JP2017031950A - スクロール圧縮機 - Google Patents

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健一 佐多
Kenichi Sata
健一 佐多
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Abstract

【課題】可動側鏡板部の前面に作用する力の偏りに起因する可動側鏡板部の変形を抑制して、スクロール圧縮機の運転効率を向上させる。【解決手段】圧縮機構(30)では、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)とが噛み合わされて流体室(S)が形成されている。圧縮機構(30)は、固定側ラップ(33)と可動側ラップ(37)とが非対称渦巻き構造となっている。流体室(S)のうち可動スクロール(35)の偏心回転運動中に常に吸入圧力が作用する領域が吸入領域(SR)となっている。可動側鏡板部(36)は、固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を挟んで吸入領域(SR)の反対側に位置する部分に、可動側鏡板部(36)の変形を低減するための補強リブ(39)が設けられている。【選択図】図3

Description

この発明は、スクロール圧縮機に関する。
従来、固定スクロールと可動スクロールとを有するスクロール圧縮機において、可動スクロールに押し付け力(可動スクロールを固定スクロールに押し付ける方向に作用する力)を付与することによって、可動スクロールが固定スクロールから離反しないようにすることが知られている。
例えば、特許文献1には、可動スクロールの背面に面する空間に高圧油を供給することによって可動スクロールに押し付け力を付与することが開示されている。特許文献1のスクロール圧縮機では、可動スクロールの背面側の背圧空間を内周側の第1背圧空間と外周側の第2背圧空間とに区画するシールリングを設け、第1背圧空間に高圧油を供給する一方で第2背圧空間を低圧空間にし、第1背圧空間の高圧圧力で押し付け力を発生させている。
さらに、特許文献1のスクロール圧縮機では、固定スクロールと可動スクロールとのスラスト摺動面(接触面)に油溝が設けられている。そして、この油溝に高圧油を供給することにより離反力(可動スクロールを固定スクロールから離す方向に作用する力)を発生させ、この離反力によって押し付け力を抑制して可動スクロールの押し付け過剰を防止している。
特開2001−214872号公報
特許文献1のスクロール圧縮機では、圧縮機構において固定スクロールと可動スクロールとが噛み合わされて、固定スクロールと可動スクロールとの間に流体室が形成されている。また、この圧縮機構は、固定スクロールのラップの巻き数と可動スクロールのラップの巻き数とが互いに異なる非対称渦巻き構造となっている。このような構造を有する圧縮機構では、流体室における吸入位置が一箇所(具体的には、可動スクロールのラップの渦巻き終端部の近傍)に集約されており、その吸入位置から吸入された流体が固定スクロールのラップと可動スクロールのラップとの間に挟まれた圧縮室において圧縮されることになる。そのため、可動スクロールの偏心回転運動中、流体室のうち吸入位置の近傍(すなわち、可動スクロールのラップの渦巻き終端部の近傍)に位置する領域には、常に吸入圧力が作用することになる。すなわち、流体室には、可動スクロールの偏心回転運動中に常に吸入圧力が作用する領域(以下、「吸入領域」と記載)が偏在している。吸入領域は、可動スクロールのラップの渦巻き終端部の近傍に位置している。
なお、吸入領域では、可動スクロールの偏心回転運動中に、可動スクロールの鏡板部(以下、「可動側鏡板部」と記載)の前面に吸入圧力(すなわち、低圧圧力)が常に作用することになるので、可動側鏡板部の前面に作用する力が比較的に小さくなる傾向にある。一方、固定スクロールの中心軸を挟んで吸入領域の反対側に位置する領域では、可動側鏡板部の前面に、油溝内の潤滑油の圧力(すなわち、高圧圧力)と圧縮室内の流体の圧力(すなわち、吸入圧力よりも高い圧力)とが作用することになるので、可動側鏡板部の前面に作用する力が比較的に大きくなる傾向にある。
このように、可動側鏡板部の前面に作用する力に偏りが生じているので、可動側鏡板部は、吸入領域に位置する部分が固定スクロールに近づく方向に強く押し付けられるとともに、固定スクロールの中心軸を挟んで吸入領域の反対側に位置する部分が固定スクロールから離れる方向に強く押し返される傾向にある。すなわち、可動側鏡板部のうち吸入領域の反対側に位置する部分には、可動側鏡板部を固定スクロールから離れる方向に変形させようとする力が作用することになる。そして、このような力が作用して可動側鏡板部が変形すると、固定スクロールと可動スクロールとの間の気密性が低下して固定スクロールと可動スクロールとの間の隙間を流れる流体の流量が増加し、その結果、スクロール圧縮機の運転効率(圧縮機構の圧縮効率)が低下してしまうおそれがある。
そこで、この発明は、可動側鏡板部の前面に作用する力の偏りに起因する可動側鏡板部の変形を抑制して、スクロール圧縮機の運転効率を向上させることを目的とする。
第1の発明は、ケーシング(20)と、固定側ラップ(33)を有する固定スクロール(31)と、平板状の可動側鏡板部(36)と該可動側鏡板部(36)の前面から突出する可動側ラップ(37)とを有する可動スクロール(35)とを有し、上記ケーシング(20)内に収容され、該固定スクロール(31)と該可動スクロール(35)とが噛み合わされて形成された流体室(S)へ吸入した流体を圧縮して該ケーシング(20)内に吐出する圧縮機構(30)とを備え、上記圧縮機構(30)は、上記固定側ラップ(33)の巻き数と上記可動側ラップ(37)の巻き数とが互いに異なる非対称渦巻き構造であり、上記圧縮機構(30)には、上記可動側鏡板部(36)の背面に面する空間であってその圧力によって該可動側鏡板部(36)を該固定スクロール(31)に押し付けるための背圧室(S50)が形成され、上記固定スクロール(31)は、上記可動側鏡板部(36)の前面のうち上記可動側ラップ(37)の外周側の領域と摺接する部分に、上記ケーシング(20)内に貯留された高圧の潤滑油が供給される油溝(60)が設けられ、上記流体室(S)のうち上記可動スクロール(35)の偏心回転運動中に常に吸入圧力が作用する領域が吸入領域(SR)であり、上記可動側鏡板部(36)は、上記固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を挟んで上記吸入領域(SR)の反対側に位置する部分に、該可動側鏡板部(36)の変形を低減するための補強リブ(39)が設けられていることを特徴とするスクロール圧縮機である。
