以下、本発明の車両用変速機の実施形態に係る自動変速機31について図面を参照して説明する。図1に示すように、自動変速機31は、ハイブリッド車両に搭載されている。
ハイブリッド車両は、内燃機関としてのエンジンENGと、電動機としてのモータMGと、モータMGと電力を授受する二次電池からなる蓄電池1と、当該車両の車載機器等に対して電力を供給する12Vのバッテリ2と、蓄電池1からバッテリ2へ電圧を変換して電力を供給するDC/DCコンバータ3と、自動変速機31と、エンジンENG、モータMG、自動変速機31、DC/DCコンバータ3等を制御する電子制御装置ECU(Electronic Control Unit)21とを備える。
さらに、ハイブリッド車両は、シフトレンジが選択されるシフトセレクタ22、及びハイブリッド車両の傾斜角度θ、すなわち、走行路の傾斜角度θを検出する傾斜センサ23を備える。
ECU21は、各種演算処理を実行するCPU21aと、CPU21aで実行される各種演算プログラム、各種テーブル、演算結果などを記憶するROM及びRAMからなる記憶装置(メモリ)21bとを備え、各種電気信号を入力するとともに、演算結果などに基づいて駆動信号を外部に出力する。
ECU21は、アクセル開度、バッテリ2における充電率(SOC)等の車両情報や、運転手がシフトセレクタ22で選択したシフトレンジに基づき、自動変速機31を制御する。ECU21のCPU21aは、本発明における制御部として機能する。
シフトセレクタ22は、ここでは、シフトバイワイヤ方式で自動変速機31と接続されている。シフトセレクタ22には、詳細は図示しないが、シフトレンジとして、ドライブレンジ(Dレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、及びパーキングレンジ(Pレンジ)が存在する。Dレンジ、Nレンジ、Rレンジの各レンジには、ホームポジションに位置するシフタを運転手が操作して、各レンジに対応する位置に移動させることにより、選択される。そして、Pレンジは、運転手がパーキングボタンを押下することにより選択される。
なお、各レンジは排他的であり、車両がPレンジの状態で、他のレンジ、例えばDレンジが選択されると、Pレンジ状態が解除されて、Dレンジの状態に移行する。本発明におけるパーキング解除レンジとは、Pレンジ状態を解除させるDレンジ、Nレンジ、又はRレンジに相当する。そして、本発明における発進レンジはDレンジ又はRレンジに、前進レンジはDレンジに、後進レンジはRレンジにそれぞれ相当する。
シフトセレクタ22の操作により生成される電気信号がCPU21aに送信され、CPU21aが変速用のアクチュエータを駆動制御することによって、自動変速機31の変速制御が行われる。CPU21aは、本発明におけるレンジ検出手段として機能する。
傾斜センサ23は、ハイブリッド車両の傾斜角度θを検出して、検出角度θに応じた検出信号をCPU21aに送信する。
自動変速機31は、エンジンENGの駆動力(出力トルク)が伝達されるエンジン出力軸32と、図外のディファレンシャルギアを介して駆動輪としての左右の前輪に動力を出力する出力ギアからなる出力部材33と、変速比の異なる複数のギア列G2〜G7とを備える。
また、自動変速機31は、変速比順位で奇数番目の各変速段を確立するギア列G3、G5、G7の駆動ギアG3a、G5a、G7aを回転自在に軸支する第1入力軸34と、変速比順位で偶数番目の変速段を確立するギア列G2、G4、G6の駆動ギアG2a、G4a、G6aを回転自在に軸支する第2入力軸35と、リバースギアGRを回転自在に軸支するリバース軸36を備える。
なお、ギア列G3、G5、G7は、本発明における第1のギア列群を構成する。ギア列G2、G4、G6は、本発明における第2のギア列群を構成する。また、第1入力軸34はエンジン出力軸32と同一軸線上に配置され、第2入力軸35及びリバース軸36は第1入力軸34と平行に配置される。
また、自動変速機31は、第1入力軸34に回転自在に軸支されたアイドル駆動ギアGiaと、アイドル軸37に固定され、アイドル駆動ギアGiaに噛合する第1アイドル従動ギアGibと、第2入力軸35に固定され、第1アイドル従動ギアGibに噛合する第2アイドル従動ギアGicと、リバース軸36に固定され、第1アイドル従動ギアGibに噛合する第3アイドル従動ギアGidとで構成されるアイドルギア列Giを備える。なお、アイドル軸37は第1入力軸34と平行に配置される。
詳細は図示しないが、第1入力軸34、第2入力軸35、リバース軸36、及びアイドル軸37は、ボールベアリングを用いて支持される。
自動変速機31は、油圧作動型の乾式摩擦クラッチ又は湿式摩擦クラッチからなる第1クラッチC1及び第2クラッチC2を備える。第1クラッチC1は、エンジン出力軸32に伝達されたエンジンENGの駆動力を第1入力軸34に伝達度合を変化させて伝達させることができる伝達状態と、この伝達を断つ開放状態とに切替え自在に構成される。第2クラッチC2は、エンジン出力軸32に伝達されたエンジンENGの駆動力を第2入力軸35に伝達度合を変化させて伝達させることができる伝達状態と、この伝達を断つ開放状態とに切替え自在に構成される。第2クラッチC2を締結させて伝達状態とすると、エンジン出力軸32は、第1アイドル従動ギアGib及び第2アイドル従動ギアGicを介して第2入力軸35に連結される。
