JP2013238223A5 - - Google Patents
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本発明は、大型低速2ストロークディーゼル機関用のシリンダ潤滑デバイスおよびシリンダ潤滑システムの運転方法に関する。
特に本発明は、共通駆動部により同時に移動する複数のピストンポンプを有する大型低速2ストロークディーゼル機関用のシリンダ潤滑デバイスに関する。
本発明はさらに、機関設計者の仕様ならびに機関の運転条件、負荷、およびユーザの要求に応じたシリンダ油の注油のための油圧作動シリンダ注油装置および運転制御方法に関する。
例えば発電所で用いられ、または船舶の主動力として用いられるクロスヘッド型大型2ストロークディーゼル機関の分野においては、機関のシリンダおよびピストンに特に正確かつ広範な潤滑が必要である。典型的にはこのような機関は最も安価に利用可能なタイプの燃料で動き、それは重油である場合が多い。重油により、例えば燃焼プロセスの間に硫酸を形成する硫黄など、機関にとって有害な大量の粒子がシリンダに導入される。これにより、酸性(高pH)燃焼ガス成分を補償するためにpH値が低いシリンダ潤滑油をシリンダライナの内表面に適用することにより、シリンダ壁を硫酸の侵食から守る必要性が生じる。シリンダ潤滑油は比較的高コストで、シリンダライナの内表面に適用されるシリンダ潤滑油は、機関の運転中に消費される、すなわち機関の運転中に継続的に新たに供給することが必要である。シリンダ潤滑油の消費は、クロスヘッド型大型低速2ストロークディーゼル機関の運転において重要な要因である。したがって、機関シリンダおよびピストンの効率的かつ正確な潤滑を行い、後者が適切に保護され、高コストのシリンダ潤滑油の消費が最小限になるようにする必要がある。
名目指標注油率で運転する機関においてシリンダ潤滑油の消費によりかかる費用は大きく、特にボアが大きい(ボアが600〜1200cmの)機関では、潤滑油の一回の注入あたりの注油量がわずかに減少しただけでも、大型機関の通常の使用時の潤滑油の消費量を大きく節減できる。潤滑流体の注入は、燃料特性だけでなく機関負荷および機関状態にしたがって注油される。燃料注入のタイミングは通常、機関の回転との関係で定期的に、機関ピストンが潤滑クイルを通過したときに注入が行われるように定められる。注入クイルは、機関シリンダ円周上に均一に、例えば燃焼ガスの膨張終了時など、機関サイクルの所定の段階における機関ピストンの位置に対応する位置に分布する。機関ピストンがクイルのレベルにあるときに潤滑流体が注入される。そうすることにより、(ピストンより上で注入された場合に)高コストの潤滑流体を燃焼させるリスク、および(潤滑流体がピストンの下に入った場合に)潤滑流体を流出させるリスクが減少するからである。
したがって、良好なピストン/ライナ摩耗率を維持し、機関オーバーホールの間隔を維持または改善しながら、シリンダ潤滑油の注油量を減少させることが、本発明の目的である。潤滑油の消費量の減少により排気量も低くなるため、環境にも良い影響がある。
独国特許第19743955号は、請求項1のプリアンブルによるシリンダ潤滑デバイスを開示する。このシリンダ潤滑デバイスは、一回の可変長注入ストロークを行い、その後、注油プランジャが再びその開始位置に戻る。可変長ストロークは、注油プランジャが行いうるフルストロークに達することはほとんどなく、したがって注油プランジャ、注油シリンダおよびアクチュエータ等の部品の摩耗は、注入ストロークの第一部分に集中する。
典型的な注油装置は、機関の四回転毎(または五回転または六回転毎など)に、数か所の注入ポイントまたはクイルを介してシリンダに特定量の潤滑油を注入するという原理にもとづく。これは、典型的な注油装置が注入後に次の潤滑剤注入の準備が整うまでにかかる最低時間に左右されることが多い。空気圧システムおよび従来の油圧システムでは、この時間は、注入前に注入チャンバを補充しうる速度の限界ならびに注入の注油量および速度の制御の限界により決定される。したがって、ある程度余分な潤滑油を伴って注油が行われるため、潤滑油の消費量の増加が生じる。
他方で、より少ない消費が望ましい場合には、効果が最適となるちょうど正しい位置および時間にシリンダ潤滑油がシリンダに注入されねばならない。これは、今日の従来の注油装置では必ずしも可能ではない。
こうしたことを背景に、先行技術の問題を克服しまたは少なくとも緩和する注油装置および注油装置を有する機関を提供することが本発明の目的である。代替的なシリンダ注油装置およびシリンダ注油装置の運転方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
この目的は、シリンダライナの内表面上を摺動するピストンリングを有する往復ピストンを各シリンダ内に有する大型低速2ストロークディーゼルマルチシリンダ機関用のシリンダ潤滑デバイスを提供することにより達成され、該シリンダ潤滑デバイスが、ピストンの一回の往復または複数回の往復ごとに、シリンダの円周のまわりの等しいレベルに分布した複数の注入ポイントを介してシリンダライナの内表面に正確な注油量のシリンダ潤滑油を提供し、該シリンダ潤滑デバイスが、注油シリンダ内で開始位置(S)と終了位置(E)との間を摺動可能な注油プランジャを有する複数のピストンポンプと、全ての注油プランジャを同時に駆動するためのリニアアクチュエータを含む共通駆動部とを含み、該注油プランジャが、開始位置(S)と終了位置(E)との間の所定のフルストロークを有し、注油シリンダの直径および注油プランジャのフルストロークは、注油プランジャが開始位置に戻されることが必要になる前に、注油プランジャが開始位置から終了位置に向かう方向に部分ストロークで複数回移動させられうるように、注油プランジャを最大ストロークの一部分にわたり移動させることにより、正確な注油量が送達されるようなものである。
フルストロークの一部分が一回の分量に対応するように注油シリンダの直径およびフルストロークの長さ、すなわち押退け容積を選択することにより、戻り/補充ストロークが必要になる前に、複数の部分ストロークによりシリンダデバイスを運転することが可能になる。したがって、注入方向のフルストロークは複数の部分ストロークによって達成されるが、注油プランジャは常に両方向にフルストロークを行う。したがって、注油プランジャの摩耗、注油シリンダの摩耗ならびにアクチュエータおよび駆動機構の摩耗が、ストロークの全長にわたり均一に分散されるため、シリンダ潤滑デバイスの寿命が延長される。
一実施形態においては、共通駆動部には、注油プランジャを開始位置から終了位置に向かう方向に移動させるための第一油圧または電動アクチュエータを含む、複動式油圧または電動アクチュエータが含まれ、注油プランジャを終了位置から開始位置に向かう方向に移動させるための第二油圧または電動アクチュエータが含まれる。
戻り/補充ストロークのためのアクチュエータを提供することにより、先行技術のシリンダ潤滑デバイスで用いられるコイルばねによるよりも、戻りストロークが速く確実に達成されうる。
