JP2014024718A - 路盤材用スラグ及び路盤材用スラグの製造方法 - Google Patents

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【課題】路盤材用スラグにおいて、製造コストを高騰させることなく、Pb溶出量を環境基準内に確実に抑える。
【解決手段】本発明の路盤材用スラグ1は、Pbが0.1ppm以上含有された製鋼スラグを粉砕して得られる路盤材用スラグであって、製鋼スラグの塩基度(CaO/SiO)が1.5以上であり、路盤材用スラグは、粉砕後の全スラグ粒子に対して粒径が100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合が0.5wt.%以上且つ3.5wt.%以下となるような粒度分布を有しており、100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合と、粉砕後のスラグ粒子のPb濃度(ppm)との積が15以下となる関係を満足する。
【選択図】図1

Description

本発明は、Pbの溶出が土壌環境基準以下となるように抑制された路盤材用スラグ及び路盤材用スラグの製造方法に関する。
近年、廃棄物の低減するためや天然資源の枯渇等の問題から、製鋼などで生成されたスラグを土木資材や路盤材等に利用することが注目されている。スラグを土工用、路盤材として利用するためには、環境庁告示46号(以下、環告46号)に定められた土壌環境基準を満足する必要があり、Pbの溶出量は0.01mg/L以下とすることが定められている。
一般に、転炉や電気炉などから排出される製鋼スラグの中には、PbOなどの酸化物やPbSなどの硫化物の形でPbが含有されている。このようなスラグ中のPb酸化物やPb硫化物は水溶性であるため重金属イオンとして溶出しやすく、溶出したPbイオンは人体に蓄積されやすい有害な物質となる。それゆえ、このようなスラグを含む路盤材用スラグについては、Pbの溶出があっても溶出量が土壌環境基準以下となるような何らかの手段が講じられているのが一般的である。
例えば、特許文献1には、有害物質を含む赤土泥状土、石炭灰を、路盤材や埋め戻し材料としてリサイクルするために、1〜25%のポルトランドセメント、1〜15%の高炉スラグ微粉末、30〜50%の石炭灰飛灰などを配合すると共に、水などを加えて赤土粗粒を固化して粒子状態としてリサイクルする技術が開示されている。
また、特許文献2には、回収したスラグを再び加熱溶融し、塩基度(CaO/SiO)が1.5以下となるように、またMgO濃度が12wt.%以下となるように、スラグの成分を調整することで、Pbの溶出を抑制する技術が開示されている。
特開2011−79951号公報 特開2002−68789号公報
上述した特許文献1のリサイクル方法は、Pbを含む赤土粗粒に対して、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、石炭灰飛灰などの添加剤を混合して赤土粗粒を固化することにより、Pbの溶出を抑制するものである。しかしながら、この特許文献1の方法は、添加剤を何種類も使用するためリサイクルの工程がどうしても複雑なものとなるし、製造コストも高騰しやすいという問題がある。
また、特許文献1には、Pbなどの有害な物質に対して、これらの物質が実際にどの程度溶出しているかを計測したデータが開示されていない。それゆえ、この文献に記載されたリサイクル方法でどの程度Pbの溶出が抑えられるか、言い換えればPbに関する環境安全性が十分に確保されているかは不明となっている。
一方、特許文献2の技術は、スラグの塩基度を1.5以下と小さくして、Pbの溶出を抑制するものである。つまり、スラグが水に接触した際に溶出液のpHを強アルカリ性にしなければ、Pbの溶出をある程度抑制することが可能となる。
しかしながら、特許文献2の方法では、塩基度を調整するためにスラグを再加熱する必要があり、そのためにスラグ加熱用の熱源を別途用意する必要があり、製造工程が複雑なものとなりやすい。
加えて、一般に製鋼スラグは塩基度(CaO/SiO)が1.5を上回る場合が多く、塩基度を1.5以下に調整するためにはスラグを再加熱し、加熱後にSiOやAlなどを大量に加える必要があり、スラグの処理量が増大しやすくなる。それゆえ、特許文献2の技術を用いると、特許文献1と同様に製造コストが高騰しやすいという問題や資源を有効に活用するという当初の目的に相反するという問題が生じる可能性が高い。
