JP2013230447A - 重金属溶出低減材 - Google Patents

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Abstract

【課題】重金属の溶出を低減できると同時に、汚染土壌に混合した後に、土壌中に均一に混合されているかどうかを容易に判定することができる重金属溶出低減材を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明にかかる溶出低減材は、炭酸マグネシウム(MgCO3)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを主成分として含む鉱物が軽焼されてなり、且つ前記MgCO3が脱炭酸されることで生成されるMgCxy(但し、0<x≦1、0<y<3を満たす。)と、MgCO3と、CaCO3とを含む軽焼生成物を含有する重金属溶出低減材であって、ゲルマニウム、銀、パラジウム、臭素、ガリウムからなる群より選択される少なくとも1以上の元素をさらに含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、汚染土壌等から有害重金属が溶出することを抑制する重金属溶出低減材に関する。
近年、工場跡地における土壌汚染や、産業廃棄物等の不法投棄による土壌汚染が社会問題となっている。このような汚染土壌から砒素、鉛、フッ素等の有害な重金属が雨水等によって溶出することを抑制する方法として、汚染土壌に重金属溶出低減材を混合することが行なわれている。
前記重金属溶出低減材としては、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、セメント、ゼオライト、鉄塩、高炉スラグ等を含むものがある。中でも、特許文献1に記載されているような、ドロマイトを低温で焼成した軽焼ドロマイトは、安価に重金属溶出低減効果が得られるため注目されている。
前記重金属溶出低減材は、汚染土壌中に均一に混合されていないと、重金属溶出低減材が十分に存在しない箇所が生じて、目的とする溶出低減効果が得られないおそれがある。
そこで、土壌中に重金属溶出低減材が均一に混合されていない場合に好ましい混合状態に調整するために、重金属溶出低減材を土壌に混合した後に混合土壌の混合精度の判定を行う場合がある。
かかる重金属溶出低減材の混合精度の判定方法としては、従来は、重金属溶出低減材を混合した混合土壌から任意の複数箇所の土壌を採取し、サンプルとして実験室などに持ち帰り、溶出試験等を行って混合土壌の成分濃度を調べて、各箇所での成分濃度の相違などを比較することで、混合精度を判定していた。
しかし、かかる方法では、実験室にサンプルを持ち帰って試験を行なうため、現場で迅速に混合精度を判定することができない。
そこで、現場で混合精度を判定できる方法として、特許文献2に記載されているような方法がある。
特許文献2に記載された方法は、予め、硬化材中に含まれる代表的な成分であるカルシウム、ケイ素、アルミニウムなどの元素濃度および土壌中に元々含まれていた前記各元素の濃度を測定しておき、さらに、現場において蛍光X線分析装置を用いて混合土壌に含まれる前記各元素の濃度を測定し、それぞれの元素濃度から、混合土壌中に含まれる硬化材の含有割合を算出し、かかる含有割合によって、混合土壌の混合精度を判定するものである。
特許文献2に記載の方法では、硬化材中に通常含まれているカルシウム、ケイ素、アルミニウム等の元素濃度を測定するため、前記元素のいずれかが、硬化材と汚染土壌とに近似する濃度で含まれている場合には、その元素濃度のみを測定しただけでは混合精度を測定することができない。そのため、前記のようにいくつかの元素濃度を測定して、かかる元素濃度から混合土壌における硬化材の含有割合を算出して、硬化材の配合状態を判定しており、かかる判定を行なうのは煩雑である。
特開2006−289306号公報 特開平7−197444号公報
そこで、本発明は、上記のような従来の問題を鑑みて、重金属の溶出を低減できると同時に、汚染土壌に混合した後に、土壌中に均一に混合されているかどうかを容易に判定することができる重金属溶出低減材を提供することを課題とする。
