JP2013230653A - インクジェット記録方法および被記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】画像の乾燥性、画像解像度を向上させたインクジェット記録法の提供。
【解決手段】オリフィスを備えた容器に充填された前処理溶液(A)に接した電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、電極板上に配置された目的基体上の少なくとも片面に、前処理溶液(A)を付与する前処理を行い、さらにその上に、機能性材料を含む液(B)をインクジェット法により吐出することを特徴とするインクジェット記録方法であって、前処理用液(A)が前記目的基体上にナノファイバー層を形成し、(B)液を付与した後も、ナノファイバーが形状を保っていることを特徴とするインクジェット記録方法。
【選択図】なし

Description

本発明はインクジェットによって画像を形成するためのインクジェット記録方法およびインクジェット記録を行うための記録媒体に関する。
本発明は、例えば、インクジェットによる画像形成、インクジェットによるデバイス(有機太陽電池、有機EL等)の作製にも応用展開が可能と推測する。
印刷方式としては種々のものがあり、中でもインクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成できるため、様々な印刷分野に応用されている。インクジェット記録技術は、加圧オンデマンド方式や荷電制御方式などを用い、インクを微小ノズルを通して液滴化し、画像情報に応じて紙等の記録媒体に付着させる技術である。このようなインクジェット記録技術は、プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置に好適に用いられている。インクジェット記録技術は、記録媒体に直接インクを付着させ画像を形成できるため、電子写真記録のような感光体を用いた間接記録に比べ、簡便な装置構成で記録ができ、今後記録媒体への画像記録方式として更なる発展が期待されている。
インクジェット用インクとしては各種の水溶性染料を水、又は水と有機溶剤との混合液に溶解させた染料系インクあるいは顔料を分散させた水性顔料系インクが使用されている。
インクジェット記録方法として、水性インクを用いた場合、特に高速印刷および難吸収性の記録媒体において、水分の蒸発に時間がかかると、裏移りや、画像流れなど画像欠陥が生じやすい。このため、水性インクの水分をいかに速く蒸発させるかが大きな課題となっている。水分の蒸発のためには加熱乾燥方法が用いられるのが一般的であるが、加熱乾燥方法によると消費エネルギーが増大し環境負荷が大きい。
特許文献1には、セルロース繊維を主体とする紙支持体の片面又は両面に、エレクトロスプレー法で長繊維層(ナノファイバー層)を積層し、紙支持体表面に形成される細孔を長繊維によって橋掛けすることによって、紙支持体の表面平滑性を改善すると共にインクの吸収性を向上させることが記載されている。
しかしながら、特許文献1記載の発明は、インクジェット記録に適した記録材料又はその製造方法に関するものであり、エレクトロスプレー法で紙支持体を前処理し、同じ装置を用いて連続してインクジェットで記録することを目的としているものではない。また、特許文献1の実施例を参照すると、インクジェット記録に用いているプリンターの名称からすると用いたインクは染料インクであり、顔料インクについては記載がない。我々の検討結果によると、染料インクの場合、にじみ防止は完璧ではなかった。また、この系は、前処理により、ドットの径が狭まり解像度は上がるが、乾燥は遅くなり、見た目の画像濃度も小さくなる。
特許文献2には印刷可能な紙の基部上にナノ繊維のコーティングを施すことによってインクを受容して維持するのに特に適した微孔性の表面を提供し、インクが乾燥して鮮明な良好に画定された文字または像になるまで、インクを特定の場所に維持することが記載されている。
しかしながら、この方法は、ナノファイバーの繊維層を別の基板上で作製し、次いで紙媒体上にのせる方式のようである。また、特許文献2の実施例では、ナノファイバー材料及びインク材料については記載がない。更にポアサイズも小さめで特許文献2の段落[0035]の記載によると乾燥性が悪そうである。
また、前記ナノファイバーは基体への接着性が小さいことが欠点であった。
被記録材については被記録材上の画像を除去することで、被記録材の繰り返し使用を可能にするというニーズがあり、インクジェット記録については、被記録材上に記録されたインクジェット画像を消去して被記録材を再利用するというニーズがある。
特許文献3では、このニーズを満たすために消色インクなどが検討されているがこのような消色インクはかなり特殊なインクとならざるを得ない。
特許文献4には、被記録材上に画像形成物質を転写又は付与する前に、画像形成物質の定着を阻害する成分を含有する無色の液体を、画像が形成される部分のみに付与することによって、定着性の低い画像に対して、機械的剪断力を加えるか、もしくは圧着せしめることによって容易に画像を除去することを可能にすることが記載されている。
前記の画像形成物質の定着を阻害する成分を含有する無色の液体としては、アニオン系界面活性剤および/またはフッ素系界面活性剤と溶媒とから液体、又はフッ素系樹脂と分散媒とからなる液体が使用されるが、これらの材料は本質的に撥水性の材料であり、水性インク自体がはじかれてしまい、ビーディングもできやすいものと思われる。
高速印刷や、難浸透性媒体を用いた印刷においては、水分浸透・水分蒸発が間に合わなくなり、裏移りが避けられなくなるという問題があるが、本発明はインクジェットによる着色剤など機能性材料の吐出の前処理として、エレクトロスプレー法により前処理液を基体上に吐出してナノファイバー層を形成することにより、画像の乾燥性を向上させることにより前記の問題を解決することを目的とする。
