JP2013253568A - 二段圧縮機 - Google Patents

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Chihiro Endo
ちひろ 遠藤
Keiji Komori
啓治 小森
Yorihide Higuchi
順英 樋口
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Abstract

【課題】低段側及び高段側のシリンダに挟まれる仕切部材を備えた二段圧縮機において、仕切部材を低段側のピストンの方へ撓ませないようにして、二段圧縮機の運転時の信頼性を向上させる。
【解決手段】仕切部材(1)は、駆動軸(20)の貫通孔(4)の周面(5)に開口する凹部(6)が形成されるように低段側及び高段側の側壁部(7a,7b)を備え、高段側の側壁部(7b)の内周部が湾曲可能に構成される一方、仕切部材(1)は、両方の側壁部(7a,7b)の先端間をシールする伸縮自在のシール部材(8)と、低段側の側壁部(7a)を貫通して凹部(6)の内部空間(6a)と低段側の圧縮室(28)とを連通する小孔部(9)とを備えるようにする。
【選択図】図1

Description

本発明は、二段圧縮機に関し、特に低段側及び高段側のシリンダに挟まれる仕切部材の変形を抑制する対策に係るものである。
従来より、低段側の圧縮室で圧縮した流体をさらに高段側の圧縮室で圧縮する二段圧縮機が知られている。そして、これらの二段圧縮機の中には、特許文献1に示すように、低段側及び高段側の圧縮室を形成する低段側及び高段側のシリンダ間に挟まれた仕切部材を備えるものがある。
特許文献1の二段圧縮機は、低段側及び高段側のシリンダと低段側及び高段側のピストンと駆動軸とを備えている。上記低段側及び高段側のピストンは、低段側及び高段側のシリンダに収容されている。上記駆動軸は、上下に重ねられた両方のシリンダ内を貫通し且つ両方のピストンが嵌合している。低段側及び高段側のシリンダの内面と低段側及び高段側のピストンの外面との間には、低段側及び高段側の圧縮室が形成されている。
この二段圧縮機では、上記駆動軸の回転により各ピストンを偏心回転させることによって、低段側の圧縮室で圧縮した流体をさらに高段側の圧縮室で圧縮するように構成されている。
二段圧縮機には、略円板状のミドルプレート(仕切部材)が設けられている。ミドルプレートは、上記駆動軸が貫通した状態で両方のシリンダ間に挟まれている。このミドルプレートの下端面は、低段側の圧縮室に臨み且つ低段側のピストンの上端面が摺接する。また、このミドルプレートの上端面は、高段側の圧縮室に臨み且つ高段側のピストンの下端面が摺接する。
特開2000−87892号公報
ところで、二段圧縮機は、低段側の圧縮室で圧縮した流体をさらに高段側の圧縮室で圧縮するように構成されているため、高段側の圧縮室の圧力が低段側の圧縮室の圧力よりも高くなっている。このことから、仕切部材の一端面には低段側の圧縮室の圧力が作用して、仕切部材の他端面には高段側の圧縮室の圧力が作用し、これらの圧力差によって、仕切部材が低段側の圧縮室の方へ湾曲することが考えられる。尚、この湾曲に伴う変形量は数十μm程度である。低段側のピストンは仕切部材に摺接しながら偏心しているので、仕切部材の僅かな湾曲で、低段側のピストンがロックしてしまうという問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低段側及び高段側のシリンダに挟まれる仕切部材を備えた二段圧縮機において、この仕切部材を低段側のピストンの方へ湾曲させないようにして、二段圧縮機の運転時の信頼性を向上させることにある。
