JP2014024818A - ゲル体の製造方法 - Google Patents

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秀司 藤井
Yoshinobu Nakamura
吉伸 中村
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Abstract

【課題】ピッカリングエマルションを利用した新規材料を提供する。
【解決手段】ピッカリングエマルションを利用した新規なゲル体、多中空体、多孔質体を提供する。ピッカリングエマルションと水溶性高分子を混合し、水溶性高分子を連続相に溶解せしめ、その水溶性高分子を架橋によりゲル化させてゲル体を得る方法を提供する。得られたゲル体はピッカリングエマルションの連続相がゲル化し、油相を固定している。得られたゲル体から油抽出、または得られたゲル体を焼成することにより多中空体または多孔質体が得られる。これら新規材料は、安定で、広い分野で利用可能である。生体に優しい反応を利用していることから、医療、化粧品、バイオ産業の分野でも利用可能である。
【選択図】図35

Description

本発明は、ピッカリングエマルションを利用したゲル体、並びにそのゲル体から得られる多中空体および多孔質体に関するものである。
エマルションは、塗料、接着・粘着、化粧品、食品、印刷、バイオマテリアル等の分野において実用化されており、多数の論文、特許が存在している。その中でも、分子レベルの乳化剤を使用しないピッカリングエマルション(特許文献1、非特許文献2〜3)は高い安定性を有し、生体適合性に優れる材料の創出につながる可能性から注目を集めている。これまでのところ、ピッカリングエマルション滴を任意の形状に集合化させる研究例は、本願発明者の知る限り報告例はない。
エマルション滴(emulsion droplet)集合体形成について関連する先行技術として、Weaver等が開発した分子レベルの乳化剤(ブランチポリマー)を使用する方法が挙げられる(非特許文献1)。彼らの技術は、エマルション滴の集合化に酸を使用する必要があり、また分子レベルの乳化剤を使用していることから、生体材料、化粧品を目的とした材料創出につなげることは困難である。ゲル化反応を起こすため分子構造、化学構造が精密に設計されたブランチポリマーを使用する必要があり、またWeaverらの系では、利用可能な乳化剤の種類が少ない。また、多孔質体を作製する試みはなされていない。分子レベルの乳化剤を使用し作製したエマルション集合体は乾燥するとその3次元立体構造を保つことが困難である。
特表2010−527332号公報
J.V.M.Weaver, Angew.Chem.Int.Ed., 2009, 48, 2131 S.U.Pikering, J.Chem.Soc., 1907, 91, 2001 S.Fujii, J. Adh.Soc.Jpn., 2007, 64
本発明は、ピッカリングエマルションを利用した新規材料を提供することを課題とする。
本発明は、ピッカリングエマルションを利用したエマルション滴が集合し固定されたゲル体の製造方法を提供するものである。また、生体に優しい材料の創出を可能にするものである。また、ゲル体から内部の連続相および/または分散相を除去することで内部に複数の中空を有する材料(多中空材料)や多孔質材料を提供するものである。すなわち本発明は、以下からなる;
1.(i)固体微粒子の水分散体と油成分とを撹拌して水中油滴型ピッカリングエマルションを得る工程、
(ii)(i)で得られたピッカリングエマルションと水溶性高分子を混合し、水溶性高分子が連続相に溶解しているピッカリングエマルションを得る工程、および、
(iii)(ii)で得られたピッカリングエマルションを、架橋を誘導する水溶性物質が含有されている水溶液に導入し、前記水溶性高分子を架橋させる工程、
を含むゲル体の製造方法。
2.前記水溶性高分子が、アルギン酸のアルカリ金属塩、又はポリビニルアルコール(PVA)である、前項1に記載の製造方法。
3.前記固体微粒子が、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル又はハイドロキシアパタイトを含有する粒子である、前項1又は2に記載の製造方法。
4.前記水溶性高分子がアルギン酸ナトリウムであり、前記水溶性物質がCaCl、AlCl、SrCl、BaClから選択される少なくとも一種である、前項1〜3のいずれか一に記載の製造方法。
5.前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであり、鉄イオンと共にピッカリングエマルションと混合し、前記水溶性物質が塩基性物質である前項1〜3のいずれか一に記載の製造方法。
6.前記油成分が、オレイン酸メチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、n−ドデカンから選択される少なくとも一種である前項1〜5のいずれか一に記載の製造方法。
7.前記(iii)の工程が、(ii)で得られたピッカリングエマルションを、細管から前記水溶液中に放出または前記水溶液上に滴下する工程を含む前項1〜6のいずれか一に記載の製造方法。
8.前項1〜7のいずれか一に記載の製造方法で調製されたゲル体から油成分を抽出する工程を含む多中空体の製造方法。
9.前項8の製造方法によって調製された多中空体。
10.前項1〜7のいずれか一に記載の製造方法で調製されたゲル体または前項9の多中空体を焼成させる工程を含む多孔質体の製造方法。
11.前項10の製造方法によって調製された多孔質体。
本発明は、種々の分野で利用可能な新規材料を提供する。本発明は、固体微粒子が油水界面に吸着することで安定化されたピッカリングエマルションを利用しているため、分子レベルの乳化剤を用いた系と比べ安定性が高いゲル体を提供する。また、分子レベルの乳化剤では構築不可能な多中空体および多孔質体などの3次元構造体を提供することができる。さらに生体に対して優しいゲル化反応(例えば人工イクラ作製の際利用されるアルギン酸ナトリウムを使用するゲル化反応)を採用しているため、広い分野で利用可能である。例えば、医療、化粧品、バイオ産業の分野でも利用可能な材料を提供する。また、本発明の製造方法の工程(i)、工程(ii)および工程(iii)をこの順番に遂行してゲル体を作製することにより、多中空体および多孔質体などの3次元構造体を提供することができる。
実施例1のアルギン酸Naが表面に吸着したポリスチレン粒子(以下、アルギン酸Na−PS粒子とも記す)の走査型電子顕微鏡(以下、SEMと記す)写真を示す。 実施例1のアルギン酸Na−PS粒子のレーザー回折式粒度分布測定の測定結果を示す。 実施例1のアルギン酸Na−PS粒子で安定化したピッカリングエマルションの1ヶ月静置後のデジタルカメラ写真を示す。(a)n−Dodecane,(b)Methyl myristate,(c)Isopropyl myristate,(d)1−Undecanol,(e)Castor oil,(f)Methyl oleate 実施例1のピッカリングエマルションの1か月後に安定に存在しているエマルションの割合(%)を示す。 実施例1の(a)n−Dodecaneまたは(b)Methyl myristateを用いて作製したピッカリングエマルションを24時間静置した後の光学顕微鏡写真を示す。 実施例1のMethyl myristateを用いアルギン酸Na−PS粒子で安定化されたピッカリングエマルションのレーザー回折式粒度分布測定の測定結果を示す。 実施例1のMethyl myristateを用いたゲル体のデジタルカメラ写真を示す。