件を満たすタイミング、すなわち定着ローラー通紙部温度が閾値Tzに達するタイミングを、後の安定化制御の開始タイミングまで遅らせる必要がある。
このタイミングを遅らせるには、安定化制御の前に実行予定のジョブ、ここでは1〜5のいずれかについてプロセス速度を低速化すれば良いが、低速化すると、温度低下率が小さくなるので、定着ローラー通紙部温度の推移は、閾値Tzとの温度差があまりない状態で時間経過に連れて閾値Tzに徐々に近づいて閾値Tzに達するという下降線を描く状態になり易い。この状態では、閾値Tzに達する直前で、定着ローラー通紙部温度が変動により閾値Tzを下回ってしまうと、予測よりも早くPPM制御の開始条件を満たしたことになり、PPM制御の開始条件を満たすタイミングがばらつき易くなる。
このことは安定化制御の直前のジョブ5に対する定着ローラー通紙部温度の温度低下率が小さいことに起因するので、これを避けるために、図8の例では、ジョブ3と4のプロセス速度を低速にして定着ローラー通紙部温度の低下率を小さくし、安定化制御の直前のジョブ5に対してはプロセス速度を高速化して温度低下率を大きくするようにしている。
なお、ジョブ3と4のプロセス速度である第2速度Vbを遅くしすぎると、プロセス速度変更処理を実行しない場合よりも、プリントの生産性が低下することになるので、第2速度Vbは、生産性を低下させることのない範囲でプロセス速度変更処理において決定されることが望ましい。
図8の例では、ジョブ3の開始時(時点ta)からジョブ5の開始時(時点tj)までの時間tpが、図7(b)においてジョブ3の開始時(時点ta)からジョブ5の開始時(時点te)までの時間tpと同じになっている。これにより、ジョブ5のプロセス速度の高速化でジョブ5の実行に要する時間が短縮される分、安定化制御の開始タイミング(時点tk)が、図7(b)に示す時点tfよりも早くなる。図8(b)に示す時点tkとtfの差分βが、その短縮される時間に相当する。
第2の例の場合でも、ジョブ1〜6を実行する場合のトータルの時間が時間βだけ短縮されることになり、プリントの生産性を向上することができる。
なお、図5〜図8では、連続するジョブとジョブの区切りでPPM制御と安定化制御とが割り込むようになる予測例を説明したが、ジョブの途中で割り込むようになる場合もあり得る。この場合、PPM制御については、割り込んだジョブの残りの枚数に対する画像形成動作をPPM制御の対象とする構成をとることができる。場合によっては、PPM制御の開始条件を満たしてもジョブ実行途中であればそのジョブについてはPPM制御の対象とせずに、次のジョブをPPM制御の対象とする構成をとることも可能である。
図2に戻って、PPM制御テーブル110は、PPM制御の実行予測を行う際に用いるPPM制御パラメータが書き込まれているテーブルである。
図9は、PPM制御パラメータの内容例を示す図であり、(a)は、用紙種類情報121、(b)は、用紙CD情報122、(c)は、用紙FD情報123、(d)は、プロセス速度情報124、(e)は、温湿度情報125、(f)は、環境ステップ情報126、(g)は、定着ローラーの温まり具合情報127、(h)は、CD長/温度差許容値対応情報128を示しており、これらの情報がPPM制御パラメータに含まれている。PPM制御パラメータをPPM制御の実行予測にどのように用いるかについては、後述する。
図2に戻り、プロセス速度変更部111は、プロセス速度の変更要否を判断するプロセス速度変更要否判断処理により、変更が必要と判断されると、プロセス速度変更処理、すなわち安定化制御よりも前に予定されているジョブのプロセス速度を、基準速度Vs、これよりも高速である第1速度Va、低速である第2速度Vbのいずれかに変更する。
なお、制御部50は、内部タイマー(不図示)を備えており、各種計時、例えばウォームアップ終了からの経過時間txなどを計時する。ウォームアップは、自装置への電源投入や電源スイッチのオンなどを契機に開始され、定着ローラー41を加熱して定着ローラー通紙部温度が昇温により目標温度Tmに達すると、プリント可能な状態(レディ状態)に遷移する準備動作である。ウォームアップ終了からの経過時間txは、ここでは、定着ローラー通紙部温度が目標温度Tmに達してからの経過時間である。なお、ウォームアップは、電源スイッチのオンなどを契機に開始する構成に限られず、例えば、ジャム(紙詰まり)やトラブルからの復帰時などを契機に開始するなどとしても良い。
<制御部による処理内容>
図10は、制御部50が実行するプロセス速度変更要否判断処理の内容を示すフローチャートであり、当該処理は、新たなジョブを受け付けるごとに実行される。
同図に示すように、PPM制御要否予測処理を実行する(ステップS1)。PPM制御要否予測処理は、現に予定されている複数のジョブを実行するとしたならば、その間にPPM制御の開始条件が満たされるか否かを判断する処理である。
PPM制御の開始条件が満たされることが判断されると(ステップS2で「YES」)、次に安定化制御予定判断処理を実行する(ステップS3)。安定化制御予定判断処理は、予定されている複数のジョブを実行するとしたならば、その間に安定化制御の実行時期に達するか否かを判断する処理である。
安定化制御の実行時期に達することが判断されると(ステップS4で「YES」)、プロセス速度変更処理を実行して(ステップS5)、プロセス速度変更要否判断処理を終了する。この場合、当該処理以降に実行されるジョブが順次、変更されたプロセス速度で実行される。
一方、PPM制御の開始条件を満たさないことが判断されると(ステップS2で「NO」)、プロセス速度変更処理をスキップして(実行せずに)、プロセス速度変更要否判断処理を終了する。また、安定化制御の実行時期に達しないことが判断されると(ステップS4で「NO」)、プロセス速度変更処理をスキップして、プロセス速度変更要否判断処理を終了する。これらの場合、プロセス速度が変更されることはなく、当該処理以降に実行されるジョブが順次、基準速度Vsで実行される。
<PPM制御要否予測処理の内容>
図11は、PPM制御要否予測処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。同図に示すようにPPM制御パラメータを取得する(ステップS11)。PPM制御パラメータの取得は、PPM制御テーブル110を参照することにより行われる。
<1.係数設定>
取得したPPM制御パラメータに基づき、次の係数C1〜C6を設定する(ステップS12〜S17)。これらの係数C1〜C6は、後述のステップS18〜S20における温度予測に用いられる。
まず、用紙種類係数C1を設定する(ステップS12)。すなわち、予定されているジョブにより用いられる用紙Sの用紙種類をジョブ管理テーブル103から取得し、取得した用紙種類に対応する係数を、図9(a)に示す用紙種類情報121から読み出して、読み出した係数を用紙種類係数C1に設定する。
例えば、用紙種類が普通紙の場合、用紙種類情報121を参照すると、普通紙に対応する係数が1になっているので、用紙種類係数C1は、1に設定される。また、薄紙であれば、用紙種類係数C1は、0.9に設定され、厚紙であれば、厚みによって、用紙種類係数C1が1よりも大きな値に設定される。複数のジョブがある場合には、ジョブごとに用紙種類係数C1が設定される。このことは、係数C2、C3について同様である。
このように用紙種類係数C1を用紙種類によって異ならせているのは、ジョブ実行中の定着ローラー通紙部温度を予測する際の予測精度を向上させるためである。
すなわち、用紙種類によって、定着ローラー41から用紙Sに奪われる単位時間当たりの熱量が異なり、定着ローラー通紙部温度の温度低下率も異なることになる。
仮に、用紙種類を考慮せずに、定着ローラー通紙部温度を予測するとした場合、ある種類の用紙Sを用いる場合には予測精度が高くても、別の種類の用紙Sを用いる場合には、用紙種類に起因する温度低下率の違いによって、予測した温度と実際の温度との間に差が生じ、予測精度が大きく低下するおそれがある。
そこで、用紙種類として、ここでは用紙Sの厚みの違いにより、厚みが厚くなると定着ローラー通紙部温度の温度低下率が大きくなることから、定着ローラー通紙部温度の予測の際に、厚みの厚い用紙Sの方が薄い用紙Sよりも大きな温度低下率が適用されるように用紙種類係数C1の値を設定することにより、用紙種類係数C1を適用しない場合よりも、予測精度を高めようとしたものである。なお、他の係数C2〜C6についても同様に、予測精度を向上させるために、それぞれの条件に応じて異なる値が用意されている。
次に、用紙CD係数C2を設定する(ステップS13)。具体的には、予定されているジョブにより用いられる用紙Sの用紙サイズと搬送姿勢をジョブ管理テーブル103から取得し、取得した用紙サイズと搬送姿勢とから用紙CD長(搬送方向に直交する長さ:用紙幅)を求める。
