JP2014018854A - アルミニウム合金成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム合金のプレス成形体を製造するにあたり、プレス工程を増やすことなく形状凍結不良を低減するプレス成形法を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金の曲げ・曲げ戻し成形に際して、被加工材において曲げ・曲げ戻し変形を受ける部分を100℃以上に加熱し、更に、成形開始以後の少なくとも一時期においてしわ押さえ圧力[MPa]を、被加工材の常温での引張強度TS0[MPa]に対して、0.03×TS0以上、好ましくは温度T℃での被加工材の引張強度TS1[MPa]に対して、0.3×T/250×TS1以上、又は、被加工材の板厚t[mm]、ダイス肩半径R[mm]に対して、0.3×t/R×TS0以上、3×T/250×t/R×TS1以上として成形する。
【選択図】図2
【解決手段】アルミニウム合金の曲げ・曲げ戻し成形に際して、被加工材において曲げ・曲げ戻し変形を受ける部分を100℃以上に加熱し、更に、成形開始以後の少なくとも一時期においてしわ押さえ圧力[MPa]を、被加工材の常温での引張強度TS0[MPa]に対して、0.03×TS0以上、好ましくは温度T℃での被加工材の引張強度TS1[MPa]に対して、0.3×T/250×TS1以上、又は、被加工材の板厚t[mm]、ダイス肩半径R[mm]に対して、0.3×t/R×TS0以上、3×T/250×t/R×TS1以上として成形する。
【選択図】図2
Description
本発明は、アルミニウム合金をプレス成形して製造するアルミニウム合金成形体の製造方法に関する。
近年の自動車等の輸送機器の軽量化要求により、構造用材料としてアルミニウム合金が多く使用される傾向にある。適用される部材に要求される材料特性は、主に、成形性と強度であり、この成形性の中に形状凍結性が含まれる。形状凍結性の評価は、主に、ハット曲げ成形試験によるスプリングバック量が用いられる。
一般に、スプリングバック量はヤング率に反比例することが知られている。アルミニウム合金のヤング率は鋼板の約1/3であり、そのスプリングバック量は鋼板のそれの約3倍となり、鋼板部品に比べてアルミニウム合金製の部品の形状凍結性は極めて悪い。設計通りのアルミニウム合金製部品の製造には、このスプリングバック量を低減させることで形状凍結性を改善する必要がある。
現状、スプリングバック量を予測し、それを見込んだ金型形状又は成形条件の変更等が試みられているが、十分に制御は出来てはいない。安定的に設計通りのアルミニウム合金製部品を製造するためには、スプリングバック量を極力低減されることが望まれる。
アルミニウム合金板の形状凍結性改善には、従来、幾つかの方法が提示されている。特許文献1では、溶体化処理後の熱処理後の冷却速度と冷却温度を制御することで、特許文献2では、溶体化処理後の熱処理条件(温度、保持時間)を制御することで、特許文献3と特許文献4では、溶体化熱処理の昇温速度と加熱温度・保持条件及び続いて実施する熱処理条件を限定することで、形状凍結性を改善することが提示されている。
一方、特許文献5においては、連続鋳造圧延板を用いて、その焼鈍処理、歪矯正を施した後の熱処理の温度と冷却速度の制御により、応力腐食割れ性改善に加えて形状凍結性の改善が提示されている。このように、材料の製造プロセス、特に熱処理条件を制御することによる形状凍結性の改善が提示されている。
材質制御としては、特許文献6にて、形成される化合物の分布密度を制御することにより、延性と形状凍結性が改善されることが提示されている。機械的性質の制御としては、特許文献7にて、降伏点と引張強さの限定により、耐破断、耐しわ、形状凍結性などの成形性に優れ、抵抗スポット溶接連続打点性にも優れたアルミニウム合金板が提示されている。
