以下に添付図面を参照して、この発明に係る照明制御装置、プログラムおよび照明制御システムの実施の形態を詳細に説明する。
特許文献1は、PWM制御により調光レベルが制御されるLED照明機器を独立制御可能な複数のLED群に分割し、LED群ごとに調光レベルを段階的に変化させることで、空間的に照度のグラデーションを持った照明を実現する技術を提案している。しかし、この技術では、空間的に滑らかな照度変化を得ることはできるが、照明機器の調光レベルを時間的に滑らかに変化させることはできず、照度が変化することによる不快感を低減させることはできない。
本実施の形態の照明制御装置は、制御対象領域内での人間の位置に基づいて調光レベルを変化させる照明機器を検出し、検出した照明機器の調光レベルを現在のレベルから目標のレベルまで調光時間内で滑らかに変化させる。これにより、省電力化を実現しつつ、照度が変化することによる不快感を低減させることができる。また、本実施の形態では、制御対象領域内での人間の位置を、人間が所持する加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサそれぞれの検知データに基づいて特定する。これにより、制御対象領域内での人間の位置を高精度に特定し、人間の位置に応じた高精度な機器制御を実現することができる。
以下では、本実施の形態の照明制御装置を、制御対象領域である室内で特定の業務活動を実施する人間(以下、従業者という。)の位置等に応じて室内に設置された機器の電力を制御する機器制御システムの一部の装置として実現する例を説明する。適用可能なシステムはこのような機器制御システムに限られるものではない。
図1は、本実施の形態の機器制御システムのネットワーク構成図である。本実施の形態の機器制御システムは、図1に示すように、複数のスマートフォン300と、撮像装置としての複数の監視カメラ400と、測位サーバ装置100と、制御サーバ装置200と、制御対象の機器としての複数のLED(Light Emitting Diode)照明機器500、複数のタップ600および複数の空調機700とを備えている。
複数のスマートフォン300および複数の監視カメラ400と、測位サーバ装置100とは、例えば、Wi−Fi(Wireless Fidelity)等の無線通信ネットワークで接続されている。なお、無線通信の方式は、Wi−Fiに限定されるものではない。また、監視カメラ400と測位サーバ装置100とは有線で接続されていてもよい。
測位サーバ装置100と制御サーバ装置200とは、インターネットやLAN(Local Area Network)等のネットワークに接続されている。
また、制御サーバ装置200と、複数のLED照明機器500、複数のタップ600および複数の空調機700とは、例えば、Wi−Fi等の無線通信ネットワークで接続されている。
なお、制御サーバ装置200と、複数のLED照明機器500、複数のタップ600および複数の空調機700との通信方式はWi−Fiに限定されるものではなく、その他の無線通信方式を利用してもよい他、Ethernet(登録商標)ケーブルやPLC(Power Line Communications)等の有線通信方式を利用することもできる。
スマートフォン300は、従業者に所持されて、従業者の動作を検知する情報機器である。図2は、スマートフォン300の装着状態を示す図である。スマートフォン300は、従業者が手等で所持する他、図2に示すように、従業者の腰に装着されてもよい。
図1に戻り、スマートフォン300のそれぞれには、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサが搭載されており、1秒等の一定時間ごとに、各センサでの検知データを測位サーバ装置100に送信している。ここで、加速度センサの検知データは、加速度ベクトルである。角速度センサの検知データは、角速度ベクトルである。地磁気センサの検知データは、磁気方位ベクトルである。
なお、本実施の形態では、従業者の動作を検知する情報機器としてスマートフォン300を用いているが、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサを備えて人間の動作を検知できる情報機器であれば、スマートフォン300等の携帯端末に限定されるものではない。
また、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサ等の従業者の動作を検知する情報機器をスマートフォン300に備えるとともに、スマートフォン300とは別個に従業者の動作を検知する情報機器を装着するように構成してもよい。
例えば、図3は、従業者の動作を検知できる情報機器をスマートフォン300と別個に装着した例を示す図である。図3に示すように、スマートフォン300とは別個に、加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサを備えた小型のヘッドセットタイプのセンサ群301を頭部に装着することができる。この場合、センサ群301で検知した検知データは、センサ群301が直接、測位サーバ装置100に送信する他、スマートフォン300経由で測位サーバ装置100に送信することができる。このように、従業者の頭部にスマートフォン300の各センサとは別個にセンサ群301を装着することにより、種々の姿勢検出を行うことが可能となる。
図4は、各センサが検知する方向を示す図である。図4(a)は、加速度センサ、地磁気センサが検知する方向を示している。図4(a)に示すように、加速度センサ、地磁気センサにより、進行方向、鉛直方向、水平方向の加速度成分、地磁気方位成分のそれぞれの検知が可能となる。また、図4(b)は、角速度センサにより検知される角速度ベクトルAを示している。ここで、矢印Bが、角速度の正方向を示している。本実施の形態では、角速度ベクトルAの、図4(a)に示す進行方向、鉛直方向、水平方向への射影を考え、それぞれ、進行方向の角速度成分、鉛直方向の角速度成分、水平方向の角速度成分という。
図1に戻り、監視カメラ400は、制御対象領域である室内を撮像するものであり、制御対象領域である室の上部付近等に設置される。図5は、監視カメラ400の設置状態の一例を示す図である。図5の例では、室内の扉付近の2か所に監視カメラ400が設置されているが、これに限定されるものではない。監視カメラ400は、制御対象領域である室内を撮像して、その撮像画像(撮像映像)を、測位サーバ装置100に送信する。
図1に戻り、本実施の形態では、照明系システム、タップ系システム、空調系システムを電力制御の対象としている。照明系システムとして複数のLED照明機器500、タップ系システムとして複数のタップ600、空調系システムとして複数の空調機700を電力制御の対象としている。
複数のLED照明機器500、複数のタップ600、複数の空調機700は、制御対象領域である室内に設置されている。図6は、LED照明機器500、タップ600、空調機700の設置状態の一例を示す図である。
図6に示すように、室内には、6個の机で一つのグループが形成され、3つのグループが設けられている。そして、LED照明機器500とタップ600は、一つの机に対してそれぞれ一つが設けられている。一方、空調機700は、2つのグループの間に一つずつ設けられている。なお、このようなLED照明機器500、タップ600、空調機700の配置は一例であり、図6に示す例に限定されるものではない。
なお、図6には図示されていないが、室外に設置された系統電力計測機器により、本実施の形態の室内の全電力の総和情報を把握できるようになっている。
室内では、18名の従業者が特定の業務活動を実施しており、室内外への出入りは、2つの扉で行われる。本実施の形態では、レイアウトや機器類やユーザ数等を限定しているが、より多種多様なレイアウト並びに機器類へ適用することができる。さらに、空間規模やユーザ数のスケーラビリティにおける任意性や、個人単位もしくは集団単位で見た場合のユーザ属性や携わる業務種のバリエーションにおける任意性に対しても、幅広く拡張して適用することができる。また、図5、6に示すような屋内空間に限らず、屋外等で本実施の形態を適用してもよい。
なお、本実施の形態の測位サーバ装置100、制御サーバ装置200は、図5、図6に示す室の外部に設置されている。本実施の形態では、測位サーバ装置100、制御サーバ装置200を電力制御の対象外としたが、これらを電力制御の対象とすることも可能である。
また、本実施の形態では、通信ネットワーク系を構成するWi−Fiアクセスポイントやスイッチングハブやルータ等のネットワーク機器類に関しては、電力制御の対象外としたが、電力制御の対象とすることも可能である。
なお、これらネットワーク機器類が消費する電力量は、LED照明機器500と空調機700とタップ600における消費電力の総和を、上記系統電力計測機器により計測される消費電力の総和から除した電力量として算出することができる。
複数のLED照明機器500、複数のタップ600、複数の空調機700のそれぞれは、制御サーバ装置200により、ネットワークを介して遠隔制御される。
すなわち、LED照明機器500は、照明範囲と照度が、制御サーバ装置200により遠隔制御される。具体的には、LED照明機器500は、個別に遠隔制御可能なオン/オフスイッチが設置されており、オン/オフ制御はWi−Fiによる無線制御方式で制御サーバ装置200により行われる。LED照明機器500は、低消費電力性を考慮して調光機能付きのLED灯を利用し、且つ調光機能に関してもWi−Fi経由での遠隔制御が可能な構成としている。
