JP2014018478A - 血糖値測定方法及び血糖値測定装置 - Google Patents

血糖値測定方法及び血糖値測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】広い波長範囲の近赤外スペクトル測定を必要とせずに簡便に且つ良好な血糖値測定を行う。
【解決手段】生体に近赤外光を照射して生体組織からの拡散反射光あるいは透過光を受光して得られた信号から生体組織中のグルコース濃度を測定するにあたり、グルコース成分の吸収ピーク波長である1600±40nmの波長範囲から選択した第一の波長の近赤外光と、生体組織中の散乱係数変化の補正用として1400nm±20nmの波長範囲から選択した第二の波長の2波長の近赤外光とを用いる
【選択図】図1

Description

本発明は、生体組織に照射した近赤外光の拡散反射光あるいは透過光から生体の血糖値(の代用特性としてのグルコース濃度)を測定する血糖値測定方法及び血糖値測定装置に関するものである。
生体組織に近赤外光を照射し、生体組織内を拡散反射した光あるいは生体組織を透過した透過光を測定して得られる信号やスペクトルを基に生体組織の定性・定量分析を行う場合、生体内の種々の情報を非侵襲的に、試薬なしに、その場で、即時に得ることができる。このために医療分野における多くの用途で注目されており、血中酸素濃度測定については既にパルスオキシメーターとして広く利用されている。
そして血糖値測定への応用については、糖尿病患者の血糖値管理の他に、集中治療室(ICU)や手術室で患者の血糖値を適切な範囲に管理する用途などの広い分野で有効性が検討されている。
そして、近赤外光を用いた生体組織の分光分析にあたっては、近赤外領域における各成分スペクトルがブロードで互いに重畳し合う特性があるため、他の成分や状態変化の影響を受けやすい。このために定量・定性分析に際しては多変量解析が用いられることが多い。
多変量解析に際しては数波長の信号を選択して重回帰分析を行なうこともあるが、数百nmの広い波長範囲に及ぶ近赤外スペクトル信号を測定して、主成分回帰分析やPLS回帰分析のような多変量解析を行うことが多い。特に、生体中のグルコース濃度のように微小信号の変化を捉える必要がある場合、特定の波長を選択して数波長のみで定量化することは難しいと考えられており、このために近赤外スペクトルを用いた手法が多く検討されている(特開2006−87913号公報(特許文献1)参照)。
しかし、近赤外光の測定には十分な光強度を有する光源や分光手段、受光手段が必要であり、特に第1倍音およびその結合音が観測される1300〜2500nmの波長領域においては適切な性能の光源、受光素子の入手が難しく、小型化が困難で、コスト的にも高価になってしまう欠点があった。しかも近赤外スペクトルを多変量解析することにより血糖値を算出するには複雑な演算処理が必要であり、高性能の演算用ソフトウェアや処理能力の高いCPUや大容量メモリが必要なことも小型化や低コスト的が難しい要因となっている。
装置の小型化、低コスト化を行なう上では、広い波長範囲の近赤外スペクトル信号を基に測定するのではなく、数波長の信号から血糖値を測定する技術が有効であるが、それには適切な波長選択を行なう必要があり、このために以前より様々な波長の利用が検討されている。
たとえば、特表平7‐505215号公報(特許文献2)に開示されたグルコース濃度を測定するための方法及び装置においては、1547〜1577nmの波長帯域内の第1の近赤外光と、1295〜1305nmの波長帯域内の第2の近赤外光とを用いることが開示されている。
しかし、上記複数波長の近赤外光を用いても、血糖値(グルコース濃度)の測定において、十分な結果を得ることができない。
特開2006−87913号公報 特表平7‐505215号公報
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、広い波長範囲の近赤外スペクトル測定を必要とせず、簡便に且つ良好な血糖値測定を行うことができる血糖値測定方法及び血糖値測定装置を提供することを課題とする。
本発明にかかる血糖値測定方法は、生体に近赤外光を照射して生体組織からの拡散反射光あるいは透過光を受光して得られた信号から生体組織中のグルコース濃度を測定するにあたり、グルコース成分の吸収ピーク波長である1600nmを中心とした±40nmの波長範囲から選択した第一の波長の近赤外光と、生体組織中の散乱係数変化の補正用として1400nmを中心とした±20nmの波長範囲から選択した第二の波長の2波長の近赤外光とを用いることに特徴を有している。
脂肪成分の吸収が存在する1650nmから1850nmの波長範囲から選択した第三の波長の近赤外光を加えた3波長を用いることが好ましく、殊に、脂肪成分の吸収ピークである1725nmを中心とした±50nmの波長範囲から選択した第三の波長の近赤外光を加えた3波長を用いて生体組織中グルコース濃度を測定することが好ましい。
水成分の影響を受ける1350nmから1390nmの波長範囲から選択した第四の波長の近赤外光を加えた4波長を用いて生体組織中グルコース濃度を測定することも好ましい。
このほか、生じる外乱によっては1480nmから1520nmの波長範囲から選択した波長を第四の波長の近赤外光を加えた4波長を用いて生体組織中グルコース濃度を測定してもよい。もちろん、上記波長範囲から選択した5波長を用いて生体組織中グルコース濃度を測定してもよい。