一実施形態においては、共通駆動部には、プランジャに接続され、注油シリンダ内の注油プランジャを同時に移動させるように設けられたプランジャコネクタと、注油プランジャを開始位置から終了位置に向かう方向に移動させるための第一油圧リニアアクチュエータおよび注油プランジャを終了位置から開始位置に向かう方向に移動させるための第二油圧リニアアクチュエータを含む複動式リニアアクチュエータとが含まれる。
一実施形態においては、シリンダ潤滑デバイスは、正確な分量のシリンダ潤滑油がシリンダに送達されるべき度に注油プランジャを可変長の部分ストロークにわたり移動させるために第一アクチュエータを稼働させるように構成された電子制御ユニットをさらに含み、該電子制御ユニットは、注油プランジャがその終了位置(E)に達したときに注油プランジャをその開始位置(S)に戻すために第二アクチュエータを稼働させるように構成される。
一実施形態においては、シリンダ潤滑デバイスは、注油シリンダ内の注油プランジャの位置を検出するために設けられ電子制御ユニットと通信する、ポジションセンサをさらに含む。
一実施形態においては、電子制御ユニットは、潤滑油の現在必要な分量を決定し、または潤滑油の現在必要な分量についての情報を受信し、電気制御ユニットは、それに応じて第一アクチュエータを稼働させることにより、決定または受信された潤滑油の必要な分量に対応する距離にわたり、プランジャを部分ストロークで移動させるように構成される。
一実施形態においては、電子制御ユニットは、注油プランジャの部分ストロークの長さを機関運転条件にもとづいて制御するように構成され、注入イベントごとにストロークの長さを機関運転条件に合わせて調節するのが好ましい。
一実施形態においては、電子制御ユニットは、注油プランジャの移動の測定にもとづいて、注油プランジャが前回の部分ストロークでどれくらい移動したかを決定し、電子制御ユニットは、注油プランジャの次のストロークの所望の長さを決定する際に、前回の部分ストロークの所望値からのずれを補償する。
一実施形態においては、シリンダ潤滑デバイスは、第一油圧リニアアクチュエータに接続され第二油圧リニアアクチュエータに接続された油圧弁をさらに含み、該油圧弁が、第一油圧リニアアクチュエータを油圧源に選択的に接続するように構成され、第二油圧リニアアクチュエータを該油圧源に選択的に接続するように構成される。
一実施形態においては、油圧弁は、オン/オフタイプの弁であり、電子制御ユニットは、オン/オフ弁が第一油圧リニアアクチュエータを油圧源に接続する期間の長さを制御することにより、注油プランジャの部分ストロークを制御するように構成される。
一実施形態においては、電子制御ユニットは、注油プランジャがその終了位置(E)に達した時に、第二油圧リニアアクチュエータの動作により注油プランジャがその開始位置(S)に戻されるように、第二油圧リニアアクチュエータを油圧源(P)に接続するようにオン/オフ弁に指示するように構成される。
一実施形態においては、第一油圧リニアアクチュエータが圧力源(P)に接続される一方で第二アクチュエータをタンク(T)に接続し、またはその逆であるように、オン/オフ弁が構成される。
一実施形態においては、油圧弁は比例弁(140)であり、電子制御ユニットが、注油プランジャの部分ストロークでの移動速度のプロフィールの形を調節するように構成される。
一実施形態においては、シリンダ潤滑デバイスは、電子制御ユニットをさらに含み、シリンダ潤滑デバイスは、特定のシリンダ運転条件にもとづいて部分ストロークの長さおよび/または注油プランジャの速度を制御するように構成される。
以上の目的は、複数のシリンダと、各シリンダ内を往復移動可能なピストンであり、少なくとも二つのピストンリングを各ピストンが含む、ピストンと、本明細書に前述したシリンダ潤滑デバイスとを含む、クロスヘッド型大型低速2ストロークディーゼル機関(100)を提供することによっても達成される。
一実施形態においては、電子制御ユニットは、機関制御システム(ECS:engine control system)およびシリンダ潤滑デバイスの制御システムの両方である。
上述の目的は、シリンダライナの内表面上を摺動するピストンリングを有する往復ピストンを各シリンダ内に有する大型低速2ストロークディーゼルマルチシリンダ機関用のシリンダ潤滑デバイスを運転する方法を提供することによっても達成され、該シリンダ潤滑デバイスは、シリンダの一回の往復または複数回の往復ごとに、シリンダの円周のまわりの等しいレベルに分布した複数の注入ポイントを介してシリンダライナの内表面に正確な分量のシリンダ潤滑油を提供し、該シリンダ潤滑デバイスは、注油シリンダ内で開始位置(S)と終了位置(E)との間を摺動可能な注油プランジャを各ピストンポンプが有する複数のピストンポンプであり、開始位置(S)と終了位置(E)との間の注油プランジャの移動がフルストロークを形成する、複数のピストンポンプと、開始位置(S)と終了位置(E)との間で両方向に全ての注油プランジャを同時に駆動するためのリニアアクチュエータを含む共通駆動部とを含み、該方法は、複数のシリンダ油注入イベントを生じさせるために、リニアアクチュエータにより注油プランジャを開始位置(S)から終了位置(E)まで複数の部分ストロークで同時に移動させることと、注油プランジャがその終了位置(E)に達したときに、リニアアクチュエータにより注油プランジャを終了位置(E)から元の開始位置(S)まで一回のフルストロークで同時に移動させることとを含む。
一実施形態においては、該方法は、潤滑油の現在必要な分量を決定または入手することと、決定または受信した潤滑油の必要な分量に対応する距離にわたり注油プランジャを部分ストロークで移動させるようにリニアアクチュエータに指示することとをさらに含む。
一実施形態においては、該方法は、前回の部分ストロークでの注油プランジャの移動を測定することと、次の部分ストロークを移動させるようリニアアクチュエータに指示する際、特に注油プランジャがそのストロークの終端に達したために前回の部分ストロークが足りなかった際に、前回の部分ストロークの所望値からのずれを補償することとをさらに含む。
一実施形態においては、前回の部分ストロークの稼働時間を、達成された部分ストロークの長さと比較することにより、前回実行されたストロークの間の注油プランジャの平均速度が決定され、次の部分ストロークの稼働時間は、決定された前回の部分ストロークの間の注油プランジャの平均速度にもとづく。
一実施形態においては、該方法は、機関運転条件に応じて注油プランジャの部分ストロークの長さを調節することをさらに含む。
一実施形態においては、該方法は、注入イベントごとに注油プランジャの部分ストロークの長さを調節することをさらに含む。
該方法の一実施形態においては、シリンダ潤滑デバイスは、第一油圧リニアアクチュエータに接続され第二油圧リニアアクチュエータに接続された油圧弁を含み、該方法は、第一油圧リニアアクチュエータを油圧源に選択的に接続することを含み、第二油圧リニアアクチュエータを油圧源に選択的に接続することを含む。