(a)アルギン酸Naを連続相に溶解させる前のピッカリングエマルションを塩化カルシウム水溶液に導入,(b)アルギン酸Naが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを塩化カルシウム水溶液に導入 実施例1のピッカリングエマルションのゲル化メカニズムを示す。 実施例1のMethyl myristateを用いたゲル体内部の油抽出前後の光学顕微鏡写真を示す。(a)油抽出前,(b)油抽出後 実施例1のMethyl myristateを用いたゲル体から油抽出され、さらに乾燥により水分除去された後のゲル体(多中空体)の(a)全体像,(b)(c)断面の内部構造,(d)(e)外表面のSEM写真を示す。 実施例2の湿式法により合成したHAp粒子のSEM写真を示す。 実施例2のHAp粒子水分散体のレーザー回折式粒度分布測定の測定結果を示す。 実施例2のHAp粒子で安定化されたピッカリングエマルションの1ヶ月静置後のデジタルカメラ写真を示す。(a)Isopropyl myristate,(b)Methyl oleate 実施例2のHAp粒子を用いて作製したピッカリングエマルションの1か月後に存在しているエマルション%を示す。 実施例2のHAp粒子で安定化されたピッカリングエマルションの光学顕微鏡写真を示す。(a)Isopropyl myristate,(b)Methyl oleate 実施例2のHAp粒子で安定化されたピッカリングエマルションのレーザー回折式粒度分布測定の測定結果を示す。 実施例2のMethyl oleateを用いて作製したゲル体のデジタルカメラ写真を示す。 実施例2のゲル体のデジタルカメラ写真を示す。(a)塩化アルミニウム(b)塩化ストロンチウム(c)塩化バリウム(d)塩化マグネシウムをゲル化反応に使用 実施例2のMethyl oleateを用いたゲル体内部の油抽出前後の光学顕微鏡写真を示す。(a)油抽出前(b)油抽出後 実施例2のゲル体から油抽出後、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)によりアルギン酸Naを熱分解させ、残存するHApからなる多孔質体の(a)全体像(b)断面(c)側面(d)断面の表面(e)側面の表面のSEM写真を示す。 実施例3の乳化重合により作製したPNVPが表面に吸着したPAN粒子(PNVP−PAN粒子)のSEM写真を示す。 実施例3のPNVP−PAN粒子のDLS(動的光散乱法)により測定した流体力学的径(Dz)、多分散度(PDI)、および、SEM写真から算出した数平均円相当径(Dn)、および、多分散度(Dw/Dn)を示す。 実施例3のPNVP−PAN粒子で安定化されたピッカリングエマルションの1ヶ月静置後のデジタルカメラ写真を示す。(a)n−Dodecane(b)Methyl myristate 実施例3のピッカリングエマルションを1ヵ月静置した後の光学顕微鏡写真を示す。(a)n−Dodecane(b)Methyl myristate 実施例3のピッカリングエマルションのレーザー回折式粒度分布測定の測定結果を示す。(a)n−Dodecane(b)Methyl myristate 実施例3のアンモニア水を用いて作製した磁性ゲル体のデジタルカメラ写真を示す。 実施例3の水酸化カリウム水溶液を用いて作製した磁性ゲル体のデジタルカメラ写真を示す。 実施例4のゲル体の(a)デジタルカメラ写真と(b)光学顕微鏡写真を示す。 比較例1のアルギン酸Naで安定化されたエマルション(油成分:Methyl oleate)の(a)1ヶ月静置後のデジタルカメラ写真(b)光学顕微鏡写真(c)レーザー回折式粒度分布測定の測定結果を示す。 比較例1の球状およびヒモ状のゲル体のデジタルカメラ写真を示す。 比較例1の多中空体の断面と実施例1の多中空体の断面を比較するSEM写真を示す。 比較例2の製造方法(PNVP−PAN粒子を使用し、アルギン酸NaとCaClの導入場所を逆にした製造方法)ではゲル体を作製することができなかった結果を示すデジタルカメラ写真を示す。 比較例3(one step製造方法)の球状およびヒモ状のゲル体のデジタルカメラ写真を示す。 比較例3のゲル体から油を抽出した後の内部構造のSEM写真を示す。多中空構造は完全には保持されていない。 本発明の製造方法の実施態様を説明する図を示す。
本発明のゲル体の製造方法は、以下の(i)(ii)および(iii)の工程を含む。
(i)固体微粒子の水分散体と油成分とを撹拌して水中油滴型ピッカリングエマルションを得る工程
(ii)(i)で得られたピッカリングエマルションと水溶性高分子を混合し、水溶性高分子が連続相に溶解しているピッカリングエマルションを得る工程
(iii)(ii)で得られたピッカリングエマルションを、架橋を誘導する水溶性物質が含有されている水溶液に導入し、前記水溶性高分子を架橋させる工程
本発明で得られるゲル体は、ピッカリングエマルションの連続相(水相、分散媒)が水溶性高分子の架橋反応によりゲル化したものであり、ゲル化した連続相中にエマルション滴が固定されている(以下、ゲル体をエマルション集合体ともいう)。本発明におけるエマルション滴は、固体微粒子が油水界面に吸着し安定化された油滴(油相、分散質)である。
ピッカリングエマルションの連続相および/または油相に、所望とする機能を有する物質を含有させてもよい。特に連続相に所望とする機能を保持する物質を担持させることにより、ゲル体、多中空体、多孔質体がその機能を有することができる。例えば、磁性を有する物質を連続相に担持させることにより、ゲル体、多中空体、多孔質体を磁性体とすることができる。連続相に機能性物質を担持させるためには、例えばピッカリングエマルションの作製時または作製後にその機能性物質またはその原料を添加し混合すればよい。
水中油滴型(O/W型)ピッカリングエマルションは、固体微粒子の水分散体と油成分とを撹拌して得ることができる。従来型の分子レベルの乳化剤を使うことなく、固体微粒子により乳化して調製される。
油成分は例えばミリスチン酸メチル(Methyl myristate)、ミリスチン酸イソプロピル(Isopropyl myristate)、オレイン酸メチル(Methyl oleate)、n−ドデカン(n−Dodecane)、1−ウンデカノール(1−Undecanol)、植物油等が挙げられる。植物油としては、ひまし油(Castor oil)、菜種油、ツバキ油、大豆油、オリーブ油などが例示される。好適な油成分としてはオレイン酸メチル又はミリスチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピルおよびn−ドデカン等が挙げられる。
固体微粒子は、無機粒子として、シリカ、カーボンブラック(Carbon Black)、炭酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、量子ドット、ポリマー粒子として、ポリスチレン(PS)、ポリビニルピリジン、ポリアクリロニトリル(PAN)、生体ナノ粒子(フェリチン、タバコモザイクウィルス)等が例示される。好適な固体微粒子は、ポリスチレン、ハイドロキシアパタイト、ポリアクリロニトリル(PAN)である。固体微粒子の粒子径は、10nm〜1mmが好ましく、100nm〜100μmがさらに好ましい。固体微粒子は水に分散して用いられる。分散体の固形分濃度は、0.3〜10重量%、好適には、0.4〜6重量%、さらに好適には0.5〜2重量%である。
ピッカリングエマルションの調製は、水30〜70体積量部:油成分70〜30体積量部の混合物に対し固体微粒子の固形分0.3〜2.5重量部、好適には水40〜60体積量部:油成分60〜40体積量部の混合物に対し固体微粒子の固形分0.4〜2.0重量部で混合し、回転数15000〜25000rpmの乳化機で乳化混合する。混合処理は、室温、処理時間1〜4分、好適には1.5〜3分処理される。