第1の発明は、低段側及び高段側のシリンダ(26,27)内の各ピストン(24,25)が偏心回転することによって各圧縮室(28,29)内で流体を圧縮する低段側及び高段側の圧縮部(12a,12b)と、両方のシリンダ(26,27)内を貫通して両方のピストン(24,25)が嵌合する駆動軸(20)と、該駆動軸(20)が貫通するとともに両方の圧縮部(12a,12b)の間に挟まれて、一端面が低段側の圧縮室(28)に臨み、他端面が高段側の圧縮室(29)に臨む板状の仕切部材(1)とを備え、低段側の圧縮室(28)で圧縮した流体をさらに高段側の圧縮室(29)で圧縮する二段圧縮機である。
この二段圧縮機において、上記仕切部材(1)は、上記駆動軸(20)の貫通孔(4)の周面(5)に開口する凹部(6)が形成されるように低段側及び高段側の側壁部(7a,7b)を備え、該高段側の側壁部(7b)の内周部が湾曲可能に構成される一方、上記仕切部材(1)は、両方の側壁部(7a,7b)の先端部間をシールする伸縮自在のシール部材(8)と、上記低段側の側壁部(7a)を貫通して上記凹部(6)の内部空間(6a)と上記低段側の圧縮室(28)とを連通する孔部(9)とを備えている。
第1の発明では、上記孔部(9)を通じて上記凹部(6)の内部空間(6a)と上記低段側の圧縮室(28)とが均圧する。上記低段側の側壁部(7a)の一端面には内部空間(6a)の圧力が作用し、他端面には低段側の圧縮室(28)の圧力が作用するが、これらの圧力は孔部(9)によって均圧しているので、上記低段側の側壁部(7a)が上記低段側の圧縮室(28)の方へ湾曲することがない。
一方、上記高段側の側壁部(7b)の一端面には内部空間(6a)の圧力が作用し、他端面には高段側の圧縮室(29)の圧力が作用する。そして、高段側の圧縮室(29)の圧力の方が高いため、上記高段側の側壁部(7b)が内部空間(6a)側へ湾曲する場合がある。しかし、高段側の側壁部(7b)が内部空間(6a)側へ湾曲したとしても、その湾曲部分を上記凹部(6)の内部空間(6a)が吸収するため、上記低段側の側壁部(7a)が上記低段側の圧縮室(28)の方へ湾曲することがない。
また、両方の側壁部(7a,7b)の先端間をシール部材(8)でシールしているので、上記仕切部材(1)及び上記駆動軸(20)の隙間と、上記凹部(6)の内部空間(6a)との間を流体が流通することがない。したがって、上記凹部(6)の内部空間(6a)の圧力は、上記低段側の圧縮室(28)の圧力で保持される。
第2の発明は、第1の発明において、上記仕切部材(1)は、低段側の側壁部(7a)を含む第1部材(2)と高段側の側壁部(7b)を含む第2部材(3)とを有し、上記第1部材(2)と第2部材(3)とを軸方向に重ね合わせて構成されている。
第2の発明では、上記第1部材(2)と第2部材(3)とを軸方向に重ね合わせて凹部(6)を形成するので、上記仕切部材(1)の内部を直接削る場合に比べて、凹部(6)を形成しやすくなる。この構成は、特に、上記凹部(6)を深くして内部空間(6a)の容積を広くしたい場合に有効である。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記低段側の圧縮室(28)を吸入室(34a)と吐出室(34b)に区画するブレード(31)と、上記低段側のシリンダ(26)を径方向に貫通し且つ上記低段側の圧縮室(28)に開口して流体を該圧縮室(28)へ導く吸入貫通路(44)とを備え、上記孔部(9)は、上記ブレード(31)と上記吸入貫通路(44)の間に位置するように上記低段側の圧縮室(28)に開口している。
第3の発明では、凹部(6)の内部空間(6a)が最も低圧雰囲気に保持される。仮に、上記孔部(9)を吐出室(34b)に開口させた場合、凹部(6)の内部空間(6a)が中間圧雰囲気となり、凹部(6)の内部空間(6a)と低段側の圧縮室(28)の吸入室(34a)との間に圧力差が生じ、低段側の側壁部(7a)が低段側の圧縮室(28)の方へ湾曲してしまうことが考えられる。凹部(6)の内部空間(6a)を最も低圧雰囲気に保持することにより、低段側の側壁部(7a)を低段側の圧縮室(28)の方へ湾曲させないようにした。