一実施形態においては、該方法は、注油プランジャをその全ストロークの長さの一部分にわたり移動させるために第一油圧リニアアクチュエータを加圧することと、注油プランジャがその終了位置(E)に達したときにのみプランジャを戻すために第二油圧リニアアクチュエータを加圧することとをさらに含む。
該方法の一実施形態においては、油圧弁は、オン/オフタイプの弁であり、該方法は、オン/オフ弁が第一油圧リニアアクチュエータを油圧源に接続する期間の長さを制御することにより、注油プランジャの部分ストロークを制御することを含む。
一実施形態においては、該方法は、注入イベントごとに機関運転条件に合わせて調節される連続的に変更可能な長さのストロークでプランジャが移動するように、油圧オン/オフ弁を制御することを含み、オン/オフ弁に時間パルスを提供して潤滑流体の所定の分量に対応する所定の時間オン/オフ弁を開いておくことによる。
上述の目的は、シリンダライナの内表面上を摺動するピストンリングを有する往復ピストンを各シリンダ内に有する大型低速2ストロークディーゼルマルチシリンダ機関用のシリンダ潤滑デバイスを提供することによっても達成され、該シリンダ潤滑デバイスは、シリンダの一回の往復または複数回の往復ごとに、シリンダの円周のまわりの等しいレベルに分布した複数の注入ポイントを介してシリンダライナの内表面に正確な分量のシリンダ潤滑油を提供し、該シリンダ潤滑デバイスは、注油シリンダ内を摺動可能な注油プランジャを各ピストンポンプが有する複数のピストンポンプと、全ての注油プランジャを同時に駆動するためのリニアアクチュエータを含む共通駆動部と、共通駆動部または注油プランジャの位置を検出するために設けられたポジションセンサとを含み、該方法は、注入ストロークの所望の長さを決定することと、注入ストロークの所望の長さにわたり注油プランジャを同時に移動させるようにリニアアクチュエータに指示することと、その後、注油プランジャを補充ストロークで元の方向へ同時に移動させることと、ポジションセンサからの情報により、実行された注入ストロークの実際の長さを決定することと、次の注入ストロークの所望の長さを決定する際に、前回の注入ストロークの所望値からのずれを補償することとを含む。
前回の注入ストロークを測定し、次の注入ストロークを指示する際に補償することにより、精度が高まり、貴重なシリンダ潤滑油の消費を減少させうる。
上述の方法においては、補充ストロークにおいては弾性部材により共通駆動部が駆動されうる。
シリンダ潤滑デバイスは、上述の機関の実施形態のいずれかによる特徴のいずれかを伴って作られればよい。さらに、シリンダ潤滑デバイスは、上述の方法の実施形態のいずれかを実行しうる。
本発明による機関、潤滑デバイスおよび方法のさらなる目的、特徴、利点および特性は、詳細な説明から明らかになる。
本発明の以下の詳細な説明の部分においては、図面に示される例示的実施形態を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
以下の機関の詳細な説明においては、本発明によるシリンダ潤滑デバイスおよび機関シリンダへの潤滑流体注入を制御する方法の詳細な説明を、例示的実施形態により説明する。
本発明は、船または定置発電機関の主推進システムを構成しうるクロスヘッド型の大型2ストロークディーゼル機関100用の機関シリンダ潤滑デバイス1に関する。図6および7を参照すると、機関100は、複数のシリンダ110(図6に一つのシリンダの断面が示される)を有し、典型的には一列に設けられた三〜十四本のシリンダ110を有するが、他のレイアウトまたは数のシリンダ110を有していてもよい。各シリンダ110には、シリンダ110の内表面を形成するシリンダライナ111が提供される。大型2ストローク機関100においては、シリンダ内径(ボア)は典型的に250mm〜1200mmの間である。シリンダライナ111内に摺動可能に設けられた往復ピストン120のストロークの長さは典型的に800〜3000mmの範囲である。したがって、潤滑化すべきシリンダライナ111の表面は数平方メートルでありうる。ピストン120は、ピストンロッド126を介してクロスヘッド124に接続される。クロスヘッド124は、接続ロッド128を介してクランクシャフト130に接続される。
往復ピストン120には、シリンダライナ111の内表面上を摺動する三〜五つの保圧ピストンリング121が提供されるのが典型的である。図6においては、三つのピストンリング121を有するピストンが示される。ライナ111の内表面上に潤滑油膜を提供および維持し、ピストンリング121とライナ111の内表面との間の摩擦を低減し、シリンダライナの内表面を燃焼ガス中の化学的侵食性物質から保護することが、機関のシリンダ潤滑システムの目的である。
シリンダ110の燃焼チャンバでのHFOの燃焼の間に形成される硫酸を中和するためのアルカリ性添加剤を含む潤滑油などのシリンダ潤滑流体が、シリンダライナ111を通って形成されたシリンダライナ潤滑流体ポイントまたはクイル112を介して適用される。シリンダライナ潤滑流体クイルまたは注入ポイント112は単純な排出口(穴)であってもよいし、ノズルまたはインジェクタにより形成されてもよいし、当該技術分野で公知の他の方法で形成されてもよく、一実施形態においては、クイル112には、排気ガスがシリンダ潤滑油に入るのを防ぐ逆止弁が設けられる。典型的には、四〜十二か所または四〜二十か所など、数か所のシリンダライナ潤滑流体クイル112がシリンダライナ111に形成されており、シリンダライナ潤滑流体クイル112は、潤滑流体の等しい適用を確保にするためにライナ111のまわりに等間隔で分布し、等しいレベルに設けられている。
シリンダ110のある領域が多少摩耗しやすい場合には、その領域に対応するシリンダライナ潤滑流体クイル112の密度が、それぞれ増減されうる。注入の後、注入された潤滑流体がピストンリング121によりライナ111上に分配される。
クロスヘッド型大型2ストロークディーゼル機関の構造および運転は、非常に良く知られているため、本明細書の文脈上これ以上の説明を要しないであろう。
図1は、シリンダ潤滑デバイス1の例示的実施形態を示す。シリンダ潤滑デバイス1には、ハウジング10と、ハウジング10に結合された作動デバイス40とが含まれる。
図2a、2b、3、4a〜4cは、断面図において、図1のシリンダ潤滑デバイス1の詳細を示す。いくつかの同一の単動式ピストンポンプが、ハウジング10内に配置されている。各ピストンポンプは、ハウジング10内に形成された注油シリンダ29を含む。図2に選択された断面図においては、注油シリンダ29は見られない。図3および4に選択された断面図においては、一つの注油シリンダ29が見られる。注入チャンバ20が、注入プランジャ30前に形成される。
ピストンポンプは、(注油シリンダ29の長軸に対して直角の断面に見える)円に設けられるのが好ましいが、これは好ましい配置にすぎず、直線もしくは曲線に沿った配置または長方形の配置など、他の配置も同様に用いられうる。
図1、2a、2b、3、4a〜4cに示される実施形態においては、十本のピストンポンプがあり、図1ではハウジング10の上部に形成された十個の注入排出口21によりそれが分かる。好ましい実施形態では、十本のピストンポンプがあるが、例えば二〜十二本など、他の任意の数またはそれ以上であってもよい。
