JP2014025138A - 銅合金トロリ線及び銅合金トロリ線の製造方法 - Google Patents

銅合金トロリ線及び銅合金トロリ線の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】強度、導電性、耐熱性に優れ、かつ、形状精度に優れた銅合金トロリ線及びこの銅合金トロリ線の製造方法を提供する。
【解決手段】Co;0.12質量%以上0.40質量%以下、P;0.040質量%以上0.16質量%以下、Sn;0.005質量%以上0.70質量%以下を含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、平均粒径を10nm以上とし、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数を、観察される析出物全体の90%以上とされており、初期の引張強さをTS、400℃×2時間保持後の引張強さをTSとして、HR=TS/TS×100で定義される耐熱性HRが90%以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、電車等に設けられたパンタグラフ等の集電装置と摺接され、前記電車等に給電を行う銅合金トロリ線に関するものである。
電車等に使用される鉄道用のトロリ線においては、上述のようにパンタグラフ等の集電装置と摺接され、給電される構成とされていることから、一定の強度、耐摩耗性、導電率、耐熱性等を確保する必要がある。
従来、トロリ線として、例えば特許文献1に開示されているように、Snを0.25〜0.35重量%含有したSn入り銅で構成されたものが提供されている。このSn入り銅は、銅の母相中にSnが固溶することによって強化された固溶強化型の銅合金であり、耐摩耗性等に優れている。
近年、電車の走行速度の高速化が図られているが、新幹線等の高速鉄道においては、電車の走行速度が、トロリ線等の架線に発生した波の伝播速度よりも速くなると、パンタグラフ等の集電装置とトロリ線との接触が不安定となって、安定して給電を行うことができなくなるおそれがある。
ここで、トロリ線の架線張力を高くすることによって、トロリ線における波の伝播速度を高速化することが可能となるため、従来よりもさらに高強度のトロリ線が求められている。
そこで、例えば、特許文献2−4には、Cr、Zr等を含有する銅合金からなるトロリ線が提案されている。Cr、Zr等を含有する銅合金は、母相中にCrやZrを主成分とする化合物が析出、分散することによって強度が向上された析出強化型の銅合金であり、強度、導電率がさらに向上することになる。
特公昭59−043332号公報 特開平03−056632号公報 特開平05−311284号公報 特開平07−266939号公報
ところで、特許文献2−4に記載されたCr、Zr等を含有する析出強化型の銅合金においては、溶体化処理工程でCr、Zrを母相中に固溶させ、冷間加工工程で所定の形状に成形し、その後、時効熱処理工程において、CrやZrを主成分とする化合物を析出させている。ここで、析出強化型の銅合金からなるトロリ線においては、析出物の分散状態によって強度及び導電率が変化することになるため、時効熱処理工程において、熱処理条件を調整することで、析出物の分散状態を制御している。
しかしながら、Cr、Zr等を含有する銅合金においては、時効熱処理後に冷間加工を実施すると、導電率等の性能が大きく変化してしまうため、時効熱処理工程を最終製品に近似した形状で実施しなければならず、時効熱処理後に形状の修正を十分に行うことができないといった問題があった。例えば、図1に示す溝付トロリ線の場合、溝加工を実施した後で、時効熱処理を実施する必要があった。
また、電車の走行速度の高速化によって、トロリ線には大きな摩擦力が作用することになり、トロリ線が摩擦熱によって温度上昇することになる。このため、従来にも増して、耐熱性の向上が求められている。すなわち、200℃といった高温の状態となった場合であっても、十分な引張強さを有し、架線張力を確保する必要がある。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、強度、導電性、耐摩耗性、耐熱性に優れ、かつ、形状精度に優れた銅合金トロリ線及びこの銅合金トロリ線の製造方法を提供することを目的とする。
