JP2013234202A - 過活動膀胱障害の治療のためのスフィンゴミエリンリポソーム - Google Patents

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Abstract

【課題】過活動膀胱障害の治療のためのスフィンゴミエリンリポソームの提供。
【解決手段】本発明は、動物およびヒトの膀胱の炎症および機能障害を含むさまざまな疾患を治療するため、リポソームからなる脂質担体を点滴注入する医薬組成物および方法に関する。間質性膀胱炎のような過活動膀胱障害から生じる神経因性の痛みおよび異常な筋肉収縮を予防し、管理し、改善および/または治療するための該組成物において、該リポソームは、スフィンゴミエリンまたはスフィンゴミエリン代謝物を含むことが好ましい。抗生物質、鎮痛治療剤および抗癌剤のような薬剤を膀胱、生殖泌尿器路、胃腸管系、肺器官系およびその他の器官または身体組織系統へ送達するため、脂質担体としてリポソームが用いられる。本発明はまた、膀胱の痛み、炎症、失禁および排尿障害の治療のため、リポソームを基礎とした、バニロイド化合物および毒素の送達に関する。
【選択図】図4

Description

本発明は、膀胱の炎症および機能障害を含むさまざまな疾患を治療するためのリポソー
ムを含有する脂質担体を点滴注入するための組成物および方法に関する。本発明のリポソ
ームは、単独で用いられるか、あるいは抗生物質および抗癌剤のような薬剤を膀胱、生殖
泌尿器路、胃腸管系、肺器官系およびその他の器官または体組織系統への持続的に送達す
るための脂質担体として用いられる。
特に本発明は、ホスファチジルコリン(PC)頭部基を有する脂質、好ましくはスフィンゴ
ミエリンまたはスフィンゴミエリン代謝物を含むリポソームを含有する医薬組成物であっ
て、間質性膀胱炎のような過活動膀胱障害を予防し、管理し、改善および/または治療す
るためのリポソーム医薬組成物に関する。本発明はまた、膀胱の痛み、炎症、失禁および
排尿障害の治療のため、レジンイフェラトキシン(resiniferatoxin)、カプサイシン、
チナトキシン(tinyatoxin)およびその他のバニロイド化合物のリポソームを基礎とした
送達に関する。本発明はさらに、尿道の協同運動不全と膀胱痙縮に関係するものを含む不
随意筋収縮の治療のためにボツリヌス菌毒素などの毒素のリポソームを基礎とした送達に
関する。
神経障害性の痛みは、末梢神経系の初期損傷の後に、末梢および中枢神経系における鋭
敏化により生じると考えられている。多くの全身性疾患、例えばHIV/エイズ、ヘルペ
ス帯状疱疹、梅毒、糖尿病およびさまざまな自己免疫疾患と同様に末梢神経の直接的損傷
も神経障害性の痛みを生じ得る。そのような痛みは、間質性膀胱炎を含む膀胱病態とも関
連している。神経障害性の痛みは、典型的にヒリヒリした痛み、うずくような痛み、およ
び間断のない激しい痛みとして現れ、時には痛みをもたらした初期の損傷または疾患の過
程よりも消耗性でもあり得る。例えば間質性膀胱炎の患者は、典型的には1日約16回排尿
するが、排尿回数が1日40回に至ることも珍しくない。残念なことにこの症状を緩和す
ると報告された少数の治療法はわずかな割合の患者にしか効果がない。
間質性膀胱炎(IC)は、不治の、慢性の、衰弱化する泌尿器膀胱の疾患であり、膀胱の
痛み、慢性の骨盤の痛み、排尿に刺激を感じる症状および無菌尿を特徴とする。間質性膀
胱炎において、膀胱壁は、典型的に粘膜の潰瘍化および瘢痕形成を伴う炎症性浸潤を呈し
、これは平滑筋の収縮、尿容量の減少、血尿および頻繁で痛みのある排尿の原因となる。
間質性膀胱炎は、一時期わずかになったと思われたが、米国国立衛生研究所は、現在、
間質性膀胱炎に罹患する患者は、米国国内に700,000 から100万人いると見積もっている
。間質性膀胱炎と診断された臨床患者の90パーセントは女性であるが、非細菌性前立腺炎
と目下、診断されている男性は、実際は間質性膀胱炎を患っているかも知れず、このパー
センテージは膨らむであろう。加えて、間質性膀胱炎に関係する腰の痛みは、往々にして
初期は誤診される結果、患者は尿路細菌感染用の抗生物質で治療され、痛みは緩和される
ことがない。後で尿の培養が細菌感染を排除し、結局のところ、間質性膀胱炎は、膀胱鏡
検査法/ハイドロディステンション(hydrodistention)によって診断される。
間質性膀胱炎の特異的な原因は知られていない。現在研究されている間質性膀胱炎の病
因論は、膀胱内膜の先天性欠陥、自己免疫症候群または神経性の炎症を含む。遺伝的研究
は、間質性膀胱炎に感染しやすさが遺伝すると指摘するが、今日まで間質性膀胱炎に関係
する特別な遺伝子は示唆されていない。
間質性膀胱炎の病因が不明であるにもかかわらず、上皮の機能不全は、カリウムのよう
な溶質の経上皮的な移動をもたらし、感覚神経を脱分極させ、上記症状を引き起こすこと
はあり得る。間質性膀胱炎の患者では、腎臓の尿上皮のグリコサミノグリカン(GAG)層に
欠陥があるという報告がある(Parsons, CL.ら, J. Urol, 73:504, 1994; Hohlbrugger, G
., Br. J.Urol., 83(2):22, 1999)。粘膜内膜または表面GAG層を再生する治療は、例え
ば、ヘパリン、ヒアルロン酸、またはペントサンポリサルフェートの投与が刺激の漏れを
減らし、間質性膀胱炎の刺激物の漏れを減らし、間質性膀胱炎の症状を寛解する。
カプサイシンは、ホモバニリン酸の誘導体である(8-メチル-N-バニリル -6-ノネンアミ
ド)。カプサイシンは、Capsicum属のトウガラシの活性成分であり、ヒトの群発頭痛、ヘ
ルペス帯状疱疹および血管運動神経性鼻炎の局所的治療に用いられている(P. Holzer, 19
94, Pharmacol.Rev. 43:143; Sicuteriら, 1988, Med. Sci. Res. 16:1079; Watson ら,
1988,Pain 33:333; Marabiniら, 1988, Regul. Pept. 22:1参照)。インビトロでは、細
胞の成長、コラゲナーゼ合成、関節リウマチ滑膜細胞からのプロスタグランジン分泌を調
節する(Matucci-Cerinicら, 1990, Ann. Rheum. Dis. 49:598参照)。カプサイシンはま
た免疫調節もすることも示されているが、そのことは、リンパ球増殖、抗体産生および好
中球走化性を調節する能力として現れる(Nilssonら, 1988, J. Immunopharmac. 10:747;
Nilssonら, 1991,J. Immunopharmac. 13:21;および Eglezos ら, 1990, J. Neuroimmuno
l. 26:131参照)。これらの効果により、カプサイシンは、関節炎の治療において重要な役
割を果たす。さらにカプサイシンは、ミトコンドリアの膨張を惹き起こし、NADHオキシダ
ーゼを阻害し、形質転換された細胞のアポトーシスを惹き起こし, アデニル酸シクラーゼ
を活性化し、タンパク質キナーゼCを活性化し、スーパーオキシドアニオン発生を抑止し
、細胞レドックス状態を変更する。
カプサイシンの様々な作用は、バニロイドレセプターとして言及される特別の細胞レセ
プターが介在している。このレセプターは、トウダイグサ属植物由来のアルカロイド、レ
ジンイフェラトキシン(resiniferatoxin)と共有されている。レジンイフェラトキシン
(Resiniferatoxin)は、カプサイシンの構造類似体であり、カプサイシンの働きの多く
を模倣することが知られている。レジンイフェラトキシンは、フォルボールエステル(酢
酸ミリスチン酸フォルボール)に構造的に類似しており、フォルボールエステルは、明確
な結合部位と相互作用し、タンパク質キナーゼCを活性化する。(Szallasiら, 1989, Neur
osci. 30:515; およびSzallasi and Blumberg, 1989, Neurosci. 30:515参照)。レジン
イフェラトキシンと異なり、カプサイシンは、酢酸ミリスチン酸フォルボールとは何ら類
似性がない。しかしながらカプサイシンは、タンパク質キナーゼCを活性化することが可
能であり、そのような活性化は、レジンイフェラトキシンにおけるフォルボールエステル
様の部位によるためばかりではないことを示す。
カプサイシンは、痛みを媒介する、小径求心性神経線維またはC線維に対するその選択
的な作用により実験ツールとして用いられてきている。動物実験からカプサイシンは、カ
ルシウムおよびナトリウム用のカチオン選択的チャネルを開くことによりC線維膜の脱分
極化を始動させるようである。しかしながら、この働きの詳細なメカニズムは未だ知られ
ていない、カプサイシンが仲介する効果は、(i) 末梢組織の侵害受容器の活性化 (ii) 1
以上の刺激様式に対する末梢組織侵害受容器の最終的な脱感作 (iii) 敏感な無髄C線維の
求心神経の細胞変性(iv) 神経プロテアーゼの活性化 (v) 軸索輸送の遮断および (vi)有
髄線維数に影響を与えることなく、C線維の絶対数を減少させる 。
カプサイシンが末梢組織の侵害受容器を脱感作させ得るがためにその滞在的な鎮痛効果
は、様々な臨床試験で評価されている。米国特許第5,431,914号は、約0.01%〜約0.1%濃度
のカプサイシンを含有する局所用製剤が、内部器官の病状治療に用いられ得ることを示す
。米国特許第5,665,378号は、カプサイシンを含む経皮的治療製剤、非ステロイドの抗炎
症剤(inflamrnatant)およびパマドーム(pamadorm)(利尿薬)について論じ、その組成
物は、約0.001-5重量%のカプサイシンを含み、痛みおよび生理痛に関連する不快症状、膨
張および/または背部筋肉痛のような筋肉痛を治療する際に有用だと論じている。いくつ
かの研究は、膀胱内へのカプサイシンを、脊髄の排尿筋過反射または膀胱過敏障害を伴う
患者の急迫性尿失禁の治療に用いることを評価した(F. Cruz, 1998, Int. Urogynecol. J
. Pelvic FloorDysfunct. 9:214-220参照)。
カプサイシンの適用は治療する神経障害性の痛みとは別に、往々にしてヒリヒリする痛
みおよび痛覚過敏をもたらし、こうして患者のコンプライアンスが悪くなり、臨床試験
中に脱落する比率が50パーセントを超える。自然発生のヒリヒリする痛みおよび緊迫痛覚
過敏は、カプサイシン適用部位における末梢侵害受容器が、極度に活性化され、一時的に
感作するためと考えられる (主要な痛覚過敏)。局所投与した部位をとり囲む領域で明ら
かに自動的に痛覚過敏であることは、痛みの伝達に関わる後角ニューロン(dorsal horn
neurons)の中央感作から発することを示す(二次的な痛覚過敏)。これらの副作用により
、ヒトを対象とする研究に用いられる最大のカプサイシン濃度は、0.075%に限られていた
ジストニー(dystonia)は、不随意の筋収縮を特徴とする神経性運動障害であり、意図し
ない筋肉収縮は、体のある部分を正常でない、時には苦痛を伴う動きまたは姿勢を強いる
(S. B.Bressman, 2000, Clin. Neuropharmacol. 23(5):239-51参照)。ジストニー障害
は、制御できない運動および長引く筋肉収縮を惹き起こし、その結果、けいれん、身体を
ねじる動き、震えまたは異常な姿勢を生じる。これらの動きは、身体全体または腕および
足、胴体、首、瞼、顔、膀胱、括約筋または声帯のような体の一部も含まれる。ジストニ
ーは、環境または疾病に関係した脳基底核の損傷、分娩時の損傷(特に酸素不足によるも
の)、特定の感染、特定の薬剤への反応、重金属もしくは一酸化炭素の中毒、トラウマま
たは発作に由来する。ジストニーは、また他の疾患の兆候となり得るが、そのいくつかは
遺伝性のものであることもある。
泌尿器排尿筋-括約筋共同作用障害(UDSD;排尿筋外括約筋協調障害および尿道共同運動
障害ともいう)は、特定種類の神経性運動障害である(H. Madersbacher, 1990, Parapleg
ia28(4):217-29; J. T. Andersenら, 1976, J. Urol. 116(4):493-5参照).。UDSDは、膀
胱収縮と同時に起こっている不随意尿括約筋の痙攣によって特徴づけられる。排尿筋収縮
と尿道弛緩が協調しないことは、排尿障害(すなわち、排尿の部分的なまたは完全なブロ
ック)をもたらす。UDSDの結果、膀胱は完全に空になることができない。このことは尿の
圧力の増強となり、かかる尿圧力の積み上げは、重い尿路傷害および生命に危険を及ぼす
結果につながり得る。UDSD は、脊髄損傷、多発性硬化症またはそれらの関連病態から生
じる皮質脊髄管の障害から生じる。
別の神経性運動障害は、過活動(収縮しているとも言う; けいれん)神経性の膀胱である
(M. H.Beers and R. Berkow (eds), 1999, The Merck Manual of Diagnosis and Thera
py, Section17:Genitourinary Disorders, Chapter 216: Myoneurogenic Disorders参照
) 。過活動膀胱において膀胱は、排尿筋の不安定性と不適当な収縮により、正常な人より
も頻繁に収縮する(例えばC.F.Jabsら, 2001, Int. Urogynecol. J. Pelvic Floor Dysfu
nct.12(l):58-68; S. K. Swami and P. Abrams, 1996, Urol. Clin. North Am. 23(3):4
17-25参照)。過活動膀胱は自動性的に空になることができ、尿失禁(急迫性尿失禁)になる
ことがある。 さらに、膀胱と膀胱出口(膀胱頸部または外部泌尿器括約筋)との間の非協
調性収縮は、腎障害を併発する膀胱尿管逆流現象となり得る。通常、過活動膀胱は、脳
または仙椎上(suprasacral)脊髄損傷による。最も一般的な原因は、横断性脊髄炎また
は外傷性脊髄離断からの脊髄損傷である。過活動膀胱は、不安、加齢、感染 (例えば、梅
毒)、糖尿病、脳脊髄腫瘍、脳梗塞、椎間板破裂および脱髄性および変性諸疾患(例えば、
多発性硬化症と筋萎縮性側索硬化症)などの症状によって引き起こされる場合がある。
ボツリヌス毒素は嫌気性バクテリアであるボツリヌス菌によって産生された亜鉛エンド
ペプチダーゼである。以前は、汚染食物の摂取によって惹き起こされた重篤かつ往々に致
命的である麻痺の原因として知られていて、現在はボツリヌス菌神経毒は、治療および化
粧品の両方に使用されている (N. Mahantら, 2000, J. Clin. Neurosci. 7(5):389-94; A
. Carruthersand J. Carruthers, 2001, Semin. Cutan. Med. Surg. 20(2):71-84参照)
。具体的にはこれらの毒素は不随意筋痙攣に関係する症状の治療、眉間皺線、および顔の
しわ処理に使用される。
ボツリヌス毒素(A-Gと指定される)には7つの既知抗原型がある。それらの抗原型は細胞
内標的、効力、および作用の持続時間において異なるが、しかし、すべてが、神経筋接合
部においてアセチルコリン放出を抑制することによって、それらの麻痺作用の効果を生む
(M. F. Brin,1997, Muscle Nerve 20(suppl 6):S146-S168参照)。小嚢輸送と膜融合に関
わる1つまたはそれ以上のタンパク質を開裂することによって各抗原型が作用する。例え
ば、ボツリヌス毒素Aは軸索端末でのエンドサイトーシスによって内在化させられる。そ
こではボツリヌス毒素Aは、ジスルフィド還元反応により完全に活性化されて、SNAP-25を
ターゲットとする(M.F. Brin, 1997, Muscle Nerve 20(suppl 6):S146-S168参照)。ボツ
リヌス菌の毒素が仲介する麻痺の程度は、用いた投与量、容量および抗原型に依存する。
ボツリヌス毒素Aは、通常は2〜6カ月以内に軸索発芽によって終了する可逆性脱神経萎
縮を引き起こす(M.F. Brin, 1997, Muscle Nerve 20 (suppl 6):S146-S168参照)。
現行のボツリヌス毒素療法の主要な欠点は、患者における抗毒素抗体の発現である。抗
毒素抗体は、ボツリヌス毒素への抵抗力とその治療効果の低減または除去をもたらす。斜
頚または痙縮に対してより高い投与量で長期的に治療を受けている患者の間で、恐らく中
和抗体の陽性率が少なくとも3%であると見積もられている(M. F. Brin, 1997, Muscle N
erve 20(suppl6):S146 S168参照)。ボツリヌス毒素Aに耐性をもっている患者は、ボツリ
ヌス毒素のB、CまたはFを含む他の抗原型の注射が効くかもしれない。しかしながら、他
の抗原型における効果の持続時間の違いは重要であり、治療有効性に関して劇的な減少を
招く場合がある(M.F. Brin, 1997, Muscle Nerve 20(suppl 6):S146- S168参照)。
リポソームを薬物送達および遺伝子療法の担体に用いることはよく知られている。例え
ば以前の研究は、膀胱壁へのリポソーム・ドキソルビシンの粘膜下注射が骨盤リンパ節転
移を伴う膀胱癌に対する有効かつ安全な治療であることを示した(Tsuruta I.ら, J. Urol
., 157:1652,1997)。リポソーム・薬剤送達系では、薬物などの活性成分が、リポソーム
内に内包されるか、または取り込まれて治療を受ける患者に投与される。あるいは活性
成分が脂溶性であるなら、脂質二重層に結合しているかもしれない。リポソームは、安定
した吸収、エンドサイトーシス、脂質輸送および融合によって細胞と相互作用すると考え
られている(Egerdie,R.B.ら, J. Urol., 142:390, 1989)。リポソームは低い抗原性であ
り、細胞と融合する分子フィルムのように作用するようである。かくしてリポソームは、
例えば、創傷治癒のための最適条件を提供することができる(Reimer, K.ら, Dermatology
, 195(2):S93)。
過活動膀胱障害と特に間質性膀胱炎に関係する苦痛に基づくそのような非常に手に負え
ない疾患に苦しむ患者を予防し、管理し、改善させおよび/または、治療する必要性が存
在している。
本発明は、痛み(例えば、神経因性疼痛)、痛みの激しい障害(例えば、IC)、筋肉収縮の
疾患(例えば、IC、過活動膀胱、およびUDSD)、およびこれらに関連する病態に関する改良
された治療を提供し、それを必要とする動物か人間に、脂質担体を投与するための組成物
と方法を提供することによってこの必要性を充足させる。
脂質担体は、刺激性の副作用(例えば、カプサイシンなどのバニロイド)か望ましくない
抗原性(例えば、ボツリヌス毒素)を有する脂溶性治療薬送達用の非毒性担体を提供する。
開示された脂質担体は、送達することともに刺激性治療薬により惹き起こされた刺激を軽
減するのにも使用できることが優れている。該脂質担体は、抗原性の治療薬に対する抗体
介在抵抗を減らすか、防ぐことにも用いることができる。さらに開示された脂質担体は、
例えば、膀胱内、他の内腔臓器系、例えば遠位結腸および膣内への抗生物質および抗癌剤
について、膀胱内薬物送達荷渡し場として利用されることができる。
具体的には本発明は、非カチオン性リポソーム(少なくとも1個の脂質を含む)およ
び生理的に受容できる担体を含む医薬組成物を提供する。
本発明のリポソームを調製するのに使用される適当な脂質は、例えば、これらに限定さ
れないが、リン脂質、例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミ
ン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジル
グリセロールまたはカルジオリピン(CL)など;糖脂質;スフィンゴミエリンなどのスフィ
ンゴリン脂質;スフィンゴ糖脂質(1-セラミジルグルコシドとして知られている)、例え
ばセラミドガラクトピラノシド、ガングリオシドやセレブロシド;コレステロール; 1,
2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC);または1,2-ジオレオイルホスフ
ァチジルコリン(DOPC)などが挙げられる。しかし、それらの様々な天然の(例えば、組織
由来のL-アルファ-ホスファチジル:卵黄、心臓、脳、肝臓、大豆)、および/または合成の
(例えば、飽和および不飽和のl,2-ジアシル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン、1-アシル-2-
アシル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジヘプタノイル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン
)誘導体も含む。そのような脂質は、単独または補助の脂質と組み合わせて用いることが
できる。 好ましい補助脂質は、非イオン性、または生理的pHで非荷電である。非イオ
ン性脂質として、コレステロールとDOPE(1,2-ジオレオイルグリセリルホスファチジルエ
タノールアミン)が挙げられるが、これらに限定されない。コレステロールと用いるのが
最も好ましい。補助脂質に対するリン脂質のモル比は、およそ3:1から1:1であり、好まし
くは1.5:1から1:1であり、最も好ましいモル比は、1:1である。
また、本発明はホスファチジルコリン(PC)頭部基、好ましくはスフィンゴミエリンを含
む脂質担体を提供する。
本発明は、さらにスフィンゴミエリンを有する非カチオン性リポソームおよび生理的に
許容できる担体(carrier)を含む医薬組成物を提供する。
本発明は、まださらにリポソームおよび生理的に許容できる担体を含有する医薬組成物
を提供する。その医薬組成物においてリポソームは、スフィンゴミエリン代謝物質と少な
くとも1個の脂質を含有する。
本発明のリポソームを調製するのに使用されるスフィンゴミエリン代謝物質は、例えば
セラミド、スフィンゴシンまたはスフィンゴシン1−リン酸塩を含むが、これらに限定さ
れない。
本発明のリポソームを調製するため、合成脂質に含められるスフィンゴミエリン代謝物
質の濃度は、約0.1モル%から約10.0モル%までであり、好ましくは約2.0モル%から約5.0モ
ル%までであり、さらに好ましくは約1.0モル%(mol%)の濃度である。
また本発明は、膀胱、生殖泌尿器路、胃腸管、肺臓系統および他の身体組織における癌
および/またはその他の疾患に関係する痛み(例えば、神経因性疼痛)を、開示された脂質
担体を用いて、開示された医薬組成物の治療有効量を、必要とする動物または人間に投与
することにより、予防し、管理し、改善し、治療する方法もまた含む。開示された脂質担
体は、例えばこれに限定されないが、ICまたは膀胱の他の病態(例として膀胱感染症や膀
胱癌)に関係する痛みを治療するために、膀胱内注入により投与される。特定の態様とし
てこれらの脂質担体は、バニロイド、例えば、カプサイシン、レジンフェラトキシン(re
siniferatoxin)またはチナトキシン(tinyatoxin)を含んでいてもよく、罹患場所の鎮
痛を目的とする表面抗体、例えば、ウロプラキン(uroplakin)またはNGFレセプター抗体
をさらに含有してもよい。
本発明は、例えば以下に限定されることないが、細胞または組織のための点滴担体、例
えばこれらに限定されないが膀胱内担体、として使用のための脂質担体(例えば、ミセル
、マイクロエマルジョン、マクロエマルジョンおよびリポソーム)を含有する組成物を含
む。そのような担体は、さらに抗体、例えば、ウロプラキンまたはNGFレセプター抗体を
含んでいてもよい。これらの抗体はリポソームの表面に接合していてもよく、リポソーム
を特定タイプの細胞および/または受容体に差し向けるように作用するであろう。さらに
担体は、細胞に送達されるべきカプサイシン、レジンフェラトキシン(resiniferatoxin
)、チナトキシン(tinyatoxin)および他のバニロイドを含有する組成物を含んでいても
よい。脂質担体はまた、生物活性の薬剤(例えば、アンチセンスの核酸またはペプチド)、
薬物(例えば、鎮痛薬、抗癌治療薬、または抗生物質)、毒素(例えば、ボツリヌス毒素)ま
たは他の薬物を含有する組成物を含んでいてもよい。
本発明はさらに様々な疾患、例えば生殖泌尿器路、胃腸管、肺臓系統および他の身体組
織の障害または疾病を、開示された脂質担体を用いて治療する方法を包含する。特に、本
発明の脂質担体は、間質性膀胱炎(IC)、泌尿器排尿筋-括約筋共同運動障害(UDSD)、神