ここでのナノファイバーとは、長繊維を意味し、直径が数ミクロン以下であれば好ましく、数十〜数百ナノメーターが好ましい。また、ナノファーバーが部分的に大きさが数百ナノメーターから数ミクロン程度の瘤を作っていてもよい。長さは数ミクロン以上、多くはミリ以上の長さである。
また、本発明は、インクジェットによる着色剤など機能性材料の吐出の前処理として、エレクトロスプレー法により前処理液を吐出しナノファイバー層を形成することにより、画像の解像度を向上させることを目的とする。これは前記の乾燥性が向上するナノファイバーとは別の素材を用いている。特に顔料インクと組み合わせることにより、前処理をしない場合に比べて解像度の高い、にじみのない、画質を得ることを目的とする。
更に本発明は、前処理によって形成されるナノファイバー層の厚さ(処理量)を制御することにより画像の定着性を制御できることを利用して、画像を簡易に消去できるか、あるいは脱墨を容易にさせるインクジェット画像を得ることを目的とする。
更に又、本発明は、記録液を印字しない部分のナノファイバーも含めて定着性を向上させるインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
(1)オリフィスを備えた容器に充填された前処理溶液(A)に接した電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、電極板上に配置された目的基体上の少なくとも片面に、前処理溶液(A)を付与する前処理を行い、さらにその上に、機能性材料を含む液(B)をインクジェット法により吐出することを特徴とするインクジェット記録方法であって、前処理用液(A)が前記目的基体上にナノファイバー層を形成し、(B)液を付与した後も、ナノファイバーが形状を保っていることを特徴とするインクジェット記録方法。
(2)オリフィスを備えた容器に充填された前処理溶液(A)に接した電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、電極板上に配置された目的基体上の少なくとも片面に、前処理溶液(A)を付与する前処理を行い、さらにその上に、機能性材料を含む液(B)をインクジェット法により吐出することを特徴とするインクジェット記録方法であって、前処理用液(A)が目的基体上にナノファイバー層を形成し、(B)液を付与した後は、(B)液に触れた部分のナノファイバーが溶解して形状を保っていないことを特徴とするインクジェット記録方法であって、(B)液が顔料を含有することを特徴とするインクジェット記録方法。
(3)インクジェットで記録した画像を摺擦することで消去可能としたい部分においては(B)液吐出前の前記ナノファイバー層を厚く形成し、それ以外の部分においては前記ナノファイバー層を薄く形成することを特徴とする、部分的あるいは全体的に画像を消去可能とした(1)又は(2)に記載のインクジェット記録方法
(4)前処理による作製されるナノファイバー層と目的基体との接着力を強化させる液体を付与することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の記録方法において使用される記録媒体であって、前記機能性材料を含む液(B)を吐出する前の、ナノファイバー層が表面に形成された被記録媒体。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載のインクジェット記録方法で記録されたことを特徴とする記録画像。
本発明のインクジェット記録方法によれば、(B)液を付与した後もナノファイバーが形状を保っている状態とする場合には、(B)液のドット面積が未処理に比べ広がり、(B)液の乾燥性が向上し、見た目の画像濃度も向上する。
また、(B)液を付与した後にナノファイバーが溶解して形状を保っていない状態とする場合には、(B)液は、ナノファイバーの毛細管力で横に広がることはなく、しかも、ナノファイバーを溶解して粘度増加するために、未処理のものよりも(B)液のドット径が小さくなり、解像度が向上するが乾燥性はベタ印字において悪化する。
本発明のインクジェット記録方法においては、ナノファイバー層の厚さを制御することにより、画像の定着性、消去性を制御することができる。また、ナノファイバー層と目的基体との接着力を強化させる液体を付与することにより、ナノファイバー層の目的基体への定着性を向上させることができる。
本発明のインクジェット記録方法をコート紙に適用した場合に得られた画像を示す図である。 本発明のインクジェット記録方法において、吐出速度を種々変化させた場合の画像を示す図である。 本発明のインクジェット記録方法を普通紙に適用した場合に得られた画像を示す図である。 本発明のインクジェット記録方法を吐出速度を種々変化させて普通紙に適用した場合の画像を示す図である。 前処理した場合の画像(b)と前処理しなかった場合の画像(a)とを対比して示した図である。 前処理した場合の画像(a)と前処理しなかった場合の画像(b)とを対比して示した図である。 ポリエチレングリコール溶液で前処理した普通紙(マイリサイクルペーパー)に印刷した場合の、SEM像を示す図である。 前処理液のESD法による吐出時間を変化させた場合の画像を示す図である。 共焦点顕微鏡写真による前処理液吐出時間と画像(ドット)形成状態との関係を観察した結果を示す図である。 基体上に形成されたナノファイバー層のファイバー量を観察した結果を示す図である。 ファイバーが厚い場合は、ファイバーが溶解しきれずに顔料の下層部に残留している様子をFE−SEMで観察した結果を示す図である。 前処理液のESD法による吐出時間を変化させた場合の表面形状を3D写真で観察した結果を示す図である。 上質紙にESD法により1分間〜5分間のナノファイバー液吐出時間の異なる箇所を作製して消しゴムで5回擦り耐擦性を観察した結果を示す図である。 各紙に実施例1と同じ黒顔料インク滴を置いて測定した動的接触角の時間変化を示す図である。
本発明のインクジェット記録方法は、画像等が記録される目的基体の表面にエレクトロスプレー法(Electro−Spray Deposition:以下「ESD法」ともいう)で前処理液(A)を吐出してナノファイバー層を形成し、次いでその上に機能性材料を含む液(B)をインクジェット吐出するものである。
