本発明の実施例1に係る可変動弁装置5について説明する。図1(a)は可変動弁装置5を説明するための模式図である。可変動弁装置5は、内燃機関に配置されている。まず可変動弁装置5が配置されている内燃機関の構成について説明し、次いで可変動弁装置5の構成について説明する。可変動弁装置5が配置されている内燃機関は、複数の気筒100を備えている。本実施例に係る内燃機関は、複数の気筒100として、4つの気筒を有している。
図1(a)において左側は内燃機関が搭載された車両の右前輪(Fr)側であり、右側は右後輪(Rr)側である。図1(a)において複数の気筒100の気筒配列方向は横方向(左右方向)であり、これはFr側からRr側に向かう方向でもある。複数の気筒100を左側から順に、#1の気筒100、#2の気筒100、#3の気筒100および#4の気筒100と称する。但し、車両における内燃機関の配置態様は、このような配置態様に限定されるものではなく、例えば内燃機関は、気筒配列方向が左前輪側から左後輪側に向かう方向になるように車両に配置されていてもよい。
本実施例に係る内燃機関は、各々の気筒100にバルブ110を備えている。なお図1(a)においては、#1の気筒100のバルブ110のみが図示され、他の気筒100のバルブ110の図示は省略されている。バルブ110は、気筒100に形成された吸気ポートを開閉する吸気バルブ、または排気ポートを開閉する排気バルブである。本実施例に係る内燃機関は、一つの気筒100当たり2つの吸気ポートと2つの排気ポートとを有している。そのため内燃機関は、一気筒100当たり2つの吸気バルブと2つの排気バルブとを有している。本実施例においては、バルブ110として吸気バルブを用いる。バルブ110は、カムによって駆動されて、吸気ポートを開閉する。
図1(b)は、内燃機関のバルブ110周辺の構成を説明するための模式的断面図である。内燃機関は、バルブ110周辺に、ロッカーアーム111およびバルブスプリング112を備えている。ロッカーアーム111は、カムの動力をバルブ110に伝達するカム動力伝達部材としての機能を有している。このように本実施例に係るカムによるバルブ110の駆動方式は、ロッカーアーム式の駆動方式であるが、カムによるバルブ110の駆動方式はこれに限定されるものではない。カムによるバルブ110の駆動方式の他の例として、例えば直動式の駆動方式を用いることもできる。
バルブスプリング112は、バルブ110をロッカーアーム111の方向へ付勢している。すなわちバルブスプリング112は、バルブ110を閉弁する方向へ付勢している。カムは、バルブスプリング112の付勢力に対抗するように、ロッカーアーム111を介してバルブ110をリフトさせる。バルブ110がリフトすることで、吸気ポートは開になる。
続いて可変動弁装置5の構成について説明する。図1(a)を参照して、可変動弁装置5は、インナーシャフト10と、アウターカム20と、変位機構30と、各種センサと、制御装置50とを備えている。インナーシャフト10の回転中心軸線(以下、軸線11と称する)は、気筒配列方向に沿った方向に延びている。図1(a)においてインナーシャフト10の軸線11の方向(以下、インナーシャフト10の軸線11の方向を、軸線方向と略称する場合がある)は、横方向である。なお、この軸線方向は、内燃機関のクランクシャフトの軸線の方向と同じ方向になっている。
インナーシャフト10は、アウターカム20の内部に挿通している。インナーシャフト10には、内燃機関のクランクシャフトの動力が動力伝達部材(ベルトまたはチェーン、これらに係合するスプロケット等)を介して伝達される。それによりインナーシャフト10は、クランクシャフトと同期して軸線11を中心に回転する。
アウターカム20は、内燃機関のバルブ110に対応するカムとして、カムプロフィールの互いに異なる複数のカムを有している。なお、アウターカム20の構成の詳細は後述する図2において説明する。アウターカム20は、各々の気筒100に対応するように配置されている。具体的には本実施例に係る可変動弁装置5は、#1の気筒100、#2の気筒100、#3の気筒100および#4の気筒100にそれぞれ対応するように、合計4つのアウターカム20を備えている。
アウターカム20は、インナーシャフト10の軸線方向にインナーシャフト10に対して変位できるように、インナーシャフト10に外嵌している。またアウターカム20は、インナーシャフト10が回転した場合にインナーシャフト10と一体となって回転するようにインナーシャフト10に外嵌している。
具体的には本実施例に係るインナーシャフト10の少なくとも各々のアウターカム20が摺動する部分には、スプライン(図示せず)が形成されており、各々のアウターカム20の内周面にもインナーシャフト10のスプラインに対応したスプライン(図示せず)が形成されている。この構成によって、インナーシャフト10が回転したときにアウターカム20はインナーシャフト10と一体となって回転することができるとともに、アウターカム20はインナーシャフト10の軸線方向にインナーシャフト10に対して変位することができる。なおアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の移動を許容しつつアウターカム20をインナーシャフト10と一体的に回転させる機構は、本実施例のようなスプラインを用いた機構に限定されるものではない。
インナーシャフト10およびアウターカム20は、内燃機関が有するカムジャーナル120によって軸支されている。本実施例に係るカムジャーナル120は、内燃機関の内燃機関本体(シリンダブロックとシリンダヘッドとを備えている部分)のシリンダヘッドに形成されている。
本実施例に係るカムジャーナル120は、以下に説明する6箇所においてインナーシャフト10およびアウターカム20を軸支している。具体的にはカムジャーナル120は、図1(a)に示す#1の気筒100の左側の部分(以下、左端部と称する場合がある)と、#4の気筒100の右側の部分(以下、右端部と称する場合がある)とにおいて、インナーシャフト10を軸支している。
またカムジャーナル120は、左端部と右端部との間の領域においては、各気筒100の一対のバルブ110の間の部分において、アウターカム20を軸支している。具体的にはカムジャーナル120は、#1の気筒100の一対のバルブ110の間の部分、#2の気筒100の一対のバルブ110の間の部分、#3の気筒100の一対のバルブ110の間の部分および#4の気筒100の一対のバルブ110の間の部分において、アウターカム20を軸支している。但し、カムジャーナル120によるインナーシャフト10およびアウターカム20の軸支箇所は、図1(a)の箇所に限定されるものではない。
インナーシャフト10には、オイルが通過する通路であるシャフト通路12が設けられている。本実施例に係るシャフト通路12は、インナーシャフト10の軸線方向に沿って、インナーシャフト10の一方の端部側から他方の端部側に亘って形成されている。具体的には本実施例に係るシャフト通路12は、インナーシャフト10の左端部のカムジャーナル120に軸支されている部分からインナーシャフト10の右端部のカムジャーナル120に軸支されている部分よりもさらに右側に亘って、軸線方向に沿って形成されている。
また本実施例に係るカムジャーナル120のうち左端部のカムジャーナル120には、オイルが通過する通路であるジャーナル通路125が設けられている。このジャーナル通路125を通過したオイルがシャフト通路12の左端部に供給されるように、シャフト通路12およびジャーナル通路125は構成されている。オイルポンプによって圧送されたオイルは、ジャーナル通路125に供給され、次いでシャフト通路12の左端部に流入する。シャフト通路12に流入したオイルは、シャフト通路12を通過しながら、アウターカム20の後述するオイル連通路を通過してアウターカム20の外周面に供給されて、アウターカム20とカムジャーナル120との潤滑に供される。
アウターカム20とカムジャーナル120との潤滑に供された後のオイルは、その後内燃機関のオイルパンによって回収されて再びオイルポンプによって圧送される。このようにしてオイルは、内燃機関と可変動弁装置5との間を循環している。なお、シャフト通路12にオイルを供給する構成は、本実施例のような#1の気筒100の左端部のカムジャーナル120に設けられたジャーナル通路125からシャフト通路12にオイルを供給する構成に限定されるものではない。
変位機構30は、アウターカム20をインナーシャフト10に対して軸線方向に変位させる機構である。変位機構30の動作は制御装置50が制御する。本実施例に係る変位機構30は、各々のアウターカム20に対応するように合計4つ配置されている。変位機構30の詳細は図2において後述する。
各種センサは、制御装置50の動作に必要な情報を検出するためのセンサである。図1(a)においては各種センサの一例として、クランクポジションセンサ40、カムポジションセンサ41および圧力センサ42が図示されている。クランクポジションセンサ40は、クランク角を検出し、検出結果を制御装置50に伝える。カムポジションセンサ41は、インナーシャフト10の回転角を検出し、検出結果を制御装置50に伝える。制御装置50は、カムポジションセンサ41の検出結果およびクランクポジションセンサ40の検出結果に基づいてインナーシャフト10のクランク角に対する角度を取得する。
圧力センサ42は、シャフト通路12のオイルの圧力(以下、シャフト通路12のオイル圧力と称する場合がある)を検出し、検出結果を制御装置50に伝える。本実施例に係る圧力センサ42は、インナーシャフト10の右側の端部においてシャフト通路12のオイル圧力を検出している。但し、圧力センサ42の配置箇所は、シャフト通路12のオイル圧力を検出可能な箇所であれば、これに限定されるものではない。
制御装置50は、制御処理や演算処理を実行する制御部と、制御部の動作に必要な情報を記憶する記憶部とを備えている。制御装置50として、電子制御装置(Electronic Control Unit)を用いることができる。本実施例においては、制御装置50の一例として、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52およびRAM(Random Access Memory)53を備える電子制御装置を用いる。制御部の機能はCPU51によって実現することができる。記憶部の機能はROM52およびRAM53によって実現することができる。制御装置50の制御部は、可変動弁装置5を制御するとともに内燃機関の運転動作(具体的には燃料噴射時期、点火時期等)も制御している。
