以下に、開示のバイオセンサの実施の形態について、適宜図面を参照しつつ、詳細に説明する。以下に詳細に説明するように、開示のバイオセンサは、基板と、基板上に設けられた検出部とを有する。また、開示のバイオセンサは、基板の上部及び下部の内少なくとも一方に設けられ、検体溶液が流入する流入口及び流入口から少なくとも検出部上まで延びた溝部を有するカバー部材を有する。また、開示のバイオセンサは、互いに間隔を開けて配置され、溝部によって前記検出部上に形成される空間に、検出部を通る電界を発生させる一対の電極を有する。この結果、検出感度を向上可能となる。例えば、検出対象となる物質の電荷に応じて、検出対象となる物質が検出面(検出部の表面をさすものとする)に移動するような電界を発生させるときには、検出対象となる物質と検出面とが接触する確率を高くすることができ、検出感度を向上可能となる。言い換えると、電極間に浮遊する検体溶液中の物質を検出部側に引き寄せることが可能となり、検出感度を向上可能となる。また、検出対象となる物質の電荷に応じて、検出対象となる物質が検出面に移動するような電界を発生させる結果、測定時間を短縮することが可能となる。
なお、以下では、数値範囲を「〜」を使用して示す場合、特に断りがない限り、下限と上限の数値をそれぞれ含むものとする。例えば、数値範囲「300〜500」は、特段の断りがない限り、下限が「300」を示し、上限が「500」を示す。
[バイオセンサの構造の一例]
開示のバイオセンサは、基板表面の状態変化を検出する検出手法に用いられる。例えば、開示のバイオセンサは、SPR(Surface Plasmon Resonance、表面プラズモン共鳴)装置による測定に用いられる測定セル、SAW(Surface Acoustic Wave、表面弾性波)センサ、QCM(Quartz Crystal Microbalance、水晶発振子マイクロバランス法)水晶センサなどである。開示のバイオセンサは、好ましくは、SAWセンサである。SAWセンサとしてバイオセンサを実現することで、バイオセンサを小型で簡単に実現可能となる。
以下では、開示のバイオセンサの構造の一例について、開示のバイオセンサがSAWセンサである場合を用いて詳細に説明する。SAWセンサとしてのバイオセンサ100は、実施形態の一例において、基板が上面に配置される第1のカバー部材を有する。また、バイオセンサ100は、第1のカバー部材と接合された第2のカバー部材を有する。すなわち、バイオセンサ100は、基板が上面に配置される第1のカバー部材と、基板を間に挟んで第1のカバー部材に接合された第2のカバー部材とを有する。
また、SAWセンサとしてのバイオセンサ100は、第1のカバー部材及び第2のカバー部材の少なくとも一方は、検体溶液が流入する流入口及び流入口から少なくとも基板表面上まで延びた溝部を有する。例えば、SAWセンサとしてのバイオセンサ100は、実施形態の一例において、第1のカバー部材が上面に凹部を有し、凹部が前記基板を収容し、第2のカバー部材が溝部を有する。
また、SAWセンサとしてのバイオセンサ100は、一対の電極を有する。一対の電極は、互いに間隔を開けて配置され、溝部によって検出部上に形成される空間に、検出部を通る電界を発生させる。例えば、一対の電極は、検出部の厚み方向の成分を有する電界を発生させる。例えば、一対の電極は、溝部によって検出部上に形成される空間と検出部とを間に挟んで検出部の厚み方向に設けられる。一対の電極の内の1つの電極である第1電極は、例えば、基板上に設けられる。また、一対の電極の内の他の電極である第2電極は、例えば、溝部の内壁の内第1電極と対向する位置に設けられる。また、検出部は、例えば、第1電極上に設けられる。
なお、以下では、特に言及しない限り、第1電極が、基板上に設けられる場合を用いて説明するが、これに限定されるものではない。また、以下では、第2電極が、溝部の内面に設けられる場合を用いて説明するが、これに限定されるものではない。すなわち、一対の電極は、溝部によって検出部上に形成される空間に、検出部を通る電界を発生させることが可能な位置であれば、任意の位置に配置して良い。例えば、第1電極が、基板の下面に設けられても良く、第2電極がカバー部材の上面に設けられても良い。また、例えば、第1電極と第2電極とを基板上に並べて配置してもよい。また、以下では、第2電極が第1電極と対向する位置に設けられる場合を用いて説明するが、これに限定されるものではない。
また、以下の例では、基板上に第1電極と間隔を空けて、溝部によって形成される空間に露出するとともに、検体溶液に対して反応性の低い材料からなる第3電極を設けている。第3電極は、電位差測定器を介して第1電極と電気的に接続されることで、参照電極として機能する。第3電極により、第1電極及び第2電極の間に安定して電圧を印加することができる。なお、第3電極は、例えば、第1塩化銀電極やカロメル電極とすれば検体溶液に対して反応性を低くすることができる。
また、SAWセンサとしてのバイオセンサ100は、実施形態の一例において、基板の表面に設けられており、検出部に向かって伝搬する弾性波を発生させる第1IDT(Inter Digital Transducer)電極を有する。また、バイオセンサ100は、基板表面に設けられており、検出部を通過した弾性波を受信する第2IDT電極を有する。また、バイオセンサ100は、第1IDT電極上に第1振動空間を設けて基板の上面に接合されており、第1IDT電極を第1振動空間内に密閉する第1中空部材を有する。また、バイオセンサ100は、第2IDT電極上に第2振動空間を設けて基板の上面に接合されており、第2IDT電極を第2振動空間内に密閉する第2中空部材を有する。
SAWセンサとしてのバイオセンサ100の構成の一例について、適宜図面を参照しつつ、詳細に説明する。なお、以下に説明する各図面において同じ構成部材には同じ符号を付すものとする。また、各部材の大きさや部材同士の間の距離などは模式的に図示しており、現実のものとは異なる場合がある。また、バイオセンサ100は、いずれの方向が上方又は下方とされても良いものであるが、以下では、便宜的に、直交座標系xyzを定義するとともにz軸方向の正側を上方として、上面、下面などの用語を用いるものとする。
図1〜図6に示すように、バイオセンサ100は、第1カバー部材1、第2カバー部材2及び検出素子3を有する。第1カバー部材1は、第1基板1a及び第1基板1a上に積層される第2基板1bを有する。第2カバー部材2は、第2基板1b上に積層される第3基板2a及び第3基板2a上に積層される第4基板2bを有し、第2電極62を有する。弾性表面波素子である検出素子3は、基板10、第1IDT電極11、第2IDT電極12、検出部13、第1電極61を有する。
