JP2013516645A - 架橋シリコーン表面を有する反射防止フィルム、そのフィルムの製造方法及びそのフィルムを使用した光吸収装置 - Google Patents

架橋シリコーン表面を有する反射防止フィルム、そのフィルムの製造方法及びそのフィルムを使用した光吸収装置 Download PDF

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Abstract

構造化表面を画定する反射防止構造を有する、構造化面を有する構造化フィルム基材を含む透明反射防止構造化フィルム。構造化フィルム基材は、シリコーンエラストマー材料からなる。構造化面は、光に対する反射防止性を有する。構造化表面は、透明反射防止構造化フィルムの残りの部分(例えば、構造化フィルム基材の残りの部分)よりも高いシリコーンエラストマー架橋密度を有する。光エネルギーが光吸収要素によって吸収される際、光エネルギーの供給源と光吸収要素の光エネルギー受容面との間となるように、前記透明反射防止構造化フィルムが配置される光エネルギー吸収装置。

Description

本発明は、透明反射防止構造化フィルムに関し、詳細には、架橋シリコーンエラストマー材料を含む透明反射防止フィルムに関し、より詳細には、反射防止構造化フィルムの残りの部分よりも高いシリコーンエラストマーの架橋密度を有する反射防止構造化表面を有するこうしたフィルムに関する。
従来の化石燃料の燃焼に基づく発電(例えば、石油及び石炭に頼った発電所)のコストの上昇、及びこれにともなう温室効果ガスを低減する必要から、従来とは異なる電力の供給源に対する投資が増大している。例えば、米国エネルギー省は、太陽光発電の研究開発に多大な投資を行ってきた(例えば、太陽エネルギーに基づいた温水及び電力の発生)。このような従来とは異なる発電の供給源の1つとして、太陽光エネルギーを電力に変換する光電池の使用がある。太陽光エネルギーは、住宅用及び商業用の温水を直接的又は間接的に加熱する目的でも使用されている。このような関心の高まりとともに、従来とは異なるこうした太陽エネルギー技術による光エネルギーの吸収効率を高め、これにより利用可能な太陽エネルギーの量を増大させることが求められている。
本発明は、より有用な光エネルギーを該当する光吸収要素(例えば、光電池)に与えることによって、太陽エネルギー及び他の光エネルギー吸収技術の効率を高める(すなわち、エネルギー発生能力を高める)手段を提供するものである。
本発明の一態様では、反射防止構造を有する構造化面を含む構造化フィルム基材を含む透明反射防止構造化フィルムを提供する。構造化面は光に対する反射防止性を有する。少なくとも反射防止構造は、架橋シリコーンエラストマー材料を含む。各反射防止構造は構造化表面を有する。構造化表面は、反射防止構造化フィルムの残りの部分よりも高いシリコーンエラストマー架橋密度を有する。
シリコーンエラストマーは、長期の紫外線曝露下におけるその安定性によって知られ、光学的に透明かつ強靱でありうる。残念なことに、シリコーンエラストマーは、汚れ及び埃の粒子を誘引、吸着及び保持する傾向を有する比較的粘着性の表面を有してもいる。これまで、汚れ及び埃を吸着及び保持するこうした特性のため、シリコーンエラストマーは、例えば光電池用の光学的に透明な角柱状カバーなどの光エネルギー吸収又は変換装置の露出表面を形成するための候補としては望ましくないものであった。本発明は、シリコーンエラストマーの少なくとも表面の架橋密度を高めることによって、シリコーンエラストマー表面のこのような粘着性を大幅に低減させることが可能であり、汚れ及び埃粒子の吸着に対する表面の耐性を大幅に高めることが可能であるという発見に一部基づいてなされたものである。このように架橋密度を高めることによって、シリコーンエラストマー表面の耐摩耗性も向上しうる。したがって、本発明のこの態様においては、フィルムの上の露出した面となるフィルムの構造化表面は、構造化フィルム基材又は少なくとも透明反射防止構造化フィルムの残りの部分よりも高いシリコーンエラストマー架橋密度を有する。
各反射防止構造の外側層のみが高いシリコーンエラストマー架橋密度を有することが望ましい場合もある。各反射防止構造のシリコーンエラストマー材料の全体又は大部分が高いシリコーンエラストマー架橋密度を有することが望ましい場合もある。反射防止構造は、ベース部分又は構造化フィルム基材の裏材から突出してよい。各反射防止構造の全体がより高いシリコーンエラストマー架橋密度を有する場合、フィルムのベース部分又は構造化フィルム基材の裏材が、より高いシリコーンエラストマー架橋密度を有さないフィルムの唯一の部分となりうる。構造化表面から構造化フィルム基材内部にいたる高いシリコーンエラストマー架橋密度の深さは、シリコーンエラストマー材料を架橋するために用いられる処理(例えば、従来の電子線照射硬化法の電圧及び/又は線量)の設定条件(例えば、強度及び/又は時間の長さ)によって決まる。
本発明の別の態様では、本発明に基づく透明反射防止構造化フィルムを製造するための方法を提供する。本方法は最初に、構造化表面を画定する反射防止構造を有する構造化面を含む構造化フィルム基材であって、構造化面が光に対する反射防止性を有し、構造化フィルム基材が架橋シリコーンエラストマー材料を含む、構造化フィルム基材を提供する工程を含む。本方法は次に、構造化表面が、構造化フィルム基材の残りの部分よりも高いシリコーンエラストマー架橋密度を有するように構造化表面を処理する工程を含む。
構造化フィルム基材を提供する工程は、硬化性であることで架橋シリコーンエラストマー材料を形成するシリコーンエラストマー前駆材料を提供することと、シリコーンエラストマー前駆材料を構造化フィルム基材の形状に形成することと、シリコーンエラストマー前駆材料を硬化させて構造化フィルム基材を形成することと、を含んでもよい。既に架橋されているシリコーンエラストマー材料を更に架橋させ、これにより高いシリコーンエラストマー架橋密度を有する構造化表面を形成するために用いられる方法及び設定条件によっては、高いシリコーンエラストマー架橋密度を有さない反射防止構造の部分が残る場合がある。
本発明の更なる態様では、光吸収要素(例えば、太陽光温水循環管又は他の導管、光電池など)及び透明反射防止構造化フィルムを有する光エネルギー吸収装置(例えば、太陽光温水システム、光起電力発電システムなど)を提供する。光吸収要素は光エネルギー受容面を有し、少なくとも光エネルギーの供給源(例えば太陽)からの光エネルギーが光吸収要素によって吸収されている間は、透明反射防止構造化フィルムが光エネルギーの供給源と光エネルギー受容面との間となるように配置される。光エネルギー吸収装置(例えば、太陽エネルギー変換装置)は、地上における用途及び宇宙での用途の両方を含む広範な用途で使用されている。いくつかの実施形態では、太陽エネルギー変換装置は、自動車、航空機、列車又は船舶のような乗り物に取り付けることができる。これらの環境の多くは、有機ポリマー材料にとって非常に過酷である。
本発明の更なる態様では、光エネルギー吸収装置を製造するための方法を提供する。本方法は、本発明に基づく透明反射防止構造化フィルムを提供する工程と、光受容面を有する光吸収要素を提供する工程と、反射防止構造化フィルムを通って光吸収要素の光受容面へと光が通過できるように、光吸収要素に反射防止構造化フィルムを固定する工程と、を含む。