両クラッチC1、C2は、素早く状態が切替えられるように電気式アクチュエータにより作動されるものであることが好ましい。なお、両クラッチC1、C2は、油圧式アクチュエータにより作動されるものであってもよい。
また、自動変速機31には、エンジン出力軸32と同軸上に位置させて、差動回転機構である遊星歯車機構PGが配置されている。遊星歯車機構PGは、サンギアSaと、リングギアRaと、サンギアSa及びリングギアRaに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるシングルピニオン型で構成される。
遊星歯車機構PGのサンギアSa、キャリアCa、リングギアRaからなる3つの回転要素を、速度線図(各回転要素の相対的な回転速度を直線で表すことができる図)におけるギア比に対応する間隔での並び順にサンギアSa側からそれぞれ第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素とすると、第1回転要素はサンギアSa、第2回転要素はキャリアCa、第3回転要素はリングギアRaとなる。
そして、遊星歯車機構PGのギア比(リングギアRaの歯数/サンギアSaの歯数)をgとして、第1回転要素たるサンギアSaと第2回転要素たるキャリアCaの間の間隔と、第2回転要素たるキャリアCaと第3回転要素たるリングギアRaの間の間隔との比が、g:1となる。
第1回転要素たるサンギアSaは、第1入力軸34に固定される。第2回転要素たるキャリアCaは、3速ギア列G3の3速駆動ギアG3aに連結される。第3回転要素たるリングギアRaは、ロック機構R1により変速機ケース等の不動部に解除自在に固定される。
ロック機構R1は、リングギアRaが不動部に固定される固定状態、又はリングギアRaが回転自在な開放状態の何れかの状態に切替え自在なシンクロメッシュ機構で構成される。
なお、ロック機構R1は、シンクロメッシュ機構に限らず、スリーブ等による摩擦係合解除機構の他、湿式多板ブレーキ、ハブブレーキ、バンドブレーキ等のブレーキや、ワンウェイクラッチ、2ウェイクラッチなどで構成してもよい。また、遊星歯車機構PGは、サンギアと、リングギアと、互いに噛合し一方がサンギア、他方がリングギアに噛合する一対のピニオンPa、Pa’を自転及び公転自在に軸支するキャリアとからなるダブルピニオン型で構成してもよい。
この場合、例えば、サンギア(第1回転要素)を第1入力軸34に固定し、リングギア(第2回転要素)を3速ギア列G3の3速駆動ギアG3aに連結し、キャリア(第3回転要素)をロック機構R1で不動部に解除自在に固定するように構成すればよい。
モータMGは、ステータMGaとロータMGbとを備える。また、モータMGは、ECU21の指示信号に基づき、パワードライブユニット4を介して制御される。ECU21は、パワードライブユニット4を、蓄電池1の電力を消費してモータMGを駆動させる駆動状態と、ロータMGbの回転力を抑制させて発電し、発電した電力を、パワードライブユニット4を介して蓄電池1に充電する回生状態とに適宜切替える。
バッテリ2は、当該車両の車載機器等に対して電力を供給し、12Vの電圧を出力する。また、ECU21の制御信号によって、蓄電池1の電力がDC/DCコンバータ3を介してバッテリ2に充電が可能である。
出力部材33を軸支する出力軸33aには、2速駆動ギアG2a及び3速駆動ギアG3aに噛合する第1従動ギアGo1、4速駆動ギアG4a及び5速駆動ギアG5aに噛合する第2従動ギアGo2、並びに6速駆動ギアG6a及び7速駆動ギアG7aに噛合する第3従動ギアGo3が固定される。
このように、2速ギア列G2と3速ギア列G3の従動ギア、4速ギア列G4と5速ギア列G5の従動ギア、及び6速ギア列G6と7速ギア列G7の従動ギアをそれぞれ1つのギアGo1、Go2、Go3で構成することにより、自動変速機31の軸長を短くすることができ、FF(前輪駆動)方式の車両への搭載性を向上させることができる。
また、第1入力軸34には、リバースギアGRに噛合するリバース従動ギアGRaが固定されている。
第1入力軸34には、シンクロメッシュ機構で構成され、3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した3速側連結状態、7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結した7速側連結状態、3速駆動ギアG3a及び7速駆動ギアG7aと第1入力軸34との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替え選択自在な噛合機構SM1が設けられる。
また、第1入力軸34には、5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結した5速側連結状態、出力軸33aが変速機ケース等の不動部に固定されたパーキングロック状態、5速側連結状態とパーキングロック状態を解除したニュートラル状態の何れかの状態に切替え自在な噛合機構SM2が設けられる。
上述のリングギアRaを変速機ケース等に解除自在に固定するロック機構R1と、噛合機構SM1及び噛合機構SM2は、本発明における第1噛合機構を構成する。第1噛合機構は、第1入力軸34及び出力軸33aを、第1変速ギア列(ギア列G3、G5、G7)を介して相互に連結した連結状態と連結しない非連結状態とに切替える。