なお、照明系システムとしては、調光機能を持つ照明装置であれば、LED灯以外の発光部を有する他の照明装置を用いるようにしてもよい。
空調機700は、その電源のオンオフが制御サーバ装置200により遠隔制御される。すなわち、空調機700は、個別に遠隔制御が可能な構成となっており、制御対象は空調機700のオン/オフに加えて、風向き、送風強度となっている。本実施の形態では、送風する温度や湿度について制御を行っていないが、これに限定されるものではなく、温度や湿度を制御対象とすることもできる。
タップ600は、複数のタップ口を備えたものであり、各タップ口は電源供給のオンオフが制御サーバ装置200により遠隔制御される。すなわち、タップ600は、タップ口単位に個別に遠隔制御可能なオン/オフスイッチが設けられている。オン/オフ制御はWi−Fiによる無線制御方式で制御サーバ装置200により行われる。一つのタップ600に含まれるタップ口は任意の数とすることができるが、一例として4口のタップ口で一つのタップを構成したものを用いることができる。
タップ600は、図6に示すように、各机に一つずつ設置されている。タップ600には、不図示の電気機器、具体的には、デスクトップ型PCやディスプレイ装置のほか、ノートブック型PC、プリンタ装置、充電器類が接続可能である。
本実施の形態では、タップ600のタップ口に、人間との正対関係が重要となる機器であるディスプレイ装置の電源が接続されている。ディスプレイ装置は、制御サーバ装置200によって、タップ口へ供給する電力のオン/オフによる制御が可能な機器である。
なお、デスクトップ型PC本体やプリンタ装置をタップ600に接続した場合は、装置の構成上、制御サーバ装置200によって、タップ口へ供給する電力のオン/オフによる制御ができない。このため、デスクトップ型PC本体に関しては、ネットワーク経由で省電力モードもしくはシャットダウンに移行できるような制御ソフトウェアをインストールしておくことにより、省電力への制御を行い、省電力モードあるいはシャットダウン状態からの復帰はユーザ自身によるマニュアル操作とする。
また、充電器類や充電時のノートブック型PCをタップ600に接続する場合には、利便性を考慮して常時オンとする。なお、タップ600のタップ口に接続する機器については、これらに限定されるものではない。
図1に戻り、測位サーバ装置100は、各センサの検知データを受信して、各センサを装着した従業者の位置や動作状況を検出し、当該位置や動作状況を制御サーバ装置200に送信する。
図7は、測位サーバ装置100の機能的構成を示すブロック図である。測位サーバ装置100は、図7に示すように、通信部101と、位置特定部102と、動作状況検出部103と、補正部104と、記憶部110とを主に備えている。
記憶部110は、ハードディスクドライブ装置(HDD)やメモリ等の記憶媒体であり、制御対象領域である室内の地図データ等、測位サーバ装置100の処理に必要な各種情報を記憶している。
通信部101は、一定時間ごとに、スマートフォン300に搭載された加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサのそれぞれ、あるいはスマートフォン300とは別個のセンサ群301の加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサのそれぞれから検知データを受信する。すなわち、通信部101は、加速度センサから加速度ベクトルを受信し、角速度センサから角速度ベクトルを受信し、地磁気センサから磁気方位ベクトルを受信する。
また、通信部101は、監視カメラ400から撮像画像を受信する。さらに、通信部101は、後述する従業者の絶対位置、および方向、姿勢等の動作状況を、制御サーバ装置200に送信する。
位置特定部102は、受信した検知データを解析して、室内での従業者の絶対位置を人間の肩幅または歩幅の精度で特定する。位置特定部102による従業者の絶対位置の特定手法の詳細については後述する。
動作状況検出部103は、受信した検知データを解析して、従業者の動作状況を検出する。本実施の形態では、動作状況検出部103は、動作状況として、従業者が静止状態か歩行状態かを検出する。また、動作状況検出部103は、動作状況が静止状態である場合に、検知データに基づいて、制御対象領域内の機器に対する従業者の方向、従業者の姿勢が起立状態か着座状態かの動作状況を検出する。
すなわち、動作状況検出部103は、監視カメラ400からの撮像画像により、従業者が扉から入室したことを検知した場合に、当該入室した従業者に装着されたスマートフォン300の加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサ、あるいはスマートフォン300とは別個のセンサ群301の加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサから逐次受信している検知データのうち加速度ベクトルと角速度ベクトルのそれぞれの時系列データを用いて、従業者の動作状況が歩行状態か静止状態かを逐次判定する。ここで、加速度ベクトルと角速度ベクトルを用いて従業者の動作状況が歩行状態かを判定する手法は、例えば特許第4243684号公報に開示されているデッドレコニング装置による処理で実現することができる。そして、動作状況検出部103は、この手法により人間が歩行状態でないと判断された場合に、人間が静止状態であると判定することができる。
より具体的には、動作状況検出部103は、特許第4243684号公報に開示されているデッドレコニング装置による処理と同様に、以下のように人間の動作状態を検出することができる。
すなわち、動作状況検出部103は、加速度センサから受信した加速度ベクトルと角速度センサから受信した角速度ベクトルから重力加速度ベクトルを求めて、加速度ベクトルから重力加速度ベクトルを差し引き、鉛直方向の加速度を除去して、残差加速度成分の時系列データを得る。そして、動作状況検出部103は、この残差加速度成分の時系列データに対して主成分解析を行って、歩行動作の進行方向を求める。さらに、動作状況検出部103は、鉛直方向の加速度成分の山ピークと谷ピークのペアを探索し、進行方向の加速度成分の谷ピークと山ピークのペアを探索する。そして、動作状況検出部103は、進行方向の加速度成分の勾配を算出する。
さらに、動作状況検出部103は、鉛直方向の加速度成分が山ピークから谷ピークに変化する当該谷ピークの検出時刻における、上記進行方向の加速度成分の勾配が所定値以上であるか否かを判断し、所定値以上である場合に、従業者の動作状況は歩行状態であると判定する。
一方、上記処理において、鉛直方向の加速度成分の山ピークと谷ピークのペアが探索されず、あるいは、進行方向の加速度成分の谷ピークと山ピークのペアが探索されず、若しくは、鉛直方向の加速度成分が山ピークから谷ピークに変化する当該谷ピークの検出時刻における、上記進行方向の加速度成分の勾配が所定値未満である場合には、動作状況検出部103は、従業者の動作状況は静止状態であると判定する。
そして、従業者が静止状態であると判定されたら、位置特定部102は、加速度ベクトル、角速度ベクトルおよび磁気方位ベクトルを用いて、扉の位置を基準位置として、当該基準位置から静止状態であると判定された位置までの相対移動ベクトルを求める。ここで、加速度ベクトル、角速度ベクトルおよび磁気方位ベクトルを用いた相対移動ベクトルの算出手法は、例えば特開2011−47950号公報のデッドレコニング装置の処理で開示されている手法を用いることができる。
より具体的には、位置特定部102は、特開2011−47950号公報のデッドレコニング装置の処理と同様に、以下のように相対移動ベクトルを求めることができる。
すなわち、位置特定部102は、加速度センサから受信した加速度ベクトルと角速度センサから受信した角速度ベクトルから重力方位ベクトルを求め、重力方位ベクトルと、角速度ベクトルまたは地磁気センサから受信した磁気方位ベクトルとから人間の姿勢角を移動方位として算出する。また、位置特定部102は、加速度ベクトルと角速度ベクトルとから重力加速度ベクトルを求め、重力加速度ベクトルと加速度ベクトルとから、歩行動作によって発生している加速度ベクトルを算出する。そして、位置特定部102は、重力加速度ベクトルと、歩行動作によって発生している加速度ベクトルとから、歩行動作を解析して検出し、検出結果に基づいて、歩行動作の大きさを、重力加速度ベクトルと歩行動作によって発生している加速度ベクトルとに基づいて計測して、計測結果を歩幅とする。そして、位置特定部102は、このようにして求めた移動方位と歩幅とを積算することにより、基準位置からの相対移動ベクトルを求める。すなわち、人間の歩幅あるいは肩幅、例えば、略60cm以下(より具体的には略40cm程度以下)の精度で、リアルタイムに従業者の位置を検出していることになる。
このようにして相対移動ベクトルが算出されたら、位置特定部102は、扉からの相対移動ベクトルと、記憶部110に記憶されている室内の地図データとから、従業者の移動後の絶対位置を特定する。
これにより、位置特定部102は、従業者が室内に配置されたどの机の位置にいるかまでを特定することができ、その結果、人間の肩幅、例えば、略60cm以下(より具体的には略40cm程度以下)の精度で、従業者の位置を特定することが可能となる。
このような位置精度は、高ければ高いほどよいというものではない。例えば、2人以上が会話をしている場面を想定すると、体を接して話しをすることは少なく、ある程度の距離は離れている。そこで、精度を考える場合、人間の肩幅または歩幅相当の精度、立っているか、座っているかは、腰から膝までの長さ相当を本実施の形態では適切な精度としている。
