JP2014026207A - 光学フィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】透明樹脂基板上に無機硬質膜を形成し、耐熱、耐環境性に優れ、高画質化に対応できる光学フィルタを得る。
【解決手段】透明樹脂基板20上に少なくとも誘電体膜から成るND膜31を有する無機硬質膜を成膜することにより透過光量を調節し、透明樹脂基板20のガラス転移温度を200℃以上とすると共に、透明樹脂基板20の光弾性係数Cの絶対値を50×10-12Pa-1よりも小さくする。
【選択図】図4

Description

本発明は、デジタルビデオカメラ或いはデジタルスチルカメラ等の撮像光学系の使用に適した光学フィルタに関するものである。
現在、ビデオカメラやデジタルカメラ等の撮像機器には、固体撮像素子に入射する光量を制御するための光量調節装置が設けられており、快晴時や高輝度の被写体を撮影する場合に、その開口が小さく絞り込まれるようになっている。しかし、絞り開口が小さくなり過ぎると、通過する光の回折の影響により像性能の劣化が生ずる問題がある。そのため、例えば絞り羽根にフィルム状のND(Neutral Density)フィルタを取り付け、絞り開口が極端に小さくなることを防止し、所定の大きさを維持したまま光量を減衰させるようにしている。
NDフィルタの基板としては、材料の光学特性が良好であり、耐久性も優れているPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルム状の透明樹脂基板が使用されている。
NDフィルタ等の光学フィルタは、フィルム状の透明樹脂基板上に真空蒸着法等により光吸収性を有する材料と、反射率を低下させるための材料とを交互に積層することにより作製されている。
しかし、光学フィルタを製造する蒸着工程において、蒸発源から加熱溶融、蒸発源からの輻射熱等により、蒸着時間の経過と共に透明樹脂基板の表面温度は上昇する。樹脂基板と樹脂基板上に成膜する膜材料の熱膨張係数は必ずしも同一ではないため、積層する膜材料が樹脂基板の自由な熱伸縮を妨げてしまうことがある。その結果、作製された光学フィルタに皺やうねり等の形状の変化が生じ、光学フィルタとして使用する際に支障が生ずる。
そこで、この成膜後に生ずる光学フィルタの皺やうねり等の形状の変化を抑制するための手段として、例えば所望の光学フィルタを得るためのパターン形成用マスクを透明樹脂基板上に密着させた状態において蒸着を行うことがある。これにより、透明樹脂基板が受ける熱伸縮の影響を低減させることができる。
また、特許文献1においては、透明樹脂基板に120℃以上のガラス転移温度を有するノルボルネン系樹脂を使用することにより、蒸着時の加熱温度を樹脂基板のガラス転移点よりも低く保持し、伸縮変形を抑制し皺の発生を防止している。
特許第3692096号公報
特許文献1には、基板にノルボルネン系樹脂を用いることが開示されているが、蒸着膜の環境安定性を向上させるためには、より高い温度で成膜することが望ましく、よりガラス転移温度の高い透明樹脂基板が求められている。
また近年では、更にカメラの高画質化が進んでいることから、画質の劣化を引き起す虞れが低く、複屈折が生じ難い樹脂が望まれている。
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、ガラス転移温度が高く、複屈折が小さい透明樹脂基板を用いることにより、成膜中の熱による皺やうねり等の発生を防止し、画質劣化が少ない光学フィルタを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る光学フィルタは、透明樹脂基板上に少なくとも誘電体膜を有する無機硬質膜を成膜することにより透過光量を調節する光学フィルタにおいて、前記透明樹脂基板のガラス転移温度は200℃以上であると共に、前記透明樹脂基板の光弾性係数の絶対値は50×10-12Pa-1よりも小さいことを特徴とする。
本発明に係る光学フィルタによれば、膜形成時の皺やうねりの発生を防止することができると共に、複屈折が小さく高画質化への対応が可能となる。