血糖値の算出用の演算式としては、グルコースの吸収スペクトル吸収ピーク波長である1600nmを中心とした±40nmの波長範囲から選択した第一の波長の信号から、生体組織中の散乱係数変化の補正用としての1400nmを中心とした±20nmの波長範囲から選択する第二の波長の信号を減算し、得られた値に係数をかけるものを好適に用いることができる。
血糖値を算出する演算式として、グルコースの吸収スペクトル吸収ピーク波長である1600nmを中心とした±40nmの波長範囲から選択した第一の波長の信号から、生体組織中の散乱係数変化の補正用としての1400nmを中心とした±20nmの波長範囲から選択する第二の波長信号を減算し、得られた結果に対して、1650nmから1850nmの波長範囲から選択した第三の波長の信号を用いて脂肪成分の吸収変化に起因する外乱影響の補正を行ない、この補正後の値に係数をかけるものを用いてもよく、特に、血糖値を算出する演算式として、グルコースの吸収スペクトル吸収ピーク波長である1600nmを中心とした±40nmの波長範囲から選択した第一の波長の信号から、生体組織中の散乱係数変化の補正用としての1400nmを中心とした±20nmの波長範囲から選択する第二の波長信号を減算し、得られた結果に対して、脂肪の吸収スペクトルピークである1725nmを中心とした±50nmの波長範囲から選択した第三の波長の信号を用いて脂肪成分の吸収変化に起因する外乱影響の補正を行ない、補正後の値に係数をかけるものを好適に用いることができる。
第三の波長もしくは第四の波長の信号の値として、変化を鈍らせた値を用いることも好ましい。ただし、1480nmから1520nmの波長範囲から選択した波長を用いる場合、この波長は発汗等の急峻な状態変化に対応することが目的であるために、生データあるいはその変化を損なわない範囲の処理を施した値を用いることが望ましい。
そして本発明に係る血糖値測定装置は、上記測定方法を実施する血糖値測定装置であって、生体に近赤外光を照射する発光手段と生体組織からの拡散反射光あるいは透過光を受光する受光手段とを0.3mm以上2mm以下の受発光間隔で配置したセンシング手段を備えるとともに、生体に常時接触させた上記センシング手段の受光手段から断続的に得られた吸光度信号を基に血糖値を演算する演算手段と、基準とする時点からの血糖値の相対変化を経時的に表示する表示手段とを備えていることに特徴を有している。
前記センシング手段は生体への装着時に10g重/cm2以下の接触圧力で生体に接触するものが好適である。
本発明によれば、広い波長範囲の近赤外スペクトル測定を必要とせずに複数の波長の拡散反射光または透過光の測定のみで血糖値を演算予測することができるものであり、演算も簡便な演算でよく、近赤外光の受発光手段も簡便なものでよいこともあって、低コストで良好な相関係数を有する血糖値を予測することができる。
模擬生体における1600nmと1400nmの吸光度差とグルコース濃度との関係を示すグラフである。 同上の散乱係数の影響を示すグラフである。 同上の波長と相関係数との関係を示すグラフである。 人体における1600nmの波長の吸光度の時間変化を示すグラフである。 同上の人体における1600nmと1400nmの吸光度差の時間変化と血糖値の時間変化とを示すグラフである。 同上の吸光度差から導いた予測血糖値と実測血糖値の時間変化を示すグラフである。 他例における吸光度差から導いた予測血糖値と実測血糖値の時間変化を示すグラフである。 同上の差分吸光度と波長との相関を示すグラフである。 同上の補正を加えた後の予測血糖値と実測血糖値の時間変化を示すグラフである。 更に他例にかかる補正を加えた後の予測血糖値と実測血糖値の時間変化を示すグラフである。 別の例における吸光度差の時間変化と血糖値の時間変化とを示すグラフである 同上の差分吸光度と波長との相関を示すグラフである。 同上の補正を加えた後の予測血糖値と実測血糖値の時間変化を示すグラフである。 さらに別の例における1600nmと1400nmの吸光度差の時間変化と血糖値の時間変化とを示すグラフである。 同上の補正を加えた後の吸光度差の時間変化と血糖値の時間変化とを示すグラフである。 同上の更なる補正を加えた後の予測血糖値と実測血糖値の時間変化を示すグラフである。 (a)は本発明に係る装置の一例を示すブロック図、(b)は同上の測定プローブ先端面の正面図である。
近赤外光で生体組織中のグルコース濃度を測定することを困難にする要因として、生体での外乱がある。近赤外分光法では、通常、測定した近赤外スペクトル(説明変量)を多変量解析することにより外乱の影響を小さくし、目的変量(グルコース濃度変化)に相関する信号を抽出するが、グルコース濃度変化に付随する信号に対して、生体組織では個体差・季節差・日間差・測定部位差等のような大きな外乱が多数存在しており、精度を確保するために必要なSN比が期待できないような場合は、多変量解析手法を用いても良好な関係式を導き出すことは難しい。
上記のような外乱の生体組織への影響を検討するに当り、その前段階として測定条件の制御が容易な模擬生体(ファントム)を用いて生体組織中のグルコース濃度と外乱の関係を明らかにして、その対応策を検討することで近赤外光によるグルコース検出技術の考え方と方向性の検討を行なった。