上記第1の発明では、可動側鏡板部(36)のうち固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を挟んで吸入領域(SR)の反対側に位置する部分に補強リブ(39)を設けることにより、可動側鏡板部(36)のうち吸入領域(SR)の反対側に位置する部分(すなわち、可動側鏡板部(36)を固定スクロール(31)から離れる方向に変形させようとする力が作用する部分)の剛性を増加させることができる。これにより、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力の偏りに起因する可動側鏡板部(36)の変形(具体的には、可動側鏡板部(36)のうち吸入領域(SR)の反対側に位置する部分の変形)を抑制することができる。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記補強リブ(39)は、上記可動側鏡板部(36)の周縁に沿って形成されていることを特徴とするスクロール圧縮機である。
上記第2の発明では、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力の偏りに起因する可動側鏡板部(36)の変形の量は、可動側鏡板部(36)の中心軸から周縁へ向かうに連れて大きくなる傾向にある。したがって、可動側鏡板部(36)の周縁に沿って補強リブ(39)を形成することにより、可動側鏡板部(36)の周縁部のうち吸入領域(SR)の反対側に位置する部分(すなわち、可動側鏡板部(36)の変形量が最大となる傾向にある部分)の剛性を増加させることができる。これにより、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力の偏りに起因する可動側鏡板部(36)の変形を効果的に抑制することができる。
第3の発明は、上記第2の発明において、上記補強リブ(39)は、上記固定スクロール(31)側に突出するように形成され、上記固定スクロール(31)は、上記補強リブ(39)と対向する部分に、該補強リブ(39)を収容する収容溝(34a)が設けられていることを特徴とするスクロール圧縮機である。
上記第3の発明では、固定スクロール(31)のうち補強リブ(39)と対向する部分に収容溝(34a)が設けられている。
第1の発明によれば、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力の偏りに起因する可動側鏡板部(36)の変形(具体的には、可動側鏡板部(36)のうち吸入領域(SR)の反対側に位置する部分の変形)を抑制することができるので、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)との間の気密性の低下を抑制することができ、その結果、スクロール圧縮機(10)の運転効率を向上させることができる。
第2の発明によれば、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力の偏りに起因する可動側鏡板部(36)の変形を効果的に抑制することができるので、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)との間の気密性の低下を効果的に抑制することができ、その結果、スクロール圧縮機(10)の運転効率を効果的に向上させることができる。
第3の発明によれば、固定スクロール(31)のうち補強リブ(39)と対向する部分に収容溝(34a)を設けることにより、固定スクロール(31)と補強リブ(39)との接触を回避することができる。
図1は、実施形態のスクロール圧縮機の縦断面図である。 図2は、実施形態のスクロール圧縮機の要部の部分縦断面図である。 図3は、圧縮機構の横断面図である。 図4は、圧縮機構の横断面図である。 図5は、可動スクロールの平面図である。 図6は、可動スクロールの縦断面図ある。 図7は、可動側鏡板部の変形について説明するためのグラフである。
以下、実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
(スクロール圧縮機)
図1は、実施形態によるスクロール圧縮機(10)の構成例を示している。スクロール圧縮機(10)は、例えば、蒸気圧縮式の冷媒回路(図示を省略)に設けられ、冷媒(流体)を圧縮するものである。このような冷媒回路では、スクロール圧縮機(10)で圧縮された冷媒が、凝縮器で凝縮して減圧機構で減圧され、その後、蒸発器で蒸発してスクロール圧縮機(10)に吸入される。スクロール圧縮機(10)は、ケーシング(20)と、圧縮機構(30)と、電動機(40)と、駆動軸(45)と、下部軸受部材(49)とを備えている。
〈ケーシング〉
ケーシング(20)は、両端が閉塞された縦長の円筒状に形成されている。ケーシング(20)内には、上側から順に圧縮機構(30)と電動機(40)とが収容されている。また、ケーシング(20)には、吸入管(21)と吐出管(22)とが設けられている。吸入管(21)は、ケーシング(20)の上部を軸方向に貫通して圧縮機構(30)に接続され、圧縮機構(30)に低圧の流体(ガス冷媒)を導入する。吐出管(22)は、ケーシング(20)の胴部を径方向に貫通してケーシング(20)の内部空間と連通し、ケーシング(20)内の流体(ガス冷媒)をケーシング(20)外に導出する。また、ケーシング(20)の底部には、潤滑油が貯留される油溜部(23)が設けられている。
〈圧縮機構〉
圧縮機構(30)は、ケーシング(20)内に収容されている。圧縮機構(30)は、吸入管(21)を経由して導入された流体を圧縮してケーシング(20)内に吐出するように構成されている。圧縮機構(30)の構成については、後で詳しく説明する。
〈電動機〉
