JP2013225399A - 酸化物超電導線材および超電導コイル - Google Patents

酸化物超電導線材および超電導コイル Download PDF

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Abstract

【課題】超電導線材冷却時に、構成要素の熱膨張率の差に起因する応力が生じても、超電導積層体に応力が直接作用せず、劣化が生じ難い構造とした超電導線材の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、テープ状の基材に中間層と超電導層と安定化層とが積層されて超電導積層体が構成され、該超電導積層体の外周を包囲する絶縁テープを備えられることで複合超電導体が構成され、該複合超電導体の外周に樹脂の焼付けにより絶縁被覆層が形成されることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物超電導線材および超電導コイルに関する。
近年Bi系超電導線材BiSrCaCu8+δ(Bi2212)、BiSrCaCu10+δ(Bi2223)、やY系超電導線材REBaCu7−δ(RE123:REはYを含む希土類元素)といった酸化物超電導線材の開発が進んでいる。これら超電導線材は、臨界温度が90〜100K程度であり、液体窒素温度以上で超電導性を示すため、実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体あるいは磁気コイル等として使用することが要望されている。
特にY系超電導線材は、テープ状の金属基材上に中間層を介し成膜法により酸化物超電導層を積層し、AgやCuなどの安定化層を積層した多層構造とされ、これを用いて超電導コイルとするには、曲げや捻回などの方向性を考慮して設計する必要がある。
多層構造の超電導線材を巻回してコイルにするためには、超電導線材間の電気的な絶縁性を確保するため、超電導線材を絶縁材で被覆する必要がある。
超電導線材を絶縁被覆する方法としては、テープ状の超電導線材の外周にポリイミドテープ等の樹脂製の絶縁テープを巻き付ける方法(特許文献1参照)や、超電導線材の外周面に熱硬化性樹脂を塗布して該樹脂を焼付けることにより、超電導線材の外周面に絶縁被覆層を形成する方法(特許文献2参照)が知られている。
特開2011−113933号公報 特開平11−203959号公報
多層構造の超電導線材を巻きつけて製造した超電導コイルはコイル半径方向外向きの電磁力に起因する応力が生じ、超電導線材を構成する層が剥離、変形、クラックを起こす虞があり、その結果、臨界電流密度の低下を招く虞がある。そのため、超電導線材を固定して補強し外力に強い構造とする目的でコイル自体をエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で固定することがなされている。
なお、エポキシ樹脂を含浸させる場合、真空含浸を行ってコイルの隅々までエポキシ樹脂を浸透させる処理を行っているが、真空含浸法以外の方法で樹脂含浸を行うと、超電導コイルの機械的強度(コイル剛性)の低下を招く虞があるので、真空含浸法が最も望ましいと考えられている。
特許文献1に記載のように、超電導線材の周囲を絶縁テープで覆った超電導線材を巻線しエポキシ樹脂にて真空含浸して、さらに該含浸樹脂を加熱硬化しコイルを作製すると、テープ材を一部重ねるようにして緊密にラップ巻きしたとしても、前記エポキシ樹脂を真空含浸する際にテープ材同士を重ねた部分の外部から未硬化のエポキシ樹脂が染み込み超電導線材まで達する虞があり、その場合に、エポキシ樹脂は熱硬化時に超電導線材の表面に接触したまま硬化し接着する。超電導線材とエポキシ樹脂は熱膨張率に大きな差があり、超電導コイル冷却時において、超電導線材に熱膨張率の差に起因する応力が生じ、エポキシ樹脂と超電導線材表面の接着部に応力が作用し、超電導特性が劣化する虞がある。
特許文献2に記載の、超電導線材の周囲にエナメル等からなる絶縁被覆層を形成する技術においては、絶縁被覆層が超電導線材と直接接触し、硬化時に超電導線材の表面に接着する。これを巻線しエポキシ樹脂にて含浸して、コイルを作製すると、コイル冷却時に、エポキシ樹脂材料および絶縁被覆層の樹脂材料と超電導線材の熱膨張率の差から応力が生じ、これが絶縁被覆層と超電導線材の接着部から超電導線材に直接伝わり、超電導線材に応力が作用する。
