JP2013234339A - 焼結材の製造方法、及び焼結材 - Google Patents
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Abstract
【課題】低保磁力なFe-Si合金の焼結材を生産性よく製造できる焼結材の製造方法、及び焼結材を提供する。
【解決手段】原料粉末として、Fe-Si系合金からなる粉末であって、Siの含有量が2質量%〜4質量%の低Si合金粉末と、9質量%以上である高Si合金粉末とを含む混合粉末を用意する。この混合粉末を加圧圧縮し、得られた粉末成形体を焼結して、Siの含有量が5.5質量%〜7.5質量%であるFe-Si系合金からなる焼結材を製造する。Siの含有量が異なる複数種の粉末を用いることで、低Si合金粉末の存在によって良好な成形性を有することができ、高Si合金粉末の存在によって、焼結時にSiが十分に拡散して、Siの含有量が6質量%程度の低保磁力なFe-Si系合金からなる焼結材が得られる。
【選択図】図1
【解決手段】原料粉末として、Fe-Si系合金からなる粉末であって、Siの含有量が2質量%〜4質量%の低Si合金粉末と、9質量%以上である高Si合金粉末とを含む混合粉末を用意する。この混合粉末を加圧圧縮し、得られた粉末成形体を焼結して、Siの含有量が5.5質量%〜7.5質量%であるFe-Si系合金からなる焼結材を製造する。Siの含有量が異なる複数種の粉末を用いることで、低Si合金粉末の存在によって良好な成形性を有することができ、高Si合金粉末の存在によって、焼結時にSiが十分に拡散して、Siの含有量が6質量%程度の低保磁力なFe-Si系合金からなる焼結材が得られる。
【選択図】図1
Description
本発明は、Fe-Si系合金からなる焼結材、及び焼結材の製造方法に関するものである。特に、Fe-Si系合金からなり、低保磁力な焼結材を生産性よく製造できる製造方法に関する。
純鉄や鉄合金といった軟磁性材料から構成された磁性部材が種々の分野で利用されている。このような磁性部材は、例えば、巻線を螺旋状に巻回して構成されたコイルが配置される磁心が挙げられる。具体的には、モータ用磁心やリアクトル用磁心、ホール素子等の磁電変換素子を具える電流センサにおいて磁路を構成する磁心などが挙げられる。
上記磁性部材には、従来、パーマロイや珪素鋼といった透磁率が高い材質からなる薄板を所定の形状に打ち抜き、所定の形状となった複数の薄板を積層した積層体が利用されている。
上記磁性部材に求められる特性として、例えば、上述の電流センサ用の磁性部材では、保磁力が低いことが挙げられる。上述のパーマロイや珪素鋼は、保磁力が低く、これらの薄板からなる積層体は、低保磁力な磁性部材である。
特許文献1では、Fe-3%Si合金(質量割合。以下、この表記において同様)からなる焼結材を提案している。この焼結材は、純鉄粉と有機液体とを混合して純鉄粉の表面を有機液体で濡らした後、この粉末とSi粉末とを混合した混合粉末を成形し、得られた粉末成形体を焼結することで得られる。
低保磁力の磁性部材を生産性よく製造することが望まれる。
上述の積層体は、非常に薄い素材板を製造し、この素材板に適宜絶縁被覆を形成した後に所定の形状に打ち抜き、更に打ち抜いた板を積層することで得られる。従って、製造工程が多い上に、打ち抜きによる廃棄量が多く(歩留まりが悪く)、生産性に劣る。また、上述の積層体では、形状が打ち抜き可能なものに制限される上に、後加工が実質的にできないことから、複雑な立体形状の磁性部材が得られず、形状の自由度が小さい。
一方、焼結材は、原料粉末を塑性変形させて成形して緻密な成形体とすることから、原料の廃棄が実質的に生じない(歩留まりがよい)。しかし、特許文献1に記載される製造方法では、純鉄粉(Fe)やSi粉末が局所的に残存してSiの濃度が不均一な合金とならないようにするために、純鉄粉に特別な前処理(有機液体の混合)が必要であり、工程数が多い。そのため、この製造方法も、生産性の低下やコスト高を招く。
