JP2013256639A - 熱可塑性エラストマー - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な成形加工性・柔軟性・熱伝導性・耐熱性を有する熱可塑性エラストマーを提供する。
【解決手段】(A)アクリルゴム50〜85質量部、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂15〜50質量部、(C)熱伝導性フィラー20〜900質量部、(D)相容化剤1〜20質量部、(E)架橋剤0.01〜1質量部を含む。(A)は、一般式(1)又は(2)のうち少なくとも一種100質量部と、エポキシ基含有(メタ)アクリルモノマー0.1〜10質量部とを共重合し、ガラス転移温度が−60〜−15℃である。(D)はグラフト共重合体であり、主鎖がエチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、官能基(カルボキシル基、水酸基、エポキシ基のうちどれか)を含有するポリオレフィンであり、側鎖が一般式(1)又は(2)のうち少なくとも一種を含む重合体である。
【選択図】なし
【解決手段】(A)アクリルゴム50〜85質量部、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂15〜50質量部、(C)熱伝導性フィラー20〜900質量部、(D)相容化剤1〜20質量部、(E)架橋剤0.01〜1質量部を含む。(A)は、一般式(1)又は(2)のうち少なくとも一種100質量部と、エポキシ基含有(メタ)アクリルモノマー0.1〜10質量部とを共重合し、ガラス転移温度が−60〜−15℃である。(D)はグラフト共重合体であり、主鎖がエチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、官能基(カルボキシル基、水酸基、エポキシ基のうちどれか)を含有するポリオレフィンであり、側鎖が一般式(1)又は(2)のうち少なくとも一種を含む重合体である。
【選択図】なし
Description
本発明は、電気・電子機器に搭載された電子部品の放熱用部材として用いられる、熱伝導性を有する熱可塑性エラストマーに関する。
コンピューター等に代表される各種電気・電子機器には、稼動に伴い熱を発生する電子部品(発熱部品)が搭載されているが、近年の高集積化・高性能化に伴いその発熱量も増大する傾向にある。しかし、各種電子部品は熱によって機能障害が生じやすい精密部品であるため、これを搭載した電気・電子機器の製品寿命や安全性の低下等の問題が顕在化しており、電子部品冷却の重要性が高まっている。そのため、トランジスタ、ダイオード、集積回路(IC)などの半導体をはじめ、各種のヒーター、温度センサなどの電子部品の放熱・伝熱スペーサーとして、従来からゴム弾性を有する熱伝導性材料が使用されている。このような熱伝導性材料として、例えばシリコーンゴムに熱伝導性フィラーを配合したものが知られている。
しかしながら、シリコーンゴムは低分子シロキサンの揮発による接点不良の問題があった。そこで、低分子シロキサンの揮発がない非シリコーン系の熱伝導性材料として、下記特許文献1の熱可塑性エラストマーが提案されている。特許文献1の熱可塑性エラストマーは、(A)共役ジエンに由来する二重結合の水素添加率が80%以上であり、且つ重量平均分子量が50,000〜700,000である水添ジエン系共重合体100質量部に対して、(B)軟化剤、可塑剤、及び液状重合体からなる群より選択される少なくとも一種の液状成分を5〜1000質量部含有し、さらに(C)熱伝導性フィラーを含有する。ここでの成分(A)は、第一の共役ジエン化合物に由来する構成単位を含む重合体ブロック(i)と、第二の共役ジエン化合物に由来する構成単位を含む重合体ブロック(ii)とを有し、(i)−(ii)−(i)で表される構造を有するブロック共重合体を水素添加してなり、重合体ブロック(i)が、ビニル結合含量が25%未満の重合体ブロックであり、重合体ブロック(ii)が、ビニル結合含量が40%以上の重合体ブロックであり、ブロック共重合体が、重合体ブロック(i)及び重合体ブロック(ii)の合計に対して、重合体ブロック(i)の含有割合が5〜90質量%とされている。
一方、電気・電子機器の放熱対策用ではないが、本出願人も、自動車用のパッキン、シール材、ホース等の材料として好適に用いられる、耐熱性の高い熱可塑性エラストマーとして、下記特許文献2を提案している。特許文献2の熱可塑性エラストマーは、(A)アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルコキシアルキルエステルの少なくとも1種を主成分とし、エポキシ基含有単量体が0.5〜15質量%含まれた単量体混合物を共重合してなるアクリルゴム50〜85質量部と、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂15〜50質量部と、(C)エチレン及び極性単量体から形成されるオレフィン系重合体セグメントと、少なくともアクリル酸アルキルエステルを含むビニル系単量体から形成されるビニル系共重合体セグメントとからなり、一方のセグメントが他方のセグメントにより形成されるマトリックス相中に分散相を形成しているグラフト共重合体又はその前駆体を、成分(A)+(B)の合計100質量部に対して1〜35質量部と、(D)成分(A)100質量部に対して0.05〜5質量部の架橋剤とを含有する。
特許文献1の熱可塑性エラストマーは、液状成分(B)を多量に含有していることで柔軟性が高いが、水添ジエン系共重合体(A)を使用しているので、エラストマー自体の融点は低くなる。そのため、耐熱性には限界があり、発熱量が年々増大する傾向にある電子部品の放熱対策においては信頼性に欠ける。
一方、特許文献2の熱可塑性エラストマーは、優れた耐熱性を有することで特許文献1のような問題は生じないが、架橋剤を比較的多量に含んでいる。この場合、一般的な使用条件であれば特に問題は生じないが、例えば耐熱性試験など高温に連続して長時間曝されるような雰囲気下では、硬化劣化が促進される。自動車用のパッキンやシール材等であればこのような雰囲気下に曝されることは少ないが、長時間連続して使用されることもある電気・電子機器においては問題となる。また、特許文献2の熱可塑性エラストマーは熱伝導性フィラーを含有していないので、電子部品の放熱対策用のエラストマーとして直接使用できるものでもない。そのためには熱伝導性フィラーの添加が必要であるが、架橋剤が多量に含まれていると、熱伝導性フィラーの添加によって成形加工性や柔軟性が低下してしまう。
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、その目的は、良好な成形加工性・柔軟性・熱伝導性を有すると共に、耐熱性にも優れる熱可塑性エラストマーを得ることができる熱可塑性エラストマーを提供することにある。