前記目的基体としてはセルロースを主体とする紙でもよいし、金属板でもフィルムでも何でもよい。
前記機能性材料およびその用途としては、機能性材料として着色剤を用い、これを前記前処理液で前処理した被記録材料に吐出してインクジェット画像を形成しても良い。
また、機能性材料としてホール輸送剤・電荷発生剤などを用いそれをインクジェットにより均一に塗布する必要がある場合にも、本特許のナノファイバーによる前処理で解像度をあげたり、あるいは薄く均一に塗布し、乾燥性を向上したりする目的にも展開できるものと推測する。
上記したような例に限らず、本発明のインクジェット記録方法は、機能性材料を含む(B)液について、吐出後の乾燥性を向上させたり、解像度を上げたり、薄く均一に塗布したりするための新しい手法となりうる。
本発明の第1の実施形態においては、オリフィスを備えた容器に充填された前処理溶液(A)に接した電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、電極板上に配置された目的基体上の少なくとも片面に、前処理溶液(A)を付与する前処理を行って目的基体上にナノファイバー層を形成し、次いで、その上に、機能性材料を含む液(B)をインクジェット法により吐出するインクジェット記録方法であり、この時、ナノファイバー層は(B)液を付与した後も、ナノファイバーが形状を保っているようにする。
以下、この実施形態について説明する。
A液のエレクトロスプレー(ESD)前処理を行うことにより、B液のインクジェット吐出時のドット径が未処理の場合に比べて大きくなり、結果として、乾燥性が向上する場合と、逆に、インクジェット吐出時のドット径が未処理の場合に比べて小さくなり、結果として、解像度が向上する場合があることがわかった。
その理由は、前者のドット径が大きくなる場合は、(A)液の吐出で形成されるナノファイバーが(B)液の主溶媒には相対的に溶けにくい材料であり、また、後者のドット径が小さくなる場合は、ナンファイバーが(B)液の主溶媒に相対的に溶けやすい場合であった。
(B)液吐出時にナノファイバーが溶解せずに形状を保っている場合は、(B)液はナノファイバー間の狭い空間に毛細管力で速やかに浸透し、横に広がるため、蒸発速度が速く、着色剤が薄く均一に広がるという理想的な画像が得られるのである。
また、(B)液は均一のナノファイバー層中を横浸透するため、セルロース中に浸透するときのような、フェザリングなどの不均一は生じにくく、真円に近くなる。
目的基体としてはセルロ−スを主体とした紙材料でもよいし、アルミ板など金属材料でもよい。機能性材料を含む液体(B)は、本発明においては、着色剤である顔料(機能性材料)を含む水性インクを実施検討したが特に着色剤でなくても、最近インクジェットファブリケーションとしてよく検討されている機能性材料としての有機EL材料でも有機太陽電池用顔料でもなんでもよい。それらの材料を均一に平滑に塗布する方法や、溶剤乾燥性を向上させる目的に本発明は利用可能であると推測される。
なお、ここでの乾燥性は印刷された画像に上質紙を接触した場合に、上質紙にインクが転写しなくなる程度で評価している。
そのメカニズムの詳細は不明であるが、この場合の(A)液の電界下の吐出により形成したナノファイバーは(B)液吐出後も、(B)液により溶解せずに形状を保っているのが特徴である。そのため、(B)液は、ナノファイバーの微少の空間を毛細管力により浸透し、横に速やかに広がるため、(B)液のドット径が未処理に比べ大きくなったことが特徴である。そのため、画像面積増大により水分蒸発速度は増加し、画像としても、薄く、均一に着色剤が表面に広がった理想的な形状が得られたものと推測する。さらには、ナノファイバー自体が、スペーサー作用をもち、紙を重ねた場合も、インクが転写するのが防止されているのである。
本発明の第2の実施形態は、オリフィスを備えた容器に充填された前処理溶液(A)に接した電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、電極板上に配置された目的基体上の少なくとも片面に、前処理溶液(A)を付与する前処理を行って、目的基体上にナノファイバー層を形成し、次いで、その上に、機能性材料を含む液(B)をインクジェット法により吐出することを特徴とするインクジェット記録方法であり、この時、ナノファイバー層は(B)液を付与することによって溶解して形状を保っていないようにする。
このように(B)液によりナノファイバーが溶解してしまう場合は、(B)液はナノファイバーの毛細管力で横に広がることはなく、しかも、ナノファイバーを溶解して粘度増加するために、前処理をしない場合よりもむしろ(B)液のドット径が小さくなる。そして、解像度は向上するが、面積が大きくないため水分蒸発は遅く、粘度増加するため下層のセルロースへの浸透も遅くなる。ドット面積が小さくなると、画像面積が小さくなり、見た目の画像濃度も減少する。しかしながら、解像度の向上が必要な場合はこの方法が有効な面もある。ただし、(B)液の着色剤が染料の場合は、どうしてもにじみが大きくなり効果的でない。本発明は着色剤を顔料とすることによりにじみの問題を改善した。
本発明の第3の実施形態においては、インクジェットで記録した画像を消しゴムなどで消去可能としたい部分においては(B)液吐出前の前記ナノファイバー層を厚く形成し、それ以外の部分においては前記ナノファイバー層を薄く形成する。
ナノファイバー層を厚く形成した場合には、画像はナノファイバー層において形成されて、基体として紙を使用した場合には、紙の内部にはインクがしみ込まないため、ファイバー層を消しゴムなどで除去することにより、再度、紙として使用可能となる。すなわち脱墨の容易なインクジェット印刷物が可能となる。