図2(a)は、可変動弁装置5の#1の気筒100の近傍を拡大した模式的断面図である。本実施例においてシャフト通路12は、オイルの流動方向上流側(左側)から#1の気筒100のバルブ110間に配置されたカムジャーナル120の近傍に至るまでは、内径が大きく、その後は内径が細くなっている。但し、シャフト通路12の構成はこれに限定されるものではない。例えばシャフト通路12の内径は、オイルの流動方向上流側から下流側にかけて一様であってもよい。
図2(a)を参照して、アウターカム20の構成の詳細について説明する。なお、#2〜#4の気筒100のアウターカム20は、#1の気筒100のアウターカム20と同じ構成を有している。そのため、#1の気筒100のアウターカム20について、その構成の詳細を説明し、#2〜#4の気筒100のアウターカム20の構成の詳細な説明は省略する。図1(a)において前述したようにアウターカム20は、内燃機関のバルブ110に対応するカムとして、カムプロフィールの互いに異なる複数のカムを有している。複数のカムの個数は2以上であれば、特に限定されるものではない。本実施例に係るアウターカム20は、カムプロフィールの互いに異なる複数のカムとして、2種類のカムを備えている。アウターカム20は、2種類のカムとして、第1のカムと、第1のカムとは異なるカムプロフィールを有する第2のカムとを備えている。
具体的には本実施例に係るアウターカム20は、第1のカムとして小カム21を備え、第2のカムとして大カム22を備えている。小カム21のカムプロフィールは、小カム21によってバルブ110がリフトされないカムプロフィール、または小カム21によって駆動されるバルブ110のリフト量が大カム22によって駆動されるバルブ110のリフト量よりも小さくなるカムプロフィールである。
小カム21のカムプロフィールが、小カム21によってバルブ110がリフトされないカムプロフィールの場合、図2(a)に示すように小カム21がバルブ110に対応した位置にある場合、バルブ110の駆動を停止することができる。すなわち、この場合、可変動弁装置5はいわゆる気筒停止運転を実行することができる。
本実施例においては、小カム21のカムプロフィールの一例として、小カム21によって駆動されるバルブ110のリフト量が大カム22によって駆動されるバルブ110のリフト量よりも小さくなるカムプロフィールを用いる。この場合、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を、小カム21がバルブ110に対応する位置と大カム22がバルブ110に対応する位置との間で変位させることで、バルブ110のリフト量を小リフト量と大リフト量との間で変更することができる。
なお本実施例においては、内燃機関は一気筒100当たり2つのバルブ110を備えているため、アウターカム20は小カム21および大カム22を一気筒100当たり2つ備えている。具体的にはアウターカム20は、一つの気筒100に配置された2つのバルブ110のうち一方のバルブ110に対応した小カム21および大カム22と、他方のバルブ110に対応した小カム21および大カム22とを備えている。
そのため、アウターカム20は、一方のバルブ110(具体的には左側のバルブ110)に対応した小カム21と他方のバルブ110(具体的には右側のバルブ110)に対応した大カム22とを連結する連結部23を有している。連結部23の外周面24(なお、外周面24の符号番号は後述する図2(b)において図示されている)は、カムジャーナル120によって軸支されている。
またアウターカム20は、外周面に溝27が形成された溝形成部28を備えている。本実施例に係る溝形成部28は、右側の小カム21のさらに右側面に連結されている。溝27は、変位機構30の後述する溝係合部材31が係合することで、アウターカム20が軸線方向に対して変位するように構成されている。アウターカム20が軸線方向に変位することで、バルブ110に対応するカムを小カム21と大カム22との間で切替えることができる。
具体的には図2(a)の状態からアウターカム20が軸線方向で右方向にインナーシャフト10に対して変位することで、バルブ110に対応するカムを大カム22に切替えることができる。またアウターカム20が大カム22がバルブ110に対応した位置から軸線方向で左方向に変位することで、バルブ110に対応するカムを小カム21に切替えることができる。溝27の詳細は図4において後述する。
図2(b)は、アウターカム20の連結部23の近傍を拡大した模式的断面図である。連結部23には、シャフト通路12と連結部23の外周面24とを連通する通路(オイル連通路と称する)が形成されている。具体的には本実施例に係るオイル連通路は、小連通路25と大連通路26とを備えている。
小連通路25は、大連通路26よりも右側に配置されている。具体的には小連通路25は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が小カム21がバルブ110に対応する位置の場合に、シャフト通路12と外周面24とを連通する位置に設定されている。また大連通路26は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が大カム22がバルブ110に対応する位置の場合に、シャフト通路12と外周面24とを連通する位置に設定されている。
小連通路25の通路面積は、大連通路26の通路面積よりも小さく設定されている。具体的には小連通路25および大連通路26は、連結部23の軸線方向に垂直な方向(図2(b)において上下方向)を深さ方向とする穴によって構成されている。そして、小連通路25の穴の断面積は大連通路26の穴の断面積よりも小さく設定されている。それにより、小連通路25の通路面積は大連通路26の通路面積よりも小さくなっている。小連通路25の通路面積が大連通路26の通路面積よりも小さいことによって、小連通路25を通過するオイルの流量(m3/s)は大連通路26を通過するオイルの流量よりも小さくなる。
すなわち本実施例に係るアウターカム20は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置に応じて、相対的に通路面積の小さな小連通路25がシャフト通路12と外周面24とを連通した状態と、相対的に通路面積の大きな大連通路26がシャフト通路12と外周面24とを連通した状態とが切替わる構成を有している。その結果、可変動弁装置5は、シャフト通路12と外周面24とを連通するオイル連通路の通路面積がアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置に応じて変化する構成を有している。
小連通路25の通路面積が大連通路26の通路面積よりも小さく設定されているため、小連通路25がシャフト通路12の位置になった場合(すなわち小カム21がバルブ110に対応する場合)におけるシャフト通路12のオイル圧力は、大連通路26がシャフト通路12の位置になった場合(すなわち大カム22がバルブ110に対応する場合)におけるシャフト通路12のオイル圧力よりも小さくなる。
小連通路25がシャフト通路12と外周面24とを連通した場合には、インナーシャフト10のオイルは、小連通路25を通過して外周面24に供給される。大連通路26がシャフト通路12と外周面24とを連通した場合には、インナーシャフト10のオイルは、大連通路26を通過して外周面24に供給される。
本実施例に係る可変動弁装置5において、アウターカム20が軸線方向に変位した場合、アウターカム20の外周面24(具体的には連結部23の外周面24)はカムジャーナル120の内周面に対して摺動しながら軸線方向に移動するが、オイル連通路(小連通路25または大連通路26)からアウターカム20の外周面24に供給されたオイルによって、アウターカム20とカムジャーナル120との間の潤滑が確保されている。特に本実施例に係る小連通路25および大連通路26は、アウターカム20の連結部23の外周面24のうち、カムジャーナル120によって軸支される部分に対応するように形成されているため、小連通路25および大連通路26を通過したオイルをカムジャーナル120の内周面とアウターカム20のカムジャーナル120によって軸支されている面(すなわち外周面24)との間に効果的に供給することができる。その結果、可変動弁装置5によれば、アウターカム20とカムジャーナル120との間の潤滑が効果的に確保されている。
図2(a)を参照して、変位機構30は、アウターカム20の溝形成部28に形成された溝27に係合可能な溝係合部材31と、溝係合部材31を駆動する駆動部32とを備えている。溝係合部材31の具体的構成は、溝27に係合可能なものであれば特に限定されるものではない。本実施例に係る溝係合部材31は、棒形状のピンである。
駆動部32は、制御装置50からの指示を受けて溝係合部材31を駆動する装置である。具体的には駆動部32は、制御装置50の制御部からの指示を受けて溝係合部材31を駆動部32に対して出没させる。制御部は、溝係合部材31を溝27に係合させる場合、溝係合部材31が駆動部32から突出するように駆動部32に指示を与える。制御部は、溝係合部材31の溝27への係合を終了させる場合、溝係合部材31が駆動部32に没入するように駆動部32に指示を与える。このように本実施例に係る制御部は変位機構30の駆動部32を制御し、駆動部32は制御部の指示を受けて溝係合部材31を駆動している。なお制御部は、カムポジションセンサ41およびクランクポジションセンサ40の検出結果に基づいてインナーシャフト10のクランク角に対する角度を取得することで溝27の回転方向の位置を把握して、溝係合部材31を係合させる溝27の位置を把握している。
