詳細な説明
本発明の側面は、遺伝子サイレンシングに関与する方法および組成物に関する。本発明は、少なくとも部分的に、sd-rxRNAの網膜下および硝子体内注射を含む眼への送達が、網膜色素上皮層を含む網膜中の全ての細胞層による効率的な分布および取り込みをもたらすという、驚くべき発見に基づく。sd-rxRNAに関して、従来のRNAi化合物に関するものよりも劇的により良好な網膜による取り込みおよび分布が観察される。したがって、sd-rxRNAは、眼の状態または障害の処置において多大な可能性を有する新たなクラスの治療用RNAi分子を表わす。
sd-rxRNA分子
本発明の側面は、sd-rxRNA分子に関する。本明細書において用いられる場合、「sd-rxRNA」または「sd-rxRNA分子」とは、2009年9月22日に出願されたPCT公開番号WO2010/033247(出願番号PCT/US2009/005247)、表題「REDUCED SIZE SELF-DELIVERING RNAI COMPOUNDS」、において記載され、これから参考として組み込まれるもののなどの、自己送達性RNA分子に関する。簡単に述べると、sd-rxRNA(sd-rxRNAnanoとしてもまた言及される)は、単離された非対称二本鎖核酸分子であって、最短で16ヌクレオチドの長さを有するガイド鎖、および8〜18ヌクレオチドの長さのパッセンジャー鎖を含み、ここで、前記二本鎖核酸分子は、二本鎖領域と一本鎖領域とを有し、該一本鎖領域は、4〜12ヌクレオチドの長さを有し、少なくとも3ヌクレオチドの骨格修飾を有する。好ましい態様において、二本鎖核酸分子は、平滑であるかまたは1または2ヌクレオチドの突出を含む一方の末端を有する。sd-rxRNA分子は、化学修飾を通して、および一部の例においては疎水性の抱合体の結合を通して、最適化されていてもよい。
一部の態様において、sd-rxRNAは、ガイド鎖とパッセンジャー鎖とを含む単離された二本鎖核酸分子を含み、ここで、前記分子の二本鎖である領域は、8〜15ヌクレオチド長であり、ここで、前記ガイド鎖は、4〜12ヌクレオチド長である一本鎖領域を含み、ここで、前記ガイド鎖の一本鎖領域は、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のホスホロチオエート修飾を含み、およびここで、前記二本鎖核酸のヌクレオチドの少なくとも40%は修飾されている。
本発明のポリヌクレオチドは、本明細書において、本発明の単離された二本鎖(double stranded)またはデュプレックスの核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、ナノ分子、ナノRNA、sd-rxRNAnano、sd-rxRNAまたはRNA分子として言及される。
sd-rxRNAは、従来のsiRNAと比較して、遥かにより効率的に細胞により取り込まれる。これらの分子は、標的遺伝子発現のサイレンシングにおいて高度に効率的であり、先に記載されているRNAi分子と比較して、血清の存在下における高い活性、効率的な自己送達、多様なリンカーとの適合性、および毒性に関連する化学修飾の存在の低減または完全な不在を含む、著しい利点を提供する。
一本鎖ポリヌクレオチドと対照的に、デュプレックスポリヌクレオチドは、膜輸送を困難にする強固な構造および多数の負の電荷を有するため、細胞へ送達することが伝統的に困難であった。しかし、sd-rxRNAは、部分的に二本鎖であるにもかかわらず、in vivoで一本鎖として認識され、細胞膜を越えて効率的に送達されることが可能である。結果として、本発明のポリヌクレオチドは、多くの例において自己送達が可能である。したがって、本発明のポリヌクレオチドは、従来のRNAi剤と同様の方法において処方してもよく、またはそれらを細胞または対象に単独で(または非送達型キャリアと共に)送達して自己送達させてもよい。本発明の一態様において、自己送達型非対称二本鎖RNA分子が提供され、これにおいて、当該分子の一部は従来のRNAデュプレックスと類似し、当該分子の第二の部分は一本鎖である。
本発明のオリゴヌクレオチドは、一部の側面において、二本鎖領域および5ヌクレオチドまたはそれより長い一本鎖領域とを含む非対称構造と、特定の化学修飾パターンとの組み合わせを有し、親油性または疎水性の分子に抱合される。このクラスのRNAi様化合物は、in vitroおよびin vivoにおいて優れた効力を有する。強固なデュプレックス領域のサイズの減少と、一本鎖領域に適用されるホスホロチオエート修飾との組み合わせが、観察された優れた効力に寄与すると考えられる。
本発明は、少なくとも部分的に、sd-rxRNAを、網膜下または硝子体内注射のいずれかを通して効率的に眼に送達することができるという、驚くべき発見に基づく。マウス、ラットおよびウサギを含む複数の異なる哺乳動物系において生じた結果に基づき、例のセクションにおいて提示されるとおり、sd-rxRNAの投与の後で、従来のRNAi化合物の投与の後よりも、劇的に(数倍の程度)より良好な眼による取り込みおよび分布が観察される。
本発明の別の驚くべき側面は、sd-rxRNA分子が、網膜色素上皮細胞層を含む網膜内の全ての細胞層により取り込まれることである。網膜下および硝子体内注射の両方を通して、効率的なsd-rxRNA分布が達成され、両方の投与方法は、本発明の側面に適合する。一部の態様において、眼内薬物送達における技術的容易性および広範な使用のために、硝子体内投与が好ましい。
本明細書において用いられる場合、「眼(ocular)」とは、眼(eye)を指し、筋肉、神経、血管、涙管、膜などを含むその細胞のいずれかおよび全て、ならびに眼およびその生理学的機能と関連する構造を含む。用語、眼(ocular)および眼(eye)は、本開示を通して交換可能に用いられる。眼内の細胞型の非限定的な例として、以下が挙げられる:神経節細胞層(GCL)中に位置する細胞、内網状層(IPL)、内顆粒層(INL)、外網状層(OPL)、外顆粒層(ONL)、桿体細胞および錐体細胞の外節(OS)、網膜色素上皮(RPE)、桿体細胞および錐体細胞の内節(IS)、結膜の上皮、虹彩、毛様体、角質、ならびに眼の皮脂腺の上皮。
好ましい態様において、本発明のRNAi化合物は、デュプレックス領域(効率的なRISC侵入のために必要であり、8〜15塩基長のもの)および4〜12ヌクレオチド長の一本鎖領域を含む非対称化合物を含む。一部の態様において、デュプレックス領域は、13または14ヌクレオチド長である。6または7ヌクレオチドの一本鎖領域が、一部の態様において好ましい。新規RNAi化合物の一本鎖領域はまた、2〜12のホスホロチオエートのヌクレオチド間結合(ホスホロチオエート修飾として言及される)を含む。6〜8のホスホロチオエートヌクレオチド間結合が、一部の態様において好ましい。さらに、本発明のRNAi化合物はまた、特有の化学修飾パターンを含み、これは、安定性を提供し、RISC侵入に適合する。これらの要因の組み合わせが、in vitroおよびin vivoでのRNAi剤の送達のために高度に有用である予想外の特性をもたらした。
安定性を提供しRISC侵入に適合する化学的修飾パターンは、センスまたはパッセンジャー鎖、ならびにアンチセンスまたはガイド鎖への修飾を含む。例えば、安定性を確実にし、活性に干渉しない、任意の化学的実体により、パッセンジャー鎖を修飾してもよい。かかる修飾として、2’リボ修飾(O−メチル、2’F、2デオキシおよびその他)、ならびにホスホロチオエート修飾などの骨格修飾が挙げられる。パッセンジャー鎖における好ましい化学修飾パターンとして、パッセンジャー鎖中のCおよびUヌクレオチドのOメチル修飾が挙げられる。あるいは、パッセンジャー鎖を完全にOメチル修飾してもよい。
ガイド鎖を、例えば、またRISC侵入に干渉することなく安定性を確証する任意の化学修飾により修飾してもよい。ガイド鎖における好ましい化学修飾パターンとして、CおよびUヌクレオチドの大多数が2’F修飾されており、5’末端がリン酸化されているものが挙げられる。ガイド鎖における別の好ましい化学修飾パターンとして、1位の2’Oメチル修飾、および11〜18位におけるC/U、および5’末端の化学的リン酸化が挙げられる。ガイド鎖におけるさらに別の好ましい化学修飾パターンとして、1位の2’Oメチル修飾、および11〜18位におけるC/U、および5’末端の化学的リン酸化、および2〜10位におけるC/Uの2’F修飾が挙げられる。一部の態様において、パッセンジャー鎖および/またはガイド鎖は、少なくとも1つの5−メチルCまたはU修飾を含む。
一部の態様において、sd-rxRNA中のヌクレオチドの少なくとも30%が修飾されている。例えば、sd-rxRNA中のヌクレオチドの少なくとも30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が修飾されている。一部の態様において、sd-rxRNA中のヌクレオチドの100%が修飾されている。
本発明のオリゴヌクレオチドの上記の化学修飾パターンは、よく耐容され、非対称RNAi化合物の効力を実際に改善した。本明細書においてまた実験的に示されたのは、RNAiへの修飾の組み合わせが、ポリヌクレオチドと共に用いた場合、RNAiの受動的取り込みにおける最適な効力の達成をもたらすことである。記載される成分のいずれか(ガイド鎖安定化、ホスホロチオエートの伸長、センス鎖安定化および疎水性の抱合体)の除去、またはサイズの減少は、一部の場合においては、準最適な効力をもたらし、一部の場合においては、効力の完全な喪失をもたらす。要素の組み合わせにより、HeLa細胞などの細胞への送達の後で完全に活性である化合物の開発がもたらされる。以下に提示される例におけるデータは、本発明のオリゴヌクレオチドの眼への投与の際の高い効力を実証する。
sd-rxRNAは、一部の例において、新規の型の化合物を用いて化合物の疎水性を改善することにより、さらに改善することができる。例えば、一化合物は、疎水性塩基修飾の使用に関する。修飾が塩基の分配係数の増大をもたらす限りにおいて、任意の位置における任意の塩基を修飾することができる。修飾化合物のための好ましい位置は、ピリミジンの4位および5位である。これらの位置の主要な利点は、(a)合成の容易性、および(b)RISC複合体のローディングおよび標的認識のために必須である塩基対形成およびA型らせん(A form helix)形成に対する干渉がないこと、である。複数のデオキシウリジンが全体的な化合物の効力に干渉することなく存在するsd-rxRNA化合物のバージョンを用いた。さらに、組織分布および細胞取り込みにおける主な改善は、疎水性抱合体の構造を最適化することにより得ることができる。好ましい態様の一部において、ステロールの構造を、C17結合鎖(C17 attached chain)を変化させる(増大する/減少する)ように修飾する。この型の修飾は、in vivoでの著しい細胞取り込みの増大および組織取り込み特性の改善をもたらす。
本発明により処方されるdsRNAはまた、rxRNAoriを含む。rxRNAoriとは、2009年2月11日に出願されたPCT公開番号WO2009/102427(出願番号PCT/US2009/000852)、表題「MODIFIED RNAI POLYNUCLEOTIDES AND USES THEREOF」、において記載され、これから参考として組み込まれるRNA分子のクラスを指す。
一部の態様において、rxRNAori分子は、標的遺伝子の発現を阻害するための長さ12〜35ヌクレオチドの二本鎖RNA(dsRNA)コンストラクトを含み、該コンストラクトは、5’末端および3’末端を有するセンス鎖(ここで該センス鎖は、2’修飾されたリボース糖により高度に修飾されており、およびここで前記センス鎖の中央部における3〜6のヌクレオチドは、2’修飾されたリボース糖により修飾されていない)と、前記センス鎖および前記標的遺伝子のmRNAとハイブリダイズする、5’末端および3’末端を有するアンチセンス鎖とを含み、ここで、前記dsRNAは、配列依存的な様式において前記標的遺伝子の発現を阻害する。
rxRNAoriは、本明細書において記載される修飾のいずれを含んでもよい。一部の態様において、rxRNAori中のヌクレオチドの少なくとも30%が修飾されている。例えば、rxRNAori中のヌクレオチドの少なくとも30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が修飾されている。一部の態様において、sd-rxRNA中のヌクレオチドの100%が修飾されている。一部の態様において、rxRNAoriのパッセンジャー鎖のみが修飾を含む。
本発明は、その適用に関して、以下の説明において記載されるかまたは図面において説明される構築および成分の配置の詳細に限定されない。本発明は、他の態様、および多様な方法において実施されるか行われることが可能である。また、本明細書において用いられる用語および専門用語は、説明を目的とするものであり、限定するものとしてみなされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、およびそれらの変化形の使用は、その後に列挙される項目およびその等価物、ならびにさらなる項目を包含することを意味する。
したがって、本発明の側面は、ガイド(アンチセンス)鎖およびパッセンジャー(センス)鎖を含む、単離された二本鎖核酸分子に関する。本明細書において用いられる場合、用語「二本鎖」は、ヌクレオモノマー(ヌクレオモノマー)の少なくとも一部が相補的であり、二本鎖領域を形成するように水素結合されている、1または2以上の核酸分子を指す。一部の態様において、ガイド鎖の長さは、16〜29ヌクレオチド長の範囲である。ある態様において、ガイド鎖は、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29ヌクレオチド長である。ガイド鎖は標的遺伝子に対して相補性を有する。ガイド鎖と標的遺伝子との間の相補性は、ガイド鎖の任意の部分にわたって存在することができる。本明細書において用いられる場合、相補性とは、ガイド鎖が標的に対してRNAiを媒介できるように十分に相補的である限りにおいて、完全な相補性であっても、より不完全な相補性であってもよい。一部の態様において、相補性とは、ガイド鎖と標的との間の、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、または1%未満のミスマッチを指す。完全な相補性とは、100%の相補性を指す。したがって、本発明は、遺伝子変異、系統多型、または進化による分岐に起因して予測することができる配列の変化に耐容性を示すことができるという利点を有する。例えば、標的配列と比較して挿入、欠失、および単一の点変異を有するsiRNAもまた、阻害について有効であることが見出されている。さらに、siRNAの全ての部位が標的の認識について同等に寄与するわけではない。siRNAの中心におけるミスマッチは、最も重要であり、本質的に標的RNAの切断を無効化する。アンチセンス鎖に関して、中心の上流または切断部位の上流におけるミスマッチは、耐用性を示すが、標的RNAの切断を著しく低減する。アンチセンス鎖に関して、中心または切断部位の下流におけるミスマッチ、好ましくは3’末端の付近、例えばアンチセンス鎖の3’末端から1、2、3、4、5または6ヌクレオチドに位置するものは、耐用性を示し、標的RNAの切断を、ごく僅かしか低減しない。
いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まないが、一部の態様において、ガイド鎖は、少なくとも16ヌクレオチドの長さであり、RISC中でアルゴノートタンパク質をアンカーする。一部の態様において、ガイド鎖がRISC中へロードするとき、これは明確なシード領域を有し、標的mRNAの切断は、ガイド鎖の10〜11位にわたって行われる。一部の態様において、ガイド鎖の5’末端は、リン酸化されているか、またはリン酸化されることができる。本明細書において記載される核酸分子は、最短トリガーRNA(Minimum Length Trigger RNA)として言及される場合もある。
一部の態様において、パッセンジャー鎖の長さは、8〜15ヌクレオチド長の範囲である。ある態様において、パッセンジャー鎖は、8、9、10、11、12、13、14または15ヌクレオチド長である。パッセンジャー鎖は、ガイド鎖に対して相補性を有する。パッセンジャー鎖とガイド鎖との間の相補性は、パッセンジャーまたはガイド鎖の任意の部位にわたって存在してもよい。一部の態様において、ガイド鎖とパッセンジャー鎖との間には、分子の二本鎖領域内に100%の相補性が存在する。
本発明の側面は、最小二本鎖領域を有する二本鎖核酸分子に関する。一部の態様において、分子の二本鎖である領域は、8〜15ヌクレオチド長の範囲である。ある態様において、分子の二本鎖である領域は、8、9、10、11、12、13、14または15ヌクレオチド長である。ある態様において、二本鎖領域は、13または14ヌクレオチド長である。ガイド鎖とパッセンジャー鎖との間に100%の相補性が存在してもよく、またはガイド鎖とパッセンジャー鎖との間に1または2以上のミスマッチが存在してもよい。一部の態様において、二本鎖分子の一方の末端において、分子は、平滑末端であるか、または1ヌクレオチドの突出を有する。分子の一本鎖領域は、一部の態様において、4〜12ヌクレオチド長である。例えば、一本鎖領域は、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヌクレオチド長であってよい。しかし、ある態様において、一本鎖領域はまた、4ヌクレオチド長未満であっても、または12ヌクレオチド長より長くてもよい。ある態様において、一本鎖領域は、少なくとも6または少なくとも7ヌクレオチド長である。
本発明に関連するRNAiコンストラクトは、−13kkal/mol未満の熱力学的安定性(ΔG)を有することができる。一部の態様において、熱力学的安定性(ΔG)は、−20kkal/mol未満である。一部の態様において、(ΔG)が−21kkal/mol未満となった場合、効力の喪失が存在する。一部の態様において、−13kkal/molより高い(ΔG)値は、本発明の側面に適合性である。いかなる理論によっても拘束されることを望まないが、一部の態様において、相対的に高い(ΔG)値を有する分子は、相対的に高い濃度において活性になる場合があり、一方、相対的に低い(ΔG)値を有する分子は、相対的に低い濃度において活性になる場合がある。一部の態様において、(ΔG)値は、−9kkcal/molよりも高くてもよい。最小二本鎖領域を有する本発明に関連するRNAiコンストラクトにより媒介される遺伝子サイレンシング効果は、予測し得ない。なぜならば、ほぼ同一の設計であるが熱力学的安定性がより低い分子は、不活性であることが示されているからである(Rana et al. 2004)。
いかなる理論によっても拘束されることを望まないが、本明細書において記載される結果は、dsRNAまたはdsDNAの8〜10bpの伸長が、RISCの成分であるタンパク質またはRISCのコファクターにより構造的に認識されるであろうことを示唆する。さらに、タンパク質成分により感受され得るか、および/または、かかる成分と相互作用するために十分に安定であり得、その結果アルゴノートタンパク質中へロードされ得る、トリガー化合物(triggering compound)のためのフリーエネルギー要求が存在する。最適な熱力学が存在し、好ましくは少なくとも8ヌクレオチドである二本鎖部分が存在する場合、デュプレックスは、認識され、RNAi機構の中にロードされる。
一部の態様において、熱力学的安定性は、LNA塩基の使用を通して増大する。一部の態様において、さらなる化学修飾を導入する。幾つかの非限定的な化学修飾の例として、5’ホスフェート、2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−フルオロ、リボチミジン、C−5プロピニル−dC(pdC)およびC−5プロピニル−dU(pdU);C−5プロピニル−C(pC)およびC−5プロピニル−U(pU);5−メチルC、5−メチルU、5−メチルdC、5−メチルdUメトキシ、(2,6−ジアミノプリン)、5’−ジメトキシトリチル−N4−エチル−2’−デオキシシチジンおよびMGB(副溝結合剤)が挙げられる。同じ分子内において1つより多くの化学修飾を組み合わせてもよいことが理解されるべきである。
本発明に関連する分子は、効力の増大および/または毒性の軽減のために、最適化される。例えば、ガイドおよび/またはパッセンジャー鎖のヌクレオチドの長さ、および/またはガイドおよび/またはパッセンジャー鎖におけるホスホロチオエート修飾の数は、一部の側面において、RNA分子の効力に影響を及ぼし、一方、2’−フルオロ(2’F)修飾を2’−O−メチル(2’OMe)修飾により置き換えることは、一部の側面において、分子の毒性に影響を及ぼす。具体的には、分子の2’F含有物の減少は、分子の毒性を低下させると予測される。例のセクションは、2’F修飾が取り除かれた分子を提示し、先に記載されたRNAi化合物に対しての予測される毒性の低下に起因する利点を提供する。さらに、RNA分子中のホスホロチオエート修飾の数は、細胞内への分子の取り込み、例えば、細胞内への分子の受動的取り込みの効率に影響を及ぼし得る。本明細書において記載される分子の好ましい態様は、2’F修飾を有さず、なお細胞取り込みおよび組織への浸透における同等の効力により特徴づけられる。かかる分子は、2’Fの大量使用により重度に修飾されたAccellおよびWolfrumにより記載される分子などの先行技術に対して顕著な改善を表わす。
一部の態様において、ガイド鎖は、約18〜19ヌクレオチドの長さであり、約2〜14のリン酸修飾を有する。例えば、ガイド鎖は、リン酸修飾された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または14ヌクレオチドより多くを含んでもよい。ガイド鎖は、RISC侵入に干渉することなく安定性を増大させる1または2以上の修飾を含んでもよい。ホスホロチオエート修飾ヌクレオチドなどのリン酸修飾ヌクレオチドは、3’末端にあっても、5’末端にあっても、またはガイド鎖全体に広がっていてもよい。一部の態様において、ガイド鎖の3’末端の10ヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のホスホロチオエート修飾ヌクレオチドを含む。ガイド鎖はまた、2’Fおよび/または2’OMe修飾を含んでもよく、これは、分子全体を通して位置していてもよい。一部の態様において、ガイド鎖の1位のヌクレオチド(ガイド鎖の最も5’の位置におけるヌクレオチド)は、2’OMe修飾されているか、および/またはリン酸化されている。ガイド鎖中のCおよびUヌクレオチドは、2’F修飾されていてもよい。例えば、19ntのガイド鎖の2〜10位(または異なる長さの鎖における対応する位置)におけるCおよびUヌクレオチドは、2’F修飾されていてもよい。ガイド鎖中のCおよびUヌクレオチドはまた、’OMe修飾されていてもよい。例えば、19ntのガイド鎖の11〜18位(または異なる長さの鎖における対応する位置)におけるCおよびUヌクレオチドは、2’OMe修飾されていてもよい。一部の態様において、ガイド鎖の最も3’末端におけるヌクレオチドは、未修飾である。ある態様において、ガイド鎖中のCおよびUの大部分は、2’F修飾されており、ガイド鎖の5’末端はリン酸化されている。他の態様において、1位、および11〜18位におけるCまたはUは、2’OMe修飾されており、ガイド鎖の5’末端はリン酸化されている。他の態様において、1位、および11〜18位におけるCまたはUは、2’OMe修飾されており、ガイド鎖の5’末端はリン酸化されており、2〜10位におけるCまたはUは2’F修飾されている。
一部の側面において、最適なパッセンジャー鎖は、約11〜14ヌクレオチドの長さである。パッセンジャー鎖は、安定性を増大させる修飾を含んでもよい。パッセンジャー鎖における1または2以上のヌクレオチドは、2’OMe修飾されていてもよい。一部の態様において、パッセンジャー鎖における1または2以上のCおよび/またはUヌクレオチドが2’OMe修飾されているか、またはパッセンジャー鎖におけるCおよびUヌクレオチドの全てが2’OMe修飾されている。ある態様において、パッセンジャー鎖における全てのヌクレオチドが2’OMe修飾されている。パッセンジャー鎖上のヌクレオチド1または2以上はまた、リン酸修飾、例えばホスホロチオエート修飾されていてもよい。パッセンジャー鎖はまた、2’リボ、2’Fおよび2デオキシ修飾、または上記のものの任意の組み合わせを含んでもよい。例において示すように、ガイド鎖とパッセンジャー鎖との両方における化学修飾パターンは、良好な耐用性を示し、RNA分子の効力および自己送達の増大をもたらすための化学修飾の組み合わせが、本明細書において示される。
本発明の側面は、RNAiについて先に用いられてきた分子と比較した場合に、二本鎖と比較して長い一本鎖領域を有するRNAiコンストラクトに関する。分子の一本鎖領域は、細胞取り込みまたは遺伝子サイレンシングを促進するために修飾されていてもよい。一部の態様において、一本鎖領域のホスホロチオエート修飾は、細胞取り込みおよび/または遺伝子サイレンシングに影響を及ぼす。ガイド鎖のホスホロチオエート修飾されている領域は、分子の一本鎖および二本鎖領域のいずれにおけるヌクレオチドを含んでもよい。一部の態様において、一本鎖領域は、2〜12のホスホロチオエート修飾を含む。例えば、一本鎖領域は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のホスホロチオエート修飾を含んでもよい。一部の例において、一本鎖領域は、6〜8のホスホロチオエート修飾を含む。
本発明に関連する分子はまた、細胞取り込みのために最適化される。本明細書において記載されるRNA分子において、ガイド鎖および/またはパッセンジャー鎖は、抱合体に結合していてもよい。ある態様において、抱合体は疎水性である。疎水性の抱合体は、10より高い分配係数を有する低分子であってもよい。抱合体は、コレステロールなどのステロール型分子であっても、またはC17に結合した長さが増大したポリ炭素鎖を有する分子であってもよく、抱合体の存在は、脂質トランスフェクション試薬の存在下または不在下においてRNA分子が細胞に取り込まれる能力に影響を及ぼし得る。抱合体は、疎水性リンカーを通して、パッセンジャー鎖またはガイド鎖に結合していてもよい。一部の態様において、疎水性リンカーは、5〜12Cの長さであり、および/またはヒドロキシピロリジンに基づく。一部の態様において、疎水性抱合体は、パッセンジャー鎖に結合し、パッセンジャー鎖および/またはガイド鎖のいずれかのCU残基は、修飾されている。一部の態様において、パッセンジャー鎖および/またはガイド鎖のCU残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、修飾されている。一部の側面において、本発明に関連する分子は、自己送達性(sd)である。本明細書において用いられる場合、「自己送達(self-送達)」とは、分子が、トランスフェクション試薬などの付加的な送達ビヒクルを必要とすることなく細胞へ送達される能力を指す。
本発明の側面は、RNAiにおける使用のために分子を選択することに関する。一部の態様において、8〜15ヌクレオチドの二本鎖領域を有する分子を、RNAiにおける使用のために選択することができる。一部の態様において、分子は、その熱力学的安定性(ΔG)に基づいて選択される。一部の態様において、−13kkal/mol未満の(ΔG)を有する分子が選択される。例えば、(ΔG)値は、−13、−14、−15、−16、−17、−18、−19、−21、−22、または−22kkal/mol未満であってもよい。他の態様において、(ΔG)値は、−13kkal/molより高くてもよい。例えば、(ΔG)値は、−12、−11、−10、−9、−8、−7、または−7kkal/molより高くてもよい。ΔGは、当該分野において公知の任意の方法を用いて計算することができることが理解されるべきである。一部の態様において、ΔGは、Mfoldインターネットサイト(mfold.bioinfo.rpi.edu/cgi-bin/rna-form1.cgi)を通して利用可能なMfoldを用いて計算する。ΔGを計算するための方法は、以下の参考文献において記載され、それらから参考として組み込まれる:Zuker, M. (2003) Nucleic Acid Res., 31(13):3406-15; Mathews, D. H., Sabina, J., Zuker, M. and Turner, D. H. (1999) J. Mol. Biol. 288:911-940; Mathews, D. H., Disney, M. D., Childs, J. L., Schroeder, S. J., Zuker, M., and Turner, D. H. (2004) Proc. Natl. Acad. Sci. 101:7287-7292; Duan, S., Mathews, D. H., and Turner, D. H. (2006) Biochemistry 45:9819-9832; Wuchty, S., Fontana, W., Hofacker, I. L., and Schuster, P. (1999) Biopolymers 49:145-165。
ある態様において、ポリヌクレオチドは、5’−および/または3’末端の突出を含む。ポリヌクレオチドの一方の末端におけるヌクレオチド突出の数および/または配列は、ポリヌクレオチドの他方の末端と同じであっても異なっていてもよい。ある態様において、突出ヌクレオチドの1または2以上は、ホスホロチオエートまたは2’−OMe修飾などの化学修飾を含んでもよい。
ある態様において、ポリヌクレオチドは、未修飾である。他の態様において、少なくとも1つのヌクレオチドが修飾されている。さらなる態様において、修飾は、ガイド配列の5’末端から2つ目のヌクレオチドにおいて、2’−Hまたは2’−修飾されたリボース糖を含む。「2つ目のヌクレオチド」とは、ポリヌクレオチドの5’末端から2つ目のヌクレオチドとして定義される。
本明細書において用いられる場合、「2’−修飾されたリボース糖」は、2’−OH基を有さないリボース糖を含む。「2’−修飾されたリボース糖」は、(未修飾の基準のDNAヌクレオチドにおいて見出される)2’−デオキシリボースを含まない。例えば、2’−修飾されているリボース糖は、2’−O−アルキルヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロヌクレオチド、2’−デオキシヌクレオチド、またはこれらの組み合わせであってもよい。
ある態様において、2’−修飾されているヌクレオチドは、ピリミジンヌクレオチド(例えばC/U)である。2’−O−アルキルヌクレオチドの例として、2’−O−メチルヌクレオチドまたは2’−O−アリルヌクレオチドが挙げられる。
ある態様において、上記の5’末端修飾を有する本発明のsd-rxRNAポリヌクレオチドは、特定された5’末端修飾を有さない類似のコンストラクトと比較した場合に、有意(例えば、少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%またはそれを超えて)により低い「オフ・ターゲット(off-target)」遺伝子サイレンシングを示し、したがって、RNAi試薬または治療の全体的な特異性を著しく改善する。
本明細書において用いられる場合、「オフ・ターゲット」遺伝子サイレンシングとは、例えばアンチセンス(ガイド)配列と、意図しない標的mRNA配列との間の偽の配列相同性に起因する、意図しない遺伝子サイレンシングを指す。
本発明のこの側面によれば、特定のガイド鎖修飾が、RNAi活性を著しく低下させることなく(またはRNAi活性を全く低下させることなく)、さらにヌクレアーゼ安定性を増大し、および/またはインターフェロン誘導を低下させる。
一部の態様において、5’ステム配列は、ポリヌクレオチドの5’末端における2番目のヌクレオチドにおいて、2’−O−メチル修飾されたヌクレオチドなどの2’−修飾されたリボース糖を含み、一部の態様においては、他に修飾ヌクレオチドを含まない。修飾を有するヘアピン構造は、前記の一において2’−O−メチル修飾を有しない類似のコンストラクトと比較して、標的特異性を増強するか、またはオフ・ターゲットサイレンシングを低減し得る。
特定の5’ステム配列の修飾と3’ステム配列の修飾との特定の組み合わせは、標的遺伝子の発現を阻害する能力の増強、血清安定性の増強、および/または標的特異性の増大などにより部分的に表わされる、さらなる予想外の利点をもたらし得る。
ある態様において、ガイド鎖は、ガイド鎖の5’末端における2番目のヌクレオチドにおいて、2’−O−メチル修飾ヌクレオチドを含むか、または他に修飾ヌクレオチドを含まない。
他の側面において、本発明のsd-rxRNA構造は、microRNA機構により、配列依存的な遺伝子サイレンシングを媒介する。本明細書において用いられる場合、用語「microRNA」(「miRNA」)はまた、当該分野において、「小分子RNA(small temporal RNA)」(「stRNA」)としても言及され、遺伝子的に(例えば、ウイルス、哺乳動物または植物ゲノムにより)コードされる小さい(10〜50ヌクレオチドの)RNAであって、RNAサイレンシングを指揮するかまたは媒介することができるものを指す。「miRNA障害」とは、miRNAの異常な発現または活性により特徴づけられる疾患または障害を指すべきである。