第1カバー部材1と第2カバー部材2は互いに貼り合わされており、貼り合わされた第1カバー部材1と第2カバー部材2の内部に検出素子3が収容されている。図4の断面図に示すように、第1カバー部材1は上面に凹部5を有し、凹部5の中に検出素子3が配置されている。
第2カバー部材2は、図1に示すように、長手方向(x軸方向)の端部に検体溶液の入口である流入口14を有するとともに、流入口14から検出素子3の直上部分に向かって延びた溝部15を有している。なお、図1では溝部15の位置を示すために溝部15を破線で示している。また、第2カバー部材2は、溝部15の内壁の内第1電極61と対向する位置に、第2電極62を有する。
図2に第1カバー部材1及び第2カバー部材2の分解斜視図を示す。
第1カバー部材1を構成する第1基板1aは平板状であり、その厚みは、例えば0.1mm〜0.5mmである。第1基板1aの平面形状は概ね長方形状であるが、長手方向の一方端は外方に向かって突出した円弧状となっている。第1基板1aのx軸方向の長さは、例えば、1cm〜5cmであり、y軸方向の長さは、例えば1cm〜3cmである。
第1基板1aの上面には第2基板1bが貼り合わされる。第2基板1bは、平板状の板に凹部形成用貫通孔4を設けた平板枠状とされており、その厚みは、例えば、0.1mm〜0.5mmである。平面視したときの外形は、第1基板1aとほぼ同じであり、x軸方向の長さ及びy軸方向の長さも第1基板1aとほぼ同じである。
凹部形成用貫通孔4が設けられた第2基板1bを平板状の第1基板1aと接合することによって、第1カバー部材1に凹部5が形成されることとなる。すなわち、凹部形成用貫通孔4の内側に位置する第1基板1aの上面が凹部5の底面となり、凹部形成用貫通孔4の内壁が凹部5の内壁となる。
また第2基板1bの上面には、端子6及び端子6から凹部形成用貫通孔4まで引き回された配線7が形成されている。端子6は、第2基板1bの上面のx軸方向における他方の端部に形成されている。端子6が形成されている部分は、バイオセンサ100を外部の測定器(図示せず)に挿入したときに実際に挿入される部分であり、端子6を介して外部の測定器と電気的に接続されることとなる。また、端子6と検出素子3とは、配線7などを介して電気的に接続されている。そして、外部の測定器からの信号が端子6を介してバイオセンサ100に入力されるとともに、バイオセンサ100からの信号が端子6を介して外部の測定器に出力されることとなる。
第1基板1a及び第2基板1bからなる第1カバー部材1の上面には、第2カバー部材2が接合されている。第2カバー部材2は、第3基板2aと第4基板2bを有する。
第3基板2aは、第2基板1bの上面に貼り合わされている。第3基板2aは平板状であり、その厚みは、例えば、0.1mm〜0.5mmである。第3基板2aの平面形状は概ね長方形状であるが、第1基板1a及び第2基板1bと同様に長手方向の一方端は外方に向かって突出した円弧状となっている。第3基板2aのx軸方向の長さは、第2基板1bに形成された端子6が露出するように第2基板1bのx軸方向の長さよりも若干短くされており、例えば、0.8mm〜4.8cmである。y軸方向の長さは、例えば、第1基板1a及び第2基板1bと同様に1cm〜3cmである。
第3基板2aには切欠き8が形成されている。切欠き8は、第3基板2aの円弧状になっている一方端の頂点部分からx軸方向の他方端に向かって第3基板2aを切り欠いた部分である。切欠き8は、溝部15を形成するためのものである。第3基板2aの切欠き8の両隣には、第3基板2aを厚み方向に貫通する第1貫通孔16及び第2貫通孔17が形成されている。第3基板2aを第2基板1bに積層したときに、第1貫通孔16及び第2貫通孔17の内側には検出素子3と配線7との接続部分が位置するようになっている。第3基板2aの第1貫通孔16と切欠き8との間の部分は、後述するように溝部15と第1貫通孔16によって形成される空間とを仕切る第1仕切り部25となる。また、第3基板2aの第2貫通孔17と切欠き8との間の部分は、溝部15と第2貫通孔17によって形成される空間とを仕切る第2仕切り部26となる。
第3基板2aの上面には第4基板2bが貼り合わされる。第4基板2bは、平板状であり、その厚みは、例えば、0.1mm〜0.5mmである。平面視したときの外形は、第3基板2aとほぼ同じであり、x軸方向の長さ及びy軸方向の長さも第3基板2aとほぼ同じである。この第4基板2bが切欠き8が形成された第3基板2aと接合されることによって、第2カバー部材2の下面に溝部15が形成されることとなる。すなわち、切欠き8の内側に位置する第4基板2bの下面が溝部15の底面となり、切欠き8の内壁が溝部15の内壁となる。溝部15は、流入口14から少なくとも検出部13の直上領域まで延びており、断面形状は、例えば矩形状である。
第4基板2bには、第4基板2bを厚み方向に貫く第3貫通孔18が形成されている。第3貫通孔18は、第4基板2bを第3基板2aに積層したときに切欠き8の端部上に位置している。よって溝部15の端部は第3貫通孔18と繋がっている。この第3貫通孔18は、溝部15内の空気などを外部に放出するためのものである。
また、第4基板2bの下面の内、検出部13と対向する部分には、第2電極62が形成される。なお、第4基板2bの下面の内、検出部13と対向する部分は、溝部15の内壁の一部となる。また、併せて、第3基板2aと第4基板2bとのうち少なくとも一方の下面には、第2電極62の図示していない引き出し電極63が併せて形成される。第2電極62と引き出し電極63とは、例えば、スパッタリング法、蒸着法又はCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの薄膜形成法を用いて形成される。詳細な一例をあげて説明すると、第4基板2bの下面に金属層が形成された後、縮小投影露光機(ステッパー)とRIE(Reactive Ion Etching)装置とを用いたフォトリソグラフィー法等によるパターニングを実行することで、第2電極62と引き出し電極63とが形成される。
第1基板1a、第2基板1b、第3基板2a及び第4基板2bは、例えば、紙、プラスチック、セルロイド、セラミックスなどからなる。これらの基板は、すべて同じ材料によって形成することができる。これらの基板をすべて同じ材料で形成することによって各基板の熱膨張係数をほぼそろえることができるため、基板ごとの熱膨張係数の差に起因する変形が抑制される。また、検出部13には、生体材料が塗布されることがあるがその中には紫外線など外部の光によって変質しやすいものもある。その場合は、第1カバー部材1及び第2カバー部材2の材料として遮光性を有する不透明なものを用いると良い。一方、検出部13の外部の光による変質がほとんど起こらない場合は、溝部15が形成されている第2カバー部材2を透明に近い材料によって形成しても良い。この場合は、流路内を流れる検体溶液の様子を視認することができる。