生体の光学ファントムとして、イントラリピッド(ダイズ油注射液、フレゼニウス カービ製)を用いた模擬皮膚ファントムを作成し、散乱係数変化等の外乱を人為的に付与することでその光学特性を検討した。その手順を以下に説明する。
模擬皮膚ファントムは以下のように作成した。20%濃度のイントラリピッドを蒸留水で希釈し、ヒト皮膚の散乱係数(波長1600 nmにおいて、等価散乱係数(μs’)≒ 1.5 mm-1)とほぼ同等の散乱係数(1.35mm-1,1.65 mm-1の2水準)を有するイントラリピッド溶液を作成した。
次に上記2水準のイントラリピッド溶液にグルコースを溶解し、上記の散乱係数毎に5水準のグルコース濃度(100mg/dl,200mg/dl,300mg/dl,400mg/dl,800mg/dl)を有するイントラリピッド・グルコース溶液を作成した。この10種類のイントラリピッド・グルコース溶液をホットスターラーで攪拌・過熱し、一定温度(29±0.1℃)に調整し、測定プローブ先端を溶液中に挿入した状態で近赤外スペクトル測定を行った。
この測定に使用した測定プローブは特許文献1に示されたものと同じで、図17に示すように、ハロゲンランプ1から発光された近赤外光は熱遮蔽板2、ピンホール3、レンズ4、光ファイババンドル5を介して生体組織(模擬皮膚ファントム)6に入射される。光ファイババンドル5には測定用光ファイバ7の一端とリファレンス用光ファイバ8の一端が接続されている。測定用光ファイバ7の他端は測定用プローブ9に接続されており、リファレンス用光ファイバ8の他端はリファレンス用プローブ10に接続されている。さらに、測定プローブ9およびリファレンスプローブ10は光ファイバを介して測定側出射体11,リファレンス側出射体12にそれぞれ接続されている。
生体組織6の表面にセンシング手段である測定プローブ9の先端面を接触させて近赤外スペクトル測定を行う時、光源1から光ファイババンドル5に入射した近赤外光は、測定用光ファイバ7内を伝達し、図17(b)に示すような測定用プローブ9の先端から同心円周上に配置された12本の発光ファイバ20より生体組織6の表面に照射される。生体組織6に照射されたこの測定光は生体組織内で拡散反射した後に、拡散反射光の一部が測定プローブ9の先端に配置されている受光ファイバ19に受光される。受光された光はこの受光側光ファイバ19を介して、測定側出射体11から出射される。測定側出射体11から出射された光は、レンズ13を通して回折格子14に入射し、分光された後、受光素子15において検出される。
受光素子15で検出された光信号はA/Dコンバーター16でAD変換された後、パーソナルコンピュータなどの演算装置17に入力される。リファレンス測定はセラミック板など基準板18を反射した光を測定し、これを基準光として行う。すなわち、光源1から光ファイババンドル5に入射した近赤外光はリファレンス用光ファイバ8を通して、リファレンス用プローブ10の先端から基準板18の表面に照射される。基準板に照射された光の反射光はリファレンス用プローブ10の先端に配置された受光光ファイバ19を介してリファンレス側出射体12から出射される。上記の測定側出射体11とレンズ13の間、及びこのリファンレス側出射体12とレンズ13の間にはそれぞれシャッター21が配置してあり、シャッター22の開閉によって測定側出射体11からの光とリファンレス側出射体12からの光のいずれか一方が選択的に通過するようになっている。
測定プローブ9とリファレンスプローブ10の端面は図17(b)に示すように円上に配置された12本の発光ファイバ20と中心に配置された1本の受光ファイバ19で構成されている。発光ファイバ20と受光ファイバ19の中心間距離Lは0.3mm以上2mm以下、好ましくは0.65 mmである。
この測定プローブを皮膚表面に接触させてスペクトル測定を行うと、入射光ファイバより照射された近赤外光は皮膚組織内を拡散反射し、入射された光の一部が検出用光ファイバに到達し、その光の伝播経路は“バナナ・シェイプ”と呼ばれる経路をとる。この時、発光ファイバ20と受光ファイバ19の中心間距離Lが0.3mm以上2mm以下、特に0.65 mmであると、表面より表皮、真皮、皮下組織の層状構造を有する皮膚組織における真皮部分のスペクトルを選択的に測定することができることになる。
測定結果をプロットしたものを図2に示す。図2の縦軸は、グルコース成分の特異吸収波長(1560〜1640nmの波長範囲)の中の1600nmにおける一定温度(29±0.1℃)下の吸光度(A.U.)、横軸は模擬皮膚ファントム中のグルコース濃度(mg/dl)である。
図2から明らかなように、等価散乱係数1.35 mm-1の測定値は上方の回帰直線付近に、等価散乱係数1.65 mm-1の測定値は下方の回帰直線付近に存在する。これは1600nmにおける吸光度は、散乱係数依存が非常に大きいことを示しており、等価散乱係数が一定で外乱のない状態ではグルコース濃度と波長1600nmにおける吸光度とは正比例(リニア)の関係が存在するものの、模擬皮膚ファントム中の等価散乱係数が変化すると、グルコース濃度変化に対応する吸光度変化よりもずっと大きな吸光度変化が生ずることになる。つまりは1600nmの波長の吸光度変化のみでは生体中のグルコース濃度を測定することは実際上無理である。