本発明は、このような従来の実情に鑑みなされたもので、超電導線材を巻線し、樹脂含浸を行い製作したコイルを冷却し熱膨張率の差による応力が生じても、劣化し難い積層構造とした超電導線材の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、テープ状の基材に中間層と超電導層と安定化層とが積層されて超電導積層体が構成され、該超電導積層体の外周を包囲する絶縁テープが備えられることで複合超電導体が構成され、該複合超電導体の外周に樹脂の焼付けによる絶縁被覆層が形成されたことを特徴とする。
従来の技術においては、超電導積層体の外周に絶縁テープを包囲するように設けるのみで、超電導線材を形成していたので、この超電導線材を用いて超電導コイルを作製する場合、エポキシ樹脂の真空含浸時に、重ねたテープ同士の隙間から未硬化のエポキシ樹脂が浸入し、超電導積層体にエポキシ樹脂が接触していた。しかし、本発明のように、超電導積層体の外周を包囲する絶縁テープで覆い、さらにその外周に焼付けにより形成された絶縁被覆層の樹脂を備えることによって、エポキシ樹脂含浸時にエポキシ樹脂は、絶縁被覆層に阻まれ、絶縁被覆層の内側に浸入しないので超電導積層体に接触することはない。また、焼付けによって形成された絶縁被覆層の樹脂は、真空含浸によらず大気中で形成されるので外周を包囲した絶縁テープの隙間に浸入することはない。従って、冷却によって超電導線材に熱膨張率の差に起因する応力が生じたとしても、絶縁テープと安定化層との界面で滑りを生じさせることができ、超電導積層体の各層間での剥離を抑制する。これにより、超電導線材を超電導コイルに加工して含浸樹脂により固定し、冷媒で冷却しても、劣化を生じ難い超電導線材を提供できる。
また、絶縁被覆層により超電導積層体の外周を覆うことによって、外部からの水分の浸入を防止できる構造の超電導線材を提供できる。
本発明において、上記絶縁テープが、二重に巻き付けられたことを特徴とする。
絶縁テープが二重に巻き付けられていることによって、絶縁被覆層を構成するための焼付け前の樹脂は、絶縁テープの隙間から染み込むことがより困難となり超電導積層体に接触し難くなる。加えて、絶縁被覆層と安定化層との界面のみならず、上記の二重に積層された絶縁テープ間同士でも滑りが生じる。これにより、より効果的に超電導積層体の各層間の剥離を抑制し、冷却によって劣化を生じ難い超電導線材を提供できる。
本発明の超電導コイルは、前記いずれかの構造の超電導線材が巻線され、エポキシ樹脂にて含浸固定されたことを特徴とする。
上記の超電導線材が巻線され、エポキシ樹脂にて含浸固定されて超電導コイルが構成されることによって、上記の効果を奏する超電導コイルを提供することができる。また、エポキシ樹脂にて含浸された構造とすることにより、超電導線材を固定することができる。
本発明は、超電導積層体の外周を絶縁テープで包囲し、その上に絶縁被覆層で覆う構造を有する。これにより、絶縁被覆層の樹脂は超電導積層体に直接触れることがなく、冷却によって周囲の樹脂材料と超電導積層体との熱膨張率の差に起因する応力が生じたとしても、絶縁テープとその下地の部分で滑りを生じさせて応力を緩和できるので、劣化し難い超電導線材を提供することができる。
また、この超電導線材を巻線し、エポキシ樹脂を真空含浸および加熱硬化することにより超電導コイルを構成する場合においても、エポキシ樹脂は絶縁被覆層に阻まれ、超電導線材に接触することはない。よって、本発明に係る超電導線材をコイル化し、樹脂を含浸させて固定した場合であっても、超電導線材が劣化し難い構造とした超電導線材および超電導コイルを提供することができる。
また焼付け絶縁被覆層で覆うことにより、外部からの水分の浸入を防止できる構造の超電導線材を提供できる。
本発明の超電導線材の一実施形態である酸化物超電導線材の横断面図である。 本発明に係る超電導線材の実施形態における酸化物超電導積層体の横断面図である。 本発明に係る超電導線材の実施形態における絶縁テープの巻き方の一例を示す斜視図である。 本発明に係る超電導線材の絶縁テープの巻き方の他例を示す斜視図である。 本発明に係る超電導線材の実施形態である超電導線材を備えた超電導コイルを示し、図5(a)は断面斜視図、図5(b)は拡大断面図である。
以下、本発明に係るテープ状の酸化物超電導線材1の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態である、酸化物超電導線材1の横断面を示す。基材5と中間層6と酸化物超電導層7と保護層8と安定化層9からなる酸化物超電導積層体2の外周を絶縁テープ3で包囲し複合超電導体4を構成し、さらにその外周に絶縁被覆層10を形成することで、酸化物超電導線材1が構成されている。