製造方法としては、特許文献8と特許文献9に、双ベルト式鋳造機を用いて、冷却速度、冷間圧延におけるロール粗度と圧下率、連続焼鈍条件の制御により形状凍結性を改善することが提示されている。
成形方法と組合わせる手段としては、特許文献10〜13にて、金属材料内の特定部位に温度傾斜又は特性傾斜を生じさせて塑性変形させる方法が提案されている。これら技術の主目的は成形性の向上であるが、同時に得られる効果の一つとして形状凍結性の改善が挙げられている。
しかし、形状凍結性にとって重要な要因である、ダイス肩での曲げ曲げ伸ばし、その際に、材料の内外面で別個に発生する変形を制御するための幾何学的な因子や、しわ押さえ圧力についての検討がされておらず、十分な効果を得られていない。
更に、鋼板においては、特許文献14にて、温間成形によりスプリングバックを小さくする技術が開示されているが、アルミニウム合金と鋼は結晶構造、材質、成形が適用される温度範囲などが全く異なるため、単純に適用することは、常識的には行われないし、実際に適用しても、好ましい結果を得ることは不可能である。
本発明は、アルミニウム合金をプレス成形体に製造するにあたり、プレス工程を増やすことなく、形状凍結不良を低減することができるアルミニウム合金成形体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、形状凍結に及ぼすプレス成形性の影響を鋭意検討し、アルミニウム合金のプレス成形における形状凍結性の主原因は、曲げ・曲げ戻し変形後の被加工材の両表面間の残留歪応力差であると結論した。
更に、この差の低減には、曲げ・曲げ戻し変形時に材料強度を低下させること、即ち、材料を軟化させるとともに、その変形過程の幾何学的因子を適正範囲として、更に、材料の金型内への引き込みにおいて、材料に作用する張力を調整することで、曲げ・曲げ戻し変形において材料の内外面に個別に作用する張力と圧縮力を適正に制御することが効果的であることを見出した。
材料の軟化には、材料の昇温が効果的であり、高温にすることで形状凍結性を改善できる。具体的には、加熱した金型からの熱伝導による材料の昇温が手段となる。ただし、加熱する対象は曲げ・曲げ戻し変形を受ける材料部分のみで十分であり、金型全体を加熱する必要はない。
更に、外部からの強制力により上記応力差を低減させることも有効となる。これは、外部からの強制力により、曲げ・曲げ戻し変形後の材料両表面の応力差を減少させることを狙ったものである。その方法の一つが、成形時のしわ押さえ圧力を制御することである。
また、これらの効果を最大限に得るには、曲げ・曲げ戻し変形の幾何学的な因子、具体的には変形される板の板厚と曲げ半径も考慮し、好ましい範囲とすることが重要である。
本発明は、上記知見をもとになされたものであり、その要旨とするところは、次の通りである。
(1)アルミニウム合金の曲げ・曲げ戻し成形に際して、被加工材において曲げ・曲げ戻し変形を受ける部分を100℃以上に加熱し、更に、被加工材の常温での引張強度TS0[MPa]に対して、成形開始以後の少なくとも一時期においてしわ押さえ圧力[MPa]を0.03×TS0以上として成形することを特徴とするアルミニウム合金成形体の製造方法。
(2)前記被加工材において曲げ・曲げ戻し変形を受ける部分の温度T℃での被加工材の引張強度TS1[MPa]に対して、成形開始以後の少なくとも一時期においてしわ押さえ圧力[MPa]を0.3×T/250×TS1以上とすることを特徴とする前記(1)に記載のアルミニウム合金成形体の製造方法。
(3)前記被加工材の常温での引張強度TS0[MPa]、被加工材の板厚t[mm]、ダイス肩半径R[mm]に対して、成形開始以後の少なくとも一時期においてしわ押さえ圧力[MPa]を0.3×t/R×TS0以上とすることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のアルミニウム合金成形体の製造方法。