経原性痙攣膀胱、過活動膀胱または泌尿生殖器系のその他の病態を治療するために膀胱内
注入により投与することができる。開示された脂質担体はまた、全身の感染と癌を治療す
るために、そのような療法を長期に届ける新規なルートとして、開示された担体の独自の
相互作用を利用して膀胱内投与することができる。
本発明はまた、膀胱、生殖泌尿器路、胃腸管、肺臓系統および他の身体組織の癌および
/または疾患に関係している痛み(例えば、神経因性疼痛)を、開示された脂質担体を用い
て治療する方法も包含する。具体的には開示された脂質担体は、例えばこれらに限定され
ないがICまたは膀胱の他の症状、たとえば膀胱感染および膀胱癌に関係する痛みを治療す
るため、膀胱内注入によって投与されることができる。特定態様では、これらの担体は、
バニロイド、例えば、カプサイシン、レジンフェラトキシンまたはチナトキシン(tinyat
oxin)を含み、さらに罹患場所に対して鎮痛目的として表面抗体(例えば、ウロプラキン
またはNGFレセプター抗体)を含有してもよい。
さらに、開示された脂質担体を用いて、生殖泌尿器路、胃腸管、肺臓系統、および他の
身体組織に影響を及ぼす不随意の筋収縮(例えば、ジストニー、共同運動障害、および痙
縮)に関連している疾患を治療する方法も包含される。1つの局面では、開示された脂質担
体は、IC、UDSD、神経原性の痙攣膀胱または関係する症状によって惹き起こされた筋収縮
を治療するため、膀胱内注入により投与することができる。前記脂質担体は空であっても
よく、あるいは毒素、例えばボツリヌス毒素を担持していてもよく、罹患部位で筋収縮を
軽減する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
a)非カチオン性リポソーム;および
b) 生理的に受容される担体
を含む医薬組成物。
(項目2)
前記リポソームが少なくとも1つの脂質を含むことを特徴とする項目1に記載の医薬
組成物。
(項目3)
a) リポソーム;および
b) 生理的に受容される担体
を含み、該リポソームがセラミドおよび少なくとも1つの脂質を含む医薬組成物。
(項目4)
a) リポソーム;および
b) 生理的に受容される担体
を含み、該リポソームがスフィンゴシンおよび少なくとも1つの脂質を含む医薬組成物。
(項目5)
a) リポソーム;および
b) 生理的に受容される担体
を含み、該リポソームがスフィンゴシン 1 -リン酸および少なくとも1つの脂質を含む医
薬組成物。
(項目6)
前記の少なくとも1つの脂質が、
リン脂質としてホスファチジルコリン(PC),ホスファチジルエタノールアミン (PE), ホス
ファチジルセリン(PS), ホスファチジルイノシトール(PI), ホスファチジルグリセロール
またはカルジオリピン(CL); 糖脂質; スフィンゴリン脂質としてスフィンゴミエリン; ス
フィンゴ糖脂質(1- セラミジルグルコシド)としてセラミドガラクトピラノシド、ガング
リオシドおよびセレブロシド; コレステロール; l,2-ジステアロイル-Λ72-グリセロ-3-
ホスホコリン(DSPC);および1,2-ジオレオイルホスファチジルコリン (DOPC)よりなる基
から選択される、項目2〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目7)
前記非カチオン性リポソームがリン脂質からなる項目1に記載の医薬組成物。
(項目8)
前記リン脂質がホスファチジルコリンである、項目7に記載の医薬組成物。
(項目9)
非カチオン性リポソームがスフィンゴ糖脂質を含む項目5に記載の医薬組成物。
(項目10)
前記スフィンゴ糖脂質がスフィンゴミエリン糖脂質である、項目9に記載の医薬組成
物。
(項目11)
前記セラミドまたはスフィンゴシンが脂質中に約0.1 モル%〜約10.0 モル%の濃度範囲
で含まれる、項目3または4に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記セラミドおよびスフィンゴシンが脂質中に約0.5 モル%〜約2.0 モル%の濃度範囲で
含まれる、項目3または4に記載の医薬組成物。
(項目13)
前記セラミドまたはスフィンゴシンが脂質中に約1モル%の濃度で含まれる、項目 3ま
たは4に記載の医薬組成物。
(項目14)
前記スフィンゴシン 1-リン酸が合成脂質中に約2.0 モル%〜約5モル%の濃度範囲で含ま
れる、項目5に記載の医薬組成物。
(項目15)
過活動膀胱障害に罹患した動物またはヒトにおいて、該疾患を予防、管理、改善および
/または治療するために投与される、項目1,3, 4または5のいずれかに記載の医薬組成
物。
(項目16)
前記過活動膀胱障害が間質性膀胱炎である、項目15に記載の医薬組成物。
(項目17)
過活動膀胱障害に罹患した動物またはヒトにおいて、該疾患を予防、管理、改善および
/または治療するための方法であって、
a) 該動物またはヒトに項目1,3, 4または5のいずれかに記載の医薬組成物を治療有効
量、投与すること
を含む方法。
(項目18)
前記医薬組成物の治療有効量が動物またはヒトの体重キログラム当り約0.1 mg〜約20 m
gの投与量の範囲である、項目17の方法。
(項目19)
前記医薬組成物の治療有効量が動物またはヒトの体重キログラム当り約0.5 mg〜約10 m
gの投与量の範囲である、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記医薬組成物の治療有効量が動物またはヒトの体重キログラム当り約1.0 mg〜約5mg
の投与量の範囲である、項目17に記載の方法。
(項目21)
投与経路が、皮内, 筋肉内, 腹腔内, 静脈内, 皮下, 膀胱内, 経皮,動脈内, 髄腔内,
経腸,硬膜外,鼻腔内, 吸入, 舌下, 経口, 経直腸, 経膣および腸管内からなる群より選
択される、項目17に記載の方法。
(項目22)
前記投与経路が膀胱内への点滴注入である、項目21に記載の方法。
図1は、減少する膀胱過活動において脂質頭部に担持された電荷による作用を示す膀胱内圧測定図(CMG)である。黒い矢印は、KCl(500 mM)存在下、リポソームの注入開始を指し示す。 図2A-2Bは、膀胱過活動の抑制について、PC頭部を有する脂質の様々なアシル鎖による効果を示す。(A):使用した脂質は、1,2ジオレオイル sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC);スフィンゴミエリン;1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC);L-□-ホスファチジルコリン(PC)および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)であった。スフィンゴミエリン処置した膀胱では、他の群と比較して単位時間あたりのピーク数が有意に減少した。(B):脂質の構造を示す。 図3は、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリンならびにステアリン酸から誘導したアシル鎖を1つ有する純粋な合成脂質(すなわちDSPCおよびOSPC)から調製されたリポソームのCMGである。 図4は、スフィンゴミエリンとスフィンゴミエリン代謝物とをDSPCリポソームに加えることによる膀胱過活動への効果を示す棒グラフである。 図5は、セラミドの前駆体であるスフィンゴ糖脂質セレブロシドの化学構造を示す。 図6は、スフィンゴ糖脂質であるセレブロシドをDSPCリポソームに加えることによる膀胱過活動への効果を示すCMGである。 図7は、ラット実験および文献報告に基づくスフィンゴミエリン・リポソームの活性について提案された機構を図示する。 図8は、実施例5-6に記載された研究のための実験デザインを示す。 図9A-9FはCMGをトレースした結果を示す。処置として、生理食塩水(対照)、塩化カリウム中のプロタミン硫酸塩(PS)(PS/KCl)、および塩化カリウム(KCl)中のリポソーム(LP)(LP/KCl)またはKCl単独を含んでいた。PS/KClは、膀胱過活動を誘導した。LP/KClは、LP/KClの刺激性効果を部分的に反転させた。そしてかかる反転は、KClに切り替えた後も維持された。図9B、9Dおよび9Fは、対照動物において、それぞれ生理食塩水注入(対照)、PS/KClの注入、およびKClの注入を行った場合の結果を示す。図9A、9Cおよび9Eは、それぞれ生理食塩水の注入(対照)、PS/KClの注入、ならびに維持KCl存在下でのリポソーム注入を行った場合の結果を示す。 図10A-10Fは、CMGをトレースした結果を示す。処置として、生理食塩水(対照)、酢酸(AA)およびリポソーム(LP)または生理食塩水を含めた。AAは、膀胱過活動を誘導した。LPは、AAの刺激性効果を部分的に反転させた。そしてかかる反転は、生理食塩水に切り替えた後も維持された。図10B、10Dおよび10Fは、対照動物において、それぞれ生理食塩水の注入(対照)、AAの注入、および生理食塩水の注入を示す。図10A、10Cおよび10Eは、それぞれ生理食塩水の注入(対照)、AA注入、およびメンテナンスAA存在下でのリポソームの注入を示す。 図11A-11Dは、CMGをトレースした結果を示す。処置としては、生理食塩水(対照)、および、様々な濃度の硫酸プロタミン(PS)が含まれた。高濃度のPSは膀胱過活動(ICI減少)を誘発したが、低濃度のPSでは何ら影響をもたらさなかった。図11Aは、PS処置前に測定した対照CMGを示す。図11Bは、低濃度のPSで処置している間に測定したCMGを示す。図11Cは、PS処置の前に測定した対照CMGを示す。図11Dは、高濃度のPSで処置している間に測定したCMGを表す。 図12A-12Fは、CMGをトレースした結果を示す。処置としては、生理食塩水(対照)、および1時間のPS(10mg/ml)に続く様々な濃度のKClが含められた。高濃度のKClは膀胱過活動(減少ICI)を誘発したが、低濃度のKClでは何ら影響をもたらさなかった。図12Aは、KCl処置前に測定した対照CMGを示す。図12Bは、100mMのKClで処置している間に測定したCMGを示す。図12Cは、KCl処置前に測定した対照CMGを示す。図12Dは、300mMのKClで処置している間に測定したCMGを示す。図12Eは、KCl処置前に測定した対照CMGを示す。図12Fは、500mMのKClで処置している間に測定したCMGを示す。 図13A-13Bは、CMGをトレースした結果を示す。処置としては、排尿反射抑制動物において、生理食塩水(対照)、およびPS(10 mg/ml)注入に続くKCl(500mM)注入を行うことが含められた。KClは、排尿筋を刺激し、かつ膀胱コンプライアンスを低下させた。図13Aは、KCl処置の前に測定した対照CMGを示す。図13Bは、KCl処置の間に測定したCMGを示す。 図14は、バニロイド(vanilloid) の刺激性効果のバイオアッセイ (bioassay) として膀胱収縮頻度を用いた場合にリポソームによるカプサイシン送達の有効性を示す。第1カラム(棒グラフ):生理食塩水;第2カラム:リポソーム;第3カラム:カプサイシンを加えたリポソーム。リポソーム製剤へのカプサイシンの封入は、カプサイシン送達を有効なものにした。生理食塩水またはリポソームを加えることは、膀胱収縮頻度に変化が起こらなかった。リポソームとカプサイシンとを組合せることによって、膀胱収縮頻度が有意に増加した。
本発明は、必要とする動物または人間に脂質担体を投与する組成物およびその方法を提
供することにより、痛み(例えば、神経因性疼痛)、激しい痛みの障害(例えば、IC)、筋収
縮疾患(例えば、IC、過活動膀胱およびUDSD)および関連する症状について改善された治療
を包含する。脂質担体は、刺激性の副作用(例えば、カプサイシンなどのバニロイド)また
は望ましくない抗原性(例えば、ボツリヌス毒素)を有する脂溶性治療薬を送達する非毒性
の担体を提供する。優れている点として、開示された脂質担体は、刺激性治療薬を送達す
ることと同時にそれにより惹き起こされる刺激を改善するためにも使用できる。該脂質担
体は、抗原性治療薬に対する、抗体関与の抵抗を低減するかまたは防ぐことにも用いるこ
とができる。さらに開示された脂質担体は、膀胱、他の内腔臓器系(例えば遠位結腸、お
よび膣)内における抗生物質および抗癌剤用の、膀胱での薬物送達の渡し場として利用さ
れることができる。
一態様における本発明は、非カチオン性リポソームおよび生理的に受容できるキャリヤ
ーを含有する医薬組成物を提供し、該リポソームは少なくとも1個の脂質を含む。
本発明のリポソームを調製するのに使用される適当な脂質は、例えば、これらに限定さ
れないが、リン脂質、例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミ
ン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジル
グリセロールまたはカルジオリピン(CL)など;糖脂質;スフィンゴミエリンなどのスフィ
ンゴリン脂質;スフィンゴ糖脂質(1-セラミジルグルコシドとして知られている)、例え
ばセラミドガラクトピラノシド、ガングリオシドやセレブロシド;コレステロール; 1,
2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC);または1,2-ジオレオイルホスフ
ァチジルコリン(DOPC)が挙げられる。しかし、それらの様々な天然の(例えば、組織由来
のL-アルファ-ホスファチジル:卵黄、心臓、脳、肝臓、大豆)、および/または合成の(例
えば、飽和および不飽和のl,2-ジアシル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン、1-アシル-2-アシ
ル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジヘプタノイル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン)誘
導体も含む。そのような脂質は、単独または補助の脂質と組み合わせて用いることができ
る。 好ましい補助的脂質は、非イオン性であるか、生理的pHで非荷電である。そうし
た非イオン性脂質は、コレステロールとDOPE(1,2-ジオレオイルグリセリルホスファチジ
ルエタノールアミン)を含むが、これらに限定されない。コレステロールと用いるのが最
も好ましい。補助脂質に対するリン脂質のモル比は、およそ3:1から1:1であり、好ましく
は約1.5:1から約1:1であり、最も好ましくは、約1:1である。
他の態様において、本発明はホスファチジルコリン(PC)頭部、好ましくはスフィンゴミ
エリンを含む脂質担体を提供する。
さらなる態様において、本発明は、さらにスフィンゴミエリンを含む非カチオン性リポ
ソームおよび生理的に受容できる担体(carrier)を含む医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、まださらにリポソームおよび生理的に受容できる担
体を含有する医薬組成物を提供する。その組成物において該リポソームは、スフィンゴミ
エリン代謝物質と少なくとも1個の脂質を含有する。
本発明のリポソームを調製するのに使用されるスフィンゴミエリン代謝物質は、例えば
セラミド、スフィンゴシンまたはスフィンゴシン1−リン酸塩を挙げられるが、これらに
限定されない。
本発明のリポソームを調製するために、合成脂質に含められるスフィンゴミエリン代謝
物質の濃度は、約0.1mol%から約10.0mol%までであり、好ましくは約2.0mol%から約5.0mol
%までであり、さらに好ましくは約1.0mol%の濃度である。
また本発明は、膀胱、生殖泌尿器路、胃腸管、肺臓系統、および他の身体組織の癌およ
び/またはその他の疾患に関係している痛み(例えば、神経因性疼痛)を、開示された脂質
担体を用いて、開示された医薬組成物の治療有効量を、必要とする動物または人間に投与
することにより、予防し、管理し、改善し、および/または治療する方法もまた包含する
。開示された脂質担体は、例えばこれに限定されないが、ICまたは膀胱感染症や膀胱癌の
ような膀胱の他の病態に関係する痛みを治療するために膀胱内注入により投与することが
できる。特定の態様では、これらの脂質担体は、バニロイド、例えばカプサイシン、レジ
ンフェラトキシン(resiniferatoxin)またはチナトキシン(tinyatoxin)を含んでいて
もよく、罹患部位の鎮痛を目的とする表面抗体、例えば、ウロプラキン(uroplakin)ま
たはNGFレセプター抗体をさらに含有してもよい。
本発明は、例えば以下に限定されることないが、細胞または組織のための点滴担体、例
えばこれらに限定されないが膀胱内担体、として使用のための脂質担体(例えば、ミセル
、マイクロエマルジョン、マクロエマルジョンおよびリポソーム)を含有する組成物を含
む。そのような担体は、さらに抗体、例えば、ウロプラキンまたはNGFレセプター抗体を
含んでいてもよい。これらの抗体はリポソームの表面に接合していてもよく、リポソーム
を特定タイプの細胞および/または受容体に差し向けるように作用するであろう。さらに
担体は、細胞に送達されるべきカプサイシン、レジンフェラトキシン(resiniferatoxin
)、チナトキシン(tinyatoxin)および他のバニロイドを含有する組成物を含んでいても
よい。脂質担体はまた、生物活性の薬剤(例えば、アンチセンスの核酸またはペプチド)、
薬物(例えば、鎮痛薬、抗癌治療薬、または抗生物質)、毒素(例えば、ボツリヌス毒素)ま
たは他の薬物を含有する組成物を含んでいてもよい。
本発明はさらに様々な疾患、例えば生殖泌尿器路、胃腸管、肺臓系統および他の身体組
織の障害または疾病を、開示された脂質担体を用いて治療する方法を包含する。特に、本
発明の脂質担体は、間質性膀胱炎(IC)、泌尿器排尿筋-括約筋共同運動障害(UDSD)、神
経原性痙攣膀胱、過活動膀胱または泌尿生殖器系のその他の病態を治療するために膀胱内
注入により投与することができる。開示された脂質担体はまた、全身の感染と癌を治療す
るために、そのような療法を長期に届ける新規なルートとして、開示された担体の独自の
相互作用を利用して膀胱内投与することができる。
本発明はまた、膀胱、生殖泌尿器路、胃腸管、肺臓系統および他の身体組織の癌および
/または疾患に関係している痛み(例えば、神経因性疼痛)を、開示された脂質担体を用い
て治療する方法も包含する。具体的には開示された脂質担体は、例えばこれらに限定され
ないがICまたは膀胱の他の症状、たとえば膀胱感染および膀胱癌に関係する痛みを治療す
るため、膀胱内注入によって投与されることができる。特定態様では、これらの担体は、
バニロイド、例えば、カプサイシン、レジンフェラトキシンまたはチナトキシン(tinyat
oxin)を含み、さらに罹患場所に対して鎮痛目的として表面抗体(例えば、ウロプラキン
またはNGFレセプター抗体)を含有してもよい。
さらに、開示された脂質担体を用いて、生殖泌尿器路、胃腸管、肺臓系統、および他の
身体組織に影響を及ぼす不随意の筋収縮(例えば、ジストニー、共同運動障害、および痙
縮)に関連している疾患を治療する方法も包含される。1つの局面では、開示された脂質担
体は、IC、UDSD、神経原性の痙攣膀胱または関係する症状によって惹き起こされた筋収縮
を治療するため、膀胱内注入により投与することができる。前記脂質担体は空であっても
よく、あるいは毒素、例えばボツリヌス毒素を担持していてもよく、罹患部位で筋収縮を
軽減する。
開示された脂質担体の投与は、罹病または機能不全の細胞、組織または身体システムを
、長期間にわたり治療することが可能である。特に、本発明は、泌尿器系の器官組織、例
えば、腎臓、尿管、膀胱、括約筋および尿道に関する治療を提供する。とりわけ膀胱刺激
および刺激炎症により誘発された膀胱機能障害の治療である。本発明に基づき非カチオン
性、非イオン性のリポソームは、局所的な膀胱内注入に持続する有効性ならびに膀胱保護
効果を有する薬物として働くように考案されている。そのような調製物の有効性および保
護効果は、予想されない驚くべきものである。特に優れているのは開示されたリポソーム
が、送達することと同時に、例えばレジンフェラトキシンまたは他のバニロイド薬剤のよ
うな刺激性治療薬物によって惹き起こされる刺激を改善するのにも使用できることである
。リポソームを投与するこの開示の方法は、例えば膀胱内の投与によって、IC患者のため
の新規な治療法を提供する。そのような方法は、癌、感染、および痙縮を含む泌尿器系、
膀胱、生殖泌尿器路、胃腸管、肺臓系統、他の身体の器官およびシステムにおける他の疾
患治療にも用いることができる。
本発明の1つの態様は、非カチオン性リポソームおよび生理的に受容できるキャリヤー
を含む医薬組成物を包含し、該リポソームは少なくとも1個の脂質を含む。
本発明のリポソームを調製するのに使用される適当な脂質は、例えば、これらに限定さ
れないが、リン脂質、例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミ
ン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジル
グリセロールまたはカルジオリピン(CL)など;糖脂質;スフィンゴミエリンなどのスフィ
ンゴリン脂質;スフィンゴ糖脂質(1-セラミジルグルコシドとして知られている)、例え
ばセラミドガラクトピラノシド、ガングリオシドやセレブロシド;コレステロール; 1,
2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC);または1,2-ジオレオイルホスフ
ァチジルコリン(DOPC)が挙げられる。しかし、それらの様々な天然の(例えば、組織由来
のL-アルファ-ホスファチジル:卵黄、心臓、脳、肝臓、大豆)、および/または合成の(例
えば、飽和および不飽和のl,2-ジアシル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン、1-アシル-2-アシ
ル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジヘプタノイル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン)誘
導体も含む。そのような脂質は、単独または補助の脂質と組み合わせて用いることができ
る。 好ましい補助的脂質は、非イオン性であるか、生理的pHで非荷電である。そうし
た非イオン性脂質は、コレステロールとDOPE(1,2-ジオレオイルグリセリルホスファチジ
ルエタノールアミン)を含むが、これらに限定されない。コレステロールと用いるのが最
も好ましい。補助脂質に対するリン脂質のモル比は、およそ3:1から1:1であり、好ましく
は約1.5:1から約1:1であり、最も好ましくは、約1:1である。
一つの態様において上記脂質担体は、ホスファチジルコリン(PC)頭部、好ましくはスフ
ィンゴミエリンを含む。
さらなる態様において、本発明の医薬組成物は、さらにスフィンゴミエリンを含有する
非カチオン性リポソームおよび生理的に受容できるキャリヤーを含む。
さらなる態様において、本発明は、まださらにリポソームおよび生理的に受容できる担
体を含有する医薬組成物を提供する。その組成物において該リポソームは、スフィンゴミ
エリン代謝物質と少なくとも1個の脂質を含有する。
本発明のリポソームを調製するのに使用されるスフィンゴミエリン代謝物質は、例えば
セラミド、スフィンゴシンまたはスフィンゴシン1−リン酸塩を挙げられるが、これらに
限定されない。
本発明のリポソームを調製するために、合成脂質に含められるスフィンゴミエリン代謝
物質の濃度は、約0.1mol%から約10.0mol%までであり、好ましくは約2.0mol%から約5.0mol
%までであり、さらに好ましくは約1.0mol%の濃度である。
さらなる態様において本発明は、動物または人間における過活動膀胱障害を防ぎ、管理
し、改善しおよび/または治療する方法を提供する。その治療方法においては、開示され
た前記医薬組成物の治療上の有効な量を必要としている動物または人間に投与する。
本発明の方法は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは人間の患者を治療するの
に用いることができる。本発明の医薬組成物の投与量と投与頻度は、通常、それぞれの患
者に固有の要因により異なるであろう。具体的には患者の疾患の重篤度およびタイプ、投
与経路、年齢、体重、反応、および過去の医療歴による。適切な投薬計画は、そのような