今度はシリンダ潤滑デバイス1の概念図を示す図5を参照すると、それぞれ注油シリンダ29を有する二つのピストンポンプが見える。各注油シリンダ内に、注油プランジャ30が摺動可能に受け取られる。注油プランジャ30は、注入イベントにおいてある量の潤滑流体を注入チャンバ20から機関シリンダ110内に放出し、ある量の潤滑流体を注入チャンバ20に補充するように構成される。したがって、注油プランジャ30は、注油シリンダ29の内壁と(少なくともプランジャヘッド30´で)密封を形成するように設けられ、注油シリンダ29内を摺動可能である。
プランジャコネクタが、注入ストロークのために注油プランジャ30を押すことができ、吸入ストロークのために注油プランジャを引くこともできる共通駆動部の一部を形成するように、注油プランジャ30は全てその一端で、トラストプレートと注油プランジャ30の端部を受け取る凹部を有するフランジとを含むプランジャコネクタ31に接続される。プランジャコネクタ31は、注入チャンバ20の拡張部としてハウジング10内に形成されたコネクタチャンバ32内に設けられる。したがって、プランジャコネクタ31の摺動により、全てのプランジャ30が、それぞれの注油シリンダ20内を同時に摺動する。
プランジャコネクタ31は、摺動可能に設けられた第一ピストン41にも接続され、シリンダが一緒に第一圧力チャンバ35を画定し、これにより第一リニアアクチュエータを形成する。第一圧力チャンバ35は、第一稼働導管60(図2参照)を通じて油圧オン−オフ弁40でありうる弁手段と流体接続する。第一稼働導管60は第一圧力チャンバ35への開口60´を有する。図5参照。
したがって、ハウジング10に対して第一ピストン41が移動することにより、コネクタチャンバ32内でプランジャコネクタ31が移動し、これによりさらに注油プランジャ30がそれぞれの注油シリンダ29内で同時に移動する。
プランジャコネクタ31は、プレート形のエレメントであればよいが、第一ピストン41から伸びるアーム(図示せず)など、他の構成を有していてもよい。
注入チャンバ20は、注入チャンバ20から注入排出口21への注入経路を通じて、ハウジング10の外壁に形成された注入排出口21と流体連通する。
図5に示される実施形態においては、これらの注入経路は各々、注入チャンバ20からの出口または排出口を形成する第一導管11を有する。第一導管11は図のように注入チャンバ20の端壁内に形成されればよく、または、コネクタチャンバ32の反対側のチャンバの端の注入チャンバ20の側壁内に形成されればよい。第一導管11は、注入チャンバ20をそれぞれの中間導管12と接続する。
図示の実施形態においては、中間導管12は、ハウジング10内で注入チャンバ20の縦軸に対して横向きである。中間導管12(および第一導管11)は、後述するように、潤滑油を注入チャンバ20との間で出し入れするという二つの目的に資する。
第二導管13は、それぞれの中間導管12をそれぞれの注入導管14と接続し、注入導管14は、それぞれの注入排出口21への接続を形成する。
機関のシリンダからの物質の逆流を防ぐため、一方向弁22が注入導管14内、第二導管13内またはその間に設けられる。したがって、一方向弁22が、注入排出口21に向かう流動のみを可能にする。
一方向弁22は、第二導管13と注入導管14との間に形成されたチャンバ22´内に、または第二導管13内もしくは注入導管14内に形成されうる。
したがって、図2に示される実施形態では、各注入経路に、第一導管11と、中間導管12と、第二導管13と、注入導管14とが含まれる。
ハウジング10は、図2においては一つの物または部品として形成されるように示されているが、いくつかの構成部品によって形成されうる。上述のチャンバ、経路および導管11、12、13、14、15、16、17、18、19、20は、ハウジング内に成形された通路として、またはボアとして形成されうる。しかし、適切な管、配管、シリンダ等のアセンブリによって形成されてもよい。
注入排出口21は、適切な配管(図示せず)により、シリンダライナ111内に形成されたシリンダライナ潤滑流体ポイント/クイル112に接続可能である。
注入チャンバ20に、潤滑流体供給経路を介して潤滑流体が供給される。図5に示す実施形態においては、これらの潤滑流体の供給経路は、全ての注入チャンバ20に共通の、ハウジング10に形成された入口15から開始する。入口15は、入口導管16に通じる。入口導管16は、第三導管17を通じて入口導管リング18と流体連通する。
入口導管リング18は注入チャンバ20の縦軸に対して横向きの平面においてハウジング10内に形成され、リング形の導管である。
他の実施形態(図示せず)においては、入口導管リング18につながる二〜四つの入口15および対応する入口導管16がありうる。
第四導管19が入口導管リング18を上述の中間導管12の各々に接続し、それらが、第一導管11を通じてそれぞれの注入チャンバ20にさらに接続される。
潤滑流体が中間導管12から入口導管リング18に逆流しないようにするために、供給経路の第四導管19と中間導管12との間に一方向弁23が設けられる。一方向弁23は、第四導管19内または第四導管19と入口導管リング18との間に形成されるチャンバ23´内に形成されうる。
したがって、図示の実施形態の供給経路の各々には、第一導管11と、中間導管12と、第四導管19と、共通入口導管リング18と、共通第三導管17と、入口導管16と、共通入口15とが含まれる。ここでは共通とは、全ての供給経路に共通という意味である。
また、上にも述べたように、中間導管12および第一導管11は、潤滑油を注入チャンバ20との間で出し入れするという二つの目的に資するため、それぞれの注入経路だけでなくそれぞれの供給経路の両方の一部を形成する。これは以下でさらに詳述する。
潤滑流体供給経路の入口15は、例えば潤滑油タンクなどの加圧された潤滑流体源に接続している。これは、各注入チャンバ20に潤滑流体を等しく供給するため、ならびに、個々の注入チャンバ20およびそこへの供給経路の詰まりに対するセーフティマージンを提供するために、高圧の容積型システムにより加圧されるのが好ましい。
注入経路に形成された一方向弁22および供給経路に形成された一方向弁23は、ボール弁式でありうる。あるいは、一方向弁の代わりに電子制御もしくは油圧制御された遮断弁またはオン/オフ弁が使用されうる。
ハウジング10は、油圧オン/オフ弁40を支持する。油圧オン/オフ弁40は、第一圧力チャンバ35に油圧流体を充填し、これにより第一ピストン41に作用するように構成される。図2bは、油圧制御弁40が油圧源PおよびタンクTに接続されているのを示す。
プランジャコネクタ31は、第二シリンダ36内に摺動可能に設けられた第二ピストン46にも接続され、これにより第二圧力チャンバ37を画定し、第二リニア油圧アクチュエータを形成する。第二圧力チャンバ37は、油圧オン/オフ弁40と流体接続する。第二稼働導管61(図2参照)を通じて。第二稼働導管61は、第二圧力チャンバ37への開口61´を有する。図5参照。
