JP2013236625A - 多型検出用プローブ、多型検出方法、薬効判定方法及び多型検出用キット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(P1)特定の塩基配列において塩基番号228〜237を含む10〜50塩基長の塩基配列に対して少なくとも80%以上の同一性を有し、塩基番号237に対応する塩基がシトシンである塩基配列からなり、該シトシンが蛍光色素で標識されており、且つ特定の塩基配列の塩基番号228〜230のうち少なくとも一つの塩基の多型を認識する蛍光標識オリゴヌクレオチドであるBRAF遺伝子のV600多型検出用プローブ。
【選択図】なし
Description
V600E変異を正確に短時間、且つ低コストで簡便に測定する方法が開発されている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。また、この他にも、PCR−RFLP法、ダイレクトシークエンス法、HRMA法等を用いて、BRAF遺伝子変異を検出するための方法が知られている(例えば、非特許文献2〜4参照)。
そこで、V600Eに加え、それ以外の変異(V600K、V600R、V600D)を高い感度で、簡便に検出するための方法について、さらなる技術開発が待ち望まれていた。
<1> 下記P1蛍光標識オリゴヌクレオチドであるBRAF遺伝子のV600多型検出用プローブ:
(P1)配列番号1に示す塩基配列において塩基番号228〜237を含む10〜50塩基長の塩基配列に対して少なくとも80%以上の同一性を有し、塩基番号237に対応する塩基がシトシンである塩基配列からなり、該シトシンが蛍光色素で標識されており、且つ配列番号1における塩基配列の塩基番号228〜230のうち少なくとも一つの塩基の多型を認識するオリゴヌクレオチド(但し、配列番号7又は配列番号19に示すオリゴヌクレオチドを除く)。
<2> 前記P1蛍光標識オリゴヌクレオチドが、下記P1’蛍光標識オリゴヌクレオチドである<1>に記載の多型検出用プローブ:
(P1’)配列番号1に示す塩基配列において塩基番号228〜237を含む10〜50塩基長の塩基配列に対して少なくとも80%以上の同一性を有し、塩基番号237に対応する塩基がシトシンであり、配列番号1に示す塩基配列における塩基番号228〜230のうち2以上の塩基が配列番号1に示す塩基とは異なる塩基であり、前記塩基番号237に対応するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド。
<3> 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、蛍光色素で標識された塩基を3’末端から数えて1〜3番目のいずれかの位置に有する、<1>又は<2>に記載の多型検出用プローブ。
<4> 前記蛍光標識のオリゴヌクレオチドが、蛍光色素で標識された塩基を3’末端に有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブ。
<5> 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしていないときの蛍光強度に比べて、標的配列にハイブリダイズしているときの蛍光強度が減少または増加する、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブ。
<6> 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしていないときの蛍光強度に比べて、標的配列にハイブリダイズしているときの蛍光強度が減少する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブ。
<7> 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドの塩基長が10〜40である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブ。
<8> 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドの塩基長が10〜30である<1>〜<7>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブ。
<9> 融解曲線分析用のプローブである<1>〜<8>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブ。
<10> 配列番号1に示す塩基配列において228番目に対応する塩基がグアニン又はアデニン、配列番号1に示す塩基配列において229番目に対応する塩基がアデニン又はグアニン、及び、配列番号1に示す塩基配列において230番目に対応する塩基がグアニン又はチミンである<1>〜<9>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブ。
<11> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブを用いるBRAF遺伝子V600部位の多型検出方法。
<12> (I)<1>〜<10>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブおよび試料中の一本鎖核酸を接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドおよび前記一本鎖核酸をハイブリダイズさせてハイブリッドを得ることと、
(II)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることで、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定することと、