電動機(40)は、ケーシング(20)内に収容され、圧縮機構(30)の下側に配置されている。電動機(40)は、固定子(41)と回転子(42)とを有している。固定子(41)は、円筒状に形成されてケーシング(20)に固定される。また、固定子(41)の外周面には、固定子(41)を軸方向に貫通するコアカット(図示を省略)が設けられている。回転子(42)は、円筒状に形成され、固定子(41)の内周に回転可能に挿通されている。また、回転子(42)の内周には、駆動軸(45)が挿通されて固定されている。
〈駆動軸〉
駆動軸(45)は、ケーシング(20)内を軸方向(上下方向)に延び、圧縮機構(30)と電動機(40)とを連結している。駆動軸(45)は、主軸部(46)と偏心軸部(47)とカウンタウェイト部(48)とを有している。主軸部(46)は、ケーシング(20)の軸方向(上下方向)に延び、その下端部が油溜部(23)に浸漬されている。偏心軸部(47)は、主軸部(46)の上端に設けられている。また、偏心軸部(47)は、その外径が主軸部(46)の外径よりも小径に形成され、その軸心が主軸部(46)の軸心に対して所定距離だけ偏心している。カウンタウェイト部(48)は、主軸部(46)から径方向外方に突出し、回転時の動的バランスをとるように構成されている。
〈下部軸受部材〉
下部軸受部材(49)は、ケーシング(20)内において電動機(40)の下方に設けられている。また、下部軸受部材(49)は、その中央部に貫通孔が形成され、その貫通孔に駆動軸(45)の主軸部(46)が挿通されている。そして、下部軸受部材(49)は、駆動軸(45)の主軸部(46)を回転可能に支持している。
〈圧縮機構の詳細〉
次に、図2〜図6を参照して、圧縮機構(30)の構成について詳しく説明する。圧縮機構(30)は、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)とハウジング(50)とを有している。なお、図2は、スクロール圧縮機(10)の要部(圧縮機構(30))を拡大して示した縦断面図である。図3および図4は、図2のIII−III線における圧縮機構(30)の横断面図である。図5は、可動スクロール(35)の上面図である。図6は、図5のVI−VI線における可動スクロール(35)の縦断面図である。なお、図3および図4では、後述する吸入領域(SR)にドット模様が付されている。また、図4では、後述する油溝(60)と補強リブ(39)と収容溝(34a)の図示が省略されている。
《固定スクロール》
固定スクロール(31)は、固定側鏡板部(32)と、固定側ラップ(33)と、外周壁部(34)とを有している。固定側鏡板部(32)は、平板状(具体的には、円板状)に形成されている。固定側ラップ(33)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、固定側鏡板部(32)の前面(図2における下面)から突出している。外周壁部(34)は、固定側ラップ(33)の周囲を囲む円筒状に形成され、固定側鏡板部(32)の前面から突出している。固定側ラップ(33)の突端面(図2における下面)および外周壁部(34)の突端面は、面一状に形成されている。
《可動スクロール》
可動スクロール(35)は、可動側鏡板部(36)と、可動側ラップ(37)と、ボス部(38)とを有している。可動側鏡板部(36)は、平板状(具体的には、円板状)に形成されている。可動側ラップ(37)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、可動側鏡板部(36)の前面(図2における上面)から突出している。また、可動側鏡板部(36)の前面は、固定スクロール(31)の外周壁部(34)の突端面および固定側ラップ(33)の突端面と摺接し、可動側ラップ(37)の突端面(図2における上面)は、固定側鏡板部(32)の前面と摺接する。ボス部(38)は、円筒状に形成され、可動側鏡板部(36)の背面(図2における下面)の中央部に配置されている。そして、ボス部(38)には、駆動軸(45)の偏心軸部(47)が摺動可能に挿入されている。
《圧縮機構の構造》
圧縮機構(30)では、固定側ラップ(33)の巻き数と可動側ラップ(37)の巻き数とが互いに異なる非対称渦巻き構造となっている。具体的には、図4に示すように、固定側ラップ(33)の巻き数が可動側ラップ(37)の巻き数よりも多く、固定側ラップ(33)の渦巻き終端部が可動側ラップ(37)の渦巻き終端部の近傍に位置している。なお、図4において二点鎖線で示すように、固定側ラップ(33)のうち最外周側の部分は、外周壁部(34)と一体に形成されている。
《流体室》
また、圧縮機構(30)では、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)とが噛み合わされて、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)との間に流体室(S)が形成されている。流体室(S)には、複数の圧縮室(S1)と接続室(S2)とが形成されている。圧縮室(S1)は、固定側ラップ(33)と可動側ラップ(37)との間に挟まれた空間であって、流体を圧縮するための空間である。接続室(S2)は、流体室(S)の渦巻き終端部に相当する空間(すなわち、流体室(S)における吸入位置に位置する空間)であって、圧縮室(S1)と後述する吸入ポート(P1)とを繋ぐための空間である。
なお、以下では、固定側ラップ(33)の内周側であって可動側ラップ(37)の外周側に位置する圧縮室(S1)を「A室(S1)」と記載し、固定側ラップ(33)の外周側であって可動側ラップ(37)の内周側に位置する圧縮室(S1)を「B室(S1)」と記載する。
また、図3は、複数の圧縮室(S1)のうち最外周側に位置するB室(S1)が閉じ切り状態となる第1閉じ切り時点(すなわち、最外周側に位置するB室(S1)において流体の圧縮が開始される時点)における状態を示している。図3では、複数の圧縮室(S1)のうち最外周側に位置するA室(S1)と接続室(S2)に吸入圧力が作用することになる。
また、図4は、複数の圧縮室(S1)のうち最外周側に位置するA室(S1)が閉じ切り状態となる第2閉じ切り時点(すなわち、最外周側に位置するA室(S1)において流体の圧縮が開始される時点)における状態を示している。図4では、複数の圧縮室(S1)のうち最外周側に位置するB室(S1)と接続室(S2)に吸入圧力が作用することになる。