ナノファイバーはそれ自身では基体に対して接着力がない。しかし、ナノファイバー層が適度な厚さであると、(B)液がナノファイバー層内に浸透し、基体まで接触して印字部の定着性は十分なものとなる。また、ナノファイバー自体も(B)液により基体に接着が可能となる。一方、ナノファイバー層を厚くすると、(B)液が基体に到達せず、画像の定着性が悪くなる。このため、消しゴムなどで極めて容易に消去可能となる。
この定着性の有無はナノファイバー層の厚さの調整、すなわち(A)液の吐出量により容易に調整可能である。ファイバー層厚さを調整すれば、画像としては十分な定着性を有し、脱墨の際は容易に脱墨が可能となるようにできる。また、(A)液吐出時にマスクを使用して、ファイバー層が厚く容易に消去可能な部分とそうでない部分を分けて形成することも可能である。
本発明の第4の実施形態においては、前処理による作製されるナノファイバー層と目的基体との接着力を強化させる液体を付与して非印字部のナノファイバー層の定着性を向上する。
上記第3の実施形態において、ナノファイバー層の厚さを調製することにより(B)液の着色剤印字部の定着性は上がるが、非印字部の定着性は悪く、ナノファイバーは擦ればとれてしまう。ただ、ナノファイバーは透明なので、あまり気にならない面もある。
しかしながら、非印字部についてもナノファイバーを基体に定着させるためには、ナノファイバーを溶解定着させる液体をナノファイバー層に付与する。水溶性のナノファイバーであれば水、アルコール溶解性のナノファイバーであればアルコールを主成分とした液体がそれにあたる。塗布の方法はローラー塗布でもよく、インクジェト塗布でもよい。
目的基体として紙を使用する場合、被記録媒体はセルロース繊維を50%以上含む、湿式抄紙で得られる紙支持体であり、これらパルプにサイズ剤、紙力剤、炭酸カルシウム、クレー、シリカなどが内添、外添されていてもよい。特に、上質紙、あるいは一般に普通紙と呼ばれる非塗工紙か、10g/m以下の塗工量の微塗工紙で本方法は有効である。
特に難吸収性のグロスコートなどオフセット印刷用途の紙を水性インクジェット印刷する場合は乾燥性向上が必須であり本発明の方法が有効である。
(A)液吐出に使われる、ESD法は、塗布液に高電界をかけて、吐出させ、滴の表面電荷の反発により、微少滴に分滴し〔クーロン爆発と呼ぶ〕、基体に付着時には、溶媒の大部分が蒸発し、ナノの大きさの微粒子として付着させるものである。また、高分子を含み溶液の粘度が高い場合には、直径が数ミクロン〜ナノの大きさの微細な長繊維のファイバーが形成される。ここでのナノファイバー形成原液は比較的高分子量の高分子物質を液体に溶解させたものを使用した。
(B)液のインクとしては通常のインクジェットプリンタで使用されている水性顔料インクを使用した。
一般に紙のセルロース繊維は直径、数十μmから数100μm程度の大きさをしており、それ以上の大きさの孔が形成される。したがってインクは毛細管力でその孔を浸透するため、にじみやフェザリングと呼ばれるひげ状の画像欠陥が生じる。これを防ぐため、インクジェット専用紙はシリカなどの無機材粒子で紙表面をコートしている紙がある。これらコート剤の付与により、紙の重量は増大し、剛直性がでてしまい、本来の紙の表面性を失う。また、コート剤塗布は乾燥工程が必要で、紙の大量製造工程で塗布・乾燥する必要があり、プリンタに設置した装置でオンデマンドで塗布するわけにはいかない。
一方、ナノファイバー層であれば、セルロースに近い紙物性を維持できる。また、セルロースと異なり、直径が数ミクロン以下と小さいため、人間が認知できるような大きさ(30μm程度)のにじみやフェザリング欠陥は生じ難い。
さらに、ナノファイバーをESDで作製した場合、原液としては水溶液であっても、紙付着時は、水分がかなり蒸発しており、前処理液の乾燥に時間がかからない。
また、顔料凝集剤などの前処理液をローラー塗布する場合に比べて利点がある。これは、ESDは静電気反発でナノオーダーの液柱あるいは水滴に分離するため水分蒸発が非常に速くなるためである。このような場合、プリンタ装置にESD装置を繰りこむことも可能と思われ、オンデマンドで高画質化のための前処理としてのナノファイバー前処理付与が可能と思われる。
ナノファイバー材料としては、水溶性の材料や非水溶性の材料が考えられどちらでも可能である。ナノファイバーを形成する代表的な水溶性の高分子としてはポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどがある。非水溶性の高分子としては、ブチラール、ポリエステル、ポリカーボネートなど使用可能である。ナノファイバー形成のためにはある程度の分子量が必要で分子量10万以上が好ましい。またナノファイバーの直径は平均的に数μm以下であれば好ましく、数十〜数百ナノメーターが好ましい。また、ナノファーバーが部分的に大きさが数百ナノメーターから数ミクロン程度の瘤を作っていてもよい
(B)液としては、機能性材料として顔料など着色剤を含有した一般的な水性インク、あるいは油性インクがある。
(B)液のインクジェット吐出時に(A)液により形成されたナノファイバーが溶解しないで形状を保つためには、(B)液が水性溶液である場合には、水難溶性のナノファイバーが好ましい。水難溶性のナノファイバーを形成する樹脂としては例えば、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂を挙げることができる。
一方、(B)液が油性溶液である場合には、(A)液により形成されたナノファイバーは油に難溶性のものとする。油に難溶性のナノファイバーを形成する樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸樹脂などを挙げることができる。(B)液のインクジェット吐出時に(A)液により形成されたナノファイバーが溶解しないで形状を保つような場合はドット径は未処理に比べ大きくなり、乾燥速度向上し、見た目の画像濃度は向上し、(B)の機能性材料が薄く均一に塗布される。
逆に、(B)液吐出時に(A)液により形成されたナノファイバーが溶解してナノファイバー形状が維持できず、解像度が向上する系を必要な場合は、前記した場合とは逆の組み合わせになる。
