JP2014019904A - 焼入れ鋼材およびその製造方法ならびに焼入れ用鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い強度を有しながらも従来技術以上に優れた靭性を有する。
【解決手段】質量%で、C:0.25%以上0.31%以下、Mn:0.5%以上1.0%以下、Nb:0.01%以上0.15%以下、B:0.0001%以上0.01%以下、Cr:0.005%以上0.05%以下、Si:0.005%以上0.1%以下、Al:0.005%以上1%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、N:0.01%以下であるとともに(1)式および(2)式を満たし、残部がFeおよび不純物である化学組成を有し、旧オーステナイト平均切片長さが10μm以下のマルテンサイトからなる鋼組織を有し、引張強さが1.8GPa以上2.0GPa以下である機械特性を有する、焼入れ鋼材。
3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5 (1)
6≦Mn/Si≦20 (2)
ここで、式中の元素記号は鋼中における各元素の含有量(質量%)を表す。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車のボデー構造部品、足回り部品等を始めとする機械構造部品等に好適な焼入れ鋼材およびその製造方法ならびに焼入れ用鋼材に関する。
近年、自動車の軽量化のため、車体に使用する鋼材の高強度化を図り、使用重量を減ずる努力が進められている。自動車に広く使用される薄鋼板においては、鋼板強度の増加に伴い、プレス成形性が低下し、複雑な形状を製造することが困難になる。具体的には、延性が低下し、加工度が高い部位で破断が生じる、あるいは、スプリングバックや壁反りが大きくなり、寸法精度が劣化する、といった問題が発生する。したがって、高強度、特に780MPa級以上の引張強度(以下、「TS」とも表記する。)を有する鋼板を用いて、プレス成形により部品を製造することは容易ではない。
このような問題を解決するため、特許文献1には、強度が必要な車体の特定箇所について、高強度鋼板を使用するのではなく、当該箇所を局部的に加熱して焼入れ処理を施すことにより強度を向上させる方法が開示されている。また、特許文献2には、TS1620MPa以上となる焼入れ型超高強度電縫鋼管およびその製造方法が開示されている。また、特許文献3では、TS1.8GPa以上で靭性に優れる焼入れ部材製造に関する技術が開示されている。
特開平6−116630号公報 特開2001−164338号公報 特開2007−302937号公報
しかし、TSが1.8GPa以上の部材については、さらに靭性を向上させる技術が望まれているのが実情である。
本発明の具体的課題は、TSが1.8GPa以上2.0GPa以下である高い強度を有しながらも従来技術以上に優れた靭性を有する焼入れ鋼材およびその製造方法ならびに焼入れ用鋼材を提供することである。
本発明者らは、例えば急速加熱焼入れ後のTSが1.8〜2.0GPaの焼入れ部材の靱性を改善すべく鋭意検討を行った結果、鋼材の化学組成、焼入れ鋼材の鋼組織の調整、焼入れ時のヒートパターンの適正化により、靱性が大幅に改善されることを新たに知見した。その知見に基づき完成させた本発明の要旨は、次の通りである。
(1)質量%で、C:0.25%以上0.31%以下、Mn:0.5%以上1.0%以下、Nb:0.01%以上0.15%以下、B:0.0001%以上0.01%以下、Cr:0.005%以上0.05%以下、Si:0.005%以上0.1%以下、Al:0.005%以上1%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、N:0.01%以下であるとともに(1)式および(2)式を満たし、残部がFeおよび不純物である化学組成を有し、旧オーステナイト平均切片長さが10μm以下のマルテンサイトからなる鋼組織を有し、引張強さが1.8GPa以上2.0GPa以下である機械特性を有する、焼入れ鋼材。
3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5 (1)
6≦Mn/Si≦20 (2)
ここで、式中の元素記号は鋼中における各元素の含有量(質量%)を表す。
(2)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:1%以下、V:1%以下、Mo:1%以下、Ni:3%以下およびBi:0.02%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の焼入れ鋼材。
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の焼入れ鋼材。
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の化学組成を有し、Ac点が900℃以下であることを特徴とする、焼入れ用鋼材。