(4)被加工材において曲げ・曲げ戻し変形を受ける部分の温度T℃での引張強度TS1[MPa]、被加工材の板厚t[mm]、ダイス肩半径R[mm]に対して、成形開始以後の少なくとも一時期においてしわ押さえ圧力[MPa]を3×T/250×t/R×TS1以上とすることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のアルミニウム合金成形体の製造方法。
本発明によれば、アルミニウム合金において曲げ・曲げ戻し変形を受ける部分を100℃以上に加熱しながら、更に、しわ押さえ圧力を増大させて成形することで、アルミニウム合金の形状凍結性を著しく改善することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明のアルミニウム合金板の成分組成について説明する。なお、成分組成に関する%は質量%を意味する。
使用するアルミニウム合金中のAlは90%以上が好ましい。Alが90%以上であれば100℃以上にて軟化し、曲げ・曲げ戻し変形時に発生する被加工材両表面の応力差が低減する。Alが90%未満では、材料の軟化温度が高温となり、工業的なコスト増となる。
主成分元素となるAl以外の元素は、通常のアルミニウム合金に含有される元素である。具体的には、Mg、Si、Cu、Fe、Zn、Mn、Cr、Tiであり、これらの1種又は2種以上を合計で10%未満含有することが好ましい。
以下に、各元素の含有量について説明する。
本発明のアルミニウム合金板ではAl以外の元素は必須元素でなく含有量の下限は定めない。つまり、含有量は0%でも発明効果を得ることが可能である。ただし、溶解原料から不可避的に混入する可能性は否定できないため、分析すれば、0.001%以上の含有が検出される場合もある。
積極的に添加する場合は、公知の目的に応じて公知の範囲で添加することができる。以下では、過剰に含有された場合の悪影響を中心として好ましい含有量について説明する。
Mgは、強度上昇に寄与するが、過剰な含有は成形性を劣化させるため、6.0%以下とすることが好ましい。
Siは、強度上昇に寄与するが、過剰な含有は成形性を劣化させるため、2.0%以下とすることが好ましい。
Cuは、強度上昇や成形性向上に寄与するが、過剰な含有は成形性を劣化させるため、4.5%以下とすることが好ましい。
Feは、晶出物を生成し、過剰に含有するとこれが破壊の起点となり、成形性や曲げ加工性を劣化させるため、0.9%以下とすることが好ましい。
Znは、時効性向上を通じて強度向上に寄与するとともに、表面処理性の向上に有効な元素であるが、6.0%を超えると、成形性と耐食性が低下する。
その他、Mn、Cr、Tiを含有させることができる。これらの元素は、均質化熱処理時に分散粒子を生成し再結晶後の粒界移動を抑制する効果がある。
ただし、多量の含有は金属間化合物を生成し、これが温間成形や曲げ加工においての破壊の起点となり、これら特性を劣化させる。Mnは2.5%以下、Crは0.3%以下、Tiは0.9%以下とする。
なお、ここに記載されない元素を不可避的又は何らかの目的をもって含有させることも可能で、本発明効果が消失するものではない。
Al以外の各種元素の含有は、合金製造中又は曲げ・曲げ戻し変形時の加熱により、新たな析出物等を形成し、合金強度を増大させて高温による軟化を抑制する可能性がある。しかし、各種元素の総量が10%を超えなければ、析出物等が形成されても、その量は極めて少なく、形状凍結性改善に障害を与える強度増加は発生せず、100℃以上での合金の軟化による形状凍結性向上が確保される。
合金内の析出物の種類や大きさ、分布状態などが変化しても、各種元素量が10%以下であれば、得られる形状凍結性にはほとんど影響しない。各種元素が析出物等を形成せずに、固溶状態のままであり、固溶状態による強度上昇が発現しても同様である。即ち、Al量が90%以上である限りは、10%未満の各種元素が全て固溶状態であっても、その形状凍結性改善の抑制への悪影響は極めて小さい。