厚生労働省の公表している人体計測データ(河内まき子,持丸正明,岩澤洋,三谷誠二(2000):日本人人体寸法データベース1997−98,通商産業省工業技術院くらしとJISセンター)によれば、青年、高齢者の男女の肩幅に相当するデータ(肩峰幅)は、平均値の幅が最も低い高齢者女性で約35cm(34.8cm)、最も高い青年男性で約40cm(39.7cm)となっている。また、腰から膝までの長さ(恥骨結合上縁高―大腿骨外側上顆高)の差は、同様に、約34cm〜約38cmである。一方、人間が移動する場合の歩幅は、50m歩いた場合、95歩となり、これから約53cm(50÷95×10)となり、本実施の形態による位置検出方法は、歩幅相当の精度が可能である。従って、上記データから、精度としては、60cm以下、好ましくは40cm以下が妥当であるとして本実施の形態を構成している。これらデータは精度を考えるための基準の目安になるが、日本人に基づいたものであり、この数値に限定されるものではない。
また、従業者の絶対位置を特定し、従業者が机の前の席で静止状態である場合には、動作状況検出部103は、地磁気センサから受信した磁気方位ベクトルの向きにより、従業者のディスプレイ装置に対する方向(向き)を判定する。また、動作状況検出部103は、従業者が机の前の席で静止状態である場合には、加速度ベクトルの鉛直方向の加速度成分から、従業者の姿勢、すなわち起立状態か着座状態かを判定する。
ここで、起立状態か着座状態かの判定は、例えば特許第4243684号公報に開示されているデッドレコニング装置と同様に、加速度センサから受信した加速度ベクトルと角速度センサから受信した角速度ベクトルから重力加速度ベクトルを求めて、鉛直方向の加速度成分を求めることができる。そして、動作状況検出部103は、例えば特許第4243684号公報に開示されているデッドレコニング装置と同様に、鉛直方向の加速度成分の山と谷のピークを求めることができる。
図8は、着座動作と起立動作のそれぞれを行った場合における鉛直方向の加速度成分の波形を示す図である。図8に示すように、着座動作の場合には、鉛直方向の加速度成分の山のピークから谷のピークまでの間隔が約0.5秒前後である。一方、起立動作の場合には、鉛直方向の加速度成分の谷のピークから山のピークまでの間隔が約0.5秒である。このため、動作状況検出部103は、かかるピークの間隔により、従業者が着座状態か起立状態かを判断している。すなわち、動作状況検出部103は、鉛直方向の加速度成分の山のピークから谷のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内である場合には、従業者の動作状態は着座状態であると判定する。また、動作状況検出部103は、鉛直方向の加速度成分の谷のピークから山のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内である場合には、従業者の動作状態は起立状態であると判定する。
このように、動作状況検出部103が従業者の動作状態が起立状態か着座状態かを判定することにより、従業者の高さ方向の位置を、略50cm以下(より具体的には、略40cm以下)の精度で検出したことを意味する。
さらに、図3に示した例のように、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサ等の人間の動作を検知する情報機器を搭載したスマートフォン300を腰に装着し、さらに、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサを備えた小型のヘッドセットタイプのセンサ群301を頭部に装着した場合には、動作状況検出部103は、さらに、以下のような従業者の姿勢や動作を検出することができる。
図9は、しゃがむ動作と起立動作とをそれぞれ行った場合における水平方向の角速度成分の波形を示す図である。加速度センサからの加速度データからは、図8に示す着座動作と起立動作と類似の波形が検出されるが、加速度データのみでしゃがむ動作と起立動作を判別することは困難である。
このため、動作状況検出部103は、図8の波形に基づく、上述した着座動作と起立動作の判別の手法とともに、角速度センサから受信した水平方向の角速度データの経時的変化が図9の波形に一致するか否かを判断することにより、しゃがむ動作と起立動作の判別を行っている。
具体的には、動作状況検出部103は、まず、加速度センサから受信した加速度ベクトルに基づく鉛直方向の加速度成分の山のピークから谷のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内であるか否かを判断する。
そして、鉛直方向の加速度成分の山のピークから谷のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内である場合には、動作状況検出部103は、角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分が、図9に示す波形のように、0から徐々に増加した後急激な増加で山のピークに達し、山のピークから急激に下がった後徐々に0に戻り、かつこの間の時間が約2秒である場合に、従業者の動作がしゃがむ動作であると判定する。
また、動作状況検出部103は、鉛直方向の加速度成分の谷のピークから山のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内であるか否かを判断する。そして、鉛直方向の加速度成分の谷のピークから山のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内である場合には、動作状況検出部103は、角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分が、図9に示す波形のように、0から段階的に谷のピークに達し、谷のピークから徐々に0に戻り、かつこの間の時間が約1.5秒である場合に、従業者の動作が起立動作であると判定する。
このような動作状況検出部103におけるしゃがむ動作と起立動作の判定で用いる角速度ベクトルとしては、頭部に装着した角速度センサから受信した角速度ベクトルを用いることが好ましい。しゃがむ動作と起立動作において、頭部に装着した角速度センサからの角速度ベクトルに基づく水平方向の角速度成分が、図9に示す波形を顕著に示すからである。
図10は、従業者が静止状態で方向をほぼ90度変化させる動作を行った場合の鉛直方向の角速度成分の波形を示す図である。鉛直方向の角速度成分が正であれば右側に向きを変える動作であり、負であれば左側に方向を変化させる動作である。
動作状況検出部103は、角速度センサから受信した角速度ベクトルの鉛直方向の角速度成分の経時的変化が、図10に示す波形のように、0から徐々に山のピークに達した後徐々に0に戻り、かつこの間の時間が約3秒である場合に、方向が右に変化する動作と判定する。
また、動作状況検出部103は、鉛直方向の角速度成分の経時的変化が、図10に示す波形のように、0から徐々に谷のピークに達した後徐々に0に戻り、かつその間の時間が約1.5秒である場合に、方向が左に変化する動作と判定する。
動作状況検出部103は、頭部の角速度センサおよび腰のスマートフォン300の角速度センサの双方から受信した角速度ベクトルの鉛直方向の角速度成分が、共に、上述のような判断で図10の波形と類似する経時的変化を示す場合には、体全体の向きが右若しくは左に変わる動作と判定する。
一方、動作状況検出部103は、頭部の角速度センサから受信した角速度ベクトルの鉛直方向の角速度成分が、上述のような図10の波形に類似する経時的変化を示すが、腰のスマートフォン300の角速度センサからの角速度ベクトルの鉛直方向の角速度成分が、図10の波形と全く異なる経時的変化を示す場合には、頭部だけ方向を右若しくは左に変える動作と判定する。このような動作としては、例えば、従業者が着座したまま、隣の従業者とコミュニケーションをとる場合の姿勢動作が考えられる。
図11は、着座状態でディスプレイから上方向に目線を外した場合の頭部の角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分の波形を示す図である。
位置特定部102が従業者の絶対位置を机の前であると特定し、かつ動作状況検出部103が当該机の前にいる従業者が着座状態であることを検出した場合を考える。そして、このような場合に、動作状況検出部103は、その従業者の頭部の角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分が、図11に示す波形のように、0から徐々に谷のピークに達し、その後急激に0に戻り、かつその間の時間が約1秒である場合に、着座状態でディスプレイから上方向に目線を外した動作(見上げる動作)であると判定する。そして、さらに、動作状況検出部103は、水平方向の角速度成分が、図11に示す波形のように、0から徐々に増加しながら山のピークに達し、その後徐々に0に戻り、かつこの間の時間が約1.5秒である場合に、着座状態でディスプレイから上方向に目線を外した状態からディスプレイに目線を戻した動作であると判定する。
図12は、着座状態でディスプレイから下方向に目線を外した場合の頭部の角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分の波形を示す図である。