そのための手段として、本発明は、(A)アクリルゴムと、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(C)熱伝導性フィラーと、(D)相容化剤と、(E)成分(A)を架橋する架橋剤とを含み、成分(A)が成分(E)で動的架橋されている熱可塑性エラストマーである。前記成分(A)は、(a−1)下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物のうち少なくとも一種100質量部に対して、(a−2)エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを0.1〜10質量部共重合してなり、且つガラス転移温度が−60〜−15℃である。前記成分(C)は、新モース硬度が1〜8である。前記成分(D)はグラフト共重合体であって、主鎖が、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル基を含有するポリオレフィン、水酸基を含有するポリオレフィン、又はエポキシ基を含有するポリオレフィンからなる群から選ばれる一種であり、側鎖が、前記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物のうち少なくとも一種を含む重合体である。
(式中、Rは水素又はメチル基であり、aは1〜8の整数である。)
(式中、Rは水素又はメチル基であり、bは1〜3の整数、cは1〜8の整数である。)
そのうえで、前記成分(A)を50〜85質量部、前記成分(B)を15〜50質量部、前記成分(C)を前記成分(A)+(B)の合計100質量部に対して20〜900質量部、前記成分(D)を前記成分(A)+(B)の合計100質量部に対して1〜20質量部、前記成分(E)を前記成分(A)100質量部に対して0.01〜1質量部含有することを特徴とする。
(式中、Rは水素又はメチル基であり、aは1〜8の整数である。)
(式中、Rは水素又はメチル基であり、bは1〜3の整数、cは1〜8の整数である。)
そのうえで、前記成分(A)を50〜85質量部、前記成分(B)を15〜50質量部、前記成分(C)を前記成分(A)+(B)の合計100質量部に対して20〜900質量部、前記成分(D)を前記成分(A)+(B)の合計100質量部に対して1〜20質量部、前記成分(E)を前記成分(A)100質量部に対して0.01〜1質量部含有することを特徴とする。
なお、本発明において数値範囲を示す「○○〜××」とは、その下限の数値(○○)及び上限の数値(××)も含む意味である。すなわち、正確に記載すれば「○○以上××以下」となる。また、本発明において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」との双方を含む意味である。
また、「新モース硬度」とは、鉱物に対する硬さの尺度の1つであり、モース硬度という硬さの異なる10種類の標準鉱物で固体表面をひっかいた際、傷の有無により1〜10の数値で表した硬さの尺度を、15段階に修正したものである。すなわち、新モース硬度とは、硬さの異なる15種類の標準鉱物で固体表面をひっかいた際、傷の有無により1〜15の数値で表した硬さの尺度である。新モース硬度は、修正モース硬度、新モース硬さと同意である。標準物質とは新モース硬度1は滑石、新モース硬度2は石膏、新モース硬度3は方解石、新モース硬度4は蛍石、新モース硬度5は燐灰石、新モース硬度6は正長石、新モース硬度7は溶融石英、新モース硬度8は水晶、新モース硬度9はトパーズ、新モース硬度10は柘榴石、新モース硬度11は溶融ジルコニア、新モース硬度12は溶融アルミナ、新モース硬度13は炭化ケイ素、新モース硬度14は炭化ホウ素、新モース硬度15はダイヤモンドである。新モース硬度8とは水晶でひっかいても傷がつかず、トパーズでひっかくと傷がつく硬さである(日本化学会編 標準科学用語辞典参照)。
本発明によれば、特定の(A)アクリルゴムを使用し、かつ(C)熱伝導性フィラーを含有することで、混練時の混練力と成形加工性に優れ、(E)架橋剤が少量でもエラストマーとして成立する。しかも、エラストマー自体の融点も比較的高いので、絶対的な(根本的な)耐熱性も向上する。また、(C)熱伝導性フィラーを含有することで良好な熱伝導性を有し、電子部品の放熱用部材の材料として好適に使用することができる。そのうえで、(E)架橋剤の含有量を必要最低限(1質量部以下)に抑えていることで優れた耐熱性を有し、高温に連続して長時間曝されるような雰囲気下でもエラストマーが硬化劣化することはない。また、(C)熱伝導性フィラーの添加による、柔軟性の低下を抑制することができ、良好な成形加工性、柔軟性を有する熱可塑性エラストマーを得ることができる。すなわち、本発明によれば、特許文献1に記載の熱伝導性エラストマーと同等の良好な成形加工性及び柔軟性を維持しながら、さらに、優れた耐熱性及び熱伝導性を有する熱可塑性エラストマーを得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の熱可塑性エラストマーは、トランジスタ、ダイオード、集積回路(IC)、ヒーター、温度センサなどの電子部品の放熱・伝熱スペーサー等として使用される熱伝導性を有する熱可塑性エラストマーであって、(A)アクリルゴムと、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(C)熱伝導性フィラーと、(D)相容化剤と、(E)成分(A)を架橋する架橋剤とを含有する。
〔(A)アクリルゴム〕
アクリルゴムは、主として熱可塑性エラストマーの柔軟性(弾力性)や耐熱性を発現する成分である。当該アクリルゴムは、(a−1)下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物のうち少なくとも一種に対して、(a−2)エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合して成る。
アクリルゴムは、主として熱可塑性エラストマーの柔軟性(弾力性)や耐熱性を発現する成分である。当該アクリルゴムは、(a−1)下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物のうち少なくとも一種に対して、(a−2)エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合して成る。
一般式(1)で表される化合物として、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルが挙げられる。
一般式(2)で表される化合物として、具体的には、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−2−エトキシエチル、アクリル酸−2−ブトキシエチル等が挙げられる。