なお、図4に示した状態は、固定スクロール(31)に対して可動スクロール(35)を図3に示した状態から180°公転させたときの状態に相当する。また、図3では、第2閉じ切り時点における可動側ラップ(37)の渦巻き終端部(外周側端部)の位置が二点鎖線で示されている。一方、図4では、第1閉じ切り時点における可動側ラップ(37)の渦巻き終端部(外周側端部)の位置が二点鎖線で示されている。
《吸入領域》
なお、非対称渦巻き構造を有する圧縮機構(30)では、流体室(S)における吸入位置(接続室(S2)の位置)が一箇所(具体的には、可動側ラップ(37)の渦巻き終端部の近傍)に集約されており、その吸入位置から吸入された流体が圧縮室(S1)において圧縮されることになる。そのため、可動スクロール(35)の偏心回転運動中、流体室(S)のうち吸入位置の近傍(すなわち、可動側ラップ(37)の渦巻き終端部の近傍)に位置する領域には、常に吸入圧力が作用することになる。すなわち、流体室(S)には、可動スクロール(35)の偏心回転運動中に常に吸入圧力が作用する吸入領域(SR)が偏在している。吸入領域(SR)は、可動側ラップ(37)の渦巻き終端部の近傍に位置している。
具体的には、吸入領域(SR)は、図3および図4においてドット模様を付した領域であって、流体室(S)のうち第1閉じ切り時点(図3)において吸入圧力が作用する領域(図3において接続室(S2)および最外周側に位置するA室(S1)となっている領域)と、流体室(S)のうち第2閉じ切り時点(図4)において吸入圧力が作用する領域(図4において接続室(S2)および最外周側に位置するB室(S1)となっている領域)とが重なり合う領域である。
《スラスト摺動面》
また、圧縮機構(30)では、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)とが噛み合わされて流体室(S)が形成されるとともに、流体室(S)の周囲で固定スクロール(31)と可動スクロール(35)とが圧接してスラスト摺動面が構成されている。具体的には、可動スクロール(35)の可動側鏡板部(36)の前面のうち可動側ラップ(37)の外周側の領域が、固定スクロール(31)と摺接する可動側摺接面を構成し、固定スクロール(31)の固定側ラップ(33)の前面および外周壁部(34)の前面のうち固定側ラップ(33)の最外周縁に沿う領域が、可動スクロール(35)の可動側摺接面と摺接する固定側摺接面を構成している。
《ポート》
また、固定スクロール(31)には、吸入室(S1)に流体を吸入するための吸入ポート(P1)と、圧縮室(S1)において圧縮された流体を吐出するための吐出ポート(P2)と、圧縮途中の圧縮室(S1)と上部空間(S11)とを連通するための中間ポート(P3)とが設けられている。
吸入ポート(P1)は、固定スクロール(31)の外周壁部(34)に設けられている。この例では、吸入ポート(P1)は、外周壁部(34)の背面(図2における上面)から軸方向下方に延びて流体室(S)の渦巻き終端部(すなわち、接続室(S2))と連通している。吸入ポート(P1)には、吸入管(21)の流出端が接続されている。吸入ポート(P1)の内部には、吸入管(21)の流出端を開閉する吸入逆止弁(V1)が設けられている。
吐出ポート(P2)は、固定スクロール(31)の固定側鏡板部(32)の中心部に設けられている。この例では、吐出ポート(P2)は、固定側鏡板部(32)の中心部を軸方向に貫通して流体室(S)の渦巻き始端部と連通している。また、固定側鏡板部(32)の背面側(図2における上側)の中央部には、高圧チャンバ(S30)が設けられている。高圧チャンバ(S30)には、吐出ポート(P2)が開口している。また、高圧チャンバ(S30)の中央部には、吐出ポート(P2)を開閉する吐出逆止弁(V2)が設けられている。なお、高圧チャンバ(S30)は、固定スクロール(31)およびハウジング(50)に設けられた吐出通路(図示を省略)を通じて下部空間(S12)と連通している。
中間ポート(P3)は、固定スクロール(31)の固定側鏡板部(32)に設けられている。中間ポート(P3)は、固定側鏡板部(32)を貫通して上部空間(S11)と流体室(S)とを連通している。具体的には、中間ポート(P3)は、流体室(S)のうち所定の容積となった中間圧状態の圧縮室(S1)に開口するように形成されている。また、固定側鏡板部(32)の背面には、中間ポート(P3)を開閉する中間逆止弁(V3)が設けられている。
《油溝》
また、固定スクロール(31)には、油溝(60)が設けられている。油溝(60)は、固定スクロール(31)の固定側摺接面(すなわち、可動側鏡板部(36)の前面のうち可動側ラップ(37)の外周側の領域と摺接する部分)に設けられている。なお、この例では、油溝(60)は、固定スクロール(31)の固定側摺接面のうち吸入領域(SR)の外周側に位置する領域を避けて周方向に延びるC字状に形成されている。また、油溝(60)には、ケーシング(20)内に貯留された高圧の潤滑油(すなわち、圧縮機構(30)から吐出される流体の圧力と同等の圧力を有する潤滑油)が供給される。油溝(60)への給油については、後で詳しく説明する。
《補強リブ》
また、可動スクロール(35)の可動側鏡板部(36)には、補強リブ(39)が設けられている。補強リブ(39)は、可動側鏡板部(36)の変形(軸方向における変形)を低減することができるように構成され、可動側鏡板部(36)のうち固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を挟んで吸入領域(SR)の反対側に位置する部分に設けられている。
なお、この例では、固定スクロール(31)の中心軸(Q1)は、駆動軸(45)の主軸部(46)の軸心と一致している。また、「固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を挟んで吸入領域(SR)の反対側」とは、固定スクロール(31)の中心軸(Q1)と吸入領域(SR)の横断面の図心(図3および図4に示す断面の図心、以下、横断面図心(G)と記載)とを通過する直線を「第1基準線(X)」とし、固定スクロール(31)の中心軸(Q1)および第1基準線(X)と直交する直線を「第2基準線(Y)」とした場合に、吸入領域(SR)の横断面図心(G)から視て第2基準線(Y)よりも遠い側(図3における第2基準線(Y)の左側)のことを意味している。
