JP2013256713A - 化成処理性に優れた高強度冷延鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】Si含有量が多い場合であっても鋼板強度や加工性を損なうことなく優れた化成処理性を有する高強度冷延鋼板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】高強度冷延鋼板は、Cを0.05質量%以上0.2質量%以下、Siを0.5質量%以上3.0質量%以下、Mnを0.1質量%以上3.0質量%以下含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、焼鈍処理後の表面がFe及びFeの酸化物とSi及び/又はMnを含有する酸化物とによって構成され、Si及び/又はMnを含有する酸化物の領域内に少なくともFeを含有する領域が分散していることを特徴とする。これにより、Si含有量が多い場合であっても鋼板強度や加工性を損なうことなく、優れた化成処理性を有する高強度冷延鋼板を提供できる。
【選択図】図1
【解決手段】高強度冷延鋼板は、Cを0.05質量%以上0.2質量%以下、Siを0.5質量%以上3.0質量%以下、Mnを0.1質量%以上3.0質量%以下含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、焼鈍処理後の表面がFe及びFeの酸化物とSi及び/又はMnを含有する酸化物とによって構成され、Si及び/又はMnを含有する酸化物の領域内に少なくともFeを含有する領域が分散していることを特徴とする。これにより、Si含有量が多い場合であっても鋼板強度や加工性を損なうことなく、優れた化成処理性を有する高強度冷延鋼板を提供できる。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車用鋼板等に適用して好適な、化成処理性に優れた高強度冷延鋼板及びその製造方法に関する。
近年、地球環境保全の観点から、自動車車体を軽量化することによって、自動車の燃費を改善することが求められている。一方、衝突時の乗員の安全性を確保するために、自動車車体の強度を向上させることも求められている。自動車車体の軽量化と強度向上とを同時に実現するためには、自動車車体の素材となる薄鋼板を薄肉化、且つ、高強度化することが効果的である。このため、板厚を低減した高強度薄鋼板を自動車車体の素材として採用することが積極的に進められており、最近では、自動車車体の強度部材や補強部材として引張強さが590MPa以上の高強度薄鋼板が使用され始めている。
一般に、自動車車体の強度部材や補強部材はプレス加工等の成形加工によって製造される。このため、自動車車体の素材には、高強度であること以外に加工性に優れることが要求される。自動車車体の素材となる鋼板を高強度化する方法としては、Si(ケイ素)やMn(マンガン)等の合金元素を添加することによって固溶強化したり、結晶粒を微細化したりする方法や、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、V(バナジウム)等の析出物形成元素を添加して析出強化する方法、マルテンサイト相等の硬質な変態組織を形成して強化する方法等が有効であり、既に実用化されている。
合金元素を添加することによって鋼板を高強度化する場合、加工性が低下することが一般的である。ところが、Siは、加工性の低下を抑制しつつ高強度化が可能であるため、鋼板の強度と加工性とを両立させる上で有用な合金元素である。しかしながら、Siは、易酸化性元素であるため、含有量の増加に伴い通常の冷延鋼板の製造工程で実施される還元性雰囲気下での焼鈍処理中に優先的に酸化されて鋼板表面近傍に濃化し、表面にSi含有酸化物層を形成する。表面にSi含有酸化物層が形成された冷延鋼板にリン酸塩処理を行った場合、均一、且つ、微細にリン酸塩結晶を形成することができず、部分的にリン酸塩結晶が欠損した表面状態となる。そして、リン酸塩結晶が欠損した鋼板表面に電着塗装等の塗装を施した場合、密着性の良好な電着塗膜が得られない、塗装後の耐食性が劣化する等の欠陥が生じる場合がある。