microRNAは、マウス、昆虫および哺乳動物において、発達または癌などの重要な経路において、標的遺伝子を下方調節することに関与する。microRNA機構を通した遺伝子サイレンシングは、特異的であるがなお不完全なmiRNAとその標的メッセンジャーRNA(mRNA)との塩基対形成により達成される。標的mRNA発現のmicroRNA媒介性の下方調節において、多様な機構を用いることができる。
miRNAは、約22ヌクレオチドの非コードRNAであって、植物および動物の発達の間に、転写後または翻訳のレベルにおいて、遺伝子発現を調節することができるものである。miRNAの一つの共通の特徴は、それらがプレmiRNA(pre-miRNA)と称される約70ヌクレオチドの前駆体RNAステムループから、恐らくはRNase III型酵素であるダイサーまたはそのホモログにより、切り取られることである。天然に存在するmiRNAは、in vivoで内因性遺伝子により発現され、ヘアピンまたはステムループ前駆体(プレmiRNAまたはプリmiRNA(pri-miRNA))から、ダイサーまたは他のRNAseによりプロセッシングされる。miRNAは、in vivoで二本鎖デュプレックス(double-stranded duplex)として一過性に存在することができるが、一方の鎖のみが遺伝子サイレンシングを指揮するためにRISC複合体に取り込まれる。
一部の態様において、細胞取り込みおよびmiRNAの阻害において有効なsd-rxRNA化合物のバージョンが記載される。本質的に、化合物は、RISC侵入性のバージョンに類似するが、大きな鎖の化学修飾パターンが、切断を遮断してRISC作用の効果的な有効な阻害剤として作用するように、最適化されている。例えば、化合物は、先に記載するPS含有物で完全にまたは殆どOメチル修飾されていてもよい。これらの型の化合物について、5’リン酸化は、必要でない。二本鎖領域の存在は、細胞取り込みおよび効率的なRISCローディングを促進するので、好ましい。
低分子RNAを配列特異的調節剤として用いる別の経路は、RNA干渉(RNAi)経路であり、これは、細胞における二本鎖RNA(dsRNA)の存在に対する進化的に保存された応答である。dsRNAは、ダイサーにより、約20塩基対(bp)のデュプレックスの低分子干渉RNA(siRNA)へと切断される。これらの低分子RNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と称される多タンパク質エフェクター複合体へと集合させられる。siRNAは、次いで、完全な相補性を有する標的mRNAの切断をガイドする。
バイオジェネシス、タンパク質複合体および機能の一部の側面は、siRNA経路とmiRNA経路との間で共有される。対象となる一本鎖ポリヌクレオチドは、siRNA機構においてdsRNAを模倣するか、miRNA機構においてmicroRNAを模倣する。
ある態様において、修飾RNAiコンストラクトは、同じ配列を有する未修飾RNAiコンストラクトと比較して、改善した血清および/または脳脊髄液中の安定性を有し得る。
ある態様において、RNAiコンストラクトの構造は、ヒト、マウスおよび他のげっ歯類、ならびに他の非ヒト哺乳動物からの初代細胞を含む哺乳動物の初代細胞などの初代細胞において、インターフェロン応答を誘導しない。ある態様において、RNAiコンストラクトはまた、無脊椎生物において標的遺伝子の発現を阻害するために用いることができる。
対象となるコンストラクトのin vivoでの安定性をさらに増大させるために、ヘアピン構造の3’末端を、保護基により遮断してもよい。例えば、反転(inverted)ヌクレオチド、反転脱塩基部分、またはアミンO−修飾ヌクレオチドなどの保護基を用いることができる。反転ヌクレオチドは、反転デオキシヌクレオチドを含んでもよい。反転脱塩基部分は、3’,3’結合または5’,5’結合のデオキシ脱塩基部分などの、反転デオキシ脱塩基部分を含んでもよい。
本発明のRNAiコンストラクトは、標的遺伝子によりコードされる任意の標的タンパク質の合成を阻害することができる。本発明は、細胞において、in vitroまたはin vivoのいずれかで、標的遺伝子の発現を阻害する方法を含む。したがって、本発明のRNAiコンストラクトは、標的遺伝子の過剰発現により特徴づけられる疾患を有する患者を処置するために有用である。
標的遺伝子は、細胞にとって内因性であっても外因性(例えば、ウイルスにより、または組み換えDNA技術を用いて、細胞に導入されたもの)であってもよい。かかる方法は、標的遺伝子の発現を阻害するために十分な量におけるRNAの細胞内への導入を含んでもよい。例えば、かかるRNA分子は、組成物が標的遺伝子の発現を阻害するように、標的遺伝子のヌクレオチド配列に対して相補的なガイド鎖を含む。
本発明はまた、本発明の核酸を発現するベクター、およびかかるベクターまたは核酸を含む細胞に関する。細胞は、in vivoのまたは培養中の、ヒト細胞などの哺乳動物細胞であってよい。
哺乳動物は、さらに、対象となるRNAiコンストラクトと薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物に関する。
本発明の別の側面は、哺乳動物細胞において標的遺伝子の発現を阻害するための方法を提供し、該方法は、眼の細胞を、対象となるRNAiコンストラクトのうちの任意のものと接触させることを含む。
方法は、in vitroで、ex vivoで、またはin vivoで、例えば、培養中のヒト細胞などの培養中の哺乳動物細胞において行うことができる。
標的細胞(例えば哺乳動物細胞)は、脂質(例えばカチオン性脂質)またはリポソームなどの送達試薬の存在下において、接触させてもよい。
本発明の別の側面は、哺乳動物細胞において標的遺伝子の発現を阻害するための方法を提供し、該方法は、哺乳動物細胞を、対象となるRNAiコンストラクトを発現するベクターと接触させることを含む。
本発明の一側面において、約16〜約30ヌクレオチドの範囲のサイズである第1のポリヌクレオチドと、約26〜約46ヌクレオチドの範囲のサイズである第2のポリヌクレオチドとを含む、より長いデュプレックスポリヌクレオチドが提供され、ここで、前記第1のポリヌクレオチド(アンチセンス鎖)は、前記第2のポリヌクレオチド(センス鎖)および標的遺伝子の両方に対して相補的であり、両方のポリヌクレオチドは、デュプレックスを形成し、ここで、前記第1のポリヌクレオチドは、長さが6塩基より長い一本鎖領域を含み、択一的な(alternative)化学修飾パターンにより修飾されており、および/または細胞送達を促進する抱合体部分を含む。この態様において、パッセンジャー鎖のヌクレオチドの約40〜約90%、ガイド鎖のヌクレオチドの約40〜約90%、第1のポリヌクレオチドの一本鎖領域のヌクレオチドの約40〜約90%が、化学修飾ヌクレオチドである。
一態様において、ポリヌクレオチドデュプレックス中の化学修飾ヌクレオチドは、上で詳細に議論されたものなどの、当該分野において公知の任意の化学修飾ヌクレオチドであってよい。特定の態様において、化学修飾ヌクレオチドは、2’F修飾ヌクレオチド、2’−O−メチル修飾されたものおよび2’デオキシヌクレオチドからなる群より選択される。別の特定の態様において、化学修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基の「疎水性修飾」から生じる。別の特定の態様において、化学修飾ヌクレオチドはホスホロチオエートである。さらなる別の特定の態様において、化学修飾ヌクレオチドは、ホスホロチオエート、2’−O−メチル、2’デオキシ、疎水性修飾およびホスホロチオエートの組み合わせである。これらの群の修飾が、リボース環、骨格およびヌクレオチドの修飾を指す場合、一部の修飾ヌクレオチドは、3つの修飾の型全ての組み合わせを含むことも可能である。
別の態様において、化学修飾は、デュプレックスの多様な領域にわたって同じではない。特定の態様において、第1のポリヌクレオチド(パッセンジャー鎖)は、多様な位置において多数の多様な化学修飾を有する。このポリヌクレオチドについて、90%までのヌクレオチドは、化学的に修飾されていても、および/または導入されたミスマッチを有していてもよい。
別の態様において、第1のまたは第2のポリヌクレオチドの化学修飾として、限定されないが、5’位のウリジンおよびシトシンの修飾(4−ピリジル、2−ピリジル、インドリル、フェニル(C6H5OH);トリプトファニル(C8H6N)CH2CH(NH2)CO)、イソブチル、ブチル、アミノベンジル;フェニル;ナフチルなど)が挙げられ、ここで、化学修飾は、ヌクレオチドの塩基対形成能力を変化させる場合がある。ガイド鎖について、本発明のこの側面の重要な特徴は、アンチセンスの5’末端に対する化学修飾の位置および配列である。例えば、ガイド鎖の5’末端の化学的リン酸化は、通常、効力のために有益である。センス鎖のシード領域(5’末端に対して2〜7位)におけるO−メチル修飾は、一般に、良好な耐用性を示さないが、一方、2’Fおよびデオキシは、良好な耐用性を示す。ガイド鎖の中間部分およびガイド鎖の3’末端は、適用される化学修飾の型において、より許容的である。デオキシ修飾は、ガイド鎖の3’末端においては、耐用性を示さない。
本発明のこの側面の特有の特徴は、塩基に対する疎水性の修飾の使用を含む。本発明の一態様において、疎水性修飾は、好ましくは、ガイド鎖の5’末端付近に位置し、他の態様においては、それらはガイド鎖の中間に局在し、他の態様においては、それらはガイド鎖の3’末端に局在し、さらに別の態様において、それらは、ポリヌクレオチドの全長を通して分布する。同じ型のパターンを、デュプレックスのパッセンジャー鎖に適用することが可能である。
分子の他方の部分は、一本鎖領域である。一本鎖領域は、7〜40ヌクレオチドの範囲であると予測される。
一態様において、第1のポリヌクレオチドの一本鎖領域は、40%〜90%の疎水性塩基修飾、40%〜90%のホスホロチオエート、40%〜90%のリボース部分の修飾、および前述のものの任意の組み合わせからなる群より選択される修飾を含む。
ガイド鎖(第1のポリヌクレオチド)のRISC複合体中へのローディングの効率は、重度に修飾されたポリヌクレオチドについて変化する場合があるので、本発明の一態様においては、効率的なガイド鎖のローディングを促進するために、デュプレックスポリヌクレオチドは、ガイド鎖(第1のポリヌクレオチド)上のヌクレオチド9、11、12、13または14と、センス鎖(第2のポリヌクレオチド)上の反対のヌクレオチドとの間のミスマッチを含む。
より詳細な本発明の側面は、以下のセクションにおいて記載される。
デュプレックスの特徴
本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、2つの別々の相補的な核酸鎖により形成することができる。デュプレックス形成は、標的遺伝子を含有する細胞の内側で起きても外側で起きてもよい。
本明細書において用いられる場合、用語「デュプレックス(duplex)」は、相補的な配列に水素結合している二本鎖(double-stranded)核酸分子の領域を含む。本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、標的遺伝子に対してセンスであるヌクレオチド配列、および標的遺伝子に対してアンチセンスである相補配列を含み得る。センスおよびアンチセンスヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列に対応し、例えば、標的遺伝子配列と同一であるか、または標的遺伝子の阻害をもたらすために十分に同一(例えば、ほぼ少なくとも約98%同一、96%同一、94%、90%同一、85%同一または80%同一)である。
ある態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、その全長にわたって二本鎖である、すなわち、分子のいずれの末端においても突出する一本鎖配列を有さない、すなわち、平滑末端である。他の態様において、個々の核酸分子は、異なる長さのものであってもよい。言い換えると、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、その全長にわたって二本鎖でない。例えば、2つの別々の核酸分子が用いられる場合、分子の一方、例えばアンチセンス配列を含む第1の分子は、それにハイブリダイズする第2の分子より長くてもよい(分子の一部を一本鎖とする)。同様に、単一の核酸分子が用いられる場合、分子のいずれの末端の部分が一本鎖のままであってもよい。
一態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、ミスマッチおよび/またはループまたはバルジを含むが、オリゴヌクレオチドの長さの少なくとも約70%にわたって二本鎖である。別の態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの長さの少なくとも約80%にわたって二本鎖である。別の態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの長さの少なくとも約90%〜95%にわたって二本鎖である。別の態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの長さの少なくとも約96%〜98%にわたって二本鎖である。ある態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個までのミスマッチを含む。
修飾
本発明のヌクレオチドは、糖部分、ホスホジエステル結合および/または塩基を含む、多様な位置において修飾することができる。
一部の態様において、ヌクレオシドの塩基部分が修飾されていてもよい。例えば、ピリミジン塩基は、ピリミジン環の2、3、4、5、および/または6位において修飾されていてもよい。一部の態様において、シトシンの環外のアミンは、修飾されていてもよい。プリン塩基もまた修飾されていてもよい。例えば、プリン塩基は、1、2、3、6、7、または8位において修飾されていてもよい。一部の態様において、アデニンの環外のアミンは、修飾されていてもよい。一部の場合において、塩基部分の環中の窒素原子は、炭素などの別の原子で置換されていてもよい。塩基部分への修飾は、任意の好適な修飾であってよい。修飾の例は、当業者に既知である。一部の態様において、塩基修飾として、アルキル化プリンまたはピリミジン、アシル化プリンまたはピリミジンまたは他のヘテロ環が挙げられる。
一部の態様において、ピリミジンは、5位において修飾されていてもよい。例えば、ピリミジンの5位は、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アシル基またはそれらの置換された誘導体により修飾されていてもよい。他の例において、ピリミジンの5位は、ヒドロキシル基またはアルコキシル基またはそれらの置換された誘導体で修飾されていてもよい。また、ピリミジンのN4位は、アルキル化されていてもよい。なお別の例において、ピリミジンの5−6結合は飽和していてもよく、ピリミジン環中の窒素原子は炭素原子により置換されていてもよく、および/またはO2およびO4原子は硫黄原子で置換されていてもよい。他の修飾もまた可能であることが理解されるべきである。
他の例において、プリンのN7位および/またはN2および/またはN3位は、アルキル基またはその置換された誘導体で修飾されていてもよい。さらなる例において、第3の環が、プリンの2環系に縮合していてもよく、および/または、プリンの環系中の窒素原子が、炭素原子により置換されていてもよい。他の修飾もまた可能であることが理解されるべきである。
5位において修飾されたピリミジンの非限定的な例は、米国特許第5591843号、米国特許第7,205,297号、米国特許第6,432,963号および米国特許第6,020,483号において開示され;N4位において修飾されたピリミジンの非限定的な例は、米国特許第5,580,731号において開示され;8位において修飾されたプリンの非限定的な例は、米国特許第6,355,787号および米国特許第5,580,972号において開示され;N6位において修飾されたプリンの非限定的な例は、米国特許第4,853,386号、米国特許第5,789,416号、および米国特許第7,041,824号において開示され;および、2位において修飾されたプリンの非限定的な例は、米国特許第4,201,860号および米国特許第5,587,469号において開示され、これらの全ては、本明細書において参考として組み込まれる。
修飾された塩基の非限定的な例として、N4,N4−エタノシトシン、7−デアザキサントシン、7−デアザグアノシン、8−オキソ−N6−メチルアデニン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニル−アデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル(methylpseudouracil)、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、シュードウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリンが挙げられる。一部の態様において、塩基部分は、プリンまたはピリミジン以外のヘテロ環式塩基であってもよい。ヘテロ環式塩基は、任意に修飾および/または置換されていてよい。
糖部分は、天然の未修飾糖、例えば単糖(ペントース、例えばリボース、デオキシリボースなど)、修飾糖および糖アナログを含む。一般に、可能なヌクレオモノマーの修飾、特に糖部分のものとして、例えば、ヒドロキシル基の1または2以上の、ハロゲン、ヘテロ原子、脂肪族基での置き換え、またはヒドロキシル基の、エーテル、アミン、チオールなどとしての官能化が挙げられる。
一つの特に有用な修飾ヌクレオモノマーの群は、2’−O−メチルヌクレオチドである。かかる2’−O−メチルヌクレオチドは、「メチル化されている」として言及される場合があり、対応するヌクレオチドは、非メチル化ヌクレオチドからアルキル化により、または直接的にメチル化ヌクレオチド試薬から、作られる。修飾ヌクレオモノマーは、未修飾ヌクレオモノマーと組み合わせて用いてもよい。例えば、本発明のオリゴヌクレオチドは、メチル化および非メチル化ヌクレオモノマーの両方を含んでもよい。
一部の例示的な修飾ヌクレオモノマーとして、糖または骨格が修飾されたリボヌクレオチドが挙げられる。修飾リボヌクレオチドは、5’位で修飾されたウリジンまたはシチジン、例えば5’−(2−アミノ)プロピルウリジンおよび5’−ブロモウリジン;8位で修飾されたアデノシンおよびグアノシン、例えば8−ブロモグアノシン;デアザヌクレオチド、例えば7−デアザ−アデノシン;ならびにN−アルキル化ヌクレオチド、例えばN6−メチルアデノシンなどの、天然に存在しない塩基を(天然に存在する塩基の代わりに)含んでもよい。また、糖修飾リボヌクレオチドは、H、アルコキシ(もしくはOR)、Rもしくはアルキル、ハロゲン、SH、SR、アミノ(NH2、NHR、NR2など)、またはCN基で置き換えられた2’−OH基を有していてもよく、ここで、Rは、低級アルキル、アルケニルまたはアルキニルである。
修飾リボヌクレオチドはまた、修飾基、例えばホスホロチオエート基により置き換えられた、隣接するリボヌクレオチドに連結するホスホジエステル基を有してもよい。より一般的には、多様なヌクレオチド修飾を組み合わせてもよい。
アンチセンス(ガイド)鎖は、標的遺伝子の少なくとも一部に対して実質的に同一であり得るが、少なくとも塩基対形成に関連して、配列は、有用であるために、例えば標的遺伝子の表現型の発現を阻害するために、完全に同一である必要はない。一般に、より高い相同性は、より短いアンチセンス遺伝子の使用を埋め合わせるために用いられ得る。一部のケースにおいて、アンチセンス鎖は、一般に、標的遺伝子に対して(アンチセンス方向において)実質的に同一である。
2’−O−メチル修飾RNAの使用はまた、細胞ストレス応答を最少化することが望ましい状況においても有益であり得る。2’−O−メチルヌクレオモノマーを有するRNAは、未修飾RNAを認識すると考えられる細胞機構によって認識され得ない。2’−O−メチル化された、または部分的に2’−O−メチル化されたRNAは、標的RNA阻害を維持しつつ、二本鎖核酸に対するインターフェロン応答を回避し得る。これは、例えば、インターフェロンまたは他の細胞ストレス応答を回避するために、インターフェロン応答を誘導する短いRNAi(例えばsiRNA)配列、および、インターフェロン応答を誘導し得るより長いRNAi配列の両方において、有用であり得る。
全体として、修飾糖として、D−リボース、2’−O−アルキル(2’−O−メチルおよび2’−O−エチルを含む)、すなわち、2’−アルコキシ、2’−アミノ、2’−S−アルキル、2’−ハロ(2’−フルオロを含む)、2’−メトキシエトキシ、2’−アリルオキシ(−OCH2CH=CH2)、2’−プロパルギル、2’−プロピル、エチニル、エテニル、プロペニルならびにシアノなどが挙げられる。一態様において、糖部分は、記載されるように(Augustyns, K., et al., Nucl. Acids. Res. 18:4711 (1992))、ヘキトースであってもよく、オリゴヌクレオチド中に組み込まれてもよい。例示的なヌクレオモノマーは、例えば、米国特許第5,849,902号において見出すことができ、これは本明細書において参考として組み込まれる。
特定の官能基および化学用語の定義は、以下により詳細に記載される。本発明の目的のために、化学元素は、元素周期表、CASバージョン、Handbook of Chemistry and Physics、第75版の内表紙に従って同定され、具体的な官能基は、そこにおいて一般的に定義されるとおりである。さらに、有機化学の一般的な原理、ならびに具体的な官能部分および反応性は、Organic Chemistry、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausalito(1999年)において記載され、その全内容は本明細書において参考として組み込まれる。
本発明の特定の化合物は、特定の幾何異性体または立体異性体の形態で存在してもよい。本発明は、シス−およびトランス−異性体、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、ならびにそれらの他の混合物を含む全てのかかる化合物を、本発明の範囲内に該当するものとして企図する。アルキル基などの置換基中に、さらなる不斉炭素原子が存在してもよい。かかる全ての異性体ならびにそれらの混合物が本発明に含まれることが意図される。
多様なあらゆる異性体比のものを含む異性体混合物を、本発明により利用することができる。例えば、2種のみの異性体が組み合わされる場合、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10、95:5、96:4、97:3、98:2、99:1、または100:0の異性体比を含む混合物は、全て本発明により企図される。当業者は、より複雑な異性体混合物について類似の比が企図されることを容易に理解するであろう。
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが所望される場合、それは、不斉合成により、またはキラル補助基(chiral auxiliary)による誘導により、調製することができ、ここで、生じるジアステレオマー混合物を分離し、補助基(auxiliary group)を切断して、純粋な所望のエナンチオマーを得る。あるいは、分子がアミノなどの塩基性官能基またはカルボキシルなどの酸性官能基を含む場合は、適切な光学活性酸または塩基により、ジアステレオマーの塩を形成し、その後、形成されたジアステレオマーを、当該分野において周知の分別再結晶またはクロマトグラフィー法により分割し、その後、純粋なエナンチオマーを回収する。
ある態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、3’および5’末端を含む(環状オリゴヌクレオチドを除く)。一態様において、オリゴヌクレオチドの3’および5’末端は、例えば、3’または5’結合を改変することにより(例えば、米国特許第5,849,902号およびWO 98/13526)、ヌクレアーゼから実質的に保護されていてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドは、「ブロッキング基」を含有させることにより耐性であり得る。用語「ブロッキング基」は、本明細書において用いられる場合、オリゴヌクレオチドまたはヌクレオモノマーに、保護基または合成のためのカップリング基のいずれかとして結合することができる置換基(例えば、OH基以外のもの)を指す(例えば、FITC、プロピル(CH2−CH2−CH3)、グリコール(−O−CH2−CH2−O−)ホスホナート(PO3 2−)、ホスホン酸水素(hydrogen phosphonate)、またはホスホロアミダイト)。「ブロッキング基」はまた、「エンドブロッキング基」または「エクソヌクレアーゼブロッキング基」を含み、これは、修飾ヌクレオチドおよび非ヌクレオチドエクソヌクレアーゼ耐性構造を含むオリゴヌクレオチドの5’および3’末端を保護する。
例示的なエンドブロッキング基は、キャップ構造(例えば、7−メチルグアノシンキャップ)、反転(inverted)ヌクレオモノマー、例えば、3’−3’または5’−5’末端の反転(inversion)によるもの(例えば、Ortiagao et al. 1992. Antisence Res. Dev. 2:129を参照)、メチルホスホナート、ホスホロアミダイト、非ヌクレオチド基(例えば、非ヌクレオチドリンカー、アミノリンカー、抱合体)などを含む。3’末端のヌクレオモノマーは、修飾糖部分を含んでもよい。3’末端のヌクレオモノマーは、3’−Oを含み、これは任意に、オリゴヌクレオチドの3’−エクソヌクレアーゼ分解を防止するブロッキング基により置換されていてもよい。例えば、3’−ヒドロキシルは、3’→3’ヌクレオチド間結合を通して、ヌクレオチドに対してエステル化されていてもよい。例えば、アルキルオキシラジカルは、メトキシ、エトキシまたはイソプロポキシ、好ましくはエトキシであってよい。任意に、3’末端において3’→3’結合したヌクレオチドは、置換結合により結合していてもよい。ヌクレアーゼ分解を低減するために、5' most 3'→5'結合(5' most 3'→5' linkage)は、修飾された結合、例えば、ホスホロチオエートまたはP−アルキルオキシホスホトリエステル結合であってもよい。好ましくは、2つの5' most 3'→5'結合は修飾された結合である。任意に、5’末端のヒドロキシ部分は、リン含有部分、リン含有部分、例えば、リン酸、ホスホロチオエートまたはP−エトキシリン酸とエステル化されていてもよい。
当業者は、本明細書において記載されるとおり、合成方法が多様な保護基を利用することを理解するであろう。用語「保護基」により、本明細書において用いられる場合、多官能性化合物中の他の反応部位において反応が選択的に行われるように、特定の官能部分、例えばO、SまたはNが一時的に遮断されることが意味される。ある態様において、保護基は、良好な収率で選択的に反応し、計画された反応に好適である、保護された基質を生じ;保護基は、容易に利用可能で、他の官能基を攻撃しない好ましくは非毒性の試薬により、良好な収率で選択的に除去可能でなければならず;保護基は、(より好ましくは、新たな不斉中心を生じることなく)容易に分離可能な誘導体を形成し;および、保護基は、さらなる反応の部位を回避するために、最少のさらなる官能性を有する。
本明細書において詳述されるように、酸素、硫黄、窒素および炭素保護基を利用することができる。ヒドロキシル保護基として、メチル、メトキシルメチル(MOM)、メチルチオメチル(MTM)、t−ブチルチオメチル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル(SMOM)、ベンジルオキシメチル(BOM)、p−メトキシベンジルオキシメチル(PMBM)、(4−メトキシフェノキシ)メチル(p−AOM)、グアヤコールメチル(GUM)、t−ブトキシメチル、4−ペンテニルオキシメチル(POM)、シロキシメチル、2−メトキシエトキシメチル(MEM)、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEMOR)、テトラヒドロピラニル(THP)、3−ブロモテトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1−メトキシシクロヘキシル、4−メトキシテトラヒドロピラニル(MTHP)、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニルS,S−ジオキシド、1−[(2−クロロ−4−メチル)フェニル]−4−メトキシピペリジン−4−イル(CTMP)、1,4−ジオキサン−2−イル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、2,3,3a,4,5,6,7,7a−オクタヒドロ−7,8,8−トリメチル−4,7−メタノベンゾフラン−2−イル、1−エトキシエチル、1−(2−クロロエトキシ)エチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル、1−メチル−1−ベンジルオキシ−2−フルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−トリメチルシリルエチル、2−(フェニルセレニル(selenyl))エチル、t−ブチル、アリル、p−クロロフェニル、p−メトキシフェニル、2,4−ジニトロフェニル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、o−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、p−フェニルベンジル、2−ピコリル、4−ピコリル、3−メチル−2−ピコリル N−オキシド、ジフェニルメチル、p,p’−ジニトロベンズヒドリル、5−ジベンゾスベリル、トリフェニルメチル、α−ナフチルジフェニルメチル、p−メトキシフェニルジフェニルメチル、ジ(p−メトキシフェニル)フェニルメチル、トリ(p−メトキシフェニル)メチル、4−(4’−ブロモフェナシルオキシフェニル)ジフェニルメチル、4,4’,4’’−トリス(4,5−ジクロロフタルイミドフェニル)メチル、4,4’,4’’−トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル、4,4’,4’’−トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル、3−(イミダゾール−1−イル)ビス(4’,4’’−ジメトキシフェニル)メチル、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−1’−ピレニルメチル、9−アントリル、9−(9−フェニル)キサンテニル、9−(9−フェニル−10−オキソ)アントリル、1,3−ベンゾジチオラン(thiolan)−2−イル、ベンゾイソチアゾリルS,S−ジオキシド、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、ジメチルテキシル(thexyl)シリル、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリベンジルシリル、トリ-p−キシリルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル(DPMS)、t−ブチルメトキシフェニルシリル(TBMPS)、ホルマート(formate)、ベンゾイルホルマート、アセテート、クロロアセテート、ジクロロアセテート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、メトキシアセテート、トリフェニルメトキシアセテート、フェノキシアセテート、p−クロロフェノキシアセテート、3−フェニルプロピオナート、4−オキソペンタノアート(レブリナート(levulinate))、4,4−(エチレンジチオ)ペンタノアート(レブリノイルジチオアセタール)、ピバロアート(pivaloate)、アダマントアート(adamantoate)、クロトナート、4−メトキシクロトナート、ベンゾアート、p−フェニルベンゾアート、2,4,6−トリメチルベンゾアート(メシトアート(mesitoate))、アルキルメチルカルボナート、9−フルオレニルメチルカルボナート(Fmoc)、アルキルエチルカルボナート、アルキル2,2,2−トリクロロエチルカルボナート(Troc)、2−(トリメチルシリル)エチルカルボナート(TMSEC)、2−(フェニルスルホニル)エチルカルボナート(Psec)、2−(トリフェニルホスホニオ)エチルカルボナート(Peoc)、アルキルイソブチルカルボナート、アルキルビニルカルボナートアルキルアリルカルボナート、アルキルp−ニトロフェニルカルボナート、アルキルベンジルカルボナート、アルキルp−メトキシベンジルカルボナート、アルキル3,4−ジメトキシベンジルカルボナート、アルキルo−ニトロベンジルカルボナート、アルキルp−ニトロベンジルカルボナート、アルキルS−ベンジルチオカルボナート、4−エトキシ−1−ナフチル(napththyl)カルボナート、メチルジチオカルボナート、2−インドベンゾアート、4−アジドブチラート、4−ニトロ−4−メチルペンタノアート、o−(ジブロモメチル)ベンゾアート、2−ホルミルベンゼンスルホナート、2−(メチルチオメトキシ)エチル、4−(メチルチオメトキシ)ブチラート、2−(メチルチオメトキシメチル)ベンゾアート、2,6−ジクロロ−4−メチルフェノキシアセテート、2,6−ジクロロ−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノキシアセテート、2,4−ビス(1,1−ジメチルプロピル)フェノキシアセテート、クロロジフェニルアセテート、イソブチラート、モノスクシノアート、(E)−2−メチル−2−ブテノアート、o−(メトキシカルボニル)ベンゾアート、α−ナフトアート、ニトラート、アルキルN,N,N’,N’−テトラメチルホスホロジアミダート、アルキルN−フェニルカルバメート、ボラート、ジメチルホスフィノチオイル(thioyl)、アルキル2,4−ジニトロフェニルスルフェナート、スルファート、メタンスルホナート(メシラート)、ベンジルスルホナート、およびトシラート(Ts)が挙げられる。