この例では、可動スクロール(35)の公転方向(図3における時計回り方向)を正回転方向とし、正回転方向の逆方向(図3における反時計回り方向)を負回転方向とし、固定スクロール(31)の中心軸(Q1)から径方向に延びて吸入領域(SR)の横断面図心(G)を通過する半直線を「第1半直線(L1)」とし、第1半直線(L1)を固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を軸として正回転方向に第1角度(θa)だけ回転させて得られる半直線を「第2半直線(L2)」とした場合、補強リブ(39)は、可動側鏡板部(36)のうち固定スクロール(31)において第2半直線(L2)を中心線として正回転方向および負回転方向に所定の角度だけ広がる領域の部分と摺接する部分に設けられている。なお、第1角度(θa)は、例えば、180°±30°以内の範囲内の角度(図3では、180°)に設定されている。第1角度(θa)については、後で詳しく説明する。
具体的には、固定スクロール(31)に対して可動スクロール(35)が所定位置に位置しているとき(この例では、図3に示した第1閉じ切り時点)の第2半直線(L2)と可動側鏡板部(36)の外周縁との交点を「基準交点(R)」とし、可動スクロール(35)の中心軸(Q2)から径方向に延びて基準交点(R)を通過する半直線を「第3半直線(L3)」とした場合、補強リブ(39)は、可動側鏡板部(36)のうち第3半直線(L3)を中心線として正回転方向および負回転方向に第2角度(θb)だけ広がる領域の部分に設けられている。なお、この例では、可動スクロール(35)の中心軸(Q2)は、駆動軸(45)の偏心軸部(47)の軸心と一致している。また、この例(図3)では、第2角度(θb)は、60°に設定されている。
また、この例では、補強リブ(39)は、可動側鏡板部(36)の周縁に沿うように形成されている。具体的には、補強リブ(39)は、可動側鏡板部(36)の周縁に沿って第3半直線(L3)から正回転方向および負回転方向に第2角度(θb)だけ延びる円弧状に形成されている。
さらに、この例では、補強リブ(39)は、固定スクロール(31)側およびハウジング(50)側の両方に突出するように形成されている。具体的には、補強リブ(39)は、第1凸部(39a)と第2凸部(39b)とによって構成されている。第1および第2凸部(39a,39b)は、可動側鏡板部(36)の周縁に沿う円弧状に形成され、第1凸部(39a)は、可動側鏡板部(36)の前面の周縁部から固定スクロール(31)へ向けて突出し、第2凸部(39b)は、可動側鏡板部(36)の背面の周縁部からハウジング(50)へ向けて突出している。
《収容溝》
また、固定スクロール(31)の固定側摺接面のうち可動スクロール(35)の補強リブ(39)と対向する部分には、収容溝(34a)が設けられている。収容溝(34a)は、補強リブ(39)の固定スクロール(31)側に突出する部分(すなわち、第1凸部(39a))を収容するように構成されている。具体的には、収容溝(34a)は、平面視において可動スクロール(35)の偏心回転運動により描かれる第1凸部(39a)の外形の包絡線よりも大きい円弧形状に形成され、その深さが第1凸部(39a)の突出高さ(軸方向長さ)よりも長くなっている。
〈ハウジング〉
ハウジング(50)は、ケーシング(20)内に固定され、ケーシング(20)の内部空間を軸方向に2つの空間に区画している。ハウジング(50)の上側の空間が上部空間(S11)を構成し、ハウジング(50)の下側の空間が下部空間(S12)を構成している。具体的には、ハウジング(50)は、その中央部が下方に膨出する厚めの平板状(皿状)に形成され、その外周面がケーシング(20)の内周面と全周に亘って密着している。例えば、ハウジング(50)は、焼き嵌めによりケーシング(20)に固定されている。
上部空間(S11)には、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)とが配置されている。具体的には、固定スクロール(31)は、ハウジング(50)の上面に固定され、可動スクロール(35)は、固定スクロール(31)とハウジング(50)との間に配置されて、固定スクロール(31)と噛み合わされている。下部空間(S12)には、電動機(40)が配置されている。
また、ハウジング(50)には、可動側鏡板部(36)の背面に面する背圧室(S50)が設けられている。背圧室(S50)は、その圧力(具体的には、背圧室(S50)内の流体の圧力)によって可動側鏡板部(36)を固定スクロール(31)に押し付けるための空間である。この例では、背圧室(S50)は、可動側鏡板部(36)の背面に面する第1および第2背圧室(S51,S52)によって構成されている。具体的には、ハウジング(50)には、中央凹部(51)と、環状凹部(52)と、主軸受部(53)とが設けられている。
《中央凹部(第1背圧室)》
中央凹部(51)は、ハウジング(50)の中央部に設けられて下方に凹陥し、その内部空間(具体的には、可動側鏡板部(36)と中央凹部(51)とに囲まれた空間)が第1背圧室(S51)を構成している。第1背圧室(S51)には、可動スクロール(35)のボス部(38)が収容されている。なお、第1背圧室(S51)は、ハウジング(50)に設けられた排油通路(図示を省略)を通じて下部空間(S12)と連通している。
《環状凹部(第2背圧室)》
環状凹部(52)は、ハウジング(50)の外周部(中央凹部(51)の周囲)に設けられて下方に凹陥し、環状凹部(52)の内部空間(具体的には、可動側鏡板部(36)と環状凹部(52)との間に囲まれた空間)が第2背圧室(S52)を構成している。第2背圧室(S52)は、固定スクロール(31)とケーシング(20)との間の隙間を通じて上部空間(S11)と連通している。
《主軸受部》
主軸受部(53)は、ハウジング(50)の中央部を軸方向に貫通している。主軸受部(53)には、駆動軸(45)の主軸部(46)が挿通されている。そして、主軸受部(53)は、駆動軸(45)の主軸部(46)を回転可能に支持している。
《シールリング》
また、ハウジング(50)の中央凹部(51)と環状凹部(52)との間には、シールリング(54)が設けられている。シールリング(54)は、可動側鏡板部(36)の背面と摺接し、可動側鏡板部(36)とハウジング(50)との間の隙間をシールする。このような構成により、シールリング(54)は、可動スクロール(35)の可動側鏡板部(36)の背面に面する背圧室(S50)を第1背圧室(S51)と第2背圧室(S52)とに区画している。