次に、上記アルミニウム合金板の製造方法について説明する。温間成形用のアルミニウム合金には、充分な強度と延性が必要である。
上記成分組成の鋳塊に、均質化熱処理、熱間圧延、冷間圧延を施した後、溶体化熱処理及び焼入れ処理を行う。これら工程は常法と同じである。なお、冷間圧延の間に1回以上の熱処理を行っても、また、熱間圧延後に熱延板の熱処理を行ってもよい。また、成形品に充分な強度、延性、再結晶粒が要求されない場合は、冷間圧延材料を使用してもよい。
まず、溶解、鋳造工程では、上記成分組成の溶湯の鋳造を、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の常法の溶解鋳造法で実施する。
次に行う均質化熱処理では、材質の均質化を狙う。均質化熱処理は、添加元素の偏析をなくすことが主目的である。そのためには、充分な熱処理として、460℃以上融点以下の温度での熱処理が必要となる。熱処理時間は、添加元素量にもよるが、上記温度範囲内にて20分以上8時間以下であれば充分である。20分より短いと偏析をなくすことが困難となり、一方、8時間を超えると工程コストが高くなる。
続く熱間圧延では、開始温度の設定が必要であり、その温度は450℃以上にすべきである。450℃未満では、熱間圧延中での再結晶の頻度が急激に低下し、これが最終製品での未再結晶化の可能性を高くする。好ましくは開始温度が500℃以上であれば未再結晶の懸念はほとんどなくなる。最終板厚は特に制限は設けず、5mm以下であることが、続く冷間圧延工程の容易さの点から好ましい。
なお、確実な再結晶を得るために、冷間圧延前に熱延板を焼鈍してもよい。その場合には、400℃以上の温度にて20分以上であれば充分であるが、長時間の焼鈍は、製造コストを高める欠点となる。また、全体の製造コストを考慮して、この熱延板焼鈍を省略してもよい。
続く冷間圧延は、所望の板厚まで冷間まで、常法で圧延してよい。また、熱延板焼鈍と同様、確実な再結晶を得るために、冷間圧延の途中に、1回以上の熱処理を実施してもよい。この時の条件は、熱間圧延により板厚が薄くなっているので、コイルとしても板材としても、500℃以上融点以下の温度にて30秒以上の保持で充分である。同様に、これ以上の長時間焼鈍は製造コスト増となるので好ましくない。
冷間圧延終了後は、溶体化熱処理を行う。Al−Mg−Si系合金の場合、強度と延性を得るためには、MgとSiの析出物とクラスタの形成が必要であり、これらを形成させるためには、溶体化熱処理にて、過飽和の固溶Mgと固溶Siを形成させなくてはならない。
そのためには、まず、冷間圧延板を500℃以上融点以下の温度に30秒以上に保持することが必要である。500℃未満であれば、また、500℃以上であっても保持温度が30秒未満であれば、過飽和の固溶Mgと固溶Siを確実に得ることは出来ない。
保持時間の上限は特に制限は設けず、製造コストが高くならない時間以内であればよい。また、所定温度までの昇温速度も特に設定する必要はない。昇温速度が変わっても、過飽和の固溶Mg量と固溶Si量を決定するのは保持温度と保持時間であることがその理由である。
次に、保持後は、50℃/分以上の冷却速度にて80℃以下まで冷却することが必要である。過飽和の固溶Mgと固溶Siを確保した後に、80℃を超えた温度での保持時間が長ければ、所望以外の析出物の形成に過飽和の固溶Mgを固溶Siが消費される。それを回避するため、80℃以下まで50℃/分以上の冷却速度にて冷却する必要がある。
最後に、80℃以下に冷却した後は、冷却後24時間以内に、60℃以上180℃以下の温度範囲内に2時間以上10時間以下に保持する熱処理を実施してもよい。合金に塗装焼付け熱処理後の強度が必要な場合はこの熱処理が必要となる。この熱処理では、塗装焼付け後の強度に必要な、析出物、析出物核、クラスタを形成させる。