要因、ならびに例えば文献に報告された量やPhysician's Desk Reference (56版、2002年
)で推奨されている用量に従うことによって医療当業者によって選択されることができる
。ある具体的な態様において、本発明医薬組成物の治療上の効果的投与量は、1日当り、
患者キログラム体重当りで、有効成分として約0.1mgから約20mgまで、好ましくは、約0.5
mgから約10mgまで、さらに好ましくは、約1.0mgからの約5.0mgの範囲である。
本発明の医薬組成物は、医薬組成物の製造で有用なバルク薬物組成物(例えば、純粋で
ないか、無菌でない組成物)およびユニット用量剤形の製造に使用できる薬剤(すなわち、
対象者か患者にとって投与に適した組成物)を含むことができる。そのような組成物は、
予防的にまたは治療上、有効な量の本発明のリポソームおよび製薬学的に許容される担体
(キャリヤー)を含む。
具体的な態様において「製薬学的に許容できる」とは、動物、および特に人間における
使用のため、連邦政府または州政府の監督官庁に承認されたか、あるいは米国薬局方また
は他の一般に認知された薬局方に記載されことを意味する。「担体(carrier)」という用
語は、希釈剤、賦形剤、補助剤、または他の構成物であって、それらとともに治療薬が投
与されるものを言及する。そのような薬剤担体は、無菌の液体であってもよく、例えば水
や油が挙げられ、それらには石油、動物、野菜または合成の起源のものが含まれ、例えば
ピーナッツ油や、大豆油や、鉱油や、胡麻油などが挙げられる。医薬組成物が静脈に投与
されるとき、水は好ましいキャリヤーである。生理食塩水、デキストロースおよびグリセ
ロール水性溶液を液体担体、特に注射用溶液として使うこともできる。好適な医薬用賦形
剤は、でんぷん、ブドウ糖、乳糖、蔗糖、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シ
リカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロール・モノステアレート、タルク、塩化ナ
トリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含
む。また、所望により前記組成物は、少量の湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤を含むことも
できる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、タブレット、丸剤、カプセル
、粉末、持続放出製剤などの剤型をとることができる。
一般に、本発明組成物の構成成分は、別々に供給されるか、あるいは例えば、乾いた凍
結乾燥粉として、活性薬剤の量を示すアンプルか分包(sachette)などの密封容器内に水
を含まない濃縮物として単位用量の剤形で一緒に混合して供給される。組成物が注入によ
って投与される場合、該組成物は無菌の製薬等級の水または食塩水を含有する注入ボトル
で供給される。組成物が注射によって投与される場合、注射用無菌水か食塩水のアンプル
により供給され、それにより成分が投与に先立ち、混合することができる。
本発明の医薬組成物は、中性または塩の形態として形成されることができる。製薬学的
に許容できる塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などから
由来するアニオンとともに形成された塩;ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシ
ウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノー
ル、ヒスチジン、プロカインなどに由来するカチオンとともに形成された塩;およびイソ
プロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイ
ンなどから由来した有機塩基とともに形成された塩などが挙げられる。
医薬製剤を調製するさらなる手引きとしては、例えばGilmanら (eds), 1990, Goodman
and Gilman' s:The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th ed., Pergamon Pres
s; Remington'sPharmaceutical Sciences, 17th ed., 1990, Mack Publishing Co., Eas
ton, PA; Avisら(eds),1993, Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications,
Dekker,NY; Lieberman ら(eds), 1990, Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Syst
ems, Dekker,NY.などが挙げられる。
本発明の担体投与についての様々な方法は、以下に限定されないが、非経口的投与(例
えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈、皮下、膀胱内、経皮、動脈内、鞘内および腸内)、
硬膜外、および粘膜(例えば、鼻腔内、吸入、舌下、経口、および経直腸のルート)が挙げ
られる。本発明の担体は便利なルートであれば何れのルートでも投与されてもよい、例え
ば、注入またはボーラス注射、上皮または粘膜皮膚性の内膜(例えば、口腔、鼻、直腸、
腸および腟の粘膜など)を通す吸収によって投薬されてもよい。 好ましい態様における本
発明の担体は、カテーテルを通して所望の領域(例えば、これらに限定されないが、膀胱
、生殖泌尿器路、胃腸管)に投与される。 投与は、全身または局所に行うことができ、他
の生物学的に活性な薬剤とともに用いてもよい。
特定の態様においては、本発明の脂質担体は、膀胱内注入によって投与される。
本発明の脂質担体はミセル、マイクロエマルジョン、マクロエマルジョン、リポソーム
および類似するキャリヤーを包含する。用語「ミセル」は、臨界ミセル濃度として知ら
れている明確に定義される濃度のときに形成される、両親媒性(界面活性剤)分子のコロイ
ド性の集合を示す。ミセルは、非極性部分が内部に向き、極性部分が外表面に配向して水
に露出されている。ミセル状に凝集する分子の典型的な数(凝集数)は、50から100である
。ここに説明されるように、必ずしもすべてのミセル溶液がマイクロエマルジョンを形成
するように膨らむことができるというわけではないが、マイクロエマルジョンは本質的に
は膨らんだミセルである。 マイクロエマルジョンは熱力学的には安定していて、自然に
形成され、極めて微小な粒子を含んでいる。マイクロエマルジョンの小滴直径は、通常、
10から100nmに及ぶ。対照的に、マクロエマルジョンという用語は、100nmより大きい直径
を有するエマルジョンをいう。本明細書に説明されるように、リポソームは水性の内部を
包囲する脂質二重層を含む閉鎖された脂質小嚢である。リポソームは、通常25nmから1μm
の直径である(例えばD.O. Shah (ed), 1998, Micelles, Microemulsions, and Monolaye
rs: Science andTechnology, Marcel Dekker; A. S. Janoff (ed), 1998, Liposomes: R
ational Design,Marcel Dekker参照)。
本発明の脂質担体は、生物活性薬剤(例えば、核酸、ポリペプチド、ペプチド、または
抗体分子)または薬物(例えば、カプサイシンのような1以上のコショウ抽出化合物、レジ
ンフェラトキシン(resiniferatoxin)、チナトキシン(tinyatoxin)および他のバニロ
イド、抗生物質、抗炎症剤薬剤および鎮痙剤など)を担持していてもよい。本明細書にお
いて、核酸とポリヌクレオチドとは同義であり、プリン含有、ピリミジン含有の任意長の
重合体、ポリリボヌクレオチド、ポリデオキシリボヌクレオチドまたは混合ポリリボ−ポ
リデオキシリボヌクレオチドのいずれかを述べている。タンパク質とポリペプチドの用語
は、ここでは同義であり、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基を含む重合体に
ついて言及する。ペプチドはポリペプチドのフラグメントか一部、好ましくは完全なポリ
ペプチド配列として少なくとも1つの機能的活性(例えば、結合、抗原性、または触媒作用
の活性)を有するフラグメントまたは部分と定義される(例えば、H.Lodishら, 1999, Mol
ecular CellBiology, W. H. Freedman and Sons, NY; L. Stryer, 2001, Biochemistry,
W. H.Freedman and Sons, NY; B. Lewin, 1999, Genes VII, Oxford University Press
参照)。
1つの態様において、脂質担体はリポソーム製剤であり、その中に薬物が含まれている
。好適な態様においては、該薬物は有機または無機の低分子である。
本明細書では、核酸とポリヌクレオチドの用語は同義であり、プリン含有、ピリミジン
含有の任意長のポリマー、ポリリボヌクレオチド、ポリデオキシリボヌクレオチドまたは
混合ポリリボ−ポリデオキシリボヌクレオチドのいずれかを言及する。
ここでは、タンパク質とポリペプチドの用語は同義であり、ペプチド結合によって連結
されたアミノ酸残基を含む重合体について言及する。
本明細書では、ペプチドという用語はポリペプチドの断片か一部、好ましくは完全なポ
リペプチド配列として少なくとも1つの機能的活性(例えば、結合、抗原性、または触媒作
用の活性)を有する断片または部分と定義される(例えば、H. Lodishら, 1999, Molecula
r Cell Biology,W. H. Freedman and Sons, NY; L. Stryer, 2001, Biochemistry, W. H
. Freedman andSons, NY; B. Lewin, 1999, Genes VII, Oxford University Press参照)
本発明の医薬組成物含有リポソームは、当業界で知られているいわゆる「空」のリポソ
ーム、すなわち活性薬物を内包するがそれ自体は生物学的に不活性であり、担体として機
能するリポソームとは異なる。むしろ本発明のリポソームは、それ自体で生物学的に有効
な活性薬剤である。
最も単純な形態では、本発明の担体の調製に用いられるリポソームは、2つの脂質層で
構成される。その脂質層は単一層であってもよく、または多重膜であってもよく、複数の
層を含んでいてもよい。リポソームの構成成分は、例えばホスファチジルコリン、コレス
テロール、ホスファチジルエタノールアミンなどを含んでいてもよい。ホスファチジン酸
は電荷を付与するが、これも加えられていてもよい。リポソームの作製に使用されるこれ
らの構成成分の典型的な量は、例えばコレステロールについて0.3〜1mol、好ましくは0.4
〜0.6molを含み、ホスファチジルエタノールアミンについて0.01〜0.2mol、好ましくは0.
02〜0.1molを含み、ホスファチジルコリン1molあたりホスファチジン酸、0.0〜0.4mol、
好ましくは0〜0.15mol含む。
リポソームは、水性コンパートメントによって隔てられた同心の両親媒性脂質(例えば
、リン脂質)二重層を含む自己集合性構造である(Reimer,K.ら, 1997, Dermatology 195(
2):S93, 1997参照)。その両親媒性脂質分子は、1個または2個の非極性アシル鎖に共有
結合した極性の頭部基領域を含んでいる。疎水性のアシル鎖と脂質分子を取り囲む水性溶
液との間のエネルギー的に好ましくない接触は、極性の頭部基とアシル鎖の再配置を引き
起こす。 アシル鎖が該二重層の内部に向かって配向する一方で、極性の頭部基は水性溶
液に向かって配向するようになる。その結果、脂質二重層構造は、アシル鎖が周囲の媒体
との接触から遮断されている2つの対向する単分子層を含んでいる。
本発明のリポソームは、周知の技術で構築することができる(例えば、Gregoriadis, G.
(ed.),Liposome Technology, VoIs. 1-3, CRC Press, Boca Raton, FL, 1993参照)。脂
質は、通常クロロホルムに溶解され、チューブかフラスコの表面に回転蒸発法により薄膜
状に伸展される。脂質混合物を含有するリポソームが所望されている場合は、それぞれの
成分脂質は最初のクロロホルム液に混合される。有機溶媒が除去された後に、水からなる
相、さらに任意に緩衝液および/または電解質を含んでいてもよい水相が添加され、該脂
質を懸濁するために容器は攪拌される。任意にその懸濁液は、超音波浴中またはプローブ
ソニケーター(probesonicator)を用いて、粒子がそのサイズを縮小され、懸濁が所望
の清澄度になるまで超音波を負荷される。
リポソームの正確な構成は、それらが使用されることになる特定の事情に依存するであ
ろう。当業者であれば適切な構成を決定することが日常的な月並みの問題であることがわ
かるであろう。
具体的な一態様において、本発明のリポソームは、実質的に単一種類のリン脂質からな
る。そのような態様において、そのリン脂質はホスファチジルコリン(PC)であり、より好
ましくはスフィンゴミエリンである。別の好ましい態様での本発明のリポソームは、例え
ばこれに限定されるものではないが1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン (D
SPC)および1,2-ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)などの合成脂質が並存する混合
物中にスフィンゴミエリン代謝物質を含有する。
リポソームは確立した方法により作製することができる。例えば、上記脂質の混合物で
あって溶媒を除いたものは、ホモジナイザーを用いて乳化し、凍結乾燥し、次いで多重膜
リポソームを得るために溶かすことができる。あるいはまた単一層のリポソームは、逆相
蒸発法で作製することができる(Szoka and Papahadjopoulos, Proc. Natl. Acad. Sci. U
SA75:4194-4198, 1978)。単一層の小嚢も超音波処理または押出し法で調製することがで
きる。一般に、超音波処理は、槽タイプの超音波処理装置、例えばBranson tip超音波処
理装置(G.Heinemann Ultrashall und Labortechnik, Schwabisch Gmund, ドイツ)で、脂
質の融点により定められる制御温度において実施される。押出し法は、生体膜押出機(bio
membraneextruder)により行ってもよい、例えばLipex Biomembrane Extruder(Northern
Lipids Inc,Vancouver, ブリティッシュコロンビア, カナダ)が挙げられる。押出しフィ
ルタにおける所定の孔径は、特定サイズの単一層リポソームの小嚢を形成することができ
る。リポソームは、非対称セラミック・フィルタを通した押出しで形成することもできる
、例えばセラフロー・マイクロフィルター(Ceraflow Microfilter)が挙げられる(Norto
n Company,Worcester, MAから購入可能)。
リポソーム調製に引き続き、その調製の間に大きさで分けられていないリポソームは、
リポソームの所望するサイズ範囲と比較的狭いサイズ分布を達成するために押出し法でサ
イズ分けされてもよい。およそ0.2〜0.4ミクロンのサイズ範囲では、リポソーム懸濁液が
従来のフィルタ(例えば、0.22ミクロンのフィルタ)を通す濾過によって滅菌されるのを可
能とするであろう。このフィルタ滅菌法は、高生産性ベースで実施することができる。
リポソームを所望のサイズに分けるのにいくつかの技術が利用可能であり、超音波処理
、高速均質化および加圧濾過がある(MJ. Hopeら, 1985, Biochimica et Biophysica Acta
812:55; 米国特許第4,529,561号、及び第4,737,323号)。リポソームのサスペンション
を超音波処理用の浴かプローブにより超音波処理すると、約0.05ミクロン未満サイズの微
小な単層小嚢にまでの累進的なサイズ減少を生じる。多重膜小嚢は、標準的エマルジョン
ホモジナイザーを通して、通常およそ0.1〜0.5ミクロンの間に選別されるリポソームサイ
ズまで再循環できる。リポソーム小嚢のサイズは、準弾性光散乱(QELS)で定められてもよ
い(Bloomfield,1981, Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 10:421-450参照)。平均リポソーム
の直径は、形成されたリポソームの超音波処理で減少させてもよい。断続的な超音波処理
のサイクルは、効率的なリポソーム合成に導くためにQELS評価と交互に行ってもよい。
明確なサイズ分布をもたらすために、小孔のポリカーボネート膜か非対称セラミック膜
を通してリポソーム を押出すことができる。通常、所望するリポソームのサイズ分布が
達成されるまで、サスペンションは膜を通して1回以上循環させる。 リポソームは、リポ
ソームサイズの漸減を達成するために、より小さい孔の膜を通して連続的に押出してもよ
い。本発明における使用のためには、リポソームは、約0.05ミクロンから約0.5ミクロン
までのサイズである。より好ましくはリポソームは、約0.05から約0.2ミクロンのサイズ
がよい。
リポソームが、担持しているものまたは活性薬剤を解き放す引き金として様々な条件(
pH、イオン強度、制御された放出、および抗体付属物を含む)を用いることができる。
pHの影響を受けやすいリポソームに関する研究は、大いにホスファチジルエタノールア
ミン(PE)二重層を含む陰イオンのリポソームに主として集中した(Huangら,1989, Bioche
mistry28:9508-9514; Duzgunes ら, 1990, "pH-Sensitive Liposomes," MembraneFusio
n, J. Wilschutand D. Hoekstra (eds.), Marcel-Decker Inc., New York, N. Y. pp. 7
13-730; Yatvinら,1980, Science, 210, 1253-1255参照)。最近、pH感受性カチオン性
リポソームは、DNAの細胞内への移入を仲介するように開発された。例えば、研究者らは
イミダゾール、メチルイミダゾールまたはアミノピリジン部分を含む頭部基を供えた一連
の両親媒性物質について記載した(Budkerら, 1996, Nature Biotech. 14:760-764参照)。
また、pHにおける変化で構造が再構築され得るリポソーム集合体中の脂質分子について記
載された(米国特許第6,200,599号、Nantzら参照)。
ここで詳述することにより、本発明の脂質担体がインビトロおよびインビボ両方の用途
に役に立つことが当業者に明確になるであろう。例えば、本発明の脂質担体は、生物活性
の薬剤(例えば、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体)および/または、薬物(例えば
、痛みの治療、制癌の治療または抗生物質)の細胞内への送達を必要とする、ほとんどす
べての生体外もしくは生体内の用途に用いられるであろう。
スフィンゴミエリンはスフィンゴリピドの種類に属するリン脂質であり、リン脂質と糖
脂質の多様なファミリーが、細胞を異なったシグナル伝達経路を通す細胞相互作用に仲介
する。 真核膜脂質におけるリン脂質総含量の半数以上は、スフィンゴミエリンかホスフ
ァチジルコリン(PC)によって構成され、ほとんどが原形質膜の外側部分に存在している。
スフィンゴミエリンの構造は、スフィンゴシン骨格と極性の頭部基、ホスホリルコリンを
含んでいる。スフィンゴシンはパルミチン酸塩とセリンとから形成されたアミノアルコー
ルであり、そのアミノ末端が長鎖アシルCoAでアシル化されてセラミドを生じる。その後
、ホスファチジルコリンによる末端水酸基の置換はスフィンゴミエリンを形成する。スフ
ィンゴミエリンは、すべての真核細胞膜の中に存在するが、主に神経系細胞の中に存在す
る。
セラミドは少なくとも5つの異なるスフィンゴミエリナーゼ(sphingomyelinase):原
形質膜と細胞質中の中性スフィンゴミエリナーゼおよびエンドソームとリソソーム中の酸
性スフィンゴミエリナーゼによるスフィンゴミエリンの加水分解で形成される。スフィン
ゴミエリンの酵素的開裂が様々なサイトカインによって活性化されると思われている。ス
フィンゴミエリンからのセラミドの酵素的形成が、リポソームの細胞膜への会合と部分的
融合となり得ることは知られている。スフィンゴシンはセラミダーゼの作用によりセラミ
ドから発生する。
スフィンゴミエリンとPCの両方が、同じ極性頭部基、ホスホリルコリンを共に有するけ
れども、両者はそれらの分子の界面部分および疎水性の部分で異なる。例えばスフィンゴ
ミエリンでは、そのアシル鎖がより高い平均飽和状態にあり、分子間水素結合および分子
内水素結合を形成するより大きい能力があり、その結果、スフィンゴミエリンを含有する
リポソームのそれぞれの二重膜におけるマクロ的性質に著しい偏りをもたらし得る。さら
に、スフィンゴミエリンは水素結合供与基と水素結合受容基の両方を含んでいるが、PCは
水素結合受容基を含むだけである。
スフィンゴミエリン代謝物質には、例えば以下に制限されないが、セラミド、スフィン
ゴシンおよびスフィンゴシン-1-リン酸が含まれる。スフィンゴミエリン代謝物質は重要
な細胞内および細胞間のシグナル伝達分子である。該伝達分子は、虚血/再灌流に対する
炎症性サイトカイン(TNF-a,IFN-g および IL-Ib)に反応するスフィンゴミエリン情報伝
達カスケードとホルモン1次メッセンジャーにより活性化される。スフィンゴミエリン代
謝物質は、細胞表面の特異的受容体を介した細胞外での諸作用を持ち、そして諸々の下流
経路と細胞内活動(細胞内カルシウム貯蔵部およびいくつかの酵素活性に直接作用する)
の活性化につながっていく。したがってスフィンゴミエリン代謝物質は、カルシウムシグ
ナル伝達、血小板活性化、細胞増殖およびアポトーシス調節を含むさまざまな細胞応答を
媒介する。
本発明を実施するに当り、分子生物学、微生物学、および組換えDNAにおける多くの従
来技術を用いてもよい。そのような技術はよく知られて、例えば以下に詳述されている:
Sambrook ら,1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold
SpringHarbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; F. M. Ausubelら (eds),
1995, CurrentProtocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York,
NY; D. N.Glover (ed), 1985, DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and I
I; M. L. Gait(ed), 1984, Oligonucleotide Synthesis; Hames and Higgins (eds), 19
85, NucleicAcid Hybridization; Hames and Higgins (eds), 1984, Transcription and
Translation;Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning; The Series,
Methods inEnzymology, Academic Press, Inc.; J. H. Miller and M. P. Calos (eds),
1987,Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, Cold Spring Harbor Laboratory;
Wu andGrossman (eds), Methods in Enzymology, Vol. 154; Wu (ed), Methods in Enz
ymology, Vol.155.