《キー溝とオルダム継手》
また、可動側鏡板部(36)の背面には、キー溝(36a)が設けられている。そして、環状凹部(52)の内部空間(すなわち、第2背圧室(S52))には、オルダム継手(55)が設けられている。オルダム継手(55)は、可動側鏡板部(36)の背面に設けられたキー溝(36a)と、ハウジング(50)に設けられたキー溝(図示を省略)とに係合し、可動スクロール(35)の自転を規制するように構成されている。
〈給油通路〉
また、駆動軸(45)には、軸内給油通路(C0)が設けられ、ハウジング(50)には、第1給油通路(C1)と第2給油通路(C2)とが設けられ、固定スクロール(31)には、第3給油通路(C3)と第4給油通路(C4)と第5給油通路(C5)とが設けられている。
軸内給油通路(C0)は、駆動軸(45)の下端から上端まで軸方向に延びている。すなわち、軸内給油通路(C0)は、その下端が油溜部(23)に開口し、その上端が駆動軸(45)の偏心軸部(47)と可動スクロール(35)のボス部(38)との間の空間に開口している。第1給油通路(C1)は、中央凹部(51)から径方向外方へ向けてハウジング(50)を径方向に貫通している。また、第1給油通路(C1)は、その外周端がケーシング(20)の周壁によって閉塞されている。第2給油通路(C2)は、第1給油通路(C1)と交差するようにハウジング(50)を軸方向に貫通している。また、第2給油通路(C2)には、下側から上側へ向けてスクリュー部材(70)が挿入され、第2給油通路(C2)の下端がスクリュー部材(70)の頭部によって閉塞されている。
第3給油通路(C3)は、固定スクロール(31)の外周壁部(34)を軸方向に貫通し、ハウジング(50)の第2給油通路(C2)と連通している。また、第3給油通路(C3)は、その上端が第1封止部材(71)によって閉塞されている。第4給油通路(C4)は、第3給油通路(C3)と交差するように固定スクロール(31)の外周壁部(34)の外周面から内周へ向けて径方向に延びている。また、第4給油通路(C4)は、その基端が第2封止部材(72)によって閉塞されている。第5給油通路(C5)は、油溝(60)から第4給油通路(C4)まで延びている。
〈スクロール圧縮機の運転動作〉
次に、スクロール圧縮機(10)の運転動作について説明する。電動機(40)を作動させると、圧縮機構(30)の可動スクロール(35)が駆動軸(45)によって駆動される。可動スクロール(35)は、オルダム継手(55)によって自転を規制されつつ、駆動軸(45)の主軸部(46)の軸心を中心として偏心軸部(47)の偏心量を半径とする旋回軌道上を公転する。可動スクロール(35)が公転(偏心回転運動)を行うと、吸入管(21)から流出した流体(ガス冷媒)が吸入ポート(P1)と接続室(S2)とを順に通過して圧縮室(S1)に吸入される。そして、可動スクロール(35)が公転に伴って圧縮室(S1)の容積が次第に減少して圧縮室(S1)内の流体が圧縮される。圧縮室(S1)の容積が所定の容積となると(すなわち、圧縮室(S1)内の流体が中間圧状態となると)、その圧縮室(S1)内の中間圧の流体の一部が中間ポート(P3)を通じて上部空間(S11)へ流出する。圧縮室(S1)の容積が最小の容積となると(すなわち、圧縮室(S1)内の流体が高圧状態となると)、その圧縮室(S1)の高圧の流体が固定スクロール(31)の中心部に設けられた吐出ポート(P2)を通じて高圧チャンバ(S30)へ吐出される。高圧チャンバ(S30)に流入した高圧の流体は、固定スクロール(31)およびハウジング(50)に設けられた吐出通路(図示を省略)を通じて下部空間(S12)へ流出する。下部空間(S12)に流入した高圧の流体は、吐出管(22)を通じてケーシング(20)の外部へ吐出される。
〈スクロール圧縮機における給油動作〉
次に、スクロール圧縮機(10)における給油動作について説明する。下部空間(S12)には圧縮機構(30)から吐出された高圧の流体(ガス冷媒)が供給されるので、下部空間(S12)内に位置する油溜部(23)に貯留された潤滑油の圧力は、圧縮機構(30)から吐出された流体の圧力と同等の圧力(すなわち、高圧状態)となっている。そして、油溜部(23)に貯留された高圧の潤滑油は、駆動軸(45)の軸内給油通路(C0)を下端から上端に向けて流れて駆動軸(45)の偏心軸部(47)と可動スクロール(35)のボス部(38)との間の空間へ流出する。偏心軸部(47)とボス部(38)との間の空間に流入した高圧の潤滑油は、ボス部(38)と偏心軸部(47)との摺動面を潤滑して第1背圧室(S51)へ流出する。第1背圧室(S51)に流入した高圧の潤滑油は、その一部がハウジング(50)に設けられた排油通路(図示を省略)を通じて下部空間(S12)へ排出され、その残部が第1〜第5給油通路(C1〜C5)を通じて油溝(60)に供給される。油溝(60)に供給された高圧の潤滑油は、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)とのスラスト摺動面(固定側摺接面および可動側摺接面)に広がって油膜を形成し、スラスト摺動面の潤滑とシール効果(すなわち、流体室(S)と第2背圧室(S52)との隔離)に利用される。
〈可動側鏡板部に作用する力〉
次に、可動側鏡板部(36)に作用する力について説明する。可動側鏡板部(36)の背面には、背圧室(第1および第2背圧室(S51,S52))が面し、可動側鏡板部(36)の前面には、油溝(60)と流体室(S)とが面している。
《流体室の圧力》
流体室(S)では、接続室(S2)の圧力(具体的には、接続室(S2)内の流体の圧力)および接続室(S2)と連通している圧縮室(S1)の圧力(具体的には、圧縮室(S1)内の流体の圧力)が吸入圧力と同等の圧力(すなわち、低圧状態)となっており、閉じ切られて接続室(S2)と連通していない圧縮室(S1)の圧力がその圧縮室(S1)の容積に応じた圧力(すなわち、低圧よりも高い圧力状態)となっている。
また、流体室(S)が可動側鏡板部(36)の前面に面しているので、可動側鏡板部(36)の前面には、流体室(S)の圧力が作用する。これにより、可動側鏡板部(36)には、可動側鏡板部(36)を固定スクロール(31)から離す方向に作用する力(離反力)が加えられる。
《背圧室の圧力》