次に検出素子3について説明する。図5は検出素子3の斜視図、図6は第1中空部材21及び第2中空部材22を外した状態における検出素子3の平面図である。
検出素子3は、基板10、基板10の上面に配置された第1電極61、第1電極61上に設けられた検出部13、第1IDT電極11、第2IDT電極12、第1引き出し電極19及び第2引き出し電極20、第3電極64を有する。
基板10は、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)単結晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)単結晶、水晶などの圧電性を有する単結晶の基板からなる。基板10の平面形状及び各種寸法は適宜に設定されて良い。一例として、基板10の厚みは、0.3mm〜1.0mmである。
第1IDT電極11は、図6に示すように1対の櫛歯電極を有する。各櫛歯電極は、互いに対向する2本のバスバー及び各バスバーから他のバスバー側へ延びる複数の電極指を有している。そして、1対の櫛歯電極は、複数の電極指が互いに噛み合うように配置されている。第2IDT電極12も第1IDT電極11と同様に構成されている。第1IDT電極11及び第2IDT電極12は、トランスバーサル型のIDT電極を構成している。
第1IDT電極11は所定の弾性表面波を発生させるためのものであり、第2IDT電極12は、第1IDT電極11で発生したSAWを受信するためのものである。第1IDT電極11で発生したSAWを第2IDT電極12が受信できるように第1IDT電極11と第2IDT電極12とは同一直線状に配置されている。第1IDT電極11及び第2IDT電極12の電極指の本数、隣接する電極指同士の距離、電極指の交差幅などをパラメータとして周波数特性を設計することができる。IDT電極によって励振されるSAWとしては、種々の振動モードのものが存在するが、検出素子3においては、例えば、SH波とよばれる横波の振動モードを利用している。
また、第1IDT電極11及び第2IDT電極12のSAWの伝搬方向(y軸方向)における外側にSAWの反射抑制のための弾性部材を設けても良い。SAWの周波数は、例えば、数メガヘルツ(MHz)から数ギガヘルツ(GHz)の範囲内において設定可能である。なかでも、数百MHzから2GHzとすれば、実用的であり、かつ検出素子3の小型化ひいてはバイオセンサ100の小型化を実現することができる。
第1IDT電極11は、第1引き出し電極19と接続されている。第1引き出し電極19は、第1IDT電極11から検出部13とは反対側に引き出され、第1引き出し電極19の端部19eは第1カバー部材1に設けた配線7と電気的に接続されている。また、第2IDT電極12は、第2引き出し電極20と接続されている。第2引き出し電極20は、第2IDT電極12から検出部13とは反対側に引き出され、第2引き出し電極20の端部20eは、配線7と電気的に接続されている。
第1IDT電極11、第2IDT電極12、第1引き出し電極19及び第2引き出し電極20は、例えば、アルミニウム、アルミニウムと銅との合金などからなる。またこれらの電極は、多層構造としても良い。多層構造とする場合は、例えば、1層目がチタン又はクロムからなり、2層目がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる。
第1IDT電極11及び第2IDT電極12は、保護膜(図示せず)によって覆われている。保護膜は第1IDT電極11及び第2IDT電極12の酸化防止などに寄与するものである。保護膜は、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化珪素、又はシリコンによって形成されている。保護膜の厚さは、例えば、第1IDT電極11及び第2IDT電極12の厚さの1/10程度(10〜30nm)である。保護膜は、第1引き出し電極19の端部19e及び第2引き出し電極20の端部20eを露出するようにして基板10の上面全体にわたって形成されて良い。
第1IDT電極11と第2IDT電極12との間には、第1電極61及び検出部13が設けられる。第1電極61は、例えば、クロム及びクロム上に成膜された金の2層構造を有する。検出部13は、第1電極61の表面又は基板10表面に設けられ、核酸やペプチドからなるアプタマーなどが固定される。なお、核酸とは、例えば、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)やRNA(Ribo Nucleic Acid)、PNA(Peptide Nucleic Acid)などである。検体溶液に標的物質が含まれている場合には、検体溶液が検出部13と接触すると、検体溶液中の標的物質が検出部13に固定されたアプタマーと結合し、基板表面の状態が変化することになる。
図4B〜図6に示す例では、y軸方向に沿って配置された第1IDT電極11、第2IDT電極12及び検出部13を1セットとすると、バイオセンサ100にはそのセットが2つ設けられている。例えば、検出部13−1と検出部13−2とが設けられている。これにより、一方の検出部13に固定されたアプタマーを異ならせることによって、1つのバイオセンサで2種類の検出を行うことが可能となる。また、2つ設けられた検出部13の内1つについて、他方に固定されたアプタマーを固定しないことで、リファレンスとして用いても良い。図4B〜図6に示す例では、検出部13−2をリファレンスとして用いる場合を示した。
また、図4B〜図6に示す例では、第1電極61の全面に検出部13が設けられる場合を例に示したが、これに限定されるものではない。例えば、第1電極61の表面の一部にのみ検出部13が設けられても良く、第1電極61の表面と基板10の表面との両方にまたがって設けられても良い。また、検出部13は、第1電極61が設けられた場所とは別の場所に設けられても良い。
また、第1電極61は、引き出し電極と接続される。図5及び図6に示す例では、第1電極61及び第3電極64がそれぞれ、第2引き出し電極20と接続される場合を例に示したが、これに限定されるものではなく、端子の配置に応じて第1引き出し電極19と接続されても良く、他の引き出し電極と接続されても良い。なお、第1電極61は、任意の手法を用いて基板10上に形成されて良く、例えば、第2電極62と同様の手法を用いて形成される。