すべてのタイプの核酸は本発明の脂質担体に関係していてもよい。本発明によると、核
酸は、単一鎖の分子または二重らせん分子、すなわちDNA、RNA、またはDNA-DNA、DNA-RNA
またはRNA-RNAハイブリッドまたはアミノ酸骨格に塩基類を複合化させることにより形成
されたペプチド核酸(PNA)であってもよい。また、核酸はアンチセンス・オリゴヌクレオ
チドや、キメラDNA-RNA重合体やリボザイムなどのオリゴヌクレオチドであってもよく、
同様にこれらの核酸の修飾されたものであってもよく、その修飾は塩基、糖成分、りん酸
結合、またはそれらの組合わせにおけるものであってもよい。上記核酸は、標的細胞また
は細胞が何らかの方式で欠いているその不可欠の遺伝子またはその断片を含んでいてもよ
い。このことは遺伝子を欠いている場合、または遺伝子変異して発現しないか過剰発現し
ている場合に起きうる。核酸はまたアンチセンス・オリゴヌクレオチドを含むことができ
る。 そのようなアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、標的遺伝子の発現を阻害するよ
うに構築される。
1つの態様において、あるポリペプチドをコードする配列の全部または一部分を含むDN
A、またはそれの相補的配列が、遺伝子療法の用途のために、ベクター内に組み入れられ
、脂質担体に挿入される。ごく最近、遺伝的疾患および後天的疾患、両方のための遺伝子
療法領域で重要な技術的進歩がなされて来た (Kayら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. US
A,94:12744-12746)。遺伝子療法は、治療目的でDNAを移入することとして定義できる。
遺伝子の移入方法における改良は、様々なタイプの疾患の治療に関する遺伝子療法プロト
コルの開発をうながした。遺伝子療法もまた、新規の治療遺伝子の同定、ウイルス性およ
び非ウイルス性の遺伝子送達システムの改良、遺伝子調節についてのより良い理解、細胞
単離と細胞移植における改良に関する最近の進歩の成果を利用する。遺伝子治療は、一般
的に受け入れられている方法で実施することができる。例えば、Friedman, 1991, Therap
y for GeneticDiseases, Friedman, Ed., Oxford University Press, pages 105-121に
記載されている。
遺伝子組換えと染色体外での維持の両方のために、遺伝子導入用のベクターは従来から
知られており、どのような適切なベクターも用い得る。細胞にDNAを導入するための方法
は従来から知られており、方法の選択は、熟練当業者の能力の範囲内である(Robbins (ed
), 1997, GeneTherapy Protocols, Human Press, NJ)。当業界で知られている遺伝子導
入系は、本発明方法の遺伝子療法の実施の際に役に立つかもしれない。これらはウイルス
性の、そして非ウイルス性の移送法を含んでいる。
多くのウイルスが遺伝子移送ベクターとして使用された。ポリオーム、すなわちSV40、
(Madzakら, 1992,J. Gen. Virol., 73:1533-1536)、アデノウイルス(Berkner, 1992, Cu
rr. Top.Microbiol. Immunol. 158:39-46; Berknerら, 1988, Bio Techniques, 6:616-6
29; Gorzigliaら,1992, J. Virol., 66:4407-4412; Quantinら, 1992, Proc. Natl. Aca
d. Sci. USA,89:2581-2584; Rosenfeldら, 1992, Cell, 68:143-155; Wilkinsonら, 199
2, Nucl. AcidsRes., 20:2233-2239; Strafford-Perricaudetら, 1990, Hum. Gene Ther
., 1:241-256)、ワクシニアウイルス(Mackettら,1992, Biotechnology, 24:495-499)、
アデノ随伴ウイルス(Muzyczka,1992, Curr. Top. Microbiol. Immunol, 158:91-123; Oh
iら, 1990, Gene,89:279-282)、HSVおよびEBVを含むヘルペスウイルス(Margolskee, 199
2, Curr. Top.Microbiol. Immunol., 158:67-90; Johnsonら, 1992, J. Virol, 66:2952
-2965; Finkら,1992, Hum. Gene Ther., 3:11-19; Breakfieldら, 1987, MoI. Neurobio
L, 1:337-371;Fresseら, 1990, Biochem. Pharmacol, 40:2189-2199)、鳥のレトロウイ
ルス(Brandyopadhyayら, 1984, MoI. Cell Biol, 4:749-754; Petropouplosら, 1992, J
. Virol,66:3391-3397)、ネズミのレトロウイルス(Miller, 1992, Curr. Top. Microbio
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MoI. Cell Biol,4:1730-1737; Mamら, 1985, J. Virol, 54:401-407)、およびヒト由来
のレトロウイルス(Pageら,1990, J. Virol, 64:5370- 5276; Buchschalcherら, 1992, J
. Virol,66:2731-2739)。人間の遺伝子治療プロトコルのほとんどは、無能力化されたネ
ズミ・レトロウイルスに基づいている。
従来、知られている非ウイルス性の遺伝子移送方法は、リン酸カルシウム共沈殿などの
化学的技術を含んでいる、(Grahamら, 1973, Virology, 52:456-467; Pellicerら, 1980,
Science,209:1414-1422) 機械的なテクニック、例えば、マイクロインジェクション(An
dersonら, 1980,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5399-5403; Gordonら, 1980, Proc.
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niら, 1981,Nature, 294:92-94),リポソームを媒介として膜融合を介する移送。(Feigne
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。Wolffら,1990, Science, 247:1465-1468; Wuら, 1991, BioTechniques, 11:474-485;
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Proc. Natl.Acad. Sci. USA, 88:4255-4259; Cottonら, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci.
USA,87:4033-4037; Curielら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8850-8854; Cu
rielら, 1991,Hum. Gene Ther., 3:147-154.
1つのアプローチにおいてプラスミドDNAは、アデノウイルスのヘキソンタンパク質に特
異的な、ポリリジン結合の抗体で複合化され、その結果生じる複合体はアデノウイルス・
ベクターに結合する。その3分子複合体は、次いで細胞を感染させるのに使用される。結
合したDNAが破損される前に、アデノウイルスベクターは効率的な結合、内在化およびエ
ンドソーム分解を可能にする。別のアプローチでは、リポソーム/DNAが生体内への遺伝子
導入を直接仲介するのに使用される。標準的なリポソーム調製物における遺伝子導入過程
は、非特異的であるけれども、腫瘍沈着において、局所に限定された生体内取り込みと発
現が、例えば直接的なin situ投与後に報告されている (Nabel, 1992, Hum. Gene Ther.,
3:399-410)。
適切な遺伝子導入ベクターは、プロモーター配列、好ましくは細胞特異的であり、発現
されるべき配列上流に置かれたプロモーターを所有している。また、該ベクターは発現の
ためにベクター内に取り込まれた核酸配列が首尾良くトランスフェクションして発現する
ことを指示するものとして、1つ以上の発現性標識遺伝子を含んでいてもよい。さらに、
望ましくない免疫原性を最小にし、また必要な遺伝子産物の長期間発現を最大にするため
にベクターを最適化することができる (Nabe, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:32
4-326参照)。そのうえ、治療のためにターゲットとする細胞タイプに基づいてベクターを
選ぶことができる。
宿主細胞のトランスフェクションまたは感染のためのベクター構築物に関する実例とし
て、複製欠損があるウイルス・ベクター、アデノウィルスや単純疱疹ウイルスやアデノ随
伴ウイルスベクターなどのDNAウイルスまたはRNAウイルス(レトロウイルス)のベクターが
挙げられる。アデノ随伴ウイルスベクター(adeno-associated virus vector)は一本鎖で
あり、核酸の多数コピーを細胞の核へ効率的に送達することを可能とする。好ましいベ
クターはアデノウイルスベクターである。ベクターは、通常、いずれの原核生物DNAを実
質的に有しておらず、多くの異なった機能的な核酸配列を含んでいてもよい。そのような
機能的配列の一例は、転写および翻訳の開始、停止の調節配列を含むDNA領域であっても
よく、これには宿主細胞内で活性であるプロモーター(例えば、強いプロモーター、誘導
型プロモーターなど)とエンハンサーを含んでいてもよい。また機能的配列の一部として
、対象であるタンパク質をコードするオープン・リーディング・フレーム(ポリヌクレオ
チド配列)も含まれる。フランキング配列も部位特異的一体化(site-directedintegrati
on)のために含まれていてもよい。いくつかの状況において、5'−フランキング配列は相
同的組換えを可能とする。これによって、転写開始領域の性質を変え、その結果、一例と
して転写のレベルを上昇させるか、低下させるような誘導型または非誘導型の転写をもた
らすようになる。
一般に、コードされ、発現されたポリペプチドは細胞内に存在してもよく、すなわち、
細胞質、核またはオルガネラ内に保有されるか、または細胞によって分泌されてもよい。
分泌のためにポリペプチド中に存在する天然シグナル配列は保有されてもよい。ポリペ
プチドまたはペプチドがタンパク質の断片であるときにシグナル配列は与えられてもよく
、よって分泌され、処置サイトでプロセッシングを受けると、所望のタンパク質は自然な
配列を有するようになる。本発明に基づく使用のための対象とするコード配列の特定例は
、本明細書に開示されたポリペプチドをコードする配列を含んでいる。
マーカーはベクター構築物を含有する細胞の選別のために存在していてもよい。該マー
カーは、誘導型あるいは非誘導型の遺伝子であってよく、一般にそれぞれ、誘導下でまた
は誘導がなくても、陽性の選別を可能とする。 標識遺伝子の例として、ネオマイシン、
ジヒドロ葉酸還元酵素、グルタミン合成酵素、および同様のものが挙げられる。また当業
者によって通常採用されるように、一般に、使用されるベクターは宿主細胞における複製
に必要とされる複製開始起点と他の遺伝子も含んでいてもよい。
一例として、複製開始起点とともに特定ウイルスによりコードされ、複製に関係したタ
ンパク質を含む複製システムが構築物の一部として含まれていてもよい。該複製システム
は、複製に必要な産物をコードする遺伝子が結局、その細胞を形質転換しないように選択
されるべきである。そのような複製システムは、複製欠損があるアデノウィルス(G. Acsa
diら5 1994, Hum.MoI. Genet. 3:579-584参照)およびエプスタイン-バール(Epstein-Ba
rr)ウイルスによって発現される。複製欠損があるベクター、特に複製欠損のレトロウイ
ルスのベクターの例は、BAGである(Price ら, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:1
56; Sanesら,1986, EMBO J., 5:3133参照)。 最終的な遺伝子構築物は、対象とする1つ
以上の遺伝子、例えば生物活性の代謝分子をコードする遺伝子を含むのがよいことは理解
されるであろう。さらに、cDNA、合成的に製造されたDNA、または染色体DNAが、当業者に
知られ、実施されている方法とプロトコルを利用することによって使用されてもよい。
遺伝子治療のための1つのアプローチによると、アンチセンス配列を含んでいるか、ま
たはポリペプチドをコードするベクターは、直接に受容者(レシピエント)の細胞に注入
される(インビボの遺伝子療法)。あるいはまた、意図されているレシピエントからの細胞
は、外植され、アンチセンスを含むか、またはポリペプチドをコードするように遺伝子を
修飾し、ドナーに再注入される(生体外遺伝子療法)。生体外(ex vivo)のアプローチは
効率的なウイルス性の遺伝子導入の利点があり、ex vivoの遺伝子導入はインビボの遺伝
子導入アプローチより優れている。ex vivo遺伝子療法によると、宿主細胞は最初に、少
なくとも1つの核酸配列を含んで設計されたベクターを用いて核酸導入(トランスフェク
ション)され、生理的に受容できるキャリヤー、賦形剤、または生理食塩水かリン酸緩衝
生理食塩水などの希釈剤中に懸濁し、次にホストに投与される。必要なタンパク質および
/またはRNAは注入された細胞によって発現される。その結果、導入された遺伝子産物は
、遺伝子の変更された発現または機能に関係している障害の治療または改善に利用される
1つの具体的な態様では、アンチセンス核酸配列が本発明の脂質担体よって担持される
。アンチセンス配列は、全体にまたは部分的にターゲット核酸と相補的であり得て、DNA
であるか、そのRNA対応物であってもよい(すなわち、DNAのT残基は対応するRNA中のU残基
である)。標準的技術によりアンチセンス核酸を作り出すことができる(例えばShewmaker
ら,米国特許第5,107,065号参照)。
アンチセンス核酸は、タンパク質をコードする配列の一部分に相補的である配列を含ん
でもよい。一部分、例えば、16ヌクレオチドの配列がタンパク質の発現を阻害するのに充
分かも知れない。あるいは、アンチセンス核酸またはオリゴヌクレオチドであって、5'ま
たは3'の'非翻訳領域に相補的であるもの、またはターゲット遺伝子の翻訳開始コドン(5'
非翻訳および翻訳領域)と重複しているもの、または機能的な同等物をコードする遺伝子
が有効である。従って、アンチセンス核酸またはオリゴヌクレオチドは、センス鎖から転
写されたセンス鎖かmRNAによってコードされた遺伝子発現を抑制するのに使用できる。
さらに、遺伝子の転写および/または発現を抑制するために、安定した三重らせん含有
のまたは三つ組の核酸を形成するために、遺伝子またはDNA:RNA転写複合物のいずれかに
おいて、二本鎖核酸に付くようにアンチセンス核酸とオリゴヌクレオチドを組み立てるこ
とができる(Frank-Kamenetskii,M. D. and Mirkin, S. M., 1995, Ann. Rev. Biochem.
64:65-95)。三重らせん形成の塩基対合則とターゲット遺伝子のヌクレオチド配列を用い
ることにより本発明のそのようなオリゴヌクレオチドを構築することができる。
好ましい態様では、アンチセンス・オリゴヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の少な
くとも1つが、活性が調節されるべきRNAが位置している細胞内領域に入り込む組成物の
能力を高めるために機能する構造で置換されている。 そのような置換がホスホロチオエ
ート(phosphorothioate)結合、メチルホスホネート(methylphosphonate)結合、短鎖アル
キルまたは環状アルキルの構造を含むのが好ましい。他の好ましい態様によると、リン酸
ジエステル結合は、すぐに実質的に非イオンであり、かつ非キラルである構造、またはキ
ラルおよび鏡像異性的に特異的である構造で置換されている。当業者は、本発明の実施
に使用する他の結合を選択できるであろう。
オリゴヌクレオチドは、少なくともいくつかの修飾された塩基形態を含んでいる種を含
有してもよい。したがって、通常、天然に見つけられるもの以外のプリンとピリミジン類
が用いられてもよい。また同様に、ヌクレオチドサブユニットのフラノシル部分における
修飾は、本発明の基本原則が固く守られる限り影響を受けるかもしれない。そのような修
飾の例が2'-O-アルキル、および2'-ハロゲンに置換されたヌクレオチドである。本発明
で有用である糖残基の2'位置での修飾について、限定を意図しないいくつかの例にOH、SH
、 SCH3、F、OCH3、OCN、O(CH2)nNH2およびO(CH2)nCH3が含まれ、ここでnは1から約10で
ある。そのようなオリゴヌクレオチドは、天然オリゴヌクレオチドまたは天然オリゴヌク
レオチド構造とは1つ以上の相違点がある合成オリゴヌクレオチドと、機能上は交換可能
である。核酸とその機能を抑止するためにハイブリダイズするよう有効に機能する限り、
そのようなすべての類似物は本発明に包含される。
本発明に基づくアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、好ましくは約3から約50個のサ
ブユニットを含む。そのようなオリゴヌクレオチドと類似体が、約8から約25のサブユニ
ットを含むのがより好ましく、さらに好ましくは約12から約20までのサブユニットを含む
。本明細書で定義されるように、サブユニットは、リン酸ジエステルか他の結合を通して
隣接サブユニットに適切に結合している塩基と糖の組み合わせである。
本発明に従って使用されるアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、固相合成法なる周知
技術で都合よく、通常的に作られていてもよい。そのような合成のための装置が、PE App
lied Biosytems(Foster City, CA.)を含むいくつかの製造供給元から入手可能である。
また、そのような合成のためのいかなる他の手段も使用してもよく、もっともオリゴヌク
レオチドの実際の合成は、実施者の能力のうちにある。ホスホロチオエートおよびアルキ
ル化誘導体のような修飾オリゴヌクレオチドを生成する方法は公知である。
本発明のオリゴヌクレオチドは、ターゲットRNA(例えば、mRNA)かDNAとハイブリダイズ
するように設計される。例えば、mRNA分子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(例
えば、DNAオリゴヌクレオチド)は、RnaseH消化のためにmRNAを標的とするのに使用でき
る。あるいは、mRNA分子の翻訳開始部位にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドは、mR
NAの翻訳を妨げるのにも使用できる。別のアプローチでは、二本鎖DNAに結合するオリゴ
ヌクレオチドを適用することができる。そのようなオリゴヌクレオチドは、三重らせんの
構築物を形成して、DNAの転写を抑制できる。三重らせんのペアリングは、二重らせんが
ポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合を受け入れるべく開くのを妨げる。三重D
NAを使用する最近の治療法の進歩が報告されている(例えばJ.E. Geeら, 1994, Molecula
r and ImmunologicApproaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY参照)。
限定を意図しない例として、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは以下の領域にハイブ
リダイズすることを標的とされてもよい: mRNAキャップ領域;翻訳開始部位; 翻訳終結
部位; 転写開始部位; 転写終結部位; ポリアデニル化シグナル;3 '非翻訳領域; '5
非翻訳領域; 5'コード領域;中間コード領域;3'コード領域。相補的オリゴヌクレオチ
ドは、5'コード配列にかかっている約15から35個のヌクレオチドのいずれをも含む、遺伝
子の最もユニークな'5配列にハイブリダイズするように設計されることが好ましい。適切
なオリゴヌクレオチドは、OLIGOソフトウェア(Molecular Biology Insights, Inc., Casc
ade, CO.;http://www.oligo.net)を使用することで設計され得る。
本発明にしたがってアンチセンス・オリゴヌクレオチドを合成することができ、医薬組
成物として調製することができ、患者に投与することができる。アンチセンス・オリゴヌ
クレオチドと三重オリゴヌクレオチドの合成と利用は、以前に報告されている(例えばH.
Simonら, 1999,Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 9:527-31; F. X. Barreら, 2000, P
roc. Natl.Acad. Sci. USA 97:3084-3088; R. Elezら, 2000, Biochem. Biophys. Res.
Commun.269:352-6; E. R. Sauterら, 2000, Clin. Cancer Res. 6:654-60)。あるいは、
レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスまたはワクシニア・ウイルスから、または、
様々な細菌プラスミドからの発現ベクターは、ヌクレオチド配列をターゲットの器官、組
織または細胞集団まで送達するのに使用されてもよい。
標的遺伝子に対して相補的である核酸配列を発現するような組換えベクターを構築する
のに当業者によく知られている方法を使用することができる。これらの技術は、Sambrook
ら, 1989and in Ausubel ら, 1992に述べられている。例えば、高いレベルで非翻訳の
センスかアンチセンス配列を発現する発現ベクターを用いて、細胞か組織を形質転換する
ことにより遺伝子発現を抑制できる。 DNAへの統合がない場合でもそのようなベクターは
、内因性ヌクレアーゼによって無能化されるまでRNA分子を転写し続けるかも知れない。
過渡的な発現は、非複製ベクターを用いると1カ月もしくはそれ以上、そのベクター系に
適当な複製因子を含ませるならさらに長い間持続するかも知れない。
アンチセンス・オリゴヌクレオチドが遺伝子発現を抑制する能力を検証するのに様々な
アッセイ評価が使用されている。例えばmRNAレベルは、ノーザンブロット分析により評価
できる(Sambrookら,1989; Ausubelら, 1992; J. C. Alwineら 1977, Proc. Natl. Acad.
Sci. USA74:5350-5354; I. M. Bird, 1998, Methods MoI. Biol. 105:325-36), 量的ま
たは半量的なRT-PCR分析(例えばW. M. Freemanら, 1999, Biotechniques 26:112-122; R
enら, 1998, MoI.Brain Res. 59:256-63; J. M. CaIeら, 1998, Methods MoI. Biol. 10
5:351-71参照), またはinsituハイブリダイゼーション(A. K. Raap, 1998, Mutat. Res.
400:287-298参照)により評価される。あるいはまたポリペプチドレベルは、例えばウエ
スタンブロット解析、間接的な免疫蛍光法、または免疫沈降反応の技術で測定できる (例
えばJ. M.Walker, 1998, Protein Protocols on CD-ROM, Humana Press, Totowa, NJ参
照)。
特定の態様において、本発明の脂質担体は、細胞毒素 (例えば、ジフテリア毒素 (DT)
、プソイドモナス菌体外毒素A(PE)、百日咳毒素(PT)および百日咳アデニル酸シクラーゼ(
CYA))をコードするヌクレオチド系列、アンチセンス核酸(例えば、NGFアンチセンス)、リ
ボザイム、ラベルされた核酸、ならびにp53, p110Rbおよびp72といったがん抑制遺伝子を
コードする核酸を担持する。
NGFアンチセンス核酸は、例えばK.A. Changら, 1999, J. MoI. Neurosci. 12(l):69-7
4; C. Culmseeら,1999, Neurochem. Int. 35(l):47-57; F. Hallbookら, 1997, Antisen
se Nucleic AcidDrug Dev. 7(2):89-100に述べられている。脳の疾患(例えば、アルツハ
イマー氏病)、 (例えばK.A. Changら, 1999, J. MoI. Neurosci. 12(l):69-74; R. Hell
weg ら, 1998,Int. J. Dev. Neurosci. 16 78:787-94) ならびに膀胱の疾患(例えば炎
症および機能障害)(例えばM.A.Vizzard、2000、Exp. Neurol. 161(l): 273-84。 D. Od
diahら、1998、Neuroreport.9(7): 1455-8; M. C. Dupontら、1995、Adv. Exp.Med.