1,2−または1,3−ジオール類を保護するために、保護基として、メチレンアセタール,エチリデンアセタール、1−t−ブチルエチリデンケタール、1−フェニルエチリデンケタール、(4−メトキシフェニル)エチリデンアセタール、2,2,2−トリクロロエチリデンアセタール、アセトニド、シクロペンチリデンケタール、シクロヘキシリデンケタール、シクロヘプチリデンケタール、ベンジリデンアセタール、p−メトキシベンジリデンアセタール、2,4−ジメトキシベンジリデンケタール、3,4−ジメトキシベンジリデンアセタール、2−ニトロベンジリデンアセタール、メトキシメチレンアセタール、エトキシメチレンアセタール、ジメトキシメチレンオルトエステル、1−メトキシエチリデンオルトエステル、1−エトキシエチリデン(ethoxyethylidine)オルトエステル、1,2−ジメトキシエチリデンオルトエステル、α−メトキシベンジリデンオルトエステル、1−(N,N−ジメチルアミノ)エチリデン誘導体、α−(N,N’−ジメチルアミノ)ベンジリデン誘導体、2−オキサシクロペンチリデンオルトエステル、ジ−t−ブチルシリレン基(DTBS)、1,3−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサニリデン)誘導体(TIPDS)、テトラ−t−ブトキシジシロキサン−1,3−ジイリデン誘導体(TBDS)、環状カルボナート類、環状ボロナート類、エチルボロナート、およびフェニルボロナートが挙げられる。
アミノ保護基として、メチルカルバメート、エチルカルバメート、9−フルオレニルメチルカルバメート(Fmoc)、9−(2−スルホ)フルオレニルメチルカルバメート、9−(2,7−ジブロモ)フルオロエニルメチルカルバメート、2,7−ジ−t−ブチル−[9−(10,10−ジオキソ−10,10,10,10−テトラヒドロチオキサンチル)]メチルカルバメート(DBD-Tmoc)、4−メトキシフェナシルカルバメート(Phenoc)、2,2,2−トリクロロエチルカルバメート(Troc)、2−トリメチルシリルエチルカルバメート(Teoc)、2−フェニルエチルカルバメート(hZ)、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルカルバメート(Adpoc)、1,1−ジメチル−2−ハロエチルカルバメート、1,1−ジメチル−2,2−ジブロモエチルカルバメート(DB-t-BOC)、1,1−ジメチル−2,2,2−トリクロロエチルカルバメート(TCBOC)、1−メチル−1−(4−ジフェニリル)エチルカルバメート(Bpoc)、1−(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−1−メチルエチルカルバメート(t-Bumeoc)、2−(2’−および4’−ピリジル)エチルカルバメート(Pyoc)、2−(N,N−ジシクロヘキシルカルボキサミド)エチルカルバメート、t−ブチルカルバメート(BOC)、1−アダマンチルカルバメート(Adoc)、ビニルカルバメート(Voc)、アリルカルバメート(Alloc)、1−イソプロピルアリルカルバメート(Ipaoc)、シンナミルカルバメート(Coc)、4−ニトロシンナミルカルバメート(Noc)、8−キノリルカルバメート、N−ヒドロキシピペリジニルカルバメート、アルキルジチオカルバメート、ベンジルカルバメート(Cbz)、p−メトキシベンジルカルバメート(Moz)、p−ニトベンジル(nitobenzyl)カルバメート、p−ブロモベンジルカルバメート、p−クロロベンジルカルバメート、2,4−ジクロロベンジルカルバメート、4−メチルスルフィニルベンジルカルバメート(Msz)、9−アントリルメチルカルバメート、ジフェニルメチルカルバメート、2−メチルチオエチルカルバメート、2−メチルスルホニルエチルカルバメート、2−(p−トルエンスルホニル)エチルカルバメート、[2−(1,3−ジチアニル)]メチルカルバメート(Dmoc)、4−メチルチオフェニルカルバメート(Mtpc)、2,4−ジメチルチオフェニルカルバメート(Bmpc)、2−ホスホニオエチルカルバメート(Peoc)、2−トリフェニルホスホニオイソプロピルカルバメート(Ppoc)、1,1−ジメチル−2−シアノエチルカルバメート、m−クロロ−p−アシルオキシベンジルカルバメート、p−(ジヒドロキシボリル)ベンジルカルバメート、5−ベンゾイソオキサゾリルメチルカルバメート、2−(トリフルオロメチル)−6−クロモニルメチルカルバメート(Tcroc)、m−ニトロフェニルカルバメート、3,5−ジメトキシベンジルカルバメート、o−ニトロベンジルカルバメート、3,4−ジメトキシ−6−ニトロベンジルカルバメート、フェニル(o−ニトロフェニル)メチルカルバメート、フェノチアジニル−(10)−カルボニル誘導体、N’−p−トルエンスルホニルアミノカルボニル誘導体、N’−フェニルアミノチオカルボニル誘導体、t−アミルカルバメート、S−ベンジルチオカルバメート、p−シアノベンジルカルバメート、シクロブチルカルバメート、シクロヘキシルカルバメート、シクロペンチルカルバメート、シクロプロピルメチルカルバメート、p−デシルオキシベンジルカルバメート、2,2−ジメトキシカルボニルビニルカルバメート、o−(N,N−ジメチルカルボキサミド)ベンジルカルバメート、1,1−ジメチル−3−(N,N−ジメチルカルボキサミド)プロピルカルバメート、1,1−ジメチルプロピニルカルバメート、ジ(2−ピリジル)メチルカルバメート、2−フラニルメチルカルバメート、2−ヨードエチルカルバメート、イソボルニル(isoborynl)カルバメート、イソブチルカルバメート、イソニコチニルカルバメート、p−(p’−メトキシフェニルアゾ)ベンジルカルバメート、1−メチルシクロブチルカルバメート、1−メチルシクロヘキシルカルバメート、1−メチル−1−シクロプロピルメチルカルバメート、1−メチル−1−(3,5−ジメトキシフェニル)エチルカルバメート、1−メチル−1−(p−フェニルアゾフェニル)エチルカルバメート、1−メチル−1−フェニルエチルカルバメート、1−メチル−1−(4−ピリジル)エチルカルバメート、フェニルカルバメート、p−(フェニルアゾ)ベンジルカルバメート、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニルカルバメート、4−(トリメチルアンモニウム)ベンジルカルバメート、2,4,6−トリメチルベンジルカルバメート、ホルムアミド、アセタミド、クロロアセタミド、トリクロロアセタミド、トリフルオロアセタミド、フェニルアセタミド、3−フェニルプロパンアミド、ピコリンアミド、3−ピリジルカルボキサミド、N−ベンゾイルフェニルアラニル誘導体、ベンズアミド、p−フェニルベンズアミド、o−ニトフェニルアセタミド、o−ニトロフェノキシアセタミド、アセトアセタミド、(N’−ジチオベンジルオキシカルボニルアミノ)アセタミド、3−(p−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド、3−(o−ニトロフェニル)プロパンアミド、2−メチル−2−(o−ニトロフェノキシ)プロパンアミド、2−メチル−2−(o−フェニルアゾフェノキシ)プロパンアミド、4−クロロブタンアミド、3−メチル−3−ニトロブタンアミド、o−ニトロシンナミド、N−アセチルメチオニン誘導体、o−ニトロベンズアミド、o−(ベンゾイルオキシメチル)ベンズアミド、4,5−ジフェニル−3−オキサゾリン−2−オン、N−フタルイミド、N−ジチアスクシンイミド(Dts)、N−2,3−ジフェニルマレイミド、N−2,5−ジメチルピロール、N−1,1,4,4−テトラメチルジシリルアザシクロペンタン付加体(adduct)(STABASE)、5−置換1,3−ジメチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン−2−オン、5−置換1,3−ジベンジル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン−2−オン、1−置換3,5−ジニトロ−4−ピリドン、N−メチルアミン、N−アリルアミン、N−[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチルアミン(SEM)、N−3−アセトキシプロピルアミン、N−(1−イソプロピル−4−ニトロ−2−オキソ−3−ピロリン−3−イル)アミン、4級アンモニウム塩、N−ベンジルアミン、N−ジ(4−メトキシフェニル)メチルアミン、N−5−ジベンゾスベリルアミン、N−トリフェニルメチルアミン(Tr)、N−[(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチル]アミン(MMTr)、N−9−フェニルフルオレニルアミン(PhF)、N−2,7−ジクロロ−9−フルオレニルメチレンアミン、N−フェロセニルメチルアミノ(Fcm)、N−2−ピコリルアミノN’−オキシド、N−1,1−ジメチルチオメチレンアミン、N−ベンジリデンアミン、N−p−メトキシベンジリデンアミン、N−ジフェニルメチレンアミン、N−[(2−ピリジル)メシチル]メチレンアミン、N−(N’,N’−ジメチルアミノメチレン)アミン、N,N’−イソプロピリデンジアミン、N−p−ニトロベンジリデンアミン、N−サリチリデンアミン、N−5−クロロサリチリデンアミン、N−(5−クロロ−2−ヒドロキシフェニル)フェニルメチレンアミン、N−シクロヘキシリデンアミン、N−(5,5−ジメチル−3−オキソ−1−シクロヘキセニル)アミン、N−ボラン誘導体、N−ジフェニルボリン酸誘導体、N−[フェニル(ペンタカルボニルクロム−またはタングステン)カルボニル]アミン、N−銅キレート、N−亜鉛キレート、N−ニトロアミン、N−ニトロソアミン,アミンN−オキシド、ジフェニルホスフィンアミド(Dpp)、ジメチルチオホスフィンアミド(Mpt)、ジフェニルチオホスフィンアミド(Ppt)、ジアルキルホスホルアミダート、ジベンジルホスホルアミダート、ジフェニルホスホルアミダート、ベンゼンスルフェンアミド、o−ニトロベンゼンスルフェンアミド(Nps)、2,4−ジニトロベンゼンスルフェンアミド、ペンタクロロベンゼンスルフェンアミド、2−ニトロ−4−メトキシベンゼンスルフェンアミド、トリフェニルメチルスルフェンアミド、3−ニトロピリジンスルフェンアミド(Npys)、p−トルエンスルホンアミド(Ts)、ベンゼンスルホンアミド、2,3,6,−トリメチル−4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Mtr)、2,4,6−トリメトキシベンゼンスルホンアミド(Mtb)、2,6−ジメチル−4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Pme)、2,3,5,6−テトラメチル−4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Mte)、4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Mbs)、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホンアミド(Mts)、2,6−ジメトキシ−4−メチルベンゼンスルホンアミド(iMds)、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホンアミド(Pmc)、メタンスルホンアミド(Ms)、β−トリメチルシリルエタンスルホンアミド(SES)、9−アントラセンスルホンアミド、4−(4’,8’−ジメトキシナフチルメチル)ベンゼンスルホンアミド(DNMBS)、ベンジルスルホンアミド、トリフルオロメチルスルホンアミド、およびフェナシルスルホンアミドが挙げられる。
例示的な保護基は、本明細書において詳述される。しかし、本発明がこれらの保護基に限定されることを意図されないことが理解されるであろう。むしろ、上記の分類を用いて、多様なさらなる等価の保護基を容易に同定することができ、本発明の方法において利用することができる。さらに、多様な保護基が、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Greene, T.W.およびWuts, P.G.編、John Wiley & Sons、New York(1999年)において記載され、その全内容は、本明細書により参考として組み込まれる。
本明細書において記載されるように、化合物が、あらゆる数の置換基または官能部分により置換されてもよいことが理解されるであろう。一般に、用語「置換される」とは、当該用語が用語「任意に」により先行されるか否かにかかわらず、および本発明の式中に置換基が含まれるか否かにかかわらず、所与の構造における水素ラジカルの、特定の置換基のラジカルによる置き換えを指す。所与のあらゆる構造における1つより多くの位置が、特定の群より選択される1つより多くの置換基により置換される場合、全ての位置において、置換基は同じであっても異なっていてもい。本明細書において用いられる場合、用語「置換される」は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことを企図される。広範な側面において、許容される置換基は、非環式および環式の、分枝鎖状および非分枝鎖状の、炭素環式およびヘテロ環式の、芳香族および非芳香族の、有機化合物の置換基を含む。窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/または本明細書において記載される当該ヘテロ原子の原子価を満たすあらゆる許容される有機化合物の置換基を有してもよい。さらに、本発明は、有機化合物の許容される置換基によりあらゆる様式において決して限定されることを意図されない。本発明により表わされる置換基および可変の組み合わせは、好ましくは、例えば感染性疾患または増殖性障害の処置において有用な安定な化合物の形成をもたらすものである。用語「安定な」とは、本明細書において用いられる場合、好ましくは、製造を可能にするために十分な安定性を保有し、ならびに検出されるために十分な期間、および好ましくは本明細書において詳述される目的のために有用である十分な期間にわたり当該化合物の完全性を維持する化合物を指す。
用語「脂肪族」とは、本明細書において用いられる場合、飽和および不飽和の両方の、直鎖(すなわち非分枝鎖状)、分枝鎖状、非環式、環式、または多環式の、脂肪側炭化水素を含み、これは任意に1または2以上の官能基により置換されている。当業者には理解されるであろうが、「脂肪族」として、本明細書において、限定されないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル部分が挙げられることを意図する。したがって、本明細書において用いられる場合、用語「アルキル」は、直鎖状、分枝鎖状および環式アルキル基を含む。同様の慣習が、「アルケニル」「アルキニル」などの他の一般的用語に適用される。さらに、本明細書において用いられる場合、用語「アルキル」「アルケニル」「アルキニル」などは、置換および未置換の基の両方を包含する。ある態様において、本明細書において用いられる場合、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するこれらのアルキル基(環式、非環式、置換、未置換、分枝鎖状または非分枝鎖状)を示すように用いられる。
ある態様において、本発明において用いられるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。ある他の態様において、本発明において用いられるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜10個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の態様において、本発明において用いられるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。なお他の態様において、本発明において用いられるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜6個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の態様において、本発明において用いられるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜4個の炭素原子を含む。したがって、例示的な脂肪族基として、限定されないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、−CH2−シクロプロピル、ビニル、アリル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロブチル、−CH2−シクロブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、シクロペンチル、−CH2−シクロペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、シクロヘキシル、−CH2−シクロヘキシル部分などが挙げられ、これらもまた、1または2以上の置換基を有していてもよい。アルケニル基として、限定されないが、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イルなどが挙げられる。代表的なアルキニル基として、限定されないが、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニルなどが挙げられる。
本発明の化合物の上記の脂肪族(および他の)部分の置換基の一部の例として、限定されないが、脂肪族;ヘテロ脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アリールアルキル;ヘテロアリールアルキル;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;−F;−Cl;−Br;−I;−OH;−NO2;−CN;−CF3;−CH2CF3;−CHCl2;−CH2OH;−CH2CH2OH;−CH2NH2;−CH2SO2CH3;−C(O)Rx;−CO2(Rx);−CON(Rx)2;−OC(O)Rx;−OCO2Rx;−OCON(Rx)2;−N(Rx)2;−S(O)2Rx;−NRx(CO)Rxが挙げられ、ここで、Rxの各々の出現は、独立して、限定されないが、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを含み、ここで、上および本明細書において記載される脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル置換基のいずれも、置換されていても未置換であっても、分枝鎖状であっても非分枝鎖状であっても、環式であっても非環式であってもよく、およびここで、上および本明細書において記載されるアリールまたはヘテロアリール置換基のいずれも、置換されていても未置換であってもよい。一般的に適用可能な置換基のさらなる例は、本明細書において記載される具体的な態様により説明される。
用語「ヘテロ脂肪族」とは、本明細書において用いられる場合、例えば炭素原子の位置において1または2以上の酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素原子を含む脂肪族部分を指す。ヘテロ脂肪族部分は、分枝鎖状、非分枝鎖状、環式または非環式であってよく、モルホリノ、ピロリジニルなどの飽和および不飽和のヘテロ環を含む。ある態様において、ヘテロ脂肪族部分は、その上の1または2以上の水素原子の、限定されないが、脂肪族;ヘテロ脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アリールアルキル;ヘテロアリールアルキル;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;−F;−Cl;−Br;−I;−OH;−NO2;−CN;−CF3;−CH2CF3;−CHCl2;−CH2OH;−CH2CH2OH;−CH2NH2;−CH2SO2CH3;−C(O)Rx;−CO2(Rx);−CON(Rx)2;−OC(O)Rx;−OCO2Rx;−OCON(Rx)2;−N(Rx)2;−S(O)2Rx;−NRx(CO)Rxを含む1または2以上の部分による独立した置き換えにより置換され、ここで、Rxの各々の出現は、独立して、限定されないが、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを含み、ここで、上または本明細書において記載される脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル置換基のいずれも、置換であっても未置換であっても、分枝鎖状であっても非分枝鎖状であっても、環式であっても非環式であってもよく、ここで、上または本明細書において記載されるアリールまたはヘテロアリール置換基のいずれも、置換されていても未置換であってもよい。一般的に適用可能な置換基のさらなる例は、本明細書において記載される具体的な態様により説明される。
用語「ハロ」および「ハロゲン」は、本明細書において記載される場合、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を指す。
用語「アルキル」として、直鎖状アルキル基(例えば、メチル,エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、分枝鎖状アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、イソブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基が挙げられる。ある態様において、直鎖状または分枝鎖状アルキルは、6個またはそれ未満(例えば、直鎖についてはC1〜C6、分枝鎖についてはC3〜C6)、より好ましくは4個またはそれ未満の炭素原子をその骨格中に有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、3〜8個の炭素原子をその環構造中に有し、より好ましくは5または6個の炭素をその環構造中に有する。用語C1〜C6は、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を含む。
さらに、他に特記されない限りにおいて、用語アルキルは、「未置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含み、その後者は、炭化水素骨格の1または2以上の炭素上の水素を置き換える、独立して選択された置換基を有するアルキル部分を指す。かかる置換基として、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。シクロアルキルは、例えば、上記の置換基によりさらに置換されていてもよい。「アルキルアリール」または「アリールアルキル」部分は、アリールにより置換されたアルキル(例えば、フェニルメチル(ベンジル))である。用語「アルキル」はまた、天然または非天然のアミノ酸の側鎖を含む。用語「n−アルキル」は、直鎖状(すなわち、非分枝鎖状)の未置換アルキル基を意味する。
用語「アルケニル」は、長さおよび可能な置換に関して上記のアルキルと類似する不飽和脂肪族基を含むが、少なくとも1つの二重結合を含む。例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル基(例えば、エチレニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなど)、分枝鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニル置換シクロアルケニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルケニル基を含む。ある態様において、直鎖状または分枝鎖状アルケニル基は、6個またはそれより少ない炭素原子をその骨格中に有する(例えば、直鎖についてはC2〜C6、分枝鎖についてはC3〜C6)。同様に、シクロアルケニル基は、3〜8個の炭素原子をそれらの環構造中に有していてもよく、より好ましくは、5または6個の炭素を環構造中に有していてもよい。用語C2〜C6は、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
さらに、他に特記されない限りにおいて、用語アルケニルは、「未置換アルケニル」および「置換アルケニル」の両方を含み、これらの後者は、炭化水素骨格の1または2以上の炭素上の水素を置き換える、独立して選択される置換基を有するアルケニル部分を指す。かかる置換基として、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。
用語「アルキニル」は、長さおよび可能な置換に関して上記のアルキルと類似する不飽和脂肪族基を含むが、少なくとも1つの三重結合を含む。例えば、用語「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなど)、分枝鎖アルキニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルキニル基を含む。ある態様において、直鎖状または分枝鎖状アルキニル基は、6個またはそれより少ない炭素原子をその骨格中に有する(例えば、直鎖についてはC2〜C6、分枝鎖についてはC3〜C6)。用語C2〜C6は、2〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。
さらに、他に特記されない限りにおいて、用語アルキニルは、「未置換アルキニル」および「置換アルキニル」の両方を含み、これらの後者は、炭化水素骨格の1または2以上の炭素上の水素を置き換える、独立して選択される置換基を有するアルキニル部分を指す。かかる置換基として、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族またはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。
炭素の数が他に特記されない限りにおいて、「低級アルキル」は、本明細書において記載される場合、上記のとおりであるが、1〜5個の炭素原子をその骨格構造中に有するアルキル基を意味する。「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、例えば、2〜5個の炭素原子の鎖長を有する。
用語「アルコキシ」は、酸素原子に共有結合した、置換および未置換のアルキル、アルケニルおよびアルキニル基を含む。アルコキシ基の例として、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびペントキシ基が挙げられる。置換アルコキシ基の例として、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分などの独立して選択される基で置換されていてもよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例として、限定されないが、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシなどが挙げられる。
用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外のあらゆる元素の原子を含む。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄およびリンである。
用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、−OHまたは−O-(適切な対イオンと共に)を有する基を含む。
用語「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを含む。用語「パーハロゲン化」は、一般に、全ての水素がハロゲン原子により置き換えられる部分を指す。
用語「置換される」は、独立して選択される置換基を含み、当該部分上に位置することができ、かつ当該分子が意図された機能を行うことを可能にする。置換基の例として、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、(CR’R’’)0−3NR’R’’、(CR’R’’)0−3CN、NO2、ハロゲン、(CR’R’’)0−3C(ハロゲン)3、(CR’R’’)0−3CH(ハロゲン)2、(CR’R’’)0−3CH2(ハロゲン)、(CR’R’’)0−3CONR’R’’、(CR’R’’)0−3S(O)1−2NR’R’’、(CR’R’’)0−3CHO、(CR’R’’)0−3O(CR’R’’)0−3H、(CR’R’’)0−3S(O)0−2R’、(CR’R’’)0−3O(CR’R’’)0−3H、(CR’R’’)0−3COR’、(CR’R’’)0−3CO2R’または(CR’R’’)0−3OR’基が挙げられ;ここで、各R’およびR’’は、各々独立して、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニルまたはアリール基であるか、またはR’およびR’’は、一緒になって、ベンジリデン基または−(CH2)2O(CH2)2−基である。
用語「アミン」または「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1つの炭素またはヘテロ原子に共有結合している化合物または部分を含む。用語「アルキルアミノ」は、窒素が少なくとも1つのさらなるアルキル基に結合している基および化合物を含む。用語「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が少なくとも2個のさらなるアルキル基に結合している基を含む。
用語「エーテル」は、2個の異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合した酸素を含む化合物または部分を含む。例えば、用語は、「アルコキシアルキル」を含み、これは、別のアルキル基に共有結合した酸素原子に共有結合した、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を指す。
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、および「オリゴヌクレオチド」は、2または3以上のヌクレオチドのポリマーを指す。ポリヌクレオチドは、DNA、RNAまたはそれらの誘導体もしくは修飾されたバージョンであってよい。ポリヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、分子の安定性、そのハイブリダイゼーションのパラメーターなどを改善するために、塩基部分、糖部分またはホスファート骨格において修飾されていてもよい。ポリヌクレオチドは、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ワイブトキソシン、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシルおよび2,6−ジアミノプリンを含むがこれらに限定されない群より選択される、修飾された塩基部分を含んでもよい。ポリヌクレオチドは、修飾された糖部分(例えば、2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、2’−O−メチルシチジン、アラビノース、およびヘキソース)、ならびに/または修飾されたホスファート部分(例えば、ホスホロチオエートおよび5’−N−ホスホルアミダイト結合)を含んでもよい。ヌクレオチド配列は、代表的には、タンパク質および酵素を作るための細胞の機構により用いられる情報を含む遺伝子情報を運搬する。これらの用語は、二本鎖または一本鎖のゲノムおよびcDNA、RNA、あらゆる合成および遺伝子操作されたポリヌクレオチド、ならびにセンスおよびアンチセンスポリヌクレオチドの両方を含む。これは、一本鎖および二本鎖の分子、すなわち、DNA-DNA、DNA-RNAおよびRNA-RNAハイブリッド、ならびに、アミノ酸骨格に塩基を抱合させることにより形成される「タンパク質核酸」(PNA)を含む。