このように、第1電極61、第2電極62及び第3電極64は、それぞれ、引き出し電極と接続されている。この結果、第1電極61と接続された引き出し電極と、第2電極62と接続された引き出し電極とに電圧をかけることで、第1電極61と第2電極62との間に電界を発生させることが可能となる。第1電極61及び第2電極62に印加する電圧は、標的物質の電荷、ならびに検体溶液中に含まれる物質の酸化還元電位、水素過電圧、酸素過電圧などを考慮して決定する。また、第3電極64と接続された引き出し電極と、第1電極61と接続された引き出し電極との間に、高インピーダンスの電位差(電圧差)を計測する計測器を接続することで、第3電極を参照電極として用いることができる。これにより、第1電極61及び第2電極62に印加する電圧を安定させることができる。
ここで、第1電極61と第2電極62との間に発生させる電界の向きを、検出対象となる物質の電荷に応じて、検出対象となる物質が検出部13に移動する向きに設定するときには、バイオセンサの検出感度を向上可能となる。
なお、図4B〜図6に示す例では、第1電極61が、2つある検出部13の内一方にのみ設けられる場合を示した。具体的には、2つの検出部13は、共に、金属上に設けられる一方、検出部13−1の下部に設けられた金属のみが第2引き出し電極20と接続され、第1電極61として機能する場合を例に示した。ただし、これに限定されるものではなく、第1電極61が2つある検出部13の両方に設けられても良い。なお、2つある検出部13の内一方に第1電極61が設けられる場合には、第1電極61は、リファレンスではない検出部13の下部に設けられる。
第1IDT電極11は、図5に示すように第1中空部材21によって覆われている。第1中空部材21は、基板10の上面に位置し、内部は中空となっている。第1中空部材21が基板10の上面に載置された状態における第1中空部材21の中空部が第1振動空間23である。第1IDT電極11は第1振動空間23内に密閉されている。これにより第1IDT電極11が外気及び検体溶液と隔離され、第1IDT電極11を保護することができる。また、第1振動空間23が確保されることによって第1IDT電極11において励振されるSAWの特性の劣化を抑えることができる。
同様にして第2IDT電極12は、第2中空部材22によって覆われている。第2中空部材22も第1中空部材21と同じく基板10の上面に位置し、図4Aに示すように内部は中空となっている。第2中空部材22が基板10の上面に載置された状態における第2中空部材22の中空部が第2振動空間24である。第2IDT電極12は第2振動空間24内に密閉されている。これにより第2IDT電極12が外気及び検体溶液と隔離され、第2IDT電極12を保護することができる。また、第2振動空間24が確保されることによって第2IDT電極12において受信されるSAWの特性の劣化を抑えることができる。
なお、振動空間の形状は、直方体状であっても良く、断面視したときにドーム状となっても良く、平面視したときに楕円状となっても良く、IDT電極の形状や配置などに合わせて任意の形状として良い。
第1中空部材21は、x軸方向に沿って配置された2つの第1IDT電極11を取り囲むようにして基板10の上面に固定された環状の枠体と、枠体の開口を塞ぐように枠体に固定された蓋体とからなる。このような構造は、例えば、感光性の樹脂材料を使用して樹脂膜を形成し、この樹脂膜をフォトリソグラフィー法などによりパターニングすることによって形成することができる。第2中空部材22も同様にして形成することができる。
なお、バイオセンサ100においては、2つの第1IDT電極11を1つの第1中空部材21で覆っているが、2つの第1IDT電極11を別個の第1中空部材21により覆うようにしても良い。また、2つの第1IDT電極11を1つの第1中空部材21で覆い、2つの第1IDT電極11の間に仕切りを設けるようにしても良い。第2IDT電極12についても同様に2つの第2IDT電極12を別個の第2中空部材22で覆っても良いし、1つの第2中空部材22を使用して2つの第2IDT電極12の間に仕切りを設けるようにしても良い。
SAWを利用した検出素子3において検体溶液の検出を行うには、まず、第1IDT電極11に、配線7や第1引き出し電極19などを介して外部の測定器から所定の周波数の交流電圧を印加する。そうすると、第1IDT電極11の形成領域において基板10の表面が励振され、所定の周波数を有するSAWが発生する。発生したSAWはその1部が検出部13に向かって伝搬し、検出部13を通過した後、第2IDT電極12に到達する。ここで、検出部13では、検体溶液に標的物質が含まれている場合には、標的物質との反応等に起因した変化が基板表面に起こる。この結果、検出部13の下を通過するSAWの位相などの特性が変化する。このように特性が変化したSAWが第2IDT電極12に到達すると、それに応じた信号が第2IDT電極12から出力される。この信号が第2引き出し電極20、配線7などを介して外部に出力され、それを位相などの特性変化に応じた電圧を出力する信号処理回路を介して外部の測定器で読み取ることによって検体溶液の性質や成分を調べることができる。
検体溶液を検出部13に誘導させるためにバイオセンサ100では毛細管現象を利用する。具体的には、第2カバー部材2が第1カバー部材1と接合されることによって、第2カバー部材2の下面に形成された溝部15の部分が細長い管となるため、検体溶液の種類、第1カバー部材1及び第2カバー部材2の材質などを考慮して溝部15の幅あるいは径などを所定の値に設定することによって溝部15により形成される細長い管に毛細管現象を生じさせることができる。溝部15の幅(y軸方向の寸法)は、例えば、0.5mm〜3mmであり、深さ(z軸方向の寸法)は、例えば、0.1mm〜0.5mmである。なお、溝部15は検出部13を超えて延びた部分である延長部15eを有し、第2カバー部材2には延長部15eに繋がった第3貫通孔18が形成されている。検体溶液が流路内に入ってくると流路内に存在していた空気は第3貫通孔18から外部へ放出される。
このような毛細管現象を生じる管を第1カバー部材1及び第2カバー部材2からなるカバー部材に形成しておくことによって、流入口14に検体溶液を接触させれば検体溶液が溝部15を流路としてカバー部材の内部に吸い込まれていく。よってバイオセンサ100によれば、それ自体が検体溶液の吸引機構を備えているため、ピペットなどの器具を使用することなく検体溶液の吸引を行うことができる。また、流入口14がある部分は丸みを帯びており、その頂点に流入口14を形成しているため、流入口14を判別しやすくなっている。