これら形成に必要な熱処理温度範囲と保持時間が上記であり、溶体化熱処理後に60℃未満まで冷却した場合は、24時間以内に上記温度範囲内まで合金を昇温させ、上記保持時間に保持する必要がある。なお、保持後の冷却速度は特に指定する必要はなく、また、上記熱処理はコイルであっても、板であっても構わない。
次に、成形温度に関して説明する。
加熱温度は、前述のように、100℃以上である。上限は融点以下であればよいが、曲げ・曲げ戻し変形、成形時に使用する潤滑剤、又は、潤滑油の使用温度上限が、実質的な工業的な温度上限となる。
現状、高温用潤滑として多用されている2硫化モリブデン含有潤滑剤の使用上限温度は300℃程度となるため、実質的には300℃が温度の上限と考えられる。曲げ・曲げ戻し変形時の材料温度が100℃以上300℃以下であれば、合金の強度は室温に比べて十分低くなり、形状凍結性の改善が期待される。
なお、成形時に使用する潤滑剤又は潤滑油の摩擦係数は、使用する温度において、0.20以下が望ましい。摩擦係数が0.20を超えると、金型材質が、アルミニウム合金に摩耗を生じさせる。摩耗の発生は、製品表面劣化、流入抵抗増による破断等を引き起こすばかりでなく、本発明で制御する板内外の変形挙動に非常に大きな影響を及ぼす。
後述のしわ押さえ圧力、つまり、曲げ変形中のダイス肩への押し付け力にもよるが、摩擦係数の増大は、板が工具と接触する面、曲げ・曲げ戻しでの内面でのせん断変形量を大きくしスプリングバック量を想定外に大きくすることがある。好ましくは0.15以下、更に好ましくは0.10以下、更に好ましくは0.05以下とする。
次に、しわ押さえ圧力について説明する。本発明では、重要な制御因子となるしわ押さえ圧力を、引張強度、成形温度、板厚及びダイス肩Rとの関係で特定範囲に制御する。この限定式における各数値の単位は、引張強度としわ押さえ圧力はMPa、板厚とダイス肩Rはmmとする。
本発明で規定するしわ押さえ圧力は、成形開始以後、成形中のしわ押さえ圧力に対して規定される。通常、成形によりしわ押さえ部はパンチ部に引き込まれるため、しわ押さえ力を受ける材料の面積は減少していく。一般的な製造法では成形中のしわ押さえ力はほぼ一定であるため、しわ押さえ圧力は成形の進行にしたがい増加することになる。
また、当然ではあるが、成形体は様々な形、寸法のものが存在し、ブランクの大きさやしわ押さえブランクにより押さえられる素材の面積、しわ押さえ力などは適宜調整され、様々な値がとられる。即ち、大きな部品ではブランク自体が大きくなると同時に、しわ押さえ力も高く設定されることとなる。このような状況を考慮し、ブランクサイズや面積の違いを規格化できるしわ押さえ圧力を用いる。
しわ押さえ圧力をかける時期は成形中、即ち、成形開始から成形が終了するまでかけ続けるのが一般的である。上述のように、一般的には、成形中にしわ押さえ力が一定で、成形の進行中は、しわ押さえ圧力は上昇していくので、成形開始時点で本発明の圧力下限を満たせば、成形過程の全般にわたって圧力は本発明の範囲にとどまることになる。
つまり、曲げ・曲げ戻し変形を受ける全ての領域に、本発明メカニズムが作用することになる。そして、この状況が発明効果を最大化する上で好ましいものであることは言うまでもない。
ただし、本発明メカニズムは、曲げ・曲げ戻し変形を受けるすべての領域で作用させなくとも、曲げ・曲げ戻し変形を受ける部位の一部領域にでも、本発明メカニズムが作用すれば、本発明効果を得ることが可能である。
言い換えれば、成形開始以後、成形過程の少なくとも一時期において本発明条件を満たせば、発明効果を得ることが可能である。ただし、成形中のブランク面積の変化やしわ押さえ力の調整を考慮して複雑な制御を行うより、調整が簡便でかつ最大の効果を得ることができる、成形開始時点のしわ押さえ圧力で条件設定することが実用的には好ましい。