本明細書において使用するところの「フィルム」なる用語は、特に断らないかぎりは、シート、ウェブ、及びこれに類する構造と同義語である。
本明細書において使用するところの「透明な」なる用語は、例えば本発明のフィルムのような構造体が、所望の帯域幅の光を透過させる能力のことを指して言う。ある構造体は、この用語が本明細書において用いられる意味においては、澄んでいるとは考えられない場合であってもなお透明でありうる。これは、この用語が本明細書において用いられる意味において、ある構造体は曇っていると考えられる場合であってもなお透明でありうる、ということである。本発明に基づく透明な構造体は、少なくとも85%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%又は98%の光透過率を有することが望ましい。本発明は、広い光の波長帯域において有用でありうる。例えば、本発明は、約400nm〜約2500nmの波長帯域内の光の透過に対して透明であることが望ましい場合がある。この帯域は、近赤外線(IR)を含む可視光の帯域に一般的に相当する。
本明細書において使用するところの「反射防止構造」なる用語は、光が臨界角よりも大きな角度でポリマー材料に入射して内部で伝播するように、光の入射角を変化させる表面構造のことを指して言う。
本明細書において使用するところに「シリコーンエラストマー架橋密度」なる用語は、シリコーンエラストマー材料の、対象とする特定のフィルム要素(例えば、構造化表面、反射防止構造、構造化フィルム基材など)を形成する部分の平均架橋密度のことを指して言う。平均架橋密度は一般的に、架橋点当たりの1モル当たりのグラム数で測定される(すなわち、架橋点間の分枝鎖の分子量)。
「含む」なる用語及びその変化形は、これらの用語が説明文及び「特許請求の範囲」において用いられている場合に限定的な意味を有するものではない。
「好ましい」及び「好ましくは」なる用語は、特定の状況下で特定の利点をもたらしうる本発明の実施形態のことを指す。しかしながら、同じ、又は他の状況下において他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを目的とするものではない。
本明細書で使用するところの「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、及び「1以上」は、内容上そうでないことが明らかに示されない場合は互換可能に使用される。
「及び/又は」なる用語は、列記される要素の1つ若しくはすべて、又は列記される要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する(例えば、疾患の予防及び/又は治療とは、更なる疾患を予防すること、治療すること、又は疾患を治療及び予防することの両方を意味する)。
本明細書で使用するところの「又は」なる用語は、内容上そうでないことが明らかに示されない場合は一般的に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
本明細書では更に、端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に包含されるすべての数(例えば、1〜5の範囲には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、4.6、5、5.3などが包含される)、及びその範囲内のあらゆる範囲が含まれる。
「ポリマー」又は「ポリマー性」及び「エラストマー」及び「エラストマー性」なる用語は、ポリマー、コポリマー(例えば、2種以上の異なるモノマーを用いて形成されるポリマー)、オリゴマー及びこれらの組み合わせ、並びに混和性ブレンド中で形成されうるポリマー、オリゴマー、又はコポリマーを含むものとして理解される。
本明細書において開示される反射防止構造化フィルムの使用によって、反射されて光エネルギー吸収装置の光吸収要素に到達しない光の量が減少することが実証されている。例えば、このような反射防止構造化フィルムにより、従来の太陽光電池モジュールにおいて約3%〜約7%の範囲で平均出力を増加させることが可能となる。本発明は、反射防止構造化フィルムの露出した表面の汚れ及び埃粒子の吸着に対する耐性(すなわち、耐汚れ性)、並びに/又は耐摩耗性を向上させることにより、光エネルギー吸収装置の寿命の間に、このような反射防止構造化フィルムの光に対する透明性を維持する助けとなりうるものである。これにより、本発明は、こうした光吸収装置の光に曝露される表面から反射される入射光の量を低減する助けとなりうるものである。詳細には、構造化面の構造化表面におけるシリコーンエラストマー材料をより高度に架橋することにより、構造化面は、高度の架橋を行わない同じシリコーンエラストマー材料と比較して、更に他のポリマー材料(例えば、ポリウレタン)で形成された同じ構造化面と比較して、向上した機械的耐久性(例えば、落下する砂に対する耐性)を示しうる。このような構造化面は更に、蓄積した汚れ及び埃粒子を比較的容易に取り除くことができる。
光エネルギー吸収装置、及び特に反射防止構造化フィルムの構造化面は、外部環境からの様々な有害な条件に曝されうる。例えば構造化面は、構造化面の構造化表面を損傷させうる雨、風、雹、雪、氷、吹きつける砂などの環境的要素に曝されうる。更に、太陽からの熱及び紫外線に対する曝露などの他の環境条件に対する長期の曝露も構造化面の劣化を引き起こしうる。例えば多くのポリマー有機材料は、紫外線に繰り返し曝露されると分解しやすい。例えば太陽エネルギー変換装置のような光エネルギー吸収装置の耐候性は、材料が劣化したり又は性能が損なわれたりすることなく何年にもわたって機能しうることが望ましいため、一般的に年数によって測定される。材料は、光透過率又は機械的一体性が大幅に損なわれることなく20年程度の屋外曝露に耐えうることが望ましい。一般的なポリマー有機材料は、20年といった長期に及んで光透過率又は機械的一体性が損なわれることなく屋外曝露に耐えうるものではない。少なくとも一部の実施形態において、本発明の構造化面は、少なくとも約5年〜少なくとも約20年の範囲、場合によっては更に長期(例えば、少なくとも約25年)の耐汚れ性及び/又は機械的耐久性を示すことが予想される。更に、構造化面はシリコーン材料で形成されることから、少なくとも約15年、約20年、又は更には約25年の長期の紫外線安定性を示しうる。
本発明のこれらの利点及び他の利点を、同様の参照符合を用いて同様の部材を表す本発明の図面及び「発明を実施するための形態」に更に示し、説明する。ただし、図面及び説明文はあくまで説明を目的としたものであって、本発明の範囲を不要に限定するものとして読まれるべきものではない点は理解を要する。
添付の図面において、