用紙サイズに対して縦方向長さと横方向長さが予め規定されているので、縦方向長さが搬送方向長さ(用紙FD長)に相当し、横方向長さが搬送方向に直交する方向長さ(用紙CD長)に相当するものと決めておくことにより、用紙サイズと搬送姿勢が判れば、用紙CD長を求めることができる。例えば、A4サイズ、縦姿勢であれば、210〔mm〕、B5サイズ、縦姿勢であれば、182〔mm〕になる。また、A4サイズ、横姿勢であれば、用紙CD長は、297〔mm〕になる。
求めた用紙CD長に対応する係数を、図9(b)に示す用紙CD情報122から読み出して、読み出した係数を用紙CD係数C2に設定する。例えば、A4サイズ、縦姿勢の場合、用紙CD長が210〔mm〕になるので、用紙CD係数C2は、0.90に設定される。B5サイズも同様に0.90に設定される。
用紙CD長の長い用紙Sの方が短い用紙Sよりも、定着ローラー41を通過する際に、定着ローラー41から用紙Sに奪われる単位時間当たりの熱量が多くなる、すなわち定着ローラー通紙部温度の温度低下率が大きくなるので、定着ローラー通紙部温度の予測の際に、用紙CD長の長い用紙Sの方が短い用紙Sよりも大きな温度低下率が適用されるように用紙CD係数C2を設定することにより、用紙CD係数C2を適用しない場合よりも予測精度を高めることができる。
続いて、用紙FD係数C3を設定する(ステップS14)。具体的には、上記取得した取得した用紙サイズと搬送姿勢から用紙FD長を求める。例えば、A4サイズ、縦姿勢であれば、297〔mm〕、B5サイズ、縦姿勢であれば、257〔mm〕になる。
求めた用紙FD長に対応する係数を、図9(c)に示す用紙FD情報123から読み出して、読み出した係数を用紙FD係数C3に設定する。例えば、A4サイズ、縦姿勢の場合、用紙FD係数C3は、1.05に設定される。B5サイズも同様である。
用紙FD長が長くなるに伴って用紙FD係数C3が大きな値になっているのは、用紙CD長が長くなるに伴って用紙CD係数C2が大きくなっていることと同じ理由による。
そして、プロセス速度係数C4を設定する(ステップS15)。具体的には、図9(d)に示すプロセス速度情報124を参照して、ジョブに対して設定されているプロセス速度に対応する係数を読み出し、読み出した係数をプロセス速度係数C4に設定する。ここでは、全てのジョブに対するプロセス速度が基準速度Vsの210〔mm/s〕に設定されており、プロセス速度変更処理の実行前では、この基準速度Vsに対応する係数である1.0がプロセス速度係数C4に設定される。
続いて、環境ステップ係数C5を設定する(ステップS16)。具体的には、機内温度センサー71による現在の温度検出結果と、機内湿度センサー72による現在の湿度検出結果を取得する。
そして、図9(e)に示す温湿度情報125を参照し、取得した機内温度と機内湿度に対応する環境ステップ(0〜6)を読み出す。例えば、機内温度が25〔℃〕、機内相対湿度が50〔%〕の場合、環境ステップは4になり、機内温度が35〔℃〕、機内相対湿度が85〔%〕の場合、環境ステップは6になる。
続いて、図9(f)に示す環境ステップ情報126を参照し、環境ステップに対応する係数を読み出して、読み出した係数を環境ステップ係数C5に設定する。例えば、環境ステップが4の場合、環境ステップ係数C5は、0.9になり、環境ステップが6の場合、環境ステップ係数C5は、0.7になる。
機内温度と機内湿度が高い場合の方が低い場合よりも環境ステップ係数C5が小さくなっているのは、次の理由による。すなわち、通常、高温高湿環境下では、用紙S自体の温度が低温低湿環境下よりも高くなっており、用紙Sが定着ローラー41を通過する際に、定着ローラー41から用紙Sに奪われる単位時間当たりの熱量が少なくなる。このことは、定着ローラー通紙部温度の低下率が小さくなることを意味する。
従って、温湿度環境が変化する場合、定着ローラー通紙部温度を予測する際に、高温高湿環境下の方が低温低湿環境下よりも、その温湿度の差に応じた分、小さな温度低下率が適用されるように環境ステップ係数C5を設定することにより、環境ステップ係数C5を適用しない場合よりも予測精度を高めることができるからである。
次に、定着ローラー温まり係数C6を設定する(ステップS17)。具体的には、まず、ウォームアップ終了からの経過時間txを取得する。
取得した経過時間txの基準時間tyに対する割合を求める。例えば、経過時間txが55秒、基準時間tyが1分であれば、92〔%〕になる。そして、図9(g)に示す定着ローラーの温まり具合情報127を参照し、求めた割合に対応する係数を読み出して、読み出した係数を定着ローラー温まり係数C6に設定する。例えば、求めた割合が92〔%〕の場合、定着ローラー温まり係数C6は、1.5になる。
この定着ローラー温まり係数C6を求めるのは、次の理由による。
すなわち、定着ローラー41の表面は、ウォームアップが終了していれば目標温度Tmに達しているはずであるが、ウォームアップ終了からの経過時間txが短ければ、定着ローラー41の内部にまでは熱が行き渡っておらず、未だ目標温度Tmよりも低い状態になっていることがある。
このような状態でジョブが開始されると、定着ローラー41の表面に設けられた電磁誘導発熱層から発せられる熱は、用紙Sに奪われつつ、定着ローラー41の内部にも多く伝達されるので、加熱が追い付かない状態になって、定着ローラー通紙部温度がジョブ実行中に低下し易くなっているといえる。このことは、定着ローラー通紙部温度の低下率が大きくなることを意味する。
これに対し、ウォームアップ終了からの経過時間txが長ければ、定着ローラー41の内部にも熱が十分に行き渡り、電磁誘導発熱層から発せられる熱が用紙Sの定着のためだけに利用される状態になると、定着ローラー41の内部にも多くの熱が伝達される場合に比べて、定着ローラー通紙部温度が低下し難くなっていることになる。このことは、定着ローラー通紙部温度の低下率が小さいということに相当する。
つまり、ウォームアップ終了からの経過時間txの長さに起因して、定着ローラー通紙部温度の低下率が変わり、温度低下率が変わると、それだけ定着ローラー通紙部温度の予測精度に影響を与えることになる。
そこで、ウォームアップ終了からの経過時間txの長さを指標するものとして、基準時間tyとの割合(定着ローラの温まり具合)を求め、求めた割合が小さくなるに伴って、定着ローラー通紙部温度を予測する際に、大きな温度低下率が適用されるように定着ローラー温まり係数C6を設定することにより、定着ローラー温まり係数C6を適用しない場合よりも予測精度を高めることができるからである。
なお、ウォームアップ終了からの経過時間txの基準時間tyに対する割合が、100〔%〕を超える場合には、100〔%〕とみなして、定着ローラー温まり係数C6が設定される。
<2.温度予測>
図11に戻って、ステップS18では、設定した係数C1〜C6を用いて、定着ローラー通紙部降下温度Taを予測する。ここで、定着ローラー通紙部降下温度Taは、ジョブが実行されたとしたならば、その開始から終了までの間に定着ローラー通紙部温度が低下する場合のその温度降下量を示している。
定着ローラー通紙部降下温度Taは、次の式(1)により算出される。
Ta〔℃〕=Pn〔枚〕×Tk〔℃/枚〕×C1×C2×C3×C4×C5×C6・・・・・(式1)
ここで、Pnは、プリント枚数である。
Tkは、基準サイズの用紙、すなわち用紙CD係数C2と用紙FD係数C3が共に1になる範囲のサイズの用紙が1枚、定着ローラー41を通過する場合に、その通過の間に低下する定着ローラー通紙部温度(固定値)であり、ここでは0.3〔℃/枚〕である。
例えば、プリント枚数が50〔枚〕、用紙サイズがA4(縦姿勢)、用紙種類が普通紙、プロセス速度が210〔mm/s〕、環境ステップが5、定着ローラーの温まり具合が92〔%〕とすれば、C1は、1になり、C2は、0.9になり、C3は、1.05になり、C4は、1になり、C5は、0.8になり、C6は、1.5になる。
これらの値を(式1)に代入すると、Ta〔℃〕=17.01になる。
次に、定着ローラー通紙部回復温度Tbを予測する(ステップS19)。ここで、定着ローラー通紙部回復温度Tbは、ジョブ実行中に、N枚目の用紙Sの後端が定着ローラー41を通過してから、次の(N+1)枚目の用紙Sの先端が定着ローラー41に到達するまでの時間、いわゆる紙間に、定着ローラー通紙部温度が加熱により上昇する場合のその温度上昇量を示している。
定着ローラー通紙部回復温度Tbは、次の式(2)により算出される。
Tb〔℃〕=Q〔回数〕×Th〔℃/msec〕×tq〔msec〕・・・(式2)
ここで、Qは、紙間の回数である。
Thは、紙間において励磁コイル43への供給電力をWaとした場合の、単位時間当たりの定着ローラー通紙部温度の上昇率(固定値)であり、ここでは0.005〔℃/msec〕になっている。なお、msecは、ミリ秒の単位である。
tqは、プロセス速度が210〔mm/s〕における1回の紙間の時間(固定値)であり、ここでは、20〔msec〕になっている。
例えば、プリント枚数が50枚の場合、紙間は、49回あるので、これを(式2)に代入すれば、Tb=4.9〔℃〕になる。
次に、ジョブ終了時の定着ローラー通紙部温度Tcを予測する(ステップS20)。
定着ローラー通紙部温度Tcの予測は、次の(式3)により算出される。