位置特定部102が従業者の絶対位置を机の前であると特定し、かつ動作状況検出部103が当該机の前にいる従業者が着座状態であることを検出した場合を考える。そして、このような場合に、動作状況検出部103は、その従業者の頭部の角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分が、図12に示す波形のように、0から急激に山のピークに達し、その後急激に0に戻り、かつその間の時間が約0.5秒である場合に、着座状態でディスプレイから下方向に目線を外した動作(見下げる動作)であると判定する。
そして、さらに、動作状況検出部103は、水平方向の角速度成分が、図12に示す波形のように、0から急激に減少しながら谷のピークに達し、その後急激に0に戻り、かつこの間の時間が約1秒である場合に、着座状態でディスプレイから下方向に目線を外した状態からディスプレイに目線を戻した動作であると判定する。
このように、動作状況検出部103は、オフィスの従業者が日常取り得る姿勢や動作、すなわち、歩く(立った状態)、起立する(静止状態)、椅子に着座する、作業時にしゃがむ、着座状態あるいは起立状態で向き(方向)を変える、着座状態あるいは起立状態で天を仰ぐ、着座状態あるいは起立状態で俯く等を、上述の手法で判定することが可能になる。
なお、特許第4243684号公報のデッドレコニング装置の手法を用いる場合、特許第4243684号公報に開示されているように、エレベータによる人間の昇降動作も、鉛直方向の加速度成分を用いて判断している。
このため、本実施の形態では、動作状況検出部103は、例えば特開2009−14713号公報に開示されているマップマッチング装置の機能を用い、エレベータのない場所で、鉛直方向の加速度成分が図8に示す波形で検出された場合には、特許第4243684号公報のデッドレコニング装置によるエレベータによる昇降動作とは異なり、起立動作または着座動作であることを高精度に判定することができる。
補正部104は、監視カメラ400からの撮像画像や記憶部110に保存された地図データに基づいて、特定された絶対位置や動作状況(方向、姿勢)を補正する。より具体的には、補正部104は、上述のように判断された従業者の絶対位置、方向、姿勢を、監視カメラ400の撮像画像の画像解析等により正しいか否かを判断したり、地図データと、例えば特開2009−14713号公報に開示されているマップマッチング装置の機能とを用いて正しいか否かを判断する。そして、誤っている場合には、補正部104は、撮像画像やマップマッチング装置の機能から得られる、正しい絶対位置、方向、姿勢に補正する。
なお、補正部104は、監視カメラ400からの撮像画像に限らず、RFID(Radio Frequency IDentification)やBluetooth(登録商標)等の短距離無線、光通信等の限定的な手段を用いて補正を行うように構成してもよい。
また、本実施の形態では、特許第4243684号公報および特開2011−47950号公報に開示されたデッドレコニング装置と同様の技術、特開2009−14713号公報に開示されたマップマッチング装置と同様の技術を用いて、従業者の動作状態、基準位置からの相対移動ベクトル、姿勢(起立状態か着座状態か)を検出しているが、検出手法はこれらの技術に限定されるものではない。
なお、人間の位置を検出可能な技術としては、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサの検知データに基づいて測位サーバ装置100が実施する上述した方法の他に、例えば、ICカード等による入退室管理、人感センサによる人間の検知、無線LANを用いる方法、屋内GPS(IMES:Indoor MEssaging System)を用いる方法、カメラの撮像画像を画像処理する方法、アクティブRFIDを用いる方法、および可視光通信を用いる方法等が知られている。
ICカード等による入退室管理は、個人識別は可能であるが、測位精度が管理対象のエリア全体となり極めて低い。そのため、誰がそのエリアにいるかを知ることはできるものの、そのエリア内での人間の活動状況を把握することができない。
人感センサによる人間の検知は、人感センサの検知範囲となる1〜2m程度の測位精度が得られるが、個人識別を行うことができない。また、エリア内での人間の活動状況を把握するためには、多数の人感センサを分散してエリア内に配置する必要がある。
無線LANを用いる方法は、人間が所持する1台の無線LAN端末とエリア内に設置された複数台のLANアクセスポイントとの間の距離を測定し、三角測量の原理によりエリア内における人間の位置を特定する。この方法は、個人識別は可能であるが、測位精度の環境依存性が大きく、一般的に測位精度は3m以上と比較的低い精度となる。
屋内GPSを用いる方法は、GPS衛星と同じ周波数帯の電波を発する専用の送信機を屋内に設置し、その送信機から通常のGPS衛星が時刻情報を送信する部分に位置情報を埋め込んだ信号を送信する。そして、その信号を屋内の人間が所持する受信端末で受信することにより、屋内における人間の位置を特定する。この方法は、個人識別は可能であるが、測位精度が3〜5m程度と比較的低い精度となる。また、専用の送信機を設置する必要があり導入コストが嵩む。
カメラの撮像画像を画像処理する方法は、数十cm程度の比較的高い測位精度が得られるが、個人識別を行うことが難しい。このため、本実施の形態の測位サーバ装置100では、従業者の絶対位置、方向、姿勢を補正する場合にのみ、監視カメラ400の撮像画像を用いている。
アクティブRFIDを用いる方法は、電池を内蔵するRFIDタグを人間が所持し、RFIDタグの情報をタグリーダで読み取ることで人間の位置を特定する。この方法は、個人識別は可能であるが、測位精度の環境依存性が大きく、一般的に測位精度は3m以上と比較的低い精度となる。
可視光通信を用いる方法は、個人識別が可能であり、しかも数十cm程度の比較的高い測位精度が得られるが、可視光が遮られる場所では人間を検知できず、また、自然光や他の可視光等のノイズ源、干渉源が多いため、検出精度の安定性を維持することが難しい。
これらの技術に対し、本実施の形態の測位サーバ装置100が実施する方法は、個人識別が可能で、しかも人間の肩幅または歩幅相当の高い測位精度が得られ、その上、人間の位置だけでなく、人間の動作状況を検出することができる。具体的には、本実施の形態の測位サーバ装置100が実施する方法によれば、人間の動作状況として、オフィスの従業者が日常取り得る姿勢や動作、すなわち、歩く(立った状態)、起立する(静止状態)、椅子に着座する、作業時にしゃがむ、着座状態あるいは起立状態で向き(方向)を変える、着座状態あるいは起立状態で天を仰ぐ、着座状態あるいは起立状態で俯く等を検知することができる。
このため、本実施の形態では、測位サーバ装置100が、スマートフォン300やセンサ群301の加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサの検知データに基づいて、上述した方法により、制御対象領域であるオフィス内の従業者の絶対位置および従業者の動作状況を検出するようにしている。しかし、制御対象領域である室内における従業者の位置を検出する方法は、測位サーバ装置100が実施する上述した方法に限定されるものではなく、例えば、上述した他の方法の一つまたは複数の組み合わせにより従業者の位置を検出するようにしてもよく、また、測位サーバ装置100が実施する上述した方法に上述した他の方法の一つまたは複数を組み合わせて、従業者の位置を検出するようにしてもよい。
次に、制御サーバ装置200の詳細について説明する。制御サーバ装置200は、制御対象領域である室内の従業者の位置、動作情報(方向、姿勢)に基づいて、当該室内に設置された複数のLED照明機器500、複数のタップ600、複数の空調機700のそれぞれを、ネットワークを介して遠隔制御する。
図13は、本実施の形態の制御サーバ装置200の機能的構成を示すブロック図である。本実施の形態の制御サーバ装置200は、図13に示すように、通信部201と、消費電力管理部202と、機器制御部210と、記憶部220とを主に備えている。
記憶部220は、HDDやメモリ等の記憶媒体であり、制御対象領域である室内に設置された制御対象の機器(複数のLED照明機器500、複数のタップ600および複数の空調機700)それぞれの位置データや、LED照明機器500に対して調光制御を行う場合に設定される調光時間等、制御サーバ装置200の処理に必要な各種情報を記憶している。
通信部201は、測位サーバ装置100から、従業者の絶対位置、動作情報(方向、姿勢)を受信する。また、通信部201は、複数のLED照明機器500、複数のタップ600に接続された電気機器、複数の空調機700から消費電力を受信する。また、通信部201は、複数のLED照明機器500、複数のタップ600、複数の空調機700に対して電力制御を行うための制御信号を送信する。
消費電力管理部202は、複数のLED照明機器500、複数のタップ600に接続された電気機器、複数の空調機700から受信した消費電力を管理する。
機器制御部210は、照明機器制御部211と、コンセント制御部213と、空調機制御部215とを備えている。照明機器制御部211は、従業者の絶対位置、動作情報(方向、姿勢)に基づいてLED照明機器500を制御する。より具体的には、照明機器制御部211は、例えば、受信した絶対位置の近傍に配置されたLED照明機器500に対して、従業者が着座状態であれば、その照明範囲を所定範囲より狭く設定し、照度を所定の閾値より高く設定する制御信号を通信部201を介して送信する。これにより、着座状態で作業を行っている従業者に対して、細かい作業に適した照明範囲や照度に制御することが可能となる。