本発明によれば、上記低段側の側壁部(7a)を湾曲させないようにしたので、従来とは違い、低段側の側壁部(7a)で低段側のピストン(24)をロックさせないようにすることができる。上記低段側の側壁部(7a)を湾曲させないようにするため、上記高段側の側壁部(7b)が湾曲可能となってしまうが、高段側の側壁部(7b)が湾曲した場合でも、凹部(6)の内部空間(6a)で高段側の側壁部(7b)の湾曲部分が吸収されるので、高段側の側壁部(7b)の湾曲に起因して上記低段側の側壁部(7a)が湾曲することがない。これにより、上記仕切部材(1)で低段側のピストン(24)がロックされることがなくなり、二段圧縮機の運転時の信頼性を向上させることができる。
また、上記第2の発明によれば、2つの部材(2,3)を重ねて上記仕切部材(1)を構成することにより、上記仕切部材(1)を直接削る場合に比べて、凹部(6)を形成しやすくすることができる。これにより、上記仕切部材(1)を容易に製作することができる。
また、上記第3の発明によれば、凹部(6)の内部空間(6a)を最も低圧雰囲気に保持したので、低段側の側壁部(7a)が低段側の圧縮室(28)の方へ確実に湾曲しないようにすることができる。
図1は、本実施形態に係る二段圧縮機の縦断面図である。 図2は、二段圧縮機の圧縮機構の簡略化した縦断面図である。 図3は、二段圧縮機のミドルプレートの横断面図である。 図4は、二段圧縮機の低段側のシリンダの横断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
〈二段圧縮機の全体構成〉
本実施形態に係る二段圧縮機(10)は、図1に示すように、ケーシング(11)と圧縮機構(12)と電動機(13)と駆動軸(20)とを備えている。
上記ケーシング(11)は、上下に延びる円筒状の胴部(11)と、該胴部(11)の上側開口部を閉塞する椀状の上部鏡板(14b)と、該胴部(11)の下側開口部を閉塞する椀状の下部鏡板(14c)とを有している。ケーシング(11)において、この胴部(11)の上側には上部鏡板(14b)が溶接で固定され、胴部(11)の下側には下部鏡板(14c)が溶接で固定されることによって密閉容器に構成されている。上記胴部(11)の上側部分には、吐出管(17)が取り付けられている。上記胴部(11)の下側部分には、低段吸入インレットチューブ(15a)と低段吐出インレットチューブ(15c)と高段吸入インレットチューブ(15b)とが取り付けられている。
上記電動機(13)は、共に円筒状に形成されたステータ(18a)及びロータ(18b)を備えている。上記ステータ(18a)は、上記ケーシング(11)の胴部(14a)に固定されている。このステータ(18a)の中空部に上記ロータ(18b)が配置されている。このロータ(18b)の中空部には、該ロータ(18b)を貫通するように駆動軸(20)が固定されており、ロータ(18b)と駆動軸(20)が一体で回転するようになっている。
上記駆動軸(20)は、上記圧縮機構(12)及び上記電動機(13)を連結するものである。この駆動軸(20)は、上下に延びる主軸部(21)を有し、この主軸部(21)の下端寄りに低段側及び高段側の偏心部(22,23)が形成されている。低段側の偏心部(22)が高段側の偏心部(23)よりも下側に配置されている。これらの偏心部(22,23)は、共に主軸部(21)よりも大径に形成されている。低段側及び高段側の偏心部(22,23)の軸心は、主軸部(21)の軸心に対して所定距離だけ偏心しており、低段側の偏心部(22)及び高段側の偏心部(23)の偏心方向は互いに180度ずれている。
上記圧縮機構(12)は、図2に示すように、上側から下側へ向かって順に、フロントヘッド(41)、高段側のシリンダ(27)、ミドルプレート(1)、低段側のシリンダ(26)、及びリアヘッド(42)の順で積層され、これらの部材(41,27,1,26,42)が、上下方向へ延びる複数のボルト(35)で締結されてなる。圧縮機構(12)の中心部分を上記駆動軸(20)が貫通している。