本発明に係る溶出低減材は、鉱物が軽焼されてなり、且つ前記MgCO3が脱炭酸されることで生成されるMgCxy(但し、0<x≦1、0<y<3を満たす。)と、MgCO3と、CaCO3とを含む軽焼生成物を含有する重金属溶出低減材であって、
ゲルマニウム、銀、パラジウム、臭素、ガリウムからなる群より選択される少なくとも1以上の元素をさらに含む。
本発明によれば、炭酸マグネシウム(MgCO3)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを主成分として含む鉱物が軽焼された軽焼生成物であって、前記鉱物中に含まれる炭酸マグネシウムの一部が脱炭酸されて生成されるMgCxy(但し、0<x≦1、0<y<3を満たす。)を含み、さらに、脱炭酸されていない炭酸マグネシウム(MgCO3)および炭酸カルシウム(CaCO3)を含む、すなわち、3つの成分を含む軽焼生成物を含むため、高い重金属の溶出低減効果が得られる。同時に、ゲルマニウム、銀、パラジウム、臭素、ガリウムからなる群より選択される少なくとも1以上の元素を含む重金属溶出低減材であるために、重金属を含む汚染土壌に前記重金属溶出低減材を混合した後に、前記元素の土壌中の濃度分布を測定することで、汚染土壌と重金属溶出低減材の混合精度を判定することが容易にできる。
ゲルマニウム、銀、パラジウム、臭素、ガリウムは、放射線等を照射することで容易に濃度を測定することができ、また、通常の汚染土壌中には前記放射線等の照射によっては検出可能な濃度では含まれていない元素である。従って、前記元素を含む重金属溶出低減材は、汚染土壌に混合した後に、放射線等の照射によって前記元素の汚染土壌中の濃度の分布を測定することで、重金属溶出低減材の混合精度が容易に判定できる。
尚、本発明における軽焼とは、前記鉱物を加熱して、前記鉱物中の炭酸マグネシウム(MgCO3)の一部を脱炭酸させることをいう。
本発明の他の一態様は、前記軽焼生成物は、X線光電子分光法(XPS)によって検出されるO1sに対応するスペクトルにおいて、前記MgCxyのピークが、MgCO3およびCaCO3の各ピークの中間領域に示されていてもよい。
前記MgCxy、MgCO3、CaCO3が含まれていることは、X線光電子分光法(XPS)によって検出されるO1sに対応するスペクトルにおいて示される前記各ピークによって、明確に検証可能である。
すなわち、前記のようなピークを示す前記軽焼生成物であれば、優れた溶出低減作用を発揮させうる状態で前記MgCxy、MgCO3、CaCO3の各成分が含有されている。
本発明において、前記軽焼生成物は、酸化カルシウム(CaO)を実質的に含まないことが好ましい。
前記鉱物中のCaCO3が脱炭酸されたCaOを実質的に含まない軽焼生成物を含むことによって、より、溶出低減作用を発揮させることができる。
尚、CaOを実質的に含まない、とは、前記軽焼生成物の、X線回析法(XRD)による同定結果およびX線光電子分光法(XPS)によって検出されるO1sに対応するスペクトルにおいて、CaOのピークを示さないことをいう。
本発明の他の一態様として、前記元素が、ゲルマニウム、銀、パラジウムからなる選択される少なくとも1以上の元素であってもよい。
前記元素が、ゲルマニウム、銀、パラジウムからなる群から選択される少なくとも1以上の元素である場合には、これらの元素は、微量でも、前記放射線等で精度よく濃度を測定できるため、混合土壌において前記重金属溶出低減材の混合精度を判定することが精度よくできる。
また、ゲルマニウム、銀、パラジウムは水中にイオンとして溶出しにくい性質を有しており、重金属溶出低減材を混合してから時間が経過した混合土壌においても、雨水等によって前記元素は流出しにくい。よって、時間が経過した混合土壌であっても、精度良く混合精度を判定することができる。
本発明によれば、重金属の溶出を低減できると同時に、汚染土壌に混合した後に、土汚染土壌に混合した後に、容易に土壌中に均一に混合されているかどうかを判定することができる重金属溶出低減材を提供することが可能となる。