Biol. 385:41-54参照)を含むNGF関連の病気を治療するのに本発明の脂質担体とともにそ
のようなアンチセンス核酸を使用できる。
本発明の脂質担体は抗体に接合していてもよく、すなわち、ポリクローナルおよび/ま
たはモノクローナル抗体、それらのフラグメントまたはそれらの免疫学的結合等価物であ
ってもよい。抗体という用語は、均一な分子的実体、あるいは多くの異なる分子実体から
構成された血清製品のような混合物のいずれを述べるのに用いられる。抗体には全体の抗
体分子、ハイブリッド抗体、キメラ抗体、および一価抗体を含むことができる。さらに抗
体のフラグメント、抗体のFc、Fv、Fab1、およびF(ab)2フラグメントも挙げられる。
抗体は、商業的供給元、例えば、Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., West
Grove, PA;Advanced Targeting Systems, San Diego, CA; Connex GmbH (Martinsried,
Germany),Covance Research Products, Cumberland, VA; Pierce Endogen, Rockford, I
L; DiaSorin,Stillwater, MN; and DAKO Corporation, Carpinteria, CAから得てもよい
。あるいは抗体は、動物宿主(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、または他の非ヒト哺乳動
物)において、免疫原性成分を用いる免疫化により産生させてもよい。抗体は、免疫細胞
のインビトロ免疫付与(感作)によって産生することもできる。抗体は適切な抗体をコード
するDNAでプログラムされた組換えシステムで生成されてもよい。あるいは抗体は精製重
鎖および軽鎖の生化学的再構成によって組み立てられてもよい。
ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の調製には、標準的技術を利用して、抗体を
発生させる免疫原として、単離されたポリペプチドまたはそれの部分を使用することでき
る (例えば、E.Harlow and D. Lane, 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold S
pring HarborLaboratory, Cold Spring Harbor, NY)。完全長ポリペプチドまたはその代
わりに抗原性のペプチド部分が免疫原として使用できる。通常、抗原性ペプチドは、少な
くとも5個の隣接アミノ酸残基を含み、ポリペプチドのエピトープを含有している。それ
により該ペプチドに対して産生された抗体は、該ペプチドと特異的な免疫複合体を形成す
る。本発明に使用される免疫原性のポリペプチドまたはペプチドは、細胞から分離される
か、または化学的に合成されてもよい。
適切な免疫原性調製物としては、例えば、組換え技術により産生されたポリペプチドま
たは化学合成されたポリペプチド、またはそれらの部分が含まれる。該調製物には、さら
にアジュバント、または類似の免疫賦活剤を含むことができる。多くのアジュバントが当
業者によって知られ、使用される。適切なアジュバントの例は、以下に限定されるもので
はないが、不完全フロインドアジュバント、例えば明礬、リン酸アルミニウム、水酸化ア
ルミニウム、アルミニウム珪石などの鉱物ゲル、界面活性化物質、例えばリゾレシチン、
pluronicポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシ
ニアンやジニトロフェノールなどである。
アジュバントのさらなる例として、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタ
ミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP11637、ノ
ル‐MDPと呼ばれる)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミル-Lアラニン-2-
(1'‐2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CG
P19835、MTP-PEと呼ばれる)、およびバクテリアから抽出された3成分、すなわち2%スクア
レン/TWEENR80エマルション中のモノホスホリル脂質A、トレハロースdimycolateおよび細
胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含むRIBIが挙げられる。特に有用なアジュバントは、リン酸緩
衝生理食塩水に5%(wt/vol)のスクアレン(squalene)、2.5%のPluronicL121ポリマーお
よび0.2%のポリソルベート(polysorbate)を含む(Kwakら,1992, New Eng. J. Med. 327:1
209 1215)。好ましいアジュバントは、完全なBCG、Detox、(RIBI、ImmunochemResearch
Inc.)、ISCOMSおよび水酸化アルミニウムアジュバント(Superphos、Biosector)を含んで
いる。アジュバントの有効性は、抗原性ペプチドに対して誘導された抗体量を測定するこ
とによって定められる。
ポリペプチドに対するポリクローナル抗体は、上記の通り適切な対象を免疫原で免疫化
することによって生成される。免疫化された対象における抗体力価は、標準的技術により
経時的にモニターできる。例えば固定化ポリペプチドもしくはペプチドを使用する酵素結
合免疫吸着定量法(ELISA)に関係する酵素などを使用する。所望するなら抗体分子は、哺
乳動物(例えば、血液から)から分離することができ、免疫グロブリンG画分を得るための
protein Aクロマトグラフィーなどの周知技術でさらに精製できる。
免疫付与後の適当な時点、例えば抗体力価が最高であるときに、抗体産生細胞を免疫化
対象から得て、以下の標準的技術でモノクロナール抗体を生成するのに使用できる。ハイ
ブリドーマ技術(Kohler and Milstein, 1975, Nature 256:495-497; Brownら, 1981, J.
Immunol.127:539-46; Brownら, 1980, J. Biol. Chem. 255:4980-83; Yehら, 1976, PN
AS 76:2927-31;and Yehら, 1982, Int. J. Cancer 29:269-75参照)、 ヒトB細胞ハイブ
リドーマ技術(Kozborら,1983, Immunol. Today 4:72)、EBV-ハイブリドーマ技術(Coleら
, 1985,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)
またはトリオマ(trioma)技術などである。
ハイブリドーマを産生する技術はよく知られている(一般的にはR. H. Kenneth, 1980,
MonoclonalAntibodies: A New Dimension In Biological Analyses, Plenum Publishing
Corp.,New York, N. Y.; E. A. Lerner, 1981, Yale J. Biol. Med., 54:387-402; M.
L. Gefterら,1977, Somatic Cell Genet. 3:231-36を参照)。一般に不死化した細胞系(
通常は骨髄腫)が、上記の通り免疫原により免疫化された哺乳動物から得たリンパ球(通常
は脾細胞)に融合される。そして、結果として生じるハイブリドーマ細胞の培養上清は、
ポリペプチドもしくはペプチドに結合するモノクロナール抗体を産生するハイブリドーマ
を同定するためにスクリーニングされる。
モノクロナール抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を調製する代替法として、対応する
ポリペプチドを用いて、組換え型のコンビナトリアル免疫グロブリン・ライブラリー(例
えば、抗体ファージディスプレイ・ライブラリー)をスクリーニングすることによって、
モノクロナール抗体を同定でき、分離できる。その結果、該ポリペプチドに結合する免疫
グロブリン・ライブラリーメンバーを単離する。ファージディスプレイ・ライブラリを発
生させ、スクリーニングするためのキットは、商業的に入手可能である(例えば the Phar
maciaRecombinant Phage Antibody System, Catalog No. 27-9400-01; and the Stratag
ene SurfZAPRPhage Display Kit, Catalog No. 240612)。
さらに、抗体ディスプレイ・ライブラリを発生させ、スクリーニングするために使用さ
れるもので、とりわけ扱いやすい方法と試薬に関する例は、例えばLadnerら, 米国特許 5
,223,409; Kangら,国際公開WO 92/18619; Dowerら, 国際公開 WO 91/17271; Winterら,
国際公開WO92/20791; Marklandら, 国際公開WO 92/15679; Breitlingら, 国際公開WO 93
/01288;McCaffertyら, 国際公開WO 92/01047; Garrardら, 国際公開WO 92/09690; Ladne
rら, 国際公開WO90/02809; Fuchsら, 1991, Bio/Technology 9:1370-1372; Hayら,. 199
2, Hum.Antibod. Hybridomas 3:81-85; Huseら, 1989, Science 246:1275-1281; Griffi
thsら, 1993,EMBO J 12:725-734; Hawkinsら, 1992, J. MoI. Biol. 226:889-896; Clar
ksonら, 1991,Nature 352:624-628; Gramら, 1992, PNAS 89:3576-3580; Garradら, 199
1,Bio/Technology 9:1373-1377; Hoogenboom ら, 1991, Nuc. Acid Res. 19:4133-4137;
Barbasら,1991, PNAS 88:7978-7982; and McCaffertyら, 1990, Nature 348:552-55な
どが挙げられる。
さらに標準的なDNA組換え技術を使用することで、ヒトの、そして非ヒトの両方の部分
を含むキメラモノクロナール抗体、およびヒト化されたモノクロナール抗体などの組換え
型抗体を作ることができる。従来技術の遺伝子組換え技術でそのようなキメラのヒト化さ
れたモノクロナール抗体を産生できる。例えばRobinsonら, 国際出願 PCT/US86/02269; A
kiraら, 欧州特許出願84,187;Taniguchi, M., 欧州特許出願171,496; Morrisonら, 欧州
特許出願173,494;Neubergerら, 国際公開 WO 86/01533; Cabillyら,米国特許 4,816,567
; Cabillyら, 欧州特許出願125,023;Betterら, 1988, Science 240:1041-1043; Liuら,
1987, PNAS84:3439-3443; Liuら, 1987, J. Immunol. 139:3521-3526; Sunら, 1987, PN
AS 84:214-218;Nishimuraら, 1987, Cane. Res. 47:999-1005; Woodら, 1985, Nature 3
14:446-449;Shawら, 1988, J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559; S. L. Morrison, 19
85, Science229:1202-1207; Oiら, 1986, BioTechniques 4:214; Winter 米国特許5,225
,539; Jonesら,1986, Nature 321:552 525; Verhoeyanら, 1988, Science 239:1534; an
d Beidlerら,1988, J. Immunol. 141:4053-4060に使われている方法を用いる。
モノクロナール抗体のFvフラグメントは、バクテリアにおいて一本鎖抗体技術を使用す
ることで作り出すことができる(米国特許4,946,778 および国際特許出願WO 88/09344)。
さらに、グルコシル化サイトを含むようにFvフラグメントを遺伝的に操作することができ
る。これらの組換えFvフラグメントを哺乳類細胞の中で産生させることができ、その結果
として炭水化物部分を含有するフラグメントが生成する。モノクロナール抗体のFabまた
はF(ab')2フラグメントが、それぞれペプシンかパパインによる消化を利用して、ハイブ
リドーマ細胞かトランスフェクトされた細胞株(例えば骨髄腫細胞かChinese Hamster Ova
ry (CHO)細胞などの細胞株)によって産生される全免疫グロブリンの酵素的開裂で作り出
されてもよい。
従来の技術を用いて、抗体か抗体フラグメントにリポソームを接合させることができる
(例えば M. J.Ostro (ed.) 1987, Liposomes: from Biophysics to Therapeutics, Marc
el Dekker, NewYork, NY参照)。リポソームを調製し、それの表面に免疫グロブリンを接
合させる1つの好ましい方法がY.Ishimotoら, 1984, J. Immunol. Met. 75:351-360に記
載されている。この方法によれば、ジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロー
ル、およびホスファチジルエタノールアミンで構成された、多重ラメラリポソームが生成
される。次いで精製フラグメントは、架橋薬剤、N-ヒドロキシスクシンイミジル-3-(-2-
ピリジルジチオ)プロピオネートによって、ホスファチジルエタノールアミンとカップリ
ングされる。リポソームへの抗体またはそのフラグメントのカップリングは、あらかじめ
捕捉されていたマーカー、例えばカルボキシフルオレセンがリポソームから解放されるこ
とで示される。この解放は、結合した抗体、フラグメント、または相補体に対する二次抗
体とインキュベーションするときに起こる。
抗体または抗体フラグメントは、本発明のリポソームまたは別のキャリヤーとも炭水化
物部分を介して結合(カップリング)させることもできる。超可変領域または抗体の結合
部位に炭水化物部位がなければ、そのようなカップリングを利用することできる。このよ
うに炭水化物との架橋を通した接合は、結合に影響を与えず、結合部位は、細胞表面抗原
に結合していけるように依然としてそうなっているであろう。
ポリマー骨格部分かまたはリポソームに、本発明(Fvを除いた)の抗体か抗体フラグメン
トをカップリングさせるための好ましい方法の1つは、定常領域の炭水化物部分を通した
接合を含む。これは利用可能な抗原結合部位の数を最大にする。抗体フラグメント(およ
び抗体)とカップリングさせるためのヒドラジド基を作り出すために糖の環部分を誘導化
するための方法は確立されている(J. D. Rodwellら, 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA
83:2632-36参照)。このようにして調製されたいくつかの免疫抱合体が、臨床実験または
通常の臨床応用への承認待ちにある。
リポソーム表面へのモノクロナール抗体の結合も、グルタルアルデヒドを使用し、ホス
ファチジルエタノールアミンと抗体との間に架橋形成によって達成することができる。あ
るいはチオール化抗体は、マレイミド基が取り込まれ得る脂質を含むリポソームと反応さ
せることができる。リポソームの表面に残存するマレイミド基は、さらにチオール化ポリ
アルキレングリコール部位を含む化合物と反応することができる。抗体もしくは抗体フラ
グメントのチオール化は、通常、タンパク質のチオール化に使用されるN-スクシンイミジ
ル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、イミノチオレートまたはメルカプトア
ルキルイミデートの使用で達成され得る。あるいは、抗体に内在するジチオール基を、チ
オール基を生成するために還元してもよい。後者の方法は、抗体機能を維持するために好
まれる。別の方法によればまるごとの抗体はペプシンなどの酵素によって処理されてF(ab
)2フラグメントを形成し、次に、そのフラグメントはジチオスレイトール(DTT)で還元さ
れてFabフラグメントを形成し、その結果1〜3個のチオール基の生成をもたらす。チオ
ール化抗体を、マレイミド基含有リポソームに接合させるには、pH 6.5から7.5で2時間
から16時間、中性緩衝液中の反応成分と反応させることにより達成されるであろう。
本発明の脂質担体は、NGF受容体またはウロプラキン(uroplakin)に対する抗体または
抗体フラグメントに接合される。
広範囲な医薬組成物と薬剤を送達するのに、本発明の脂質担体と方法が使用できる。前
記核酸に加え、本発明の脂質担体は、生物活性物質として低分子の有機または無機の化合
物を担持させることができる。適当な医薬物質または生物活性物質は、以下に限定される
ものでないが、殺菌薬、抗生物質、抗抗酸菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス薬、新生物用剤、
免疫応答に影響する物質、血中カルシウム調節剤、血糖調節に有用な物質、抗凝血剤、抗
血栓剤、抗高脂血症薬、心臓病薬、甲状腺ホルモン様薬と抗甲状腺薬、アドレナリン作用
薬、血圧降下剤、抗コリン作動薬、鎮痙薬、抗潰瘍薬、骨格筋・平滑筋弛緩剤、プロスタ
グランジン、アレルギー反応阻害剤、抗ヒスタミン剤、局部麻酔薬、鎮痛剤、麻薬拮抗薬
、鎮咳薬、鎮静催眠剤、抗けいれん薬、抗精神病薬、抗不安症薬、抗鬱薬、食欲減退薬、
非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤、酸化防止剤、血管作用薬、骨活性剤、
抗関節炎薬、および診断用薬剤が挙げられる。
好ましい態様における生物活性物質は、抗新生物薬、例えばヴィンクリスチン、ドキソ
ルビシン、ミトキサントロン、カンプトテシン、シスプラチン、ブレオマイシン、シクロ
ホスファミド、メトトレキサート、ストレプトゾトシンなどであろう。特に好ましい抗癌
剤は、例えばアクチノマイシンD、ヴィンクリスチン、ビンブラスチン、シスチンアラビ
ノシド、アントラサイクリン、アルキル化剤、白金化合物、代謝拮抗物質、およびヌクレ
オシド類似体、例えばメトトレキサート、プリンアナログおよびピリミジンアナログなど
を含む。制癌剤はさらにアドリアマイシン、ダウノマイシン、マイトマイシン、エピルビ
シン、5-FUおよびアクラシノマイシンなどの制癌薬、リシンAやジフテリア毒素などの毒
素、およびアンチセンスRNAなどが挙げられる。抗癌剤水溶液への脂質の水和で、脂質担
体内への抗癌剤のカプセル化を達成できる。アドリアマイシン、ダウノマイシンおよびエ
ピルビシンは、pH勾配の利点を利用するリモートローディング方法(remote loading m
ethod)によってリポソーム中にカプセル化されるであろう(D.M. Lawrenceら, 1989, Ca
ncer Research49:5922)。
ある一定の局面では、抗感染症薬剤を送達するのに、本発明の脂質担体を使用できる。
本発明の脂質担体は、他の薬物、例えばこれらに限定されないが、局部麻酔薬(例えば、
ジブカインとクロルプロマジン);ベータ・アドレナリン遮断薬(例えば、プロプラノロー
ル、チモロール、およびラベトロール(labetolol));血圧降下薬(例えば、クロニジン
とヒドララジン);抗うつ剤(例えば、イミプラミン、アミトリプチリンおよびドクセピム
(doxepim));抗痙攣剤(例えば、フェニトイン;抗ヒスタミン剤、例えば、ジフェンヒド
ラミン、クロルフェニルイミン(chlorphenirimine)、およびプロメタジン);抗生物質/
抗菌剤、例えば、ゲンタマイシン、シプロフロキサシンおよびセフォキシチンの選択的送
達に用いられてもよい。また、マクロライド剤やリンコザミン類(lincosamines)(例え
ば、リンコマイシン、エリスロマイシン、ジリスロマイシン(dirithromycin)、クリン
ダマイシン、クラリスロマイシン、およびアジスロマイシン);充分なスペクトルのペニ
シリン(例えば、チカルシリン、ピペラシリン、メズロシリン、カルベニシリンインダニ
ル(indanyl)、バカンピシリン、アンピシリン、およびアモキシシリン);ペニシリンと
ベータラクタマーゼ阻害剤(例えば、アモキシシリン-クラブラン酸、アンピシリン・スル
バクタム、ベンジルペニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、オキ
サシリン、ペニシリンG(ベンザチン、カリウム、プロカイン)、ペニシリンV、ピペラシリ
ンプラスタゾバクタム(tazobactam)、およびチカルシリンプラスクラブラン酸);アミ
ノグルコシド(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネ
チルミシン、ストレプトマイシン、およびトブラマイシン);およびテトラサイクリン(例
えば、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ミノサイクリン、メタサイクリン、
ドキシサイクリン、およびデメドサイクリン(demedocycline)などの抗生物質が挙げられ
る。さらに含まれているのは、抗真菌薬(例えば、ミコナゾール、テルコナゾール(terco
nazole)、エコナゾール、イソコナゾール、ブタコナゾール(butaconazole)、クロトリ
マゾール、イトラコナゾール、ナイスタチン、ナフチフィンおよびアムホテリシンB)であ
る。駆虫薬剤、ホルモン、ホルモン拮抗薬、免疫調節剤、神経伝達物質拮抗薬、抗緑内障
薬、ビタミン、麻酔剤、および造影剤も挙がられる。当業者であれば、本発明の製剤と方
法で使用に適した他の薬剤がわかるであろう。
特定の態様で本発明の脂質担体は、バニロイド成分(例えば、レジンイフェラトキシン
(resiniferatoxin)、カプサイシン、チナトキシン(tinyatoxin)、および関連化合物)
を送達する。さらに、該脂質担体は毒素(例えば、ボツリヌス毒素Aや、ボツリヌス毒素B
や、ボツリヌス毒素Cや、ボツリヌス毒素Dや、ボツリヌス毒素Eや、ボツリヌス毒素Fやボ
ツリヌス毒素Gなどのボツリヌス毒素)を送達してもよい。脂質担体は、本明細書に示され
るように、または従来知られている他の方法で調製することができる(例えば、Gilbert
ら, 米国特許,No. 6,334,999 ; Mayerら 米国特許No. 6,083,530.; Clercら 米国特許
No. 5,939,096 ;Mayerら 米国特許No. 5,795,589 ; Mayerら 米国特許No. 5,744,158 ;
Mayerら 米国特許No.5,616,341。これらは参照により本明細書に取り込まれる。)。
望ましくは組成物(例えば、医薬組成物)は、混合物状態で、製薬学的に許容できる賦型
剤、キャリヤーまたは希釈剤、ならびにここに記載される1以上の生物活性剤(例えば、
核酸、ポリペプチド、ペプチド、または抗体)、薬剤(例えば、レジンイフェラトキシン、
カプサイシン、チナトキシンまたは他のバニロイド化合物)か、毒素(例えば、ボツリヌス
毒素)を活性成分として含む。有効成分として生物活性剤を含む医薬組成物の調製は、従
来技術でよく知られている。通常、そのような組成物は、溶液かサスペンションのいずれ
かで注射可能に調製される。しかしながら注射する前では、液体において溶液またはサス
ペンションに好適である固体形態のものも生成され得る。その生成物もエマルジョンにす
ることができる。活性な薬効成分は、しばしば製薬学的に許容できて薬効成分と共存性が
良い賦型剤に混ぜられる。適切な賦型剤は、例えば、水か、食塩水か、ブドウ糖か、グリ
セロールか、エタノールなど、およびそれらの組み合わせである。本発明の好ましい担体
、賦型剤および希釈剤は、生理食塩水(すなわち、0.9%のNaCl)を含む。さらに、所望する
場合には、組成物は活性有効成分の有効性を増強する少量の補助剤、例えば湿潤剤、乳化
剤またはpH調整剤を含むことができる。
中和されて生理的に受容できる塩が形成されれば、生物活性剤または薬物を医薬組成物
に入れることができる。適切な塩は、酸付加塩(すなわち、ポリペプチドか抗体分子の遊
離アミノ基とで形成される)を含み、それは、例えば、塩酸もしくはリン酸のような無機
酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸のような有機酸などで形成される。遊離
カルボキシル基から形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カ
ルシウムまたは水酸化第2鉄などの無機塩基およびイソプロピルアミン、トリメチルアミ
ン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から得ることが
できる。
医薬組成物および脂質担体は、経口か非経口で全身的投与が可能である。非経口経路は
、以下に限定されないが、皮下、膀胱内、筋肉内、腹腔内、静脈内、経皮、吸入、鼻腔内
、動脈内、髄腔内、腸内、舌下または直腸が挙げられる。例えば静脈内投与は、単位用量
の注入で実施できる。ここで、本発明医薬組成物に関して使用される単位用量(unit dos
e)という用語は、ヒトについて単一の投与量として適切な、物理的に区分された個々の
ユニットを指し、各ユニットは、必要な希釈剤すなわち、担体とともに所望の治療効果を
もたらすように計算された所定量の活性剤を含む。開示された医薬組成物および担体は、
呼吸器吸入器か粘液作用(mucoactive)エアロゾル療法で投与できる(鼻内噴霧; 例えばM
. Fuloria andB. K. Rubin, 2000, Respir. Care 45:868-873; 1. Gonda, 2000, J. Pha
rm. Sci.89:940-945; R. Dhand, 2000, Curr. Opin. PuIm. Med. 6(l):59-70; B. K. Ru
bin, 2000,Respir. Care 45(6):684-94; S. Suarez and A. J. Hickey, 2000, Respir.