用語「塩基」は、既知のプリンおよびピリミジンヘテロ環式塩基、デアザプリン、ならびにそれらのアナログ(ヘテロ環式置換アナログ、例えばアミノエトキシフェノキサジンを含む)、誘導体(例えば、1−アルキル−、1−アルケニル−、ヘテロ芳香族−および1−アルキニル誘導体)および互変異性体を含む。プリンの例として、アデニン、グアニン、イノシン、ジアミノプリンおよびキサンチン、ならびにそれらのアナログ(例えば、8−オキソ−N6−メチルアデニンまたは7−ジアザキサンチン)および誘導体が挙げられる。ピリミジンとして、例えば、チミン、ウラシルおよびシトシン、ならびにそれらのアナログ(例えば、5−メチルシトシン、5−メチルウラシル、5−(1−プロピニル)ウラシル、5−(1−プロピニル)シトシンおよび4,4−エタノシトシン)が挙げられる。好適な塩基の他の例として、2−アミノピリジンおよびトリアジン類などの非プリニルおよび非ピリミジニル塩基が挙げられる。
好ましい態様において、本発明のオリゴヌクレオチドのヌクレオモノマーは、RNAヌクレオチドである。別の好ましい態様において、本発明のオリゴヌクレオチドのヌクレオモノマーは、修飾されたRNAヌクレオチドである。したがって、オリゴヌクレオチドは、修飾されたRNAヌクレオチドを含む。
用語「ヌクレオシド」は、糖部分、好ましくはリボースまたはデオキシリボースに共有結合した塩基を含む。好ましいヌクレオシドの例として、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシドが挙げられる。ヌクレオシドはまた、アミノ酸またはアミノ酸アナログに結合した塩基を含み、これは、遊離のカルボキシル基、遊離のアミノ基または保護基を含んでもよい。好適な保護基は、当該分野において周知である(P. G. M. WutsおよびT. W. Greene、「Protective Groups in Organic Synthesis」第2版、Wiley-Interscience、New York(1999年)を参照)。
用語「ヌクレオチド」は、ホスファート基またはホスファートアナログをさらに含む、ヌクレオシドを含む。
核酸分子は、細胞への分子の標的化および/または送達のための疎水性部分と結合していてもよい。ある態様において、疎水性部分は、核酸分子とリンカーを介して結合している。ある態様において、結合は、非共有結合性相互作用を介したものである。他の態様において、結合は、共有結合を介したものである。核酸を疎水性部分と結合させるために、当該分野において既知の任意のリンカーを用いてよい。当該分野において既知のリンカーは、公開された国際PCT出願WO 92/03464、WO 95/23162、WO 2008/021157、WO 2009/021157、WO 2009/134487、WO 2009/126933、米国特許出願公開2005/0107325、米国特許第5,414,077号、米国特許第5,419,966号、米国特許第5,512,667号、米国特許第5,646,126号および米国特許第5,652,359号において記載され、これらは本明細書において参考として組み込まれる。リンカーは、共有結合から複数の原子のリンカー程度に単純であってもよい。リンカーは環式であっても非環式であってもよい。リンカーは、任意に置換されていてもよい。ある態様において、リンカーは、核酸から切断されることができる。ある態様において、リンカーは、生理学的条件下において加水分解されることができる。ある態様において、リンカーは、酵素(例えばエステラーゼまたはホスホジエステラーゼ)により切断されることができる。ある態様において、リンカーは、核酸を疎水性部分から分離させるためのスペーサーエレメントを含む。スペーサーエレメントは、1〜30個の炭素またはヘテロ原子を含むことができる。ある態様において、リンカーおよび/またはスペーサーエレメントは、プロトン化可能な官能基を含む。かかるプロトン化可能な官能基は、核酸分子のエンドソーム脱出を促進することができる。プロトン化可能な官能基はまた、例えば分子の全体的な電荷を中和することで、核酸の細胞への送達を補助することができる。他の態様において、リンカーおよび/またはスペーサーエレメントは、生物学的に不活性である(すなわち、これは生じる核酸分子に生物学的活性または機能を与えない)。
ある態様において、リンカーおよび疎水性部分を有する核酸分子は、本明細書において記載される式のものである。ある態様において、核酸分子は、式:
のものであって、式中、
Xは、NまたはCHであり;
Aは、結合;置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族;または、置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族であり;
R1は、疎水性部分であり;
R2は、水素;酸素保護基;環式または非環式の、置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族;環式または非環式の、置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のアシル;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のアリール;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロアリールであり;および
R3は、核酸である。
ある態様において、分子は、式:
のものである。
ある態様において、分子は、式:
のものである。
ある態様において、分子は、式:
のものである。
ある態様において、分子は、式:
のものである。
ある態様において、Xは、Nである。ある態様において、Xは、CHである。
ある態様において、Aは、結合である。ある態様において、Aは、置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式の、置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式の、置換された分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式の、置換された非分枝鎖状脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式の、置換された非分枝鎖状アルキルである。ある態様において、Aは、非環式の、置換された非分枝鎖状C1〜20アルキルである。ある態様において、Aは、非環式の、置換された非分枝鎖状C1〜12アルキルである。ある態様において、Aは、非環式の、置換された非分枝鎖状C1〜10アルキルである。ある態様において、Aは、非環式の、置換された非分枝鎖状C1〜8アルキルである。ある態様において、Aは、非環式の、置換された非分枝鎖状C1〜6アルキルである。ある態様において、Aは、置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式の、置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式の、置換された分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式の、置換された非分枝鎖状ヘテロ脂肪族である。
ある態様において、Aは、式:
のものである。
ある態様において、Aは、式:
のものである。
ある態様において、Aは、式:
のものである。
ある態様において、Aは、式:
のものである。
ある態様において、Aは、式:
のものである。
ある態様において、Aは、式:
のものである。
ある態様において、Aは、式:
のものであって、式中、
Rの各々の出現は、独立して、天然または非天然のアミノ酸の側鎖であり;および
nは、1〜20の整数である(1および20を含む)。ある態様において、Aは、式:
のものである。
ある態様において、Rの各々の出現は、独立して、天然のアミノ酸の側鎖である。ある態様において、nは、1〜15の整数である(1および15を含む)。ある態様において、nは、1〜10の整数である(1および10を含む)。ある態様において、nは、1〜5の整数である(1および5を含む)。
ある態様において、Aは、式:
のものであって、
式中、nは、1〜20の整数である(1および20を含む)。ある態様において、Aは、式:
のものである。
ある態様において、nは、1〜15の整数である(1および15を含む)。ある態様において、nは、1〜10の整数である(1および10を含む)。ある態様において、nは、1〜5の整数である(1および5を含む)。
ある態様において、Aは、式:
のものであって、
式中、nは、1〜20の整数である(1および20を含む)。ある態様において、Aは、式:
のものである。
ある態様において、nは、1〜15の整数である(1および15を含む)。ある態様において、nは、1〜10の整数である(1および10を含む)。ある態様において、nは、1〜5の整数である(1および5を含む)。
ある態様において、分子は、式:
のものであって、
式中、X、R1、R2およびR3は、本明細書において定義されるとおりであり;および
A’は、置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族;または、置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族である。
ある態様において、A’は、式:
のうちの1つのものである。
ある態様において、Aは、式:
のうちの1つのものである。
ある態様において、Aは、式:
のうちの1つのものである。
ある態様において、Aは、式:
のものである。
ある態様において、Aは、式:
のものである。
ある態様において、R1は、ステロイドである。ある態様において、R1は、コレステロールである。ある態様において、R1は、親油性ビタミンである。ある態様において、R1は、ビタミンAである。ある態様において、R1は、ビタミンEである。
ある態様において、R1は、式:
のものであって、
式中、RAは、置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族;または、置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族である。
ある態様において、R1は、式:
のものである。
ある態様において、R1は、式:
のものである。
ある態様において、R1は、式:
のものである。
ある態様において、R1は、式:
のものである。
ある態様において、R1は、式:
のものである。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものであって、式中、
Xは、NまたはCHであり;
Aは、結合;置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族;または、置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族であり;
R1は、疎水性部分であり;
R2は、水素;酸素保護基;環式または非環式の、置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族;環式または非環式の、置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のアシル;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のアリール;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロアリールであり;および
R3は、核酸である。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものであって、式中、
Xは、NまたはCHであり;
Aは、結合;置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族;または、置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族であり;
R1は、疎水性部分であり;
R2は、水素;酸素保護基;環式または非環式の、置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族;環式または非環式の、置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のアシル;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のアリール;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロアリールであり;および
R3は、核酸である。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものであって、式中、
Xは、NまたはCHであり;
Aは、結合;置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族;または、置換または未置換の、環式または非環式の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族であり;
R1は、疎水性部分であり;
R2は、水素;酸素保護基;環式または非環式の、置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族;環式または非環式の、置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロ脂肪族;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のアシル;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のアリール;置換または未置換の、分枝鎖状または非分枝鎖状のヘテロアリールであり;および
R3は、核酸である。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものである。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものである。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものであって、式中、R3は、核酸である。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものであって、式中、R3は、核酸であり;および
nは、1〜20の整数である(1および20を含む)。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものである。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものである。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものである。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものである。
ある態様において、核酸分子は、式:
のものである。
本明細書において用いる場合、用語「結合(linkage)」は、天然に存在する、隣接するヌクレオモノマーに共有結合する未修飾ホスホジエステル部分(−O−(PO2−)−O−)を含む。本明細書において用いられる場合、用語「置換結合(substitute linkage)」は、ネイティブなホスホジエステル基の、隣接するヌクレオモノマーに共有結合する任意のアナログまたは誘導体を含む。置換結合として、ホスホジエステルアナログ、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートおよびP−エチルキシホスホジエステル(P-ethyoxyphosphodiester)、P−エトキシホスホジエステル、P−アルキルオキシホスホジエステル、メチルホスホナート、およびリンを含有しない結合、例えばアセタールおよびアミドが挙げられる。かかる置換結合は、当該分野において公知である(例えば、Bjergarde et al. 1991. Nucleic Acids Res. 19:5843; Caruthers et al. 1991. Nucleosides Nucleotides. 10:47)。ある態様において、ホスホロチエート(phosphorothiate)結合などの非加水分解性結合が好ましい。
ある態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、疎水性に修飾されたヌクレオチドまたは「疎水性修飾」を含む。本明細書において用いられる場合、「疎水性修飾」は、(1)塩基の全体的な疎水性が著しく増大し、および/または(2)塩基がなお通常のワトソン−クリック相互作用に類似するものを形成することができるように修飾された塩基を指す。幾つかの非限定的な塩基修飾の例として、フェニル、4−ピリジル、2−ピリジル、インドリル、およびイソブチル、フェニル(C6H5OH)などの5位のウリジンおよびシチジン修飾;トリプトファニル(C8H6N)CH2CH(NH2)CO)、イソブチル、ブチル、アミノベンジル;フェニル;およびナフチルが挙げられる。
末端(3’または5’末端)、ループ領域またはsd-rxRNAの任意の他の部分に結合することができる別の型の抱合体は、ステロール、ステロール型分子、ペプチド、低分子、タンパク質などを含む。一部の態様において、sdrxRNAは、1つより多い抱合体(同じまたは異なる化学的性質のもの)を含んでもよい。一部の態様において、抱合体は、コレステロールである。
標的遺伝子特異性を増大させる、またはオフ−ターゲットサイレンシング作用を低減するための別の方法は、ガイド配列の5’末端の2番目のヌクレオチドに対応する位置において、2’修飾(2’−O−メチル修飾など)を導入することである。これにより、ダイサー耐性ヘアピン構造におけるこの2’−修飾の配置が可能になり、それにより、オフ−ターゲットサイレンシングがより少ないか、オフ−ターゲットサイレンシングを有さない、より良好なRNAiコンストラクトを設計することが可能になる。
一態様において、本発明のヘアピンポリヌクレオチドは、DNAである1つの核酸部分と、RNAである1つの核酸部分とを含むことができる。本発明のアンチセンス(ガイド)配列は、RNA様およびDNA様の領域を含む「キメラオリゴヌクレオチド」であってもよい。
語「RNase H活性化領域」は、オリゴヌクレオチド、例えばキメラオリゴヌクレオチドの、当該オリゴヌクレオチドが結合する標的RNA鎖を切断するRNase Hを動員することができる領域を含む。代表的には、RNase活性化領域は、DNAまたはDNA様ヌクレオモノマーの(少なくとも約3〜5、代表的には約3〜12、より代表的には約5〜12、より好ましくは約5〜10の、連続するヌクレオモノマーの)最小コアを含む(例えば、米国特許第5,849,902号を参照)。好ましくは、RNase H活性化領域は、約9個の連続するデオキシリボース含有ヌクレオモノマーを含む。
語「非活性化領域」は、アンチセンス配列、例えばキメラオリゴヌクレオチドの領域であって、RNase Hを動員または活性化しないものを含む。好ましくは、非活性化領域は、ホスホロチオエートDNAを含まない。本発明のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの非活性化領域を含む。一態様において、非活性化領域は、ヌクレアーゼに対して安定であることができるか、または、標的に対して相補的であることおよびオリゴヌクレオチドにより結合される標的核酸分子と水素結合を形成することにより標的に対する特異性を提供することができる。
一態様において、連続するポリヌクレオチドの少なくとも一部は、置換結合、例えばホスホロチオエート結合により結合している。
ある態様において、ガイド配列を超えるヌクレオチドの殆どまたは全ては(2’修飾されていようがいまいが)ホスホロチオエート結合により結合している。かかるコンストラクトは、その血清タンパク質に対するより高いアフィニティーに起因して、薬物動態学が改善されている傾向がある。ポリヌクレオチドの非ガイド配列部分におけるホスホロチオエート結合は、一般に、一旦ガイド鎖がRISCにロードされた後は、ガイド鎖の活性に干渉しない。
本発明のアンチセンス(ガイド)配列は、「モルホリノオリゴヌクレオチド」を含んでもよい。モルホリノオリゴヌクレオチドは、非イオン性であり、RNase H非依存的機構により機能する。モルホリノオリゴヌクレオチドの4つの遺伝子塩基(アデニン、シトシン、グアニン、およびチミン/ウラシル)は、6員のモルホリン環に結合している。モルホリノオリゴヌクレオチドは、例えば、非イオン性ホスホロジアミデート(phosphorodiamidate)サブユニット間結合により、4つの異なるサブユニット型を結合することにより作られる。モルホリノオリゴヌクレオチドは、以下を含む多数の利点を有する:ヌクレアーゼに対する完全な耐性(Antisence & Nucl. Acid Drug Dev. 1996. 6:267);予測可能な標的化(Biochemica Biophysica Acta. 1999. 1489:141);細胞における確実な活性(Antisence & Nucl. Acid Drug Dev. 1997. 7:63);優れた配列特異性(Antisence & Nucl. Acid Drug Dev. 1997. 7:151);最小限の非アンチセンス活性(Biochemica Biophysica Acta. 1999. 1489:141);および簡便な浸透圧または掻爬による送達(Antisence & Nucl. Acid Drug Dev. 1997. 7:291)。モルホリノオリゴヌクレオチドはまた、高用量におけるその非毒性により好ましい。モルホリノオリゴヌクレオチドの調製の議論は、Antisence & Nucl. Acid Drug Dev. 1997. 7:187において見出すことができる。
本明細書において記載される化学修飾は、本明細書において記載されるデータに基づき、一本鎖ポリヌクレオチドのRISC中へのローディングを促進すると考えられる。一本鎖ポリヌクレオチドは、RISC中へのローディング、および遺伝子サイレンシングの誘導において活性であることが示されている。しかし、一本鎖ポリヌクレオチドについての活性のレベルは、デュプレックスポリヌクレオチドと比較した場合に、2〜4桁の規模で、より低いと考えられる。
本発明は、(a)一本鎖ポリヌクレオチドの安定性を著しく増大し、(b)ポリヌクレオチドのRISC複合体への効率的なローディングを促進し、および(c)一本鎖ヌクレオチドの細胞による取り込みを改善する、化学修飾パターンの説明を提供する。図18は、細胞において一本鎖ポリヌクレオチドの効力を達成するために有益であり得る化学修飾パターンの幾つかの非限定的な例を提供する。化学修飾パターンは、リボース修飾、骨格修飾、疎水性ヌクレオシド修飾と、抱合体型修飾との組み合わせを含み得る。さらに、態様の一部において、単一のポリヌクレオチドの5’末端は、化学的にリン酸化されていてもよい。
さらに別の例において、本発明は、RISC阻害性ポリヌクレオチドの機能を改善する化学修飾パターンの説明を提供する。一本鎖ポリヌクレオチドは、基質競合機構を通して、予めロードされたRISC複合体の活性を阻害することが示されている。通常アンタゴマー(antagomer)と称されるこれらの型の分子について、活性には、通常、高濃度が必要であり、in vivoでの送達はあまり効果的ではない。本発明は、(a)一本鎖ポリヌクレオチドの安定性を著しく増大し、(b)RISCによるポリヌクレオチドの基質としての効率的な認識を促進し、および/または(c)細胞による一本鎖ヌクレオチドの取り込みを改善する、化学修飾パターンの説明を提供する。図6は、細胞内での一本鎖ポリヌクレオチドの効力を達成するために有益であり得る化学修飾パターンのいくつかの非限定的な例を提供する。化学修飾パターンは、リボース修飾、骨格修飾、疎水性ヌクレオシド修飾と、抱合体型修飾との組合せを含み得る。
本発明により提供される修飾は、全てのポリヌクレオチドに対して適用可能である。これは、一本鎖RISC侵入性ポリヌクレオチド、一本鎖RISC阻害性ポリヌクレオチド、多様な長さ(15〜40bp)の従来のデュプレックス化ポリヌクレオチド、非対称性デュプレックス化ポリヌクレオチドなどを含む。ポリヌクレオチドは、5’末端修飾、リボース修飾、骨格修飾および疎水性ヌクレオシド修飾を含む、多様な化学修飾パターンにより修飾されていてよい。
合成
本発明のオリゴヌクレオチドは、当該分野において公知の任意の方法により、例えば、酵素による合成および/または化学合成を用いて、合成することができる。オリゴヌクレオチドは、in vitroで(例えば、酵素による合成および化学合成を用いて)、またはin vivoで(当該分野において周知の組み換えDNA技術を用いて)合成することができる。
好ましい態様において、化学合成は、修飾ポリヌクレオチドのために用いられる。直鎖オリゴヌクレオチドの化学合成は、当該分野において周知であり、溶液または固相の技術により達成することができる。好ましくは、合成は、固相方法によるものである。オリゴヌクレオチドは、ホスホロアミダイト、亜リン酸トリエステル、H−ホスホナートおよびホスホトリエステル方法を含む、幾つかの異なる合成手順のいずれかにより、代表的には自動合成方法により、行ってもよい。
オリゴヌクレオチドの合成プロトコルは、当該分野において周知であり、例えば、米国特許第5,830,653号;WO 98/13526;Stec et al. 1984. J. Am. Chem. Soc. 106:6077;Stec et al. 1985. J. Org. Chem. 50:3908;Stec et al. J. Chromatog. 1985. 326:263;LaPlanche et al. 1986. Nucl. Acid. Res. 1986. 14:9081;Fasman G. D., 1989. Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology. 1989. CRC Press, Boca Raton, Fla.;Lamone. 1993. Biochem. Soc. Trans. 21:1;米国特許第5,013,830号;米国特許第5,214,135号;米国特許第5,525,719号;Kawasaki et al. 1993. J. Med. Chem. 36:831;WO 92/03568;米国特許第5,276,019号;および米国特許第5,264,423号において見出すことができる。
選択される合成方法は、所望のオリゴヌクレオチドの長さに依存し得、かかる選択は、当業者の技術の範囲内である。例えば、ホスホロアミダイトおよび亜リン酸トリエステル法により、175またはそれより多いヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを生成することができ、一方、H−ホスホナート法は、100ヌクレオチド未満のオリゴヌクレオチドのために良好に機能する。修飾塩基をオリゴヌクレオチドに組み込む場合、および特に修飾ホスホジエステル結合を用いる場合、合成手順は、必要に応じて、公知の手順に従って、変更される。このことに関して、Uhlmannら(1990, Chemical Reviews 90:543-584)は、修飾塩基および修飾ホスホジエステル結合を有するオリゴヌクレオチドを作製するための参考文献および概略手順を提供する。オリゴヌクレオチドを作製するための他の例示的な方法は、Sonveaux、1994年、「Protecting Groups in Oligonucleotide Synthesis」;Agrawal、Methods in Molecular Biology 26:1において教示される。例示的な合成方法はまた、「Oligonucleotide Synthesis - A Practical Approach」(Gait, M. J. IRL Press at Oxford University Press. 1984)においても教示される。さらに、修飾ヌクレオチドを有する一部の配列を含む規定の配列の直鎖オリゴヌクレオチドは、幾つかの市販のソースから容易に入手可能である。
オリゴヌクレオチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、またはゲルクロマトグラフィーおよび高圧液体クロマトグラフィーを含む多数のクロマトグラフィー的方法のいずれにより、精製することができる。ヌクレオチド配列、特に未修飾ヌクレオチド配列を確認するために、オリゴヌクレオチドを、マクサム・ギルバートシークエンシング、サンガーシークエンシング、キャピラリー電気泳動シークエンシング、wandering spotシークエンシングの手順を含む公知の手順のいずれかにより、またはHybond紙に結合させたオリゴヌクレオチドの選択的化学分解を用いることにより、DNAシークエンシングに供してもよい。短いオリゴヌクレオチドの配列は、レーザー脱離質量分析により、または高速原子衝撃により、分析することができる(McNeal, et al., 1982, J. Am. Chem. Soc. 104:976; Viari, et al., 1987, Biomed. Environ. Mass Spectrom. 14:83; Grotjahn et al., 1982, Nuc. Acid Res. 10:4671)。シークエンシング方法はまた、RNAオリゴヌクレオチドについても利用可能である。
合成されたオリゴヌクレオチドの品質を、オリゴヌクレオチドを、例えばBergot and Egan. 1992. J. Chrom. 599:35の方法を用いて、キャピラリー電気泳動および分解性強アニオンHPLC(denaturing strong anion HPLC:SAX-HPLC)により試験することにより評価することができる。
他の例示的な合成技術は当該分野において周知である(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Second Edition (1989); DNA Cloning, Volumes I and II (DN Glover Ed. 1985); Oligonucleotide Synthesis(M J Gait Ed, 1984; Nucleic Acid Hybridisation (B D Hames and S J Higgins eds. 1984); A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);またはシリーズであるMethods in Enzymology(Academic Press, Inc.)を参照)。
ある態様において、目的のRNAiコンストラクトまたは少なくともその一部は、目的のコンストラクトをコードする発現ベクターから転写される。この目的のために、任意の当該分野において認識されたベクターを用いることができる。転写されたRNAiコンストラクトを、所望の修飾(未修飾センス鎖を修飾されたものにより置き換えることなど)を行う前に、単離し、精製することができる。
送達/キャリア
細胞によるオリゴヌクレオチドの取り込み
オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド組成物は、1または2以上の細胞または細胞ライセートと接触させられ(すなわち、接触させられる、または本明細書においては投与または送達されるとして言及される)、これに取り込まれる。用語「細胞」は、原核および真核細胞、好ましくは脊椎動物細胞、およびより好ましくは哺乳動物細胞を含む。好ましい態様において、本発明のオリゴヌクレオチド組成物は、ヒト細胞と接触させられる。
本発明のオリゴヌクレオチド組成物を、in vitroで、例えば、試験管または培養ディッシュ中で(対象へ導入してもしなくともよく)、またはin vivoで、例えば哺乳動物対象などの対象において、細胞と接触させてもよい。一部の態様において、オリゴヌクレオチドは、局所的に、またはエレクトロポレーションを通して投与される。オリゴヌクレオチドは、エンドサイトーシスにより遅い速度で細胞に取り込まれるが、エンドサイトーシスされたオリゴヌクレオチドは、一般に隔絶され、例えば標的核酸分子へのハイブリダイゼーションのために利用することができない。一態様において、細胞による取り込みを、エレクトロポレーションまたはリン酸カルシウム沈殿により促進することができる。しかし、これらの手順はin vitroまたはex vivoでのみ有用であり、便利ではなく、一部の場合においては細胞毒性と関連する。
別の態様において、細胞へのオリゴヌクレオチドの送達は、リン酸カルシウム、DMSO、グリセロールもしくはデキストラン、エレクトロポレーションを含む好適な当該分野において認識された方法により、またはトランスフェクションにより、例えばカチオン性、アニオン性、または中性脂質組成物もしくはリポソームを用いて、当該分野において公知の方法を用いて(例えば、WO 90/14074; WO 91/16024; WO 91/17424;米国特許第4,897,355号;Bergan et al. 1993. Nucleic Acid Research. 21:3567を参照)、増強することができる。増強されたオリゴヌクレオチドの送達はまた、ベクター(例えば、Shi, Y. 2003. Trends Genet 2003 Jan. 19:9; Reichhart J M et al. Genesis. 2002. 34(1-2):1604, Yu et al. 2002. Proc. Natl. Acad Sci. USA 99:6047; Sui et al. 2002. Proc. Natl. Acad Sci. USA 99:5515を参照)、ウイルス、ポリアミンまたはポリリジン、プロタミンまたはNi、N12−ビス(エチル)スペルミンなどの化合物を用いるポリカチオン抱合体(例えば、Bartzatt, R. et al.1989. Biotechnol. Appl. Biochem. 11:133; Wagner E. et al. 1992. Proc. Natl. Acad. Sci. 88:4255を参照)の使用により媒介することができる。