本発明は、高温での変形に加えて、しわ押さえ圧力により曲げ・曲げ戻し変形中の変形応力を最適に制御することで、変形後の被加工材内外面間の残留応力差を低減し、特徴的な効果を得るものである。残留応力差を制御するには、引張変形における塑性変形域の応力値との関係を考慮することが重要である。
即ち、曲げ変形中の板外面側での張力を制御するとともに、曲げにより板内面側で生ずる圧縮変形を緩和し、内外面での塑性変形量を適度に制御する。更には曲げ戻しにおいて引張変形を生じさせることで内外面での残留応力を好ましく制御する。
常温での材料強度をTS0とした時、これとの関係で、しわ押さえ圧力が0.03×TS0以上であれば、本発明による形状凍結性改善効果を得ることが可能となる。しわ押さえ圧力が0.03×TS0未満であれば、形状凍結性改善に有効な変形応力を付与することができない。
しわ押さえ圧力は成形中の板が破断しない範囲であればよいが、特に深絞り成形においては過度に高いしわ押さえ圧力は材料流入を抑制し、成形性を低下させる。特に深い絞りを行う場合には、しわ押さえ圧力を0.15×TS0以下に制限することが望ましい。
更に、高精度な制御を行うには、材料が曲げ・曲げ戻し変形を受けている時点での材料強度を基にして、しわ押さえ圧力を制御することが有効である。
本発明では、曲げ・曲げ戻し変形を受ける部位は加熱されることを前提としており、加熱された材料の強度は、数分の1にまで軟化することもある。加熱温度をT℃とし、その温度での材料強度をTS1とすると、しわ押さえ圧力を0.3×T/250×TS1以上に制御することが好ましい。この範囲内で制御することで、形状凍結性の顕著な改善効果を得ることが可能となる。
前述のように、本発明は、高温変形即ち材料の変形抵抗が低下した状況で、曲げ・曲げ戻し変形において生ずる板内外面の変形応力をしわ押さえ圧力により制御し、結果として、板内外面の残留応力差を小さくし形状凍結性を改善するものであるが、本効果は、幾何学的状況に応じてしわ押さえ圧力を制御することで、好ましい効果を得ることができる条件を、より高精度に制御することが可能となる。
板厚が厚い又はダイス肩Rが小さい場合は、合金板の曲げ内外面に生ずる歪は大きくなるため、張力も高い範囲で制御する。被加工材の板厚をt、ダイス肩半径をRとした時に、被加工材の常温での引張強度TS0との関連では、しわ押さえ圧力を0.3×t/R×TS0以上とする。
また、被加工材において曲げ・曲げ戻し変形を受ける部分の温度T℃での引張強度TS1との関係では、しわ押さえ圧力を3×T/250×t/R×TS1以上とする。このように、幾何学的要因からの影響を考慮し、しわ押さえ圧力を制御することで、本発明の効果をより好ましく得ることが可能となる。
本発明の効果は、合金板と金型の摩擦係数によらず発揮されるものであるが、更に、合金板と金型、特に、ダイスとの摩擦を考慮ししわ押さえ圧力を制御することも良好な効果を得る範囲を、高精度に制御するためには有効である。この影響は、部材の破断や、しわ発生なども考慮し、通常と同様に調整すべきで、当業者であれば、通常の設計範囲と言える。
また、金型にビードが設置された場合にも本発明効果は失われるものではない。ただし、ビードでは曲げ・曲げ戻しが繰り返し行われることになるとともに、ビードにより成形中の部材に張力を付与するため、しわ押さえ圧力の絶対値自体は、ビードがない場合より低い範囲で制御され、本発明の効果を、低いしわ押さえ圧力で得ることが可能である。この影響についても、上記の摩擦と同様、部材の破断やしわ発生なども考慮し、当業者の通常の能力範囲での調整が可能である。
使用する合金は、熱処理材であっても冷間圧延材であってもかまわない。ただし、本発明は、合金板表裏の残留応力、即ち変形歪を制御するものであるため、本発明適用前の状態で、合金板内に多量の変形歪が蓄積されている冷間圧延材では、本発明を適用することによる合金板表裏への別個に制御された歪を付与しても、効果の発現量が小さくなることは考慮すべきである。