すなわち、(B)液が、水性溶液の場合は、ナノファイバーも水に溶解するポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールが好ましい。また、(B)液が油性溶液の場合は、ナノファイバーも油に溶解しやすい材料が好ましい。
なお、本発明はESD法のインクジェット前処理への応用として、ESD法で吐出した液体がナノファイバーになるものを中心に報告したが、アニオン系の顔料含有インクの凝集剤(例えば、乳酸カルシウム、硝酸亜鉛など多価の金属塩や、ポリアリルアミンなどカチオン系水溶性高分子あるいは有機酸)を含む前処理液体をESDで吐出して、基体に付着させたあとにアニオン系着色剤インクをインクジェット吐出する場合も、普通に前処理液をローラー塗布する場合に比べて、ESD塗布の場合は紙への付着時は水分が蒸発しており、前処理による乾燥性悪化が防止できる。ただし、このような顔料凝集剤含有水溶液は電気伝導性が高く、ESD吐出性が不安定であった。それでも、使用できないことはないが、吐出性を改良するにはガラスノズルを用いる方法がある。水溶性でなくアルコール溶解性の凝集剤を使用してもよい。
また、本発明は、ESD法による吐出によってナノファイバーを形成するものであるが、分子量がそれほど大きくない場合は、ナノファイバーでなく、ミクロンから数十μmの特徴的な形状の微粒子として基体に付着する。この場合も、同様に、画像のドット径を広げたりする作用を有する。しかし(B)液インクの吐出時に微粒子がインクにより流されてしまうなど改良が必要とされる。
このようにESD法とインクジェットとを組み合わせることにより、インクジェットによる機能性材料の膜形成、およびESDによるナノファイバー、ミクロンオーダーの微粒子を組み合わせると多彩な画像形成が可能となる。
以下に記載する実施例では、本発明を一般的な水性インクの画像形成に応用した例を示すが、様々な機能的なデバイスをインクジェットで作製する際に、薄く均一に塗布し、乾燥性を向上させる場合、あるいは解像度をあげる場合に、ナノファイバーの下引きは同様の応用展開が可能と推測している。
[実施例1−1]
ブチラール樹脂:商品名エスレックBX−5(積水化学工業)の5%エタノール溶液を調製した。これを21Gの金属ノズル(武蔵エンジニアリング株式会社製造の内径0.51mmの金属ニードル)を設けたシリンジに収納させた。エレクトロスプレー(ESD)吐出装置として、フューエンス社製造エスプレイヤーES−2000を使用した。このノズルから20cmの距離にある、対向電極の上にターゲットとしての紙(リコー ビジネスコート紙グロス100)をセットし、3cm×3cmの大きさにくり貫いたテフロン(登録商標)シートをマスクとしてその上にセットした。前記シリンジのノズルからナノファイバー作製用液を、電圧を16kVにして、吐出速度6μl/minで、5分間、吐出させた。紙のような絶縁性の高いターゲットにおいても、ターゲットが金属の場合と同様にナノファイバーが3cm×3cmの領域に付着しているのが観測された。
この時に紙に付着する物体はナノファイバー状になっていることはレーザー顕微鏡にて確認した。温度27℃湿度33%の常温常湿の環境である。この紙をリコー社製造インクジェットプリンターイプシオGX5000に装填し、黒インク“GXカートリッジGC21KHブラックインク”で印字した。
結果を図1に示す。図1(a)は前処理した場合のものであり、図1(b)は前処理なしの場合のものである。
図1(a)と図1(b)との対比により、前処理によりインクジェト滴の径が広がったことにより、目視での画像濃度が上がっていることがわかる。
また、印射後、すぐに、普通紙をのせて圧力をかけて画像転写性をみた。前処理をしたことにより、画像が転写してしまう(裏移りという)ことが防止できた。すなわち、インクの乾燥性が向上した。
この種の紙(コート紙)は安価な光沢紙として好まれるが、乾燥性が悪く、加熱をしなければ、高速印刷ができないことが欠点であったが、ブチラール樹脂でナノファイバー層を形成する前処理を行うことにより、加熱なしでも上記のようにより高速の印刷が可能となった。未処理の場合は、じっと静置していれば高解像度であるが、乾燥が遅いため、異色インク滴が隣接した場合の混色(ブリーディング)や、印刷物間の接触による、画像乱れなど、高速印刷では決定的な画像欠陥がおきてしまう。前処理をするとドットが広がり乾燥が速いため、解像度では落ちるが、決定的な画像欠陥はおこりにくい。
なお、高速印刷に、対応させるため、前処理液吐出を、電界20KVで、吐出速度(吐出量)を変化させて吐出させた。その結果を図2(a)〜(d)に示す。
その吐出条件は以下の通りである。
図2(a):100μl/minで1分間(固形分付着量測定値:0.49g/m
図2(b): 50μl/minで1分間(固形分付着量測定値:0.24g/m
図2(c): 20μl/minで1分間(固形分付着量測定値:0.20g/m
図2(d):前処理なし
その結果、前処理量を多くすると、見た目の画像濃度が大きく向上することが分かった。但し、図2(a)では、一部ナノファイバーが未付着で低画像濃度の部分がある。
なお、固形分付着量は、紙の場合、湿度重量変化が大きく精度よく測定できないので、Alをターゲットにして測定したものである。
このように画像濃度が上がるのは、ドットが広がり埋まっただけでなく、顔料が表面に留まる効果もあると考えられる。
[実施例1−2]
実施例1と同様にして、上質紙(普通紙とも言われる)であるリコー社製造のコピー用再生紙マイリサイクルペーパー100に印刷した。前処理液の吐出条件は電界16KVで、吐出速度は6μl/minで5分間であった。
その結果を図3(a)、(b)に示す。図3(a)は前処理した場合のものであり、図3(b)は前処理なしの場合のものである。
その結果、普通紙においても、前処理により、ドットの径が広がり、画像濃度が向上することが分かった。
また、普通紙を用いて、電界20KVで同様にして前処理速度・量を変えた場合の画像を図4(a)〜(d)に示す。
その吐出条件は以下の通りである。