上記フロントヘッド(41)及び上記リアヘッド(42)には、上記駆動軸(20)を挿通するための貫通孔が設けられている。この貫通孔の内周面が上記駆動軸(20)を支持する滑り軸受を構成する。また、フロントヘッド(41)には、軸方向に貫通する高段側の吐出ポート(図示無し)が形成されている。この高段側の吐出ポートは、後述する高段側の圧縮室(29)の吐出室に開口している。また、フロントヘッド(41)には、この高段側の吐出ポートの上端開口部を覆うようにマフラが取り付けられている。一方、リアヘッド(42)には、該リアヘッド(42)の内部に低段吐出空間(43)と、該低段吐出空間(43)と後述する低段側の圧縮室(28)の吐出室(34b)とを連通する低段側の吐出ポート(図示無し)とが設けられている。なお、低段吐出空間(43)は、上記低段吐出インレットチューブ(15c)に連通している。
上記低段側及び高段側のシリンダ(26,27)は環状に形成されている。各シリンダ(26,27)の内周縁は断面視で円形状に形成されている。この低段側及び高段側のシリンダ(26,27)の中空部に上記駆動軸(20)の低段側及び高段側の偏心部(22,23)が位置している。低段側及び高段側の偏心部(22,23)には、低段側及び高段側の環状のピストン(24,25)が外嵌している。上記低段側及び高段側のシリンダ(26,27)の内周面と上記低段側及び高段側のピストン(24,25)の外周面との間に低段側及び高段側の圧縮室(28,29)が形成されている。
尚、低段側の圧縮部(12a)は、上記リアヘッド(42)の上端面と上記ミドルプレート(1)の下端面と上記低段側のシリンダ(26)の内周面とで囲まれた空間内に収容された低段側のピストン(24)を備え、低段側のピストン(24)を偏心回転させて冷媒を圧縮するものである。また、高段側の圧縮部(12b)は、上記フロントヘッド(41)の下端面と上記ミドルプレート(1)の上端面と上記高段側のシリンダ(27)の内周面とで囲まれた空間内に収容された高段側のピストン(25)を備え、高段側のピストン(25)を偏心回転させて冷媒を圧縮するものである。
次に、各圧縮室(28,29)を区画するブレード(31)付近の構成について説明する。尚、これらの構成は、低段側と高段側とで同じであるため、低段側についてのみ、図4を用いて説明し、高段側の説明は省略する。
図4に示すように、低段側のピストン(24)の外周面には、該外周面から径方向外方へ延びる低段側のブレード(31)が一体に形成されている。低段側のブレード(31)は、低段側の圧縮室(29)を吸入室(34a)と吐出室(34b)とに区画している。
低段側のシリンダ(26)には、平面視で一部が貫通孔に開口する円形状のブッシュ溝(32)が形成されている。このブッシュ溝(32)に低段側のブレード(31)が位置している。ブッシュ溝(32)には、平面視で半月状に形成された一対のブッシュ(33)が低段側のブレード(31)を両側から挟むような状態で内嵌されている。尚、このブッシュ(33)の円弧面はブッシュ溝(32)の内周面に対して摺接可能であり、上記ブッシュ(33)のフラット面は低段側のブレード(31)の側面に対して摺接可能である。
また、低段側のシリンダ(26)には、該低段側のシリンダ(26)を径方向に貫通する低段側の吸入貫通路(44)が形成されている。低段側の吸入貫通路(44)は、低段側の圧縮室(29)の吸入室(34a)に開口している。上記低段吸入インレットチューブ(15a)は低段側の吸入貫通路(44)に挿入されている。
〈ミドルプレート〉
次に、本発明の特徴であるミドルプレート(1)について説明する。