X線光電子分光法(XPS)によって検出されるO1sに対応するスペクトル。
以下、本発明に係る重金属溶出低減材について具体的に説明する。
本実施形態の重金属溶出低減材は、炭酸マグネシウム(MgCO3)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを主成分として含む鉱物が軽焼されてなり、且つ前記MgCO3が脱炭酸されることで生成されるMgCxy(但し、0<x≦1、0<y<3を満たす。)と、MgCO3と、CaCO3とを含む軽焼生成物を含有する重金属溶出低減材であって、
ゲルマニウム、銀、パラジウム、臭素、ガリウムからなる群より選択される少なくとも1以上の元素をさらに含むものである。
前記ゲルマニウム、銀、パラジウム、臭素、ガリウムは、通常の汚染土壌中には、放射線等で検出可能な濃度では含まれておらず、且つ、放射線等の照射によって微量の含有濃度であっても容易に検出可能な元素である。
前記元素のうち、特に、ゲルマニウム、銀、パラジウムを用いることが好ましい。
ゲルマニウム、銀、パラジウムは、特に微量でも放射線の照射で濃度を測定可能であるため、前記重金属溶出低減材に配合した場合に、精度よく混合土壌の混合状態を判定することができる。
また、ゲルマニウム、銀、パラジウムは水中にイオンとして溶出しにくい性質を有しており、かかる元素を前記重金属溶出低減材に配合した場合は、重金属溶出低減材を混合してから時間が経過した混合土壌においても、雨水等によって元素が流出することを抑制できる。よって、時間が経過した混合土壌であっても、精度良く混合精度を判定することができるため、特に好ましい。
前記各元素は、前記各元素を含む化合物として前記重金属溶出低減材に含有されていてもよい。
前記化合物としては、例えば、ゲルマニウム化合物としてのC6107Ge2、銀化合物としてのAgNO2、パラジウム化合物としてのPdCl2等が挙げられる。
中でも、C6107Ge2等のゲルマニウム化合物は、土壌中に存在していても生物等に与える影響が少ないため好ましい。
本実施形態の重金属溶出低減材は、溶出低減成分として、炭酸マグネシウム(MgCO3)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを主成分として含む鉱物が軽焼されてなり、且つ前記炭酸マグネシウムが脱炭酸されることで生成されるMgCxy(但し、0<x≦1、0<y<3を満たす。)と、炭酸マグネシウム(MgCO3)と、炭酸カルシウム(CaCO3)とを含む軽焼生成物を含む。
炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムとを主成分として含む前記鉱物とは、炭酸マグネシウムを20質量%以上、好ましくは40質量%以上含み、且つ炭酸カルシウムを15質量%以上、好ましくは、50質量%以上含む鉱物を好適に用いることができる。
前記鉱物の具体例としては、ドロマイト等を挙げることができる。
前記ドロマイトとしては、炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムとを含有してなるものであれば特に限定されず、天然に産出するドロマイト(白雲石)の他、水酸化マグネシウムスラリーと石灰乳との混合物を焼成して得られた合成ドロマイト等を用いることもできる。
なお、天然に産出するドロマイトは、一般に、CaO/MgOで表わされる複塩のモル比が0.70〜1.63の範囲であり、CaCO3をCaO換算で概ね9〜40質量%、MgCO3をMgO換算で概ね10〜38質量%含有するものである。
本実施形態の前記鉱物は、前記したようなMgCxyと、炭酸マグネシウム(MgCO3)と、炭酸カルシウム(CaCO3)とを含む生成物が生成されるように軽焼する。
かかる軽焼の際の温度条件としては、640〜990℃の範囲とし、好ましくは690〜890℃とし、さらに好ましくは760〜850℃とする。
また、軽焼時間は温度条件によっても変動するが、通常、10〜60分である。
