JP2014020214A - バキュームポンプの耐久寿命判定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の耐久寿命判定装置は、ベーン23の摩耗が所定量、進行したとき、ベーンで仕切られた室19a,19bを開放する開放構造45を用い、バキュームポンプを制御する制御部40にて、バキュームポンプの負圧が目標負圧値に達するときの変化度合いに基づき、ベーンの摩耗が所定量、進行したと判定するものとした。これにより、ベーンの摩耗が所定量まで進むと、それまでベーンで仕切られた室は開放され、負圧の漏れが生じ、バキュームポンプはそれまでの正規性能を発揮する運転でなく、それよりもかなり性能が劣化した運転に変わる。このときの負圧の変化度合いは、ベーンの摩耗が進行していないときにおける変化度合いとは異なるから、負圧の変化度合に基づき、バキュームポンプが耐久寿命に近付いたと判定される。
【選択図】図5
Description
バキュームポンプには、吸入穴、吐出穴を備える円形のシリンダ、同シリンダ内に回転自在に収められたロータ、複数枚のベーン(プレート状)を組み合わせた構造が用いられる。多くは、ロータの外周面に放射状に複数枚のベーンを突出自在に設け、ベーンの先端部をシリンダの内周面と接触させることによって、シリンダ内を複数に仕切る構造(遠心力やばね部材などによる)が用いられる。つまり、ロータの回転によりベーンをシリンダの内周面に沿って摺動させることで、負圧を発生させる。
ここで、ポンプ作動中(運転中)のとき、ベーンの先端部は、シリンダの内周面との摺接により、摩耗が生じる。ベーンは、この摩耗が進むと、ロータ外へ次第に繰り出されるが、ベーンの摩耗限界に達するまで、ベーンが繰り出されると、ベーン強度の不足(ベーン全長が短くなるため)から、ベーンが破断するおそれがある。
従来は、引用文献1,2に開示されているようにベーンの側面に溝部を形成して、ベーンの気密性を高めたり、ベーンの潤滑性を高めたりする技術が提案されているだけである。
このため、ベーンの摩耗限界に達する前の状況は知る由もなく、バキュームポンプの耐久寿命は、バキュームポンプの作動累積時間に基づき大まかに判定するのがほとんどで、適正な耐久寿命の判定には至らなかった。
ここで、ベーンで仕切られた室が開放されることは、同室において負圧の漏れが生じていることであるから、バキュームポンプは正規性能を発揮する運転でなく、それよりもかなり性能が劣化した運転となる。このことは、シリンダ内の室が開放されると、バキュームポンプの負圧の変化度合いは、ベーンの摩耗が進行していないときにおける変化度合いとは異なることとなる。
請求項2の発明は、判定手段として、バキュームポンプの負圧が目標負圧値に達するときにおける所定の負圧値区間での経過時間を計時するカウンタ手段を有し、変化度合いとして、カウンタ手段で所定の負圧値区間を計時したときの実経過時間と、予め設定されたベーンの摩耗が所定量、進行していないときにおける負圧値区間での設定経過時間との対比に基づき、ベーンの摩耗が所定量、進行したと判定するものとした。
請求項4の発明は、判定手段として、バキュームポンプの負圧が目標負圧値に達するときにおける所定の負圧値区間での所定の演算周期ごとの変化率を演算する演算手段を有するものとし、演算手段により前回の演算周期において演算した前回の変化率と、今回の演算周期において演算した今回の変化率との対比に基づき、バキュームポンプが耐久寿命に近付いたと判定される。すなわち、性能劣化時は正常時に比べて変化率が小さくなる(傾きが緩やかになる)ことに基づき、バキュームポンプの耐久寿命の判定が行える。
請求項6の発明は、さらにバキュームポンプが耐久寿命に近付いたことを外部へ知らせるよう、更に、判定手段の判定結果にしたがい、ベーンの摩耗が所定量、進行したことを報知する報知手段を有するものとした。
請求項2、3の発明によれば、計時は、目標負圧値より小さい所定負圧値から目標負圧値に到達するまでといった、当初の負圧を供給する制御に用いられる目標負圧値を含んだ区間の時間を計時するだけでよく、制御の簡便化が図れる。
請求項5の発明によれば、より正確にバキュームポンプの耐久寿命の判定を行うことができる。
図1は本発明を適用した電気自動車(電動車両)のアシストブレーキシステムの全体を示している。
図1中4は、電気自動車(電動車両)のダッシュパネル(図示しない)に据付けられる負圧式の倍力装置(本願の負圧利用機器に相当)、5は同倍力装置4の出力側に接続された油圧式のマスタシリンダ装置、10は倍力装置4へ負圧を供給するバキュームポンプ、例えば電動式のバキュームポンプ(以下、電動バキュームポンプという)、40は同電動バキュームポンプ10の運転を制御する制御部(例えばCPUや周辺回路で構成されたマイクロコンピュータよりなる)をそれぞれ示している。
