JP2013237106A - 高負荷切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐剥離性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

高負荷切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐剥離性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JP2013237106A
JP2013237106A JP2012109521A JP2012109521A JP2013237106A JP 2013237106 A JP2013237106 A JP 2013237106A JP 2012109521 A JP2012109521 A JP 2012109521A JP 2012109521 A JP2012109521 A JP 2012109521A JP 2013237106 A JP2013237106 A JP 2013237106A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
intermediate layer
coated
cutting tool
hard coating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012109521A
Other languages
English (en)
Inventor
Noriaki Kato
憲顕 加藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2012109521A priority Critical patent/JP2013237106A/ja
Publication of JP2013237106A publication Critical patent/JP2013237106A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Drilling Tools (AREA)
  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)

Abstract

【課題】高負荷切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐剥離性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】 WC基超硬合金からなる工具基体表面に、下部層として、1〜20μmの平均層厚を有するTi化合物層、中間層として、該層の構成成分として少なくともBを含有し、1〜5μmの平均層厚を有するB含有Ti化合物層、上部層として、1〜25μmの平均層厚を有するα型Al層からなる硬質被覆層を被覆形成した表面被覆切削工具であって、上記中間層は、下部層側から上部層側へ向かうにしたがって次第に層中のB含有量が増加するBの傾斜組成を有し、しかも、中間層の最上部から0.3〜3μmの深さ領域にわたる中間層表層部における中間層の組成は、組成式:Ti1−Xで表した場合、0.60≦x≦0.70(但し、xは原子比)を満足する
【選択図】 図2