撮像光学系の構成図である。 真空蒸着装置を概略図である。 蒸着治具の断面図である。 光学フィルタの膜構成図である。 光学フィルタの打ち抜く状態の説明図である。 光学フィルタの模式断面図及び透過率の分布特性グラフ図である。 実施例及び比較例で作製した光学フィルタの耐光性試験による透過率の特性グラフ図である
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例1における撮影光学系の構成図を示し、レンズ1、光量絞り装置2、レンズ3〜5、ローパスフィルタ6、CCD等から成る固体撮影素子7が順次に配列されている。光量絞り装置2においては、可動の絞り羽根支持板8に一対の絞り羽根9a、9bが取り付けられている。絞り羽根9aには、絞り羽根9a、9bにより形成される開口部を通過する光量を減光することを目的とした光学フィルタ10が接着されている。
撮影光学系に入射する像光は、レンズ1、光量絞り装置2、レンズ3〜5、ローパスフィルタ6を経て固体撮影素子7上に結像する。その際に、絞り羽根9a、9bによる開口部、光学フィルタ10により像光の光量が調整される。
本実施例における光学フィルタ10の透明樹脂基板には、フマル酸エステルの重合体であるフマル酸ジエステル樹脂が使用されている。
ここで、フマル酸ジエステル残基単位のエステル置換基であるR1、R2は、それぞれ独立して炭素数3〜12の分岐アルキル基又は環状アルキル基であり、フッ素、塩素等のハロゲン基、エーテル基、エステル基又はアミノ基で置換されていてもよい。炭素数3〜12の分岐アルキル基としては、例えばイソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基等が挙げられる。炭素数3〜12の環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。その中でも、耐熱性、機械特性に優れた透明フィルムとなることからイソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましく、特に耐熱性、機械特性のバランスに優れた透明フィルムとなることからイソプロピル基が好ましい。
化学式(1)において表されるフマル酸ジエステル残基単位としては、例えばフマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ−s−ブチル残基、フマル酸ジ−t−ブチル残基、フマル酸ジ−s−ペンチル残基、フマル酸ジ−t−ペンチル残基、フマル酸ジ−s−ヘキシル残基、フマル酸ジ−t−ヘキシル残基、フマル酸ジシクロプロピル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基等が挙げられる。その中でも、フマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ−s−ブチル残基、フマル酸ジ−t−ブチル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基が好ましく、特にフマル酸ジイソプロピル残基が好ましい。中でも、化学式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基単位50モル%以上から成るフマル酸ジエステル系樹脂が樹脂基板に用いられるに適した透明性、耐熱性を備えるため好ましい。
化学式(1)において表されるフマル酸ジエステル残基単位50モル%以上から成るフマル酸ジエステル系樹脂としては、実質的には化学式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基単位が50モル%以上、他の単量体から成る残基単位が50モル%以下から成るフマル酸ジエステル系樹脂である。