駆動部32は、溝係合部材31が溝27に係合した場合に駆動部32がインナーシャフト10の軸線方向に移動しないように、内燃機関の所定部位によって支持されている。駆動部32を支持する内燃機関の所定部位は、特に限定されるものではなく、内燃機関のシリンダヘッド、シリンダヘッドカバー等を用いることができる。本実施例に係る駆動部32は、シリンダヘッドに固定される形で内燃機関によって支持されているものとする。駆動部32の具体的構成は、特に限定されるものではないが、本実施例においては、一例として電動式のアクチュエータを用いる。電動式のアクチュエータの一例として、ソレノイドアクチュエータを用いる。
また可変動弁装置5は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置がカム切替後において変位することを抑制する機構として、係止機構60を備えている。図2(c)は、係止機構60を説明するための模式的断面図である。係止機構60は、アウターカム20のインナーシャフト10に対向する面に形成された第1凹部61および第2凹部62と、これら凹部に係合する係合部63と、係合部63を付勢する付勢部材64とを備えている。
付勢部材64は、インナーシャフト10に設けられた収容穴65に配置されている。収容穴65とシャフト通路12とは、互いに干渉しないように構成されている。具体的には本実施例に係る収容穴65は、シャフト通路12に干渉しない位置に形成されている。それにより、シャフト通路12のオイルが収容穴65に漏れることが抑制されている。
係合部63は、付勢部材64に接続し、付勢部材64によってインナーシャフト10の軸線方向に垂直な方向(図2(c)では上方)に付勢させられている。収容穴65は、係合部63の径よりも大きく設定されている。
本実施例においては付勢部材64の一例として、ばねを用いる。但し付勢部材64の構成は、係合部63を付勢可能なものであれば、ばねに限定されるものではない。また本実施例においては係合部63の一例として、球を用いる。但し係合部63の構成は、第1凹部61および第2凹部62に係合可能なものであれば、球に限定されるものではない。
第1凹部61は、第2凹部62よりも軸線方向で右側に位置している。第1凹部61、第2凹部62および係合部63の位置は、バルブ110に対応したカムが小カム21の場合に係合部63が第1凹部61に係合し、バルブ110に対応したカムが大カム22の場合に係合部63が第2凹部62に係合するように設定されている。
また第1凹部61は、軸線方向に対して傾斜した第1傾斜面66を備えている。第2凹部62は、軸線方向に対して傾斜した第2傾斜面67を備えている。第1傾斜面66は、付勢部材64によって付勢された係合部63からの力を軸線方向で左方向の成分に分解する面である。第2傾斜面67は、付勢部材64によって付勢された係合部63からの力を軸線方向で右方向の成分に分解する面である。
図3(a)および図3(b)は、アウターカム20の軸線方向への変位の様子を示す模式的断面図である。具体的には図3(a)は、小カム21がバルブ110に対応するような位置にアウターカム20が変位した場合における可変動弁装置5の一部を拡大して模式的に断面図示し、図3(b)は、大カム22がバルブ110に対応するような位置にアウターカム20が変位した場合における可変動弁装置5の一部を拡大して模式的に断面図示している。
図3(a)を参照して、バルブ110に対応するカムが小カム21の場合、アウターカム20の小連通路25がシャフト通路12とアウターカム20の外周面24とを連通している。図3(b)を参照して、バルブ110に対応するカムが大カム22の場合、アウターカム20の大連通路26がシャフト通路12とアウターカム20の外周面24とを連通している。
図3(a)を参照して、バルブ110に対応するカムが小カム21の場合、付勢部材64によって付勢された係合部63は第1凹部61の第1傾斜面66に当接している。この場合、アウターカム20は係合部63から軸線方向で左方向の力を受ける。その結果、アウターカム20の大カム22(具体的には右側のバルブ110に対応した大カム22)の左側面がカムジャーナル120に当接する。それにより、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が変化することが抑制されている。その結果、小カム21とバルブ110との位置関係がずれることが抑制されている。
バルブ110に対応するカムを小カム21から大カム22に切替えるために、図3(a)の状態からアウターカム20が軸線方向で右方向に移動した場合、係合部63はアウターカム20の第1凹部61と第2凹部62との間の部分によって押されるようにして、収容穴65に収容される。その結果、係合部63は第1凹部61から脱離する。その後、図3(b)に示すように、アウターカム20の軸線方向の移動が完了してバルブ110に対応するカムが大カム22に切替わった場合、係合部63は付勢部材64からの付勢力を受けて収容穴65から突出して、第2凹部62の第2傾斜面67に当接する。
付勢部材64によって付勢された係合部63が第2凹部62の第2傾斜面67に当接した場合、アウターカム20は係合部63から軸線方向で右方向の力を受ける。その結果、アウターカム20の小カム21(具体的には左側のバルブ110に対応した小カム21)の右側面がカムジャーナル120に当接する。それにより、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が変化することが抑制されている。その結果、大カム22とバルブ110との位置関係がずれることが抑制されている。
このようにして係止機構60は、カム切替終了後におけるアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の変位を抑制している。なお、カム切替終了後におけるアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の変位を抑制可能な機構であれば、可変動弁装置5は本実施例のような係止機構60以外の構成を備えていてもよい。
図4(a)は、溝27の詳細を説明するための模式図である。具体的には図4(a)は、溝27を溝形成部28の周方向に展開した状態を模式的に図示している。図4(a)においてインナーシャフト10およびアウターカム20の回転方向は上方向である。溝27は、溝係合部材31が溝27に係合することでバルブ110に対応するカムが小カム21と大カム22との間で切替わるような構造を有している。
具体的には溝27は、インナーシャフト10の軸線方向に対して垂直な溝方向を有する第1垂直部70、第2垂直部72および第3垂直部74を有している。また溝27は、軸線方向に対して傾斜した溝方向を有する第1傾斜部71および第2傾斜部73を有している。第1垂直部70、第1傾斜部71、第2垂直部72、第2傾斜部73および第3垂直部74は、この順に接続している。
バルブ110に対応するカムが大カム22から小カム21に切替わる場合、溝係合部材31は、第1垂直部70、第1傾斜部71および第2垂直部72に順に係合する。バルブ110に対応するカムが小カム21から大カム22に切替わる場合、溝係合部材31は、第2垂直部72、第2傾斜部73および第3垂直部74に順に係合する。
図4(b)〜図4(d)は、溝係合部材31の溝27への係合態様を説明するための模式図である。図4(b)〜図4(d)の上段には、溝係合部材31が溝27に係合した様子が模式的に図示されており、下段にはバルブ110に対応するカムが切替わる様子が模式的に図示されている。
図4(b)に示すように、バルブ110に対応するカムを大カム22から小カム21に切替える場合、制御装置50の制御部は、溝係合部材31が駆動部32から突出して第1垂直部70のいずれかの箇所に係合するように駆動部32に指示を与える。第1垂直部70に係合した溝係合部材31は、インナーシャフト10およびアウターカム20の回転に伴って溝27に対して相対的に移動する。
図4(c)に示すように、溝係合部材31が第1傾斜部71に係合した場合、アウターカム20は第1傾斜部71が溝係合部材31から受ける軸線方向の力によって左側に移動する。このアウターカム20の軸線方向の移動は、図4(d)に示すように溝係合部材31が第1傾斜部71への係合を終了して第2垂直部72への係合を開始するまで継続される。溝係合部材31が第2垂直部72に係合した場合、制御部は溝係合部材31が駆動部32に没入するように駆動部32に指示を与える。それにより、溝係合部材31の溝27への係合は終了する。なお、アウターカム20が1回転するまでの間にバルブ110に対応するカムが大カム22から小カム21に切替わるように、第1垂直部70、第1傾斜部71および第2垂直部72の溝形成部28の周方向の長さは設定されている。
一方、バルブ110に対応するカムを小カム21から大カム22へ切替える場合(図示は省略する)、制御部は、溝係合部材31が駆動部32から突出して第2垂直部72のいずれかの箇所に係合するように、駆動部32に指示を与える。第2垂直部72に係合した溝係合部材31は、インナーシャフト10およびアウターカム20の回転に伴って溝27に対して相対的に移動する。溝係合部材31が第2傾斜部73に係合した場合、アウターカム20は第2傾斜部73が溝係合部材31から受ける軸線方向の力によって右側に移動する。このアウターカム20の軸線方向の移動は、溝係合部材31が第2傾斜部73への係合を終了して第3垂直部74への係合を開始するまで継続される。溝係合部材31が第3垂直部74に係合した場合、制御部は、溝係合部材31を駆動部32に没入させることで溝係合部材31の溝27への係合を終了させる。なお、アウターカム20が1回転するまでの間にバルブ110に対応するカムが小カム21から大カム22に切替わるように、第2垂直部72、第2傾斜部73および第3垂直部74の溝形成部28の周方向の長さは設定されている。
以上のように本実施例に係る溝27は、溝係合部材31が溝27に係合することでバルブ110に対応するカムが小カム21と大カム22との間で切替わる構造を有している。なお溝係合部材31が溝27に係合することでバルブ110に対応するカムを切替えることが可能な構造であれば、溝27は、図4(a)の構造に限定されるものではない。また本実施例に係る変位機構30は、アウターカム20の溝27に溝係合部材31を係合させることで、アウターカム20をインナーシャフト10の軸線方向にインナーシャフト10に対して変位させる機構となっているが、変位機構30の構成は、アウターカム20をインナーシャフト10の軸線方向にインナーシャフト10に対して変位可能な機構であれば、上述した機構に限定されるものではない。