一方、照明機器制御部211は、当該LED照明機器500に対して、従業者が起立状態であれば、その照明範囲を所定範囲より広く設定し、照度を所定の閾値より低く設定する制御信号を通信部201を介して送信する。これにより、起立状態の従業者が例えば室全体を見渡せるような照明範囲や照度に制御することが可能となる。
また、照明機器制御部211は、制御対象領域である室内における従業者の位置に基づいて調光制御の対象となるLED照明機器500を特定し、特定したLED照明機器500の調光レベルを、現在のレベルから目標のレベルまで、設定された調光時間内で滑らかに変化させる調光制御を行う。なお、LED照明機器500に対する調光制御については、詳細を後述する。
コンセント制御部213は、従業者の絶対位置、動作情報(方向、姿勢)に基づいてタップ600のタップ口に対して電源のオンオフを制御する。より具体的には、コンセント制御部213は、例えば、受信した絶対位置の近傍に配置されたタップ600に接続されたディスプレイ装置に対して、従業者が着座状態であり、かつディスプレイ装置に対する方向が前方である場合には、タップ600においてディスプレイ装置が接続されたタップ口のスイッチをオンにする制御信号を通信部201を介して送信する。
一方、コンセント制御部213は、当該タップ600に接続されたディスプレイ装置に対して、従業者が起立状態であるか、またはディスプレイ装置に対する方向が後方である場合には、タップ600においてディスプレイ装置が接続されたタップ口のスイッチをオフにする制御信号を通信部201を介して送信する。
このように、ディスプレイ装置に対する従業者の方向によって電力制御を行うのは、ディスプレイ装置が従業者との正対関係で重要となる機器であり、方向が前方の場合にディスプレイ装置が使用されていると判断することができるからである。また、従業者の姿勢が着座状態の場合に、ディスプレイ装置が使用されていると判断することができる。このように、本実施の形態では、実際の機器の利用を考慮して電力制御を行うことになり、単に機器からの距離によって電力制御を行う場合に比べて、より細かな制御を行うことが可能となる。
さらに本実施の形態のコンセント制御部213は、従業者の個人認識情報に連動させてデスクトップ型PC本体やディスプレイ装置の電力制御を行っている。従業者の個人認証情報は、例えば、従業者が保持するスマートフォン300から測位サーバ装置100に送られ、測位サーバ装置100から制御サーバ装置200に伝達される。制御サーバ装置200は、この個人認証情報を用いて、従業者が専有して使用するデスクトップ型PC本体やディスプレイ装置を対象に電力制御を行うことができる。
空調機制御部215は、従業者の絶対位置に基づいて空調機700の電源のオンオフを制御する。より具体的には、空調機制御部215は、例えば、受信した絶対位置の席が存在するグループに設定された空調機700の電源をオンにする制御信号を通信部201を介して送信する。
次に、以上のように構成された本実施の形態の測位サーバ装置100による検出処理について説明する。図14は、本実施の形態の測位サーバ装置100による検出処理の手順を示すフローチャートである。かかるフローチャートによる検出処理は、複数のスマートフォン300のそれぞれに対応して実行される。
なお、測位サーバ装置100は、このフローチャートによる検出処理とは別個に、複数のスマートフォン300に搭載された加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサあるいはスマートフォン300とは別個の加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサのそれぞれの各センサから検知データ(加速度ベクトル、角速度ベクトル、磁気方位ベクトル)を一定間隔で受信し、複数の監視カメラ400から撮像画像を受信している。
まず、従業者が制御対象領域である室内に入室したか否かを、例えば、開閉する扉の撮像画像等により判断する(ステップS11)。そして、入室した場合には(ステップS11:Yes)、動作状況検出部103は、入室した従業者の動作状況を、上述した手法により検出する(ステップS12)。そして、動作状況検出部103は、従業者の動作状況が歩行状態であるか否かを判断し(ステップS13)、歩行状態である間は(ステップS13:Yes)、動作状況の検出を繰り返し行う。
一方、ステップS13で従業者の動作状況が歩行状態でない場合には(ステップS13:No)、動作状況検出部103は、従業者の動作状況が静止状態であると判断する。そして、位置特定部102は、基準位置を扉として、扉からの相対移動ベクトルを、上述の手法で算出する(ステップS14)。
そして、位置特定部102は、記憶部110に保存されている室の地図データと、扉からの相対移動ベクトルにより、静止状態となった従業者の絶対位置を特定する(ステップS15)。これにより、位置特定部102は、従業者が室内に配置されたどの机の位置にいるかまでを特定することができ、その結果、従業者の肩幅(略60cm以下、より具体的には略40cm以下)の精度で、従業者の位置を特定することになる。
次に、動作状況検出部103は、さらに静止状態の従業者の動作状況として、従業者のディスプレイ装置に対する方向(向き)を、地磁気センサから受信した磁気方位ベクトルから検出する(ステップS16)。
次いで、動作状況検出部103は、従業者の動作状況として、着座状態か起立状態かという姿勢を、上述の手法で検出する(ステップS17)。これにより、動作状況検出部103は、従業者の高さ方向の位置を、略50cm以下(より具体的には、略40cm以下)の精度で検出したことになる。
さらに、動作状況検出部103は、従業者の動作状況として、しゃがむ動作か起立動作か、着座状態で向きを変更する動作か戻す動作か、着座状態で目線を上げる動作か目線を戻す動作か、着座状態で目線を下げる動作か目線を戻す動作か、をそれぞれ検出してもよい。
次に、補正部104は、特定された絶対位置、検出された方向および姿勢に対して、上述のとおり、補正が必要か否かを判断して、必要であれば補正する(ステップS18)。
そして、通信部101は、絶対位置、検出された方向および姿勢(補正された場合には、補正後の絶対位置、検出された方向および姿勢)を、検出結果データとして、制御サーバ装置200に送信する(ステップS19)。
次に、制御サーバ装置200による機器制御処理について説明する。図15は、本実施の形態の機器制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、ここでは本実施の形態の機器制御処理のうち、LED照明機器500に対する調光制御を除く基本的な処理の手順について説明し、LED照明機器500に対する調光制御の手順については後述する。
まず、通信部201は、測位サーバ装置100から、検出結果データとしての従業者の絶対位置、方向、姿勢を受信する(ステップS31)。次に、機器制御部210の各制御部211,213,215は、受信した検出結果データの絶対位置から、制御対象のLED照明機器500、タップ600、空調機700を特定する(ステップS32)。
より具体的には、照明機器制御部211は、記憶部220に保存された位置データを参照して、絶対位置に相当する机に設置されたLED照明機器500を制御対象として特定する。また、コンセント制御部213は、記憶部220に保存された位置データを参照して、絶対位置に相当する机の近傍に設置されたタップ600を制御対象として特定する。空調機制御部215は、記憶部220に保存された位置データを参照して、絶対位置に相当する机があるグループに対応して設置された空調機700を制御対象として特定する。
次に、空調機制御部215は、特定した空調機700の電源をオンにする制御を行う(ステップS33)。
次に、コンセント制御部213は、受信した検出結果データの方向が前方であり、かつ当該検出結果データの姿勢が着座状態であるか否かを判断する(ステップS34)。そして、方向が前方であり、かつ姿勢が着座状態である場合には(ステップS34:Yes)、コンセント制御部213は、ステップS32で特定したタップ600においてディスプレイ装置が接続されたタップ口のスイッチをオンにする制御を行う(ステップS35)。
一方、ステップS34において、方向が後方であるか、または、姿勢が起立状態である場合には(ステップS34:No)、コンセント制御部213は、ステップS32で特定したタップ600においてディスプレイ装置が接続されたタップ口のスイッチをオフにする制御を行う(ステップS36)。
次に、照明機器制御部211は、受信した検出結果データの姿勢が着座状態であるか否かを再度判断する(ステップS37)。そして、姿勢が着座状態である場合には(ステップS37:Yes)、照明機器制御部211は、ステップS32で特定したLED照明機器500の照明範囲を所定範囲より狭く設定し、後述の調光制御によって照度が所定の閾値よりも高くなるように制御を行う(ステップS38)。
一方、ステップS37において、姿勢が起立状態である場合には(ステップS37: No)、照明機器制御部211は、ステップS32で特定したLED照明機器500の照明範囲を所定範囲より広く設定し、後述の調光制御によって照度が所定の閾値よりも低くなるように制御を行う(ステップS39)。
なお、機器制御部210の各制御部211,213,215は各制御対象の機器に対して上述した制御以外の制御を行うように構成してもよい。