他の単量体から成る残基単位としては、例えばスチレン残基、α−メチルスチレン残基等のスチレン類残基;アクリル酸残基、アクリル酸メチル残基、アクリル酸エチル残基、アクリル酸ブチル残基、アクリル酸−3−エチル−3−オキセタニルメチル残基、アクリル酸テトラヒドロフルフリル残基等のアクリル酸エステル類残基、メタクリル酸残基、メタクリル酸メチル残基、メタクリル酸エチル残基、メタクリル酸ブチル残基、メタクリル酸−3−エチル−3−オキセタニルメチル残基、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル残基等のメタクリル酸エステル類残基、酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基等のビニルエステル類残基、アクリロニトリル残基、メタクリロニトリル残基、エチレン残基、プロピレン残基等のオレフィン類残基等の1種又は2種以上を挙げることができる。
そして、フマル酸ジエステル系樹脂としては、化学式(1)において表されるフマル酸ジエステル残基単位が50モル%以上が好ましく、特に70モル%以上であることが好ましく、更に耐熱性及び機械特性に優れた透明フィルムとなることから、フマル酸ジエステル残基単位が80モル%以上であることが好ましい。
更に、透明樹脂基板にはハードコート層を設けることが好ましく、ハードコート層は有機成分と無機粒子から成ることが特に好ましい。透明樹脂基板にハードコート層を設けることにより、高温の成膜時においても線膨張係数が抑制され、透明樹脂基板と蒸着膜の熱応力を低減させることができる。
ハードコート層に用いる無機粒子としては、例えばコロイダルシリカ微粒子等のシリカ系粒子、炭酸カルシウム等の炭酸塩、酸化チタン等の金属酸化物系粒子等が挙げられる。その中でも、表面修飾の容易さや入手し易さからシリカ系粒子が好ましく、更に粒子径の制御が容易であることからコロイダルシリカ微粒子が好ましく、特に光の散乱が少ない平均粒子径が400nm以下のものが好ましい。また、コロイダルシリカ微粒子は、平均粒子径が1〜400nmの範囲の無水ケイ酸の超微粒子を、水又は有機溶媒に分散させた状態のものである。このようなコロイダルシリカ微粒子は、公知の方法で製造することもできるが、市販もされている。
ハードコート層に用いる有機成分としては、例えば重合性基を有する有機化合物が挙げられ、例えば(メタ)アクリロイル基を有する有機化合物、スチリル基を有する有機化合物、ビニル基を有する有機化合物等のラジカル重合性基を有する有機化合物、エポキシ基を有する有機化合物、オキセタン基を有する有機化合物等のイオン重合性基を有する有機化合物が挙げられる。この中でも、反応性の高さ及び生成する硬化物の熱的な安定性からラジカル重合性基を有する有機化合物が好ましく、特に生産性の観点から(メタ)アクリロイル基を有する有機化合物が好ましい。ここで有機化合物とは、例えばウレタン、エポキシ、ポリエステル、(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また近年の撮像機器の高画質化に伴い、透明樹脂基板は複屈折が小さければ小さい程より好ましい。複屈折は屈折率が方向により異なる材料を通る光が異常光線と常光線に分離する現象であり、材料固有の複屈折性と成形加工時の剪断力による分子配向や、溶融した合成樹脂が固化する際に生ずる残留応力等に大きく依存する。複屈折が大きいと透過光が分離して結像点がずれるため、結像性能が低下する問題がある。
複屈折の大きさは、上述した屈折率の差から生ずる光の速度の差である位相差リタデーション値(Re)として表すことができ、異常光線の屈折率をNe、常光線の屈折率をN0、複屈折物質の板厚をd[nm]とすると、位相差Re[nm]=d×(Ne−N0)で表すことができる。
また、位相差Reは透明樹脂基板の板厚に応じた複屈折を表し、位相差Reが小さいほど画像は鮮明となる。光弾性係数Cは複屈折の生じ易さを表し、光弾性係数Cが小さいほど外部応力により生ずる複屈折が小さい。位相差Re及び光弾性係数Cは、Δnを複屈折、dをフィルム厚、σを応力とすると、次の計算式により計算される。
Re=Δn×d
C=Δn/σ
この計算式は光弾性係数Cの値がゼロに近いほど外力による複屈折の変化が小さいことを示している。位相差Reは異常光線と常光線の差により負の値もとり得ることから、光弾性係数Cも正及び負の値をとる。そのため、光弾性係数Cは絶対値での評価が好適である。