このうち倍力装置4は、中空の本体4a内にダイヤフラムプレート4bを設けて、本体4a内を負圧室4cと大気室4dとに仕切る。またマスタシリンダ装置5から延びるオペレーティングロッド6をダイヤフラムプレート4bを通して車室(図示しない)へ延ばしている。このオペレーティングロッド6の途中に負圧弁、大気弁(いずれも図示しない)が設けられ、ロッド端にブレーキペダル8が設けられる。また負圧室4cには、負圧を受け入れるための負圧入口部4eが設けられる。
電動バキュームポンプ10は、例えば横向きのモータ部12の出力軸12a(回転軸)に、ロータリベーン式のポンプ部14を連結(直結)し、ポンプ部14の周りを有底筒形のカバー15で覆う構造が用いられる。ちなみにモータ部12は、バッテリの電力で駆動されるよう、リレー13aを介在した電源ケーブル13bを用いて、電気自動車に搭載されている走行用バッテリ(図示しない)と接続してある。
この耐久寿命判定装置43には、ベーン23の摩耗が所定量、ここでは摩耗限界の近くまで進行したとき、例えばベーン23で仕切る複数の室のうちの異なる二室を開放する開放構造45(本願の開放手段に相当)と、同開放構造45がもたらすシリンダ室19の挙動を利用して、ベーン23が摩耗限界の近くまで摩耗したとの判定を行う制御とを組み合わせた構造が用いられている。
つまり、ベーン23の摩耗が摩耗限界に近付くと、通常の正規性能を発揮している運転から、それよりもかなり性能の劣化した運転が誘発される構造となっている。
また、ベーン23の摩耗を判定する制御は、例えば制御部40に設定されている。この制御には、バキュームポンプ10の負圧が目標負圧値に達するときの変化度合いに基づき、ベーン23の摩耗が所定量、ここでは摩耗限界の近くまで進行したと判定する機能(本願の判定手段に相当)が用いられている。
また制御部40には、耐久寿命用のインジケータ47(本願の報知手段に相当)が設けられている。インジケータ47は、例えば運転者から見えるよう、例えば運転席の前方側に配置される。制御部40には、ベーン23が摩耗限界の近くまで摩耗したと判定したとき、インジケータ47を点灯させる機能が設定され、電動バキュームポンプ10が耐久寿命に到達した旨が外部へ報知されるようにしている。ちなみに報知は、インジケータでなく、他の報知機器を用いても構わない。
耐久寿命の判定は、例えば倍力装置4の負圧圧力を所望圧力に保つ制御を利用して行われる。なお、負圧圧力は、絶対圧基準(大気圧101.3kPa)で考えてもよいし、相対圧基準(大気圧0kPa)で考えてもよい。
ステップS2では、負圧室4の負圧圧力の変動を検出するべく、読み取った負圧値Pと、予め設定された負圧値P1(目標負圧値P2より大気圧に近い負圧値)と対比している。
すなわち、図2に示されるようにロータ21が、モータ部12の駆動で回転されると、ロータ21の外周面上の各ベーン23は、遠心力により外側へ張り出し、ベーン23の先端部がシリンダ室19の内周面と接触しながら移動する。このときの各ベーン23で仕切られた室の空間容積の変化(小)により、吸入穴27から空気を掻き出し、吐出穴28から大気中へ排気し、負圧を生成する。この生成された負圧が倍力装置4へ供給され、消費した負圧圧力を補う。ちなみに負圧値Pが目標の負圧値P1内に収まるときは、電動バキュームポンプ10は作動しない。
ステップS5では、負圧室4cの負圧が目標の負圧値P2に到達したか否かを判定していて、負圧の供給は、負圧値Pが目標負圧値P2に到達するまで続けられる。目標負圧値P2に到達すると、負圧の補充が完了したと判定し、続くステップS6の如く電動バキュームポンプ10の電源系統に有るリレー13aをオフさせ、モータ部12の通電を停止する。これにより、電動バキュームポンプ10の作動が停止する。
このとき、図6(a)に示されるように通常時の摩耗限界の近くまで達していないベーン23の場合の実作動時間をT1とすると、同実作動時間T1は、設定作動時間T3以下となるから、耐久寿命には至らない、と判定され、再びステップS1へ向かう。
すると、電動バキュームポンプ10は、この短くなったベーン23により、正規のポンプ性能を発揮する運転でなく、ベーン23で仕切られた室が開放された運転に変わる。
そのため、つぎのステップS9における作動時間T2と作動時間T3との対比から、現在の電動バキュームポンプ10の状況が、ベーン摩耗が原因で急激に性能劣化が生じるおそれのある状況、すなわち電動バキュームポンプ10が耐久寿命に近付いたとの判定がなされる。