ところで溝部15によって形成される検体溶液の流路は、深さが0.3mm程度であるのに対し、検出素子3は厚みが0.3mm程度であり、流路の深さと検出素子3の厚さがほぼ等しい。そのため、流路上に検出素子3をそのまま置くと流路が塞がれてしまう。そこでバイオセンサ100においては、図4に示すように、検出素子3が実装される第1カバー部材1に凹部5を設け、この凹部5の中に検出素子3を収容することによって検体溶液の流路が塞がれないようにしている。すなわち、凹部5の深さを検出素子3の厚みと同程度にし、その凹部5の中に検出素子3を実装することによって、溝部15によって形成される流路を確保することができる。
図3は、第2カバー部材2の第4基板2bを外した状態における斜視図であるが、検体溶液の流路が確保されているため、毛細管現象によって流路内に流入した検体溶液を検出部13までスムーズに誘導することができる。
検体溶液の流路を十分に確保する観点から、図4に示すように、基板10の上面の凹部5の底面からの高さは、凹部5の深さと同じか又はそれよりも小さくしておくと良い。例えば、基板10の上面の凹部5の底面からの高さを凹部5の深さと同じにしておけば、流入口14から溝部15の内部をみたときに流路の底面と検出部13とをほぼ同一高さとすることができる。バイオセンサ100においては、基板10の厚みを凹部5の深さよりも小さくし、第1中空部材21及び第2中空部材22の凹部5の底面からの高さが凹部5の深さとほぼ同じになるようにしている。第1中空部材21及び第2中空部材22の凹部5の底面からの高さを凹部5の深さより大きくすると、第3基板2aの第1仕切り部25及び第2仕切り部26を他の部分より薄く加工する必要があるが、第1中空部材21及び第2中空部材22の凹部5の底面からの高さを凹部5の深さとほぼ同じにしておくことによって、そのような加工の必要がなくなり生産効率が良い。
凹部5の平面形状は、例えば、基板10の平面形状と相似の形状とされており、凹部5は基板10よりも若干大きい。より具体的には、凹部5は基板10を凹部5に実装したときに、基板10の側面と凹部5の内壁との間に100μm程度の隙間が形成されるような大きさである。
検出素子3は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂などを主成分とするダイボンド材によって凹部5の底面に固定されている。第1引き出し電極19の端部19eと配線7とは、例えば、Auなどからなる金属細線27によって電気的に接続されている。第2引き出し電極20の端部20eと配線7との接続も同様である。なお、第1引き出し電極19及び第2引き出し電極20と配線7との接続は金属細線27によるものに限らず、例えば、Agペーストなどの導電性接着材によるものでも良い。第4基板2bの下面に形成された引き出し電極63の端部と配線7との接続も同様である。この場合には、金属細線に代えて導電性接着剤により接続する。
第1引き出し電極19、第2引き出し電極20及び引き出し電極63と配線7との接続部分には空隙が設けられているため、第2カバー部材2を第1カバー部材1に貼り合わせた際に金属細線27の破損が抑制される。この空隙は、第3基板2aに第1貫通孔16及び第2貫通孔17を設けておくことによって簡単に形成することができる。また、第1貫通孔16と溝部15との間に第1仕切り部25が存在することによって、溝部15を流れる検体溶液が第1貫通孔16により形成された空隙に流れ込むのを抑制することができる。これにより、複数の第1引き出し電極19の間で検体溶液による短絡が発生するのを抑制することができる。同様に、第2貫通孔17と溝部15との間に第2仕切り部26が存在することによって、溝部15を流れる検体溶液が第2貫通孔17により形成された空隙に流れ込むのを抑制することができる。これにより、複数の第2引き出し電極20の間で検体溶液による短絡が発生するのを抑制することができる。
第1仕切り部25は第1中空部材21上に位置し、第2仕切り部26は第2中空部材22上に位置している。よって、検体溶液の流路はより厳密にいえば、溝部15だけでなく第1中空部材21の溝部側の側壁と第2中空部材22の溝部側の側壁によっても規定される。第1貫通孔16及び第2貫通孔17により形成される空隙への検体溶液の漏れを防止する観点からは、第1仕切り部25は第1中空部材21の上面に、第2仕切り部26は第2中空部材22の上面にそれぞれ接触させておいた方が良いが、バイオセンサ100では、第1仕切り部25の下面と第1中空部材21の上面との間及び第2仕切り部26の下面と第2中空部材22の上面との間に隙間を有するようにしている。この隙間は、例えば、10μm〜60μmである。このような隙間を設けておくことによって、例えば、バイオセンサ100を指でつまんだ際などにこの部分に圧力が係っても、隙間によって圧力を吸収し、第1中空部材21及び第2中空部材22に直接圧力が係るのを抑制することができる。その結果、第1振動空間23及び第2振動空間24が大きく歪むのを抑制することができる。また、検体溶液は通常ある程度の粘弾性を有するため、隙間を10μm〜60μmにしておくことによって検体溶液がこの隙間に入り込みにくくなり、検体溶液が第1貫通孔16及び第2貫通孔17によって形成される空隙に漏れるのを抑制することもできる。
第1仕切り部25の幅は、第1振動空間23の幅より広くされている。換言すれば、第1中空部材21の枠体上に第1仕切り部25の側壁が位置するようにされている。これにより、外部からの圧力によって第1仕切り部25が第1中空部材21に接触した場合でも、第1仕切り部25が枠部により支えられるため、第1中空部材21の変形を抑制することができる。同様の理由により、第2仕切り部26の幅も第2振動空間24の幅より広くしておくと良い。
第1貫通孔16及び第2貫通孔17によって形成される空隙内に位置する第1引き出し電極19、第2引き出し電極20、引き出し電極63、金属細線27及び配線7は絶縁性部材28によって覆われている。第1引き出し電極19、第2引き出し電極20、引き出し電極63、金属細線27及び配線7が絶縁性部材28で覆われていることによって、これらの電極などが腐食するのを抑制することができる。また、この絶縁性部材28を設けておくことによって、検体溶液が第1仕切り部25と第1中空部材21との隙間、あるいは第2仕切り部26と第2中空部材22との隙間に入り込んだ場合でも、絶縁性部材28によって検体溶液が堰き止められる。よって、検体溶液の漏れによる引き出し電極間の短絡などを抑制することができる。なお、絶縁性部材28は空隙内の全てに充填されている例を用いて説明したが、一部に充填されていない空間が残っていてもよい。