第1背圧室(S51)は、ハウジング(50)に設けられた排油通路(図示を省略)を通じて下部空間(S12)と連通している。下部空間(S12)には、圧縮機構(30)から吐出された高圧の流体(ガス冷媒)が供給されている。したがって、第1背圧室(S51)の圧力(具体的には、第1背圧室(S51)内の流体の圧力)は、圧縮機構(30)から吐出された流体の圧力と同等の圧力(すなわち、高圧状態)となっている。
第2背圧室(S52)は、固定スクロール(31)とケーシング(20)との間の隙間を通じて上部空間(S11)と連通している。上部空間(S11)には、中間ポート(P3)を通じて圧縮途中の流体(すなわち、中間圧の流体)が供給されている。したがって、第2背圧室(S52)の圧力(具体的には、第2背圧室(S52)内の流体の圧力)は、圧縮途中の流体の圧力と同等の圧力(すなわち、中間圧状態)となっている。
また、第1背圧室(S51)および第2背圧室(S52)が可動側鏡板部(36)の背面に面しているので、可動側鏡板部(36)の背面には、第1背圧室(S51)の圧力(高圧圧力)および第2背圧室(S52)の圧力(中間圧圧力)が作用する。これにより、可動側鏡板部(36)には、可動側鏡板部(36)を固定スクロール(31)に押し付ける方向に作用する力(押し付け力)が加えられる。このように、圧縮機構(30)では、背圧室(S50)の圧力によって押し付け力を発生させることができるので、固定スクロール(31)からの可動スクロール(35)の離反を防止することができる。
《油溝の圧力》
油溝(60)には、油溜部(23)に貯留された高圧の潤滑油が供給されている。油溜部(23)に貯留された潤滑油の圧力は、圧縮機構(30)から吐出された流体(ガス冷媒)の圧力と同等の圧力(すなわち、高圧状態)となっている。したがって、油溝(60)の圧力(具体的には、油溝(60)内の潤滑油の圧力)は、圧縮機構(30)から吐出された高圧の流体の圧力と同等の圧力(すなわち、高圧状態)となっている。
また、油溝(60)が可動側鏡板部(36)の前面に面しているので、可動側鏡板部(36)の前面には、油溝(60)の圧力(高圧圧力)が作用する。これにより、可動側鏡板部(36)には、可動側鏡板部(36)を固定スクロール(31)から離す方向に作用する力(離反力)が加えられる。このように、圧縮機構(30)では、油溝(60)の圧力によって離反力を発生させることができるので、可動スクロール(35)の押し付け過剰を防止することができる。
〈可動側鏡板部の変形〉
なお、吸入領域(SR)では、可動スクロール(35)の偏心回転運動中に、可動側鏡板部(36)の前面に吸入圧力(すなわち、低圧圧力)が常に作用することになるので、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力が比較的に小さくなる傾向にある。一方、固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を挟んで吸入領域(SR)の反対側に位置する領域では、可動側鏡板部(36)の前面に、油溝(60)内の潤滑油の圧力(すなわち、高圧圧力)と圧縮室(S1)内の流体の圧力(すなわち、吸入圧力よりも高い圧力)とが作用することになるので、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力が比較的に大きくなる傾向にある。
このように、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力に偏りが生じているので、可動側鏡板部(36)は、吸入領域(SR)に位置する部分が固定スクロール(31)に近づく方向に強く押し付けられるとともに、固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を挟んで吸入領域(SR)の反対側に位置する部分が固定スクロール(31)から離れる方向に強く押し返される傾向にある。すなわち、可動側鏡板部(36)のうち吸入領域(SR)の反対側に位置する部分には、可動側鏡板部(36)を固定スクロール(31)から離れる方向に変形させようとする力が作用することになる。
具体的には、可動側鏡板部(36)に補強リブ(39)が設けられていない場合、図6に示すように、固定スクロール(31)の中心軸(Q1)から径方向に延びて吸入領域(SR)の横断面図心(G)を通過する第1半直線(L1)を、固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を軸として可動スクロール(35)の公転方向に第1角度(θa)だけ回転させて得られる第2半直線(L2)の位置において、可動側鏡板部(36)の変形量(固定スクロール(31)から離れる方向の変形量)が最大となり、第2半直線(L2)の位置から周方向に遠ざかるに連れて可動側鏡板部(36)の変形量が次第に小さくなる傾向にある。なお、可動側鏡板部(36)の変形量が最大となる位置を規定する第1角度(θa)は、スクロール圧縮機(10)の運転条件に応じて定めることが可能である。一般的には、第1角度(θa)は、180°±30°以内の範囲内の角度となる傾向にある。
そして、このような力(可動側鏡板部(36)を固定スクロール(31)から離れる方向に変形させようとする力)が作用して可動側鏡板部(36)が変形すると、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)との間の気密性が低下して固定スクロール(31)と可動スクロール(35)との間の隙間を流れる流体の流量が増加し、その結果、スクロール圧縮機(10)の運転効率(圧縮機構(30)の圧縮効率)が低下してしまうおそれがある。
一方、この実施形態によるスクロール圧縮機(10)では、可動側鏡板部(36)のうち固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を挟んで吸入領域(SR)の反対側に位置する部分に補強リブ(39)が設けられている。そのため、可動側鏡板部(36)のうち吸入領域(SR)の反対側に位置する部分(すなわち、可動側鏡板部(36)を固定スクロール(31)から離れる方向に変形させようとする力が作用する部分)の剛性を増加させることができる。これにより、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力の偏りに起因する可動側鏡板部(36)の変形(具体的には、可動側鏡板部(36)のうち吸入領域(SR)の反対側に位置する部分の変形)を抑制することができる。