前記のような軽焼を行なうことにより、前記鉱物中に含まれる炭酸マグネシウム(MgCO3)の一部を脱炭酸してMgCxy(但し、0<x≦1、0<y<3を満たす。)を生成することができる。
すなわち、前記軽焼を行なうことにより、前記鉱物中の炭酸マグネシウム(MgCO3)の一部はそのまま残存させると同時に、炭酸マグネシウムの一部を脱炭酸してMgCxyとし、さらに前記鉱物中の炭酸カルシウム(CaCO3)は実質的には脱炭酸させないことによって、前記MgCxyと、炭酸マグネシウム(MgCO3)と、炭酸カルシウム(CaCO3)とを含む軽焼生成物を得ることができる。
前記鉱物を、高温長時間焼成して完全な焼成物とした場合、前記鉱物中に含まれる炭酸マグネシウム(MgCO3)が脱炭酸されると同時に、炭酸カルシウム(CaCO3)も脱炭酸されてしまい、前記のような3つの成分を実質的に含む軽焼生成物を得ることができない。
前記軽焼生成物における前記MgCxyは、例えば、MgCO3の基本構造が脱炭酸によって変化し基本構造の規則性が崩れた不定形な形で存在していると考えられる。
また、前記軽焼生成物における前記MgCO3および前記MgCxyはおそらく非晶質であると考えられる。
前記鉱物中の炭酸マグネシウム(MgCO3)の一部はそのまま残存させると同時に、炭酸マグネシウムの一部を脱炭酸してMgCxyとし、さらに前記鉱物中の炭酸カルシウム(CaCO3)は実質的には脱炭酸させない状態で軽焼を停止することによって、残存するMgCO3および生成されるMgCxyは非晶質化するものと考えられる。
このことは、前記のようなXRDによる同定結果およびXPSによる検出スペクトル解析から推測しうる。
すなわち、前記軽焼生成物を、XPSによる成分分析を行うと、MgCO3およびMgCxyのピークが検出されるが、同時にXRDによる同定を行うと、MgCO3およびMgCxyは検出されない。これは、XRDでは結晶質のものしか検出できないため、前記軽焼生成物中に含まれる前記MgCO3および前記MgCxyは非晶質化しているものと推定される。
前記軽焼生成物における、前記MgCO3および前記MgCxyの合計含有量は、32.1質量%〜40.3質量%、好ましくは34.5質量%〜39.6質量%であることが好ましい。
かかる範囲の含有量であることで、重金属溶出低減材とした場合に溶出低減効果を向上させることができる。
前記軽焼生成物における、前記CaCO3の含有量は40質量%〜65質量%、好ましくは45質量%〜65質量%であることが好ましい。
かかる範囲の前記CaCO3の含有量であることで、重金属溶出低減材とした場合に、長期間溶出低減効果を維持することができる。
前記MgCO3および前記MgCxyの合計含有量、前記CaCO3の含有量の測定は、例えば、JIS R2212−4に規定するマグネシア及びドロマイト質耐火物の成分分析方法、または、X線回析法(XRD)による同定結果およびX線光電子分光法(XPS)による成分分析により、測定することが可能である。
前記軽焼生成物が前記のような3つの成分を実質的に含む軽焼生成物であることは、X線光電子分光法(XPS)によって検出されるスペクトルにおいて示される前記各ピーク値によって明確に確認できる。
本実施形態では、例えば、X線光電子分光装置 Sigma Probe(VGサイエンティフィック社製)を用いて、前記軽焼生成物を試料ペレットに埋めて表面をエッチング処理等適宜前処理した試料から検出される、図1に示すような、XPSスペクトルのO1sに対応するスペクトルにおけるピークを調べることで、前記軽焼生成物が前記のような3つの成分を含む場合には、各成分のピークが現れる。
尚、本実施形態の前記軽焼生成物は、CaOを実質的に含まないことが好ましい。
前記鉱物を軽焼した場合には、前記鉱物中のMgCO3の一部を脱炭酸させるが、CaCO3を実質的には脱炭酸する温度での焼成ではないため、前記軽焼生成物中には、実質的にCaOは含まれていない。
前記軽焼生成物がCaOを実質的に含まないことは、例えば、X線回析法(XRD)による同定結果および前記X線光電子分光法(XPS)によって検出されるO1sに対応するスペクトルにおいて、CaOのピークが現れないことで確認することができる。