水溶性高分子が連続相に溶解しているピッカリングエマルションは、得られた水中油滴型ピッカリングエマルションと、水溶性高分子を混合して得ることができる。連続相は水相(分散媒の相)であり、水溶性高分子は溶解状態で連続相に存在する。
水溶性高分子としては、アルギン酸のアルカリ金属塩、ポリビニルアルコール(PVA)等が例示される。アルギン酸のアルカリ金属塩としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムが好適であり、アルギン酸ナトリウムが最も好適である。水溶性高分子がポリビニルアルコール(PVA)の場合は、鉄イオンとの混合物であることが好ましい。鉄イオンのとしてはFe2+、Fe3+が挙げられ、好適には、塩化鉄(II)(FeCl)および/または塩化鉄(III)(FeCl)である。
好適には、水溶性高分子は水に溶解し水溶液としてから、ピッカリングエマルションと混合する。水溶性高分子がアルギン酸ナトリウムの場合は、0.1〜3重量%、好適には0.3〜2重量%、さらに好適には0.5〜1.5重量%の水溶液とする。水溶性高分子がPVAの場合は、2〜20重量%、好適には5〜15重量%、さらに好適には、6〜12%の水溶液とする。好適なPVAの重合度は250〜800、好適には300〜700である。PVA水溶液は、好適にはFe2+および/またはFe3+が含有される。Fe2+は、PVA10重量部に対し、FeCl・4HOとして2〜6重量部、好適には3〜5重量部含有される。Fe3+は、PVA10重量部に対し、FeCl・6HOとして6〜16重量部、好適には8〜14重量部含有される。
ピッカリングエマルションと水溶性高分子水溶液の混合割合は、ピッカリングエマルション30〜70体積量部:水溶性高分子水溶液70〜30体積量部、好適には、ピッカリングエマルション40〜60体積量部:水溶性高分子水溶液60〜40体積量部である。
回転数2000〜3000rpmでミキサーを用いて、室温、処理時間30秒〜3分、好適には45秒〜2分処理され、水溶性高分子が連続相である水相(分散媒の相)に溶解される。
本発明に係るゲル体は、得られた水溶性高分子が連続相に溶解しているピッカリングエマルションを、架橋を誘導する水溶性物質が含有されている水溶液に導入し、前記水溶性高分子を架橋させることにより得ることができる。ピッカリングエマルションの連続相中の水溶性高分子同士が架橋することにより、連続相がゲル化する。
架橋を誘導する水溶性物質としては、水溶性高分子がアルギン酸ナトリウムの場合、CaCl、AlCl、SrCl、BaCl等のアルギン酸ナトリウムと水媒体中でイオン結合により架橋を起こす塩が例示される。塩の濃度は0.05〜1M、好適には0.07〜0.5M、より好適には、0.08〜0.2Mである。水溶性高分子がPVAの場合、架橋を誘導する水溶性物質としては、塩基性物質が好ましい。塩基性物質としては、NaOH、NH、KOH等が例示される。塩基性物質の濃度は1.0〜15.0Mである。導入処理は、室温で適宜処理される。
目的とするゲル体の最終形状により、適宜導入処理方法が選択される。好適な導入処理は、水溶性高分子が連続相に溶解しているピッカリングエマルションを、細管から前記水溶液中に放出する工程、または細管から前記水溶液上に滴下する工程を含む。
架橋を誘導する水溶性物質が含有されている水溶液中で細管からピッカリングエマルションを放出して、繊維状またはヒモ状に成形することができる。細管からピッカリングエマルションを該水溶液上に滴下して球状に成形することができる。ピッカリングエマルションを、水溶液に滴下する際の高さ、放出の際の先端口の口径や形状、ピッカリングエマルション中の各成分の濃度等を適宜調整することにより、ヒモ状、球状およびその他の形状のゲル体を成形することができる。
細管の先端部の内径は、0.1〜2mm、好適には0.2〜1.5mm、さらに好ましくは0.3〜1mmであり、細管として、例えば注射針が例示される。
本発明の多中空体は、上記製造方法にて得られたゲル体から油成分を抽出することにより得ることができる。さらに、乾燥し水分を除去して得ることができる。ゲル体は連続相(水相)がゲル化し、固体微粒子に覆われた油相がゲル中に固定されている構造を持つ。その油相から油成分を抽出すると油滴が存在していた部分が穴を形成し、多数の中空を有する多中空体が得られる。多中空体は、固体微粒子に囲まれた中空を多数備え、穴はゲル化した連続相中に速度論的に安定化された状態で固定化され、その位置を維持する構造を有する。油成分の抽出には、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の有機溶剤や親油性物質が使用できる。好適にはアセトンが使用できる。本発明の多中空体は、多中空の構造より種々の材料として利用可能である。生体に優しい材料であり生体関連製品の材料になり得る。
本発明の多孔質体は、上記製造方法にて得られたゲル体または多中空体を焼成させることにより得ることができる。焼成により連続相の成分と油相の成分は熱分解または蒸発し、固体微粒子を骨格とする多孔質体を得ることができる。焼成方法としては、例えば、酸素雰囲気下にて、5〜15℃/分の昇温速度で1000℃まで昇温させ、その温度を10分間維持して焼成させる方法が挙げられる。本発明の多孔質体は多孔質の構造より種々の材料として利用可能である。また、生体に優しい材料であり生体関連製品の材料になり得る。
以下に本発明の代表例を実施例により説明するが、本発明の技術範囲を限定するものではない。
アルギン酸Naが表面に吸着したポリスチレン粒子(アルギン酸Na−PS粒子)を用いたゲル体および多中空体の作製
(アルギン酸Na−PS粒子の合成)
100mL丸底フラスコにイオン交換水50mLを入れ、撹拌しながら0.5gのアルギン酸Naと0.05gの過硫酸アンモニウム(APS)を加えた。アルギン酸NaおよびAPSが完全に溶解したことを確認し、窒素置換を行った。5.0gの精製したスチレン(重合禁止剤が取り除かれている)をアルギン酸NaとAPSが溶解した水溶液を含む丸底フラスコに注射針(トップ注射針23G×1”(0.63×25mm),株式会社トップ)を装着した5mLのシリンジ(VAN硬質・耐熱ガラス製ロック式シリンジ5mL,株式会社トップ)を用いて注いだ。次いで反応液を温度コントローラー(IKATRON ETS−D5,IKA Werke GmbH & Co.KG)を搭載したホットマグネチックスターラー(IKAMAG RCT basic safety control,IKA Werke GmbH & Co.KG)のオイルバスに浸し、70℃、撹拌速度250rpmにて24時間重合を行った。
生成したPS粒子をイオン交換水を用いて15,000rpm、60分間で遠心分離を行なった。その後、上澄み液を取り除き、除去量と同量のイオン交換水を加えて超音波洗浄器(USM−1,株式会社エスエヌディ)中で5分間、再分散した後に再び15,000rpm、60分間の条件で遠心分離を行なった。このサイクルを5回繰り返すことで遠心洗浄を行った。
(アルギン酸Na−PS粒子の評価)
上記で調製したアルギン酸Na−PS粒子を以下の方法で評価した。固形分濃度の測定は、始めに容器の空重量(W)を測定し、さらに、アルギン酸Na−PS粒子水分散体を加えた後の重量(W)を測定し、60℃に設定した乾燥機(EYELA,VACUUM OVEN VOS−301SD)で24時間乾燥させ、乾燥後、容器の重量(W)を測定することにより、以下の式Iを用いて固形分濃度を得た。
((W−W)/(W−W))×100 (wt%)・・・式I
アルギン酸Na−PS粒子の固形分濃度が1.0wt%以上であったため、これにイオン交換水を加えることでアルギン酸Na−PS粒子の固形分濃度を1.0wt%に調節したアルギン酸Na−PS粒子水分散体を調製してエマルション作製実験に使用した。