ミドルプレート(1)は、上述したように、低段側及び高段側のシリンダ(26,27)間に挟まれて仕切部材を構成している。ミドルプレート(1)の中心部には、図3に示すように、駆動軸(20)が挿通される貫通孔(4)が形成されている。ミドルプレート(1)の下端面が低段側の圧縮室(28)に臨み、ミドルプレート(1)の上端面が高段側の圧縮室(29)に臨んでいる。また、ミドルプレート(1)の下端面と低段側のピストン(24)の上端面とが摺接し、ミドルプレート(1)の上端面と高段側のピストン(25)の下端面とが摺接している。
ミドルプレート(1)は、第1部材(2)及び第2部材(3)を厚さ方向に重ね合わせて形成されている。第1部材(2)及び第2部材(3)は、ともに中心部に貫通孔(4)が設けられた平板状に形成されている。また、第2部材(3)には、該第2部材(3)の貫通孔(4)の周囲に環状溝(3a)が形成されている。貫通孔(4)の周縁と環状溝(3a)の内周縁とは一致している。
このミドルプレート(1)において、第1部材(2)の端面と第2部材(3)の環状溝(3a)よりも外周側の端面とを当接させて、第1部材(2)及び第2部材(3)を重ね合わせることにより、上記ミドルプレート(1)の貫通孔(4)の周面(5)に開口する凹部(6)が形成される。
この凹部(6)を構成する一対の側壁部(7a,7b)は、互いに上下に対向している。一対の側壁部(7a,7b)のうち、高段側の圧縮室(29)側にあるのが高段側の側壁部(7b)であり、低段側の圧縮室(28)側にあるのが低段側の側壁部(7a)である。低段側の側壁部(7a)は第1部材(2)に含まれ、高段側の側壁部(7b)は第2部材(3)に含まれている。
また、ミドルプレート(1)には小孔部(9)が形成されている。この小孔部(9)が本願発明の孔部(9)を構成する。この小孔部(9)は、第1部材(2)の低段側の側壁部(7a)を貫通して凹部(6)の内部空間(6a)と上記低段側の圧縮室(28)とを連通させている。具体的には、小孔部(9)は、上記低段側の圧縮室(28)の吸入貫通路(44)近傍、すなわち上記駆動軸(20)の回転角度方向について、低段側のピストン(24)のブレード(31)と、上記低段側のシリンダ(26)の低段側の吸入貫通路(44)の間に開口する位置に設けられている。この小孔部(9)によって、上記凹部(6)の内部空間(6a)と上記低段側の圧縮室(28)とが均圧する。上記低段側の側壁部(7a)の一端面には内部空間(6a)の圧力が作用し、他端面には低段側の圧縮室(28)の圧力が作用するが、これらの圧力は上述した小孔部(9)によって均圧しているので、上記低段側の側壁部(7a)が上記低段側の圧縮室(28)の方へ湾曲しなくなる。
一方、上記高段側の側壁部(7b)の一端面には内部空間(6a)の圧力が作用し、他端面には高段側の圧縮室(29)の圧力が作用する。内部空間(6a)と高段側の圧縮室(29)との圧力を比較すると、高段側の圧縮室(29)の圧力の方が高いため、上記高段側の側壁部(7b)が内部空間(6a)側へ湾曲する場合がある。しかし、高段側の側壁部(7b)が内部空間(6a)側へ湾曲したとしても、その湾曲部分を上記凹部(6)の内部空間(6a)が吸収するため、低段側の側壁部(7a)には影響がない。
ここで、低段側の側壁部(7a)の周囲を均圧させて低段側の側壁部(7a)が湾曲するのを防いでいるので、低段側の側壁部(7a)の軸方向厚みをできるだけ薄くすることが可能である。本実施形態では、低段側の側壁部(7a)の軸方向厚みを高段側の側壁部(7b)の軸方向厚みよりも薄くしている。これにより、第1部材(2)の軽量化を図ることができる。また、例えば、ミドルプレート(1)の厚さが予め規定されている場合において、第1部材(2)を薄くした分だけ、第2部材(3)を厚くすることも可能である。これにより、第2部材(3)の剛性を強くして、該2部材(3)ができるだけ湾曲しないようにすることができる。
ミドルプレート(1)には、シール部材としての環状のガスケット(8)が設けられている。このガスケット(8)は、低段側及び高段側の側壁部(7a,7b)の先端部間をシールしている。側壁部(7a,7b)の先端部とは、ミドルプレート(1)の内周部のことをいう。