本発明の透明反射防止構造化フィルムの実施形態の側縁図。 本発明の代替の透明反射防止構造化フィルムの実施形態の側縁図。 本発明の別の透明反射防止構造化フィルムの実施形態の側縁図。 光吸収要素によって吸収される光の量を増大させるように配置された透明反射防止構造化フィルムを有する光エネルギー吸収装置の実施形態の側面図。 光吸収要素によって吸収される光の量を増大させるように入射光が伝播しうる反射の経路を示す、別の光エネルギー吸収装置の実施形態の側面図。
以下の説明文に、例示的な実施形態をより詳細に示す。以下の本発明の実施形態の説明では、説明を分かりやすくするために特定の用語を用いる。ただし、本発明はそのように選択された特定の用語に限定されるものではなく、そのように選択された各用語には、同様の機能を有するあらゆる技術的均等物が含まれる。更に、説明される異なる実施形態の同じ、又は類似の要素を特定するために同じ参照符合を用いる。
そうではない旨が断られないかぎり、上記明細書及び添付の「特許請求の範囲」に記載される数値的パラメータは、本明細書に開示される教示を利用する当業者が得ようとする所望の特性に応じて変更することが可能な近似的な値である。
図1を参照すると、例示的な透明反射防止構造化フィルム10は、例えば光の反射を防止する角柱状リブレット(図5を参照)の形の反射防止構造を備える主構造化面14を有する構造化フィルム基材12を含む。各反射防止構造16は、先端角度α、及び露出した構造化表面18を有する。フィルム10は更に、そこから反射防止構造16が延出するベース部分20を有する。ベース部分20は、図に示されるように構造16の一体形成された部分としてもよく、あるいは破線21によって示されるような別の層としてもよい。構造化フィルム基材12は、架橋シリコーンエラストマー材料からなる。シリコーンエラストマー材料は、例えば2成分シリコーンゴム(例えば、Momentive RTV615シリコーン)、ポリジメチルシロキサン(例えば、PDMS−S51)など、又はそれらの組み合わせであってよい。構造化面14は、各構造化表面18が構造化フィルム基材12のコア又は残りの部分22よりも高いシリコーンエラストマー架橋密度を有するように、更なる架橋処理(例えば、電子線照射、紫外線、及び/又は熱エネルギー)に曝露される。高い架橋密度の深さDは、更なる架橋処理への曝露強度及び/又は架橋処理の長さによって決まる。構造化表面18のこのような高い架橋密度によって、シリコーンエラストマー表面18の汚れ及び埃の吸着に対する耐性(汚れ吸着試験の結果によって示される)が高められるとともに、シリコーンエラストマー表面18の耐摩耗性(砂落下試験の結果によって示される)が高められる。
フィルム10又は本発明に基づく他のあらゆる透明反射防止構造化フィルムは、場合により用いられる透明支持裏材24と組み合わせて使用することが望ましい場合がある。こうした実施形態では、支持裏材24は主面24aを有し、構造化フィルム基材12は更に支持裏材24の主面24aと結合される主裏打ち面12aを含むことにより、強化された透明反射防止構造化フィルムが形成される。支持裏材24は、ポリマー材料若しくはガラス、又は他の透明セラミック材料で形成することができる。例示的なポリマー材料には、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)フィルム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、プライミングされたPETフィルム、ポリカーボネートフィルム、架橋ポリウレタンフィルム、アクリレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレン−プロピレン(FEP)フィルム、又はこれらのブレンドの内の少なくとも1つ又は組み合わせが含まれる。紫外線吸収剤(チバ・ガイギー社(Ciba Geigy)より販売されるTinuvin 1577など)をPMMA及びPVDFとPMMAとのブレンドに添加することによって、屋外での耐久性を向上させることができる。他の透明セラミック材料は、例えば石英結晶などであってよい。支持裏材24を形成するうえで、透明な不織布若しくは織布繊維材料、又は切断した透明繊維の使用も可能である。こうした繊維材料は、構造化フィルム10を形成するシリコーンエラストマー材料中に配するか、構造化フィルム10上に配するか、あるいはその両方であってよい。
透明支持裏材24は、静電気を消散させるように選択することもできる。例えば、支持裏材は、支持裏材24に静電気を消散させるような1以上のポリマー材料で形成することができる。静電気を消散させるため、透明支持裏材24は、ラブリゾール社(Lubrizol Corp.)からSTATRITE X5091ポリウレタン又はSTATRITE M809ポリメチルメタクリレートとして販売されるものなどの本質的に静電気消散性のポリマーを含んでもよい。また、スリー・エム社(3M Company)より販売されるFC4400などの静電気消散性の塩を、透明支持裏材24を形成するために用いられるポリマー(例えば、PVDF)中に配合してもよい。これに加えるか又はこれに代えて、構造化フィルム基材12はこうした静電気消散性の塩を含んでもよい。
支持裏材24に代えるか又は支持裏材24に加えて、フィルム10又は本発明に基づく他のあらゆる透明反射防止構造化フィルムは、場合により用いられる水分バリア層26と組み合わせて使用することが望ましい場合もある。こうした実施形態では、水分バリア層26は、例えば水分バリア層26を1以上の中間層(例えば、支持裏材層24)を介して間接的に、又は構造化フィルム基材12の主裏打ち面12a上に直接的に積層、コーティング、又は結合することによって形成することができる。また、水分バリア層26は、フィルム10の組成を水分バリア性を示すように(例えば、水分の吸収、浸透を阻止するように)配合することによって形成することもできる。
水分バリアは、例えば、それらの全容を本明細書に援用する国際特許出願第PCT/US2009/062944号、米国特許第7,486,019号及び同第7,215,473号、並びに米国特許出願公開第2006/0062937 A1号に開示されるバリアアセンブリ、又は1以上のバリア層であってよい。シリコーンは高い水蒸気透過率を有し、光電池は一般的に水分の影響を受けやすいことから、水分バリアは有用でありうる。したがって、水分バリア層によって裏打ちすることにより、本発明の透明反射防止構造化フィルムを、水分の影響を受けやすい光電池(例えば、銅/インジウム/ガリウム/セレン又はCIGS光電池)上に直接使用することが可能である。
図2を参照すると、本発明の透明反射防止構造化フィルムの別の実施形態10aでは、主構造面14は、反射防止構造16のそれぞれのシリコーンエラストマー材料の全体が、構造化表面18のシリコーンエラストマー架橋密度と同等のシリコーンエラストマー架橋密度を有し、フィルム10aの残りの部分22が、反射防止構造16のそれぞれのシリコーンエラストマー架橋密度よりも低いシリコーンエラストマー架橋密度を有するように更なる架橋処理に曝露されている。破線23は、フィルム10aの高い架橋密度部分を低い架橋密度部分から分けている。