ハウジング10に対する第一および第二ピストン41、46の移動により、コネクタチャンバ32内のプランジャコネクタ31の移動が生じ、これにより、それぞれの注入チャンバ20内のプランジャ30の同時移動がさらに生じる。第一および第二圧力チャンバ35、36は、コネクタチャンバ32の両側に設けられる。同様に、第一および第二ピストン41、46は、プランジャコネクタ31の両側に設けられる。第一および第二ピストン41、46の各々は、第一および第二圧力チャンバ35、36の内壁に対して密封している。その結果、第一および第二圧力チャンバ35、36を交互に加圧することにより、プランジャコネクタ31がプランジャ30とともにハウジング10に対して両方向に移動させられうる。シリンダ潤滑デバイス1のこの機能は、以下でさらに詳述する。第二圧力チャンバをタンクTに接続しながら第一圧力チャンバを加圧することにより、注油プランジャが注入方向に移動し、第一圧力チャンバをタンクに接続しながら第二圧力チャンバを加圧することにより、注油プランジャが戻り/補充方向に移動する。
一つの最端位置では、注入チャンバ20のプランジャ30がその最伸長位置(E)、すなわちその底位置にあるため、プランジャ30のプランジャヘッド30´が第一導管11、すなわち注入チャンバ20の入口/排出口に隣接する。
注入チャンバ20に潤滑流体を充填するために、油圧弁40が第二圧力チャンバ36を加圧し、第一圧力チャンバ35をタンクに接続し、これによりプランジャ30が(プランジャコネクタ31を介して)第一導管11から離れる方向に、すなわち図5の下方に、戻り/吸引/補充ストロークで移動させられる。これにより、注入チャンバ20内の減圧が提供される。注入経路の一方向弁22が、潤滑流体(またはその他の材料)が注入導管14および注入排出口から中間導管12に入るのを防ぐ。注入チャンバ20内の減圧を補償するために、加圧された潤滑流体源からの潤滑流体が、入口15から入口導管16および第三導管17を通って流れ、入口導管リング18に入り始める。潤滑流体は入口導管リング18から供給経路の一方向弁23および第四導管19を通って、中間導管12および第一導管11内から、注入チャンバ20内へと流れる。
したがって、入口導管リング18は、入口15から全ての注入チャンバ20に潤滑流体を分配する働きをする。
プランジャコネクタ31がその最後退位置にある(コネクタチャンバ32の後壁33に接する)ときに、プランジャヘッド30´がまだ注入チャンバ20内にあり、注入チャンバ20の内壁としっかりと密封を形成しているように、コネクタチャンバ32の長さが、注入チャンバ20の長さに対応するように設けられるのが好ましい。
注油プランジャ30がその開始位置Sに後退させられ、注入チャンバ20がその最大容積に達すると、(油圧弁が第一圧力チャンバ35を圧力源Pに接続し、第二圧力チャンバ36をタンクに接続することにより)第一ピストン41を作動させて、注油プランジャ30の第一導管11に向かった移動を開始させることで注入チャンバ20内の圧力を高めることにより、潤滑流体の注入イベントが開始されうる。これにより、注入チャンバ20内にある潤滑流体が放出される。こうして潤滑流体が、第一導管11および中間導管12を通って流れる。
供給経路の一方向弁23が、入口導管リング18および入口15に向かう流動を防ぐため、潤滑流体は、第二導管13を通って注入経路の一方向弁22を通って、注入導管14を通って、注入排出口21から外へのみ流れることができる。そこから、潤滑流体は、適切な配管を介してシリンダライナ潤滑流体ポイント/クイル112に導かれる。それから、注入チャンバ20を充填する次のサイクルが開始しうる。
油圧弁40は、電子制御ユニット50に接続可能である。この電子制御ユニット50は、一実施形態においては、シリンダ潤滑デバイス1内の、ハウジング10内または作動デバイス40内に組み込まれうる。電子制御ユニット50は、例えばクランクシャフト130の位置を示す信号を介して機関ピストン120の位置に関する情報を提供でき、また場合によってはその他の機関運転条件に関する情報を提供できる、一組のセンサまたは機関100の何らかの他の制御/センサシステムに接続可能である。当該センサの一部は、機関シリンダ110内に置かれ、または機関100のクランクシャフトの位置に揃えられうる。
別の実施形態では、電子制御ユニット50は、機関制御システム(ECS)である。機関制御システムは、すでに機関ピストン120の位置および他の機関運転条件に関する情報を受信するようになっており、そのため、それにしたがってシリンダ潤滑デバイス1を制御するように構築でき、例えば機関ピストン上死点(TDC:top dead center)、クランクシャフトの位置、RPMでの機関速度、機関負荷、実際の燃料消費量、または燃料入口弁でのHFOの硫黄分もしくはシリンダ内の硫酸濃度、シリンダの摩耗(シリンダ内のセンサからの信号にもとづく)、シリンダライナ111の温度、シリンダ内の潤滑流体の蓄積、アルカリ性沈着物の蓄積、潤滑油BM等のその他の機関運転条件もしくは個別のシリンダ運転条件についての情報にもとづいて、制御するように構築できる。原則としてシリンダ油注油量は燃料中の硫黄の割合に比例しなければならず、シリンダ油注油量は機関負荷と比例しなければならない。機関負荷は基本的にシリンダに入る燃料の量に比例するためである。燃料の噴射量も電子制御ユニット50により制御され、したがってこの情報を、必要なシリンダ油注油量を決定するために利用できる。機関電子制御ユニットとシリンダ潤滑電子制御ユニットとが別個のユニットである場合には、機関負荷、燃料の噴射量、さらには必要なシリンダ油分量も、機関電子制御ユニットからシリンダ潤滑電子制御ユニットに伝達されうる。
一回転あたりに必要とされるシリンダ潤滑油の量は、上述のように機関負荷および燃料の硫黄分に依存するが、特定の機関、特定の負荷および特定の燃料硫黄分について非常に正確に分かっている。これらのデータは、計算および試験から分かっている。したがって、最大負荷および最大燃料硫黄分での一回転あたりの最大注油量は良く知られており、それを用いて、シリンダ油消費量が最大となるこれらの条件下であっても注油プランジャ30のフルストロークに達する前にいくつかの部分ストロークPsが行われうるように、ピストンポンプの注油プランジャ30のフルストロークの長さおよび直径の大きさを決めることができる。例えば機関全負荷および高硫黄分で一ストロークあたり100ccのシリンダ潤滑油が用いられる場合には、ピストンポンプの押退け容積が少なくとも二〜三倍大きいこと、すなわち少なくとも250ccであることが必要となると考えられ、少なくとも五倍大きいのが好ましく、すなわち少なくとも500ccであることが好ましい。結果として生じるフルストロークが、使用されるリニアアクチュエータによる正確な運転に適するように、注油プランジャ30の直径が選択されるのが好ましい。
したがって、電子制御ユニット50は、機関100のシリンダ110の一部または全部のシリンダ潤滑デバイス1に接続され、これを制御するように構成されうる。