本発明は、上述の問題に鑑みて為されたものであり、製造コストを高騰させることなく、Pb溶出量を環境基準内に確実に抑えることができる路盤材用スラグ及び路盤材用スラグの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の路盤材用スラグ及び路盤材用スラグの製造方法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の路盤材用スラグは、Pbが0.1ppm以上含有された製鋼スラグを粉砕して得られる路盤材用スラグであって、前記製鋼スラグの塩基度が(上述の通り精錬特性を確保するため一般的に)1.5以上であり、前記路盤材用スラグは、粉砕後の全スラグ粒子に対して粒径が100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合が0.5wt.%以上且つ3.5wt.%以下となるような粒度分布を有しており、前記100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合(wt.%)と、粉砕後のスラグ粒子のPb濃度(ppm)との積が15以下となる関係を満足することを特徴とする。
好ましくは、前記路盤材用スラグは、前記100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合と、粉砕後のスラグ粒子のPb濃度との積が、6以下となる粒度分布を有しているとよい。
一方、本発明の路盤材用スラグの製造方法は、Pbが0.1ppm以上含有された製鋼スラグを粉砕して路盤材用スラグを得るに際しては、前記製鋼スラグは塩基度が1.5以上であり、粒径が100μm以下のスラグ粒子が粉砕後の全スラグ粒子に対して占める質量割合が、0.5wt.%以上且つ3.5wt.%以下となり、且つ前記質量割合(wt.%)と粉砕後のスラグ粒子のPb濃度(ppm)との積が15以下となるように調整することを特徴とする。
なお、上述した製造方法に用いる製鋼スラグとしては、脱Siスラグ、脱Pスラグ、脱Sスラグ、脱Cスラグや二次精錬スラグなどが挙げられる。また、高炉スラグは一般的に塩基度が1.5以下であるが、溶出液の強アルカリ化によるPb溶出の懸念がないため、特に高炉徐冷スラグのような高炉スラグについては製鋼スラグと混合して用いても良い。
本発明の路盤材用スラグ及び路盤材用スラグの製造方法によれば、製造コストを高騰させることなく、Pb溶出量を土壌環境基準内に確実に抑えることができる。
本発明の路盤材用スラグの製造過程を示す模式図である。 100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合と、このスラグ粒子のPb濃度との積が、Pb溶出量に及ぼす影響を示した図である。
以下、本発明に係る路盤材用スラグ1及び路盤材用スラグ1の製造方法の実施形態を、図を元に説明する。
図1は、製鋼スラグとして転炉スラグを用いた場合を例示しており、転炉2より払い出された製鋼スラグを粉砕して路盤材用スラグ1を製造する過程を示したものである。
図1に示すように、転炉2は耐火材などが内張りされた有底の容器であり、内部に溶鋼や溶銑を貯留できるようになっている。転炉2の上部には上方に向かって開口する炉口3が設けられており、この炉口3には炉内に装入された溶銑へ酸素を吹き込む上吹ランス6が挿入可能となっている。また、炉口3からは、スラグの生成を促進する造滓剤が投入可能となっている。さらに、転炉2の炉壁には、炉体の傾動により精錬後の溶鋼を出湯できるように出湯口4が形成されている。
転炉2では、溶銑が装入された転炉2の炉口3から上吹ランス6を挿入して溶銑に向かって酸素ガスや攪拌ガスを吹き付け、脱りん処理や脱炭処理が行われる。
ところで、上述した転炉2での精錬工程で発生するスラグ(路盤材用スラグ1の元となる製鋼スラグ)には、原料のスクラップに不可避的に含有されているPbに起因して、PbOなどの酸化物やPbSなどの硫化物の形でPbがトータルで0.1ppm(mg/kg)以上含有されることがある。このスクラップに起因するPbは、その大半が精錬時ダ
ストとして揮発・回収されるため、製鋼スラグをそのまま路盤材用スラグ1として用いても、安全上問題となることはない。しかし、路盤材用スラグ1から溶出されるPb溶出量はできる限り低い方が良いので、本発明では以下の手段を講じてPb溶出量を土壌環境基準内にさらに確実に抑えるようにしている。
つまり、本発明の路盤材用スラグ1は、Pbが0.1ppm以上含有されたスラグ(製鋼スラグ)を粉砕して得られるものである。この製鋼スラグの塩基度(CaO/SiO)は1.5以上である。また、路盤材用スラグ1は、粉砕後の全スラグ粒子に対して粒径が100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合が0.5wt.%以上且つ3.5wt.%以下となるような粒度分布を有している。そして、100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合と、このスラグ粒子のPb濃度(ppm)との積が15以下となる関係を満足している。