続いて制御装置50の詳細について説明する。制御装置50の制御部は、バルブ110に対応したカムを小カム21と大カム22との間で切替える場合に、前述したように可変動弁装置5の変位機構30を制御する。このバルブ110に対応したカムを小カム21と大カム22との間で切替えるための条件(以下、カム切替条件と称する場合がある)の具体的内容は、特に限定されるものではなく、小カム21および大カム22のカムプロフィールに応じて適切な条件を設定すればよい。
本実施例に係る制御部は、カム切替条件の一例として、内燃機関の負荷が所定負荷以上であるか否かを用いる。具体的には制御部は、負荷が所定負荷以上の場合に、バルブ110に対応したカムが小カム21から大カム22に切替わるように変位機構30の駆動部32に指示を与え、負荷が所定負荷より小さい場合には、バルブ110に対応したカムが大カム22から小カム21に切替わるように駆動部32に指示を与える。
内燃機関の負荷の一例として、内燃機関の回転数、燃料噴射量、吸入空気量等を用いることができる。本実施例においては、負荷の一例として内燃機関の回転数を用いることとする。この場合、制御部は、クランクポジションセンサ40の検出結果に基づいて内燃機関の回転数(rpm)を取得し、取得した回転数が所定値以上の場合に、バルブ110を駆動するカムが大カム22になるように変位機構30を制御し、回転数が所定値より小さい場合に、バルブ110を駆動するカムが小カム21になるように変位機構30を制御する。所定値の具体的値は特に限定されるものではなく、小カム21および大カム22のカムプロフィールに応じて適宜設定すればよい。回転数の所定値は、予め記憶部が記憶しておく。
また制御部は、シャフト通路12のオイルの圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出する。図2(b)において前述したように、可変動弁装置5は、シャフト通路12と外周面24とを連通するオイル連通路の通路面積がアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置に応じて変化する構成を有している。それにより、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が変化した場合、オイル連通路の通路面積が変化する結果、シャフト通路12のオイル圧力も変化する。したがって、制御部は、シャフト通路12のオイル圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出することができる。
また本実施例に係る制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出する際に、さらにシャフト通路12のオイル圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であるか否かも判定する。以下、この制御部によるアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出し且つアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であるか否かを判定する制御を、カム位置検出異常判定制御と称する。
また本実施例に係る制御部は、アウターカム20がインナーシャフト10に対して軸線方向に変位するように変位機構30を制御することによってバルブ110に対応するカムを複数のカムの間で切替える制御(以下、カム切替制御と称する場合がある)を実行した場合には、カム切替制御後のバルブ110に対応するカムの種類に応じて内燃機関の運転状態を変更する運転状態変更制御を実行する。
カム位置検出異常判定制御および運転状態変更制御の詳細について以下に説明する。まず、カム位置検出異常判定制御の詳細について説明する。本実施例に係る制御部は、カム位置検出異常判定制御において、圧力センサ42の検出結果に基づいてシャフト通路12のオイル圧力を取得し、取得したシャフト通路12のオイル圧力を所定の基準圧力と比較することで、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出するとともにアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置の異常の有無を判定している。まず、所定の基準圧力(以下、シャフト通路12の基準圧力と称する場合がある)について説明する。
本実施例に係る制御装置50の記憶部には、シャフト通路12の基準圧力がマップとして予め記憶されている。このマップにおいて、シャフト通路12の基準圧力は、内燃機関の運転状態を示す指標に関連付けて規定されている。内燃機関の運転状態を示す指標としては、特に限定されるものではないが、例えば内燃機関の回転数、燃料噴射量、吸入空気量、燃焼室の温度等を用いることができる。本実施例においては、内燃機関の運転状態を示す指標の一例として内燃機関の回転数を用いる。すなわち本実施例においては、マップの一例として、シャフト通路12の基準圧力が内燃機関の回転数に関連付けて規定されたものを用いる。
図5は、本実施例に係るカム位置検出異常判定制御で用いられるシャフト通路12の基準圧力のマップを説明するための図である。具体的には図5は、シャフト通路12の基準圧力のマップの一例を視覚化して図示したものである。図5の横軸は内燃機関の回転数(rpm)を示し、縦軸はシャフト通路12のオイル圧力(Pa)を示している。図5において、曲線200、曲線201、曲線202および曲線203が図示されている。これら曲線200〜曲線203は、回転数が上昇するほどシャフト通路12のオイル圧力も上昇するような曲線となっている。曲線202よりも曲線203の方が上方に位置し、曲線203よりも曲線200の方が上方に位置し、曲線200よりも曲線201の方が上方に位置している。
なお図5において、曲線200と曲線201との中間には仮想曲線220が図示されている。曲線200は仮想曲線220に対して所定圧力分だけ下方に位置し、曲線201は仮想曲線220に対して所定圧力分だけ上方に位置している。曲線202と曲線203との中間には仮想曲線221が図示されている。曲線202は仮想曲線221に対して所定圧力分だけ下方に位置し、曲線203は仮想曲線221に対して所定圧力分だけ上方に位置している。
曲線200と曲線201との間の領域210(すなわち曲線200以上曲線201以下の領域)には、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の目標位置(以下、これを目標カム位置と称する場合がある)が小カム21がバルブ110に対応した位置である場合に用いられるシャフト通路12の基準圧力(Po(小))が格納されている。別の観点でいえば、領域210には、小連通路25がシャフト通路12とアウターカム20の外周面24とを連通した場合に用いられるシャフト通路12の基準圧力(Po(小))が格納されている。
また曲線202と曲線203との間の領域211(すなわち曲線202以上曲線203以下の領域)には、目標カム位置が大カム22がバルブ110に対応した位置である場合に用いられるシャフト通路12の基準圧力(Po(大))が格納されている。別の観点でいえば、領域211には、大連通路26がシャフト通路12とアウターカム20の外周面24とを連通した場合に用いられるシャフト通路12の基準圧力(Po(大))が格納されている。
制御部は、圧力センサ42の検出結果に基づいてシャフト通路12のオイル圧力を取得する。制御部は、バルブ110に対応するカムを大カム22から小カム21に切替えた場合、および小カム21から大カム22に切替えた場合において、クランクポジションセンサ40の検出結果に基づいて内燃機関の回転数を取得し、取得した回転数に対応するシャフト通路12の基準圧力を記憶部のマップ(図5)から取得する。
具体的には制御部が取得した回転数が例えばA(rpm)であった場合、制御部は、領域210のうち回転数Aに対応するオイル圧力の上限値および下限値を取得し、領域211のうち回転数Aに対応するオイル圧力の上限値および下限値を取得する。
具体的には制御部は、領域210のうち回転数Aに対応するオイル圧力の上限値として回転数Aに対応する曲線201のオイル圧力(Po(小)max)を取得し、領域210のうち回転数Aに対応するオイル圧力の下限値として回転数Aに対応する曲線200のオイル圧力(Po(小)min)を取得する。また制御部は、領域211のうち回転数Aに対応するオイル圧力の上限値として回転数Aに対応する曲線203のオイル圧力(Po(大)max)を取得し、領域211に対応するオイル圧力の下限値として回転数Aに対応する曲線202のオイル圧力(Po(大)min)を取得する。
そして制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の目標とする位置(すなわち目標カム位置)が小カム21がバルブ110に対応する位置に設定されている場合において、圧力センサ42の検出結果に基づいて取得したシャフト通路12のオイル圧力が、Po(小)min以上Po(小)max以下の範囲(すなわち、領域210の範囲)に入っていれば、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が小カム21がバルブ110に対応する位置になっていることを検出する。またこの場合、制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が正常であると判定する。