Care.45(6):652-66参照)。さらに局所性投与も使用できる。好ましくは開示された医薬
組成物および担体は、膀胱内注入で投与される。
医薬組成物は、投与処方と適合する方式で、かつ、治療有効な量において投与すること
ができる。投与される量は、治療を受ける患者、活性成分を利用するために患者の免疫系
キャパシティおよび必要とされる調節の度合いに依存する。投与される有効成分の所要量
について正確な量は、開業医の判断によるものであり、各個人に特異的である。しかしな
がら適切な投与量は、1日あたり、個人キログラム体重あたり、有効成分について約0.1か
ら20mg、好ましくは約0.5から約10mg、さらに好ましくは約1から数ミリグラムの範囲であ
ろう。これは投与経路にも依存する。
当初の投与と追加の投与のための適切な方法も一定しないが、最初の投与に引き続いて
、その後の注射または他の投与が1時間もしくはそれ以上の間隔で繰り返される投与によ
って代表される。あるいは、血中濃度で10nMから10μMの濃度を維持するのに充分な持続
的静脈注入も想定されよう。典型的な医薬製剤は、ペプチドかポリペプチド(5.0mg/ml);
亜硫酸水素ナトリウムUSP(3.2mg/ml);エデト酸二ナトリウムUSP(0.1mg/ml)および注射用
水q.s.a.d(1.0ml)を含む。本明細書で使用されるように、pgはピコグラムを意味して、n
gはナノグラムを意味して、μgはマイクログラムを意味して、mgはミリグラムを意味して
、μlがマイクロリットルを意味して、mlはミリリットル意味し、lはLを意味する。
さらに、医薬製剤の調製のための手引きは、例えばGilmanら (eds), 1990, Goodman an
d Gilman's: ThePharmacological Basis of Therapeutics, 8th ed., Pergamon Press;
and Remington'sPharmaceutical Sciences, 17th ed., 1990, Mack Publishing Co., Ea
ston, PA; Avisら(eds), 1993, Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medication
s, Dekker, NY;Liebermanら (eds), 1990, Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Sy
stems, Dekker,NYに記載されている。
様々な局面において、本発明は開示されたリポソームと脂質担体を利用する治療の新規
な方法を含む。特に治療は、癌、感染症、痛み(例えば、神経因性疼痛)および膀胱、生殖
泌尿器路、胃腸管、肺臓系統および他の器官または身体組織に関係する他の病態について
提供される治療である。具体的にには、泌尿器系の構成員、例えば、腎臓、尿管、膀胱、
括約筋および尿道に関する治療である。胃腸器官に関する例は限定されるものではないが
、食道、胃、大腸および小腸を含んでいる。呼吸器系器官は、他の器官の中に、気管、肺
臓、気管支、細気管支、肺胞および繊毛を含んでいる。生殖泌尿器路の器官は、膀胱、腎
臓、尿道、尿管、前立腺、陰茎、睾丸、細精管、副睾丸、輸精管、精嚢、尿道球(カウパ
ー)腺、子宮、膣および卵管を含むが、これらに限定されない。膀胱の病態に関する例は
、以下に限定されないが、痙攣性の過敏膀胱、低緊張性過敏膀胱、過活動膀胱、痛み、い
らだち、炎症、排尿パターン変更、失禁、感染および癌を含んでいる。治療に適した膀胱
癌には、例えば、移行性の細胞腫瘍、扁平上皮癌、および悪性腺腫を含んでいる。また、
ICとUDSDに関係する症状も含まれる。
本発明はさらに不随意的な筋収縮に関係している病態、以下に限定されないが、震え(
声、頭、および手足の震え);口蓋ミオクローヌス; 甲状腺機能失調の筋障害;片側顔面
痙攣。;チック; 斜視(例えば、共動斜視と垂直斜視);眼振;まぶた内反症;ミオキミ
ア; 歯ぎしり(TMJ);遅発性異常運動症候群;側部直筋麻痺; 舌下-顔面吻合に続いて
起こる運動過剰症;脊髄起源のミオクローヌス;発声の欠陥(例えば、どもり); 痛みの
ある硬直; 緊張性頭痛; 腰仙緊張と背中の痙攣(筋膜); 二次的筋肉痙攣を伴う神経根
疾患;痙縮; IC;痙攣性の膀胱;UDSD;弛緩不全(食道の); 骨盤直腸痙攣(アニスムス
と腟痙);分節ジストニー;限局性ジストニー(例えば、眼瞼痙攣(瞼失行症)、口顎筋ジス
トニー、顔ジストニー、舌ジストニー、頚ジストニー(斜頸)、および痙縮);喉頭部ジス
トニー(痙攣性発語障害、内転筋痙攣性発語障害、および外転筋痙攣性発語障害);職業特
有のジストニー(書痙などの職業的な痙攣);突発性および二次限局性ジストニー;及び他
の痙攣性疾患などの症状を治療する方法を包含する。
不随意性収縮の治療は、目、唇、舌、口、顎、頭、首、顔、腕、手、指、脚、胴体、膣
、頚、膀胱および括約筋(例えば、食道、心臓、幽門、回盲、オービルヌ(O'Beirne)、
肛門、尿道および膀胱首の括約筋)の制御に関係したものを含む、どんな筋肉のグループ
に用いられてもよい。眉間皺線と顔のしわを含む顔と首の深いしわの治療にも用いられる
本発明方法は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは人間の患者を治療するのに
用いられる。該開示方法は、1つ以上のこれらの症状を患う哺乳動物にリポソームか脂質
担体を投与することを含む。1つの局面では、脂質担体は生物的作用物質(例えば、核酸、
ペプチド、ポリペプチドまたは抗体)、薬物(例えば、痛みの治療薬、制癌性治療剤または
抗生物質)または毒素(例えば、ボツリヌス毒素)を担持することができる。例えば、疾患
が病原体による感染の結果であるなら、核酸は、該病原体の生長、代謝または繁殖に不可
欠である、病原体中のDNA配列を標的としたアンチセンス・オリゴヌクレオチドであって
もよい。別の例として、疾患が遺伝的欠陥(すなわち、ある内在のDNAが欠損しているか、
または変異している)に関係するのであれば、発現に至らないか、過剰発現をもたらすた
め、上記核酸は正常なDNA配列とするかもしれない。
インビボ・リポフェクションについて、いくつかの方法が報告された。動物全体の場合
では、リポソームか脂質担体は血流に、直接に組織内へ、腹膜に注入されてもよく、気管
にしみ込ませるか、または動物が吸い込むエアゾールに転換されてもよい。例えば、DNA
とDOTMA:ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとの混合物、100マイクログラム
の1回静脈注射が、すべての組織に効率的にトランスフェクトすることができる(Zhuら,
1993, Science261:209-211)。また、リポソームか脂質担体を血管壁に植えつけるのにカ
テーテルを使用することも可能であり、その結果、内皮細胞と血管平滑筋細胞を含め、様
々なタイプの細胞の連続的トランスフェクションを首尾良くもたらすことができる。特に
、カチオン性リポソームに複合化されたクロラムフェニコール・アセチルトランスフェラ
ーゼ(CAT)発現プラスミドのエアゾール送達は、少なくとも21日間、生体内で高レベルの
肺特異的CAT遺伝子発現を起こす(Striblingら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:
11277-11281)。エアゾール送達のための代表的な一方法が以下の通り実施された:(1)6mg
のプラスミドDNAと12μMのDOTMA/DOPEリポソームは、水でそれぞれ8mlに希釈され、混合
された。(2)等量が2つのAcornI噴霧装置(Marquest, Englewood, CO)に置かれた。; (3)
動物は、Intox小動物暴露小部屋(アルバカーキ)に収容され、4L/分の気流速度がエアゾー
ルを発生させるのに使用された(この容量をエアロゾル化するのに約90分必要だった);(4)
動物を1から2時間部屋から出して、該手順を繰り返した。
特異的な標的部分が特定の細胞もしくは組織を標的とするのに、本発明の脂質担体とと
もに使用できる。1つの態様において、ターゲティング部分、例えば抗体や抗体フラグメ
ントが親水性ポリマーに付けられて、担体形成後に脂質担体に組み合わされる。かくして
脂質担体と組み合わせた標的部分の利用は、特定の細胞と組織に送達する担体を好都合に
カスタマイズする能力を提供する。特定の態様においては、薬物(例えば、痛みの治療薬
、抗癌剤、抗生物質)および/または生物活性物質(例えば、核酸、ポリペプチド、ペプ
チドまたは抗体)を担持する開示された脂質担体は、特異的に癌細胞、免疫細胞(例えば、
B細胞とT細胞)ならびに膀胱、生殖泌尿器路、胃腸管、肺臓系統、その他の身体器官また
は組織の細胞を標的とすることができる。そのような細胞は、様々な受容体かマーカーを
含む細胞表面の抗原に対する抗体もしくは抗体フラグメントを使用することで標的とする
ことができる。
例えば多くの癌は、細胞表面のマーカー(例えば乳癌細胞において発現されるHER2や神
経膠腫で発現されるIL‐13受容体など)により過剰発現されることによって特徴づけられ
る(例えばJ.Baselgaら, 1997, Oncology (Huntingt) 11(3 Suppl 2):43-8; S. Menardら
, 2000, J.Cell. Physiol. 182(2): 150-62; W. Debinski, 1998, Crit. Rev. Oncog. 9
(3 4):255-68に論じられている)。特定の生殖泌尿器管(urogenitary)癌は、ウロプラキ
ン(uroplakin)マーカーの発現で特徴づけられる(例えばX.Xuら, 2001, Cancer 93(3):
216-21; J. J.Lu ら, 2000, Clin. Cancer Res. 6(8):3166-71; U. Kaufmannら, 2000,
Am. J. Clin.Pathol. 113(5):683-7; S. M. Liら, 1999, J. Urol. 162(3 Pt l):931-5;
I. Yuasaら,1999, Int. J. Urol. 6(6):286-92; I. Yuasaら, 1998, Jpn. J. Cancer R
es.89(9):879-82; R. L. Wuら, 1998, Cancer Res. 58(6):1291-7参照)。さらにニュー
ロンはNGF受容体の発現で特徴づけられる(例えばL.Tessarollo, 1998, Cytokine Growth
FactorRev. 9(2):125-37; E. C. Yuen EC,ら, 1996, Brain Dev. 18(5):362-8; S. B.
McMahon, 1996,Philos. Trans. R. Soc. Lond. B. Biol. ScL 351(1338):431-40; G. De
chantら, 1994,Prog. Neurobiol. 42(2):347-52で論じられている)。こうして、抗HER2
、抗IL-13受容体と抗NGFレセプターの抗体または抗体フラグメントなどの標的部分が、脂
質担体を選ばれた細胞に送達するのに使用できる。生物活性物質および/または薬物は、
そうして特定タイプの細胞に送達され、有用で特異的な医療治療をもたらす。
カチオン性脂質で補助された薬物送達は、確立された方法によって達成される。クロロ
ホルムなどの有機溶媒に可溶性である薬物については、薬物とカチオン性脂質は、その両
方が可溶性である溶媒に混ぜられ、次いで減圧下で溶媒が除去される。その後、脂質‐薬
物残渣は、適当な水性溶剤、例えば無菌生理食塩水に分散される。生成サスペンションは
、選択により、数回の凍結/解凍サイクルにかけられてもよい。その後、該サスペンショ
ンは、超音波を照射されて、分散の粗密度を低下させられ、あるいは20から30nm直径に粒
径サイズを減少させられる。これは所望する利用において、粒子サイズが大きいか、小さ
いかいずれの粒径で最も効果を生じているかどうかに依存する。いくつかの利用について
は、直径100nmまたはそれ以下の孔を有するフィルタを通してサスペンションを形成す
ることにより、押出されたリポソームを生成させることが有用かもしれない。さらに、脂
質−薬物凝集体を発生させるために、混合物の中にコレステロールまたは天然リン脂質を
含めることは有用であろう。
生物活性剤を担持する本発明の脂質担体は、適切ないずれの方法であっても、送達され
得る。 水溶液に可溶性であって有機溶媒に不溶の薬剤に関して、脂質の分散かリポソー
ムに使用される脂質混合物は、該混合物の溶液から溶媒を蒸発させることによって、フラ
スコか試験管の内側表面上にコーティングすることができる。一般に脂質混合物は、単一
もしくは複数の脂質二重層壁を有して水性コアをカプセル化する小嚢を形成することが可
能であるはずである。溶解させた薬剤を含む水相(例えば、生理食塩水溶液)は、その後脂
質に加えられ、撹拌されてサスペンションを生じ得るが、また数回までは凍結および解凍
されてもよい。
特定の態様において、本発明の脂質担体は、バニロイド(例えば、カプサイシン)および
/またはボツリヌス毒素(例えば、ボツリヌス毒素D)のあるなしにかかわらず使用でき、そ
れらは単独で用いられるか、膀胱癌の治療のために設計された化学療法薬剤、標的を目標
とする抗体、またはDNA構築物と組み合わせて用いることができる。具体的にはバニロイ
ドおよび/またはボツリヌス毒素を含むリポソームまたは脂質担体が、膀胱癌に関係して
いる痛みまたは排尿機能の不全を防ぐか、治療するか、または改善することに使用され得
る。治療化学療法薬剤を使用する(J. B. Bassettら, 1986, J. Urol. 135(3):612-5; C.
P. Dinneyら,1995, J. Interferon Cytokine Res. 15(6):585-92; T. Tsurutaら, 1997,
J. Urol.1997 157(5): 1652-4; H Kiyokawaら, 1999, J. Urol. 161 (2): 665-7参照)
か、標的を目標する抗体を使用する(例えばJ. Morganら, 1994, Photochem. Photobiol.
60(5):486-96;A. Aicherら, 1994, Urol. Res. 22(l):25-32参照)およびDNA構築物を使
用(例えばY.Horiguchiら, 2000, Gene Ther. 7(10):844-51; L. A. Larchianら, 2000,
Clin. CancerRes. 6(7):2913-20; M. Cemazarら, 2002, Cancer Gene Ther. 9(4):399-4
06)する膀胱癌に関する脂質ベースの治療が、当業界において知られている。
別の態様では本発明の脂質担体は、バニロイド(例えば、カプサイシン)とおよび/また
はボツリヌス毒素(例えば、ボツリヌス毒素D)のあるなしにかかわらず使用できるが、そ
れらは単独で用いるか1以上の抗菌剤と組み合わせて用いることができる。具体的にはバ
ニロイドおよび/またはボツリヌス毒素を含むリポソームまたは脂質担体は、泌尿系感染
に関係している痛みまたは排尿機能の不全を防ぐか、治療するか、または改善するのに使
用され得る。一般に、感染について脂質をベースとする治療は当業界で知られており、そ
れらはテトラサイクリンとドキシサイクリン(L. Sangareら, 1999, J. Med. Microbiol.
48(7):689-93;L. Sangareら, 1998, J. Antimicrob. Chemother. 42(6): 831-4.); トブ
ラマイシン(C.Beaulacら, 1999, J. Drug Target. 7(1):33-41);ゲンタマイシンとセフ
タジィディム(R.M. Schiffelersら, 2001, Int. J. Pharm. 214(1 2):103-5; R. M. Sch
iffelersら,2001, J. Pharm. Exp. Ther. 298(1)369-75);アントラサイクリン(N. Dos S
antosら, 2002,Biochem. Biophys. Acta 1561(2):188-201);シプロフロキサシン(B. Wie
chensら, 1999,Ophthalmologica 213(2): 120-8)および他の抗感染剤の使用である。
微小リポソームを発生させるために、サスペンションは所望する平均サイズまでリポソ
ームを小さくさせるのに必要な時間、超音波にかけることができる。もし大きいリポソー
ムが所望の場合、均一の分散が得られるまで、すなわち、目視により可能な大きい粒子が
存在することが観察されるまで、手動によりまたはボルテックスミキサーによりサスペン
ションを撹拌することができる。生物活性物質または薬物だけを含む脂質担体については
、水相における活性物質または薬物は、透析により、あるいは該物質か薬物以外の正常成
分すべてを含む水相で平衡化させたゲル濾過クロマトグラフ・カラム(例えば、アガロー
ス)を通すことによって除去される。使用される脂質混合物は、本発明のリポソーム化合
物に加えてコレステロールか天然脂質を含むことができる。そしてそのリポソーム・薬物
凝集体は、適切ないずれの方法でも送達されるであろう(上記参照)。
本発明は以下の諸態様を含むが、これらに制限されない;哺乳類患者器官の痛みを治療
する方法であって、該患者にそのような症状を治療するための有効な量の脂質担体含有医
薬組成物を投与することを含む方法;前記態様の方法であって、脂質担体がリポソームで
ある方法;前記の態様のいずれかの方法であって、その器官が生殖泌尿器路である方法;
前記態様のいずれかの方法であって、その生殖泌尿器路の器官が、膀胱、腎臓、尿道、尿
管、前立腺、陰茎、睾丸、細精管、副睾丸、輸精管、精嚢、尿道球腺、子宮、膣および卵
管からなる群より選択される方法;前記の態様のいずれかの方法であって、前記器官が胃
腸管の器官である方法;前記態様のいずれかの方法であって、該胃腸管の器官が食道、胃
、大腸、および小腸からなる群より選択される方法;前記の態様のいずれかの方法であっ
て、痛みが感染、炎症、過敏、癌および痙縮からなる群より選択される方法;前記の態様
のいずれかの方法であって、前記脂質担体が膀胱内注入、静脈投与、局所投与、スプレー
式点鼻投与、呼吸の吸入器投与、および経口投与から選択された方法で投与される方法;
前記の態様のいずれかの方法であって、前記脂質担体がさらにバニロイド化合物を含有す
る方法;前記の態様のいずれかの方法であって、該バニロイドがカプサイシン、レジンイ
フェラトキシン(resiniferatoxin)、およびチナトキシン(tinyatoxin)からなる群よ
り選択される方法;前記の態様のいずれかの方法であって、該脂質担体がリポソームであ
る方法;前記の態様のいずれかの方法であって、前記器官が生殖泌尿器路の器官である方
法;前記の態様のいずれかの方法であって、該生殖泌尿器路器官が、膀胱、腎臓、尿道、
尿管、前立腺、陰茎、睾丸、細精管、副睾丸、輸精管、精嚢、尿道球(カウパー)腺、子宮
、膣および卵管からなる群より選択される方法;前記の態様のいずれかの方法であって、
器官が胃腸管の器官である方法。;前記の態様のいずれかの方法であって、該胃腸管器官
が食道、胃、大腸、および小腸からなる群より選択される方法;前記の態様のいずれかの
方法であって、前記器官が呼吸系器官である方法;前記の態様のいずれかの方法であって
、該呼吸器系器官が気管、肺臓、気管支、細気管支、小胞、および繊毛からなる群より選
択される方法;前記の態様のいずれかの方法であって、前記脂質担体が膀胱内注入、静脈
投与、局所投与、スプレー式点鼻投与、呼吸の吸入器投与、および経口投与から選択され
た方法で投与される方法;前記の態様のいずれかの方法であって、担体、賦型剤または希
釈剤が生理食塩水を含有する方法。
本発明は以下の諸態様を含むが、これらに制限されない;哺乳類患者における不随意性
の筋収縮を治療する方法であって、その収縮を治療するのに有効な量のボツリヌス毒素を
担持する脂質担体を含有する医薬組成物を該患者に投与することを含む方法;前記態様の
方法であって、脂質担体がリポソームである方法;前記態様のいずれかの方法であって、
ボツリヌス毒素が、ボツリヌス毒素Aからボツリヌス毒素Gまでからなる群より選択される
方法;前記態様のいずれかの方法であって、不随意の筋収縮が、目、唇、舌、口、顎、頭
、首、顔、腕、手、指、脚、胴体、膣、頚、および膀胱からなる群より選択された身体の
部分に影響する方法;前記態様のいずれかの方法であって、不随意筋の収縮が、食道、心
臓、幽門、回盲、オービルヌ(O'Beirne)、肛門、尿道および膀胱首の括約筋からなる群
より選択された括約筋に影響する方法;前記態様のいずれかの方法であって、不随意の筋
収縮が、震え、片側顔面痙攣、チック、斜視、眼振、まぶた内反症、ミオキミア、歯ぎし
り、遅発性異常運動症候群;側部直筋麻痺、どもり、痛みのある硬直、緊張性頭痛、背中
痙攣、神経根疾患、痙縮、痙攣性の膀胱、尿の排尿筋・括約筋筋失調、弛緩不全、アニス
ムス、腟痙、分節ジストニー、突発性ジストニーおよび限局性ジストニーから選ばれた症
状に関係している方法;前記態様のいずれかの方法であって、不随意の筋収縮が、眼瞼痙
攣、口顎筋ジストニー、顔ジストニー、舌ジストニー、頚ジストニー、斜頸、痙攣性発語
障害、および職業特有のジストニーからなる群より選択される限局性筋ジストニーに関係
している方法;前記態様のいずれかの方法であって、前記脂質担体が膀胱内注入、静脈投
与、局所投与、スプレー式点鼻投与、呼吸の吸入器投与、および経口投与から選択された
方法で投与される方法;前記態様のいずれかの方法であって、担体、賦型剤または希釈剤
が生理食塩水を含有する方法。
以下の実施例において本発明をより具体的に記載する。当業者にとって、本発明の多数
の変更および変形は明らかであるので、これらの実施例は、例示的なものに過ぎない。
以下の実施例1〜4は、リポソームの電荷および構造に関わる特性、すなわち、膀胱損
傷ラットモデルにおいて膀胱過活動を低下させることの原因となる卵ホスファチジルコリ
ン(PC)中の生物活性成分を決定するために行われる研究を記載する。以前の研究は、研
究に使用された卵PCの純度が60%しかないことを示した。具体的にこれらの研究は、様々
な天然脂質、ならびに例えば天然脂質と同様のアシル鎖長を有するが飽和度および頭部の
電荷において異なる脂質といった合成脂質から調製されるリポソームの効果を、ラット膀
胱傷害モデルで評価した。
[実施例1]
膀胱過活動の低下について、本発明の脂質担体を作製するための最適である脂質特性(
例えば頭部基、長さおよび飽和度)を脂質頭部電荷の効果とともに決定した。
〔物質と方法〕
34匹の雌性Sprague-Dawleyラット(200-250g)における膀胱反射活性(bladder refle
x activity)は、麻酔下で、皮下注射によって投与されるウレタン(urethane) (1.2 g/
kg)により行われる膀胱内圧測定によって調べられた。加熱ランプを用いて、身体温度を
生理学的な範囲に維持した。膀胱内圧力を記録し、また膀胱に溶液を注入するために、3
方コックで圧力変換器とシリンジポンプとに接続した経尿道的膀胱カテーテル(PE-50)
を用いた。対照の膀胱内圧測定図(CMG)は、反復的な排尿を誘発するために0.04 ml/分
の速度で、膀胱を生理食塩水でゆっくり満たすことによって測定した。反射性膀胱収縮の
膀胱収縮頻度を記録した。生理食塩水注入による対照CMGを3時間行った後、上皮透過性
を増大させるために硫酸プロタミン(PS)(Sigma Chemical; 10mg/ml)の注入を0.04 ml
/分の速度で1時間行った後、刺激物のKCl(500mM)の注入を1時間行った。その後、種
々の組成の脂質から作製したリポソームを、高濃度KCl存在下で2時間注入した。
3つの動物群(n= 5)で、膀胱活性の減少における脂質頭部の電荷の効果を決定した。
L-α-PC(双イオン性脂質の卵PC)で調製した中性荷電のリポソームは、陽性または陰性
に帯電した極性頭部、すなわち、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン
(DOTAP)および1-α-ホスファチジルセリン(POPS)のいずれかを有するリポソームと比
較された。
リポソームは、KirbyとGregoriadisとが記載したように調製した(Kirby,C.J. and Gr
egoriadia, G.,"A simple procedure for preparing liposomes capable of high encap
sulationefficiency under mild conditions," Liposome Technology, G. Gregnoriadis