本発明が上述したような関係を有するに至った経緯は、次の通りである。
すなわち、製鋼スラグからのPb溶出挙動に及ぼす粒径・Pb濃度の影響を明らかにするために、製鋼スラグを2mm以下に粉砕し、100μm以下と100μm〜2mmの粒径で分級し、これら粒径の異なる製鋼スラグのPb含有量を測定するという実験を行った。加えて、粒径の異なるスラグの配合比を変えて環告46号に従った溶出試験を行うという実験をも行った。これらの実験の結果、製鋼スラグからのPb溶出量は、上述したようにスラグ粒径分布だけではなく、併せてPb濃度も考慮する必要があることが知見された。
次に、本発明の路盤材用スラグ1に関し、塩基度、Pb含有量、路盤材用スラグ1の粒度分布について、詳細に説明する。
図1に示すように、製鋼スラグは、上述した転炉2から排滓されたものである。この製鋼スラグは、スラグヤード5と呼ばれる貯蔵場所に貯蔵されており、スラグヤード5に山積みで貯蔵されている。
なお、製鋼スラグは、図示したような転炉2から排滓されたものでも良いし、2次精錬などで用いられる電気炉から排滓されたものでも良い。転炉2から排滓されたスラグや2次精錬により生成されたスラグの塩基度は、多くの場合、1.5以上となっている。なお、この製鋼スラグには、塩基度などの観点から高炉スラグ組成は含まれない。
これら製鋼スラグは、排滓後であってスラグヤード5に貯蔵されている時点では、大きな固まりとなっていることが多く、そのままでは路盤材に用いることができない。それゆえ、原料スラグの粉砕を行う。
スラグヤード5に貯蔵されている原料スラグは、ローラミル、ボールミル、ハンマーミルのような破砕機(クラッシャー)を用いて粉砕(破砕)される。例えば、再生砕石を用いた下層路盤材(RC−30)の場合であれば、粉砕後のスラグ粒子が37.5mm以下の粒径になるように粉砕が行われる。
また、製鋼スラグは膨張源となるf−CaO(遊離性石灰又は可溶性石灰)を含有するため、膨張抑制(水和促進)処理を行うのが良い。この膨張抑制方法は、f−CaOをCa(OH)やCaCOに変化させることができればどのような方法を用いてもよく、蒸気エージング、大気エージング、加圧蒸気エージングなどの公知な方法を用いればよい。
ところで、上述したような処理は、小規模な実験室レベルでは問題なく行えるが、実機では実施が困難な場合もある。そのようなときは、次のような方法を行っても良い。
すなわち、微粒分を除去(100μm以下の粒度を低減)する方法としては、スラグに大量の水を散水・静置し、微粒分を沈降除去する方法や、篩によって物理的に微粒分を除去してもよい。勿論、これらの方法以外にも、種々の粒度で一次分級したスラグを再配合し、本発明の粒度分布を満足するようにしても良いが、生産性・製造コストを考慮して適宜手法を選択してもよい。
このようにして得られた路盤材用スラグ1は、次のような条件1に規定するPb含有量を有し、加えて、条件2に規定する粒度分布を満足する粒度分布となり、条件3を満足する。
(条件1)
路盤材用スラグ1のPb含有量が0.1ppm以上である。
(条件2)
粉砕後の全スラグ粒子に対して粒径が100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合が、0.5wt.%以上、且つ、3.5wt.%以下となる。
(条件3)
条件2の質量割合と、粒径が100μm以下のスラグ粒子のPb濃度との積が15以下となる。
これらの条件1〜条件3を設けるのは、次のような理由からである。
まず、条件1を満たす原料スラグの場合、スラグ粒子自体に含まれるPbの含有量が高いので、このスラグを路盤材用スラグ1として用いると、Pbの溶け出しが懸念される。それゆえ、条件1に該当する場合は、条件2や条件3を設定してPbの溶出をより確実に抑制する。
なお、条件1に相当するスラグ粒子に含まれるPbの含有量を求めるに際しては、例えば、粒径2mm以上のスラグ粒子(以降、粒子Aという)の配合量(配合率、重量割合)をW、この粒子AのPb濃度をCとする。また、粒径100μm〜2mmのスラグ粒子(以降、粒子Bという)の配合量(配合率)をW、この粒子BのPb濃度をCとする。さらに、粒径100μm以下のスラグ粒子(以降、粒子Cという)の配合量(配合率)をW、この粒子CのPb濃度をCとし、路盤材用スラグ1のPb含有量:CPbを式(1)で示される加重平均の式で求めることとする。
Pb=(W×C+W×C+W×C)/(W+W+W)・・・(1)
