JP5757909B2 - 多型検出用プローブ、多型検出方法、薬効判定方法及び多型検出用試薬キット - Google Patents
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Description
また、近年、日本人におけるABCC2遺伝子の一塩基多型(SNPs)を解析したところ、様々な遺伝子多型が見出された。また、ABCC2遺伝子の5’末端から24塩基手前のシトシン(C)が、チミン(T)に変異しているC−24Tを測定することにより、薬剤耐性を予測できる可能性が示唆された(非特許文献1参照)。そのため、ABCC2遺伝子の多型を正確にかつ短時間、低コストで簡便に測定する方法が待ち望まれている。
これらの現状を踏まえ、ABCC2遺伝子多型検出のためのさらなる技術開発が待ち望まれていた。
<1> 配列番号12で示される塩基配列からなり3’末端の塩基が蛍光色素で標識されている蛍光標識オリゴヌクレオチドである、ABCC2遺伝子の多型を検出するための多型検出用プローブ。
<2> 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ、該標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少するか又は増加する、<1>に記載の多型検出用プローブ。
<3> 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ、該標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少する、<1>に記載の多型検出用プローブ。
<4> 前記多型検出用プローブが、融解曲線分析用のプローブである、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブ。
<5> <1>〜<4>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブを用いることにより、ABCC2遺伝子の多型を検出する多型検出方法。
<6> (I)<1>〜<4>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブおよび試料中の一本鎖核酸を接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドおよび前記一本鎖核酸をハイブリダイズさせてハイブリッドを得ることと、
(II)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることで、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定することと、
(III)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定することと、
(IV)前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸における、ABCC2遺伝子の多型の存在を検出することと、
を含む、<5>に記載の多型検出方法。
<7> さらに、前記(I)の前または(I)と同時に核酸を増幅することを含む、<6>に記載の多型検出方法。
<8> さらに、MDR1遺伝子の多型検出用プローブ及びCYP3A5遺伝子の多型検出用プローブからなる群より選択される少なくとも1種のプローブを用いて、MDR1遺伝子及びCYP3A5遺伝子からなる群より選択される少なくとも一方の多型を検出することを含む、<5>〜<7>のいずれか1つに記載の多型検出方法。
<9> <5>〜<8>のいずれか1つに記載の多型検出方法により、ABCC2遺伝子の多型を検出することと、検出された多型の有無に基づいて、薬剤に対する耐性または薬剤の薬効を判定することと、を含む、薬剤の薬効判定方法。
<10> <1>〜<4>のいずれか1つに記載の多型検出用プローブを含む、ABCC2遺伝子の多型を検出するための多型検出用試薬キット。
<11> さらに、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域を増幅可能なプライマーを含む、<10>に記載の多型検出用試薬キット。
<12> さらにMDR1遺伝子の多型を検出するためのプローブ及びCYP3A5遺伝子の多型を検出するためのプローブからなる群より選択される少なくとも1種以上の多型検出用プローブを含む、<10>又は<11>に記載の多型検出用試薬キット。
(P1)配列番号1で示される配列のうち207番目〜217番目の塩基を含む塩基長11〜60の配列であり、配列番号1における217番目の塩基に対応する塩基がシトシンである以外は配列番号1と同一の塩基を有する塩基配列に対して少なくとも80%以上の同一性を有し、配列番号1で示される配列のうち217番目の塩基に対応する塩基が蛍光色素で標識されている蛍光標識オリゴヌクレオチド、及び
(P1’)配列番号1で示される配列のうち207番目〜217番目の塩基を含む塩基長11〜60の配列であり、配列番号1における217番目の塩基に対応する塩基がシトシンである以外は配列番号1と同一の塩基を有する塩基配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号1で示される配列のうち217番目の塩基に対応する塩基が蛍光色素で標識されている蛍光標識オリゴヌクレオチド。