ここで、Fe-Si系合金では、Siの含有量が6.5質量%近傍であると、保磁力が最も小さくなることが知られている。そこで、低保磁力な磁性部材を製造するにあたり、例えば、Fe-6.5%Si合金からなる合金粉末を用いて焼結することが考えられる。しかし、Fe-Si系合金では、Siの含有量が高いほど、高硬度となって塑性変形性に劣る。Siの含有量が4質量%超、更に5質量%以上のFe-Si系合金粉末のみを用いた場合、所望の形状の粉末成形体を精度よく成形することが難しい、若しくは実質的に成形できない。従って、従来は、特許文献1に記載されるように、塑性変形性に優れる純鉄粉を用いていた。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、Fe-Si系合金からなり、低保磁力な焼結材を生産性よく製造可能な焼結材の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、Fe-Si系合金からなり、低保磁力な焼結材を提供することにある。
本発明は、Fe-Si系合金からなる焼結材を製造するにあたり、原料粉末として、Siの含有量が異なる複数種の合金粉末を用いることで上記目的を達成する。
本発明の焼結材の製造方法は、Fe-Si系合金からなる焼結材を製造する方法に係るものであり、以下の準備工程と、成形工程と、焼結工程とを具える。
準備工程:原料粉末として、Siの含有量が2質量%以上4質量%以下であるFe-Si系合金からなる低Si合金粉末と、Siの含有量が9質量%以上であるFe-Si系合金からなる高Si合金粉末とを含む混合粉末を用意する工程。
成形工程:上記混合粉末を加圧圧縮して粉末成形体を成形する工程。
焼結工程:上記粉末成形体を焼結して、Siの含有量が5.5質量%以上7.5質量%以下であるFe-Si系合金からなる焼結材を製造する工程。
準備工程:原料粉末として、Siの含有量が2質量%以上4質量%以下であるFe-Si系合金からなる低Si合金粉末と、Siの含有量が9質量%以上であるFe-Si系合金からなる高Si合金粉末とを含む混合粉末を用意する工程。
成形工程:上記混合粉末を加圧圧縮して粉末成形体を成形する工程。
焼結工程:上記粉末成形体を焼結して、Siの含有量が5.5質量%以上7.5質量%以下であるFe-Si系合金からなる焼結材を製造する工程。
原料に、低Si合金粉末と高Si合金粉末とを用いる本発明の焼結材の製造方法は、塑性変形性に優れる低Si合金粉末によって良好な成形性を有することができ、高Si合金粉末によってSiの含有量が6.5質量%程度の焼結材を製造できる。特に、Siの含有量が上述の特定の範囲である低Si合金粉末は、焼結温度(1100℃〜1400℃程度)におけるSiの拡散係数が純鉄粉に比較して数十倍程度大きいため、焼結を促進できる。従って、上述の特定の組成の原料粉末を用いる本発明の製造方法は、焼結性に優れることから、原料粉末に特別な前処理を行うことなく、Siの含有量が6.5質量%程度のFe-Si系合金からなり、低保磁力な焼結材を良好に、かつ生産性よく製造することができる。
また、本発明の焼結材の製造方法は、基本的には粉末冶金法を利用することから、所望の形状の焼結材を得るにあたり、原料を廃棄することがなく、廃棄量を低減できることからも、生産性に優れる。更に、本発明の焼結材の製造方法は、基本的には粉末冶金法を利用することから、形状の自由度が大きく、種々の形状の磁性部材を製造可能である。
本発明の一形態として、上記低Si合金粉末の平均粒径が上記高Si合金粉末の平均粒径よりも大きく、上記低Si合金粉末の平均粒径が45μm以上150μm以下、上記高Si合金粉末の平均粒径が1μm以上45μm以下である形態が挙げられる。