噛合機構SM2は、出力軸33aに固定されたパーキングギアGoPとともにパーキングロック機構を構成する。パーキングロック機構は、噛合機構SM2が、上述のパーキングロック状態に切替えられたとき、噛合機構SM2によりパーキングボールをパーキングギアGoPに噛み込ませ、出力軸33aを変速機ケース等に固定する。
第2入力軸35には、シンクロメッシュ機構で構成され、2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結した2速側連結状態、6速駆動ギアG6aと第2入力軸35とを連結した6速側連結状態、2速駆動ギアG2a及び6速駆動ギアG6aと第2入力軸35との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替え選択自在な噛合機構SM3が設けられる。
また、第2入力軸35には、シンクロメッシュ機構で構成され、4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結した4速側連結状態、及び4速駆動ギアG4aと第2入力軸35との連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替え選択自在な噛合機構SM4が設けられる。
噛合機構SM3、噛合機構SM4は、本発明における第2噛合機構を構成する。第2噛合機構は、第2入力軸35及び出力軸33aを、第2変速ギア列(ギア列G2、G4、G6)を介して相互に連結した連結状態と連結しない非連結状態とに切替える。
リバース軸36には、シンクロメッシュ機構で構成され、リバースギアGRとリバース軸36とを連結した連結状態と、この連結を断つニュートラル状態の何れかの状態に切替え選択自在な噛合機構SM5が設けられる。
次に、上記のように構成された自動変速機31の作動について説明する。自動変速機31では、第1クラッチC1を係合させることにより、モータMGの駆動力を用いてエンジンENGを始動させることができる。
エンジンENGの駆動力を用いて1速段を確立する場合には、ロック機構R1により遊星歯車機構PGのリングギアRaを固定状態とし、第1クラッチC1を締結させて伝達状態とする。エンジンENGの駆動力のみによる走行をENG走行という。
エンジンENGの駆動力は、エンジン出力軸32、第1クラッチC1、第1入力軸34を介して、遊星歯車機構PGのサンギアSaに入力され、エンジン出力軸32に入力されたエンジンENGの回転数が1/(g+1)に減速されて、キャリアCaを介し3速駆動ギアG3aに伝達される。
3速駆動ギアG3aに伝達された駆動力は、3速駆動ギアG3a及び第1従動ギアGo1で構成される3速ギア列G3のギア比(3速駆動ギアG3aの歯数/第1従動ギアGo1の歯数)をiとして、1/i(g+1)に変速されて第1従動ギアGo1及び出力軸33aを介し出力部材33から出力され、1速段が確立される。
このように、自動変速機31では、遊星歯車機構PG及び3速ギア列で1速段を確立できるため、1速段専用の噛合機構が必要なく、これにより、自動変速機31の軸長の短縮化を図ることができる。
なお、1速段において、車両が減速状態にある場合には、蓄電池1の蓄電量SOCに応じて、ECU21は、モータMGでブレーキをかけることにより発電を行う減速回生運転を行う。また、蓄電池1の蓄電量SOCに応じて、モータMGを駆動させて、エンジンENGの駆動力を補助するHEV(Hybrid Electric Vehicle)走行、又はモータMGの駆動力のみで走行するEV(Electric Vehicle)走行を行うことができる。
また、EV走行中であって車両の減速が許容された状態であり、かつ車両速度が一定速度以上の場合には、第1クラッチC1を徐々に締結させることにより、モータMGの駆動力を用いることなく、車両の運動エネルギーを用いてエンジンENGを始動させることができる。
また、1速段で走行中に2速段にアップシフトされることをECU21が車両速度やアクセル開度等の車両情報から予測した場合には、噛合機構SM3を2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結させる2速側連結状態又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
エンジンENGの駆動力を用いて2速段を確立する場合には、噛合機構SM3を2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結させた2速側連結状態とし、第2クラッチC2を締結して伝達状態とする。2速段が確立されると、エンジンENGの駆動力が、第2クラッチC2、アイドルギア列Gi、第2入力軸35、2速ギア列G2及び出力軸33aを介して、出力部材33から出力される。
なお、2速段において、ECU21がアップシフトを予測している場合には、噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結した3速側連結状態又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。逆に、ECU21がダウンシフトを予測している場合には、噛合機構SM1を、3速駆動ギアG3a及び7速駆動ギアG7aと第1入力軸34との連結を断つニュートラル状態とする。
これにより、アップシフト又はダウンシフトを、第1クラッチC1を伝達状態とし、第2クラッチC2を開放状態とするだけで行うことができ、変速段の切替えを駆動力が途切れることなくスムーズに行うことができる。