この環状のガスケット(8)で両側の側壁部(7a,7b)間をシールすることにより、上記ミドルプレート(1)の内周面と上記駆動軸(20)の外周面との隙間と、上記凹部(6)の内部空間(6a)との間が非連通となる。本実施形態では、駆動軸(20)の内部に給油路(図示なし)が形成されている。この給油路は駆動軸(20)の外周面に開口している。この開口部分から流出する油によって、上記圧縮機構(12)の摺動部分が潤滑される。この給油路には、ケーシング(11)の底部に溜まった高圧の油が流通するように構成されている。このため、駆動軸(20)の外周面の開口から流出する高圧の油が、ミドルプレート(1)と上記駆動軸(20)との隙間へ流れて、この隙間が高圧状態になるが、環状のガスケット(8)によって、この隙間の高圧流体が上記凹部(6)の内部空間(6a)へ洩れ出すことがない。
また、このガスケット(8)は、軸方向方向に伸縮自在に構成されている。このため、高段側の側壁部(7b)へ高段側の圧縮室(29)の圧力が作用したときでも、ガスケット(8)が下側へ収縮することによって、高段側の側壁部(7b)を湾曲させることが可能である。尚、本実施形態では、シール部材としてガスケット(8)を用いたが、これに限定されず、例えば、Oリングやチップシールを用いてもよい。
ここで、上記凹部(6)について説明すると、環状溝(3a)を狭めれば、凹部(6)は浅くなり、環状溝(3a)を広げれば、凹部(6)は深くなる。凹部(6)の凹み部分が浅い場合と深い場合とで比較すると、凹み部分がごく浅い場合には、上記ミドルプレート(1)の内周部が高段側から低段側へ応力を受けたときに上記ミドルプレート(1)の内周部全体が低段側へ湾曲してしまう。一方、凹み部分がある程度深い場合には、側壁部(7a,7b)の径方向長さが長くなって該側壁部(7a,7b)が湾曲しやすくなり、高段側の圧縮室(29)から応力を受けている高段側の側壁部(7b)の内周部のみが低段側へ湾曲する。このように、本実施形態の凹部(6)では、高段側の側壁部(7b)の内周部のみが低段側へ湾曲可能な程度の凹みに設定されている。
−運転動作−
二段圧縮機(10)では、上記駆動軸(20)が回転すると、該駆動軸(20)に取り付けられた各ピストン(38,39)が各シリンダ(26,27)内を偏心回転する。これにより、各圧縮室(28,29)の容積が周期的に変動し、該圧縮室(28,29)で流体の吸入動作、圧縮動作及び吐出動作が連続的に行われる。本実施形態では、低段側の圧縮室(28)で圧縮された流体が、さらに高段側の圧縮室(29)で圧縮された後に、ケーシング(11)内に吐出されるように構成されている。ケーシング(11)内に吐出された流体は、上記吐出管(17)を通じて、ケーシング(11)の外側へ流出する。
このように、本実施形態の二段圧縮機(10)は、流体を二段圧縮するので、高段側の圧縮室(29)の圧力が低段側の圧縮室(28)の圧力よりも高くなる。すると、この高段側及び低段側の圧力差によって、上記ミドルプレート(1)の内周部を上側から下側へ湾曲させようとする応力が生じる。本実施形態では、ミドルプレート(1)に凹部(6)を形成するとともに低段側の側壁部(7a)に小孔部(9)を形成しているので、上述したように、小孔部(9)を通じて上記凹部(6)の内部空間(6a)と上記低段側の圧縮室(28)とが均圧する。この結果、上記低段側の側壁部(7a)が上記低段側の圧縮室(28)の方へ湾曲しなくなる。
−実施形態の効果−