図2は酸化物超電導線材1の構成要素である酸化物超電導積層体2の横断面図を示す。
酸化物超電導積層体2は基材5の一面上に、中間層6と酸化物超電導層7と保護層8と安定化層9とをこの順に積層してなる。前記基材5は、可撓性を有する線材であり、テープ状で耐熱性の金属からなるものが好ましい。耐熱性の金属の中でもニッケル(Ni)合金がより好ましい。中でも、市販品であればハステロイ(商品名、米国ヘインズ社製)が好適であり、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。また、基材5としてニッケル合金などに集合組織を導入した配向金属基材を用い、その上に中間層6および酸化物超電導層7を形成してもよい。基材5の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmであることが好ましく、20〜200μmであることが好ましい。
中間層6は、以下に説明する下地層と配向層とキャップ層からなる構造を一例として適用できる。
下地層を設ける場合は、以下に説明する拡散防止層とベッド層の複層構造あるいは、これらのうちどちらか1層からなる構造とすることができるが、下地層は必須ではなく、略しても差し支えない。
下地層として拡散防止層を設ける場合、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(GdZr)等から構成される単層構造あるいは複層構造の層が望ましく、厚さは例えば10〜400nmである。
下地層としてベッド層を設ける場合、ベッド層は、例えば、イットリア(Y)などの希土類酸化物であり、より具体的には、Er、CeO、Dy、Er、Eu、Ho、La等を例示することができ、これらの材料からなる単層構造あるいは複層構造を採用できる。ベッド層の厚さは例えば10〜100nmである。
配向層は、その上方に形成する酸化物超電導層7と格子整合性の良い金属酸化物からなることが好ましい。配向層の好ましい材質として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示できる。配向層は、単層でも良いし、複層構造でも良い。
キャップ層は、好ましいものとして具体的には、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等が例示できる。キャップ層の材質がCeOである場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。CeOのキャップ層の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲とすることができる。
酸化物超電導層7は通常知られている組成の希土類系高温酸化物超電導体からなる薄膜を広く適用することができ、REBaCu7−δ(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBaCu7−δ)又はGd123(GdBaCu7−δ)を例示できる。酸化物超電導層7の厚みは0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
酸化物超電導層7上に積層されている保護層8は、Agあるいは貴金属などの良電導性かつ酸化物超電導層7と接触抵抗が低くなじみの良い金属材料からなる。Agからなる保護層8の場合、その厚さは1〜30μm程度とされる。
保護層8上に積層された安定化層9は、良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導層7が超電導状態から常電導状態に遷移しようとした時に、保護層8とともに、酸化物超電導層7の電流が転流するバイパスとして機能する。保護層8はその機能により安定化層9の一部とみなすことができる。
安定化層9を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが銅、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金、ステンレス等の比較的安価な材質からなるものを用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることから銅製が好ましい。
安定化層9の形成方法は特に限定されないが、例えば、銅などの良導電性材料よりなる金属テープを半田などの接合材を介し保護層8上に貼り付けることで積層してもよく、あるいは保護層8の面上にメッキ等の方法により形成してもよい。また、安定化層9の形成をしやすくするために、銀、金、白金などからなる下地安定化層を予め保護層8の上に形成し、その上に安定化層9を形成する構造としてもよい。
