JP2013256699A - 溶接性、溶接熱影響部靭性に優れた厚手高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 質量%で、C:0.015〜0.045%、Si:0.15%以下、Mn:1.80〜2.20%、P:0.008%以下、S:0.005%以下、Cu:0.40〜0.70%、Ni:0.80〜1.80%、Nb:0.005〜0.015%、Mo:0.05〜0.25%、Ti:0.005〜0.015%、Mg:0.0003〜0.003%、Ca:0.0003〜0.003%、B:0.0004〜0.0020%、N:0.0020〜0.0060%、O:0.0015〜0.0035%、を含有し、さらに、Mg+Ca≦0.005%、Al:0.004%以下、Ni/Cu>2.0、N−Ti/3.4≧0%、B−0.85(N−Ti/3.4)≧0.0004%、PCMが0.18〜0.23%であることを特徴とする厚手高強度鋼板。
【選択図】 なし
Description
C:0.015〜0.045%、
Si:0.15%以下、
Mn:1.80〜2.20%、
P:0.008%以下、
S:0.005%以下、
Cu:0.40〜0.70%、
Ni:0.80〜1.80%、
Nb:0.005〜0.015%、
Mo:0.05〜0.25%、
Ti:0.005〜0.015%、
Mg:0.0003〜0.003%、
Ca:0.0003〜0.003%、
B:0.0004〜0.0020%、
N:0.0020〜0.0060%、
O:0.0015〜0.0035%、
Al:0.004%以下、
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物の成分からなり、
Mg+Ca≦0.005%、
Ni/Cu>2.0、
N−Ti/3.4≧0%、
B−0.85(N−Ti/3.4)≧0.0004%、
下記式(1)で示すPCMが0.18〜0.23%
を満足することを特徴とする引張強さ600〜800MPa、降伏強さ500〜650MPa、溶接熱影響部のき裂開口変位の最低CTOD値0.50mm以上の特性を有する溶接性、溶接熱影響部靭性に優れた厚手高強度鋼板。
PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Mo/15+5B ・・・・ 式(1)
ここで、各元素は鋼中に含有されている質量%である。
Bの高い焼入性を活用する本発明では、溶接熱影響部の過剰な硬化性を抑えるため、Cは比較的低く抑える必要がある。しかし、低過ぎると強度補償のため合金元素量を増やさざるを得ず、経済性を失する。合金コストを抑えつつ、本発明のターゲットである厚手材で降伏強さ500〜560MPa級鋼(鋼種としての強度グレードであって、実際の降伏強さの範囲でない)としての強度を安定して得るために本発明では0.015%以上に限定する。経済性の観点からは、0.020%以上が好ましく、0.025%以上がより好ましい。一方、0.045%超では、B効果と相俟って溶接熱影響部の硬化性が過剰となって溶接熱影響部靭性を劣化させるため、0.045%を上限とする。
Siは、特に溶接熱影響部で硬くて脆いMA(Martensite−Austenite)−constituent(以下MAと略記)生成を助長し、溶接熱影響部靭性を劣化させる。このため、Siは低いほど好ましいが、C量を比較的低い範囲に限定する本発明においては、0.15%までの含有であればMA生成量が少なく、溶接熱影響部靭性の観点から許容できる。しかし、溶接構造物用鋼としての多様な溶接条件を勘案すると少ない方が好ましいことは言うまでもなく、0.12%以下、さらには0.10%以下に制限することがより好ましい。
Mnは比較的安価な元素であるが、強度向上効果が大きく、母材および溶接熱影響部の靭性への悪影響も比較的小さい。AlレスTi脱酸とする本発明では、溶接熱影響部靭性を向上させるため、溶接熱影響部においてTi酸化物などを核とした粒内フェライト生成がポイントになるが、その際、Mnも重要な役割を果たしている。それは、Ti酸化物にMnSが析出し、その近傍にMnの希薄域が形成され、マトリックスより変態温度が高くなってフェライト変態を助長・促進するというものである。母材の強度−靭性、溶接熱影響部靭性、さらには合金コストなどを総合的に勘案し、本発明ではMnは1.80%以上に限定する。この下限には冶金上、技術上の臨界的な意味合いはなく、本発明が目的とする優れた特性が発現される範囲内で、成分的な特徴を明確にするために限定したものである。上限については、安価な元素でもあり極力活用したいところであるが、Mn量が多すぎると連続鋳造スラブの中心偏析やミクロ偏析が助長され、局所的な脆化域が形成され母材あるいは溶接熱影響部靭性を損ねる可能性が高まるため、2.20%以下に制限する。ただし、この上限の理由としたスラブの中心偏析やミクロ偏析は、今後、鋳造技術の進歩などにより緩和、解消される可能性もあり、冶金的な臨界意義を有する限界ではない。