上記実施形態によれば、上記ミドルプレート(1)に凹部(6)を形成するとともに低段側の側壁部(7a)に小孔部(9)を形成し、この小孔部(9)を通じて上記凹部(6)の内部空間(6a)と上記低段側の圧縮室(28)とを連通させた。これにより、低段側の側壁部(7a)の両側に作用する圧力(上記凹部(6)の内部空間(6a)と上記低段側の圧縮室(28)との圧力)を均圧させることができ、低段側の側壁部(7a)が上記低段側のピストン(24)の方へ湾曲しないようにすることができる。この結果、二段圧縮機の運転中に、上記ミドルプレート(1)で低段側のピストン(24)がロックされることがなくなり、二段圧縮機の運転時の信頼性を向上させることができる。
また、上記実施形態によれば、第1部材(2)及び第2部材(3)を重ねて上記ミドルプレート(1)を構成することにより、上記仕切部材(1)を直接削る場合に比べて、凹部(6)を形成しやすくすることができる。これにより、上記ミドルプレート(1)を容易に製作することができる。
また、上記実施形態によれば、上記低段側の圧縮室(28)の中でも圧力の低い吸入貫通路(44)の近傍、すなわち上記駆動軸(20)の回転角度方向について、低段側のピストン(24)のブレード(31)と、上記低段側のシリンダ(26)の低段側の吸入貫通路(44)の間に開口する位置に上記小孔部(9)を設けることにより、上記凹部(6)の内部空間(6a)の圧力を可能な限り低くすることができ、低段側の側壁部(7a)が低段側のピストン(24)の方へ確実に湾曲しないようにすることができる。
以上説明したように、本発明は、二段圧縮機に関し、特に低段側及び高段側のシリンダに挟まれる仕切部材を備えたものについて有用である。
1 ミドルプレート(仕切部材)
2 第1部材
3 第2部材
3a 環状溝
6 凹部
7a 低段側の側壁部
7b 高段側の側壁部
8 ガスケット(シール部材)
9 小孔部(孔部)
10 二段圧縮機
11 ケーシング
12 圧縮機構
13 電動機
24 低段側のピストン
25 高段側のピストン
26 低段側のシリンダ
27 高段側のシリンダ

Claims (3)

  1. 低段側及び高段側のシリンダ(26,27)内の各ピストン(24,25)が偏心回転することによって各圧縮室(28,29)内で流体を圧縮する低段側及び高段側の圧縮部(12a,12b)と、両方のシリンダ(26,27)内を貫通して両方のピストン(24,25)が嵌合する駆動軸(20)と、該駆動軸(20)が貫通するとともに両方の圧縮部(12a,12b)の間に挟まれて、一端面が低段側の圧縮室(28)に臨み、他端面が高段側の圧縮室(29)に臨む板状の仕切部材(1)とを備え、低段側の圧縮室(28)で圧縮した流体をさらに高段側の圧縮室(29)で圧縮する二段圧縮機であって、
    上記仕切部材(1)は、上記駆動軸(20)の貫通孔(4)の周面(5)に開口する凹部(6)が形成されるように低段側及び高段側の側壁部(7a,7b)を備え、該高段側の側壁部(7b)の内周部が湾曲可能に構成される一方、
    上記仕切部材(1)は、両方の側壁部(7a,7b)の先端部間をシールする伸縮自在のシール部材(8)と、上記低段側の側壁部(7a)を貫通して上記凹部(6)の内部空間(6a)と上記低段側の圧縮室(28)とを連通する孔部(9)とを備えていることを特徴とする二段圧縮機。
  2. 請求項1において
    上記仕切部材(1)は、低段側の側壁部(7a)を含む第1部材(2)と高段側の側壁部(7b)を含む第2部材(3)とを有し、上記第1部材(2)と第2部材(3)とを軸方向に重ね合わせて構成されていることを特徴とする二段圧縮機。
  3. 請求項1又は2において、
    上記低段側の圧縮室(28)を吸入室(34a)と吐出室(34b)に区画するブレード(31)と、上記低段側のシリンダ(26)を径方向に貫通し且つ上記低段側の圧縮室(28)に開口して流体を該圧縮室(28)へ導く吸入貫通路(44)とを備え、
    上記孔部(9)は、上記ブレード(31)と上記吸入貫通路(44)の間に位置するように上記低段側の圧縮室(28)に開口していることを特徴とする二段圧縮機。
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