図3を参照すると、本発明の透明反射防止構造化フィルムの更なる実施形態10bでは、反射防止構造16のそれぞれが別体のベース部分20’から延出している。別体のベース部分20’は架橋シリコーンエラストマー材料の1以上の層であってもよく、あるいは別体のベース部分20’は異なる材料の1以上の層であってもよい(例えば、PMMA、PVDF及びPETなどのより安価な材料)。別体のベース部分20’は、シリコーンエラストマー材料と異なる材料との適合性に応じて、任意の適当な手段によって反射防止構造16に接着又は結合される。例えば、ベース部分20’は、シリコーンエラストマー反射防止構造16のそれぞれの主裏打ち面16aを受承して、主裏打ち面16aと結合されるように場合に応じてプライマーでコーティングされるか、又は処理(例えば、コロナ放電処理)若しくは準備される主面20aを有しうる。反射防止構造16は、例えば、その主面の少なくとも一方に反射防止構造16の所望のパターンと一致する微小複製パターンが形成された金型フィルム(図に示されていない)によって形成することができる。
所望のシリコーンエラストマー前駆材料の層を、ベース部分面20aの表面上に押出し、コーティング、又は適用することができる。次いで金型フィルムの微小複製された主面を、シリコーンエラストマー前駆材料の層と接触させることによって、適用されたシリコーンエラストマー前駆材料の露出表面を所望の反射防止構造16の形状に形成することができる。あるいは、シリコーンエラストマー前駆材料の層を金型フィルムの微小複製された主面上に押出し、コーティング又は適用し、次いで適用された前駆材料の露出した裏面をベース部分面20aの表面と積層又は接触させて結合させてもよい。形成された前駆材料をベース部分面20aの表面と接触させた時点で、最初にシリコーンエラストマー前駆材料を架橋又は硬化させ、この後、反射防止構造16の少なくとも表面18に高い架橋密度を生じさせる架橋を行う。
反射防止構造は、角柱状、角錐状、円錐状、半球状、放物線状、円筒状、及び柱状構造の少なくとも1つ又は組み合わせで構成されうる。角柱からなる反射防止構造は、約90°未満、約60°以下、約30°以下、又は約10°〜最大で約90°の範囲の角柱先端角度を有しうる。このような反射防止プリズム構造は、約2マイクロメートル〜約2cmの範囲の谷〜谷、又は山〜山のピッチを有してもよい。角柱からなる反射防止構造は、約15°〜約75°の範囲の角柱先端角度を有してもよい。角柱からなる反射防止構造は、約10マイクロメートル〜約250マイクロメートルの範囲のピッチを有してもよい。
反射防止構造は、約1.55未満の屈折率、好ましくは約1.50未満の屈折率を示すことが望ましい場合がある。反射防止構造が角柱構造を有する場合(例えば、直線状プリズム構造又はリブレット)、それぞれの角柱が、それらの基部から約90°未満の頂角、好ましくは約60°以下の頂角を有する先端へと幅が狭くなることが望ましい場合がある。このような角柱構造は、約10マイクロメートル〜約250マイクロメートルの範囲の谷〜山までの高さを有することが望ましい場合がある。このような角柱構造は、約25マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲の谷〜山までの高さを有することが望ましい場合もある。
本発明の透明反射防止構造化フィルムは、構造化表面を汚れ吸着試験、砂落下試験、又は両試験の組み合わせに曝露した後に、少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の光透過率を示すことが望ましい場合がある。これらの試験については後述する。本発明の透明反射防止構造化フィルムは、構造化表面を汚れ吸着試験、砂落下試験、又は両試験の組み合わせに曝露した後に、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の光透過率の変化を示すことが望ましい場合もある。
本発明の透明反射防止構造化フィルムは、反射防止構造のシリコーンエラストマー材料中に無機粒子、好ましくはナノ粒子を含んでもよい。これらの粒子には、任意の適当な無機材料が含まれうる(例えば、シリカ、ジルコニア、チタニアなど、又はこれらの任意の組み合わせ)。こうした粒子は、約2.0マイクロメートル以下の範囲の粒径を有するものでよい。シリカ粒子は最大でミクロンサイズであってよいが、他の材料で形成された粒子はナノメートルサイズのものが使用されることが好ましい(すなわち、約5nm〜約50nm以下の範囲)。こうした粒子、特にナノ粒子は、0重量%〜約60重量%以下の範囲でシリコーンエラストマー材料中に添加してもよい。
図4を参照すると、本発明の透明反射防止構造化フィルム10のいずれの実施形態も、例えば、光源熱エネルギー吸収装置(例えば、太陽光温水システム)、光起電力装置、又は他の任意の光エネルギー吸収装置などの光エネルギー吸収装置30において使用することができる。こうした装置30は、光エネルギー受容面32aを有する光吸収要素32(例えば、光電池)を更に含み、透明反射防止構造化フィルム10が、光エネルギーの供給源(例えば、太陽)と光エネルギー受容面32aとの間となるように光吸収要素32に対して配置される。これにより、光源からの光エネルギーは、光吸収要素32によって吸収される前に構造化フィルム10を通過することになる。フィルム10は、光エネルギー受容面32aに結合、接着、機械的に締結又は直接接触させて配置することができる。また、必要な場合には、1以上の透明支持裏材24又は他の中間層を、フィルム10と光吸収要素32との間に配置することができる。
光エネルギー吸収装置(例えば、太陽エネルギー変換装置)は、地上における用途及び宇宙での用途の両方を含む広範な用途で使用されている。いくつかの実施形態では、太陽エネルギー変換装置は、自動車、航空機、列車又は船舶などの乗り物に取り付けることができる。これらの環境の多くは、有機ポリマー材料にとって非常に過酷である。
図5を参照すると、本発明の透明反射防止構造化フィルム10を光エネルギー吸収装置30の光吸収要素32とともに使用することにより、反射防止構造16の表面18に入射する入射光(矢印40により示される)が複数回反射される可能性が高くなる(矢印40により示される)。このような光40の複数回の反射によって、光40が光吸収要素32内へと屈折する確率、及び入射光の受容角が大きくなる確率が高くなる。このように、こうした透明反射防止構造の使用により、装置30の効率及びエネルギー出力を高めることが可能である。
構造化フィルム基材の構造化面は、一連の反射防止構造を有しうる。構造化フィルム基材は1又は複数の材料で形成されるか、かつ/又は多層構造を有しうる。これに代えるか又はこれに加えて、構造化フィルムが多層構造であってもよい。例えば、フィルムは、1種類の材料の配合で形成された構造化面と、ベース及び異なる材料の配合を有する接着剤のそれぞれで形成された、接着剤で裏打ちされた別体のベース部分とを有する。更に、接着剤は1又は複数の層の形であってもよい。