このような背景から、Si含有鋼板、特に0.8質量%以上の高い濃度のSiを含有する冷延鋼板の化成処理性を改善する方法が数多く提案されている。具体的には、高い濃度のSiを含有する冷延鋼板の化成処理性を阻害する主な問題は、Siを主体とする酸化物が鋼板表面を被覆することによって、化成結晶の形成が阻害され、化成結晶にスケが生じ、電着塗膜の密着性が低下するというものである。これに対する改善策として、例えば特許文献1,2には、鋼板表層酸化物のSiとMnとの比に加えて酸化物の存在状態(大きさ、密度、被覆率)を制御することによって、化成処理性及び塗膜密着性を改善する技術が提案されている。
また、特許文献3には、連続焼鈍処理中の露点を0〜-20℃の範囲内に制御し、且つ、連続焼鈍処理後に濃塩酸又は濃硫酸で表層のSi酸化物を除去することによって、Si酸化物による鋼板表面被覆率及びSi酸化物の大きさを制御し、化成処理性を改善する技術が提案されている。また、特許文献4には、連続焼鈍処理後に鋼板表面を2.0g/m2以上研削した後に塩酸酸洗する、又はその後さらに0.1〜0.3g/m2の研削を行うことによって、化成処理性を改善する技術が提案されている。さらに、特許文献5には、連続焼鈍処理後に0〜4のpH、10〜100℃の温度で5〜150秒間の酸洗処理を行い、その後さらに10〜14のpH、10〜100℃の温度で2〜50秒間のアルカリ処理を行うことによって、化成処理性を改善する技術が提案されている。
これらの技術はいずれも、鋼板表層の酸化物の組成及び存在状態を適正に制御することによって、化成処理性を改善し、電着塗装後の耐食性を改善しようとするものである。また、特許文献6には、連続焼鈍処理後の酸洗処理によって鋼板表面を片面当たり1μm以上除去し、鋼板表面及び表面から深さ1μmの範囲内の鋼板内部におけるSi濃度の最大値が板厚1/4の位置におけるSi濃度の1.3倍以下に制御することによって、化成処理性を改善する技術が提案されている。
しかしながら、特許文献1,2に記載の方法は、表層酸化物中のSiとMnとの比や存在状態を制御する技術である。このため、特許文献1,2記載の方法によれば、必然的に鋼中に含有するSiとMnとの比が制限され、添加元素の自由度が低下し、十分な強度と加工性とを得ることが難しくなる。また、表層酸化物の組成や存在状態は、焼鈍処理時の露点や水素濃度等の影響を受けやすい。このため、優れた化成処理性を安定的に得ることは難しい。また、特許文献3に記載の方法では、製造条件が極めて限定されているため、所望の強度と加工性とを得ることが難しい。
また、特許文献4に記載の方法では、機械的研削を2度も行う必要があるため、製造コストが上昇する。また、特許文献5に記載の方法も同様に、酸洗処理の後にアルカリ処理を施す必要があるために、製造コストが上昇する。また、特許文献6に記載の方法は、表面のSi含有酸化物が少ない場合においても鋼板表面を1μm以上除去するため、必要以上にFe成分が溶解し、酸洗液中に不必要な成分が多く混入する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、Si含有量が多い場合であっても鋼板強度や加工性を損なうことなく優れた化成処理性を有する、化成処理性に優れた高強度冷延鋼板及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る化成処理性に優れた高強度冷延鋼板は、Cを0.05質量%以上0.2質量%以下、Siを0.5質量%以上3.0質量%以下、Mnを0.1質量%以上3.0質量%以下含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、焼鈍処理後の表面がFe及びFeの酸化物とSi及び/又はMnを含有する酸化物とによって構成され、Si及び/又はMnを含有する酸化物の領域内に少なくともFeを含有する領域が分散していることを特徴とする。