したがって、耐久寿命判定装置43により、今まで難しいとされていた電動バキュームポンプ10の耐久寿命を適正に判定することができる。しかも、ベーン23が摩耗限界の近くまで摩耗したとき、シリンダ室19内の異なる二室19a,19bを連通させる構造を用いたので、電動バキュームポンプ10の耐久寿命を正確に判定することができる。そのうえ、インジケータ47など報知機器にて、耐久寿命が近付くことを知らせたことで、電動バキュームポンプ10の耐久寿命に対する対処を促すことができる。
図7は、本発明の第2の実施形態を示す。
本実施形態は、制御部の判定機能(判定手段に相当)に、第1の実施形態のような経過時間でなく、電動バキュームポンプの負圧が目標負圧値P2に達するときにおける所定の負圧値区間での所定の演算周期ごとの変化率を演算する演算機能(演算手段に相当)を用い、この演算した変化率の前回の値と今回の値の対比に基づき、ベーン23の摩耗が所定量、進行したと判定するようにしたものである。
ここで、意図的に性能を劣化させているとき(性能劣化時)の負圧変化量(変化率)は、ベーン23の摩耗が進行していないとき(正常時)の負圧変化量(変化率)に比べて、負圧変化量(変化率)は小さくなる(傾きが緩やかになる:図6)挙動が生ずる。
但し、図7のフローチャートにおいて、第1の実施形態のフローチャート(図5)と同じステップには同一符号を付してその説明を省略した。
16 ポンプリング(シリンダ)
19 シリンダ室
21 ロータ
23 ベーン
25 ベーン溝
30 連通路
40 制御部(制御手段、判定手段)
41 負圧センサ
43 耐久寿命判定装置
45 開放構造(開放手段)
47 インジケータ(報知手段)
Claims (6)
- 円形のシリンダと、同シリンダ内に設けられたロータと、前記ロータの外周面に突出自在に設けられ、先端部が前記シリンダの内周面と接して前記シリンダ内を複数の室に仕切るベーンとを有し、前記ロータの回転にしたがい負圧を発生させるバキュームポンプと、
前記バキュームポンプの運転を制御し、負圧を利用する負圧利用機器へ目標負圧値に達するまで負圧を供給する制御手段とを具備し、
前記バキュームポンプは、
前記シリンダの内周面との摺接による前記ベーンの摩耗が所定量、進行したとき、前記ベーンで仕切られた室を開放する開放手段を有し、
前記制御手段は、
前記バキュームポンプの負圧が前記目標負圧値に達するときの変化度合いに基づき、前記ベーンの摩耗が所定量、進行したと判定する判定手段とを有する
ことを特徴とするバキュームポンプの耐久寿命判定装置。 - 前記判定手段は、
前記バキュームポンプの負圧が前記目標負圧値に達するときにおける所定の負圧値区間での経過時間を計時するカウンタ手段を有し、
前記変化度合いとして、前記カウンタ手段で前記所定の負圧値区間を計時したときの実経過時間と、予め設定された前記ベーンの摩耗が所定量、進行していないときにおける前記負圧値区間での設定経過時間との対比に基づき、前記ベーンの摩耗が所定量、進行したと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のバキュームポンプの耐久寿命判定装置。 - 前記カウンタ手段は、前記バキュームポンプからの負圧が、前記目標負圧値より大気圧に近い所定負圧値から前記目標負圧値に到達するまでの区間を計時するものであることを特徴とする請求項2に記載のバキュームポンプの耐久寿命判定装置。
- 前記判定手段は、
前記バキュームポンプの負圧が前記目標負圧値に達するときにおける所定の負圧値区間での所定の演算周期ごとの変化率を演算する演算手段を有し、
前記変化度合いとして、前記演算手段により前回の演算周期において演算した前回の変化率と、今回の演算周期において演算した今回の変化率との対比に基づき、前記ベーンの摩耗が所定量、進行したと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のバキュームポンプの耐久寿命判定装置。 - 前記開放手段は、前記ベーンが摩耗限界の近くまで摩耗すると、前記シリンダ内の前記複数の室のうちの異なる二室を連通させる連通構造で構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載のバキュームポンプの耐久寿命判定装置。
- 更に、前記判定手段の判定結果にしたがい、前記ベーンの摩耗が所定量、進行した旨を報知する報知手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載のバキュームポンプの耐久寿命判定装置。
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