ある態様において、本発明のsd-rxRNAは、2010年3月4日に出願された米国仮出願番号61/310,611、表題「Formulations and Methods for Targeted Delivery to Phagocyte Cells」において記載され、これらから本明細書において参考として組み込まれる、GeRPs(グルカン封入RNAロード粒子(glucan encapsulated RNA loaded particle))として言及される、多様なベータ−グルカン含有粒子を用いて送達することができる。かかる粒子はまた、米国特許公開US 2005/0281781 A1およびUS 2010/0040656において、ならびにPCT公開WO 2006/007372およびWO 2007/050643においても記載され、これらから参考として組み込まれる。sd-rxRNA分子は、疎水性に修飾されていてもよく、任意に脂質および/または両親媒性ペプチドと関連していてもよい。ある態様において、ベータ−グルカン粒子は、酵母から誘導される。ある態様において、ペイロード捕捉分子は、少なくとも約1000Da、10,000Da、50,000Da、100kDa、500kDaなどの分子量を有するものなどのポリマーである。好ましいポリマーとして(限定することなく)、カチオン性ポリマー、キトサン、またはPEI(ポリエチレンイミン)などが挙げられる。
グルカン粒子は、酵母の細胞壁などの真菌の細胞壁の不溶性成分から誘導することができる。一部の態様において、酵母はパン酵母である。酵母由来のグルカン分子は、β−(1,3)−グルカン、β−(1,6)−グルカン、マンナンおよびキチンの1または2以上を含み得る。一部の態様において、グルカン粒子は、中空の酵母細胞壁を含み、それにより、粒子は細胞に類似する三次元構造を維持し、その中で、粒子はRNA分子などの分子と複合体形成するかまたはこれを封入することができる。酵母細胞壁粒子を用いることに関連する利点の幾つかは、成分のアベイラビリティー、それらの生分解性の性質、および貪食性細胞に対して標的化されるそれらの能力である。
一部の態様において、グルカン粒子は、細胞壁からの不溶性成分の抽出により、例えば、パン酵母(Fleischmannのもの)を1MのNaOH/pH4.0 H2Oで抽出し、その後洗浄および乾燥することにより、調製することができる。酵母細胞壁粒子を調製する方法は、米国特許第4,810,646号、同第4,992,540号、同第5,082,936号、同第5,028,703号、同第5,032,401号、同第5,322,841号、同第5,401,727号、同第5,504,079号、同第5,607,677号、同第5,968,811号、同第6,242,594号、同第6,444,448号、同第6,476,003号、米国特許公開2003/0216346号、同第2004/0014715号および同第2010/0040656、ならびにPCT公開出願WO02/12348において議論され、これらから参考として組み込まれる。
グルカン粒子を調製するためのプロトコルはまた、以下の参考文献において記載され、これらから参考として組み込まれる:Soto and Ostroff(2008)、「Characterization of multilayered nanoparticles encapsulated in yeast cell wall particles for DNA delivery.」、Bioconjug Chem 19(4):840-8;Soto and Ostroff(2007)、「Oral Macrophage Mediated Gene Delivery System」、Nanotech、第2巻、第5章(「Drug Delivery」)、378-381頁;ならびにLi et al.(2007)、「Yeast glucan particles activate murine resident macrophages to secrete proinflammatory cytokines via MyD88-and Syk kinase-dependent pathways.」、Clinical Immunology 124(2):170-181頁。
酵母細胞壁粒子などのグルカン含有粒子はまた、市販で入手することもできる。幾つかの非限定的な例として、以下が挙げられる:Biorigin(Sao Paolo, Brazil)製Nutricell MOS 55、SAF-Mannan(SAF Agri, Minneapolis, Minn.)、Nutrex(Sensient Technologies, Milwaukee, Wis.)、Nutricepts(Nutricepts Inc., Burnsville, Minn.)およびASA Biotechにより製造されたものなどのアルカリ抽出された粒子、Biopolymer Engineering製の酸抽出されたWGP粒子、およびAlpha-beta Technology, Inc.(Worcester, Mass.)製のAdjuvax(商標)のような有機溶媒抽出された粒子、およびNovogen(Stamford, Conn.)製の微粒子グルカン。
酵母細胞壁粒子などのグルカン粒子は、製造および/または抽出の方法に依存して、多様なレベルの純度を有していてよい。一部の例において、細胞内成分および/または細胞壁の外側マンノプロテイン層を取り除くために、粒子をアルカリ抽出、酸抽出または有機溶媒抽出する。かかるプロトコルにより、50%〜90%の範囲においてグルカン(w/w)含有物を有する粒子を製造することができる。一部の例において、より低い純度、すなわちより低いグルカンw/w含有物の粒子が好ましく、一方、他の態様においては、より高い純度、すなわちより高いグルカンw/w含有物の粒子が好ましい。
酵母細胞壁粒子などのグルカン粒子は、天然の脂質含有物を有していてもよい。例えば、粒子は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%または20%より高いw/wの脂質を含んでもよい。例のセクションにおいて、2つのグルカン粒子のバッチの有効性が試験される:YGP SAFおよびYGP SAF+L(天然の脂質を含む)。一部の例において、天然の脂質の存在は、RNA分子の複合体形成または捕獲(capture)を補助し得る。
グルカン含有粒子は、代表的には、約2〜4マイクロンの直径を有するが、2マイクロン未満または4マイクロンを超える直径を有する粒子もまた、本発明の側面に適合する。
送達されるRNA分子は、グルカン粒子と複合体形成するか、またはそのシェル(shell)の中に「捕捉(trap)」される。Soto and Ostroff (2008) Bioconjug Chem 19:840において記載され、これから参考として組み込まれるように、粒子のシェルまたはRNA成分を可視化のために標識することができる。GeRPをロードする方法は、以下にさらに議論される。
オリゴヌクレオチドの取り込みのための最適なプロトコルは、多数の要因に依存し、最も重要なものは、用いられている細胞の型である。取り込みにおいて重要である他の要因として、限定されないが、オリゴヌクレオチドの性質および濃度、細胞のコンフルエンス、細胞が入っている培養の型(例えば、懸濁培養またはプレート培養)ならびに細胞が生育されている培地の型が挙げられる。
封入剤
封入剤は、オリゴヌクレオチドを小胞中に封入(entrap)する。本発明の別の態様において、オリゴヌクレオチドは、キャリアまたはビヒクル、例えばリポソームまたはミセルと関連していてもよいが、当業者により理解されるであろうように、別のキャリアを用いることができる。リポソームは、生体膜に類似する構造を有する脂質二重層から作られるビヒクルである。オリゴヌクレオチドの細胞取り込みまたは標的化を促進するために、またはオリゴヌクレオチドの薬物動態学的もしくは毒物学的特性を改善するために、かかるキャリアを用いる。
例えば、本発明のオリゴヌクレオチドはまた、脂質層に接着した水性の同心円状の層からなる小体中に活性成分が分散してまたは多様に存在して含有される医薬組成物であるリポソーム中に封入して投与してもよい。オリゴヌクレオチドは、溶解度に依存して、水層中および脂質層中の両方、または一般にリポソーム懸濁液(liposomic suspension)と称されるものの中に存在することができる。疎水性層は、一般に、しかし必ずしもではないが、レシチンおよびスフィンゴミエリンなどのリン脂質、コレステロールなどのステロイド、ジアセチルホスファートなどの事実上のイオン性界面活性剤、ステアリルアミン、またはホスファチジル酸、または疎水性の性質の他の材料を含む。リポソームの直径は、一般に、約15nm〜約5マイクロンの範囲である。
薬物送達ビヒクルとしてのリポソームの使用は、幾つかの利点を提供する。リポソームは、細胞内における安定性を増大し、取り込み効率を増大し、生物学的活性を改善する。リポソームは、細胞膜を構成する脂質と類似の様式で配置された脂質からなる、中空の球状の小胞である。それらは、水溶性化合物を封入するための内部水性空間を有し、直径0.05〜数マイクロンの範囲のサイズである。幾つかの研究が、リポソームが核酸を細胞へ送達することができること、および核酸が生物学的に活性を保つことを示してきた。例えば、LipofectinまたはLIPOFECTAMINE(商標)2000などの、元来は研究ツールとして設計された脂質送達ビヒクルは、無傷の核酸分子を細胞へ送達することができる。
リポソームを用いる具体的な利点として、以下が挙げられる:それらが組成物において非毒性であり生分解性であること;それらが長期の循環半減期を示すこと;および認識分子が、組織に対する標的化のためにそれらの表面に容易に結合できること。最後に、懸濁液または凍結乾燥製品のいずれかにおいて、費用対効果が高いリポソームに基づく医薬の製造が、受容可能な薬物送達系としてのこの技術の実行可能性を示してきた。
一部の側面において、本発明に関連する製剤は、天然に存在するかまたは化学合成されたかまたは修飾された飽和および不飽和脂肪酸残基のクラスについて、選択される場合がある。脂肪酸は、トリグリセリド、ジグリセリドまたは個々の脂肪酸の形態で存在してよい。別の態様において、非経口栄養のために薬理学において現在用いられる、よく検証された脂肪酸および/または脂質乳剤の混合物の使用を利用してもよい。
リポソームに基づく製剤は、オリゴヌクレオチド送達のために広範に用いられる。しかし、市販の脂質またはリポソーム製剤の殆どは、少なくとも1つの正に荷電した脂質(カチオン性脂質)を含む。この正に荷電した脂質の存在は、高度のオリゴヌクレオチドのローディングを得るために、およびリポソームの膜融合特性を増強するために必須であると考えられる。幾つかの方法が、最適な正に荷電した脂質の化学的性質を同定するために行われ、公開されてきた。しかし、カチオン性脂質を含有する市販のリポソーム製剤は、高レベルの毒性により特徴づけられる。in vivoでの限定された治療指標により、正に荷電した脂質を含むリポソーム製剤が、RNAサイレンシングを達成するために必要とされる濃度よりもほんの僅かに高い濃度で毒性(すなわち、肝臓酵素の上昇)を伴うことが明らかにされてきた。
本発明に関連する核酸は、疎水性に修飾されていてもよく、中性ナノトランスポーター中に包含されていてもよい。中性ナノトランスポーターのさらなる説明は、2009年9月22日に出願されたPCT出願PCT/US2009/005251、表題「Neutral Nanotransporters.」から参考として組み込まれる。かかる粒子は、非荷電脂質混合物中への定量的なオリゴヌクレオチドの組み込みを可能にする。かかる中性ナノトランスポーター組成物におけるカチオン性脂質の毒性レベルの欠失は、重要な特徴である。
PCT/US2009/005251において示されるように、オリゴヌクレオチドは、カチオン性脂質を含まない脂質混合物中に効率的に組み込むことができ、かかる組成物は、機能的な様式において、治療用オリゴヌクレオチドを細胞に効率的に送達することができる。例えば、脂質混合物が、ホスファチジルコリンベースの脂肪酸とコレステロールなどのステロールとからなる場合に、高レベルの活性が観察された。例えば、中性脂質混合物の1つの好ましい製剤は、少なくとも20%のDOPCまたはDSPCと少なくとも20%のコレステロールなどのステロールとからなる。僅か1:5の脂質対オリゴヌクレオチド比であっても、非荷電製剤中でのオリゴヌクレオチドの完全な封入を得るために十分であることが示された。
中性ナノトランスポーター組成物は、オリゴヌクレオチドの中性脂質製剤中への効率的なローディングを可能にする。組成物は、分子の疎水性が増大する様式において修飾された(例えば、疎水性分子が、疎水性分子に、オリゴヌクレオチド末端または末端でないヌクレオチド、塩基、糖もしくは骨格において、(共有的にまたは非共有的に)結合されている)オリゴヌクレオチドを含み、当該修飾オリゴヌクレオチドは、中性脂質製剤と混合されている(例えば、少なくとも25%のコレステロール、および25%のDOPCまたはそのアナログを含む)。別の脂質などのカーゴ分子もまた、組成物中に含めることができる。この組成物は、製剤の一部がオリゴヌクレオチド自体へ構築される場合、中性脂質粒子中におけるオリゴヌクレオチドの効率的なカプセル化を可能にする。
一部の側面において、50〜140nmの範囲のサイズの安定な粒子を、疎水性オリゴヌクレオチドを好ましい製剤と複合体化することにより形成することができる。製剤は、それ自体では、代表的には、小さい粒子を形成せず、むしろ集塊物を形成し、これは、疎水性修飾オリゴヌクレオチドを添加することにより、安定な50〜120nmの粒子へと転換されることに言及することは興味深い。
本発明の中性ナノトランスポーター組成物は、疎水性修飾ポリヌクレオチド、中性脂質混合物、および随意にカーゴ分子を含む。「疎水性修飾ポリヌクレオチド」は、本明細書において用いられる場合、ポリヌクレオチドを当該ポリヌクレオチドの修飾の前よりも疎水性にする少なくとも1つの修飾を有する、本発明のポリヌクレオチド(すなわち、sd-rxRNA)である。修飾は、疎水性分子をポリヌクレオチドに結合(共有的または非共有的に)させることにより達成することができる。一部の例において、疎水性分子は、親油性基であるか、または親油性基を含む。
用語「親油性基」は、脂質に対してその水に対するアフィニティーより高いアフィニティーを有する基を意味する。親油性基の例として、限定されないが、コレステロール、コレステリルまたは修飾コレステリル残基、アダマンチン、ジヒドロテステロン(dihydrotesterone)、長鎖アルキル、長鎖アルケニル、長鎖アルキニル、オレイル−リトコール酸、コレン酸、オレオイル−コレン酸、パルミチル酸、ヘプタデシル酸、ミリスチル酸、胆汁酸、コール酸またはタウロコール酸、デオキシコール酸、オレイルリトコール酸、オレオイルコレン酸、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、ステロイドなどのイソプレノイド類、ビタミンEなどのビタミン類、飽和または不飽和のいずれかの脂肪酸、トリグリセリドなどの脂肪酸エステル類、ピレン類、ポルフィリン類、テキサフィリン、アダマンタン、アクリジン類、ビオチン、クマリン、フルオレセイン、ローダミン、Texas-Red、ジゴキシゲニン、ジメトキシトリチル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、シアニン色素(例えば、Cy3またはCy5)、Hoechst 33258色素、ソラレン、またはイブプロフェンが挙げられる。コレステロール部分を(例えばコレスタン中のもののように)減少させても、または置換しても(例えばハロゲンにより)よい。1分子における異なる親油性基の組み合わせもまた可能である。
疎水性分子は、ポリヌクレオチドの多様な位置において結合させることができる。上記のとおり、疎水性分子は、ポリヌクレオチドの5’末端の3’などのポリヌクレオチドの末端の残基に結合していてもよい。あるいは、これは、ポリヌクレオチドの内部のヌクレオチドまたは枝上のヌクレオチドに結合していてもよい。疎水性分子が、例えばヌクレオチドの2’位に、結合していてもよい。疎水性分子はまた、ポリヌクレオチドのヌクレオチドの複素環式塩基、糖または骨格に結合していてもよい。
疎水性分子は、リンカー部分によりポリヌクレオチドに連結していてもよい。任意に、リンカー部分は、非ヌクレオチド性のリンカー部分である。、非ヌクレオチド性のリンカーとは、例えば、脱塩基残基(dスペーサー)、トリエチレングリコール(スペーサー9)もしくはヘキサエチレングリコール(スペーサー18)などのオリゴエチレングリコール、またはブタンジオールなどのアルカンジオールである。スペーサーユニットは、好ましくは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合により結合している。リンカーユニットは、分子中に1回のみ現れても、または、例えばホスホジエステル、ホスホロチオエート、メチルホスホナートまたはアミン結合などを介して、数回組み込まれてもよい。
代表的な抱合プロトコルは、配列の1または2以上の位置においてアミノリンカーを保有するポリヌクレオチドの合成を含むが、リンカーは必要ではない。アミノ基は、次いで、適切なカップリングまたは活性化試薬を用いて、抱合される分子と反応させられる。抱合反応は、まだ固体支持体に結合しているポリヌクレオチドを用いて、または溶液相中でのポリヌクレオチドの切断の後に、行うことができる。HPLCによる修飾ポリヌクレオチドの精製は、代表的には、結果として純粋な材料を生じる。
一部の態様において、疎水性分子は、ミセル中へ組み込まれるために十分な疎水性を提供する、ステロール型抱合体、フィトステロール抱合体、コレステロール抱合体、側鎖の長さが変更されたステロール型抱合体、脂肪酸抱合体、任意の他の疎水性基抱合体、および/または内部ヌクレオシドの疎水性修飾である。
本発明の目的のために、用語「ステロール」またはステロイドアルコール類は、A環の3位においてヒドロキシル基を有するステロイドのサブグループを指す。これらは、アセチル−コエンザイムAからHMG−CoAレダクターゼ経路を介して合成される両親媒性脂質である。全体的な分子は、極めて扁平である。A環上のヒドロキシル基は、極性である。脂肪族鎖の残りは、非極性である。通常、ステロールは、17位において8炭素鎖を有すると考えられる。
本発明の目的のために、用語「ステロール型分子」は、ステロイドアルコール類を指し、これは、ステロールと構造が類似する。主要な差異は、環の構造、および21位に結合する側鎖の炭素の数である。
本発明の目的のために、用語「フィトステロール」(また、植物ステロールとも称される)は、植物において天然に存在する植物化学物質である、一群のステロイドアルコール類である。200種を超える既知のフィトステロールが存在する。
本発明の目的のために、用語「ステロールの側鎖」は、ステロール型分子の17位において結合する側鎖の化学組成を指す。標準的な定義において、ステロールは、8炭素鎖を17位に保有する4環構造に限定される。本発明において、従来のものよりも長いおよび短い側鎖を有するステロール型分子が記載される。側鎖は、分子であっても、二重の骨格を含んでいてもよい。
したがって、本発明において有用なステロールは、例えば、コレステロール、ならびに、17位に2〜7個または9個の炭素より長い側鎖が結合しているユニークなステロールを含む。特定の態様において、ポリ炭素テイルの長さは、5〜9個の炭素の間で変化する。かかる抱合体は、特に肝臓への送達において、顕著により優れたin vivo効力を有し得る。これらの型の分子は、従来のコレステロールに抱合したオリゴよりも5〜9倍低い濃度において機能することが期待される。
あるいは、ポリヌクレオチドは、タンパク質、ペプチド、または疎水性分子として機能する正に荷電した化学物質に結合していてもよい。タンパク質は、プロタミン、dsRNA結合ドメイン、およびアルギニンリッチペプチドからなる群より選択することができる。例示的な正に荷電した化学物質として、スペルミン、スペルミジン、カダベリン、およびプトレシンが挙げられる。
別の態様において、疎水性分子抱合体は、疎水性修飾、ホスホロチオエート修飾、および2’リボ修飾を含むがこれらに限定されないポリヌクレオチドの最適な化学修飾パターンと組み合わされた場合に(本明細書において詳細に記載されるように)、さらに高い効力を示し得る。
別の態様において、ステロール型分子は、天然に存在するフィトステロールであってもよい。ポリ炭素鎖は、9個より長くても、直鎖であっても、分枝鎖であっても、および/または二重結合を含んでもよい。ポリヌクレオチド抱合体を含む一部のフィトステロールは、多様な組織へのポリヌクレオチドの送達において、顕著により強力かつ活性であり得る。一部のフィトステロールは、組織優先性を示し得、したがって、RNAiを特異的に特定の組織へ送達するための手段として用いられる。
疎水性修飾ポリヌクレオチドは、中性脂肪酸混合物と混合されて、ミセルを形成する。中性脂肪酸混合物は、疎水性修飾ポリヌクレオチドと共にミセルを形成することができる生理学的pHにおいて、またはその付近において、正味の中性または僅かに正味の陰性の電荷を有する、脂質の混合物である。本発明の目的のために、用語「ミセル」は、非荷電性脂肪酸とリン脂質との混合物により形成される、小さいナノ粒子を指す。中性脂肪酸混合物は、毒性を引き起こさない量において存在する限りにおいて、カチオン性脂質を含んでもよい。好ましい態様において、中性脂肪酸混合物は、カチオン性脂質を含まない。カチオン性脂質を含まない混合物とは、全脂質のうちの1%未満、好ましくは0%が、カチオン性脂質であるものである。用語「カチオン性脂質」は、生理学的pHにおいて、またはその付近において、正味の正の電荷を有する、脂質および合成脂質を含む。用語「アニオン性脂質」は、生理学的pHにおいて、またはその付近において、正味の負の電荷を有する、脂質および合成脂質を含む。
中性脂質は、強力であるが共有結合ではない引力により、本発明のオリゴヌクレオチドに結合する(例えば、静電気、ファンデルワールス、パイ・スタッキング(pi-stacking)などの相互作用)。
中性脂質混合物として、天然に存在する、または化学合成された、または修飾された、飽和および不飽和脂肪酸残基のクラスから選択される製剤が挙げられる。脂肪酸は、トリグリセリド、ジグリセリドまたは個々の脂肪酸の形態において存在し得る。別の態様において、薬理学において非経口栄養のために現在用いられている脂肪酸のよく確認された混合物および/または脂質乳液を利用してもよい。
中性脂肪酸混合物は、好ましくは、コリンをベースとする脂肪酸およびステロールの混合物である。濃リンをベースとする脂肪酸として、例えば、DDPC、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPCおよびDEPCなどの合成のホスホコリン誘導体が挙げられる。DOPC(化合物登録番号4235-95-4)は、ジオレオイルホスファチジルコリンである(ジエライドイルホスファチジルコリン、ジオレオイル−PC、ジオレオイルホスホコリン、ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、ジオレイルホスファチジルコリンとしても知られる)。DSPC(化合物登録番号816-94-4は、ジステアロイルホスファチジルコリンである(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンとしても知られる)。
中性脂肪酸混合物中のステロールは、例えば、コレステロールであってもよい。中性脂肪酸混合物は、完全にコリンベースの脂肪酸およびステロールからなっても、またはこれは任意にカーゴ分子を含んでもよい。例えば、中性脂肪酸混合物は、少なくとも20%または25%の脂肪酸および20%または25%のステロールを有してもよい。
本発明の目的のために、用語「脂肪酸」は、脂肪酸の従来の説明に関する。これらは、個々の実体またはジグリセリドおよびトリグリセリドの形態において存在し得る。本発明の目的のために、用語「脂質乳液」は、食事において十分な脂質を得ることができない対象に静脈内で投与される安全な脂質製剤を指す。これは、大豆油(または他の天然に存在するオイル)と卵のリン脂質との乳液である。脂質乳液は、一部の不溶性麻酔剤の製剤のために用いられている。本開示において、脂質乳液は、イントラリピッド(Intralipid)、リポシン(Liposyn)、ニュートリピッド(Nutrilipid)などの市販の製剤の一部、特定の脂肪酸が濃縮されている改変された市販の製剤、または完全にde novoで処方された脂肪酸とリン脂質との組合せであってもよい。
一態様において、本発明のオリゴヌクレオチド組成物と接触させる細胞を、オリゴヌクレオチドを含む混合物、および、脂質、例えば、上記の脂質または脂質組成物の一つを含む混合物と、約12時間〜約24時間の間接触させる。別の態様において、オリゴヌクレオチド組成物と接触させる細胞を、オリゴヌクレオチドを含む混合物、および、脂質、例えば、上記の脂質または脂質組成物の一つを含む混合物と、約1〜約5日間接触させる。一態様において、細胞を、脂質およびオリゴヌクレオチドを含む混合物と、約3日間〜約30日間接触させる。別の態様において、脂質を含む混合物を、細胞と、少なくとも約5〜約20日間、接触状態に置く。別の態様において、脂質を含む混合物を、細胞と、少なくとも約7〜約15日間、接触状態に置く。
製剤の50%〜60%は、任意に、任意の他の脂質または分子であってもよい。かかる脂質または分子は、本明細書において、カーゴ脂質またはカーゴ分子として言及される。カーゴ分子は、限定することなく、イントラリピッド(intralipid)、低分子、膜融合ペプチドもしくは脂質を含み、または、他の低分子を、細胞取り込み、エンドソームによる放出または組織分布特性を変化させるために添加してもよい。かかる特性が望ましい場合、カーゴ分子に耐性を示す能力は、これらの粒子の特性の改変のために重要である。例えば、一部の組織特異的代謝物の存在は、組織分布プロフィールを著しく変化させる場合がある。例えば、多様な飽和レベルを有するより短いまたはより長い脂質鎖が濃縮されているイントラリピッド(intralipid)型製剤の使用は、これらの型の製剤の組織分布プロフィール(およびそれらのローディング)に影響を及ぼす。
本発明により有用であるカーゴ脂質の一例は、膜融合脂質である。例えば、双性イオン脂質DOPE(化合物登録番号4004-5-1、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)は、好ましいカーゴ脂質である。
イントラリピッド(Intralipid)は、以下の組成からなり得る:1000mLが、以下を含む:精製大豆油90g、精製卵リン脂質12g、無水グリセロール22g、注射用水(1000mLへの十分量)。pHを、水酸化ナトリウムで、約pH8に調整する。エネルギー含量/L:4.6MJ(190kcal)。浸透圧(約):300mOsm/水1kg。別の態様において、脂質乳液は、5%のベニバナ油、5%の大豆油、乳化剤として添加される1.2%までの卵リン脂質、および注射用水中の2.5%のグリセリンを含む、リポシン(Liposyn)である。これはまた、pH調整のために水酸化ナトリウムを含んでもよい。pH8.0(6.0〜9.0)。リポシン(Liposyn)は、276mOsmol/リットル(実測値)の浸透圧を有する。
カーゴ脂質のアイデンティティー、量および比のバリエーションは、これらの化合物の細胞による取り込みおよび組織分布の特徴に影響を及ぼす。例えば、脂質テイルの長さおよび飽和性のレベルは、肝臓、肺、脂肪および心筋細胞への異なる取り込みに影響を及ぼす。ビタミン類または異なる形態のステロールなどの特別な疎水性分子の添加は、特定の化合物の代謝に関与する特別な組織への分布に有利に働き得る。一部の態様において、ビタミンAまたはEが用いられる。複合体は、異なるオリゴヌクレオチド濃度において形成され、より高い濃度は、より効率的な複合体形成に有利に働く。
別の態様において、脂質乳液は、脂質の混合物に基づく。かかる脂質として、天然の化合物、化学合成された化合物、精製脂肪酸または任意の他の脂質が挙げられる。さらに別の態様において、脂質乳液の組成は、完全に人工的なものである。特定の態様において、脂質乳液は、70%を超えて、リノール酸である。さらに別の特定の態様において、脂質乳液は、少なくとも1%のカルジオリピンである。リノール酸(LA)は、不飽和オメガ−6脂肪酸である。これは、18−炭素鎖および2個のシス二重結合を有するカルボン酸からなる無色の液体である。
本発明のさらに別の態様において、疎水性修飾ポリヌクレオチドの組織分布を変化させるための手段として、脂質乳液の組成の変更を用いる。この方法論は、特定の組織へのポリヌクレオチドの特異的送達をもたらす
別の態様において、カーゴ分子の脂質乳液は、70%を超えるリノール酸(C18H32O2)および/またはカルジオリピンを含む。
イントラリピッド(intralipid)などの脂質乳液は、先に、一部の非水溶性薬物(プロポフォール(Propofol)(Diprivanとして再処方されている)など)のための送達用製剤として用いられてきた。本発明の特有の特徴は、(a)修飾ポリヌクレオチドを疎水性化合物と組み合わせ、それによりこれが脂質ミセル中に組み込まれることができるというコンセプト、および(b)可逆性キャリアを提供するためにこれを脂質乳液と混合すること、を含む。血流中への注射の後で、ミセルは通常、アルブミン、HDL、LDLおよびその他の血清タンパク質と結合する。この結合は、可逆性であり、最終的に、脂質は細胞により吸収される。ミセルの一部として取り込まれるポリヌクレオチドは、次いで、細胞の表面近くに送達される。その後、ステロール型送達を含むがこれらに限定されない多様な機構を通して、細胞による取り込みが起こり得る。
複合体化剤
複合体化剤は、強力であるが共有結合ではない引力(例えば、静電気、ファンデルワールス、パイ・スタッキングなどの相互作用)により、本発明のオリゴヌクレオチドに結合する。一態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの細胞による取り込みを増大するために、複合体化剤と複合体化してもよい。複合体化剤の一例として、カチオン性脂質が挙げられる。カチオン性脂質は、オリゴヌクレオチドを細胞へ送達するために用いることができる。しかし、上記のとおり、カチオン性脂質を含まない製剤が、一部の態様において好ましい。
用語「カチオン性脂質」は、極性および非極性ドメインの両方を有する脂質および合成脂質であって、生理学的pHにおいてまたはその付近において正に荷電することができ、核酸などのポリアニオンに結合して核酸の細胞中への送達を促進するものを含む。一般に、カチオン性脂質として、飽和および不飽和アルキル、ならびに脂環式のエーテル類およびアミンのエステル類、アミド類、またはこれらの誘導体が挙げられる。カチオン性脂質の直鎖および分枝アルキルおよびアルケニル基は、例えば、1〜約25個の炭素原子を含む。好ましい直鎖または分枝アルキルまたはアルケン基は、6個またはそれより多い炭素原子を有する。脂環式基として、コレステロールおよび他のステロイド基が挙げられる。カチオン性脂質は、例えば、Cl−、Br−、I−、F−、酢酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、亜硝酸および硝酸を含む多様なカウンターイオン(アニオン)と共に調製することができる。
カチオン性脂質の例として、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン(PAMAM)スターバーストデンドリマー、リポフェクチン(DOTMAとDOPEとの組合せ)、リポフェクターゼ(Lipofectase)、LIPOFECTAMINE(商標)(例えば、LIPOFECTAMINE(商標)2000)、DOPE、サイトフェクチン(Cytofectin)(Gilead Sciences、Foster City、Calif.)、およびユーフェクチン(Eufectins)(JBL、San Luis Obispo、Calif.)が挙げられる。例示的なカチオン性リポソームは、塩化N−[1−(2,3−ジオレオロキシ)−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム(DOTMA)、硫酸N−[1−(2,3−ジオレオロキシ)−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチル(DOTAP)、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、2,3,−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、臭化1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウム;および臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)から製造することができる。カチオン性脂質、例えばN−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−塩化トリメチルアンモニウム(DOTMA)はホスホロチオエートオリゴヌクレオチドのアンチセンス効果を1000倍増大することが見出された(Vlassov et al., 1994, Biochimica et Biophysica Acta 1197:95-108)。オリゴヌクレオチドは、例えば、ポリ(L−リジン)またはアビジンと複合体化してもよく、脂質は、この混合物中、例えば、ステアリル−ポリ(L−リジン)に含まれても含まれなくてもよい。