一般的に構造化フィルム基材の反射防止構造は、反射光の相当部分が別の反射防止構造の表面と交差するように設計されている。いくつかの実施形態では、一連の反射防止構造は、基本的に平行な一連の谷によって分離された基本的に平行な一連の山を有する。構造化フィルム基材の断面は様々な波形を有しうる。例えば、構造化フィルム基材の断面は、(1)反射防止構造の山のそれぞれが、対応する谷のそれぞれと同様、同じである対称的なノコ歯パターン、(2)一連の対応する平行な谷によって分離された、高さの異なる一連の平行な反射防止構造の山、又は(3)一連の平行かつ非対称的な谷によって分離された、交互に配された平行かつ非対称的な反射防止構造の山のノコ歯パターンを有しうる。いくつかの実施形態では、反射防止構造の山及び対応する谷は連続的であるが、他の実施形態では山と谷との非連続的なパターンも考えられる。したがって、例えば、反射防止構造の山及び対応する谷は、光エネルギー吸収又は変換装置の一部において途絶している場合もある。谷は、反射防止構造の山又は谷が装置の一端から他端へと進むに従って幅が狭くなるか又は広くなってよい。更に、特定の反射防止構造の山又は対応する谷の高さ及び/又は幅が、山又は谷が装置の一端から他端へと進むに従って変化してもよい。他の実施形態では、一連の反射防止構造は不均一な構造である。例えば、反射防止構造は、高さ、ベース幅、ピッチ、頂角、及び/又は他の任意の構造的側面において異なりうる。いくつかの実施形態では、構造化面の平面からの反射防止構造の傾きは、平均で垂線から30°未満であることが望ましい。他の実施形態では、反射防止構造は、一寸法において構造化面に対する垂線の周囲でほぼ対称的である。
光吸収装置が光起電力装置である場合、光吸収要素は、太陽光又は他の光エネルギーを電気エネルギーに変換するための光電池である。反射防止構造化フィルムは表面反射を低減することによって、光電池の電気的出力(すなわち、光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率)を向上させる。このようにして本発明の透明反射防止構造化フィルムを使用することにより、光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率を、少なくとも約3%、場合により約5%〜約10%以下の範囲で高めることが可能である。透明反射防止構造はフィルムの形態であるため、光電池は、破損することなくロールに巻いたり、折り畳めたりするような充分な可撓性及び柔軟性を有しうる。
本発明の光エネルギー吸収装置は、反射防止構造化フィルムを通って光吸収要素(例えば、光電池)の光受容面へと光が通過できるように、光吸収要素に反射防止構造化フィルムを機械的に取り付けるか、接着剤により接着するか、あるいは他の手段により固定することによって作製することができる。光吸収要素は例えば、太陽光温水ヒーター又は他の光により発生する熱エネルギーの吸収装置、太陽エネルギー又は他の光エネルギーを電気エネルギーに変換するための光電池、又はこれらの組み合わせであってよい。
本発明に基づく透明反射防止構造化フィルムは、上記に述べたような透明構造化フィルム基材を与え、次いで、構造化表面が、構造化フィルム基材の残りの部分よりも高いシリコーンエラストマー架橋密度を有するように構造化表面を処理することによって作製することができる。構造化フィルム基材の構造化表面は、例えば、架橋シリコーンエラストマー材料の更なる架橋を生じる処理(例えば、電子線照射硬化処理)に曝露することによって処理することができる。既に架橋されているシリコーンエラストマー材料を更に架橋させるために用いられる処理(例えば、従来の電子線照射硬化法)の設定条件(例えば、強度、電圧、及び/又は時間の長さ)によっては、より高いシリコーンエラストマー架橋密度を有さない構造化フィルム基材の部分が残る場合がある。低電圧(150kV未満)の電子線照射によって、架橋シリコーンの表面付近に高い架橋密度が生じる。例えば図2に見られるように、処理の設定条件は、反射防止構造のシリコーンエラストマー架橋密度が構造化表面のシリコーンエラストマー架橋密度と概ね同じ高さとなるように選択することもできる(すなわち、構造化表面のシリコーンエラストマー架橋密度と概ね同じシリコーンエラストマー架橋密度を有するように反射防止構造全体を処理する)。また、処理の設定条件は、それぞれの反射防止構造のコア部分が、構造化表面のシリコーンエラストマー架橋密度と概ね同じ高さのシリコーンエラストマー架橋密度を有さないように選択することもできる(図1、3及び4を参照)。
透明構造化フィルム基材は、硬化性であることで架橋シリコーンエラストマー材料を形成するシリコーンエラストマー前駆材料を与えることによって作製することができる。このシリコーンエラストマー前駆材料は、任意の適当な形成方法によって構造化フィルム基材の形状に形成される。例えば、適当な大きさの溝を基材に形成した後、この基材を鋳型表面として使用してその上にシリコーンエラストマー前駆材料をコーティングすることによって、構造化フィルム基材の反射防止構造を有する主構造化面を成形することができる。このような鋳型基材は、例えば、その全容を本明細書に援用するところの米国特許出願公開第2006/0234605号に開示される方法及び装置に基づいて作製することができる。シリコーンエラストマー前駆材料は、この形状で硬化させることで構造化フィルム基材が形成される。あるいは、米国特許出願第2006/0234605号に開示される金型を使用して、適当な大きさの溝をポリマー鋳型基材(例えば、フィルムの形態の)に成形した後、これを鋳型表面として使用することもできる。
使用するシリコーンシリコーンエラストマー前駆材料に応じて、硬化プロセスにおいて前駆材料に架橋処理を行ってもよい(例えば、熱及び/又は放射線処理)。前駆材料が2成分型の自己硬化型シリコーンエラストマー材料である場合、硬化プロセスにおいて、2成分を混合した後、前駆材料を鋳型表面と充分に長い時間、接触状態に維持することで架橋を生じさせることができる。既に架橋されているシリコーンエラストマー材料を更に架橋させるために用いられる処理(例えば、従来の電子線照射硬化法)の設定条件(例えば、強度、及び/又は時間の長さ)によっては、より高いシリコーンエラストマー架橋密度を有さない反射防止構造の部分、又は少なくとも構造化フィルム基材の部分が残る場合がある。また、それぞれの反射防止構造の全体を、より高いシリコーンエラストマー架橋密度と概ね同等の架橋密度にまで架橋してもよい。エネルギーコストを節約するため、構造化表面をより高いシリコーンエラストマー架橋密度にまで更に架橋する深さ及び程度を最小に抑えることが望ましい場合もある。
いくつかの実施形態では、構造化フィルム基材は、フィルム基材の厚さ全体にわたって変化する架橋密度を有する。例えば、架橋密度が構造化フィルム基材の構造化表面において最も高く、構造化表面の反対側の表面において最も低くなるように、構造化フィルム基材の厚さに沿った架橋密度の勾配を形成してもよい。約100kV〜約150kVの範囲などの比較的低電圧の電子線照射を用いて、構造化フィルム基材の表面の架橋密度を高めることが可能である。
以下の実施例は、あくまで本発明の特徴、利点、及び他の詳細を更に説明する目的で選択されたものである。しかしながら、実施例はこの目的を果たすものではあるが、使用される特定の成分及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明の範囲を必要以上に限定するものとして解釈されるべきではない点は明確に理解されるはずである。