特に半田を介して金属テープを積層する場合に使用できる半田としては、特に限定されないが、従来公知の半田を使用可能であり、例えば、Sn、Sn−Ag系合金、Sn−Bi系合金、Sn−Cu系合金、Sn−Zn系合金などのSnを主成分とする合金よりなる鉛フリー半田、Pb−Sn系合金半田、共晶半田、低温半田などが挙げられ、これらの半田を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、融点が300℃以下の半田を用いることが好ましい。これにより、300℃以下の温度で金属テープと保護層8を半田付けすることが可能となるので、半田付けの熱によって酸化物超電導層7の特性が劣化することを抑止できる。
安定化層9の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、10〜300μmとすることが好ましい。
図3を基に、前記酸化物超電導積層体2に対する絶縁テープ3の巻き付け方の一例を示す。酸化物超電導積層体2に絶縁テープ3を巻きつけて包囲することにより複合超電導体4を構成する。
複合超電導体4に後工程の絶縁被覆層10の樹脂の焼付けを行うにあたって、絶縁被覆層10の樹脂が、酸化物超電導積層体2に直接触れることを防ぐために、絶縁テープ3は酸化物超電導積層体2を包囲するように巻きつけられる必要がある。図3に示すように、本実施形態においては、2枚の絶縁テープ3a、3bを用いて、第一の絶縁テープ3aを自身との重なりを持たせず螺旋状に巻き、第二の絶縁テープ3bを第一の絶縁テープ3aの隙間を覆うように、やはり自身とは重なりを持たせずに螺旋状に巻いていくことで、後工程の絶縁被覆層10の樹脂材料の浸入を防ぐことができる。
絶縁テープ3の巻き方は、図4に示すように、1枚の絶縁テープ3を螺旋巻きして酸化物超電導積層体2を包囲する方法や、また図示していないが、縦添えによって包囲する方法などがありこれらの方法を用いても良いが、図3に示す2枚の絶縁テープ3a、3bを用いることでより効果的に、酸化物超電導積層体2を包囲することができる。さらにこれにより未硬化の絶縁被覆層10の樹脂材料の浸入を防ぐことができる。また、冷却時に樹脂材料と酸化物超電導積層体2との熱膨張率の差による応力が発生する際に、該応力を逃がすためには多層にわたり絶縁テープ3が巻かれている構造がより効果的であり、図3に示す2枚の絶縁テープ3a、3bを用いる巻き付け方法がより好ましい。
絶縁テープ3、3a、3bは、絶縁材料からなるテープが用いられ、例えば、ポリイミドからなるテープを用いることができる。厚みは5.0μm〜50μm程度の物を用いることができるが、7.5μm〜12.5μmがより好ましいとされる。絶縁テープが薄くなるとそれに応じて絶縁破壊電圧も低くなり絶縁機能を果たさない虞があり、また厚くすると酸化物超電導線材が太くなってしまうため、使用環境に応じて適切な厚みを選定する必要がある。
図1に示す本発明の一実施形態である酸化物超電導線材1は、酸化物超電導積層体2を絶縁テープ3によって包囲し複合超電導体4を構成し、この複合超電導体4の外周に絶縁被覆層10を形成したものである。
絶縁被覆層10をなす絶縁材料としては、焼付けにより層を形成できるものであれば特に限定されず、例えば、ホルマール樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(PEEK樹脂)、ポリテトラフルオロエチレン(四フッ素化樹脂、PTFE)等のフッ素樹脂やエナメルが挙げられる。
これらの中でも、200℃以下、例えば、170〜200℃の温度で焼付け可能な樹脂が好ましい。このような樹脂を用いることにより、絶縁被覆層10形成時に、焼付け温度が高くなり過ぎることがなく、半田等を介した金属テープの貼り合わせにより形成されている安定化層9が半田の溶融により剥離することがなく、酸化物超電導層7の劣化を抑止できる。
絶縁被覆層10を構成する樹脂は酸化物超電導積層体2を絶縁テープ3で包囲することでなる複合超電導体4に未硬化状態で塗布され、焼付けによって硬化される。未硬化の絶縁被覆層10を構成する樹脂は前記絶縁テープ3a、3bが酸化物超電導積層体2を包囲して巻き付けられているため、酸化物超電導積層体2に直接接触することはない。
樹脂を塗布する方法は、ディップコート法やスプレーコート法等、従来公知の方法を適用することができる。