また、集合組織や結晶粒界の性格(隣接結晶粒との傾角、粒度)は材料の変形挙動に影響を与えるが、これらを制御した際にも本発明効果は十分に発揮される。本発明による変形温度、更に、しわ抑え力や曲げ・曲げ戻しの幾何学的因子を考慮した変形制御による形状凍結性に及ぼす効果は、集合組織や粒界性格の制御による効果よりも十分に大きなものである。
表1のA〜Eに示す成分組成のアルミニウム合金を溶解した後、DC鋳造法により鋳造して、アルミニウム合金鋳塊を作製した。
(実施例1)
通常の方法で均熱処理、熱間圧延し、更に、冷間圧延後に熱処理を施した、表1にA材として成分組成を示す板厚1mmのアルミニウム合金板を、幅15mm、長さ200mmのブランクとし、角筒パンチによるハット曲げ試験を実施した。
通常の方法で均熱処理、熱間圧延し、更に、冷間圧延後に熱処理を施した、表1にA材として成分組成を示す板厚1mmのアルミニウム合金板を、幅15mm、長さ200mmのブランクとし、角筒パンチによるハット曲げ試験を実施した。
使用した角筒パンチは78mm角、肩Rは10mmであり、試験時の金型温度は、水冷により常に25℃に保持した。肩Rが10mmのダイスとしわ押さえ金型には、ヒーターが内蔵されており、室温から250℃までの温度範囲内の一定温度に金型温度を保持して試験を実施した。
曲げ・曲げ戻し変形は、ダイス肩部で起こり、この部分の金型温度は制御温度と同じである。潤滑には、250℃までの高温にて発火しない特性の潤滑油を使用した。成形中のしわ押さえ力は、10kN、100kN、150kN、と変化させた。
実施例条件において、成形開始時のしわ押さえ圧力としては、6.4MPa、64MPa、96MPaとなる。図1に、ハット曲げ成形品の断面形状を示す。縦壁部の曲率半径と開き幅を計測した。
図2に、しわ押さえ力10kN、(成形開始時のしわ押さえ圧力6.4MPa)でのハット曲げ成形品における、ダイスとしわ押さえ金型の温度に対するハット曲げ成形品の開き幅の変化を示す。金型温度の上昇により開き幅は低下し、特に100℃以上にて大きな低下を示す。
図3にダイスとしわ押さえ金型の温度に対するハット曲げ成形品の縦壁部の曲率半径を示す。温度上昇に従い、曲率半径は増大し、特に100℃以上にて急激な上昇を示す。また、開き幅の減少と同時に縦壁部の曲率半径が増大(縦壁部のソリが低減)する。以上より、金型温度が100℃以上であれば形状凍結性は大きく改善され、それ未満であれば、室温とほぼ変わらない形状凍結性(スプリングバック)であることが分かる。
図4に、200℃と250℃のダイスとしわ押さえ金型温度にてしわ押さえ圧力を変化させた場合の開き幅を合わせて示す。実施例で使用したA材の常温強度は125MPaであり、成形開始時のしわ押さえ圧力6.4MPa、64MPa、96MPaは、材料強度TS0のそれぞれ、0.05倍、0.51倍、0.77倍である。
(実施例2)
通常の方法で均熱処理、熱間圧延し、更に冷間圧延後に熱処理を施した、表1にB材又はC材として成分組成を示す板厚1mmのアルミニウム合金板を、幅100mm、長さ300mmのブランクとし、角筒パンチによるハット曲げ試験を実施した。パンチは150mm角、肩Rは10mm、試験時の金型温度は水冷により常に25℃に保持した。
通常の方法で均熱処理、熱間圧延し、更に冷間圧延後に熱処理を施した、表1にB材又はC材として成分組成を示す板厚1mmのアルミニウム合金板を、幅100mm、長さ300mmのブランクとし、角筒パンチによるハット曲げ試験を実施した。パンチは150mm角、肩Rは10mm、試験時の金型温度は水冷により常に25℃に保持した。