前記軽焼生成物は、前記鉱物を軽焼することで質量が減少するが、かかる軽焼による質量減少率は9〜20%、好ましくは10〜17%、より好ましくは16〜17%であるように軽焼することが好ましい。
前記軽焼による質量減少率をこのような数値範囲内とすることにより、炭酸マグネシウム等からの脱炭酸反応を適切に生じさせ、前記鉱物中の炭酸マグネシウムの一部を残存させると同時に、炭酸マグネシウムの一部を脱炭酸してMgCxyとし、かかる脱炭酸によって生じる前記MgCxyと、炭酸マグネシウム(MgCO3)と、炭酸カルシウム(CaCO3)とを含む軽焼生成物を適切に生成させることができるものと考えられる。
尚、焼成雰囲気等の他の焼成条件や、焼成に用いる焼成装置については、従来公知の焼成条件および焼成装置を採用することができる。
本実施形態の重金属溶出低減材は、前記各元素と前記溶出低減成分とが含まれるが、必要に応じて重金属溶出低減材に一般的に配合される添加剤等が含まれていてもよい。
本実施形態の重金属溶出低減材における前記各元素の濃度は、重金属溶出低減材を汚染土壌に添加する量に応じて適宜設定できるが、例えば、土壌に重金属溶出低減材を混合した場合に、前記混合土壌1kgに対して25〜250mg(元素量として)程度含まれるように重金属溶出低減材に含まれることが好ましい。
本実施形態の重金属溶出低減材は、砒素、鉛、フッ素などの有害な重金属で汚染された汚染土壌に混合することで、前記重金属が土壌から溶出することを抑制しうる。
本実施形態の重金属溶出低減材を前記汚染土壌に混合する量は、汚染土壌中の重金属の量に応じて適宜好ましい量を混合することができるが、例えば、汚染土壌に対して20〜200kg/m3、好ましくは50〜150kg/m3の濃度になるように添加することが好ましい。
前記重金属溶出低減材を前記汚染土壌に混合した後に、土壌中に重金属溶出低減材が均一に混合されていないと、重金属の溶出を低減させる効果が十分に得られない場合がある。そこで、前記汚染土壌に重金属溶出低減材を混合した後に、均一に混合されているかどうかを確認し、不均一であった場合には、再度混合するなどして、混合精度を高くすることが行なわれる。
本実施形態の重金属溶出低減材には、ゲルマニウム、銀、パラジウム、臭素、ガリウムからなる群から選択される少なくとも1の元素を含むため、かかる元素の土壌中の濃度分布を測定することで、混合精度が容易に判定できる。
具体的には、例えば、前記重金属溶出低減材を汚染土壌に混合した混合土壌の任意の複数箇所から、それぞれ混合土壌を抜き取り、乾燥させてすりつぶして細かい粉末試料にした後に、放射線等を照射して粉末試料中の元素濃度を測定することが挙げられる。
前記混合土壌に照射する放射線とは、電磁波および粒子線を意味し、例えば、α線、β線、電子線等の粒子線や、γ線、X線等のような電磁波等のように、前記混合土壌に照射することで、混合土壌中の元素濃度の測定が可能な信号を発生させることが可能なものを意味する。照射する放射線は前記元素の濃度を測定する手段としてどのような手段を採用するかで、適宜選択可能である。
例えば、蛍光X線分析装置を用いる場合には、X線を前記混合土壌に照射して、発生する特性X線(蛍光X線)の強度から前記元素の濃度を測定する蛍光X線分析方法によって、前記元素濃度を測定することができる。
前記蛍光X分析方法を用いる場合には、混合土壌を試料とする場合に、煩雑な処理をする必要がなく、簡単に試料を準備することができる。
また、前記蛍光X線分析装置としては、小型の装置、特には可搬型の装置を用いることが、現場あるいは現場付近で測定を行うことが容易にできるため好ましい。
前記のように本実施形態の重金属溶出低減材は、前記ゲルマニウム、銀、パラジウム、臭素、ガリウムなどの元素を含むため、前記混合土壌の複数箇所において前記元素濃度を測定し、各濃度を比較して、ばらつきの有無あるいは度合いを判定することで、土壌と重金属溶出低減材とが均一に混合されているかどうかを判定することができる。