アルギン酸Na−PS粒子の体積平均粒子径(Dv)、および粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。測定では分散媒体に蒸留水を用い、分散ユニットで撹拌速度2000rpmの条件で測定を5回行い、その平均値を湿潤状態(水媒体中)における粒子の体積平均粒子径、および粒度分布とした。レーザー回折式粒度分布測定装置による粒子の粒子径をDv±標準偏差の形で表記した。
合成したアルギン酸Na−PS粒子をSEM(VE−8800,Keyence)を使用して観察を行った。5×5mmのアルミ板にアルギン酸Na−PS粒子の水分散体を滴下し、自然乾燥後にカーボンテープでアルミの試料台に貼り付けた。なお、SEM観察時にチャージアップを防ぐためにイオンスパッタコーター(QUICK COATER SC−701,株式会社エリオニクス)を用いて、真空度:10〜1Pa、蒸着時間:4分、イオン電流:5mA、直流電圧:1000Vの条件でイオンスパッタ蒸着を行い、試料に約40nmの膜厚の金でコーティングした後、SEM観察を行った。
図1にアルギン酸Na−PS粒子のSEM写真を示した。SEM写真より、数平均粒子径が200nmで多分散度が1.05と単分散性の高いPS粒子であることを確認した。重合の際、分散安定剤として入れたアルギン酸Naが粒子表面に吸着し、コロイド安定なPS粒子を形成していることが期待できる。図2にレーザー回折式粒度分布測定の測定結果を示した。この測定より、体積平均粒子径は210±60nmであった。SEM写真から求めた数平均粒子径の200nmとレーザー回折測定から求めた体積平均粒子径が近いため、水媒体中でも分散安定なPS粒子であることが考えられた。
(アルギン酸Na−PS粒子の水分散体と油成分とを撹拌してピッカリングエマルションを得る工程)
10mLサンプル管中に、イオン交換水を加えて固形分濃度を1wt%に調整したアルギン酸Na−PS粒子水分散体5mLと、以下の(a)〜(f)の各種油5mLをそれぞれ加え、ホモジナイザー(IKA,T25 digital ULTRA−TURRAX)を用いて20,000rpmで2分間撹拌してピッカリングエマルションを調製した。
(a)n−ドデカン(n−Dodecane)(純度99.0%以上)(シグマアルドリッチジャパン株式会社)
(b)ミリスチン酸メチル(Methyl myristate)(純度95.0+%)(和光純薬工業株式会社)
(c)ミリスチン酸イソプロピル(Isopropyl myristate)(純度98.0%)(シグマアルドリッチジャパン株式会社)
(d)1−ウンデカノール(1−Undecanol)(シグマアルドリッチジャパン株式会社)
(e)ひまし油(Castor oil)(和光純薬工業株式会社)
(f)オレイン酸メチル(Methyl oleate)(C18 71−90%, C18 1>65% of C18,Alfa Aesar)
(アルギン酸Na−PS粒子で安定化されたピッカリングエマルションの評価)
(1)1ヶ月静置後の外観
図3にアルギン酸Na−PS粒子で安定化されたピッカリングエマルションの1ヶ月静置後のデジタルカメラ写真を示す。デジタルカメラ写真より、(b)Methyl myristateと(a)n−Dodecaneを用いた系は、クリーミング現象が起きているものの安定なエマルションであり、n−DodecaneとMethyl myristateを除く4種類の油を用いた系では解乳化している油を確認した。
(2)エマルションの型
エマルションの型(水中油滴型(O/W)または油中水滴型(W/O))はドロップテストにより評価した。ドロップテストでは、10mLサンプル管の中に、エマルション作製に用いた各種油とイオン交換水を3mLずつ別々に入れたものの上部より、それぞれ1滴ずつエマルションを滴下することで評価を行った。油に滴下した時に底面にエマルションドロップレットがそのまま沈み、水に滴下した時に水媒体中に分散した場合はO/W型のエマルションで、水に滴下した時に液面にエマルションドロップレットがそのまま浮かび、油に滴下した時に分散した場合はW/O型のエマルションと判断した。ドロップテストを行った結果、n−Dodecaneを用いた系ではW/O型で、n−Dodecane以外を用いた系ではO/W型であることが確認できた。
(3)安定性
エマルション作製1ヶ月静置後に安定に存在しているエマルションの割合(%)を求めた。O/Wタイプのエマルションについては、次のように求めた。
始めにエマルションの入っている容器の重量(Wo)を測定した。さらに、1ヶ月静置した後、解乳化した油をマイクロピペット(Eppendorf:マイクロピペット1000 L)で抜き取った後の重量(W)を測定し、以下の式IIを用いて安定に存在しているエマルションの割合(%)を算出した。結果を図4に示した。
エマルションの安定性(%)=100-(((Wo-W)/(油(5mL)×油の密度))×100)(%) ・・・式II
n−Dodecaneを用いた系では1ヶ月静置後も解乳化が見受けられず安定なピッカリングエマルションであることを確認した。Methyl myristateを用いた系では上部から確認したところ、極微量解乳化しているものの安定なピッカリングエマルションであることが確認できた。その他の油では安定に存在しないことを確認した。
(4)エマルション滴のサイズおよび分散度
図5にn−DodecaneまたはMethyl myristateを用いて調製したエマルションの24時間静置後の光学顕微鏡写真を示した。光学顕微鏡写真より、n−Dodecaneを用いて作製したエマルション径は、80μm〜600μm程度であり、多分散なエマルションであることが確認できた。Methyl myristateを用いて作製したエマルション径は20μm〜80μm程度であり、多分散なエマルションであることが確認できた。さらに、Methyl myristateを用いて作製したエマルションについて、エマルションの体積平均エマルション径(Dv)、および粒度分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置(Mastersizer 2000,Malvern)を用いて測定した。測定では分散媒体に蒸留水を用い、分散ユニット(Hydro 2000SM,Malvern)で撹拌速度2000rpmの条件で測定を5回行い、その平均値を湿潤状態(水媒体中)におけるエマルションの体積平均エマルション径、および粒度分布とした。本明細書では、レーザー回折式粒度分布測定装置によるエマルションのエマルション径をDv±標準偏差の形で表記する。Methyl myristateを用いて作製したピッカリングエマルションのレーザー回折式粒度分布測定の測定結果を図6に示した。この測定から、体積平均エマルション径が71±55μmで多分散なエマルションであることが確認できた。2種の測定方法から求めたエマルション径は良い一致を示していた。
(アルギン酸Naが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを得る工程)
安定でありO/W型である、油成分がMethyl myristateのピッカリングエマルションを用いた。ピッカリングエマルション2mLと1wt%のアルギン酸Na水溶液2mLを10mLサンプル管内に加え、タッチミキサー(IKA,VORTEX GENIUS 3)を用いて2,500rpmで1分間撹拌し混合し、アルギン酸Naが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを得た。
(塩化カルシウム水溶液に上記ピッカリングエマルションを導入しゲル体を得る工程)