(実施例1)
ニューヨーク州ウォーターフォード所在のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(Momentive Performance Materials)より販売されるRTV615のA液及びRTV615のB液を10:1の比で混合し、4枚の石英スライドガラスのそれぞれに厚さ100マイクロメートルでコーティングした。次いで、シリコーンコーティングされた石英スライドガラスを対流式オーブン中で85℃に30分加熱し、熱硬化性シリコーン前駆材料を架橋/硬化させた。次いで、架橋シリコーンでコーティングされたこれらのスライドガラスを、表1に示す電子線照射処理に曝露した。次いで、得られた電子線照射架橋シリコーンコーティングの貯蔵弾性率を、ナノインデンテーション法により調べた。これらの電子線照射シリコーンコーティングにおける貯蔵弾性率の変化を表1に示す。試料の貯蔵弾性率の増大は、コーティングの架橋密度が増大したことを示す。
Figure 2013516645
シリコーンエラストマー表面の貯蔵弾性率(すなわち、架橋密度)が少しでも増大することが望ましい。シリコーンエラストマー表面が少なくとも約20MPa、約25MPa、約30MPa、又はこれよりも高い貯蔵弾性率を示す場合に、好ましい結果が得られた。
(実施例2)
高分子量のPDMS(ジェレスト社(Gelest)より販売されるPDMS−S51)を、2枚の石英スライドガラスのそれぞれに100マイクロメートルの厚さでコーティングした。シリコーンコーティングされた石英スライドガラス(試料1及び2)を両方とも電子線処理に曝露して、架橋性シリコーンPDMS前駆物質を架橋/硬化させた。次いでこれらのコーティングされたスライドガラスの一方(試料2)を、140kV及び60Mradの更なる電子線照射処理に曝露した。
試料1及び2を、2枚のコーティングしていないそのままの石英スライドガラスとともに、以下に述べる汚れ吸着試験に供した。試験を行う前の最初の光透過率を(Ti)、試験を行った後の最終的な光透過率を(Tf)とし、最初の光透過率と最終的な透過率との差(Td)を下記表2にそれぞれについて示した。表のデータは、非処理の試料1(すなわち、更なる架橋を行わなかったもの)と比較して、更なる処理を行った試料2(すなわち、更なる架橋を行ったもの)では、光透過率が大幅に増大したことを示している。この光透過率の差は、更なる処理を行ったシリコーンエラストマー表面(試料2)は、試料1よりも汚れの吸着及び保持量が少ないことによるものである。表のデータは、そのままのスライドガラスの光透過度は汚れ吸着試験による影響が最も小さく、試料2は同等の結果を有したことを示している。
Figure 2013516645
(実施例3)
高分子量のPDMS(ジェレスト社(Gelest)より販売されるPDMS−S51)を、2枚の石英スライドガラスのそれぞれに100マイクロメートルの厚さでコーティングした。シリコーンコーティングされた石英スライドガラス(試料1及び2)を両方とも電子線処理に曝露して、硬化性シリコーンPDMS前駆物質を架橋/硬化させた。次いでこれらのコーティングされたスライドガラスの一方(試料2)を、140kV及び60Mradの更なる電子線照射処理に曝露した。
試料1及び2を、1枚のコーティングしていないそのままの石英スライドガラスとともに、以下に述べる砂落下試験に供した。試験を行う前の最初の光透過率を(Ti)、試験を行った後の最終的な光透過率を(Tf)とし、最初の光透過率と最終的な透過率との差(Td)を下記表3にそれぞれについて示した。表のデータは、非処理の試料1(すなわち、更なる架橋を行わなかったもの)と比較して、更なる処理を行った試料2(すなわち、更なる架橋を行ったもの)では、光透過率が大幅に増大したことを示している。このデータは、硬化シリコーンエラストマー材料の更なる架橋によって、表面の摩耗に対する耐性を高めることができることを示している。この透過率の差は、更なる処理を行ったシリコーンエラストマー表面(試料2)は、試料1の表面よりも研磨砂によって影響されにくいために生じるものである。表のデータは、そのままのスライドガラスの光透過度は砂落下試験による影響が最も小さく、試料2はほとんど同じ結果を有したことを示している。
Figure 2013516645
試験方法
汚れ吸着試験
本明細書において使用する汚れ吸着試験では、1ガロン(3.78L)のNalgen容器の内部に透明反射防止構造化フィルムの試料を100gの細かい/埃状のアリゾナ土と一緒に入れて容器をタンブルすることを行う。1.5インチ(3.8cm)×2.5インチ(6.4cm)の試料を、3インチ(7.6cm)×5インチ(12.7cm)のより大きな10ミル(0.25mm)PET片に取り付ける。試料及び汚れは、モータ駆動ローラ上に水平に置かれたNalgen容器の内側のバッフル板によってタンブルされる。2分間のタンブリング後、試料を缶入り圧縮空気で吹き飛ばし、表面に結合した汚れのみが残るように余分な汚れを除去した。
砂落下試験
本明細書において使用する砂落下試験では、反射防止構造の構造化表面上に直径1インチ(2.5cm)のパイプから1000gの砂を落下させることを行う。
本発明の例示的実施形態
反射防止フィルムの実施形態1
透明反射防止構造化フィルム、シート、ウェブ、又はこれに類するものであって、反射防止構造を有する主構造化面を含む構造化フィルム基材であって、前記構造化面は光に対する反射防止性を有し、少なくとも前記反射防止構造が架橋シリコーンエラストマー材料を含み、各反射防止構造が構造化表面を有し、前記構造化表面が、前記反射防止構造化フィルムの残りの部分よりも高いシリコーンエラストマー架橋密度を有する、構造化フィルム基材を含む、フィルム、シート、ウェブ、又はこれに類するもの。
フィルムの実施形態2
前記反射防止構造のそれぞれのコア部分が、前記構造化表面のシリコーンエラストマー架橋密度よりも低いシリコーンエラストマー架橋密度を有する、フィルムの実施形態1に記載のフィルム。
フィルムの実施形態3
前記構造化表面が少なくとも約20MPaの貯蔵弾性率を有し、前記構造化フィルム基材の残りの部分がそれよりも低い貯蔵弾性率を有する、フィルムの実施形態1又は2に記載のフィルム。
フィルムの実施形態4
前記構造化表面が少なくとも約20MPaの貯蔵弾性率を有し、それぞれの反射防止構造の残りの部分がそれよりも低い貯蔵弾性率を有する、フィルムの実施形態1〜3のいずれか1つに記載のフィルム。
フィルムの実施形態5
前記構造化フィルム基材が、前記反射防止構造が延出するベース部分を更に含み、前記反射防止構造のそれぞれの前記シリコーンエラストマー材料の全体が、前記構造化表面のシリコーンエラストマー架橋密度と概ね同じ高さのシリコーンエラストマー架橋密度を有し、前記ベース部分が、前記反射防止構造のそれぞれのシリコーンエラストマー架橋密度よりも低いシリコーンエラストマー架橋密度を有する、フィルムの実施形態1に記載のフィルム。
フィルムの実施形態6
前記反射防止構造が、角柱状、角錐状、円錐状、放物線状、半球状、円筒状、及び柱状構造の少なくとも1つ又はそれらの組み合わせを含む、フィルムの実施形態1〜5のいずれか1つに記載のフィルム。