一方、制御部は、目標カム位置が小カム21がバルブ110に対応する位置に設定されている場合において、圧力センサ42の検出結果に基づいて取得したシャフト通路12のオイル圧力が上記Po(小)min以上Po(小)max以下の範囲(領域210の範囲)に入っていない場合には、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が小カム21がバルブ110に対応する位置になっていないことを検出する。またこの場合、制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定する。すなわち制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置の異常を検出している。
また制御部は、目標カム位置が大カム22がバルブ110に対応する位置に設定されている場合において、圧力センサ42の検出結果に基づいて取得したシャフト通路12のオイル圧力がPo(大)min以上Po(大)max以下の範囲(すなわち、領域211の範囲)に入っていれば、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が大カム22がバルブ110に対応する位置になっていることを検出する。またこの場合、制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が正常であると判定する。
一方、制御部は、目標カム位置が大カム22がバルブ110に対応する位置に設定されている場合において、圧力センサ42の検出結果に基づいて取得したシャフト通路12のオイル圧力が上記Po(大)min以上Po(大)max以下の範囲(領域211の範囲)に入っていない場合には、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が大カム22がバルブ110に対応する位置になっていないことを検出する。またこの場合、制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定する。
以上のように本実施例に係る制御部は、圧力センサ42の検出結果に基づいて取得したシャフト通路12のオイル圧力(シャフト通路12のオイル圧力の測定値)と、記憶部に記憶されているシャフト通路12の基準圧力と、に基づいて検出したアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が、バルブ110に対応するカムをアウターカム20が有する複数のカムから選択された所定のカムにするとの指示(目標カム位置の設定)と異なっている場合に、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定している。このようにして制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置の異常を検出している。
また制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定した場合、アウターカム20がインナーシャフト10に対して軸線方向に変位するように変位機構30を制御してバルブ110に対応するカムを切替える。そして制御部は、再度、カム位置検出異常判定制御を実行する。
具体的には制御部は、目標カム位置が小カム21がバルブ110に対応する位置に設定されている場合において、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定された場合、アウターカム20がインナーシャフト10に対して軸線方向に変位するように変位機構30を制御することでバルブ110に対応するカムを大カム22に切替える。そして、制御部は、圧力センサ42の検出結果に基づいて取得したシャフト通路12のオイル圧力がマップの領域211の範囲に入っているか否かを判定する。
その結果、シャフト通路12のオイル圧力がマップの領域211の範囲に入っていれば、制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が、大カム22がバルブ110に対応する位置になっていることを検出して、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が正常であると判定する。一方、シャフト通路12のオイル圧力がマップの領域211の範囲に入っていなければ、制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が大カム22がバルブ110に対応する位置になっていないことを検出して、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定する。
これと同様に、制御部は、目標カム位置が大カム22がバルブ110に対応する位置に設定されている場合において、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定された場合、アウターカム20がインナーシャフト10に対して軸線方向に変位するように変位機構30を制御することでバルブ110に対応するカムを小カム21に切替える。そして、制御部は、圧力センサ42の検出結果に基づいて取得したシャフト通路12のオイル圧力がマップの領域210の範囲に入っているか否かを判定する。
その結果、シャフト通路12のオイル圧力がマップの領域210の範囲に入っていれば、制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が小カム21がバルブ110に対応する位置になっていることを検出して、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が正常であると判定する。一方、シャフト通路12のオイル圧力がマップの領域210の範囲に入っていなければ、制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が小カム21がバルブ110に対応する位置になっていないことを検出して、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定する。
なお図5のマップにおいて、シャフト通路12の基準圧力は、領域210(曲線200と曲線201との間の領域)および領域211(曲線202と曲線203との間の領域)に示すように所定の幅をもって規定されているが、これに限定されるものではない。例えば、マップは、曲線200と曲線201との中間の曲線である仮想曲線220を目標カム位置が小カム21がバルブ110に対応した位置の場合に用いられるシャフト通路12の基準圧力(Po(小))として規定し、曲線202と曲線203との中間の曲線である仮想曲線221を目標カム位置が大カム22がバルブ110に対応した位置の場合に用いられるシャフト通路12の基準圧力(Po(大))として規定してもよい。
しかしながら、シャフト通路12のオイル圧力には所定のバラツキが生じることが考えられるため、本実施例のようにシャフト通路12の基準圧力が領域210および領域211のように所定の幅をもって規定されている方が、シャフト通路12のオイル圧力のバラツキを考慮に入れた上でアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置および異常の有無を検出することができる点で好ましい。
図6は、本実施例に係る制御装置50がカム位置検出異常判定制御を実行する際のフローチャートの一例を示す図である。制御装置50の制御部は図6のフローチャートを所定期間毎に繰り返し実行する。まず制御部は、圧力センサ42の検出結果に基づいてシャフト通路12のオイル圧力(P)を取得する(ステップS10)。
次いで制御部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の目標とする位置である目標カム位置を設定する(ステップS11)。本実施例に係る制御部は、前述したカム切替条件に基づいて目標カム位置を制御装置50の所定部位(例えば記憶部等)に設定する。具体的には制御部は、内燃機関の回転数が所定値以上の場合、目標カム位置として、大カム22がバルブ110に対応するようなアウターカム20の軸線方向の位置を設定する。また制御部は、内燃機関の回転数が所定値より小さい場合、目標カム位置として、小カム21がバルブ110に対応するようなアウターカム20の軸線方向の位置を設定する。
次いで制御部は、ステップS11において設定された目標カム位置が小カム21がバルブ110に対応する位置であるか否かを判定する(ステップS12)。すなわちステップS12は、バルブ110に対応するカムを小カム21にするとの指示(設定)がなされているか否かを確認する処理となっている。ステップS12において目標カム位置が小カム21がバルブ110に対応する位置であると判定された場合(すなわちYesと判定された場合)、制御部はシャフト通路12の基準圧力のうち小カム21に対応した基準圧力(Po(小))を取得する(ステップS13)。具体的には制御部は、内燃機関の回転数を取得し、図5に示すマップの領域210から回転数に対応したPo(小)minとPo(小)maxとを取得する。
次いで制御部は、圧力センサ42の検出結果に基づいて取得したシャフト通路12のオイル圧力PがPo(小)min以上Po(小)max以下の範囲に含まれているか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14においてシャフト通路12のオイル圧力PがPo(小)min以上Po(小)max以下の範囲に含まれていると判定された場合(すなわちYesと判定された場合)、制御部はアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置(カム位置)が小カム21がバルブ110に対応する位置になっていることを検出するとともに、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が正常であると判定する(ステップS15)。次いで制御部はフローチャートの実行を終了する。
ステップS14でNoと判定された場合、制御部はアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が小カム21がバルブ110に対応する位置になっていないことを検出するとともに、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定する(ステップS16)。