また、2速段においても、車両が減速状態にある場合、蓄電池1の蓄電量SOCに応じて、ECU21は、減速回生運転を行う。2速段において減速回生運転を行う場合には、噛合機構SM1が3速側連結状態であるか、ニュートラル状態であるかで異なる。
噛合機構SM1が3速側連結状態である場合には、2速駆動ギアG2aで回転される第1従動ギアGo1によって回転する3速駆動ギアG3aが第1入力軸34を介してモータMGのロータMGbを回転させるため、このロータMGbの回転を抑制しブレーキをかけることにより発電して回生を行う。
噛合機構SM1がニュートラル状態である場合には、ロック機構R1を固定状態とすることによりリングギアRaの回転数を「0」とし、第1従動ギアGo1に噛合する3速駆動ギアG3aとともに回転するキャリアCaの回転数を、サンギアSaに連結させたモータMGにより発電させることによりブレーキをかけて、回生を行う。
また、2速段においてHEV走行する場合には、例えば、噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結させた3速側連結状態として、ロック機構R1を開放状態とすることにより遊星歯車機構PGを各回転要素が相対回転不能な状態とし、モータMGの駆動力を、3速ギア列G3を介して出力部材33に伝達することにより行うことができる。
又は、噛合機構SM1をニュートラル状態、ロック機構R1を固定状態としてリングギアRaの回転数を「0」とし、モータMGの駆動力を1速段の経路で第1従動ギアGo1に伝達することによっても、2速段によるHEV走行を行うことができる。
エンジンENGの駆動力を用いて3速段を確立する場合には、噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結させた3速側連結状態として、第1クラッチC1を締結させて伝達状態とする。3速段が確立されると、エンジンENGの駆動力は、エンジン出力軸32、第1クラッチC1、第1入力軸34、噛合機構SM1、3速ギア列G3を介して、出力軸33aに伝達され、1/iの回転数で出力される。
3速段においては、噛合機構SM1が3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結させた3速側連結状態となっているため、遊星歯車機構PGのサンギアSaとキャリアCaとが同一回転となる。
したがって、遊星歯車機構PGの各回転要素が相対回転不能な状態となり、モータMGでサンギアSaにブレーキをかければ減速回生となり、モータMGでサンギアSaに駆動力を伝達させれば、HEV走行を行うことができる。また、第1クラッチC1を開放して、モータMGの駆動力のみで走行するEV走行も可能である。
3速段において、ECU21は、車両速度やアクセルペダルの開度等の車両情報に基づきダウンシフトが予測される場合には、噛合機構SM3を2速駆動ギアG2aと第2入力軸35とを連結する2速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とし、アップシフトが予測される場合には、噛合機構SM4を4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結する4速側連結状態、又はこの状態に近付けるプレシフト状態とする。
これにより、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とし、第1クラッチC1を開放させて開放状態とするだけで、変速段の切替えを行うことができ、駆動力が途切れることなく変速をスムーズに行うことができる。
同様に、エンジンENGの駆動力を用いて4〜7速段を確立する場合には、噛合機構SM4、噛合機構SM2、噛合機構SM3、噛合機構SM1を、4速駆動ギアG4aと第2入力軸35とを連結させた4速側連結状態、5速駆動ギアG5aと第1入力軸34とを連結させた5速側連結状態、6速駆動ギアG6aと第2入力軸35とを連結させた6速側連結状態、7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結させた7速側連結状態とする。
そして、4速段又は6速段を確立する場合にあっては、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とする。5速段又は7速段を確立する場合にあっては、第1クラッチC1を締結させて伝達状態とする。
4速段又は6速段が確立された場合には、エンジンENGの駆動力が、第2クラッチC2、アイドルギア列Gi、第2入力軸35、4速ギア列G4又は6速ギア列G6、及び出力軸33aを介して、出力部材33から出力される。5速段又は7速段が確立された場合には、エンジンENGの駆動力が、第1クラッチC1、第1入力軸34、5速ギア列G5又は7速ギア列G7、及び出力軸33aを介して、出力部材33から出力される。
4〜7速段で走行中は、ECU21が車両情報からダウンシフトを予測している場合には、それぞれ3〜6速側連結状態、又は各状態に近付けるプレシフト状態とする。4〜6速段で走行中に、ECU21が車両情報からアップシフトを予測している場合には、それぞれ5〜7速側連結状態、又は、この状態に近付けるプレシフト状態とする。