フィルムの実施形態7
前記反射防止構造が、約90°未満、約60°以下、又は約10°〜最大で約90°の範囲の角柱先端角度、及び、約2マイクロメートル〜約2cmの範囲のピッチを有する角柱を含む、フィルムの実施形態1〜6のいずれか1つに記載のフィルム。
フィルムの実施形態8
前記反射防止構造が、約15°〜約75°の範囲の角柱先端角度、及び、約10マイクロメートル〜約250マイクロメートルの範囲のピッチを有する角柱を含む、フィルムの実施形態1〜7のいずれか1つに記載のフィルム。
フィルムの実施形態9
前記反射防止構造が、約10マイクロメートル〜約250マイクロメートルの範囲の谷〜山の高さを有する角柱を含む、フィルムの実施形態1〜8のいずれか1つに記載のフィルム。
フィルムの実施形態10
前記フィルムが、前記構造化表面を前記汚れ吸着試験に曝露した後に、少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の光透過率を示す、フィルムの実施形態1〜9のいずれか1つに記載のフィルム。
フィルムの実施形態11
前記フィルムが、前記構造化表面を前記汚れ吸着試験に曝露した後に、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の光透過率の変化を示す、フィルムの実施形態1〜9のいずれか1つに記載のフィルム。
フィルムの実施形態12
前記フィルムが、前記構造化表面を前記砂落下試験に曝露した後に、少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の光透過率を示す、フィルムの実施形態1〜11のいずれか1つに記載のフィルム。
フィルムの実施形態13
前記フィルムが、前記構造化表面を前記砂落下試験に曝露した後に。8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の光透過率の変化を示す、フィルムの実施形態1〜11のいずれか1つに記載のフィルム。
フィルムの実施形態14
前記反射防止構造の前記シリコーンエラストマー材料中に無機ナノ粒子(例えば、シリカ、ジルコニア、チタニアなど)を更に含む、フィルムの実施形態1〜13のいずれか1つに記載のフィルム。こうした粒子は、約2.0マイクロメートル以下の範囲の粒径を有するものでよい。シリカ粒子は最大でミクロンサイズであってよいが、他の材料で形成された粒子はナノメートルサイズのものが使用されることが好ましい(すなわち、約5nm〜約50nm以下の範囲)。こうした粒子、特にナノ粒子は、0重量%〜約60重量%以下の範囲でシリコーンエラストマー材料中に添加してもよい。
フィルムの実施形態15
主面を有する透明支持裏材と組み合わされたフィルムの実施形態1〜14のいずれか1つに記載のフィルムであって、前記構造化フィルム基材が、前記支持裏材の前記主面と結合されて強化された反射防止構造化フィルムを形成する裏打ち面(例えば、主裏打ち面)を更に含む、フィルム。前記反射防止構造は、前記強化された反射防止構造化フィルムの露出した表面を形成する。
フィルムの実施形態16
前記透明支持裏材が静電気を消散させる、フィルムの実施形態15に記載のフィルム。
フィルムの実施形態17
バリア層と組み合わされたフィルムの実施形態1〜16のいずれか1つに記載のフィルムであって、前記構造化フィルム基材が裏打ち面(例えば、主裏打ち面)を更に含み、前記バリア層が前記構造化フィルム基材の前記裏打ち面と結合される、フィルム。
フィルムの実施形態18
前記バリア層が水分バリアである、フィルムの実施形態17に記載のフィルム。
光エネルギー吸収装置の実施形態1
例えば光源(例えば太陽光)の熱エネルギー吸収装置、光起電力装置、又は他の任意の光エネルギー吸収装置などの光エネルギー吸収装置であって、
光エネルギー受容面を有する光吸収要素(例えば、太陽光又は他の光エネルギーを電気エネルギーに変換するための光電池)と、
前記光吸収装置の使用時に、光エネルギーの供給源と前記光エネルギー受容面との間となるように前記光エネルギー受容面に対して配置された、フィルムの実施形態1〜18のいずれか1つに記載の透明反射防止構造化フィルムと、を含む、装置。
装置の実施形態2
前記光吸収装置が、光電池を有する光起電力装置であり、前記反射防止構造化フィルムが表面反射を低減させることにより、前記光電池の電気的出力(すなわち、光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率)が少なくとも約3%、好ましくは約5〜10%の範囲で向上する、装置の実施形態1に記載の装置。
装置の実施形態3
前記光吸収装置が、破損することなく折り畳むか又は少なくともロールに巻くことができるような充分な可撓性及び柔軟性を有する光電池を有する光起電力装置である、装置の実施形態1又は2に記載の装置。
装置の実施形態4
前記光吸収装置が、剛性の光起電力モジュールを含む、装置の実施形態1又は2に記載の装置。
装置の実施形態5
前記光吸収装置が、太陽熱パネルを含む、装置の実施形態1に記載の装置。
装置の実施形態6
前記光吸収装置の前記透明反射防止構造化フィルムが、前記構造化表面を前記汚れ付着試験に曝露した後に92%よりも高い光透過率を有する、装置の実施形態1〜5のいずれか1つに記載の装置。
装置の実施形態7
前記構造化フィルム基材が、ガラス基材上のコーティングである、装置の実施形態1、2及び4〜6のいずれか1つに記載の装置。
フィルムの製造方法の実施形態1
フィルムの実施形態1〜18のいずれか1つに記載の透明反射防止構造化フィルムを製造するための方法であって、
構造化表面を画定するか又は少なくとも各反射防止構造が構造化表面を有する反射防止構造を有する主構造化面を含む透明構造化フィルム基材であって、前記構造化面が光に対する反射防止性を有し、前記構造化フィルム基材が架橋シリコーンエラストマー材料を含む、透明構造化フィルム基材を提供する工程と、
前記構造化表面が前記構造化フィルム基材の前記残りの部分よりも高いシリコーンエラストマー架橋密度を有するように、前記構造化表面を処理する工程と、を含む、方法。
フィルムの製造方法の実施形態2
透明反射防止構造化フィルムを製造するための方法であって、
構造化表面を画定するか又は少なくとも各反射防止構造が構造化表面を有する反射防止構造を有する主構造化面を含む透明構造化フィルム基材であって、前記構造化面が光に対する反射防止性を有し、前記構造化フィルム基材が架橋シリコーンエラストマー材料を含む、透明構造化フィルム基材を提供する工程と、
前記構造化表面が前記構造化フィルム基材の前記残りの部分よりも高いシリコーンエラストマー架橋密度を有するように、前記構造化表面を処理する工程と、を含む、方法。
フィルムの製造方法の実施形態3
前記反射防止構造が、前記構造化表面のシリコーンエラストマー架橋密度と概ね同じ高さのシリコーンエラストマー架橋密度を有するように前記構造化表面を処理する、フィルムの製造法の実施形態1又は2に記載の方法。
フィルムの製造方法の実施形態4
前記反射防止構造のそれぞれのコア部分が、前記構造化表面のシリコーンエラストマー架橋密度と概ね同じ高さのシリコーンエラストマー架橋密度を有さないように前記構造化表面を処理する、フィルムの製造法の実施形態1又は2に記載の方法。