カチオン性脂質は、オリゴヌクレオチドを細胞に送達するために当該分野において用いられてきた(例えば、米国特許第5,855,910号;同第5,851,548号;同第5,830,430号;同第5,780,053号;同第5,767,099号; Lewis et al. 1996. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:3176; Hope et al. 1998. Molecular Membrane Biology 15:1を参照)。今回のオリゴヌクレオチドの取り込みを促進するために用いることができる他の脂質組成物は、請求される方法と組み合わせて用いてもよい。上で列記されるものに加えて、例えば米国特許第4,235,871号;米国特許第4,501,728号;同第4,837,028号;同第4,737,323号において教示されるものを含む他の脂質組成物もまた、当該分野において公知である。
一態様において、脂質組成物は、剤、例えば、オリゴヌクレオチドの脂質媒介性トランスフェクションを増強するためのウイルスタンパク質(Kamata, et al., 1994. Nucl. Acids. Res. 22:536)をさらに含んでもよい。別の態様において、オリゴヌクレオチドは、例えば米国特許第5,736,392号において教示されるようなオリゴヌクレオチド、ペプチドおよび脂質を含む組成物の一部として、細胞と接触させられる。血清耐性である改善された脂質もまた記載されている(Lewis, et al., 1996. Proc. Natl. Acad. Sci. 93:3176)。カチオン性脂質および他の複合体化剤は、エンドサイトーシスを通して細胞中へ運搬されるオリゴヌクレオチドの数を増大するために作用する。
別の態様において、オリゴヌクレオチドの取り込みを最適化するために、N−置換グリシンオリゴヌクレオチド(ペプトイド)を用いてもよい。ペプトイドは、トランスフェクションのためのカチオン性脂質様化合物を作製するために用いられてきた(Murphy, et al., 1998. Proc. Natl. Acad. Sci. 95:1517)。ペプトイドは、標準的な方法(例えば、Zuckermann, R. N., et al. 1992. J. Am. Chem. Soc. 114:10646; Zuckermann, R. N., et al. 1992. Int. J. Peptide Protein Res. 40:497)を用いて合成することができる。カチオン性脂質とペプトイドとの組合せであるリプトイド(liptoid)もまた、目的のオリゴヌクレオチドの取り込みを最適化するために用いることができる(Hunag, et al., 1998. Chemistry and Biology. 5:345)。リプトイドは、ペプトイドオリゴヌクレオチドを産生して、アミノ末端のサブモノマーをそのアミノ基を介して脂質にカップリングすることにより合成することができる(Hunag, et al., 1998. Chemistry and Biology. 5:345)。
正に荷電したアミノ酸を高活性カチオン性脂質を作製するために用いることができることは、当該分野において公知である(Lewis et al. 1996. Proc. Natl. Acad. Sci. US.A. 93:3176)。一態様において、本発明のオリゴヌクレオチドを送達するための組成物は、親油性部分に結合した多数のアルギニン、リジン、ヒスチジンまたはオルニチン残基を含む(例えば、米国特許第5,777,153号を参照)。
別の態様において、本発明のオリゴヌクレオチドを送達するための組成物は、約1〜約4個の塩基性残基を有するペプチドを含む。これらの塩基性残基は、例えば、ペプチドのアミノ末端、C末端、または内部領域に位置することができる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において定義されてきた。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖(例えば、グリシン(これはまた非極性であるとも考えられる)、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。塩基性アミノ酸の他にも、ペプチドの他の残基の大多数または全てを、非塩基性アミノ酸、例えばリジン、アルギニンまたはヒスチジン以外のアミノ酸から選択してもよい。好ましくは、長い中性の側鎖を有する中性アミノ酸が優性であることが用いられる。
一態様において、本発明のオリゴヌクレオチドを送達するための組成物は、1または2以上のガンマカルボキシグルタミン酸残基、またはγ−Gla残基を有する天然または合成のポリペプチドを含む。これらのガンマカルボキシグルタミン酸残基により、ポリペプチドが、互いに、および膜表面に、結合することが可能になる。言い換えると、一連のγ−Glaを有するポリペプチドは、RNAiコンストラクトが、それが接触した膜が何であれそれに固着することを助けるための汎用送達モダリティーとして用いることができる。これは、少なくとも、RNAiコンストラクトが血流からクリアランスされることを遅延し、それらが標的にホーミングするチャンスを増強し得る。
ガンマカルボキシグルタミン酸残基は、中性タンパク質中に存在してもよい(例えば、プロトロンビンは10個のγ−Gla残基)。あるいは、これらは、精製された、組み換え的に精製された、または化学合成されたポリペプチド中に、カルボキシル化により、例えばビタミンK依存性カルボキシラーゼを用いて、導入してもよい。ガンマカルボキシグルタミン酸残基は、連続的であっても非連続的であってもよく、ポリペプチド中のかかるガンマカルボキシグルタミン酸残基の総数および位置は、異なるレベルのポリヌクレオチドの「固着性(stickiness)」を達成するために調節/微調整することができる。
一態様において、本発明のオリゴヌクレオチド組成物と接触させられる細胞を、オリゴヌクレオチドを含む混合物、および脂質、例えば上記の脂質または脂質組成物の一つを含む混合物と、約12時間〜約24時間接触させる。別の態様において、オリゴヌクレオチド組成物と接触させる細胞を、オリゴヌクレオチドを含む混合物、および脂質、例えば上記の脂質または脂質組成物の一つを含む混合物と、約1日〜約5日間接触させる。一態様において、細胞を、脂質およびオリゴヌクレオチドを含む混合物と、約3日間〜約30日間までもの長さにわたり接触させる。別の態様において、脂質を含む混合物を、細胞と、少なくとも約5〜約20日間接触させたままでおく。別の態様において、脂質を含む混合物を、細胞と、少なくとも約7〜約15日間接触させたままでおく。
例えば、一態様において、オリゴヌクレオチド組成物を、サイトフェクチンCSまたはGSV(Glen Research; Sterling, Va.から入手可能)、GS3815、GS2888などの脂質の存在下において、本明細書において記載されるように、長期のインキュベーション期間にわたり、細胞と接触させてもよい。
一態様において、細胞の脂質およびオリゴヌクレオチド組成物を含む混合物とのインキュベーションは、細胞のバイアビリティーを低下させない。好ましくは、トランスフェクション期間の後で、細胞は実質的に生存している。一態様において、トランスフェクションの後で、細胞は、少なくとも約70%〜少なくとも約100%生存している。別の態様において、細胞は、少なくとも約80%〜少なくとも約95%生存している。さらに別の例において、細胞は、少なくとも約85%〜少なくとも約90%生存している。
一態様において、オリゴヌクレオチドは、本明細書において「輸送ペプチド」として言及されるオリゴヌクレオチドを細胞中へ輸送するペプチド配列を結合させることにより修飾される。一態様において、組成物は、タンパク質をコードする標的核酸分子に対して相補的であるオリゴヌクレオチドを含み、輸送ペプチドに共有結合している。
語「輸送ペプチド」は、オリゴヌクレオチドの細胞中への輸送を促進するアミノ酸配列を含む。それが結合してる部分の細胞中への輸送を促進する例示的なペプチドは、当該分野において公知であり、例えば、HIV TAT転写因子、ラクトフェリン、ヘルペスVP22タンパク質および線維芽細胞増殖因子2を含む(Pooga et al. 1998. Nature Biotechnology. 16:857; and Derossi et al. 1998. Trends in Cell Biology. 8:84; Elliott and O'Hare. 1997. Cell 88:223)。
オリゴヌクレオチドは、公知の技術(例えば、Prochiantz, A. 1996. Curr. Opin. Neurobiol. 6:629; Derossi et al. 1998. Trends Cell Biol. 8:84; Troy et al. 1996. J. Neurosci. 16:253, Vives et al. 1997. J. Biol. Chem. 272:16010)を用いて輸送ペプチドに結合させることができる。例えば、一態様において、活性化チオール基を保有するオリゴヌクレオチドを、そのチオール基を介して、輸送ペプチド中に存在するシステインに(例えば、例えばDerossi et al. 1998. Trends Cell Biol. 8:84; Prochiantz. 1996. Current Opinion in Neurobiol. 6:629; Allinquant et al. 1995. J Cell Biol. 128:919において教示されるようにアンテナペディアホメオドメインの第2と第3とのヘリックスの間のβターン中に存在するシステインに)結合させる。別の態様において、Boc−Cys−(Npys)OH基を、最後の(N末端)アミノ酸およびSH基を保有するオリゴヌクレオチドがペプチドにカップリングされ得るように、輸送ペプチドにカップリングしてもよい(Troy et al. 1996. J. Neurosci. 16:253)。
一態様において、結合基(linking group)を、ヌクレオモノマーに結合させ、輸送ペプチドをリンカーに共有結合させてもよい。一態様において、リンカーは、輸送ペプチドについての結合部位として、およびヌクレアーゼに対する安定性を提供し得るものの両方として、機能し得る。好適なリンカーの例として、置換または未置換のC1−C20アルキル鎖、C2−C20アルケニル鎖、C2−C20アルキニル鎖、ペプチド、およびヘテロ原子(例えば、S、O、NHなど)が挙げられる。他の例示的なリンカーとして、スルホスクシンジイミル−4−(マレイミドフェニル)−酪酸(SMPB)(例えば、Smith et al. Biochem J 1991.276: 417-2を参照)などの二官能性架橋剤が挙げられる。
一態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、受容体により媒介されるエンドサイトーシス機構を遺伝子の細胞中への送達のために利用する、分子抱合体として合成される(例えば、Bunnell et al. 1992. Somatic Cell and Molecular Genetics. 18:559およびこれにおいて引用される参考文献を参照)。
標的化剤
オリゴヌクレオチドの送達はまた、オリゴヌクレオチドを細胞受容体へ標的化することによっても改善し得る。標的化部分は、オリゴヌクレオチドに抱合させても、オリゴヌクレオチドに結合したキャリア基(すなわち、ポリ(L−リジン)またはリポソーム)に結合させてもよい。この方法は、特異的受容体により媒介されるエンドサイトーシスを示す細胞に良好に適する。
例えば、6−ホスホマンノシル化タンパク質に対するオリゴヌクレオチドの抱合体は、マンノース−6−リン酸特異的受容体を発現する細胞により、遊離オリゴヌクレオチドよりも20倍効率的に内部移行される。オリゴヌクレオチドをまた、細胞受容体に対するリガンドに、生分解性リンカーを用いてカップリングしてもよい。別の例において、送達コンストラクトは、ビオチン化オリゴヌクレオチドと強固な複合体を形成するマンノシル化ストレプトアビジンである。マンノシル化ストレプトアビジンは、ビオチン化オリゴヌクレオチドの内部移行を20倍増大することが見出された(Vlassov et al. 1994. Biochimica et Biophysica Acta 1197:95-108)。
さらに、特異的リガンドを、ポリリジンベースの送達システムのポリリジン成分に抱合させてもよい。例えば、トランスフェリン−ポリリジン、アデノウイルス−ポリリジン、およびインフルエンザウイルス赤血球凝集素HA−2のN末端膜融合ペプチド−ポリリジン抱合体は、真核細胞における受容体媒介性DNA送達を著しく増強する。肺胞マクロファージ中のポリ(L−リジン)に抱合したマンノシル化糖タンパク質が、オリゴヌクレオチドの細胞による取り込みを増強するために用いられている(Liang et al. 1999. Pharmazie 54:559-566)。
悪性細胞は、葉酸およびトランスフェリンなどの必須栄養素に対する高い必要性を有するので、これらの栄養素は、オリゴヌクレオチドを癌細胞に標的化するために用いられる。例えば、葉酸をポリ(L−リジン)に結合させると、前骨髄球性白血病(HL-60)細胞およびヒトメラノーマ(M-14)細胞において増強されたオリゴヌクレオチド取り込みが観察される(Ginobbi et al. 1997. Anticancer Res. 17:29)。別の例において、マレイル化されたウシ血清アルブミン、葉酸またはプロトポルフィリン三価鉄IXによりコートされたリポソームは、マウスマクロファージ、KB細胞および2.2.15ヒト肝細胞腫細胞において、増強されたオリゴヌクレオチドの細胞による取り込みを示す(Liang et al. 1999. Pharmazie 54:559-566)。
リポソームは、肝臓、膵臓、網膜内皮系において、自然に蓄積する(いわゆる受動的標的化)。リポソームを、抗体およびプロテインAなどの多様なリガンドにカップリングすることにより、これらを、特異的細胞集団に対して能動的に標的化することができる。例えば、プロテインA保有リポソームを、マウス主要組織適合複合体によりコードされるL細胞上に発現するH-2Kタンパク質に標的化されたH-2K特異的抗体により予め処理してもよい(Vlassov et al. 1994. Biochimica et Biophysica Acta 1197:95-108)。
他のin vitroおよび/またはin vivoでのRNAi試薬の送達は、当該分野において公知であり、目的のRNAiコンストラクトを送達するために用いることができる。例えば、数例を挙げるために、米国特許出願公開第20080152661号、同第20080112916号、同第20080107694号、同第20080038296号、同第20070231392号、同第20060240093号、同第20060178327号、同第20060008910号、同第20050265957号、同第20050064595号、同第20050042227号、同第20050037496号、同第20050026286号、同第20040162235号、同第20040072785号、同第20040063654号、同第20030157030号、WO 2008/036825、WO04/065601およびAU2004206255B2を参照のこと(全て参考として組み込まれる)。
投与
オリゴヌクレオチドの最適な投与または送達の経路は、所望の結果および/または処置される対象に依存して変化し得る。本明細書において用いられる場合、「投与」は、細胞をオリゴヌクレオチドに接触させることを指し、in vitroで、またはin vivoで行うことができる。標的核酸分子から翻訳されるタンパク質の発現を最適に減少させるために、オリゴヌクレオチドの投与量を、例えばRNA安定性の読み出しによりまたは治療応答により測定されるものとして、過度の実験なしに調整することができる。
例えば、核酸標的によりコードされるタンパク質の発現を測定し、投与レジメンをそれに従って調整する必要があるか否かを決定することができる。さらに、細胞におけるまたは細胞により産生されるRNAまたはタンパク質のレベルの増大または減少を、任意の当該分野において認識された技術を用いて測定してもよい。転写が減少したか否かを決定することにより、標的RNAの切断を誘導する上でのオリゴヌクレオチドの有効性を決定することができる。
上記のオリゴヌクレオチド組成物のいずれを、単独で、または薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、用いてもよい。本明細書において用いられる場合、「薬学的に受容可能なキャリア」とは、好適な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などを含む。医薬活性物質のためのかかる媒体および剤は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体または剤が活性成分と適合しない場合を除いて、これを治療用組成物において用いることができる。補足の活性成分もまた、組成物中に組み込んでもよい。
オリゴヌクレオチドは、非経口投与のために、リポソームもしくはポリエチレングリコールで修飾されたリポソーム中へ組み込んでも、またはカチオン性脂質と混合してもよい。さらなる物質、例えば特定の標的細胞上に見出される膜タンパク質に対して反応性の抗体のリポソーム中への組み込みは、特定の細胞型に対するオリゴヌクレオチドの標的化に役立つ。
in vivo投与に関して、本発明の製剤は、コンストラクトを眼へ送達するために適応した多様な形態において、患者に投与することができる。好ましい態様において、非経口投与は眼へのものである。眼への投与は、硝子体内、前房内、網膜下、結膜下またはテノン下であり得る。
非経口投与のための医薬製剤は、水溶性または水分散性の形態における活性化合物の水性溶液を含む。さらに、好適な油性注射用懸濁液としての活性化合物の懸濁液を、投与してもよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルとして、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル類、例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドが挙げられる。水性注射用懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含む懸濁液の粘性を増大させる物質を含んでもよく、任意に、懸濁液はまた、安定化剤を含んでもよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、液体の溶液、好ましくはハンクス溶液またはリンガー溶液などの生理学的に適合性の緩衝液中で処方されてもよい。さらに、オリゴヌクレオチドは、固体の形態において処方されて、使用の直前に再溶解されるか懸濁されてもよい。凍結乾燥形態もまた、本発明において含まれる。
選択される送達の方法は、細胞中への侵入をもたらす。一部の態様において、好ましい送達方法として、リポソーム(10〜400nm)、ハイドロゲル、制御放出ポリマーおよび他の薬学的に適用可能なビヒクル、ならびにマイクロインジェクションまたはエレクトロポレーション(ex vivoでの処置のため)が挙げられる。
本発明の医薬製剤は、乳液として調製され製剤化されてもよい。乳液は、通常、1つの液体が別の液体中に通常は直径0.1μmを超える液滴の形態において分散した、均質な系である。本発明の乳液は、乳化剤、安定化剤、色素、脂質、油、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、湿潤剤、親水性コロイド、保存剤などの賦形剤を含んでもよく、抗酸化剤もまた、必要に応じて乳液中に存在してもよい。賦形剤は、水相、油相、またはそれ自体が別の相として、溶液として存在することができる。
本発明の乳液製剤において用いることができる天然に存在する乳化剤の例として、ラノリン、ミツロウ、リン脂質、レシチンおよびアカシアが挙げられる。微細に分割した固体もまた、特に界面活性剤と組み合わせて、粘性の製剤において、良好な乳化剤として用いられてきた。乳化剤として用いることができる微細に分割した固体として、重金属水酸化物などの極性無機固体、ベントナイト、アタパルジャイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、コロイド状ケイ酸アルミニウムおよびコロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどの非膨潤性粘土、顔料、ならびに炭素またはステアリン酸グリセリルなどの非極性個体が挙げられる。
乳液製剤において用いることができる保存剤の例として、メチルパラベン、プロピルパラベン、4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p−ヒドロキシ安息香酸のエステル、およびホウ酸が挙げられる。乳液製剤において用いることができる抗酸化剤の例として、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキトルエンなどのフリーラジカルスカベンジャー、またはアスコルビン酸および二亜硫酸ナトリウムなどの還元剤、ならびにクエン酸、酒石酸およびレシチンなどの抗酸化剤補助剤(antioxidant synergist)が挙げられる。
一態様において、オリゴヌクレオチドの組成物は、マイクロエマルジョン(microemulsion)として製剤化される。マイクロエマルジョンは、水、油および両親媒性物質の系であって、単一の光学的等方性および熱力学的安定性の溶液である。代表的には、マイクロエマルジョンは、第一に油を水性界面活性剤溶液中に分散させ、次いで、透明な系を形成するために、十分な量の第4の成分、一般的には中程度の鎖長のアルコールを加えることにより調製する。
マイクロエマルジョンの調製において用いることができる界面活性剤として、限定されないが、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル類、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレエート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレエート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレエート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセキオレエート(S0750)、デカグリセロールデカオレエート(DA0750)が、単独で、または共界面活性剤(cosurfactant)と組合せて、挙げられる。共界面活性剤、通常はエタノール、1−プロパノールおよび1−ブタノールなどの短鎖アルコールは、界面活性剤のフィルム中に浸透して、その後、界面活性剤分子の間で生み出される空隙により遮断されたフィルムを作り出すことにより、界面の流動性を増大させるために役立つ。
しかし、マイクロエマルジョンは、共界面活性剤の使用なしで調製することもでき、アルコールを含まない自己乳化マイクロエマルジョン系が、当該分野において公知である。水相は、代表的には、限定されないが、水、薬物の水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコールおよびエチレングリコールの誘導体であってよい。油相として、限定されないが、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル類、中鎖(C8〜C12)モノ、ジおよびトリ−グリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル類、脂肪アルコール類、ポリグリコール化(polyglycolized)グリセリド、飽和ポリグリコール化C8〜C10グリセリド、植物油およびシリコーン油などの材料が挙げられる。
マイクロエマルジョンは、薬物の可溶化および増強された薬物の吸収の観点から特に重要である。脂質ベースのマイクロエマルジョン(油/水及び水/油の両方)が、薬物の経口でのバイオアベイラビリティ−を増強するために提案されている。
マイクロエマルジョンは、薬物の可溶化の改善、酵素による加水分解からの薬物の保護、界面活性剤により誘導される膜の流動性および透過性の変化に起因する薬物吸収の増強の可能性、調製の容易性、固体投与形態に対する経口投与の容易性、臨床的効力の改善、ならびに毒性の低減を提供する(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11:1385; Ho et al., J. Pharm. Sci., 1996, 85:138-143)。マイクロエマルジョンはまた、化粧品および医薬適用の両方における活性成分の経皮送達においても有効であった。本発明のマイクロエマルジョンの組成物および製剤は、胃腸管からのオリゴヌクレオチドの全身吸収の増大を促進し、ならびに、胃腸管、膣、口腔および他の投与の領域内における、オリゴヌクレオチドの局所的な細胞による取り込みを改善することが予測される。
投与されるべき有用な投与量、および特定の投与の形態は、細胞型、in vivoでの使用については年齢、体重および特定の動物および処置されるべきその領域、用いられる特定のオリゴヌクレオチドおよび送達方法、企図される治療および診断用途、ならびに製剤の形態、例えば懸濁液、乳液、ミセルまたはリポソームなどの要因に依存して変化し、これは当業者にとって容易に明らかとなる。代表的には、投与量は、より低い量で投与し、所望の結果が達成されるまで増加させる。オリゴヌクレオチドを送達するために脂質を用いる場合、投与される脂質化合物の量は変化し得、一般に、投与されているオリゴヌクレオチド剤の量に依存する。例えば、脂質化合物のオリゴヌクレオチド剤に対する重量比は、好ましくは約1:1〜約15:1であり、約5:1〜約10:1の重量比がより好ましい。一般に、投与されるカチオン性脂質化合物の量は、約0.1ミリグラム(mg)〜約1グラム(g)まで変化する。一般的なガイダンスのために、代表的には、患者の体重の各1kg毎に約0.1mg〜約10mgの特定のオリゴヌクレオチド剤、および約1mg〜約100mgの脂質組成物が投与されるが、より高い、およびより低い量を用いてもよい。
本発明の剤は、医薬の投与のために好適な生物学的に適合性の形態において、対象に投与されるか、または細胞と接触させられる。「医薬の投与のために好適な生物学的に適合性の形態」とは、当該オリゴヌクレオチドの治療効果があらゆる毒性効果を凌ぐ形態において、オリゴヌクレオチドが投与されることを意味する。一態様において、オリゴヌクレオチドを、対象に投与する。対照の例として、哺乳動物、例えばヒトおよび他の霊長類;ウシ、ブタ、ウマおよび農耕(farming)(農業(agricultural))用動物;イヌ、ネコおよび他の家庭のペット;マウス、ラットおよびトランスジェニック非ヒト動物が挙げられる。
本発明のオリゴヌクレオチドの活性量の投与は、所望の結果を達成するために必要な投与量および時間において、有効量として定義される。例えば、オリゴヌクレオチドの活性量は、細胞の型、用いられるオリゴヌクレオチド、ならびにin vivoでの使用については疾患の状態、個体の年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を惹起するオリゴヌクレオチドの能力などの要因にしたがって変化し得る。細胞中でのオリゴヌクレオチドの治療的レベルの確立は、取り込みおよび外向き流速または分解の速度に依存する。分解の程度を低下させることは、オリゴヌクレオチドの細胞内半減期を延長する。したがって、化学修飾されたオリゴヌクレオチド、例えばリン酸骨格の修飾を有するものは、異なる用量を必要とする場合がある。
正確なオリゴヌクレオチドの投与量および投与される用量の数は、実験的におよび臨床治験において生み出されるデータに依存する。所望の効果、送達ビヒクル、疾患の兆候および投与の経路などの幾つかの要因が、投与量に影響を及ぼす。投与量は、当業者により容易に決定することができ、目的の医薬組成物に製剤化することができる。好ましくは、処置の期間は、少なくとも疾患の症状の経過全体に及ぶ。
投与レジメンは、最適な治療応答を提供するために調整することができる。例えば、オリゴヌクレオチドは、繰り返して投与してもよく、例えば数回の用量を毎日投与しても、治療の状況の要件により示されるとおりに、比例的に減少させてもよい。当該オリゴヌクレオチドが細胞に投与されるか、または対象に投与されるかに拘わらず、当業者は、目的のオリゴヌクレオチドの適切な用量および投与のスケジュールを容易に決定することができる。
硝子体内、前房内、網膜下、結膜下およびテノン下投与を含むsd-rxRNAの眼への投与は、投与レジメンの試験を通して最適化することができる。一部の態様において、単回の投与が十分である。当業者にはよく知られているであろうとおり、投与されたsd-rxRNAの効果をさらに延長するために、sd-rxRNAを徐放性の製剤またはデバイスにおいて投与してもよい。sd-rxRNA化合物の疎水性の性質により、その一部が従来のオリゴヌクレオチド送達には適合しない多様なポリマーの使用が可能となる。
他の態様において、sd-rxRNAは、複数回投与される。一部の例において、それは、毎日、週2回、週1回、2週間に1回、3週間に1回、月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回または6ヶ月に1回よりも低い頻度で投与される。一部の例において、それは、1日、1週間、1ヶ月および/または1年あたり複数の回数投与される。例えば、それは、約2時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間毎、または12時間より長い時間毎に、投与することができる。それは、1日あたり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、または10回より多く投与することができる。
本発明の側面は、sd-rxRNAまたはrxRNA ori分子を対象に投与することに関する。一部の例において、対象は患者であり、sd-rxRNA分子を投与することは、医院においてsd-rxRNAを投与することを含む。
図1は、硝子体内または網膜下投与の24時間後におけるsd-rxRNAの取り込みを明らかにする。24時間後までに、sd-rxRNAは全網膜に浸透した。図2は、sd-rxRNAおよび従来のRNAi化合物の網膜取り込みの比較を示す。投与直後においては両方が眼において検出されるのに対して、48時間後には、sd-rxRNAのみが検出される。図3は、硝子体内投与の後での網膜全体でのsd-rxRNAの検出を示すが、従来のRNAi化合物の検出は示さない。図4は、sd-rxRNAが、網膜から光受容体の外節へと浸透することを示す。
一部の例において、眼投与を通して送達されるsd-rxRNAの有効量は、少なくとも約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100μgまたは100μgより多い(あらゆる中間値を含む)。
本明細書において記載される方法を通して投与されたsd-rxRNA分子は、眼内の全ての細胞型に対して効率的に標的化される。
核酸を導入する物理的方法として、核酸を含む溶液の注射、核酸により被覆された粒子による照射(bombardment)、核酸の溶液中での細胞または生物の浸漬、核酸の存在下における細胞膜のエレクトロポレーション、または核酸を含む組成物の眼への局所投与が挙げられる。ウイルス粒子中にパッケージングされたウイルスコンストラクトは、発現コンストラクトの細胞内への効果的な導入と、発現コンストラクトによりコードされる核酸の転写との両方を達成するであろう。脂質媒介性キャリア輸送、リン酸カルシウムなどの化学的に媒介される輸送などの、核酸を細胞へ導入するための当該分野において既知の他の方法を用いてもよい。したがって、核酸は、以下の活性の1または2以上を行う成分と共に導入することができる:細胞による核酸の取り込みを増大すること、一本鎖のアニーリングを阻害すること、一本鎖を安定化すること、または標的遺伝子の阻害を他の方法で増大すること。
オリゴヌクレオチド安定性のアッセイ
一部の態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、安定であり、すなわち、エンドヌクレアーゼおよびエクソヌクレアーゼ分解に対して実質的に安定である。オリゴヌクレオチドは、それが内因性の細胞ヌクレアーゼによる攻撃に対して少なくとも約3倍耐性が高い場合に、ヌクレアーゼに対して実質的に耐性であるとして、および、それが対応するオリゴヌクレオチドよりも少なくとも約6倍耐性が高い場合に、高度にヌクレアーゼ耐性であるとして、定義される。これは、当該分野において公知である技術を用いて本発明のオリゴヌクレオチドがヌクレアーゼに対して実質的に耐性であることを示すことにより、実証することができる。