Description

この発明は、硬質被覆層が、すぐれた高温硬さ、耐熱性および密着性を有することにより、球状黒鉛鋳鉄等の難削材の高負荷切削加工に用いた場合でも、硬質被覆層の剥離を生じることなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
従来から、被覆工具として、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金からなる工具基体の表面に、
(a)下部層として、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、炭窒酸化物のうちの1種または2種以上からなり、1〜20μmの平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、1〜20μmの平均層厚を有するα型Al層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を被覆形成した被覆工具が良く知られている。
しかし、上記従来被覆工具においては、溶着量増加に伴って切削抵抗が増加するため、膜剥離(膜の層間剥離)が発生しやすくなり、また、耐摩耗性の劣化が生じやすいため、工具寿命が短命であるという問題点があった。
そこで、このような問題を解決するための被覆工具として、例えば、特許文献1に示すように、炭化タングステンを主成分とし、周期律表の4a,5a,6a族元素の炭化物等を含む硬質相と、鉄族金属から選択された少なくとも1種を含む結合相とを含む超硬合金を工具基体とし、その表面に下部層、中間層、上部層からなる硬質被覆層を形成した被覆工具において、
下部層は、周期律表の4a,5a,6a族の炭化物、窒化物、炭窒化物、硼化物、硼窒化物、硼窒炭化物、酸化物、炭酸化物、酸窒化物、炭窒酸化物よりなる群から選択される少なくとも一種の材料で構成された柱状組織層で構成し、
上部層は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムおよびそれらの固溶体よりなる群から選択される少なくとも一種の酸化物層で構成し、
中間層は、下部層側を硼窒化チタン(TiBN)、また、上部層側を硼窒酸化チタン(TiBNO)で構成するとともに、下部層側から上部層側に向かって酸素含有量が増加する酸素の傾斜組成構造として構成した被覆工具が提案されている。
特許第4251990号公報
近年の切削加工装置の高性能化および自動化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化し、かつ被削材の種類に限定されない汎用性のある被覆工具が強く望まれる傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、これを球状黒鉛鋳鉄の高負荷切削、例えば、高速高切り込み切削、高送り切削等、に供した場合には、被削材の溶着と剥離が繰り返されることにより硬質被覆層の剥離が生じやすく、そのため、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、球状黒鉛鋳鉄の高負荷切削加工において、溶着等が発生した場合でも、硬質被覆層の剥離を抑制し得るとともに、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具を開発すべく、鋭意研究を行った結果、次のような知見を得た。
即ち、前記特許文献1に示す従来被覆工具においては、中間層として、下部層側を硼窒化チタン(TiBN)、また、上部層側を硼窒酸化チタン(TiBNO)で構成するとともに、下部層側から上部層側に向かって酸素含有量が増加する酸素の傾斜組成構造として構成しているが、本発明者らは、中間層におけるB含有量の影響をさらに詳細に検討したところ、
(a)中間層を、Bを含有するTiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、炭窒酸化物のうちの1種または2種以上の層(「B含有Ti化合物層」という)として構成し、
(b)該B含有Ti化合物層中におけるB含有量は、下部層側から上部層側へ向かうにしたがって次第に増加するBの傾斜組成を構成し、
(c)さらに、中間層の最上部から0.3〜3μmの深さ領域にわたる中間層表層部における中間層の組成は、
組成式:Ti1−X
で表した場合、0.60≦x≦0.70(但し、xは原子比)を満足する層として構成することにより、下部層(Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、炭窒酸化物のうちの1種または2種以上の層)との密着性にすぐれる。
さらに、中間層表層部に形成される上記Tiの硼化物層は、平均粒径10〜500nmの微細組織を有するとともに、上部層のα型Alと同様の六方晶構造を有することから、上部層のα型Al層の核生成密度が増加するとともに、上部層のα型Al層との密着性も向上する。
したがって、本発明で規定する中間層を備えた被覆工具は、球状黒鉛鋳鉄等の難削材の高負荷切削加工に供した場合であっても、硬質被覆層の剥離を生じることがなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 硬質相成分としてWCを含有し、結合相形成成分としてCoを含有するWC基超硬合金からなる工具基体表面に、
(a)下部層は、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、炭窒酸化物のうちの1種または2種以上からなり、1〜20μmの平均層厚を有するTi化合物層、
(b)中間層は、該層の構成成分として少なくともBを含有し、1〜5μmの平均層厚を有するB含有Ti化合物層、
(c)上部層は、1〜25μmの平均層厚を有するα型Al層、
上記(a)〜(c)からなる硬質被覆層を被覆形成した表面被覆切削工具において、