このために、前記測定で得た10個の測定スペクトル毎に、グルコースの特異吸収波長である1600nmの吸光度と、1380nm〜1850nm間の各波長(約2nm間隔)の吸光度とを取り出して、前者の吸光度と後者の吸光度との吸光度差を夫々算出して、各吸光度差とグルコース濃度との相関係数を求めた。図3は得られた10個の吸光度差とそれぞれに対応するグルコース濃度の相関係数を波長毎に示したグラフである。得られた吸光度差とグルコース濃度の相関係数は1400nmに急峻な特異的ピークを有し、そこでの相関係数がほぼ1となっていることが分かる。
また、グルコース分子の特異吸収波長である1600nmと相関係数がピーク値を有する1400nmの吸光度差をとり、グルコース濃度との関係をプロットしたものを図1に示す。図1から分かるように、1400nmにおける吸光度を引くことにより、図2に見られた等価散乱係数の違いによる吸光度の上下分布が解消され、等価散乱係数の値(1.35mm-1、1.65 mm-1)にかかわらず前記吸光度差とグルコース濃度がほぼ直線状に並ぶことが分かる。
この結果は模擬生体での実験結果ではあるが、生体皮膚に擬して散乱係数を詳細に設計した模擬皮膚ファントムから得られた結果であるために、生体組織内においても散乱係数変化に起因する外乱を解消できることを期待できる。生体組織内での散乱係数変化は水分量変化等の要因により生ずる大きな外乱要因の一つと考えられ、皮膚組織内で生じる散乱係数変化を解消できれば、得られた知見は生体組織中のグルコース濃度測定を行う上で非常に有益なものと考えられる。
また、前記の実験については温度一定の状態で測定を行ったが、同様な実験を散乱係数一定で温度を変化(27℃と29℃)させた模擬生体で行なったところ、1460nmで温度変化に起因する外乱が散乱係数変化と同様に解消できることが分かった。しかしながら、生体においては皮膚組織の温度管理は比較的容易であることから、以下の生体での検討については皮膚温度を一定とした条件で行なった。
上記実験をふまえて、模擬生体で得られた知見が生体皮膚でも再現できるか否かを下記の要領で確かめた。
被験者(50歳代男性)に対して経口での糖負荷実験を実施し、その血糖値変化と1600nmと1400nmの吸光度差の関係を調べた。糖負荷実験は以下の手順で行なった。
座位の被験者に対して前述の測定プローブを左前腕内側部分に接触圧力が10g重/cm2以下で軽く接触する程度に貼付し、5分間隔で近赤外吸光度測定を繰り返した。また、比較データとして近赤外光による血糖値測定のタイミングに合わせ、15分間隔で採血による血糖値を測定した。また、近赤外スペクトル測定に対応する血糖値測定を行わない15分間隔の間の5分目、10分目の2点は直線補間により推定した。
近赤外スペクトル測定開始直後と2時間後の2回、経口による糖負荷を行い、被験者の血糖値を変動させた。糖負荷には液体タイプの液体飲料200ml(カロリーメイト缶タイプ 大塚製薬)を用いた。測定は測定開始後2回目の糖負荷後、血糖値が通常の100mg/dl以下で安定するまでの4時間程度実施した。
得られた結果を図4〜図6に示す。図4はグルコース成分の特異吸収波長である1600nmの吸光度変化を経時的に示したもので、横軸は時間(時:分)、縦軸は吸光度(A.U.)である。この実験における1600nmの吸光度は時間と共に単調に増加しており、1600nmの吸光度と血糖値の相関係数は‐0.28と低くほぼ無相関で、2つのピークを有する実際の血糖値変化の特徴を全く反映していない。
図5はグルコース成分の特異吸収波長である1600nmと1400nmの吸光度差の変化を経時的に示したもので、横軸は時間(時:分)、縦軸は差分吸光度(A.U.)である。上に示した無処理の1600nmの吸光度は時間と共に単調に増加した事と比較し、1600nmと1400nmとの吸光度差は2つのピークを有する実際の血糖値変化の特徴を強く反映しており、吸光度差と血糖値の相関係数は0.92である。このことは1600nmの吸光度と1400nmの吸光度の差を取ることで、皮膚組織内に生じる散乱係数変化の影響を排除することができ、血糖値の変動に対応する変化を抽出することができたと考えられる。
図5に示した吸光度差を血糖値に換算するには、血糖値1mg/dlの変動に相当する吸光度(A.U.)で割り算すればよく、この事例においては0.00008A.U./(mg/dl)を用いて血糖値に換算した。これにより相対的な変化ではあるが、血糖値の変動を推定することが可能となった。図6は測定開始から45分後時に採血により測定した血糖値を基準に、その値からの相対変化として差分吸光度を血糖値に換算したものである。用いた換算係数(0.00008A.U./(mg/dl))は皮膚組織を伝播する近赤外光の平均光路長に依存する値であり、測定部位の皮膚状態や測定光の中心波長、半値幅等により変動するもので、この値に限ったものではなく、被験者毎、装置毎に適宜較正する必要がある。ただし、被験者間の差については測定部位を選べば個体差が比較的小さいので代表的な値を固定値として代用することが可能である。
上記の実験から、模擬生体での知見と同様に、グルコース成分の特異吸収波長である1600nmの吸光度と1400nmの吸光度の差を取ることで、皮膚組織内で生じる散乱係数変化による吸光度変化をキャンセルして、精度良く血糖値が予測できることが生体においても確認できた。
2つの波長の吸光度のみから血糖値を定量できるために、血糖値算出のための演算負荷を小さくすることができる。また、発光素子として、LED(発光ダイオード)や半導体レーザーを用い、受光素子として常温駆動型のInGaAs受光素子を利用することで、装置の小型化及び低コスト化が可能である。