(5)上記(4)に記載の焼入れ用鋼材を、50℃/秒以上の平均加熱速度で(Ac点+40℃)以上(Ac点+200℃)以下の温度域に加熱し、前記温度域で10秒間以下保持したのちに、200℃/秒以上の平均冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却することを特徴とする焼入れ鋼材の製造方法。
次に、本発明において、各範囲に限定した理由について説明する。以後の説明で合金元素についての「%」は「質量%」を表す。
(化学組成)
本発明における焼入れ用鋼材および焼入れ鋼材の化学組成は、以下のように規定する。
C:0.25%以上0.31%以下
Cは、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を主に決定する非常に重要な元素である。C含有量が0.25%未満では、焼入れ後においてTS1.8GPa以上を確保することが困難である。したがって、C含有量は0.25%以上とする。好ましくは0.27%以上である。一方、C含有量が0.31%を超えると、焼入れ後の強度が高くなりすぎるため、靱性劣化が著しくなる。したがって、C含有量は0.31%以下とする。好ましくは0.30%以下である。
Mn:0.5%以上1.0%以下
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を安定して確保するために、非常に効果のある元素である。しかし、Mn含有量が0.5%未満ではその効果が十分ではないばかりではなく、加熱時に生成するスケールの密着性が高くなり、焼入れ後の剥離除去が困難となる。したがって、Mn含有量は0.5%以上とする。好ましくは0.6%以上である。一方、Mn含有量が1.0%を超えると、上記効果は飽和するばかりか、焼入れ後の靭性劣化が顕著となる。したがって、Mn含有量は1.0%以下とする。好ましくは0.8%以下である。
Nb:0.01%以上0.15%以下
Nbは、鋼をAc点以上の温度域に加熱したときに、再結晶を抑制しかつ微細な炭化物を形成してオーステナイト粒を細粒にするため、靱性を大きく改善する効果を有する。Nb含有量が0.01%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Nb含有量は0.01%以上とする。好ましくは0.02%以上である。一方、Nb含有量が0.15%超になると、その効果は飽和し、いたずらにコスト増を招くばかりではなく、焼入れ後の靭性劣化が顕著となる。したがって、Nb含有量は0.15%以下とする。好ましくは0.10%以下である。
B:0.0001%以上0.01%以下
Bは、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度の安定確保効果をさらに高めるのに有効である。また、粒界に偏析して粒界強度を高め、焼入れ後の靱性や耐遅れ破壊性を向上させる点でも重要な元素である。さらに、加熱時のオーステナイト粒成長抑制効果も有する。しかし、B含有量が0.0001%未満ではその効果は十分ではない。したがって、B含有量は0.0001%以上とする。好ましくは0.001%以上である。一方、B含有量が0.01%を超えるとその効果は飽和し、かつコスト増を招く。したがって、B含有量は0.01%以下とする。
なお、Bの粒界偏析量は、焼入れする際のオーステナイト粒径の影響を受ける。すなわち、上記オーステナイト粒径が小さくなるほど、Bの偏析サイトが増加するため、より多くのBが偏析することが可能となる。一方、上記オーステナイト粒径が大きくなるほど、Bの偏析サイトが減少するため、Bの偏析可能量が少なくなる。したがって、B含有量の上限は焼入れに供する際のオーステナイト粒径、すなわち焼入れ部材における旧オーステナイト粒径に応じて決定することが、B偏析による作用効果を効率的に得ることができるので好ましい。具体的には、下記式(3)を満足することが好ましい。
B含有量(ppm)≦exp(4.57−0.571×ln(r)) (3)
ここで、r:旧オーステナイト粒の平均切片長さ(μm)である。
なお、上記式(3)を満足させるには、化学組成と焼入れに供する際のオーステナイト粒径との関係を経験的に求めておき、化学組成と焼入れ条件とを調整すればよい。
Cr:0.005%以上0.05%以下
Crは、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を安定して確保するために、非常に効果のある元素である。しかし、Cr含有量が0.005%未満ではその効果は十分ではない。したがって、Cr含有量は0.005%以上とする。一方、Cr含有量が0.05%を超えるとその効果は飽和するばかりではなく、加熱時において、主にセメンタイトから構成される炭化物の溶解が遅れやすくなり、焼入れ後の靭性劣化が顕著となる。したがってCr含有量は0.05%以下とする。好ましくは0.02%以下である。
Si:0.005%以上0.1%以下