本発明にかかるABCC2遺伝子多型検出方法は、前記ABCC2遺伝子の多型を検出するための多型検出用プローブを少なくとも1種用いてABCC2遺伝子の多型を検出することを含む方法である。
本発明にかかる薬剤の薬効判定方法は、前記ABCC2遺伝子多型検出方法によりABCC2遺伝子の多型を検出すること、及び検出された多型の有無に基づいて、薬剤に対する耐性または薬剤の薬効を判定することを含む方法である。
本発明にかかる多型検出用試薬キットは、ABCC2遺伝子の多型を検出するための多型検出用プローブを含むものである。
本発明において、オリゴヌクレオチドの配列に関して「3’末端から数えて1〜3番目」という場合は、オリゴヌクレオチド鎖の3’末端を1番目として数える。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
本発明にかかるABCC2遺伝子の多型検出用プローブ(以下、単に「多型検出用プローブ」ということがある)は、下記P1及びP1’からなる群より選択される一種の蛍光標識オリゴヌクレオチドであるABCC2遺伝子の多型を検出するための多型検出用プローブである:
(P1)配列番号1で示される配列のうち207番目〜217番目の塩基を含む塩基長11〜60の配列であり、配列番号1における217番目の塩基に対応する塩基がシトシンである以外は配列番号1と同一の塩基を有する塩基配列に対して少なくとも80%以上の同一性を有し、配列番号1で示される配列のうち217番目の塩基に対応する塩基が蛍光色素で標識されている蛍光標識オリゴヌクレオチド、及び
(P1’)配列番号1で示される配列のうち207番目〜217番目の塩基を含む塩基長11〜60の配列であり、配列番号1における217番目の塩基に対応する塩基がシトシンである以外は配列番号1と同一の塩基を有する塩基配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号1で示される配列のうち217番目の塩基に対応する塩基が蛍光色素で標識されている蛍光標識オリゴヌクレオチド。
また、本発明の前記P1及びP1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、具体的には、配列番号1で示される配列のうち207番目〜217番目の塩基を含む配列である。
具体的には、本発明の前記P1の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、配列番号1における217番目の塩基に対応する塩基がC(シトシン)である以外は配列番号1と同一の塩基を有する塩基配列に対して、80%以上の同一性を示す。
また、検出感度の観点より、85%以上の同一性、90%以上の同一性、95%以上の同一性、96%以上の同一性、97%以上の同一性、98%以上の同一性又は99%以上の同一性を示してもよい。
本発明の前記P1の蛍光標識オリゴヌクレオチドと、配列番号1における217番目の塩基に対応する塩基がC(シトシン)である以外は配列番号1と同一の塩基を有する塩基配列とを比較した際の同一性が80%未満である場合には、変異型のABCC2遺伝子を含む試料核酸に対する検出感度が低くなる。
当該蛍光標識オリゴヌクレオチドは、変異型のABCC2遺伝子を含む試料核酸に対する検出感度が高くなる傾向がある。
ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。典型的なストリンジェントな条件とは、例えば、カリウム濃度は約25mM〜約50mM、及びマグネシウム濃度は約1.0mM〜約5.0mM中において、ハイブリダイゼーションを行う条件があげられる。本発明の条件の1例としてTris−HCl(pH8.6)、25mMのKCl、及び1.5mMのMgCl2中においてハイブリダイゼーションを行う条件が、挙げられるが、これに限定されるものではない。その他、ストリンジェントな条件としては、Molecular Cloning 3rd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)に記載されている。この文献は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。当業者は、ハイブリダイゼーション反応や、ハイブリダイゼーション反応液の塩濃度等を変化させることによって、このような条件を容易に選択することができる。
当該蛍光標識オリゴヌクレオチドは、特定の塩基配列を有することに加え、配列番号1における207番目の塩基の多型を認識するという機能を有するため、変異型のABCC2遺伝子を含む試料核酸に対する検出感度が高くなる傾向がある。
当該塩基が挿入、欠失又は置換した蛍光標識オリゴヌクレオチドは、前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドと同等程度の作用を示せばよく、塩基が挿入、欠失又は置換されている場合、その挿入、欠失又は置換の位置は、特に限定されない。挿入、欠失又は置換した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、蛍光標識オリゴヌクレオチド全体の長さによって異なるが、例えば1塩基〜10塩基又は1塩基〜5塩基が挙げられる。