少なくともFeを含有する領域の大きさは100nm以下であることが好ましい。なお、ここでいう領域の大きさとは、領域の長辺の平均長さのことを意味する。面積で換算する場合には、領域の大きさは長辺も短辺も100nmであったときの正方形換算の面積である0.01μm2以下とすることが好ましい。
鋼板引っ張り強度は590MPa以上であることが好ましい。
少なくともFeを含有する領域がSi及び/又はMnを含有する酸化物の領域全体の10%以上の領域を占めることが好ましい。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る化成処理性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法は、本発明に係る化成処理性に優れた高強度冷延鋼板の鋼成分を有するスラブを1000〜1300℃の温度範囲内に加熱した後に熱間圧延を圧延終了温度800℃〜1000℃の範囲内で行い、650℃以下の温度で巻き取り、酸洗を行い、冷間圧延を行った後、700〜900℃の温度範囲内で仕上焼鈍を行うにあたり、仕上焼鈍時の加熱速度を5℃/sec以下とし、仕上焼鈍後から300℃までの間の冷却速度を30℃/sec以上とすることを特徴とする。
本発明に係る化成処理性に優れた高強度冷延鋼板及びその製造方法によれば、Si含有量が多い場合であっても鋼板強度や加工性を損なうことなく優れた化成処理性を有する高強度冷延鋼板を提供できる。
本発明の発明者らは、冷延鋼板の焼鈍処理を種々検討し、焼鈍処理後の鋼板の表面構造と化成処理性との関係を鋭意検討した。その結果、本発明の発明者らは、化成処理性に優れた冷延鋼板では、表面に形成されたSiやMnを含有する酸化物領域の中に少なくともFeを含む領域が分散していることを知見した。化成処理性を左右する要因は、化成処理液と冷延鋼板との間での溶出反応の起こり易さや溶出反応起点の数であると考えられる。冷延鋼板表面にSiやMnを含有する酸化物領域が存在すると、その部分では鉄の溶出反応が起こりにくく、化成処理結晶が成長できない。
このため、一般に、SiやMnを多く含有する冷延鋼板の製造時には、SiやMnを含有する酸化物が表面に濃化しない条件で焼鈍処理を行うことが普通である。ところが、本発明の発明者らの知見によれば、SiやMnを含有する酸化物領域内に少なくともFeを含む微細な領域を分散させることによって、少なくともFeを含む微細な領域によって化成処理時の化成処理液の濡れ性や溶出反応起点を確保できるため、正常な化成処理結晶が成長することによって化成処理性を向上できる。
以下、本発明の一実施形態である高強度冷延鋼板について説明する。
本発明の一実施形態である高強度冷延鋼板は、Siを0.5質量%以上3.0質量%以下、Mnを0.1質量%以上3.0質量%以下含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる。Si及びMnは、鋼板の加工性を低下させずに強度を上げる元素であり、強度と加工性とのバランスを向上させるために必要である。また、C(炭素)の含有量は0.05質量%以上0.2質量%以下の範囲内とする。Cの含有量が下限値未満であると、固溶、析出、細粒化、及び変態等による強化の効果がほとんど見られなくなる。一方、Cの含有量が上限値超えであると、固溶、析出、細粒化、及び変態等による強化の効果が飽和し、製造コストが上昇する。これらの添加元素によって目的とする鋼板特性(例えば鋼板引っ張り強度が590MPa以上等)が得られるが、上記の添加元素に加えて下記の元素を添加してもよい。これらの元素を添加する場合の好ましい範囲は以下の通りである。
P(リン)の含有量は、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以下である。Pの含有量が上限値超えであると、耐食性が劣化傾向になるためである。S(硫黄)の含有量は、好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.002質量%以下である。Sの含有量が上限値超えであると、耐食性が劣化傾向になるためである。