Siは、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を安定して確保するために、効果の有る元素である。しかし、Si含有量が0.005%未満ではその効果は十分ではない。したがって、Si含有量は0.005%以上とする。一方、Si含有量が0.1%を超えると、その効果は飽和するばかりではなく、加熱時に生成するスケールの密着性が高くなるため、焼入れ後の剥離除去が困難となる。好ましくは0.08%以下である。
Al:0.005%以上1%以下
Alは、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を安定して確保するために、効果の有る元素である。しかし、Al含有量が0.005%未満ではその効果は十分ではない。したがって、Al含有量は0.005%以上とする。好ましくは0.01%以上である。一方、Al含有量が1%を超えると、その効果は飽和するばかりではなく、かついたずらにコスト増を招く。したがって、Al含有量は1%以下とする。好ましくは0.8%以下である。
P:0.05%以下、S:0.03%以下、N:0.01%以下
これらの元素は、一般に不純物として含有される元素であるが、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度の安定確保に効果の有る元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を積極的に含有させてもよい。しかし、上記上限値以上に含有させてもその効果は小さく、いたずらにコスト増を招く。このため、各合金元素の含有量は上記範囲とする。
Ti:3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5
Tiは、鋼をAc点以上に加熱したときに、再結晶を抑制し微細な炭化物を形成してオーステナイト粒を細粒にするため、焼入れ後の靱性を大きく改善する効果を有する。Ti含有量が(3.42N+0.001)%未満では上記効果を十分に得ることが困難である。したがって、Ti含有量は(3.42N+0.001)%以上とする。好ましくは(3.42N+0.02)%以上である。一方、Ti含有量が(3.42N+0.5)%超になると、その効果は飽和し、いたずらにコスト増を招く。したがって、Ti含有量は(3.42N+0.5)%以下とする。好ましくは(3.42N+0.08)以下である。
6≦Mn/Si≦20
Mn含有量をSi含有量で割った値であるMn/Siは、スケール密着性に大きく影響を及ぼすパラメータである。すなわち、Mn/Siが6未満または20超えでは、加熱時に生成するスケールの密着性が高くなるため、焼入れ後の剥離除去が困難となる。したがって、Mn/Siは上記範囲とする。
Cu:1%以下、V:1%以下、Mo:1%以下、Ni:3%以下およびBi:0.02%以下からなる群から選択される1種または2種以上
これらの元素は、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度の安定確保に効果の有る元素である。Niは、劈開破壊強度を上昇させ、焼入れ後の靭性を大きく改善する作用をさらに有する。Biは、組織を均一にし、焼入れ後の靭性を一層高める作用をさらに有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。
しかし、Cu、V、MoおよびNiについては、上記上限値以上に含有させてもその効果は小さく、いたずらにコスト増を招く。また、Biについては、その含有量が0.02%を超えると、熱間加工性が劣化して、熱間圧延が困難になる。したがって、各合金元素の含有量は上記範囲とする。Ni含有量は1%以下とすることが好ましく、Bi含有量は0.015%以下とすることが好ましい。なお、上記効果をより確実に得るには、Cu:0.005%以上、V:0.005%以上、Mo:0.005%以上、Ni:0.01%以上およびBi:0.001%以上の少なくとも一つを満足させることが好ましい。Niについては、その含有量を0.1%以上とすることがさらに好ましく、Biについては、その含有量を0.002%以上とすることがさらに好ましい。
Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上
これらの元素は、製鋼時における介在物制御、特に介在物の微細分散化に寄与し、焼入れ後の靭性を高める作用を有する元素である。しかし、いずれも0.01%を超えて含有させると、表面性状の劣化が顕在化する場合がある。したがって、各元素の含有量はそれぞれ上記のとおりとする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、これらの元素の少なくとも一つの含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、上記REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。