(a−2)エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
本発明のアクリルゴムは、成分(a−1)100質量部に対して、成分(a−2)を0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部共重合する。成分(a−1)100質量部に対して成分(a−2)が0.1質量部未満では、アクリルゴムの架橋密度が不足してエラストマーとして成立せずその成形が不可能になる。一方、成分(a−1)100質量部に対して成分(a−2)が10質量部を超えると、アクリルゴムが過度に架橋されることで熱可塑性エラストマーの柔軟性等が低下し、成形加工性が低下する。
アクリルゴムのガラス転移温度(Tg)は−60〜−15℃、好ましくは−50〜−20℃、より好ましくは−50〜−30℃である。Tgが−15℃よりも高いと、熱可塑性エラストマーの柔軟性が低下する傾向にある。一方、Tgが−60℃より低いと、熱可塑性エラストマーの引張強度が低下する傾向にある。
アクリルゴムの含有量は、熱可塑性エラストマー中50〜85質量部、好ましくは60〜80質量部とする。アクリルゴムの含有量が50質量部未満では、熱可塑性エラストマーの柔軟性が低下する傾向にある。一方、アクリルゴムの含有量が85質量部を超えると、相対的に(B)熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量が低下して熱可塑性エラストマーの成形加工性が低下する。
〔(B)熱可塑性ポリエステル樹脂〕
熱可塑性ポリエステル樹脂は、熱可塑性エラストマーの成形加工性及び耐熱性を向上させる成分である。熱可塑性ポリエステル樹脂としては、主鎖中にエステル結合を持つ全ての熱可塑性飽和ポリエステルが含まれる。熱可塑性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジヒドロキシ成分との重縮合、オキシカルボン酸成分の重縮合、又はこれら三成分の重縮合等の公知の方法により得ることができ、ホモポリエステル、コポリエステルのいずれであってもよい。熱可塑性ポリエステル樹脂は、1種又は2種以上が適宜組み合わせて使用される。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、熱可塑性エラストマーの成形加工性及び耐熱性を向上させる成分である。熱可塑性ポリエステル樹脂としては、主鎖中にエステル結合を持つ全ての熱可塑性飽和ポリエステルが含まれる。熱可塑性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジヒドロキシ成分との重縮合、オキシカルボン酸成分の重縮合、又はこれら三成分の重縮合等の公知の方法により得ることができ、ホモポリエステル、コポリエステルのいずれであってもよい。熱可塑性ポリエステル樹脂は、1種又は2種以上が適宜組み合わせて使用される。
熱可塑性ポリエステル樹脂は非結晶性であってもよいが、耐熱性の観点からは結晶性であるほうが好ましい。また、融点は100℃以上が好ましく、より好ましくは160〜280℃である。熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量は、熱可塑性エラストマー中15〜50質量部、好ましくは20〜40質量部である。熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量が15質量部未満では、熱可塑性エラストマーの成形加工性が低下する傾向にある。一方、熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量が50質量部を超えると、熱可塑性エラストマーの柔軟性が低下する傾向にある。なお、成分(A)と成分(B)とは、熱可塑性エラストマー中、成分(A)+(B)の合計含有量が100質量部となるような相対割合で配合することが好ましい。
〔(C)熱伝導性フィラー〕
熱伝導性フィラーとしては、熱可塑性エラストマーの物性のみに着目すれば、熱伝導性に優れるフィラーであれば特に限定されず、従来から公知のカーボン系材料、金属系材料、セラミック系材料、シリカ系材料、及びこれらの複合材料を使用し得るが、新モース硬度が1〜8のものを使用する。新モース硬度が高すぎると、熱可塑性エラストマー組成物を調製する過程で使用する混練機が熱伝導性フィラーによって攻撃されて磨耗する。混練機が熱伝導性フィラーによって摩耗すると、当該磨耗粉が不純物として含有されることで熱可塑性エラストマーの物性が低下する危険性もある。
熱伝導性フィラーとしては、熱可塑性エラストマーの物性のみに着目すれば、熱伝導性に優れるフィラーであれば特に限定されず、従来から公知のカーボン系材料、金属系材料、セラミック系材料、シリカ系材料、及びこれらの複合材料を使用し得るが、新モース硬度が1〜8のものを使用する。新モース硬度が高すぎると、熱可塑性エラストマー組成物を調製する過程で使用する混練機が熱伝導性フィラーによって攻撃されて磨耗する。混練機が熱伝導性フィラーによって摩耗すると、当該磨耗粉が不純物として含有されることで熱可塑性エラストマーの物性が低下する危険性もある。
新モース硬度が1〜8の熱伝導性フィラーとしては、例えば酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、炭素繊維、シリカ等が挙げられる。
熱伝導性フィラーの形状は特に限定されず、球状、針状、繊維状、鱗片状、樹枝状、平板状、不定形状等とすることができる。また、熱伝導性フィラーの平均粒子径は、0.1〜500μm程度とすればよい。熱伝導性フィラーの平均粒子径が小さ過ぎると、熱可塑性エラストマーの粘度が増大して成形加工性が低下する危険性がある。一方、熱伝導性フィラーの平均粒子径が大き過ぎると、熱可塑性エラストマーの意匠性が低下する可能性がある。
また、熱伝導性フィラーは、成分(A)アクリルゴムと、成分(B)熱可塑性樹脂との濡れ性を向上して均一分散させるため、表面処理されていることが好ましい。熱伝導性フィラーの表面処理剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩、硬化油、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。脂肪酸としては、例えばステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、カプリル酸、ベヘニン酸、モンタン酸、ヒマシ油、亜麻仁油等を挙げることができる。