, Ed., C.R.C.Press, Inc., Boca Raton, FL, 1984, Vol. 1, p. 20, 1984)。要するに
、リポソームは、生理食塩水中でL-α-ホスファチジルコリンとコレステロール (Sigma C
hemical Co.,St. Louis, MO) とのモル比2:1として、最終脂質濃度 1-2 mg/mlとなるよ
う構築された。クロロホルム中の脂質を、窒素下で適当な比率で一緒に乾燥させた。その
残渣を、生理食塩水または500 mM KCl中で強い超音波処理によりリポソームとして再構成
した。この脂質組成物から正味電荷のないリポソームが得られた。
対応のあるデータまたは対応のないデータ(適用できる場合)について、Studentのt検
定を用いて統計分析を行った。0.05未満のP値を、「有意」とみなした。すべてのデータ
を平均値±S.E.(標準誤差)として表した。
〔結果〕
図1で示すように、ホスファチジルコリン(PC)頭部を有する脂質から製造されたリポ
ソームは、陽イオンまたは陰イオン性の電荷を有する脂質、例えば、それぞれDOTAPおよ
びPOPSから調製されるリポソームよりも、有意に大きな程度で(p<0.01)、化学的に誘
発させた膀胱過活動を抑制することができた。とりわけ、L-α-PCは、DOTAP(10±0.09%
)およびPOPS(5±0.02%)と比較した場合、膀胱収縮頻度についてその前処理対照に対し
て3倍もの大きい減少(33±5.3%)を生じさせることができた。
DOPC、L-α-PC、POPCおよびDPPCと比較したときに、膀胱収縮頻度の減少において、ス
フィンゴミエリンが、PC頭部を有する脂質の中で最高であることがわかった(図2A)。結
合したアシル鎖のうち1つだけが不飽和である場合に、最適の活性が現れることがわかっ
た。すべてのリポソームは、500 mM KCl中で2 mg/mlの脂質濃度で調製された。これらの
脂質の構造を、図2Bに示す。
[実施例2]
この実施例は、膀胱過活動の減少におけるスフィンゴミエリン・リポソームの効果を示
す。
〔物質および方法〕
スフィンゴミエリンで調製した中性に荷電したリポソームは、ジヒドロスフィンゴミエ
リンと2つの純粋な合成脂質1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)お
よび1,-オレオイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OSPC)とから調製し
たリポソームと比較された。
この研究の手法は、リポソームの調製を実施例1から変更したものであることを除いて
は、実施例1に上述したものと同じである。簡潔にいえば、リポソームを、生理食塩水中
でスフィンゴミエリンとコレステロールとのモル比率2:1として構築し(Sigma Chemical
Co., St. Louis,MO)、最終脂質濃度を1-2 mg/mlとした。クロロホルム中の脂質を、窒
素下で適当な比率で一緒に乾燥させた。その残渣を、強い超音波処理により生理食塩水ま
たは500mMのKCl中でリポソームとして再構成した。この脂質組成物から、正味電荷のない
スフィンゴミエリン・リポソームが得られた。
〔結果〕
図3に示したようにスフィンゴミエリン・リポソームは、リポソームの注入開始に続く
膀胱収縮頻度の減少から立証されるように、ジヒドロスフィンゴミエリン、DSPCおよびOS
PCより有意に著しく、KCl存在下で、膀胱過活動を減少させることができた。黒矢印は、5
00 mM KCl存在下でのリポソームの注入開始を表わす。
[実施例3]
この実施例は、スフィンゴミエリンまたはスフィンゴミエリン代謝物で製剤化されたDS
PCリポソームの膀胱過活動に対する効果を示す。
〔物質および方法〕
ホスホリルコリン頭部のないスフィンゴミエリンは、セラミドという分子を生じる、す
なわち、この分子は外部刺激に対して広範囲の細胞応答を仲介する、周知の脂質セカンド
メッセンジャーを生成し、また、スフィンゴミエリンおよびグリコスフィンゴ脂質の生合
成にも使われる。セラミドはそれ自体では安定なリポソームを形成することができない。
そのため、膀胱過活動におけるセラミドの効果を、不活性の脂質、すなわち、1,2-ジステ
アロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)中にセラミドを1mol%含めることにより
検証した。
リポソームの調製を実施例1から変更したものであることを除き、この研究の方法は、
実施例1で記載したものと同じである。簡潔にいえば、リポソームを、生理食塩水でDSPC/
スフィンゴミエリンとコレステロール、DSPC/セラミドとコレステロール、DSPC/スフィン
ゴシンとコレステロール、またはDSPC/スフィンゴシン1-リン酸塩とコレステロールとの
モル比2:1として構築し、最終脂質濃度を1-2mg/mlとした。クロロホルム中の脂質を、窒
素下で適当な比率で一緒に乾燥させた。その残渣を、強い超音波処理により生理食塩水ま
たは500mMのKCl中でリポソームとして再構成した。この脂質組成物から、正味電荷のない
リポソームが得られた。
〔結果〕
図3に示すように、セラミドは膀胱収縮頻度の減少におけるDSPCの有効性を有意に増大
させた。もう一つのスフィンゴミエリン代謝物であるスフィンゴシンをDSPCに1 mol%包含
させた場合にも、類似の効果があった。スフィンゴミエリン代謝物であるスフィンゴシン
1-リン酸塩をDSPCに1mol%包含させた場合には、同様の有益な効果を示さなかったもの
の、DSPC中に例えば1-5mol%といったより高いモル百分率で包含させたときには、セラミ
ドおよびスフィンゴシンと同程度の膀胱収縮頻度の減少効果を示した(データは示さず)
。興味深いことに、スフィンゴミエリンをDSPCに1 mol%包含させた場合には、DSPCリポソ
ームの有効性が増大しなかった。
このセットの実験からの結果から、スフィンゴミエリン(SPM)の代謝物は、1 mol%と
いう低濃度でDSPCのような純粋な合成リポソームに包含させたときには、ラットにおける
膀胱収縮頻度の減少について、その親化合物自体よりも有意に活性であることが示された。
[実施例4]
この実施例は、膀胱過活動におけるセレブロシドで製剤化されたリポソームの効果を示す。
〔物質および方法〕
セレブロシドは、スフィンゴ糖脂質であり、かつ、セラミド前駆体である。セレブロシ
ドは、単糖類、例えばブドウ糖またはガラクトースからなる極性頭部を有する。図5は、
β-ガラクトースの極性頭部を有するセレブロシド分子を示す。
この研究の方法は、生理食塩水中でDSPC/セレブロシドとコレステロールとを2:1のモル
比として最終脂質濃度 1-2 mg/mlとなるようにリポソームが構築されたことを除き、実施
例3で記載したものと同じである。クロロホルム中の脂質を、窒素下で適当な比率で一緒
に乾燥させた。その残渣を、生理食塩水または500 mM KCl中で強いの超音波処理によりリ
ポソームとして再構成した。この脂質組成物から、正味電荷のないリポソームが得られた

〔結果〕
図6で示すように、セレブロシドは、膀胱収縮頻度の減少におけるDSPCの有効性を有意
に増大させた。DSPC/セレブロシド・リポソームの注入開始(トレース記録中の黒矢印で
示す)の後、ピーク間の時間間隔が増加したが、これは膀胱収縮頻度の減少を示している

[実施例1-4の要約]
実施例1-4からの結果から、スフィンゴミエリンで構成されるリポソーム、あるいは、
セラミド、スフィンゴシン、スフィンゴシン1-リン酸塩もしくはセレブロシドなどのスフ
ィンゴミエリン代謝物で構成されるリポソームは、ジヒドロスフィンゴミエリンなどの他
のリポソーム、またはスフィンゴミエリン代謝物を欠くリポソームと比較して、ラット・
モデルで膀胱過活動を有意に減少させることが示された。スフィンゴミエリンは、純粋で
ない卵PCにおける中性脂質の13%を構成しているいくつかの脂質の1つである。卵PCに存
在する脂質のすべてが膀胱過活動の減少に必ずしも効果的というわけではなかった。とり
わけ、PCのエーテルエステル類似体である一つの脂質、1-アルキル-2-アセトイル-sn-グ
リセロ-3-ホスホコリンは血小板活性化因子(PAF)であるが、それを単独で点滴注入した
場合、あるいはDSPCリポソームに1-5mol%包含させた場合には、膀胱反射活性(bladder
reflex activity)を悪化させた。
図7は、ラット・モデルでの膀胱過活動に対するスフィンゴミエリン・リポソームの活
性について提案するメカニズムを表す。スフィンゴミエリン・リポソームまたはその代謝
物を点滴注入した後に観察される膀胱収縮頻度の減少は、これらの化合物の抗炎症的作用
に起因するかもしれない。セラミドとスフィンゴシンとはいずれも、抗炎症効果を有する
ことが知られている細胞内酵素のプロテインキナーゼC(PKC)の既知ネガティブエフェク
ターである。さらに、セラミドは、PKCが介在するNF-κB活性化を阻害することにより、J
urkat細胞におけるIL-2産生を減少させることがあると信じられている。
[実施例5]
Sprague-Dawleyラットにおける過活動膀胱モデルを、KCl溶液中の酢酸またはプロタミ
ン硫酸塩(PS)への曝露により確立した。この後、引き続いて生理食塩水中のリポソーム
(LP)(前者の場合)またはLP/KClの点滴注入を行った。連続CMG変化を調べ、その結果
を、対照(生理食塩水注入)、過活動膀胱(酢酸またはPS/KCl)およびLPでの処置と比較
した。
〔物質および方法〕
膀胱内圧は、皮下注射(sc)によって投与されたウレタン (urethane) (1.2 g/kg)で
麻酔を掛けられた成熟雌性Sprague-Dawleyラットにおいて、経尿道的カテーテルを通じて
記録された。動物の一部は、実験の前に4日間、カプサイシンで前処置(125 mg/kg, sc)
を行った。連続CMGは、膀胱を生理食塩水、酢酸(0.1%)、KCl(500mM)、プロタミン硫
酸塩(PS)(10mg/ml)、LP、PS/KCLまたはLP/KClを含む様々な組成物の溶液でゆっくり
(0.04 ml/分)満たすことによって行った。測定したパラメータとして、排尿間隔(ICI
)、膀胱収縮の振幅、コンプライアンスおよび排尿圧閾値(PT)を含んでいた。
動物の準備。34匹の雌性Sprague-Dawleyラット(250-300g)をこの研究で用いた。動
物にウレタン(urethane)(1.2g/kg, sc)で麻酔を掛けた。身体温度は加熱ランプを用い
て生理的な範囲に維持した。
膀胱内圧曲線(CMG)。経尿道的膀胱カテーテル(PE-50)を、3方コックを介して圧力
変換器とシリンジポンプとに接続した。これは、膀胱内圧を記録し、また膀胱内に溶液を
注入するために用いた。対照CMGは、反復的な排尿を誘発するために膀胱を生理食塩水で
ゆっくり(0.04ml/分)満たすことによって行った。記録したパラメータは、反射的な膀
胱収縮の振幅、PT、コンプライアンスおよびICIであった。各動物における測定値は、3
〜5回の膀胱収縮の平均を表した。
過活動膀胱の誘導。生理食塩水注入で対照CMGを行った後、次の5つの膀胱内注入実験を
並行して行った:(1)上皮透過性を増やすための1時間のPS(Sigma Chemical Co. 10 mg/
ml)注入(N=6);(2)1時間のKCl(500 mM)注入、次いで、もう1時間のPS/KClによる注
入、その後、2時間のKCl注入(N=6)であるか、または2時間のLP/KCl注入(N=6);(3)1
時間の酢酸(AA)(0.1%)注入、その後、2時間の生理食塩水の注入(N=6)またはLPの注
入(N=6);(4)1時間のLP注入の後、1時間のAA注入(N=6);ならびに(5) 実験の4日前
にカプサイシン(10%エタノール、10%TWEEN(R)80、80%生理食塩水中に125mg/kg)を皮下
注射した動物に2時間のAA注入(N=4)(C.L. Chengら, 1993, Am. J. Physiol. 265:R13
2-138)。実験のデザインを図8に図示する。使用したKCl濃度は、正常ラットの尿中に存
在する濃度の範囲内であった(M. Ohnishi ら, 2001, Toxicol. Appl. Pharmacol. 174:1
22-129)。
リポソーム(LP)の調製。KirbyとGregoriadisによる記載の通りに、LPを調製した(C.
J. Kirbyand G. Gregoriadia, 1984, "A simple procedure for preparing liposomes
capable of highencapsulation efficiency under mild conditions," Liposome Techno
logy; G.Gregnoriadis, Ed., C.R.C. Press, Inc., Boca Raton, FL, Vol. 1, p.20)。
簡潔にいえば、LPを、生理食塩水中でL-α-ホスファチジルコリンとコレステロールとの
モル比2:1として構築し(SigmaChemical Co., St. Louis, MO)、最終脂質濃度を2 mg/m
lとした。クロロホルム中の脂質を、窒素下で適当な比率で一緒に乾燥させた。その残渣
を、強い超音波処理により生理食塩水または500mMのKCl中でLPとして再構成した。この脂
質組成物から、正味電荷のないLPが得られた。
統計分析。対応のあるデータまたは対応のないデータについて(適用できる場合)、St
udentのt検定を用いて統計分析を行った。0.05未満のP値を、「有意」とみなした。すべ
てのデータを平均値±S.E.として実施例6(下記)に表した。
[実施例6]
実施例5に記載した実験の結果を、以下ここに示す。要約すると、排尿間隔(ICI)は、
酢酸(AA)への曝露(79.8%の減少)またはPS/KClへの曝露(81%の減少)の後に減少した
。しかし、LP、PSまたはKClだけではICIの変化はなかった。ICIの減少は、LPの注入後(1
72.8%の増加)またはLP/KClの注入後(63%の増加)に部分的に反転するが、生理食塩水ま
たはKCl投与の後では有意の変化はなかった。カプサイシンによる前処置を行った場合に
は、AAによる刺激性作用の開始が30-60分ほど遅れたが、2時間の注入後ではその大きさは
変わらなかった。
表1A-1Cで示すように、PSだけの注入(10mg/ml)またはKClだけの注入(500 mM)では
、CMGの有意の変化はなかった。しかし、PS/KClの注入を行うと、30-40分の遅延の後に刺
激性効果が生じた(図9B、9D)。ICIおよびコンプライアンスは、二組の実験において、7
5%-83%(15.8±1.4から2.7±1.0分にまで、または16.3±1.5から3.4±0.7分にまで)なら
びに58%-75%(0.284±0.028から0.070±0.019ml/cm H2Oにまで、または0.226±0.050か
ら0.096±0.037ml/cm H2Oにまで)まで有意に減少した。
膀胱収縮振幅は、1つの組(表1C)では有意に増加(23%)したが、他の組(表1B)では
有意の増加はなかった。しかし、これら2つの組の平均をとると、膀胱収縮振幅は、有意
の増加(16%)を示した。PTは有意の変化はなかった。10-20分の遅延後に注入液をLP/KCl
に切り替えたとき、ICIは有意に増加した(63%、2.7±1.0から4.4±1.2分にまで)。KCl
単独に切り替えても、120分もの間はICIの変化はなかった(図9E 、9F; 表1B、1C)。PT
は、LP/KClまたはKCl注入に移行した後に有意に増加した。コンプライアンスは、LP/KCl
注入に移行した後には有意の変化はなかったが、KCl注入に移行した後にはさらに減少し
た(0.096±0.037から0.043±0.014ml/cm H2Oにまで)。
パラメータとして、排尿間隔(ICI)、コンプライアンス、圧力閾値(PT)および振幅を
挙げた。生理食塩水とPS処置1時間との間には、統計学的に有意の差は観察されなかった
。数値は、平均値±S.E.(N=6)である。
パラメータとして、排尿間隔(ICI)、コンプライアンス、圧力閾値(PT)および振幅を
挙げた。数値は、平均値±S.E.(N=6)である。* P<0.05、前処置と比較。
パラメータとして、排尿間隔(ICI)、コンプライアンス、圧力閾値(PT)および振幅を
挙げた。数値は、平均値±S.E.(N=6)である。* P<0.05、前処置と比較。
AA注入群におけるCMG。AAの刺激性効果は、注入後の20-30分ほどで顕在化した。ICIお
よびコンプライアンスは、二組の実験において、75%−84%(15.3±2.2から2.4±0.5分ま
で、あるいは12.6±2.0から3.2±1.3分にまで)、および71-76%(0.296±0.040から0.071
±0.016ml/cm H2Oまで、あるいは0.275±0.048から0.079±0.026 ml/cm H2Oまで)まで
有意に減少した(図10A-10F; 表2A-2B)。振幅への影響はより少なく、わずかに増加を示し
たにすぎなかった。またPTは有意の変化はなかった。次いでLPが注入されると、約10-20
分後にICIおよびコンプライアンスが有意に増加した(179%、2.4±0.5から6.7±1.5分ま
で;ならびに38%、0.071±0.016ml/cm H2Oから0.114±0.020 ml/cm H2Oまで)(図10F、10
E;表2A-2B)。このような増加は、生理食塩水の注入に切り替えた後120分もの間、持続
した。LP単独の注入を1時間行っても処置を行っていない動物での排尿反射に変化はなく
(表2C);また、M注入の効果は、前もってLPの膀胱内投与を行うことによっては減少し
なかった。
パラメータとして、排尿間隔(ICI)、コンプライアンス、圧力閾値(PT)および振幅を
挙げた。数値は、平均値±S.E.(N=6)である。* P<0.05、前処置と比較。
パラメータとして、排尿間隔(ICI)、コンプライアンス、圧力閾値(PT)および振幅を
挙げた。数値は、平均値±S.E.(N=6)である。* P<0.05、前処置と比較。
パラメータとして、排尿間隔(ICI)、コンプライアンス、圧力閾値(PT)および振幅を
挙げた。数値は、平均値±S.E.(N=6)である。* P<0.05、前処置と比較。
カプサイシン前処置を行った動物では、AAによって引き起こされる膀胱過活動が0.5-1
時間遅延した。ICIおよびコンプライアンスは、1時間において51%および33%だけ大きさが
減少した(21.0±2.4から10.2±3.0分にまで、および0.226±0.033から0.152±0.028ml/
cm H2Oにまで)が、2時間においては非処置の動物における効果と同等となった(4.6±1.
2分に78%減少、および0.082±0.024ml/cm H2Oに64%減少)(表3)。加えて、カプサイシ
ン前処置を行ったラットにおいて(表3)、1時間のAA適用後のICI減少(10.2±3.0分)は
、非処置のネズミ(表2B)における適用の1時間以内に測定したICI(2.9±0.9分)と比較
して、有意に長かった(p<0.05)。このことは、カプサイシン前処置によるC-線維の脱感
作が、AAによって誘発された膀胱過活動を抑制し、かつAAによって誘発された過活動の開
始を遅延させたことを示す。
パラメータとして、排尿間隔(ICI)、コンプライアンス、圧力閾値(PT)および振幅を
挙げた。数値は、平均値±S.E.(N=4)である。* P<0.05、前処置と比較。
[実施例5-6の概要]
実施例5-6からの結果を合わせると、(1)LPの膀胱内投与が、化学的に誘発された膀胱
過活動を抑制し;かつ、(2)生理的KCl存在下での低用量PS処置によって、膀胱過活動の持
続がもたらされたことが示される。これによりLP投与は、損傷しまたは漏れやすい尿路上
皮の新たな治療アプローチを提示する一方、低用量PSは、その漏れやすい尿路上皮を修復
できるかも知れない薬剤を試験するための薬理学的モデルを提供する。さらに、AAによっ
て誘発された過活動もまたLPにより低下したことは興味深いことである。このことから化
学的に誘発された膀胱粘膜の刺激/炎症だけでなく、PSによる尿路上皮バリアの直接的な
不全もまたLPによって反転し得ることが示された。理論に拘泥することを望まないでいう
なら、以上に観察されたように、LPの作用には刺激物質の流入を低減する尿路上皮に生成
された薄膜が介在するということはありうることである。LPが、ニューロンの膜を安定化
させ、また、求心性のレセプターの過興奮を減少させたこともまたありうることである。
これらの実験から、膀胱求心路(bladder afferents)が、膀胱過活動の誘導におけるA
Aの作用メカニズムに重要な役割を演じていることが明らかになった。以前の実験によっ
て、膀胱内へのAA注入が侵害受容性の求心性繊維を刺激し、抗炎症反応を誘発し、また過
活動膀胱を誘発することが示された(Y. Yu and W. C. de Groat, 1998, Brain Res. 807
:11‐18; L. A. Birderand W. C. de Groat, 1992, J. Neurosci. 12:4878 4889; K. B.
Thor andM. A. Muhlhauser, 1999, Am. J. Physiol. 277:R1002 -1012)。沈黙状態のC
-線維の刺激は、ある過活動膀胱の発生病理において中心的な役割を果たすことに関係し
てきた。その一方でA-δ求心路は、正常な排尿機能の引き金となる主因であり得ると通常
考えられている(Y.Yu and W. C . de Groat, 1998, Brain Res. 807:11-18 13; C. L.
Cheng ら, 1993,Am. J. Physiol. 265:R132-138; K. B. Thor and M. A. Muhlhauser, 1
999, Am. J.Physiol. 277:R1002-1012)。しかしながら上記したように、C-繊維膀胱求
心路を脱感作することが知られている用量によるカプサイシン前処置は、膀胱内のAAの作
用を遅延させかつ低減させた。このことから有髄A-δ求心路の感作もまた、AAによって誘
発される膀胱過活動において何らかの役割を演じることが示唆された。これらの実験で使
ったAAの濃度は0.1%であったが、これは、GAG層を溶解し、尿路上皮バリアに損傷を与え
、また刺激物質のより深い侵入を容易にすることができるものであった(M. Leppilahti
ら, 1999,Urol. Res. 27:272-276)。AAはまた、VRlレセプターまたはプロトン感受性チ
ャンネルを通して膀胱過活動を生じさせることができた(J. M. Welchら, 2000, Proc. N
atl. Acad. Sci.USA 97(25):13889-13894)。
ICの病因についての優勢な理論は、漏れやすく機能不全の尿路上皮を述べているが、そ
のためにカリウムのような刺激物質が、膀胱壁深層中へ経上皮的に移行してしまう。その
場合、その刺激物質は求心性神経を脱分極し、異常な興奮と頻発する排尿を誘発する(C.
L.Parsons ら, 1991, J. Urol. 145:732-735; C. L. Parsons ら, 1994, Br. J. Urol.
73:504-507;G. Hohlbrugger, 1999, Br. J. Urol. 83(suppl. 2):22-28; J. I. Bade
ら, 1997,Br. J. Urol. 79:168-171)。PSは、上皮透過性を亢進させるが(K. B. Thor
and M. A.Muhlhauser, 1999, Am. J. Physiol. 277:R1002-1012)、前記の実験では、こ
れを尿路上皮バリアを通してのKCl侵入を増大させ、また求心性のニューロンの同様の活
性化を誘導するために使用された。PS処置の前では、同一濃度のKClは排尿機能に変化を
もたらさなかった。さらにPS単独では膀胱過活動を引き出さなかった。このように、PSが
一次的な膀胱刺激物質として作用しなかったと仮定し、また通常の条件では膀胱内腔中の
KClが膀胱壁にある求心性神経の興奮性を変更しないであろうと仮定することは、合理的
であるように思われる。しかし、これらの薬剤(上記参照)を組み合わせて曝露をおこな
ったところ、IC患者に観察される病態が模倣された。
上述したように、PS/KClを用いた結果、ICIおよびコンプライアンスが減少し、膀胱収
縮振幅が増加したがPTは変わらなかった。高濃度のカリウムが、IC患者の誘発テストとし
て用いられてきた(C.L. Parsons ら, 1998, J. Urol. 159:1862-1867)。以前の研究か
ら、高濃度のカリウムがC-求心繊維を始動させ、かつ神経伝達物質または神経調節物質の
更なる放出の原因となることが示されてきた(J. Morrison ら, 1999, Scand. J. Urol.