(焼入れ鋼材の鋼組織)
焼入れ鋼材の鋼組織は、旧オーステナイト平均切片長さが10μm以下であるマルテンサイトからなるものとする。
旧オーステナイト平均切片長さが10μm超では、TS1.8GPa以上の高強度下において良好な靭性を確保することが困難である。したがって、焼入れ鋼材の鋼組織は、旧オーステナイト平均切片長さが10μm以下であるものとする。
また、焼入れ鋼材の鋼組織がマルテンサイト以外の相または組織を主体とするものでは、TS1.8GPa以上の高強度を確保することが困難となる。したがって、焼入れ鋼材の鋼組織は、マルテンサイトからなるものとする。
なお、焼入れ鋼材の鋼組織はマルテンサイトからなるものであるが、製造上不可避的に混入するマルテンサイト以外の相または組織を含む。例えば、数%の残留オーステナイトや炭化物などが含まれていてもよい。
(焼入れ鋼材の強度)
焼入れ鋼材の強度は、TSで1.8GPa以上2.0GPa以下とする。
TS1.8GPa未満では、然程靭性が問題となることはなく、本発明によらずとも良好な靭性を確保することができる。したがって、本発明においては、焼入れ鋼材の強度がTSで1.8GPa以上であることを前提とする。
TS2.0GPa超では、強度上昇に伴う靭性の低下が著しくなり、良好な靭性を確保することが困難となる。したがって、焼入れ鋼材の強度はTSで2.0GPa以下とする。
(焼入れ用鋼材)
焼入れ用鋼材は焼入れ前の鋼材であり、上記化学組成を有し、Ac点が900℃以下であるものとすることが好ましい。
焼入れに際しては、焼入れ用鋼材をオーステナイト単相とするために、少なくともAc点以上の温度域まで加熱する必要がある。したがって、加熱コストや生産性の観点からはAc点が低いほど好ましく、具体的には900℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは850℃以下である。
なお、焼入れ用鋼材は、鋼板、鋼管、形鋼などに加え、焼入れ前に所望の形状に加工された部材をも含む。
(焼入れ鋼材の製造方法)
上記焼入れ鋼材は、上記焼入れ用鋼材を、50℃/秒以上の平均加熱速度で(Ac点+40℃)以上(Ac点+200℃)以下の温度域に加熱し、前記温度域で10秒間以下保持したのちに、200℃/秒以上の平均冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却することにより製造することが好ましい。
上記平均加熱速度を50℃/秒以上とすることにより、焼入れに際しての加熱過程におけるオーステナイトの粒成長を抑制し、焼入れ後において旧オーステナイト平均切片長さを10μm以下とすることが容易となる。したがって、上記平均加熱速度は50℃/秒以上とすることが好ましい。さらに好ましくは100℃/秒以上である。上記平均加熱速度は、速ければ速いほどオーステナイトの粒成長が抑制されて好ましい。
上記加熱温度を(Ac点+40℃)以上とすることにより、焼入れに際しての組織を確実にオーステナイト単相とするとともに、組織や各種元素の濃度分布の均一化を図ることができ、焼入れ後において目的とする強度を安定的に得ることができるとともに、高い靭性を確保することができる。したがって、上記加熱温度は(Ac点+40℃)以上とすることが好ましい。さらに好ましくは(Ac点+80℃)以上である。
上記加熱温度を(Ac点+200℃)以下とすることにより、焼入れに際しての加熱過程におけるオーステナイトの粒成長を抑制し、焼入れ後において旧オーステナイト平均切片長さを10μm以下とすることが容易となる。したがって、上記加熱温度は(Ac点+200℃)以下とすることが好ましい。さらに好ましくは(Ac点+180℃)以下である。
上記加熱の後、上部臨界冷却速度以上の冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却することによりマルテンサイトからなる組織が得られるが、上記焼入れ用鋼板については、水冷や油冷により200℃/秒以上の平均冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却することが好ましい。
本発明の好適な加熱方法としては、急速加熱および急速冷却を達成する方法であれば、どのような方法を採用してもよい。例えば、高周波加熱焼入れ法や通電加熱焼入れ法等が挙げられる。
また、本発明の焼入れ鋼材および焼入れ用鋼材には、耐食性付与等を目的として表面にめっき被膜を備えることができる。めっき被膜としては、Zn系めっき、Al系めっき等が挙げられる。
また、本発明に係る焼入れ鋼材を自動車用部品等に適用する場合には、塗装焼き付けによる熱処理が、焼入れ部材に施される。このときに、若干の強度低下が認められる場合があるが、本発明範囲を外れるほどの大きな変化は生じない。
また、本発明の焼入れ用鋼材は、焼入れの際にオーステナイト温度域に加熱されるため、加熱前の室温での機械的性質はあまり重要ではなく、加熱前の鋼組織については特に規定しない。