図4(a):100μl/minで1分間(固形分付着量測定値:0.49g/m
図4(b): 50μl/minで1分間(固形分付着量測定値:0.24g/m
図4(c): 20μl/minで1分間(固形分付着量測定値:0.20g/m
図4(d):前処理なし
この結果からは、普通紙の場合、未処理でも浸透速度が早いため、いずれも裏移りはなく乾燥性の違いは明瞭でなかったが、前処理でドットの径が大きく画像濃度が高くなっていることは間違いなく、高速印刷の場合は、乾燥性も改善されていると思われる。
本実施例のブチラール樹脂ナノファイバーによって前処理した場合についてSEM観察を行った。その結果を図5(a)、(b)に示す。図5(a)は前処理しない部分についてのSEM観察結果であり、図5(b)は前処理したものについてのSEM観察結果である。
前処理なしの部分は太いセルロースの上に(B)液の顔料が付着しているが、ブチラール樹脂のナノファイバーで前処理した部分では、顔料がナノファイバー層の繊維の間で乾燥固化している。このことからファイバーは水性インク付着後も溶解していないことがわかる。
ブチラール樹脂のナノファイバーで処理をした場合、裏移りが少ない(紙を重ねた場合の転写が少ない)のは、インク滴が微細なナノファイバーの空隙を伝わる毛細管現象によりドット径が広がり、水分蒸発が速くなったという理由の他に、ナノファイバー自体が、紙を重ねた場合の紙間のインク転写を抑制するスペーサーの役目もしているものと推測される。
[実施例2−1]
ポリエチレングリコール〔和光純薬:分子量300K〜500K〕(略称PEG)を高純水に加熱溶解させ50g/Lの濃度の液を作製しナノファイバー作製用液とした。これを21Gの金属ノズルを設置したシリンジに収納させた。
ESD吐出装置としてフューエンス社製造エスプレイヤーES―2000を使用した。ターゲットとしてリコー社製造のコピー用再生紙マイリサイクルペーパー100を用いた。前記紙を金属基盤上にセットし、3cm×3cmの大きさにくり貫いたテフロン(登録商標)シートをマスクとしてその上にセットした。
前記シリンジのノズルからナノファイバー作製用液を、電圧を16kVにして、吐出速度6μl/minで、吐出させた。環境条件は温度27℃湿度33%の常温常湿とした。
その結果、紙のような絶縁性の高いターゲットにおいても、ターゲットが金属の場合と同様な量でナノファイバーが3cm×3cmの領域に付着しているのが観測された。
この時に紙に付着する物体はナノファイバーになっていることはFE−SEMにて確認した。
この紙をリコー社製造インクジェットプリンターイプシオGX5000に装填し、黒インク“GXカートリッジGC21KHブラックインク”で印字した。これは水性の顔料タイプのインクに相当する。先のナノファイバーの付着部(処理部)と、ナノファイバーの付着していない部(未処理部)の画像の違いは、キーエンス社製造 光学顕微鏡 デジタルマイクロスコープVHXで観察した。
ナノファイバー層作製時間(吐出時間)を5分間とした場合の画像を図6(a)、(b)に示す。図6(a)は前処理部についての画像であり、図6(b)は前処理しなかった部分の画像である。
この結果から、ポリエチレングリコールナノファイバーで前処理した場合には、普通紙へのインクジェット印字の欠点である「画像にじみ」が改善されていることが確認できる。また、処理部はナノファイバーのため地の白色度が向上していることが分かる。
(このようにPEGファイバー処理はブチラールファイバー処理の場合とは逆にドット径が狭まり解像度が上がる)
5%のポリエチレングリコール溶液で前処理した普通紙(マイリサイクルペーパー)に印刷した場合の、SEM像を図7(a)〜(d)に示す。
図7(a)ではドットの輪郭が明瞭に確認できる(ファイバー前処理をしないとこのような明瞭なドット輪郭にならない。)。図7(b)は図7(a)の部分拡大像であり、図7(c)は図7(b)の部分拡大像であり、図7(d)は図7(c)の部分拡大像である。
通常、普通紙ではドットは繊維の軸にそって浸み込み、輪郭は明瞭でないが、ナノファーバー処理により、SEM像のドット輪郭が明瞭になる。拡大してみると、水性インクにより、PEGナノファイバーが溶けて、インクは下のセルロース繊維のところまで落ちて定着しているのがわかる。このため、解像度は上がるが、インクの水分自体の水分蒸発速度は下がったものと思われる。
ただし、単独ドット、あるいは細い線の文字の場合は、周囲のファイバーが溶けずに残っていて、このPEGの系でも紙を重ねた場合の裏移りが減少した。一方、ベタ画像の場合は、未処理よりも蒸発速度が遅く、周囲のファイバーの紙のインクへの接触防止効果もなくなるため、紙を重ねた場合の裏写りも未処理より大きくなった。(ブチラールの場合は、ベタ画像でも裏移りは少なくなる)。このことからも、紙間のインク転写に関して、ナノファイバーはスペーサー効果を有していることが類推される。
実施例1のブチラール樹脂のナノファイバーを用いた場合は、ファイバーがインクにより溶解せず残っているため、ファイバーによるインクと裏紙の接触防止効果も文字・ベタに関わらず存在するのと、ドット滴の広がりが大きいことによる水分蒸発速度が大きいため未処理よりも裏移りが少ないものと推測する。
一方、本実施例のPEGの場合では、水性顔料インクによりナノファイバーが溶解し、顔料が下のセルロースに付着しているのがわかる。
[実施例2−2]
本実施例では、実施例2−1において前処理液のESD法による吐出時間を変化させた。図8(a)〜(i)にその結果を示す。
吐出時間2秒でも未処理に比べフェザリングの改良が認められる。
画像にじみには、好ましくは30秒処理以上、さらに好ましくは1分間以上の処理が必要であることがわかる。なお、これはあくまでも単一ノズルの場合であり、ノズル数を増やせば速度は改良される。
ただし、吐出時間が長くファイバー形成量が多いと、ドットが広がらないため、画像濃度が低い印象を受ける。画像にじみが気にならずに画像濃度も高い印象が得られるのは、吐出量が30秒から3分の間である。もちろん、画像は画像処理や印字方法により改良可能であり、あくまでも信号に忠実なのは、フェザリングなど異常ドット画像の少ない、ナノファイバー形成時間の長い場合であると考えられる。