実質的な安定性を実証することができる一方法は、本発明のオリゴヌクレオチドが、細胞に送達された場合に機能すること、例えば、これらが、標的核酸分子の転写または翻訳を低下させることを、例えば、タンパク質レベルを測定することにより、またはmRNAの切断を測定することにより、示すことによる。標的RNAの安定性を測定するアッセイは、トランスフェクションの約24時間後に行うことができる(例えば、当該分野において公知であるように、ノーザンブロット技術、RNase保護アッセイ、またはQC-PCRを用いて)。あるいは、標的タンパク質のレベルを測定してもよい。好ましくは、目的のRNAまたはタンパク質のレベルを試験することに加えて、対照の、非標的遺伝子(例えば、アクチン、または好ましくは標的と類似する配列を有する対象)のRNAまたはタンパク質のレベルを特異性の対照として測定する。RNAまたはタンパク質の測定は、任意の当該分野において認識された技術を用いて行うことができる。好ましくは測定は、トランスフェクションの約16〜24時間後に開始して行う(M. Y. Chiang, et al. 1991. J Biol Chem. 266:18162-71; T. Fisher, et al. 1993. Nucleic Acid Research. 21 3857)。
本発明のオリゴヌクレオチド組成物がタンパク質合成を阻害する能力は、当該分野において公知である技術、例えば遺伝子の転写またはタンパク質合成における阻害を検出することにより、測定することができる。例えば、ヌクレアーゼS1のマッピングを行ってもよい。別の例において、ノーザンブロット分析を行って、特定のタンパク質をコードするRNAの存在を測定してもよい。例えば、全RNAを、塩化セシウムのクッションの上で調製してもよい(例えば、Ausebel et al., 1987. Current Protocols in Molecular Biology(Greene & Wiley, New York)を参照)。次いで、そのRNAを用いてノーザンブロットを行い、プローブする(例えば上記を参照)。別の例において、例えばPCRを用いて、標的タンパク質により産生される特定のmRNAのレベルを測定することができる。さらに別の例において、ウェスタンブロットを用いて、存在する標的タンパク質の量を測定してもよい。なお別の態様において、タンパク質の量により影響を受ける表現型を検出してもよい。ウェスタンブロットを行うための技術は、当該分野において周知であり、例えば、Chen et al. J. Biol. Chem. 271:28259を参照されたい。
別の例において、標的遺伝子のプロモーター配列をレポーター遺伝子に結合させ、レポーター遺伝子の転写を(例えば、以下に詳細に記載されるように)モニタリングしてもよい。あるいは、プロモーターを標的化しないオリゴヌクレオチド組成物を、標的核酸分子の一部をレポーター遺伝子に、レポーター遺伝子が転写されるように融合させることにより、同定してもよい。オリゴヌクレオチド組成物の存在下においてレポーター遺伝子の発現の変化をモニタリングすることにより、レポーター遺伝子の発現を阻害する上でのオリゴヌクレオチド組成物の有効性を決定することが可能である。例えば、一態様において、有効なオリゴヌクレオチド組成物は、レポーター遺伝子の発現を低下させる。
「レポーター遺伝子」は、検出可能な遺伝子産物を発現する核酸であって、これは、RNAまたはタンパク質である。mRNA発現の検出は、ノーザンブロットにより達成することができ、タンパク質の検出は、当該タンパク質に対して特異的な抗体で染色することにより達成することができる。好ましいレポーター遺伝子を、当該レポーター遺伝子の産物の検出が調節配列の転写活性の測定をもたらすように、調節DNA配列に作動的に連結してもよい。好ましい態様において、レポーター遺伝子の遺伝子産物は、その産物に関連する固有の活性により検出される。例えば、レポーター遺伝子は、色、蛍光または発光に基づく検出可能なシグナルを酵素活性により生じる遺伝子産物をコードしていてもよい。レポーター遺伝子の例として、限定されないが、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼをコードするものが挙げられる。
当業者は、本発明における使用のために好適な多数のレポーター遺伝子を容易に認識することができる。これらは、限定されないが、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、ヒト成長ホルモン(hGH)およびベータ−ガラクトシダーゼを含む。かかるレポーター遺伝子の例は、F. A. Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, New York(1989)において見出すことができる。検出可能な産物、例えば、検出可能な酵素活性を有する、または特定の抗体を生じることができる任意の産物をコードする任意の遺伝子を、本方法におけるレポーター遺伝子として用いることができる。
一つのレポーター遺伝子システムは、ホタルルシフェラーゼレポーターシステムである(Gould, S. J., and Subramani, S. 1988. Anal. Biochem., 7:404-408 incorporated herein by reference)。ルシフェラーゼアッセイは、迅速かつ感受性である。このアッセイにおいて、試験細胞のライセートを調製し、ATPおよび基質ルシフェリンと組み合わせる。コードされた酵素であるルシフェラーゼは、迅速なATP依存的な基質の酸化を触媒し、発光生成物を生成する。合計の光出力を測定し、広範囲の酵素の濃度にわたって存在するルシフェラーゼの量に比例させる。
CATは、別の頻繁に用いられるレポーター遺伝子システムである。このシステムの主な利点は、これは広範囲に有効性を確認されており、プロモーター活性の尺度として広く受容されていることである(Gorman C. M., Moffat, L. F., and Howard, B. H. 1982. Mol. Cell. Biol., 2:1044-1051)。このシステムにおいて、試験細胞をCAT発現ベクターによりトランスフェクトし、最初のトランスフェクションの2〜3日以内に、候補物質と共にインキュベートする。その後、細胞抽出物を調製する。抽出物をアセチルCoAおよび放射活性クロラムフェニコールと共にインキュベートする。インキュベーションの後で、アセチル化されたクロラムフェニコールを、薄相クロマトグラフィーにより、非アセチル化形態から分離する。このアッセイにおいて、アセチル化の程度が、特定のプロモーターによるCAT遺伝子の活性を反映する。
別の好適なレポーター遺伝子システムは、hGHの免疫学的検出に基づく。このシステムはまた、迅速かつ使用するのが容易である(Selden, R., Burke-Howie, K. Rowe, M. E., Goodman, H. M., and Moore, D. D. (1986), Mol. Cell, Biol., 6:3173-3179 incorporated herein by reference)。hGHシステムは、発現されたhGHポリペプチドが、細胞抽出物ではなく溶媒中でアッセイされることにおいて有利である。したがって、このシステムは、試験細胞の破壊を必要としない。このレポーター遺伝子システムがhGHには限定されず、むしろ、受容可能な特異性を有する抗体が利用可能であるかまたはこれを準備することができる任意のポリペプチドについての使用のために適しているという原則が、理解されるべきである。
一態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ安定性を測定し、対照、例えば当該分野において代表的に用いられるRNAi分子(例えば、長さが25ヌクレオチド未満であって2ヌクレオチド塩基の突出を含むデュプレックスオリゴヌクレオチド)または平滑末端を有する未修飾RNAデュプレックスと比較する。
本発明のsiRNAを用いて達成される標的RNA切断反応は、高度に配列特異的である。配列同一性は、当該分野において公知の配列の比較およびアラインメントアルゴリズムにより決定することができる。2つの核酸配列(または2つのアミノ酸配列)の%同一性を決定するために、配列を、最適な比較目的のためにアラインメントする(例えば、最適なアラインメントのために、第1の配列または第2の配列中にギャップを導入する)。配列の比較のために利用される局所アラインメントアルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68のアルゴリズムであって、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77において修飾されたものである。かかるアルゴリズムは、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のBLASTプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれる。さらに、DharmaconおよびInvitrogenなどの多数の企業が、そのウェブサイト上においてアルゴリズムへのアクセスを提供する。Whitehead Instituteもまた、無償のsiRNA選択プログラムを提供する。siRNAと標的遺伝子との間の90%より高い配列同一性、例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%までもの配列同一性が好ましい。あるいは、siRNAは、標的遺伝子転写物の一部とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列(またはオリゴヌクレオチド配列)として機能的に定義される。ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションのためのストリンジェンシー条件の例は、Sambrook, J.、E. F. FritschおよびT. Maniatis、1989年、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, N.Y.、第9章および11章、ならびにCurrent Protocols in Molecular Biology、1995年、F. M. Ausubelら編、John Wiley & Sons, Inc.、セクション2.10および6.3-6.4において提供され、これらは本明細書において参考として組み込まれる。
治療的使用
遺伝子の発現を阻害することにより、本発明のオリゴヌクレオチド組成物は、タンパク質の発現を伴う任意の疾患を処置するために用いることができる。オリゴヌクレオチド組成物により処置することができる疾患の例として、単に説明するために、癌、網膜症、自己免疫疾患、炎症性疾患(すなわち、ICAM-1関連障害、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病)、ウイルス疾患(すなわち、HIV、C型肝炎)、miRNA障害、および心血管性疾患が挙げられる。
上で議論されるように、本明細書において記載される方法により投与されるsd-rxRNA分子は、眼内の全ての細胞型に対して、効率的に標的化される。
本発明の側面は、sd-rxRNAを、神経節細胞層(GCL)、内網状層(IPL)、内顆粒層(INL)、外網状層(OPL)、外顆粒層(ONL)、桿体細胞および錐体細胞の外節(OS)、網膜色素上皮(RPE)、桿体細胞および錐体細胞の内節(IS)、結膜の上皮、虹彩、毛様体、角質、ならびに眼の皮脂腺の上皮に位置する細胞を含むがこれらに限定されない眼内の多様な細胞型に対して標的化することに関する。
眼に対して標的化されるsd-rxRNAは、幾つかの例において、眼特異的遺伝子または眼において他の組織においてよりも高いレベルで発現する遺伝子を標的とする。当業者は理解するであろうが、眼特異的発現または眼において他の組織と比較して増大した発現を有する遺伝子を同定するために、公共にアクセス可能なデータベースを用いてもよい。かかるデータベースの幾つかの非限定的な例として、組織特異的な遺伝子の発現および調節についてのTISGED(Tissue-Specific Genes Database)およびTiGERデータベースが挙げられる。他の態様において、sd-rxRNAは、眼特異的遺伝子を標的としない。他の態様において、標的となる遺伝子は、眼特異的発現または眼において増大した発現を有さない。
一部の例において、眼に対して標的化されたsd-rxRNAは、眼に関連する状態または障害の少なくとも1つの症状を寛解させるために用いられる。眼に関連する状態または障害の幾つかの非限定的な例として、以下が挙げられる:血管漏出/血管新生(例えば、血管造影による(angiographic)嚢胞様黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症(RVO)に続発する黄斑浮腫、緑内障または新生血管緑内障(NVG)、未熟児網膜症(ROP);線維増殖性疾患(例えば、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜上膜/硝子体黄斑癒着;加齢黄斑変性(AMD)(例えば、滲出型脈絡膜血管新生(滲出型AMD)、地図状萎縮(進行性萎縮AMD)、初期〜中期型AMD);糖尿病性網膜症(例えば、非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR);網膜変性疾患(および関連疾患);網膜血管閉塞性疾患(例えば、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症)ならびに他の網膜疾患;網膜剥離;原因不明(特発性)または全身性(例えば自己免疫性)疾患に付随するぶどう膜炎(汎ぶどう膜炎を含む)または脈絡膜炎(多病巣性脈絡膜炎を含む)などの炎症性疾患;上強膜炎または強膜炎;散弾脈絡膜炎(Birdshot retinochoroidopathy);血管性疾患(網膜虚血、網膜血管炎、脈絡膜血行不全、脈絡膜血栓症);視神経の血管新生;視神経炎;眼瞼炎;角膜炎;虹彩の血管新生に伴う炎症(rubeosis iritis);フックス虹彩異色性毛様体炎(Fuchs' heterochromic iridocyclitis);慢性ぶどう膜炎または前部ぶどう膜炎;結膜炎;アレルギー性結膜炎(季節性または通年性、春季、アトピー性および巨大乳頭結膜炎を含む);乾性結膜炎(ドライアイ症候群);虹彩毛様体炎;虹彩炎;強膜炎;上強膜炎;角膜浮腫;強膜疾患;眼の瘢痕性類天疱瘡;周辺部ぶどう膜炎;ポスナーシュロスマン症候群;ベーチェット病;フォークト・小柳・原田症候群;過敏性反応;結膜浮腫;結膜の静脈性鬱血;眼窩周囲蜂巣炎;急性涙嚢炎;非特異的血管炎;サルコイドーシス;涙の産生の減少および/または涙の組成の異常に起因する涙膜蒸発の増大から生じ得る、ドライアイ、乾性角膜炎症候群、眼球乾燥症およびドライアイ症候群(DES)としてもまた知られる状態である乾性結膜炎;自己免疫性疾患である関節リウマチ、エリテマトーデス、真正糖尿病およびシェーグレン症候群に付随する障害。一部の態様において、sd-rxRNAは、創傷治癒の方法として投与される。眼に関連する状態または障害の非限定的な例は、米国特許公開20100010082および米国特許第6,331,313号から参考として組み込まれる。
血管新生/血管漏出
本発明の側面は、血管新生および/または血管漏出に関連する疾患および状態を処置することに関する。これらの状態のうち、滲出型AMDおよびDMEが、最も蔓延しており、PDRおよびRVOに続発する黄斑浮腫は蔓延性がより低く、稀な新生血管状態はROPおよび新生血管緑内障を含む。血管漏出はDMEの背後に存在する駆動力であると考えられ、一方、血管漏出と血管新生との両方がPDRを駆動する。本発明のオリゴヌクレオチド組成物は、特定の疾患または状態の病因に基づいて選択することができる。例えば、血管の浸透性に影響を及ぼす抗血管新生オリゴヌクレオチドを含む組成物を、DMEを処置するために選択することができ、一方、増殖に影響を及ぼすものを、PDRを処置するために選択することができる。あるいは、オリゴヌクレオチド組成物は、抗血管新生剤、例えば、血管の浸透性に影響を及ぼす標的の機能を阻害するsd-rxRNAと、増殖に影響を及ぼす標的の機能を阻害するsd-rxRNAとを、当該状態の両方の病因的側面が標的となるように含んでもよい。
ある態様において、sd-rxRNAは、血管新生および/または血管の浸透性を処置するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAは、血管浸透性の阻害剤である血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とする。VEGFは、滲出型AMDの処置のための古典的かつ臨床において有効性が確認された標的であり、DMEおよびRVO関連MEについての承認が期待される。VEGFタンパク質は、チロシンキナーゼ受容体に結合する増殖因子であり、癌、加齢黄斑変性、関節リウマチおよび糖尿病性網膜症などの複数の障害に関連付けられている。このタンパク質ファミリーのメンバーとして、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-CおよびVEGF-Dが挙げられる。ヒトVEGFタンパク質についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_001171623.1(VEGF-A)、U43368(VEGF-B)、X94216(VEGF-C)およびD89630(VEGF-D)である。
本発明の側面は、VEGFに対して向けられたrxRNAoriに関する。例のセクションにおいて記載されるとおり、VEGFに対する100個を超える最適なrxRNA ori配列が本明細書において同定された(表2および9)。rxRNAoriは、表2または9中の配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含む配列に対して向けることができる。例えば、rxRNAoriは、表2または9中の12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25の連続するヌクレオチドを含む配列に対して向けることができる。一部の態様においてrxRNAoriは、配列番号13(AUCACCAUCGACAGAACAGUCCUUA)または配列番号28(CCAUGCAGAUUAUGCGGAUCAAACA)の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含む配列に対して向けられる。rxRNAori分子のセンス鎖は、表2において提示される配列から選択される配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含むことができる。一部の態様において、rxRNAoriのセンス鎖は、配列番号13または配列番号28の配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含む。rxRNAoriのアンチセンス鎖は、表2中の配列から選択される配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドに対して相補的であってよい。一部の態様において、rxRNAoriのアンチセンス鎖は、配列番号1377(UAAGGACUGUUCUGUCGAUGGUGAU)または配列番号1378(UGUUUGAUCCGCAUAAUCUGCAUGG)の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含む。
VEGFに対して向けられたrxRNAoriの非限定的な例として、配列番号13の配列を含むセンス鎖と配列番号1377の配列を含むアンチセンス鎖とを含むrxRNAori、または配列番号28の配列を含むセンス鎖と配列番号1378の配列を含むアンチセンス鎖とを含むrxRNAoriが挙げられる。多様な修飾パターンがrxRNAoriに適合可能であることが理解されるべきである。本発明の側面は、VEGFに対して向けられたrxRNAoriを包含し、ここで該rxRNAoriは、修飾されているか未修飾である。一部の態様において、rxRNAoriは、眼に投与される。
ori配列はまた、眼においてVEGFを標的とするためにsd-rxRNA分子に変換されてもよい。開示されるori配列は、sd-rxRNAの開発のためのVEGF中の配列の非限定的な例を表わすことが理解されるべきである。これらの配列ならびにVEGF中の他の配列の長さおよび修飾のバリエーションもまた、sd-rxRNA分子の開発に適合可能である。sd-rxRNAは、表2または9中の配列から選択される配列に対して向けられていてよい。例えば、sd-rxRNAは、表2または9中の配列から選択される配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含む配列に対して向けられていてもよい。一部の態様において、sd-rxRNAは、表2または9中の配列から選択される配列の12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25の連続するヌクレオチドを含む配列に対して向けられていてもよい。
一部の態様において、VEGFに対して向けられたsd-rxRNAは、表8中の配列から選択される配列の少なくとも12のヌクレオチドを含む。一部の態様において、sd-rxRNAのセンス鎖は、配列番号1317(AGAACAGUCCUUA)または配列番号1357(UGCGGAUCAAACA)の配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含み、および/またはsd-rxRNAのアンチセンス鎖は、配列番号1318(UAAGGACUGUUCUGUCGAU)または配列番号1358(UGUUUGAUCCGCAUAAUCU)の配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含む。ある態様において、VEGFに対して向けられたsd-rxRNAは、配列番号1317を含むセンス鎖と、配列番号1318を含むアンチセンス鎖とを含む。多様な化学修飾パターンがsd-rxRNAに適合可能である。配列番号1317および配列番号1318の修飾された形態の非限定的な例は、それぞれ、配列番号1379(A. G. A. A.mC. A. G.mU.mC.mC.mU.mU. A.Chl)および1380(P.mU. A. A. G. G. A.fC.fU. G.fU.fU.fC.fU* G*fU*fC* G* A* U)により表わされる。
ある態様において、VEGFに対して向けられたsd-rxRNAは、配列番号1357を含むセンス鎖と、配列番号1358を含むアンチセンス鎖とを含む。配列番号1357および配列番号1358の修飾された形態の非限定的な例は、それぞれ、配列番号1397(mU. G.mC. G. G. A.mU.mC. A. A. A.mC. A.Chl)および1398(P.mU. G.fU.fU.fU. G. A.fU.fC.fC. G.fC. A*fU* A* A*fU*fC* U)により表わされる。ある態様において、sd-rxRNAは、配列番号1397および1398を含む。本明細書において開示されるsd-rxRNAの他の修飾パターンもまた本発明の側面に適合可能であることが理解されるべきである。
また本明細書において記載されるのは、VEGF以外のタンパク質をコードする遺伝子に対して向けられたsd-rxRNAである。かかるsd-rxRNAの非限定的な例は、表3〜7において提供される。一部の態様において、sd-rxRNAは、表3〜7中の配列から選択される配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含む。
一部の態様において、sd-rxRNAは、CTGFに対して向けられる。CTGFに対して向けられたsd-rxRNAの非限定的な例は、表5において提供される。一部の態様において、CTGFに対して向けられたsd-rxRNAのセンス鎖は、配列番号1422(GCACCUUUCUAGA)の配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含み、CTGFに対して向けられたsd-rxRNAのアンチセンス鎖は、配列番号1423(UCUAGAAAGGUGCAAACAU)の配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含む。配列番号1422および1423の修飾された形態の非限定的な例は、それぞれ、配列番号947(G.mC. A.mC.mC.mU.mU.mU.mC.mU. A*mG*mA.TEG-Chl)および948(P.mU.fC.fU. A. G.mA. A.mA. G. G.fU. G.mC* A* A* A*mC* A* U.)により表わされる。一部の態様において、CTGFに対して向けられたsd-rxRNAのセンス鎖は、配列番号1424(UUGCACCUUUCUAA)の配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含み、CTGFに対して向けられたsd-rxRNAのアンチセンス鎖は、配列番号1425(UUAGAAAGGUGCAAACAAGG)の配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含む。配列番号1424および1425の修飾された形態の非限定的な例は、配列番号963(mU.mU. G.mC. A.mC.mC.mU.mU.mU.mC.mU*mA*mA.TEG-Chl)および964(P.mU.fU. A. G. A.mA. A. G. G.fU. G.fC.mA.mA*mA*fC*mA*mA*mG* G.)により表わされる。
一部の態様において、CTGFに対して向けられたsd-rxRNAのセンス鎖は、配列番号947または配列番号963の配列の少なくとも12の連続するヌクレオチドを含む。ある態様において、CTGFに対して向けられたsd-rxRNAは、配列番号963の配列を含むセンス鎖と、配列番号964の配列を含むアンチセンス鎖とを含む。他の態様において、CTGFに対して向けられたsd-rxRNAは、配列番号947の配列を含むセンス鎖と、配列番号948の配列を含むアンチセンス鎖とを含む。
sd-rxRNAは、疎水性に修飾されていてもよい。例えば、sd-rxRNAは、1または2以上の疎水性の抱合体と結合していてもよい。一部の態様において、sd-rxRNAは、少なくとも1つの5−メチルCまたはU修飾を含む。
本発明の側面は、本明細書において記載されるrxRNAoriおよび/またはsd-rxRNAの核酸を含む組成物に関する。組成物は、1または2以上のrxRNAoriおよび/またはsd-rxRNAを含むことができる。一部の態様において、組成物は、異なるタンパク質をコードする遺伝子に対して向けられた複数の異なるrxRNAori、および/または異なるタンパク質をコードする遺伝子に対して向けられた複数の異なるsd-rxRNAを含む。一部の態様において、組成物は、VEGFに対して向けられたsd-rxRNA、ならびにCTGFまたはPTGS2(COX-2)をコードする遺伝子などの別の遺伝子に対して向けられたsd-rxRNAを含む。
一部の態様において、1または2以上のsd-rxRNAは、IGTA5、ANG2、CTGF、COX-2、補体因子3もしくは5、またはそれらの組み合わせを標的とする。
一部の態様において、sd-rxRNAは、結合組織増殖因子(CTGF)、別名、肥大軟骨細胞特異的タンパク質24を標的とする。CTGFは、分泌型ヘパリン結合タンパク質であって、創傷治癒および強皮症に関連付けられてきた。結合組織増殖因子は、線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮および上皮細胞を含む多くの細胞型において活性である。ヒトCTGFについてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_001901.2およびM92934である。
一部の態様において、sd-rxRNAは、オステオポンチン(OPN)、別名、分泌型リン酸化タンパク質1(SPP1)、骨シアロタンパク質1(BSP-1)および初期Tリンパ球活性化(ETA-1)を標的とする。SPP1は、ヒドロキシアパタイトに結合する分泌型糖タンパク質型のタンパク質である。OPNは、骨のリモデリング、免疫機能、化学走性、細胞の活性化およびアポトーシスを含む、多様な生物学的プロセスに関連付けられてきた。オステオポンチンは、線維芽細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、骨細胞、象牙芽細胞、骨髄細胞、肥大軟骨細胞、樹状細胞、マクロファージ、平滑筋細胞、骨格筋芽細胞、内皮細胞、ならびに、内耳、脳、腎臓、脱落膜および胎盤中の骨外(非骨)細胞を含む、多様な細胞型により産生される。ヒトオステオポンチンについてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_000582.2およびX13694である。
一部の態様において、sd-rxRNAは、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)タンパク質を標的とし、トランスフォーミング増殖因子βについては、哺乳動物において、3種のアイソフォームが存在する(TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3)。TGFβタンパク質は、増殖、遊走、アポトーシス、接着、分化、炎症、免疫抑制および細胞外タンパク質の発現を含む多くの細胞プロセスの調節に関与する増殖因子のスーパーファミリーに属する分泌型タンパク質である。これらのタンパク質は、上皮、内皮、造血、神経および結合組織細胞を含む、広範な細胞型により産生される。ヒトTGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、それぞれ、BT007245、BC096235およびX14149である。TGFβファミリー中で、TGFβ1およびTGFβ2は好適な標的の代表であるが、TGFβ3はそうではない。一部の態様において、sd-rxRNAは、シクロオキシゲナーゼ−2(COX-2)、別名プロスタグランジンG/Hシンターゼ2(PTGS2)を標的とする。COX-2は、脂質代謝およびプロスタノイド類の生合成に関与し、関節リウマチなどの炎症性障害に関連付けられている。ヒトCOX-2についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、AY462100である。
他の態様において、sd-rxRNAは、HIF-1転写因子の成分であるHIF-1αを標的とする。HIF-1αは、低酸素に対する細胞応答の調節の重要な調節因子であり、VEGF依存的およびVEGF非依存的な血管新生促進経路および線維症促進経路の上流において作用する。HIF-1α阻害剤は、レーザーCNVおよびOIRモデルにおいて有効である。ヒトHIF1αについてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、U22431である。
一部の態様において、sd-rxRNAは、mTORを標的とする。mTORは、PI3K/Akt/mTOR経路のセリン/スレオニンキナーゼ成分であり、細胞の成長、増殖、生存、転写および翻訳の調節因子である。mTOR阻害剤は、抗血管新生(レーザーCNVおよびOIRモデルにおいて有効である)および抗線維症活性の両方を有する。ラパマイシンおよび他のmTOR阻害剤が、AMDおよびDMEについての臨床試験において用いられているところである。ヒトmTORについてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、L34075である。
一部の態様において、sd-rxRNAは、造血幹細胞および内皮前駆細胞の組織へのホーミングを刺激する可溶性因子であるSDF-1(間質細胞由来因子1)を標的とする。SDF-1は、VEGFと相乗的に作用して病原性の血管新生を駆動し、SDF-1シグナリングの阻害は、OIR、レーザーCNVおよびVEGF誘導げっ歯類モデルにおいて血管新生を抑制する。
ある態様において、sd-rxRNAは、PDGF-B(血小板由来増殖因子B)を標的とする。トランスジェニックマウスにおける網膜におけるPDGF-Bの過剰発現は、血管結合組織の増殖をもたらし、PDGF-Bシグナリングの阻害は、レーザーCNVモデルにおける抗VEGF処置の効力を増強する。PDGF-BとVEGFとの二重阻害は、NVの退縮を促進し得る。ヒトPDGFの遺伝子およびタンパク質についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号として、X03795(PDGFA)、X02811(PDGFB)、AF091434(PDGFC)、AB033832(PDGFD)が挙げられる。
一部の態様において、sd-rxRNAは、TIE1(免疫グロブリン様およびEGF様ドメインを有するチロシンキナーゼ)を標的とする。