脂肪酸エステルとしては、例えばラウリン酸メチル、ミスチリン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミスチリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ脂肪酸オクチルエステル、ステアリン酸オクチル、特殊牛脂脂肪酸オクチルエステル、ラウリン酸ラウリル、長ステアリン酸ステアリル、長鎖脂肪酸高級アルコールエステル、ベヘニン酸ベヘニル、ミスチリン酸セチル等のモノエステル;ネオペンチルポリオール長鎖脂肪酸エステル、ネオペンチルポリオール長鎖脂肪酸エステルの部分エステル化物;ネオペンチルポリオール脂肪酸エステル、ネオペンチルポリオール中鎖脂肪酸エステル、ネオペンチルポリオールC9鎖脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステル、コンプレックス中鎖脂肪酸エステル等の特殊脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
脂肪酸金属塩としては、例えばステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、カプリル酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の金属塩であり、金属としては、Na、K、Al、Ca、Mg、Zn、Ba、Co、Sn、Ti、Fe等を挙げることができる。硬化油としては、例えば牛脂硬化油、ヒマシ硬化油等を挙げることができる。
シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシラン、メチルトリエトキシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、N−〔β−(N−ビニルベンザルアミノ)エチル〕−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等を挙げることができる。
チタネートカップリング剤のとしては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等を挙げることができる。
熱伝導性フィラーの含有量は、(A)アクリルゴムと(B)熱可塑性ポリエステル樹脂の合計((A)+(B))100質量部に対して、20〜900質量部、好ましくは100〜600質量部、より好ましくは200〜400質量部とする。熱伝導性フィラーの含有量が成分(A)+(B)100質量部に対して20質量部未満では、熱伝導性が不足して電子部品の放熱用部材としての機能が低下する。一方、熱伝導性フィラーの含有量が成分(A)+(B)100質量部に対して900質量部を超えると、柔軟性が低下する。
〔(D)相容化剤(グラフト共重合体)〕
相容化剤としてのグラフト共重合体は、(A)アクリルゴムと(B)熱可塑性ポリエステル樹脂の双方に対して相容性(親和性)を示し、成分(A)の機能及び成分(B)の機能を十分に発揮させるとともに、相乗的作用を発現させる成分である。このグラフト共重合体により、熱可塑性エラストマーの柔軟性を維持しながら、良好な成形加工性を付与することができる。
相容化剤としてのグラフト共重合体は、(A)アクリルゴムと(B)熱可塑性ポリエステル樹脂の双方に対して相容性(親和性)を示し、成分(A)の機能及び成分(B)の機能を十分に発揮させるとともに、相乗的作用を発現させる成分である。このグラフト共重合体により、熱可塑性エラストマーの柔軟性を維持しながら、良好な成形加工性を付与することができる。
本発明において使用するグラフト共重合体は、主鎖がエチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル基を含有するポリオレフィン、水酸基を含有するポリオレフィン、又はエポキシ基を含有するポリオレフィンからなる群から選ばれる一種であり、側鎖が上記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物のうち少なくとも一種を含む重合体である。
グラフト共重合体の主鎖を構成するカルボキシル基を含有するポリオレフィンとしては、例えばエチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。また、水酸基を含有するポリオレフィンとしては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等が挙げられる。また、エポキシ基を含有するポリオレフィンとしては、例えばエチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
グラフト共重合体の側鎖を構成する成分としては、上記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物と共に、ビニル系単量体、多官能性単量体、架橋性官能基を含有する単量体を使用することができる。ビニル系単量体としては、(A)アクリルゴムとの相容性が良好なものが好ましい。具体的には、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ビニル系単量体も含有する場合は、側鎖を構成する一般式(1)又は(2)で表される化合物100質量部に対して35質量部以下とすることが好ましい。35質量部以上になると(A)アクリルゴムとの相容性が低下し、機械物性、柔軟性が低下する。
多官能性単量体としては、2官能性(メタ)アクリレート類、3官能性(メタ)アクリレート類、ジビニルベンゼン等が挙げられる。多官能性単量体も含有する場合は、側鎖を構成する一般式(1)又は(2)で表される化合物100質量部に対して10質量部以下とすることが好ましい。10質量部以上になると(A)アクリルゴムとの相容性が低下し、機械物性、柔軟性が低下する。
架橋性官能基を含有する単量体としては、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロルアセテート、アリルクロルプロピオネート、アリルクロルアセテート、アリルクロルプロピオネート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシブテン、3,4−エポキシ−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチルペンテン、p−グリシジルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。架橋性官能基を含有する単量体も含有する場合は、一般式(1)又は(2)で表される化合物100質量部に対して30質量部以下とすることが好ましい。30質量部以上になると(A)アクリルゴムとの相容性が低下し、機械物性、柔軟性が低下する。