次いで制御部は、バルブ110に対応するカムを現在のカムから他のカムに切替えるために、アウターカム20がインナーシャフト10に対して軸線方向に変位するように変位機構30を制御する(ステップS17)。次いで制御部は、ステップS11を実行する。ステップS17の後に実行されるステップS11においては、目標カム位置として、大カム22がバルブ110に対応するようなアウターカム20の軸線方向の位置が設定される。その結果、ステップS12においてNoと判定されることになる。
ステップS12においてNoと判定された場合(この場合、目標カム位置は大カム22がバルブ110に対応する位置に設定されている)、制御部はシャフト通路12の基準圧力のうち大カム22に対応した基準圧力(Po(大))を取得する(ステップS18)。具体的には制御部は、内燃機関の回転数を取得し、図5に示すマップの領域211から回転数に対応したPo(大)minとPo(大)maxとを取得する。
次いで制御部は、圧力センサ42の検出結果に基づいて取得したシャフト通路12のオイル圧力PがPo(大)min以上Po(大)max以下の範囲に含まれているか否かを判定する(ステップS19)。ステップS19においてシャフト通路12のオイル圧力PがPo(大)min以上Po(大)max以下の範囲に含まれていると判定された場合(すなわちYesと判定された場合)、制御部はアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が大カム22がバルブ110に対応する位置になっていることを検出するとともに、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が正常であると判定する(ステップS20)。次いで制御部はフローチャートの実行を終了する。
ステップS19でNoと判定された場合、制御部はアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が大カム22がバルブ110に対応する位置になっていないことを検出するとともに、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定する(ステップS21)。
次いで制御部は、バルブ110に対応するカムを現在のカムから他のカムに切替えるために、アウターカム20がインナーシャフト10に対して軸線方向に変位するように変位機構30を制御する(ステップS22)。次いで制御部は、ステップS11を実行する。ステップS22の後に実行されるステップS11においては、目標カム位置として、小カム21がバルブ110に対応するようなアウターカム20の軸線方向の位置が設定される。その結果、ステップS12においてYesと判定されることになる。
なお、ステップS17が実行された後にステップS11、ステップS12、ステップS18、ステップS19が実行されてステップS21が実行された場合、およびステップS22が実行された後にステップS11、ステップS12、ステップS13、ステップS14が実行されてステップS16が実行された場合、シャフト通路12のオイル圧力は、図5のマップで領域210および領域211のいずれの領域にも属さないことになる。この場合、内燃機関や可変動弁装置5に何らかの異常が生じていることが考えられる。
そこで、制御部は、上述したステップS17の実行後にステップS21が実行された場合、およびステップS22の実行後にステップS16が実行された場合には、内燃機関のユーザに警報を報知する警報報知制御を実行することが好ましい。実際に本実施例に係る制御部は、この警報報知制御を実行する。この場合、内燃機関が搭載された車両の運転席には、ユーザに警報を報知する報知装置(例えばランプ、スピーカ等)が配置されている。制御部は、この報知装置を制御することで、ユーザに警報を報知する。それにより、ユーザは内燃機関または可変動弁装置5に異常が生じていることを知ることができる。警報報知制御の実行後に制御部は、フローチャートの実行を強制的に終了する。
続いて制御部が実行する運転状態変更制御の詳細について説明する。前述したように本実施例に係る制御部は、変位機構30を制御することによってバルブ110に対応するカムを複数のカムの間で切替えるカム切替制御を実行した場合に、運転状態変更制御を実行する。運転状態変更制御において、制御部は、カム切替制御実行後のバルブ110に対応するカムの種類に応じて内燃機関の運転状態を変更する。
具体的には制御部は、運転状態変更制御において、カム切替制御実行後のバルブ110に対応するカムの種類に応じて内燃機関の燃料噴射量および点火時期の少なくとも一方を変更する。本実施例に係る制御部は、運転状態変更制御の一例として、カム切替制御実行後のバルブ110に対応するカムの種類に応じて内燃機関の燃料噴射量および点火時期の両方を変更する。具体的には制御部は、カム切替制御実行後において、燃料噴射量および点火時期を、カムが切替わる前に使用していた燃料噴射量および点火時期から現在のカムに対応した燃料噴射量および点火時期に変更する。
運転状態変更制御の実行に当たって、制御装置50の記憶部には、小カム21に対応した燃料噴射量および点火時期のマップ(以下、第1運転状態マップと称する)と、大カム22に対応した燃料噴射量および点火時期のマップ(以下、第2運転状態マップと称する)とが予め記憶されている。第1運転状態マップに規定されている燃料噴射量および点火時期は、バルブ110に対応したカムが小カム21の状態で、このマップに規定されている燃料噴射量および点火時期で内燃機関が運転された場合に、内燃機関の運転状態が良好となるような燃料噴射量および点火時期である。第2運転状態マップに規定されている燃料噴射量および点火時期は、バルブ110に対応したカムが大カム22の状態でこのマップに規定されている燃料噴射量および点火時期で内燃機関が運転された場合に、内燃機関の運転状態が良好となるような燃料噴射量および点火時期である。なお内燃機関の運転状態が良好となるような燃料噴射量および点火時期としては、例えば燃費が良好となるような燃料噴射量および点火時期、エミッションが良好となるような燃料噴射量および点火時期等を用いることができる。
制御部は、カム切替制御において、バルブ110に対応したカムが大カム22から小カム21に切替わるように変位機構30の駆動部32に指示を与えた場合には、燃料噴射量および点火時期のマップを、それまで使用していた第2運転状態マップから第1運転状態マップに切替える。また制御部は、カム切替制御において、バルブ110に対応したカムが小カム21から大カム22に切替わるように変位機構30の駆動部32に指示を与えた場合には、燃料噴射量および点火時期のマップを、それまで使用していた第1運転状態マップから第2運転状態マップに切替える。以上のように、制御部は運転状態変更制御を実行している。
図7は、本実施例に係る制御装置50が運転状態変更制御を実行する際のフローチャートの一例を示す図である。制御装置50の制御部は図7のフローチャートを所定期間毎に繰り返し実行する。まず制御部は、カム切替制御を実行する(ステップS30)。
具体的には制御部は、図6のステップS11において設定された目標カム位置が小カム21がバルブ110に対応する位置の場合には、アウターカム20がこの目標カム位置になるように変位機構30を制御する。具体的には制御部は、溝係合部材31が駆動部32から突出して溝27の第1垂直部70に係合するように駆動部32に指示を与える。また制御部は、図6のステップS11において設定された目標カム位置が大カム22がバルブ110に対応する位置の場合には、アウターカム20がこの目標カム位置になるように変位機構30を制御する。具体的には制御部は、溝係合部材31が駆動部32から突出して溝27の第2垂直部72に係合するように駆動部32に指示を与える。
次いで制御部は、ステップS30の制御を行った直後であるか否かを判定する(ステップS31)。具体的には制御部は、ステップS31において、ステップS30で駆動部32に指示を与えてからの経過時間が所定時間(例えば数秒)以内であるか否かを判定する。ステップS31において、ステップS30で駆動部32に指示を与えてからの経過時間が所定時間以内であると判定された場合、制御部はステップS30の制御を行った直後であると判定する。
ステップS31においてステップS30の制御を行った直後であると判定された場合(すなわちYesと判定された場合)、制御部は燃料噴射量および点火時期を変更する(ステップS32)。具体的には制御部は、燃料噴射量および点火時期のマップを現在のカムに対応したマップ(第1運転状態マップまたは第2運転状態マップ)に変更する。次いで制御部はフローチャートの実行を終了する。ステップS31でNoと判定された場合、制御部はフローチャートの実行を終了する。
続いて可変動弁装置5の作用効果について説明する。まず、可変動弁装置5によれば、オイル連通路の通路面積がアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置に応じて変化するように構成されていることから、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が変化した場合、オイル連通路の通路面積が変化する結果、シャフト通路12のオイル圧力も変化する。それにより、制御装置50は、シャフト通路12のオイル圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出することができる。
具体的には可変動弁装置5によれば、アウターカム20が小連通路25および大連通路26を備えることから、シャフト通路12とアウターカム20の外周面24とを連通するオイル連通路の通路面積を、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置に応じて変化させることができる。それにより、シャフト通路12のオイル圧力をアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置に応じて変化させることができる。その結果、制御装置50は、シャフト通路12のオイル圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出することができる。このメカニズムに基づいて本実施例に係る制御装置50は、実際に圧力センサ42の検出結果に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出している。