P、Sは、不可避的不純物として含有され、母材靭性、HAZ靭性からともに少ない方が良いが、工業生産的な制約もあり、それぞれ0.008%、0.005%を上限とした。より良好なHAZ靭性を得るために、それぞれP:0.005%以下、S:0.003%以下が望ましい。
Cuは、母材の強度を向上させる一方で、母材および溶接熱影響部の靭性の劣化程度は比較的小さいため、有用な元素である。本発明がターゲットとする高強度鋼においては、0.40%以上の添加が好ましい。しかし、Cuは、0.70%を超えると析出硬化現象を示すようになり、鋼材の材質、特に強度が不連続的に大きく変化してしまう。このため、本発明では、強度変化が連続的で制御しやすい範囲として0.70%以下に限定する。好ましくは0.65%以下である。Cu量を0.70%以下に限定することで、後述するNi量とも相俟って熱間圧延時のCuクラック発生の危険性がほとんどなくなると言う効果も有する。
Niは、高靭化元素として知られ、溶接熱影響部の靭性の劣化が少なく、母材の強度、靭性を向上させる効果がある。したがって、本発明のような高強度鋼においては、極めて有用な元素で、特に本発明のような極低Cでは、合金元素による強度補償が必須であり、少なくとも0.80%以上含有させる必要がある。しかし、Niは高価な合金でもあり、含有量は強度、靭性等必要な特性が得られる最小限に抑えることが好ましい。本発明がターゲットとする強度および最大板厚(100mm)を考慮した場合、最大1.80%まで必要であり、これを上限とするが、特性あるいは冶金的な上限ではないことは言うまでもない。なお、前述したようにやや多いCuを含有する本発明鋼においては、鋳片のCu割れを抑制するため、NiはCu量の1/2超を含有させることが有効であり、Ni/Cu>2.0に限定する。
Nbは、圧延工程でのオーステナイト未再結晶温度域を高温域に広げ、組織の微細化に有効な制御圧延効果を享受する上で有用な元素である。組織の微細化は、強度、靭性をともに向上させる有効な手段である。この効果を確実に享受する上で、少なくとも0.005%の含有が必要である。このような母材には極めて有用な効果を発現するNbも、溶接熱影響部では硬化性を増大させ、MA生成を助長するなどその靭性には有害である。このため、上限は0.015%に抑えなければならない。好ましくは0.013%以下、さらに好ましくは0.011%以下とすべきである。
Moは、母材の強度向上の観点からはきわめて有効で、本発明のような厚手高強度鋼においては、不可欠の元素である。特に、Bを活用する本発明においては、両者を同時に含有することでより一層の焼入性向上効果を発現する。このようなMoの優れた効果を享受するためには、少なくとも0.05%の含有が必要である。しかし、効果が大きいゆえに、多過ぎる添加は硬化性を著しく高め、MA生成も顕著に助長するため、0.25%以下に制限する必要がある。0.20%以下に抑えることがさらに好ましい。
Tiは0.005%以上含有することで、Ti窒化物を生成させミクロ組織を微細化させることにより靭性向上に大きく寄与する。しかし、含有量が多くなり化学量論的にNに対して過剰になると、窒化物形成後の過剰なTiはTiCを生成し、溶接熱影響部の靭性を劣化させる可能性が高まるため、0.015%を上限とする。また、それと同時にTiC生成を極力防止する観点から、請求項2において、Nとの化学量論的関係として、N過剰(Ti不足)を意味するN−Ti/3.4≧0%に限定する。なお、厳密には脱酸によるTiの消費も考慮すべきであるが、煩雑さを避けるとともに、実質的に大きな影響がないことを実験的に確認している。
Mgは本発明の主たる合金元素の一つである。B(ボロン)を添加し、その高い焼入性を活用する本発明においては、溶接熱影響部、特に溶融線近傍の過剰な硬化を緩和するため、オーステナイト粒を可能な限り小さくすることが不可欠である。そのためには、高温での安定な酸化物を微細に分散させ、結晶粒成長をピニングすることが有効であり、Mgが重要な役割を担う。Mgは、主に脱酸剤あるいは硫化物生成元素として添加されるが、0.003%を越えて添加されると、粗大な酸化物あるいは硫化物が生成し易くなり、母材およびHAZ靭性の低下をもたらす。しかしながら、0.0003%未満の添加では、ピニング粒子として必要な酸化物の生成が十分に期待できなくなるため、その添加範囲を0.0003〜0.003%と限定する。
Caは硫化物を生成することにより伸長MnSの生成を抑制し、鋼材の板厚方向の特性、特に耐ララティアー性を改善する。さらに、CaはMgと同様な効果を有していることから、本発明の重要な元素である。Caは0.0003%未満では、十分な効果が得られないので下限値を0.0003%にした。逆に、Caが0.003%を超えるとCaの粗大酸化物個数が増加し、超微細な酸化物あるいは硫化物の個数が低下するため、その上限を0.003%とする。
MgとCaは同時に添加され、いずれも強力な脱酸元素であることから、粗大な介在物を生成する危険が大きく靭性が劣化するため、その合計量としては最大でも0.005%とする必要がある。0.004%以下に抑えることがより好ましい。