また、従業者の動作状況として、しゃがむ動作か起立動作か、着座状態で向きを変更する動作か戻す動作か、着座状態で目線を上げる動作(見上げる動作)か目線を戻す動作か、着座状態で目線を下げる動作(見下げる動作)か目線を戻す動作かにより、各制御対象の機器に対する制御を行うように、機器制御部210の各制御部211,213,215を構成してもよい。
このような場合の各動作と制御対象の機器および制御方法として、以下のような例があげられる。これらの動作は、従業者が机の前に着座している状態を想定した場合に起こり得る動作であり、制御対象機器は、PCあるいはPCのディスプレイ装置、電気スタンド、個別空調に相当する卓上扇風機等である。
例えば、従業者が机にいる場合で、受信した検出結果データから、一定時間以上しゃがむ動作が継続していると判断した場合には、PCの電源が接続されたタップ口のスイッチをオフにするようにコンセント制御部213を構成することができる。また、機器制御部210に機器のモードを制御するモード制御部を設け、PCのディスプレイ装置をスタンバイモードに移行させるように、モード制御部を構成することができる。
また、着座状態から、起立動作を検出して、起立状態が一定時間以上継続した場合には、PCをスタンバイモードに移行するようにモード制御部を構成したり、同時にディスプレイ装置の電源が接続されたタップ口のスイッチをオフにするようにコンセント制御部213を構成することができる。
向きの変化という動作に対しては以下のような制御が一例としてあげられる。机の前に着座した状態から、顔あるいは上半身の向きの変化が検出され、この状態が一定時間以上継続した場合には、隣接する席の他の従業者と会話している等の状況が考えられ、PC、ディスプレイ装置、電気スタンド等の照明機器をスタンバイあるいはオフとし、従業者の向きが元の状態に戻った、元の姿勢に戻ったことを検出した場合には、PC、ディスプレイ装置、電気スタンド等の照明機器をオンにする等ようにコンセント制御部213、モード制御部を構成することができる。
また、従業者が机で書類を読むような場合には見下げる動作を行い、従業者がアイデアを思いつく、あるいは考えるような場合には天井方向を見上げる動作を行うことが考えられる。このため、一定時間以上見上げる動作または見下げる動作が継続して検出された場合には、PCをスタンバイモードに移行したり、ディスプレイ装置をオフにするような制御を行うようにコンセント制御部213、モード制御部を構成することができる。さらに、見下げる動作の場合には、電気スタンドをオフにしない制御を行うようにコンセント制御部213を構成してもよい。
このように本実施の形態では、従業者の位置を肩幅の精度で特定し、従業者の方向や姿勢を検出して、機器の電力制御を行っているので、より細かい精度での機器の電力制御が可能となり、従業者の快適性、仕事の高効率化を維持しつつ、より一層の省電力化および省エネルギー化を実現することができる。
すなわち、本実施の形態では、従業者を検出するだけでなく、その従業者が専有して使用する機器、その従業者が座る机の近傍の照明機器、空調機、オフィス機器を個別に制御することができ、かつ一人一人の電力使用量を同時に把握することが可能となる。
従来技術では、ビル、オフィス、工場全体、オフィス全体の電力がいわゆる「見える化」を実現することができても、個人個人がどのように省電力をしたらよいか不明であり、全体の目標値を超える、供給電力量を超えるといった逼迫した状況でないと、省電力化を意識しにくい等により、継続的に進めることができないが、本実施の形態によれば、従業者の快適性を維持して業務の効率低下を抑制しながら、より一層の省電力化を実現することができる。
また、本実施の形態によれば、機器の自動制御においても、従業者と機器だけでなく、機器間の協調制御をすることにより、省電力をより向上させることができる。
次に、制御サーバ装置200の機器制御部210のうち、照明機器制御部211により実施される調光制御について、具体例を挙げながら詳細に説明する。
図16は、本実施の形態の機器制御システムの構成のうち、調光制御に関わる部分を抜き出して示したブロック図である。制御サーバ装置200の機器制御部210に設けられる照明機器制御部211は、図16に示すように、調光制御に関わる機能的構成として、制御対象検出部211aと、調光制御部211bと、調光時間変更部211cと、を備える。また、制御サーバ装置200の記憶部220は、設定レベル記憶部221と、目標レベル記憶部222と、調光時間記憶部223と、を備える。また、調光制御の対象となるLED照明機器500は、PWM(パルス幅変調)制御により調光レベルが制御される機器であり、PWM制御回路501と、LED駆動回路502と、を備える。なお、図16では、便宜上、LED照明機器500を一つだけ図示しているが、制御対象領域内に設けられた複数のLED照明機器500のすべてが同様の構成である。
記憶部220の設定レベル記憶部221は、制御対象領域内に設けられた複数のLED照明機器500のそれぞれについて、現在設定されている調光レベル(設定レベル)を記憶する。また、目標レベル記憶部222は、制御対象領域内における従業者の位置に応じた調光レベルの目標値(目標レベル)を記憶する。また、調光時間記憶部223は、調光レベルを設定レベルから目標レベルに変化させる時間幅である調光時間を記憶する。
本実施の形態では、制御対象領域である室内を、複数のLED照明機器500のそれぞれに対応する複数のエリアに区分して考える。区分される各エリアは、そのエリアの照度に主に影響を与えるLED照明機器500が一意に対応付けられている。各LED照明機器500に対応するエリアの座標は、例えば、各LED照明機器500の座標に基づいて算出される。各LED照明機器500の座標は、上述した位置データとして記憶部220に格納されている。そして、本実施の形態では、室内の複数のエリアのうち、従業者が滞在しているエリア(滞在エリア)の照度を高くし、従業者が滞在していないエリア(非滞在エリア)の照度を低くするように制御する。そのため、目標レベル記憶部222は、少なくとも、非滞在エリアに対応するLED照明機器500の調光レベルの目標値である第1目標レベルと、滞在エリアに対応するLED照明機器500の調光レベルの目標値である第2目標レベルとを記憶している。第1目標レベルは例えば10%であり、第2目標レベルは例えば90%である。なお、本実施の形態の調光制御を分かり易く説明するために、目標レベルを限定しているが、例えば、滞在エリアに滞在する従業者の人数や動作状況等に応じて、滞在エリアに対応するLED照明機器500に対してさらに複数段階の目標レベルを定めるようにしてもよい。また、滞在エリアの位置の属性(例えば、窓からの離間距離など)に応じて、非滞在エリアに対応するLED照明機器500に対してさらに複数段階の目標レベルを定めるようにしてもよい。
また、本実施の形態の調光制御では、調光レベルを低下させるように制御する場合と、調光レベルを上昇させるように制御する場合とで異なる調光時間を設定するものとする。そのため、調光時間記憶部223は、調光レベルを低下させるように制御する場合に設定される第1調光時間と、調光レベルを上昇させるように制御する場合に設定される第2調光時間とを記憶している。第1調光時間は、例えば、第2調光時間よりも長い時間幅である。なお、本実施の形態の調光制御を分かり易く説明するために、調光時間を限定しているが、例えば、複数段階の目標レベルが定められている場合には、調光時間についても複数段階の長さを定めておき、設定レベルと目標レベルとの差分の大きさに応じて、最適な調光時間の長さを選択するようにしてもよい。
照明機器制御部211の制御対象検出部211aは、測位サーバ装置100により検知された制御対象領域内における従業者の位置に基づいて、調光制御の対象となるLED照明機器500を検出する。具体的には、制御対象検出部211aは、予め定めた一定時間ごとに、従業者の位置情報を用いて後述する滞在エリア判定処理を実施する。そして、制御対象検出部211aは、前回の滞在エリア判定処理と今回の滞在エリア判定処理とで判定の結果が異なるエリア、つまり、前回の滞在エリア判定処理では滞在エリアであると判定されていたが今回の滞在エリア判定処理では非滞在エリアであると判定されたエリアや、前回の滞在エリア判定処理では非滞在エリアであると判定されていたが今回の滞在エリア判定処理では滞在エリアであると判定されたエリアに対応するLED照明機器500を、調光制御の対象となるLED照明機器500として検出する。
調光制御部211bは、制御対象検出部211aにより調光制御の対象として検出されたLED照明機器500の調光レベルを、設定レベル記憶部221が記憶する現在の調光レベルである設定レベルから、目標レベル記憶部222が記憶する目標レベルまで、調光時間記憶部223から読み出して設定された調光時間内で滑らかに変化するように制御する。具体的には、調光制御部211bは、滞在エリアから非滞在エリアに変化したエリアに対応するLED照明機器500を、設定レベルから第1目標レベル(例えば10%)まで、第1調光時間内で滑らかに低下させる。また、調光制御部211bは、非滞在エリアから滞在エリアに変化したエリアに対応するLED照明機器500を、設定レベルから第2目標レベル(例えば90%)まで、第2調光時間内で滑らかに上昇させる。
このような調光制御は、例えば、調光制御部211bが、調光時間内でデューティ比を均等に変化させる制御信号を、LED照明機器500のPWM制御回路501に供給することで実現することができる。具体的には、設定レベルをLs、目標レベルをLt、設定された調光時間をTd、PWM制御回路501の変調周期をMとしたときに、調光制御部211bは、下記式(1)により、PWM制御回路501の変調周期ごとに変化させるデューティ比の大きさを表すデューティステップDsを算出する。そして、算出したデューティステップDsずつデューティ比を変化させる制御信号を、PWM制御回路501に供給する。