また可変動弁装置5によれば、アウターカム20の外周面24がカムジャーナル120によって軸支されていることから、アウターカム20のオイル連通路を通過してアウターカム20の外周面24に供給されたオイルをアウターカム20とカムジャーナル120との潤滑に用いることができる。
ここで、バルブスプリング112の付勢力はバルブ110のリフト量に応じて増加するため、アウターカム20の外周面24に供給されるオイル量は、バルブ110のリフト量が多くなるほど多くなった方が、アウターカム20とカムジャーナル120との磨耗を効果的に抑制できる点で好ましい。逆に言えば、バルブ110のリフト量が小さい場合には、バルブ110のリフト量が大きい場合に比較して、アウターカム20の外周面24に供給するオイル量を少なくしてもアウターカム20とカムジャーナル120との磨耗を抑制することができる。
この点に関して可変動弁装置5によれば、小カム21のカムプロフィールが、小カム21によってバルブ110がリフトされないカムプロフィール、または小カム21によって駆動されるバルブ110のリフト量が大カム22によって駆動されるバルブ110のリフト量よりも小さくなるカムプロフィールであることから、小カム21がバルブ110に対応する場合にアウターカム20がバルブスプリング112によって付勢されたバルブ110から受ける付勢力の大きさは、大カム22がバルブ110に対応する場合にアウターカム20がバルブ110から受ける付勢力の大きさよりも小さい。そのため、小連通路25の通路面積が大連通路26の通路面積よりも小さい結果、小連通路25を通過してアウターカム20の外周面24に供給されるオイル量が大連通路26を通過して外周面24に供給されるオイル量よりも少なくなっても、アウターカム20とカムジャーナル120との磨耗を抑制することができる。
また可変動弁装置5によれば、制御装置50はシャフト通路12のオイル圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であるか否かを判定していることから、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置の異常を検出することもできる。
また可変動弁装置5によれば、運転状態変更制御が実行されることから、内燃機関の燃料噴射量および点火時期の少なくとも一方をカム切替え後のバルブ110に対応するカムの種類に応じて変更することができる。それにより、内燃機関の運転状態をバルブ110に対応するカムの種類に応じて適切に制御することができる。
なお、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出する機構として、本実施例に係る機構の代わりに、例えばギャップセンサを用いてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出する機構を採用できないかと考えた場合、次の問題が生じる可能性がある。具体的には、ギャップセンサを用いた位置検出機構を搭載するには、広いスペースを確保することが必要となるが、可変動弁装置においてこのようなスペースを確保することは困難である。したがって、ギャップセンサを用いた位置検出機構を可変動弁装置に適用するには、可変動弁装置を大型化させる必要が生じる可能性がある。またギャップセンサを用いた位置検出機構を適用する場合、可変動弁装置の製造コストが増大する可能性がある。
この点に関して本実施例に係る可変動弁装置5によれば、ギャップセンサを用いた位置検出機構を適用する場合に比較して小規模な設計変更(オイル連通路の設定、圧力センサ42の設置等)を加えることでアウターカム20の軸線方向の位置を検出することが可能である。そのため、製造コストの上昇を抑制することができる。また、可変動弁装置5の大型化も抑制することができる。この点において可変動弁装置5は、ギャップセンサを用いた位置検出機構を備える可変動弁装置に比較して優れている。
続いて本発明の実施例3に係る可変動弁装置5bについて説明する。本実施例に係る可変動弁装置5bは、制御装置50に代えて制御装置50bを備えている点において実施例1に係る可変動弁装置5と異なっている。制御装置50bは、カム位置検出異常判定制御においてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定された場合に、後述する変位機構異常判定制御を実行する点と、後述する変位機構異常時制御をさらに実行する点とにおいて、実施例1に係る制御装置50と異なっている。可変動弁装置5bのその他の構成は実施例1に係る可変動弁装置5と同様であるため、実施例1と同一の部材には同一の符号を付すことで重複する説明を省略する。
まず、本実施例に係る変位機構異常判定制御について説明する。変位機構異常判定制御において制御装置50bの制御部は、カム位置検出異常判定制御が実行された結果アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定された場合に、アウターカム20がインナーシャフト10に対して軸線方向に変位するように変位機構30を制御し、変位機構30を制御した後においてシャフト通路12のオイル圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出し、この位置の検出結果に基づいて変位機構30に異常があるか否かを判定する。
アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定された場合に変位機構30を制御してもアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が正常にならない場合には、変位機構30に異常があることが考えられる。このメカニズムに基づいて制御装置50bは、変位機構異常判定制御において変位機構30に異常があるか否かを判定している。
図10は、本実施例に係る制御装置50bが変位機構異常判定制御を実行する際のフローチャートの一例を示す図である。なお制御装置50bの制御部は、実施例1に係るカム位置検出異常判定制御においてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定された場合に、本実施例に係る図10のフローチャートを実行する。
具体的には本実施例に係る制御部は、実施例1に係る図6のフローチャートのステップS16が実行された場合に、ステップS17を実行する代わりに本実施例に係る図10のフローチャートを実行する。また本実施例に係る制御部は、図6のステップS21が実行された場合に、ステップS22を実行する代わりに本実施例に係る図10のフローチャートを実行する。但し、制御部が図10のフローチャートを実行する時期は、これに限定されるものではない。例えば制御部は図6のフローチャートにおいてステップS17の実行後にステップS21が実行されたとき、またはステップS22の実行後にステップS16が実行されたときに図10のフローチャートを実行してもよい。
図10を参照して、制御部は、変位機構異常フラグがONになっているか否かを判定する(ステップS50)。変位機構異常フラグは、後述するステップS55においてONにされるものである。そのため、フローチャートの最初の実行時において、変位機構異常フラグはONになっていない。
ステップS50において変位機構異常フラグがONになっていると判定されなかった場合(すなわちNoと判定された場合)、制御部はアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置(カム位置)が異常であるか否かを判定する(ステップS51)。具体的には制御部は、実施例1に係る図6のステップS16またはステップS21が実行されたか否かを判定する。そのため、図6のステップS16またはステップS21が実行されて図10のフローチャートが最初に実行された場合、ステップS51はYesと判定される。
ステップS51においてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定された場合(すなわちYesと判定された場合)、制御部はアウターカム20がインナーシャフト10に対して軸線方向に変位するように変位機構30を制御する(ステップS52)。具体的には制御部は、バルブ110に対応するカムを現在のカムから他のカムに切替えるように変位機構30の駆動部32に指示を与える。
より具体的には制御部は、ステップS51においてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が小カム21がバルブ110に対応する位置になっていないために異常と判定された場合、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が大カム22がバルブ110に対応する位置になるように変位機構30の駆動部32に指示を与える。また制御部は、ステップS51においてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が大カム22がバルブ110に対応する位置になっていないために異常と判定された場合、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が小カム21がバルブ110に対応する位置になるように変位機構30の駆動部32に指示を与える。
次いで制御部は、カム位置検出異常判定制御を実行する(ステップS53)。具体的には制御部は、実施例1に係るカム位置検出異常判定制御のステップS10、ステップS11およびステップS12を実行し、ステップS12においてYesと判定された場合、ステップS13およびステップS14を実行し、ステップS14においてYesと判定された場合、ステップS15を実行し、ステップS14においてNoと判定された場合、ステップS16を実行する。また制御部は、ステップS12おいてNoと判定された場合、ステップS18およびステップS19を実行し、ステップS19においてYesと判定された場合、ステップS20を実行し、ステップS19においてNoと判定された場合、ステップS21を実行する。