上記形態は、比較的高硬度な高Si合金粉末が比較的塑性変形性に優れる低Si合金粉末よりも小さいことで、成形時、低Si合金粉末が十分に塑性変形でき、混合粉末の成形性に優れる。また、上記形態は、低Si合金粉末が大き過ぎないことから、焼結時、高Si合金中のSiが、低Si合金からなる各粒子の内部にまで短時間でも十分に拡散でき、焼結性に優れる。
本発明の一形態として、焼結温度を1100℃以上にする形態が挙げられる。
上記形態は、Siが十分に拡散でき、Siの含有量が6.5質量%程度のFe-Si系合金を良好に製造できる。
本発明の焼結材は、上記本発明の焼結材の製造方法によって製造されたものであり、Siの含有量が5.5質量%以上7.5質量%以下であるFe-Si系合金から構成される。
本発明の焼結材は、低保磁力である。また、本発明の焼結材は、成形性に優れる上に、生産性にも優れる。更に、本発明の焼結材は、種々の形状の磁性部材に利用できる。
本発明の焼結材の製造方法は、Fe-Si系合金からなり、低保磁力な焼結材を生産性よく製造できる。本発明焼結材は、低保磁力である。
以下、本発明をより詳細に説明する。
[製造方法]
(準備工程)
〔原料粉末の組成〕
本発明の焼結材の製造方法は、焼結後にSiの含有量が5.5質量%〜7.5質量%であるFe-Si系合金からなる焼結材を製造するにあたり、原料粉末として、Fe-Si系合金からなり、Siの含有量が異なるものを複数用いることを最大の特徴とする。具体的には、Siの含有量が少ない低Si合金粉末と、Siの含有量が多い高Si合金粉末の少なくとも2種類の粉末を原料粉末に用いる。
[製造方法]
(準備工程)
〔原料粉末の組成〕
本発明の焼結材の製造方法は、焼結後にSiの含有量が5.5質量%〜7.5質量%であるFe-Si系合金からなる焼結材を製造するにあたり、原料粉末として、Fe-Si系合金からなり、Siの含有量が異なるものを複数用いることを最大の特徴とする。具体的には、Siの含有量が少ない低Si合金粉末と、Siの含有量が多い高Si合金粉末の少なくとも2種類の粉末を原料粉末に用いる。
低Si合金粉末におけるSiの含有量は、2質量%以上4質量%以下とする。Siの含有量が2質量%未満のFe-Si合金は、焼結温度の範囲:1100℃〜1400℃程度においてγ相(オーステナイト相)の単相となり、Siの拡散係数が小さく(拡散速度が遅く)、実質的に焼結されない。そのため、最終的に、Siの含有量が6.5質量%程度のFe-Si系合金を生成することが難しい。Siの含有量が2質量%以上のFe-Si合金は、1100℃〜1400℃程度においてα相の単相となり、Siの拡散速度がγ相の数十倍となる。低Si合金粉末におけるSiの含有量が6.5質量%に近づくほど保磁力の低下に寄与するものの、硬くなり塑性変形性の低下を招くことから、4質量%以下とする。低Si合金粉末は、上述のSiの含有範囲から選択されたSiを含有した粉末であって、Siの含有量が異なる複数種の粉末を混合したものを利用できるが、1種の粉末とすると、準備が容易である。
高Si合金粉末におけるSiの含有量は、9質量%以上とする。Siの含有量が9質量%未満では、高Si合金から低Si合金に拡散するSiが不足して、Siの含有量が5.5質量%以上であるFe-Si系合金からなる焼結材を製造できない。また、この場合、単にSiの含有量が高く(4質量%超9質量%未満)、塑性変形性に劣る高硬度な粉子が多く存在する粉末を原料に用いることになり、成形性に劣る。高Si合金粉末におけるSiの含有量が多いほど、焼結時、拡散するSiが多くなって、Siの含有量が6.5質量%程度であるFe-Si系合金を得易く、15質量%以上が好ましい。高Si合金粉末も、Siの含有量が9質量%以上である粉末であって、Siの含有量が異なる複数種の粉末を混合したものを利用できるが、1種の粉末とすると、準備が容易である。