挿入、欠失又は置換の中でも、本発明における前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドとして、前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドの塩基が置換した蛍光標識オリゴヌクレオチドが挙げられる。
置換の位置は、特に限定されない。例えば、検出感度の観点より、配列番号1で示される配列のうち207番目〜217番目の塩基以外に位置する塩基が置換されることが挙げられる。置換される塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられる。置換される塩基の数は、蛍光標識オリゴヌクレオチド全体の長さによって異なるが、例えば1塩基〜5塩基、又は1塩基〜3塩基が挙げられる。
また、本発明の前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドの長さとしては、12mer〜55mer、15mer〜45mer、又は18mer〜35merとしうる。12mer〜55merという範囲にすることにより、例えば検出感度が高くなる等の傾向がある。
また前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドの塩基長を変化させることで、例えばP1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドがその相補鎖(標的配列)と形成するハイブリッドの解離温度であるTm値を、所望の値に調整することができる。
なお、表1では、配列番号1の207番目の塩基に対応する塩基を小文字で表記し、当該配列番号1の207番目に対応する塩基がA、G、T及びCの場合であるオリゴヌクレオチドと、それぞれの蛍光標識オリゴヌクレオチドとのハイブリッドのTm値を併せて示した。また、配列番号1に示す配列に対して変異を加えたものは、下線を付した。
ここでTm値は、Meltcalc 99 free(http://www.meltcalc.com/)を用い、設定条件:Oligoconc[μM]0.2、Na eq.[mM]50の条件で算出した。
蛍光標識オリゴヌクレオチドの検出条件は特に制限されず、使用する蛍光色素により適宜決定できる。例えば、Pacific Blueは、検出波長445nm〜480nm、TAMRAは、検出波長585nm〜700nm、BODIPY FLは、検出波長520nm〜555nmで検出できる。
このような蛍光色素を有するプローブを使用すれば、それぞれの蛍光シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。蛍光色素のオリゴヌクレオチドへの結合は、通常の方法、例えば特開2002−119291号公報等に記載の方法に従って行うことができる。
また、3'末端に前述のような標識化物質(蛍光色素)を付加することによっても、同様の効果が得られる。
また、ABCC2遺伝子多型検出用プローブは、融解曲線分析用のプローブとして使用することができる。
なお、本発明に係る前記P1又は前記P1’の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、配列番号1に示す塩基配列において、217番目の塩基に対応する塩基がシトシンであり、217番目の塩基に対応する塩基が蛍光色素で標識された塩基を用いる以外は、オリゴヌクレオチドの合成方法として知られている公知の方法、例えば特開2002−119291号公報等に記載の方法に従って作製することができる。
後述するABCC2遺伝子多型検出方法では、検出対象となるABCC2遺伝子多型を含む配列をPCR法により増幅する場合には、プライマーが用いられる。
本発明において使用しうるプライマーは、目的とする検出対象となるABCC2遺伝子の多型の部位である、配列番号1で示される配列のうち207番目の塩基に対応する塩基を含む核酸を増幅可能であれば特に制限されない。
また、プライマーセットの各プライマーの長さは同一でなくてもよいが、両プライマーのTm値はほぼ同一(又は、Tm値の両プライマーでの差が5℃以内)にすることができる。
(P2)配列番号1で示される塩基配列のうち172番目〜194番目の塩基を含む塩基長23〜60の塩基配列に対して少なくとも80%以上の同一性を有するオリゴヌクレオチド、(P2’)配列番号1に示す塩基配列において172番目〜194番目の塩基を含む塩基長23〜60の塩基配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、(P3)配列番号1で示される塩基配列のうち265番目〜294番目の塩基を含む塩基長30〜60の塩基配列の相補鎖に対して少なくとも80%以上の同一性を有するオリゴヌクレオチド、及び(P3’)配列番号1に示す塩基配列において265番目〜294番目の塩基を含む塩基長30〜60の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズするオリゴヌクレオチド。
なお、ハイブリダイゼーションを行う方法についてはプローブの項に記載した方法に従えばよく、ストリンジェントな条件についてはプローブの項に記載した条件と同様の条件を適用することができる。また、同一性や、挿入、欠失又は置換の範囲についても、プローブの項に記載したものと同様の範囲を適用することができる。