得られたアルギン酸Naが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを注射針(TERUMO,NN−2238R,22G)を装着したシリンジ(TERUMO,ss−05Sz,5mL)を用いて吸引した。シャーレ(内径=14.8cm、深さ=2.5cm)に100mLの塩化カルシウム水溶液(0.1M)を入れ、シリンジの先端を塩化カルシウム水溶液の中に浸け込み、水溶液中でエマルションを連続的に注入しヒモ状のゲル体を作製した。また、液面から3cm離して上部から塩化カルシウム水溶液にエマルションを滴下して球状のゲル体を作製した。ゲル体のデジタルカメラ写真を図7bに示した。
比較のために、アルギン酸Naを連続相に溶解させる前のピッカリングエマルションについて同様に塩化カルシウム水溶液に導入したところ、ゲル体は形成しなかった(図7a)。これは、エマルション滴表面に存在するアルギン酸Na−PS粒子の立体反発によってエマルション滴同士が近づくことが出来ず、粒子表面に存在するアルギン酸Naが架橋出来なかったためと考えられる。一方、連続相にフリーなアルギン酸Naを十分量存在させることで、アルギン酸Naの架橋を可能としゲル化を生じさせ、エマルション滴の固定化が可能になったと考えられる(図8)。
(エマルションを滴下する際の高さ、塩化カルシウム濃度、アルギン酸濃度を変化させて作製したゲル体のモルフォロジィについて)
塩化カルシウム水溶液の濃度を0.1Mに固定し、ピッカリングエマルションに対して加えるアルギン酸Na水溶液の濃度を0.1,0.5,1.0,2.0wt%に変化させ、液面より3cmの高さからエマルションを滴下し、ゲル体の作製を試みた。その結果、アルギン酸Na水溶液の濃度を0.1wt%まで薄くすると球形ではなく、非球状のゲル体を形成することが確認できた。これはカルシウムイオンを捕捉するアルギン酸の量が少なくなり、エマルションが塩化カルシウム水溶液の水面に接触後、すぐにカルシウムイオンを捕捉できずゲル化反応がすぐに起こらなかったことが原因だと考えられる。そして、この系で滴下する高さを3cm,10cm,30cmと変化させ、ゲル体の形状に与える影響を調べたところ、0.1,0.5wt%の濃度のアルギン酸Na水溶液を用いた系で、高さが高くなるとゲル体の形状が球状から離れ変形度が大きくなることが確認できた。これは、高さを高くすることで液面との衝突するエネルギーが高まり、ゲル化により固まる前に変形してしまったためだと考えられる。
次にピッカリングエマルションに対して加えるアルギン酸Na水溶液の濃度を1.0wt%に固定し、塩化カルシウム水溶液の濃度を0.01,0.05,0.1,0.5Mに変化させ、液面より3cmの高さから滴下し、ゲル体の作製を試みた。その結果、塩化カルシウムの濃度を0.05M以下まで低くするとゲル体は球状を保てなくなることが確認できた。これはアルギン酸の量に対してカルシウムイオンの量が減ったために、エマルションが塩化カルシウム水溶液の水面に接触後、すぐにカルシウムイオンを捕捉できずゲル化反応がすぐに起こらなかったことが原因だと考えられる。そして、この系でエマルションを滴下する高さを3cm,10cm,30cmと変化させ、ゲル体の形状に与える影響を調べた。その結果、0.05M以下の濃度の塩化カルシウム水溶液を用いた系では、いずれの高さから滴下してもゲル体は非球状をとり、0.1M以上の系では、いずれの高さにおいてもゲル体は球状を保っていることが確認できた。
最後にピッカリングエマルションに対して加えるアルギン酸Na水溶液の濃度を1.0wt%に、滴下する塩化カルシウム水溶液の濃度を0.1Mに固定し、高さを3cm,10cm,30cmと変化させ、高さがゲル体に与える影響を調べた。その結果、どの高さから滴下しても、球形のゲル体が出来た。
(多中空体の作製)
シャーレ(内径=7.84cm,深さ=1.55cm)に、作製したゲル体を重ならないように配置し、ゲル体が浸かるまでアセトンを入れシャーレに蓋をして、24時間静置してゲル体から油を抽出した。油の抽出に使ったアセトン媒体は1回置換を行った。油抽出後にさらに乾燥させて水分を除去した。
(多中空体の評価)
アルギン酸Na−PS粒子を用いて作製したゲル体から油を抽出し乾燥させた後の断面および外表面をSEMを使用して観察した。アセトンを揮発、乾燥させたヒモ状のゲル体をカッターを用いて斜めにスライスすることによって、より広く断面を露出さるようにサンプルを作製した。断面観察時は、以下の2つ方法でサンプル作製を行った;(1)カーボンテープを張り付けたアルミ製の試料台に乾燥させたゲル体を張り付けた。(2)アルミ製の試料台の上に導電性接着剤であるAquadag(応研商事株式会社,graphite)を乗せ、そこに乾燥させたゲル体を植え込むようにして固定して導電性接着剤が水分を含んでいるので、再度乾燥させた。
図9にゲル体内部の油抽出前後の光学顕微鏡写真を示した。油抽出前では、光学顕微鏡写真にて観察されるコントラスト差より、ピッカリングエマルションは解乳化せずにゲル化していることが確認できた。油抽出後も内部構造に起因すると考えられるコントラスト差が確認できたことからゲル体内に何らかの構造があることが考えられる。図10に油抽出され、さらに乾燥により水分除去されたゲル体(多中空体)の全体像および断面の内部構造と外表面を拡大したSEM写真を示した。この断面写真より、多中空体内に数μm〜40μm程度の穴が観察された。これはアルギン酸Naでゲル化しゲル体となったサンプルから油を抽出したことで、アルギン酸Naのゲル膜で覆われたピッカリングエマルションのPS粒子だけ残り、油滴が存在していた部分が穴を形成したと考えられる。側面の写真から、穴のようなものや凹凸が確認出来た。これは、断面と比べると比較的なめらかなことからピッカリングエマルション滴がアルギン酸Naのゲル膜に覆われて多中空体になっているものと考えられる。以上の結果から、多中空構造体が創出されていることが確認された。
ハイドロキシアパタイト(以下HApとも記す)粒子を用いたゲル体、多中空体および多孔質体の作製
(HAp粒子の合成)
1000mLの三つ口ガラスフラスコ中で600mLの水に硝酸カルシウム四水和物10.00gを溶解し、さらに25%NH水溶液を5mL加えた。同溶液に、200mLの水にリン酸水素二アンモニウム3.34gを溶解したものを室温で一気に添加し、窒素雰囲気下、室温でマグネチックスターラー(多連式マグネチックスターラー; アズワン株式会社)を用いてテフロン(登録商標)製の攪拌子(テフロン(登録商標)攪拌子オーバル型; 株式会社相互理化学硝子製作所)で攪拌速度約300rpmで24時間撹拌した。24時間後、遠心分離機(日立卓上遠心機CT6E形; 日立工機株式会社)を用いて、3,000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を取り、除去量と同量の蒸留水を加え超音波洗浄器(USM−1,株式会社エスエヌディ)中で5分間再分散させた。このサイクルを5回繰り返すことで未反応の硝酸カルシウム四水和物とリン酸水素二アンモニウムを除去した。
(HAp粒子の評価)
上記で作製したハイドロキシアパタイト(HAp)粒子を実施例1のアルギン酸Na−PS粒子の評価法と同じ方法を用いて評価した。図11に合成したHAp粒子のSEM写真を示した。SEM写真より、100nm前後の粒子であることが確認できた。図12にHAp粒子水分散体のレーザー回折式粒度分布測定の測定結果を示した。レーザー回折測定から体積平均粒子径は4.06±2.21μmであった。数平均粒子径と体積平均粒子径を比較した結果、体積平均粒子径が数平均粒子径より大きく、HAp粒子は水媒体中で凝集体として存在していることが考えられる。
(HAp粒子の水分散体と油成分とを撹拌してピッカリングエマルションを得る工程)
固形分濃度を1wt%に調整したHAp粒子水分散体5mLとミリスチン酸イソプロピル(Isopropyl myristate)またはオレイン酸メチル(Methyl oleate)5mLをそれぞれ10mLサンプル管内に加え、実施例1と同様、ホモジナイザーを用いて20,000rpmで2分間撹拌してピッカリングエマルションを作製した。