また、採血による実測血糖値での校正が必要であるとはいえ、相対的変化としての血糖値の時間的変化は的確に捉えることができるために、図17に示す演算装置17におけるモニターに上記変化を表示する場合、集中治療室(ICU)や手術室で患者の血糖値の観測を行う場合などにきわめて有用である。
次に、皮膚組織内の散乱係数変化以外の外乱への対応について記述する。前述の実験と同様の装置及び同様の方法で、測定開始から2時間目に経口による糖負荷を一度行うことで被験者(50歳代男性)の血糖値を変動させた。測定プローブは左前腕内側部分に接触圧力10g重/cm2以下で軽く接触する程度に貼付した。
図7は実験で得られたグルコース成分の特異吸収波長である1600nmの吸光度と1400nmの吸光度の差の経時変化を示している。グルコースの特異吸収波長である1600nmの吸光度と1400nmの吸光度の差をとることで、吸光度差が血糖値の変化に幾分追随しているとは言え、時間経過とともに予測値の誤差が正方向に増加する右上りの傾向が出現しており、結果として相関を低下させている。ここでの両者の相関係数は0.6である。
経時的に値が上昇傾向を有する右上りとなる理由は、1400nmの吸光度の差を取ることで解消できる皮膚組織内の散乱係数変化以外の外乱が発生しているためと考えられる。そこで測定した近赤外スペクトルの変化を精査したところ、スペクトルの経時的変化として脂肪成分の吸収ピークの増加が特徴的であることが分かった。図8は測定開始時に測定した被験者の皮膚近赤外スペクトルを基準とし、測定終了まで5分毎に測定したスペクトルの変化をプロットしたもので、横軸が波長(nm)、縦軸が測定スペクトルと開始時のスペクトルの吸光度差(A.U.)である。
図8に示されるように、時間経過と共に脂肪成分の特異吸収波長である1725nm付近が特徴的に増加している。この脂肪吸収の変化と考えられる現象は皮膚組織内の脂肪濃度の増加とは考えにくいために、皮膚組織内を拡散する近赤外光の光路変化と考えることが合理的である。つまり、測定プローブと皮膚が接触するとその接触面は初期状態においては皮溝、皮丘により粗い状態にあるが、時間経過と共に接触により皮膚表面が平滑化され、皮膚表面における散乱係数が低下したためと考えられる。平滑化されたならば、近赤外光が皮膚組織内に入りやすくなり、脂肪を中心とした皮下組織まで到達する近赤外光が増加し、あたかも脂肪濃度が増加したようなスペクトル変化が生じることとなる。なお、この現象は測定プローブと皮膚組織との接触圧力が大きいと顕著となることから、接触圧力は10g重/cm2以下とすることが好ましい。
近赤外領域で観測される吸収スペクトルは、波長2.5μm以上の赤外領域における急峻な吸収ピークとは異なり、裾野が広がったなだらかな吸収ピークを持つ、そのため脂肪成分の吸光度が増加すると1725nmの脂肪吸収のピーク値だけでなく、その周辺の波長まで吸光度の増減が影響する。つまり、グルコース濃度の増減を検知している1600nmにおいても脂肪ピーク成長により見かけの吸光度増加が起こり、上記のような右上りの差分値となると考えられる。したがって、上記の差分値から脂肪成長分に相当する分を除去すれば精度よい推定が可能となる。
脂肪成分成長の影響を除去する為に、ここでは1725nmの脂肪ピーク波長の吸光度を用いた。この時、脂肪ピーク波長においてもグルコース変動の影響を受ける為、脂肪ピーク成長の変化を鈍らせたトレンド的な値に加工して脂肪成長の指標にする方が精度よい推定が可能となる。脂肪ピーク成長の変化を鈍らせるには、5分毎に測定する1725nm吸光度の数点の移動平均値を利用したり、数点の吸光度に対する回帰式(1次回帰から数次回帰まで)を利用したりすることが考えられるが、ここでは測定開始時の1725nmの吸光度と1400nmの吸光度差を基準とし、その後5分毎に測定した1725nmの吸光度と1400nmの吸光度との差の変化分の総和を測定回数で割った値を用いた。また、ここでも0.00008A.U./(mg/dl)を用いて血糖値に換算した。下の式は血糖値定量に用いた換算式である
血糖値(mg/dl)=((1600nm吸光度‐1400nm吸光度)−0.5×(鈍らせた1725nm吸光度と1400nmの吸光度差の変化))/0.00008+定数
結果を図9に示す。なお、本例においては測定開始後15分の実測血糖値に近赤外光による予測血糖値が一致するように定数項を定めている。脂肪成分の吸収成長を除去することで、図から明らかなように、予測値に右上り傾向が生じる事象が解消され、相関係数0.95の精度のよい血糖値予測が可能となった。
用いた換算係数(0.00008A.U./(mg/dl))は、前述のように、皮膚組織を伝播する近赤外光の平均光路長に依存する値であり、測定部位の皮膚状態や測定光の中心波長、半値幅等により変動するものでこの値に限ったものではなく、被験者毎、装置毎に較正する必要がある。ただし、被験者間の差については測定部位を選べば個体差が比較的小さいので固定値として代用することは可能である。鈍らせた1725nm吸光度と1400nmの吸光度と差の変化に乗じている係数(−0.5)は実験的に求めた値であり、この値に限定されるものではない。
図7に見られるような吸光度差(グルコース成分の特異吸収波長である1600nmの吸光度と1400nmの吸光度の差)の右上りの経時変化は、脂肪成分の吸収ピークである1725nmの吸光度を用いることなく、キャンセルすることもできる。