一方、条件2は、路盤材用スラグ1の中でも、100μmという微細な篩さえも通過するような微細なスラグ粒子(上述した粒子C)の量が、0.5wt.%以上、且つ、3.5wt.%以下に抑えられていることを意味している。
つまり、粒径が小さいスラグ粒子(粒径が100μm以下のスラグ粒子)では、粒径が大きなものに比して単位体積当たりの表面積が大きくなりやすく、スラグ中の溶出成分が特に水溶(溶解)しやすい。それゆえ、微細なスラグ粒子の量を3.5wt.%以下とすることで、Pbの溶出量も抑えることが可能になる。また、実操業では微細なスラグ粒子の量を完全に無くすことが困難でありかつラボでの検証から極微量であれば、Pb溶出に与える影響は小さいことから、下限値を設け、0.5wt.%以上としている。
また、条件3は、粒径が100μm以下となるような微細なスラグ粒子の量だけでなく、これら微細な粒子に含まれるPbの濃度をも低く抑えることを意味している。
つまり、条件2で説明したように全スラグ粒子に対する粒径が100μm以下のスラグ粒子の質量割合(wt.%)と、粒径が100μm以下のスラグ粒子のPb濃度(ppm)との積が15以下、より好ましくは6以下となるようにすれば、路盤材用スラグ1の粒径が大きくなるだけでなく、路盤材用スラグ1に含まれるPbの濃度も小さくなり、Pbの溶出量をさらに抑制することが可能になる。
以上述べた本願発明に係る路盤材用スラグ1、上記した条件1を満たし、条件2に規定する粒度分布を満足する粒度分布に、条件3を満たすように組成であれば、Pb溶出量を土壌環境基準内に確実に抑えることができる。
特に、本願出願人が従来から実施している路盤材用スラグ1の製造方法であっても、路盤材用スラグ1から溶出されるPb溶出量は十分に土壌環境基準である0.01mg/Lを満足している。しかし、本発明の路盤材用スラグ1であれば、Pb溶出量が0.005mg/Lという更に厳しい基準を満足できるようになり、土壌環境基準をさらに確実に遵守することが可能となる。
また、特許文献1などに開示された従来の製造方法であれば、原料スラグからPbが溶出しないように原料スラグを固化するために大量の固化剤が必要となっていた。また、原料スラグの塩基度を1.5より低く抑えるために、SiOやAlのような添加剤が大量に必要にもなっており、この従来の製造方法は製造工程が非常に複雑なものとなっ
ていた。
しかし、本発明の路盤材用スラグ1の製造方法、すなわち、Pbが0.1ppm以上含有された原料スラグを粉砕して路盤材用スラグ1を得るに際しては、原料スラグの塩基度(CaO/SiO)は1.5以上であり、粒径が100μm以下のスラグ粒子が粉砕後の全スラグ粒子に対して占める質量割合が、0.5wt.%以上且つ3.5wt.%以下となるように、且つ、粒径が100μm以下のスラグ粒子のPb濃度(ppm)と質量割合(wt.%)との積が15以下となるように、スラグを粉砕・処理し路盤材用スラグ1を製造する方法を用いれば、別途添加剤を添加する工程を設けることなく、また新たに添加剤などを用意することもなく、Pb溶出量を0.005ppm以下に抑えることができる路盤材用スラグ1を得ることができる。
次に、表1の実施例及び比較例を用いて、本発明の路盤材用スラグ1の作用効果を説明する。
表1は、粒度分布やPb濃度がそれぞれ異なる路盤材用スラグ1について、各粒度の質量割合(wt.%)、各粒度のスラグ粒子のPb濃度(ppm)、路盤材用スラグ1としてのPb含有量(ppm)、及び路盤材用スラグ1から溶出するPb溶出量(mg/L)の分析結果をまとめたものである。
なお、表1の「粒度分布」のうち、「>2mm」は、目開きが2mmの1次分級の篩にトラップされたスラグ粒子(粒径が2mm以上の粒子)が、全原料スラグ粒子に対して示す質量割合を示したものである。また、「100μm〜2mm」は、目開きが2mmの1次分級の篩は通過したが、目開きが100μmの2次分級の篩にトラップされたスラグ粒
子(粒径が100μm〜2mmの粒子)が、全原料スラグ粒子に対して示す質量割合を示したものである。さらに、「<100μm」は、目開きが100μmの2次分級の篩も通過したスラグ粒子(粒径が100μm以下の粒子)が、全原料スラグ粒子に対して示す質量割合を示したものである。
また、各粒度のスラグ粒子のPb濃度(ppm)は、分級選別された各粒度のスラグ粒子に対して、スラグ粒子中に含まれるPbをICP−MS(Inductively Coupled Plasma- Mass Spectrometry、島津製作所製、ICPM−8500)により分析したものである。さらに、路盤材用スラグ1から溶出するPb溶出量(ppm)は、各粒度のスラグ粒子のPb濃度(ppm)と上述した式(1)とを用いて求めたものである。