上述したように、上述のバイオセンサ100によれば、検出素子3を第1カバー部材1の凹部5に収容したことによって、流入口14から検出部13に至る検体溶液の流路を確保することができ、毛細管現象などによって流入口から吸引された検体溶液を検出部13まで流すことができる。すなわち、厚みのある検出素子3を用いつつ、それ自体に吸引機構を備えたバイオセンサ100を提供することができる。
また、上述のバイオセンサ100によれば、検出部13の厚み方向に1対の電極が設けられており、溝部によって前記検出部上に形成される空間に電界を発生させることが可能となる。この結果、検出感度を向上可能となる。具体的には、検出対象となる物質の電荷に応じて、検出対象となる物質が検出面に移動するような電界を発生させるときには、検出対象となる物質と検出面とが接触する確率を高くすることができ、検出感度を向上可能となる。
例えば、蛋白質は、pHによって、等電点からプラス又はマイナスの電荷を有する。このことを踏まえ、検出対象となる蛋白質の電荷に応じて1対の電極から電界を発生させることで、検出対象となる蛋白質が検出部13の表面に近づけることが可能となる。この結果、検出対象となる物質と検出面とが接触する確率を高くすることができ、検出感度を向上可能となる。
また、逆に、電界を発生させることにより検出対象以外の物質を検出部13の表面から遠ざけることも可能となる。すなわち、検出対象以外の物質の電荷に応じて、検出対象以外の物質が検出面から離れるように移動させるような電界を発生させてもよい。その場合には、検出対象以外の物質が非特異的に検出面に付着して検出面の状態変化に影響を与えることを抑制することができる。その結果、SN比が向上し検出感度を向上可能となる。
さらに、上述の2種類の電界印加を所定の手順で順次行うようにしてもよい。具体的には、検体溶液が流入したことを検出面の状態変化で検知したときから、検出対象となる物質が検出面に近づくような電圧を第1電極及び第2電極間に印加する。次に、検出対象となる物質の検出面への結合に伴う出力信号の変化が特定の状態となったときに第1電極及び第2電極間に、検出面に非特異的に付着する検出対象以外の物質が検出面から遠ざかるような電圧を印加すればよい。
このような電圧の印加状態の制御(一連のシーケンス制御)は、バイオセンサ100を接続して信号を読み取る検出器本体側で自動制御することができる。
さらに、検出対象以外の物質の電荷に応じた電界を発生させる例を、以下に説明する。まず、検体溶液中に、表面をプラスもしくはマイナスに帯電させたラテックス粒子や金(ナノ)粒子を含有させる。このラテックス粒子や金粒子は、検出対象の物質を特異的に捕捉することができるものである。ただし、検出面に配置された検出対象の物質を捕捉させるための構造とは異なるものとする。これにより、検出面に捕捉された検出対象の物質に対して、ラテックス粒子や金粒子を作用させると、検出面の検出対象の物質のみにラテックス粒子や金粒子が付着する。このため、検出対象の物質の濃度が極僅かの場合でも検出にともなう信号強度が増加し、検出感度が向上する。ここで、第1電極及び第2電極により、ラテックス粒子や金(ナノ)粒子が検出面から遠ざかるような向きに電界を印加することにより、検出対象の物質に付着しない余剰のラテックス粒子や金粒子を除去することができる。すなわち、いわゆるELISAなどで行なわれているB/F分離操作を追加で行なうことなしに、簡便に検出対象物質に付着しないラテックス粒子や金(ナノ)粒子を除去することができる。
なお、ラテックス粒子や金粒子は、検体溶液中に予め混入させた後にバイオセンサ100に導入してもよいし、流路に遊離可能な状態で付着させておくことで、バイオセンサ100に導入された検体溶液に接触させることで、検体溶液中に含ませてもよい。
図7は、バイオセンサ100の変形例を示す断面図である。図7の断面図は、図4Aに示す断面と対応している。
この変形例は、端子6の形成位置を変えたものである。上述した実施形態では、端子6を第2基板1bの長手方向の他方端部に形成していたが、この変形例では第4基板2bの上面に形成している。端子6と配線7とは第2カバー部材2を貫通する貫通導体29によって電気的に接続されている。貫通導体29は、例えば、Agペースト、めっきなどからなる。また端子6は、第1カバー部材1の下面側に形成することも可能である。よって、端子6は、第1カバー部材1及び第2カバー部材2の表面における任意の位置に形成可能であり、使用される測定器に合わせてその位置を決めることができる。
図8は、バイオセンサ100の別の変形例を示す断面図である。この断面図は図4Bに示す断面と対応している。
この変形例では、溝部15によって形成された流路の突き当たりに検体溶液を所定の速度で吸収する吸収材30が設けられている。このような吸収材30を設けておくことによって余分な検体溶液を吸収し、検出部13上を流れる検体溶液の量を一定化して安定した測定を行うことができる。吸収材30は、例えば、スポンジなど液体を吸収することができる多孔質状の材料からなる。
なお、上述したバイオセンサ100の構造は一例であり、これに限定されるものではなく、任意のバイオセンサ100を用いて良い。例えば、金属膜を用いずに圧電基板である基板10の表面における第1IDT電極11と第2IDT電極12との間の領域を検出部13としても良い。この場合は、基板10の表面に検体溶液を直接付着させることにより、検体溶液の粘性などの物理的性質を検出する。より具体的には、検出部13上の検体溶液の粘性などが変化することによるSAWの位相変化を読み取ることとなる。
また、例えば、上述した実施形態においては、検出素子3が弾性表面波素子からなるものについて説明したが、検出素子3はこれに限らず、例えば、表面プラズモン共鳴が起こるように光導波路などを形成した検出素子3を用いても良い。この場合は、例えば、検出部における光の屈折率の変化などを読み取ることとなる。その他、水晶などの圧電基板に振動子を形成した検出素子3を用いることもできる。この場合は、例えば、振動子の発振周波数の変化を読み取ることとなる。
また、例えば、検出素子3として、同じ基板上に複数種類のデバイスを混在させても構わない。例えば、SAW素子の隣に酵素電極法の酵素電極を設けても良い。この場合は、抗体やアプタマーを用いた免疫法に加えて酵素法での測定も可能となり、1度に検査できる項目を増やすことができる。
また、例えば、上述した実施形態においては、第1カバー部材1が第1基板1a及び第2基板1bにより形成され、第2カバー部材2が第3基板2a及び第4基板2bにより形成されている例を示したが、これに限らずいずれかの基板同士が一体化されたもの、例えば、第1基板1aと第2基板1bが一体化された第1カバー部材1を用いても良い。
また、上述の例では、第3電極を参照電極として設けたが、第3電極の機能を第2電極にもたせてもよい。その場合には、第2電極を構成する材料を検体溶液に対して反応性の低いものとする。