Tc〔℃〕=Td〔℃〕−Ta〔℃〕+Tb〔℃〕・・・・・(式3)
ここで、Td〔℃〕は、現在の定着ローラー通紙部温度として検出された温度である。
例えば、図5において、ジョブ1〜3の実行条件(用紙サイズ、種類、搬送姿勢)が相互に同じであり、ジョブ1〜3のトータルのプリント枚数が50枚の場合、現在をジョブ1の開始時直前、現在の定着ローラー通紙部温度Tdが165〔℃〕、閾値Tzが150〔℃〕であれば、ジョブ3の終了時の定着ローラー通紙部温度Tcは、152.89〔℃〕と予測される。
この例では、ジョブ3の終了時の定着ローラー通紙部温度が閾値Tz(=150〔℃〕)以下にならないので、PPM制御の開始条件を満たさず、PPM制御を実行する必要がないことを判断することができる。
また、例えば、プリント枚数が30〔枚〕、用紙サイズがA4、横姿勢、用紙種類が普通紙、プロセス速度が210〔mm/s〕、環境ステップが3、定着ローラーの温まり具合が85〔%〕であれば、C1〜C5は、それぞれ1になり、C6は、2になる。
従って、(式1)から、Ta=18〔℃〕になり、(式2)から、Tb=2.9〔℃〕になり、(式3)から、予測温度Tc=149.99〔℃〕になる。
この例では、ジョブ3の終了時の定着ローラー通紙部温度が閾値Tz(=150〔℃〕)以下と予測されるので、PPM制御の開始条件を満たし、PPM制御を実行する必要があることを判断することができる。
上記では、複数のジョブが用紙サイズや種類などを同じ条件にして行われる場合の例を説明したが、異なる場合でも同様にTa〜Tcを求めることができる。
例えば、定着ローラー通紙部降下温度Taについては、ジョブ1に対するTa1、ジョブ2に対するTa2、・・ジョブnに対するTanをジョブ単位で求めて、求めたTa1、Ta2・・Tanを足し合わせたものをTaとすることができる。定着ローラー通紙部回復温度Tbについても同様であり、ジョブ1に対するTb1、ジョブ2に対するTb2、・・ジョブnに対するTbnをジョブ単位で求めて、求めたTb1、Tb2・・Tbnを足し合わせたものをTbとする。
また、ジョブの途中で安定化制御が割り込むことが予測されている場合には、安定化制御の実行期間を、紙間と同じ状態と捉えて、安定化制御の実行期間に昇温される回復温度Tbzを、定着ローラー通紙部回復温度Tbに組み入れるとすれば良い。
具体的には、安定化制御の開始時に定着ローラー通紙部温度T>Tzであることを前提にすれば、安定化制御の実行中には、上記の如く励磁コイル43への供給電力がWbに落とされるので、単位時間当たりの定着ローラー通紙部温度の上昇率th1は、上記のth(=0.005〔℃/msec〕)よりも小さく、例えば(th/50)になる。
仮に、安定化制御の実行期間が60秒である場合、60〔秒〕×Th1〔℃/msec〕から、安定化制御の実行中における回復温度Tbzは、6〔℃〕になる。
図5の例のようにジョブ1〜3、安定化制御、ジョブ4がこの順に実行される予定の場合、定着ローラー通紙部降下温度Taは、(Ta1+Ta2+Ta3+Ta4)で求められる値と予測され、定着ローラー通紙部回復温度Tbは、(Tb1+Tb2+Tb3+Tbz+Tb4)で求められる値と予測されるので、このTaとTbを(式3)に代入すれば、ジョブ3の終了時の定着ローラー通紙部温度Tcを求めることができる。
図5と図7の例を、予定されているジョブに上記式による計算を適用した結果を示すグラフとすれば、図5ではジョブ4の終了時に、定着ローラー通紙部温度Tc≦閾値Tzを満たし、図7ではジョブ3の終了時に定着ローラー通紙部温度Tc≦閾値Tzを満たすことを予測することができる。
<3.PPM制御要否判断>
図11のステップS21では、ジョブ終了時の定着ローラー通紙部温度Tc≦閾値Tzを満たすか否かを判断する。
Tc≦Tzを判断すると(ステップS21で「YES」)、PPM制御の開始条件を満たすと判断して、PPM制御が必要な旨を示す必要フラグをセットした後(ステップS22)、PPM制御の予定開始タイミングを決定して(ステップS23)、リターンする。
本実施の形態では、ジョブ単位でそのジョブ終了時の定着ローラー通紙部温度Tcを予測しているので、複数の予定ジョブのうち、実行順の早いジョブから順に、ジョブごとにその開始時にTc>Tzを満たし、かつ、終了時にTc≦Tzを満たすか否かを判断し、これを満たすジョブがあれば、そのジョブの開始から終了までの間にPPM制御の予定開始タイミングが入ることを判断できる。
図5の例では、ジョブ4の終了時(時点tc)にTc=Tzになり、図7の例では、ジョブ3の終了時(時点tb)にTc=Tzになるので、それぞれの終了時がPPM制御の予定開始タイミングと決定される。
ジョブの実行途中にTc≦Tzを満たす場合には、そのジョブに対する何枚目の用紙Sを通紙したときにTc=Tzを満たすかを1枚当たりの降下温度Taと回復温度Tbを計算することにより、PPM制御の予定開始タイミングを求めることができる。
一方、Tc>Tzを判断すると(ステップS21で「NO」)、前回ジョブと用紙SのCD長が異なるか否かを判断する(ステップS24)。
ここで、前回ジョブとは、予定されているジョブのうち、1つずつに対するその直前のジョブをいう。例えば、予定されているジョブが1〜5であれば、ジョブ1に対する前回ジョブは、その直前に終了済のジョブになり、ジョブ2に対する前回ジョブは、ジョブ1になり、ジョブ5に対する前回ジョブは、ジョブ4になる。
予定されているジョブの1つずつについて、前回のジョブとでCD長が異なるかが判断される。この判断は、ジョブ管理テーブル103の管理情報1031(図3)を参照することにより行われる。
このようにCD長が異なるか否かを判断するのは、定着ローラー通紙部温度Tc≦閾値Tzを満たしていなくてもPPM制御が必要であることを判断するためである。以下、その理由を説明する。
すなわち、用紙SのCD長は、用紙幅方向長さのことであるから、前回ジョブに用いられる用紙SのCD長が小さく、これに続くジョブに用いられる用紙SのCD長が大きければ、定着ローラー41の軸方向全域のうち、前回ジョブのときには非通紙領域になるが、これに続くジョブのときには通紙領域になる部分領域が存在することになる。
定着ローラー41の通紙領域は、用紙Sに熱を奪われつつ誘導発熱層の熱により目標温度Tmに安定するように制御されるが、非通紙領域は、用紙Sに熱を奪われないために、目標温度Tmよりもある程度、上昇し易い。
これに加えて、前回ジョブ実行中に定着ローラー通紙部温度が徐々に低下し続けていれば、通紙領域の温度(定着ローラー通紙部温度)自体が目標温度Tmよりも下がっていることになり、通紙領域と非通紙領域とで温度差がより大きくなる。
このようになると、前回ジョブに続くジョブにおいて、1枚の用紙Sが定着ローラー41を通過するときの定着ローラー41の通紙領域には、軸方向(用紙幅方向に相当)に目標温度Tmよりも低い部分領域と、目標温度Tmよりも高い部分領域とが並存して、1枚の用紙Sの中で用紙幅方向に目標温度Tmよりも低い温度で定着される部分と、高い温度で定着される部分が生じ、定着ムラにより定着性に影響を与えることが生じ易くなる。
定着性の低下は、定着ローラー41の温度が低い場合に顕著に現れ易く、温度が高い場合には現れ難い。つまり、定着ローラー41のうち、目標温度Tmよりも低い部分と高い部分とが並存している場合に現れ易いが、目標温度Tmよりも高い部分だけであれば現れ難いといえる。
すなわち、前回ジョブとこれに続くジョブとの間で、用紙SのCD長が異なることにより通紙領域の温度(定着ローラー通紙部温度)が目標温度Tmよりも下がる場合、これを上昇させることにより、軸方向全域が目標温度Tmよりある程度、高くなっても、通紙領域の温度が目標温度Tmより低い場合に比べて、定着ムラによる定着性の影響を小さくすることができることになる。
定着ローラー通紙部温度を上昇させるには、PPM制御を行えば良い。
そこで、本実施の形態では、CD長が異なることにより定着性に影響が生じる定着ローラー温度差の許容値TfをCD長の差分Dの大きさと対応付けてなるCD長/温度差許容値対応情報128(図9(h))で予め求めておいて、定着性に影響が生じることが判断されると、定着ローラー通紙部温度Tc≦閾値Tzを満たしていなくても、PPM制御が必要であると判断するようにしている。
前回ジョブとCD長が異なるジョブの組が少なくとも1つある場合(ステップS24で「YES」)、CD長に基づくPPM制御要否判断を行う(ステップS25)。
図12は、CD長に基づくPPM制御要否判断のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
同図に示すように、CD長の差分Dを求める(ステップS251)。差分Dは、前回ジョブをA、これに続くジョブをBとしたとき、ジョブBの用紙SのCD長(=CD2)からジョブAの用紙SのCD長(=CD1)を差し引くことにより求められる。例えば、ジョブBの用紙SのCD長を297〔mm〕(A4横姿勢に相当)、ジョブAの用紙SのCD長を210〔mm〕(A4縦姿勢に相当)とすれば、差分D=87〔mm〕になる。