Ds=(|Lt−Ls|)/(Td/M) ・・・(1)
例えば、設定レベルLsが10%、目標レベルLtが90%、調光時間Tdが800ms、PWM制御回路501の変調周期Mが10msであるとすると、調光制御部211bは、デューティステップDs=1%と算出する。そして、調光制御部211bは、調光時間Tdである800msの間、PWM制御回路501の変調周期Mである10msごとにデューティ比を1%ずつ増加させる制御信号を、PWM制御回路501に供給する。
調光時間変更部211cは、従業者、あるいは、本実施の形態の機器制御システムを管理する権限を持つ管理者の操作に応じて、調光時間記憶部223が記憶する調光時間を変更する。例えば、従業者あるいは管理者がスマートフォン300やPC等から制御サーバ装置200にアクセスし、調光時間の変更を要求すると、調光時間変更部211cは、調光時間記憶部223が現在記憶している調光時間の一覧を表示する。そして、従業者あるいは管理者が変更したい調光時間を選択して新規な値を入力すると、調光時間変更部211cは、この入力を受け付けて、調光時間記憶部223が記憶する調光時間を新規な値に書き換える。この調光時間変更部211cを備えることで、実際に従業者が体感する照度変化の快適性に合わせて調光時間を適宜調整することができる。すなわち、照度変化の応答速度が速すぎることで不快に感じる場合は調光時間をより長くし、照度変化の応答速度が遅すぎることで不快に感じる場合は調光時間をより短くして、従業者の快適性をさらに高めることができる。
LED照明機器500には、LED電源部520によって交流電源510(商用電源100/200V)から変換された直流電源が供給される。LED照明機器500のPWM制御回路501は、調光制御部211bから供給される制御信号に基づいて直流電源をPWM制御することにより、LED照明機器500の調光を実現する。すなわち、PWM制御回路501は、調光制御部211bから供給される制御信号に基づいてPWM信号を生成し、PWM信号に応じてLED駆動回路502に設けられたトランジスタをオン/オフすることにより、直流電源の実効電圧を調整して、調光を実現する。ここで、本実施の形態では、LED照明機器500の調光レベルを変化させる調光制御を行う際に、照明機器制御部211の調光制御部211bが、調光時間内でデューティ比を均等に変化させる制御信号をLED照明機器500のPWM制御回路501に供給する。PWM制御回路501は、この制御信号に基づいて、調光時間内でデューティ比が徐々に変化するPWM信号を生成し、PWM信号に応じてLED駆動回路502に設けられたトランジスタをオン/オフする。これにより、LED照明機器500の調光レベルが、調光時間内で設定レベルから目標レベルまで滑らかに変化することになる。
図17は、LED照明機器500の概略構成を示す回路図である。LED駆動回路502は、直列に接続された複数のLEDからなる発光部502aと、発光部502aに接続されたトランジスタ502bとを有する。トランジスタ502bのベースは、PWM制御回路501に接続され、PWM制御回路501からのPWM信号に応じてトランジスタ502bのオン/オフが制御される。
図18は、PWM制御の概要を説明する図である。図18(a)は100%点灯時、つまり調光レベルが100%のときの直流電源の電圧波形を示している。図18(b)は75%点灯時、つまり調光レベルが75%のときの直流電源の電圧波形を示している。図18(c)は50%点灯時、つまり調光レベルが50%のときの直流電源の電圧波形を示している。図18(d)は25%点灯時、つまり調光レベルが25%のときの直流電源の電圧波形を示している。図18(e)は0%点灯(消灯)時、つまり調光レベルが0%のときの直流電源の電圧波形を示している。これらの図で示すように、PWM制御は、LED照明機器500の発光部502aに対して一定の電圧レベルの直流電源が供給されている時間幅を変化させることで、LED照明機器500の調光レベルを制御する。
図19は、従来の一般的な調光制御を説明する図である。例えば、LED照明機器の調光レベルを10%から90%に変化させる調光制御を行う場合、従来は、図19に示すように、あるタイミングでPWM制御のデューティ比を10%の調光レベルに対応するデューティ比から90%の調光レベルに対応するデューティ比へと急激に変化させる。このため、照度の変化が極端となって従業者に不快感を与える場合があった。
図20は、本実施の形態による調光制御を説明する図である。本実施の形態では、上述したように、照明機器制御部211の制御対象検出部211aが、滞在エリアから非滞在エリアに変化したエリアに対応するLED照明機器500と、非滞在エリアから滞在エリアに変化したエリアに対応するLED照明機器500とを、調光制御の対象として検出する。そして、調光制御部211bが、検出されたLED照明機器500の調光レベルが、設定レベルから目標レベルまで調光時間内で滑らかに変化するように制御する。例えば、調光レベルを10%から90%まで800msで変化させる場合、PWM制御回路501の変調周期が10msであるとすると、デューティステップを1%とし、図20に示すように、10msごとにデューティ比を1%ずつ上げていく制御を行う。これにより、調光制御の対象となるLED照明機器500によって照明されるエリアの照度変化は緩やかになり、照度が極端に変化することによる不快感を低減することができる。
なお、本実施の形態では、PWM制御により直流電源の実効電圧を調整することでLED照明機器500の調光制御を実現しているが、これに限らず、例えば、アナログ制御によって電圧レベルを調整することでLED照明機器500の調光制御を実現してもよい。この場合、設定レベルに対応する電圧レベルから目標レベルに対応する電圧レベルまで、電圧レベルが調光時間内で線形に変化するように制御することで、調光レベルが滑らかに変化する調光制御を実現することができる。
次に、本実施形態の照明機器制御部211による調光制御の具体的な処理手順について説明する。図21は、本実施の形態の照明機器制御部211が実施する処理の概要を示すフローチャートである。
本実施の形態の照明機器制御部211では、調光制御部211bによる調光制御を行う前に、制御対象検出部211aが滞在エリア判定処理を行って、調光制御の対象となるLED照明機器500を検出する。すなわち、制御対象検出部211aは、予め定めた一定時間ごとに、制御対象領域である室内を対象として滞在エリア判定処理を行う(ステップS101)。そして、制御対象検出部211aは、判定結果が前回と異なるエリアが存在するか否かを判定し(ステップS102)、判定結果が前回と異なるエリアが存在しなければ(ステップS102:No)、一定時間後に再び滞在エリア判定処理を行う。一方、判定結果が前回と異なるエリアが存在する場合は(ステップS102:Yes)、そのエリアに対応するLED照明機器500を対象として、調光制御部211bが調光制御を行う。
ここで、滞在エリア判定処理に用いるエリアの座標情報を算出する方法について説明する。図22は、エリアの座標情報を算出する方法の一例を説明する図である。なお、図22は、図6に例示した室内におけるLED照明機器500のレイアウトを前提としている。
図22の例において、室内の中央に設置されたLED照明機器500Cに対し、図中の上側にLED照明機器500A、図中の左側にLED照明機器500B、図中の右側にLED照明機器500D、図中の下側にLED照明機器500Eがそれぞれ隣り合っているものとする。ここで、LED照明機器500Aの座標を(xA,yA)、LED照明機器500Bの座標を(xB,yB)、LED照明機器500Cの座標を(xC,yC)、LED照明機器500Dの座標を(xD,yD)、LED照明機器500Eの座標を(xE,yE)とすると、これらの座標(xA,yA)、(xB,yB)、(xC,yC)、(xD,yD)、(xE,yE)は、位置データとして記憶部220に格納されている。
このような前提のもと、室内の中央に設置されたLED照明機器500Cに対応するエリアの座標情報を算出する場合について考える。LED照明機器500Cに対応するエリアをA,B,C,Dの4点で囲まれた領域と規定するとき、各点の座標はそれぞれ、A(xC1,yC1)、B(xC1,yC2)、C(xC2,yC2)、D(xC2,yC1)と記述することができ、LED照明機器500Cに対応するエリアは、xC1、xC2、yC1、yC2の4つの数値で表現できる。そして、xC1、xC2、yC1、yC2の4つの数値は、LED照明機器500Cに対して隣り合う4つのLED照明機器500A,500B,500D,500Eそれぞれの座標(xA,yA),(xB,yB),(xC,yC),(xD,yD),(xE,yE)を用いて、下記式(2)〜(5)のように算出することができる。
xC1=(xB+xC)/2 ・・・(2)
xC2=(xC+xD)/2 ・・・(3)
yC1=(yE+yC)/2 ・・・(4)
yC2=(yC+yA)/2 ・・・(5)
以上の方法により、制御対象領域である室内に設置された各LED照明機器500のそれぞれについて、対応するエリアの座標を算出することができる。なお、隣り合うLED照明機器500が存在しない方向がある場合は、その方向のエリア境界の座標として、室内の壁の座標を用いればよい。例えば、図22に例示したLED照明機器500Eは、図中の下側に隣り合うLED照明機器500が存在しないので、図中の下側のエリア境界を規定する点A,Dのy座標yE1として、図中の下側の壁のy座標(=0)を用いればよい。