Bは、本発明においてキーとなる元素の一つである。Bの焼入性向上効果はきわめて大きく、Bを活用することで合金元素を大幅に抑えることが可能となる。このためのBの含有量は、少なくとも0.0004%は必要である。しかし、単にB含有量だけを規定するだけでは不十分である。Bの焼入性を活用するためには、固溶状態で存在させる必要があるからである。Bは、窒化物を形成しやすく、Nとの化学量論的バランスも重要となる。ただし、窒化物形成能はBよりTiの方がより高いため、それも勘案し、B−0.85(N−Ti/3.4)≧0.0004%に限定した。上限については、必要以上に含有させても効果が飽和するため、発明者らが鋼の特性に悪影響をおよぼさない範囲として実験的に確認した範囲で0.0020%としたが、必ずしも臨界的意味合いを有するものではない。B−0.85(N−Ti/3.4)の上限は特に限定しないが、各元素の限定範囲から自ずと限定されるものである。
Nは、製鋼上不可避的に含有するもので、必要以上に低減することは製鋼負荷が高く、工業生産上好ましくない。むしろNは、Tiを添加することで窒化物を形成し、しかもその窒化物は高温で安定であるため、鋼材の熱間圧延に先立つ加熱時あるいは溶接溶融線から若干離れた溶接熱影響部のオーステナイト粒の成長粗大化をピン止めする効果を有するため、0.002%以上含有することが好ましい。しかし、多すぎる含有は、上述したようにBと結合して窒化物を形成する可能性が高まり、Bの焼入性向上効果を減殺することになる。上述したB、Tiの絶対量と化学量論的関係から、自ずと上限は制約されるが、それ以外にも0.006%超では鋼片製造時に表面疵が発生するため、上限を0.006%とした。好ましくは0.0055%以下、さらに好ましくは0.005%以下である。
Oは、溶接熱影響部での粒内フェライト生成核としてのTi酸化物の生成性から0.0015%以上が必須である。しかし、Oが多すぎると酸化物のサイズおよび個数が過大となって、むしろ脆性破壊の発生起点として作用する可能性が高まり、結果として靭性を劣化させることになるため、上限は0.0035%を制限する必要がある。より良好で、安定した溶接熱影響部靭性を得るためには、0.0030%以下、より好ましくは0.0028%以下とすることが望ましい。
AlレスTi脱酸の本発明においては、不可避的不純物の一つである。請求項2において、あえて上限を限定するのは、不可避といえども含有量が0.004%を超えると、酸化物の組成が変化し、粒内フェライトの核として機能しなくなる可能性が高まるため、0.004%以下に限定する。
PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Mo/15+5B ・・・・ (1)
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.015〜0.045%、
Si:0.15%以下、
Mn:1.80〜2.20%、
P:0.008%以下、
S:0.005%以下、
Cu:0.40〜0.70%、
Ni:0.80〜1.80%、
Nb:0.005〜0.015%、
Mo:0.05〜0.25%、
Ti:0.005〜0.015%、
Mg:0.0003〜0.003%、
Ca:0.0003〜0.003%、
B:0.0004〜0.0020%、
N:0.0020〜0.0060%、
O:0.0015〜0.0035%、
Al:0.004%以下、
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物の成分からなり、
Mg+Ca≦0.005%、
Ni/Cu>2.0、
N−Ti/3.4≧0%、
B−0.85(N−Ti/3.4)≧0.0004%、
下記式(1)で示すPCMが0.18〜0.23%
を満足することを特徴とする、引張強さ600〜800MPa、降伏強さ500〜650MPa、溶接熱影響部のき裂開口変位の最低CTOD値0.50mm以上の特性を有する溶接性、溶接熱影響部靭性に優れた厚手高強度鋼板。
PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Mo/15+5B ・・・・ 式(1)
ここで、各元素は鋼中に含有されている質量%である。 - 請求項1に記載の鋼成分を有する鋼片または鋳片を、1000〜1100℃の温度に加熱後、950℃以上の温度での累積圧下量が30%以上、720〜950℃の温度で累積圧下量が40%以上で、累積総圧下量が60%以上として700〜750℃の温度で圧延を終了し、圧延終了後80秒以内に水冷を開始して280℃以下まで冷却し、その後さらに400〜550℃の温度範囲で焼戻しすることを特徴とする、引張強さ600〜800MPa、降伏強さ500〜650MPa、溶接熱影響部のき裂開口変位の最低CTOD値0.50mm以上の特性を有する溶接性、溶接熱影響部靭性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
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