Al(アルミニウム)の含有量は0.01質量%以上0.1質量%以下の範囲内にすることが望ましい。また、N(窒素)の含有量は0.005質量%以下にすることが望ましい。また、上記の元素に加え、必要に応じてさらにTi、Nb、V、Mo(モリブデン)、Cu(銅)、及びNi(ニッケル)のうちの1種又は2種以上を含有することもできる。
本発明の高強度冷延鋼板は、焼鈍処理後の表面がFe及びFeの酸化物とSi及び/又はMnを含有する酸化物とによって構成され、Si及び/又はMnを含有する酸化物の領域内に少なくともFeを含有する領域が分散していれば、製造方法は限定するものではないが、所望の表面状態が得られる製造方法の一例について説明する。
本実施形態では、本発明に適合する成分組成を有する鋼を常法の製鋼プロセスで溶製してスラブとし、このスラブに対して熱間圧延する工程、冷間圧延する工程、冷間圧延後の鋼板を焼鈍する工程、及び必要に応じ酸洗工程を施すことによって、化成処理性に優れた高強度冷延鋼板を製造する。
熱間圧延する工程は、一旦室温まで冷却したスラブを加熱炉で1000℃以上の温度に再加熱してから行うことが通常である。しかしながら、スラブ製造後(連続鋳造後)、再加熱することなく直ちに圧延する直送圧延(直接圧延)するプロセスや、室温まで冷却することなく温片状態で加熱炉に装入し、軽加熱又は保温を行ってから圧延するプロセスを採用してもよい。
スラブを再加熱する場合、スラブ加熱温度は1000℃以上にすることが好ましい。スラブ加熱温度の上限値は特に限定されないが、スラブ加熱温度が1300℃を超えると酸化重量の増加に伴いスケールロスが増大したり、表面欠陥が発生したりすることがあることから、1300℃をスラブ加熱温度の上限値とすることが好ましい。
熱間圧延を行う工程では、必要に応じて粗圧延を行った後、圧延終了温度を800℃以上として仕上圧延を行い熱延鋼板とすることが好ましい。仕上圧延の終了温度が800℃を下回ると、鋼板組織の不均一を招き、加工性を低下させる場合がある。一方、仕上圧延終了温度の上限値は、特に限定されないが、過度に高い温度で圧延するとスケール痕等の表面欠陥の原因となるので、仕上圧延終了温度の上限値は1000℃とすることが好ましい。熱間圧延後は650℃以下の温度で鋼板を巻き取ることが好ましい。巻取温度が650℃を超えると、巻取後に多量のスケールが生成し、冷間圧延前の酸洗負荷が大きくなる。
次に、上記のようにして得た熱延鋼板に対し酸洗処理を行うことによって表面スケールを除去した後、冷間圧延工程を行う。この冷間圧延工程は、所望の寸法及び形状の冷延鋼板を得ることができれば特に限定されない。なお、冷間圧延工程前の酸洗処理は、熱延鋼板の表面スケールが極めて少ない場合には、省略することもできる。
冷間圧延工程後の冷延鋼板に対しては、所望の強度と加工性とを付与するため、焼鈍処理が施される。冷間圧延工程後の冷延鋼板に対しては、所望の強度と加工性とを付与するため、焼鈍処理が施される。焼鈍炉に導入する雰囲気ガスは0.1〜50体積%のH2(水素)を含み、残部はN2(窒素)及び不可避的不純物とすることが好ましい。H2濃度が0.1体積%未満では鋼板表面のFe酸化物を還元するH2が不足し、H2濃度が50体積%を超えてもFe酸化物の還元反応が飽和するためである。H2濃度そのものやN2濃度とH2濃度との比率、また焼鈍温度等を変更することによって、焼鈍時に鋼板表面に濃化するSi及び/又はMnを含有する酸化物の領域内に少なくともFeを含有する領域を分散させることができる。
また、露点が-25℃超になると炉内に存在する水に含まれる酸素による酸化が著しくなり、SiやMn等の内部酸化が過度に起こるため、露点は-25℃以下とすることが好ましい。これにより、焼鈍炉内は鉄の還元性雰囲気となり、酸化処理で生成された鉄の酸化物の還元が起こる。このとき、還元により鉄と分離された酸素は、一部鋼板内部に拡散し、SiやMn等と反応することによって、酸化物を形成する。SiやMn等が鋼板内部で酸化し、溶融めっきと接触する鋼板最表面のSiやMn等を含有する酸化物が減少するため、めっき密着性は良好となる。