判定の結果、前記各箇所の混合土壌中の元素濃度に大きいばらつきがある場合には、土壌と重金属溶出低減材との混合が均一に行われていない、すなわち、混合精度が低い、ことになる。
この場合には、混合土壌をさらに攪拌したり、あるいは重金属溶出低減材をさらに土壌に添加する等の対応をすることで、目的とする重金属の溶出低減効果を得ることができる。
尚、前記元素濃度のばらつきが大きいと判断する方法としては、例えば、各濃度の変動係数を算出して、かかる変動係数から判断することができる。
本実施形態において、前記元素としてゲルマニウム、銀、パラジウム、ガリウムを用いた場合には、特に、水などによって溶出しにくいため、雨水などによって重金属溶出低減材から前記元素のみが分離して流出するおそれが少ない。従って、例えば、汚染土壌と重金属溶出低減材とを混合してからある程度日数が経過した混合土壌において、前記元素濃度を測定した場合でも、前記元素は、重金属溶出低減材中に留まっており、精度よく混合土壌の混合精度を判定することができる。
本実施形態にかかる重金属溶出低減材は以上のとおりであるが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以下に実施例を示して、本発明にかかる重金属溶出低減材についてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
《混合精度測定試験1》
(重金属溶出低減材)
重金属溶出低減材として、下記のものを準備した。
栃木県葛生地方産出のドロマイト(住友大阪セメント株式会社唐沢鉱業所産)を準備し、800℃の電気炉で30分間加熱した焼成物に有機ゲルマニウム((CH2CH2COOHGe)23:純度99.99%、Shanghai Hongqiang interanational trade Co.,LTD.製)、NaBr(試薬特級、キシダ化学社製)をそれぞれ5000mg/kgになるように混合したものを準備した。
擬似汚染土壌として、含水率15%の砂質土(成田産)に砒素をAs濃度として40mg/kgとなるように混合したものを準備した。
前記擬似汚染土壌0.36kgに、前記重金属溶出低減材を土壌中の前記有機ゲルマニウム濃度またはNaBr濃度が500mg/kgとなるように添加して混合した。
混合は、ホバートミキサーを用いて9分間混合した。これらの混合土壌を、均一混合土壌とした。
一方、前記擬似汚染土壌0.36kgに、前記重金属溶出低減材を土壌中の前記有機ゲルマニウム濃度又はNaBr濃度が250mg/kgになる量を添加して、ホバートミキサーを用いて10秒間混合した。これらの混合土壌を、不均一混合土壌とした。
前記各混合土壌を、24時間置した後に、任意の5箇所から、各混合土壌を6gずつ採取し、蛍光X線分析装置(装置名:SEA1100、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、混合土壌中の有機ゲルマニウム又はNaBrの強度(cps)を測定した。
ブランクとして、重金属溶出低減材を混合しない混合土壌からも任意の5箇所から6gずつ採取したものの砒素の強度(cps)を測定した。
各箇所におけるそれぞれのcpsの値の変動係数を算出した。
測定結果および算出結果を、表1に示す。
表1から、均一に混合した混合土壌1および2は、採取箇所1〜5において、測定されたGe強度またはBr強度にばらつきが少なかった。一方、不均一に混合した混合土壌4および5は、採取箇所1〜5において、測定されたGe強度またはBr強度のばらつきが顕著であった。
以上より、本発明の重金属溶出低減材に含まれる各元素の強度を測定することで、混合土壌の混合精度が容易に判定できることがわかった。
《混合精度測定試験2》
前記混合精度測定試験1と同様の擬似汚染混合土壌と、重金属不溶化材(有機ゲルマニウムまたはNaBr混合)とを準備して、試験1と同様に、ホバートミキサーを用いて9分間混合した。
各混合土壌および擬似汚染混合土壌を、直径40mm、高さ275mmの円筒形容器に600gずつ充填した試験体をそれぞれ2個ずつ作製した。