主鎖及び側鎖を構成する上記成分によりグラフト共重合体を製造する際のグラフト化法は、公知の連鎖移動法や電離性放射線照射法等を使用し得るが、製造方法が簡便でグラフト効率が高く、且つグラフト共重合体を(A)アクリルゴムや(B)熱可塑性ポリエステル樹脂と混合しやすい等の点から、次に示す方法が好ましい。先ず、水中に懸濁させた主鎖となる成分に、側鎖となる一般式(1)又は(2)で表される化合物等とラジカル重合性有機過酸化物を含浸させる。一般式(1)又は(2)で表される化合物等と、ラジカル重合性有機過酸化物が十分含浸した後、重合開始剤を投入し、一般式(1)又は(2)で表される化合物等とラジカル重合性有機過酸化物を共重合させ、グラフト化前駆体を得る。そして、当該グラフト化前駆体を溶融混練することにより、側鎖となる成分に共重合されているラジカル重合性有機過酸化物部位と主鎖となる成分が結合することで、グラフト共重合体を得ることができる。グラフト化前駆体としては、側鎖となる成分が主鎖となる成分中に0.01〜10μmの微細な粒子となった分散相を形成している。側鎖となる成分が微細に分散することでグラフト共重合体を得ることができ、粒子が10μm以上では、良好なグラフト共重合体を得ることができず、相容化剤として機能し難い。
ラジカル重合性有機過酸化物としては、エチレン性不飽和基と過酸化結合基とを有する単量体を使用できる。具体的には、例えばtert−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシアリルカーボネート、tert−アミルペルオキシアリルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアリルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタリルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタリルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタリルカーボネート等が挙げられる。
重合開始剤は特に限定されるものでなく、ナトリウムパーサルフェート、カリウムパーサルフェート、アンモニウムパーサルフェート、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−{N−(4−ヒドロキシフェニル)アミジノ}プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−{N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノ}プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアジピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリジミン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−{1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イムダゾリン−2−イル}プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2−アゾビス[2−メチル−N−{1、1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル}プロピオンアミド]、4,4−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、一般式(1)又は(2)で表される化合物等と、ラジカル重合性有機過酸化物の合計100質量部に対して0.05〜10質量部であることが好ましい。0.05質量部未満では重合開始性能が低下し、10質量部を超えると重合安定性が低下する。
グラフト化前駆体を溶融混練する際の混練機としては、例えばバンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、加圧ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、ロール等を使用できる。混練温度は、100〜300℃程度、好ましくは120〜280℃程度とすればよい。混練温度が低すぎると、溶融が不完全となり、溶融粘度が高くなって混合が不十分となることで、グラフト共重合体の相分離や層状剥離が生じる可能性がある。一方、混練温度が高すぎると、グラフト化時に分解又はゲル化が起こり易くなる。
グラフト共重合体(相容化剤)の含有量は、(A)アクリルゴムと(B)熱可塑性ポリエステル樹脂との合計((A)+(B))100質量部に対して1〜20質量部、好ましくは3〜10質量部とする。グラフト共重合体の含有量が成分(A)+(B)100質量部に対して1質量部未満では、相容化剤として十分な機能を発現できない。一方、グラフト共重合体の含有量が成分(A)+(B)100質量部に対して20質量部を超えると、耐熱性、成形加工性が低下する。
〔(E)架橋剤〕
架橋剤は、(A)アクリルゴムを架橋するために添加されるものであって、アクリルゴムのエポキシ基と共有結合することによりアクリルゴムを架橋する機能を有する。架橋剤としては、例えばポリアミン、ポリオール、ポリカルボン酸、酸無水物、有機カルボン酸アンモニウム塩、ジチオカルバミン酸塩等を挙げることができる。中でも、ポリカルボン酸又は酸無水物が好ましい。
架橋剤は、(A)アクリルゴムを架橋するために添加されるものであって、アクリルゴムのエポキシ基と共有結合することによりアクリルゴムを架橋する機能を有する。架橋剤としては、例えばポリアミン、ポリオール、ポリカルボン酸、酸無水物、有機カルボン酸アンモニウム塩、ジチオカルバミン酸塩等を挙げることができる。中でも、ポリカルボン酸又は酸無水物が好ましい。
ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロペンタントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、フタル酸、トリメット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。また、酸無水物としては、上記ポリカルボン酸の酸無水物が挙げられる。
架橋剤の含有量は、できるだけ少ないことが好ましい。架橋剤の含有量が多いと、耐熱性、成形加工成、柔軟性等が低下する。具体的には、熱可塑性エラストマー中架橋剤の含有量を0.01〜1質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部である。
〔その他の添加剤〕