前記の課題を解決するために、本発明に係る銅合金トロリ線は、Co;0.12質量%以上0.40質量%以下、P;0.040質量%以上0.16質量%以下、Sn;0.005質量%以上0.70質量%以下を含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、平均粒径を10nm以上とし、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数を、観察される析出物全体の90%以上としており、初期の引張強さをTS、400℃×2時間保持後の引張強さをTSとして、HR=TS/TS×100で定義される耐熱性HRが90%以上であることを特徴としている。
上述した本発明に係る銅合金トロリ線においては、Co;0.12質量%以上0.40質量%以下、P;0.040質量%以上0.16質量%以下、Sn;0.005質量%以上0.70質量%以下を含み、残部がCu及び不可避不純物からなる組成とされていることから、銅の母相中にCoとPとの化合物からなる析出物が分散されることになる。これにより、強度、導電率の向上を図ることが可能となる。
なお、Co及びPが下限値を下回ると析出物の個数が不足し、強度を充分に向上させることができない。一方、Co及びPが上限値を超えると、強度の向上に寄与しない元素が多く存在してしまい、導電率の低下等を招くおそれがある。このため、Co及びPは、上述の範囲内に設定している。
また、Snは、銅の母相中に固溶することによって強度を向上させる作用を有する元素である。また、CoとPとを主成分とする析出物の析出を促進させる効果や、耐熱性、耐食性の向上を図ることもできる。このような作用効果を確実に奏功せしめるためには、Snの含有量を0.005質量%以上とする必要がある。また、Snが過剰に添加された場合には導電率の低下を招くため、Snの含有量は0.70質量%以下とする必要がある。
また、前記析出強化型銅合金は、さらにNi;0.01質量%以上0.15質量%以下を含むことが好ましい。
この構成の銅合金線においては、Niを上述の範囲内で含有しているので、結晶粒の粗大化を抑制でき、強度をさらに向上させることができる。
また、本発明に係る銅合金トロリ線においては、平均粒径を10nm以上とし、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数を、観察される析出物全体の90%以上としているので、強度、導電率、耐熱性を向上させることが可能となる。ここで、析出物の粒径が10nm未満の場合には、その後の冷間加工において、CoとPとを主成分とする析出物が母相中に再固溶してしまい、導電率を低下させてしまう。
上述のように、本発明の銅合金トロリ線においては、時効熱処理後に冷間加工することによってさらに強度が向上することから、時効熱処理後に冷間加工を実施して形状の修正を十分に行うことができ、形状精度に優れた銅合金トロリ線を提供することが可能となる。
さらに、本発明に係る銅合金トロリ線においては、初期の引張強さをTS、400℃×2時間保持後の引張強さをTSとして、HR=TS/TS×100で定義される耐熱性HRが90%以上とされているので、摩擦熱等で銅合金トロリ線の温度が上昇した場合であっても、引張強さが十分に確保され、この銅合金トロリ線の架線張力を高く設定することができ、高速鉄道等にも適用することが可能となる。
本発明の銅合金トロリ線の製造方法は、上述した銅合金トロリ線の製造方法であって、時効熱処理工程と、この時効熱処理工程の後に実施される冷間加工工程と、を有し、前記冷間加工工程における加工率が20%以上65%以下の範囲内とされていることを特徴としている。
この構成の銅合金トロリ線の製造方法によれば、時効熱処理工程によって、Co及びPを主成分とする析出物を析出させた後、冷間加工工程において加工率20%以上65%以下の加工を実施しているので、析出物の部分において転位ループが形成されることになり、強度を確実に向上させることが可能となる。また、時効熱処理工程の後に、加工率20%以上の冷間加工を実施するので、トロリ線の形状精度を向上させることが可能となる。