低Si合金粉末及び高Si合金粉末は、代表的には、上述の範囲でSiを含有し、残部がFe及び不可避不純物というFe-Siの二相合金からなるものが挙げられる。その他、合計含有量が1.5質量%以下の範囲で、Si以外の添加元素(例えば、Pなど)を含むことを許容する。Pは焼結を促進させ、焼結材の高密度化や結晶粒の粗大化などの効果があり、焼結材の保磁力の低下に寄与する。
低Si合金粉末及び高Si合金粉末の各配合量(質量)は、焼結材を構成するFe-Si系合金中のSiの含有量が所望の値(5.5質量%〜7.5質量%から選択された値)となるように、各粉末のSiの含有量に応じて選択する。
〔原料粉末の大きさ〕
低Si合金粉末及び高Si合金粉末の大きさは、適宜選択することができる。成形性及び焼結性を考慮するといずれも、平均粒径が150μm以下が好ましい。特に、高Si合金粉末は、低Si合金粉末に比較して高硬度であり、成形性に劣ることから、低Si合金粉末よりも小さい方が好ましい。具体的には、高Si合金粉末の平均粒径は、45μm以下であると、原料粉末が成形性に優れて好ましく、30μm以下、更に20μm以下が好ましい。但し、高Si合金粉末が小さ過ぎると、取り扱い難く、作業性に劣ることから、高Si合金粉末の平均粒径は、1μm以上が好ましく、3μm以上、更に5μm以上であるとハンドリング性に優れてより好ましい。
低Si合金粉末及び高Si合金粉末の大きさは、適宜選択することができる。成形性及び焼結性を考慮するといずれも、平均粒径が150μm以下が好ましい。特に、高Si合金粉末は、低Si合金粉末に比較して高硬度であり、成形性に劣ることから、低Si合金粉末よりも小さい方が好ましい。具体的には、高Si合金粉末の平均粒径は、45μm以下であると、原料粉末が成形性に優れて好ましく、30μm以下、更に20μm以下が好ましい。但し、高Si合金粉末が小さ過ぎると、取り扱い難く、作業性に劣ることから、高Si合金粉末の平均粒径は、1μm以上が好ましく、3μm以上、更に5μm以上であるとハンドリング性に優れてより好ましい。
低Si合金粉末は、小さ過ぎると成形し難くなることから、低Si合金粉末の平均粒径は、45μm以上が好ましく、50μm以上、更に70μm以上であると、高Si合金粉末よりも十分に大きいことで成形性により優れる。低Si合金粉末の平均粒径は、150μm以下であると、焼結時、低Si合金からなる各粒子の内部にまでSiが十分に拡散できて焼結性に優れ、125μm以下、更に100μm以下であると、短時間でもSiを十分に拡散できて焼結性を更に高め易い。また、低Si合金粉末の平均粒径は、高Si合金粉末の平均粒径の3倍以上、更に5倍以上であると、低Si合金粉末が十分に大きく、成形性に優れる。
〔原料粉末の製造方法〕
低Si合金粉末及び高Si合金粉末は、公知のFe-Si系合金粉末の製造方法、例えば、アトマイズ法などを利用して製造できる。上述のSiの含有量や平均粒径を満たす市販の粉末を利用してもよい。
低Si合金粉末及び高Si合金粉末は、公知のFe-Si系合金粉末の製造方法、例えば、アトマイズ法などを利用して製造できる。上述のSiの含有量や平均粒径を満たす市販の粉末を利用してもよい。
〔原料粉末に含まれるその他のもの〕
原料粉末には、潤滑剤を含有させることができる。この場合、(1)成形性を向上でき、寸法精度に優れる成形体が得られる、(2)成形時の摩擦を低減できるため、金型から成形体を抜き出し易く、表面性状に優れる成形体が得られる、といった利点を有する。潤滑剤は、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドといった有機物、窒化硼素やグラファイトなどの無機物などが挙げられる。潤滑剤の含有量は、原料粉末に用いる低Si合金粉末及び高Si合金粉末の合計量(潤滑剤を含まない合金粉末のみの量)に対して0.1質量%以上1.0質量%以下であると、上記利点を十分に得られる上に、原料における合金の割合の低下を防止できる。