焼鈍処理の際は、700〜900℃の温度域に鋼板を加熱保持することが好ましく、750〜850℃がさらに好ましい。また、材質調整の観点及びSi及び/又はMnを含有する酸化物領域内にFeを含有する領域を分散させる観点から、昇温速度5℃/sec以下で鋼板を加熱することが望ましい。加熱保持温度が700℃未満では、十分に再結晶が起こらず、加工性が低下する。一方、加熱保持温度が900℃を超えると、組織が粗大化し、強度と延性とのバランスが低下する。また、加熱保持時間は、10秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましく、鋼板の材質を均一化するためには60秒以上であることがより好ましく、さらに好ましくは120秒以上である。一方、加熱保持時間の上限値は、生産性を考慮して600秒であることが好ましい。また、加熱保持後の冷却は、平均冷却速度30℃/秒以上で300℃以下まで急冷することが好ましい。冷却速度が30℃/秒未満では、変態組織による強度向上が図れないため、所望の強度を得るために合金元素を多量に添加する必要があり、原料コストが上昇する。
上記急冷後はそのままとする、又は、室温近くまで冷却後、再加熱して100〜450℃の温度に3〜30分間保持することが好ましい。また、焼鈍処理時の雰囲気は、水素・窒素雰囲気で実施することが望ましい。このときの水素濃度は0.1〜50体積%程度が望ましく、更に好ましくは5〜20%が望ましい。水素濃度そのものや窒素濃度と水素濃度との比率、また焼鈍温度等を変更することによって、焼鈍時に鋼板表面に濃化するSi及び/又はMnを含有する酸化物の領域内に少なくともFeを含有する領域を分散させることができる。焼鈍処理前に予備的に酸化処理を行ってもよい。
さらに、焼鈍処理後の鋼板表面状態によっては酸洗処理を行っても良い。酸洗方法については、特に手法は問わないが、電解酸洗が好ましい。焼鈍工程までに生成したFeスケール及びSi含有酸化物を除去する観点から電流密度は1A/dm2以上であることが好ましい。電解酸洗処理においては、陰極→陽極又は陽極→陰極の交番電解である方がより好ましい。その理由は、鋼板を陰極に保持したままでは酸洗効果が小さい、また鋼板を陽極に保持したままでは電解時に溶出するFeが酸洗液中に蓄積し、酸洗液中のFe濃度が増大するためである。このような酸洗液が鋼板表面に付着すると乾き汚れ等の問題が発生するため、交番電解による酸洗処理が好ましい。
本発明の製造方法においては、上記酸洗工程後の鋼板は、水洗し、中和処理を施すことが好ましい。さらに、化成処理性及び塗装後耐食性をより向上するために、上記酸洗処理後、化成結晶の生成、成長を促進したり、均一微細化したりする効果のあるNi等を5mg/m2以上50mg/m2以下程度付着させる処理を施してもよい。さらに、上記焼鈍処理後の鋼板に、形状矯正や表面粗度を調整するため又は材質を制御するために、伸び率5%以下の調質圧延を施してもよい。
〔実施例〕
本実施例では、C:0.09質量%、Si:1.4質量%、Mn:1.9質量%を含有するスラブを板厚2.5mmになるまで熱間圧延し、熱延鋼板を580℃で巻き取った。比較例では焼鈍雰囲気を水素濃度9%、実施例では焼鈍雰囲気を水素濃度12%とした。実施例での焼鈍条件として昇温速度5℃/secで830℃まで昇温し、この温度で60秒間保持した。比較例では昇温時の到達温度及び保持時間は同じだが、昇温速度を10℃/secとして焼鈍処理を実施した。そして、焼鈍処理後に酸洗処理を行わずに化成処理を実施した。実施例の焼鈍処理後表面のSEM像及び構造を図1(a),(b)、比較例の焼鈍処理後表面のSEM像を図2に示す。図1(a),(b)に示すように、実施例では、数ミクロン程度の大きさを有するSiやMnを含有する酸化物領域2の周囲に焼鈍処理によって生成した還元鉄被覆領域1が存在し、酸化物領域2内には10〜100nmの大きさの少なくともFeを含有する領域3が分散している。また、少なくともFeを含有する領域3は酸化物領域2全体の10%以上の領域を占めている。