(d)上記(b)の中間層は、下部層(a)側から上部層(c)側へ向かうにしたがって次第に該層中のB含有量が増加するBの傾斜組成を有し、しかも、中間層の最上部から0.3〜3μmの深さ領域にわたる中間層表層部における中間層の組成は、
組成式:Ti1−X
で表した場合、0.60≦x≦0.70(但し、xは原子比)を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記WC基超硬合金は、硬質相形成成分として、周期律表の4a,5a,6a族元素の炭化物、窒化物、炭窒化物の1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 上記(c)の上部層の表面に、さらに、Tiの窒化物層を最外層として被覆形成したことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆工具について、詳細に説明する。
図1に概略説明図で示すように、この発明の被覆工具は、WC基超硬合金からなる工具基体表面に、例えば、化学蒸着法により、下部層としてのTi化合物層を被覆形成し、下部層上に、中間層としてのB含有Ti化合物層を被覆形成し、さらに、中間層上に、上部層としてのα型Al層を被覆形成する。
また、必要に応じて、上部層上に、最外層として平均層厚0.2〜2.0μmのTiの窒化物層を被覆形成しても良い。
工具基体:
この発明では、工具基体として、主たる硬質相成分としてWCを含有し、結合相形成成分としてCoを含有するWC基超硬合金を使用するが、母材強度、高温硬度、耐摩耗性の向上という観点から、WC基超硬合金の硬質相形成成分として、周期律表の4a,5a,6a族の元素(好ましくは、Ti、Ta、Nb)の炭化物、窒化物、炭窒化物の1種または2種以上をさらに含有させることもできる。
ただ、周期律表の4a,5a,6a族の元素の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる硬質相形成成分は、これらを多量に含有した場合には、強度低下を招く恐れがあるので、これらの成分(但し、WCを除く)の合計含有量は10重量%以下とすることが望ましい。
下部層(Ti化合物層):
下部層は、Tiの炭化物(TiC)、窒化物(TiN)、炭窒化物(TiCN)、炭酸化物(TiCO)、炭窒酸化物(TiCNO)のうちの1種または2種以上からなるTi化合物層として構成するが、これらのTi化合物層は、自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになる。
しかし、下部層の合計平均層厚が1μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、チッピング、欠損、剥離を発生し易くなることから、その合計平均層厚を1〜20μmと定めた。
中間層:
図2に、中間層の拡大概略説明図を示す。中間層は、該層の構成成分として少なくともBを含有し、1〜5μmの平均層厚を有するBの傾斜組成構造を有する。
ただし、下部層のTi化合物層側から上部層のα型Al層側へ向かうにしたがって、中間層中のB含有量が次第に増加するBの傾斜組成構造を形成するようにするとともに、中間層の最上部から0.3〜3μmの深さ領域にわたって中間層表層部を形成する。
そして、中間層表層部における中間層の組成を、
組成式:Ti1−X
で表した場合、0.60≦x≦0.70(但し、xは原子比)を満足するように中間層を構成する。
つまり、上記中間層であるB含有Ti化合物層は、TiC、TiN、TiCN、TiCO、TiCNOのうちの1種または2種以上からなるTi化合物層において、その構成成分としてさらにBを含有させたものに相当するが、B含有量は、中間層全体に均一組成となるように含有させるのではなく、下部層側から上部層側へ向かうにしたがって、次第にB含有量が増加するように構成し、B成分は、中間層中で傾斜組成構造を示す。
そして、下部層側の中間層は、Bを含有するもののその含有量は少なく、一方、上部層側に向かうにしたがって、B含有量を多くし、中間層の最上部から0.3〜3μmの深さ領域にわたる中間層表層部においては、組成式:Ti1−X(但し、xは原子比であって、0.60≦x≦0.70を満足する)で示されるTiの硼化物層を形成する。
中間層を、上記のごときBの傾斜組成構造を有するB含有Ti化合物層で構成する技術的な理由は、以下のとおりである。
下部層側の中間層は、B含有量が少ないため、下部層との密着性は高く維持されるが、中間層と上部層との密着性を高めるために、上部層と接する中間層の上部層側(中間層表層部)において、Ti1−X(但し、xは原子比であって、0.60≦x≦0.70を満足する)で示されるTiの硼化物層を形成する。
中間層表層部に形成された上記Tiの硼化物層は、平均粒径10〜500nmの微細組織を有することから、この上に形成される上部層のα型Al層の核生成密度が増加し、微細粒状組織からなるα型Al層が形成される。
さらに、上記Tiの硼化物層は、その結晶構造がα型Alと同様の六方晶構造を有することから、上部層のα型Al層との密着性も改善される。
したがって、下部層と上部層との間に、上記の中間層を介在形成し、更に、中間層の最上部から0.3〜3μmの深さ領域にわたる中間層表層部においては、上記Tiの硼化物層が形成されていることによって、この発明の被覆工具は、球状黒鉛鋳鉄等の高負荷切削加工に供した場合であっても、硬質被覆層の剥離を生じることがなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのである。
ここで、中間層の層厚が1μm未満であると、傾斜組成の勾配が急峻になりすぎるため所望の密着性を発揮することが出来ず、一方、5μmを超えると、中間層組織が粗大成長して中間層最表面での微細組織が実現できなくなり、切削中に硬質皮膜の剥離、脱落が発生し、早期に工具寿命となることから、中間層の層厚は、1〜5μmと定めた。