肩Rが10mmのダイスとしわ押さえ金型は金型内に内蔵したヒーターで、表2のように温度を変化させ、ブランクの接触部が金型温度相当になるまで保持し、成形開始時のしわ押さえ圧力を表2のように変化させ成形した。なお、成形中は、しわ押さえ力を一定とした。潤滑は250℃までの高温にて発火しない特性の潤滑油を使用した。図1の縦壁部の開き幅で効果を評価した。結果を表2に示す。
常温での引張強度による評価を満足するものの中でも、成形温度を考慮した判別を行うことにより高温域で特に良好な効果を示す条件を特定し、より好ましい制御が可能となる。
(実施例3)
通常の方法で均熱処理、熱間圧延し、更に冷延率により板厚を表3のように変化させその後に熱処理を施した、表1にD材、E材、F材、G材として成分組成を示すアルミニウム合金板を、幅100mm、長さ300mmのブランクとし、角筒パンチによるハット曲げ試験を実施した。パンチは150mm角、肩Rは10mm、試験時の金型温度は水冷により常に25℃に保持した。
通常の方法で均熱処理、熱間圧延し、更に冷延率により板厚を表3のように変化させその後に熱処理を施した、表1にD材、E材、F材、G材として成分組成を示すアルミニウム合金板を、幅100mm、長さ300mmのブランクとし、角筒パンチによるハット曲げ試験を実施した。パンチは150mm角、肩Rは10mm、試験時の金型温度は水冷により常に25℃に保持した。
肩Rを表3のように変化させたダイスとしわ押さえ金型は金型内に内蔵したヒーターで、表3のように温度を変化させ、ブランクの接触部が金型温度相当になるまで保持し、更に、成形開始時のしわ押さえ圧力を表3のように変化させ成形した。なお、成形中は、しわ押さえ力を一定とした。潤滑は250℃までの高温にて発火しない特性の潤滑油を使用した。図1の縦壁部の開き幅で効果を評価した。結果を表3に示す。
板厚やダイス肩Rによっては、発明効果が適切に評価されなくなる場合があり、これらを考慮した制御をすべきことが分かる。
前述したように、本発明によれば、アルミニウム合金において曲げ・曲げ戻し変形を受ける部分を100℃以上に加熱しながら、更に、しわ押さえ圧力を増大させて成形することで、アルミニウム合金の形状凍結性を著しく改善することができる。よって、本発明は、アルミニウム合金成形産業において利用可能性が高いものである。
Claims (4)
- アルミニウム合金の曲げ・曲げ戻し成形に際して、被加工材において曲げ・曲げ戻し変形を受ける部分を100℃以上に加熱し、更に、被加工材の常温での引張強度TS0[MPa]に対して、成形開始以後の少なくとも一時期においてしわ押さえ圧力[MPa]を0.03×TS0以上として成形することを特徴とするアルミニウム合金成形体の製造方法。
- 前記被加工材において曲げ・曲げ戻し変形を受ける部分の温度T℃での被加工材の引張強度TS1[MPa]に対して、成形開始以後の少なくとも一時期においてしわ押さえ圧力[MPa]を0.3×T/250×TS1以上とすることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金成形体の製造方法。
- 前記被加工材の常温での引張強度TS0[MPa]、被加工材の板厚t[mm]、ダイス肩半径R[mm]に対して、成形開始以後の少なくとも一時期においてしわ押さえ圧力[MPa]を0.3×t/R×TS0以上とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム合金成形体の製造方法。
- 被加工材において曲げ・曲げ戻し変形を受ける部分の温度T℃での引張強度TS1[MPa]、被加工材の板厚t[mm]、ダイス肩半径R[mm]に対して、成形開始以後の少なくとも一時期においてしわ押さえ圧力[MPa]を3×T/250×t/R×TS1以上とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金成形体の製造方法。
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