本発明にかかるABCC2遺伝子多型検出方法は、前記ABCC2遺伝子多型検出用プローブを少なくとも1種用いてABCC2遺伝子の多型を検出することを含むABCC2遺伝子多型検出方法である。
本発明にかかる多型検出方法によれば、前記多型検出用プローブを少なくとも1種含むことにより、ABCC2遺伝子の多型を簡便に、感度よく検出可能にする。
また、本発明の多型検出方法は、ABCC2遺伝子における多型の検出方法であって、下記工程(I)〜(IV)を含むことができ、下記工程(V)を含んでいてもよい。なお、本発明の多型検出方法は、前記多型検出用プローブを使用することが特徴であって、その他の構成や条件等は、以下の記載に制限されない。
(I)前記多型検出用プローブ及び試料中の一本鎖核酸を接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチド及び前記一本鎖核酸をハイブリダイズしてハイブリッドを得ること。
(II)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることにより、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定すること。
(III)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定すること。
(IV)前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸における、ABCC2遺伝子における多型の存在を検出すること。
(V)前記多型の存在に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸における、多型を有する一本鎖核酸の存在比を検出すること。
なお、(III)でTm値を測定することには、ハイブリッドの解離温度を測定することだけでなく、ハイブリットの融解時に温度に応じて変動する蛍光シグナルの微分値の大きさを測定することを含んでもよい。
ここで、試料中の核酸とは、例えば、検出目的の多型が発生している検出対象核酸と前記多型が発生していない非検出対象核酸との合計でもよいし、検出目的の多型が発生している検出対象配列を含む増幅産物と前記多型が発生していない非検出対象配列を含む増幅産物との合計でもよい。なお、試料中の核酸における前記検出対象核酸の割合は、通常、不明であるが、結果的に、前記多型検出用プローブの添加割合(モル比)は、検出対象核酸(検出対象配列を含む増幅産物)に対して10倍以下としうる。また、前記多型検出用プローブの添加割合(モル比)は、検出対象核酸(検出対象配列を含む増幅産物)に対して、5倍以下、又は3倍以下としうる。また、その下限は特に制限されないが、例えば、0.001倍以上、0.01倍以上、又は0.1倍以上としうる。
前者のようなプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成している際には蛍光シグナルを示さないか、蛍光シグナルが弱いが、加熱によりプローブが解離すると蛍光シグナルを示すようになるか、蛍光シグナルが増加する。
また、後者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成することによって蛍光シグナルを示し、加熱によりプローブが解離すると蛍光シグナルが減少(消失)する。したがって、この蛍光標識に基づく蛍光シグナルの変化を蛍光標識特有の条件(蛍光波長等)で検出することによって、前記260nmの吸光度測定と同様に、融解の進行ならびにTm値の決定を行うことができる。
例えば、全血を試料とする場合、全血からのゲノムDNAの単離は、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、市販のゲノムDNA単離キット(商品名GFX Genomic Blood DNA Purification kit;GEヘルスケアバイオサイエンス社製)等が使用できる。
前記多型検出用プローブは、単離したゲノムDNAを含む液体試料に添加してもよいし、適当な溶媒中でゲノムDNAと混合してもよい。前記溶媒としては、特に制限されず、例えば、Tris−HCl等の緩衝液、KCl、MgCl2、MgSO4、グリセロール等を含む溶媒、PCR反応液等、従来公知のものが挙げられる。
このようにPCR等による増幅処理前に前記検出用プローブを添加する場合は、例えば、前述のように、その3'末端に、蛍光色素を付加したり、リン酸基を付加したりすることができる。
ポリメラーゼの使用量としては、通常用いられている濃度であれば特に制限はない。例えば、Taqポリメラーゼを用いる場合、例えば、反応溶液量50μlに対して0.01U〜100Uの濃度とすることができる。これにより、ABCC2遺伝子多型の検出感度が高まるなどの傾向がある。
なお、増幅の際、リアルタイムPCRによって増幅をモニタリングし、試料に含まれるDNA(検出対象配列)のコピー数を調べることもできる。すなわち、PCRによるDNA(検出対象配列)の増幅に従ってハイブリッドを形成するプローブの割合が増えるので蛍光強度が変動する。これをモニタリングすることで、試料に含まれる検出対象配列(正常DNAまたは変異DNA)のコピー数や存在比を検出することができる。