ここで、冷間加工工程における加工率が20%未満の場合には、強度の向上が不十分となるおそれがある。また、冷間加工工程における加工率が65%を超える場合には、転位の集積と析出物の再固溶によって、導電率が低下してしまうおそれがある。よって、強度、及び、導電率を確保する観点から、冷間加工工程における加工率を20%以上65%以下の範囲内に設定しているのである。
本発明によれば、強度、導電性、耐熱性に優れ、かつ、形状精度に優れた銅合金トロリ線及びこの銅合金トロリ線の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態である銅合金トロリ線の断面説明図である。 本発明の実施形態である銅合金トロリ線の製造方法のフロー図である。 本発明の実施形態である銅合金トロリ線の製造方法で用いられる連続鋳造圧延設備の概略説明図である。
以下に、本発明の実施形態に係る銅合金トロリ線及び銅合金トロリ線の製造方法について添付した図面を参照して説明する。
図1に、本発明の実施形態である銅合金トロリ線1の一例を示す。
本実施形態である銅合金トロリ線1は、図1に示すように、金具を装着するための溝2が形成された溝付トロリ線とされている。この銅合金トロリ線1は、溝2の一方側(図1において下側)に設けられた第一円弧部3と、溝2の他方側(図1において上側)に設けられた第二円弧部4と、を備えており、第一円弧部3がパンタグラフに摺接する構成とされている。
ここで、鉄道用のトロリ線は、断面積によって規格化されており、本実施形態である銅合金トロリ線1においては、断面積が110mmとされている。
この銅合金トロリ線1は、Co;0.12質量%以上0.40質量%以下、P;0.040質量%以上0.16質量%以下、Sn;0.005質量%以上0.70質量%以下を含み、残部がCu及び不可避不純物とされた組成の銅合金で構成されている。
また、前記析出強化型銅合金は、さらにNi;0.01質量%以上0.15質量%以下を含むことが好ましい。
なお、この銅合金においては、さらに、0.002質量%以上0.5質量%以下のZn、0.002質量%以上0.25質量%以下のMg、0.002質量%以上0.25質量%以下のAg、0.001質量%以上0.1質量%以下のZrのうち、いずれか1種以上を含有してもよい。
この構成の銅合金線においては、Zn,Mg,Ag,Zrのいずれか1種または2種以上を上述の範囲で含有しているので、これらの元素が硫黄(S)と化合物を形成することにより、銅の母相中に硫黄(S)が固溶することを抑制でき、強度等の機械的特性の劣化を抑制することができる。
以下に、各元素の含有量を上述の範囲内に設定した理由について説明する。
(CoおよびP)
CoとPは、銅の母相中に分散する析出物を形成する元素である。
ここで、Coの含有量が0.12質量%未満およびPの含有量が0.040質量%未満の場合には、析出物の個数が不足し、強度を充分に向上させることができないおそれがある。一方、Coの含有量が0.40質量%超えおよびPの含有量が0.16質量%超えの場合には、強度の向上に寄与しない元素が多く存在してしまい、導電率の低下等を招くおそれがある。
このため、Coの含有量を0.12質量%以上0.40質量%以下、Pの含有量を0.040質量%以上0.16質量%以下の範囲内に設定している。
(Sn)
Snは、銅の母相中に固溶することによって強度を向上させる作用を有する元素である。また、CoとPとを主成分とする析出物の析出を促進させる効果や、耐熱性、耐食性を向上させる作用も有する。
ここで、Snの含有量が0.005質量%未満の場合には、上述した作用効果を確実に奏功せしめることができないおそれがある。一方、Snの含有量が0.70質量%を超える場合には、導電率を確保できなくなるおそれがある。
このため、Snの含有量を0.005質量%以上0.07質量%以下の範囲内に設定している。
(Ni)
Niは、Coの一部を代替することができ、結晶粒の粗大化を抑制する作用効果を有する元素である。