また、例えば、上述した実施形態においては、検出素子3が1個設けられている例について説明したが、検出素子3を複数個設けても良い。この場合、検出素子3ごとに凹部5を設けても良いし、すべての検出素子3を収容できるような長い凹部5を形成するようにしても良い。
また、溝部15は、第1のカバー部材1と第2のカバー部材2とのいずれに設けられても良く、両方に設けられても良い。例えば、第1のカバー部材1と第2のカバー部材2との両方に溝を設けることで流路を形成しても良く、第1のカバー部材1と第2のカバー部材2との片方に溝を設けることで流路を形成しても良い。
また、例えば、上述した実施形態においては、基板10が第1のカバー部材1上に設けられ、第1のカバー部材1と第2のカバー部材2とが接合される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、基板10に直接カバー部材を接合することで流路を形成しても良い。
図9〜図10を用いて、基板10にカバー部材52が接合される場合について説明する。図9は、基板にカバー部材が接合される場合の一例について説明する平面図である。図9の平面図は、xy平面を示す平面図である。図9〜図10を用いて説明する場合には、基板10に接合された枠体51により基板10の表面からカバー部材52を間隔を開けて配置することで流路を形成する場合を用いて説明するが、これに限定されるものではない。例えば、カバー部材そのものに溝を設けて、カバー部材を直接基板10の上面に設けてもよいし、基板10の上面に設けられるカバー部材と基板10との両方に溝を設けることで流路を形成しても良く、基板10に溝を設けることで流路を形成しても良い。
図9に示すように、基板10は、第1電極61,第3電極64,および2つの検出部13−1,13−2を有し、x軸方向に伸びた凸部51−1〜凸部51−4を有する。図9に示す例では、基板10の基板表面の内、部分54と部分55との下部に、第1IDT電極11と第2IDT電極12とが設けられる。図9に示す例では、凸部51は4つあり、それぞれ平行して配置されることで、基板表面の内、検出部13が設けられた部分と、部分54又は部分55が設けられた部分とが区分される場合を示した。ただし、これに限定されるものではなく、4つある凸部51は、平行に配置されていなくても良く、図9に示す例において凸部51−1及び凸部51−4がなくても良い。
ここで、凸部51−1〜凸部51−4は、例えば、フォトリソグラフィーで形成される。より詳細な一例をあげると、任意のレジストで基板10の基板表面を覆った後に、凸部51−1〜凸部51−4が形成されるように不要なレジストを除去することで、凸部51−1〜凸部51−4が形成される。凸部51−1〜凸部51−4のz軸方向における長さは、任意の長さで良く好ましくは、30μm〜100μmである。
図10は、基板にカバー部材が接合される場合の一例について説明する断面図である。図10に示す断面図は、yz平面における断面図である。図10の(1)に示す例では、基板10は、基板表面に第1IDT電極11と第2IDT電極12とを有する。また、基板10の基板表面は、各電極及び配線の酸化防止などに寄与する保護膜50に覆われている。
保護膜50は、各電極及び配線の酸化防止などに寄与するものである。保護膜50は、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化珪素、又はシリコンなどからなる。例えば、保護膜50は、二酸化珪素(SiO2)である。
保護膜50は、引き出し電極を露出するようにして、基板10の上面全体にわたって形成される。第1IDT電極11及び第2IDT電極12が保護膜50によって被覆されることで、IDT電極が腐食するのを抑制することができる。
保護膜50の厚さは、例えば100nm〜10umである。なお、保護膜50は必ずしも基板10の上面全体にわたって形成する必要はなく、例えば、引き出し電極を含む基板10の上面の外周に沿った領域が露出するように基板10の上面中央付近のみを被覆するように形成しても良い。また、図9や図10に示す例では、保護膜50を用いる場合を例に示したが、これに限定されるものではなく、保護膜50を用いなくても良い。
短絡電極42は、基板10の上面の内SAWの伝搬路となる部分を電気的に短絡させるためのものである。短絡電極42を設けることで、SAWの種類によってはSAWの損失を小さくすることができる。なお、SAWとして特にリーキー波を使用した場合に、短絡電極42による損失抑制効果が高いと考えられる。
短絡電極42は、例えば、第1IDT電極11から第2IDT電極12へ向かうSAWの伝搬路に沿って伸びた長方形状とされる。短絡電極42のSAWの伝搬方向と直交する方向(x軸方向)における幅は、例えば、第1IDT電極11の電極指の交差幅と同じである。また、短絡電極42のSAWの伝搬方向と平行な方向(y軸方向)における第1IDT電極側の端部は、第1IDT電極11の端部に位置する電極指の中心からSAWの半波長分だけ離れた場所に位置している。同様にして、短絡電極42のy軸方向における第2IDT電極12側の端部は、第2IDT電極12の端部に位置する電極指の中心からSAWの半波長分だけ離れた場所に位置する。
ここで、第1IDT電極11と第2IDT電極12との電極指の本数、隣接する電極指同士の距離、電極指の交差幅などをパラメータとして、周波数特性を設計することが可能である。IDT電極によって励振されるSAWとしては、レイリー波、ラブ波、リーキー波などがある。なお、第1IDT電極11のSAWの伝搬方向における外側の領域にSAWの反射抑制のための弾性部材を設けても良い。SAWの周波数は、例えば、数メガヘルツ(MHz)から数ギガヘルツ(GHz)の範囲内において設定可能である。なかでも、数百MHzから2GHzとすれば、実用的であり、かつ基板10の小型化ひいてはバイオセンサ100Aの小型化を実現することが可能となる。
短絡電極42は、電気的に浮き状態としても良いし、グランド電位用の引き出し電極を設け、これに接続してグランド電位としても良い。短絡電極42をグランド電位とした場合には、第1IDT電極11と第2IDT電極12との間の電磁結合による直達波の伝搬を抑制することができる。
短絡電極42は、例えば、アルミニウム、アルミニウムと銅との合金などからなる。またこれらの電極は、多層構造としても良い。多層構造とする場合は、例えば、1層目がチタン又はクロムからなり、2層目がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる。