(III)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定することと、
(IV)前記Tm値に基づいて、BRAF遺伝子V600部位における変異の存在を検出することと、
を含む、<11>に記載の多型検出方法。
<13> さらに、前記(I)のハイブリッドを得る前又は前記(I)のハイブリッドを得ることと同時に、核酸を増幅することを含む、<11>又は<12>に記載の多型検出方法。
<14> <11>〜<13>のいずれか1つに記載の変異検出方法により、BRAF遺伝子V600部位における変異を検出することと、
検出された変異の有無に基づいて、薬剤に対する耐性または薬剤の薬効を判定することと、
を含む薬剤の薬効判定方法。
<15> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の変異検出用プローブを含む、多型検出用試薬。
<16> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の変異検出用プローブと、
配列番号1に示す塩基配列において、前記変異検出用プローブがハイブリダイズする配列を含む領域を鋳型として増幅可能なプライマーとを含む多型検出用キット。
<17> 配列番号1に示す塩基配列における228番目〜230番目の塩基を含む塩基長50〜1000の領域を鋳型として増幅可能なプライマーをさらに含む、<16>に記載の多型検出用キット。
(P1)配列番号1に示す塩基配列において塩基番号228〜237を含む10〜50塩基長の塩基配列に対して少なくとも80%以上の同一性を有し、塩基番号237に対応する塩基がシトシンである塩基配列からなり、該シトシンが蛍光色素で標識されており、且つ配列番号1における塩基配列の塩基番号228〜230のうち少なくとも一つの塩基の多型を認識するオリゴヌクレオチド(但し、配列番号7又は配列番号19に示すオリゴヌクレオチドを除く)。
本発明にかかるBRAF遺伝子のV600多型検出方法は、前記BRAF遺伝子のV600多型を検出するための多型検出用プローブを少なくとも1種用いてBRAF遺伝子の多型を検出することを含む方法である。
本発明にかかる薬剤の薬効評価方法は、前記BRAF遺伝子のV600多型検出方法によりBRAF遺伝子の多型を検出すること、及び検出された多型の有無に基づいて、薬剤に対する耐性または薬剤の薬効を評価することを含む方法である。
本発明にかかる多型検出用キットは、BRAF遺伝子の多型を検出するための多型検出用プローブを含むものである。
本発明における配列番号1の塩基配列は、NCBIのアクセッションNo.NG_007873の176201〜176700の配列であり、176201を塩基番号1とした塩基番号1〜500で構成される塩基配列である。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本発明において、オリゴヌクレオチドの配列に関して「3’末端から数えて1〜3番目」という場合は、オリゴヌクレオチド鎖の3’末端を1番目として数える。
以下、本発明について説明する。
本発明にかかるBRAF遺伝子のV600多型検出用プローブ(以下、単に「多型検出用プローブ」ということがある)は、下記P1蛍光標識オリゴヌクレオチドであるBRAF遺伝子のV600の多型を検出するための多型検出用プローブである:
(P1)配列番号1に示す塩基配列において塩基番号228〜237を含む10〜50塩基長の塩基配列に対して少なくとも80%以上の同一性を有し、塩基番号237に対応する塩基がシトシンである塩基配列からなり、該シトシンが蛍光色素で標識されており、且つ配列番号1における塩基配列の塩基番号228〜230のうち少なくとも一つの塩基の多型を認識するオリゴヌクレオチド(但し、配列番号7又は配列番号19に示すオリゴヌクレオチドを除く)。
また、本発明の前記P1の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、具体的には、配列番号1で示される配列において、塩基番号228〜237に対応する塩基を含む配列である。
また、検出感度の観点より、85%以上の同一性、90%以上の同一性、95%以上の同一性、96%以上の同一性、97%以上の同一性、98%以上の同一性又は99%以上の同一性を示してもよい。
本発明の前記P1蛍光標識オリゴヌクレオチドと、前記配列番号1における237番目の塩基に対応する塩基がC(シトシン)である以外は配列番号1と同一の塩基を有する塩基配列とを比較した際の同一性が80%未満である場合には、変異型のBRAF遺伝子を含む試料核酸に対する検出感度が低くなる。
当該P1’蛍光標識オリゴヌクレオチドは、配列番号1に示す塩基配列における塩基番号228〜230のうち2以上の塩基が配列番号1に示す塩基とは異なることにより、変異型のBRAF遺伝子を含む試料核酸に対する検出感度が高くなる傾向がある。
(1)配列番号1に示す塩基配列において228番目に対応する塩基がグアニン又はアデニン、
(2)配列番号1に示す塩基配列において229番目に対応する塩基がアデニン又はグアニン、及び
(3)配列番号1に示す塩基配列において230番目に対応する塩基がグアニン又はチミンからなる群より選ばれる塩基が挙げられる。
2以上の塩基を同時に検出する観点から、2以上の塩基の組み合わせとしては、塩基番号228、229及び230に対応する塩基は、アデニン、アデニン及びグアニン;アデニン、グアニン及びグアニン;又は、グアニン、アデニン及びチミンとすることができる。
当該蛍光標識オリゴヌクレオチドは、野生型と変異型のTm値の差が大きいことにより、正確に変異検出が可能であり試験に対する信頼性が高くなる、また高い検出感度にて変異を含むサンプルを検出することが可能であるという傾向がある。
ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。典型的なストリンジェントな条件とは、例えば、カリウム濃度は約25mM〜約50mM、及びマグネシウム濃度は約1.0mM〜約5.0mM中において、ハイブリダイゼーションを行う条件があげられる。本発明の条件の1例としてTris−HCl(pH8.6)、25mMのKCl、及び1.5mMのMgCl2中においてハイブリダイゼーションを行う条件が、挙げられるが、これに限定されるものではない。その他、ストリンジェントな条件としては、Molecular Cloning 3rd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)に記載されている。この文献は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。当業者は、ハイブリダイゼーション反応や、ハイブリダイゼーション反応液の塩濃度等を変化させることによって、このような条件を容易に選択することができる。
当該塩基が挿入、欠失又は置換した蛍光標識オリゴヌクレオチドは、前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドと同等程度の作用を示せばよく、塩基が挿入、欠失又は置換されている場合、その挿入、欠失又は置換の位置は、特に限定されない。挿入、欠失又は置換した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、蛍光標識オリゴヌクレオチド全体の長さによって異なるが、例えば1塩基〜10塩基又は1塩基〜5塩基が挙げられる。
前記オリゴヌクレオチドの構成単位としては、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、人工核酸等が挙げられる。前記人工核酸としては、DNA、RNA、RNAアナログであるLNA(Locked Nucleic Acid);ペプチド核酸であるPNA(Peptide Nucleic Acid);架橋化核酸であるBNA(Bridged Nucleic Acid)等が挙げられる。
前記オリゴヌクレオチドは、前記構成単位のうち、一種類から構成されてもよいし、複数種類から構成されてもよい。
また、本発明の前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドの塩基長としては、10〜50、10〜40、又は10〜30としうる。10〜50という範囲にすることにより、例えば検出感度が高くなる等の傾向がある。
また前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドの塩基長を変化させることで、例えばP1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドがその相補鎖(標的配列)と形成するハイブリッドの解離温度であるTm値を所望の値とすることができる。
なお、表1では、配列番号1に示す塩基配列において塩基番号228〜230の塩基に対応する塩基を大文字で記載し、当該配列番号1の塩基番号228、229及び230に対応する塩基が、アデニン、アデニン及びグアニン;アデニン、グアニン及びグアニン;グアニン、アデニン及びチミンの場合であるであるオリゴヌクレオチドと、それぞれの蛍光標識オリゴヌクレオチドとのハイブリッドのTm値を併せて示した。
ここでTm値は、Meltcalc 99 free(http://www.meltcalc.com/)を用い、設定条件:Oligoconc[μM]0.2、Na eq.[mM]50の条件で算出した。
また、前記Tm値の差としては、3℃以上、5℃以上、又は7℃以上等が挙げられる。
前記Tm値の差を大きくする方法としては、例えばプローブがハイブリダイズする領域に対応する塩基配列に対して、ミスマッチとなる塩基を該プローブに含める方法などが挙げられる。具体的には、NatureBiotech(1997)vol15 p.331−335等に記載の方法が挙げられる。
蛍光標識オリゴヌクレオチドの検出条件は特に制限されず、使用する蛍光色素により適宜決定できる。例えば、Pacific Blueは、検出波長445nm〜480nm、TAMRAは、検出波長585nm〜700nm、BODIPY FLは、検出波長520nm〜555nmで検出できる。
このような蛍光色素を有するプローブを使用すれば、それぞれの蛍光シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。蛍光色素のオリゴヌクレオチドへの結合は、通常の方法、例えば特開2002−119291号公報等に記載の方法に従って行うことができる。
また、3'末端に前述のような標識化物質(蛍光色素)を付加することによっても、同様の効果が得られる。
また、前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、融解曲線分析用のプローブとして使用することができる。
さらに、前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、多型検出用試薬として使用することができる。これにより、本発明の多型検出用試薬は、配列番号1で示される塩基配列において塩基番号228〜230に対応する塩基における多型を簡便にかつ感度よく検出することができる。
なお、本発明に係る前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号237の塩基に対応する塩基がシトシンであり、該シトシンが蛍光色素で標識された塩基を用いる以外は、オリゴヌクレオチドの合成方法として知られている公知の方法、例えば特開2002−119291号公報等に記載の方法に従って作製することができる。