本発明においては、ガラス転移点Tgが200℃、かつ、光弾性係数Cの絶対値が50×10-12Pa-1よりも小さな透明樹脂基板が好適に使用される。
光弾性係数Cはポリマのガラス状態での応力による位相差Reの発生程度を表している。光弾性係数Cが大きいことは、ポリマをガラス状態下で使用した場合に外的因子又は自らの凝固した歪みから発生する応力などにおいて敏感に位相差Reを発生し易くなってしまうことを示している。例えば、本発明のように、積層した際の貼り合わせ時の残留歪みや、温度変化や湿度変化などに伴う材料の収縮により発生する微小な応力によって、不必要な位相差Reの変化が発生し易いことを意味する。このことから、光弾性係数Cの絶対値は小さい程好ましい。
このような見地から、高温で緻密な膜を成膜する場合には、光弾性係数Cの絶対値は、通常では50×10-12Pa-1よりも小さく、好ましくは0〜40×10-12Pa-1、更に好ましくは0〜20×10-12Pa-1、より好ましくは0〜10×10-12Pa-1、特に好ましくは0〜5×10-12Pa-1である。また、光弾性係数Cが50×10-12Pa-1を超えた場合には、成膜時に発生する応力、使用する際の環境変化などによって位相差Reが変化してしまうため、優れた画質を得る上で好ましくない。
ところで、光学フィルタ10の基材としてPETフィルムを用いた場合は、フィルム成形時に延伸加工されるため、分子配向による複屈折が大きく、位相差Reは100nm以上である。近年の撮像機器の高画質化に伴い、複屈折が小さい透明樹脂フィルムが求められており、具体的には光学フィルタ10の位相差Reが100nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以下である。
また、基材は原料となる樹脂材料の種類やフィルム化する際の条件によりヘイズ値が変化するが、実施例に用いる光学フィルタ10の用途としては、ヘイズ値が3%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。
図2は透明樹脂基板から光学フィルタ10を製造するための真空蒸着機の概略図を示している。この蒸着チャンバ11内には回転自在な回転ドーム12が設けられ、この回転ドーム12に透明樹脂基板を保持する蒸着治具13が配置されている。また蒸着チャンバ11内には、蒸着するND膜の蒸着源としてAl23から成る蒸着源14、TiOxから成る蒸着源15、反射防止膜の蒸着源としてMgF2から成る蒸着源16が設けられている。
蒸着源14〜16の上方には、特定の蒸着源14〜16のみを蒸着させるためのシャッタ17が設けられ、蒸着チャンバ11の上部には蒸着膜の膜厚を測定するための光学膜厚計18が配置されている。更に、蒸着チャンバ11の壁面や回転ドーム12の上部には透明樹脂基板20を加熱するためのヒータ19が設置されている。
本実施例においては真空蒸着法を用いたが、イオンプレーティング法又はスパッタリング法等においても同様な効果を得ることができる。
図3は蒸着治具13の断面図を示しており、蒸着治具13には透明樹脂基板20が取り付けられ、図示しないスペーサを介することにより、所定幅の開口部を有する蒸着マスク21が配置されている。そして、成膜面を下向きとし、上述した蒸着チャンバ11内の回転ドーム12に取り付けられる。
図4は透明樹脂基板20上に成膜されるND膜31の膜構成図を示している。図2に示す蒸着チャンバ11を用い、蒸着源14〜16を蒸着源として透明樹脂基板20上に9層から成るND膜31が成膜されている。ND膜31は反射率を低下させるための誘電体膜(反射防止膜)であるAl23膜31aと、透過率を低下させるための光吸収膜であるTiOx膜31bとが交互に計8層積層されている。更に、最表層の第9層には、反射防止効果を更に高めるために低屈折材料であるMgF2膜31cを、光学膜厚n×d(n:屈折率、d:物理膜厚)で1/4λ(λ=500〜600nm)に蒸着している。
また、本実施例においては、最表層にMgF2膜31cを用いたが、MgF2膜の代りにSiO2膜を用いることもできる。