他方、ハイブリッド形成によりシグナルが増加する標識化プローブを使用した場合、前記プローブを試料に添加した際には、前記プローブは解離状態にあるため蛍光強度が小さい(または消光)が、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光強度が増加するようになる。したがって、例えば、前記試料の温度を徐々に降下して、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
複数の遺伝子多型を、同一の系で検出する方法としては、特に制限されるものではない。例えば、各多型を検出できる各プローブを予め混合し、試料に添加してもよいし、一本鎖核酸を含む試料に各多型を検出できる各プローブを連続的に添加してもよい。
ここで、「系」とは、蛍光標識オリゴヌクレオチド及び一本鎖核酸がハイブリダイズしたハイブリッドを含む試料で形成される1個の独立した反応系を意味する。
また、本発明における「CYP3A5遺伝子」は、既に公知であり、その塩基配列の一部は、NCBIのdbSNPアクセッションNo.rs776746の1〜801の配列を意味する。配列番号3にCYP3A5遺伝子をコードする塩基配列の一部を示す。
本発明の薬効判定方法は、上述した多型検出方法によりABCC2遺伝子の多型を検出すること、及び、前記検出結果に基づいて薬剤に対する耐性又は薬剤の薬効を判定することを含む。
上述した多型検出方法では、本発明における多型検出用プローブを用いて、感度よく且つ簡便にABCC2遺伝子の多型を検出するので、ABCC2遺伝子におけるこの多型に基づいて薬剤の判定を感度よく且つ簡便に行うことができる。
また、多型の有無や変異配列と正常配列の存在比に基づいて薬剤に対する耐性や薬剤の薬効を判定することができる。そして、本発明の薬効判定方法は、変異の有無や変異配列の存在比に基づいて、薬剤の投与量の増加、他の治療薬への変更等への切り替え等の疾病の治療方針を決定するのに有用である。
また、判定対象となる薬剤としては、具体的には、免疫抑制剤、分子標的治療薬、抗うつ薬等が挙げられ、特に免疫抑制剤及び分子標的治療薬が挙げられる。
本発明のABCC2遺伝子における多型を検出するためのABCC2遺伝子多型検出用試薬キットは、上述した多型検出用プローブを含む。
この多型検出用試薬キットには、ABCC2遺伝子のうち、配列番号1で示される配列のうち207番目の塩基における多型を簡便にかつ感度よく検出することが可能な既述の多型検出用プローブの少なくとも1種を含むことにより、例えばABCC2遺伝子の多型の検出をより簡便に行うことができるなどの傾向がある。
また、本発明における多型検出用試薬キットは、ABCC2遺伝子の多型検出用プローブに加えて、上述したMDR1遺伝子の多型検出用プローブ及びCYP3A5遺伝子の多型検出用プローブからなる群より選択される少なくとも1種のプローブをさらに含んでいてもよい。
なお、多型検出用試薬キットに含まれ得るプローブ及びプライマーについては、前述した事項をそのまま適用することができる。
2種以上の前記蛍光標識オリゴヌクレオチドは発光波長が互いに異なる蛍光色素で標識化されていてもよい。
このように蛍光色素の種類を変えることで、同じ反応系であっても、それぞれの蛍光標識オリゴヌクレオチドについての検出を同時に行うことも可能になる。
なお、「別個に収容」とは、各試薬が非接触状態を維持できるように区分けされたものであればよく、必ずしも独立して取り扱い可能な個別の容器に収容される必要はない。
多型部位を含む配列(プローブがハイブリダイズする領域)を増幅可能なプライマーセットを含むことで、例えば、より高感度に多型を検出することができる。
全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)、アークレイ社製)と、下記表4に記載した処方の検査用試薬を用いて、PCRおよびTm解析を行った。なお、使用したポリラーゼは、Taqポリメラーゼである。
またTm解析は、PCRの後、95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度1℃/3秒で、40℃から75℃まで温度を上昇させ、その間の経時的な蛍光強度の変化を測定した。
全血10μlを80μlの希釈液1に加え、よく混合した後、この混合液10μlを80μlの希釈液2に加える。この混合液17μlを95℃10分で加熱すると4μlの前処理済全血が得られる。これを1testあたりの鋳型として使用した。
図2の(D)は、ヒトゲノムを鋳型として用いたときのMDR1遺伝子において、野生型のピーク及びC3435T変異型のピークの両方について、明瞭なピークを得ることが可能であることを示している。
図2の(B)は、全血を鋳型として用いたときのCYP3A5遺伝子において、野生型(*1)のピーク及び変異型(*3)のピークの両方について、明瞭なピークを得ることが可能であることを示している。
図2の(E)は、ヒトゲノムを鋳型として用いたときのCYP3A5遺伝子において、変異型(*3)のピークについて、明瞭なピークを得ることが可能であることを示している。
図2の(C)は、全血を鋳型として用いたときのABCC2遺伝子において、野生型のピークについて、明瞭なピークを得ることが可能であることを示している。
図2の(F)は、ヒトゲノムを鋳型として用いたときのABCC2遺伝子について、野生型のピーク及びC−24T変異型のピークの両方について、明瞭なピークを得ることが可能であることを示している。