差分Dに対する定着ローラー温度差許容値Tfを、CD長/温度差許容値対応情報128から取得する(ステップS252)。図9(h)に示すCD長/温度差許容値対応情報128の例では、差分D=87〔mm〕に対する許容値Tfは、6〔℃〕になる。
次に、温度差Teを求める(ステップS253)。温度差Teは、目標温度Tmから予測温度Tcを差し引くことにより行われる。目標温度Tmを165〔℃〕、予測温度Tcを152.89〔℃〕とすれば、温度差Td=12.11〔℃〕になる。
温度差Te≧許容値Tfであるか否かを判断する(ステップS254)。
温度差Te≧許容値Tfであることを判断すると(ステップS254で「YES」)、ジョブAとBの実行により定着ローラー通紙部温度の温度差が大きくなり定着性に影響を与えるために、PPM制御の開始条件を満たし、PPM制御が必要と判断して(ステップS255)、リターンする。
一方、温度差Te<許容値Tfであることを判断すると(ステップS254で「NO」)、定着性に影響を与えるまでもないために、PPM制御の開始条件を満たさず、PPM制御が不要と判断して(ステップS256)、リターンする。
なお、上記では、温度差Teと許容値Tfを比較するとしたが、これに限られない。温度差に代えて、例えば差分Dに対する定着ローラー許容温度Tf1を求めて、これを予測温度Tcと比較する構成をとるとしても同じ結果を得ることができる。この場合、予測温度Tc≦定着ローラー許容温度Tf1の場合にPPM制御が必要と判断される。
定着ローラー許容温度Tf1は、目標温度Tmから差分Dに対する許容値Tfを差し引いた値として予め求めることができる。
例えば、上記例では、目標温度Tmが165〔℃〕、差分D=87〔mm〕に対する許容値Tfが6〔℃〕になるので、定着ローラー許容温度Tf1は、159〔℃〕になる。予測温度Tcを152.89〔℃〕とすれば、Tc≦Tf1の条件を満たすので、PPM制御が必要と判断される。
図11に戻って、ステップS26では、PPM制御が必要と判断されたかを判断する。PPM制御が必要と判断された場合には(ステップS26で「YES」)、ステップS22に移る。ステップS26を経由する場合、元々、Tc≦Tzとは判断されていなかったので(ステップS21で「NO」)、ステップS23においてTc=Tzを満たすタイミングを決定できない。このため、ステップS26を経由した場合には、PPM制御の開始予定タイミングを、CD長が切り替わる時点である前回ジョブの終了時と決定される。
一方、PPM制御が不要と判断された場合には(ステップS26で「NO」)、PPM制御が不要である旨を示す不要フラグをセットして(ステップS27)、リターンする。
また、ステップS24において、前回ジョブとCD長が同じであることを判断すると(ステップS24で「NO」)、ステップS27に移る。この場合、不要フラグがセットされる。
<安定化制御予定判断処理の内容>
図13は、安定化制御予定判断処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。同図に示すように現在の累積プリント枚数Psを取得する(ステップS31)。
予定されているジョブのうち、最も実行順の早いジョブのジョブ番号を変数nに設定する(ステップS32)。ジョブ番号は、管理情報1031に含まれるジョブ番号(No)欄から読み出される。ここでは、n=1を例に説明する。
n(=1)番目のジョブのプリント枚数Pnを取得する(ステップS33)。この取得は、管理情報1031に含まれるプリント枚数欄に書き込まれている、n(=1)番目のジョブに対する枚数を読み出すことにより行われる。
累積プリント枚数Psにプリント枚数Pnを加算した枚数を、トータルプリント枚数Pとする(ステップS34)。
次の安定化制御を実行すべき予定のプリント枚数Pbを取得する(ステップS35)。
上記例では、所定枚数Pc(1000枚など)の倍数が安定化制御実行の予定のプリント枚数になるので、現在の累積プリント枚数Psよりも大きく、最も累積プリント枚数Psに最も近い倍数が予定のプリント枚数Pbになる。例えば、累積プリント枚数Psが1950枚であれば、予定のプリント枚数Pbは、2000枚になる。
トータルプリント枚数P≧予定のプリント枚数Pbであるか否かを判断する(ステップS36)。
P≧Pbである場合(ステップS36で「YES」)、n(=1)番目のジョブを実行すれば、その途中で安定化制御の実行タイミングに至ると判断して、安定化制御が必要な旨を示す必要フラグをセットした後(ステップS37)、予定のプリント枚数Pbを安定化制御の予定実行タイミングと判断して(ステップS38)、リターンする。上記の例では、2000枚になる。
一方、P<Pbである場合(ステップS36で「NO」)、nが最後であるか否かを判断する(ステップS39)。nが最後とは、管理情報1031に含まれる予定ジョブのうち、変数nが最後のジョブのジョブ番号に等しいことを意味する。
最後ではないことを判断すると(ステップS38で「NO」)、現在の変数nに「1」をインクリメントした値を新たな変数nに設定し直す(ステップS41)。n=1であった場合には、新たな変数nは2になる。
設定し直された変数n(=2)番目のジョブのプリント枚数Pnを取得する(ステップS42)。この取得は、ステップS33と同じ方法で実行される。
現在のトータルプリント枚数Pに、プリント枚数Pnを加算した枚数を、新たなトータルプリント枚数Pに設定し直す(ステップS43)。
そして、設定し直されたトータルプリント枚数PがPb以上であるか否かを判断する(ステップS36)。
P≧Pbである場合(ステップS36で「YES」)、n(=2)番目のジョブを実行すれば、その途中で安定化制御の実行タイミングに至るので、ステップS37に移る。
一方、P<Pbである場合(ステップS36で「NO」)、nが最後であるか否かを判断する(ステップS39)。nが最後でなければ、ステップS41〜S43を介してS36に戻る。これにより、トータルプリント枚数Pが再度設定し直される。P≧Pbを満たすまで、ステップS36、S39、S41〜S43までの一連の処理が繰り返される。
nが最後と判断されると(ステップS39で「YES」)、安定化制御が不要である旨の不要フラグをセットして(ステップS40)、リターンする。
<プロセス速度変更処理の内容>
図14は、プロセス速度変更処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
同図に示すようにPPM制御の予定開始タイミングと安定化制御の予定実行タイミングが同じであるか否かを判断する(ステップS50)。
PPM制御の予定開始タイミングは、上記のステップS23で決定され、安定化制御の予定実行タイミングは、上記のステップS38で決定されているので、決定されたタイミングにより同じであるか否かを判断することができる。
同じタイミングであるということは(ステップS50で「YES」)、安定化制御の予定開始時にPPM制御の開始条件を満たすことを意味し、プロセス速度を変更する必要がないので、そのままリターンする。この場合、プロセス速度が変更されることはない。
一方、同じタイミングではない、すなわちPPM制御と安定化制御とが時間的にずれて実行される場合には(ステップS50で「NO」)、ステップS51に移る。この意味で、ステップS50を実行する場合に、プロセス速度変更部111は、PPM制御と安定化制御とが時間的にずれて別々に実行されることを予測する手段として機能するといえる。
ステップS51では、PPM制御の予定開始タイミングの方が、安定化制御の予定実行タイミングよりも後であるか否かを判断する。
PPM制御の予定開始タイミングの方が安定化制御の予定実行タイミングよりも後であることを判断すると(ステップS51で「YES」)、安定化制御の直前に予定されているジョブ(以下、「ジョブJa」という。)に対するプロセス速度Vを求める(ステップS52)。図5の例では、ジョブ3がジョブJaになる。
ジョブJaのプロセス速度Vは、以下の方法で算出される。
Tu−(Tap×Cp)+(Tbp/Cp)≦Tz・・・(式4)
V=Cp×Vs・・・(式5)
ここで、Tuは、ジョブJaの開始時における定着ローラー通紙部の予測温度である。
安定化制御の前に予定されているジョブが1つしかなければ、(式3)により求められるジョブ終了時の定着ローラー通紙部温度TcがTuに等しくなる。
2以上ある場合には、直前のジョブJaを除く1以上のジョブを実行する場合のジョブ終了時の定着ローラー通紙部温度Tcを(式3)により求めたときのその求めた温度TcがTuになる。図5の例でいえば、ジョブ1〜3が予定されているので、直前のジョブ3の開始時(時点tu)の温度がTuになる。
Tapは、ジョブJaだけが実行されると仮定した場合の定着ローラー通紙部降下温度であり、上記の(式1)により求めることができる。
Tbpは、ジョブJaだけが実行されると仮定した場合の定着ローラー通紙部回復温度であり、上記の(式2)により求めることができる。
Tzは、PPM制御の開始条件を示す閾値である。