次いで制御部は、ステップS53の実行の結果、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置(カム位置)が正常と判定されたか否かを判定する(ステップS54)。つまりステップS51〜ステップS54を概説すると、ステップS51においてカム位置が異常と判定された結果、制御部はステップS52においてカムが切替わるように駆動部32に指示を与え、その結果、ステップS53において再度カム位置が正常であるか否かを判定した結果、ステップS54において正常であると判定されたことになる。
ステップS54においてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が正常であると判定された場合、制御部はフローチャートの実行を終了する。ステップS54においてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が正常であると判定されなかった場合(すなわちNoと判定された場合)、制御部は変位機構に異常があると判定して、変位機構異常フラグをONにする(ステップS55)。
次いで制御部は、ステップS50を実行する。その結果、ステップS50において変位機構異常フラグがONであると判定されることになる。ステップS50において変位機構異常フラグがONであると判定された場合、制御部は、変位機構異常時制御を実行する(ステップS56)。変位機構異常時制御の内容は後述する。次いで制御部はフローチャートの実行を終了する。
続いて変位機構異常時制御について説明する。変位機構異常時制御において制御装置50bの制御部は、カム切替制御の実行を禁止する制御を行っている。すなわち本実施例に係る制御装置50bの制御部は、変位機構30に異常がある場合には、カム切替制御の実行を禁止している。なおカム切替制御の実行が禁止されることにより、運転状態変更制御の実行も禁止される。
図11は、本実施例に係る制御装置50bが変位機構異常時制御を実行する際のフローチャートの一例を示す図である。制御装置50bの制御部は図11のフローチャートを所定期間毎に繰り返し実行する。まず制御部は、変位機構30に異常があるか否かを判定する(ステップS60)。具体的には制御部は前述した図10において変位機構異常フラグがONになっているか否かを判定し、変位機構異常フラグがONになっていると判定した場合に、ステップS60において変位機構30に異常があると判定する。すなわち、本実施例において変位機構異常フラグをONにすることは、変位機構30の異常を検出することに相当している。したがって、図11のフローチャートを最初に実行した場合にはステップS60はYesと判定されることになる。
ステップS60において変位機構30に異常があると判定されなかった場合(すなわちNoと判定された場合)、制御部はステップS30を実行する。ステップS30、ステップS31およびステップS32の内容は、実施例1に係る図7のステップS30〜ステップS32と同様であるため、説明は省略する。すなわち、本実施例に係る制御部は、変位機構30に異常がない場合には、実施例1と同様に、カム切替制御(ステップS30)および運転状態変更制御(ステップS32)を実行している。
ステップS60において変位機構に異常があると判定された場合(すなわちYesと判定された場合)、制御部はフローチャートの実行を終了する。すなわちこの場合、制御部はカム切替制御の実行を禁止し、その結果、運転状態変更制御の実行も禁止している。
なお、本実施例に係る制御部は、実施例1に係るカム位置検出異常判定制御を実行した結果、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定された場合に、本実施例に係る図10のフローチャートを実行しているが、これに限定されるものではない。本実施例に係る制御部は、実施例2に係るカム位置検出異常判定制御が実行された結果、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定された場合に、本実施例に係る図10のフローチャートを実行してもよい。この場合、制御部は、図10のステップS53に係るカム位置検出異常判定制御において、実施例2に係るカム位置検出異常判定制御(図9)を実行する。また、制御部はステップS51およびステップS54においても、実施例2に係るカム位置検出異常判定制御内容にしたがってアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であるか正常であるかを判定する。
本実施例に係る可変動弁装置5bにおいても、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出することができる。具体的にはアウターカム20が小連通路25および大連通路26を備えることから、シャフト通路12と外周面24とを連通するオイル連通路の通路面積を、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置に応じて変化させることができる。それにより、シャフト通路12のオイル圧力をアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置に応じて変化させることができる。その結果、制御装置50bは、シャフト通路12のオイル圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出することができる。また可変動弁装置5bにおいても、制御装置50bが実施例1または実施例2に係るカム位置検出異常判定制御を実行することから、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置の異常を検出することができる。
また可変動弁装置5bの制御装置50bは、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が異常であると判定した場合に、アウターカム20がインナーシャフト10に対して軸線方向に変位するように変位機構30を制御し(ステップS52)、変位機構30を制御した後においてシャフト通路12のオイル圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出し(ステップS53)、位置の検出結果に基づいて変位機構30に異常があるか否かをさらに判定している(ステップS54)。それにより可変動弁装置5bによれば、変位機構30の異常を検出することができる。
また可変動弁装置5bによれば、制御装置50bは変位機構30に異常がない場合にはカム切替制御(ステップS30)を実行するとともに運転状態変更制御(ステップS32)を実行することから、内燃機関の運転状態をバルブ110に対応するカムの種類に応じて適切に制御することができる。
また可変動弁装置5bによれば、制御装置50bは変位機構30に異常がある場合にはカム切替制御の実行を禁止していることから(図11のステップS60でNoと判定された場合のフロー)、変位機構30に異常があるにもかかわらずカム切替制御が実行されてしまうこと、および運転状態変更制御が実行されてしまうことを抑制することができる。それにより、変位機構30に異常があるにもかかわらずカム切替制御が実行されて運転状態変更制御が実行されることに伴う不具合(例えばトルク段差が生じる、エミッションが悪化する等の不具合)の発生を抑制することができる。
なお本実施例において、制御装置50bは変位機構30に異常がある場合に、実施例1において説明したような警報報知制御を実行してもよい。この場合、内燃機関のユーザに変位機構30の異常に関する警報を報知することができる点で好ましい。
なお実施例1、実施例2および実施例に係る可変動弁装置において、制御装置は、シャフト通路12のオイル圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出するにあたって、シャフト通路12のオイル圧力と、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出するための基準となるシャフト通路12のオイル圧力(例えば図5、図8のマップ)と、を比較することで、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出しているが、これに限定されるものではない。例えば制御装置は、シャフト通路12のオイル圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向のストローク量を検出し、この検出結果に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出してもよい。
この手法の一例を挙げると、まず、制御装置の記憶部は、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向のストローク量の基準となる基準圧力を予め記憶しておく。制御装置の制御部は、圧力センサ42の検出結果に基づいて取得したシャフト通路12のオイル圧力と、この基準圧力とを比較することで、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向のストローク量を検出する。そして制御部は、検出したアウターカム20のストローク量に基づいて、アウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置が、小カム21がバルブ110に対応する位置になっているか、大カム22がバルブ110に対応する位置になっているかを検出する。このような手法によっても、可変動弁装置は、シャフト通路12のオイル圧力に基づいてアウターカム20のインナーシャフト10に対する軸線方向の位置を検出することができる。
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。