複合超電導体4への絶縁被覆層10の形成は、樹脂の塗布・焼付け処理を一度だけ行ってもよく、所望の厚さの絶縁被覆層10が形成されるまで樹脂の塗布・焼付け処理を複数回繰り返し行ってもよい。
このような絶縁被覆層10の厚みとしては、0.1〜100μm程度の範囲のものとされるが、特に20μm以下とすることが好ましい。絶縁被覆層10の厚さを20μm以下とすることにより、酸化物超電導線材1の横断面積中に占める絶縁被覆層10の面積を削減できるので、酸化物超電導線材1を小型化できるとともに、酸化物超電導線材1をコイル加工した場合に、電流密度の低下を抑制できる。
この酸化物超電導線材1の横断面形状は、矩形状とされ、幅1.0mm〜12mm程度、厚さ0.1mm〜1.0mm程度の範囲のものとされる。酸化物超電導線材1は酸化物超電導積層体2の外周を2枚の絶縁テープ3a、3bで包囲し、さらにその外周を絶縁被覆層10で包囲して構成され、酸化物超電導積層体2と絶縁テープ3aおよび絶縁テープ3aと絶縁テープ3bは固着しておらず、そのため摺動可能で、応力を受け流すことができる。
また、酸化物超電導線材1は、酸化物超電導積層体2を絶縁テープ3で螺旋巻きした複合超電導体4の外周全体を絶縁被覆層10により覆った構造からなり、酸化物超電導積層体2を絶縁被覆層10により外部から封止しており、水分などが酸化物超電導層7に浸入することを低減でき、超電導特性の劣化を抑止できる。これは希土類系酸化物超電導体の一部組成のものは水分と反応性を有し、水分に弱いという問題を有しているので絶縁被覆層10で完全に覆うことで水分の影響を排除できる。
図5は、本発明の第一の実施形態に係る酸化物超電導線材1を巻き芯12に巻き付けた超電導コイル11を示し、(a)は断面斜視図、(b)は拡大断面図である。巻き芯12はFRP等の材質からなり、また樹脂13はエポキシ樹脂等の硬化性樹脂からなる。また図5(b)に示すように、超電導コイル11は、酸化物超電導線材1に基材5側を内周に、安定化層9側を外周に位置するように巻き芯12に所定のターン数巻線し、樹脂13で含浸固定したものである。また酸化物超電導線材1の巻き方向は、基材5側を内周に、安定化層9側を外周に位置するように巻線して超電導コイル11を製作する構成としてもよい。
本実施形態の酸化物超電導線材1は、巻線し樹脂13で含浸固定し超電導コイル11を構成することで酸化物超電導線材1の外層にさらに樹脂層を形成した構造となるので、外部からの水分の浸入をより効果的に抑止することができる。
また、酸化物超電導積層体2と熱膨張率に大きな差がある樹脂13および絶縁被覆層10は、絶縁テープ3によって酸化物超電導積層体2と分離されており、しかも、酸化物超電導積層体2と絶縁テープ3とは固着しておらず、摺動可能であるため、図5で示す構造であると超電導コイル冷却時に、熱膨張率の差に起因する応力が生じても、酸化物超電導積層体2と絶縁テープ3が長手方向の応力を逃がす方向に相互に摺動し、応力を軽減できる。
これらの作用によって、酸化物超電導積層体2を構成する層の剥離、変形、クラック等を防止することができ、超電導コイル11の性能の指標である臨界電流密度、およびn値の低下を防止することができる。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
幅5mm、厚さ0.1mm、長さ70mのテープ状のハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)製の基材上に、スパッタ法によりAl層(拡散防止層;膜厚150nm)を成膜し、その上に、イオンビームスパッタ法によりY層(ベッド層;膜厚20nm)を成膜した。次いで、このベッド層上に、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)によりMgO層(金属酸化物層;膜厚10nm)を形成し、その上にパルスレーザー蒸着法(PLD法)により0.5μm厚のCeO層(キャップ層)を成膜した。次いでCeO層上にPLD法により2μm厚のGdBaCu7−δ層(酸化物超電導層)を形成し、さらに酸化物超電導層上にスパッタ法により2μm厚のAg層(保護層)を形成した酸化物超電導積層体を作製した。
その後、これらの積層体に0.1mm厚のCuテープ(安定化層)をスズ半田(融点230℃)によりAg層上に貼り合わせ、Ic=216A、n=25のイットリウム系の酸化物超電導積層体(幅5mm、厚さ0.21mm、長さ70m)を作製した。