次に、制御対象検出部211aが実行する滞在エリア判定処理の具体例について説明する。図23は、滞在エリア判定処理の手順を示すフローチャートである。制御対象検出部211aは、予め定めた一定時間ごとに、図23のフローチャートで示す滞在エリア判定処理を繰り返し実行する。なお、以下の説明では、制御サーバ装置200の通信部201が測位サーバ装置100から受信する従業者の位置を座標(x,y)として表すものとする。
まず、制御対象検出部211aは、判定の対象となるエリアをエリアnとし、nに初期値(n=1)を設定する(ステップS201)。
次に、制御対象検出部211aは、エリアnの座標情報を取得する(ステップS202)。エリアnの座標情報は、上述したようにxn1,xn2,yn1,yn2の4つの数値で表される。これらの数値は、例えば、予め算出されて記憶部220等に格納されている。
次に、制御対象検出部211aは、測位サーバ装置100により検出された従業者の位置(x,y)と、エリアnの座標情報xn1,xn2,yn1,yn2とを比較して、エリアnが滞在エリアであるか否かを判定する。すなわち、制御対象検出部211aは、xの値がxn1〜xn2の範囲内であるか否かを判定するとともに(ステップS203)、yの値がyn1〜yn2の範囲内であるか否かを判定する(ステップS204)。そして、xの値がxn1〜xn2の範囲内であり(ステップS203:Yes)、かつ、yの値がyn1〜yn2の範囲内である場合に(ステップS204:Yes)、エリアnを滞在エリアと判定し、エリアnが滞在エリアであることを示す情報を記憶部220等に一時的に記憶させる(ステップS205)。一方、xの値がxn1〜xn2の範囲内ではない(ステップS203:No)、あるいは、yの値がyn1〜yn2の範囲内でない場合は(ステップS204:No)、エリアnを非滞在エリアと判定して情報の記憶は行わない。
次に、制御対象検出部211aは、nの値をインクリメントして(ステップS206)、nの値がエリア数を超えたか否か、つまりすべてのエリアに対して滞在エリアであるか非滞在エリアであるかの判定が終了したか否かを判定する(ステップS207)。そして、nの値がエリア数以下であれば(ステップS207:No)、ステップS202に戻って新たなエリアnの座標情報を取得して以降の処理を繰り返す。一方、nの値がエリア数を超えたら(ステップS207:Yes)、滞在エリア判定処理を終了する。
その後、制御対象検出部211aは、記憶部220等に一時的に記憶させた情報を参照して、調光制御の対象となるLED照明機器500を検出する。すなわち、制御対象検出部211aは、今回の滞在エリア判定処理の結果が前回と異なるエリア、つまり、前回の滞在エリア判定処理では滞在エリアであると判定されていたが今回の滞在エリア判定処理では非滞在エリアであると判定されたエリアや、前回の滞在エリア判定処理では非滞在エリアであると判定されていたが今回の滞在エリア判定処理では滞在エリアであると判定されたエリアが存在するか否かを判定し、存在する場合に、そのエリアに対応するLED照明機器500を、調光制御の対象となるLED照明機器500として検出する。
次に、調光制御部211bが実行する調光制御の具体例について説明する。図24は、調光制御の手順を示すフローチャートである。調光制御部211bは、制御対象検出部211aにより調光制御の対象となるLED照明機器500が検出されると、検出されたLED照明機器500を対象として、図24のフローチャートで示す調光制御を実行する。
まず、調光制御部211bは、調光制御の対象となるLED照明機器500に対して現在設定されている調光レベルである設定レベルを、記憶部220の設定レベル記憶部221から読み出して取得する(ステップS301)。
次に、調光制御部211bは、調光制御の対象となるLED照明機器500の調光レベルの目標値である目標レベルを、記憶部220の目標レベル記憶部222から読み出して取得する(ステップS302)。具体的には、調光制御部211bは、滞在エリアから非滞在エリアに変化したエリアに対応するLED照明機器500については、目標レベル記憶部222から第1目標レベル(例えば10%)を取得し、非滞在エリアから滞在エリアに変化したエリアに対応するLED照明機器500については、目標レベル記憶部222から第2目標レベル(例えば90%)を取得する。
次に、調光制御部211bは、調光レベルを低下させるか上昇させるかに応じて、記憶部220の調光時間記憶部223が記憶する第1調光時間と第2調光時間のうち、いずれかを選択して設定する(ステップS303)。すなわち、調光制御部211bは、調光レベルを低下させる場合には第1調光時間を選択して設定し、調光レベルを上昇させる場合には第2調光時間を選択して設定する。
次に、調光制御部211bは、ステップS301で取得した設定レベルと、ステップS302で取得した目標レベルと、ステップS303で選択した調光時間とを用い、上述した方法により、PWM制御回路501の変調周期ごとに変化させるデューティ比の大きさを表すデューティステップを算出する(ステップS304)。
次に、調光制御部211bは、調光制御の対象となるLED照明機器500のPWM制御回路501に対して、ステップS304で算出したデューティステップずつデューティ比を変化させる制御信号を供給する(ステップS305)。その結果、PWM制御回路501により調光時間内でデューティ比が徐々に変化するPWM信号が生成され、このPWM信号に応じてLED駆動回路502に設けられたトランジスタがオン/オフ制御されることで、調光制御の対象となるLED照明機器500の調光レベルが、調光時間内で設定レベルから目標レベルまで滑らかに変化する。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施の形態によれば、測位サーバ装置100により検出された制御対象領域内における従業者の位置に基づいて、制御サーバ装置200の制御対象検出部211aが調光制御の対象となるLED照明機器500を検出する。そして、制御サーバ装置200の調光制御部211bが、制御対象検出部211aにより検出されたLED照明機器500の調光レベルを設定レベルから目標レベルまで調光時間内で滑らかに変化させるように制御する。したがって、本実施の形態によれば、従業者の位置等に応じて無駄な機器の消費電力をできるだけ削減することによる省電力化を実現しつつ、LED照明機器500による照度が変化することによる不快感を低減させることができる。
本実施の形態の測位サーバ装置100、制御サーバ装置200は、CPU等の制御装置と、ROMやRAM等の記憶装置と、HDD、CDドライブ装置等の外部記憶装置と、ディスプレイ装置等の表示装置と、キーボードやマウス等の入力装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
本実施の形態の測位サーバ装置100で実行される検出プログラム、本実施の形態の制御サーバ装置200で実行される制御プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
また、本実施の形態の測位サーバ装置100で実行される検出プログラム、本実施の形態の制御サーバ装置200で実行される制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施の形態の測位サーバ装置100で実行される検出プログラム、本実施の形態の制御サーバ装置200で実行される制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
また、本実施の形態の測位サーバ装置100で実行される検出プログラム、本実施の形態の制御サーバ装置200で実行される制御プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
本実施の形態の測位サーバ装置100で実行される検出プログラムは、上述した各部(通信部101、位置特定部102、動作状況検出部103、補正部104)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体から検出プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、通信部101、位置特定部102、動作状況検出部103、補正部104が主記憶装置上に生成されるようになっている。
本実施の形態の制御サーバ装置200で実行される制御プログラムは、上述した各部(通信部201、消費電力管理部202、照明機器制御部211(制御対象検出部211a、調光制御部211b、調光時間変更部211c)、コンセント制御部213、空調機制御部215を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体から制御プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、通信部201、消費電力管理部202、照明機器制御部211(制御対象検出部211a、調光制御部211b、調光時間変更部211c)、コンセント制御部213、空調機制御部215が主記憶装置上に生成されるようになっている。
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えて具体化することができる。つまり、上述した実施の形態の具体的な構成や動作はあくまで一例であり、用途や目的に応じて様々な変形や変更が可能である。