他の態様において、sd-rxRNAは、VEGFR1(血管内皮増殖因子受容体1)、別名FLT1(fms関連チロシンキナーゼ1)を標的とする。この遺伝子は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)ファミリーのメンバーをコードする。VEGFRファミリーメンバーは、受容体チロシンキナーゼ(RTK)であり、これは、7個の免疫グロブリン(Ig)様ドメインを有する細胞外リガンド結合領域、膜貫通セグメント、および細胞質ドメイン内のチロシンキナーゼ(TK)ドメインを含む。このタンパク質は、VEGFR-A、VEGFR-Bおよび胎盤増殖因子に結合し、血管新生および脈管形成において重要な役割を果たす。ヒトVEGFR1の遺伝子およびタンパク質についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号として、NM_001159920、NP_001153392、NM_001160030、NP_001153502、NM_001160031、NP_001153503、NM_002019およびNP_002010が挙げられる。
ある態様において、sd-rxRNAは、VEGFR2(血管内皮細胞増殖因子受容体2)、別名、KDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)を標的とする。キナーゼ挿入ドメイン受容体として知られるこの受容体は、III型受容体チロシンキナーゼである。これは、VEGFに誘導される内皮細胞の増殖、生存、遊走、形態の管状化(tubular morphogenesis)および出芽の主要なメディエーターとして機能する。この受容体のシグナリングおよび細胞内輸送は、Rab GTPアーゼ、P2Yプリンヌクレオチド受容体、インテグリンアルファVベータ3、T細胞タンパク質チロシンホスファターゼなどを含む複数の因子により調節される。ヒトVEGFR2の遺伝子およびタンパク質についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号として、NM_002253およびNP_002244が挙げられる。一部の態様において、血管新生および/または血管漏出の処置は、各sd-rxRNAが異なる遺伝子を標的とするsd-rxRNAの組み合わせの使用を含んでもよい。例えば、VEGFを標的とするsd-rRNAと、HIF-1αを標的とするsd-rxRNAとを用いてもよい。別の例として、mTORを標的とするsd-rRNAと、SDF-1を標的とするsd-rRNAとを用いてもよい。さらに別の例として、VEGFを標的とするsd-rRNA、mTORを標的とするsd-rRNA、およびPDGF-Bを標的とするsd-rRNAを用いてもよい。
滲出型AMD(脈絡膜血管新生(CNV))
本発明の側面は、脈絡膜の血管新生を処置することに関し、これは、AMDの最も速い進行の形態であり(米国において約100万の症例)、脈絡膜から網膜下空間内への新たな血管の不適切な増殖およびこれらの血管からの体液の漏出から生じる。処置されない場合、患者の75%が3年以内に法的盲へと進行する。硝子体内における抗VEGF剤は、CNV病変の成長およびCNV病変からの血管漏出を阻害することにより、迅速に視力を改善することができる。しかし、存在する抗VEGF剤は、殆どの患者において既に存在する病変の退縮を引き起こすことはできない。
ある態様において、sd-rxRNAは、CNVを処置するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAはVEGFを標的とする。他の態様において、sd-rxRNAは、HIF-1α、mTOR、PDGF-B、SDF-1、IGTA5、ANG2、CTGF、COX-2、または補体因子3もしくは5を標的とする。一部の態様において、CNVの処置は、各sd-rxRNAが異なる遺伝子を標的とするsd-rxRNAの組み合わせの使用を含む。
糖尿病性黄斑浮腫(DME)
DMEは、網膜血管からの血管漏出から生じ、視力を脅かす網膜黄斑中の体液の蓄積をもたらし、糖尿病患者のうち約2〜5%において起こる。現在の治療の標準は、局所または格子状レーザー光凝固である。硝子体内における抗VEGF剤および副腎皮質ステロイドは、有効であることが示されているが、未だ承認されていない。
ある態様において、sd-rxRNAは、DMAを処置するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAは、VEGFを標的とする。他の態様において、sd-rxRNAは、HIF-1α、mTOR、PDGF-B、SDF-1、IGTA5、ANG2、CTGF、COX-2または補体因子3もしくは5を標的とする。一部の態様において、DMEの処置は、各sd-rxRNAが異なる遺伝子を標的とするsd-rxRNAの組み合わせの使用を含む。
増殖性糖尿病性網膜症(PDR)
PDRは、慢性の網膜虚血に付随する。網膜の血管新生は、網膜虚血に続発的に起こり、硝子体出血、血管結合組織の増殖、および牽引性網膜剥離をもたらし得る。
ある態様において、sd-rxRNAは、PDRを処置するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAは、VEGFを標的とする。他の態様において、sd-rxRNAは、HIF-1α、mTOR、PDGF-B、SDF-1、IGTA5、ANG2、CTGF、COX-2または補体因子3もしくは5を標的とする。一部の態様において、PDRの処置は、各sd-rxRNAが異なる遺伝子を標的とするsd-rxRNAの組み合わせの使用を含む。
RVOに続発する黄斑浮腫
RVOは、虚血性および非虚血性の形態で起こり得る。虚血性RVOは、黄斑浮腫、網膜虚血および血管新生を含む幾つかの視力を脅かす合併症をもたらし得る。非虚血性RVOは、より好ましい予後を有し、最も一般的な視力を脅かす合併症は、黄斑浮腫である。
ある態様において、the sd-rxRNAは、RVOに続発する黄斑浮腫を処置するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAは、VEGFを標的とする。他の態様において、sd-rxRNAは、HIF-1α、mTOR、PDGF-B、SDF-1、IGTA5、ANG2、CTGF、COX-2または補体因子3もしくは5を標的とする。一部の態様において、RVOに続発する黄斑浮腫の処置は、各sd-rxRNAが異なる遺伝子を標的とするsd-rxRNAの組み合わせの使用を含む。
虹彩の血管新生/新生血管緑内障(NVG)
NVGは、重篤な慢性の眼の虚血を患う眼において発症する稀な障害である。最も一般的な原因は、進行性PDRまたは虚血性CRVOである。虹彩の血管新生は、虚血に起因して起こり、最終的に線維柱帯網を閉塞して重篤な続発性緑内障をもたらす。
ある態様において、sd-rxRNAは、虹彩の血管新生および/またはNVGを処置するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAは、VEGFを標的とする。他の態様において、sd-rxRNAは、HIF-1α、mTOR、PDGF-B、SDF-1、IGTA5、ANG2、CTGF、COX-2または補体因子3もしくは5を標的とする。一部の態様において、虹彩の血管新生および/またはNVGの処置は、各sd-rxRNAが異なる遺伝子を標的とするsd-rxRNAの組み合わせの使用を含む。
増殖性網膜疾患
増殖性網膜疾患として、増殖性硝子体網膜症、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、網膜上膜(網膜黄斑の表面の上に増殖し得る細胞の透明な層であり、網膜の牽引を引き起こす)および滲出型AMDが挙げられる。
ある態様において、sd-rxRNAは、増殖性網膜疾患を処置するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAはTGFβを標的とし、一方、他の態様において、sd-rxRNAはCTGFを標的とする。なお他の態様において、複数のsd-rxRNAが、PDGFRα、mTOR、IGTA5、またはそれらの組み合わせを標的とする。さらに他の態様において、複数のsd-rxRNAが、TGFβと、CTGF、PDGFRα、mTOR、IGTA5、またはそれらの組み合わせの少なくとも1つとを標的とする。さらなる態様において、複数のsd-rxRNAが、CTGFと、TGFβ、PDGFRα、mTOR、IGTA5、またはそれらの組み合わせの少なくとも1つとを標的とする。ある態様において、増殖性網膜疾患の処置は、各sd-rxRNAが異なる遺伝子を標的とするsd-rxRNAの組み合わせの使用を含む。
萎縮型(dry)AMD
ある態様において、sd-rxRNAは、地図状萎縮(GA)(滲出型AMDよりも遅く進行する萎縮型(dry)AMDの一形態)および初期〜中期型萎縮AMD(GAまたはCNVに先行する萎縮性AMDの初期段階)を含む萎縮型AMDを処置するために用いられる。、一部の態様において、sd-rxRNAは、Alu転写を標的とする。他の態様において、sd-rxRNAは、DICER(RNaseIIIファミリー中のエンドリボヌクレアーゼであって、二本鎖RNA(dsRNA)およびpre-microRNA(miRNA)を、低分子干渉RNA(siRNA)と称される約20〜25ヌクレオチド長の短い二本鎖RNAフラグメントへ切断するもの)の発現を阻害または調節する転写因子または他の分子を標的とする。
嚢胞様黄斑浮腫
嚢胞様黄斑浮腫は、手術後の中心窩嚢胞(erofoveal cysts)における網膜内液の蓄積である。ある態様において、sd-rxRNAは、嚢胞様黄斑浮腫を処置するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAは、COX-2(シクロオキシゲナーゼ−2)酵素を標的とする。
網膜色素変性症
網膜色素変性症は、幾つかの既知の遺伝子における変異により引き起こされる遺伝性網膜変性疾患である。ある態様において、sd-rxRNAは、網膜色素変性症を処置するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAは、NADPHオキシダーゼを標的とする。
緑内障
緑内障は、視神経の変性により特徴づけられる、緩徐進行性疾患である。周辺部における初期の視力喪失と、疾患の進行したステージにおける中心部の視力の喪失とがある。緑内障関連視力喪失について最も理解されている危険因子は、眼内圧(IOP)である。線維柱帯切除術は、眼の前部からの過剰の体液を排出させ、IOPの低下をもたらすために、強膜を通してチャネルまたはブレブ(bleb)を作製するために設計された外科的手法である。線維柱帯切除術の失敗の最も一般的な原因は、瘢痕組織によるブレブの封鎖である。
ある態様において、sd-rxRNAは、線維柱帯切除術から生じる瘢痕の形成を予防するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAはCTGFを標的とし、一方、他の態様において、sd-rxRNAはTGFβを標的とする。なお他の態様において、複数のsd-rxRNAが、CTGFおよびTGFβの両方を標的とする。一部の態様において、瘢痕組織形成は、一方がCTGFを標的とし、他方がTGFβを標的とするsd-rxRNAの組み合わせの使用により予防される。
ぶどう膜炎
ぶどう膜炎は、ぶどう膜と称される脈絡膜、毛様体および虹彩からなる眼の中間層の炎症により特徴づけられる広範な群の障害である。この障害は、解剖学的に、前部、中間部、後部または汎ぶどう膜炎として分類され、病理学的に、感染性または非感染性として分類される。
ある態様において、sd-rxRNAは、ぶどう膜炎を処置するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAは、サイトカイン、例えば、TNFαを標的とする。他の態様において、sd-rxRNAは、IL-1、IL-6、IL-15、IL-17、IL-2R、またはCTLA-4を標的とする。なお他の態様において、sd-rxRNAは、VLA-4、VCAM-1、LFA-1、ICAM-1、CD44またはオステオポンチンを含む接着分子を標的とする。さらに別の態様において、sd-rxRNAは、TNFα、IL-1、IL-6、IL-15、IL-17、IL-2R、CTLA-4、VLA-4、VCAM-1、LFA-1、ICAM-1、CD44およびオステオポンチンの少なくとも1つを標的とする。一部の態様において、瘢痕組織形成は、各々が異なる遺伝子を標的とするsd-rxRNAの組み合わせの使用により予防される。
網膜芽細胞腫(Rb)
網膜芽細胞腫は、網膜の細胞中で急速に発達する癌である。ある態様において、sd-rxRNAは、網膜芽細胞腫を処置するために用いられる。一部の態様において、sd-rxRNAは、腫瘍性形質転換において役割を有すると考えられる核タンパク質であるHMGA2を標的とする。
ある態様において、本発明のsd-rxRNAを、多重遺伝子サイレンシングのために用いることができる。一部の態様において、sd-rxRNAの組み合わせを、複数の異なる遺伝子を標的とするために用いる。例えば、新生血管障害の処置のために用いられる場合、VEGFを標的とするsd-rxRNAを、HIF-1αを標的とするsd-rxRNAと共に用いることができる。別の例として、ぶどう膜炎の処置のために用いられる場合、TNFαを標的とするsd-rxRNA、VCAM-1を標的とするsd-rxRNA、およびIL-2Rを標的とするsd-rxRNAを組み合わせて用いてもよい。
一部の態様において、VEGF、IGTA5、ANG2、CTGF、COX-2、補体因子3、補体因子5、HIF-1α、mTOR、SDF-1、PDGF-β、Alu、NADPHオキシダーゼ、TGF-β、IL-1、IL-6、IL-15、IL-17、IL-2R、CTLA-4、VLA-4、VCAM-1、LFA-1、ICAM-1、CD44、オステオポンチン(SPP1)、またはこれらの任意の組み合わせを標的とするために、複数のsd-rxRNAを用いることができる。一部の態様において、かかる多重標的遺伝子サイレンシングを、必要であれば、1つより多くの疾患または状態を処置するために用いることができる。
一部の態様において、sd-rxRNAは、MAP4K4を標的とする。MAP4K4は、哺乳動物のセリン/スレオニンタンパク質キナーゼであって、Saccharomyces cerevisiae Sterile 20(STE20)に関連するタンパク質キナーゼの群に属する。MAP4K4(別名、Nckインタラクティングキナーゼ(Nck interacting kinase)としてのNIK)は、NckのSH3ドメインと相互作用するタンパク質についてのマウススクリーニングにおいて最初に同定された(Su et al. (1997))。その発見以来、MAP4K4は、広範な生理学的機能へ関連付けられ続けている。
RNAiに媒介されるMAP4K4発現の阻害のためのアプローチは、2008年11月19日に出願された米国仮出願第61/199,661、表題「Inhibition of MAP4K4 through RNAi」、および2009年11月19日に出願されたPCT出願PCT/US2009/006211、表題「Inhibition of MAP4K4 through RNAi」において記載され、これらから参考として組み込まれる。MAP4K4を標的とするsd-rxRNA分子は、本発明の側面に適合可能である。一部の態様において、VEGFを標的とするsd-rxRNA分子と、MAP4K4を標的とするsd-rxRNA分子とを、共に投与してもよい。
表1は、sd-rxRNAの標的およびそれらが適用され得る領域の非限定的な例を提示する。
一態様において、オリゴヌクレオチドによるin vitroでの細胞の処置を、対象から取り除かれた細胞のex vivoでの治療のため、または対象に由来しないが対象に投与される予定の細胞の処置のため(例えば、対象に移植される予定の細胞における移植抗原の発現の除去のため)に用いることができる。さらに、in vitroでの細胞の処置を、非治療的セッティングにおいて、例えば遺伝子の機能を評価するため、遺伝子の調節およびタンパク質合成を研究するため、または遺伝子発現またはタンパク質合成を調節するように設計されたオリゴヌクレオチドに対して行われた改善を評価するために、用いることができる。in vivoでの細胞の処置は、タンパク質の発現を阻害することが望ましい特定の臨床的セッティングにおいて有用であり得る。目的の核酸は、ヒト、非ヒト霊長類、非ヒト哺乳動物、非ヒト脊椎動物、げっ歯類(マウス、ラット、ハムスター、ウサギなど)、家畜動物、ペット(ネコ、イヌなど)、ツメガエル、魚類、昆虫(ショウジョウバエなど)、および線虫(C. elegans)などのRNAi経路を有する任意の動物において、RNAiに基づく治療において用いられる。
本発明は、対象に本発明の核酸を投与することにより、対象において、異常な、または望ましくない標的遺伝子の発現または活性に関連する疾患または状態を阻害するかまたは予防するための方法を提供する。適切である場合、対象は、第1に、続くRNAi治療に対してより応答性となるように、プライミング剤により処置される。異常な、または望ましくない標的遺伝子の発現または活性により引き起こされるかこれが寄与する疾患についてのリスクを有する対象は、例えば、当該分野において既知である診断または予後診断アッセイのいずれかまたは任意の組み合わせにより同定することができる。予防剤の投与は、疾患または障害が予防されるように、標的遺伝子の異常の特徴である症状の顕在化に先だって行われても、あるいは、その進行において遅れて行われてもよい。標的遺伝子の異常の型に依存して、例えば、標的遺伝子、標的遺伝子アゴニストまたは標的遺伝子アンタゴニストを対象を処置するために用いることができる。
別の側面において、本発明は、治療を目的として、標的遺伝子発現、タンパク質の発現または活性を調節するための方法に関する。したがって、例示的な態様において、本発明の方法は、標的遺伝子を発現することができる細胞を、標的遺伝子またはタンパク質に対して特異的な(例えば、前記遺伝子によりコードされるmRNAに対して特異的な、または前記タンパク質のアミノ酸配列を特定する)本発明の核酸と、標的タンパク質の発現または活性の1または2以上が調節されるように、接触させることを含む。これらの方法は、in vitroで(例えば、細胞を剤と共に培養することにより)、in vivoで(例えば、剤を対象に投与することにより)、またはex vivoで行うことができる。代表的には、対象を、所望に応じて、第1に、続くRNAi治療に対してより応答性になるように、プライミング剤で処置してもよい。したがって、本発明は、標的遺伝子のポリペプチドまたは核酸分子の異常なまたは望ましくない発現または活性により特徴づけられる疾患または障害に罹患する個体を処置する方法を提供する。標的遺伝子の活性の阻害は、標的遺伝子が異常に制御されていない、および/または低下した標的遺伝子の活性が有益な効果を有する可能性がある状況において望ましい。
したがって、本発明の治療剤は、異常なまたは望ましくない標的遺伝子の活性に関連する障害を処置(予防的または治療的に)するために、対象に投与することができる。かかる処置と組み合わせて、薬理ゲノミクス(すなわち、個体のジェノタイプと外来化合物または薬物に対する個体の応答との間の関係の研究)を考慮してもよい。治療剤の代謝における差異は、薬理学的に活性な薬物の用量と血液濃度のと間の関係を変化させることにより、重篤な毒性または治療の失敗をもたらす可能性がある。したがって、医師または臨床医は、治療剤を投与するか否かを決定する上で、ならびに、投与量および/または治療剤による処置の治療レジメンを調整する上で、関連する薬理ゲノミクス研究において得られる知識を適用することを考慮してもよい。薬理ゲノミクスは、罹患個体における薬物の体内処理(disposition)および異常作用の変化に起因する、薬物に対する応答における臨床的に重要な遺伝的バリエーションに対応する。
本発明の目的のために、範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、および/または、「約」1つの別の特定の値までのものとして、表現される場合がある。かかる範囲が表現される場合、別の態様は、1つの特定の値から、および/または、1つの他の特定の値までを含む。同様に、前述の「約」の使用により値が近似値として表わされる場合、特定の値が別の態様を形成することが理解される。さらに、範囲の各々の終点は、他の終点との関係において、および他の終点と独立して、重要であることが理解される。
さらに、本発明の目的のために、用語「a」または「an」の実体は、その実体の1または2以上を指す。例えば、「a protein」または「a nucleic acid molecule」は、これらの化合物の1または2以上、または少なくとも1つの化合物を指す。したがって、用語「a」(または「an」)、「1または2以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書において交換可能に用いることができる。また、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」も、交換可能に用いることができる。さらに、「〜からなる群より選択される」化合物は、それに続くリスト中の化合物の1または2以上を指し、化合物の2または3以上の混合物(すなわち、組み合わせ)を含む。本発明によれば、単離された、または生物学的に純粋な、タンパク質または核酸分子は、天然の環境から取り除かれている化合物である。したがって、「単離された」または「生物学的に純粋な」とは、必ずしも、その化合物が生成されている程度を反映するものではない。本発明の単離された化合物は、その天然のソースから得ても、分子生物学的技術を用いて生成しても、または化学合成により生成してもよい。
本発明を、以下の例によりさらに説明するが、これは、決してさらなる限定として解釈されるべきではない。本願の全体にわたって引用される参考文献(学術文献、発行された特許、公開された特許出願および同時係属の特許出願を含む)の全ての全内容は、本明細書により参考として明示的に組み込まれる。
例
例1:sd-rxRNA分子の眼投与
網膜下および硝子体内投与が、眼内の細胞型の全てにsd-rxRNA分子を送達する上で高度に有効であることを見出した。MAP4K4を標的とする、または非標的化sd-rxRNA(DY547標識を有するもの、または有しないもの)を、網膜下または硝子体内投与のいずれかにより注射した。5および10μgの用量を評価した。炎症の徴候は観察されなかった。眼は健常であるように見え、細胞遊走の徴候(炎症性応答の指標)は観察されなかった。
化合物の取り込みを、眼底顕微鏡法により可視化した。マウスを、24時間および48時間において安楽死させ、網膜を採取し、固定し、パラフィン包埋して、化合物の取り込みおよび分布を共焦点顕微鏡により分析した。
図1は、DIC、DY547およびHoechstの共焦点三重画像を示す。染色から明らかとなったように、24時間後までに、sd-rxRNAは網膜全体に浸透した。図2は、sd-rxRNAと伝統的なRNAi化合物との送達の比較を提供する。1μlのPBS中10μgのRNAを硝子体内で送達した。白色光による眼底イメージングにより、網膜が通常の眼の構造を有しており、出血または炎症の肉眼的徴候を有さなかったことを確認した。眼底カメラ(眼の内部表面を撮影するように設計された、弱拡大顕微鏡を備えたカメラ)による蛍光イメージングを行った。図2において明らかとなったように、sd-rxRNAと伝統的なRNAi化合物との両方が、投与の直後において網膜において検出された。しかし、24時間後および48時間後においては、sd-rxRNA分子のみが検出された。
図3は、sd-rxRNAの硝子体内投与の後で網膜全体においてsd-rxRNAが検出されたが、PBSまたは伝統的なRNAi化合物の投与の後ではそうでなかったことを明らかにする。
図4は、sd-rxRNAが網膜を光受容体の外節へ浸透することを明らかにする。
図5は、ARPE-19細胞において、sd-rxRNAが、rxRNAoriと比較して、強力な取り込みおよびサイレンシングを示すことを明らかにする。
図6は、眼の適応症における使用のためのsd-rxRNAの幾つかの非限定的な例を示す。
VEGFに向けられたsd-rxRNAの有効性は、図7において示され、図7は、VEGF特異的sd-rxRNAの投与の後での、VEGFのmRNAのレベルのパーセンテージ(PPIBに対して正規化されたもの)を示す。
図8は、硝子体内投与の後でのsd-rxRNAの効率的な浸透を明らかにする。
蛍光標識されたRNAi化合物を、1μlの硝子体内注射を用いて、マウスの眼に投与した。注射の2〜3時間後までに、sd-rxRNAは神経節細胞層において存在し、投与の24時間後までに光受容体の外節において存在した。蛍光は、レーザー走査型共焦点顕微鏡を用いて検出した。
図9は、in vivoで、24時間の時点で、網膜においてsd-rxRNAは顕著に取り込まれるが、rxRNAoriはそうではないこと明らかにする。蛍光タグされたRNAi化合物を投与し、投与の24時間後に採取した眼から全眼マウントを作製した。全眼を、4%パラホルムアルデヒドで一晩固定し、その後ホルマリンで固定し、パラフィンで包埋した。横断面を切削し(厚さ5μm)、Hoechstで染色し、Leica SP5共焦点顕微鏡を用いて可視化した。示される画像は、Hoechst、DY547(RNAi化合物上の赤色タグ)および微分干渉コントラクト(DIC)画像の三重オーバーレイである。パネルBは、パネルAにおいて示されるsd-rxRNAサンプルからの、より高い倍率での観察を示し(スケールバーは10μmである)、これは、網膜色素上皮細胞への送達を明らかにする。
図10および11は、ウサギ網膜における投与の24時間後のsd-rxRNAの顕著な取り込みを明らかにする。蛍光標識RNAi化合物(100ug)を、ウサギの眼に単回の硝子体内注射を介して投与した。注射の24時間後において、全眼を採取し、最適切削温度(OCT)ゲル中で凍結した。凍結ブロックを、切片に切削し、Hoechstで染色した。sd-rxRNAは、硝子体内投与の後で、網膜細胞層全体に存在した。蛍光は、レーザー走査型共焦点顕微鏡を用いて検出した。
図12は、単回の硝子体内注射の後での、標的mRNAの顕著なサイレンシングを明らかにする。sd-rxRNAを、示された用量において、硝子体内注射により(1ulで)、マウスの眼に投与した。48時間後に網膜を採取し、mRNAレベルをQPCRにより定量し、b−アクチンに対して正規化し、n=5〜8(異なる研究からのデータを含め、NTCに相対的に+/−SDとしてグラフ化した;*p=0.05、**p=0.01)である。
図13は、単回の硝子体内注射の後での、標的mRNAの顕著なサイレンシングを明らかにする。3ugのPPIBまたはNTCのsd-rxRNAをマウスの眼に単回の硝子体内注射(1ul)により投与した。網膜を、注射の1、2、4、7、14、21および28日後に採取した。mRNAレベルをqPCRにより定量し、b−アクチンに対して正規化した。各データポイントについて十分な「n」を可能にするために、6個の異なる研究からのデータを集積した(n=5〜8)(各研究においてPBSに相対的に+/−SDとしてグラフ化した;*p=0.01)。
図14は、単回の硝子体内注射の後での、標的mRNAの顕著なサイレンシングを明らかにする。3ugのMap4K4またはNTCのsd-rxRNAを、マウスの眼に単回の硝子体内注射(1ul)により投与した。網膜を、注射の1、2、4、7、14、21および28日後に採取した。mRNAレベルをqPCRにより定量し、b−アクチンに対して正規化した。各データポイントについて十分な「n」を可能にするために、6個の異なる研究からのデータを集積した(n=5〜8)(各研究においてPBSに相対的に+/−SDとしてグラフ化した;*p=0.05、* *p=0.01)。
図15は、sd-rxRNAが投与の3週間後において血管漏出を引き起こさなかったことを明らかにする。5μgのMap4k4-TEGおよびMap4k4-HPの両方のsd-rxRNAならびにPBSの単回の硝子体内投与(1ul)により、sd-rxRNAを投与した。投与の1、2および3週間後、蛍光眼底イメージングの前に、蛍光標識デキストリンを皮下投与した。蛍光眼底造影により、網膜血管の漏出がないことが明らかとなった。
図16は、sd-rxRNAが投与の3週間後において網膜の構造的な損傷を引き起こさなかったことを明らかにする。5μgのMap4k4-TEGおよびMap4k4-HPの両方のsd-rxRNAならびにPBSの単回の硝子体内投与(1ul)により、sd-rxRNAを投与した。投与の2および3週間後に、光干渉断層撮影を行った。代表的な画像は、正常な網膜の構造および厚さを示す。
図17は、sd-rxRNAが投与の3週間後において網膜の機能を損なわなかったことを明らかにする。5μgのMap4k4-TEGおよびMap4k4-HPの両方のsd-rxRNAならびにPBSの単回の硝子体内投与(1ul)により、sd-rxRNAを投与した。投与の3週間後に暗順応網膜電図検査(ERG)の記録を採取し、sd-rxRNAおよびPBSの投与の後で網膜の機能が同様であったことを明らかにした。明順応の記録もまた採取し、同様の結果を得た。
図18は、sd-rxRNAによる多重標的化サイレンシングのアプローチを明らかにする。幾つかのsd-rxRNAのサイレンシング活性を、関心のある複数の遺伝子を標的とする4種までのsd-rxRNAにより処置された細胞において決定した。組み合わせて投与される場合、sd-rxRNAはそれらの強力な効力を保持し、多重標的化サイレンシングについてのそれらの可能性を示した。
表2は、VEGF中の25マーの配列を表わす。rxRNAoriおよびsd-rxRNAは、表2中の配列に対して向けることができる。一部の態様において、rxRNAoriは、表2において表わされる配列を含む。
表3は、SPP1に対して向けられたsd-rxRNA分子の非限定的な例を表わす。
表4は、PTGS2(COX-2)に対して向けられたsd-rxRNAの配列の非限定的な例を表わす。
表5は、CTGFに対して向けられたsd-rxRNAの配列の非限定的な例を表わす。
表6は、TGFβ2に対して向けられたsd-rxRNAの配列の非限定的な例を表わす。
表7は、TGFβ1に対して向けられたsd-rxRNAの配列の非限定的な例を表わす。
例2:VEGFを標的とするsd-rxRNAの同定
sd-rxRNA開発のための最適な配列を、配列選択アルゴリズムを用いて同定した(表2)。当該アルゴリズムは、以下の基準に基づいて配列を選択する:32%より高いが47%より低いGC含有量、特定の動物モデル(例えば、マウスまたはラット)に対する相同性、5個以上のU/Uの伸長および/または2個以上のG/Cの伸長の回避、500未満のオフ・ターゲットヒットスコア、ならびに5’UTR中に含まれる配列の回避。
配列は、最初に、O−メチル修飾を有する25ヌクレオチドの平滑末端デュプレックスとして開発した。かかる配列を多様な細胞株においてスクリーニングして、遺伝子発現を低下させる上で最も効率的であったものを同定した。0.025、0.1および0.25nMなどの幾つかの濃度のRNA分子を試験し、好適な濃度を決定した。用量応答曲線を作製して最も強力な配列を決定した。これらの配列を、本出願を通して記載されるパラメーターに基づき、sd-rxRNA分子へと開発した。
表8は、VEGFに対して向けられたsd-rxRNAの配列の非限定的な例を表わす。
表9は、VEGFに対して向けられたrxRNAoriの配列の非限定的な例を表わす。
表10は、VEGFに対して向けられたsd-rxRNAの配列の、多様な化学修飾パターンを用いた最適化の結果を表わす。
例3:リンカーの化学
図19は、リンカーの化学のバリエーションがin vitroでのsd-rxRNAのサイレンシング活性に影響を及ぼさないことを示す。ヒドロキシプロリンリンカーおよびリボリンカーの、2種の異なるリンカーの化学を、複数のsd-rxRNA(Map4k4またはPPIBを標的とする)について、受動的取り込みアッセイにおいて評価し、自己送達に有利なリンカーを決定した。HeLa細胞を、送達ビヒクルの不在下において(受動的トランスフェクション)、1uM、0.1uMまたは0.01uMでsd-rxRNAにより、48時間、トランスフェクトした。いずれのリンカーの使用も、sd-rxRNAの効果的な送達をもたらした。
例1において用いたリボリンカーは、以下の構造を有した:
このように、本発明の少なくとも1つの態様の幾つかの側面を記載してきたが、当業者は多様な改変、修飾および改善を容易に想起することが理解されるべきである。かかる改変、修飾および改善は、本開示の一部として意図され、本発明の精神および範囲のうちであることが意図される。したがって、前述の記載および図面は、単なる例である。
均等物
当業者は、慣用的な実験のみを用いて、本明細書において記載される発明の具体的な態様への多数の均等物を理解するか、またはそれに気付くことができる。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
特許文献を含む本明細書において開示される全ての参考文献は、その全体において参考として組み込まれる。本願は、2009年9月22日に出願されたPCT公開番号WO2010/033247(出願番号PCT/US2009/005247)、表題「REDUCED SIZE SELF-DELIVERING RNAI COMPOUNDS」および2009年2月11日に出願されたPCT公開番号WO2009/102427(出願番号PCT/US2009/000852)、表題「MODIFIED RNAI POLYNUCLEOTIDES AND USES THEREOF」の、全ての図面および明細書の全ての部分を含む全内容(配列表またはアミノ酸/ポリヌクレオチド配列を含む)を参考として組み込む。