充填直後の試験体のうち各1個ずつから、任意5箇所の各混合土壌を6gずつ採取し、蛍光X線分析装置(装置名:SEA1100、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、混合土壌中の有機ゲルマニウム、NaBr又は砒素の強度(cps)を測定した。各箇所におけるそれぞれのcpsの値の変動係数を算出した。
充填直後の各試験体のうち各1個の、円筒形容器の上から60gの水を注いだ後、1週間放置した。その後、任意5箇所の各混合土壌を6gずつ採取し、蛍光X線分析装置(装置名:SEA1100、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、混合土壌中の有機ゲルマニウム、NaBr又は砒素の強度(cps)を測定した。各箇所におけるそれぞれのcpsの値の変動係数を算出した。
測定結果および算出結果を表2に示す。
表2の結果から、特にゲルマニウムをマーカー元素として使用した場合には、通水後1週間経過してから、混合精度を測定した場合でも、精度よく混合状態を測定しうることが明らかである。すなわち、雨などにさらされる屋外等の環境下において、土壌と土壌改良材とを混合してからある程度日数が経過した混合土壌でも、マーカー元素が土壌改良材中に留まっており、精度よく混合土壌の混合精度を判定することができることが明らかである。
《溶出試験》
重金属溶出低減材として、下記のものを準備した。
栃木県葛生地方産出のドロマイト(住友大阪セメント株式会社唐沢鉱業所産)を準備し、800℃の電気炉で30分間加熱した焼成物に有機ゲルマニウム((CH2CH2COOHGe)23:純度99.99%、Shanghai Hongqiang interanational trade Co.,LTD.製)を5000mg/kgになるように混合したものを重金属溶出低減材Aとして準備した。
前記焼成物に有機ゲルマニウムを混合しないものを重金属溶出低減材Bとして準備した。
前記混合精度測定試験と同様の砂質土に、砒素をAs濃度として40mg/kgとなるように混合した擬似汚染土壌を準備した。前記擬似土壌に、前記重金属溶出低減材A、Bをそれぞれ100g/kg添加し、ホバートミキサーを用いて9分間混合した混合土壌を得た。
前記混合土壌は20℃恒温室内で養生し、養生後1日目と7日後各土壌について溶出試験を行い砒素の溶出量を測定した。ブランクとして、溶出低減材を混合しない混合土壌における砒素の溶出量も測定した。溶出試験は「平成3年環境庁告示第46号」に準拠して行った。
結果を、表3に示す。
表3の結果より、有機ゲルマニウムを含む溶出低減材を混合した擬似汚染土壌は、有機ゲルマニウムを含まない溶出低減材Bを混合した擬似汚染土壌に比べて、いずれの材齢においても砒素の溶出量が少なかった。

Claims (4)

  1. 炭酸マグネシウム(MgCO3)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを主成分として含む鉱物が軽焼されてなり、且つ前記MgCO3が脱炭酸されることで生成されるMgCxy(但し、0<x≦1、0<y<3を満たす。)と、MgCO3と、CaCO3とを含む軽焼生成物を含有する重金属溶出低減材であって、
    ゲルマニウム、銀、パラジウム、臭素、ガリウムからなる群より選択される少なくとも1以上の元素をさらに含む重金属溶出低減材。
  2. 前記軽焼生成物は、X線光電子分光法(XPS)によって検出されるO1sに対応するスペクトルにおいて、前記MgCxyのピークが、MgCO3およびCaCO3の各ピークの中間領域に示される請求項1に記載の重金属溶出低減材。
  3. 前記軽焼生成物は、酸化カルシウム(CaO)を実質的に含まない請求項1または2に記載の重金属溶出低減材。
  4. 前記元素が、ゲルマニウム、銀、パラジウム、ガリウムからなる群より選択される少なくとも1以上の元素である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の重金属溶出低減材。
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