原料粉末には、潤滑剤を含有させることができる。この場合、(1)成形性を向上でき、寸法精度に優れる成形体が得られる、(2)成形時の摩擦を低減できるため、金型から成形体を抜き出し易く、表面性状に優れる成形体が得られる、といった利点を有する。潤滑剤は、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドといった有機物、窒化硼素やグラファイトなどの無機物などが挙げられる。潤滑剤の含有量は、原料粉末に用いる低Si合金粉末及び高Si合金粉末の合計量(潤滑剤を含まない合金粉末のみの量)に対して0.1質量%以上1.0質量%以下であると、上記利点を十分に得られる上に、原料における合金の割合の低下を防止できる。
(成形工程)
原料粉末として、上述の低Si合金粉末及び高Si合金粉末を含む混合粉末を用意したら、この原料粉末を所望の形状の金型の成形空間に充填して成形する。金型は、焼結材の製造に利用されている一般的なものが利用できる。代表的な金型は、貫通孔が設けられた筒状のダイと、この貫通孔に挿入配置されて原料粉末を加圧圧縮する上パンチ及び下パンチとを具えるものが挙げられる。ダイの貫通孔の内周面と、この貫通孔の一方の開口部に挿入した下パンチとで形成される成形空間に、上述の原料粉末を充填した後、上記貫通孔の他方の開口部に挿入した上パンチと、上記下パンチとで原料粉末を所定の圧力で加圧・圧縮して粉末成形体を形成し、ダイから粉末成形体を抜き出す。この金型を用いた場合、ダイの輪郭形状、及び上パンチ・下パンチの端面形状に応じた柱状の粉末成形体が得られる。上述の筒状のダイ内に挿通配置されるコアロッドを具える金型を用いると、コアロッドの形状に応じた貫通孔や溝を有する粉末成形体を形成できる。コアロッドは、上パンチ及び下パンチの少なくとも一方に挿通配置する。
原料粉末として、上述の低Si合金粉末及び高Si合金粉末を含む混合粉末を用意したら、この原料粉末を所望の形状の金型の成形空間に充填して成形する。金型は、焼結材の製造に利用されている一般的なものが利用できる。代表的な金型は、貫通孔が設けられた筒状のダイと、この貫通孔に挿入配置されて原料粉末を加圧圧縮する上パンチ及び下パンチとを具えるものが挙げられる。ダイの貫通孔の内周面と、この貫通孔の一方の開口部に挿入した下パンチとで形成される成形空間に、上述の原料粉末を充填した後、上記貫通孔の他方の開口部に挿入した上パンチと、上記下パンチとで原料粉末を所定の圧力で加圧・圧縮して粉末成形体を形成し、ダイから粉末成形体を抜き出す。この金型を用いた場合、ダイの輪郭形状、及び上パンチ・下パンチの端面形状に応じた柱状の粉末成形体が得られる。上述の筒状のダイ内に挿通配置されるコアロッドを具える金型を用いると、コアロッドの形状に応じた貫通孔や溝を有する粉末成形体を形成できる。コアロッドは、上パンチ及び下パンチの少なくとも一方に挿通配置する。
上述の原料粉末は、上記潤滑剤などを混合した造粒粉としてもよい。平均粒径が大きな造粒粉とすると、金型の成形空間に原料を充填する時間を短縮できる。成形にあたり、金型(特にダイ)に適宜、潤滑剤を塗布すると、粉末成形体を抜き出し易い。
成形圧力は、例えば、5ton/cm2(≒490MPa)以上15ton/cm2(≒1470MPa)以下が挙げられる。5ton/cm2以上とすることで、高硬度な高Si合金粉末を含む原料粉末であっても十分に圧縮でき、15ton/cm2以下とすることで、金型寿命が過度に短くならない。
(焼結工程)
金型から抜き出した粉末成形体を焼結することで、Siの含有量が6.5質量%近傍であり、低保磁力な焼結材が得られる。焼結温度は、1100℃以上1400℃以下が挙げられる。1100℃未満では、Siが十分に拡散せず、上述の特定のSi濃度の焼結材が得られない。焼結温度が高いほどSiが十分に拡散して、均一的な組成になり易く、保磁力を小さくできる傾向にある。しかし、焼結温度が高過ぎると、融点(液相点)が低い高Si合金が焼結する前に溶出するため、焼結温度は、1400℃以下が好ましい。保持時間は、1時間以上が挙げられる。