(HAp粒子で安定化されたピッカリングエマルションの評価)
実施例1と同様の評価方法でピッカリングエマルションを評価した。
(1)1ヶ月静置後外観
図13にHAp粒子で安定化されたピッカリングエマルションの1ヶ月静置後のデジタルカメラ写真を示した。デジタルカメラ写真より、Isopropyl myristateとMethyl oleateのどちらの油を用いた系でも安定なエマルションが観察された。
(2)エマルションの型
ドロップテストを行った結果、Isopropyl myristateとMethyl oleateのどちらを用いた系もO/W型であることが確認できた。
(3)安定性
図14にHAp粒子を用いて作製したピッカリングエマルションの安定性を示した。実施例1と同様の評価基準でピッカリングエマルションを評価した。その結果、Isopropyl myristateとMethyl oleateのどちらの系も上部から確認したところ、解乳化が見受けられず安定なピッカリングエマルションであることが確認できた。
(4)エマルション滴のサイズおよび分散度
図15にIsopropyl myristateとMethyl oleateを用いて作製したピッカリングエマルションの24時間静置後の光学顕微鏡写真を示した。エマルション径が8μm〜60μm程度の多分散なエマルションであることが確認できた。図16に24時間静置後も安定に存在したMethyl oleateを用いて作製したピッカリングエマルションのレーザー回折式粒度分布測定の測定結果を示した。この結果より、体積平均エマルション径が12±8μmで多分散なエマルションであることが確認できた。2種の測定機器から求めたエマルション径どちらも同様にばらつきが大きいことから、多分散なピッカリングエマルションであると確認できた。
(HAp粒子で安定化されたピッカリングエマルションからのゲル体の作製)
Methyl oleateを油成分とするHAp粒子で安定化されたピッカリングエマルションとアルギン酸Na含有水溶液を、実施例1と同様の方法で混合し、アルギン酸Naが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを得た。その後実施例1と同様の方法で塩化カルシウム水溶液にピッカリングエマルションを導入してゲル体を作製した。得られたゲル体のデジタルカメラ写真を図17に示した。デジタルカメラ写真より、アルギン酸Naが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを塩化カルシウム溶液に接触させることでゲル化反応が起こりゲル体が形成されたことを確認した。これは、HAp粒子を用いたO/W型のピッカリングエマルションの分散媒にアルギン酸Naを存在させることで、そのアルギン酸Naがカルシウムイオンを捕捉して、架橋しゲル化したものと考えられる。図19aにMethyl oleateを用いて作製したゲル体内部の光学顕微鏡写真を示した。ゲル体内部にコントラスト差が観察されたことから、ピッカリングエマルションが解乳化せずにゲル化できていることが確認できた。
さらに、塩化カルシウムの代わりに、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウムの4種の塩の水溶液(0.1M)を用いてゲル体の作製を試みた。図18に4種の塩を用いて作製を試みたゲル体のデジタルカメラ写真を示した。その結果、塩化マグネシウム以外の系ではゲル体が作製できた。塩化マグネシウムの系(d)では、エマルションが固定化されず水媒体中に分散していく様子が観察された。
(多中空体の作製)
塩化カルシウム水溶液を用いて得られたゲル体から、実施例1と同様にして油を抽出し、次いで10分程度大気中で静置することで乾燥させて多中空体を作製した。図19bに多中空体の光学顕微鏡写真を示す。内部構造に起因すると考えられるコントラスト差が確認された。
(多孔質体の作製)
上記で作製した多中空体を、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA 6300,エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)、以下TG/DTAとも記す) を用い、O雰囲気下にて、10℃/minの昇温速度で30℃から1000℃まで昇温し、アルギン酸Naを熱分解させ、多孔質体を作製した。得られた多孔質体を、SEMを使用して観察した。図20に残存しているHApの全体像、断面および外表面のSEM写真を示した。この断面と外表面のSEM写真より、0.1μm〜20μm程度の穴が観察された。これはアルギン酸Naが架橋して、油相が固定化されたゲル体から、TG/DTAによりアルギン酸Naと油が熱分解または蒸発し、HApだけが残り、多孔質体を形成したと考えられる。以上の結果から、多孔質体の創出が確認された。
ポリビニルアルコール(PVA)存在下にて、Fe析出によるゲル化反応を利用した磁性ゲル体の作製 <粒子として、ポリビニルピロリドンが表面に吸着したポリアクリロニトリル粒子(PNVP−PAN粒子)を用いた。>
(PNVP−PAN粒子の合成)
100mL丸底フラスコに脱イオン水50mLと分散安定剤のPoly(N−vinyl pyrrolidone)(PNVP,mol.wt.=360,000;Fluka Chemicals)0.5gを入れ、撹拌しながらPNVPを溶解させた。溶解後、フラスコ内の酸素を抜き窒素を注入する操作を3回繰り返すことで窒素置換を行った。70℃のオイルバスに入れて撹拌し、丸底フラスコ内の温度を70℃にした。サンプル管にアクリロニトリル(純度98%以上,シグマアルドリッチジャパン(株))5.0gを取り、そこに2,2’−Azobis(2−methylpropion−amidine)dihydrochloride(AIBA,純度97%,シグマアルドリッチジャパン株式会社)0.05gを加え完全に溶かし、これを媒体(イオン交換水)とPNVPが入った丸底フラスコにシリンジを用いて加え、70℃にて24h、マグネチックスターラーバーで撹拌し(200rpm)重合を行い得られたPNVP−PAN粒子を遠心洗浄し、乾燥させた。
(PNVP−PAN粒子の評価)
図21に遠心洗浄後乾燥させたPNVP−PAN粒子のSEM写真を示した。また、図22にはPNVP−PAN粒子のSEM写真より求めた数平均円相当径(Dn)、多分散度(Dw/Dn)およびDLS(動的光散乱法)測定より求めた流体力学的径(Dz)、多分散度(PDI)を示した。DLS測定、およびSEM写真より求めたPNVP−PAN粒子の平均粒子径を比較すると、DLS測定より求めた平均粒子径のほうが大きいということが分った。流体力学的径よりも数平均粒子径が小さいのは、DLSでは液体状態での測定のため、PAN粒子表面吸着したPNVPが広がって測定されることに対し,SEM観察では試料が固体であるため、PNVPがPAN粒子表面で広がらずにシュリンクしているためであると考えられる。
(PNVP−PAN粒子の水分散体と油成分とを撹拌してピッカリングエマルションを得る工程)
10mLサンプル管中に固形分濃度を1wt%に調整したPNVP−PAN粒子水分散体5mLに対して、各種油5mL(1−Undecanol,Methyl myristate,n−Dodecane)をそれぞれ加え、ホモジナイザー(IKA,T25 digital ULTRA−TURRAX)を用いて20,000rpmで2分間で撹拌してピッカリングエマルションを作製した。
(PNVP−PAN粒子で安定化されたピッカリングエマルションの評価)
(1)1ヶ月静置後の外観