作動デバイス40またはシリンダ潤滑デバイス1のハウジング10は、上述の電子制御ユニット50に接続されて、例えばプランジャ30自体の位置、プランジャヘッド30´の位置、第一もしくは第二ピストン41、46の位置、またはプランジャコネクタ32の位置を測定することなどにより注入チャンバ20内のプランジャ30の位置に関する情報を伝える信号51を電子制御ユニットに提供する、ポジションセンサ44を備える。この情報を用いて注入の精度が向上され、電子制御ユニット50は、油圧弁40に接続されて制御信号52を提供するように構成されている。
好ましい実施形態においては、第一ピストン41には拡張部42が提供され、拡張部42はロッドの形をしており、第一ピストン41の直径または横断面積より小さい直径または横断面積を有する。拡張部42は、ポジションセンサ44を含む位置測定デバイス70内に拡張する。これにより、注入チャンバ20内のプランジャ30の位置が、位置測定デバイス70内の拡張部42の位置により測定される。
一つのシリンダ潤滑デバイス1が、機関の一つのシリンダのために働き、注入チャンバ20の数はシリンダライナ潤滑流体ポイント/クイル112の数に合わせられ、シリンダのサイズに依存するのが好ましい。あるいは、二つ以上のシリンダ潤滑デバイス1が一つの機関シリンダのために働きうる。
電子制御ユニット50は、機関サイクルあたり少なくとも一回の潤滑流体の注入を提供するように構成される。機関ピストン120がシリンダライナ潤滑クイル/ポイント112を少なくとも一つの方向に通過したときに、二つのピストンリング121の間に注入が提供されるのが好ましい。
一実施形態においては、電子制御ユニット50は、機関ピストン120がシリンダライナ潤滑ポイント/クイル112を少なくとも一つの方向に通過したときに、各二対のピストンリング121の間に少なくとも一回の潤滑流体の注入を提供するように構成される。一実施形態においては、電子制御ユニット50は、機関ピストン120がシリンダライナ潤滑ポイント112を少なくとも一つの方向に通過したときに、各一対のピストンリング121の間に少なくとも一回の潤滑流体の注入を提供するように構成される。すぐ上に記載した実施形態のいずれにもあてはまるさらなる実施形態では、電子制御ユニット50は、機関のピストンの通過(上昇/下降)ごとに少なくとも一回の潤滑流体の注入を提供するように構成される。これは、燃焼サイクルの回転の間に機関のピストンがシリンダライナ潤滑ポイント/クイル112を二度通過するシリンダライナ111内の位置にシリンダライナ潤滑ポイント/クイル112が設けられる実施形態に適用できる。
代替的実施形態においては、ピストン120が上死点にあるときにシリンダライナ潤滑ポイント112が最も低いピストンリング121と次に低いピストンリング121と(最も低いピストンリング対)の間のスペースと同じ高さにあるように、シリンダライナ潤滑ポイント/クイル112がシリンダライナ内に設けられる。
以上に好適な潤滑デバイス1を説明している。しかし、本発明と関連して他のタイプの潤滑デバイスが使用されてもよい。潤滑デバイスは一般に、プランジャを有する少なくとも一つの注入チャンバ20を有しなければならない。注入チャンバは、既知の容積または少なくとも既知の直径(または横断面セクション)を有しなければならない。注入チャンバ内のプランジャの位置を決定するための手段が提供されなければならない。
機関シリンダ潤滑のための潤滑デバイス1は、注入チャンバ20内に設けられるプランジャ30など、いくつかの注油装置ポンプを稼働させるためにプランジャコネクタ31またはトラストプレートを駆動する、複動式の油圧ピストンまたは第一および第二ピストンを含むのが好ましい。注油装置ポンプは、機関シリンダ112のシリンダライナ111内に備え付けられた個々の潤滑クイル112にシリンダ油/注油装置流体を供給するために設けられる。
プランジャ30と、バレル29/注入チャンバ20と、吸入弁または吸入ギャップと、ポンプの送達ポートの第二逆止弁とからなる、個々の注油装置ポンプ。
図1、2a、2b、3、4a、4b、4cに示されるシリンダ潤滑デバイス1は、バレル/注入チャンバ20の潤滑流体を充填し空にする(注入する)ためのチャネルの配置が、図5に示されるものと異なる。図1〜4のデバイスは、共通入口ポート(図示せず)も有する。
油圧アクチュエータピストン(第一および第二ピストン41、46)は、制御弁40を通じて圧力下の油により動力を供給され、アクチュエータピストンならびにプランジャコネクタ31(トラストプレートとも呼ばれうる)およびプランジャ30が両方向に移動させられ、プランジャ30のフルストロークに対して任意の位置に配置または停止されることが可能になる。
第一および第二ピストン41、46を作動させるための圧力は、機関の一般的な油圧システムの圧力に対応するのが好ましい。それにしたがって、アクチュエータピストン(第一および第二ピストン41、46)のサイズが調節される。
アクチュエータピストン(第一および第二ピストン41、46)および/またはプランジャ30の位置が、ポジションセンサ44により測定される。
潤滑デバイス1は、オン/オフ弁40により制御されるのが好ましく、オン/オフ弁40は、電子制御ユニット50(電子制御システム/制御システム)により制御される。
制御システム50は、時間領域(数ミリ秒(mS))において制御弁40を稼働させる。稼働時間とストロークの長さとの間の関係は単調である、すなわち稼働時間が長いほどストロークが長くなるが、関係は線形ではない。これは、潤滑パルスをミリ秒群で二分すると、半分二つ分の長さの一つのパルスよりも潤滑油分量が少なくなることを意味する。
潤滑デバイス1がキャリブレートされる際には、潤滑デバイス1は、以下の記載によるレートシェーピングプロフィールで定値稼働により制御される。
システムおよび潤滑デバイス1は、時間に伴ったフルストロークの数をカウントすることにより注入されたシリンダ油の量を正確に測定するために、注油プランジャ30のフルストロークまたはフルに近いストロークを常に用いる。しかし、フルストロークは、いくつかの小さな部分ストロークPs、すなわちシリンダ油供給イベントごとのフルストロークの複数の部分に分割される。この原理を利用することにより、シリンダ潤滑デバイスの全体的効率が高められ、摩耗がより良好に分散される。電子制御ユニット50が、時間に伴って送達された油量を合計するために、実行されたフルストロークの数を計算する。フルストロークまたはほぼフルのストロークが実行された後にのみ、すなわち必要に応じて、注油プランジャがその開始位置(完全後退位置S)に戻される。注油プランジャの移動の制御が正確な閉ループ制御において行われる実施形態においては、注油ピストンのフルストロークが利用されうる、すなわち、終了位置Eまでで利用可能な残りのストロークが次の部分ストロークの必要な長さより小さい場合であってもフルストロークが利用されうる。そのような正確な制御により、終了位置(E)いっぱいまでの部分ストロークの不足分が次のストロークで補償されうる。制御の正確性がより低い実施形態では、すなわち稼働のための時間パルスとオン/オフタイプ弁油圧とにもとづく制御システムにおいては、フルストロークの最後の部分は、その長さが次の部分ストロークの所望の長さより短い場合には使用できない。そのような場合には、コントローラが、注油プランジャに開始位置Sに戻り、開始位置から次の部分ストロークを開始するよう命令する。