熱可塑性エラストマーには、上記の成分(A)〜(E)以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲で種々の添加剤を添加することができる。具体的には、フェノール系、アミン系、リン系、硫黄系等の老化防止剤、ヒンダードアミンのような紫外線安定剤、ステアリン酸等の加工助剤、二酸化チタン等の顔料、カーボンブラック、ホワイトカーボン、クレー、タルク等の補強剤又は充填剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハロゲン系、リン系等の難燃剤、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。添加剤の配合量は、熱可塑性エラストマー中それぞれ10質量部以下であることが好ましい。
熱可塑性エラストマーには、上記の成分(A)〜(E)以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲で種々の添加剤を添加することができる。具体的には、フェノール系、アミン系、リン系、硫黄系等の老化防止剤、ヒンダードアミンのような紫外線安定剤、ステアリン酸等の加工助剤、二酸化チタン等の顔料、カーボンブラック、ホワイトカーボン、クレー、タルク等の補強剤又は充填剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハロゲン系、リン系等の難燃剤、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。添加剤の配合量は、熱可塑性エラストマー中それぞれ10質量部以下であることが好ましい。
〔熱可塑性エラストマーの製造方法〕
熱可塑性エラストマーは、上記各成分を含む熱可塑性エラストマー組成物において、基本的には(A)アクリルゴムを(E)架橋剤によって動的架橋を行うことによって製造される。動的架橋を行う装置としては、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、加圧ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、ロール等を使用することができる。動的架橋は、混練による高剪断の下でアクリルゴムのエポキシ基を架橋することを意味する。通常、こうして動的に架橋されたアクリルゴムは、熱可塑性ポリエステル樹脂のマトリックス相に微分散される。このような相構造を形成することにより、アクリルゴムが架橋されているにも関わらず、エラストマーは熱可塑性を有する。従って、熱可塑性エラストマーは、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法等、公知の熱可塑性樹脂の成形方法により所定形状に成形加工することができる。
熱可塑性エラストマーは、上記各成分を含む熱可塑性エラストマー組成物において、基本的には(A)アクリルゴムを(E)架橋剤によって動的架橋を行うことによって製造される。動的架橋を行う装置としては、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、加圧ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、ロール等を使用することができる。動的架橋は、混練による高剪断の下でアクリルゴムのエポキシ基を架橋することを意味する。通常、こうして動的に架橋されたアクリルゴムは、熱可塑性ポリエステル樹脂のマトリックス相に微分散される。このような相構造を形成することにより、アクリルゴムが架橋されているにも関わらず、エラストマーは熱可塑性を有する。従って、熱可塑性エラストマーは、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法等、公知の熱可塑性樹脂の成形方法により所定形状に成形加工することができる。
溶融混練は、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂の融点より高く、(A)アクリルゴムの分解開始温度より低い温度、具体的には100〜350℃、好ましくは150〜300℃、より好ましくは180〜280℃で行えばよい。
<(A)アクリルゴムの製造>
(アクリルゴムA−1)
攪拌機、温度計、冷却器、滴下装置、窒素ガス導入管のついたフラスコにイオン交換水100質量部、ドデシル硫酸ナトリウム1質量部、亜硫酸水素ナトリウム0.05質量部、硫酸第一鉄0.0005質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.001質量部を仕込んだ後、窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に30℃まで昇温させた。その後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5質量部を添加し、そこへ、単量体(a−1)としてアクリル酸−n−ブチル(BA)100質量部と、単量体(a−2)としてメタクリル酸グリシジル(GMA)5質量部を3時間かけて滴下した後、さらに3時間重合を行うことにより乳化液を得た。次に、この乳化液を0.5質量%塩化カルシウム水溶液に1時間かけて滴下することにより塩析を行った。そして十分に水洗した後、80℃で乾燥して、アクリルゴム(A−1)を得た。
(アクリルゴムA−1)
攪拌機、温度計、冷却器、滴下装置、窒素ガス導入管のついたフラスコにイオン交換水100質量部、ドデシル硫酸ナトリウム1質量部、亜硫酸水素ナトリウム0.05質量部、硫酸第一鉄0.0005質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.001質量部を仕込んだ後、窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に30℃まで昇温させた。その後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5質量部を添加し、そこへ、単量体(a−1)としてアクリル酸−n−ブチル(BA)100質量部と、単量体(a−2)としてメタクリル酸グリシジル(GMA)5質量部を3時間かけて滴下した後、さらに3時間重合を行うことにより乳化液を得た。次に、この乳化液を0.5質量%塩化カルシウム水溶液に1時間かけて滴下することにより塩析を行った。そして十分に水洗した後、80℃で乾燥して、アクリルゴム(A−1)を得た。
(アクリルゴムA−2〜A−6,A’−1〜A’−4)
単量体(a−1)として表1に示す成分を表1に示す量で使用すると共に、単量体(a−2)の含有量も表1に示す量に変更した以外は、アクリルゴムA−1と同様にアクリルゴムを製造した。なお、表1中において(a−1)成分を示す「EA」はアクリル酸エチルを意味し、「MEA」はアクリル酸メトキシエチルを意味し、「2−EHA」はアクリル酸−2−エチルヘキシルを意味する。
単量体(a−1)として表1に示す成分を表1に示す量で使用すると共に、単量体(a−2)の含有量も表1に示す量に変更した以外は、アクリルゴムA−1と同様にアクリルゴムを製造した。なお、表1中において(a−1)成分を示す「EA」はアクリル酸エチルを意味し、「MEA」はアクリル酸メトキシエチルを意味し、「2−EHA」はアクリル酸−2−エチルヘキシルを意味する。