この場合の一例について説明すると、1600nmにおける吸光度変化は、グルコース濃度変化に起因するものとトレンド変化的なものが合わさったものと解釈することができる。従って、1600nmの吸光度を加工してトレンドラインを想定できれば1600nmと1400nmの2波長での測定が可能となる。
1600nmの吸光度のトレンドラインは、1600nmの吸光度を鈍らせることで求めることができる。この鈍らせることについては、5分毎に測定する数点の1600nm吸光度を用いて移動平均値を用いたり、数点の吸光度に対する回帰式(1次回帰から数次回帰まで)を用いることができる。なお、ここでは測定開始時の1600nmの吸光度と1400nmの吸光度差を基準とし、その後5分毎に測定した1600nmの吸光度と1400nmの吸光度差の変化分の総和を測定回数で割った値を用いた。また、この事例においても0.00008A.U./(mg/dl)を用いて血糖値に換算した。下の式は血糖値定量に用いた換算式である
血糖値(mg/dl)=((1600nm吸光度‐1400nm吸光度)−1.5×(鈍らせた1600nm吸光度と1400nmの吸光度差の変化))/0.00008+定数
結果を図10に示す。定数項は、測定開始後15分の実測血糖値に、近赤外光による予測血糖値が一致するように定めた。図から明らかなように、脂肪成分の吸収成長の影響を排除して、予測値の右上り傾向を解消することができ、相関係数0.94の精度のよい血糖値予測が可能となった。用いた換算係数(0.00008A.U./(mg/dl))は皮膚組織を伝播する近赤外光の平均光路長に依存する値であり、測定部位の皮膚状態や測定光の中心波長、半値幅等により変動するものでこの値に限ったものではなく、被験者毎、装置毎に較正する必要がある。ただし、被験者間の差については測定部位を選べば個体差が比較的小さいので固定値として代用することは可能である。鈍らせた1600nm吸光度と1400nmの吸光度差の変化にかかる係数(−1.5)は実験的に求めた値であり、これに限定されるものではない。
もっとも、トレンドラインを用いる校正は、測定開始直後から血糖値が単調に増加するような変化に対応することはできないが、実験開始時に血糖値が安定し、その後、健常人の血糖値変動のように100mg/dl前後を基準に増減するような血糖値変動が起こることが予想される用途には適している。従って利用対象を限定する必要がある。
次に、皮膚組織内の散乱係数変化以外の外乱への対処についての他例を説明する。前述と同様の装置及び同様の手法で、測定開始から1時間目に一度、経口による糖負荷を行って被験者(50歳代男性)の血糖値を変動させた。測定プローブは左前腕内側部分に接触圧力が10g重/cm2以下で軽く接触する程度に貼付した。
この実験で得られたグルコース成分の特異吸収波長である1598nmの吸光度と1398nmの吸光度の差の経時変化を図11に示す。図に示されるように本実施形態においてはグルコースの特異吸収波長である1598nmの吸光度と1398nmの吸光度の差をとることで、吸光度差が血糖値の変化に幾分追随しているとは言え、時間経過とともに予測値の誤差が正方向に増加する右上りの傾向が出現していて、結果として相関を低下させている。ここでの両者の相関係数は0.6である。
値が経時的に上昇傾向を有する右上りとなる理由は、前述のように1400nmの吸光度の差を取ることで解消できる皮膚組織内の散乱係数変化以外の外乱の発生によると考えられる。このために測定開始時に測定した被験者の皮膚近赤外スペクトルを基準とし、測定終了まで5分毎に測定したスペクトルの変化をプロットすることでスペクトル変化の特徴を調べた。図12に結果を示す。図において、横軸は波長(nm)、縦軸は測定スペクトルと開始時のスペクトルの吸光度差(A.U.)である。
図から分かるように、時間経過と共に脂肪成分の特異吸収波長である1725nm付近が特徴的に増加しているほか、水成分の吸収ピークを示す1450nm周辺においても特徴的な変動が見られた。この水成分の吸収の変化と考えられる現象は、皮膚組織、特に皮膚表面の水分量変化の影響と考えられる。つまり、測定プローブと皮膚が接触するとその接触面に汗腺からの水分が蓄積し、角質水分量を上昇させることによる影響である。この実験においては、測定位置での角質水分量が実験開始時34.7%であったものが終了時には38.8%まで上昇していた。この表皮層の水による吸収が測定スペクトルの波長全体に影響を与えたものと思われる。
水成分の影響を取除くには1350から1500nmの間の波長、特に1450nmの波長を用いることが有効であるが、1450nmは吸光度が高いために得られる測定信号が微弱であり、しかも温度影響や生体成分との相互作用の影響を受けやすい。このために信号が大きく且つ水成分の変化を反映しやすい波長範囲として1350nmから1390nmを選択することが好ましい。このために、脂肪成分成長の影響を除去することを目的として、脂肪成分の吸収として1726nmの吸光度を用い、加えて、水成分の影響を取除くために特に適している1360から1380nmの間の1373nmの吸光度を用いた。また、1373nmの吸光度についても、直接用いるのではなく、トレンド的な値に加工した上で用いることが好ましいと考えられる。このために、水成分の影響を除去するための演算処理としては、測定開始時の1373nmの吸光度と1398nmの吸光度との差を基準とし、その後5分毎に測定した1373nmの吸光度と1398nmの吸光度との差の変化を測定し、その総和を測定回数で割った値、つまりは鈍らせた値を用いた。脂肪成分の吸光度を鈍らせることについては前述の例と同じとした。また、吸光度は0.00006A.U./(mg/dl)を用いて血糖値に換算した。下の式は血糖値定量に用いた換算式である。