なおIcは臨界電流、nは超電導体の性質を表すn値と呼ばれる指標であって、超電導体に発生する電圧Vと電流Iの関係を表す関数V∝(I/Ic)における指数nである。n値が大きいほど臨界電流近傍での発熱が小さくなり、超電導線材に流す電流I(運転電流)を大きく設定ができるというメリットがある。
以上の酸化物超電導積層体を以下で説明する実施例および比較例1、比較例2に用いる。
(実施例)
上記のテープ状の酸化物超電導積層体に対し、12.5μm厚の絶縁テープを図3に示すように二重に螺旋状に巻き、焼付け温度185℃で、絶縁被覆層を構成するホルマール樹脂からなるエナメルを塗布し焼付けを行い、厚さ20μmの絶縁被覆層を形成して図1に示す積層構造の酸化物超電導線材を作製した。
この線材を内直径60mmの巻き芯に200ターン巻きつけダブルパンケーキコイル(100ターン×2層)とし、さらにエポキシ樹脂で真空含浸し実施例の試料を得た。
(比較例1)
上記のテープ状の酸化物超電導積層体に対し、12.5μm厚の絶縁テープを図3に示すように二重に螺旋状に巻いた線材を、内直径60mmの巻き芯に200ターン巻きつけダブルパンケーキコイル(100ターン×2層)とし、さらにエポキシ樹脂で真空含浸し比較例1の試料を得た。
(比較例2)
上記のテープ状の酸化物超電導積層体に対し、焼付け温度185℃で、絶縁被覆層を構成するホルマール樹脂からなるエナメルを塗布し焼付けを行い、厚さ20μmの絶縁被覆層を形成した線材を内直径60mmの巻き芯に200ターン巻きつけダブルパンケーキコイル(100ターン×2層)とし、さらにエポキシ樹脂で真空含浸し比較例2の試料を得た。
(実施結果)
表1にエポキシ樹脂での含浸前のコイル、および実施例のコイル、比較例1のコイル、比較例2のコイルのIcおよびn値を示す。なお、Icは1×10−6V/cm基準の値であり、n値は1×10−8〜1×10−7V/cmの電界領域のI−Vカーブをn値モデルでフィッティングしたときのnの値である。
実施例ではエポキシ樹脂での含浸前のコイルと比較してIc、n値共にほとんど変化しておらず、劣化はないと判断できる。
一方、比較例1および比較例2では、エポキシ樹脂での含浸前のコイルと比較してIc、n値共に大きく低下しておりコイルは劣化している。
Figure 2013225399
比較例1では、エポキシ樹脂を真空含浸する際に、未硬化のエポキシ樹脂が酸化物超電導積層体に巻き付けた絶縁テープのわずかな隙間から染み込み、酸化物超電導積層体の表面に達して接着し、それによって、エポキシ樹脂と超電導積層体の熱膨張率に起因する応力が超電導積層体に直接作用して劣化が生じたと考えられる。
また、比較例2では、絶縁被覆層を構成するエナメルは、超電導積層体に接着しており、エポキシ樹脂およびエナメルと超電導積層体の熱膨張率に起因する応力が超電導積層体に直接作用して劣化が生じたと考えられる。
比較例1、2に対し、実施例では、絶縁被覆層を構成するエナメルは絶縁テープに阻まれ超電導線材に接触しておらず、また、真空含浸したエポキシ樹脂もエナメルに阻まれ超電導線材に接触していないと考えられる。従って、エポキシ樹脂と超電導積層体の熱膨張率に起因する応力は、超電導積層体と、2枚の絶縁テープの間で受け流され超電導積層体に直接作用することがなく、劣化を抑止することができていると考察される。
本発明は、例えば超電導モータ、限流器など、各種超電導機器に用いられる超電導コイルに利用できる超電導線材を提供する。
1…酸化物超電導線材、2…酸化物超電導積層体、3…絶縁テープ、3a…第一の絶縁テープ、3b…第二の絶縁テープ、4…複合超電導体、5…基材、6…中間層、7…酸化物超電導層、8…保護層、9…安定化層、10…絶縁被覆層、11…超電導コイル、12…巻き芯、13…樹脂(エポキシ樹脂)。

Claims (3)

  1. テープ状の基材に中間層と超電導層と安定化層とが積層されて超電導積層体が構成され、該超電導積層体の外周を包囲する絶縁テープが備えられることで複合超電導体が構成され、該複合超電導体の外周に樹脂の焼付けによる絶縁被覆層が形成されたことを特徴とする超電導線材。
  2. 上記絶縁テープが、二重に巻き付けられたことを特徴とする請求項1に記載の超電導線材。
  3. 請求項1又は2に記載の超電導線材が巻線され、エポキシ樹脂にて含浸固定されたことを特徴とする超電導コイル。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110071713A (zh) * 2019-03-01 2019-07-30 天津大学 用于传导冷却的超导开关及其超导磁体装置

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