金型から抜き出した粉末成形体を焼結することで、Siの含有量が6.5質量%近傍であり、低保磁力な焼結材が得られる。焼結温度は、1100℃以上1400℃以下が挙げられる。1100℃未満では、Siが十分に拡散せず、上述の特定のSi濃度の焼結材が得られない。焼結温度が高いほどSiが十分に拡散して、均一的な組成になり易く、保磁力を小さくできる傾向にある。しかし、焼結温度が高過ぎると、融点(液相点)が低い高Si合金が焼結する前に溶出するため、焼結温度は、1400℃以下が好ましい。保持時間は、1時間以上が挙げられる。
焼結時の雰囲気は、適宜選択することができる。例えば、非酸化性雰囲気(酸素濃度:1体積%以下)とすると、原料粉末の酸化を防止できて好ましい。具体的な非酸化性雰囲気は、窒素やアルゴンといった不活性ガス雰囲気、酸素濃度が1体積%以下の真空雰囲気が挙げられる。
[焼結材]
本発明の焼結材の製造方法では、種々の形状の金型を利用することで、種々の形状の粉末成形体が得られ、この粉末成形体を焼結することで、種々の形状の焼結材が得られる。従って、本発明の焼結材の製造方法によって製造された本発明の焼結材は、用途に応じて、適宜、形状を選択することができる。例えば、焼結材を電流センサの磁心に利用する場合には、磁電変換素子が配置されるギャップを有する適宜な形状とすることができる。代表的には、C字状が挙げられる。C字の内寸(貫通部分の大きさ)は、測定対象である導体の大きさなどに応じて選択することができる。ギャップの大きさは、磁電変換素子の大きさに応じて選択することができる。磁電変換素子は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)、磁気インピーダンス素子(MI素子)、サーチコイルなどが挙げられる。その他の形状として、各種の柱状(角柱や円柱など)や筒状(角筒や円環など)が挙げられる。
本発明の焼結材の製造方法では、種々の形状の金型を利用することで、種々の形状の粉末成形体が得られ、この粉末成形体を焼結することで、種々の形状の焼結材が得られる。従って、本発明の焼結材の製造方法によって製造された本発明の焼結材は、用途に応じて、適宜、形状を選択することができる。例えば、焼結材を電流センサの磁心に利用する場合には、磁電変換素子が配置されるギャップを有する適宜な形状とすることができる。代表的には、C字状が挙げられる。C字の内寸(貫通部分の大きさ)は、測定対象である導体の大きさなどに応じて選択することができる。ギャップの大きさは、磁電変換素子の大きさに応じて選択することができる。磁電変換素子は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)、磁気インピーダンス素子(MI素子)、サーチコイルなどが挙げられる。その他の形状として、各種の柱状(角柱や円柱など)や筒状(角筒や円環など)が挙げられる。
[試験例]
種々の材質からなる原料粉末を用意し、種々の温度で焼結して焼結材を作製し、焼結材の保磁力を調べた。
種々の材質からなる原料粉末を用意し、種々の温度で焼結して焼結材を作製し、焼結材の保磁力を調べた。
この試験では、焼結後にSiを6.5質量%含有するFe-6.5%Si合金が1000g得られるように、原料粉末の組成から理論上の混合量を選択した。
試料No.1では、表1に示すように、Fe-Si系合金からなり、Siの含有量が異なる2種類の粉末を用意した。一方の粉末は、Siの含有量が2質量%であり、残部がFe及び不可避不純物からなる低Si合金粉末:Fe-2%Siであり、他方の粉末は、Siの含有量が18質量%であり、残部がFe及び不可避不純物からなる高Si合金粉末:Fe-18%Siである。低Si合金粉末の平均粒径は、70μm、高Si合金粉末の平均粒径:20μmである。この試験において平均粒径は、市販の測定装置により測定した50%粒径(質量)である。