光学フィルタ10の透過率は、第2、4、6、8層の光吸収膜であるTiOx膜31bの総膜厚によって変化し、膜厚が厚くなるほど透過率は低下する。また、蒸着時に反射率をモニタリングすることにより、第1、3、5、7層の誘電体膜(反射防止膜)であるAl23膜31aの膜厚を制御し、反射率を低下させることが可能である。光吸収膜であるTiOx膜31b、誘電体膜(反射防止膜)であるAl23膜31aはそれぞれ無機硬質膜であり、SiO2、TiO2Al23、ZrO2、Ta25、Nb25等も用いることができ、酸化数の異なる吸収材料も用いることができる。
なお、本実施例においてはND膜31を9層としたが、材料の組み合わせや層数については限定されず、要求特性に合わせて公知の構成を採用することができる。
図5は図4に示すND膜31を成膜した透明樹脂基板20から個々の光学フィルタ10を所定の形状に切断する説明図を示している。このときの打ち抜きにおける厚みも光学特性に影響を与えるため、透明樹脂基板20の透過率等の光学特性が優れていることが好ましく、特に光弾性係数Cが50よりも小さいことが好ましい。透明樹脂基板20上にND膜31の蒸着が完了すると、蒸着チャンバ11から取り出し、プレス型で光学フィルタ10を打ち抜いて切断する。
図6(a)は上述の方法により製造した光学フィルタ10の模式断面図、図6(b)は図6(a)に示す光学フィルタ10の断面の透過率の分布特性グラフ図を示している。
濃度分布は各種設定できるが、本実施例における光学フィルタ10は透明領域(A−B)、低濃度領域(B−C)、高濃度領域(C−D)を有するグラデーション光学フィルタであり、高濃度領域(C−D)の濃度はND1.6(透過率2.5%)である。
このように、ND膜31の膜厚が透明樹脂基板20に対して段階的又は連続的に変化する領域を設けた場合に、それぞれの膜厚において膜応力が異なる。そのため、光弾性係数Cが小さいと膜厚が異なる各部分での膜応力による複屈折の違いを低減させることができる。また、蒸着によって達する温度領域において、寸法変化率が少ないと皺や膜の剥離が生じ難い。従って、透明樹脂基板20の寸法変化率は、好ましくは220℃において0.5%以下、更に好ましくは0.1%以下、特に好ましくは0.05%以下である。
本実施例の光学フィルタ10は、透明領域(A−B)を有しているが、透明領域を有しないグラデーション光学フィルタとしても同様の効果を得ることができる。
本実施例における光学フィルタ10の基材となる透明樹脂基板20は、耐熱性を有するフマル酸ジエステル樹脂から成り、200℃以上のガラス転移温度Tgを有している。このようなガラス転移温度Tgによる耐熱性を有することにより、蒸着時の成膜温度が200℃近くに達しても、加熱された透明樹脂基板20の温度よりもガラス転移温度Tgの方が高いため、透明樹脂基板20の表面に生ずる皺の発生を有効に抑制することができる。このフマル酸ジステル樹脂から成る透明樹脂基板20は、光学フィルタ10の用途に適した全光線透過率90%以上を有し、材料の濁度を示すヘイズ値は1%以下となっている。
また、透明樹脂基板20の板厚は可能な限り薄い方が好ましい。これは光学フィルタ10を光量絞り装置2に組み込んで使用する際に、光量絞り装置2を薄型化することができ、また軽量となるために、光学フィルタ10自体、或いは光学フィルタ10を取り付けた絞り羽根9a、9bを駆動するための消費電力を少なくすることができる。
ただし、透明樹脂基板20の板厚が薄くなり過ぎると、光学フィルタ10を製造する上で取り扱いが困難になるため、必要な板厚は25〜200μmであり、好ましくは50〜100μmの範囲である。この際に、透明樹脂基板20としての剛性を保持し、また後述するND膜の形成による反りを防止するためにも、透明樹脂基板20の曲げ弾性率は1000MPa以上であることが好ましい。より好ましくは、透明樹脂基板20の曲げ弾性率は2000MPa以上、特に好ましくは3000MPa以上で、反りの誘電体膜と吸収膜を交互に数10層積層すると反りを防止できる。