ポジションセンサ44または別個のフルストロークセンサ45により、フルストロークが検出される。
ポンプシリンダのフル(またはフルのほとんどの)ストロークを常に使用することにより、摩耗が注入チャンバ20の滑り面全体にならされるため、ポンプの寿命が延びる。
潤滑流体/シリンダ油は、機関に備え付けられた角度センサにしたがって、任意の所与のクランク角すなわち所定のクランク角で注入されうるが、ピストンリング121の間にシリンダ潤滑油が注入されるように、該当のピストン120が注入ポイント/クイル111の正面にある状態に対応するクランク角で注入されるのが好ましい。
個々の注入ごとに注入体積を調節でき、注入ごとに注入期間(mS)を調節できる。
完全に充填された注入チャンバ20が、機関ピストン120への複数の部分注入ストロークを行うのに十分な潤滑流体/シリンダ油を含むように、注油シリンダ29(および同様に注油プランジャ30)の直径ならびにフルストロークの長さが選択されるのが好ましい。ストロークされたカバーされた部分注入の正確な数は、機関負荷およびシリンダ条件に依存する。新しいシリンダライナは、後の通常の運転条件と比べて、限られた慣らし運転期間中にはるかに多くの潤滑油が必要であり、したがって、シリンダライナの慣らし運転中であってもフルストロークに必要以上の部分ストロークPsが含まれうるように、シリンダライナの慣らし運転中の潤滑の必要量によってフルストロークの長さに対応する注入チャンバの容積が決定される。
プランジャ30の前回までのストロークの長さに次の分量を加えたものが最大値に達し、または最大値を上回るまでは、注油プランジャ30はその最後方位置に再配置されない(すなわち注入チャンバ20が充填/補充されない)。その結果、エネルギーも保存される。
一般に、上述の実施形態によるシリンダ潤滑デバイス1は、以下の運転原理により運転する。シリンダ潤滑デバイス1は、上述の注油プランジャ30を有する注油シリンダ29、20を含むいくつかのピストンポンプを稼働させてシリンダライナ111内に備え付けられた個々の潤滑クイル112にシリンダ油を供給するプランジャコネクタ31(トラストプレート)を駆動する、複動式油圧ピストン(単数または複数)41、46を含む。複動式リニア油圧アクチュエータ、プランジャコネクタ31および注油プランジャ30は、咬合によって機械的に結合される。
個々のピストンポンプは、注油プランジャ30と、注油シリンダ29と、吸入弁または吸入ギャップと、ポンプの送達ポートの逆止弁とを含む。
油圧アクチュエータピストンまたはピストン41、46(単数または複数)は、一つ以上の制御弁を通じて圧力下の油により動力を供給され、アクチュエータピストン41、46/プランジャコネクタ31/注油プランジャ30が両方向に移動させられ、フルストロークの任意の位置に配置または停止されることが可能になる。
アクチュエータ油圧は、機関設計者の仕様および機関運転条件により、固定または可変でありうる。
アクチュエータピストン41、46またはプランジャ30の位置が、ポジションセンサ44により測定される。図1〜4に示した実施形態においては、アクチュエータピストン41の拡張部42にセンサ44が設けられる。
シリンダ潤滑デバイス1は、適応周期フィードバックシステムにより制御される。このシステムは、制御弁を時間領域において(数ミリ秒(ms))稼働させる。アクチュエータピストン41、46の稼働により、プランジャ30がストロークを実行させられる。ストロークの後、アクチュエータピストン41、46が移動を停止してから、実際に実行されたストロークが測定される。
測定されたストロークの長さにもとづいて、制御機構が、前回の部分ストローク(単数または複数)の長さの測定値を考慮して次の稼働時間パルス長を計算する。制御機構は、次の部分ストロークの長さを考慮して開始位置に戻ることが必要かを決定する。
シリンダ潤滑デバイス1は、時間に伴った部分ストロークおよびフルストロークの長さをまとめることによって注入されたシリンダ油の量を正確に測定するために、ピストン41、46/注油プランジャ30のフルストロークを常に使用する。しかし、一回の稼働あたりの油量を減少させるために、フルストロークがフルストロークのいくつかの小部分に分けられうる。部分稼働だけでなくメイン(フルストローク)稼働も含めた全ての注入のタイミングが、機関のクランク角にしたがって合わせられる。電子制御ユニット50は、時間に伴った潤滑油の正確な測定量を得るために、部分ストロークの数および長さをまとめる。
フルストロークが実行されたあとに、アクチュエータピストン41、46がその開始位置に戻される。
注油シリンダ29内のプランジャ30のフルストロークは、ポジションセンサ44または別個のフルストロークセンサ45により検出される。
ポンプシリンダ(注入チャンバ20内のプランジャ30)のフルストロークの可能な限りの長さを常に使用することにより、ピストンポンプの摩耗がピストンポンプの注入チャンバ20の滑り面全体にならされる。その結果、ピストンポンプの寿命が延びる。
シリンダ潤滑油は、任意の所望のクランク角で注入でき、個々の油注入のタイミングは、機関設計者の仕様および機関運転条件にしたがって調節された連続変数でありうる。
シリンダ潤滑デバイス1は、以下の作業サイクルにしたがうのが好ましい。
始動時には、システムがキャリブレーションストロークを実行して、バレルに対するその内部に縦方向に置換可能に設けられたプランジャの機械的エンドストップにしたがって、ポジションセンサから最大値および最小値を決定する。
それから制御ユニット50が、アクチュエータピストン41、46をその開始位置へ移動させる。
電子制御ユニット50が、次の注入イベントで注入すべきシリンダ潤滑油の所望の分量/量を決定する、すなわち、注油プランジャ30の次の所望の部分ストロークの長さを決定する。
電子制御ユニット50が、時間パルスまたは弁稼働時間を命令する(すなわち、注油プランジャ30を注油シリンダ29内でシリンダ潤滑油の所望体積に等しい所望長さ移動させるために制御弁40が開いていることが必要な期待時間を計算することにより、命令する)。それから電子制御ユニット50が、所定のクランク角で制御弁40を稼働させ、アクチュエータピストン41、46が、一番先の機械的ストップトラストに向かって部分ストロークを先へ移動する。電子制御ユニット50は、次の部分ストロークで、部分ストロークの長さの不足分を補償する。
アクチュエータピストンの移動が停止したあと、ポジションセンサ44が、アクチュエータピストン41(またはプランジャ30)の実際の位置を測定する。
前の測定にもとづいて新しい時間パルスが計算される、すなわち、シリンダ潤滑油および油圧油のいずれかまたは両方の圧力および粘性の変化に起因する前回の部分ストロークの一切の過不足が、電子制御ユニット50により次のストロークで補償される。
新しい時間パルスは、所定のクランク角で制御弁40を稼働させ、アクチュエータピストン41、46が、部分ストロークの長さだけ再び現在位置から先へ移動させられ、その後、次の位置測定が行われる。