試料No.2も、試料No.1と同様に、Fe-Si系合金からなり、Siの含有量が異なる2種類の粉末を用意した。一方の粉末は、Siの含有量が3質量%であり、残部がFe及び不可避不純物からなる低Si合金粉末:Fe-3%Siであり、他方の粉末は、試料No.1と同じ高Si合金粉末:Fe-18%Siである。低Si合金粉末の平均粒径は、70μm、高Si合金粉末の平均粒径は20μmである。
試料No.100は、純鉄(Fe:99.7質量%以上、残部:不可避不純物)からなる純鉄粉と、試料No.1,No.2と同じ高Si合金粉末:Fe-18%Siとを用意した。純鉄粉の平均粒径は、70μm、高Si合金粉末の平均粒径は、20μmである。
各試料における原料粉末の配合量(質量)は、以下の通りである。
試料No.1;低Si合金粉末:Fe-2%Si 719g、高Si合金粉末:Fe-18%Si 281g
試料No.2;低Si合金粉末:Fe-3%Si 766g、高Si合金粉末:Fe-18%Si 234g
試料No.100;純鉄粉 639g、高Si合金粉末:Fe-18%Si 361g
試料No.1;低Si合金粉末:Fe-2%Si 719g、高Si合金粉末:Fe-18%Si 281g
試料No.2;低Si合金粉末:Fe-3%Si 766g、高Si合金粉末:Fe-18%Si 234g
試料No.100;純鉄粉 639g、高Si合金粉末:Fe-18%Si 361g
各試料の粉末にそれぞれ潤滑剤を添加し、V型混合機により十分に混合して、混合粉末を作製した。潤滑剤は、エチレンビスステアリン酸アミドとし、その含有量は、低Si合金粉末と高Si合金粉末との合計量に対して0.6質量%とした。各試料の混合粉末を金型の成形空間に給粉し、成形圧力を8ton/cm2として加圧・圧縮し、リング状の粉末成形体(外径:34mm×内径:20mm×厚さ:5mm)を作製した。試料No.1,No.2,No.100のいずれも、良好に成形することができた。
各試料の粉末成形体を窒素雰囲気中、600℃×1時間の熱処理を施して、潤滑剤を除去した後、1100℃〜1300℃の温度範囲から選択した温度で熱処理を施し(焼結し)、得られた各焼結材の保磁力を測定した。熱処理条件(焼結条件)はいずれも、真空雰囲気(到達真空度: 5Pa以下)、保持時間:1時間とした。熱処理温度(焼結温度)ごとの保磁力を表1に示す。保磁力(Oe)は、各試料のリング状の焼結材に同一の巻線を配置して測定部材を作製し、BHトレーサ(理研電子株式会社製DCBHトレーサ)を用いて測定した。
表1に示すように、低Si合金粉末と高Si合金粉末とを含む原料粉末を用いて作製した試料No.1,No.2の焼結材は、純鉄粉と高Si合金粉末との原料粉末を用いて作製した試料No.100の焼結材に比較して、保磁力が非常に低いことが分かる。また、この試験から、高Si合金粉末の組成を一定とすると、低Si合金粉末として、Siの含有量が多いものを用いた方(ここでは試料No.2)が、保磁力をより低減できることが分かる。更に、この試験から、低Si合金粉末と高Si合金粉末とを含む原料粉末を用いて焼結材を製造する場合、焼結温度が高いほど、保磁力を低減できることが分かる。ここでは、焼結温度を1200℃以上とすると、1.0Oe(≒79.6A/m)以下、更に0.8Oe(≒63.7A/m)以下、焼結温度を1300℃以上とすると、0.7Oe(≒55.7A/m)以下、更に0.6Oe(≒47.7A/m)以下の焼結材が得られることが分かる。一方、試料No.100の焼結材では、焼結温度が高い場合(1350℃)、原料の一部が溶出して生成された粒状の塊が付着していた。この塊の組成を調べたところ、Fe-18質量%Siであった。このことから、試料No.100では、焼結温度が高くなると、純鉄に比較して液相点が低いFe-18質量%Siが溶出することが確認された。