得られた各アクリルゴムのガラス転移温度(Tg)はJIS K 7121に準じ、DSCにて測定した。その結果も表1に示す。測定にはSIIナノテクノロジー(株)社のDSC 6200を使用して窒素下(流量20 ml/min)、−100℃から100℃まで、昇温速度10℃/minの条件で行った。
<(D)相容化剤(グラフト共重合体)の製造>
(相容化剤D−1)
水200質量部、ポリビニルアルコール0.15質量部、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)70質量部を、窒素置換したステンレス製オートクレーブに仕込み、撹拌、分散させた。そこへラジカル重合性有機過酸化物として、tert−ブチルパーオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート2質量部、側鎖用の単量体として、アクリル酸ブチル15質量部及びメタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル(HPMA)15質量部をオートクレーブ中に投入し、60〜65℃に昇温することにより、ラジカル重合性有機過酸化物・単量体をエチレン-エチルアクリレート共重合体に含浸させた(含浸時間2時間)。次いでラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド0.5質量部投入し、80〜85℃に昇温し、エチレン−エチルアクリレート共重合体内にて重合を行い、相容化剤前駆体を得た(反応時間5時間)。
(相容化剤D−1)
水200質量部、ポリビニルアルコール0.15質量部、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)70質量部を、窒素置換したステンレス製オートクレーブに仕込み、撹拌、分散させた。そこへラジカル重合性有機過酸化物として、tert−ブチルパーオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート2質量部、側鎖用の単量体として、アクリル酸ブチル15質量部及びメタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル(HPMA)15質量部をオートクレーブ中に投入し、60〜65℃に昇温することにより、ラジカル重合性有機過酸化物・単量体をエチレン-エチルアクリレート共重合体に含浸させた(含浸時間2時間)。次いでラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド0.5質量部投入し、80〜85℃に昇温し、エチレン−エチルアクリレート共重合体内にて重合を行い、相容化剤前駆体を得た(反応時間5時間)。
この相容化剤前駆体を1軸押出機にて押し出すことで、グラフト化反応を行い、相容化剤E−1を得た。
(相容化剤D−2〜D−5)
主鎖用のエチレン−アクリル酸エチル共重合体として表2に示す成分を使用すると共に、側鎖用の単量体として表2に示す成分を表2に示す量に変更した以外は、相容化剤D−1と同様に相容化剤を製造した。なお、表1中において主鎖成分を示す「EMA」はエチレン−アクリル酸メチル共重合体を意味し、「EVA」はエチレン−酢酸ビニル共重合体意味し、「EVOH」はエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を意味し、「EGMA」はエチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体を意味する。また、側鎖成分を示す「St」はスチレンを意味する。
主鎖用のエチレン−アクリル酸エチル共重合体として表2に示す成分を使用すると共に、側鎖用の単量体として表2に示す成分を表2に示す量に変更した以外は、相容化剤D−1と同様に相容化剤を製造した。なお、表1中において主鎖成分を示す「EMA」はエチレン−アクリル酸メチル共重合体を意味し、「EVA」はエチレン−酢酸ビニル共重合体意味し、「EVOH」はエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を意味し、「EGMA」はエチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体を意味する。また、側鎖成分を示す「St」はスチレンを意味する。
(実施例1−1)
(A)アクリルゴム(A−1)75質量部、(B)ポリブチレンテレフタレート(PBT)25質量部、(C)酸化マグネシウム(MgO)250質量部、(D)相容化剤(D−1)5質量部を240℃に加熱した加圧型ニーダー(モリヤマ社製、容量3.5L)に仕込み、32rpmで溶融混練し、すべての材料が溶融するまで混練した(混練時間20分)。その後(E)ブタンテトラカルボン酸0.2質量部を投入し、熱可塑性エラストマー組成物を得た。熱可塑性エラストマー組成物を240℃に加熱した加圧型ニーダーでさらに混練することで、動的架橋を行い、熱可塑性エラストマーを得た(混練時間20分)。熱可塑性エラストマーをニーダールーダー(笠松化工研究所製)に供給し、造粒した。最後に、造粒した熱可塑性エラストマーを240℃に加熱した射出成形機(日精樹脂工業(株)製、ES600)に供給し、30mm×150mm×2mmのプレートを作成した。
(A)アクリルゴム(A−1)75質量部、(B)ポリブチレンテレフタレート(PBT)25質量部、(C)酸化マグネシウム(MgO)250質量部、(D)相容化剤(D−1)5質量部を240℃に加熱した加圧型ニーダー(モリヤマ社製、容量3.5L)に仕込み、32rpmで溶融混練し、すべての材料が溶融するまで混練した(混練時間20分)。その後(E)ブタンテトラカルボン酸0.2質量部を投入し、熱可塑性エラストマー組成物を得た。熱可塑性エラストマー組成物を240℃に加熱した加圧型ニーダーでさらに混練することで、動的架橋を行い、熱可塑性エラストマーを得た(混練時間20分)。熱可塑性エラストマーをニーダールーダー(笠松化工研究所製)に供給し、造粒した。最後に、造粒した熱可塑性エラストマーを240℃に加熱した射出成形機(日精樹脂工業(株)製、ES600)に供給し、30mm×150mm×2mmのプレートを作成した。
(実施例1−2〜1−13、比較例1〜12)
各種成分を表3,4に示す成分として表3,4に示す量で使用した以外は、実施例1−1と同様にして各実施例・比較例の熱可塑性エラストマーからプレートを製造した。なお、老化防止剤としては、BASFジャパン社製のイルガノックス1010を使用した。また、加工助剤としては、三菱レイヨン社製のメタブレンL1000を使用した。