また、基板10は、基板表面を覆う保護膜50上に、第1電極61,検出部13、第2引き出し電極20の端部20eと接続するための導電線が形成された後に凸部51−1〜凸部51−4を形成する。すなわち、基板10は、基板表面を覆う保護膜50上に、第1電極61,検出部13、第2引き出し電極20の端部20eと接続するための導電線,および凸部51−1〜凸部51−4を有する。
ここで、図10の(2)に示すように、検出部13を有する基板10上にカバー部材52が接合されることで、流路と振動空間とが形成される。具体的には、基板10に設けられた凸部51−1〜凸部51−4と、カバー部材52とが接合される。この結果、検体溶液を検出部13に導く溝部が形成されるとともに、IDT電極上に振動空間が形成される。
凸部51−1〜凸部51−4とカバー部材52との接合は、任意の手法を用いて良く、例えば、紫外線接着剤で接合して良い。カバー部材52は任意の材料を用いて形成して良く、好ましくは、親水性の材料であり、より好ましくは、親水性フィルムである。また、カバー部材52として親水性を有さない材料を用いて、流路側に面する表面を親水化処理してもよい。
カバー部材52の流路に臨む表面には、予め、第2電極62,引き出し電極63が形成されている。そして、カバー部材52を凸部51と接続するときに、カバー部材52に形成された引き出し電極63と凸部51−4の上面から基板10の表面にかけて形成された引き出し電極63とを電気的に接続させることで、外部電極との接続を可能としている。
なお、例えば、検出部13に対して、任意の処理を行っても良い。例えば、検出部13に物質が付着しないための処理を行っても良い。例えば、DNAなどの核酸は、マイナスに帯電していることを踏まえ、検出部13の金属膜を任意の手法でマイナスに帯電させておくことで、DNAなどの核酸が付着することを防止しても良い。また、同様に、金にはDNAなどの核酸が付着する傾向があることを踏まえ、リファレンスとして用いる検出部13の金属膜として、金以外の金属で形成された金属膜を用いても良い。また、図10に示す例では、引き出し電極63が、基板10とカバー部材52との両方に設けられて実現される場合を例に示したが、これに限定されるものではなく、カバー部材52にのみ設けられても良い。
また、図9,10に示す例では、カバー部材52の主面のうち、流路に臨む側の主面に第2電極62を形成したが、反対側の主面に設けてもよい。この場合には、カバー部材52を凸部51と接続する前に第2電極62を形成してもよいし、接合後に形成してもよい。
さらに、図9,10に示す例では、第1電極61及び第2電極62が流路の内部に面するように配置された例を説明したが、保護膜50の下側に第1電極61を形成し、カバー部材52の流路に臨む側の主面と反対側の主面に第2電極62を形成してもよい。
また、図9,10の凸部51−1〜51−4に代えて、部分55を露出するような貫通孔を有し、凸部51−1が配置された領域から凸部51−2が配置された領域まで連続的に覆う幅広の凸部と、部分54を露出するような貫通孔を有し、凸部51−3が配置された領域から凸部51−4が配置された領域まで連続的に覆う幅広の凸部と、を用いてもよい。このような構成とすることにより、凸部の上面に平面領域を多く設けることができるので、接続電極等を引き回すことが可能となる。
また、図9,10に示す例では、短絡電極を設けた例を用いて説明したが、短絡電極は必須ではなく、省略してもよい。
上述のバイオセンサは、例えば、癌マーカ等の従来からの医療系の用途に加えて、疲労やアンチエージングマーカ等、美容や若さの維持といった一般用途で利用可能である。ここで、高感度トランスデューサとしてのSAWチップを使い捨てセンサとして埋込むことで、過酸化水素源を簡単に検出でき、かつ、使い捨てに適した軽薄短小なセンサとすることが可能となる。
また、例えば、生体物質との作用部であるSAWの伝搬路と電気信号への変換部であるIDT電極は、1つの基板上に微細に作成することができる。この結果、バイオセンサ自体を非常に小さくすることが可能となり、また、ウェハ工程等で大量生産することも可能であり、使い捨て型のセンサチップを簡単に実現可能となる。
また、例えば、SAWの検出回路は、多くの無線端末やタブレット端末内の通信装置に採用されている回路構成と同様であり、上述のバイオセンサの検出回路を無線端末やタブレット端末などの電子機器に簡単に接続することも可能である。
[検出手法の実施形態]
開示の検出手法は、1つの実施形態において、上述のバイオセンサ100の検出部13に検体溶液を接触させる接触工程を含む。例えば、検体溶液をそのまま流入口14から流路内に入れることで、検体溶液を流入口14から溝部15を介して検出部13に導くことで、検出部13と接触させる。
また、開示の検出手法は、接触工程において検体溶液が接触した検出部13の表面の状態変化を検出することで、検出処理を実行する検出工程を含む。
ここで、基板表面の状態変化とは、検出対象となる物質が検出部13と結合したり付着したりすることに起因した質量変化や誘電率変化、粘弾性変化、伝播特性変化、共振周波数変化などである。例えば、SPR装置を用いて測定を行う場合には、検出対象となる物質が検出部13と結合すると、基板表面の質量や誘電率が変化し、この変化に起因するSPR角度変化を発生する。この場合、基板表面の状態変化とは、検出対象となる物質の付着に起因する質量変化や誘電率変化となり、SPR角度変化を検出することで基板表面の状態変化が検出される。また、SAWセンサを用いる場合には、基板表面の質量変化や粘弾性変化に起因する伝播特性変化が発生する。この場合、基板表面の状態変化とは、検出対象となる物質の付着に起因する質量変化や粘弾性変化であり、伝播特性変化を検出することで基板表面の状態変化が検出される。また、QCM測定装置を用いる場合には、基板表面の質量変化に起因する共振周波数変化が発生する。この場合、基板表面の状態変化とは、検出対象となる物質の付着に起因する質量変化であり、共振周波数変化を検出することで基板表面の状態変化が検出される。
[検出システム、検出装置の実施形態]
開示の検出システムは、1つの実施形態において、上述のバイオセンサと、検体溶液がバイオセンサの検出部13の表面に接触したことによる検出部13の表面の状態変化を検出することで検出処理を実行する検出装置とを有する。
検出装置は、上述したバイオセンサを用いた任意の検出処理を実行する装置である。検出装置は、例えば、SPR装置、SAWセンサの制御装置、QCM測定装置などである。検出装置は、好ましくは、SAWセンサの制御装置である。開示の検出装置としてのSPR装置、SAWセンサの制御装置、QCM測定装置は、上述のバイオセンサを用いて測定ができれば任意の装置を用いて良く、公知の装置をそのまま使用しても良く、適宜改造した上で用いても良い。