また、得られた各焼結材の断面を観察した。ここでは、焼結材の断面を鏡面研磨して走査型電子顕微鏡:SEMで観察した。更に、SEM-EDX分析装置(EDX:エネルギー分散X線分光法)を用いて、研磨した上記断面の組成分析を行った。図1に、試料No.2,No.100において焼結温度が1230℃の焼結材のSEM像とSiマッピング像とを示す。図1(α),図1(β)がSiマッピング像であり、微細な白いドットがSiを示す。
図1(A)に示すように、低Si合金粉末と高Si合金粉末とを含む原料粉末を用いた試料No.2では、粉末粒界が実質的に確認できず、両合金粉末が良好に焼結されていることがわかる。また、図1(α)に示すようにNo.2では、焼結材の全体に亘ってSiが均一的に分散して存在すること、つまり、Siの拡散が十分に進み、焼結されていることが分かる。なお、試料No.1においても、同様の結果が得られていることを確認している。
一方、図1(B)に示すように、純鉄粉と高Si合金粉末とを原料粉末に用いた試料No.100では、粉末粒界が明確に存在しており、両者が十分に焼結されていないことが分かる。また、図1(β)に示すようにNo.100では、Siが多い部分(焼結前に高Si合金粉末であったと思われる部分)と、Siが実質的に存在しない部分(焼結前に純鉄粉であったと思われる部分)とが存在していることが分かる。このことから、試料No.100では、Siが十分に拡散せず、均一的な組成のFe-Si合金が得られていないことが分かる。
上述の観察結果から低Si合金粉末と高Si合金粉末とを含む原料粉末を用いた試料No.1,No.2では、焼結後、均一的な組成のFe-Si合金(この試験では、Fe-6.5質量%Si合金)が得られていることで、保磁力が低くなった、と考えられる。また、純鉄粉と高Si合金粉末とを原料粉末に用いた試料No.100では、上述の熱処理によって焼結が十分になされず保磁力が高いFeと、保磁力が高いFe-18質量%Si成分との双方が存在することで、保磁力が高くなった、と考えられる。
この試験から、低Si合金粉末と高Si合金粉末とを含む原料粉末を用いることで、Siの含有量が6.5質量%程度であるFe-Si系合金からなり、低保磁力な焼結材を生産性よく製造することができることが確認された。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、原料粉末の材質(Si含有量、配合割合など)・粒径などを適宜変更することができる。
本発明の焼結材の製造方法は、Siの含有量が5.5質量%〜7.5質量%であるFe-Si系合金からなる焼結材の製造に利用することができる。本発明の焼結材は、低保磁力が望まれる用途の磁性部材に利用することができる。特に、本発明の焼結材は、直流電力が供給されるコイルが配置される磁心、例えば、直流用電流センサの磁心などに好適に利用することができる。
Claims (4)
- 原料粉末として、Siの含有量が2質量%以上4質量%以下であるFe-Si系合金からなる低Si合金粉末と、Siの含有量が9質量%以上であるFe-Si系合金からなる高Si合金粉末とを含む混合粉末を用意する工程と、
前記混合粉末を加圧圧縮して粉末成形体を成形する工程と、
前記粉末成形体を焼結して、Siの含有量が5.5質量%以上7.5質量%以下であるFe-Si系合金からなる焼結材を製造する工程とを具える焼結材の製造方法。 - 前記低Si合金粉末の平均粒径は、前記高Si合金粉末の平均粒径よりも大きく、
前記低Si合金粉末の平均粒径は、45μm以上150μm以下、
前記高Si合金粉末の平均粒径は、1μm以上45μm以下である請求項1に記載の焼結材の製造方法。 - 焼結温度を1100℃以上にする請求項1又は2に記載の焼結材の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼結材の製造方法によって製造された焼結材。
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