ここで、Niの含有量が0.01質量%未満の場合には、上述した作用効果を確実に奏功せしめることができないおそれがある。一方、Niの含有量が0.15質量%を超える場合には、導電率を確保できなくなるおそれがある。
このため、Niを含有する場合には、Niの含有量を0.01質量%以上0.15質量%以下の範囲内とすることが好ましい。
(Zn,Mg,Ag,Zr)
Zn,Mg,Ag,Zrといった元素は、硫黄(S)と化合物を生成し、銅の母相中への硫黄(S)の固溶を抑制する作用効果を有する元素である。
ここで、Zn,Mg,Ag,Zrといった元素の含有量がそれぞれ上述の下限値より少ない場合には、銅の母相中への硫黄(S)の固溶を抑制する作用効果を十分に奏功せしめることができない。一方、Zn,Mg,Ag,Zrといった元素の含有量がそれぞれ上述の上限値より多い場合には、導電率を確保できなくなるおそれがある。
このため、Zn,Mg,Ag,Zrといった元素を含有する場合には、それぞれ上述の範囲内とすることが好ましい。
また、本実施形態である銅合金トロリ線1においては、平均粒径を10nm以上とし、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数を、観察される析出物全体の90%以上とされている。
ここで、析出物の観察は、次のようにして実施した。透過型電子顕微鏡によって倍率15万倍および75万倍で観察し、当該析出物の面積を算出してその円相当径を粒径として算出した。なお、倍率15万倍で11〜100nmの粒径の析出物を、倍率75万倍で1〜10nmの粒径の析出物を測定した。倍率75万倍での観察では1nm未満の析出物は明確に判別できないことから、観察される析出物全体の個数は粒径1nm以上の析出物の個数となる。また、透過型電子顕微鏡による観察は、倍率15万倍の場合は視野面積約4×10nm2 、倍率75万倍の場合は視野面積約2×10nm2 で実施した。
また、本実施形態である銅合金トロリ線1においては、初期の引張強さをTS、400℃×2時間保持後の引張強さをTSとして、HR=TS/TS×100で定義される耐熱性HRが90%以上とされている。
なお、本実施形態では、銅合金トロリ線1の引張強さの測定は、JIS Z 2241に準拠して実施した。また、熱処理後の引張強さTSは、400℃×2時間保持後に常温で測定した。
次に、上述の銅合金トロリ線1の製造方法について説明する。図2に本発明の実施形態である銅合金トロリ線1の製造方法のフロー図を示す。
まず、上記銅合金からなる銅荒引線50を連続鋳造圧延法によって連続的に製出する(連続鋳造圧延工程S01)。この連続鋳造圧延工程S01においては、例えば図3に示す連続鋳造圧延設備が用いられる。
図3に示す連続鋳造圧延設備は、溶解炉Aと、保持炉Bと、鋳造樋Cと、ベルトホイール式連続鋳造機Dと、連続圧延装置Eと、コイラーFとを有している。
溶解炉Aとして、本実施形態では、円筒形の炉本体を有するシャフト炉を用いている。炉本体の下部には円周方向に複数のバーナ(図示なし)が上下方向に多段状に配備されている。そして、炉本体の上部から原料である電気銅が装入され、前記バーナの燃焼によって溶解され、銅溶湯が連続的に製出される。
保持炉Bは、溶解炉Aでつくられた銅溶湯を、所定の温度で保持したままで一旦貯留し、一定量の銅溶湯を鋳造樋Cに送るためのものである。
鋳造樋Cは、保持炉Bから送られた銅溶湯を、ベルトホイール式連続鋳造機Dの上方に配置されたタンディッシュ11にまで移送するものである。この鋳造樋Cは、例えばAr等の不活性ガス又は還元性ガスでシールされている。なお、この鋳造樋Cには、不活性ガスによって銅溶湯を攪拌して溶湯中の酸素等を除去する脱ガス手段(図示なし)が設けられている。
タンディッシュ11は、ベルトホイール式連続鋳造機Dに銅溶湯を連続的に供給するために設けられた貯留槽である。このタンディッシュ11の銅溶湯の流れ方向終端側には、注湯ノズル12が配置されており、この注湯ノズル12を介してタンディッシュ11内の銅溶湯がベルトホイール式連続鋳造機Dへと供給される構成とされている。
ここで、本実施形態では、鋳造樋C及びタンディッシュ11に合金元素添加手段(図示なし)が設けられており、銅溶湯中に、上述の元素(Co,P、Sn)が添加される構成とされている。