後述するBRAF遺伝子の多型検出方法では、検出対象となるBRAF遺伝子を含む配列をPCR法により増幅する場合には、プライマーが用いられる。
本発明において使用しうるプライマーは、目的とする検出対象となるBRAF遺伝子の多型の部位である、配列番号1で示される塩基配列のうち塩基番号228〜230の塩基に対応する塩基を含む核酸を増幅可能であれば特に制限されない。
また、プライマーセットの各プライマーの長さは同一でなくてもよいが、両プライマーのTm値はほぼ同一(又は、Tm値の両プライマーでの差が5℃以内)であることが好ましい。
本発明にかかるBRAF遺伝子のV600多型検出方法は、前記BRAF遺伝子のV600多型検出用プローブを少なくとも1種用いてBRAF遺伝子のV600の多型を検出することを含む多型検出方法である。
本発明にかかる多型検出方法によれば、前記多型検出用プローブを少なくとも1種含むことにより、BRAF遺伝子のV600の多型を簡便に、感度よく検出可能にする。
また、本発明の多型検出方法は、BRAF遺伝子のV600における多型の検出方法であって、下記工程(I)〜(IV)を含むことができ、下記工程(V)を含んでいてもよい。なお、本発明の多型検出方法は、前記多型検出用プローブを使用することが特徴であって、その他の構成や条件等は、以下の記載に制限されない。
(I)前記多型検出用プローブ及び試料中の一本鎖核酸を接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチド及び前記一本鎖核酸をハイブリダイズしてハイブリッドを得ること。
(II)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることにより、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定すること。
(III)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定すること。
(IV)前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸における、BRAF遺伝子のV600多型の存在を検出すること。
(V)前記多型の存在に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸における、多型を有する一本鎖核酸の存在比を検出すること。
なお、(III)でTm値を測定することには、ハイブリッドの解離温度を測定することだけでなく、ハイブリットの融解時に温度に応じて変動する蛍光シグナルの微分値の大きさを測定することを含んでもよい。
ここで、試料中の核酸とは、例えば、検出目的の多型が発生している検出対象核酸と前記多型が発生していない非検出対象核酸との合計でもよいし、検出目的の多型が発生している検出対象配列を含む増幅産物と前記多型が発生していない非検出対象配列を含む増幅産物との合計でもよい。なお、試料中の核酸における前記検出対象核酸の割合は、通常、不明であるが、結果的に、前記多型検出用プローブの添加割合(モル比)は、検出対象核酸(検出対象配列を含む増幅産物)に対して10倍以下としうる。また、前記多型検出用プローブの添加割合(モル比)は、検出対象核酸(検出対象配列を含む増幅産物)に対して、5倍以下、又は3倍以下としうる。また、その下限は特に制限されないが、例えば、0.001倍以上、0.01倍以上、又は0.1倍以上としうる。
前者のようなプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成している際には蛍光シグナルを示さないか、蛍光シグナルが弱いが、加熱によりプローブが解離すると蛍光シグナルを示すようになるか、蛍光シグナルが増加する。
また、後者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成することによって蛍光シグナルを示し、加熱によりプローブが解離すると蛍光シグナルが減少(消失)する。したがって、この蛍光標識に基づく蛍光シグナルの変化を蛍光標識特有の条件(蛍光波長等)で検出することによって、前記260nmの吸光度測定と同様に、融解の進行ならびにTm値の決定を行うことができる。
例えば、全血を試料とする場合、全血からのゲノムDNAの単離は、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、市販のゲノムDNA単離キット(商品名GFX Genomic Blood DNA Purification kit;GEヘルスケアバイオサイエンス社製)等が使用できる。
前記多型検出用プローブは、単離したゲノムDNAを含む液体試料に添加してもよいし、適当な溶媒中でゲノムDNAと混合してもよい。前記溶媒としては、特に制限されず、例えば、Tris−HCl等の緩衝液、KCl、MgCl2、MgSO4、グリセロール等を含む溶媒、PCR反応液等、従来公知のものが挙げられる。
このようにPCR等による増幅処理前に前記検出用プローブを添加する場合は、例えば、前述のように、その3'末端に、蛍光色素を付加したり、リン酸基を付加したりすることが好ましい。
ポリメラーゼの使用量としては、通常用いられている濃度であれば特に制限はない。例えば、Taqポリメラーゼを用いる場合、例えば、反応溶液量50μlに対して0.01U〜100Uの濃度とすることができる。これにより、BRAF遺伝子V600多型の検出感度が高まるなどの傾向がある。
なお、増幅の際、リアルタイムPCRによって増幅をモニタリングし、試料に含まれるDNA(検出対象配列)のコピー数を調べることもできる。すなわち、PCRによるDNA(検出対象配列)の増幅に従ってハイブリッドを形成するプローブの割合が増えるので蛍光強度が変動する。これをモニタリングすることで、試料に含まれる検出対象配列(正常DNAまたは変異DNA)のコピー数や存在比を評価することができる。