Cpは、プロセス速度係数である。このCp以外は、(式1)などにより求めることができるので、(式4)は、Cpの範囲を算出する式になる。
Vsは、基準速度Vs、ここでは210〔mm/s〕である。
(式4)により算出されたCpを基準速度Vsに乗算した速度が、ジョブJaのプロセス速度Vとして算出される(式5)。
(式4)の左辺は、上記の(式3)においてジョブJaだけが実行されると仮定した場合のTaとTbに係数Cpを適用したものに等しく、この場合、(式3)は、ジョブJaの終了時の定着ローラー通紙部温度Tcを求める式になるから、(式4)で求められたCpの範囲は、ジョブ終了時の定着ローラー通紙部温度が閾値Tz以下になるときの条件を示すものになるといえる。
具体的に、例えば定着ローラー通紙部降下温度Tap=6.75〔℃〕、定着ローラー通紙部回復温度Tbp=1.4〔℃〕、定着ローラー通紙部温度Tu=157〔℃〕、閾値Tz=150〔℃〕とすれば、(式3)では、ジョブJa終了時の定着ローラー通紙部温度Tcが151.65〔℃〕になり、閾値Tzを超えている。
(式4)を用いると、Cp≧1.21になり、Cp=1.21にすれば、(式5)からジョブJaのプロセス速度Vが254〔mm/s〕と算出される。
従って、ジョブJaのプロセス速度Vを、基準速度Vs(=210〔mm/s〕)から254〔mm/s〕に増加すれば、定着ローラー通紙部温度がジョブJaの終了時に閾値Tzまで低下することを予測することができる。
上述のようにプロセス速度を増速するということは、単位時間当たりの用紙Sの搬送枚数が増えることを意味するので、それだけ定着ローラー41から用紙Sに奪われる単位時間当たりの熱量が増えることになり、定着ローラー通紙部温度の温度低下率が大きくなって、定着ローラー通紙部温度が閾値Tzに低下するタイミングが早くなる。
図6の例において、ジョブ3をジョブJaとすれば、図6(c)に示すようにジョブ3のときにだけプロセス速度が第1速度Vaに上がっており、この第1速度Vaが(式5)で算出されたプロセス速度Vに相当する。
また、図6(b)の定着ローラー通紙部温度の推移グラフにおけるジョブ3の部分の低下率がジョブ1と2に比べて大きく(勾配が急に)なって、閾値Tzに達する時点tfが、プロセス速度を変更しない場合(図5)の時点taよりも時間αだけ早くなっており、定着ローラー通紙部温度の閾値Tzへの低下タイミングが早くなることに相当する。
図14に戻って、ステップS53では、求めたプロセス速度Vが設定可能範囲内であるか否かを判断する。
設定可能範囲内とは、自装置で可変可能なプロセス速度の上限速度以下の範囲内ということであり、予め決められている。本実施の形態では、図9(d)に示すように330〔mm/s〕であるが、これに限られないことはいうまでもなく、装置構成に応じて適した範囲が実験などにより決められる。なお、上限速度の制限を課さないような場合には、設定可能範囲内であるか否かの判断を行わない構成をとることができる。
求めたプロセス速度Vが設定可能範囲内であることを判断すると(ステップS53で「YES」)、求めたプロセス速度Vを、対応するジョブ、ここではジョブJaに対するプロセス速度に決定して(ステップS56)、リターンする。このステップS56で決定されたプロセス速度が、実際のジョブ実行時のプロセス速度として用いられる。
なお、上記では、図5〜図8において安定化制御がジョブと次のジョブとの切れ目で割り込む場合のスケジュールの例を説明したが、ジョブの実行中に安定化制御が割り込むことが予測される場合には、そのジョブを、安定化制御の割り込みを挟んで前半の部分ジョブと後半の部分ジョブに分けて、その前半の部分ジョブを安定化制御の直前のジョブJaとみなして、プロセス速度Vを求めるようにすることができる。
例えば、図5においてジョブ3の途中で安定化制御の割り込みが入るとすれば、ジョブ3の前半の部分ジョブが直前のジョブになり、ジョブ2がその前のジョブになり、ジョブ1がさらに前のジョブになる。
仮に、ジョブ1〜5までの合計のプリント枚数をN、ジョブ1におけるプリント枚数をN1、ジョブ2におけるプリント枚数をN2、ジョブ3の前半の部分ジョブにおけるプリント枚数をN3、(N1+N2+N3)を合計枚数Pとすれば、N枚のうち、安定化制御による一時中断までの間に実行される予定のP(<N)枚に含まれる少なくとも1枚以上の用紙、ここでは(N3)枚の用紙に対する画像形成のプロセス速度が、基準速度Vsから、これよりも速い速度Vaに変更されることになる。
求めたプロセス速度Vが設定可能範囲内にない、すなわち上限速度を超えていることを判断すると(ステップS53で「NO」)、さらに前のジョブがあるか否かを判断する(ステップS54)。
さらに前のジョブとは、プロセス速度Vが設定可能範囲内にないと判断されたジョブ、ここでは直前のジョブJaに対し、1つ前のジョブをいう。
図5の例でいえば、直前のジョブJaをジョブ3とすると、さらに前のジョブはジョブ2となる。以下、前のジョブをジョブJbという。
そして、ジョブJaから遡ってその前のジョブJbまでの全てのジョブに対するプロセス速度Vを求める(ステップS55)。つまり、ジョブJaとジョブJbを1つのジョブとみなして、(式4)と(式5)を適用する。この場合、(式4)のTuは、ジョブJbの開始時における定着ローラー通紙部の予測温度になり、図5の例でいえば、ジョブ2の開始時(時点tv)の温度Tvに置き換わる。
定着ローラー通紙部降下温度Tapは、ジョブJaが実行されると仮定した場合に(式1)により求められる定着ローラー通紙部降下温度と、ジョブJbが実行されると仮定した場合に(式1)により求められる定着ローラー通紙部降下温度とが加算された温度に置き換わる。定着ローラー通紙部回復温度Tbpについても同じである。
プロセス速度Vを変更しようとする対象ジョブがジョブJaとJbの両方に拡大されているので、定着ローラー通紙部温度の低下率がジョブJaとJbで略同じであれば、(式4)からプロセス速度Vは、ジョブJaだけを対象にする場合よりも小さくなる。
求めたプロセス速度Vが設定可能範囲内であるか否かを判断する(ステップS53)。
プロセス速度Vが設定可能範囲内であることを判断すると(ステップS53で「YES」)、ステップS56に移る。この場合、ジョブJaとJbの2つに対してそのプロセス速度が、求めた速度に決定される。
一方、プロセス速度Vが設定可能範囲内にないことを判断すると(ステップS53で「NO」)、ステップS54に移る。
ステップS54では、さらに前のジョブがあるか否かを判断する。ここで、さらに前のジョブとは、上記のジョブJbよりも1つ前のジョブという意味である。図5の例でいえば、ジョブ1がさらに前のジョブになる。以下、これをジョブJcという。
ジョブJaから遡ってその前のジョブJcまでの全てのジョブに対するプロセス速度Vを求めて(ステップS55)、ステップS53に戻る。ここでは、ジョブJa、Jb、Jcを1つのジョブとみなして、(式4)と(式5)を適用する。適用方法は、ジョブJaとJbの2つの場合と同じである。図5の例では、安定化制御の前に予定されているジョブが1〜3しかないので、(式4)を適用する場合、Tap、Tbpを、(式3)で用いるTa、Tbに置き換えることができる。
求めたプロセス速度Vが設定可能範囲内に入るまで、ステップS53〜S55の処理を繰り返す。この繰り返しを1回行うごとに、プロセス速度Vを高速に変更しようとする対象のジョブの数が1つずつ増えていき、その都度、それらの対象ジョブについてのプロセス速度Vの算出がやり直される。
その間に、求めたプロセス速度Vが設定可能範囲内に入れば(ステップS53で「YES」)、ステップS56に移ってリターンし、さらに前のジョブがないと判断されると(ステップS54で「NO」)、プロセス速度の変更を禁止するとして、リターンする。この場合、求めたプロセス速度Vではジョブを実行不可能なので、プロセス速度を変更することなく、すなわち基準速度Vsのまま、予定されているジョブが実行される。
上記では、PPM制御の予定開始タイミングの方が安定化制御の予定実行タイミングよりも後である場合(ステップS51で「YES」)の例を説明したが、その逆、すなわち、PPM制御の予定開始タイミングの方が安定化制御の予定実行タイミングよりも前である場合には(ステップS51で「NO」)、ステップS57に移る。
ステップS57では、PPM制御直前のジョブJpから、安定化制御直前のジョブJaまでの全てのジョブに対するプロセス速度Vを仮決定する。仮決定としているのは、ここで仮決定された速度を、これよりも後のステップS56で本決定する処理方法をとっているからである。
図7の例であれば、PPM制御の直前のジョブJpは、ジョブ3になり、安定化制御の直前のジョブJaは、ジョブ5であり、全てのジョブは、ジョブ3,4,5になる。
プロセス速度Vは、以下の方法で算出される。
Tw−(Taq×Cp)+(Tbq/Cp)>Tz・・・(式6)
V=Cp×Vs・・・(式7)
ここで、Twは、ジョブJpの開始時における定着ローラー通紙部の予測温度である。
PPM制御の前に予定されているジョブが1つしかなければ、(式3)により求められるジョブ終了時の定着ローラー通紙部温度TcがTwに等しくなる。