血糖値(mg/dl)={(1598nm吸光度−1398nm吸光度)−0.7×(鈍らせた1726nm吸光度と1398nmの吸光度差の変化)+0.8×(鈍らせた1373nm吸光度と1398nmの吸光度差の変化)}/0.00006+定数
結果を図13に示す。なお、測定開始直後の実測血糖値を近赤外光による予測血糖値と一致するように定数項を定めている。用いた換算係数(0.00006A.U./(mg/dl))は皮膚組織を伝播する近赤外光の平均光路長に依存する値であり、測定部位の皮膚状態や測定光の中心波長、半値幅等により変動するものでこの値に限ったものではなく、被験者毎、装置毎に較正する必要がある。ただし、被験者間の差については測定部位を選べば個体差が比較的小さいので固定値として代用することは可能である。鈍らせた1725nm吸光度と1400nmの吸光度との差の変化等にかかる係数は実験的に求めた値であり、これに限定されるものではない。脂肪成分の吸収成長に加え水成分の影響を除去することで、予測値の右上り傾向が解消され、相関係数0.96の精度のよい血糖値予測が可能となった。
上述の脂肪成分や水成分の影響の排除に際して用いた「鈍らせ手法」は、本発明においてなんら限定するものではなく、他の手法を用いてもよいのはもちろんである。
次に、皮膚組織内の散乱係数変化以外の外乱への対処についての他例を説明する。前述と同様の装置及び同様の手法で、測定開始から1時間15分目に一度、経口による糖負荷を行って被験者(50歳代男性)の血糖値を変動させた。測定プローブは左前腕内側部分に接触圧力が10g重/cm2以下で軽く接触する程度に貼付した。
この実験で得られたグルコース成分の特異吸収波長である1598nmの吸光度と1398nmの吸光度の差の経時変化を図14に示す。図に示されるように本実施形態においてはグルコースの特異吸収波長である1598nmの吸光度と1398nmの吸光度の差をとることで、吸光度差が血糖値の変化に幾分追随しているが、13時35分と40分の間に発汗が原因と考えられる差分吸光度の急激な低下が観察される。この事例における両者の相関係数は0.79である。
上記の差分吸光度の急激な低下は、実験を行った室内温度が28℃程度で蒸し暑く、糖負荷後に発汗が生じたことが原因と考えられる。発汗があると、光ファイバ端面が接触する部分が水分の影響を受けて差分吸光度が瞬時に変化するためである。このような変化も水変化の代用指標として利用できる波長を用いることで影響を軽減することができる。発汗影響の除去については、1470nmから1520nmの波長範囲から選択した波長が有効であり、ここでは1504nmを用いた。図14に示す変化から以下の式
吸光度差=(1598nmの吸光度と1398nmの吸光度の差)−0.8×(1504nmの吸光度と1398nmの吸光度の差)
で発汗影響を除去した吸光度差を図15に示す。
図15に示すように13時35分と40分の間に発汗が原因と考えられる差分吸光度の急激な低下が解消され、図7に見られるような時間経過とともに予測値の誤差が正方向に増加する右上りの傾向を示す関係にすることができた。
なお、発汗等の急激な変化に対応するために、この例においては鈍らせた値を用いていない。スムージング的なデータ加工を行なう場合は、発汗による急峻な差分吸光度変化を損なわない範囲で行う必要がある。
経時的に値が上昇傾向を有する右上りとなる理由は、前述のように脂肪成分の吸収ピークと影響と考えられることから、この影響を除去するために、1725nmの脂肪ピーク波長の吸光度を用いた補正を行なった。この時、脂肪ピーク波長においてもグルコース変動の影響を受けることから、脂肪ピーク成長の変化を鈍らせたトレンド的な値に加工して脂肪成長の指標にする方が精度よい推定が可能となる。
脂肪ピーク成長の変化を鈍らせるには、5分毎に測定する1725nm吸光度の数点の移動平均値を利用したり、数点の吸光度に対する回帰式(1次回帰から数次回帰まで)を利用することが考えられるが、ここでは測定開始時の1726nmの吸光度と1398nmの吸光度差を基準とし、その後5分毎に測定した1726nmの吸光度と1398nmの吸光度との差の変化分の総和を測定回数で割った値を用いた。また、ここでも0.00006A.U./(mg/dl)を用いて血糖値に換算した。下の式は血糖値定量に用いた換算式である
血糖値(mg/dl)=(((1598nmの吸光度と1398nmの吸光度の差)−0.8×(1504nmの吸光度と1398nmの吸光度の差))−0.45×(鈍らせた1726nm吸光度と1398nmの吸光度差の変化))/0.00006+定数
結果を図16に示す。なお、本例においては測定開始後40分の実測血糖値に近赤外光による予測血糖値が一致するように定数項を定めている。上記手法により、相関係数0.91の精度のよい血糖値予測が可能となった。