図23にPNVP−PAN粒子で安定化されたピッカリングエマルションの1ヶ月静置後のデジタルカメラ写真((a)n−Dodecane、(b)Methyl myristate)を示した。デジタルカメラ写真より、Methyl myristateとn−Dodecaneを用いた系はクリーミング現象が起きているものの安定なピッカリングエマルションが生成していることが確認できた。また、1−Undecanolを用いた系では解乳化している様子を確認した。
(2)エマルションの型
ドロップテストを行った結果、全ての系でO/W型であることが確認できた。
(3)安定性
アルギン酸Naで安定化されたエマルションと同様の評価基準でPNVP−PAN粒子で安定化されたピッカリングエマルションを評価した結果、n−DodecaneとMethyl myristateを用いたどちらの系も1ヶ月静置後、96%が安定に存在しており、解乳化がほとんど見受けられず安定なピッカリングエマルションであることを確認した。どちらの油を用いた系も上部から確認したところ、極微量解乳化していることを確認した。
(4)エマルション滴のサイズおよび分散度
図24にピッカリングエマルションを1ヵ月静置した後の光学顕微鏡写真を示した((a)n−Dodecane、(b)Methyl myristate)。光学顕微鏡写真より、n−Dodecaneを用いて作製したエマルション径は35μm〜150μm程度、Methyl myristateを用いた系では22μm〜170μm程度であり、多分散なエマルションであることが確認できた。図25にピッカリングエマルションのレーザー回折式粒度分布測定の測定結果を示した((a)n−Dodecane、(b)Methyl myristate)。この測定から、n−Dodecaneを用いて作製した体積平均エマルション径が74±28μm、Methyl myristateを用いた系では84±34μmと多分散なエマルションであることが確認できた。
(PVAおよび鉄イオンが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを得る工程)
上記で得られたMethyl myristateを油成分とするPNVP−PAN粒子で安定化されたピッカリングエマルションを用いた。100mLのイオン交換水にポリビニルアルコール(PVA;重合度:約500, ケン化度:88.0±1.5mol%,シグマアルドリッチ株式会社)10g、FeCl・4HO(99.0−102.0%)4.307g、FeCl・6HO(99.0%以上)11.615gを溶解させた。この溶液2mLと前記ピッカリングエマルション2mLを10mLサンプル管内に加え、タッチミキサー(IKA,VORTEX GENIUS 3)を用いて2,500rpmで1分間撹拌し混合し、PVA、FeCl・4HOおよびFeCl・6HOが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを得た。
(アルカリ性の溶液に上記ピッカリングエマルションを導入し磁性ゲル体を得る工程)
得られたPVA、FeCl・4HOおよびFeCl・6HOが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを注射針(TERUMO,NN−2238R,22G)を装着したシリンジ(TERUMO,ss−05Sz,5mL)を用いて吸引した。アンモニア水溶液(28%)、または水酸化カリウム水溶液(1.0M)の入ったシャーレに、液面より3cmの高さから滴下、または注射針の先端をアルカリ性溶液の中に浸け込み溶液中でエマルションを連続的に注入し、ゲル体を作製した。また、作製したゲル体に対してネオジウム磁石を近づけ、磁気に応答するかを調べた。
(PNVP−PAN粒子を用いたピッカリングエマルションから得られた磁性ゲル体の評価)
アルカリ性の溶液を用いて、図26(アンモニア水溶液)および図27(水酸化カリウム水溶液)の通り、球状およびヒモ状のゲル体の作製に成功した。ゲル体が形成出来たのは、酸化鉄(Fe)を架橋点とし、PVA鎖が3次元的に架橋したためである。さらに作製したゲル体にネオジウム磁石を近づけたところ、磁石にゲル体が引き寄せられ磁気に応答することを確認した。これは、ゲル体内に磁性を有するFeが存在しているためである。
(PNVP−PAN粒子で安定化されたピッカリングエマルションからゲル体および多中空体の作製)
実施例3で得られたMethyl myristateを油成分とするPNVP−PAN粒子で安定化されたピッカリングエマルションとアルギン酸Na含有水溶液を、実施例1と同様の方法で混合し、アルギン酸Naが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを得た。その後実施例1と同様の方法で塩化カルシウム水溶液にピッカリングエマルションを導入してゲル体を作製した。得られたゲル体のデジタルカメラ写真と光学顕微鏡写真を図28に示した。光学顕微鏡写真でゲル体内部にコントラスト差が観察されたことから、ピッカリングエマルションが解乳化せずにゲル化できていることが確認できた。さらに、得られたゲル体から実施例1と同様に油を抽出して多中空体を作製した。
比較例1
アルギン酸Naを用いたゲル体の作製(固体微粒子で安定化されていないエマルションを用いたゲル体の作製)
(アルギン酸Naで安定化されたエマルションの作製)
10mLサンプル管中で、5mLのイオン交換水にアルギン酸Na0.05gを溶解し1wt%水溶液を作製した。そのアルギン酸Na水溶液に対して、オレイン酸メチル(Methyl oleate)5mLを加え、ホモジナイザー(IKA,T25 digital ULTRA−TURRAX)を用いて20,000rpmで2分間撹拌してエマルションを作製した。
(アルギン酸Naで安定化されたエマルションの評価)
図29aにアルギン酸Naで安定化されたエマルションの1ヶ月静置後のデジタルカメラ写真を示した。安定なエマルションが確認できた。
ドロップテストを行った結果、O/W型のエマルションが生成していることが確認できた。1ヶ月後安定なエマルションの割合は97.1%であった。エマルション上部から確認したところ、少量解乳化しているものの安定なエマルションであることが確認できた。図29bにエマルションの光学顕微鏡写真を示した。光学顕微鏡写真より、エマルション径の揃っていない多分散なエマルション滴が観察された。図29cにレーザー回折測定結果を示した。この結果より、エマルションが多分散であることが確認できた。この結果は光学顕微鏡写真の結果を支持するものである。
(アルギン酸Naで安定化されたエマルションを用いたゲル体の作製)
調製されたアルギン酸Naで安定化されたエマルションを注射針(TERUMO,NN−2238R,22G)を装着したシリンジ(TERUMO,ss−05Sz,5mL)を用いて吸引した。シャーレ(内径=14.8cm,深さ=2.5cm)に100mLの塩化カルシウム水溶液(0.1M)を入れ、ヒモ状のゲル体を作製する際には、シリンジの先端を塩化カルシウム水溶液の中に浸け込み、水溶液中でエマルションを連続的に注入した。球状のゲル体を作製する際には、液面から3cm離して上部から塩化カルシウム水溶液にエマルションを滴下した。
(アルギン酸Naで安定化されたエマルションを用いたゲル体の評価)
図30に球状およびヒモ状のゲル体のデジタルカメラ写真を示した。アルギン酸Naで安定化したエマルションはカルシウムイオンを捕捉することでゲル化反応を起こし、ゲル体を形成することが分かった。エマルション滴表面に吸着しているアルギン酸Na、および水媒体中に吸着せずに残っているアルギン酸Naがカルシウムイオンと反応しゲル体が形成したと考えられる。
(油抽出後のゲル体)
実施例1と同様にアセトンを用いて、ゲル体から油を抽出した。油抽出および乾燥後のゲル体の断面をSEMを用いて観察した。得られたゲル体の断面のSEM写真と実施例1の多中空体の断面のSEM写真を図31に示した。実施例1のピッカリングエマルションから得られた油抽出後のゲル体(多中空体)は内部に数μm〜40μm程度の多中空構造が観察されたが、比較例1で得られたゲル体では、中空構造は観察されなかった。