2以上ある場合には、ジョブJpを除く1以上のジョブを実行する場合のジョブ終了時の定着ローラー通紙部温度Tcを(式3)により求めたときのその求めた温度TcがTwになる。図7の例でいえば、ジョブ1〜3が予定されているので、直前のジョブ3の開始時(時点ta)の温度がTwになる。
Taqは、ジョブJp〜Jaの全てが順に実行されると仮定した場合の定着ローラー通紙部降下温度である。ジョブごとに定着ローラー通紙部降下温度を(式1)により求めて、求めた全降下温度を加算した値を定着ローラー通紙部降下温度Taqとする。
Tbqは、ジョブJp〜Jaの全てが順に実行されると仮定した場合の定着ローラー通紙部回復温度である。ジョブごとの定着ローラー通紙部回復温度を(式2)により求めて、求めた全回復温度を加算した値を定着ローラー通紙部回復温度Tbqとする。
PPM制御の開始条件を示す閾値Tzとプロセス速度係数Cpは、上記の(式4)のTzとCpと同じであり、(式7)は、上記の(式5)と同じである。
(式6)は、ジョブJp(ジョブ3に相当)から安定化制御の直前のジョブJa(ジョブ5に相当)までの全てを順に実行したと仮定した場合に最後のジョブJaの終了時における定着ローラー通紙部温度が閾値Tzよりも大きくなるときの係数Cpの範囲を求める式になり、係数Cpを求めることにより、(式7)を用いて、全てのジョブに対するプロセス速度Vを仮決定する。
具体的に、例えば定着ローラー通紙部降下温度Taq=15〔℃〕、定着ローラー通紙部回復温度Tbq=4.9〔℃〕、定着ローラー通紙部温度Tw=157〔℃〕、閾値Tz=150〔℃〕とすれば、(式3)では、ジョブJa終了時の定着ローラー通紙部温度Tcが146.9〔℃〕になり、閾値Tzを下回っている。
(式6)を用いると、Cp<0.85になり、Cp=0.85にすれば、(式7)からプロセス速度Vが178〔mm/s〕と算出される。これをジョブJpからJaまでのプロセス速度Vに仮決定する。これにすれば、ジョブJpからJaまでの間に、PPM制御が入らない条件において、定着ローラー通紙部温度がジョブJaの終了時に閾値Tzまで低下しないことが予測される。
プロセス速度を基準速度Vsよりも減速するということは、単位時間当たりの用紙Sの搬送枚数が減り、それだけ定着ローラー41から用紙Sに奪われる単位時間当たりの熱量が減ることになり、定着ローラー通紙部温度の温度低下率が小さくなって、定着ローラー通紙部温度が閾値Tzに低下するタイミングが遅くなるからである。
そして、安定化制御の直前のジョブJaに対するプロセス速度を求める(ステップS52)。この求め方は、上記のものと基本的に同じであるが、ステップS53において、プロセス速度Vが仮決定されているので、(式4)のTapを求める場合には、(式1)に含まれるプロセス速度係数C4が1から上記の0.85に置き換えられる。
また、(式4)のTbpを求める場合には、(式2)に含まれる時間tqが、仮決定されたプロセス速度Vに対応する時間に置き換えられる。
ステップS52で算出されるプロセス速度は、上記のように基準速度Vsよりも速い速度になるが、ステップS57で仮決定されたプロセス速度Vは、基準速度Vsよりも遅い速度になるので、ステップS57、S52の順に処理を行うことは、仮決定されたジョブJaのプロセス速度Vを、これよりも速い速度に求め直すことになる。
求めたプロセス速度Vが設定可能範囲内に入っているか否かを判断する(ステップS53)。ここでの設定可能範囲内は、上記のステップS57でプロセス速度Vが基準速度Vsよりも遅い速度に仮決定されたことから、プロセス速度の上限速度と下限速度の範囲内になる。下限速度は、例えば50〔mm/s〕などとすることができるが、これに限られず、装置構成に応じて適した値が予め決められる。なお、上限と下限の速度制限を課さない場合には、設定可能範囲内であるか否かの判断を行わない構成をとることができる。
設定可能範囲内に入っていることを判断すると(ステップS53で「YES」)、求めたプロセス速度VをジョブJaに対するプロセス速度Vに決定する(ステップS56)。
この場合、安定化制御の前に予定されているジョブJp〜Jaのうち、ジョブJa以外のジョブについては、仮決定されていたプロセス速度が本決定に変えられる。
図8(c)の例であれば、ジョブ3(ジョブJpに相当)とジョブ4のプロセス速度Vが基準速度Vsよりも低速の第2速度Vbになっており、この第2速度Vbが仮決定されていた速度に相当し、ジョブ5(ジョブJaに相当)のプロセス速度Vが基準速度Vsよりも高速の第1速度Vaになっており、この第1速度VaがステップS52で求められた速度に相当する。
このジョブ3〜5のプロセス速度の変更により、図8(b)の定着ローラー通紙部温度の推移グラフにおけるジョブ3と4の部分の低下率がジョブ1と2に比べて小さく(勾配が緩やかに)なり、ジョブ5の部分の低下率がジョブ1と2に比べて大きく(勾配が急に)なるようになる。
ここで、図7におけるプロセス速度を変更しない場合のジョブ3の開始時(時点ta)からジョブ5の終了時(安定化制御の開始時)(時点tf)までの時間tpと、図8におけるプロセス速度を変更する場合のジョブ3の開始時(時点ta)からジョブ5の開始時(時点tj)までの時間tpが同じであれば、図8に示すようにジョブ5のプロセス速度が高速化されることによりジョブ5の実行に要する時間が短縮される分、安定化制御の予測実行タイミング(時点tk)が、図7に示す安定化制御の実行タイミング(時点tf)よりも時間βだけ早くなり、それだけ安定化制御を早く開始でき、ジョブ1〜6の実行に要するトータルの時間を短縮することができる。
図14に戻って、ステップS53において、求めたジョブJaのプロセス速度Vが設定可能範囲内に入っていないことを判断すると(ステップS53で「NO」)、ステップS54以降の処理を実行する。この場合、ジョブJaと、さらに前のジョブとの両方に対してプロセス速度Vを求め直すことになる(ステップS55)。このプロセス速度Vを求める方法は、上記ステップS52と同様である。
求めたプロセス速度Vが設定可能範囲内に入るまで、ステップS53〜S55を繰り返し実行することは、上記と同じであり、この繰り返しが1回行われるごとに、ジョブJaから遡って1つずつ、プロセス速度を変更しようとする対象のジョブの数が増えていき、ステップS57で仮決定されたプロセス速度が、ステップS55において速い速度に求め直されていくことになる。
プロセス速度Vを早くした方がジョブの実行に要する時間の短縮化を図れるので、仮決定された遅いプロセス速度Vだけを用いる場合に比べて、トータルのジョブの実行に要する時間を短縮して、プリントの生産性の向上を図ることができる。
図15は、複数のジョブを実行する場合のトータルの予測実行時間の、プロセス速度変更処理の有無による違いを比較して示す図であり、(a)〜(c)がプロセス速度変更処理を実行しない場合の例を示しており、(d)〜(f)がプロセス速度変更処理を実行する場合の例を示している。
図15(a)は、複数のジョブとして6つのジョブ1〜6が予定されていることを示す図であり、PPM制御と安定化制御が入ることなくジョブ1〜6を順に実行したと仮定したときのトータルのジョブ予測実行時間をtsで示している。
図15(b)は、図15(c)に示す定着ローラー通紙部温度の予測推移から、ジョブ3〜5がPPM制御の対象ジョブになり、ジョブ5と6の間に安定化制御が割り込むスケジュールになることを表した図である。なお、図15(a)〜(c)は、プロセス速度が一定のときの条件を示している。
PPM制御と安定化制御により、トータルのジョブ予測実行時間ts1が図15(a)のtsよりも大幅に長くなっていることが判る。
一方、プロセス速度変更処理を実行する場合には、図15(f)に示すようにジョブ1と2については、プロセス速度Vが基準速度Vsよりも遅い第2速度Vbになり、ジョブ3〜5については、基準速度Vsよりも速い第1速度Vaに変更されている。
このプロセス速度の変更により、図15(e)に示すように定着ローラー通紙部温度の低下率は、ジョブ1と2の実行中には、図15(c)に示すジョブ1と2の実行中の低下率に比べて小さく(勾配が緩やかに)なり、ジョブ3〜5については、大きく(勾配が急に)なっており、ジョブ5の終了時に定着ローラー通紙部温度が閾値Tzに至り、PPM制御の開始条件が満たされるようになることが判る。
PPM制御の開始条件を満たすタイミングがジョブ5の終了時まで遅れる(ずれる)ので、ジョブ3〜5がPPM制御の対象から外れることになり、PPM制御によるジョブの中断が生じない。また、ジョブ1と2のプロセス速度を落としたことによりジョブ実行時間が長くなるが、その長くなる分は、ジョブ3〜5のプロセス速度の高速化により短縮される時間で相殺させることができる。
このプロセス速度の変更方法によっては、図15(f)に示すトータルのジョブ予測実行時間ts2を、安定化制御を行わない図15(a)に示すトータルのジョブ予測実行時間tsと同じにすることもできる。すなわち、安定化制御にかかる時間tsaを、プロセス速度を低速化するジョブと高速化するジョブに割り振るようにすれば良い。