本実施例では、C:0.09質量%、Si:1.4質量%、Mn:1.9質量%を含有するスラブを板厚2.5mmになるまで熱間圧延し、熱延鋼板を580℃で巻き取った。比較例では焼鈍雰囲気を水素濃度9%、実施例では焼鈍雰囲気を水素濃度12%とした。実施例での焼鈍条件として昇温速度5℃/secで830℃まで昇温し、この温度で60秒間保持した。比較例では昇温時の到達温度及び保持時間は同じだが、昇温速度を10℃/secとして焼鈍処理を実施した。そして、焼鈍処理後に酸洗処理を行わずに化成処理を実施した。実施例の焼鈍処理後表面のSEM像及び構造を図1(a),(b)、比較例の焼鈍処理後表面のSEM像を図2に示す。図1(a),(b)に示すように、実施例では、数ミクロン程度の大きさを有するSiやMnを含有する酸化物領域2の周囲に焼鈍処理によって生成した還元鉄被覆領域1が存在し、酸化物領域2内には10〜100nmの大きさの少なくともFeを含有する領域3が分散している。また、少なくともFeを含有する領域3は酸化物領域2全体の10%以上の領域を占めている。
一般に、SiやMnを含有する酸化物領域2では化成処理反応が起こりにくく、還元鉄被覆領域1では化成処理反応が起こりやすい。このため、SiやMnを含有する酸化物領域2では化成処理後にスケ等の不良が発生する。ところが、図1(a),(b)に示すように、SiやMnを含有する酸化物領域2内に少なくともFeを含む微細な領域3が分散していると、化成処理反応が正常に進み、SiやMnを含有する酸化物領域2においても正常な化成処理結晶が成長できる。図3A,3Bは、実施例の化成処理後鋼板表面を示す。図4A,4Bは、比較例の化成処理後鋼板表面を示す。図3A,3Bと図4A,4Bとの比較から明らかなように、比較例では化成結晶のスケが生じるが、実施例ではスケの発生なく、緻密な化成結晶の成長が観察できた。
1 還元鉄被覆領域
2 酸化物領域
3 少なくともFeを含む領域
2 酸化物領域
3 少なくともFeを含む領域
Claims (5)
- Cを0.05質量%以上0.2質量%以下、Siを0.5質量%以上3.0質量%以下、Mnを0.1質量%以上3.0質量%以下含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、焼鈍処理後の表面がFe及びFeの酸化物とSi及び/又はMnを含有する酸化物とによって構成され、Si及び/又はMnを含有する酸化物の領域内に少なくともFeを含有する領域が分散していることを特徴とする化成処理性に優れた高強度冷延鋼板。
- 前記少なくともFeを含有する領域の大きさが100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の化成処理性に優れた高強度冷延鋼板。
- 鋼板引っ張り強度が590MPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化成処理性に優れた高強度冷延鋼板。
- 前記少なくともFeを含有する領域がSi及び/又はMnを含有する酸化物の領域全体の10%以上の領域を占めることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか1項に記載の化成処理性に優れた高強度冷延鋼板。
- 請求項1に記載の鋼成分を有するスラブを1000〜1300℃の温度範囲内に加熱した後に熱間圧延を圧延終了温度800℃〜1000℃の範囲内で行い、650℃以下の温度で巻き取り、酸洗を行い、冷間圧延を行った後、700〜900℃の温度範囲内で仕上焼鈍を行うにあたり、仕上焼鈍時の加熱速度を5℃/sec以下とし、仕上焼鈍後から300℃までの間の冷却速度を30℃/sec以上とすることを特徴とする化成処理性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
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