ベルトホイール式連続鋳造機Dは、外周面に溝が形成された鋳造輪13と、この鋳造輪13の外周面の一部に接触するように周回移動される無端ベルト14とを有している。このベルトホイール式連続鋳造機Dにおいては、前記溝と無端ベルト14との間に形成された空間に注湯ノズル12を介して銅溶湯が注入され、この銅溶湯を冷却・固化することで、棒状の鋳造銅材21を連続的に鋳造するものである。
このベルトホイール式連続鋳造機Dの下流側には、連続圧延装置Eが連結されている。この連続圧延装置Eは、ベルトホイール式連続鋳造機Dから製出された鋳造銅材21を連続的に圧延して、所定の外径の銅荒引線50を製出するものである。
この連続圧延装置Eから製出された銅荒引線50は、洗浄冷却装置15及び探傷器16を介してコイラーFに巻き取られる。
ここで、上述の連続鋳造圧延設備によって製出される銅荒引線50の外径は、例えば8mm以上30mm以下とされており、本実施形態では27mmとされている。
そして、この連続鋳造圧延工程S01では、鋳造銅材21が、例えば800℃から1000℃の比較的高温で保持されることから、Co、Pといった元素が銅の母相中に多く固溶することになる。
次に、図2に示すように連続鋳造圧延工程S01によって製出された銅荒引線50に対して、冷間加工を実施する(1次冷間加工工程S02)。この1次冷間加工工程S02では、ダイス伸線法、ロール圧延法、スウェージング加工等によって、所定の断面形状の銅線材へと加工することになる。このとき、加工抵抗の低減、ダイスやロールの摩耗低減、材料の冷却等を目的として、油性潤滑剤が使用される。
次に、銅線材の皮剥ぎを実施する(皮剥ぎ工程S03)。この皮剥ぎ工程03では、皮剥ぎダイスを用いて、表面の0.1〜0.5mm,好ましくは0.1〜0.2mmの表面層を除去する。この皮剥ぎ工程S03によって得られる銅線材は、直径が13〜22 mm程度とされており、本実施形態では18mmとされている。
次に、皮剥ぎ工程S03後の銅線材に対して時効熱処理を実施する(時効熱処理工程S04)。この時効熱処理工程S04によって、CoとPとを主成分とする化合物からなる析出物を析出させる。
ここで、時効熱処理工程S04では、昇温速度が50℃/時間以上300℃/時間以下、熱処理温度が300℃以上600℃以下、保持時間が0.5時間以上6時間以下の条件で実施される。
次に、時効熱処理工程S04後の銅線材に対して、冷間加工を実施し、所定の断面形状の銅合金トロリ線とする(2次冷間加工工程S05)。
ここで、この2次冷間加工工程S05における加工率は、20%以上65%以下の範囲内となるように設定されている。
この2次冷間加工工程S05においては、断面円形の銅線材に対して溝加工を実施し、図1に示す断面形状の銅合金トロリ線1とする。
以上のような構成とされた本実施形態である銅合金トロリ線1及び銅合金トロリ線1の製造方法によれば、Co;0.12質量%以上0.40質量%以下、P;0.040質量%以上0.16質量%以下、Sn;0.005質量%以上0.70質量%以下を含み、残部がCu及び不可避不純物からなる組成とされていることから、銅の母相中にCoとPとの化合物からなる析出物が分散されることになり、強度、導電率の向上を図ることが可能となる。
ここで、本実施形態では、Coの含有量を0.12質量%以上0.40質量%以下、Pの含有量を0.040質量%以上0.16質量%以下の範囲内に設定しているので、析出物の個数が確保され、強度を十分に向上させることができるとともに、強度の向上に寄与しない余剰のCo,Pが多く存在しておらず、導電率を確保することができる。
また、Snの含有量を0.005質量%以上としているので、銅の母相中に固溶することによって強度を向上させることができるとともに、CoとPとを主成分とする析出物の析出を促進させることができ、耐熱性、耐食性の向上を図ることができる。一方、Snの含有量を0.70質量%以下としているので、導電率の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、必要に応じて、0.002質量%以上0.5質量%以下のZn、0.002質量%以上0.25質量%以下のMg、0.002質量%以上0.25質量%以下のAg、0.001質量%以上0.1質量%以下のZrのうち、いずれか1種以上を含有する構成としている。このような元素を添加した場合には、銅の母相中へのSの固溶を防止し、Sによる性能低下を防止することができる。さらに、これらの元素によって、更なる強度向上を図ることができる。