具体的には、次の(式8)を用いることができる。
(FDy/Vu)−(FDx/Vd)=tsa・・・・・(式8)
ここで、FDy〔mm〕は、PPM制御の対象ジョブy(図15(b)の例では、ジョブ3〜5)のプリント枚数Py枚を用紙FD長に変換した長さである。
Vu〔mm/s〕は、ジョブyのプロセス速度を高速化する場合の、基準速度Vsに対して増速される速度であり、図15(f)のVaとVsの差分に相当する。
FDx〔mm〕は、PPM制御開始前のジョブx(図15(b)の例では、ジョブ1と2)のプリント枚数Px枚を用紙FD長に変換した長さである。
Vd〔mm/s〕は、ジョブxのプロセス速度が低速化される場合の、基準速度Vsに対して減速される速度であり、図15(f)のVsとVbの差分に相当する。
(FDy/Vu)は、プロセス速度を基準速度Vsよりも増速する結果、ジョブ実行時間の、基準速度Vsに対して減少する時間分(プロセス速度の増速の結果、減少するジョブ実行時間)tΔ1を示す。
(FDx/Vd)は、プロセス速度を基準速度Vsよりも減速する結果、ジョブ実行時間の、基準速度Vsに対して増加する時間分(プロセス速度の減速の結果、増加するジョブ実行時間)tΔ2を示す。
(式8)において、(FDx/Vd)を右辺に移項すれば、(式8)は、安定化制御に要する時間tsaに、減速により増加するジョブ実行時間tΔ2〔=FDx/Vd〕を加算した時間が、増速により減少するジョブ実行時間tΔ1〔=FDy/Vu〕に等しいことを示す式といえる。
安定化制御に要する時間tsaは、プロセス速度の変更の如何に関わらず一定であるので、(式8)の左辺と右辺が等しいという条件を満たす速度VuとVdを求めれば、図15(d)〜図15(f)に示すジョブのトータルの予測実行時間ts2を、安定化制御を行わない例の図15(a)に示すトータルの予測実行時間tsと同じにすることができるようになる。
これにより、ジョブ実行に余分な時間がかかっているという印象をユーザーに感じさせることなく、安定化制御による画質向上と共に、安定化制御実行中における定着ローラー通紙部温度の昇温による定着性の向上を図ることが可能になる。
なお、上記では、図10に示すプロセス速度変更要否判断処理を、新たなジョブを受け付けるごとに実行するとしたが、これに限られない。例えば、予定されているジョブが1つずつ終了する度に、その時点で実行が予定されているジョブに対してプロセス速度変更要否判断処理を実行するとしても良い。実行予定のジョブの直前に当該処理を実行した方が定着ローラー通紙部温度の推移をより精度良く予測してPPM制御の開始時期の条件を満たすか否かの判断の精度をより向上することが可能になる。
以上、説明したように本実施の形態では、予定されている複数のジョブ実行中に安定化制御とPPM制御とが時間的にずれて実行されることが予測された場合には、PPM制御の開始条件(定着ローラー通紙部温度が閾値Tzまで低下すること)が安定化制御の開始予定タイミングに満たすことになるように、安定化制御の前に予定されているジョブに対するプロセス速度を変更する構成にしている。
これにより、プロセス速度の変更を行わずにPPM制御と安定化制御とを別々に実行する構成よりも、ジョブ(プリント)の生産性を向上することができる。
本発明は、画像形成装置に限られず、例えば画像形成動作の実行速度(プロセス速度)を変更する方法であるとしてもよい。また、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。さらに、本発明に係るプログラムは、例えば磁気テープ、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD−ROM、DVD−RAM、CD−ROM、CD−Rなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態では、安定化制御の実行中に定着ローラー41の回転を継続しつつ励磁コイル43に電力を供給して定着ローラー41を加熱して、定着ローラー通紙部温度を上昇させるとしたが、これに限られない。
例えば、安定化制御の開始時の定着ローラー通紙部温度が閾値Tzよりも高い所定値以上であれば、安定化制御の実行開始時から定着ローラー41の加熱を停止する構成とすることもできる。安定化制御の実行中には、レジスト補正のように定着ローラー41を加熱する必要がないものも含まれるからである。
このように構成すれば、安定化制御の実行中にも定着ローラー通紙部温度が低下により閾値Tzに達する場合もあり得ることになる。閾値Tzに達するということは、PPM制御の開始条件を満たすことを意味する。この条件を満たしたことを契機に、安定化制御の途中で定着ローラー41の加熱を再開する構成をとれば、定着ローラー通紙部温度が上昇に転じる。従って、定着ローラー通紙部温度が下がりすぎることがなく、安定化制御の次に予定されているジョブに影響を与えることも防止することができる。
安定化制御の途中(開始から終了までの間)で、PPM制御の開始条件を満たすことが起こり得るということは、安定化制御の開始から少し遅れた時点で定着ローラー通紙部温度が閾値Tzに達するように、プロセス速度変更処理においてプロセス速度Vを求める方法をとることも可能になる。
具体的には、上記(式4)のTzを、本来の値(上記の例では150〔℃〕)よりも、閾値Tzに達する時期をずらす時間分だけ高い値(150+Δ)〔℃〕に置き換えれば、安定化制御の開始時には、定着ローラー通紙部温度が(150+Δ)〔℃〕まで低下し、安定化制御の開始から、そのずらす時間の経過時に、定着ローラー通紙部温度が150〔℃〕に達するようになることを予測することができる。この方法に限られず、閾値Tzに達する時期が安定化制御の開始時よりも遅れるようになる別の式を用いるとしても良い。
このように安定化制御の前に実行される予定の複数のジョブ(上記の部分ジョブを含む)のうち、少なくとも1枚以上の用紙Sに対するジョブのプロセス速度Vを、基準速度Vsから、予測されたPPM制御の開始時期が予測された安定化制御の実行期間に入るようになる(ずれないようになる)条件、具体的には、(a)実施の形態のようにPPM制御の開始時期が安定化制御の開始タイミングと同期すること、(b)本変形例のようにPPM制御の開始時期が安定化制御の開始時よりも少し遅れた時点になること、または(c)PPM制御の開始時期が安定化制御の実行中に至るようになることなどを満たす速度に変更されれば、少なくともPPM制御と安定化制御とが別々に時間的にずれて実行される構成よりも、プリントの生産性を向上することができる。
(2)上記実施の形態では、予定されているプリント(画像形成)動作をジョブ単位で管理するとしたが、これに限られず、例えば用紙(シート)の枚数単位で管理するとしても良い。具体的には、1枚目からM枚目までの用紙SがA4サイズで普通紙であり、(M+1)枚目からZ枚目までの用紙SがB5サイズで厚紙などと枚数にサイズや種類などを対応付けて管理するものである。
このようにすれば、Mよりも大きくZよりも小さいU枚目で安定化制御の実行タイミングに至ると、そのU枚目でプリント動作を一時中断して安定化制御を割り込ませる制御を行うことができる。
(3)上記実施の形態では、(式1)でC1〜C6などの係数を適用するとしたが、これらを全て用いる構成に限られず、必要とされる1以上の係数を適用するとしても良い。
例えば、定着ローラー通紙部温度が環境温度などにより影響をほとんど受けないような場合には、C5を適用しない構成をとることができる。また、使用される用紙サイズが1つに固定される構成では、C2とC3を適用しない構成をとるとしても良い。場合によっては、係数を適用しない構成をとることもできる。なお、上記の温度、湿度、閾値、速度、係数、用紙(シート)の枚数、サイズ、種類などが上記に限られず、装置構成に応じた値などが実験などにより予め決められる。また、上記の各式に限られず、算出対象の温度等を算出することができれば、別の式を用いるとしても良い。
(4)上記実施の形態では、PPM制御の開始条件を、定着ローラー通紙部温度が目標温度Tmより所定値だけ小さい閾値Tzに達することとしたが、これに限られない。
例えば、定着ローラー41における用紙幅方向端部側の、用紙Sが通過しない非通紙領域の温度の上昇により目標温度Tmより所定値だけ大きい閾値Tz1に達する場合を、PPM制御の開始条件とすることもできる。
具体的には、ジョブに用いられる用紙Sが小サイズであり、定着ローラー41における用紙Sの通紙領域の温度(定着ローラー通紙部温度)についてはジョブ実行中に低下していくことはない(目標温度Tmを略維持している)が、定着ローラー41の非通紙領域の熱が用紙Sに接しないことにより奪われず、定着ローラー41の非通紙領域の温度が上昇していき、閾値Tz1に達する、すなわち過昇温になるような場合である。
定着ローラー41の非通紙領域の温度が上がりすぎる場合に、PPM制御が行われれば、その分、用紙搬送間隔が開く。これにより、定着ローラー41への加熱量も減るので、定着ローラー41の非通紙領域の温度も上昇から下降に転じるようになり、定着ローラー41の非通紙領域の過昇温を防止することができる。