以下に本発明の実施例について説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼板(板厚:1.4mm)を供試材とした。供試材である板の製造方法は次の通りである。すなわち、実験室にて溶製したスラブを1250℃にて30分間加熱した後、900℃以上で熱間圧延を行い、板厚4mmの鋼板とした。熱間圧延後は、600℃まで水スプレー冷却したのち炉に装入し、600℃で30分間保持した後、20℃/時で室温まで徐冷することにより、熱延巻き取り工程を模擬した。得られた熱延鋼板は、酸洗によりスケールを除去した後、冷間圧延にて板厚1.4mmとした。
上述の鋼板から、1.4t×15w×200Lのサイズの試験片を切断して採取し、表2に記載の加熱条件にて通電加熱した後、直ちに水冷することで焼入れた。焼入れた部位から各種試験片を採取し、断面ミクロ組織観察、切断法による旧オーステナイト平均切片長さ測定、引張試験(JIS13号B試験片)、シャルピー衝撃試験、スケール剥離性調査を実施した。
スケールの剥離性評価では、水冷後のスケールの残存状況を目視にて確認し、剥離している場合を合格として○と表記し、それ以外は不合格として×と表記した。
また各鋼種のAc点は、上述の加熱時に、試験片の熱膨張変化の測定により求めた。
シャルピー衝撃試験については、焼き入れた後の1.4mm厚の鋼板を1.2mm厚まで研削したのち、4枚積層してネジ止めした後、Vノッチ試験片を作製し、シャルピー衝撃試験に供した。
靱性評価としては、0℃での衝撃値が40J/cmを超える場合に合格として○とし、50J/cmを超える場合には、非常に靭性に優れるとして、表中では◎と表記した。以上の基準を満足しない場合には×と表記した。
なお各評価項目で一つでも不合格となったものについては、原則、他項目の評価は中止または未実施とした。
Figure 2014019904
Figure 2014019904
本発明例である試験No.1〜10は、TSが1.8〜2.0GPaで、かつ靱性も良好であることがわかる。一方、比較例である試験No.11は、強度が低く、鋼種No.12は強度が高すぎる。また試験No.13では。Mn量が高いため靭性が低く、試験No.14ではNb量が高いため靭性が低い。また試験No.15では、Nbが含有されていないため、靭性が低く、試験No.16ではTiおよびBが含有されていないため、靭性が低い。試験No.17では、Cr量が高いため靭性が低い。試験No.18では、Si量が高く、スケール剥離性が悪い。試験No.19および20では、Mn/Siが本発明範囲内から外れているため、スケール剥離性が悪い。試験No.21では、Mn量が低く、スケール剥離性が悪い。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.25%以上0.31%以下、Mn:0.5%以上1.0%以下、Nb:0.01%以上0.15%以下、B:0.0001%以上0.01%以下、Cr:0.005%以上0.05%以下、Si:0.005%以上0.1%以下、Al:0.005%以上1%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、N:0.01%以下であるとともに(1)式および(2)式を満たし、残部がFeおよび不純物である化学組成を有し、旧オーステナイト平均切片長さが10μm以下のマルテンサイトからなる鋼組織を有し、引張強さが1.8GPa以上2.0GPa以下である機械特性を有する、焼入れ鋼材。
    3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5 (1)
    6≦Mn/Si≦20 (2)
    ここで、式中の元素記号は鋼中における各元素の含有量(質量%)を表す。
  2. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:1%以下、V:1%以下、Mo:1%以下、Ni:3%以下およびBi:0.02%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の焼入れ鋼材。
  3. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焼入れ鋼材。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の化学組成を有し、Ac点が900℃以下であることを特徴とする、焼入れ用鋼材。
  5. 請求項4に記載の焼入れ用鋼材を、50℃/秒以上の平均加熱速度で(Ac点+40℃)以上(Ac点+200℃)以下の温度域に加熱し、前記温度域で10秒間以下保持したのちに、200℃/秒以上の平均冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却することを特徴とする焼入れ鋼材の製造方法。
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