Nephrol, suppl201:73-75)。引き続き、カリウムは排尿筋筋肉の脱分極を誘発し、筋肉
収縮または組織障害を引き起こす(G. Hohlbrugger, 1999, Br. J. Urol. 83(suppl. 2):
22-28; C. L.Parsons ら, 1998, J. Urol. 159:1862-1867)。高濃度のカリウムを排尿
筋に急に曝露することは、膀胱コンプライアンスおよびキャパシティの減少の原因となる
(P. C.Stein ら, 1996, J. Urol. 155:1133-1138)。このことと一致して、上記に示し
た実験からICIおよびコンプライアンスが減少することが示されたが、PTは変わらなかっ
た。しかし、高濃度のカリウムが尿道を刺激し、また高い出口抵抗(outlet resistance
)の原因となる可能性があることは知られている(G. Hohlbrugger, 1999, Br. J. Urol.
83(suppl.2):22-28)。このことと一致して、膀胱収縮振幅は、上に示した今回の二組
の組合せにおいても上昇した。
移行細胞表面をおおう保護バリアとして、表面GAG層が提案されている(J. I. Bade ら
, 1997, J. Urol79:168-171; G. Hohlbrugger, 1995, J. Urol. 154:6 15; C. L. Parso
ns ら, 1980,Science 208:605-607)。GAG層の欠陥は、IC患者のサブセットにおいて示
唆されてきた(C.L. Parsons ら, 1991, J. Urol. 145:732-735; C. L. Parsons ら, 19
94, Br. J.Urol. 73:504-507)。リポソーム(LP)は、同心の閉鎖膜系にあるリン脂質
を含み、薬物またはDNA構築物のキャリヤーとして使われる(K.Reimer ら, 1997, Der
matology195(suppl. 2):93-99; M. Nishikawa ら, 2001, Human Gene Therapy 12:861-8
70; G.Gregoriadis, 1976, New Eng. J. Med. 295:704-710)。LPをベースとする組成物
は外傷用の多湿フィルムを提供し、また、慢性的炎症反応なく新生皮層内での外傷治癒を
仲介する(K.Reimer ら, 1997, Dermatology 195(suppl. 2):93-99; M. Schafer-Kortin
g ら, 1989, J.Am. Acad. Dermatol. 21:1271-1275)。他の研究者は、LPが安定した吸
収、エンドサイトーシス、脂質移送および融合によって細胞と相互作用することを示唆し
た(R. B.Egerdie ら, J. Urol. 142:390-398)。本明細書で示すように、傷害のある尿
路上皮へのLPの投与は、過活動膀胱、ICまたは他の泌尿器系疾患を有する患者の治療のた
めの新しい方法として使うことができる。
[実施例7]
ネズミにおいて急性過活動膀胱の動物モデルを、PSの膀胱内注入、尿路上皮のバリア機
能を衰弱させるのに使用される薬剤および生理的濃度のKClを用いて開発した。
〔物質および方法〕
連続CMGを、ウレタン麻酔した雌性ラットに行った。膀胱を通常の生理食塩水で満たし
た(0.04ml/分)後、KCl(100もしくは500mM)またはPS(10もしくは30 mg/ml)のいず
れかを含む試験溶液で、60分間膀胱内注入を行った。この後、10 mg/mlのPSで処置した動
物に、100、300または500mMのKClを膀胱腔内に注入した。一部の動物は、実験の4日前に
カプサイシン(125mg/ml, sc)で前処置を行った。
動物の準備。研究は、250-300 gm体重の雌性Sprague-Dawleyラット、40匹について行っ
た。動物は、1.2gm/kgのウレタンを皮下注射して麻酔を掛けた。身体温度を、加熱ラン
プを用いて生理的な範囲に維持した。
膀胱内圧測定図(CMG)。PE-50チューブ(Clay-Adams,Parsippany, NJ)を、尿道を通
して膀胱内に挿入し、3方コックを介して圧力変換器とシリンジポンプとに接続した。こ
のものは膀胱内圧を記録し、また膀胱に溶液を注入するために用いた。対照CMGは、反復
的な排尿を誘発するために膀胱を生理食塩水でゆっくり(0.04 ml/分)満たすことによっ
て行った。反射的な膀胱収縮の振幅、PT、コンプライアンスおよび排尿間隔(ICI)を記
録した。圧力閾値(PT)は、最初の膀胱収縮を誘発する圧力を示す。PTは、反射性膀胱収
縮の誘導のため、求心性神経の活性に対応するパラメータとして、しばしば用いられてき
た。各動物における測定値は、3〜5回の膀胱収縮の平均を表した。
生理食塩水注入で対照CMGを行った後、次の3つの膀胱内注入実験を並行して行った:(1
) 1時間のKCl(生理食塩水中100または500mM)注入(各群において、N=4);(2)1時間のP
S(SigmaChemical Co.; 生理食塩水中30 mg/ml)注入(N=6);および、(3) 1時間のPS(
10 mg/ml)注入の後、さらに1時間の、100、300もしくは500mM KClの注入(各亜群にお
いて、N=6)。4匹の動物において、10%のエタノール、10%のTWEEN(R)80および80%の生理
食塩水を含む担体中に20 mg/mlの濃度で溶かしたカプサイシンを、2連続日に分けた用量
で皮下投与した。以前に記載されたように(C. L. Cheng ら, 1993, Am. J. Physiol. 26
5:R132-138)、用量として、第1日目に12時間の間隔をおいて25および50mg/kg、ならび
に第2日目には50mg/kgを含有していた。すべての注射をハロタン麻酔下で行った。カプ
サイシン最終投与の後4日目に、動物に麻酔を掛け、PS(10 mg/ml)の膀胱内投与を1時間
行い、引き続いてKCl(500mM)注入を行う処置を行った。
排尿反射の抑制。排尿筋へのカリウムの直接的な影響を評価するために、4匹の動物に
おいて、ヘキサメトニウム(hexamethonium)の静脈注射(25 mg/kg)(N=2)または両側
の骨盤神経切断(N=2)のいずれかによって、排尿反射をブロックした。
統計分析。対応のあるデータまたは対応のないデータについて(適用できる場合)、St
udentのt検定を用いて統計分析を行い、p<0.05を「有意」とみなした。量的なデータは、
実施例8(下記)では、平均値プラスまたはマイナス標準誤差として表す。
[実施例8]
実施例7に記載した実験結果をここで以下に示す。要するに、高濃度のPS(30mg/ml)
の膀胱内投与によって、排尿間隔の減少(ICIは、80.6%減少した)を伴う刺激的効果がも
たらされた。このことは、KCl(100または500 mM)または低濃度のPS(10 mg/ml)の投与
では観察されなかった。低濃度のPSの注入に引き続き、300または500 mMのKClを注入する
と刺激的効果(ICIは、それぞれ76.9または82.9%減少した)が生起した。刺激の開始は、
500 mM KCl(10〜15分)の後で、300mMのKCl(20〜30分)の場合より速やかに起こった
。カプサイシンによる前処置を行った場合には、開始が遅延し(およそ60分)、また刺激
的効果の大きさが縮小した(ICIが35.5%減少した)。
様々な注入グループ中のCMG。表4に示すように、100 mMまたは500 mM KCl単独の点滴注
入の間におけるCMGパラメータは、生理食塩水投与の間のCMGパラメータとは有意の違いは
なかった。これらの結果から、膀胱バリア機能が対照の条件による影響を受けないことが
示された。10mg/ml PSを1時間、点滴注入している間には、生理食塩水投与と比較して有
意の変化はなかった(図11A-11d; 表5)。これらの結果から、低用量PSはそれ自体では膀
胱の刺激物でないことが示された。しかし、膀胱へ30 mg/ml PSを点滴注入したところ、4
0〜45分の遅延の後に刺激的効果が表れる(ICIは80.6%減少し、コンプライアンスは63.6%
減少し、かつPTは36.8%増加した)結果となった(図11A-11D;表5)。
パラメータとして、容積圧力閾値(volume pressure threshold(PT))、振幅、コンプ
ライアンスおよび排尿間隔(ICI)を含めた。統計学的に有意の差は、100と500mMとの間
のKCl処置では観察されなかった(それぞれのグループについてN=4)。数値は、平均値±
S.Eである。
それぞれのグループについてN=4。パラメータとしては、容積圧力閾値(PT)、振幅、コ
ンプライアンスおよび排尿間隔(ICI)を挙げた。数値は、平均値±S.E.である。* P<0.0
5、前処置と比較。
低濃度PS(10mg/ml)注入後のKClの効果
図12A-12Fおよび表6に示されるように、300または500mM KCl注入で実施されたCMGは、
ICI(76.9または82.9%の減少)、コンプライアンス(60または63.4%の減少)および収縮
振幅(23.7または21.4%の増加)を有意に変えるものであった。しかし、PTに有意の変化
はなかった。300mM KClが介在する該効果は20〜30分の遅延後に起こったが、500 mM KCl
が介在する該効果は10〜15分の遅延後に起こった。このことは、より高濃度のKClによっ
て、より迅速な侵入が生じることを意味した。100 mM KClの注入を1時間おこなっても、C
MGパラメータに有意の変化を起こさなかった。
それぞれの群でN=6。パラメータとしては、容積圧力閾値(volume pressure threshold
(PT))、振幅、コンプライアンスおよび排尿間隔(ICI)を挙げた。統計学的に有意の
差が、対照と300/500mM KCl処置との間で観察された。数値は、平均値±S.E.である。*
P<0.05、前処置と比較。
カプサイシンで前処置を行った動物のCMG。カプサイシンによる前処置を行った動物に
おいては、PS(10mg/ml)およびKCl(500 mM)の一連の逐次注入からの過活動膀胱は、
約1時間遅延した。さらに、ICIおよびコンプライアンスの変化は、2時間の注入の後、36%
および55%だけ減少した(ICIは20.3±1.2から13.1±2.8分にまで減少し、コンプライアン
スは0.224から0.100ml/cm H2Oにまで減少した; 表7)。カプサイシン前処理を行ったラ
ットにおけるPS(10mg/ml)およびKCl(500 mM)の逐次注入の後で(表7)、そのICI(1
3.1±2.8分)は、非処理ラットにおけるPS(10mg/ml)およびKCl(500 mM)の膀胱内適
用後のICI(3.2±1.3分)(表6)よりも有意に長かった(p<0.05)。このことから、カプ
サイシン前処置によるC-線維脱感作が、PS/KClによって誘発した膀胱過活動を抑制するこ
とが示された。
それぞれの群において、N=4。パラメータとしては、容積圧力閾値(PT)、振幅、コンプ
ライアンスおよび排尿間隔(ICI)を挙げた。数値は、平均値±S.E.である。* P<0.05、
前処置と比較。
排尿反射を抑制した動物におけるCMG。図13A-13Bで示すように、通常の生理食塩水の注
入は、排尿反射を誘導しなかった。このことから、排尿反射がヘキサメトニウム(hexame
thonium)注射または骨盤神経切断によってブロックされることが示された。PS(10mg/m
l)点滴注入に引き続くKCl(500mM)の注入により、コンプライアンスが55.9%(0.093±
0.026から0.041±0.011ml/cm H2Oにまで)減少した。このことから、カリウムが排尿筋
の直接刺激に影響を及ぼし、コンプライアンス減少の原因となることが示された。
[実施例7-8の要約]
要するに、実施例7-8からの結果は、以下のことを示した:(1)低用量PS(10 mg/ml)
は膀胱刺激物でなく、尿路上皮バリア機能への非細胞毒性傷害(affront)であり;かつ
、(2) 膀胱内圧測定に、通常の「生理的な」食塩水を、より生理的に適切である300また
は500 mMKCl(M. Ohnishiら, 2001, Toxicol. Appl. Pharmacol. 174:122-129; J. Morr
isonら, 1999,Scand. J. Urol. Nephrol, suppl 201:73-75)に対して使用すると、過活
動膀胱の動物モデルにおいて下部尿路の機能に影響が現れた。ICの重要な構成要素は漏れ
やすい尿路上皮であると想定されてきた(C. L. Parsonsら, 1991, J. Urol. 145:732-73
5; C. L.Parsonsら, 1994, Br. J. Urol. 73:504-507; S. Keayら, 1999, J. Urol. 162
:1487-1489)。尿路バリアが感染しやすくなると、正常時には再吸収なく尿管を通過する
高濃度の有害物質が流入することになると信じられている(G. Hohlbrugger, 1999, Br.
J. Urol.83:22-28; C. L. Parsonsら, 1998, J. Urol. 159:1862-1867)。尿路バリアが
破綻すると、これらの物質は膀胱内に逆行する場合があり、そこで、該物質は常在C-線維
求心路の活性を刺激する。このことにより痛覚の伝達が行われ、知覚症状が惹き起こされ
る(C. L.Parsonsら, 1998, J. Urol. 159:1862-1867)。1つの理論によると、尿からの
濃縮カリウムの粘膜下組織領域への流入は、膀胱壁の感覚求心路を脱分極し、過活動膀胱
を引き起こす(G.Hohlbrugger, 1999, Br. J. Urol. 83:22-28; C. L. Parsonsら, 1998
, J. Urol.159:1862-1867)。
漏れやすい尿路上皮を通しての高濃度カリウムの侵入はまた、排尿筋を直接刺激し、か
つ膀胱コンプライアンスの減少に関与することが知られている(G. Hohlbrugger, 1999,
Br. J. Urol.83:22-28; G. Hohlbrugger, 1995, J. Urol. 154:6-15)。ここで記載する
方法は、自律神経節遮断(hexamethonium)または骨盤神経切断によって排尿反射を遮断
する。しかし、PS処置に引き続くKClの膀胱内注入の後においてコンプライアンス(compl
iance)の減少が依然として観察される。このことは、高濃度のカリウムによって排尿筋
が刺激されることの証拠となる。ここで示されているように、ICIは減少したが、PTは変
わらなかった。高濃度のカリウムは、膀胱頸部を刺激し、かつ高い出口抵抗(outlet res
istance)をもたらすことが知られていた(G.Hohlbrugger、1999、Br.J. Urol. 83:22-
28)。これと一致して、膀胱収縮振幅は、上記に示される結果の一部において上昇してい
た。
PSの使用は、膀胱損傷モデルとして確立されてきた。以前の実験では、10mg/ml PSの1
mlによって、45分間、膀胱の拡張を示した(P.C. Steinら, 1996, J. Urol. 155:1133-1
138)。膀胱の過膨張が長く続くと膀胱壁の特質が変わるということは知られている(S.
Keayら, 1999, J.Urol. 162:1487-1489; G. Hohlbrugger, 1995, J. Urol. 154:6-15)
。このことによってPSの細胞破壊作用が増大する場合があり、即時に尿路上皮の脱落が生
じる結果となる(P.C. Steinら, 1996, J. Urol. 155:1133-1138)。しかしながら、こ
こで記載する開放CMG法では、同じ濃度のPSに尿路上皮を1時間曝露させても、CMGの明ら
かな変化をもたらさなかった。さらに、尿路バリア機能は易感染化し、高濃度カリウムの
流入および膀胱刺激の結果となった。PS処置の前においては、同じ濃度のカリウムは、過
活動膀胱を誘導しなかった。これらのデータによって、尿中にある高濃度カリウムを加え
ることによる異常な上皮透過性が、膀胱過敏の症状を誘発する重要な要素であるという考
えが支持される。尿路上皮に機械的な破壊がない場合、PSに長く曝露することは僅かな変
化しかもたらさないが、バリア機能を破綻させることがあると想定される。このモデルは
、ICの診断のためのカリウム検査に関係しているメカニズムを解明するかもしれない(C.
L.Parsonsら, 1998, J. Urol. 159:1862-1867)。
他の研究者は、一対の膀胱ドーム・カテーテルを通して0.250 ml/分の速度で、最大圧
力30 mmHgまで150mM KClの膀胱内点滴注入を行ったところ、下腹神経における求心性活
性を刺激することはできるが、骨盤神経において検出されることはめったにないと報告し
た(N. G.Mossら, 1997, Am. J. Physiol. 272:R695-703)。これらの実験では、用いた
平均の膀胱容量は、1.5mlであった。これは、ラットにおける正常膀胱容量の2〜3倍であ
り、膀胱の過拡張となる可能性がある(N. G. Mossら, 1997, Am. J. Physiol. 272:R695
703; M.Leppilahtiら, 1999, Urol. Res. 27:272-276; Y. C. Chuangら, 2001, J. Uro
l. 165:975-979)。さらに以前の実験は、膀胱の等張KCl処置を用いる閉鎖CMG法において
、遅延期間の後では膀胱容量が減少することを示した(G. Hohlbrugger and P. Lentsch,
1985,Eur. Urol. 11:127-130)。これらの効果は、50% DMSOでの前処置によって強化さ
れた(G.Hohlbrugger and P. Lentsch, 1985, Eur. Urol. 11:127-130)。しかし、上記
の実験は、PSによる前処置を行わずにKCl(500mM)の連続注入を1時間行っても、膀胱刺
激を有意に誘導しないことを示した。過拡張またはDMSOの点滴注入のいずれかによる尿路
上皮の特質変化によって、膀胱透過性が増大し、かつKCl投与により求心性発射(afferen
t firing)および過活動膀胱の誘導されることはあり得る。
結論として、生理食塩水に対して膀胱内圧測定用の300または500 mM KClの使用は、過
活動膀胱の動物モデルにおける下部尿管の機能に影響を及ぼす。したがって、泌尿器系疾
患の治療用医薬組成物として、ここで詳細に述べるように、生理食塩水を含む賦形剤、希
釈剤または担体を含有することが好ましい。
[実施例9]
膀胱内バニロイド療法(intravesical vanilloid therapy) は、脊髄傷害(SCI)および
多発性硬化症(MS)の患者において排尿反射亢進を治療するのに用いられてきた。カプサ
イシン(CAP)療法は、効果的な投与量を達成するためには高濃度(30%以上)のエタノー
ルを必要とする。このレベルのエタノールは組織に有毒であり、かつ、それ自体で出血性
膀胱炎の原因となる場合がある。リポソーム(LP)のリポイド相(lipoidal phase)、す
なわち同心性リン脂質二重層は、高濃度エタノールの魅力的な代替となりうる。この可能
性に取り組む試みにおいて、ウレタン麻酔されたラットにおいてCAPのリポソーム送達の
試験を行った。
〔物質および方法〕
開放経尿道的膀胱内圧測定(Open transurethral cystometry)(0.04 ml/分)を、15
匹の雌性S-Dネズミ(250-300g)についてウレタン麻酔下(1.2 g/kg)で行った。2時間
にわたる生理食塩水注入の対照期間の後に、注入液を、1mM CAPを有するLP(LP/CAP)あ
るいは30分間をLP単独でその後はLP/CAPの、いずれかに切り替えた。CAP送達効率を、膀
胱刺激およびその後の脱感作が最初に明らかとなる開始時間と膀胱収縮頻度とによって決
定した。LPを上記実施例5で記載したように構成した。すなわちCAPの有無にかかわらず、
ホスファチジルコリンとコレステロールとを2:1のモル比率で合わせたものを窒素下でク
ロロホルム溶媒から乾燥させた。結果として生じる残渣を強度の超音波振動に掛けること
により、総脂質2mg/mlの生理食塩水中の懸濁液とした。
〔結果〕
LP単独の場合では膀胱収縮頻度に何ら効果を有しなかった(対照およびLPのそれぞれに
ついて膀胱収縮/分、0.13± 0.02対0.13 ± 0.01)(図14)。しかし、LP/CAPの場合は
、注入開始の数分以内に、膀胱収縮頻度(1.11±0.08 膀胱収縮/分, p<0.0001)が劇的に
増加する結果となった(図14)。膀胱収縮頻度はその後低下し、ついに124 ± 24分まで
に停止した。
〔結論〕
膀胱収縮頻度の劇的な増加およびその後の脱感作によって立証されたように、LPは、少
なくとも1つの疎水性薬剤、すなわちCAPを極めて効果的に送達する能力がある。さらにLP
単独では、刺激を加えない状態において排尿反射に何ら影響を及ぼさなかった。LPによる
保護効果を示してきた他の実験と組合わせると、このことは、LP担体が、CAPのような刺
激物質によって惹き起こされる神経性炎症(neuro-inflammatory)反応に基づく尿路上皮
バリア機能の易感染化から部分的にも保護する場合があることを示唆した。この実験は、
LPが、例えば抗生物質および癌治療薬といった他の薬剤のために用い得ることを示す。こ
の実施例に記載の実験の説明は、参照により本明細書に組み込まれるY. C. Chuangらの10
0th AnnualMeeting American Urological Association (AUA), Abstract; 2002, J. Uro
l. 167:41A にも記載されている。
[実施例10]
下部尿路の自律(膀胱)神経感応に対するボツリヌス毒素(Btx)およびリポソームの
注入効果について以下のように調べた。
〔材料および方法〕
実施例5に記載したようにリポソームを調製した。雌性S-Dネズミ(250)は、ウレタン
(1.2 g/kg)により麻酔を掛けられた。動物は、膀胱内リポソーム投与に加え、BtxD(5
.7 ng/gm体重; Sigma,St Louis, MO)注射を受けた。対照動物は注射を受けなかった。
すべての動物に気管切開を行い、処置した動物に人工呼吸を行った。経膀胱カテーテルを
挿入し、Btx注射の6時間後に細片検査のために膀胱を採取した。
収縮性実験のために、膀胱細片(20-30 g)を、酸素化したKrebs溶液中、36°Cで二重
被覆の器官浴に取り付けた。上部および下部に位置する白金電極によって、100秒おきに
最大電圧とし、20Hzでの100電撃の連なりを用いて、電界刺激の伝達を行った。20秒おき
に作用する電撃の連なりによって細片疲弊を試験した。疲弊の振幅および面積ならびに回
復の振幅および面積を、対照値のパーセントとして計算し、グループ間で比較を行った。
〔結果〕
Btxを加えたリポソームでの平均インビトロ回復振幅は、対照値の68%であった。Btxを
担持するリポソームが、膀胱収縮性を有意に減少させるという結論になった。
本明細書で引用した特許、特許出願、出版された論文、書籍、リファレンス・マニュア
ル、テキストおよび要約のすべての内容は、本発明が関係する技術水準をより完全に記載
するために、それらの全体が参照により本明細書に取り入れられる。
上記した本明細書の実施態様に対して、その発明概念の範囲から離れることなく種々の
変更を行いうるであろうことは、本発明の属する分野において通常の知識を有する者なら
認めることになろう。したがって、本発明は、開示した特定の実施態様に限定されるもの
ではなく、添付した請求項によって規定されるように本発明の精神および範囲の内にある
諸々の修飾をカバーすることを意図していることが理解されよう。
本明細書に添付した図面に記載された各図は、本発明をさらに記載し、かつその様々な
態様を明らかにすることによって本発明の理解を助けるために提供されるものである。
2006年5月22日に出願された米国一部継続出願11/438,912であって、2002年8月13日に出願された米国分割出願10/218,797であって、現在は登録された米国特許7,063,860であっ
て、その米国特許は、2001年8月13日に出願された米国仮出願60/311,868の優先権を主張
した一部継続出願である。本出願は、また、2006年7月19日に出願された米国一部継続出
願11/489,748であって、2005年10月11日に出願された米国仮出願60/725,402の利益を受け
る出願の優先権を主張し、すべては、参照により本明細書に取り込まれる。

Claims (1)

  1. 本願明細書に記載された発明。
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