電子制御ユニット50は、注油シリンダ29内のプランジャ30の残りの利用可能なストロークを把握し、次の部分ストローク終了位置Eまでの残りの利用可能なストロークの長さが、次の部分ストロークの所望の長さより短いときに、アクチュエータピストン41、46にその開始位置に戻るように命令する。
機械的エンドストップに接触する前の最後のストロークが、残りの可能なストロークよりも大きいと計算された場合には、機械的ストップに接触するまで注入チャンバ20が空にされ、当該潤滑を完了するために必要な油量が次の部分ストローク/注入に追加される。
別の実施形態では、次の部分ストロークが残りの可能なストロークよりも大きいと計算された場合には、機械的ストップに接触するまで注入チャンバ20が空にされ、注油プランジャが開始位置に戻され、当該潤滑を完了するために必要な油量が次の部分ストロークに追加される。
プランジャ30の最大ストロークの長さに達するまでは、注油プランジャ30はその最後方位置に移動させられない(すなわち、注入チャンバ20が充填/補充されない)。その結果、エネルギーも保存される。
二つの油圧アクチュエータまたは複動式リニア油圧アクチュエータは、制御弁を通じて圧力下の油により動力を供給され、リニアアクチュエータ/トラストプレート/注油プランジャが両方向に移動させられ、フルストロークの任意の位置に配置または停止されることが可能になる。
図8は、油圧弁が比例4/3方向弁140であり、後述のように運転が異なることを除いては上述の実施形態と基本的に同一の、本発明によるシリンダ潤滑デバイスおよび方法の別の実施形態を示す。
潤滑流体/シリンダ油は、実際の必要にしたがって注入されうる。比例油圧弁140を用いた運転には以下が含まれうる。
・機関一回転ごとのまたは断続的な、潤滑流体/シリンダ油注入の一部分または複数の部分のレートシェーピング。
・個々の注入ごとに注入体積を調節でき、注入ごとに注入期間(mS)を調節できる。
・機関一回転ごとのまたは断続的な、潤滑流体/シリンダ油注入の一部分または複数の部分のレートシェーピング。
・個々の注入ごとに注入体積を調節でき、注入ごとに注入期間(mS)を調節できる。
この実施形態においては、ポジションセンサの信号がフィードバック制御ループにおいて用いられ、これにしたがって電子制御ユニットにより比例油圧弁140の位置が調節されることにより、リニア油圧アクチュエータの速度および位置が閉ループ制御方法により連続的かつ正確に制御される。したがって、シリンダ潤滑油の注油の速度、ならびにシリンダ潤滑油の分量が、正確かつ即座に制御されうる。
図9を参照しながら、このことをより詳細に説明する。シリンダ110のピストン120の一往復ごとに、一連の注入が実行されうる。したがって、一回転あたりに注入されることとなる所望の体積sDは、
sD=S1+S2+...+snである。
sD=S1+S2+...+snである。
一回転の個々の注入の時間t1、t2、t3、...tnおよび個々の注入の期間は可変である。
したがって、図9において、注入速度v、v=ds/dtに対応する注入プロフィールのグラフのピッチは可変である。
所望の体積sD=S1+S2+...+sn、例えばS1+S2(二回の注入)が、ピストンの通過中に実行される。したがって、比例油圧弁を有する実施形態により、一つの潤滑イベントがいくつかの部分イベントに分割されることが可能になる、すなわち、ピストンの一回の通過中に、二回以上の潤滑油注入が行われうる。
別の実施形態(図示せず)によれば、共通駆動部を駆動するアクチュエータは、電気駆動モータにより動力を供給される複動式リニアアクチュエータである。この実施形態は、リニア複動式電気駆動モータ、または可逆回転電気駆動モータの回転を直線運動に転換する機構に結合された可逆回転電気駆動モータを使用しうる。
上述の全ての実施形態において適用されるのは、注油プランジャをその開始位置Sに比較的速く、すなわちコイルばねなどの弾性手段を用いる場合よりも速く戻せるように、アクチュエータが戻りストロークに用いられることである。
別の実施形態(図示せず)によれば、大型低速2ストロークディーゼルマルチシリンダ機関用のシリンダ潤滑デバイスを運転する方法が開示され、該方法においては、各可変長ストロークの後に注油プランジャがその開始位置に戻り、そのポンプチャンバを補充する。本実施形態においては、注油プランジャのストロークの長さおよび注油プランジャの直径が複数の部分ストローク用に十分に大きい、すなわち注油ポンプの最大押し退け量が、該当の機関に必要な最大一回分量にほぼ等しいことを除き、シリンダ潤滑デバイスは上述のシリンダ潤滑デバイスと実質的に同一である。シリンダ潤滑デバイスは、注油シリンダ内を摺動可能な注油プランジャをそれぞれ有する複数のピストンポンプと、全ての注油プランジャを同時に駆動するためのリニアアクチュエータを含む共通駆動部と、共通駆動部または注油プランジャ30の位置を検出するために設けられたポジションセンサ44とを有する。該方法は、注入ストロークの所望の長さを決定することと、注入ストロークの所望の長さにわたり注油プランジャ(30)を同時に移動させるようにリニアアクチュエータに指示することと、その後、注油プランジャを補充ストロークで元の方向へ同時に移動させることと、ポジションセンサからの情報により、実行された注入ストロークの実際の長さを決定することと、次の注入ストロークの所望の長さを決定する際に、前回の注入ストロークの所望値からのずれを補償することとを含む。これにおいては、補充ストロークにおいて共通駆動部が弾力部材により駆動されうる。
上述の実施形態は、第一リニア油圧アクチュエータを単シリンダピストンユニットとして示すが、当然のことながら、第一油圧アクチュエータは、代わりに複数の協働するシリンダピストンユニットを含みうる。第二リニア油圧アクチュエータも同様であり、いくつかのシリンダ/ピストンユニットを含みうる。
上述の全ての実施形態で、組み立てられた注油装置1の容量は、機関100の要求量に等しくなるかこれを上回らなければならない。
したがって、本発明は、潤滑システムに可能な多様な設計および適合を提供する。
本発明の教示には、多数の利点がある。異なる実施形態または実装により、以下の利点の一つ以上がもたらされうる。これが網羅的なリストではなく、本明細書に記載されていない他の利点がありうる点に留意する必要がある。本出願の教示の一つの利点は、潤滑システムの設計および運転に高い柔軟性を提供することである。
本出願の教示は説明の目的で詳細に記載されているが、当然のことながら、かかる詳細は説明のみを目的とし、本出願の教示の範囲を逸脱することなく当業者により変更がなされうる。
特許請求の範囲において用いられるところの「含む」という用語は、他の構成要素またはステップを除外しない。特許請求の範囲において用いられるところの不定冠詞(「a」または「an」)は、複数を除外しない。一つのプロセッサまたは他のユニットが、特許請求の範囲において記載されるいくつかの手段の機能を果たしうる。
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