各種成分を表3,4に示す成分として表3,4に示す量で使用した以外は、実施例1−1と同様にして各実施例・比較例の熱可塑性エラストマーからプレートを製造した。なお、老化防止剤としては、BASFジャパン社製のイルガノックス1010を使用した。また、加工助剤としては、三菱レイヨン社製のメタブレンL1000を使用した。
得られた各実施例・比較例のプレートに関して、各種物性を測定評価した。各物性の測定・評価方法は次の通りである。
(耐熱試験)
JISK 6257に準じ、試験片(3号ダンベル)を高温槽にて150℃×500時間静置後、JISK 6251に準じ、試験速度500mm/minにて伸び(%)を測定し、耐熱試験前の伸び(%)と耐熱試験後の伸び(%)より、耐熱試験後の保持率を求めた。
(耐熱試験)
JISK 6257に準じ、試験片(3号ダンベル)を高温槽にて150℃×500時間静置後、JISK 6251に準じ、試験速度500mm/minにて伸び(%)を測定し、耐熱試験前の伸び(%)と耐熱試験後の伸び(%)より、耐熱試験後の保持率を求めた。
(引張試験)
JIS K 6251に準じ、試験速度500mm/minにて引張強度(MPa)、及び伸び(%)を測定した。
JIS K 6251に準じ、試験速度500mm/minにて引張強度(MPa)、及び伸び(%)を測定した。
(柔軟性)
JIS K 6253に準じ、タイプAディロメータ試験機で硬度(Sh A)を測定した。
JIS K 6253に準じ、タイプAディロメータ試験機で硬度(Sh A)を測定した。
(熱特性)
JIS K 7123に準じ比熱を測定し、JIS K 7112に準じ比重を測定し、JIS R 1611に準じ熱拡散率を測定し、次式により熱伝導率(W/m・K)を求めた
熱伝導率=比熱×比重×熱拡散率。
JIS K 7123に準じ比熱を測定し、JIS K 7112に準じ比重を測定し、JIS R 1611に準じ熱拡散率を測定し、次式により熱伝導率(W/m・K)を求めた
熱伝導率=比熱×比重×熱拡散率。
(製造性)
製造時、ニーダールーダー、及び射出成形機が磨耗していないかを目視にて確認した。○:磨耗なし、×:磨耗あり
製造時、ニーダールーダー、及び射出成形機が磨耗していないかを目視にて確認した。○:磨耗なし、×:磨耗あり
表3の結果から、熱可塑性エラストマー組成物が、特定の(A)アクリルゴム50〜85質量部と、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂15〜50質量部と、(A)+(B)100質量部に対して20〜900質量部の(C)熱伝導性フィラーと、(D)相容化剤を(A)+(B)100質量部に対して1〜20質量部と、(E)架橋剤を(A)100質量部に対して0. 01〜1質量部を含む組成であれば、良好な成形加工性・柔軟性・熱伝導性を有すると共に、耐熱性にも優れる熱可塑性エラストマーを得ることができることが確認された。
これに対し表4の結果から、比較例1は、(a−2)エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有しないアクリルゴムを使用したことで成形加工性が悪く成形することができなかった。比較例2は、(a−2)エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量が過多のアクリルゴムを使用したことで成形加工性が悪く成形することができなかった。比較例3は、(A)アクリルゴムのガラス転移温度(Tg)が高すぎるため、柔軟性が劣っていた。比較4は、(A)アクリルゴムのガラス転移温度(Tg)が低すぎるため、引張強度が劣っていた。比較例5は、(A)アクリルゴムの含有量が過少で(B)熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量が過多のため、柔軟性が劣っていた。比較例6は、(A)アクリルゴムの含有量が過多で(B)熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量が過少のため、成形加工性が劣っていた。比較例7は、(C)熱伝導性フィラーの新モース硬度が高すぎるため、製造製(混練機磨耗性)が劣っていた。比較例8は、(C)熱伝導性フィラーを含有していないため、熱伝導率が劣っていた。比較例9は、(C)熱伝導性フィラーの含有量が過多のため、柔軟性が劣っていた。比較例10は、(D)相容化剤を含有していないため、成型加工性が劣っていた。比較例11は、(D)相容化剤の含有量が過多のため、成型加工性が劣っていた。比較例12は、(E)架橋剤の含有量が過多のため、耐熱性が劣っていた。
Claims (1)
- (A)アクリルゴムと、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(C)熱伝導性フィラーと、(D)相容化剤と、(E)成分(A)を架橋する架橋剤とを含み、前記成分(A)が前記成分(E)で動的架橋されている熱可塑性エラストマーであって、
前記成分(A)は、(a−1)下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物のうち少なくとも一種100質量部に対して、(a−2)エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを0.1〜10質量部共重合してなり、且つガラス転移温度が−60〜−15℃であり、
前記成分(C)は、新モース硬度が1〜8であり、
前記成分(D)はグラフト共重合体であって、主鎖が、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル基を含有するポリオレフィン、水酸基を含有するポリオレフィン、又はエポキシ基を含有するポリオレフィンからなる群から選ばれる一種であり、側鎖が、前記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物のうち少なくとも一種を含む重合体であり、
前記成分(A)を50〜85質量部、
前記成分(B)を15〜50質量部、
前記成分(C)を前記成分(A)+(B)の合計100質量部に対して20〜900質量部、
前記成分(D)を前記成分(A)+(B)の合計100質量部に対して1〜20質量部、
前記成分(E)を前記成分(A)100質量部に対して0.01〜1質量部、
含有することを特徴とする、熱可塑性エラストマー。
(式中、Rは水素又はメチル基であり、aは1〜8の整数である。)
(式中、Rは水素又はメチル基であり、bは1〜3の整数、cは1〜8の整数である。)
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CN105934452B (zh) * | 2014-01-29 | 2018-10-26 | 昭和电工株式会社 | 热固性树脂组合物、其固化物、电气电子部件 |
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