また、中間層表層部に形成される組成式:Ti1−Xで表されるTiの硼化物層のxの値が0.60未満である場合には、所望の硼化物組織(即ち、平均粒径10〜500nmの微細組織)を形成することができず上層部との密着性が低下し、一方、xの値が0.70を超える場合には、表面層部が脆化し、表層部を起点として上層の被膜が剥離するため硬質被覆層に期待される耐摩耗性を利用することが出来ず、早期に工具寿命に至ることから、上記組成式におけるxの値は、0.60以上0.70以下と定めた。
さらに、中間層表層部の層厚が0.3μm未満では、上記Tiの硼化物層を均一に形成し、上部層との密着性を高めることができず、一方、層厚が3μmを超える場合には、上記Tiの硼化物層自体が破壊の起点となって、硬質被覆層の脱落が発生しやすくなるため、中間層表層部の層厚は0.3〜3μmと定めた。
上記の中間層の成膜は、例えば、以下のように行うことができる。
工具基体表面に、通常の化学蒸着法によって、所定の層厚のTi化合物層からなる下部層を蒸着形成した後、該下部層表面に、
まず、第1段階として、
反応ガス組成(容量%):TiCl 2%、 BCl 2〜6%、N 18〜23% 残部H
反応圧力:95〜105 kPa、
反応温度:800〜820℃、
の条件で、成膜の進行とともに次第にBClの含有割合を高めながら蒸着を行う(例えば、成膜初期にBClを2%含有させておき、成膜の進行とともに徐々にBCl量を6%にまで増加させる)ことにより、B成分の組成傾斜構造を備える所定の層厚のB含有Ti化合物層を形成し、
ついで、第2段階として、
反応ガス組成(容量%):TiCl 2%、 BCl 6%、 残部H
反応圧力:12〜16 kPa、
反応温度:1080〜1120℃、
の条件で、Ti1−X(但し、xは原子比。0.60≦x≦0.70)を満足する組成のTiの硼化物層を、中間層表層部に蒸着形成することによって、
この発明の、B含有Ti化合物層からなる中間層を形成することができる。
上部層(α型Al層):
α型Al層からなる上部層は、前記中間層の上に形成されることによって、中間層との密着性にすぐれ剥離の発生が抑制されるとともに、耐摩耗性にすぐれたものとなる。
つまり、中間層表層部に形成された平均粒径10〜500nmの微細組織のTiの硼化物層の上にα型Alの核形成が行われるところ、Tiの硼化物はα型Alと同様な六方晶構造を有するとともに、α型Alの核形成密度が高くなるため、その結果、上部層としては中間層との密着性にすぐれ、しかも、微細粒状組織のα型Al層が形成されるために、すぐれた高温硬さ、耐熱性および耐摩耗性が発揮される。
ただ、上部層の層厚が1μm未満の場合には、長期の使用にわたって十分な耐摩耗性を付与することはできず、一方、層厚が25μmを超える場合には、靱性が低下し、チッピング、欠損、剥離が発生しやすくなることから、上部層の層厚は1〜25μmと定めた。
なお、この発明では、上部層の表面に最外層として、金色のTiN層を識別層として形成することができるが、その層厚は、0.2〜2μm程度で十分である。
この発明の被覆工具は、Ti化合物層からなる下部層とα型Al層からなる上部層との間にB含有Ti化合物層を中間層として介在形成し、しかも、該中間層では、B成分の組成傾斜構造を形成するとともに、中間層表層部にTi1−X(但し、xは原子比。0.60≦x≦0.70)を満足する組成のTiの硼化物層を形成することによって、上部層であるα型Al層との密着性を高めるとともに、該α型Al層の組織を微細粒状組織となすことにより、球状黒鉛鋳鉄等の高送り、高切り込みの高負荷切削加工において、剥離の発生を抑制するとともに、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することができるのである。
本発明の被覆工具の縦断面概略説明図である。 本発明の被覆工具の硬質被覆層の中間層の拡大概略説明図である。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Cをそれぞれ製造した。
つぎに、これらの工具基体A〜Cの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、硬質被覆層の下部層として、表2に示される条件で、表5に示されるTi化合物層を蒸着形成し、
ついで、中間層として、表3に示される条件でB含有Ti化合物層を、表6に示される組み合わせ、かつ同じく表6に示される目標層厚で蒸着形成し、その後、表2に示される条件にて、上部層としてのAl層を同じく表6に示される組み合わせ、かつ目標層厚で蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜10をそれぞれ製造した。
なお、本発明被覆工具9、10については、最外層に所定層厚のTiN層を被覆形成した。
また、比較の目的で、硬質被覆層の下部層として、表2に示される条件で、表5に示されるTi化合物層を蒸着形成し、
ついで、表4に示される条件にて、同じく表7に示される目標層厚で中間層を蒸着形成し(あるいは、中間層を形成せず)、その後、表2に示される条件にて、上部層としてのAl層を同じく表7に示される組み合わせ、かつ目標層厚で蒸着形成することによりことにより従来被覆工具1〜10をそれぞれ製造した。
なお、従来被覆工具9、10については、最外層に所定層厚のTiN層を被覆形成した。
ついで、上記の本発明被覆工具の中間層(B含有Ti化合物層)について、縦断面研磨面について、オージェ電子分光法により、その層厚方向に沿ってB含有量を線分析し、中間層部位を特定し、スポット分析にて各5点測定してその平均値からB含有量の値を求めた。
同様に従来被覆工具の中間層についてもB含有量を測定した。
表6、表7に、中間層の測定位置とその位置におけるB含有量の値を示す。
なお、B含有量は、5点測定の平均値を示す。
また、本発明被覆工具および従来被覆工具の下部層、中間層(中間層表層部を含む)及び上部層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。