この場合も、PPM制御が開始されると、プリントの生産性が低下することから、閾値Tz1に達することをPPM制御の開始条件とすれば、上記の実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、定着ローラー41の非通紙領域の温度が閾値Tz1まで上昇することの予測は、用紙1枚当たりにどれだけ温度が上昇し、紙間でどれだけ温度が下降して回復するかを事前に実験などで求めておけば、その求めた値に基づきジョブ単位または用紙1枚単位で温度上昇を計算することにより行うことができる。
また、PPM制御の開始条件を満たすようにするには、定着ローラー41の非通紙領域の温度が安定化制御の開始タイミングに閾値Tz1まで上昇するように、プリント速度を高速化すれば良い。
(5)上記実施の形態では、本発明に係る画像形成装置をタンデム型カラープリンターに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーとモノクロに関わらず、安定化制御と枚数制御とを実行可能な画像形成装置であれば、例えば複写機、ファクシミリ装置、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。
また、電磁誘導加熱方式の定着部を用いる例を説明したが、この方式に限られず、例えばハロゲンヒーターによる加熱方式、抵抗発熱体に通電してジュール発熱させる抵抗発熱体による加熱方式などを用いるとしても良い。
さらに、定着部材として定着ローラーを用いる例を説明したが、これに限られず、例えば定着ベルトなどを用いることもできる。さらに、シートの種類としては、普通紙などの用紙に限られず、OHPシートなどの樹脂フィルムなども含まれるとしても良い。また、上記の実施の形態における処理がソフトウェアにより行なわれる構成であっても良いし、ハードウェア回路を用いて行なわれる構成であっても良い。
また、上記実施の形態及び変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
本発明は、画像安定化制御と枚数制御を行う画像形成装置に適用することができる。
1 プリンター
10 作像部
18 プロセスモーター
20 中間転写部
30 給送部
40 定着部
41 定着ローラー
43 励磁コイル
44 定着温度センサー
50 制御部
60 IH電源部
104 安定化制御部
105 安定化実行予測部
106 定着温調制御部
108 PPM制御部
109 PPM実行予測部
111 プロセス速度変更部
S 用紙
Tz 閾値
V プロセス速度(画像形成速度)
Va 第1速度(速い速度)
Vb 第2速度(遅い速度)
Vs 基準速度

Claims (9)

  1. 搬送される複数枚のシートに画像を形成し、シートごとにその画像を、加熱された定着部材の熱により当該シートに定着させる画像形成動作を実行する画像形成装置であって、
    形成画像の画質を安定化するための所定の画像安定化制御を、画像形成動作を一時中断させて実行する安定化制御手段と、
    前記定着部材の温度を検出する検出手段と、
    前記定着部材の温度が画像形成動作に伴って変化して画像形成動作中に目標温度よりも低いまたは高い閾値に達すると、単位時間当たりのシート搬送枚数を減らす枚数制御を開始する枚数制御手段と、
    前記定着部材の温度が前記閾値に達すると、前記目標温度に戻るように前記定着部材への加熱量を制御する加熱制御手段と、
    N(複数)枚のシートに対して画像形成動作を連続して実行すれば、前記画像安定化制御と枚数制御とが時間的にずれて別々に実行されることを予測する予測手段と、
    前記予測が行われると、N枚のうち、前記画像安定化制御による一時中断までの間に実行される予定のP枚に含まれる1枚以上のシートに対する画像形成の画像形成速度を、基準速度から、前記予測された枚数制御の開始時期が前記予測された画像安定化制御の実行期間に入るようになる条件を満たす速度に変更する速度変更手段と、
    を備えることを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記P枚のシートに対する画像形成動作は、
    1枚以上のシートに対する画像形成動作を1つの画像形成のジョブとしたときに、複数のジョブを連続実行する動作であり、
    前記速度変更手段は、
    前記画像安定化制御の方が枚数制御よりも早く実行されることが予測されると、
    前記条件を満たすように、前記予測された画像安定化制御が開始される直前のジョブの画像形成速度を基準速度よりも速い速度に変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記速度変更手段は、
    前記速い速度が上限速度を超えている場合には、
    画像形成速度を高速に変更しようとする対象のジョブを、前記直前のジョブとこれよりも前の少なくとも1つのジョブとに拡大して、これらのジョブに対する画像形成速度を、前記条件を満たすように、基準速度よりも速い速度に変更することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  4. 前記P枚のシートに対する画像形成動作は、
    1枚以上のシートに対する画像形成動作を1つの画像形成のジョブとしたときに、複数のジョブを連続実行する動作であり、
    前記速度変更手段は、
    前記枚数制御の方が画像安定化制御よりも早く実行されることが予測されると、
    前記条件を満たすように、前記複数のジョブのうち、前記予測された安定化制御が開始される直前のジョブの画像形成速度を基準速度よりも速い速度に変更すると共に、当該直前のジョブよりも前の少なくとも1つのジョブの画像形成速度を基準速度よりも遅い速度に変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  5. 前記速度変更手段は、
    前記速い速度が上限速度を超えている場合には、
    画像形成速度を高速に変更しようとする対象のジョブを、前記直前のジョブとこれよりも前の少なくとも1つのジョブとに拡大して、これらのジョブに対する画像形成速度を基準速度よりも速い速度に変更し、かつ、当該変更されるジョブよりも前のジョブの画像形成速度を基準速度よりも遅い速度に変更することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
  6. 前記速度変更手段は、
    前記画像安定化制御に要する時間をtsa、画像形成速度を増速する結果、減少する画像形成の実行時間をtΔ1、画像形成速度を減速する結果、増加する画像形成の実行時間をtΔ2としたとき、
    時間tsaに時間tΔ2を加算した時間が前記時間tΔ1に等しくなるように、前記速い速度と遅い速度を設定することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
  7. 前記速度変更手段は、
    全てのジョブに対する画像形成速度を変更しても、前記条件を満たさないと判断すると、前記速度変更を禁止することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  8. 前記予測手段は、
    前記N枚のシートに対する画像形成を実行すればその間に前記画像安定化制御の所定の実行タイミングに至ることを判断する第1判断手段と、
    前記N枚のシートに対する画像形成を実行すればその間に前記定着部材の予測温度が前記閾値に達することを判断する第2判断手段と、を備え、
    前記第1判断手段と第2判断手段の両方による判断が行われると、前記予測を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  9. 前記予測手段は、
    前記N枚のシートに対する画像形成を実行すればその間に前記定着部材の予測温度が所定の許容温度以下になることを判断する第3判断手段を備え、
    前記許容温度は、
    前記N枚のシートのうち、第1の大きさのシートの幅方向長さをCD1、これの次に画像形成が予定されている第2の大きさのシートの幅方向長さを、前記CD1よりも幅広のCD2としたとき、(CD2−CD1)で表されるCD長の差分の大きさに応じて、当該差分による前記定着部材のシート幅方向における温度差の許容値として予め設定された、前記定着部材の、前記目標温度よりも所定値だけ低い温度であり、
    前記第3判断手段による判断が行われた場合には、前記第2判断手段による判断が行われてなくても、前記第1判断手段による判断が行われていれば、前記予測を行うことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
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