本実施形態である銅合金トロリ線1においては、平均粒径を10nm以上とし、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数を、観察される析出物全体の90%以上とされているので、強度、導電率、耐熱性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態である銅合金トロリ線1においては、時効熱処理後に冷間加工することによってさらに強度が向上することから、時効熱処理後に冷間加工を実施して形状の修正を十分に行うことができ、形状精度に優れた銅合金トロリ線1を提供することが可能となる。
さらに、本実施形態である銅合金トロリ線1においては、初期の引張強さをTS、400℃×2時間保持後の引張強さをTSとして、HR=TS/TS×100で定義される耐熱性HRが90%以上とされているので、摩擦熱等で銅合金トロリ線1の温度が上昇した場合であっても、引張強さが十分に確保され、この銅合金トロリ線1の架線張力を高く設定することができ、高速鉄道等にも適用することが可能となる。
また、本実施形態である銅合金トロリ線1の製造方法においては、時効熱処理工程S04と、この時効熱処理工程S04の後に実施される2次冷間加工工程S05と、を有しており、2次冷間加工工程S05において加工率20%以上65%以下の加工を実施しているので、強度を確実に向上させることができるとともに、導電率を確保することが可能となる。すなわち、2次冷間加工工程S05における加工率が20%未満の場合には、強度の向上が不十分となるおそれがある。また、2次冷間加工工程S05における加工率が65%を超える場合には、転位の集積と析出物の再固溶によって、導電率が低下してしまうおそれがある。
さらに、本実施形態では、2次冷間加工工程S05の前に、300℃以上600℃以下で0.5時間以上6時間以下の熱処理によって析出物を析出させる時効処理工程S04を備えているので、銅の母相中に分散される析出物の大きさ、密度を調整することができ、例えば、平均粒径を10nm以上とし、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数を、観察される析出物全体の90%以上とすることができ、強度の向上を図ることができる。
また、本実施形態である銅合金トロリ線1の製造方法においては、連続鋳造圧延工程S01によって銅荒引線50を製出しているので、効率良く銅荒引線50を製出することができる。また、例えば800〜1000℃の高温状態で一定時間保持されることになるので、CoやP等の元素が銅の母相中に固溶されることになり、別途、溶体化処理を行う必要がない。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、図1に示す断面形状の銅合金トロリ線として説明したが、これに限定されることはなく、他の断面形状の銅合金トロリ線であってもよい。また、鉄道用トロリ線として説明したが、これに限定されることはなく、クレーン等の搬送機械に用いられるものであってもよい。
また、本実施形態では、連続鋳造圧延工程によって銅荒引線を製造するものとして説明したが、これに限定されることはなく、円柱状の鋳塊(ビレット)を製出し、この鋳塊を押出・冷間加工することで銅荒引線を製出してもよい。但し、押出法によって銅荒引線を製出した場合には、別途溶体化処理を行う必要がある。さらに、連続鋳造圧延工程によって製造された場合であっても、銅荒引線に対して溶体化処理を実施してもよい。
また、本実施形態では、連続鋳造圧延工程を図3に示すベルトホイール式鋳造機を用いて実施するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の連続鋳造法を採用してもよい。