本実施例において用いた透明樹脂基板20は、板厚60μmのフマル酸ジエステルフィルムの両面にアクリル樹脂中にシリカ粒子を分散させたハードコート層を5μmの厚みに塗工している。また、透明樹脂基板20の材料として、フマル酸ジイソプロピル残基単位/アクリル酸−3−エチル−3−オキセタニルメチル残基単位=96/4(モル%)のものを用いた。
透明樹脂基板20において、220℃において3時間の耐環境性評価試験を行った結果、寸法変化率は0.03%であった。この透明樹脂基板20の両面にそれぞれ、図4に示す膜構成の濃度0.4のND膜31を蒸着し、濃度0.8の光学フィルタ10を作製し、透明樹脂基板20の温度が100℃になるようにヒータ温度を設定したが、成膜中は蒸着源14〜16の輻射熱により最大110℃まで温度が上昇した。
DSCによりフマル酸ジエステル樹脂による透明樹脂基板20のガラス転移点を測定したところ、250℃までの昇温においてガラス転移温度Tgが得られず、蒸着源14〜16による成膜温度よりも高いことを確認した。また、DSC(示差走査熱量測定)による測定において、ガラス転移温度Tgを実質的に示さず、280℃で融点を示したことから、熱分解温度までガラス転移温度Tgを示さないとも云える。なお、光弾性係数Cは5×10-12Pa-1であった。
また比較例として、透明樹脂基板としてガラス転移温度Tgが163℃、光弾性係数Cが5×10-12Pa-1のシクロオレフィンポリマ(COP)、ガラス転移温度Tgが110℃の延伸PET、ガラス転移温度Tgが300℃、光弾性係数Cが58×10-12Pa-1のポリイミド樹脂を用いて、同様の製法により光学フィルタを得た。これらの光学フィルタについて、皺、うねり、画質、環境安定性、耐光性について評価を行った。
なお、画質については、得られた光学フィルタをカメラに組み込み解像度チャートの細線のにじみ具合を確認した。また環境安定性については、温度60℃、湿度90%の環境において、1000時間放置し、その後の光学濃度変化を評価した。耐光性については、耐光性試験200時間後の透過率変化により評価した。光弾性係数Cが25×10-12Pa-1のトリアセチルセルロース(TAC)は、画質は優れた結果を得られるが、高温多湿条件では劣化が著しいため、比較試験は実施しなかった。
図7(a)〜(d)は耐光性試験前後の基材の種類による透過率変化を示したグラフ図であり、(a)はフマル酸ジエステル基板、(b)はPET基板、(c)はポリイミド基板、(d)はCOP基板である。
これらのグラフ図から、表1に示すように(b)のPET基板による光学フィルタは他の樹脂と比べて複屈折が大きいため画質が稍々劣り、(c)のポリイミド基板は紫外線である短波長側に弱く耐光性試験による透過率の低下が見られた。また、(d)のCOP基板はフマル酸ジエステル基板と比較すると若干耐熱性が低いためうねりが大きく、フマル酸ジエステル基板を使用した光学フィルタが最も優れていた。
表1
実施例1 比較例1 比較例2 比較例3
フマル酸ジエステル COP PET ポリイミド
皺 ○ ○ ○ ○
うねり ◎ ○ ○ ◎
画質 ◎ ◎ △ ○
環境安定性 ◎ ◎ ○ ○
耐光性 ◎ ◎ ○ ×
◎(優)、○(良)、△(可)、×(不可)
実施例1においては、真空蒸着機において基板温度が100℃となるように設定して蒸着したが、本実施例2においては基板温度が130℃となるようにヒータ温度を設定して蒸着し、実施例1と同様の評価を行った。
また、基板温度が130℃となるようにヒータ温度を設定したが、成膜中は蒸着材料の輻射熱により最大140℃まで温度が上昇した。なお、温度設定以外の樹脂基板の材質や板厚等は実施例1と同様のものを使用している。
表2は実施例2で得られた光学フィルタの評価を示している。PET基板やCOP基板では蒸着面に皺が発生したり、基板のうねりが大きくなったりする現象が現れたが、フマル酸ジエステル基板ではガラス転移温度Tgが高いため、うねりの発生は殆ど問題がないレベルであった。
表2
実施例2 比較例1 比較例2 比較例3
フマル酸ジエステル COP PET ポリイミド
皺 ○ △ × ○
うねり ○ △ × ○
画質 ◎ ◎ △ ○