他方、ハイブリッド形成によりシグナルが増加する標識化プローブを使用した場合、前記プローブを試料に添加した際には、前記プローブは解離状態にあるため蛍光強度が小さい(または消光)が、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光強度が増加するようになる。したがって、例えば、前記試料の温度を徐々に降下して、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
本発明の薬効判定方法は、上述した多型検出方法によりBRAF遺伝子の多型を検出すること、及び、前記検出結果に基づいて薬剤に対する耐性又は薬剤の薬効を判定することを含む。
上述した多型検出方法では、本発明における多型検出用プローブを用いて、感度よく且つ簡便にBRAF遺伝子のV600多型を検出するので、BRAF遺伝子におけるこの多型に基づいて薬剤の判定を感度よく且つ簡便に行うことができる。
また、多型の有無や変異配列と正常配列の存在比に基づいて薬剤に対する耐性や薬剤の薬効を判定することができる。そして、本発明の薬効判定方法は、変異の有無や変異配列の存在比に基づいて、薬剤の投与量の増加、他の治療薬への変更等への切り替え等の疾病の治療方針を決定するのに有用である。
また、判定対象となる薬剤としては、具体的には、分子標的治療薬、悪性黒色腫用薬、抗がん剤が挙げられ、特に分子標的治療薬及び悪性黒色腫用薬が挙げられる。
本発明のBRAF遺伝子のV600多型を検出するための多型検出用キットは、上述した多型検出用プローブを含む。
この多型検出用キットには、BRAF遺伝子のうち、配列番号1で示される塩基配列において塩基番号228〜230に対応する塩基における多型を簡便にかつ感度よく検出することが可能な既述の多型検出用プローブの少なくとも1種を含むことにより、例えばBRAF遺伝子のV600多型の検出をより簡便に行うことができるなどの傾向がある。
また、本発明における多型検出用キットは、配列番号1に示す塩基配列における228番目〜230番目の塩基を含む塩基長50〜1000の領域を鋳型として増幅可能なプライマーをさらに含んでいてもよい。
なお、多型検出用キットに含まれ得るプローブ及びプライマーについては、前述した事項をそのまま適用することができる。
また、2種類以上の本発明のプローブが混合された状態で本発明の多型検出用キットに含まれる場合や、別個の試薬として含まれているが、例えば使用時に同じ反応系で各蛍光標識オリゴヌクレオチドと各検出対象配列とのTm解析を行う場合、2種以上の各プローブは発光波長が互いに異なる蛍光色素で標識化されていることが好ましい。
このように蛍光物質の種類を変えることで、同じ反応系であっても、それぞれのプローブについての検出を行うことも可能になる。
なお、「別個に収容」とは、各試薬が非接触状態を維持できるように区分けされたものであればよく、必ずしも独立して取り扱い可能な個別の容器に収容される必要はない。
多型部位を含む配列(プローブがハイブリダイズする領域)を増幅するためのプライマーセットを含むことで、例えば、より高感度に多型を検出することができる。
全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)、アークレイ社製)にて、下記表4に記載のサンプル(人工核酸混合液1μL/反応液)と下記表5に記載のPCR反応液とを用いて、PCRおよびTm解析を行った。なお、下記表4に記載のサンプルにおいて、配列番号2に記載の野生型プラスミド、配列番号3に記載のV600Eプラスミド、配列番号4に記載のV600Kプラスミド、配列番号5に記載のV600Rプラスミド、配列番号6に記載のV600Dプラスミドをそれぞれ用いた。
またTm解析は、PCRの後、95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度1℃/3秒で、40℃から75℃まで温度を上昇させ、その間の経時的な蛍光強度の変化を測定した。
図2中、(A)〜(E)は配列番号8で表されるプローブを用いた場合の結果であり、(F)〜(J)は、配列番号7で表されるプローブを用いた場合の結果である。
図3中、(A)〜(E)は配列番号9で表されるプローブを用いた場合の結果であり、(F)〜(J)は、配列番号7で表されるプローブを用いた場合の結果である。
図2及び図3中、縦軸は単位時間当たりの蛍光強度の変化量(d蛍光強度増加量/t)を表し、横軸は温度(℃)をそれぞれ表す。
この結果より、本発明の多型検出用プローブである配列番号8で表されるプローブを用いた場合には、V600K及びV600Dの2つの変異を同時に検出できることが明らかになった。
一方、図2(F)〜(J)の結果から明らかである通り、配列番号7で表されるプローブを用いた場合には、V600Eの変異のみしか検出することができなかった。
この結果より、本発明の多型検出用プローブである配列番号9で表されるプローブを用いた場合には、V600K及びV600Rの2つの変異を同時に検出できることが明らかになった。
一方、図3(F)〜(J)の結果から明らかである通り、配列番号7で表されるプローブを用いた場合には、V600Eの変異のみしか検出することができなかった。
多型検出用プローブを、下記表8で示される配列番号14〜16のプローブに変更した以外は、実施例1と同様にして、Tm解析を行った。
Claims (17)
- 下記P1蛍光標識オリゴヌクレオチドであるBRAF遺伝子のV600多型検出用プローブ:
(P1)配列番号1に示す塩基配列において塩基番号228〜237を含む10〜50塩基長の塩基配列に対して少なくとも80%以上の同一性を有し、塩基番号237に対応する塩基がシトシンである塩基配列からなり、該シトシンが蛍光色素で標識されており、且つ配列番号1における塩基配列の塩基番号228〜230のうち少なくとも一つの塩基の多型を認識するオリゴヌクレオチド(但し、配列番号7又は配列番号19に示すオリゴヌクレオチドを除く)。 - 前記P1蛍光標識オリゴヌクレオチドが、下記P1’蛍光標識オリゴヌクレオチドである請求項1に記載の多型検出用プローブ:
(P1’)配列番号1に示す塩基配列において塩基番号228〜237を含む10〜50塩基長の塩基配列に対して少なくとも80%以上の同一性を有し、塩基番号237に対応する塩基がシトシンであり、配列番号1に示す塩基配列における塩基番号228〜230のうち2以上の塩基が配列番号1に示す塩基とは異なる塩基であり、前記塩基番号237に対応するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド。 - 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、蛍光色素で標識された塩基を3’末端から数えて1〜3番目のいずれかの位置に有する、請求項1又は請求項2に記載の多型検出用プローブ。
- 前記蛍光標識のオリゴヌクレオチドが、蛍光色素で標識された塩基を3’末端に有する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の多型検出用プローブ。
- 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしていないときの蛍光強度に比べて、標的配列にハイブリダイズしているときの蛍光強度が減少または増加する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の多型検出用プローブ。
- 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしていないときの蛍光強度に比べて、標的配列にハイブリダイズしているときの蛍光強度が減少する、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の多型検出用プローブ。
- 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドの塩基長が10〜40である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の多型検出用プローブ。
- 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドの塩基長が10〜30である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の多型検出用プローブ。
- 融解曲線分析用のプローブである、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の多型検出用プローブ。
- 配列番号1に示す塩基配列において228番目に対応する塩基がグアニン又はアデニン、配列番号1に示す塩基配列において229番目に対応する塩基がアデニン又はグアニン、及び、配列番号1に示す塩基配列において230番目に対応する塩基がグアニン又はチミンである請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の多型検出用プローブ。
- 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の多型検出用プローブを用いるBRAF遺伝子V600部位の多型検出方法。
- (I)請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の多型検出用プローブおよび試料中の一本鎖核酸を接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドおよび前記一本鎖核酸をハイブリダイズさせてハイブリッドを得ることと、
(II)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることで、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定することと、
(III)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定することと、
(IV)前記Tm値に基づいて、BRAF遺伝子V600部位における変異の存在を検出することと、
を含む、請求項11に記載の多型検出方法。 - さらに、前記(I)のハイブリッドを得る前又は前記(I)のハイブリッドを得ることと同時に、核酸を増幅することを含む、請求項11又は請求項12に記載の多型検出方法。
- 請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の変異検出方法により、BRAF遺伝子V600部位における変異を検出することと、
検出された変異の有無に基づいて、薬剤に対する耐性または薬剤の薬効を判定することと、
を含む薬剤の薬効判定方法。 - 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の変異検出用プローブを含む、多型検出用試薬。
- 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の変異検出用プローブと、
配列番号1に示す塩基配列において、前記変異検出用プローブがハイブリダイズする配列を含む領域を鋳型として増幅可能なプライマーとを含む多型検出用キット。 - 配列番号1に示す塩基配列における228番目〜230番目の塩基を含む塩基長50〜1000の領域を鋳型として増幅可能なプライマーをさらに含む、請求項16に記載の多型検出用キット。
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