フィルムの製造方法の実施形態5
前記透明構造化フィルム基材を提供する工程が、
硬化性であることで架橋シリコーンエラストマー材料を形成するシリコーンエラストマー前駆材料を提供することと、
前記シリコーンエラストマー前駆材料を前記構造化フィルム基材の形状に形成することと、
前記シリコーンエラストマー前駆材料を硬化させて前記構造化フィルム基材を形成することと、を含む、フィルムの製造方法の実施形態1〜4のいずれか1つに記載の方法。
フィルムの製造方法の実施形態6
前記処理する工程が、前記架橋シリコーンエラストマー材料の更なる架橋を生じる電子線照射硬化処理を含む、フィルムの製造方法の実施形態1〜5のいずれか1つに記載の方法。
装置の製造方法の実施形態1
例えば光源(例えば太陽光)の熱エネルギー吸収装置、光起電力装置、又は他の任意の光エネルギー吸収装置などの光エネルギー吸収装置を製造するための方法であって、
フィルムの実施形態1〜18のいずれか1つに記載の透明反射防止構造化フィルムを提供する工程と、
光受容面を有する光吸収要素(例えば、太陽光温水ヒーター又は他の熱エネルギー吸収装置、太陽エネルギー又は他の光エネルギーを電気エネルギーに変換するための光電池など)を提供する工程と、
前記反射防止構造化フィルムを通って前記光吸収要素の前記光受容面へと光が通過できるように、前記光吸収要素に対して前記反射防止構造化フィルムを機械的に取り付けるか、接着剤により接着するか、あるいは他の手段により固定する工程と、を含む、方法。
装置の製造方法の実施形態2
例えば光源(例えば太陽光)の熱エネルギー吸収装置、光起電力装置、又は他の任意の光エネルギー吸収装置などの光エネルギー吸収装置を製造するための方法であって、
フィルムの製造方法の実施形態1〜6のいずれか1つの方法に従って透明反射防止構造化フィルムを製造する工程と、
光エネルギー受容面を有する光吸収要素(例えば、太陽光温水ヒーター又は他の熱エネルギー吸収装置、太陽エネルギー又は他の光エネルギーを電気エネルギーに変換するための光電池)を提供する工程と、
前記反射防止構造化フィルムを通って前記光吸収要素の前記光エネルギー受容面へと光が通過できるように、前記光吸収要素に対して前記反射防止構造化フィルムを機械的に取り付けるか、接着剤により接着するか、あるいは他の手段により固定する工程と、を含む、方法。
本発明には、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変更を行うことができる。したがって本発明は上記の記載によって限定されるものではないが、以下の「特許請求の範囲」及びそのあらゆる均等物において記載される限定条件によって規制されるものである。
本発明は、本明細書に詳細に開示されていない要素を欠いても適宜実施されうる。
上記に引用したすべての特許及び特許出願は、「背景技術」の項目において記載されるものを含め、その全容にわたって本文書に援用するものである。

Claims (10)

  1. 透明反射防止構造化フィルムであって、
    反射防止構造を有する構造化面を含む構造化フィルム基材であって、前記構造化面が光に対する反射防止性を有し、少なくとも前記反射防止構造が架橋シリコーンエラストマー材料を含み、各反射防止構造が構造化表面を有し、前記構造化表面は、前記反射防止構造化フィルムの残りの部分よりも高いシリコーンエラストマー架橋密度を有する、構造化フィルム基材を含む、フィルム。
  2. 前記反射防止構造のそれぞれのコア部分が、前記構造化表面のシリコーンエラストマー架橋密度よりも低いシリコーンエラストマー架橋密度を有する、請求項1に記載のフィルム。
  3. 前記構造化フィルム基材が、前記反射防止構造が延出するベース部分を更に含み、前記反射防止構造のそれぞれの前記シリコーンエラストマー材料の全体が、前記構造化表面のシリコーンエラストマー架橋密度と概ね同じ高さのシリコーンエラストマー架橋密度を有し、前記ベース部分が、前記反射防止構造のそれぞれのシリコーンエラストマー架橋密度よりも低いシリコーンエラストマー架橋密度を有する、請求項1に記載のフィルム。
  4. 前記反射防止構造が、約15°〜約75°の範囲の角柱先端角度、及び、約10マイクロメートル〜約250マイクロメートルの範囲のピッチを有する角柱を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム。
  5. 前記フィルムが、(a)前記構造化表面を汚れ付着試験に曝露した後に8%未満の光透過率の変化、又は(b)前記構造化表面を砂落下試験に曝露した後に8%未満の光透過率の変化の少なくとも一方を示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム。
  6. 主面を有する透明支持裏材と組み合わされた請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルムであって、前記透明支持裏材が静電気を消散させ、前記構造化フィルム基材が、前記支持裏材の前記主面と結合されて強化された反射防止構造化フィルムを形成する裏打ち面を更に含む、フィルム。
  7. 水分バリア層と組み合わされた請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルムであって、前記構造化フィルム基材が裏打ち面を更に含み、前記水分バリア層が前記構造化フィルム基材の前記裏打ち面と結合される、フィルム。
  8. 光エネルギー吸収装置であって、
    光エネルギー受容面を有する光吸収要素と、
    光エネルギーの供給源からの光エネルギーが前記光吸収要素によって吸収されている間、前記光エネルギーの供給源と前記光エネルギー受容面との間となるように配置される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の透明反射防止構造化フィルムと、を含む、光エネルギー吸収装置。
  9. 透明反射防止構造化フィルムを製造するための方法であって、
    構造化表面を画定する反射防止構造を有する構造化面を含む構造化フィルム基材であって、前記構造化面が光に対する反射防止性を有し、前記構造化フィルム基材が架橋シリコーンエラストマー材料を含む、構造化フィルム基材を提供する工程と、
    前記構造化表面が前記構造化フィルム基材の前記残りの部分よりも高いシリコーンエラストマー架橋密度を有するように、前記構造化表面を処理する工程と、を含む、方法。
  10. 光エネルギー吸収装置を製造するための方法であって、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の透明反射防止構造化フィルムを提供する工程と、
    光受容面を有する光吸収要素を提供する工程と、
    前記反射防止構造化フィルムを通って前記光吸収要素の前記光受容面へと光が通過できるように、前記光吸収要素に対して前記反射防止構造化フィルムを固定する工程と、を含む、方法。
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