〈実施形態による効果〉
以上のように、可動側鏡板部(36)のうち固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を挟んで吸入領域(SR)の反対側に位置する部分に補強リブ(39)を設けることにより、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力の偏りに起因する可動側鏡板部(36)の変形(具体的には、可動側鏡板部(36)のうち吸入領域(SR)の反対側に位置する部分の変形)を抑制することができるので、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)との間の気密性の低下を抑制することができる。これにより、スクロール圧縮機(10)の運転効率を向上させることができる。
なお、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力の偏りに起因する可動側鏡板部(36)の変形の量は、可動側鏡板部(36)の中心軸(Q2)から周縁へ向かうに連れて大きくなる傾向にある。したがって、補強リブ(39)を可動側鏡板部(36)の周縁に沿って形成することにより、可動側鏡板部(36)の周縁部のうち吸入領域(SR)の反対側に位置する部分(すなわち、可動側鏡板部(36)の変形量が最大となる傾向にある部分)の剛性を増加させることができる。これにより、可動側鏡板部(36)の前面に作用する力の偏りに起因する可動側鏡板部(36)の変形を効果的に抑制することができ、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)との間の気密性の低下を効果的に抑制することができる。その結果、スクロール圧縮機(10)の運転効率を効果的に向上させることができる。
また、固定スクロール(31)のうち補強リブ(39)と対向する部分に収容溝(34a)を設けることにより、固定スクロール(31)と補強リブ(39)との接触を回避することができる。
(その他の実施形態)
以上の説明では、補強リブ(39)が固定スクロール(31)側およびハウジング(50)側の両方に突出している場合を例に挙げたが、補強リブ(39)は、固定スクロール(31)側およびハウジング(50)側のいずれか一方のみに突出するように構成されていてもよい。例えば、補強リブ(39)は、第1凸部(39a)を有さずに第2凸部(39b)のみを有していてもよい。この場合、固定スクロール(31)には収容溝(34a)を設けなくてもよい。
また、補強リブ(39)が可動側鏡板部(36)の周縁に沿う円弧状に形成されている場合を例に挙げたが、補強リブ(39)は、可動側鏡板部(36)の周縁よりも内周側に設けられていてもよいし、円弧形状とは異なる形状に形成されていてもよい。
また、以上の説明では、第2背圧室(S52)の圧力が圧縮途中の流体の圧力と同等の圧力(中間圧状態)となっている場合を例に挙げたが、第2背圧室(S52)の圧力は、中間圧状態に限定されない。例えば、第2背圧室(S52)の圧力は、吸入圧力と同等の圧力(低圧状態)となっていてもよい。
また、以上の実施形態を適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、この発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、上述のスクロール圧縮機は、冷媒回路に接続される圧縮機などとして有用である。
10 スクロール圧縮機
20 ケーシング
30 圧縮機構
31 固定スクロール
32 固定側鏡板部
33 固定側ラップ
34 外周壁部
34a 収容溝
35 可動スクロール
36 可動側鏡板部
37 可動側ラップ
38 ボス部
39 補強リブ
40 電動機
45 駆動軸
50 ハウジング
60 油溝

Claims (3)

  1. ケーシング(20)と、
    固定側ラップ(33)を有する固定スクロール(31)と、平板状の可動側鏡板部(36)と該可動側鏡板部(36)の前面から突出する可動側ラップ(37)とを有する可動スクロール(35)とを有し、上記ケーシング(20)内に収容され、該固定スクロール(31)と該可動スクロール(35)とが噛み合わされて形成された流体室(S)へ吸入した流体を圧縮して該ケーシング(20)内に吐出する圧縮機構(30)とを備え、
    上記圧縮機構(30)は、上記固定側ラップ(33)の巻き数と上記可動側ラップ(37)の巻き数とが互いに異なる非対称渦巻き構造であり、
    上記圧縮機構(30)には、上記可動側鏡板部(36)の背面に面する空間であってその圧力によって該可動側鏡板部(36)を該固定スクロール(31)に押し付けるための背圧室(S50)が形成され、
    上記固定スクロール(31)は、上記可動側鏡板部(36)の前面のうち上記可動側ラップ(37)の外周側の領域と摺接する部分に、上記ケーシング(20)内に貯留された高圧の潤滑油が供給される油溝(60)が設けられ、
    上記流体室(S)のうち上記可動スクロール(35)の偏心回転運動中に常に吸入圧力が作用する領域が吸入領域(SR)であり、
    上記可動側鏡板部(36)は、上記固定スクロール(31)の中心軸(Q1)を挟んで上記吸入領域(SR)の反対側に位置する部分に、該可動側鏡板部(36)の変形を低減するための補強リブ(39)が設けられている
    ことを特徴とするスクロール圧縮機。
  2. 請求項1において、
    上記補強リブ(39)は、上記可動側鏡板部(36)の周縁に沿って形成されている
    ことを特徴とするスクロール圧縮機。
  3. 請求項2において、
    上記補強リブ(39)は、上記固定スクロール(31)側に突出するように形成され、
    上記固定スクロール(31)は、上記補強リブ(39)と対向する部分に、該補強リブ(39)を収容する収容溝(34a)が設けられている
    ことを特徴とするスクロール圧縮機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020186710A (ja) * 2019-05-17 2020-11-19 日立グローバルライフソリューションズ株式会社 スクロール圧縮機

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