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
ベルトホイール式連続鋳造機を備えた連続鋳造圧延設備を用いて、表1に示す組成の銅合金からなる銅荒引線(直径27mm)を製出した。この銅荒引線に対して、1次冷間加工を実施して直径20mmとし、皮剥ぎを実施した後に、表1に示す条件で時効熱処理を施した。その後、表1に示す条件で2次冷間加工を実施し、断面積110mmの溝付トロリ線を製造した。
そして、製造された溝付トロリ線を用いて、析出物の観察を行った。析出物の観察は、透過型電子顕微鏡(機種名:TEM:日立製作所製、H−800、HF−2000、HF−2200および日本電子製 JEM−2010F)の透過電子像を用いて、各析出物の面積から相当粒径を算出した。なお、倍率は15万倍、75万倍とし、それぞれ測定視野約4×10nm2、約2×10nm2 で、観察を実施した。そして、析出物の平均粒径、及び、観察される析出物のうち粒径5nm以上の析出物の割合を算出した。結果を表2に示す。
また、製造された溝付トロリ線を用いて、耐熱性HR、引張強さ、伸び、導電率を評価した。
耐熱性HRは、初期の引張強さをTS、400℃×2時間保持後の引張強さをTSとして、HR=TS/TS×100で定義されるものであり、JIS Z 2241に準拠し、島津製作所製AG−100kNXを用いて、初期の引張強さTS、400℃×2時間保持後の引張強さTSとして測定して算出した。
引張強さ、伸びについても、上述のように、JIS Z 2241に準拠し、島津製作所製AG−100kNXを用いて測定した。
導電率は、JIS h 0505に準拠して、ダブルブリッジ法によって測定した。
なお、従来例1としてタフピッチ銅、従来例2としてCu−0.3wt%Snについて、耐熱性、引張強さ、伸び、導電率を測定した。
評価結果を表2に示す。
Figure 2014025138
Figure 2014025138
CoおよびPの含有量が本発明の上限値を超えた比較例1においては、導電率が低くなっていることが確認される。
CoおよびPの含有量が本発明の下限値未満とされた比較例2においては、引張強さが不十分であった。
Snの含有量が本発明の上限値を超えた比較例3においては、導電率が低くなっていることが確認される。
Snの含有量が本発明の下限値未満とされた比較例4においては、引張強さが不十分であった。
析出物の平均粒径及び粒径5nm以上の析出物の個数が観察される析出物全体割合が本発明の範囲から外れた比較例5においては、導電率が低くなっていた。
また、従来例1,2においては、引張強度が不足しており、耐熱性も不十分であった。
これに対して、本発明例1−9においては、強度、導電率、耐熱性に優れていることが確認される。
以上の確認実験の結果から、本発明によれば、強度、導電率、耐熱性に優れた銅合金トロリ線を安定して提供することが可能であることが確認された。
1 銅合金トロリ線
2 溝
3 第一円弧部
4 第二円弧部

Claims (2)

  1. Co;0.12質量%以上0.40質量%以下、P;0.040質量%以上0.16質量%以下、Sn;0.005質量%以上0.70質量%以下を含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、
    平均粒径を10nm以上とし、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数が観察される析出物全体の90%以上とされており、
    初期の引張強さをTS、400℃×2時間保持後の引張強さをTSとして、
    HR=TS/TS×100
    で定義される耐熱性HRが90%以上であることを特徴とする銅合金トロリ線。
  2. 請求項1に記載の銅合金トロリ線の製造方法であって、
    時効熱処理工程と、この時効熱処理工程の後に実施される冷間加工工程と、を有し、
    前記冷間加工工程における加工率が20%以上65%以下の範囲内とされていることを特徴とする銅合金トロリ線の製造方法。
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