吐出時間から付着量を計算した結果を表1に示す。
但し、計算に際しては、吐出液の全部が3cm×3cmのターゲットに入っていると仮定したが、実際には本実施例ではターゲットが3cm×3cmと小さく、本装置でターゲットに収まるのは下表の15%程度であった。この結果から、固形分としては少ない付着量でも効果があることがわかる。
<共焦点顕微鏡写真による観察>
共焦点顕微鏡写真(キーエンスの共焦点レーザー顕微鏡VK8500を使用)による前処理液吐出時間と画像(ドット)形成状態との関係を観察した。
その結果を図9(a)〜(i)に示す。
付着ファイバー量の大きい吐出時間3分以上の場合は顔料がブロンズ現象により光沢を有しているのがわかる。一方、ファイバー量の少ないドットは顔料がセルロースに沿って流れ、あるいは染みこみ、にじみが発生、画像濃度の低下がおきる。少量でもファイバーのある場合は未処理に比べ改良している。ブロンズ現象もなく、顔料のにじみ・浸透も抑制され、画像も黒く、画像的に最適であるのは形成時間30秒から2分の間である。(ブロンズ光沢を気にしない場合で、あくまでも、信号に忠実というのであれば、ファイバー量が多いほど好ましい)。
<光量モードによるナノファイバー量の観察:キーエンスの共焦点レーザー顕微鏡VK8500>
ナノファイバー量を観察するために共焦点顕微鏡の“光量”のモードでの写真を図10(a)〜(i)に示す。
ファイバー量が大きい場合は、下層のセルロースの形状が見えないが、1分程度の処理であると、ナノファイバーは全面を覆っているものの、厚い層ではないため、下層のセルロースが見える。前者の場合、顔料のみでなく、水や湿潤剤もインクが溶解したファイバーにより増粘したため、印射後の水分乾燥に時間がかかり乾燥性が悪いと推測される。一方、後者の適度なファイバー量の場合、顔料はファイバーで適切にろ過され、液体はセルロース内に浸透するため乾燥性の悪化もそれほどなく、画像にじみもある程度少ない。なお、水性顔料インクの付着部はファイバーが顔料インクで溶解したためと思われるがファイバー形状のものは見られない。ただし、図11に示されるように、ファイバーが厚い場合は、ファイバーが溶解しきれずに顔料の下層部に残留している様子がFE−SEMで観測されている。
このような場合はファイバー自体の定着性が悪いため、インク画像の定着性が悪くなる。逆に消しゴムで簡単に消去可能で画像跡も残らない。
<3D写真による表面形状の観測>
前処理液のESD法による吐出時間を変化させた場合の表面形状を3D写真で観察した結果を図12(a)〜(i)に示す。
この結果から、ナノファイバー層が厚い場合、顔料インクがナノファイバー層のシートを溶解して、中に沈み込んでいる(高さが低くなる)のがわかる。一方未処理やナノファイバー量の少ない場合は、表面はセルロース形状のままで、顔料インク付着による形状変化は殆どないことがわかる。
<吐出直後乾燥性>
実施例2−1と同様に上質紙上にナノファイバー層を形成し、直後に、同じ顔料黒インクであるエプソンのPX−G5000にて水性顔料インク付着量約10g/mでベタ印字をした。その直後に、別の上質紙を押し当てて、加重をかけて擦り、インクのオフセット転写量をみた。その結果、ナノファイバー形成時間1分以下では、殆どオフセット転写はみられなかった(1分ではわずかに転写が観測された)が、2分以上では、気になる量のオフセット転写がみられた。これは、本実施例のナノファイバーの場合、前処理のない場合に比べ、ドット径が小さくなり、したがって、蒸発面積が減り、乾燥がおそくなるためおよびファイバー溶解のためファイバーによる裏紙とインクの接触防止効果がないためと推測される。
なお、吐出直後の、消しゴムによる定着試験も同様の結果であった。
[実施例2−3]
実施例1と同様にして、同じ上質紙に、マスクの位置を調整して、ESD法により1分間〜5分間のナノファイバー液吐出時間の異なる箇所を作製した。これを消しゴムで5回擦り、耐擦性をみた結果を図13に示す。
5分〜4分処理では完全に消しゴムで消えた。ファイバーが除去されただけなので、また一般紙として使用可能であり、再度ファイバー形成して消去可能とすることもできる。
1分〜2分処理ではナノファイバー量が少なく、インクが紙内部に染みたため定着性に問題ない。
このことは、同じ画像の中で、ファイバー量の調整により、消しゴム消去可能性を比較的容易に調整することが可能であることを示しており、しかも、再度利用可能なことから、有効性が高い。
なお、図の5分の消しゴム処理後に残った部分は位置確定のためのサインペンマーク部であり消しゴム処理で消えなかったわけではない。
このことから、ファイバー処理量を調整すれば、高解像度で、かつ、定着性もほどほどにあり、環境上重要な脱墨も容易となる記録媒体が製造可能となることがわかる。
なお、図は4ポイントの微小な文字であるが、ナノファイバー処理により高解像度の画像が得られている。
[実施例2−4]
<印射後長時間経過した場合の耐擦性>
実施例2−2のサンプルで、印射後、数日経過した文字サンプルの消しゴム(パイロット:クリーンイレーザー事務製図用)による耐擦試験を行った。ナノファイバー形成時間が5分以上のものは、消しゴムで簡単に文字が消去できた。3分以下のものは、耐擦性が良好であった。
このことはナノファイバー付着量を制御して消しゴムで簡単に消える画像と、簡単には消えない画像を部分的に作製することが可能であることを意味する。部分的なナノファイバー付着量制御はファイバー形成時に、絶縁性のマスクを用意すれば可能である。
[実施例2−5]
(定着性向上法)
<ベタ印字と文字印字>