比較例2
PNVP−PAN粒子を用いて作製したピッカリングエマルションと塩化カルシウム水溶液の混合液をアルギン酸Na含有溶液に導入してゲル体を作製する方法(アルギン酸NaとCaClの導入場所を逆にした方法)
1.(PNVP−PAN粒子の水分散体と油成分とを撹拌してピッカリングエマルションを得る工程)
10mLサンプル管中に固形分濃度を1wt%に調整したPNVP−PAN粒子水分散体5mLに対して、Methyl myristate 5mLを加え、ホモジナイザー(IKA,T25 digital ULTRA−TURRAX)を用いて20,000rpmで2分間で撹拌してピッカリングエマルションを作製した。
2.(CaClが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを得る工程)
10mLサンプル管に1.で作製したピッカリングエマルション(2mL)と0.2MのCaCl水溶液(2mL)をそれぞれ入れ、タッチミキサー(IKA,VORTEX GENIUS 3)を用いて2,500rpmで1分間撹拌し、CaClが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを作製した。
3.(アルギン酸Na水溶液に上記ピッカリングエマルションを導入しゲル体を得る工程)
上記2.で作製したCaClが連続相に溶解しているピッカリングエマルションを注射針(TERUMO,NN−2238R,22G)を装着したシリンジ(TERUMO,ss−05Sz,5mL)を用いて吸引した。シャーレ(内径=4.1cm,深さ=1.8cm)に15mLのアルギン酸Na水溶液(0.5wt%)を入れ、実施例1〜4と同様の方法を用いて、ピッカリングエマルションをアルギン酸Na水溶液に導入することで球状およびヒモ状のゲル体の作製を試みた。
球状およびヒモ状のゲル体を作製することは出来なかった(図32)。滴下した場合は溶液内に沈み込むことなく、アルギン酸Na溶液表面にのる様子が確認できた。溶液内で注入した場合は押し出している方向にヒモ状ゲル体が形成せず、注射針の先端部付近で球のような形状になる様子が確認出来た。これは、高分子であるアルギン酸Naを溶解させた水溶液の粘度の高さが原因であると考えられる。
比較例3
アルギン酸Naが溶解した水溶液中にPNVP−PAN粒子を加えた混合液でエマルションを作製し、その後CaCl水溶液に注入しゲル体を作製する方法(two step→one step)
1.(アルギン酸NaとPNVP−PAN粒子の混合液の作製)
5mL水媒体中にアルギン酸NaとPNVP−PAN粒子が共に1wt%になるように導入した。
2.(作製した混合液を用いてエマルションの作製)
1.で作製した混合液(5mL)とMethyl myristate(5mL)を10mLサンプル管に入れ、ホモジナイザー(IKA,T25 digital ULTRA−TURRAX)を用いて20,000rpmで2分間撹拌し、水中油滴型エマルションを作製した。
3.(ゲル体の作製)
上記2.で作製したエマルションを注射針(TERUMO,NN−2238R,22G)を装着したシリンジ(TERUMO,ss−05Sz,5mL)を用いて吸引した。シャーレ(内径=14.8cm、深さ=2.5cm)に100mLの塩化カルシウム水溶液(0.1M)の入れ、実施例と同様の方法でエマルションを塩化カルシウム水溶液に導入することでゲル体を作製することができた(図33)。ゲル体の作製に成功したのは、油滴が分散している水溶液中に存在するフリーなアルギン酸Naが、カルシウムイオンを捕捉し、ゲル体を形成したものと考えられる。
(ゲル体から油抽出)
次に、作製したゲル体から油を抽出して多中空体の作製を試みた。シャーレ(内径=7.84cm,深さ=1.55cm)に、作製したゲル体を重ならないように配置し、ゲル体が浸かるまでアセトンを入れシャーレに蓋をして、24時間静置して油を抽出した。油の抽出に使ったアセトン媒体は1回置換を行った。得られた油抽出ゲル体の内部の構造をSEMを用いて確認した。多中空らしき構造が確認されるものの、実施例の多中空体と比べ構造は完全には保持されていない様子が明らかになった(図34)。これは、エマルション滴がPNVP−PAN粒子とアルギン酸Naで安定化されており、油水界面には粒子が密に吸着していないため、油を抽出することでエマルションが形状維持することが困難になり、多中空構造を完全に保持できなったためであると考えられる。また、アルギン酸Naのみで安定化されたエマルションも存在することも考えられ、形状維持が困難になった可能性もある。
本発明によって調製されるゲル体、およびそのゲル体から液体成分の除去または有機成分の除去を行うことで得られる多中空体および多孔質体は、触媒担持材料、カラム充填剤、骨代替材料、細胞培養用担体等の種々の材料として利用可能である。また、ゲル体作製条件、基材を種々変更することにより、多中空の数、大きさ等を調整し、種々の形状を有する多中空材料、多孔質材料の調製が可能である。

Claims (11)

  1. (i)固体微粒子の水分散体と油成分とを撹拌して水中油滴型ピッカリングエマルションを得る工程、
    (ii)(i)で得られたピッカリングエマルションと水溶性高分子を混合し、水溶性高分子が連続相に溶解しているピッカリングエマルションを得る工程、および、
    (iii)(ii)で得られたピッカリングエマルションを、架橋を誘導する水溶性物質が含有されている水溶液に導入し、前記水溶性高分子を架橋させる工程、
    を含むゲル体の製造方法。
  2. 前記水溶性高分子が、アルギン酸のアルカリ金属塩、又はポリビニルアルコール(PVA)である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記固体微粒子が、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル又はハイドロキシアパタイトを含有する粒子である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記水溶性高分子がアルギン酸ナトリウムであり、前記水溶性物質がCaCl、AlCl、SrCl、BaClから選択される少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか一に記載の製造方法。
  5. 前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであり、鉄イオンと共にピッカリングエマルションと混合し、前記水溶性物質が塩基性物質である請求項1〜3のいずれか一に記載の製造方法。
  6. 前記油成分が、オレイン酸メチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、n−ドデカンから選択される少なくとも一種である請求項1〜5のいずれか一に記載の製造方法。
  7. 前記(iii)の工程が、(ii)で得られたピッカリングエマルションを、細管から前記水溶液中に放出または前記水溶液上に滴下する工程を含む請求項1〜6のいずれか一に記載の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一に記載の製造方法で調製されたゲル体から油成分を抽出する工程を含む多中空体の製造方法。
  9. 請求項8の製造方法によって調製された多中空体。
  10. 請求項1〜7のいずれか一に記載の製造方法で調製されたゲル体または請求項9の多中空体を焼成させる工程を含む多孔質体の製造方法。
  11. 請求項10の製造方法によって調製された多孔質体。
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