環境安定性 ◎ ◎ ◎ ◎
耐光性 ◎ ◎ ○ ×
◎(優)、○(良)、△(可)、×(不可)
表3は透明樹脂基板20としてフマル酸ジエステルを使用した場合の実施例1、2の高温高湿放置による光学濃度の変化の表である。なお、試験は温度60℃、湿度90%で1000時間放置することにより行った。
表3
実施例1 実施例2
初期 0.80 0.80
試験後 0.775 0.79
変化量 −0.025 −0.01
この表3から明らかなように、実施例2では蒸着中の基板温度を高くしているため、光学濃度変化の濃度低下は実施例1と比較すると小さくなっている。
このように、光学フィルタの透明樹脂基板にフマル酸ジエステル樹脂を使用することにより、耐光性、耐熱性が共に優れるため高温での成膜が可能となり、耐環境性に優れた光学フィルタを作製することができる。
表4は基材の位相差Reと画質の関係を調べたものである。
表4
材質 厚み(μm) 位相差Re(nm) 画質
フマル酸ジエステル 100 1 ◎
シクロオレフィン 100 3 ◎
2軸延伸PET 75 1000 △
ポリイミド 250 30 ○
◎(優)、○(良)、△(可)
位相差Reが大きいほど入射光の分離幅が大きく、画像のにじみや歪が大きくなる。画質評価手段としては、先ずそれぞれの透明樹脂基板上に実施例1と同様の手段でND膜31を形成した光学フィルタを作製した。そして、得られた光学フィルタを通して解像度チャートの細線パターンを撮影し、撮影した細線パターンから線のにじみ具合を比較した。表4から分かるように、位相差Reが30nm以下であれば画質は良好であると判断できる。
1、3〜5 レンズ
2 光量絞り装置
6 ローパスフィルタ
7 固体撮像素子
8 絞り羽根支持板
9a、9b 絞り羽根
10 光学フィルタ
11 蒸着チャンバ
12 回転ドーム
13 蒸着治具
14〜16 蒸着源
17 シャッタ
18 光学膜厚計
19 ヒータ
20 透明樹脂基板
21 蒸着マスク
31 ND膜
31a Al23
31b TiOx
31c MgF2

Claims (8)

  1. 透明樹脂基板上に少なくとも誘電体膜を有する無機硬質膜を成膜することにより透過光量を調節する光学フィルタにおいて、前記透明樹脂基板のガラス転移温度は200℃以上であると共に、前記透明樹脂基板の光弾性係数の絶対値は50×10-12Pa-1よりも小さいことを特徴とする光学フィルタ。
  2. 前記透明樹脂基板の寸法変化率は、220℃において0.1%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
  3. 前記透明樹脂基板に成膜した前記無機硬質膜は、その膜厚が連続又は段階的に変化する領域を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
  4. 前記透明樹脂基板はフマル酸エステル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタ。
  5. 前記フマル酸エステル系樹脂は、フマル酸ジエステル残基単位を50モル%以上含むことを特徴とする請求項4に記載の光学フィルタ。
  6. 前記フマル酸ジエステル残基はフマル酸ジイソプロピル残基単位であることを特徴とする請求項5に記載の光学フィルタ。
  7. 請求項1〜6の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタを用いたことを特徴とする光量調節装置。
  8. 請求項1〜6の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタを光学系に備えたことを特徴とする光学装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016061883A (ja) * 2014-09-17 2016-04-25 東ソー株式会社 近赤外線カットフィルタ及び近赤外線カットフィルタを用いた装置

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