全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)、アークレイ社製)と、下記表9に記載した処方の反応液を用いてTm解析を行った。
野生型の鋳型としては、一本鎖核酸 ABCC2-C-−24T-WT(atattaatagaagagtcttTgttccagacgcagtccagga 配列番号25)を使用し、変異型の鋳型としては、一本鎖核酸 ABCC2-C-−24T-mt(atattaatagaagagtcttCgttccagacgcagtccagga 配列番号26)を使用し、混合型の鋳型としては、一本鎖核酸 ABCC2-C-−24T-WTと、一本鎖核酸 ABCC2-C-−24T-mtとを、1:1の割合で混合させたものを使用した。
多型検出用プローブを、配列番号12に記載の塩基配列で示される3T-ABCC2-C-−24T-mt-F2(tctggaacAaagactcttc-(TAMRA))から、配列番号27に記載の塩基配列で示される3T-ABCC2-C-−24T-mt-F1((TAMRA)-ctggaacAaagactcttctatt−(リン酸化))に変更した以外は、実施例2と同様にして、Tm解析を行った。
Claims (12)
- 配列番号12で示される塩基配列からなり3’末端の塩基が蛍光色素で標識されている蛍光標識オリゴヌクレオチドである、ABCC2遺伝子の多型を検出するための多型検出用プローブ。
- 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ、該標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少するか又は増加する、請求項1に記載の多型検出用プローブ。
- 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ、該標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少する、請求項1に記載の多型検出用プローブ。
- 前記多型検出用プローブが、融解曲線分析用のプローブである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の多型検出用プローブ。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の多型検出用プローブを用いることにより、ABCC2遺伝子の多型を検出する多型検出方法。
- (I)請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の多型検出用プローブおよび試料中の一本鎖核酸を接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドおよび前記一本鎖核酸をハイブリダイズさせてハイブリッドを得ることと、
(II)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることで、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定することと、
(III)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定することと、
(IV)前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸における、ABCC2遺伝子の多型の存在を検出することと、
を含む、請求項5に記載の多型検出方法。 - さらに、前記(I)の前または(I)と同時に核酸を増幅することを含む、請求項6に記載の多型検出方法。
- さらに、MDR1遺伝子の多型検出用プローブ及びCYP3A5遺伝子の多型検出用プローブからなる群より選択される少なくとも1種のプローブを用いて、MDR1遺伝子及びCYP3A5遺伝子からなる群より選択される少なくとも一方の多型を検出することを含む、請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の多型検出方法。
- 請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載の多型検出方法により、ABCC2遺伝子の多型を検出することと、
検出された多型の有無に基づいて、薬剤に対する耐性または薬剤の薬効を判定することと、
を含む、薬剤の薬効判定方法。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の多型検出用プローブを含む、ABCC2遺伝子の多型を検出するための多型検出用試薬キット。
- さらに、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域を増幅可能なプライマーを含む、請求項10に記載の多型検出用試薬キット。
- さらにMDR1遺伝子の多型を検出するためのプローブ及びCYP3A5遺伝子の多型を検出するためのプローブからなる群より選択される少なくとも1種以上の多型検出用プローブを含む、請求項10又は請求項11に記載の多型検出用試薬キット。
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