つぎに、上記の各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具1〜10および従来被覆工具1〜10について、
被削材:JIS・FCD550の丸棒、
切削速度: 330m/min、
切り込み: 1.6mm、
送り: 1.0mm/rev、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件A)での球状黒鉛鋳鉄の乾式高速高送り切削試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、180m/min,0.3mm/rev)、
被削材:JIS・FCD300の丸棒端面、
切削速度: 120〜400m/min、
切り込み: 2.0mm、
送り: 1.0mm/rev、
切削時間: 8分、
の条件(切削条件B)での球状黒鉛鋳鉄の乾式高速高切り込み切削試験(通常の切削速度および切り込みは、それぞれ、60〜200m/min,0.5mm)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表8に示した。

表5〜9に示される結果から、本発明被覆工具1〜10は、Ti化合物層からなる下部層とα型Al層からなる上部層との間にB含有Ti化合物層を中間層として介在形成し、そして、該中間層は、B成分の組成傾斜構造を備えるとともに、中間層表層部には、Ti1−X(但し、xは原子比。0.60≦x≦0.70)を満足する組成のTiの硼化物層が形成されていることによって、上部層との密着性が向上し、球状黒鉛鋳鉄の高送り、高切り込みの高負荷切削加工において、剥離の発生を抑制するとともに、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することができる。
これに対して、中間層として本発明で規定するB含有Ti化合物層が形成されていない従来被覆工具1〜10においては、硬質被覆層の密着性が十分でないため、高負荷切削加工においては、チッピング、欠損、剥離等が発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、球状黒鉛鋳鉄等の高負荷切削加工ですぐれた耐剥離性、耐摩耗性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。


Claims (3)

  1. 硬質相成分としてWCを含有し、結合相形成成分としてCoを含有するWC基超硬合金からなる工具基体表面に、
    (a)下部層は、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、炭窒酸化物のうちの1種または2種以上からなり、1〜20μmの平均層厚を有するTi化合物層、
    (b)中間層は、該層の構成成分として少なくともBを含有し、1〜5μmの平均層厚を有するB含有Ti化合物層、
    (c)上部層は、1〜25μmの平均層厚を有するα型Al層、
    上記(a)〜(c)からなる硬質被覆層を被覆形成した表面被覆切削工具において、
    (d)上記(b)の中間層は、下部層(a)側から上部層(c)側へ向かうにしたがって次第に該層中のB含有量が増加するBの傾斜組成を有し、しかも、中間層の最上部から0.3〜3μmの深さ領域にわたる中間層表層部における中間層の組成は、
    組成式:Ti1−X
    で表した場合、0.60≦x≦0.70(但し、xは原子比)を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 上記WC基超硬合金は、硬質相形成成分として、周期律表の4a,5a,6a族元素の炭化物、窒化物、炭窒化物の1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 上記(c)の上部層の表面に、さらに、Tiの窒化物層を最外層として被覆形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。

























JP2012109521A 2012-05-11 2012-05-11 高負荷切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐剥離性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Pending JP2013237106A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012109521A JP2013237106A (ja) 2012-05-11 2012-05-11 高負荷切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐剥離性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012109521A JP2013237106A (ja) 2012-05-11 2012-05-11 高負荷切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐剥離性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2013237106A true JP2013237106A (ja) 2013-11-28

Family

ID=49762618

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012109521A Pending JP2013237106A (ja) 2012-05-11 2012-05-11 高負荷切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐剥離性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2013237106A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5866650B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP6620482B2 (ja) 耐チッピング性にすぐれた表面被覆切削工具
US8409695B2 (en) Multilayer nitride hard coatings
JP5838769B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP2005271190A (ja) 表面被覆切削工具
JP2017159409A (ja) すぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP3887811B2 (ja) 硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具
JP2009066741A (ja) 耐欠損性に優れた表面被覆wc基超硬合金製切削工具
JP2004122269A (ja) 高速重切削ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP6853449B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP2019155569A (ja) 硬質被覆層が優れた耐酸化性・耐溶着性を発揮する表面被覆切削工具
JP2013237106A (ja) 高負荷切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐剥離性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5088481B2 (ja) 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2019166584A (ja) 硬質被覆層が優れた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP3837959B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具
JP7401850B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP3912494B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐熱塑性変形性を発揮する表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ
JP4235904B2 (ja) 高速切削で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2010274330A (ja) 表面被覆切削工具
JP2012206222A (ja) 硬質被覆層が耐酸化性にすぐれる表面被覆切削工具
JP5110377B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5569739B2 (ja) 耐チッピング性にすぐれた表面被覆切削工具
JP4193053B2 (ja) 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP5099495B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5110376B2 (ja) 表面被覆切削工具