これにより、4又は6速段からは、第1クラッチC1を締結させて伝達状態とし、第2クラッチC2を開放させて開放状態とするだけで、ダウンシフト又はアップシフトを、駆動力を途切れさせることなく行うことができる。また、5又は7速段からは、第1クラッチC1を開放させて開放状態とし、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とするだけで、ダウンシフト又はアップシフトを、駆動力を途切れさせることなく行うことができる。
2速段で走行中の場合と同様に、4又は6速段で走行中に減速回生又はHEV走行を行う場合には、動力伝達装置ECU21がダウンシフトを予測しているときには、噛合機構SM1を3速側連結状態とし、又は噛合機構SM2を5速側連結状態とし、モータMGでブレーキをかければ減速回生、駆動力を伝達すればHEV走行を行うことができる。
ECU21がアップシフトを予測しているときには、噛合機構SM2を5速側連結状態とし、又は噛合機構SM1を7速側連結状態とし、モータMGによりブレーキをかければ減速回生、モータMGから駆動力を伝達させればHEV走行を行うことができる。
3速段の場合と同様に、5又は7速段においては、第1クラッチC1が伝達状態とされることによりエンジンENGとモータMGとが直結された状態となるため、モータMGから駆動力を出力すればHEV走行を行うことができ、モータMGでブレーキをかけ発電すれば減速回生を行うことができる。EV走行を行う場合には、第1クラッチC1を開放状態とすればよい。また、EV走行中に、第1クラッチC1を徐々に締結させることにより、エンジンENGの始動を行うこともできる。
エンジンENGの駆動力を用いて後進段を確立する場合には、ロック機構R1を固定状態とし、噛合機構SM5をリバースギアGRとリバース軸36とを連結した連結状態として、第2クラッチC2を締結させて伝達状態とする。これにより、エンジン出力軸32の駆動力が、第2クラッチC2、アイドルギア列Gi、リバースギアGR、リバース従動ギアGRa、サンギアSa、キャリアCa、3速ギア列G3及び出力軸33aを介して後進方向の回転として、出力部材33から出力され、後進段が確立される。
(第1の実施形態に係るパーキングロック機構の解除処理)
以下、本発明の第1の実施形態に係るパーキングロック機構の解除処理について、図2を参照して説明する。この解除処理は、CPU21aにより実行される。
まず、CPU21aは、パーキングロック機構の解除操作が生じたか否かを判定する(ステップS1)。パーキングロック機構の解除操作としては、シフトセレクタ22のPレンジ以外のレンジ、Dレンジ、Rレンジ、Nレンジが選択されたことを示すシフタ信号をCPU21aが受信したことが該当する。Dレンジが選択された場合はDシフタ信号が、Rレンジが選択された場合はRシフタ信号が、Nレンジが選択された場合はNシフタ信号が、それぞれ受信される。
Dシフタ信号を受信したと判定した場合(ステップS1:D)、CPU21aは、傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えるか否かを判定する(ステップS2)。所定の閾値θthとしては、例えば5度などである。
傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えないと判定した場合(ステップS2:NO)、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS3)。パーキングロック機構の解除は、パーキングロック状態の噛合機構SM2をニュートラル状態に切替えることにより行う。
一方、傾斜センサ23の検出角度θが閾値θthを超えると判定した場合(ステップS2:YES)、CPU21aは、噛合機構SM1,SM3,SM4の少なくとも1つの噛合機構を連結状態とする(ステップS4)。例えば、噛合機構SM3を6速側連結状態とする。これによれば、噛合機構SM3を2速側連結状態とした場合よりもフリクションが大きくなるので、好ましい。ただし、噛合機構SM3を2速側連結状態としてもよい。さらに、噛合機構SM3の連結状態に加えて、又は噛合機構SM3の連結状態に代えて、噛合機構SM1,SM4を連結状態としてもよい。
その後、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS3)。
さらに、その後、CPU21aは、車両のDレンジで発進準備のために、自動変速機31をDレンジ状態にする(ステップS5)。具体的には、CPU21aは、ロック機構R1により遊星歯車機構PGのリングギアRaを固定状態とさせ、第1クラッチC1を締結させる。これにより、前速1速のENG走行での発進が可能となる。
ただし、ステップS4で噛合機構SM1を連結状態とした場合、噛合機構SM1をニュートラル状態に切替えた後、第1クラッチC1を締結させる必要がある。よって、ステップS3では、噛合機構SM1を連結状態とはせずに、噛合機構SM3、SM4の少なくとも一方を連結状態にすることが好ましい。
また、ステップS4で噛合機構SM3を2速側連結状態とした場合、ステップS5で第2クラッチC2を締結させて、前速2速のENG走行で発進させるようにしてもよい。
Nシフタ信号を受信したと判定した場合(ステップS1:N)、CPU21aは、傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えるか否かを判定する(ステップS6)。
傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えないと判定した場合(ステップS6:NO)、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS7)。パーキングロック機構の解除は、パーキングロック状態の噛合機構SM2をニュートラル状態に切替えることにより行う。
一方、傾斜センサ23の検出角度θが閾値θthを超えると判定した場合(ステップS6:YES)、CPU21aは、噛合機構SM1,SM3,SM4の少なくとも1つの噛合機構を連結状態とする(ステップS8)。例えば、噛合機構SM1を7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結する7速側連結状態とする。なお、噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結する3速側連結状態としてもよい。
その後、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS7)。
さらに、その後、CPU21aは、自動変速機31をNレンジ状態にする(ステップS9)。具体的には、CPU21aは、ステップS9で、連結状態とした噛合機構SM1,SM3,SM4をニュートラル状態に切替える。このように、Nシフタ信号を受信したと判定した場合(ステップS1:N)、ステップS8で連結状態とした噛合機構SM1,SM3,SM4をステップS9でニュートラル状態に切替えるので、ステップS8では何れの噛合機構SM1,SM3,SM4を連結状態としてもよい。
Rシフタ信号を受信したと判定した場合(ステップS1:R)、CPU21aは、傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えるか否かを判定する(ステップS10)。
傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えないと判定した場合(ステップS10:NO)、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS11)。パーキングロック機構の解除は、パーキングロック状態の噛合機構SM2をニュートラル状態に切替えることにより行う。
一方、傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えると判定した場合(ステップS10:YES)、CPU21aは、噛合機構SM1,SM3,SM4の少なくとも1つの噛合機構を連結状態とする(ステップS12)。例えば、噛合機構SM3を6速側連結状態とする。これによれば、噛合機構SM3を2速側連結状態とした場合よりもフリクションが大きくなるので、好ましい。ただし、噛合機構SM3を2速側連結状態としてもよい。さらに、噛合機構SM3の連結状態に加えて、又は噛合機構SM3の連結状態に代えて、噛合機構SM1,SM4を連結状態としてもよい。
その後、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS11)。
さらに、その後、CPU21aは、車両のRレンジで発進準備のために、自動変速機31をRレンジ状態にする(ステップS13)。具体的には、CPU21aは、ロック機構R1により遊星歯車機構PGのリングギアRaを固定状態とさせ、噛合機構SM5をリバースギアGRとリバース軸36とを連結した連結状態とさせ、第2クラッチC2を締結させる。これにより、後速段のENG走行での発進が可能となる。
ただし、ステップS12で噛合機構SM3,SM4を連結状態とした場合、噛合機構SM3,SM4をニュートラル状態に切替えた後、第2クラッチC2を締結させる必要がある。よって、ステップS12では、噛合機構SM3,SM4を連結状態とはせずに、噛合機構SM1を連結状態にすることが好ましい。
第1の実施形態によれば、パーキングロック状態において、Dレンジ、Nレンジ、又Rレンジが選択されてパーキングロック状態を解除する際に(ステップS1:YES)、車両の駐車路の傾斜が大きく、傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えるときは、ギア列G2〜G4,G6又はG7の中の何れか少なくとも1つのギア列を確立させた後(ステップS4,S8,S12)、パーキングロック機構のロックを解除する(ステップS3,S7,S11)。
そのため、車両の駐車路の傾斜が大きく駆動輪から出力軸33aとの間に大きな捩れが発生している場合に、パーキングロック状態を解除したとき、捩れが解放されたことによる反力(以下、捩れ反力という)が、確立させたギア列の摩擦(フリクション)によって低減される。従って、パーキングロック状態を解除したときに、第1入力軸34、第2入力軸35、リバース軸36、及びアイドル軸37の軸受部など、自動変速機31内のガタ部で生じる打音を抑制することができる。
(第2の実施形態に係るパーキングロック機構の解除処理)
以下、本発明の第2の実施形態に係るパーキングロック機構の解除処理について、図3を参照して説明する。この解除処理は、CPU21aにより実行される。
まず、CPU21aは、パーキングロック機構の解除操作が生じたか否かを判定する(ステップS21)。
Dシフタ信号を受信したと判定した場合(ステップS21:D)、CPU21aは、傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えるか否かを判定する(ステップS22)。所定の閾値θthは、検出角度θが下傾(降坂)である場合はθth1であり、例えば7度、検出角度θが上傾(登坂)である場合はθth2であり、例えば3度である。このように、検出角度θが下傾である場合の閾値θth1は、検出角度θが上傾である場合の閾値θth2よりも絶対値が大きく設定されている。
傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えないと判定した場合(ステップS22:NO)、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS23)。パーキングロック機構の解除は、パーキングロック状態の噛合機構SM2をニュートラル状態に切替えることにより行う。
一方、傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えると判定した場合(ステップS22:YES)、CPU21aは、噛合機構SM3,SM4の少なくとも1つの噛合機構を連結状態とする(ステップS24)。例えば、噛合機構SM3を6速側連結状態とする。これによれば、噛合機構SM3を2速側連結状態とした場合よりもフリクションが大きくなるので、好ましい。ただし、噛合機構SM3を2速側連結状態としてもよい。さらに、噛合機構SM3の連結状態に加えて、又は噛合機構SM3の連結状態に代えて、噛合機構SM4を連結状態としてもよい。
さらに、CPU21aは、第2クラッチC2を係合させる(ステップS25)。このとき、CPU21aは、図4に示したような傾斜角度θと係合トルクTとの関係をグラフに基づいて、傾斜センサ23での検出角度θに応じた係合トルクTが発生させるように、係合度合を調整して第2クラッチC2を係合させる。図4では、傾斜角度θが下傾である場合を点線で、検出角度θが上傾である場合を実線でそれぞれ示している。このように、検出角度θが下傾である場合の係合トルクTは、検出角度θが上傾である場合の係合トルクTよりも小さく設定される。
具体的には、傾斜角度θと係合トルクTとを対応付けしたテーブルやマップなどがメモリ21bに格納されており、CPU21aは、傾斜センサ23での検出角度θに応じて、このテーブルやマップなどを参照して、係合トルクTを取得する。
その後、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS26)。パーキングロック機構の解除は、パーキングロック状態の噛合機構SM2をニュートラル状態に切替えることにより行う。そして、CPU21aは、第2クラッチC2の係合を解除させる(ステップS27)。
さらに、その後、CPU21aは、車両のDレンジで発進準備のために、自動変速機31をDレンジ状態にする(ステップS28)。具体的には、CPU21aは、ロック機構R1により遊星歯車機構PGのリングギアRaを固定状態とさせ、第1クラッチC1を締結させる。これにより、前速1速のENG走行での発進が可能となる。
なお、ステップS24で噛合機構SM3を2速側連結状態とした場合、ステップS27で第2クラッチC2を締結させて、前速2速のENG走行で発進させるようにしてもよい。
Nシフタ信号を受信したと判定した場合(ステップS21:N)、CPU21aは、傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えるか否かを判定する(ステップS29)。ここで、所定の閾値θthは、下傾であるか上傾であるかに拘わらず一定であり、例えば5度である。
傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えないと判定した場合(ステップS29:NO)、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS30)。パーキングロック機構の解除は、パーキングロック状態の噛合機構SM2をニュートラル状態に切替えることにより行う。
一方、傾斜センサ23の検出角度θが閾値θthを超えると判定した場合(ステップS29:YES)、CPU21aは、噛合機構SM1,SM3,SM4の少なくとも1つの噛合機構を連結状態とする(ステップS31)。例えば、噛合機構SM1を7速駆動ギアG7aと第1入力軸34とを連結する7速側連結状態とする。なお、噛合機構SM1を3速駆動ギアG3aと第1入力軸34とを連結する3速側連結状態としてもよい。
そして、その後、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS30)。パーキングロック機構の解除は、パーキングロック状態の噛合機構SM2をニュートラル状態に切替えることにより行う。
さらに、その後、CPU21aは、自動変速機31をNレンジ状態にする(ステップS32)。具体的には、CPU21aは、ステップS31で連結状態とした噛合機構SM1,SM3,SM4をニュートラル状態に切替える。このように、Nシフタ信号を受信したと判定した場合(ステップS21:N)、ステップS31で連結状態とした噛合機構SM1,SM3,SM4をステップS32でニュートラル状態に切替えるので、ステップS31では何れの噛合機構SM1,SM3,SM4を連結状態としてもよい。
なお、ステップS31後に、第1クラッチC1又は第2クラッチC2を半締結させてもよい。ただし、この場合、ステップS31でパーキングロック機構を解除したとき、車両が運転手の意図に反して発進するおそれがあるので好ましくない。。