さらにまた、路盤材用スラグ1から溶出するPb溶出量(mg/L)は、路盤材用スラグ1をpH2の硝酸で溶解させ、溶解液中に含まれるPbをICP−MSにより分析したものである。
「比較例1〜比較例6」
比較例1〜比較例6は、Pb含有量はいずれも0.1ppm以上となっており、上述した条件1を満足する。また、「<100μm」の粒度分布も2.9〜3.4wt.%となっており、条件2も満足する。しかしながら、「<100μm」の質量割合(wt.%)と、「<100μm」のPb濃度(ppm)との積は、15.1〜19.5と15を上回っており、条件3を満足していない。
一方、比較例1〜比較例6のPb溶出量は、0.007〜0.009(mg/L)と本発明におけるPb溶出量の許容上限値0.005(mg/L)を上回っており、条件3を満足していない比較例1〜比較例6ではPb溶出量の抑制は不十分であることがわかる。ただし、土壌環境基準は満足するため、路盤材として出荷しても問題はない。
「比較例7〜比較例13」
比較例7〜比較例13は、Pb含有量はいずれも0.1ppm以上となっており、上述した条件1を満足する。しかし、「<100μm」の粒度分布は3.6〜8.8wt.%となっており、条件2は満足しない。また、「<100μm」の質量割合(wt.%)と、「<100μm」のPb濃度(ppm)との積も、24.3〜37.3と15を上回っており、条件3も満足していない。
比較例7〜比較例13のPb溶出量は、0.011〜0.029(mg/L)とPb溶出量の許容上限値0.005(mg/L)をさらに上回っており、条件2及び条件3を満足していない比較例7〜比較例13ではPb溶出量がさらに増加し、抑制が困難になることがわかる。
「実施例1〜実施例12」
上述した比較例1〜比較例13に対して、実施例1〜実施例12(表1においてグレーの網掛けで示される範囲に存在するデータ)は、条件1〜条件3を全て満足している。また、実施例1〜実施例12のPb溶出量は、0.005(mg/L)以下となっておりPb溶出量の許容上限値0.005(mg/L)を下回っている。このことから、条件1〜条件3をすべて満足する実施例1〜実施例12ではPb溶出量を0.005mg/L以下(環境基準内)に確実に抑えることが可能となると判断される。
図2は、表1の結果をグラフ化したものである。
図2において、黒丸は、実施例1〜12の結果であり、白丸は、比較例1〜13の結果である。図2からも明らかなように、本願発明に係る路盤材用スラグ1、すなわち、上記した条件1を満たし、条件2に規定する粒度分布を満足する粒度分布に調整され、条件3を満たすように組成が調整されたスラグであれば、Pb溶出量を土壌環境基準内に確実に抑えることができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が
通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
1 路盤材用スラグ
2 転炉
3 炉口
4 出湯口
5 スラグヤード
6 上吹ランス

Claims (3)

  1. Pbが0.1ppm以上含有された製鋼スラグを粉砕して得られる路盤材用スラグであって、
    前記製鋼スラグの塩基度が1.5以上であり、
    前記路盤材用スラグは、粉砕後の全スラグ粒子に対して粒径が100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合が0.5wt.%以上且つ3.5wt.%以下となるような粒度分布を有しており、
    前記100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合(wt.%)と、粉砕後のスラグ粒子のPb濃度(ppm)との積が15以下となる関係を満足することを特徴とする路盤材用スラグ。
  2. 前記路盤材用スラグは、前記100μm以下のスラグ粒子が占める質量割合と、粉砕後のスラグ粒子のPb濃度との積が、6以下となる粒度分布を有していることを特徴とする請求項1に記載の路盤材用スラグ。
  3. Pbが0.1ppm以上含有された製鋼スラグを粉砕して路盤材用スラグを得るに際しては、
    前記製鋼スラグは塩基度が1.5以上であり、
    粒径が100μm以下のスラグ粒子が粉砕後の全スラグ粒子に対して占める質量割合が、0.5wt.%以上且つ3.5wt.%以下となり、且つ前記質量割合(wt.%)と粉砕後のスラグ粒子のPb濃度(ppm)との積が15以下となるように調整することを特徴とする路盤材用スラグの製造方法。
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