実施例2−2においてPEGナノファイバー前処理をした被記録媒体に文字印字をすることに代えてベタ印字をした。その結果、文字印字で耐擦性の悪いナノファイバー付着量の大きな場合でも、ベタ印字にすると耐擦性に問題がなくなることがわかった。このことは、SEM観察結果とあわせてみると、剥離はナノファイバー層で起きており、水性インクの大量の付着により、ナノファイバー層が溶解して、接着性が向上したことになる。文字印射部近辺はナノファイバーは溶解していると思われるが、周囲のファイバーによる定着性の悪さが影響して、文字自体の定着性も悪いものと推定される。したがって、文字印字のない部分も、水を含む液体を乾燥性に影響のないレベルで吐出して定着性アップをさせることが可能である。特に、ナノファイバー形成と、着色剤吐出装置が一体になっていて、ナノファイバー形成直後に、インクジェット印刷をする方式の場合特に必要である。
このように非印字部もナノファーバーを溶解させる液体吐出付与で、基体に定着させてしまうことは可能である。
なお、実施例1のブチラール系のような、(B)液が、ナノファーバーを溶解させない場合でもインク付着部はインクの樹脂成分によりナノファーバー自体の定着性も向上することから、非画像部においても、(B)液の着色剤を除いたインク、すなわち、少なくとも溶媒と定着用樹脂成分を含む液体を付着することにより、非画像部のナノファイバーも含めて定着性を向上させることが原理的に可能である。
このように、前処理により作製されるナノファイバー層と目的基体との接着力を強化させる液体とは、ナノファーバーを溶かさない液体でも、溶かす液体でもどちらでもよく、溶かさない場合は、少なくとも、接着性を向上させる樹脂成分の入ったものならよい。
溶かす場合は、溶けたナノファイバー自体が定着用樹脂になるため、ナノファイバー層と目的基体の接着力を向上させる液体は定着樹脂成分を含まなくてもよい。
定着用樹脂液体としては、例えば水性なら、水溶性エマルジョン含有水溶液、例えばアクリルシリコン水性エマルジョンを数%含有した樹脂水溶液でもよい。アルコール溶液なら、ブチラール数%のアルコール溶液でもよい。
[実施例3]
実施例1と同様にして、5cm×5cmのアルミ板に5%ブチラール溶液を16kV、6μl/minでESD吐出し、ブチラールナノファイバーを形成した。そこに、実施例1の顔料インク滴を50μg程度のせてみると、ファイバーのない場合に比べて、ドットが均一に大直径に広がり、速やかにインク水分が蒸発した。一方、ポリエチレングリコールナノファイバーの場合は、逆に、顔料インク滴は、直径は小さいままいつまでも乾燥はしなかったが、乾燥後は、より厚い顔料層ができた。このように、金属板上に顔料層を均一に塗布し、高速乾燥させることも、顔料層の広がりを抑制することもナノファイバー下引きにより可能となった。顔料は太陽電池の電荷発生剤にもなるため、今回のESDとインクジェットの組み合わせによる、ファイバー下引き技術は、有機エレクトロニクス素子のデジタルファブリケーションにも応用可能であると推測する。
<ブチラール樹脂のナノファイバー層とポリエチレングリコールのナノファイバー層との比較>
ブチラール樹脂のナノファイバー層(ブチラール処理)とポリエチレングリコールのナノファイバー層(PEG処理)で水性顔料インクを載せた場合の接触角を測定した。
測定装置としてはdata physics社製のOCAH200を用いた。
ナノファイバーの場合、毛のケバがみえて基準面をとるのに誤差が生じやすいが、グロスコート紙および普通紙で前者(ブチラール系)のファイバーの場合は、未処理に比べ接触角が小さく、後者(PEG系)の場合は接触角が大きいことが確認できた(図14参照)。
特許第4305447号公報 特表2005−538863号公報 特開平05−016342号公報 特開2001−080063号公報

Claims (6)

  1. オリフィスを備えた容器に充填された前処理溶液(A)に接した電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、電極板上に配置された目的基体上の少なくとも片面に、前処理溶液(A)を付与する前処理を行い、さらにその上に、機能性材料を含む液(B)をインクジェット法により吐出することを特徴とするインクジェット記録方法であって、前処理用液(A)が前記目的基体上にナノファイバー層を形成し、(B)液を付与した後も、ナノファイバーが形状を保っていることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. オリフィスを備えた容器に充填された前処理溶液(A)に接した電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、電極板上に配置された目的基体上の少なくとも片面に、前処理溶液(A)を付与する前処理を行い、さらにその上に、機能性材料を含む液(B)をインクジェット法により吐出することを特徴とするインクジェット記録方法であって、前処理用液(A)が目的基体上にナノファイバー層を形成し、(B)液を付与した後は、(B)液に触れた部分のナノファイバーが溶解して形状を保っていないことを特徴とするインクジェット記録方法であって、(B)液が顔料を含有することを特徴とするインクジェット記録方法。
  3. インクジェットで記録した画像を摺擦することで消去可能としたい部分においては(B)液吐出前の前記ナノファイバー層を厚く形成し、それ以外の部分においては前記ナノファイバー層を薄く形成することを特徴とする、部分的あるいは全体的に画像を消去可能とした請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法
  4. 前処理による作製されるナノファイバー層と目的基体との接着力を強化させる液体を付与することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の記録方法において使用される記録媒体であって、前記機能性材料を含む液(B)を吐出する前の、ナノファイバー層が表面に形成された被記録媒体。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録方法で記録されたことを特徴とする記録画像。
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