ところで、グルコース分子の特異吸収波長である1600nmと相関係数がピーク値を有する1400nmの吸光度を求めることについては、前述の受発光間隔が2mm以下となっている測定プローブを好適に用いることができるが、このほか、近赤外光を用いて皮膚組織を測定する系であればどのようなものであってもよい。
たとえば共焦点法と呼ばれる手法を用いてもよい。この共焦点法では、光源に必要な波長の近赤外VCSEL(垂直共振器面発光レーザー)を光源とし、PD(フォトダイオード)を光検出器として、奥行き分解能を有する共焦点光学系を作成することから、焦点位置を調整することで皮膚表面近傍の任意位置からの反射光の強度を検出することが可能である。血糖値を測定する場合は、波長1600±40nm、1400±20nm(さらには1725nm±50nm、1370±10nm)の近赤外VCSELを用い、各波長から得られた信号を上記の各例で示したアルゴリズムを用いて血糖値予測を行なう。
このほか、光干渉断層法(Optical Coherence Tomography;OCT)を用いても可能である。光干渉断層法は光の干渉性(コヒーレンス)を利用して、物体内部の様子を撮像する技術であるが、皮膚表面近傍の一定深さの情報を選択的に取り出すことが可能である。この場合も、波長1600±40nm、1400±20nm(さらには1725nm±50nm、1370±10nm)の低コヒーレンス光源を用いて各波長から得られた信号を上記の各例と同様のアルゴリズムを利用して血糖値予測を行なえばよい。

Claims (10)

  1. 生体に近赤外光を照射して生体組織からの拡散反射光あるいは透過光を受光して得られた信号から生体組織中のグルコース濃度を測定するにあたり、グルコース成分の吸収ピーク波長である1600nmを中心とした±40nmの波長範囲から選択した第一の波長の近赤外光と、生体組織中の散乱係数変化の補正用として1400nmを中心とした±20nmの波長範囲から選択した第二の波長の2波長の近赤外光とを用いることを特徴とする血糖値測定方法。
  2. 脂肪成分の吸収が存在する1650nmから1850nmの波長範囲から選択した第三の波長の近赤外光を加えた3波長を用いることを特徴とする請求項1記載の血糖値測定方法。
  3. 脂肪成分の吸収ピークである1725nmを中心とした±50nmの波長範囲から選択した第三の波長の近赤外光を加えた3波長を用いて生体組織中グルコース濃度を測定することを特徴とする請求項1または2記載の血糖値測定方法。
  4. 水成分の影響を受ける1350nmから1390nmの波長範囲から選択した第四の波長の近赤外光を加えた4波長を用いて生体組織中グルコース濃度を測定することを特徴とする請求項1または2記載の血糖値測定方法。
  5. 血糖値の算出用の演算式として、グルコースの吸収スペクトル吸収ピーク波長である1600nmを中心とした±40nmの波長範囲から選択した第一の波長の信号から、生体組織中の散乱係数変化の補正用としての1400nmを中心とした±20nmの波長範囲から選択する第二の波長の信号を減算し、得られた値に係数をかけるものを用いることを特徴とする請求項1記載の血糖値測定方法。
  6. 血糖値を算出する演算式として、グルコースの吸収スペクトル吸収ピーク波長である1600nmを中心とした±40nmの波長範囲から選択した第一の波長の信号から、生体組織中の散乱係数変化の補正用としての1400nmを中心とした±20nmの波長範囲から選択する第二の波長信号を減算し、得られた結果に対して、1650nmから1850nmの波長範囲から選択した第三の波長の信号を用いて脂肪成分の吸収変化に起因する外乱影響の補正を行ない、この補正後の値に係数をかけるものを用いることを特徴とする請求項1または2または5記載の血糖値測定方法。
  7. 血糖値を算出する演算式として、グルコースの吸収スペクトル吸収ピーク波長である1600nmを中心とした±40nmの波長範囲から選択した第一の波長の信号から、生体組織中の散乱係数変化の補正用としての1400nmを中心とした±20nmの波長範囲から選択する第二の波長信号を減算し、得られた結果に対して、脂肪の吸収スペクトルピークである1725nmを中心とした±50nmの波長範囲から選択した第三の波長の信号を用いて脂肪成分の吸収変化に起因する外乱影響の補正を行ない、補正後の値に係数をかけるものを用いることを特徴とする請求項1または2または3または5または6記載の血糖値測定方法。
  8. 第三の波長もしくは第四の波長の信号の値として、変化を鈍らせた値を用いることを特徴とする請求項2または3または4または6または7記載の血糖値測定方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の測定方法を実施する血糖値測定装置であって、生体に近赤外光を照射する発光手段と生体組織からの拡散反射光あるいは透過光を受光する受光手段とを0.3mm以上2mm以下の受発光間隔で配置したセンシング手段を備えるとともに、生体に常時接触させた上記センシング手段の受光手段から断続的に得られた吸光度信号を基に血糖値を演算する演算手段と、基準とする時点からの血糖値の相対変化を経時的に表示する表示手段とを備えていることを特徴とする血糖値測定装置。
  10. 前記センシング手段は生体への装着時に10g重/cm2以下の接触圧力で生体に接触するものであることを特徴とする請求項9記載の血糖値測定装置。
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