Rシフタ信号を受信したと判定した場合(ステップS21:R)、CPU21aは、傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えるか否かを判定する(ステップS33)。所定の閾値θthは、検出角度θが上傾(登坂)である場合はθth1であり、例えば7度、検出角度θが下傾(降坂)である場合はθth2であり、例えば3度である。このように、検出角度θが上傾である場合の閾値θth1は、検出角度θが下傾である場合の閾値θth2よりも絶対値が大きく設定されている。
傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えないと判定した場合(ステップS33:NO)、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS34)。パーキングロック機構の解除は、パーキングロック状態の噛合機構SM2をニュートラル状態に切替えることにより行う。
一方、傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えると判定した場合(ステップS33:YES)、CPU21aは、噛合機構SM1を連結状態とする(ステップS35)。例えば、噛合機構SM1を7速側連結状態とする。これによれば、噛合機構SM1を3速側連結状態とした場合よりもフリクションが大きくなるので、好ましい。ただし、噛合機構SM1を3速側連結状態としてもよい。
さらに、CPU21aは、第1クラッチC1を半係合させる(ステップS36)。このとき、CPU21aは、図4に示したような傾斜角度θと係合トルクTとの関係をグラフに基づいて、傾斜センサ23での検出角度θに応じた係合トルクTが発生させるように、係合度合を調整して第1クラッチC1を係合させる。図4には、傾斜角度θが上傾である場合を点線で、検出角度θが下傾である場合を実線でそれぞれ示されている。このように、検出角度θが上傾である場合の係合トルクTは、検出角度θが下傾である場合の係合トルクTよりも小さく設定されている。
具体的には、傾斜角度θと係合トルクTとを対応付けしたテーブルやマップなどがメモリ21bに格納されており、CPU21aは、傾斜センサ23での検出角度θに応じて、このテーブルやマップなどを参照して、係合トルクTを取得する。
その後、CPU21aは、パーキングロック機構を解除させる(ステップS37)。パーキングロック機構の解除は、パーキングロック状態の噛合機構SM2をニュートラル状態に切替えることにより行う。そして、CPU21aは、第1クラッチC1の係合を解除させる(ステップS38)。
さらに、その後、CPU21aは、車両のRレンジで発進準備のために、自動変速機31をRレンジ状態にする(ステップS39)。具体的には、CPU21aは、ロック機構R1により遊星歯車機構PGのリングギアRaを固定状態とさせ、噛合機構SM5をリバースギアGRとリバース軸36とを連結した連結状態とさせ、第2クラッチC2を締結させる。これにより、後速段のENG走行での発進が可能となる。
第2の実施形態によれば、パーキングロック状態において、Dレンジ、又はRレンジが選択されてパーキングロック状態を解除する際に(ステップS21:D又はR)、車両の駐車路の傾斜が大きく、傾斜センサ23の検出角度θが所定の閾値θthを超えるときは、ギア列G2〜G4,G6又はG7の中の何れか少なくとも1つのギア列を確立させ(ステップS24,S35)、且つ第1クラッチC1又は第2クラッチC2を半係合した後に(ステップS25,S36)、パーキングロック機構のロックを解除する(ステップS26,S37)。
そのため、車両の駐車路の傾斜が大きく駆動輪から出力軸33aとの間に大きな捩れが発生している場合に、パーキングロック状態を解除したとき、捩れ反力が、確立させたギア列と半係合したクラッチの引き摺り摩擦によって低減される。従って、パーキングロック状態を解除したときに、第1入力軸34、第2入力軸35、リバース軸36、及びアイドル軸37の軸受部など、自動変速機31内のガタ部で生じる打音を抑制することができる。
また、Dレンジが選択された場合には(ステップS21:D)、発進する際に係合する第1クラッチC1でエンジン出力軸32と連結される第1入力軸34に設けられた第1噛合機構SM1ではなく、第2入力軸35に設けられた第3噛合機構SM3又は第4噛合機構SM4を連結した状態とした上で(ステップS24)、第2クラッチを半係合させている(ステップS25)。そのため、パーキングロック機構を解除させた後に(ステップS26)、第3噛合機構SM3又は第4噛合機構SM4をニュートラル状態に切替えることなく、Dレンジの状態に移行させること(ステップS28)ができるので、素早くDレンジ状態に移行させることが可能となる。Rレンジが選択された場合も同様である。
なお、本実施形態では、自動変速機31を例に説明したが、本発明に係る車両用変速機は、これに限定されない。
例えば、ハイブリッド車両に搭載された自動変速機31を例に説明したが、本発明に係る車両用変速機は、エンジン車両、電気自動車に搭載されるものであってもよい。また、前進7速段まで変速可能な自動変速機31を例に説明したが、前進6速段以下又は前進8速段以上まで変速可能な自動変速機であってもよく、その形式も限定されない。
さらに、自動変速機31とシフトバイワイヤ方式で接続されたシフトセレクタ22によって、シフトレンジが選択される場合を例に説明したが、シフトレバーなどによってシフトレンジが選択されるものであってもよい。